説明

ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムを用いて表示素子を封止する方法。

【課題】ガスバリア性に優れたガスバリアフィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム上に、有機領域と無機領域を含むバリア層を有し、かつ、有機領域が設けられた側の最表面(有機領域が両面に設けられている場合は、少なくとも一方の面の最外層)が接着層であるガスバリアフィルムで、そのバリア層が、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層とを有する。接着層は、紫外線硬化型接着剤または熱硬化型接着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムを用いて表示素子を封止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無機層または有機層の上に接着層を設けた層構成を有するフィルムが知られている(特許文献1、2)。しかしながら、このようなフィルムを、表示素子の封止フィルムとして用いようとすると、ガスバリア性が不十分である。
また、このようなガスバリアフィルムを用いて、表示素子を封止する場合、両者を貼り合せるための接着剤が必要となるため、作業工程が複雑となるという問題もある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−326633号公報
【特許文献2】特開2006−130669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決することを目的としたものであって、良好なガスバリア性を維持しつつ表示素子の封止フィルムとして、作業工程の簡易化が可能なガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、下記手段により、上記課題を解決しうることを見出した。
(1)基材フィルム上に、有機領域と無機領域を含むバリア層を有し、かつ、有機領域が設けられた側の最表面(有機領域が両面に設けられている場合は、少なくとも一方の面の最外層)が接着層であるガスバリアフィルム。
(2)前記バリア層が、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層とを有する、(1)に記載のガスバリアフィルム。
(3)前記接着層に隣接する層が、無機領域または無機層である、(1)または(2)に記載のガスバリアフィルム。
(4)前記接着層に隣接する2層が、接着層に近い方から順に、無機領域若しくは無機層、有機領域若しくは有機層である、(1)または(2)に記載のガスバリアフィルム。
(5)前記接着層に隣接する層が、易接着層である、(1)または(2)に記載のガスバリアフィルム。
(6)前記接着層は、紫外線硬化型接着剤または熱硬化型接着剤である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(7)前記接着層は、紫外線硬化型エポキシ樹脂である、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(8)前記有機層が、ビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含む組成物を硬化させてなる、(2)〜(7)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(9)さらに、接着層が設けられていない側の最表面に剥離層を有する、(1)〜(8)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(10)さらに、接着層の表面に保護層を有する、(1)〜(9)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
(11)表示素子の封止方法であって、(1)〜(10)のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを、その接着層側が、表示素子に近い側となるように設けることを特徴とする、封止方法。
(12)表示素子が、有機EL素子である、(11)に記載の封止方法。
(13)前記ガスバリアフィルムは(10)に記載のガスバリアフィルムであり、該ガスバリアフィルムを表示素子に設ける際に、保護層を剥がすことを含む、(11)または(12)に記載の封止方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、良好なガスバリア性を維持しつつ表示素子の封止フィルムとして、作業工程の簡易化が可能なガスバリアフィルムを提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、本明細書における有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。
【0008】
(ガスバリアフィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは大気中の酸素、水分を遮断する機能を有するフィルムであって、有機領域が設けられた側の最表面に接着層を有するものである。本発明におけるガスバリアフィルムは、ガスバリア能があると知られている層であればいかなる層でも良いが、有機領域と無機領域もしくは有機層と無機層を交互積層した有機無機積層型ガスバリアフィルムであることが好ましい。
なお、有機無機積層型ガスバリアフィルムとは有機領域と無機領域もしくは少なくとも1層の有機層と、少なくとも無機層が積層した構成である。
有機領域と無機領域もしくは有機層と無機層は、通常、交互に積層している。有機領域と無機領域より構成される場合、各領域が膜厚方向に連続的に変化するいわゆる傾斜材料層であってもよい。前記傾斜材料の例としては、キムらによる論文「Journal of Vacuum Science and Technology A Vol. 23 p971−977(2005 American Vacuum Society) ジャーナル オブ バキューム サイエンス アンド テクノロジー A 第23巻 971頁〜977ページ(20005年刊、アメリカ真空学会)」に記載の材料や、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように有機層と無機層が界面を持たない連続的な層等が挙げられる。以降、簡略化のため、有機層と有機領域は「有機層」として、無機層と無機領域は「無機層」として記述する。
カスバリアフィルムを構成する層数に関しては特に制限はないが、典型的には2層〜30層が好ましく、3層〜20層がさらに好ましい。なお、バリア層はプラスチックフィルムの片面にのみ設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0009】
以下に、本発明のガスバリアフィルムの好ましい層構成を記載する。本発明のガスバリアフィルムの層構成がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
(1)基材フィルム/有機層/無機層/接着層
(2)基材フィルム/無機層/有機層/接着層
(3)基材フィルム/無機層/有機層/無機層/有機層/接着層
(4)基材フィルム/無機層/有機層/易接着層/接着層
(5)基材フィルム/有機層/無機層/有機層/易接着層/接着層
(6)剥離層/帯電防止層/基材フィルム/無機層/有機層/無機層/有機層/接着層
本発明では、接着層の接着硬化温度は、有機層のガラス転移温度よりも低いことが好ましい。このような手段を採用することにより、有機層を変質させずに接着できる。
また、ガスバリアフィルムは、通常、無機層が露出していると表面に傷がつきやすいため、表面は有機層にすることが好ましい。しかしながら、本発明では、最表層に、接着層を設けたことにより、傷防止のための有機層を省略できるという利点がある。さらに、接着層を設けたことにより、さらに、接着剤等を用いることなく、素子等に貼り付けることができるため、作業工程が簡略化できる。
【0010】
(接着層)
本発明における接着層は、接着剤を含めば、他は特に定めるものではない。本発明では、紫外線(UV)硬化型接着剤または熱硬化型接着剤を好ましく用いることができ、紫外線硬化型接着剤がより好ましい。接着剤の種類は特に定めるものではないが、UV硬化型接着剤としては、エポキシ系、アクリレート系が好ましい例として挙げられ、エポキシ系がより好ましい。熱硬化型接着剤としては、エポキシ系、アクリレート系が好ましい例として挙げられ、エポキシ系がより好ましい。
【0011】
本発明の接着層には、接着剤以外の成分が含まれていてもよく、このような成分として、フィラー、吸湿剤、脱酸素剤等を挙げることができる。
また、本発明の接着層は、他の機能層を兼ねる構成であってもよく、例えば、衝撃吸収層、クッション性層等を兼ねる層であってもよい。
【0012】
(フィラー)
本発明で用いるフィラーとしては、特に定めるものではないが、例えば、シリカ等が挙げられる。
接着層に添加するフィラーの添加量は、接着剤の含量に対し、1〜50質量部が好ましく、35〜45質量部がより好ましい。接着層に添加するフィラーは使用部位によって添加量を調整することができる。例えば、図1は、本発明のガスバリアフィルムで封止した有機EL素子の概略図であって、1は有機EL素子であり、2はガスバリアフィルムであって、その内、斜線部(21、22)が接着層である。ここで、有機EL素子1は、通常、基板11上に、表示部12が設けられた構造となっている。本発明では、この表示部12の上に設けられた接着層21の部分と、該表示部以外の部分、すなわち、非表示部の上に設けられた接着層22の部分とで、接着層の組成を変え、フィラーを非表示部上に設けられた接着層に多く入れることが好ましい。フィラーは接着性を向上させることができるが、透明性の向上には好ましくないため、このような構成とすることにより、有機EL素子とガスバリアフィルムの高い接着性と画像表示部の高い透明性を確保することができる。
図2は、図1を側面としたときの、上面方向から見た図であって、本発明のガスバリアフィルムは接着層以外を省略した図である。図2から、周辺部(非表示部22)と中心部(表示部21)とで接着層の組成が変わることが明確に理解できる。
特に本発明では、接着剤の含量に対し、表示部の上に設けられた接着層21に5〜15質量部の、非表示部の上に設けられた接着層22に35〜45質量部のフィラーを添加することが好ましい。
【0013】
(易接着層)
本発明では、易接着層を設けてもよい。易接着層とは、プライマー層、アンダーコート層、下塗層などとも呼ばれる層の1種で、積層体の界面状態の調整などの目的として設けられる層をいう。このような層を設けることにより、特に接着性の向上という利点がある。
易接着層はバインダーを含有することが必須であるが、必要に応じてマット剤、界面活性剤、帯電防止剤、屈折率制御のための微粒子などを含有してもよい。
バインダーには特に制限はなく、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂などを用いることができる。
アクリル樹脂とはアクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレートなどを主成分としてこれらと共重合可能なモノマー(例えば、スチレン、ジビニルベンゼンなど)を共重合したポリマーである。
ポリウレタン樹脂とは主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI(Tolylene Diisocyanate)、MDI(Methyl Diphenyl Isocyanate)、HDI(Hexylene diisocyanate)、IPDI(Isophoron diisocyanate)などがあり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどがある。
さらに、本発明のポリウレタン樹脂としてはポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用できる。ポリエステル樹脂とは主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリカルボン酸とポリオールの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えば、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などがあり、ポリオールとしては例えば前述のものがある。
本発明のゴム系樹脂とは合成ゴムのうちジエン系合成ゴムをいう。具体例としてはポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレンなどがある。
【0014】
(基材フィルム)
本発明におけるガスバリアフィルムは、通常、基材フィルムとして、プラスチックフィルムを用いる。用いられるプラスチックフィルムは、有機層、無機層等の積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0015】
本発明のガスバリアフィルムを後述する有機EL素子等のデバイスの基板として使用する場合は、プラスチックフィルムは耐熱性を有する素材からなることが好ましい。具体的には、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上および/または線熱膨張係数が40ppm/℃以下で耐熱性の高い透明な素材からなることが好ましい。Tgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学(株)ネオプリム:260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)が挙げられる(括弧内はTgを示す)。特に、透明性を求める場合には脂環式ポレオレフィン等を使用するのが好ましい。
【0016】
本発明のガスバリアフィルムを偏光板と組み合わせて使用する場合、ガスバリアフィルムのバリア性積層体がセルの内側に向くようにし、最も内側に(素子に隣接して)配置することが好ましい。このとき偏光板よりセルの内側にガスバリアフィルムが配置されることになるため、ガスバリアフィルムのレターデーション値が重要になる。このような態様でのガスバリアフィルムの使用形態は、レターデーション値が10nm以下の基材フィルムを用いたガスバリアフィルムと円偏光板(1/4波長板+(1/2波長板)+直線偏光板)を積層して使用するか、あるいは1/4波長板として使用可能な、レターデーション値が100nm〜180nmの基材フィルムを用いたガスバリアフィルムに直線偏光板を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0017】
レターデーションが10nm以下の基材フィルムとしてはセルローストリアセテート(富士フイルム(株):富士タック)、ポリカーボネート(帝人化成(株):ピュアエース、(株)カネカ:エルメック)、シクロオレフィンポリマー(JSR(株):アートン、日本ゼオン(株):ゼオノア)、シクロオレフィンコポリマー(三井化学(株):アペル(ペレット)、ポリプラスチック(株):トパス(ペレット))ポリアリレート(ユニチカ(株):U100(ペレット))、透明ポリイミド(三菱ガス化学(株):ネオプリム)等を挙げることができる。
また1/4波長板としては、上記のフィルムを適宜延伸することで所望のレターデーション値に調整したフィルムを用いることができる。
【0018】
本発明のガスバリアフィルムは有機EL素子等のデバイスとして利用されることから、プラスチックフィルムは透明であること、すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS−K7105に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
本発明のガスバリアフィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムに用いられるプラスチックフィルムの厚みは、用途によって適宜選択されるので特に制限がないが、典型的には1〜800μmであり、好ましくは10〜200μmである。これらのプラスチックフィルムは、透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層、易接着層等が挙げられる。
【0019】
(無機層)
無機層は無機物で構成されガスバリア性を有すれば特に制限はない。無機物としては、典型的には、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、亜鉛、スズの酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、水素化物等が挙げられる。これらは純物質でもよいし、複数組成からなる混合物や傾斜材料層でもよい。これらのうち、アルミニウムの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物、または珪素の酸化物、窒化物若しくは酸窒化物が好ましい。ガスバリアフィルムを構成する各無機層の厚みに関しては特に限定されないが、典型的には1層あたり5nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは1層あたり10nm〜200nmである。
【0020】
無機層の形成方法としては、目的の薄膜を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、ゾル−ゲル法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などが適しており、具体的には特許登録第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報記載の形成方法を採用することができる。
特に、珪素の化合物を成膜する場合、誘導結合プラズマCVD、電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマを用いたPVDまたはCVDのいずれかの形成方法を採用するのが好ましく、誘導結合プラズマCVDによる形成方法を採用するのが最も好ましい。誘導結合プラズマCVDや電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマとを用いたCVD(ECR−CVD)は、例えば、化学工学会、CVDハンドブック、p.284(1991)に記載の方法にて実施することができる。また、電子サイクロトロン共鳴条件に設定したマイクロ波と磁場を印加したプラズマとを用いたPVD(ECR−PVD)は、例えば、小野他、Jpn.J.Appl.Phys.23、No.8、L534(1984)に記載の方法にて実施することができる。前記CVDを用いる場合の原料としては、珪素供給源としてシラン等のガスソースや、ヘキサメチルジシラザン等の液体ソースを用いることができる。
【0021】
(有機層)
本発明におけるガスバリアフィルムは有機層を有することが好ましい。有機層は、上記の無機物からなる無機層の脆性およびバリア性を向上させるために、これと隣接して1層以上設けられる。
【0022】
有機層は、(1)ゾルゲル法を用いて作成した無機酸化物層を利用する方法、(2)有機物を塗布または蒸着で積層下した後、紫外線または電子線で硬化させる方法等を用いて形成することができる。また、(1)および(2)は、組み合わせて使用しても良く、例えば、樹脂フィルム上に(1)の方法で薄膜を形成した後、無機酸化物層を作成し、その後(2)の方法で薄膜を形成しても良い。以下においてこれらの方法を順に説明する。
【0023】
(1)ゾルゲル法
ゾル−ゲル法は、好ましくは溶液中、または塗膜中で金属アルコキシドを加水分解、縮重合させて、緻密な薄膜を得るものである。このとき、樹脂を併用して有機−無機ハイブリッド材料にしても良い。
【0024】
ゾル−ゲル法に用いる金属アルコキシドとしては、アルコキシシランおよび/またはアルコキシシラン以外の金属アルコキシドを挙げることができる。アルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、ジルコニウムアルコキシド、チタンアルコキシド、アルミニウムアルコキシド等が好ましい。
【0025】
ゾル−ゲル反応時に併用するポリマーは、水素結合形成基を有していることが好ましい。水素結合形成基を有する樹脂の例としては、ヒドロキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、フェノール樹脂、メチロールメラミン等とその誘導体);カルボキシル基を有するポリマーとその誘導体(ポリ(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の重合性不飽和酸の単位を含む単独または共重合体と、これらのポリマーのエステル化物(酢酸ビニル等のビニルエステル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単位を含む単独または共重合体)等);エーテル結合を有するポリマー(ポリアルキレンオキサイド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、珪素樹脂等);アミド結合を有するポリマー(>N(COR)−結合(式中、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を示す)を有するポリオキサゾリンやポリアルキレンイミンのN−アシル化物);>NC(O)−結合を有するポリビニルピロリドンとその誘導体;ウレタン結合を有するポリウレタン;尿素結合を有するポリマー等を挙げることができる。
【0026】
また、ゾル−ゲル反応時にモノマーを併用し、ゾル−ゲル反応時、またはその後に重合させて有機−無機ハイブリッド材料を作成することもできる。
【0027】
ゾル−ゲル反応時には、水、および有機溶媒中で金属アルコキシドを加水分解、および縮重合させるが、この時、触媒を用いることが好ましい。加水分解の触媒としては、一般に酸(有機または無機酸)が用いられる。
酸の使用量は、金属アルコキシド(アルコキシシランおよび他の金属アルコキシドを含有する場合には、アルコキシシラン+他の金属アルコキシド)1モル当たり、0.0001〜0.05モルであり、好ましくは0.001〜0.01モルである。加水分解後、無機塩基やアミンなどの塩基性化合物を添加して溶液のpHを中性付近にし、縮重合を促進しても良い。
【0028】
また、中心金属にAl、Ti、Zrを有する金属キレート化合物、スズの化合物等の有機金属化合物、有機酸のアルカリ金属塩等の金属塩類など、他のゾル−ゲル触媒も併用することができる。
ゾルゲル触媒の組成物中の割合は、ゾル液の原料であるアルコキシシランに対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
【0029】
次に、ゾル−ゲル反応に用いられる溶媒について述べる。溶媒はゾル液中の各成分を均一に混合させ、組成物の固形分調整をすると同時に、種々の塗布方法に適用できるようにし、組成物の分散安定性および保存安定性を向上させるものである。これらの溶媒は上記目的の果たせるものであれば特に限定されない。これらの溶媒の好ましい例として、例えば水、および水と混和性の高い有機溶媒が挙げられる。
【0030】
ゾル−ゲル反応の速度を調節する目的で、多座配位可能な有機化合物を添加して、金属アルコキシドを安定化しても良い。多座配位可能な有機化合物の例としては、β−ジケトンおよび/またはβ−ケトエステル類、およびアルカノールアミンが挙げられる。
このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−tert−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。
これらの多座配位可能な化合物は、ゾル−ゲル触媒として前記の金属キレート化合物を用いた場合、その反応速度を調節する目的にも用いることができる。
【0031】
次にゾル−ゲル反応組成物を塗設する方法について述べる。ゾル液はカーテンフローコート、ディップコート、スピンコート、ロールコート等の塗布法によって、透明フィルム上に薄膜を形成することができる。この場合、加水分解のタイミングは製造工程中の如何なる時期であっても構わない。例えば、予め必要な組成の液を加水分解部分縮合して目的のゾル液を調製し、それを塗布−乾燥する方法、必要な組成の液を調製し塗布と同時に加水分解部分縮合させながら乾燥する方法、塗布−一次乾燥後、加水分解に必要な水含有液を重ねて塗布し加水分解させる方法等を好適に採用できる。また、塗布方法としては、様々な形態をとることが可能であるが、生産性を重視する場合には多段の吐出口を有するスライドギーサー上で下層塗布液と上層塗布液のそれぞれが必要な塗布量になる様に吐出流量を調整し、形成した多層流を連続的に支持体に乗せ、乾燥させる方法(同時重層法)が好適に用いられる。
【0032】
塗設後の乾燥温度は好ましくは150〜350℃、より好ましくは150〜250℃、さらに好ましくは150〜200℃である。
【0033】
塗布、乾燥後のフィルムをさらに緻密にするため、エネルギー線の照射を行っても良い。その照射線種に特に制限はないが、支持体の変形や変性に対する影響を勘案し、紫外線、電子線あるいはマイクロ波の照射を特に好ましく用いることができる。照射強度は30mJ/cm2 〜500mJ/cm2 であり、特に好ましくは50mJ/cm2 〜400mJ/cm2 である。照射温度は室温から支持体の変形温度の間を制限無く採用することが可能であり、好ましくは30℃〜150℃、特に好ましくは50℃〜130℃である。
【0034】
(2)有機物を塗布または蒸着で積層した後、紫外線または電子線で硬化させる方法
重合性化合物を架橋させて得られた高分子を主成分とする有機層を形成する方法について説明する。
【0035】
(重合性化合物)
本発明で用いる重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物、および/または、エポキシまたはオキセタンを末端または側鎖に有する化合物である。これらのうち、エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物が好ましい。エチレン性不飽和結合を末端または側鎖に有する化合物の例としては、(メタ)アクリレート系化合物(アクリレートとメタクリレートをあわせて(メタ)アクリレートと表記する)、アクリルアミド系化合物、スチレン系化合物、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリレート系化合物としては、(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が好ましい。
スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、4−ヒドロキシスチレン、4−カルボキシスチレン等が好ましい。
【0037】
以下に、(メタ)アクリレート系化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】

【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
(重合性化合物の架橋方法)
本発明では、前記重合性化合物に熱または各種のエネルギー線を照射して重合、架橋させることにより高分子を主成分とする有機層を形成する。エネルギー線の例としては紫外線、可視光線、赤外線、電子線、エックス線、ガンマ線等が挙げられる。このとき、熱で重合させる場合は熱重合開始剤を、紫外線で重合させる場合は光重合開始剤を、可視光線で重合させる場合は光重合開始剤と増感剤を用いる。以上の中では、光重合開始剤を含有する重合性化合物を紫外線で重合、架橋することが好ましい。
【0045】
(重合開始剤)
本発明の重合性組成物は、前述のように重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤を用いる場合、その含量は、重合性化合物の合計量の0.1モル%以上であることが好ましく、0.5〜2モル%であることがより好ましい。このような組成とすることにより、活性成分生成反応を経由する重合反応を適切に制御することができる。光重合開始剤の例としてはチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、サートマー(Sartomer)社から市販されているエザキュア(Ezacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZTなど)等が挙げられる。
【0046】
(有機層の形成方法)
有機層の形成方法としては、特に定めるものではないが、例えば、溶液塗布法や真空成膜法により形成することができる。溶液塗布法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。真空成膜法としては、特に制限はないが、蒸着、プラズマCVD等の成膜方法が好ましい。本発明においてはポリマーを溶液塗布しても良いし、特開2000−323273号公報、特開2004−25732号公報に開示されているような無機物を含有するハイブリッドコーティング法を用いてもよい。
【0047】
照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線である。照射エネルギーは0.5J/cm2以上が好ましく、2J/cm2以上がより好ましい。アクリレート、メタクリレートは、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。このような方法としては不活性ガス置換法(窒素置換法、アルゴン置換法など)、減圧法が挙げられる。このうち、減圧硬化法はモノマー中の溶存酸素濃度を低下させる効果を有するため、より好ましい。
窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。フラッシュ蒸着法で形成したモノマー皮膜を、減圧条件下、2J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが最も好ましい。このような方法を取ることで、重合率を高めることができ、硬度の高い有機層を得ることができる。減圧下で重合することにより重合率が向上することは、後の実施例で明らかとなる。モノマーの重合は、モノマー混合物を塗布または蒸着等により目的の場所に配置した後に行うことが好ましい。
【0048】
モノマーの重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とはモノマー混合物中の全ての重合性基(アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0049】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は10μm角の平均粗さ(Ra値)として2nm以下が好ましく、1nm以下であることがより好ましい。有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は150N/mm以上であることが好ましく、180N/mm以上であることがより好ましく、200N/mm以上であることが特に好ましい。
有機層は2層以上積層してもよい。この場合、各層が同じ組成であっても異なる組成であってもよい。また、2層以上積層する場合は、各々の有機層が上記の好ましい範囲内にあるように設計することが望ましい。また、上述したとおり、米国公開特許2004−46497号明細書に開示してあるように無機層との界面が明確で無く、組成が膜厚方向で連続的に変化する層であってもよい。
【0050】
さらに、本発明で用いるガスバリアフィルムには、上記の他、基材フィルム、有機層、無機層の間、或いは、ガスバリアフィルムと接着剤層の間、該フィルムの最外側に所望の機能層を設置することができる。このような機能層の例としては、前述の平滑化層、密着改良層、反射防止層等が挙げられる。
【0051】
本発明で用いるガスバリアフィルムの40℃・相対湿度90%における水蒸気透過率は、0.01g/m2・day以下であることが好ましく、0.001g/m2・day以下であることがより好ましく、0.0001g/m2・day以下であることが特に好ましい。
また、本発明で用いるガスバリアフィルムの厚さは、10〜500μmであることが好ましく、50〜250μmであることがより好ましい。
【0052】
これらのガスバリアフィルムは、片面もしくは両面に透明導電層、プライマー層等の機能層を有していても良い。機能層については、特開2006−289627号公報の段落番号0036〜0038に詳しく記載されている。これら以外の機能層の例としてはマット剤層、保護層、剥離層、帯電防止層、平滑化層、密着改良層、遮光層、反射防止層、ハードコート層、応力緩和層、防曇層、防汚層、被印刷層等が挙げられる。
ここで保護層および剥離層は、ガスバリアフィルムの製造、保管、運搬、素子等への組み込みの際に発生する、意図しない接着を抑止する目的や、破損を抑止する目的で設けられる。ここで、保護層は、ガスバリアフィルムの製造から最終製品の完成までのいずれかの段階において剥がされることを想定して設けられる層であり、剥離層は、最終製品にも組み込まれることを想定して設けられる層である。
保護層および剥離層の例としては、特開2005−255859号公報、特開2005−247910号公報、2007−83536号公報等に記載されている。
本発明に用いることができる帯電防止剤としてはポリアニリン、ポリピロールなどの電子伝導系のポリマー、分子鎖中にカルボキシル基やスルホン酸基を有するイオン伝道系ポリマー、導電性微粒子などがある。これらのうち導電性微粒子、特にアンチモンドープ酸化錫微粒子は導電性と透明性の観点から好ましい。帯電防止剤の添加量としては25℃、30%RH雰囲気で測定した表面抵抗率が1×105〜1×1013Ω/□になるように添加することが好ましい。表面抵抗率が1×105Ω/□未満になると帯電防止剤の添加量が増大するため積層フィルムの透明性が低下する場合があり、1×1013Ω/□を超えると帯電防止効果が不充分になり、ゴミの付着などの不都合が生じる場合がある。
【0053】
本発明のガスバリアフィルムは、素子の封止フィルムとして好ましく用いることができる。ここで、本発明のガスバリアフィルムは、接着層側が、素子に近い側となるように封止することが好ましい。また、素子の両面に設けてもよく、片面に設けても良い。本発明における素子としては、太陽電池、円偏光板、液晶表示素子、タッチパネル、有機EL素子などが挙げられる。
【0054】
本発明のガスバリアフィルムは、素子の封止フィルムとして好ましく用いることができるが、特に、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のガスバリアフィルムは、接着層側が、表示素子、または太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。また、表示素子、または太陽電池素子の両面に設けてもよく、片面に設けても良い。本発明における表示素子としては、円偏光板・液晶表示素子、タッチパネル、有機EL素子などが挙げられる。本発明に用いられる太陽電池素子としては、太陽電池素子として一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
【0055】
円偏光板
本発明におけるガスバリアフィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とが45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−865554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
【0056】
液晶表示素子
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリアフィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。このうち本発明の基板は、前記上透明電極および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型またはHAN(Hybrid Aligned Nematic)型、VA(Vertically Alignment)型、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、IPS型(In-Plane Switching)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
【0057】
タッチパネル
タッチパネルは、特開平5-127822号公報、特開2002-48913号公報等に記載されたものに応用することができる。
【0058】
有機EL素子
有機EL素子とは、有機エレクトロルミネッセンス素子のことをいう。本発明におけるガスバリアフィルムは、有機EL素子の封止フィルムとして好ましく採用することができる。有機EL素子は、有機EL基板上に陰極と陽極を有し、両電極の間に発光層を含む有機化合物層を有する。発光素子の性質上、陽極および陰極のうち少なくとも一方の電極は、透明である。
【0059】
本発明における有機化合物層の積層の態様としては、陽極側から、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層されている態様が好ましい。さらに、正孔輸送層と発光層との間、または、発光層と電子輸送層との間には、電荷ブロック層等を有していてもよい。陽極と正孔輸送層との間に、正孔注入層を有してもよく、陰極と電子輸送層との間には、電子注入層を有してもよい。また、発光層としては一層だけでもよく、また、第一発光層、第二発光層、第三発光層等に発光層を分割してもよい。さらに、各層は複数の二次層に分かれていてもよい。
【0060】
次に、有機EL素子を構成する各要素について、詳細に説明する。
基板
本発明における有機EL素子に用いられる基板は、公知の有機EL素子に用いられる基板が広く採用できる。基板は、樹脂フィルムであってもよいし、ガスバリアフィルムであってもよい。特開2004−136466号公報、特開2004−148566号公報、特開2005−246716号公報、特開2005−262529号公報等に記載のガスバリアフィルムも好ましく用いることができる。
【0061】
本発明で用いる基板の厚みは、特に規定されないが30μm〜700μmが好ましく、より好ましくは40μm〜200μm、さらに好ましくは50μm〜150μmである。さらにいずれの場合もヘイズは3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下、全光透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0062】
陽極
陽極は、通常、有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。上述のごとく、陽極は、通常透明陽極として設けられる。透明陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シーエムシー刊(1999)に詳述がある。基板として耐熱性の低いプラスチック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で成膜した透明陽極が好ましい。
【0063】
陰極
陰極は、通常、有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
【0064】
陰極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられる。具体例としては2属金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0065】
これらの中でも、陰極を構成する材料としては、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01〜10質量%のアルカリ金属または2属金属との合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。なお、陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されている。また、陰極と前記有機化合物層との間に、アルカリ金属または2属金属のフッ化物、酸化物等による誘電体層を0.1〜5nmの厚みで挿入してもよい。この誘電体層は、一種の電子注入層と見ることもできる。
【0066】
陰極の厚みは、陰極を構成する材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μm程度であり、50nm〜1μmが好ましい。
また、陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、陰極の材料を1〜10nmの厚さに薄く成膜し、さらにITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0067】
発光層
有機EL素子は、発光層を含む少なくとも一層の有機化合物層を有しており、有機発光層以外の他の有機化合物層としては、前述したごとく、正孔輸送層、電子輸送層、電荷ブロック層、正孔注入層、電子注入層等の各層が挙げられる。
【0068】
−有機発光層−
有機発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子との再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。発光層は、発光材料のみで構成されていてもよく、ホスト材料と発光材料の混合層とした構成でもよい。発光材料は蛍光発光材料でも燐光発光材料であってもよく、ドーパントは1種であっても2種以上であってもよい。ホスト材料は電荷輸送材料であることが好ましい。ホスト材料は1種であっても2種以上であってもよく、例えば、電子輸送性のホスト材料とホール輸送性のホスト材料とを混合した構成が挙げられる。さらに、発光層中に電荷輸送性を有さず、発光しない材料を含んでいてもよい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、それぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
【0069】
前記蛍光発光材料の例としては、例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、縮合芳香族化合物、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジン誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、スチリルアミン誘導体、ジケトピロロピロール誘導体、芳香族ジメチリディン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体やピロメテン誘導体の金属錯体に代表される各種金属錯体等、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン誘導体などの化合物等が挙げられる。
【0070】
前記燐光発光材料は、例えば、遷移金属原子またはランタノイド原子を含む錯体が挙げられる。
前記遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、および白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、および白金である。
前記ランタノイド原子としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、およびガドリニウムが好ましい。
【0071】
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」 Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
【0072】
また、発光層に含有されるホスト材料としては、例えば、カルバゾール骨格を有するもの、ジアリールアミン骨格を有するもの、ピリジン骨格を有するもの、ピラジン骨格を有するもの、トリアジン骨格を有するものおよびアリールシラン骨格を有するものや、後述の正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層の項で例示されている材料が挙げられる。
【0073】
−正孔注入層、正孔輸送層−
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極または陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層、正孔輸送層は、具体的には、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、有機シラン誘導体、カーボン、等を含有する層であることが好ましい。
【0074】
−電子注入層、電子輸送層−
電子注入層、電子輸送層は、陰極または陰極側から電子を受け取り陽極側に輸送する機能を有する層である。電子注入層、電子輸送層は、具体的には、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、等を含有する層であることが好ましい。
【0075】
−正孔ブロック層−
正孔ブロック層は、陽極側から発光層に輸送された正孔が、陰極側に通りぬけることを防止する機能を有する層である。本発明において、発光層と陰極側で隣接する有機化合物層として、正孔ブロック層を設けることができる。また、電子輸送層・電子注入層が正孔ブロック層の機能を兼ねていてもよい。
正孔ブロック層を構成する有機化合物の例としては、BAlq等のアルミニウム錯体、トリアゾール誘導体、BCP等のフェナントロリン誘導体、等が挙げられる。
また、陰極側から発光層に輸送された電子が陽極側に通りぬけることを防止する機能を有する層を、発光層と陽極側で隣接する位置に設けることもできる。正孔輸送層・正孔注入層がこの機能を兼ねていてもよい。
【0076】
次に、太陽電池素子について説明する。
乾燥した太陽電池用基板上に、好ましくはIb族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体(I−III−VI族半導体)の層である光電変換層を形成することで、太陽電池セルを得る。さらに、本発明のガスバリアフィルムに貼り付け、太陽電池モジュールとする。光電変換層は、銅(Cu)、銀(Ag)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、イオウ(S)、セレン(Se)およびテルル(Te)からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含有してなる半導体層であることが好ましい。また、光電変換層としては、セレン化法、セレン化流化法、3段階法などを用いたCIGS系半導体が好ましいが、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素とVb族元素とからなる半導体(III−V族半導体)、CdTe等のIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体(II−VI族半導体)やそれらを組み合わせたものでもよい。なお、本明細書における元素の族の記載は、短周期型周期表に基づくものである。
Siからなる半導体の場合、アモルファスシリコン、微結晶シリコン薄膜層、また、これらにGeを含んだ薄膜、さらに、これらの2層以上のタンデム構造が光電変換層として用いられる。成膜はプラズマCVD等を用いる。
【0077】
以下に、一例としてCIGS系の光電変換層を示す。
Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる、カルコパイライト構造の半導体薄膜であるCuInSe2(CIS系薄膜)、あるいは、これにGaを固溶したCu(In,Ga)Se2(CIGS系薄膜)を光吸収層に用いた薄膜太陽電池は、高いエネルギー変換効率を示し、光照射等による効率の劣化が少ないという利点を有している。図3(a)〜(d)は、CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的な製造方法を説明するためのデバイスの断面図である。
図3(a)に示すように、まず、基板100上にプラス側の下部電極となるMo(モリブデン)電極層200が形成される。次に、図3(b)に示すように、Mo電極層200上に、組成制御により、p-型を示す、CIGS系薄膜からなる光吸収層300が形成される。次に、図3(c)に示すように、その光吸収層300上に、CdSなどのバッファ層400を形成し、そのバッファ層400上に、不純物がドーピングされてn+型を示す、マイナス側の上部電極となるZnO(酸化亜鉛)からなる透光性電極層500を形成する。次に、図3(d)に示すように、メカニカルスクライブ装置によって、ZnOからなる透光性電極層500からMo電極層200までを、一括してスクライブ加工する。これによって、薄膜太陽電池の各セルが電気的に分離(すなわち、各セルが個別化)される。本実施態様の製造装置で好適に成膜することのできる物質を以下に示す。
【0078】
(1)常温で液相または加熱により液相となる元素、化合物または合金を含む物質
(2)カルコゲン化合物(S、Se、Teを含む化合物)
II−VI化合物:ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTeなど
I−III−VI2族化合物:CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)Se2、CuInS2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)(S、Se)2など
I−III3−VI5族化合物:CuIn3Se5、CuGa3Se5、Cu(In、Ga)3Se5など
【0079】
(3)カルコパイライト型構造の化合物および欠陥スタナイト型構造の化合物
I−III−VI2族化合物:CuInSe2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)Se2、CuInS2、CuGaSe2、Cu(In、Ga)(S、Se)2など
I−III3−VI5族化合物:CuIn3Se5、CuGa3Se5、Cu(In、Ga)3Se5など
ただし、上の記載において、(In、Ga)、(S、Se)は、それぞれ、(In1-xGax)、(S1-ySey)(ただし、x=0〜1、y=0〜1)を示す。
【0080】
(光電変換層以外の構成)
I−III−VI族化合物半導体と接合を形成するn形半導体には、例えば、CdSやZnO、ZnS、Zn(O、S、OH)などのII−VI族の化合物を用いることができる。これらの化合物は、光電変換層とキャリアの再結合のない接合界面を形成することができ、好ましい。例えば、特開2002−343987号公報を参照することができる。
基板としては、例えば、ナトリウムライムガラスなどのガラス板、ポリイミドなどのフィルム、さらに、ステンレス、チタン、アルミニウムおよび銅等の金属板等を用いることができる。特に、本発明においては、上記素子用基板は、フィルム状、または箔状が好ましい。
裏面電極としてはモリブデン、クロム、タングステンなどの金属を用いることができる。これらの金属材料は熱処理を行っても他の層と混じりにくく好ましい。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、モリブデン層を用いることが好ましい。また、裏面電極において、光吸収層CIGSと裏面電極との境界面には再結合中心が存在する。したがって、裏面電極と光吸収層との接続面積は電気伝導に必要となる以上の面積があると、発電効率が低下する。接触面積を少なくするために、例えば、電極層を絶縁材料と金属がストライプ状に並んだ構造を用いるとよい(特開平9−219530号公報参照)。
透明電極にはITO、ZnO:Ga、ZnO:Al、ZnO:B、SnO2などの公知の材料を用いることができる。これらの材料は、光透過性が高く、低抵抗であり、キャリアの移動度が高いため、電極材料として好ましい。例えば、特開平11−284211号公報を参照することができる。
層構造としては、スーパーストレート型、サブストレート型が挙げられる。I−III−VI族化合物半導体からなる半導体層(光吸収層)を含む光起電力層を用いる場合、サブストレート型構造を用いるほうが、変換効率が高く好ましい。
【0081】
(バッファ層・窓層・透明電極)
バッファ層としてはCdS、ZnS、ZnS(O、OH)、ZnMgOを使うことができる。窓層としてはZnO、ITO等の各種透明導電材料を用いることができる。例えば、CIGSのGa濃度を上げて光吸収層のバンドギャップを広くすると、伝導帯がZnOの伝導帯より大きくなり過ぎる為、バッファ層には伝導帯のエネルギーが大きいZnMgOが好ましい。CIGS/バッファ層/窓層(ZnO)のバンド構造でバッファ層の部分がスパイク状に(上に凸)になって飽和電流が下がったり、クリフ(凹状)になって開放電圧、FFが下がるのを防ぐことができ、バンドギャップが大きい場合の発電効率を向上することができる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0083】
ガスバリアフィルムの作製
基材フィルム上の一方の面に、無機層、有機層、無機層、有機層、無機層、有機層、無機層、接着層を該順に設け、実施例1〜5のガスバリアフィルムを作製した。また、比較例1、2として、接着層を設けないガスバリアフィルムを作製した。最初に、各層の形成方法・材料等を示す。
【0084】
基材フィルム
基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET、厚み100μm、東レ(株)製、ルミラーT60)、または、ポリエチレンナフタレート(PEN、厚み100μm、帝人デュポン(株)製、Q65A)を用いた。また、実施例1、4〜6においては、下記の剥離層付き基材フィルムを用い、帯電防止層および剥離層が設けられた面と反対側の面に、上記各層を設けた。
剥離層付き基材フィルムの作成
上記Q65Aの片面に、スチレン− ブタジエンコポリマーからなるラテックス(LX407C 5 、日本ゼオン(株)製)と酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物(FS−10D 、石原産業(株)製)を質量比で5:5の割合で混合した塗布液を、乾燥後の膜厚が200nm となるよう塗布して、帯電防止層を形成した。その上に付加反応型シリコーン溶液(信越化学工業製、「KS−847」、シリコーン濃度30重量%)を13重量部と、白金硬化触媒(信越化学工業社製、「PL−50T」)を0.3重量部とを、トルエン40重量部とメチルエチルケトン47重量部の混合溶媒に添加した塗布液を作成し、160℃で1分間加熱硬化を行い、500nm厚の剥離層を形成した。
【0085】
無機層の形成
リアクティブスパッタリング装置を用いて、酸化アルミニウムの無機層を形成した。具体的には、リアクティブスパッタリング装置の真空チャンバーを、油回転ポンプとターボ分子ポンプとで到達圧力5×10-4Paまで減圧した。次にプラズマガスとしてアルゴンを導入し、プラズマ電源から電力2000Wを印加した。チャンバー内に高純度の酸素ガスを導入し、成膜圧力を0.3Paになるように調整して一定時間成膜し、酸化アルミニウムの無機層を形成した。得られた酸化アルミニウム膜は、膜厚が50nmで、膜密度が3.01g/cm3であった。
【0086】
有機層の形成
有機層は、常圧下での溶剤塗布による成膜方法(有機層X)と、減圧下でフラッシュ蒸着法による成膜方法(有機層Y)の二通りを用いて行った。
【0087】
(X)常圧下での溶剤塗布による成膜
光重合性アクリレートとしてトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA:ダイセル・サイテック製)9g、および光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製、イルガキュア907)0.1gを、メチルエチルケトン190gに溶解させて塗布液とした。この塗布液を、ワイヤーバーを用いて基材フィルムに塗布し、酸素濃度0.1%以下の窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度350mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して有機層(X)を形成した。膜厚は、約500nmであった。Tgは90℃であった。
【0088】
(Y)減圧下でフラッシュ蒸着法による成膜方法
光重合性アクリレートとしてブチルエチルプロパンジオールジアクリレート(BEPGA:共栄社化学製)9.7g、および光重合開始剤(Lamberti spa製、EZACURE−TZT)0.3gを混合し蒸着液とした。この蒸着液を、真空チャンバーの内圧が3Paの条件でフラッシュ蒸着法により基材フィルムに蒸着した。続いて同じ真空度の条件で、照射量2J/cm2の紫外線を照射して有機層を形成した。膜厚は、約1200nmであった。有機層Z−1の形成には、有機無機積層成膜装置Guardian200(ヴァイテックス・システムズ社製)を用いて実施した。Tgは106℃であった。
【0089】
ガスバリアフィルムの作製
ガスバリアフィルムは、下記表1に示した層構成となるように、基材フィルムに上記の無機層と有機層、接着層、を順次形成することで作製した。また作製の方法は、次の2通りで行った。
(A)溶剤塗布による有機層形成と減圧下での無機層形成を繰り返す方法(積層A)
基材フィルム上に有機層と無機層を交互に積層した。有機層の上に無機層を積層する時は、溶剤塗布で有機層を成膜した後に真空チャンバーに入れて減圧し、真空度が10-3Pa以下の状態で一定時間保持してから無機層を成膜した。また無機層の上に有機層を積層する時は、無機層を成膜後直ちに、溶剤塗布で有機層を成膜した。実施例4は、本方法で行った。
(B)減圧下で有機層と無機層を一貫成膜する方法(積層B)
上述の有機無機積層成膜装置Guardian200を用い、有機層と無機層を積層した。この装置は、有機層および無機層とも減圧環境下で成膜を行い、且つ有機層と無機層の成膜チャンバーが連結しているので、減圧環境下で連続成膜することが可能である。そのため、バリア層が完成するまで大気に開放されることがない。比較例1、2および実施例1、2、3、5は、本方法で行った。
【0090】
また、実施例1において、有機層の光重合性アクリレートを下記化合物20gに代え、他は同様に行った(実施例6)。
【0091】
【化7】

【0092】
接着層
(A)熱硬化型接着層
上記実施例1、2、4、5で用いた熱硬化型接着層は、スリーボンド製、20X−325C、接着温度90℃である。
また、比較例1、2で、用いた接着剤も同じ物である。
(B)UV硬化型接着層
実施例3で用いたUV硬化型接着剤は、以下に示す方法により調製し、塗布して用いた。
(バインダー1の合成)
1,000mL三口フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール159gを入れ、窒素気流下、85℃まで加熱した。これに、ベンジルメタクリレート63.4g、メタクリル酸72.3g、V−601(和光純薬製)4.15gの1−メトキシ−2−プロパノール159g溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間加熱して反応させた。次いで、加熱を止め、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(30/70mol%比)の共重合体を得た。
次に、前記共重合体溶液の内、120.0gを300mL三口フラスコに移し、グリシジルメタクリレート16.6g、p−メトキシフェノール0.16gを加え、撹拌し溶解させた。溶解後、トリフェニルホスフィン3.0gを加え、100℃に加熱し、付加反応を行った。グリシジルメタクリレートが消失したことを、ガスクロマトグラフィーで確認し、加熱を止めた。1−メトキシ−2−プロパノール38gを加え、酸価112mgKOH/g、質量平均分子量15,000、固形分30質量%のバインダー1の溶液を調製した。
【0093】
(予備分散液の組成)
バインダー1の溶液・・・・・・・・・・100質量部に対して
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート・・・・・・・・13質量部
下記式I−1で表される光重合開始剤・・・・・・・・・・5.0質量部
下記式S−1で表される増感剤・・・・・・・・・・・・・0.8質量部
エポトートYD−8125(エポキシ等量170g/eq.東都化成株式会社製、ビスフェノールA系エポキシ樹脂)・・・・・・・・・8質量部
ジシアンジアミド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.5質量部
下記(イ)(ロ)(ハ)を含む顔料分散液・・・・・・80.21質量部
(イ)メガファックF−780F(大日本インキ株式会社製)の30質量%メチルエチルケトン溶液・・・・・・・・・・・1.5質量部
(ロ)メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・91質量部
(ハ)1,2,3−ベンゾトリアゾール・・・・・・・・・・・・7.5質量部
<光重合開始剤>
I−1・・・下記化合物(オキシムエステル化合物混合物)
【0094】
【化8】

【0095】
【化9】

I−1
【0096】
式S−1
【0097】
【化10】

【0098】
(分散液の調整)
上記予備分散液30.2質量部に、フィラーとして硫酸バリウム(堺化学株式会社製、B30)10.0質量部を加え、さらにジシアンジアミド0.38質量部と、酢酸ノルマルプロピル23.9質量部を添加混合した後、モーターミルM−250(アイガー社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sにて3時間分散して調製した。
【0099】
(保護フィルム)
保護フィルムとして膜厚25μmのポリエチレンフィルムを、実施例2、3の接着層の上に設けた。
【0100】
各実施例および比較例の層構成は下記のとおりである。
実施例2、3:基材フィルム/無機層/有機層/無機層/有機層/接着層/保護フィルム
実施例1、4、5、6:剥離層/帯電防止層/基材フィルム/無機層/有機層/無機層/有機層/接着層
【0101】
【表1】

【0102】
有機EL素子の作製
(1)有機EL素子基板の作成
有機EL基板としてのITO膜を有する導電性のガラス基板(表面抵抗値10Ω/□、0.6mm厚)を2−プロパノールで洗浄した後、10分間UV−オゾン処理を行った。この基板(陽極)上に真空蒸着法にて以下の有機化合物層を順次蒸着した。
(第1正孔輸送層)
銅フタロシアニン:膜厚10nm
(第2正孔輸送層)
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチルベンジジン:膜厚40nm
(発光層兼電子輸送層)
トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム:膜厚60nm
最後にフッ化リチウムを1nm、金属アルミニウムを100nm順次蒸着して陰極とし、その上に厚さ5μm窒化珪素膜を平行平板CVD法によって付け、有機EL素子を作製した。
【0103】
(2)ガスバリアフィルムの設置
封止フィルムとして、実施例1で作製したガスバリアフィルムを用い、有機EL素子を封止した。具体的には、実施例1、2、4、5は、上記有機EL素子の素子面上に、ガスバリアフィルムを、接着剤層面が有機EL素子側に接するように重ね、窒素パージグローブボックス中に設置したバキュームラミネータでラミネートし、100℃で、1時間加熱して、有機EL素子を封止した。
一方、実施例3は、ラミネートした後、UVランプを照射して、有機EL素子を封止した。
また、保護フィルムを有する実施例2、3は、予め保護フィルムを剥離除去して接着剤層面が有機EL素子側に接するように重ねた後、上記の封止を行った。各サンプルの硬化後の接着層の膜厚は20μmであった。
また、比較例1および2の場合は、上記有機EL素子の素子面上に、接着シートと、ガスバリアフィルムを重ね、同様にラミネートし、100℃で、1時間加熱して、有機EL素子を封止した。
【0104】
(3)有機EL素子の評価方法
電極に電源を接続し、有機ELの発光状態を観察して、ダークスポット(非発光部)の数をカウントした。この素子を60℃、90%環境に1000時間放置した後、同様に発光状態を観察し、ダークスポットの数が不変であれば「OK」とし、増加していれば「NG」と判定した。
結果を、下記表に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
また、実施例3において、有機EL素子の周辺部のフィラーの含量を多くし、他は同様に行って有機EL素子を製造したところ、素子を故意に曲げた場合に、より、ガスバリアフィルムがはがれにくいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明のガスバリアフィルムで封止した有機EL素子の概略図の一例を示す。
【図2】図1を側面としたときの上方向から見た図を示す。
【図3】CIGS系薄膜太陽電池のセルの一般的なデバイスの断面図
【符号の説明】
【0108】
1 有機EL素子
11 有機EL基板
12 表示部
2 ガスバリアフィルム
21 表示部の上に設けられた接着層
22 非表示部の上に設けられた接着層
100 基板
200 Mo電極層
300 光吸収層
400 バッファ層
500 透光性電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、有機領域と無機領域を含むバリア層を有し、かつ、有機領域が設けられた側の最表面(有機領域が両面に設けられている場合は、少なくとも一方の面の最外層)が接着層であるガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記バリア層が、少なくとも1層の有機層と、少なくとも1層の無機層とを有する、請求項1に記載のガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記接着層に隣接する層が、無機領域または無機層である、請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項4】
前記接着層に隣接する2層が、接着層に近い方から順に、無機領域若しくは無機層、有機領域若しくは有機層である、請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項5】
前記接着層に隣接する層が、易接着層である、請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
【請求項6】
前記接着層は、紫外線硬化型接着剤または熱硬化型接着剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項7】
前記接着層は、紫外線硬化型エポキシ樹脂である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項8】
前記有機層が、ビスフェノール骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含む組成物を硬化させてなる、請求項2〜7のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項9】
さらに、接着層が設けられていない側の最表面に剥離層を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項10】
さらに、接着層の表面に保護層を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
【請求項11】
表示素子の封止方法であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムを、その接着層側が、表示素子に近い側となるように設けることを特徴とする、封止方法。
【請求項12】
表示素子が、有機EL素子である、請求項11に記載の封止方法。
【請求項13】
前記ガスバリアフィルムは請求項10に記載のガスバリアフィルムであり、該ガスバリアフィルムを表示素子に設ける際に、保護層を剥がすことを含む、請求項11または12に記載の封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−6039(P2010−6039A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223537(P2008−223537)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】