説明

ガスバリア性ポリアミドフィルムおよびその製造方法

【課題】蒸着金属層との優れた接着性を有し、それにより蒸着後のガスバリア性,とりわけ水蒸気バリア性に優れ,かつ、ボイル、レトルトなどの高温熱水処理を施した後も、基材フィルムとの優れた接着性,ガスバリア性を有する易接着性ポリエステルフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアミド系フイルムからなる基材上に(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を含むアミノ樹脂からなり、(A)/(B)の重量比が60/40〜5/95の範囲である被覆層、無機薄膜層を順次積層してなるガスバリア性フイルムにおいて、通常時のバリア性(a)が30ml/m2・24hr・MPa以下であり、(a)とボイル処理後のバリア性(b)が下記の式(1)の関係にあることを特徴とするガスバリア性ポリアミドフイルム。
式(1) [(b)−(a)]/(a)≦2.0

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易接着性プラスチックフィルムおよびその製造方法に関する。更に詳しくは蒸着金属層と優れた接着性を有し、蒸着後のガスバリア性に優れ,ボイル後もバリア性の劣化が少ない包装材料、工業材料に提供されるガスバリア性積層フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドフィルムは、機械的性質、耐熱性および透明性に優れており、工業用途や食品包装用フィルムとしても広く使用されている。しかし、ポリアミドフィルム単独では、食品包材にとって極めて重要な性能の一つである、酸素および水蒸気遮断性などのいわゆるガスバリア性に欠ける。したがって、フィルム表面にアルミニウムをはじめとする金属ないしは金属酸化物などの蒸着、いわゆるガスバリア層を形成することによりガスバリア性を改善し、食品保存性をさらに高めている。
【0003】
ポリアミドフィルムは優れた特性を有するが、その表面が高度に配向結晶化し表面の凝集性が高く、一般に接着性は低い。そのため、コロナ放電処理やプラズマ処理などの物理的処理方法や、酸、アルカリなどの化学薬品を使用してフィルム表面を活性化させる化学的処理方法により表面改質を図り、各種蒸着層の接着性を高める試みがなされている。しかし、このような物理的方法では、工程は簡便であるが得られる接着性は不十分であり、化学的方法では、工程は複雑となり作業環境悪化などの問題がある。
【0004】
上記の物理的、化学的処理方法とは別に、基材フィルムに接着活性を有する下塗り剤を塗布して、易接着層を積層する方法があるが、この方法は易接着層の上にコートされる各種の蒸着層に応じて易接着成分を選択できることなどから広く利用されている。
【0005】
易接着層の構成成分としては、作業性、安全性およびコスト面から水性樹脂が汎用されているが、蒸着金属との接着性向上にはとりわけポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂などが好適に使用される。
【0006】
また、前記の水性樹脂に各種の硬化剤を配合し、易接着層としての性能、特に耐水性、耐熱性を向上させることが実施されている。この目的で使用される硬化剤としては、たとえばイソシアネート化合物やメラミン化合物およびエポキシ化合物などが挙げられる。例えば、特公昭56−151562号公報、特公昭61−10311号公報には、イソシアネート化合物を使用して易接着性フィルムを得る方法が記載されている。また特開平8−332706号公報には、一分子当たりカルボジイミド基一つを含有するカルボジイミド単量体を使用して、易接着性積層フィルムを得る方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、これら既存の技術を用いた易接着層は、特にボイルなどの高温熱水処理を施した場合には、基材フィルムとトップコート層間の層間接着性が低下し、食品包材としての実用性能に問題が生じることがあった。すなわち、水性易接着コート剤として用いられる各種硬化剤、架橋剤は、添加量が少なく,十分な層間接着性が得られておらず、昨今の食品包材に対する厳しい品質水準に鑑みて、その要求に応えられないことがしばしばある。
【0008】
易接着層としてポリウレタンやポリエステル系樹脂等の水性樹脂に実質的に水不溶性のアミノ樹脂を添加することにより、耐熱性ならびに耐水性に優れた易接着性プラスチックフィルムが得られるが、アミノ樹脂が水不溶性であるため、安定した樹脂水溶液もしくは水分散液を調製することが困難であり,また得られたフィルムの表面ヘイズも高くなるという問題を有していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決し、蒸着金属層との優れた接着性を有し、それにより蒸着後のガスバリア性に優れ,かつボイル処理などの高温熱水処理を施した後も、基材フィルムとの優れた接着性,ガスバリア性を有するフイルムおよびその製造方法を提供しようというものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、ポリアミド系フイルムからなる基材上に(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を含むアミノ樹脂からなり、(A)/(B)の重量比が60/40〜5/95の範囲である被覆層、無機薄膜層を順次積層してなるガスバリア性フイルムにおいて、通常時のバリア性(a)が30ml/m2・24hr・MPa以下であり、(a)とボイル処理後のバリア性(b)が下記の式(1)の関係にあることを特徴とするガスバリア性ポリアミドフイルムである。

式(1)・・・[(b)−(a)]/(a)≦2.0
【0011】
この場合において、水溶性もしくは水分散性樹脂がポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂,アクリル樹脂の少なくとも1種であることが好適である。
【0012】
また、この場合において、水溶液または水分散液を二軸配向結晶化終了前の基材フィルムに塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理することが前記ポリアミドフィルムの製造方法として好適である。
【0013】
本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、基材フィルムの少なくとも片面に、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を含むアミノ樹脂からなる易接着層を含む。前記易接着層は、基材フィルムとの密着性に優れており,かつ,蒸着層を積層する場合の衝撃に十分耐える強度を有しており,蒸着層との密着性にも優れることにより、蒸着層が基材フィルムより剥がれたり,あるいは蒸着層が割れたりすることが抑制される為,優れたガスバリア性を発現することができる。この場合,自己縮合性がある(B)トリアジン環を含むアミノ樹脂成分を(A)水溶性もしくは水分散性樹脂成分と同量あるいはそれ以上の量を配合することにより,(A)水溶性もしくは水分散性樹脂成分,あるいは(B)アミノ樹脂成分に親水性があっても,ボイル処理に耐久性があるという特徴を有する.
【0014】
加えて,このような易接着層を有する本発明のポリアミドフィルムは、(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂を,(A)水溶性もしくは水分散性樹脂成分と同量あるいはそれ以上の量を配合することにより,蒸着後のガスバリア性,とくに酸素バリア性に優れるという特長を有し、特にガスバリア包装用途に好適なポリアミドフィルムである。
【0015】
蒸着フィルムのガスバリア性において,蒸着層と基材フィルム間の密着性がポイントとなり,蒸着層の密着性が弱いと熱水処理時にポリアミド系樹脂基材の吸水による寸法変化が大きくなり、その寸法変化にガスバリア層である無機酸化物層が追従できず、欠陥が発生してしまう。この欠陥部分から酸素ガスが透過してしまい、ガスバリア性が低下する。トリアジン環を有するアミノ樹脂成分の添加は,この密着性向上に寄与している。
【0016】
また,上記易接着層を設けることにより,加熱時の基材フィルムからのオリゴマー析出/凝集も抑制されている.このことにより,蒸着時の異物による欠陥が抑制されており,よりハイレベルなガスバリアフィルムを形成することができる
【0017】
加えて,このような易接着層を有する本発明のポリアミドフィルムは、(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂を,(A)水溶性もしくは水分散性樹脂成分と同量あるいはそれ以上の量を配合することにより,蒸着後のガスバリア性に優れるという特長を有し、ガスバリア包装用途に好適なポリフィルムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蒸着金属層に対し、熱水処理後もガスバリア性の劣化が小さいガスバリア性フィルム、積層体を提供することができる。そして、本発明の易接着性ポリアミドフィルムは、食品包装用フィルムとして多様な用途において極めて有用であり、本フィルムを使用することにより、蒸着、ラミネートなどの加工工程において作業性が改善されるという利点も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明で基材として用いられるポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。
【0021】
さらに上記の有機高分子には、公知の添加物,例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、などを添加されてもよく、フィルムとしての透明度は特に限定するものではないが、透明性を有する包装材料積層体として使用する場合には、50%以上の透過率をもつものが望ましい。
また、本発明におけるポリアミドフィルムは、本発明の目的を損なわないかぎりにおいて、薄膜層を積層するに先行して、コロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理等の表面処理を施しても良く、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾が施されても良い。
【0022】
本発明におけるポリアミドフィルムは、その厚さとして3〜500μmの範囲が望ましく、さらに好ましくは、6〜300μmの範囲である。
【0023】
本発明における易接着層の構成に適用される水溶性もしくは水分散性樹脂としては、ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアルコール樹脂,アクリル樹脂があげられる.中でも,ウレタン樹脂またはポリエステル樹脂が混合しやすく,バリア性発現においても好ましい。
【0024】
本発明における易接着層の構成に適用される水溶性もしくは水分散性ポリウレタン樹脂としては、各種ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリ尿素樹脂およびそれらのプレポリマー等が例示できる。このようなウレタン樹脂の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネートなどのジイソシアネート成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコールなどのジオール成分との反応物、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、アミノ化合物、アミノスルホン酸塩、ポリヒドロキシカルボン酸、重亜硫酸などとの反応物などを挙げることができる。
【0025】
また、水溶性もしくは水分散性ポリエステル樹脂としては、各種ポリエステル樹脂およびそれらの変性物が例示できる。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2−スルホイソフタル酸、5−スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールなどのジオール成分との反応物が挙げられ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などによる変性物も含まれる。
【0026】
なかでも、水性芳香族ポリエステル系樹脂または酸価が200eq/t以上の水性アクリル系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂または2種以上の共重合体が好ましい。この共重合体にはブロック体及びグラフト体が含まれる。この場合,易接着層の耐水性を悪化させないようにする必要がある。
【0027】
この共重合体での水性アクリル樹脂成分に含まれる耐水性を悪化させない極性基としては、加熱後に分解して極性が低下するカルボン酸のアミン塩が例示される。使用することができるアミンは、塗膜の乾燥条件で気化することが必要であり、例えばアンモニウム、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0028】
さらに好ましくは、水性芳香族ポリエステル系樹脂または酸価が200eq/t以上の水性アクリル系樹脂から選ばれる1種以上の樹脂または2種以上の共重合体が、2重結合を有する酸無水物を含有する少なくとも1種のモノマーからなるラジカル重合体を5重量%以上含有することである。5重量%未満では耐水性の効果が十分得られない。
【0029】
前記の酸無水物を樹脂中に導入することにより、樹脂分子間で架橋反応を行なうことが可能となる。すなわち、樹脂中の酸無水物はコート液中では加水分解等によりカルボン酸に変化し、乾燥及び製膜中の熱履歴により、分子間で酸無水物または他の分子の活性水素基と反応してエステル基等を生成し、塗布層の樹脂の架橋を行い、耐水性及び加熱白化防止性等を発現することができる。
【0030】
2重結合を有する酸無水物を含有するモノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、2,5−ノルボネンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。また、ラジカル重合体は、他の重合性不飽和単量体との共重合体であってもよい。
【0031】
他の重合性不飽和単量体としては、フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル;マレイン酸、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル;イタコン酸、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル;フェニルマレイミド等のマレイミド等;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体;ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなど;アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)などのアクリル重合性単量体;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートのヒドロキシ含有アクリル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドのアミド基含有アクリル単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートのアミノ基含有アクリル単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートのエポキシ基含有アクリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)等のカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体、などが挙げられる。
【0032】
本発明のアクリル樹脂として、例えば、水に分散したアクリル樹脂エマルジョンを用いることができ、その分散径は好ましくは20〜200nm、さらに好ましくは30〜100nmであるのが他の樹脂と混合させる上で望ましい。20nm未満の分散径とするには、乳化重合などによってアクリルエマルジョンを作成するときにその比表面積から乳化剤の使用量が多くする必要があり、接着性などで支障を来す場合がある。200nmを越える場合には、微分散化が困難になる場合がある。また、該アクリル樹脂のガラス転移温度は、0〜80℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜70℃である、ガラス転移温度が低すぎると耐ブロッキング性に不利な場合があり、高すぎると水に分散させる際の樹脂の不安定さが問題になる場合がある。
【0033】
アクリル樹脂を構成するモノマー成分としては、特に限定するものではないが、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマーなどを用いることができ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。更に、これらは他種のモノマーと併用することができる。
【0034】
ここで他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸およびそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などのカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、酢酸ビニルなどを用いることができる。また、変性アクリル共重合体、例えば、ポリエステル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体なども使用可能である。
【0035】
本発明において用いられる好ましいアクリル樹脂としては、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸から選ばれる共重合体などである。
【0036】
本発明におけるアクリル樹脂エマルジョンの重合方法は特に限定しないが通常は乳化重合、懸濁重合などが好ましく用いられる。
【0037】
本発明における易接着層には、トリアジン環を有するアミノ樹脂を用いることが必要である。アミノ樹脂としては、例えばメラミン、ベンゾグアナミンなどのホルムアルデヒド付加物、さらにこれらの炭素原子数が1〜6のアルコールによるアルキルエーテル化合物を挙げることができる。具体的にはメトキシ化メチロールメラミン、メトキシ化メチロールベンゾグアナミン、ブトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールベンゾグアナミンなどが挙げられるが好ましくはメトキシ化メチロールメラミン、ブトキシ化メチロールメラミン、およびメトキシ化メチロールベンゾグアナミンであり、それぞれ単独または併用して使用することができる。
【0038】
本発明における易接着層において、(A)水溶性もしくは水分散性樹脂と(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂の構成比はA/B=60/40〜5/95(質量比)にする必要があり、好ましくは45/55〜10/90,更に好ましくは50/50〜15/85である。この範囲内とすることにより、水分散性を確保することができるとともに、基材フィルムと蒸着層間の接着性に優れ、優れたガスバリア性を発揮することができる。(B)トリアジン環を有するアミノ樹脂の,(A)水溶性もしくは水分散性樹脂に対する配合比が40質量%より低いと接着性が得られず、また95質量%より多くしても得られる接着性に大きな向上は認められず、かえって耐熱水/ボイル接着性が低下する。
【0039】
本発明において、基材フィルムに塗工する易接着層の水溶液もしくは水分散液の濃度は、1〜30質量%とするのが適当であり、フィルムへの塗工性ならびに作業性から3〜10質量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明における易接着層の水溶液または水分散液を基材フィルムにコーティングする方法として、たとえば二軸配向結晶化終了前の基材フィルム、すなわち未延伸ないしは一軸延伸フィルムに上記水溶液または水分散液を塗布し、延伸熱処理を経て二軸延伸フィルムを得るいわゆるインラインコート法に適用できる。インラインコート法は、未延伸ないしは一軸延伸フィルムに上記水溶液または水分散液を塗布したのち延伸熱処理を実施するため、延伸後コーティングを施すポストコート法よりも易接着層を薄くすることが可能であり、基材フィルムと蒸着層等の密着性を高めることができる。また、易接着層の塗布工程が基材フィルムの製造工程に組み込まれていることから、低コストで該易接着コートフィルムの製造が可能である。なお基材フィルムの延伸方法に関しては、材質に応じてテンター式同時二軸延伸法や逐次二軸延伸法を適用することができる。
【0041】
本発明において、水溶液または水分散液を塗布、熱処理してなる易接着層の厚みは、10nm〜500nmが好ましい。10nmより薄いと接着性が低下し、500nmより厚いと易接着性向上等に有意な変化が見られず、むしろフィルム巻物にブラッシングないしはブロッキングが生じ、易接着層の裏写りやフィルム巻出し時の易接着層損壊やさらにはフィルム切断が発生するなど弊害が生じ、コスト面にも不利である。水分散液の塗布方法としては、既知の任意の方法を選択することができ、例えば、バーコート法、エアーナイフコート法、リバースロールコート法、グラビアロールコート法を適用することができる。
【0042】
本発明により提供される易接着性プラスチックフィルムは、その表面にコロナ処理をはじめとする表面活性処理を施したり、印刷、各種機能コーティング、ラミネート等を行うことにより諸性能を付加し、その利用価値をさらに向上させることも可能である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
【0044】
[基材フィルム,被覆層の形成]
ポリカプロアミドをスクリュー式押出し機で260℃に加熱溶融し、Tダイよりシート状に押出し、次いで、この未延伸シートを冷却ドラムで50℃で3.2倍縦延伸した。そして、得られた一軸延伸フィルムの片面に,後述の実施例・比較例に記す塗布液を用いてファウンテンバーコート法により塗布した。次にテンターに導き、120℃で4.0倍横方向に延伸後、220℃で熱固定を行い厚さ15μmのニ軸延伸ポリアミド系樹脂フィルムを得た。
【0045】
[無機薄膜層の形成]
得られたニ軸延伸ポリアミド系樹脂フイルムの被覆層上に下記条件にて無機薄膜層を積層した。
a)アルミニウム蒸着
蒸着源として、8〜10mm程度の大きさの粒子状のアルミニウム(純度99.9%)を用い、上記の如く得られたフィルムロールの被覆層面側に、電子ビーム蒸着法により、アルミニウム薄膜を形成した。加熱源として、電子銃(以下、EB銃という)を用い、エミッション電流を0.5Aとした。フィルム送り速度を130m/分とし、50nm厚の膜を作った。また、蒸着時の圧力を、1×10-2Paに調整した。また、蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。
b)酸化アルミニウム蒸着
蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のAl23(純度99.9%)を用い、上記の如く得られたフィルムロールの被覆層面側に、電子ビーム蒸着法により、酸化アルミニウム薄膜を形成した。加熱源として、EB銃を用い、エミッション電流を1.3Aとした。フィルム送り速度を130m/分とし、20nm厚の膜を作った。また、蒸着時の圧力を、1×10-2Paに調整した。また、蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。
c)酸化ケイ素蒸着
蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のSi(純度99.99%)とSiO2(純度99.9%)を用い、上記の如く得られたフィルムロールの被覆層面側に、電子ビーム蒸着法により、酸化ケイ素薄膜を形成した。蒸着材料は混合せずに、2つに区切って投入した。加熱源として、EB銃を用い、SiとSiO2のそれぞれを時分割で加熱した。そのときのEB銃のエミッション電流を0.8Aとし、SiとSiO2との組成比が1:9となるように、各材料を加熱した。フィルム送り速度を130m/分とし、20nm厚の膜を作った。また、蒸着時の圧力を、1×10-2Paに調整した。また、蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。
d)複合蒸着
蒸着源として、3〜5mm程度の大きさの粒子状のSiO2(純度99.99%)とAl23(純度99.9%)を用い、上記の如く得られたフィルムロールの被覆層面側に、電子ビーム蒸着法により、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との混合薄膜の形成を行った。蒸着材料は、混合せずに、2つに区切って投入した。加熱源として、EB銃を用い、AL23とSiO2のそれぞれを時分割で加熱した。そのときのEB銃のエミッション電流を1.2Aとし、AL23とSiO2との組成比が45:55となるように、各材料を加熱した。フィルム送り速度を130m/minとし、20nm厚の膜を作った。また、蒸着時の圧力を、1×10-2Paに調整した。また、蒸着時のフィルムを冷却するためのロールの温度を−10℃に調整した。
【0046】
[ラミネート]
得られたフィルムの蒸着面にポリウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製TM590)を80℃乾燥処理後の厚みが3μmになるよう塗布した後、低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡績製 L4102 厚み40μm)を60℃に加熱した金属ロール上で490kPaのニップ圧力でドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
【0047】
[ラミネートフィルムの熱水処理]
得られたラミネートフイルムを用いて、ヒートシーラーにより200mm四方の袋を作成した。その中に水を500cc充填して密封後、95℃ ×60分間ボイル処理した。
【0048】
[酸素透過度の測定]
作成したフィルムの酸素透過率を酸素透過率測定装置(モダンコントロールズ社製 OX−TRAN100)を用いて測定した。
【0049】
[剥離強度の測定]
作成した試料を長さ15cm、15mm幅にサンプリングを行い、チャック間距離1cm、移動スピード200mm/minの条件でT型剥離強度を測定した。
【0050】
(実施例1)
[塗布液]
アミノ樹脂(サイメル370,三井サイテック(株)製,固形分88%)22質量部に、水性ポリウレタン樹脂(HW340,大日本インキ株式会社製,固形分25%)78質量部を加え30分間撹拌したのち、水,イソプロパノールで希釈して総固形分濃度が12質量%となるよう濃度調整し、さらに20分間撹拌して水性樹脂配合液を得た。
得られた塗布液を前述の方法によって乾燥・延伸後の厚みが50nmとなるよう塗布を行い、被覆層を設けた。
【0051】
(実施例2,3,比較例1,2,3)
塗布液の配合比を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様の手順でガスバリア性フィルムを得た。それらのガスバリア性、剥離強度の測定結果を表1に示す。
【0052】
(実施例4)
[共重合ポリエステル樹脂の調製]
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備したステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート163重量部、ジメチルイソフタレート163重量部、1,4ブタンジオール169重量部、エチレングリコール324重量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5重量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。
【0053】
次いで、フマル酸14重量部およびセバシン酸203重量部を加え、200℃から220℃まで1時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。次いで、255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明で,重量平均分子量は18000であった。
【0054】
(比較例4)
アミノ樹脂の代わりにイソシアネート化合物(コロネートL 日本ポリウレタン工業(株)製)を用いた以外は実施例1と同様の手順でガスバリアフイルムを得た。
【0055】
グラフト樹脂の製造
撹拌機、温度計、還流装置と定量滴下装置を備えた反応器に、共重合ポリエステル樹脂(A−1)75重量部、メチルエチルケトン56重量部およびイソプロピルアルコール19重量部を入れ、65℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、無水マレイン酸15重量部をポリエステル溶液に添加した。
【0056】
次いで、スチレン10重量部、およびアゾビスジメチルバレロニトリル1.5重量部をメチルエチルケトン12重量部に溶解した溶液を、0.1ml/分でポリエステル溶液中に滴下し、さらに2時間撹拌を続けた。反応溶液から分析用のサンプリングを行った後、メタノール5重量部を添加した。次いで、水300重量部とトリエチルアミン15重量部を反応溶液に加え、1時間撹拌した。
【0057】
その後、反応器の内温を100℃に上げ、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により留去し、水分散グラフト重合樹脂B−1を得た。該水分散グラフト樹脂(B−1)は淡黄色透明であった。このグラフト体の酸価は1400eq/tであった。
樹脂成分と配合比を表1に示したように変更した以外は、実施例1と同様の手順で水性樹脂配合液および易接着層コートフィルムを得た。水性樹脂配合液を評価した結果、および、フィルムのラミネート強力を測定した結果を表1に示す
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明により、酸素バリア性、水蒸気バリア性、可撓性、耐湿性、耐熱性が非常に優れ、かつ印刷、ラミネートによるガスバリア性の低下が無く、また焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、近年問題とされている環境保全に対して有効である各種包装用フィルムを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系フイルムからなる基材上に(A)水溶性もしくは水分散性樹脂、(B)トリアジン環を含むアミノ樹脂からなり、(A)/(B)の重量比が60/40〜5/95の範囲である被覆層、無機薄膜層を順次積層してなるガスバリア性フイルムにおいて、通常時のバリア性(a)が30ml/m2・24hr・MPa以下であり、(a)とボイル処理後のバリア性(b)が下記の式(1)の関係にあることを特徴とするガスバリア性ポリアミドフイルム。

式(1)・・・[(b)−(a)]/(a)≦2.0
【請求項2】
水溶性もしくは水分散性樹脂がポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂,アクリル樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性ポリアミドフィルム。
【請求項3】
水溶液または水分散液を二軸配向結晶化終了前の基材フィルムに塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸した後、熱処理することを特徴とする請求項1〜2記載のポリアミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2006−321193(P2006−321193A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148615(P2005−148615)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】