説明

ガスベアリング基板装填機構

真空またはほぼ真空の条件下で使用するための浮上装置は、ガス用の複数の噴射点(1)および隣接する吸引点(2)を有する浮上プレート(3)を含み、空気ベアリング(4)を作り出して、それにより薄いプレート状基板(5)を支持する。さらに別の実施例は、支持された基板用の搬送機構、および/または浮上プレートを傾ける傾斜機構を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
この発明は一般に、真空プロセス装置における基板の移動に該当し、特に、LCD製造用に並行して採用される多数のプラズマ強化化学気相成長(PECVD)反応器に該当する。それはまた、半導体ウェーハ、光学ガラスおよび建築用ガラス、工具ビットといった任意の他の種類の基板の真空における移動のために採用されてもよく、また、エッチング、スパッタリング、蒸着、化学気相成長などといった多くの異なる真空プロセスにおいて採用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
多くの真空プロセス装置では、実際のプロセスチャンバ内で真空が一定に保たれるよう、基板はロードロックによってプロセスチャンバに装填される。
【0003】
真空条件下で(半導体製造装置などにおいて)ロードロックから実際のプロセスチャンバへ基板を装入し、取出すために、今日では大抵、装填フォークと持上げピンとの組合せが使用されている。しかしながら、ピンの使用はピンの機械的信頼性に関連する問題を提示し、ピンはまた、蒸着中のプラズマの均一性を妨げる傾向がある。今日の基板サイズ(面積)はますます大きくなってきているため、および、基板はますます薄くなる(たとえば、0.5mmで2m2を上回るガラス基板)かまたは剛性がますます小さく(ポリマー基板、上昇したプロセス温度)なってきているため、そのような壊れやすい基板を搬送するピンおよび/またはフォークの有用性はますます制限される。さらに、そのような機械的装入および取出しシステムの使用は、最小限の真空プロセスシステムの高さ(反応器の高さなど)を必要とし、それはPECVD反応器の場合、特に望ましくない。なぜなら、PECVD反応器は、最小限の反応器間隙寸法(すなわち、頂部電極と反応器底部との距離)を要求し、それも蒸着速度といったプロセスパラメータウィンドウを制限するためである。一般に最小限の反応器高さを必要とすることにより、そのような機械的装入および取出しシステムはまた、そのような真空蒸着システムがいくつか並行して、および互いに重なって使用される場合に設置面積(全体的な高さ)を増大させる。機械的装入および取出し装置の使用も粒子供給源をしばしば取込み、そのため、そのように製造された製品における欠陥数を増大させる傾向にある。
【0004】
関連技術
エアークッション運搬装置に載せてガラス基板を搬送することは、当該技術分野において公知である。US3,607,198は、大気条件下でプレート状基板を空気圧で支持するための装置を概説している。US6,220,056は、機械加工設備において薄い板ガラスを取扱うための装置であって、接触することなく板ガラスを収容するのに十分な間隔で互いに平行に配置された平坦な表面を有する少なくとも2枚のプレートを含む装置を提供している。これらの表面は多数のガス通路を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術は、(ピン/フォーク解決策と同様)上述の問題すべてを同時に解決する解決策を述べてはおらず、および/または、それは、壊れやすい大型基板を真空条件下でどのようにして搬送するかについて教示していない。一般に、「真空条件」と「空気に載せた搬送」とは互いに矛盾するように思える。しかしながら、説明されるこの発明が示し得るように、先行技術に対する明らかな利点が達成され得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
真空またはほぼ真空の条件下で使用するための浮上装置は、ガス用の複数の噴射点および隣接する吸引点を有する浮上プレートを含み、空気ベアリングを作り出して、それにより薄いプレート状基板を支持する。有利には、吸引点および噴射点は交互に配置され、それぞれ接続されて浮上または吸引ネットワーク(11)を形成している。さらに別の実施例は、基板用搬送機構、および/または浮上プレートを傾ける傾斜機構を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
発明の詳細な説明
この発明は、上述の問題、つまり、壊れやすい大型基板をロードロックチャンバと真空反応器との間でどのようにして確実に搬送するか、および反応器のサイズおよびそのプロセス均一性に対する影響をどのようにして最小限に抑えるかという問題を、真空条件下での搬送に均一な空気またはガスベアリング(浮上)を用いることによって克服する。密度が2700kg/m3、厚さが0.5〜3mmのガラス基板は、1平方センチメートル当たり0.135g〜0.81gの重量を有する。これは、13〜80パスカル(0.13〜0.8mbar)の圧力を表わす。このため、0.13〜0.8mbarの圧力がかかったガスは、そのような基板を持上げることができる。図1によれば、浮上ガスは、噴射点1を介して噴射され、さらに、より低い圧力で吸引点2を介して真空チャンバから吸い出される(噴射と吸引との圧力差は、浮上に必要な最小値よりも大きい)。このようにして基板5が空気ベアリング5上で支持される。噴射点1および吸引点2は浮上プレート3に配置され、それはロボットアームまたはプロセスチャンバ底部であり得る。
【0008】
基板の装入および取出しのための浮上中にロードロックおよび反応器において十分に高い真空を保つために、浮上による基板搬送に必要なガスの大部分は、慎重に配置された吸引点を通って容易に排出され、残りの浮上ガスはすべて、実際の真空プロセス(蒸着またはエッチングなど)が起こる前にシステムから容易に除去される。ガスは主として吸引点を通って排出され、基板の縁でのガス漏れは制限されている。固定真空プロセスの場合、ガス噴射、ひいては浮上を停止することが可能である。真空プロセス中に継続移動する場合、たとえば、基板が最初または最後に円筒ロールへ、もしくは円筒ロールから転がされるインラインプロセスなどでは、不活性ガスが使用可能である。したがって、および従来の知識に反して、壊れやすい大型基板のガスクッション搬送が真空システムにおいて達成され得る。
【0009】
図2aおよび図2bは、浮上プレート3における吸引点2および噴射点1の2つの可能な配置を示している。周囲の線は、基板5の可能な位置を示している。
【0010】
図2cは、全体的な均一性が得られるよう噴射点および吸引点を交互に配置することによるこの発明の好ましい一実施例を示している。したがって、基板側での高速ガス流が回避され、その結果、望ましくない粒子の移動を引き起こす乱気流も回避される。噴射孔および吸引孔のサイズと間隔、噴射および吸引圧力、ならびに浮上ガスの性質は変化し、基板材料および基板の厚さに非常に依存する。好ましくは、吸引孔は接続されて真空(吸引)ネットワーク12を確立し、噴射孔は接続されて浮上ガスネットワーク12を確立する。
【0011】
例1:密度が2700kg/m3、厚さが0.5mmのガラス基板が、装入/取出し動作のために窒素の噴射によって浮上し、窒素は、噴射溝では100Pa、基板下では50Pa、吸引溝では20Paの圧力を有する。
【0012】
吸引カップは真空では使用できないため、図3aおよび図3bは、クランプシステム2
2(グリッパ)を有するロボットテーブル24を有するロボットを示しており、それは、好ましい一実施例では、上述のガスクッションによって基板5が一旦浮上すると基板5をたとえばプロセスチャンバ(プロセスチャンバ底部21)の中および外へ移動させるために使用される。基板5が浮上するため、また、装入および取出し移動が実質的に水平の平面で行なわれるため、基板の慣性に打勝ち、ひいてはそれをその最終的な装入および取出し位置へ移動させるのに、ほんの少量の力しか必要とされない。また、これに代えて、基板が十分に厚く硬い場合には、基板を縁から押すことも可能である(図3b、プッシュ/プルシステム23)。
【0013】
図3cおよび図3dは各々この発明の一実施例を示しており、真空プロセスチャンバ自体(左)、および搬送ロボットアセンブリに属するテーブル(ロボットテーブル24)(右)の双方には、上述のような真空での浮上用の噴射および吸引手段が備わっている。ロボットが一旦、次に開かれるプロセスチャンバの前のその装入および取出し位置へ移動すると、基板は浮上し、次にグリッパ(クランプシステム22)またはプッシュプルシステム23によって反応器の中および外へ摺動される。一実施例では、このグリッパは溝に収容され、溝は空気ベアリングテーブルの双方に機械加工されて、円滑、均一、真っ直ぐで実質的に水平の装入および取出し移動を可能にする。
【0014】
図3a〜図3dのすべての部分が真空下にあるよう、図1〜図3に示す要素がすべて、大型容器または真空受け部(図示せず)によって封入されていることが強調される。この大型容器はロードロック(同様に図示せず)に通じていてもよく、または複数のプロセスチャンバを含んでいてもよい。
【0015】
他の実施例では、クランプシステムは基板移動に平行な基板側でも採用されてもよく、ロール、磁石および静電気装置による移動手段でさえも、ガスによって基板が一旦浮上すると基板を進めるために配置されてもよい。
【0016】
この発明の一実施例では、基板移動が重力によって支持または誘発され、その結果基板が平らに保たれるように、ロボットテーブルおよびプロセスチャンバは、各々またはともに、装入および取出し動作中に傾斜機構によって若干傾けられてもよい。
【0017】
反応器に基板が一旦装入されると、または取出されると、移送ロボットアセンブリは、ロードロックチャンバ、さらに別の反応器チャンバ、または数々のそのようなチャンバのために働くよう、複数の方向および軸において移動してもよい。
【0018】
発明のさらに別の利点
真空反応器における可動部品をすべて排除することにより、高度の信頼性が得られる。機械の故障は回避され、腐食し得る、または粒子供給源となり得る部品は存在しない。持上げピンを排除することにより、高さが低く、ひいては間隙がより小さく、堆積速度がより速い、より小さな反応器が構築され得る。反応器高さが低減するため、より多くのそのような反応器を互いの上に重ね、並行して使用することができ、それは全体的なシステム生産性を高める。浮上した基板にかかる力はほとんどないため、損傷(たとえばガラス基板の破損)はより起こりにくくなる。反応器の底部の噴射孔および吸引孔はピン用の孔よりもかなり小さく作ることができるため、はるかにより均一なプラズマが得られ得る。ピンがないため、製造されたLCDディスプレイの活性領域をピンが妨げることはない。これにより、単一の大型基板から作られるディスプレイサイズをピン配置とは無関係に任意に規定することができる。さらに、このシステムは「真空掃除機」という全体的効果を有する。すなわち、浮上用に導入されるガスを容易に除去することにより、装入/取出プロセスとは無関係に存在したかもしれない望ましくない粒子が吸引システムを通って除去される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】浮上プレートにおける噴射点および吸引点の配置を詳細に示す図である。
【図2a】この発明に従った噴射点および吸引点分布の一実施例を示す図である。
【図2b】この発明に従った噴射点および吸引点分布の一実施例を示す図である。
【図2c】ガスおよび真空ネットワークについての一例を示す図である。
【図3a】ロボット構成を有する位相を示す側面図である。
【図3b】ロボット構成を有する位相を示す側面図である。
【図3c】ロボット構成を有する位相を示す上面図である。
【図3d】ロボット構成を有する位相を示す上面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 噴射点、2 吸引点、3 浮上プレート(ロボットアームまたはプロセスチャンバ底部)、4 空気ベアリング、5 基板、11 浮上ガスネットワーク、12 真空(吸引)ネットワーク、21 プロセスチャンバ底部、22 クランプシステム、23 プッシュ/プルシステム、24 ロボットテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空またはほぼ真空の条件下で使用するための浮上装置であって、ガス用の複数の噴射点(1)および隣接する吸引点(2)を有する浮上プレート(3)を含み、空気ベアリング(4)を作り出して、それにより薄いプレート状基板(5)を支持する、浮上装置。
【請求項2】
吸引点(2)および噴射点(1)は、浮上プレート(3)において交互に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
噴射点(1)は接続されて浮上ガスネットワーク(11)を形成している、クレーム1〜2に記載の装置。
【請求項4】
吸引点(2)は接続されて吸引ネットワーク(12)を形成している、請求項1〜3に記載の装置。
【請求項5】
プレート状基板(5)を移動させるための搬送ロボットをさらに含む、請求項1〜4に記載の装置。
【請求項6】
基板(5)の移動は、ロボットテーブル(24)またはプロセスチャンバ底部(21)の溝に収容されたグリッパによって引き起こされる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
基板(5)の移動は、プッシュ/プルシステム(23)によって引き起こされる、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
浮上プレートにおける傾斜機構が、基板(5)の移動を開始または支持することを可能にする、請求項1〜4に記載の装置。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の装置を含む、薄いプレート状基板を搬送するためのロボットアーム。
【請求項10】
請求項1〜8に記載の装置を含む、プロセスチャンバ底部。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【公表番号】特表2008−505041(P2008−505041A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519595(P2007−519595)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000392
【国際公開番号】WO2006/005214
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(596013501)オー・ツェー・エリコン・バルザース・アクチェンゲゼルシャフト (55)
【氏名又は名称原語表記】OC Oerlikon Balzers AG
【Fターム(参考)】