説明

ガスバリア性を有する断熱性紙容器

【課題】
ガスバリア性を有する断熱性紙容器形成材料を提供する。
【解決手段】
容器形成材料2の胴部21を構成するブランク板1は、低融点オレフィン系樹脂からなる樹脂層12、ガスバリアフィルム層13、オーバーコート層14、含水澱粉粒を含む澱粉と接着剤との混合塗工層15、低融点オレフィン系樹脂からなる樹脂層16を、この順で紙製の基材11の外側表面に積層して構成されている。容器形成材料2の外面側が加熱、減圧吸引されて、含水澱粉と接着剤との混合塗工層15に含まれる澱粉粒中の水分の蒸発で、厚さの高い独立気泡の発泡層16aが形成される。ガスバリア層が容器内側に配置されても、含水澱粉と接着剤との混合塗工層15を外部から加熱、減圧吸引して厚さの高い独立気泡の発泡層16aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホット飲料用等のカップ、熱湯を注入することによって飲食し得る状態にする即席可食品用容器、さらには電子レンジ調理用の容器等に利用される紙容器を、紙容器全体を加熱することなく、即ち、原紙中の水分蒸発による発泡作用を用いずに、一方の面からの加熱と減圧吸引で発泡セルを形成した、ガスバリア性と断熱性を有する紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性を有する紙容器の製造方法としては、原紙を基材とし、該基材にラミネートした熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂)層を、紙中の水分を蒸発させて発泡させ、断熱性紙容器とする方法は良く知られている。すなわち紙容器の内面側に相対的に融点の高いオレフィン系樹脂層をラミネート、また紙容器の外面側に相対的に融点の低いオレフィン系樹脂層をラミネートした素材構成から成る紙容器の全体を加熱し、紙中の水分の蒸発を利用して、紙容器外面側に、オレフィン系樹脂層の発泡層を設けて断熱紙容器にする方法である。
例えば、特許文献1では、紙容器全体を加熱し、紙中の水分を蒸発させ、この水蒸気を発泡剤として、熱可塑性樹脂膜を発泡させる方法が示されている。
更に、特許文献2では、発泡面を真空吸引して、発泡セルを紙表面から剥離させ、セルの高さを高める方法も提案されているが、紙中の水分の蒸発を利用するので、容器全体をオーブン中で加熱する等、生産性とコスト、エネルギー浪費の面で解決必要な要因が多数存在していた。
また、原紙中の水分を用いないで断熱性を有する紙容器の製造方法としては、特許文献3にオレフィン系樹脂層、発泡性インキ(加熱により発泡する発泡剤、例えば、テトラアルキルシラン、クロロフルオロカーボン、ブタン等を樹脂製の中空球体の内部に充填させてなる発泡剤を含有する印刷インキ)を含有する塗布層、オレフィン系樹脂層の順で紙製の基材の上に積層してなる成形用ブランク板を用いて容器形成材料を成形し、得られた容器形成材料を加熱して発泡性インキを発泡させる方法が知られている。
さらに、特許文献4では、発泡シートと板紙とを部分的接着剤で接合した複合シートを形成し、発泡シートを加熱して、軟化した該シート側から真空吸引することによって発泡シートを成型金型に沿って成形して、高さの高い凸部を形成させている。
また、特許文献5では、板紙にシリコンオイル等の接合阻止剤をスポット状に塗布し、その上にフィルムをラミネートし、前記ラミネートフィルムの接合された面を加熱した後、ラミネートフィルムの接合阻止剤が塗布された部分を真空吸引により発泡させた構造が提案されている。この場合、接合阻止剤が板紙に粗いスポット状に塗布されるので、発泡面が均一でない傾向があった。
【0003】
しかし、紙中の水分の蒸発を利用する方法では、紙容器外面側に、ガスバリア性の高いアルミニウム箔やガスバリア性樹脂を用いた場合、紙中からの水蒸気もバリアされて、熱可塑性樹脂の発泡断熱層を紙容器外面に形成させることは出来ない。すなわち、該ガスバリア層の融点が、紙基材の外面側の熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂)はもとより、紙基材の内面側の熱可塑性樹脂(オレフィン系樹脂)の融点より高いので、紙中の水分を利用する従来の方式では、根本的に発泡断熱層が形成されない。
紙基材の内面側に、ガスバリア性の高い素材を用いることは可能だが、紙の基材外面側にガスバリア層を用いる場合に比べて、ガスバリア性が低下するのみならず、外面側の熱可塑性樹脂層や、紙基材が各種の臭気原因物質を吸着するので、食品用紙容器では、熱により臭気が発生し、紙容器から直接食事する際は、この紙容器が顔に接近するので、微かな臭気でも、消費者には異臭と判断されることもあり、好ましくない。
【0004】
熱可塑性樹脂層を、加熱後、真空吸引して、空気層を設ける方法は古くから行われ、例えば、緩衝材としてきわめて一般的に使われる、「エアキャップ」は、熱可塑性樹脂皮膜を加熱後、エアキャップのセルの形状をした凹みのあるロール表面で真空吸引して凹部を設け、しかるのちに、新たな熱可塑性樹脂層をラミネートして空気を凹部内に密封して、エアキャップとしている。該エアキャップは、断熱性も高く緩衝材、断熱材として広く使われている。しかし、厚くなり、紙容器用途では、使われていない。
【0005】
従来技術の、紙中の水分を利用する方法では、大型オーブンを用いた紙容器の加熱に広大なスペースを要し、また、加熱効率が悪く材料中の水分蒸発に時間がかかることからコストアップの要因になっていた。しかも、可燃性を有する容器形成材料の加熱時間は短く抑えることが望まれていた。本発明では、安価な、しかも防臭性と、断熱性の高い紙容器を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−110439号公報
【特許文献2】特許第3722435号公報
【特許文献3】特開平06−099967号公報
【特許文献4】特開昭61−246041号公報
【特許文献5】特開2000−177039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のような紙中の水分に依存した発泡方法ではなく、紙中の水分を発泡剤として使用せずに、熱可塑性樹脂層(オレフィン系樹脂)、および、水分保持材と接着剤の混合塗工層との複合層を発泡させて、更に、この発泡面を減圧吸引して発泡厚さを高くするとともに、ガスバリア性も付与した断熱性紙容器を提供する。
【0008】
即ち、紙容器外面側に配置されたガスバリア層の更に外面側に、発泡材の塗工層が設けられ、これを外面側から加熱と減圧吸引して、発泡させることで、断熱性の高い、ガスバリア性発泡断熱紙容器とする。
本発明では、特願平2008−112975号の発泡のように、例えば、澱粉中に含まれている水分を加熱により気化させ、この気化した水分を発泡剤としてポリエチレンフィルム等の熱可塑性樹脂層を発泡させる基礎的な方法をもちいて、更にガスバリア性の高い素材と組み合わせ、熱可塑性樹脂層、および、水分保持材と接着剤の混合塗工層との複合層からなる発泡部を減圧吸引して、厚さの高い発泡セルを設ける方法を提案するものである。
即ち、特許第3722435号の、紙製素材全体を拘束して位置決めしながら、真空吸引を行い、その発泡セルの一部を紙表面から剥離し、隣接する発泡セルと相互作用して厚さの高い発泡セルにする方法では、紙表層を破壊し、真空吸引等で強く吸引する必要があり、エネルギーロスが多い。
また、従来のように、紙基材の内面側に相対的に融点の高い熱可塑性樹脂を、外面側に相対的に融点の低い熱可塑性樹脂を配した紙容器を加熱し、紙中の水分の蒸発を利用して、紙容器外面側に、断熱層を設ける断熱カップでは、紙容器外面側にガスバリア層を配した場合、発泡層が形成されない。
【0009】
以上の問題に対して、本発明は、ガスバリア層を形成した場合でも問題なく発泡し、かつ、発泡形成に際してエネルギーロスが少ない方法による断熱性の高い紙容器を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために以下の(1)〜(6)の構成を採る。
(1)紙容器の素材層構成が、紙容器外面側から内面側に、順次、熱可塑性樹脂層、水分保持材層、熱可塑性樹脂層、紙層、熱可塑性樹脂層で構成され、水分保持材層より内側にガスバリア層を設けてなる、断熱性紙容器である。
(2)(1)項に記載の紙容器において、澱粉を主とする水分保持材と接着剤との混合塗工層が、ガスバリア層の外面側に設けられている、断熱性紙容器である。
(3)(1)〜(2)項に記載の紙容器において、接着剤のTgが80℃以下で、かつ80〜100℃の温度域での貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が1.0×10以下であり、かつ70℃以下の温度域では、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が10倍以上の高い値になる。即ち、加熱、発泡段階では、急激に粘弾性が低下して、発泡が容易となり、冷却段階では、急激に粘弾性が上昇し、発泡形態を維持する、ことを特徴とする断熱性紙容器である。
(4)(1)〜(3)項に記載の紙容器において、水分保持材の加熱で発現した発泡セル皮膜が、熱可塑性樹脂層と接着剤層の複合層で構成され、減圧吸引により、厚さ方向に延伸されて高さが高い発泡セルが形成された断熱性紙容器である。
(5)また、紙容器に成型されたのち、成型工程内の加熱用アンビルに設けられた噴出し口からの熱風加熱と、隣接して設けられた減圧吸引用アンビルにより減圧発泡処理が行われる断熱性紙容器である。
(6)そして、(1)〜(5)項の製造を可能にする、製造装置も本発明の基本技術を構成する。
【発明の効果】
【0011】
基材11の外面側にガスバリア層13、オーバーコート層14、混合塗工層15、樹脂層16を積層して形成されたブランク板1を容器形成材料2の胴部21として用い、容器形成材料2を外面側から加熱、減圧吸引する上記実施形態の製造方法によれば、高い断熱性と外部からの臭気移行を防止可能な胴部31を備えた紙容器3を、短い加熱時間と簡易な減圧吸引処理で得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の紙容器の製造に用いるブランク板の構成の概略を示す断面図である(ガスバリア層が紙容器の外面側にある)。
【図2】ブランク板を胴部に用いて構成された容器形成材料を示す図であり、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の製造方法で得られた紙容器を示す図であり、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【図4】紙容器の製造に用いるブランク板の構成の他の例を模式的に示す断面図である(ガスバリア層が紙容器の内面側にある)。
【図5】発泡層形成装置(加熱用)の構成の概略を模式的に示す図である。
【図6】発泡層形成装置(減圧吸引用)の構成の概略を模式的に示す図である。
【図7】発泡セルの概念を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、含水澱粉中の水分を蒸発させている。従って、加熱と減圧吸引して生じた発泡セル、即ち、発泡した熱可塑性樹脂層が冷えると、必然的に収縮する傾向があるが、発泡セルは熱可塑性樹脂層、および、水分保持材と接着剤の混合塗工層との複合層から構成され、しかも水分保持材と接着剤との混合塗工層の粘弾性が、所定値に設定されるので、冷えた状態で、複合層は相対的に強い皮膜となり、また同時に減圧吸引により、収縮を抑制するので、見かけ上、大きな発泡セルで残存可能である。
本発明では、特許第3722435号にある、発泡セルを金型内で真空吸引時に、発泡セルを紙表面から剥離させるための、位置決め、拘束手段を必要としない。また、減圧吸引は、含水澱粉中の水分が加熱により蒸発して発泡する度合いを増長させるためであり、隣の発泡セル同士と連結させることで、発泡高さを高めたりする必要もない。
【0014】
ガスバリア層は、紙容器の内面側に配置しても、また外面側に配置してもよいが、内面側に配置し、外面側に配置しない場合は、外面側の熱可塑性樹脂層や、紙素材層に、各種臭気物質が吸着してしまい、紙容器に熱湯を注いだ場合、吸着した該臭気物質が、遊離して強い臭気となる場合がある。即ち、ガスバリアの原理はガスの拡散防止なので、紙容器の外面側にガスバリア層を配置し、バリア層表面側のガス濃度を相対的に低くすると、バリア効果が顕著になり、紙容器内の食品への移り香も防止することが出来る。一方、バリア層に近接した外面側で、吸着臭気物質が相対的に高濃度になり、ガスバリア性能は低下する。
ガスバリア層を紙容器外面側に配置し、かつ断熱発泡層の形成が必要な場合、従来技術のように、紙容器全体を加熱して、紙素材中の水分を蒸発させて発泡する方法では、ガスバリア層が、阻害要因となり発泡しない。したがって、本発明のように、ガスバリア層の更に外面側に発泡起因となる水分保持材、即ち含水澱粉層を配置し、該層上にラミネートした熱可塑性樹脂膜を、外部からの加熱で発泡状態にすることが好ましい。
【0015】
含水澱粉と接着剤との混合塗工液は、ロッド・バーコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等で塗工される。特に各印刷方式の網点部分は、水分保持材と接着剤の混合塗工層なので、塗工層上の熱可塑性樹層が、網点部から容易に剥離して発泡セルを形成し、減圧発泡させた場合も、当該部分のみが厚い発泡高さになる。しかし、非発泡部の基底部、即ち、水分保持材と接着剤の混合塗工層の非塗布部(非網点部)では、バリア性樹脂層表面と、熱可塑性樹脂膜が、該樹脂の高温溶融押し出しラミネートにより、堅固に接着しているので発泡せず、それを基底にした単独峰のような、厚さの高い発泡セルが出来る。
【0016】
水分保持材と接着剤の混合塗工層が、発泡部の熱可塑性樹脂と一体の複合層になり、大きな発泡セルを形成する。即ち、熱可塑性樹脂が約320℃の高温で溶融押し出しされ、水分保持材と接着剤との混合塗工層上にラミネートされるので、堅固な接着が行われて一体となる。したがって、発泡時も一体となって発泡し、冷えた状態でも、これらの層が一体の複合層なので、層間が剥離して、弱い発泡皮膜となることはない。
また、前記の水分保持材と接着剤の混合塗工液に代替して、シリコーン、各種ワックス、各種極性物質等を使用して、ラミネート時に、熱可塑性樹脂と基材とを接着させず、当該部を加熱、減圧吸引して、セルの形成も可能だが、複合層もないのでセルの強度も弱く、セル厚さも低く、不十分である。
【0017】
ガスバリア素材としては、アルミニウム箔、ナイロン、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート(VM−PET)、シリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンビニルアルコール(商品名 エヴァール)、扁平マイカ配合合成樹脂、ゼラチン等がある。いずれも吸湿すると、ガスバリア性が低下する傾向がある(除く:アルミニウム箔)ので、両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂膜を配置すると、ガスバリア性の低下を抑制することができる。
【0018】
紙容器成型時には、成型機の減圧吸引用アンビルの周壁内面に吸引口を設け、紙容器外面側の発泡セルとの接触面には、セル形状類似の凹部を設ける。また、熱可塑性樹脂との剥離性を良くするため、金型内面にフッソ樹脂焼付け加工(タフラム加工)等を行っても良い。
【0019】
原紙は、米坪100〜450g/m、水分5〜8%が好ましい。紙中の水分を利用する従来の発泡方法では、9%程度の高い水分が必須だったが、紙の強度が低下する問題があった。本発明での原紙水分は、5%程度の低水分でもよく、紙の特性を維持できる水分値であればよい。
【0020】
発泡層を形成する熱可塑性樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が最も好ましいが、汎用ポリオレフィン、同変性ポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等も発泡度は異なるが、使用可能である。
【0021】
前記の澱粉には、粒径が10μm以下で、グラビア印刷方式で塗布しやすい、ファインスノウ(北越スターチ(株)製)や、金南風(きんまぜ)等の米澱粉が最適であるが、トウモロコシ、馬鈴薯、タピオカ、若しくは小麦粉の澱粉、該澱粉に20〜80%の水分量を含有させ若しくは澱粉皮膜を膨潤させた処理澱粉、部分的糊化澱粉、及び酵素で穿孔した穿孔澱粉の少なくとも何れかが用いられてもよい。また、必要に応じて、真空、ないし高圧含浸装置で、水分含量を高めても良い。
【0022】
以下、本発明の一実施形態の紙容器とその製造方法を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態での紙容器3の製造に用いるブランク板1の構成の概略を示す断面図である。図2は、ブランク板1を胴部21に用いて構成された容器形成材料2を示す図であり、(a)は側面図、(b)は横断面図である。図3は、容器形成材料2を用いて形成された発泡後の紙容器3を示す図であり、(a)は側面図、(b)は横断面図である。
【0023】
本実施形態の紙容器の製造方法は、紙容器成形用のブランク板1を形成するブランク板形成工程と、ブランク板1から容器状の容器形成材料2を形成する容器材料形成工程と、容器形成材料2を加熱して発泡層を形成する発泡層形成工程と、発泡層を減圧吸引する発泡セル延伸形成工程を含み構成されている。
ブランク板形成工程では、図1に示すように、ガスバリア性PETフィルム層13と紙製の基材11とを貼り合わせるための低融点オレフィン系樹脂(熱可塑性樹脂)層12、ガスバリア性フィルム13とオーバーコート層14、水分保持材と接着剤の混合塗工層15、低融点オレフィン系樹脂層16が、この順で紙製の基材11の表面(外面)に積層される。また、基材11の裏面(内面側)には、高融点オレフィン系樹脂からなる樹脂層10が積層される。水分保持材と接着剤の混合塗工層15は、1〜3g(Dry)/mの塗布量となるように、印刷やコーティング等の手法を用いて形成される。また、樹脂層12は15〜20μm程度、樹脂層16は20〜70μm程度の厚さとなるように、それぞれ溶融樹脂の押出しコーティングやオレフィン系樹脂フィルムの貼着等の手法を用いて形成される。
また、水分保持材の澱粉には、積層前に水分を多量に含有させるので、小さな粒径のものを用いるのが好ましい。特に米澱粉は、粒径が10μm以下に揃っており、しかも、水分含有に伴う粒径の膨張量が少なく、グラビア印刷方式で塗布する場合、グラビア印刷用シリンダー(版)のセルに容易に収納でき、またドクターで余剰塗布液を掻き落とす際にも破壊されず好ましい。
【0024】
混合塗工層15を構成する接着剤としては、加熱・発泡処理時に樹脂層16中の低融点オレフィン系樹脂よりも早く熱可塑性を発現する材質で、しかも、ガスバリア性フィルムの蒸着層上に形成されているオーバーコート層14に対して、接着力が相対的に弱い材質のものを用いるのが好ましい。特に、接着剤のガラス転移点(Tg)が80℃以下で、かつ80〜100℃の温度域の貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が1.0×10以下、損失正接が1.0以上で、70℃以下の温度域の貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が1.0×10以上、損失正接が0.8以下で、前記両温度域での、両弾性率が10倍以上差異があることが好ましい。また、接着剤の量は、NV値(不揮発成分量)が40質量%、又は、澱粉質量100部に対する質量400部(PHH)とすることが好ましい。このようにして澱粉との混合塗工層15を構成することにより、澱粉粒から発生する水蒸気の膨張力で、低融点オレフィン系樹脂層16をガスバリア性フィルムのオーバーコート層14から容易に剥離して、風船状に膨張させることができる。例えば、接着剤として、ガラス転移点(Tg)75℃,酸価約50(mgKOH/g)、樹脂固形分48%、エマルジョン粒子径約0.1μm、pH約8.5のものを用いることができる。
【0025】
また、加熱・発泡処理時に、接着剤は樹脂層16の内面部と一体となって複合層を形成し、同調して膨張・発泡するが、発泡終了後の冷却段階では、発泡セルの収縮を抑制させる機能も持たせる。そのため、冷却段階では、急激に貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が上昇して、固化する。勿論、前述したように、加熱時には、Tgを超えた温度域で、貯蔵弾性率、損失弾性率は急激に低下し、柔らかくなって、低融点オレフィン系樹脂層16の発泡を阻害しない。このように接着剤のTgは狭い温度域に設定され、所定の樹脂物性を有する。
【0026】
レオラボ社の2重プレート式レオメーターで測定した接着剤のTgは75℃、また温度域80〜100℃の貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が1.0×10以下、損失正接が1.0以上である。これは、加熱時に急激に粘弾性が低下、発泡を促進(阻害しない)することを示す。また、温度域75℃以下では貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が急激に上昇し、両弾性率は1.0×10以上、損失正接は0.5以下である。これは、冷却時に急激に粘弾性が上昇することを示し、特に貯蔵弾性率が急激に高くなり、発泡セル皮膜の固化が急激に進み、冷却時に発泡部の収縮傾向を抑制する効果がある。
【0027】
樹脂層16に含まれる低融点オレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることができるが、ワックスを添加することにより、ワックスの滑剤効果で樹脂分子間の摩擦力を減少させ、澱粉粒からの水蒸気で樹脂を風船状に容易に膨張させられる。ワックスとしては、例えば、メタロセン触媒を用いて製造された機能性ポリエチレンワックスを用いることができる。また、樹脂層16は、熱吸収量が少ないこと、また、融点が水の沸点の100℃よりもやや高いことが、澱粉層15に含まれる澱粉粒中の水をより早く沸騰させられることから好ましい。
【0028】
容器材料形成工程では、図2に示すように、容器形成材料2の胴部21を構成する周壁部材がブランク板1から切り出され、表面を紙容器の外面側,裏面を内面側にして筒状に丸めた周壁部材からなる胴部21の底端部に、別途形成された底板部22を挿入し、胴部21の底端部を底板部22側にカールさせて重ねあわせ、当該部をローレット等で圧着固定することにより、実質的にヒートシールされて、容器形成材料2が形成される。
【0029】
発泡層形成工程では、容器形成材料2の加熱処理、減圧吸引、次いで冷却処理が行われる。加熱処理では、容器形成材料2が外面側から加熱され、水分保持材と接着剤の混合塗工層15に含まれる澱粉粒中の水分で樹脂層16に独立気泡が形成され、ついで減圧吸引で当該発泡部が延伸され高さの高い独立気泡となる。加熱処理では、独立気泡が破れない程度に加熱、減圧吸引することで、独立気泡中に水蒸気を残留させる。次いで行われる冷却工程では、混合塗工層15中の接着剤が、発泡セルを収縮させぬように機能して、高さの高い独立気泡を維持する。図7に発泡セルの断面の概念を模式的に示す。
【0030】
図3に示すように、上述した製造方法で得られた紙容器3の胴部31は、水分保持材と接着剤の混合塗工層15の発泡作用で樹脂層16が風船状に膨らみ、発泡層16aを形成している。ガスバリア層13が構成中に組み込まれた場合、紙容器3全体の温度が上昇しても、紙素材11中の蒸発水分は、発泡形成には関与せず、ガスバリア層の発泡抑制作用が認められる。
【0031】
上述した製造方法で得られた紙容器3によれば、容器形成材料2を外面側から加熱することで、胴部21の基材11の外面側にある水分保持材と接着剤の混合塗工層15中の水分を効率的に加熱して蒸発させ、樹脂層16を発泡させて、その後に減圧吸引して、断熱層16aを形成することができる。このため、容器形成材料2の加熱に必要な熱量を、断熱層16aの形成に必要なだけに抑えて、加熱効率を高めることができ、この結果、紙容器3の製造コストを低減することができる。
【0032】
グラビア印刷で含水澱粉を含む水分保持材と接着剤の混合塗工層15を網点状態で塗布すると、非網点部では樹脂層16とオーバーコート層14とが樹脂層16の溶融押し出し時に熱融着され、網点部を両層14と16で密封することになり、混合塗工層15から吹き出す水蒸気の逃げ場をなくし、樹脂層16をオーバーコート層14から剥離させ、網点部を容易に発泡させることができる。即ち、ガスバリア層13と、オーバーコート層14との一体層と樹脂層16で密封することで、混合塗工層15から吹き出す水蒸気の逃げ場をなくし発泡させる。しかも、安価な澱粉を発泡材として用いることで、紙容器3の製造コストを低く抑えることができる。また、澱粉には臭気の問題がなく、食品に混在しても人体に害もなくて、安全性が高い。更に接着剤も、FDA規格、IARC 3ランクに適合させたので、食品衛生性が高く、安全、安心な食品用紙容器3を提供できる。また、可燃ゴミとしても廃棄でき、環境汚染もない。
【0033】
ガスバリア層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが主として用いられ、アルミニウム、SiOx(酸化珪素−−−ガラスの成分と同じ、x=1〜2)あるいはAl(酸化アルミ−−−アルミナ)等を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。これらの蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムは防湿性、ガス遮断性、香気保存性などに優れ、ダイオキシンや環境ホルモンの問題もなく、更に、焼却しても有害ガスが発生せず、残渣も少ないので環境保護的観点からも優れている。特に、アルミニウムをフィルム表面に蒸着させたVM―PETは、酸素遮断性、防湿性などのバリア性能に優れ、アルミニウム箔に次ぐバリア性の高い素材として、多くの実績がある。当然だが、SiOx蒸着(セラミック蒸着、シリカ蒸着)あるいはAl(酸化アルミニウム)を蒸着したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いてもよいが、クラックでひび割れを生じ、機能が低下するので加工時は注意が必要である。
これらバリア性素材はいずれも保香性に優れ、家庭内で衣服の保存等に防虫剤として使われるパラジクロロベンゼン等の臭気や、混載輸送時の混載物の臭気から、食品への移り香を防ぐことが出来る。さらに、電子レンジが使用でき、包装後でも金属探知器が使用できる
発泡層となる低融点オレフィン系樹脂16と蒸着膜の接着性改善のためオーバーコート層14の接着剤成分の選択が必要である。オーバーコートニスとしては、ポリエステル樹脂系、アクリル樹脂系、変性ポリオレフィン樹脂系等が使用可能で、混合塗工層15の澱粉を除いた接着剤成分のみを塗工してもよい。オーバーコート層がない場合は、蒸着粒子面に低融点オレフィン系樹脂16が高温で直接押し出しラミネートされるので、接着力が安定せず、ガスバリア性も不安定になり、好ましくない。
【0034】
なお、発泡層形成用の水分保持材層は、発泡層を構成する樹脂層に積層されて、ガスバリア層の外面側に備えられているのであれば、ブランク板の厚さ方向のどこに形成されていてもよく、例えば、図1に示す例では、基材11の外面、あるいはガスバリア層13、オーバーコート層14の外面の何れかに備えられていればよい。
【0035】
また、発泡層形成用の水分保持材層は、容器形成材料2の胴部21を構成する周壁部材の全面に形成されている必要はなく、例えば、紙容器3を把持する際の掌が接当する部分等に部分的に形成されていてもよい。また、容器形成材料2の底板部22もブランク板1から切り出して形成してもよい。また、水分保持層は、高分子吸収剤、グリセリン、ゼオライト、微細セルロースを含ませることで構成してもよく、これらと澱粉を、1又は複数組み合わせたものを用いることもできる。また、水分保持層は、澱粉等の水分保持体に水分を含有させるのでなく、樹脂層12や樹脂層13、14等の樹脂層の表面に凹部を設けることにより構成してもよい。
【0036】
また、ブランク板1から周壁部材を形成する際には、周壁部材の切断面からの水蒸気の拡散を防ぐために、胴部21の開口端部及び底端部に相当する部分は2重巻き等の複数回巻した構造とし、周方向の端部の合わせ目に相当する部分は外面側をスカイブ処理、内面側をスカイブ処理又はテープ貼りしてもよい。
【0037】
次に、発泡層形成工程で用いられる加熱用アンビルについて図面を用いて説明する。
図5、図6は、発泡層形成装置の構成の概略を模式的に示す図である。図5に示す発泡層形成装置5は、容器形成材料2を外面側から覆って収容するアンビル51と、容器形成材料2の内面側に挿入されて支持するマンドレル52とを備えて構成されている。アンビル51は、容器形成材料2よりもやや大きな容器状を呈しており、容器形成材料2の胴部21の外面と向かい合う周壁51a、及び、底板部22の底面と向かい合う底壁51bに、それぞれ空気吹出口51cを備えている。
【0038】
減圧吸引用のアンビル6について図面を用いて説明する。
図6は発泡層減圧吸引形成装置の概略を模式的に示す図である。容器形成材料2を外面側から覆って収容するアンビル61と、容器形成材料2の内面側に挿入されて支持するマンドレル62とを備えて構成されている。アンビル61は、容器形成材料2よりもやや大きな容器状を呈しており、容器形成材料2の胴部21の外面と向かい合う周壁(金型状)61aに、空気減圧吸引口61c備えている。周壁内面(金型状)61aは、種々な形状が可能である。直径1〜6mm、深さ1〜6mmの円形の凹部が1〜6mm間隔で連続して形成されてもよく、形状、深さ、間隔については、必要な断熱性レベルに応じて、各々組み合わせた凹部、即ち、発泡セル形状にすることが出来る。
【0039】
図6に示す例では、アンビル61の周壁内面(金型状)61aには、底端部から開口端部にかけてアンビル61の軸心方向に沿って配列された5つの減圧吸引口61cが、周方向に沿って等間隔で複数列に並んでいる。空気吸引口61cは、アンビル61に収容した容器形成材料2の外面の空気を吸引するためのもので、61cの内方から吸引され、容器形成材料2の外面は、前記、アンビル周壁内面の金型表面形状になる。また冷却処理時には図示しない吹き出し装置で冷風を吹き出す。アンビル61及びマンドレル62は、互いに一体となって、周方向に自転しながら、上下動する。
また、減圧吸引口61cの形状は任意であり、図6に示すように円形の開口形状を有していても、また、スリット状を呈していてもよい。
【0040】
また、減圧吸引処理が済むなどして容器形成材料2をアンビル61から取り外す際には、減圧吸引口61cから空気を噴出させて脱落させても、アンビル61から容器形成材料2を離間させて脱落又は把持し易くしてもよい。また、マンドレル62から容器形成材料2を取り外す際には、空気吹出口(不図示)から空気を噴出させて脱落させても、マンドレル62から容器形成材料2を離間させて脱落又は把持し易くしてもよい。
【0041】
また、容器形成材料2の内面側にマンドレル62を挿入して容器形成材料2を支持し、62cから空気を噴出し、実質的に紙容器内に空気を圧入して、容器形成材料2を膨張させ、紙容器の発泡面をアンビル61の周壁内面(金型状)61aに押しつけて、アンビル側からの減圧吸引を効果的に行い、発泡セルの厚さ方向への延伸を容易に出来る。
【0042】
アンビル61の周壁内面(金型状)61aの形状は、発泡セルの厚さ方向への延伸の高さにより種々選択できる。例えば、直径2mm、高さ1mmの発泡セルが求められれば、延伸後の冷却によるセル内の蒸気の体積減少や、樹脂自体の結晶化等による収縮を考慮して、やや大きめのセルサイズの金型とする。実際には、冷却スピード(紙容器生産速度に関連)に依存して、結晶化度も異なるので、実験的に確認しながら、金型の設計をする必要がある。
【0043】
ガスバリア性フィルム層は、紙容器内側に用いられてもよい。この場合、紙容器外側の含水澱粉を含む接着剤との混合塗工層15上にラミネートした樹脂層16が、本発明による減圧吸引で、厚さの高い発泡層が形成されて、図3の容器が得られる。
【0044】
以下、本発明の紙容器の製造方法の具体的な構成を実施例に基づいて説明する。
[実験1]
実施例1〜4及び比較例1〜2の各紙容器3の、以下の諸データを表1に記載する。
(1)臭気;
※評価基準:5段階評価(試験人数は5人)
(◎)異臭無し(○)微かな異臭気(△)異臭有り(▲)やや強い異臭(×)強い異臭
1)食品への移り香:
紙容器内に、即席麺等の食品を所定量いれて、蓋材にて密封シールしてのち、デシケーター中に48時間保存した。同デシケーター中には、パラジクロロベンゼン、トリクロロアニソール等の強い臭気発生物質を並存させ、即席麺等の食品への移り香有無を評価した。
2)紙容器の臭気:98℃の熱水を350ml注入、経時後の紙容器の臭気有無を評価した。
(2)保持時間(断熱性);(試験人数は3人)
厚さ5mmの発泡ポリスチレン製の断熱シートの上に載置した後、紙容器3の内部に98℃の熱水を350ml注入、熱くて手にもてなくなるまでの時間を測定した。
(3)発泡セルの高さ;加熱前のフランク板との厚さ(高さ)の差異を実測した。
【実施例】
【0045】
<実施例1>
予め、アルミニウム蒸着ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(VM−PET)フィルム(王子特殊紙(株)製、厚さ:12μm、蒸着面に、蒸着金属とPETフィルムとの密着力を高める効果もある水系ポリエステル樹脂をオーバーコートしたフィルム)と、坪量300g/mの原紙からなる基材11の表面(外面側)とを、LLDPE(日本ポリエチレン社製「XM117」、メタロセン触媒品、厚さ20μm)を用い、押出しコーティング法でサンドイッチラミネート(樹脂層12)して、ガスバリア層を形成した。
【0046】
次いで、水分保持材の米澱粉(北越スターチ(株)製「ファィンスノウ」)に、接着剤としてアクリル樹脂系エマルジョン(澱粉に対して樹脂固形分50質量%、樹脂Tg:75℃)を添加した混合塗工層15を、グラビア印刷(シリンダーのセル深度60μm、レーザー彫刻)でパターン状にオーバーコート層14上に塗布(塗布量5g(Dry)/m)した。なお、米澱粉には、事前に水浸漬処理を常温で2時間又は50℃で30分間施し、処理前の粒径6μm、含水率13%を、処理後の粒径7μm、含水率51%に変化させている。次いで、厚さ60μmのLLDPE:XM117を押出しコーティング法でラミネートし、樹脂層16を形成した。
【0047】
更に、厚さ40μmのHDPE(日本ポリエチレン社製、高密度ポリエチレン)を溶融樹脂の押出しコーティング法で基材11の裏面(内面側)に積層し、樹脂層10を形成した。更に、ボブストチャンプレン社(スイス国)のレマニック115型の8色グラビア印刷機を用いて、樹脂層16表面に所定の文字、絵柄等を印刷、ブランク板1を打ち抜いて、周壁部材を胴部21とした。
【0048】
また、紙容器底部22を作成するため、坪量300g/mのコーティング原紙からなる基材の裏(容器内面側)に、厚さ20μmのHDPEを押出しコーティング法でラミネートし、表(容器外面側)に、VM―PETフィルム(王子特殊紙(株)製、厚さ:12μm)をLLDPE(XM117、厚さ:20μm)を用いて、押出しコーティング法でサンドイッチラミネート後、更に、該VM―PETフィルム上に、LLDPE(XM117、厚さ:20μm)をラミネートした。これを所定のサイズの円形状に打ち抜いて、ガスバリア性底板部22として容器形成材料2を得た。胴部と、底部はバリア性の構成になったので、更に紙容器性能を試験評価するために、ガスバリア性蓋材を準備した。即ち、紙(100g/m)の外面側(紙容器)にアルミニウム箔(厚さ:20μm)と紙(100g/m)をLLDPE(厚さ:20μm)でサンドイッチラミネートした。更に紙の内面側(紙容器)にLLDPE(厚さ:20μm)をラミネートし、この素材を所定サイズの円形状に打ち抜き、試験評価用の蓋材とした。アルミニウム箔を構成中(外面側)に含むので、高いガスバリア性がある。
【0049】
次いで、図5のカップ成型機内に設けた加熱装置で、混合塗工層15の澱粉粒中の水分を蒸発させ、樹脂層16が風船状に膨張した断熱発泡層16aを形成、更に、アンビル内面に減圧吸引口を取り付けた成型機、即ち、図6の減圧吸引(発泡セルを厚さ方向に延伸して高くする)装置で、該発泡層を厚さ方向に延伸、発泡層を形成させてのち直ちに冷却し、紙容器3(紙容器3口部の直径:92mm、高さ:105mm:容量470ml)を得た。発泡層の厚さ方向の高さは0.8〜0.9mmであった。また、紙容器内に、即席麺等の食品を所定量いれて、蓋材にて密封ヒートシールしてのち、デシケーター中に48時間保存した。同デシケーター中には、パラジクロロベンゼン、トリクロロアニソール等の強い臭気発生物質を並存させ、即席麺等の食品への移り香有無と紙容器自体の加温時の異臭有無を評価した。また、95℃の熱湯を350ml注入し、熱くて手にもてなくなるまでの時間(断熱性)を測定した。
【0050】
<実施例2>
図4に示すように、紙容器の内面側にバリア性樹脂を配置した。即ち、坪量300g/mの原紙からなる基材の裏(紙容器内面側)に、VM―PETフィルム48(厚さ:12μm)とLLDPE47(XM117、厚さ:20μm)を用いて、押出しコーティング法でサンドイッチラミネート後、更に、該VM―PETフィルム上に、LLDPE49(XM117、厚さ:20μm)をラミネートした。紙容器外面側には含水澱粉を含む接着剤との混合塗工層45を熱可塑性樹脂42上に塗布、さらに、LLDPE46(XM117、厚さ:40μm)を押出しコーティング法でラミネートする。これを実施例1と同様に加熱、減圧吸引して、容器材料3を得た。発泡層を厚さ方向の高さは0.8〜0.9mmであった。また、紙容器内に、即席麺等の食品を所定量いれて、実施例(1)と同様に異臭有無と、熱湯を注入後、熱くて手にもてなくなるまでの時間を測定した。
【0051】
<実施例3>
実施例1において、減圧吸引処理を実施しない他は、同様に紙容器3を作成し、諸性能を評価した。
【0052】
<実施例4>
実施例2において、減圧吸引処理を実施しない他は、同様に紙容器3を作成し、諸性能を評価した。
【0053】
<比較例1>
実施例1において、紙容器構成中にガスバリア層を設けず(ガスバリア層を紙容器内面側および外面側に配置せず)、かつ、減圧吸引処理を実施せずに、加熱・発泡処理のみで、容器材料3を得た。即ち、紙容器外面側に含水澱粉を含む接着剤との混合塗工層15を熱可塑性樹脂12上に塗布、さらに、LLDPE・XM117を押出しコーティング法でラミネートする。これを加熱・発泡させ、減圧吸引処理を実施せずに、容器材料3を作成した。
【0054】
<比較例2>
厚さ1.5mmの発泡ポリスチレン樹脂紙容器3(容量470ml)を、比較のための紙容器3として準備した。
【0055】
このように、基材11の外面側にガスバリア層13、オーバーコート層14、混合塗工層15、樹脂層16を積層して形成されたブランク板1を容器形成材料2の胴部21として用い、容器形成材料2を外面側から加熱、減圧吸引する上記実施形態の製造方法によれば、高い断熱性と外部からの臭気移行を防止可能な胴部31を備えた紙容器3を、短い加熱時間と簡易な減圧吸引処理で得られることが明らかになった。
【0056】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の紙容器は、容器形成材料2の加熱効率を高めて製造コストを低減でき、また、優れた断熱性を有することから、例えば、自動販売機等のホット飲料充填用のカップ、熱湯を注入して内填物を飲食する所謂即席可食品用容器、さらには電子レンジでの調理用の容器等として利用され、使い捨て用等に適した安価な断熱性紙容器として高度の利用価値を有する。
【符号の説明】
【0058】
1:ブランク板
10:熱可塑性樹脂HDPE
11:基材(紙)
12:熱可塑性樹脂LLDPE
13:ガスバリア層(アルミニウム蒸着PETフィルム層)
14:オーバーコート樹脂層
15:水分保持材(含水澱粉)を含む接着剤との混合塗工層
16:熱可塑性樹脂LLDPE
2:容器形成材料
21:胴部
22:底板部
3:紙容器
31:胴部
32:底板部
4:ブランク板
41:基材(紙)
42:熱可塑性樹脂LLDPE
45:水分保持材(含水澱粉)を含む接着剤との混合塗工層
46:熱可塑性樹脂LLDPE
47:熱可塑性樹脂層LLDPE
48:ガスバリア層(アルミニウム蒸着PETフィルム層)
49:熱可塑性樹脂LLDPE
5:加熱・発泡層形成装置
51:加熱用アンビル
51a:周壁
51b:底壁
51c:熱風吹出口
6;減圧吸引・発泡層形成装置
61:減圧吸引用アンビル
61a:周壁内面(減圧吸引用金型)
61b:底壁
61c:減圧吸引口
7:発泡セルの概念図(断面図)
70:熱可塑性樹脂HDPE
71:基材(紙)
72:熱可塑性樹脂LLDPE
73:ガスバリア層(アルミニウム蒸着PETフィルム層)
74:オーバーコート層
75:水分保持材(含水澱粉)を含む接着剤との混合塗工層
76:熱可塑性樹脂LLDPE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙容器の素材層構成において、紙容器外面側から内面側に、順次、熱可塑性樹脂層、澱粉を主とする水分保持材層、熱可塑性樹脂層、紙層、熱可塑性樹脂層で構成され、更に澱粉を主とする水分保持材層より内側にガスバリア層を設けてなることを特徴とする断熱性紙容器。
【請求項2】
請求項1に記載の澱粉を主とする水分保持層が接着剤との混合塗工層からなり、ガスバリア層の外面側に設けられていることを特徴とする断熱性紙容器。
【請求項3】
接着剤のTgが80℃以下で、かつ、80〜100℃の温度域での貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が1.0×10以下であり、更に70℃以下の温度域では、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)が、10倍以上の高い値であることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱性紙容器。
【請求項4】
水分保持材の蒸気で発現した発泡セルが、熱可塑性樹脂層と接着剤層で構成され、減圧吸引により、厚さ方向に延伸されて高さが高い発泡セルが形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の断熱性紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−173708(P2010−173708A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19494(P2009−19494)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【出願人】(500104059)王子パッケージング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】