説明

ガスバリア性容器

【課題】良好な酸素バリア性と成型性を有し、内容物の保存に適したガスバリア性容器の提供。
【解決手段】少なくとも1層の可撓性ポリマー層と、少なくとも1層の酸素バリア層を含むガスバリア性ラミネートシートを成型して成る容器であって、該酸素バリア層が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物からなり、かつ該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)(B)(D)の反応生成物、または(A)(B)(C)(D)の反応生成物であることを特徴とするガスバリア性容器。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成し、且つオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
(D)ポリアミンとの反応によりカーバメート部位を形成する、カーボネート部位を少なくとも1つ有する官能性化合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア性容器に関する。詳しくは酸素の遮蔽に優れた樹脂を用いた内容物の保存を目的とした食品や医薬品などの保存に使用されるガスバリア性容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内容物保存を目的とした包装材料には、透明性、軽量性、経済性等の理由からプラスチックフィルムや容器の使用が主流になっている。プラスチック容器の製造法として、真空成型、圧空成型などの絞り成型方法があり、プラスチックフィルムやシートをカップ状又はトレー状に成型された容器は、食品や医薬品の容器等として広範囲に利用されている。食品、医薬品などの包装に用いられるプラスチック容器の要求性能としては、各種ガスに対するバリア性、保香性、透明性、耐煮沸処理性、耐レトルト処理性、耐衝撃性、柔軟性、ヒートシール性、などが挙げられるが、内容物の性能あるいは性質を保持するという目的から、酸素及び水蒸気に対する高いバリア性が特に要求される。
【0003】
このようなガスバリア性容器は、通常、基材となる可撓性ポリマー層、ガスバリア層、シーラント層となる可撓性ポリマーなどの各材料を積層し、容器状に成型することにより構成されている。これらのうち、ガスバリア層を形成するガスバリア性材料としてエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH樹脂)が良く知られている。しかしながら、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、酸素バリア性の湿度依存性が大きいため内容物の種類によっては酸素バリア性が急激に低下する問題点があり、用途が制限されている。(例えば特許文献1、非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−351769号公報
【非特許文献1】ガスバリア性・保香性包装材料の新展開、東レリサーチセンター、1998年8月21日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、耐ボイル処理性、透明性、耐衝撃性、ヒートシール性などの諸性能に加え、湿度依存性が小さく酸素バリア性に優れた、内容物の保存を目的とした食品や医薬品などの保存に使用される成型性の良好なガスバリア性容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ある特定のエポキシ樹脂組成物が硬化して得られる硬化物を酸素バリア層として用いることにより、酸素バリア性、透明性、耐ボイル処理性、耐衝撃性、ヒートシール性などの諸性能に優れ、深絞り容器や箱型容器のように延伸倍率が大きい部分を含む容器であっても成型性が良好な容器が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明はつぎの通りである。
1. 少なくとも1層の可撓性ポリマー層と、少なくとも1層の酸素バリア層を含むガスバリア性ラミネートシートを成型して成る容器であって、該酸素バリア層がエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物からなり、かつ該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)と(D)の反応生成物、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応生成物であることを特徴とするガスバリア性容器。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成し、且つオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
(D)ポリアミンとの反応により式(1)で示されるカーバメート部位を形成する、式(2)で示されるカーボネート部位を少なくとも1つ有する官能性化合物
【化1】

2. 前記エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合が、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素の当量比(活性水素/エポキシ基)として、0.2〜15.0の範囲である第1項記載のガスバリア性容器。
3. (A)と(B)と(D)の反応、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応を行う際の(A)の活性水素数に対する、(B)の炭素−炭素二重結合数、(B)のアシル基数の2倍、(C)のカルボキシル基及びその誘導官能基の数ならびに(D)のカーボネート部位数の和の比が、0.25〜0.99の範囲である第1項記載のガスバリア性容器。
4. 前記ガスバリア性容器の容器深さ(d)と容器上面開口部直径(l)の比(d/l)が0.01〜10.0の範囲である第1項記載のガスバリア性容器。
5. 前記エポキシ樹脂硬化物が酸素透過係数10.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下である第1項記載のガスバリア性容器。
6. 前記可撓性ポリマー層がポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂である第1項記載のガスバリア性容器。
7. 前記エポキシ樹脂組成物を接着剤として使用し、前記ラミネートシートをドライラミネート法により製造したものである第1項記載のガスバリア性容器。
8. 前記(A)が、メタキシリレンジアミンである第1項〜第7項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
9. 前記(B)多官能性化合物が、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体である第1項〜第7項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
10. 前記(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はそれらの誘導体が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸及び/又はその誘導体である第1項〜第7項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
11. 前記(D)が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び/又はグリセリンカーボネートである第1項〜第7項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
12. 前記エポキシ樹脂硬化剤が、(a)メタキシリレンジアミンと、(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体と、(d)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び/又はグリセリンカーボネートとの反応生成物である第1項〜第7項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
13. 前記(a)と(b)と(d)の反応モル比((a)対(b)対(d))が1対0.7〜0.95対0.1〜0.7の範囲である第12項記載のガスバリア性容器。
14. 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂である第1項〜第13項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
15. 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、及び/又はビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである第1項〜第13項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
16. 前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである第1項〜第13項のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガスバリア性容器は、酸素バリア性の湿度依存性が低いため、内容物保存の面で有利であり、かつ深絞り容器や箱型容器のように延伸倍率が大きい部分を含む容器であっても成型性が良好であるため、内容物に適した種々の形状に成型することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のガスバリア性容器は、少なくとも1層の可撓性ポリマー層と、少なくとも1層の酸素バリア層を含むガスバリア性ラミネートシートを成型して成る容器である。本発明に用いる可撓性ポリマー層は、いずれのフィルムあるいはシート材料でも使用することができ、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン系フィルムあるいはシート材料、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド(N−MXD6)などのポリアミド系フィルムあるいはシート材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルムあるいはシート材料、ポリアクリロニトリル系フィルムあるいはシート材料、ポリ(メタ)アクリル系フィルムあるいはシート材料、ポリスチレン系フィルムあるいはシート材料、ポリカーボネート系フィルムあるいはシート材料、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系フィルムあるいはシート材料、ポリビニルアルコール系フィルムあるいはシート材料などが挙げられる。この中でも、ポリオレフィン系フィルムあるいはシート材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系フィルムあるいはシート材料がより良好な接着性を有するため、より好ましい。
【0009】
ここで、前記可撓性ポリマー層は他の熱可塑性樹脂が混合されたものでもよく、積層したものでもよい。該熱可塑性樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリメタキシリレンアジパミド(N−MXD6)などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などのプラスチック樹脂などが挙げられる。
またこれらの材料にポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂やポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系樹脂、アクリル系樹脂などの各種ポリマーによるコーティングを施したシート、シリカ、アルミナ、アルミなどの各種無機化合物あるいは金属を蒸着させたシート、無機フィラーなどを分散させたシート、酸素捕捉機能を付与したシートなどが使用できる。また、コーティングする各種ポリマーについても無機フィラーを分散させることができる。無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどが挙げられるが、モンモリロナイトなどの層状珪酸塩が好ましく、またその分散方法としては例えば押出混錬法や樹脂溶液への混合分散法など従来公知の方法が使用できる。酸素捕捉機能を付与させる方法としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等を含む組成物を少なくとも一部に使用する方法等が挙げられる。
【0010】
これらの可撓性ポリマー層は、一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよく、或いはポリマーの発泡体などでもよく、その厚さは、0.01〜5mm程度が実用的である。また、可撓性ポリマー層の表面には火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理が実施されていてもよい。このような処理は基材となる可撓性ポリマー層に対するガスバリア層の良好な接着を促進する。また、基材となる可撓性ポリマー層の表面に適切な表面処理がなされた後で、必要に応じて印刷層を設けることもできる。印刷層を設ける際には、グラビア印刷機、フレキソ印刷機、オフセット印刷機等の従来のポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷設備が同様に適用され得る。また、印刷層を形成するインキについても、アゾ系、フタロシアニン系などの顔料、ロジン、ポリアミド樹脂、ポリウレタンなどの樹脂、メタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの溶剤等から形成される従来のポリマーフィルムへの印刷層に用いられてきたインキが同様に適用され得る。
【0011】
本発明において、酸素バリア層を形成する樹脂組成物の塗布面はプライマー(メジウム)層を形成していてもよい。その場合、基材との密着性を有している限り1液系、2液系とも様々な化学構造のプライマーが使用可能であり、好ましくは接着剤の主溶剤として好適に用いられるメタノールなどのアルコールの浸透性が低いポリエステル系プライマーが実用的である。またプライマー層の厚さは0.01〜20μm、好ましくは0.1〜5μmが実用的である。0.01μm未満では十分な密着性が発揮し難く、一方20μmを超えると均一な厚みのプライマー層を形成することが困難になる。
【0012】
本発明に用いられるラミネートシートにおいて、酸素バリア層はエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物を主成分とし、該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)と(D)の反応生成物、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応生成物であることを特徴としている。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成し、且つオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
(D)ポリアミンとの反応により上記式(1)で示されるカーバメート部位を形成する、上記式(2)で示されるカーボネート部位を少なくとも1つ有する官能性化合物
【0013】
以下に、エポキシ樹脂組成物の主成分であるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤について説明する。
本発明におけるエポキシ樹脂は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物又は複素環式化合物のいずれであってもよいが、高いガスバリア性の発現を考慮した場合には芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましく、下記式(3)の骨格構造を分子内に含むエポキシ樹脂がより好ましい。
【化2】

具体例としては、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂などが挙げられる。中でもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
更に、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
【0015】
また、柔軟性や耐衝撃性、耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記の種々のエポキシ樹脂を適切な割合で混合して使用することもできる。
【0016】
本発明に用いられるエポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類とエピハロヒドリンの反応により得られる。例えば、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂は、メタキシリレンジアミンにエピクロルヒドリンを付加させることで得られる。メタキシリレンジアミンは4つのアミノ水素を有するので、モノ−、ジ−、トリ−及びテトラグリシジル化合物が生成する。グリシジル基の数はメタキシリレンジアミンとエピクロルヒドリンとの反応比率を変えることで変更することができる。例えば、メタキシリレンジアミンに約4倍モルのエピクロルヒドリンを付加反応させることにより、主として4つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂が得られる。
【0017】
前記エポキシ樹脂は、各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対し過剰のエピハロヒドリンを水酸化ナトリウム等のアルカリ存在下、20〜140℃、好ましくはアルコール類、フェノール類の場合は50〜120℃、アミン類の場合は20〜70℃の温度条件で反応させ、生成するアルカリハロゲン化物を分離することにより合成される。
【0018】
生成したエポキシ樹脂の数平均分子量は各種アルコール類、フェノール類及びアミン類に対するエピハロヒドリンのモル比により異なるが、約80〜4000であり、約200〜1000であることが好ましく、約200〜500であることがより好ましい。
【0019】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、下記の(A)と(B)と(D)の反応生成物、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応生成物である。
(A)メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成し、且つオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体
(D)ポリアミンとの反応により上記式(1)で示されるカーバメート部位を形成する、上記式(2)で示されるカーボネート部位を少なくとも1つ有する官能性化合物。
【0020】
前記(A)は、メタキシリレンジアミン又はパラキシリレンジアミンであり、メタキシリレンジアミンがより好ましい。
【0021】
前記(B)多官能性化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸などのカルボン酸及び/又はその誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体のように、アシル基と共役系にある炭素−炭素二重結合を有するものが好ましい。
【0022】
また、前記(C)の炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はその誘導体としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸などの一価のカルボン酸及び/又はそれらの誘導体、例えばエステル、アミド、酸無水物、酸塩化物などが挙げられる。これらを前記(B)多官能性化合物と併用してポリアミンと反応させても良い。反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性及び各種フィルム材料への良好な接着強度が得られる。
【0023】
前記(D)官能性化合物は、ポリアミンとの反応によりカーバメート部位を形成する、少なくとも1つのカーボネート部位を有するものである。このような化合物としては、カーボネート部位を有する鎖状の化合物(以下、鎖状カーボネート化合物ということがある)や、カーボネート部位を有する環状の化合物(以下、環状カーボネート化合物ということがある)などが挙げられ、鎖状カーボネート化合物及び環状カーボネート化合物としては、各々以下の一般式(4)及び一般式(5)で示されるものが、好ましく挙げられる。
【化3】

【0024】
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾール基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケン基、下記一般式(6)で示される1価の基を示す。R及びRにおけるアルキル基及びアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。R及びRは、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子、アミノ基などが挙げられ、R及びRが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、前記のほか、例えばアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキリジン基や、チオール基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基などの硫黄原子あるいは窒素原子を含む官能基などが挙げられる。R及びRが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、当該環系を構成する原子のなかに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、上記したR及びRの基は、一例であり、例えば芳香環や複素環を有する基としては、単環式の他、多環式、縮合多環式のいずれであってもよい。
【0025】
【化4】

【0026】
式(6)中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾール基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケン基、及び−ORで示される1価の基などを示す。Rは、単結合、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数2〜10のアルケニレン基、フェニレン基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルケニレン基などの2価の基を示す。Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾール基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケン基などの1価の基を示す。R、R及びRにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキレン基、及びアルケニレン基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。R、R及びRは、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子、アミノ基などが挙げられ、R及びRが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、前記のほか、例えばアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキリジン基や、チオール基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基などの硫黄原子あるいは窒素原子を含む官能基などが挙げられる。R、R及びRが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、当該環系を構成する原子のなかに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、上記したR、R及びRの基は、一例であり、例えば芳香環や複素環を有する基としては、単環式の他、多環式、縮合多環式のいずれであってもよい。
【0027】
式(5)中、Rは、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾール基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケン基、下記一般式(7)で示される1価の基を示す。mは1〜4の整数を示し、kは0〜2×(m+1)の整数を示す。Rにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキレン基、及びアルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。Rは、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子、アミノ基などが挙げられ、R及びRが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、前記のほか、例えばアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキリジン基や、チオール基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基などの硫黄原子あるいは窒素原子を含む官能基などが挙げられる。Rが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、当該環系を構成する原子のなかに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、上記したRは、一例であり、例えば芳香環や複素環を有する基としては、単環式の他、多環式、縮合多環式のいずれであってもよい。複数のRは、たがいに同じでも異なっていてもよい。
【0028】
【化5】

【0029】
式(7)中、Rはハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、ベンジル基、フェニル基、ピリジル基、ベンゾチアゾール基、ビフェニル基、ピリジルフェニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケン基などの1価の基を示す。nは1〜4の整数を示し、lは0〜2×nの整数を示す。Rにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキレン基、及びアルケニレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。Rは、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えばF、Cl、Brなどのハロゲン原子、アミノ基などが挙げられ、R及びRが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、前記のほか、例えばアルコキシ基、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アルキリジン基や、チオール基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、アミノ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルキルアミノ基などの硫黄原子あるいは窒素原子を含む官能基などが挙げられる。Rが芳香環、あるいは複素環を有する場合は、当該環系を構成する原子のなかに、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。なお、上記したRは、一例であり、例えば芳香環や複素環を有する基としては、単環式の他、多環式、縮合多環式のいずれであってもよい。複数のRは、たがいに同じでも異なっていてもよい。
【0030】
上記した一般式(4)で示される鎖状カーボネート化合物としては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、1−クロロエチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、アリルメチルカーボネート、ジアリルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジベンジルカーボネート、エチル−m−トリルカーボネート、エチル−3,5−キシリルカーボネート、tert−ブチルフェニルカーボネート、tert−ブチル−4−ビニルフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、tert−ブチル−8−キノリニルカーボネート、α−ジクロロベンジルメチルカーボネート、ビストリクロロエチルカーボネート、1−クロロエチル−4−クロロフェニルカーボネート、tert−ブチル−2,4,5−トリクロロフェニルカーボネート、メチル−2,3,4,6−テトラクロロフェニルカーボネート、イソプロピル−2,3,4,6−テトラクロロフェニルカーボネート、tert−ブチル−4−ホルミルフェニルカーボネート、1−クロロエチル−3−トリフルオロメチルフェニルカーボネート、4−メトキシベンジルフェニルカーボネート、4−メトキシフェニル−N−(ブトキシカルボニルオキシメチル)カーボネート、ビス−ニトロフェニルカーボネート、ビス−(2−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート、メチル−2−メチル−6−ニトロフェニルカーボネート、エチル−3−メチル−4−ニトロフェニルカーボネート、ベンジル−4−ニトロフェニルカーボネート、4−ニトロフェニル−2−トリメチルシリルエチルカーボネート、2,4−ジニトロ−1−ナフチルメチルカーボネート、3,6−ジクロロ−2,4−ジニトロフェニルエチルカーボネート、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェニルプロピルカーボネート、2−sec−ブチル−4,6−ジニトロフェニルイソプロピルカーボネート、4−ニトロフェニル[(2S,3s)−3−フェニル−2−オキシラニル]メチルカーボネート、2,4−ジクロロ−6−ニトロフェニルメチルカーボネート、2−クロロ−4−フルオロ−5−ニトロフェニルエチルカーボネート、メチル−2−メチル−4,6−ジニトロフェニルカーボネート、2−クロロ−4−メチル−6−ニトロフェニルイソプロピルカーボネート、4−クロロ−3,5−ジメチル−2,6−ニジトロフェニルメチルカーボネート、2−メチルスルフォニルエチル−4−ニトロフェニルカーボネート、エチル−4−スルフォ−1−ナフチルカーボネート、3−ジメチルアミノプロピルエチルカーボネート、エチル−4−フェニルアゾフェニルカーボネート、4−クロロ−3,5−ジメチルフェニルメチルカーボネート、1,3−ベンゾチアゾール−2−イル−2−プロピニルカーボネート、イソブチル−3−オキソ−3H−フェノキサジン−7−イル−カーボネート、4−(イミノメチレン−スルフェニル)−2,5−ジメチルフェニルメチル、5−o−メトキシカルボニル−1,2−o−(1−メチルエチリデン)−α−D−キシロフラノース、エチレングリコールビス−(メチルカーボネート)、o−カルボメトキシ−サリチル酸、カルボン酸−1,1−ジメチル−2−オキソプロピルエステルメチルエステル、カルボン酸−ジ−o−トリルエステル、カルボン酸−2−エチニルシクロヘキシルエステルフェニルエステル、カルボン酸−エチルエステル−(2−オキソベンゾトリアゾール−3−イル)メチルエステル、カルボン酸−2−クロロエチルエステル−(2−オキソベンゾトリアゾール−3−イル)エステル、カルボン酸−アリルエステル−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イル)メチルエステル、カルボン酸−ヘキシルエステル−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イル)メチルエステル、カルボン酸−ベンジルエステル−(2−オキソベンゾチアゾール−3−イル)メチルエステル、カルボン酸−(ジナフタレン−1−イル)エステル、ジメチルジカーボネート、ジエチルジカーボネート、ジ−tert−ブチルジカーボネート、ジ−tert−アミルジカーボネート、ジアリルジカーボネート、ジベンジルジカーボネートなどが挙げられる。
【0031】
上記した一般式(5)で示される環状カーボネート化合物としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、グリセリンカーボネート、ビニレンカーボネート、1,3−ジオキサン−2−オン、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メトキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、(クロロメチル)エチレンカーボネート、5,5−ジエチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキサン−2−オン、エリスリトールビスカーボネート、4,5−ジフェニル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,6−ジフェニルチエノ−[3,4−d]−1,3−ジオキソール−2−オン−5,5−ジオキシドなどが挙げられる。
【0032】
上記したなかでも、一般式(4)で示される鎖状カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、が好ましく、一般式(5)で示される環状カーボネート化合物としてはポリアミンとの反応性の観点から、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び/又はグリセリンカーボネートが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートがより好ましい。また、それぞれ単独又は任意の範囲で混合して用いても良い。
【0033】
(A)と(B)と(D)の反応生成物、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応生成物は、(A)に対して(B)と(C)と(D)、又は(B)と(D)を反応させることにより得られる。反応は、(B)と(C)と(D)、又は(B)と(D)を任意の順序もしくは混合して反応することができるが、始めに(A)と(B)とを反応させることが好ましい。
【0034】
(A)と(B)との反応は、(B)としてカルボン酸、エステル、アミドを使用する場合には0〜100℃の条件下で(A)と(B)とを混合し、100〜300℃、好ましくは130〜250℃の条件下で脱水、脱アルコール、脱アミンによるアミド基形成反応を行うことにより実施される。アミド基形成反応の際には反応を完結させるために必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。更に脱水剤、脱アルコール剤として、亜リン酸エステル類などの触媒を添加することもできる。一方、(B)として酸無水物、酸塩化物を使用する場合には0〜150℃、好ましくは0〜100℃の条件下で混合後、アミド基形成反応を行うことにより実施される。アミド基形成反応の際には反応を完結させるために必要に応じて反応の最終段階において反応装置内を減圧処理することもできる。また、必要に応じて非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。更にピリジン、ピコリン、ルチジン、トリアルキルアミンなどの3級アミンを添加することもできる。
【0035】
上記反応により導入されるアミド基部位は高い凝集力を有しており、硬化剤中に高い割合でアミド基部位が存在することにより、より高い酸素バリア性及び金属やコンクリート、プラスチックなどの基材への良好な接着強度が得られる。
【0036】
また、(A)と(B)の反応比は、モル比((B)/(A))が0.3〜0.95の範囲が好ましい。上記範囲とすることにより、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基が生成するとともに、エポキシ樹脂との反応に必要なアミノ基の量が確保されるので、高いガスバリア性と優れた接着性を発現し、塗布時の作業性も良好なエポキシ樹脂硬化剤を得ることができる。
【0037】
(A)と(D)との反応は、40〜200℃の条件下で(A)と(D)とを混合し、40〜200℃、好ましくは60〜180℃の条件下で付加反応によるウレタン基形成反応を行うことにより実施される。また必要に応じナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブチトキシカリウムなどの触媒を使用することが出来る。カーバメート部位形成反応の際には、反応を促進するために必要に応じて(D)を溶融もくしは非反応性の溶剤を使用して希釈することもできる。
【0038】
上記反応により導入されるカーバメート部位は高い凝集力とエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応性を低下する特性を有しており、エポキシ樹脂硬化剤中に高い割合でカーバメート部位が存在することにより、より長いポットライフ、すなわちより良い作業性とより高い酸素バリア性及び金属やコンクリート、プラスチックなどの基材への良好な接着強度が得られる。
【0039】
また、(A)と(D)の反応比は、モル比((D)/(A))が0.05〜1.5の範囲の任意の比率で可能であり、0.1〜0.7の範囲が好ましい。上記範囲とすることにより、硬化剤中に十分な量のカーバメート部位が生成し、高いガスバリア性と長いポットライフが発現する良好なエポキシ樹脂硬化剤を得ることが出来る。
【0040】
(A)と(C)との反応は、(A)と(B)との反応と同様な条件で行うことができる。
【0041】
(A)と(B)と(D)の反応、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応を行う際、(B)、(C)、(D)の比率に制約はないが、(A)の活性水素数(1分子あたり4個)に対する、(B)の炭素−炭素二重結合数、(B)のアシル基数の2倍、(C)のカルボキシル基及びその誘導官能基の数ならびに(D)のカーボネート部位数の和の比が、0.25〜0.99の範囲であることが好ましく、0.25〜0.67の範囲がより好ましい。
【0042】
上記範囲とすることにより、エポキシ樹脂硬化剤中に十分な量のアミド基及びカーバメート部位が生成するとともに、エポキシ樹脂との反応に必要なアミノ基の量が確保されるので、高いガスバリア性と優れた塗膜性能を発現し、塗装時の作業性も良好なエポキシ樹脂硬化剤を得ることができる。
【0043】
高いガスバリア性、長いポットライフ及び良好な接着性の発現を考慮した場合には、(A)と(B)と(D)との反応モル比((A)対(B)対(D))を、1対0.7〜0.95対0.1〜0.7、好ましくは1対0.75〜0.9対0.1〜0.5、特に好ましくは1対0.8〜0.9対0.1〜0.4の範囲とし、反応生成物であるオリゴマーの平均分子量を高くしたエポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。
【0044】
より好ましいエポキシ樹脂硬化剤は、(a)メタキシリレンジアミンと、(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体と、(d)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び/又はグリセリンカーボネートとの反応生成物である。ここで、(a)と(b)と(d)の反応モル比((a)対(b)対(d))は、好ましくは1対0.7〜0.95対0.1〜0.7、より好ましくは1対0.75〜0.9対0.1〜0.5、特に好ましくは1対0.8〜0.9対0.1〜0.4である。
【0045】
本発明においてエポキシ樹脂組成物を構成するエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合については、一般にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との反応によりエポキシ樹脂硬化物を作製する場合の標準的な配合範囲であってよい。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するエポキシ樹脂硬化物中の活性水素数の比が0.2〜15.0の範囲である。好ましくは0.3〜13.0の範囲、より好ましくは0.4〜12.0の範囲である。この範囲では、エポキシ樹脂硬化物の成型性が良好となり、良好な密着性とガスバリア性を発現できる。
【0046】
本発明においてエポキシ樹脂硬化物層中に上記(3)式の骨格構造が高いレベルで含有されることにより、高いガスバリア性が発現するが、本発明においてはエポキシ樹脂硬化物中に上記(3)式の骨格構造が40重量%以上含まれていることが好ましい。より好ましくは45重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。該エポキシ樹脂硬化物の酸素透過係数は、10.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下、好ましくは7.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下、より好ましくは5.0 ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下である。
【0047】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリウレタン系樹脂組成物、ポリアクリル系樹脂組成物、ポリウレア系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物を混合してもよい。
【0048】
また、本発明において酸素バリア層を構成するエポキシ樹脂組成物を接着剤として使用する際は、該接着剤を各種フィルム材料に塗布時の表面の湿潤を助けるために、必要に応じてシリコンあるいはアクリル系化合物といった湿潤剤を前記エポキシ樹脂組成物に添加しても良い。適切な湿潤剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK331、BYK333、BYK340、BYK347、BYK348、BYK354、BYK380、BYK381などがある。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜2.0重量%の範囲が好ましい。また、本発明において、該接着剤には各種フィルム材料に塗布直後の各種フィルム材料に対する粘着性を向上させるために、必要に応じてキシレン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂などの粘着付与剤を添加しても良い。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。
【0049】
また、該接着剤には必要に応じ、低温硬化性を増大させるための例えば三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体などの三フッ化ホウ素のアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテル錯体などの三フッ化ホウ素のエーテル錯体、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類、安息香酸、サリチル酸、N−エチルモルホリン、ジブチル錫ジラウレート、ナフテン酸コバルト、塩化第一錫などの硬化促進触媒、ベンジルアルコールなどの有機溶剤、リン酸亜鉛、リン酸鉄、モリブデン酸カルシウム、酸化バナジウム、水分散シリカ、ヒュームドシリカなどの防錆添加剤、フタロシアニン系有機顔料、縮合多環系有機顔料などの有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、カーボンブラックなどの無機顔料等の各成分を必要割合量添加しても良い。
【0050】
また、本発明において該接着剤により形成される接着層のガスバリア性、耐衝撃性、耐熱性などの諸性能を向上させるために、該接着剤の中にシリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレークなどの無機フィラーを添加しても良い。フィルムの透明性を考慮した場合には、このような無機フィラーが平板状であることが好ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜10.0重量%の範囲が好ましい。
【0051】
また、本発明における接着剤には、必要に応じて、酸素捕捉機能を有する化合物等を添加してもよい。酸素捕捉機能を有する化合物としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ビタミンC、ビタミンE、有機燐化合物、没食子酸、ピロガロール等の酸素と反応する低分子有機化合物や、コバルト、マンガン、ニッケル、鉄、銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.0001〜10重量%の範囲が好ましい。
【0052】
さらに、本発明において、接着剤により形成される酸素バリア層の各種フィルム材料及び/又はシート材料に対する接着性を向上させるために、接着剤の中にシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤を添加しても良い。カップリング剤としては、一般に市販されているものが使用できるが、中でもチッソ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、信越化学工業(株)等から入手しうるN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス[3−トリメトキシシリル]プロピル]エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤、東レ・ダウコーニング(株)製のSH−6026、Z−6050、Z−6040、Z−6041、Z−6042、Z−6044などのアミノシラン系カップリング剤、信越化学工業(株)製のKP−390、KC−223、KBM−403、KBE−402、KBE−403、KBE−603、KBE−903などのアミノ基含有アルコキシシラン等の本発明のガスバリア性樹脂組成物と反応しうる有機官能基を有するものが望ましい。これらを添加する場合には、エポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜5.0重量%の範囲が好ましい。なお、基材がシリカ、アルミナなどの各種無機化合物を蒸着させたフィルムの場合は、シランカップリング剤がより好ましい。
【0053】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は各種フィルム材料及び/又はシート材料に対する好適な接着性能に加え、これから得られる硬化物が高い酸素バリア性を有する事を特徴としており、低湿度条件から高湿度条件に至る広い範囲において高い酸素バリア性を示す。このことから、本発明におけるエポキシ樹脂組成物を使用したラミネートシートは、PVDCコート層やポリビニルアルコール(PVA)コート層、エチレン‐ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム層、ポリメタキシリレンアジパミドフィルム層、アルミナやシリカなどを蒸着した無機蒸着フィルム層などの一般に使用されているガスバリア性材料を使用することなく非常に高いレベルのガスバリア性が発現する。
【0054】
さらに、本発明におけるエポキシ樹脂硬化物は、靭性、耐湿熱性に優れることから、耐衝撃性、耐煮沸処理性、耐レトルト処理性などに優れたガスバリア性ラミネートシートが得られる。
【0055】
前記ラミネートフィルムは、熱可塑性樹脂からなる外層やヒートシール性を有する熱可塑性樹脂層などを積層したものであってもよい。ラミネートシートを構成する各層を積層するに際し、少なくとも1層の接着層が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とする接着剤で接着される。該接着剤を使用する接着層以外の接着層については、ポリウレタン系接着剤等、他の接着剤を使用してもよいし、樹脂同士を溶着させてもよい。
【0056】
前記ラミネートフィルムは、前記エポキシ樹脂硬化物からなるバリア層を少なくとも1層含むものであればよく、他の層は前記基材として使用される各種材料から選択することができる。例えば、エポキシ樹脂硬化物を接着剤層としたポリオレフィン/エポキシ樹脂硬化物/ポリオレフィンやポリアミド/エポキシ樹脂硬化物/ポリオレフィンからなる3層構成などが挙げられるが、これに限定はされない。
【0057】
前記エポキシ樹脂組成物からなる接着剤を使用して、各種フィルム材料及び/又はシート材料をラミネートする場合には、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、押出しラミネート等公知のラミネート法を用いることが可能である。
【0058】
前記接着剤を各種フィルム材料及び/又はシート材料に塗布し、ラミネートする場合には、酸素バリア層となるエポキシ樹脂硬化物を得るのに十分なエポキシ樹脂組成物の濃度及び温度で実施されるが、これは開始材料及びラミネート方法の選択により変化し得る。すなわち、エポキシ樹脂組成物の濃度は選択した材料の種類及びモル比、ラミネート方法などにより、溶剤を用いない場合から、ある種の適切な有機溶剤及び/又は水を用いて約5重量%程度の組成物濃度に希釈して接着剤を調製する場合までの様々な状態をとり得る。使用される有機溶剤としては、接着剤との溶解性を有するあらゆる溶剤が使用し得る。例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトンなどの非水溶性系溶剤、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノールなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。
【0059】
溶剤で希釈した接着剤(塗布液)は、そのザーンカップ(No.3)粘度が5〜30秒(25℃)の範囲となるように溶剤で希釈される。ザーンカップ(No.3)粘度が5秒未満では接着剤が被塗物に十分塗布されず、ロールの汚染などの原因となる。またザーンカップ(No.3)粘度が30秒を超えると、接着剤がロールに十分移行せず、均一な接着剤層を形成するのは困難となる。たとえばドライラミネートではザーンカップ(No.3)粘度はその使用中に10〜20秒(25℃)であることが好ましい。
【0060】
塗布液調製の際の泡立ちを抑えるために、塗布液に、シリコン、アクリル系化合物などの消泡剤を添加しても良い。適切な消泡剤としては、ビック・ケミー社から入手しうるBYK019、BYK052、BYK065、BYK066N、BYK067N、BYK070、BYK080などや楠本化成(株)より入手しうるディスパロン1930N、ディスパロン1934、ディスパロンLS―009、ディスパロンAQ−501、共栄社化学(株)より入手しうるアクアレン7447、グラノールB−1484、フローレンTW−4000などがあげられるが、特にBYK065が好ましい。また、これら消泡剤を添加する場合には、塗布液中のエポキシ樹脂組成物の全重量を基準として0.01重量%〜3.0重量%の範囲が好ましく、0.02重量%〜2.0重量%がより好ましい。
【0061】
また、溶剤を使用した場合には、接着剤を塗布後の溶剤乾燥温度は20℃から140℃までの様々なものであってよいが、溶剤の沸点に近く、被塗物への影響が及ばない温度が望ましい。乾燥温度が20℃以下ではラミネートフィルム中に溶剤が残存し、接着不良や臭気の原因となる。また乾燥温度が140℃以上では、各種フィルム材料及び/又はシート材料の軟化などにより、良好な外観のラミネートシートを得るのが困難となる。例えば接着剤を延伸ポリプロピレンフィルムに塗布する際は、40℃〜120℃が望ましい。
【0062】
接着剤を塗布する際の塗装形式としては、ロール塗布やスプレー塗布、エアナイフ塗布、浸漬、はけ塗りなどの一般的に使用される塗装形式のいずれも使用され得る。ロール塗布又はスプレー塗布が好ましい。例えば、ポリウレタン系接着剤成分をポリマーフィルムに塗布し、ラミネートする場合と同様のロールコートあるいはスプレー技術及び設備が適用され得る。
【0063】
続いて、各ラミネート方法での具体的な操作について説明する。ドライラミネート法の場合には、各種フィルム材料及び/又はシート材料に前記塗布液をグラビアロールなどのロールにより塗布後、溶剤を乾燥させ直ちにその表面に新たなフィルム材料をニップロールにより貼り合わせることによりラミネートシートを得ることができる。接着剤を調製する際の溶剤としては、溶解性が良く、比較的沸点が低い、炭素数3以下のアルコールを含む溶剤であることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びn−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上を主成分とする溶剤が例示される。さらに、エポキシ樹脂とポリアミンとの反応を遅延し接着剤の増粘を抑え作業時間を長くする効果があるエステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有する溶剤を混合した混合液であることが好ましい。エステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有する溶剤を混合した混合液としては、比較的沸点が低い、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドからなる群から選ばれる1種以上を混合した混合液が例示される。得られるラミネートフィルムに残留する溶剤量が少ないフィルムを得るために、エステル基、ケトン基、アルデヒド基のいずれかの官能基を有する溶剤の含有量は、全溶剤中の20重量%以下が好ましい。ここで、ラミネートシートに残留する溶剤が多い場合、悪臭の原因となるため、残留する溶剤量は7mg/m以下が実用的であり、7mg/mより多い場合は、シートから異臭が感じられる原因となる。フィルムの臭気を厳密に管理する場合には5mg/m以下が好ましく、3mg/m以下が特に好ましい。
【0064】
ドライラミネート法において、接着剤は、前記可撓性ポリマー層だけではなく、貼り合わせるフィルムに塗布することが可能であり、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系フィルムに塗布、乾燥後、ポリオレフィン樹脂あるいはポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1層の可撓性ポリマー層を貼り合わせる事により、ラミネートシートを製造することができる。
【0065】
ニップロールにより貼り合せる場合、ニップロールは20〜120℃に加熱して貼り合せることができるが、40〜100℃が望ましい。この場合、ラミネート後に必要に応じて20〜60℃で一定時間エージングし、硬化反応を完了することが好ましい。該エージングにより、十分な反応率でエポキシ樹脂硬化物が形成され、高いガスバリア性と接着力が発現するし、ブロッキングや添加剤の溶出などの問題が起こらない。エージング温度が20℃未満もしくはエージングなしでは、エポキシ樹脂組成物の反応率が低く、十分なガスバリア性及び接着力が得られない。また60℃を超えるエージング温度はポリマーフィルムのブロッキングや添加剤の溶出などの問題が起こり得る。
【0066】
また、ノンソルベントラミネート法の場合には、前記可撓性ポリマー層に予め40〜100℃程度に加熱しておいた本発明における接着剤を40〜120℃に加熱したグラビアロールなどのロールにより塗布後、直ちにその表面に新たなフィルム材料を貼り合わせることによりラミネートシートを得ることができる。この場合もドライラミネート法の場合と同様にラミネート後に必要に応じて一定時間のエージングを行うことが望ましい。
【0067】
押出しラミネート法の場合には、前記可撓性ポリマー層に接着補助剤(アンカーコート剤)として本発明における接着剤の主成分であるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤の有機溶剤及び/又は水による希釈溶液をグラビアロールなどのロールにより塗布し、20〜140℃で溶剤の乾燥、硬化反応を行なった後に、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることによりラミネートシートを得ることができる。溶融させるポリマー材料としては低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0068】
これらのラミネート法及びその他の一般的に使用されうるラミネート法は必要に応じて組み合わせることも可能であり、用途や形態に応じてラミネートシートの層構成は変化し得る。
【0069】
前記接着剤を各種フィルム材料及び/又はシート材料等に塗布、乾燥、貼り合わせ、熱処理した後の接着剤層の厚さは0.1〜100μm、好ましくは0.5〜10μmが実用的である。0.1μm未満では十分な酸素バリア性及び接着性が発揮し難く、一方100μmを超えると均一な厚みの接着剤層を形成することが困難になる。
【0070】
前記接着剤を使用して製造したラミネートシートは食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装容器として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。すなわち、本発明におけるラミネートシートをそのまま多層包装材料として使用することもできるし、必要に応じて酸素吸収層や熱可塑性樹脂フィルム層、紙層、金属箔層などを本発明におけるラミネートシートにさらにラミネートさせることもできる。この際、本発明における接着剤を用いてラミネートさせても良いし、他の接着剤やアンカーコート剤を用いてラミネートさせても良い。
【0071】
本発明のガスバリア性容器は、前記ラミネートシートを一般的に知られる加熱成型方法、例えば真空成型や圧空成型あるいは熱板成型などの成型方法により、所定の形状に加圧、成型することにより、あるいは前記ラミネートシートを別の可撓性フィルム又はシートにラミネートし真空成型や圧空成型あるいは熱板成型などの成型方法により、所定の形状に加圧、成型することにより得られる。
【0072】
本発明におけるガスバリア性容器は、容器深さ(d)と容器上面開口部直径(l)の比(d/l)が、その容姿に関わらず、0.01〜10.0、好ましくは0.02〜7.0、より好ましくは0.03〜5.0の範囲である。容器上面開口部直径は、開口部形状が楕円形の場合はその長径であり、正方形、長方形、もしくは多角形の場合はその最長対角線とする。本発明によれば、容器深さ(d)と容器上面開口部直径(l)の比(d/l)が1.0以上の深絞り容器や、底部の角の曲線の半径(R)が2〜5mmのような延伸倍率が大きい部分を含む容器(箱型容器)の成型が可能となる。
【実施例】
【0073】
以下に本発明の実施例を紹介するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0074】
<エポキシ樹脂硬化剤A>
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.88モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃まで昇温し、2.5時間165℃を保持した。メタノールを1.5時間かけて滴下して固形分濃度65%とし、65℃に冷却した後、粉砕したエチレンカーボネート0.27モルを30分かけて滴下し、5時間65℃に保持し、エポキシ樹脂硬化剤Aを得た。
【0075】
<エポキシ樹脂硬化剤B>
反応容器に1モルのメタキシリレンジアミンを仕込んだ。窒素気流下60℃に昇温し、0.93モルのアクリル酸メチルを1時間かけて滴下した。生成するメタノールを留去しながら165℃に昇温し、2.5時間165℃を保持した。メタノールを1.5時間かけて滴下して固形分濃度65%とし、攪拌、冷却した後、エポキシ樹脂硬化剤Bを得た。
【0076】
また、ポットライフ、ガスバリア性、ラミネート強度等の評価方法は以下の通りである。
<ポットライフ (hr)>
エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、溶剤を混合した溶液(塗料溶液)を25℃に保持した。ザーンカップNo.3にて粘度を30分毎に測定し、保持時間とザーンカップ粘度(秒)との関係を調べた。塗料溶液を調製してからザーンカップ粘度20秒に到達するまでの時間をポットライフとした。
<成型品の外観>
成型品について目視にて、皺、伸び不足がないかを観察した。
<酸素透過率 (ml/m・day・MPa)>
酸素透過率測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN10/50A)を使用して、23℃、相対湿度60%の条件下、容器の酸素透過率(ml/package・day・0.21MPa)を求めた。また、成型前のラミネートシートの酸素透過率を測定し、単位厚当たりの酸素透過係数(ml・mm/m・day・MPa)を算出した。
<ラミネート強度 (g/15mm)>
JISK−6854に指定されている方法を用い、ラミネートフィルムのラミネート強度をT型剥離試験により300mm/minの剥離速度で測定した。
【0077】
<実施例1>
エポキシ樹脂硬化剤Aを534重量部及びメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂(三菱ガス化学(株)製;TETRAD−X)を50重量部、メタノール500重量部、酢酸エチル77重量部を含む溶液を作製し、そこにシリコン系消泡剤(ビック・ケミー社製;BYK065)を0.1重量部加え、よく攪拌することにより、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素の当量比(活性水素/エポキシ基)として3.0、ザーンカップ(No.3)粘度14秒(25℃)の接着剤を得た。
厚み30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムに接着剤を100線/cm深さ100μmグラビアロールを使用して塗布し、60℃(入り口付近)〜90℃(出口付近)の乾燥オーブンで乾燥させた後、厚み400μmの非晶性ポリエステルシートを50℃に加熱したニップロールにより貼り合わせ、巻取り速度40m/minで巻取り、ロールを40℃で2日間エージングすることによりラミネートシートを得た。
更に真空成型により、容器深さ(d)が3.5cm、開口部形状が開口長径8.5cm、開口短径5cmである長方形であって、容器上面開口部直径(l)が9.9cm、d/lが0.35である、表面積100cmの箱型容器を得た。
得られたラミネートシートについてラミネート強度を、また、容器についてその酸素バリア性を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
<実施例2>
厚み400μmの非晶性ポリエステルシートの代わりに厚み450μmの無延伸ポリプロピレンシートを用い、接着剤塗布液中にアミノシラン系カップリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6050)を加えた以外は実施例1と同様の方法でラミネートし、更に真空成型により、容器深さ(d)が2.7cm、開口部形状が開口直径6.2cmである円形であって、容器上面開口部直径(l)が6.2cm、d/lが0.44である、表面積70cmのゼリー型容器を得た。得られた容器についてその酸素バリア性を評価した。結果を表1に示す。
【0079】
<実施例3>
エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素の当量比(活性水素/エポキシ基)を5.0とした以外は実施例2と同様の方法で作製した。結果を表1に示す。
【0080】
<比較例1>
エポキシ樹脂硬化剤Aの代わりにエポキシ樹脂硬化剤Bを400重量部用い、メタノールを378重量部、酢酸エチルを58重量部とした以外は実施例1と同様の方法で作製した。結果を表1に示す。
【0081】
<比較例2>
ポリウレタン系接着剤塗布液として、ポリエーテル成分(東洋モートン(株)製;TM−329)を50重量部、ポリイソシアネート成分(東洋モートン(株)製;CAT−8B)を50重量部含む酢酸エチル溶液(固形分濃度;30重量%)を作製し、実施例2の塗布液の代わりに用いた以外は実施例2と同様の方法でラミネートフィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の可撓性ポリマー層と、少なくとも1層の酸素バリア層を含むガスバリア性ラミネートシートを成型して成る容器であって、該酸素バリア層がエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物からなり、かつ該エポキシ樹脂硬化剤が下記の(A)と(B)と(D)の反応生成物、または(A)と(B)と(C)と(D)の反応生成物であることを特徴とするガスバリア性容器。
(A)メタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン
(B)ポリアミンとの反応によりアミド基部位を形成し、且つオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物
(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸および/またはその誘導体
(D)ポリアミンとの反応により式(1)で示されるカーバメート部位を形成する、式(2)で示されるカーボネート部位を少なくとも1つ有する官能性化合物
【化1】

【請求項2】
前記エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の配合割合が、エポキシ樹脂中のエポキシ基に対するエポキシ樹脂硬化剤中の活性水素の当量比(活性水素/エポキシ基)として、0.2〜15.0の範囲である請求項1記載のガスバリア性容器。
【請求項3】
(A)と(B)と(D)の反応、又は(A)と(B)と(C)と(D)の反応を行う際の(A)の活性水素数に対する、(B)の炭素−炭素二重結合数、(B)のアシル基数の2倍、(C)のカルボキシル基及びその誘導官能基の数ならびに(D)のカーボネート部位数の和の比が、0.25〜0.99の範囲である請求項1記載のガスバリア性容器。
【請求項4】
前記ガスバリア性容器の容器深さ(d)と容器上面開口部直径(l)の比(d/l)が0.01〜10.0の範囲である請求項1記載のガスバリア性容器。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂硬化物が酸素透過係数10.0ml・mm/m・day・MPa(23℃60%RH)以下である請求項1記載のガスバリア性容器。
【請求項6】
前記可撓性ポリマー層がポリオレフィン樹脂又はポリエステル樹脂である請求項1記載のガスバリア性容器。
【請求項7】
前記エポキシ樹脂組成物を接着剤として使用し、前記ラミネートシートをドライラミネート法により製造したものである請求項1記載のガスバリア性容器。
【請求項8】
前記(A)が、メタキシリレンジアミンである請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項9】
前記(B)多官能性化合物が、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項10】
前記(C)炭素数1〜8の一価カルボン酸及び/又はそれらの誘導体が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、グリコール酸、安息香酸及び/又はその誘導体である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項11】
前記(D)が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び/又はグリセリンカーボネートである請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂硬化剤が、(a)メタキシリレンジアミンと、(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらの誘導体と、(d)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート及び/又はグリセリンカーボネートとの反応生成物である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項13】
前記(a)と(b)と(d)の反応モル比((a)対(b)対(d))が1対0.7〜0.95対0.1〜0.7の範囲である請求項12記載のガスバリア性容器。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂がメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミノ基及び/又はグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂及びレゾルシノールから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つの樹脂である請求項1〜13のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂、及び/又はビスフェノールFから誘導されたグリシジルオキシ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜13のいずれかに記載のガスバリア性容器。
【請求項16】
前記エポキシ樹脂が、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミノ基を有するエポキシ樹脂を主成分とするものである請求項1〜13のいずれかに記載のガスバリア性容器。

【公開番号】特開2010−30629(P2010−30629A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194313(P2008−194313)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】