説明

ガスタービン発電装置とその始動方法

【課題】ガスタービン発電装置の始動を少ない機器で且つ簡単な制御で行うとともに、排気ガスのエネルギーの再利用を高めるガスタービン発電装置を提供する。
【解決手段】内燃機関1の排出する排気ガスによって駆動されるガスタービン発電装置において、排気ガスを遮断する第1の遮断弁7と、排気ガスの流れをバイパスする第2の遮断弁6と、第1の遮断弁を通過し排気ガスを開閉する第3の遮断弁8と、通過可能なガス流量が第3の遮断弁8よりも少なく、且つ第1の遮断弁7を通過し流れる排気ガスを開閉する第4の遮断弁9と、回転軸がガスタービン2及び同期発電機3と同軸に結合され、且つ遮断器13を介して電力系統と接続された誘導機4と、同期発電機3の出力電圧と電力系統の電圧を監視し、遮断器12を介して同期投入する同期投入装置11を備えているので、少ない機器構成で同期発電機3の始動が行え、且つ簡単な制御で発電できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排出する排気ガスで駆動されるガスタービン発電装置とその始動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気ガスで駆動されるガスタービン発電装置は、例えば特許文献1に記載されており、このガスタービン発電装置を図3の系統構成図を参照して説明する。
【0003】
同図において、1は内燃機関、2はガスタービン、3は同期発電機、5は負荷、6,7は遮断弁、10は励磁装置、11は同期投入装置、12,14,25,26,27は遮断器、20〜23は抵抗器、24は負荷変換装置、30は電力系統である。
【0004】
図3に示すガスタービン発電装置では、ガスタービン2は遮断弁7を介して内燃機関1の排出する排気ガスにより駆動される。遮断弁6は遮断弁7の開閉動作と逆の動作をする。同期発電機3は回転軸をガスタービン2に結合されて駆動されると共に励磁装置10より界磁電流を供給され、同期発電機3で発電される電力は遮断器12を介して電力系統30へ供給さされる。電力系統30には遮断器14を介して負荷5が接続される。同期投入装置11は同期発電機3の電圧と電力系統30の電圧を監視し、遮断器12を操作して同期投入を行う。抵抗器20〜22はそれぞれ遮断器25〜27を介して同期発電機3へ接続され、電力を供給される。負荷変換装置24は入力電流を調整し、抵抗器23が消費する電力を調整する。
【0005】
次に、前記ガスタービン発電装置の同期発電機3の始動方法を説明する。
まず、遮断器25〜27を閉とし、抵抗器20〜22を同期発電機3へ接続した状態で励磁装置10により界磁電流を供給する。その後、遮断弁7を開くと遮断弁6を介してバイパスされていた排気ガスが遮断弁7を介してガスタービン2へ供給され、ガスタービン2及び同期発電機3が回転する。これにより発電機3は発電し、抵抗器20〜23へ電力を供給する。抵抗器20〜23での電力消費によりガスタービン2の軸に負荷トルクが発生し、この負荷トルクと排気ガスのエネルギーによるガスタービン2の加速トルクが釣り合う回転数でガスタービン2及び同期発電機3は回転する。ここで、抵抗器20〜22が同期発電機3に接続されている場合に釣り合う回転数を同期発電機3の定格回転数よりも十分低い回転数としておく。その後、抵抗器20〜22をひとつずつ順に遮断することにより、負荷トルクが減少し、同期発電機3の回転数が上昇する。この様子を図4のガスタービン発電装置の動作図に示す。同図のAの範囲は例えば抵抗器20〜22が同期発電機3に接続されている期間である。同図のBの範囲は例えば抵抗器20を遮断し、抵抗器21,22を同期発電機3に接続している期間であり、負荷トルクが減少するため同期発電機3の回転数は上昇する。さらに抵抗器21を遮断すると同期発電機3の回転数は定格回転数付近まで上昇する。その後、負荷変換装置24により抵抗器23に流れる電流を調整することで負荷トルクの微調整を行い、同期発電機3を定格回転数に調整する。その後、同期投入装置11により遮断器12を操作して同期発電機3を電力系統30へ接続し、負荷5へ電力を供給する。
【特許文献1】特開平6−10699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来のガスタービン発電装置の始動方法は、抵抗器20〜22と遮断器25〜27、及び負荷変換装置24と抵抗器23によって同期発電機3及びガスタービン2の回転数を調整しようとするものである。したがって、ガスタービン2の回転数上昇を抑制するために容量の大きな抵抗器が必要となり、コスト上昇、設置スペース拡大につながると共に、それらの制御が複雑となるという問題がある。
【0007】
また、内燃機関が排出する排気ガスのエネルギーを同期発電機3によって電力に変換して再利用することが本システムの目的であるが、抵抗器での電力消費を利用しているため、一部再利用しないエネルギー消費が生じるという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、その課題はガスタービン発電装置の始動を少ない機器で且つ簡単な制御で行うとともに、排気ガスのエネルギーの再利用を高めることが可能なガスタービン発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、内燃機関の排出する排気ガスによって駆動されるガスタービンと、前記ガスタービンと回転軸が結合された同期発電機と、前記同期発電機に界磁電流を供給する励磁装置から成るガスタービン発電装置において、前記ガスタービンへの排気ガスを遮断する第1の遮断弁と、前記第1の遮断弁の開閉動作と逆動作をし、前記ガスタービンへの排気ガスの流れをバイパスする第2の遮断弁と、前記第1の遮断弁を通過し前記ガスタービンへ流れる排気ガスを開閉する第3の遮断弁と、通過可能なガス流量が前記第3の遮断弁よりも少なく、且つ前記第1の遮断弁を通過し前記ガスタービンへ流れる排気ガスを開閉する第4の遮断弁と、回転軸が前記ガスタービン及び前記同期発電機と同軸に結合され、且つ遮断器を介して電力系統と接続された誘導機と、前記同期発電機の出力電圧と電力系統の電圧を監視し、遮断器を介して同期投入する同期投入装置を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のガスタービン発電装置の始動方法は、請求項1のガスタービン発電装置において、前記第1の遮断弁を開、前記第3の遮断弁を閉、前記第4の遮断弁を開として前記ガスタービンを駆動し、その後、前記誘導機を電力系統と接続し、その後、前記励磁装置から前記同期発電機に界磁電流を供給することにより前記同期発電機の出力電圧を起動し、その後、前記同期投入装置を作動させて前記同期発電機を電力系統へ同期投入した後、前記誘導機を電力系統から切り離してから前記第3の遮断弁を開とすることで負荷へ電力を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、少ない機器で、かつ排気ガスのエネルギーを再利用しながら同期発電機を始動することができるので、コストや設置スペースを抑制し、且つ簡単な制御で内燃機関かが排出する排気ガスで発電できるガスタービン発電装置を実現できる。また、抵抗器の電力消費によるガスタービンの回転数制御を行わないため、排気ガスのエネルギーの再利用を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態のガスタービン発電装置の系統構成図であり、既に説明した従来のガスタービン発電装置の系統構成図と相違する構成は、本実施形態では、誘導機4と遮断弁8,9と遮断器13なる機器が追加され、抵抗器20〜23と負荷変換装置24と遮断器25〜27が除去された点である。その他の構成は同一であるので同一構成部分には同一符号を付して重複説明は省略する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態では、ガスタービン2と遮断弁7の間に遮断弁8,9の並列回路と、遮断器12及び14の中間の電力系統30と同期発電機3との間に誘導機4と遮断器13の直列回路を設けた構成に特徴がある。そして、遮断弁8は遮断弁7を通過しガスタービン2へ流れる排気ガスを開閉する。遮断弁9は通過可能なガス流量が遮断弁8よりも少なく、且つ遮断弁7を通過しガスタービン2へ流れる排気ガスを開閉する。誘導機4はガスタービン2及び同期発電機3と同軸に回転子が結合されると共に、遮断器13を介して電力系統30に接続され、電動機または発電機として作用する。
【0014】
次に、図2の動作図を参照して本実施形態のガスタービン発電装置の同期発電機の始動方法説明する。
今、遮断弁6を閉、遮断弁7を開、遮断弁8を閉、遮断弁9を開とし、通常よりも少量の排気ガスをガスタービン2へ供給し、ガスタービン2を低速で駆動する。ガスタービン2が回転することにより同期発電機3も回転する。次に、遮断器13を閉とし、誘導機4を電力系統30の電圧で駆動する。この時、同期発電機3の回転数が定格回転数以下である場合(図2のA1)は、誘導機4は電動機として作用し、同期発電機3を加速する(図2のB1)。一方、同期発電機3の回転数が定格回転数以上である場合(図2のA2)は、誘導機4は発電機として作用し、排気ガスのエネルギーをガスタービン及び回転軸を介して電力系統30へ供給することにより、同期発電機3を減速する(図2のB2)。
【0015】
このような誘導機4の作用により、同期発電機3の回転数は定格回転数近傍に保持される(図2のC1及びC2)。次に、励磁装置10により同期発電機3に界磁電流を供給し、発電機の出力電圧を起動する(図2のD)。次に、同期投入装置11により遮断器12を操作することで同期発電機3を電力系統30に接続する。次に遮断器13を開として誘導機4を電力系統30から切り離す。その後、遮断弁8を開として排気ガスの流量を増加させることにより、排気ガスのエネルギーをガスタービン2及び同期発電機3を介して電力系統30に供給する。
以上説明したように、本実施形態によると、少ない機器で、且つ排気ガスのエネルギーを再利用しながら同期発電機を始動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態のガスタービン発電装置の系統構成図。
【図2】図1のガスタービン発電装置の動作図。
【図3】従来のガスタービン発電装置の系統構成図。
【図4】図3のガスタービン発電装置の動作図。
【符号の説明】
【0017】
1…内燃機関、2…ガスタービン、3…同期発電機、4…誘導機、5…負荷、6〜9…遮断弁、10…励磁装置、11…同期投入装置、12〜14…遮断器、20〜23…抵抗器、24…負荷変換装置、25〜27…遮断器、30…電力系統。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排出する排気ガスによって駆動されるガスタービンと、前記ガスタービンと回転軸が結合された同期発電機と、前記同期発電機に界磁電流を供給する励磁装置とから成るガスタービン発電装置において、前記ガスタービンへの排気ガスを遮断する第1の遮断弁と、前記第1の遮断弁の開閉動作と逆動作をし,前記ガスタービンへの排気ガスの流れをバイパスする第2の遮断弁と、前記第1の遮断弁を通過し前記ガスタービンへ流れる排気ガスを開閉する第3の遮断弁と、通過可能なガス流量が前記第3の遮断弁よりも少なく、且つ前記第1の遮断弁を通過し前記ガスタービンへ流れる排気ガスを開閉する第4の遮断弁と、回転軸が前記ガスタービン及び前記同期発電機と同軸に結合され、且つ遮断器を介して電力系統と接続された誘導機と、前記同期発電機の出力電圧と電力系統の電圧を監視し、遮断器を介して同期投入する同期投入装置とを備えたことを特徴とするガスタービン発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン発電装置の始動方法において、前記第1の遮断弁を開、前記第3の遮断弁を閉、前記第4の遮断弁を開として前記ガスタービンを駆動した後、前記誘導機を電力系統と接続し、その後、前記励磁装置から前記同期発電機に界磁電流を供給することにより前記同期発電機の出力電圧を起動した後、前記同期投入装置を作動させて前記同期発電機を電力系統へ同期投入し、次に前記誘導機を電力系統から切り離してから前記第3の遮断弁を開とすることで負荷へ電力を供給することを特徴とするガスタービン発電装置の始動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−133791(P2008−133791A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321536(P2006−321536)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】