説明

ガスボンベセット機構

【課題】ガスボンベの誤装填を防止する。
【解決手段】ボンベ装填部8内にガスボンベ3が正規姿勢で装填されていない状態でセット操作レバー15が初期位置Pからセット位置Qに向かって回動操作されると、ガイド凸部19にガスボンベ3のフランジ部11が突き当たり、移動板20の結合位置Yへの移動が結合位置Yの手前で規制され、弾性変位部33が回動方向に弾性変位し、操作力が解除されると、弾性変位部33が弾性復帰し、更に、付勢部材21によって移動板20が装填位置Xに戻り、セット操作レバー15が初期位置Pに戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスボンベを装填して用いるガスコンロに設けられ、ガスボンベの誤装填を防止するガスボンベセット機構に関する。
【背景技術】
【0002】
小型のガスコンロは、燃料ガスを燃焼させるバーナを設けた燃焼部と、この燃焼部に隣接して配置されてバーナに対して所定圧力の燃料ガスを供給するガバナを有するボンベ装填部とを備えている。ガスコンロは、ボンベ装填部内にガスボンベを装填し、筐体の前面に設けたセット操作レバーを回動操作することにより、移動板でガスボンベを移動させてガバナと連結させる。ガスコンロは、この状態で点火ツマミを操作することにより、ガバナの開栓動作と着火機構の着火動作を行い、バーナに供給された燃料ガスの燃焼が行われる。
【0003】
ガスコンロには、ボンベ装填部内にガスボンベが正しい姿勢で装填されるとともにセット操作レバーを操作した際にガバナに対してガスボンベが確実に結合されるようにする、ガスボンベ誤装填防止機構が設けられている。ガスボンベ誤装填防止機構は、一般にガスボンベのフランジ部に切り欠きからなるガイド凹部を形成するとともに、ガバナの外周部にガイド凹部と対向してガイド凸部を設けて構成する(例えば、特許文献1乃至特許文献3を参照)。
【0004】
ガスコンロでは、ボンベ装填部内にガスボンベを、ガイド凸部に対してガイド凹部を対向させた正規の姿勢で装填してセット操作レバーの回動操作が行われると、ガスボンベがガバナ側へとスライドする。ガスコンロでは、ガイド凸部がガイド凹部に嵌合することにより、正規の姿勢でガスボンベのステムがガバナのステム結合部に結合する。
【0005】
ガスボンベ誤装填防止機構は、ボンベ装填部内にガスボンベが、ガイド凸部に対してガイド凹部がずれた規定外姿勢で装填されてセット操作レバーの回動操作が行われると、ガイド凸部がフランジ部に突き当たりガスボンベのガバナ側へのスライド動作を不能とさせる。即ち、ガスボンベ誤装填防止機構は、セット操作レバーのセット位置までの回動操作を不能とさせ、ガバナとガスボンベの結合を不能とさせ、点火ツマミの操作が不能となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平05−087403号公報
【特許文献2】実開平06−030647号公報
【特許文献3】特開平09−310840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、ガスコンロでは、ガイド凸部とガイド凹部が嵌合しない状態においてガスボンベ誤装填防止機構によって本来回動操作が不能状態となるべきときに、セット操作レバーが強引な操作によってセット位置まで動作されて点火ツマミの操作を可能とさせてしまう場合があった。このような場合には、ガバナのボンベ装着側にある2個のO−リングによってガス漏れを防ぐことができるが、コンロ本体が変形するとO−リングではガス漏れを防ぐことができず、事故が発生する虞がある。
【0008】
また、ガスコンロでは、ガスボンベの長さのバラツキを吸収するために、ボンベ装填部の背面側に位置する移動板のボンベ受け部に取り付けた板バネ等の弾性部材でガスボンベをガバナ側へと押圧している。ガスコンロでは、セット操作レバーによるセット操作時においてスムーズな嵌合が行われるようにするために、ガイド凸部とガイド凹部との間にある程度のクリアランスを設定している。ガスコンロでは、例えばやや薄厚の鉄板のプレス曲げ加工やアルミ型材により、ボンベ装填部やセット操作レバーの支持部を形成した筐体が用いられる。
【0009】
ガスコンロでは、セット操作レバーを強引に操作すると、ガイド凸部がフランジ部に突き当たったままであるため、ボンベ装填部の背面側に設けられた弾性部材が強制圧縮されて、ガスボンベがボンベ装填部に無理に嵌め込まれ、ノズルの芯ズレなどの不具合を起こした状態で、セット操作レバーがセット位置に誤動作されることがある。ガスコンロでは、ガスボンベの装填が規定外姿勢の場合にボンベ装填部に嵌め込まれないように、弾性力が大きな弾性部材を用いてしまうと、セット操作レバーを大きな操作力で操作しなければならず、操作性が悪くなるとともに正規姿勢でガスボンベを装填した場合にガスボンベがガバナに結合されないといった不都合が生じてしまう虞がある。
【0010】
更に、ガスコンロでは、セット操作レバーの強引な操作により筐体の塑性変形が生じてセット操作レバーがセット位置に誤動作されることがある。ガスコンロでは、厚みの厚い素材によって筐体を形成することにより塑性変形の発生を抑制することも可能であるが、重量が大きくなり、またコスト増となるといった問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述した従来のガスボンベ誤装填防止機構の問題を解消し、ガスボンベの誤装填を確実に防止することができるガスボンベセット機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した目的を達成する本発明に係るガスボンベセット機構は、バーナに燃料ガスを供給するガバナが配置されるとともにガイド凸部を設けたボンベ装填部内にガイド凸部に対してフランジ部に形成したガイド凹部が対向する姿勢を正規姿勢としてガスボンベを装填した状態において、セット操作レバーを回動操作してガスボンベを移動板でガバナ側に移動させてガイド凸部とガイド凹部を相対嵌合させるボンベセット操作を行うことにより、ガスボンベのステムがガバナに結合して燃料ガスの供給が行われるようにするガスボンベセット機構である。
【0013】
移動板は、ボンベ装填部に挿入されたガスボンベをガバナ側に押圧するボンベ受け部を有し、バーナ側とボンベ装填部とを仕切る仕切板に沿って、ガスボンベが装填される装填位置とガスボンベのステムとガバナとを結合させる結合位置とに亘って移動し、付勢部材によって装填位置の方向に付勢されている。
【0014】
セット操作レバーは、仕切板に回動可能に取り付けられており、移動板のカムピンが係合され、初期位置からセット位置まで回動されることで、移動板を装填位置から結合位置に移動させるカム孔と、セット位置の方向に弾性変位可能な弾性変位部とが設けられている。
【0015】
ボンベ装填部内に上記ガスボンベが正規姿勢で装填されていない状態でセット操作レバーが初期位置からセット位置に向かって回動操作されると、ガイド凸部にガスボンベのフランジ部が突き当たり、移動板の結合位置への移動が結合位置の手前で規制され、弾性変位部がセット位置の方向に弾性変位し、セット操作レバーに対する操作力が解除されると、弾性変位部が弾性復帰し、更に、付勢部材によって移動板が装填位置に戻り、セット操作レバーが初期位置に戻る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガスボンベが正規姿勢で装填されていない状態において、セット操作レバーが過剰な操作力で回動操作されても、ガイド凸部がガスボンベのフランジ部に突き当たり弾性変位部がセット位置方向に弾性変位することによって、過剰な操作力を吸収する。これにより、本発明では、ガスボンベが正規姿勢で装填されていない状態において、過剰な操作力によって移動板が結合位置まで移動しないため、ガスボンベがガバナ側へ移動せず、ガスボンベがガバナに結合することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るガスボンベ誤装填防止機構を備える卓上型ガスコンロ及びガスボンベの斜視図である。
【図2】同卓上型ガスコンロのガスボンベを装填するボンベ装填部の構成を蓋体を開いて示す要部平面図である。
【図3】同ボンベ装填部の要部斜視図である。
【図4】ボンベ装填部に正規姿勢で装填されたガスボンベがセットされた状態を示す要部斜視図である。
【図5】非正規姿勢でガスボンベが装填された状態におけるボンベ装填部の要部斜視図である。
【図6】同卓上型ガスコンロのガスボンベをセットするガスボンベセット機構の構成を示す要部斜視図である。
【図7】ガスボンベをボンベ装填部に装填する前のガスボンベセット機構の状態を示す側面図である。
【図8】セット操作レバーの状態を示す側面図であり、(A)は、ガスボンベをボンベ装填部に装填する前の状態であり、カムピンがカム孔のアンロック部に位置している状態を示す側面図であり、(B)は、カムピンがカム孔の中間部に位置している状態示す側面図であり、(C)は、カムピンがカム孔のロック部に位置している状態を示す側面図である。
【図9】操作ツマミを下げて、ガイドピンがカム孔の中間部に位置している状態を示すガスボンベセット機構の側面図である。
【図10】操作ツマミを更に下げて、ガイドピンがカム孔のロック部に位置している状態を示すガスボンベセット機構の側面図である。
【図11】ガスボンベが非正規姿勢で装填された状態で強引に操作ツマミを下げた場合のセット操作レバーの状態を示す側面図である。
【図12】セット操作レバーの他の実施例であるセット操作レバーの側面図である。
【図13】セット操作レバーの他の実施例の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るガスボンベの誤装填を防止することができるガスボンベセット機構を備える卓上型ガスコンロ(以下、コンロと略称する。)1について詳細に説明する。コンロ1は、従来周知の一般的なコンロと基本的な構成を同様とし、ガスボンベの誤装填を防ぐ誤装填防止機構2を備える。コンロ1は、図1に示すように燃料源としてガスボンベ3が用いられ、このガスボンベ3から供給される燃料ガスを燃焼させる。コンロ1は、シャーシに箱状の筐体(化粧枠体)4を組み合わせ、仕切板5を介してバーナ6を設けた燃焼部7と、この燃焼部7に隣り合ったボンベ装填部8とに区割りされ、ボンベ装填部8を蓋体9により開閉する。コンロ1は、蓋体9を開き、ボンベ装填部8内にガスボンベ3を装填する。誤装填防止機構2は、ガスボンベ3をボンベ装填部8内に非正規の姿勢で装填した場合にこれを検出して当該ガスボンベ3のセット操作を禁止する。
【0019】
ガスボンベ3は、従来周知の一般的なガスボンベが用いられ、円筒状の容器本体の前端部3a側にステム10や弁機構等が設けられたマウンテンカップが嵌合されてなる。ガスボンベ3は、ステム10を押し込むことにより弁機構が開放してステム10から燃料ガスの噴射が行われる。ガスボンベ3には、マウンテンカップの外周部を容器本体と一体化するフランジ部11が形成され、このフランジ部11の所定位置に切り欠き状のガイド凹部12が形成されている。ガスボンベ3は、後述するようにガイド凹部12を所定位置に合わせてコンロ1のボンベ装填部8に着脱される。
【0020】
コンロ1は、図1及び図2に示すように筐体4のボンベ装填部8に対向する前面に、点火ツマミ13と詳細を後述するガスボンベセット機構14を構成するセット操作レバー15の摘み部となる操作ツマミ15aが設けられている。コンロ1は、後述するようにボンベ装填部8内にガスボンベ3が正規姿勢で装填され、ガバナ16と結合してセットされた状態においてのみ、正常な燃焼動作が行われる。コンロ1は、点火ツマミ13を回動操作することにより、ガスボンベ3からバーナ6に燃料ガスの供給が行われる。
【0021】
なお、点火ツマミ13は、燃焼部7に設けた図示しない着火器を作動して燃料ガスを点火して燃焼が行われるようにするとともに、ガスボンベ3からの燃料ガスの供給を遮断して消火する消火動作も行う。また、点火ツマミ13は、バーナ6への燃料ガスの供給量を制御して火力調整も行う。
【0022】
コンロ1は、セット操作レバー15が、筐体4の前面に設けた操作ツマミ15aを筐体4に形成した高さ方向のガイド孔4aに沿って図1の下方、即ち矢印A方向へと押し下げることにより、ボンベ装填部8内に装填されたガスボンベ3のセット操作を行う。コンロ1は、詳細を後述するようにガスボンベ3がボンベ装填部8内に正規姿勢で装填された状態において、セット操作レバー15のセット操作が可能となり、ガスボンベ3がボンベ装填部8内に非正規姿勢で装填された状態ではセット操作レバー15のセット操作が不能となる。
【0023】
ボンベ装填部8は、図1に示すように、内部にガスボンベ3を収納するに足る前後方向の円柱状空間部として構成され、ガスボンベ3の外周面に合わせて円弧状に形成された底面部を有するとともに断面が円弧状の蓋体9により開閉される。ボンベ装填部8には、ガバナ16が、図2に示すようにボンベ装填部8の前方側のガバナ取付部17に固定されている。
【0024】
ガバナ16は、図2及び図3に示すように、ガスボンベ3と対向する側の外周部にガスボンベ3のステム10が嵌合される嵌合孔を有する筒状のステム嵌合部18が形成されているとともに、内部に嵌合孔に連通するガス流路が形成されている。ガバナ16は、図示しないが点火ツマミ13によりガス流路の開閉と開閉量を制御される弁機構を内蔵する。ガバナ16は、ステム嵌合部18の嵌合孔にガスボンベ3のステム10が嵌合されて押し込まれると、ガスボンベ3の弁機構を開放する。
【0025】
ガバナ16には、図2及び図3に示すように天井部の外周部位に、誤装填防止機構2を構成するガイド凸部19が一体に形成されている。ガイド凸部19は、ボンベ装填部8に装填されたガスボンベ3のガイド凹部12と対向する位置においてガスボンベ3側に向かって突出する凸部として形成されている。ガイド凸部19は、ガスボンベ3のガイド凹部12の切欠き幅よりもやや小幅の略楔状凸部からなる。
【0026】
コンロ1では、ボンベ装填部8に装填したガスボンベ3の装填姿勢を誤装填防止機構2により検出し、ガスボンベ3をガバナ16に結合する動作又はガスボンベ3をガバナ16に結合させない誤装填防止動作がなされる。誤装填防止機構2は、図4に示すように、上述したガイド凹部12にガイド凸部19が相対嵌合した場合は正規姿勢で装填されていることを検出する。また、誤装填防止機構2は、図5に示すように、ガイド凸部19がガイド凹部12に嵌合せず、ガイド凸部19がガスボンベ3のフランジ部11に突き当たることによって正規姿勢で装填されていないことを検出し、ガスボンベ3が正規姿勢ではない状態でガバナ16側に移動することを規制する。誤装填防止機構2は、ガスボンベセット機構14のセット操作レバー15のセット操作を不能とする誤装填防止動作を行う。これにより、コンロ1では、通常ガスボンベ3のステム10がガバナ16に結合しないこととなる。
【0027】
コンロ1は、図1に示すように、ボンベ装填部8にガスボンベ3を挿入し、ガスボンベセット機構14により、ガスボンベ3をガバナ16側に移動させ、図4に示すように、ガバナ16にステム10を嵌合させる。ガスボンベセット機構14は、図2及び図6に示すように、バーナ6側とボンベ装填部8とを仕切る仕切板5と、ガスボンベ3をガバナ16側へ移動させる移動板20と、移動板20をガバナ16側に移動させるセット操作レバー15と、移動板20を装填位置X(図2参照)の方向に付勢する付勢部材21とを有する。
【0028】
仕切板5は、図1、図6及び図7に示すように長尺の板状に形成され、バーナ6側とボンベ装填部8とを仕切り、移動板20、セット操作レバー15、及び付勢部材21が取付けられている。仕切板5には、移動板20の移動をガイドするガイド孔22が形成されている。このガイド孔22は、仕切板5の長さ方向に長尺状に形成され、移動板20のガイドピンとなるカムピン26が挿通している。
【0029】
移動板20は、図1に示すように、仕切板5の長さ方向に長尺状に形成され、仕切板5に移動可能に取り付けられている。移動板20は、バーナ6側に延在され、仕切板5に形成されたガイド用開口部5bを介して、ボンベ装填部8に装填されたガスボンベ3の後端部3bと対向する一端が折曲されてボンベ装填部8の内部に突出してボンベ受け部23が設けられている。ボンベ受け部23は、ボンベ装填部8に装填されたガスボンベ3の後端部3bと対向する。ボンベ受け部23は、ガスボンベ3の長さのばらつきを吸収するため、ガスボンベ3の押圧方向に変位する板バネ等の弾性部材24が取付けられている。
【0030】
この移動板20は、図6及び図7に示すように、ガバナ16側の端部にカムピン26が挿通されている。このカムピン26は、仕切板5のガイド孔22及びセット操作レバー15のカム孔25に係合している。また、移動板20は、ガスボンベ3の後端部3b側の端部が仕切板5に形成されたガイド用開口部5bからボンベ装填部8側に露出している。移動板20は、ガイド孔22に係合されたカムピン26とガイド用開口部5bとによって仕切板5に沿って移動可能に支持されている。また、移動板20は、カムピン26がセット操作レバー15のカム孔25に係合していることによりセット操作レバー15と連結されている。
【0031】
また、移動板20には、図1及び図3に示すように、ボンベ装填部8内に突出するフック片27が一体に折曲形成されており、このフック片27が仕切板5に沿って移動する際にガスボンベ3の容器本体の前端部3a側に設けられた容器フランジ部3cと係合する。
【0032】
カムピン26は、図6及び図7に示すように、移動板20を貫通して設けられており、一端はカム孔25に係合し、他端は仕切板5のガイド孔22に係合する。移動板20は、仕切板5にスライド可能に取り付けられると共に、セット操作レバー15の回動に伴ってカム孔25の形状に従ってカムピン26がカム孔25内を移動することで、仕切板5に沿ってスライドされる。
【0033】
セット操作レバー15は、コンロ1の使用者が筐体4に形成されたガイド孔4aに沿って操作ツマミ15aを下げることでボンベセット機構14がガスボンベ3をガバナ16側へ押圧し、操作ツマミ15aを上げることでボンベセット機構14のガスボンベ3のガバナ16側の押圧を解除する。ガスボンベ3がボンベ装填部8内に挿入され、ガスボンベ3が装填位置X(図2参照)に位置しガバナ16側へ押圧されていない状態では、図6及び図7に示すように、操作ツマミ15aはガイド孔4aの上端の初期位置Pに位置している。そして、操作ツマミ15aを初期位置Pから図6中矢印A方向に回動させてガスボンベ3をボンベ受け部23でガバナ16側へ押圧し、図5及び図10に示すように、ガスボンベ3がガバナ16と結合した結合位置Y(図1参照)に位置している状態では、操作ツマミ15aはガイド孔4aの下端のセット位置Qに位置している。このようにセット操作レバー15は、操作ツマミ15aがガイド孔4aを上下動することによって、初期位置Pとセット位置Qとの間を回動するように仕切板5に取付けられている。
【0034】
このようなセット操作レバー15は、図6に示すように、本体部31と、先端に操作ツマミ15aを取り付けた腕部32と、弾性変位部33と、取付部35とを有する。このセット操作レバー15は、腕部32と、弾性変位部33と、取付部35とが一部品として構成された操作部材を本体部31に取り付けてなる。即ち、セット操作レバー15は、操作部材と本体部31との二部品で構成されている。
【0035】
本体部31は、仕切板5に設けた支点軸部材34により、仕切板5に回動自在に支持されている。本体部31は、支点軸部材34を挟んだ腕部32とは反対側に、前下り形状に形成され、移動板20に設けられたカムピン26が係合されるカム孔25が形成されている。本体部31は、操作ツマミ15aが初期位置Pからセット位置Qに回動すると、図8(A)及び(B)に示すように、操作ツマミ15aと同方向に回動するため、移動板20を挿通しているカムピン26がカム孔25に沿って移動し、図9に示すように、移動板20をガスボンベ3の装填位置Xから結合位置Yに向かって移動させる。
【0036】
カム孔25は、移動板20をガスボンベ3の装填位置Xに位置させるアンロック部25aと、移動板20をガスボンベ3の結合位置Yに位置させるロック部25bと、アンロック部25aとロック部25bとの間に位置する中間部25cとが連続して形成されている。カム孔25は、アンロック部25aからロック部25bにかけて直線状に形成せず、中間部25bで折曲げて形成することで、付勢部材21で移動板20が装填位置X側に付勢されながらも、カムピン26をロック部25bで保持し、ガスボンベ3とガバナ16との結合状態を保持する。
【0037】
また、本体部31には、支点軸部材34を挟んでカム孔25と対向する側に、操作ツマミ15aの回動方向に弾性変位可能な弾性変位部33が取付部35を介して取付けられ、この弾性変位部33を介して操作ツマミ15aが取付けられる腕部32が取付けられている。
【0038】
弾性変位部33は、例えばSKやSUS等の復元力を有する材質を用いた弾性部材等である。弾性変位部33は、図6に示すようにU字状に形成され、端部同士が近接するように操作ツマミ15aの回動方向、即ちセット位置Qの方向に弾性変位する。この弾性変位部33は、一端が取付部35の上端に溶接等により接続されている。この弾性変位部33は、ガスボンベ3がボンベ装填部8に正規姿勢で装填されたときは操作ツマミ15aをセット位置Q方向(図6中矢印A方向)に回動させてもほとんど弾性変位せず、端部同士が離間した状態である。一方で、弾性変位部33は、ガスボンベ3がボンベ装填部8に正規姿勢で装填されていないときは後述するように、操作ツマミ15aを初期位置Pからセット位置Qに向かって強制的に回動させて大きな力が加わると、操作ツマミ15aの端部同士が近接する方向に弾性変位し、過剰な操作力を吸収し、ガスボンベ3をガバナ16側へ移動させることなく、操作ツマミ15aをセット位置Qまで到達させる。これにより、ガスボンベ3は、ガバナ16側へ移動しないため、ガバナ16と結合されない。そして、弾性変位部33は、操作ツマミ15aがガイド孔4aの下端に到達して操作力を解除すると、弾性復帰することによって操作ツマミ15aを初期位置Pに戻す。
【0039】
取付部35は、図6に示すように、板状に形成されて、一端が支点軸部材34によって本体部31と共に仕切板5に取付けられ、他端が例えばねじ36によって本体部31に固定されている。
【0040】
腕部32は、図6に示すように、弾性変位部33の他端に一体的に設けられ、シャーシ37に形成したガイド孔37aと筐体4の前面に形成した高さ方向のガイド孔4aから突出し、先端部に操作ツマミ15aが取り付けられている。
【0041】
また、ガスボンベセット機構14は、セット操作レバー15をセット位置Qから初期位置Pに戻すことによって、移動板20が結合位置Yから装填位置Xに戻るため、図2に示すように、装填位置X側に付勢している付勢部材21を有する。付勢部材21は、仕切板5のフック片5aと移動板20のフック片27との間に掛け合わされ、移動板20が結合位置Yに位置しているときは引っ張り状態であり、移動板20を装填位置Xの方向へ付勢している。
【0042】
以上のような構成からなるガスボンベセット機構14は、次のようにしてガスコンロ1の誤装填を防止することができる。
【0043】
先ず、ガスボンベ3を正規姿勢で装填した場合について説明する。ガスボンベ3をボンベ装填部8に装填する前の状態では、図7に示すように、付勢部材21がその付勢力によって移動板20を後方側へ、即ち装填位置X側へ引っ張っている。ガスボンベセット機構14は、図8(A)に示すように、カムピン26がカム孔25内において上端側、即ちアンロック部25aに位置し、連結したセット操作レバー15の腕部32及び操作ツマミ15aはガイド孔4aの上端、即ち初期位置Pに位置した状態にある。
【0044】
次に、ガバナ16に設けられたガイド凸部19とガスボンベ3に設けられたガイド凹部12とが対向するようにガスボンベ3をボンベ装填部8内に挿入して装填した後、操作ツマミ15aをガイド孔4aの中央まで押し下げると、図8(B)及び図9に示すように、セット操作レバー15の腕部32も操作ツマミ15aの回動に伴って下方に回動し、支点軸部材34を支点として本体部31が図9中矢印B方向に回動する。本体部31の回動動作により本体部31のカム孔25に係合しているカムピン26がアンロック部25aから前方側、即ち図9中矢印C方向へと移動し、カム孔25の中間部25cまで移動する。ガスボンベセット機構14は、移動板20がカムピン26に引っ張られて付勢部材21の付勢力に抗して図9中矢印D方向の結合位置Y方向へと移動する。ガスボンベセット機構14は、移動板20が結合位置Yに移動することにより、ボンベ受け部23がボンベ装填部8内を装填位置Xから結合位置Y側へと移動してガスボンベ3をガバナ16側へ(図9中矢印D方向へ)押圧する。
【0045】
そして、操作ツマミ15aをガイド孔4aの下端、即ちセット位置Qまで押し下げると、図8(c)及び図10に示すように、ボンベ受け部23が正規姿勢で装填されたガスボンベ3をガバナ16側へと更に押圧し、ガイド凸部19がガイド凹部12に嵌合し、ガスボンベ3のステム10をステム嵌合部18内に押し込んで結合位置Yでガスボンベ3のステム10とステム嵌合部18とを結合させる。この際に、ボンベセット機構14は、カムピン26が本体部31のカム孔25内を移動してロック部25bにおいて保持され、ガスボンベ3をガバナ16に結合した状態が保持されるようになる。これにより、ガスボンベ3からガバナ16に燃料ガスが供給されるようになる。
【0046】
次に、ガスボンベ3を正規姿勢ではない状態で装填した場合について説明する。ガスボンベ3が装填される前は、上述したように、操作ツマミ15aはガイド孔4aの初期位置Pに位置し、カムピン26はカム孔25のアンロック部25aに位置し、ボンベ受け部23がボンベ装填部8の装填位置Xに位置している。
【0047】
そして、操作ツマミ15aを押し下げると、上述したように、カムピン26が図9中矢印C方向へ移動することによって移動板20が図9中矢印D方向の結合位置Y側へ移動し、ボンベ受け部23がガスボンベ3を結合位置Y側へ押圧し、ガスボンベ3が結合位置Y側へ移動する。ここで、ガスボンベ3が正規姿勢で装填されていないため、ガイド凸部19がガスボンベ3のガイド凹部12に嵌合せずフランジ部11に突き当たり、ガスボンベ3が結合位置Yまで移動できず、移動板20が動かないため、操作ツマミ15aをセット位置Qまで押し下げようとしても正規姿勢の場合のように押し下げることはできない。
【0048】
操作ツマミ15aを通常の操作力(例えば荷重40N程度の力)を超える大きな力(例えば荷重150N程度の力)で押し下げた場合には、従来ではカムピンがガイド溝のロック部まで移動してしまうことがあり、ガイドピンに引っ張られて移動板が結合位置へと移動することにより、ガスボンベが正規姿勢ではない状態でガバナと結合されてしまう場合があった。上述したガスボンベセット機構14では、操作ツマミ15aを通常の操作力を超える大きな力で押し下げた場合、図11に示すように、弾性変位部33が操作ツマミ15aの回動方向に弾性変位することで操作ツマミ15aと共に腕部32がガイド孔4aのセット位置Qまで下がるが、カムピン26はカム孔25の中間部25cに位置したままとなり、移動板20が結合位置Yまで移動しないためガスボンベ3が結合位置Yに向かって移動しない。
【0049】
ガスボンベセット機構14は、操作ツマミ15aを強引に押し下げても、図11に示すように、板ばね等から構成される弾性変位部33が操作ツマミ15aの回動方向(図11中矢印A方向)に弾性変位することで過剰な操作力を吸収し、操作ツマミ15a及び腕部32のみがセット位置Qに向かって回動し、ガイド孔4aの下端に操作ツマミ15a及び腕部32があたる。なお、この弾性変位部33は、ガスボンベ3を正規姿勢で装填する通常使用の場合では弾性変位しない硬さである。
【0050】
そして、操作ツマミ15aがガイド孔4aに当り、強引に押し下げる力が解除されると、弾性変位部33が弾性復帰して、操作ツマミ15a及び腕部32がガイド孔4aの初期位置Pまで戻る。これにより、このガスボンベセット機構14では、カムピン26がカム孔25の中間部25cからアンロック部25aに移動し、移動板20が装填位置Xに戻ることにより、ガスボンベ3もガバナ16から離れて装填位置Xに戻る。
【0051】
このようにガスボンベセット機構14では、ガスボンベ3が正規姿勢ではなく装填された場合に、操作ツマミ15aを強引にセット位置Qまで押し下げても、過剰な操作力を弾性変位部33が変位することで吸収し、カムピン26がロック部25cまで移動せず、移動板20が結合位置Yに移動しないため、ガスボンベ3のステム10がガバナ16に結合してしまうことが防止され、ガスボンベ3の誤装填を防止することができる。また、ガスボンベセット機構14では、操作ツマミ15aが初期位置Pに戻るため、ガスボンベ3が正常に取付けられていないことがわかる。また、このガスボンベセット機構14では、ボンベ受け部23に取り付けられている弾性部材24の弾性力を誤装填を防止するために大きくする必要がないため、操作ツマミ15aの操作力は従来と変わりがなく操作することができる。また、このガスボンベセット機構14では、操作ツマミ15aを強引に操作した場合、弾性変位部33が弾性変位し過剰な操作力を吸収するため筐体4の変形が生じず、ボンベ3のフランジ部11の変形も生じず、厚みの厚い素材の筐体4等を使用する必要がなく、重量が大きくなったり、コストが増加することを防止できる。
【0052】
上述したガスボンベセット機構14では、腕部32と、弾性変位部33と、取付部35とが一部品として構成された操作部材を本体部31に取り付けた二部品で構成されているが、このことに限定されず、図12に示すように、操作部材と本体部31とが一体に形成された一部品で構成されていてもよい。本体部31、腕部32、弾性変位部33及び取付部35が、図13に示すように、弾性変位部33に用いられるSKやSUS等の復元力を有する材質を用いた弾性部材等からなり、本体部31等の形状に形成した一枚の板状のものを折曲げることで、図12に示すように形成されている。ガスボンベセット機構14では、このような構成とすることによって、上述したガスボンベ3の誤装填を防止できること、ボンベ受け部23に取り付けられた弾性部材24の弾性力を大きくする必要がないこと、筐体4の厚みを厚くする必要がないことといった効果以外に部品点数を削減でき、操作部材と本体部31とを接続する工程を省略することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 コンロ、2 誤装填防止機構、3 ガスボンベ、4 筐体、4a ガイド溝、5 仕切板、6 バーナ、7 燃焼部、8 ボンベ装填部、9 蓋体、10 ステム、11 フランジ部、12 ガイド部、13 点火ツマミ、14 ガスボンベセット機構、15 操作レバー、16 ガバナ、17 ガバナ取付部、18 ステム嵌合部、19 ガイド凸部、20 移動板、21 付勢部材、22 ガイド孔、23 ボンベ受け部、24 弾性部材、25 カム孔、26 カムピン、27 フック片、31 本体部、32 腕部、33 弾性変位部、34 支点軸部材、35 取付部、36 ねじ、37 シャーシ、37a ガイド孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナに燃料ガスを供給するガバナが配置されるとともにガイド凸部を設けたボンベ装填部内に上記ガイド凸部に対してフランジ部に形成したガイド凹部が対向する姿勢を正規姿勢としてガスボンベを装填した状態において、セット操作レバーを回動操作して上記ガスボンベを移動板で上記ガバナ側に移動させて上記ガイド凸部と上記ガイド凹部を相対嵌合させるボンベセット操作を行うことにより、上記ガスボンベのステムが上記ガバナに結合して上記燃料ガスの供給が行われるようにするガスボンベセット機構において、
上記移動板は、上記ボンベ装填部に挿入された上記ガスボンベを上記ガバナ側に押圧するボンベ受け部を有し、上記バーナ側と上記ボンベ装填部とを仕切る仕切板に沿って、上記ガスボンベが装填される装填位置と上記ガスボンベのステムと上記ガバナとを結合させる結合位置とに亘って移動し、付勢部材によって上記装填位置の方向に付勢されており、
上記セット操作レバーは、上記仕切板に回動可能に取り付けられており、上記移動板のカムピンが係合され、初期位置からセット位置まで回動されることで、上記移動板を上記装填位置から上記結合位置に移動させるカム孔と、上記セット位置の方向に弾性変位可能な弾性変位部とが設けられ、
上記ボンベ装填部内に上記ガスボンベが正規姿勢で装填されていない状態で上記セット操作レバーが上記初期位置から上記セット位置に向かって回動操作されると、上記ガイド凸部に上記ガスボンベのフランジ部が突き当たり、上記移動板の上記結合位置への移動が上記結合位置の手前で規制され、上記弾性変位部が上記セット位置の方向に弾性変位し、上記セット操作レバーに対する操作力が解除されると、上記弾性変位部が弾性復帰し、更に、上記付勢部材によって上記移動板が上記装填位置に戻り、上記セット操作レバーが上記初期位置に戻るガスボンベセット機構。
【請求項2】
上記カム孔は、上記移動板を上記装填位置に位置させるアンロック部と、上記移動板を上記結合位置に位置させるロック部と、上記アンロック部と上記ロック部との間に位置する中間部とを有し、
上記ボンベ装填部に上記ガスボンベが正規姿勢で装填されてないときは、上記ガイド凸部に上記ガスボンベのフランジ部が突き当たり、上記カムピンが上記中間部から上記ロック部方向への移動が規制される請求項1記載のガスボンベセット機構。
【請求項3】
上記セット操作レバーは、上記弾性変位部の一端部には、摘み部を取り付ける腕部が取り付けられ、
外筐には、上記腕部が挿通されて上記摘み部を外部に臨ませるガイド孔が設けられ、
上記ボンベ装填部内に上記ガスボンベが正規姿勢で装填されていないとき、上記弾性変位部は、上記腕部が上記ガイド部の端部に突き当たるまで弾性変位する請求項1又は請求項2記載のガスボンベセット機構。
【請求項4】
上記弾性変位部は、U字状をなし、端部同士が近接する方向に弾性変位する請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項記載のガスボンベセット機構。
【請求項5】
上記セット操作レバーは、上記カム孔が設けられた本体部に上記弾性変位部が設けられてなり、上記本体部と上記弾性変位部とが別部材で一体的に結合されてなる請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項記載のガスボンベセット機構。
【請求項6】
上記セット操作レバーは、上記カム孔が設けられた本体部と上記弾性変位部とが一体に設けられた一部品である請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項記載のガスボンベセット機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−44488(P2013−44488A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183831(P2011−183831)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(591156009)東邦金属工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】