説明

ガスセンサ

【構成】
ガスセンサのハウジングは、センサ本体を収容している第1の凹部と、周囲のガスから妨害ガスを除去するフィルタを収容している第2の凹部と、第1の凹部と第2の凹部との間のガスの流路とを備えている。第2の凹部は第1の凹部の側方でハウジングの同じ面に設けられている。
【効果】 センサ本体のハウジングにフィルタも収容でき、かつガスセンサをコンパクトにできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フィルタを備えたガスセンサに関し、特にセンサ本体を収容するパッケージに関する。なおこの明細書で、パッケージはハウジングとカバー、金網等の全体を言う。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板の表面に設けた絶縁膜に感ガス部を設けたMEMSガスセンサが提案されている。ところでガスセンサには、被毒ガスあるいは誤報の原因となるガス等を除去するためのフィルタを設けることが多く、その材質は活性炭、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ等が多い。ここで発明者は、フィルタによってMEMSガスセンサのパッケージが大形化することに気付いた。例えば特許文献1(JP2008-241501A)では、MEMSガスセンサのパッケージの上部にフィルタを取り付けている。するとMEMSガスセンサとフィルタとを一体化するため、さらに別のパッケージが必要になり、ガスセンサが大形化する。なお特許文献1ではガスの検出ユニットのパッケージを用いて、MEMSガスセンサとフィルタとを一体化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2008-241501A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、フィルタを備えかつコンパクトなガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、ハウジング内にセンサ本体を収容しているガスセンサにおいて、ハウジングは、センサ本体を収容している第1の凹部と、周囲のガスから妨害ガスを除去するフィルタを収容している第2の凹部と、第1の凹部と第2の凹部との間のガスの流路とを備え、第1の凹部と第2の凹部はハウジングの同じ面に設けられ、さらに第2の凹部は第1の凹部の側方に設けられていることを特徴とする。センサ本体は、ガスの吸着による金属酸化物半導体の抵抗値の変化を検出するもの、ガスの燃焼による測温抵抗体の抵抗変化を検出するもの、ガスによる電気化学的な起電力あるいは電流を検出するものなどである。
【0006】
第1の凹部と第2の凹部の上部を上、凹部の底面を下とすると、この発明ではハウジングの上面から底面へ向く2個の凹部が並行に設けられ、例えば横長のハウジングに並行にセンサ本体とフィルタとが配置される。そしてガスの流路により、フィルタで処理されたガスがセンサ本体へ供給される。またセンサ本体のハウジング上にフィルタを重ねて、さらに別のハウジングによりこれらを一体にするのではないので、横長で背が低く、全体としてコンパクトなガスセンサとなる。
【0007】
好ましくは、第1の凹部と第2の凹部とを覆うリッドがハウジングに固定されている。このようにすると、リッドをハウジングに固定することにより、簡単に第1の凹部と第2の凹部に蓋をできる。
【0008】
リッドはセラミック、合成樹脂膜等でも良いが、好ましくは金属板から成り、第2の凹部と向き合う位置で、フィルタへ周囲の雰囲気を導く孔がリッドに設けられている。金属板のリッドでは、所定のサイズの孔を容易に設けることができる。なお防爆用の金網を必要とする場合、リッドの上面もしくは底面等で、ガス導入用の孔を覆うように、防爆用の金網を溶接等でリッドに固定する。またセラミックのリッドの場合、リッドを多孔質として、第1の凹部側をメタライズ等により気密にすると、第2の凹部へのみガスを導入できる。リッドが合成樹脂膜でガス透過性が有る場合、第1の凹部側に金属の蒸着膜等を設けると、第2の凹部へのみガスを導入できる。リッドが合成樹脂膜でガス透過性が無い場合、第2の凹部側へ孔を設けるとガスを導入できる。なおリッドを介さず、ハウジングに第2の凹部と外部との間のガス流路となる孔、あるいは多孔質の部分等を設けても良い。
【0009】
好ましくは、ハウジングはセラミック製で、第1の凹部内とハウジングの底面とを接続する配線がメタライズにより設けられ、前記配線にセンサ本体の電極が接続されている。配線へのセンサ本体の電極の接続はワイヤボンディングでもフリップチップ接続でも良い。このようにすると、プラスチックのハウジングに固定した金属端子にセンサ本体の電極を接続する場合に比べ、精密な配線ができるので、ハウジングを小さくできる。ハウジングは、ワイヤボンディングの場合は例えば3層、フリップチップ接続の場合は例えば2層である。
【0010】
好ましくは、センサ本体はシリコンチップの表面に設けた絶縁膜上に感ガス部を設けたものである。このようにすると小さなセンサ本体をフィルタと共に小さなハウジングに収容できる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リッドを外した状態の実施例のガスセンサの平面図
【図2】実施例のガスセンサの平面図
【図3】実施例のガスセンサの側面図
【図4】実施例のガスセンサの底面図
【図5】実施例でのハウジングの各層を示す平面図
【図6】リッドを外した状態の実施例のガスセンサの要部拡大平面図
【図7】実施例でのセンサ本体の拡大平面図
【図8】変形例のガスセンサでのハウジングの上層の平面図
【図9】第2の変形例のガスセンサでのハウジングの上層の平面図
【図10】リッドを外した状態の第2の実施例のガスセンサの平面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0013】
図1〜図10に実施例のガスセンサ2とその変形とを示す。図1〜図7において、4はセラミック製のハウジングで、下層6,中層8,上層10の3層からなり、3層のグリーンシートを積層して同時に焼結したものである。センサ本体22を収容する凹部20が中層8に設けられ、凹部20の上部にはより広い孔34が上層10に設けられている。凹部20の周囲の中層8の上面にメタライズによる配線21が設けられ、センサ本体22からのリード24が接続され、センサ本体22は例えばダイボンド層23により下層6に固定されている。上層10と中層8には、フィルタ14を収容する凹部12が同じサイズで設けられている。16は凹部12と凹部20との仕切りで、1個あるいは複数個の溝18が上層10に設けられて、凹部12と凹部20間のガス流路となる。なお溝18は中層8に設けても良い。
【0014】
フィルタ14は例えば繊維状活性炭のシートで、繊維状のため活性炭微粒子のこぼれ出しがない。活性炭に代えて、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ等を用いても良く、Pt等の触媒をフィルタ14に担持させても良い。フィルタ14の材料が破砕活性炭等の粉体である場合、不織布あるいは通気性のある合成樹脂膜で粉体を包む、あるいは合成樹脂等のバインダー等で粉体粒子を互いに固定して成形する等により、フィルタ材料のこぼれ出しを防止する。
【0015】
配線21はメタライズにより設け、溝25,26に設けた配線27を介して下層6の裏面の配線28へ接続し、図示しないプリント基板等に固定する。29は下層6の反対側でもガスセンサ2をプリント基板等に固定するためのダミーの配線で、設けなくても良い。
【0016】
30はリッドで金属板から成り、1個〜複数個の孔32が凹部12に、従ってフィルタ14に面した位置に打ち抜き等により設けられ、凹部12へガスを導入する。孔32の位置とサイズとを一定にすることにより、ガスセンサ2の内部へ拡散するガスの量を一定にする。リッド30は図示しない熱硬化性樹脂、あるいは上層10の上面に設けた金属層との溶接等により上層10に固定され、孔32以外の個所からのガスの出入りを防止すると共に、フィルタ14とセンサ本体22を保護する。
【0017】
図5は下層6,中層8,上層10のグリーンシートを示し、下層6の裏面には配線28,29が設けられている。中層8では配線21が設けられ、凹部12、凹部20になる打ち抜き孔が設けられている。上層10では凹部12,凹部34となる打ち抜き孔が設けられている。そして凹部20,12は左右に並行に配置され、凹部20,12はいずれも上層10側で開口している。
【0018】
図7はセンサ本体22を示し、シリコン基板に設けられた凹部36上に、感ガス膜38を備えた絶縁膜37が設けられ、例えば4本の脚39で固定され、脚39はパッド40,41に接続されている。なおガスの燃焼熱を測温抵抗体で測定するセンサの場合、例えば2個の凹部を設けて、酸化触媒を支持した絶縁膜と、酸化触媒活性が低いセラミックを支持した絶縁膜とを収容し、各絶縁膜にPt薄膜配線を設ける。実施例ではセンサ本体22をリード24によりワイヤボンディングするが、パッド40,41を下層6に設けた配線にフリップチップ接続しても良く、その場合、中層8は不要である。
【0019】
以上のようにすると、フィルタ14をハウジング4内にセンサ本体22と並べて収容でき、フィルタ14をセンサ本体22の上部に重なるように配置する場合に比べ、ガスセンサ2がコンパクトになる。センサ本体22へ導入するガスの量は孔32で制御でき、センサ本体22とフィルタ14はリッド30で保護される。繊維状の活性炭あるいはバインダーで固めた破砕活性炭等を用いると、フィルタ14の材料のこぼれ出しがない。またフィルタ14の位置は仕切り16で規定できる。
【0020】
図8は変形例の上層10'を示し、上層10'に切欠部42を設け、不織布、多孔質のセラミック板等の通気性のある仕切り44によりフィルタ14を固定する。他の点では図1〜図7の実施例と同様である。
【0021】
図9は第2の変形例の上層10''を示し、リッド30ではなく、上層10''に外部と凹部12とを接続する溝46を設けて、外部のガスをフィルタ14側へ導入する。なお溝46に代えて、下層6に孔38を設けても良い。しかしながら金属板のリッド30に孔32を設けると作業が簡単で、かつ正確なサイズの孔を設けることができる。
【0022】
図10は第2の実施例を示し、ハウジング50は熱硬化性樹脂のプラスチックハウジングで、金属板56,58を埋設するように成型されている。フィルタ14を収容する凹部54とセンサ本体22を収容する凹部52とがハウジング50に設けられ、凹部52,54は溝18で連通している。なお金属板58はプリント基板へのガスセンサの取付を強固にするためのもので、設けなくても良い。図10の実施例では、メタライズド配線21ではなく、金属板56を用いるので、ハウジング50はハウジング4に比べ大形化する。他の点では、図1〜図7の実施例と同様である。

【符号の説明】
【0023】
2 ガスセンサ
4 ハウジング
6 下層
8 中層
10 上層
12 凹部
14 フィルタ
16 仕切り
18 溝
20 凹部
21 配線
22 センサ本体
23 ダイボンド層
24 リード
25,26 溝
27 配線
28,29 配線
30 リッド
32 孔
34 孔
36 凹部
37 絶縁膜
38 感ガス膜
39 脚
40,41 パッド
42 切欠部
44 仕切り
46 溝
48 孔
50 プラスチックハウジング
52,54 凹部
56,58 金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にセンサ本体を収容しているガスセンサにおいて、
ハウジングは、センサ本体を収容している第1の凹部と、周囲のガスから妨害ガスを除去するフィルタを収容している第2の凹部と、第1の凹部と第2の凹部との間のガスの流路とを備え、第1の凹部と第2の凹部はハウジングの同じ面に設けられ、さらに第2の凹部は第1の凹部の側方に設けられていることを特徴とする、ガスセンサ。
【請求項2】
第1の凹部と第2の凹部とを覆うリッドがハウジングに固定されていることを特徴とする、請求項1のガスセンサ。
【請求項3】
リッドは金属板から成り、第2の凹部と向き合う位置で、フィルタへ周囲の雰囲気を導く孔がリッドに設けられていることを特徴とする、請求項2のガスセンサ。
【請求項4】
ハウジングはセラミック製で、第1の凹部内とハウジングの底面とを接続するメタライズド配線が設けられ、前記配線にセンサ本体の電極が接続されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかのガスセンサ。
【請求項5】
センサ本体が、シリコンチップの表面に設けた絶縁膜上に感ガス部を設けたものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかのガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−96924(P2013−96924A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241800(P2011−241800)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000112439)フィガロ技研株式会社 (58)
【Fターム(参考)】