説明

ガスタービン

【課題】ガスタービンの案内静翼ボックスには接続部を介して冷却空気が供給されるが、圧縮装置から進路変更した圧縮空気は漏出し、封止部材を通過し、第二の間隙内に噴射された冷却空気と混合する。このため、ロータエアフォイルの寿命を保証するための適正温度を有するように、冷却空気の流量は極めて多く、ガスタービンの効率は低減する。
【解決手段】案内静翼ボックス17が複数の通路30を備えており、これらの通路が案内静翼ボックス17の作業上流側の領域31を案内静翼ボックス17の作業下流側の間隙7の領域32へ接続していること、および圧縮空気の圧力が高いために、圧縮空気(パージ空気)は開口部38を通って通路30に入り、通路30を通過し、圧縮空気がロータエアフォイル入口23には入ることができない領域内の第二の間隙7に入る開口部34を通って出て行く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンに関する。特に本発明は、燃焼室内で流れている高温ガスのありうる漏出物および/または燃焼室とステータエアフォイル列の間の領域を封止するために使用される圧縮空気が、ロータエアフォイル冷却回路に入らないように、燃焼室と固定されたフレームのすぐ運転下流側の高圧タービンの案内静翼ボックス間の領域を封止することに関する。
【背景技術】
【0002】
以下に関連があるガスタービンの部材を説明するための図1に対して言及する。詳しくは、二段燃焼ガスタービンに対して言及する。本発明による構造が、二段燃焼ガスタービンではないどのガスタービンにおいても実現されることがいずれにせよ明らかである。
【0003】
二段燃焼ガスタービン1は(図示していない)圧縮装置を備えており、この圧縮装置は、空気を圧縮し、かつ燃料が噴射され、燃焼されるべき混合物が生成される(図示していない)第一のバーナーに空気を供給する。
【0004】
第一のバーナーの運転下流側には、第一の燃焼室2が設けられており、混合物は燃焼して、高圧膨張段に供給される高温高圧ガスFを生成する。
【0005】
高圧膨張段は、第一の間隙5の分だけ燃焼室2から隔てられたステータエアフォイル列4と、第二の間隙7の分だけステータエアフォイル列4から隔てられたロータエアフォイル列6を備えている。第三の間隙8はロータエアフォイル列6と複数の並列した第二のバーナー10を供給している環状ダクト9の間に設けられている。それ以外の燃料は、点火可能な混合物が生成されるように、高圧膨張段においてすでにその一部が膨張した高温ガス内に噴射される。この点火可能な混合物は(図示していない)第二の燃焼室内に噴射され、生じるべき高温ガスはさらに(図示していない)低圧タービン内で膨張する。
【0006】
ステータエアフォイル列4は、他の案内静翼の各々の間で規定しており、かつ案内静翼ボックス17に接続された端部壁16を備えているステータエアフォイル15でできている。
【0007】
案内静翼ボックス17はボックス構造を有しており、かつ図を明瞭にするために図示していない接続部を介して案内静翼ボックス17に冷却空気Aが供給される。
【0008】
特に冷却空気Aは、約450〜550℃の温度で圧縮装置から来る空気Aであり、かつ外部の冷却装置により通常200〜400℃の温度まで冷却される。
【0009】
さらに案内静翼ボックス17は、冷却空気Aを第二の間隙7内に噴射するノズル20も備えている。
【0010】
ロータエアフォイル列6は複数のロータエアフォイル22を備えており、これらのロータエアフォイルはノズル20から噴射される冷却空気Aを捕集するために配置された入口23を備えた中空体を有している。
【0011】
運転時、第一の燃焼室2内で生成される高温ガスFは、ロータエアフォイル列6が高温ガスから機械的力を取出すために、ステータエアフォイル列およびロータエアフォイル列4,6を通過する。
【0012】
さらに案内静翼ボックス17から来る空気Aは、ロータエアフォイル入口23に向かってノズル20を通って第二の間隙7内に噴射される。
【0013】
ロータエアフォイル列6が高速で回転した場合、ロータエアフォイル列はノズル20から噴射された冷却空気Aを引寄せ、冷却空気はロータエアフォイル入口23を介してロータエアフォイル22に入る。
【0014】
ロータエアフォイル22に入る冷却空気Aは、ロータエアフォイル22を冷却し、次いで(通常、各ロータエアフォイル列の前縁および後縁における)孔を通って噴射される。すなわち、ロータエアフォイル22の前縁および後縁を通って噴射される冷却空気は、A2により示してある。
【0015】
高温ガスFが第一の間隙5に入るのを防ぐために、(高温ガスが約1200〜1500℃の温度を有しており、かつ第一の間隙5に近い部材を損傷する)、圧縮空気(いわゆるパージ空気)は、圧縮装置から進路変更し、第一の間隙内に噴射される。この圧縮空気は約450〜550℃の温度を有しており、したがって第一の間隙5に近い部材にとって危険ではない。
【0016】
さらに、圧縮空気(パージ空気)がロータエアフォイル入口23に達するのを防ぐために、封止部材25がステータエアフォイル端部壁16と固定されたフレーム26の間、及び案内静翼ボックス17と固定されたフレーム26の間に設けられている。
【0017】
それにもかかわらず、圧縮装置から進路変更した圧縮空気は漏出し、封止部材25を通過し、第二の間隙内に噴射された冷却空気Aと混合する。
【0018】
この理由で、運転条件全てにおいて、ロータエアフォイル22に入る空気がロータエアフォイルの無損傷状態を保護し、かつその寿命を保証するための適正温度を有するように、冷却空気Aの流量は極めて多い。
【0019】
それにもかかわらず、圧縮装置から案内静翼ボックス内に進路変更した冷却空気Aの流量が極めて多いので、ガスタービンの効率は低減する。
【0020】
特許文献1には、圧縮空気が噴射されて、ロータエアフォイルの冷却導管に入る開口部を備えた案内静翼ボックスが開示されている。
【0021】
特許文献2には、第一および第二の通路を備えた案内静翼が開示されており、これらの通路から冷却空気がロータエアフォイルの冷却通路内に噴射される。
【0022】
特許文献3には、空気流がロータ冷却回路のロータエアフォイル入口内に噴射される通路を備えた案内静翼ボックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】仏国特許第1351268号明細書
【特許文献2】英国特許第2246836号明細書
【特許文献3】欧州特許第0636765号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って本発明の技術的目的は、前記従来技術の問題がなくなるガスタービンを提供することである。
【0025】
この技術的目的の範囲内において、本発明の課題は、従来のガスタービンに比べて効率が増大したガスタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
技術的な目的は、これらのおよび他の課題と共に、添付した請求項によるガスタービンを提供することにより、本発明に従い達せられる。
【0027】
本発明の他の特徴と長所は、添付した図において、限定していない実例により図示した、本発明によるガスタービンの、好ましいが通常の実施例の説明から明瞭である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来技術によるガスタービンの部分の概略横断面図である。
【図2】本発明によるガスタービンの部分の概略横断面図である。
【図3】本発明の第一の実施例による案内静翼ボックスの詳細を示す図である。
【図4】本発明の第二の実施例による案内静翼ボックスの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0029】
図1から3を見ると、ガスタービン1はステータエアフォイル列4とロータエアフォイル列6に続いて燃焼室2を備えている。
【0030】
ガスタービンの構造は、既に説明したものと同じである。したがって再度説明はせず、そして同じ参照符号に関しては同じ部材を示してある。
【0031】
特に案内静翼ボックス17は、複数の通路30を備えており、これらの通路は案内静翼ボックス17の運転上流側の領域31を案内静翼ボックス17の運転下流側の第二の間隙7の領域32へ接続している。
【0032】
さらにロータエアフォイル列6に面した、通路30の開口部34は、ノズル20に比べて高温ガス通路35に近い。
【0033】
ロータエアフォイル列6に面した、通路30の開口部34は、ロータエアフォイル入口23に比べて、高温ガス通路35にほぼ同じく近いか、あるいはロータエアフォイル入口23に比べて、高温ガス通路35に近い。これにより図示していない開口部34から出る流れは入口23に入る。
【0034】
第一の実施例(図4)において、通路30は案内静翼ボックス17の側壁36でスロットにより規定されている。
【0035】
この実施例において、通路34が二つの対向したスロットの間で規定されるように、二つの隣接した案内静翼ボックスの二つの接触している側はスロットを備えている。
【0036】
代替え的に、隣接した案内静翼ボックス17の二つの接触している側壁36の一つだけが、スロットを備えていてもよく、この場合、通路30は案内静翼ボックス17のスロットと隣接した案内静翼ボックス17の平坦面により規定されている。
【0037】
異なる実施例(図3)において、通路30は案内静翼ボックス17の内部で延びており、かつ導管により規定されている。
【0038】
さらに別の実施例において、案内静翼ボックスはスロットと導管を備えていてもよいのは当然である。
【0039】
さらに封止部材37は、案内静翼ボックス17と固定されたフレーム26の間で、ロータエアフォイル列6と対向した通路30の開口部38の運転下流側に設けられている。これにより、封止部材25を越えた漏出物はロータエアフォイル列6から隔てられた領域内に保留される。
【0040】
本発明のガスタービンの運転は、説明および図示したものから明らかであり、かつ基本的に以下の通りである。
【0041】
高温ガスは高温ガス通路35を通過し、従って燃焼室2、ステータエアフォイル列4およびロータエアフォイル列6を通過する。
【0042】
第一の間隙5を通って、圧縮空気(パージ空気)は燃焼室2に供給される。
【0043】
圧縮空気(パージ空気)の一部は漏出して、封止部材25を越えて案内静翼ボックス17の上流の領域31に入る。
【0044】
(第二のスロット7の内部の圧力よりも大きい)圧縮空気の圧力が高いために、圧縮空気(パージ空気)は開口部38を通って通路30に入り、通路30を通過し、圧縮空気がロータエアフォイル入口23には入ることができない領域内の第二の間隙7に入る開口部34を通って出て行く。
【0045】
別の封止部材37は通路30の開口部38に隣接した領域内でこの圧縮空気(パージ空気)を保管し、かつ高温圧縮空気が高速で回転するロータエアフォイル列6から引き寄せられるのを防ぐ。
【0046】
このようにして想到されるガスタービンは、数多くの変更と変形を受入れる余地があり、これらはすべて本発明の構想の範囲内にある。さらにこれらの詳細はすべて、技術的に同等な部材で置き換えることができる。
【0047】
実際、使用されるべき材料および寸法は、要求と従来技術に応じて自由に選択できる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガスタービン
2 燃焼室
4 ステータエアフォイル列
5 第一の間隙
6 ロータエアフォイル列
7 第二の間隙
8 第三の間隙
9 環状の間隙
10 第二のバーナー
15 ステータエアフォイル
16 15の端部壁
17 案内静翼ボックス
20 ノズル
22 ロータエアフォイル
23 ロータエアフォイル入口
25 封止部材
26 固定されたフレーム
30 通路
31 案内静翼ボックスの運転上流側の領域
32 案内静翼ボックスの運転下流側の領域
34 30の開口部
35 高温ガス通路
36 17の側壁
37 封止部材
38 30の開口部
A 冷却空気
A2 22を通って排出される空気
F 高温ガス流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の案内静翼を規定しているステータエアフォイル列(4)と、少なくとも一つの間隙(7)分だけステータエアフォイル列(4)から隔てられたロータエアフォイル列(6)を備えたガスタービン(1)であって、
ステータエアフォイル列(4)のステータエアフォイル(15)が、案内静翼ボックス(17)に接続されており、この案内静翼ボックスが、冷却流体(A)を捕集し、かつこの冷却流体をノズル(20)を通して前記間隙(7)内に排出して、冷却流体をロータエアフォイル入口(23)に入り込ませる様式のガスタービン(1)において、
前記案内静翼ボックス(17)が複数の通路(30)を備えており、これらの通路が案内静翼ボックス(17)の運転上流側の領域(31)を前記案内静翼ボックス(17)の運転下流側の前記間隙(7)の領域(32)へ接続していること、および
圧縮空気が通路(30)から、圧縮空気がロータエアフォイル入口(23)に入ることができない領域内の間隙(7)に入る開口部(34)を通って出ていくことを特徴とするガスタービン(1)。
【請求項2】
ロータエアフォイル列(6)に面した通路(30)の前記開口部(34)が、
ロータエアフォイル入口(23)に比べて、高温ガス通路(35)にほぼ同じく近いか、あるいはロータエアフォイル入口(23)に比べて、高温ガス通路(35)に近いことを特徴とする請求項1記載のガスタービン(1)。
【請求項3】
前記通路(30)が案内静翼ボックス(17)の側壁においてスロットにより規定されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン(1)。
【請求項4】
前記通路(30)が案内静翼ボックス(17)の内部で延びていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン(1)。
【請求項5】
前記通路(30)が導管により規定されていることを特徴とする請求項4に記載のガスタービン(1)。
【請求項6】
封止部材(37)が、案内静翼ボックス(17)と固定されたフレーム(26)の間で、ロータエアフォイル列(6)と対向した通路(30)の開口部(38)の運転下流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン(1)。
【請求項7】
ステータエアフォイル列(4)の運転上流側には別の間隙(5)が設けられており、通路が間隙(7)と別の間隙(5)に隣接した領域の間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン(1)。
【請求項8】
ステータエアフォイル列(4)の運転上流側には燃焼室(2)が設けられており、ステータエアフォイル列(4)が別の間隙(5)の分だけ燃焼室(2)から隔てられていることを特徴とする請求項7に記載のガスタービン(1)。
【請求項9】
ロータエアフォイル列(6)に面した通路(30)の前記開口部(34)が、前記ノズル(20)に比べて高温ガス通路(30)に近いことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−69366(P2011−69366A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−212081(P2010−212081)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】