説明

ガス処理装置およびガス処理方法

【課題】窒素を作動ガスとして使用する大気圧プラズマを用いて、窒素酸化物を副生することなく処理対象ガスを熱分解することのできるガス処理装置を提供する。
【解決手段】大気圧プラズマPおよび大気圧プラズマPに向けて供給される処理対象ガスFを囲繞し、その内部にて処理対象ガスFの熱分解を行う反応器22を有し、窒素ガスを作動ガスGとして使用するプラズマ分解機12に対して、プラズマ分解機12から排出された処理対象ガスFと作動ガスGとを含む排ガスRに酸素および水分が混入しない状態で、排ガスRを少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却する冷却部13を設けることにより、上記課題を解決したガス処理装置10とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に有害なガス、地球温暖化ガス、オゾン層破壊ガスを含むガス、特に半導体や液晶等の製造プロセスから排出されるガスを分解処理する装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶等の製造プロセスでは、クリーニングガスやエッチングガスなどとして様々な種類のフッ素化合物のガスが使用されている。このようなフッ素化合物は「PFCs等」と称されており、代表的なものとして、CF4、C26、C38、C48、C58などのパーフルオロカーボン、CHF3などのハイドロフルオロカーボンおよびSF6やNF3などの無機含フッ素化合物等が挙げられる。
【0003】
そして、半導体や液晶等の製造プロセスで使用された様々な種類のPFCs等は、キャリアガスやパージガス等として使用されたN2やAr或いは添加ガスとして使用されたO2、H2やNH3、CH4などと共に排ガスとして排出される。
【0004】
ここで、前記排ガスにおけるPFCs等の占める割合はN2やArなどの他のガスに比べてわずかではあるが、このPFCs等は地球温暖化係数(GWP)がCO2に比べて数千〜数万倍と非常に大きく、大気寿命もCO2に比べて数千〜数万年と長いことから、大気中へ少量排出した場合であっても、その影響は甚大なものとなる。さらに、CF4やC26を代表とするパーフルオロカーボンはC−F結合が安定であるため(結合エネルギーが130kcal/molと大きく)、分解が容易でないことが知られている。このため、使用済みとなったPFCs等を排ガス中から除害する様々な技術の開発が行われている。
【0005】
このような難分解性のPFCs等(以下、「処理対象物」という。)を含むガス(以下、単に「処理対象ガス」という。)を熱分解して除害する技術として、図9に示すように、プラズマトーチ1の電極1a、1b間に作動ガスGを送給すると共に、電極1a、1b間に放電電圧を印加して反応器2内に大気圧プラズマPを噴出させ、この大気圧プラズマPに向けて処理対象ガスFを供給して処理対象ガスFを熱分解するプラズマ分解機3が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
この大気圧プラズマPを用いたプラズマ分解機3では、作動ガスGとして窒素ガスを用いることにより、大気圧プラズマPの温度が概ね数千〜数万℃前後(この場合、大気圧プラズマPの雰囲気温度も数千℃となる)の超高温となり、処理対象ガス、とりわけパーフルオロカーボンなどの難分解性の処理対象ガスFを瞬時に熱分解して除害することができる。
【0007】
そして、プラズマ分解機3から排出された熱分解後の処理対象ガスFと作動ガスGとを含む高温の排ガスRは、プラズマ分解機3の直後に接続された湿式スクラバー(図示せず)において水の噴射を受けることにより、排ガスR中に含まれた粉じんが除去されるとともに、当該水の蒸発潜熱などによる排ガスRの冷却が行われている。
【特許文献1】特開2000−334294号公報(第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来の技術では、作動ガスGとして用いられた窒素と排ガス中の酸素とが結合することにより、サーマルNOxと呼ばれる窒素酸化物(NOx)が発生する。特に、プラズマ分解機3からの排ガスRを高温のまま湿式スクラバーに通すと、排ガスRが有する熱により、排ガスRに噴射された水が水素と酸素とに分離し、さらに当該酸素が作動ガスGである窒素と反応して窒素酸化物が発生する。もちろん、高温の作動ガスGと、予め処理対象ガスF中に含まれる酸素(水に含まれる酸素も同じ)とが接触すれば、すべて窒素酸化物の発生につながってしまうが、上述のように湿式スクラバーを通すことによって排ガスR中の酸素濃度が急上昇し、窒素酸化物の発生量が極めて多くなるという問題があった。
【0009】
このため、かかる従来の熱分解技術では、後工程において、さらに窒素酸化物を排ガスR中から除害しなければならず、非常に効率が悪かった。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の課題は、窒素を作動ガスとして使用するプラズマ分解機を用いて、窒素酸化物を副生することなく、しかも従来例に比べて効率的に処理対象ガスを熱分解することのできるガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載した発明は、「大気圧プラズマPおよび大気圧プラズマPに向けて供給される処理対象ガスFを囲繞し、その内部にて処理対象ガスFの熱分解を行う反応器22を有し、窒素ガスを作動ガスGとして使用するプラズマ分解機12、およびプラズマ分解機12から排出された熱分解後の処理対象ガスFと作動ガスGとを含む排ガスRに酸素または水分が混入しない状態で、排ガスRを少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却する冷却部13を備えるガス処理装置10」である。
【0012】
この発明では、有害ガスや可燃ガス、地球温暖化ガス、オゾン層破壊ガスなどを含む処理対象ガスFはプラズマ分解機12において作動ガスG(窒素ガス)の高温プラズマ流により熱分解される。また、プラズマ分解機12から排出された処理対象ガスFと作動ガスGとを含む高温の排ガスRは、プラズマ分解機12から排出された後、酸素または水分と接触することなく冷却部13によって窒素酸化物が生成しない温度まで冷却される。(なお、前記「酸素または水分」には、処理対象ガスFがプラズマ分解機12に供給される前において処理対象ガスFそのものに含まれていた酸素または水分、あるいは処理対象ガスFが大気圧プラズマPに与えられるまでに処理対象ガスFに加えられた酸素または水分は含まれない。)したがって、温度の高い窒素と酸素とが接触する機会を著しく低減させることができ、窒素酸化物の副生を極小化することができる。
【0013】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載のガス処理装置10に関し、「冷却部13は、熱交換器72を備えている」ことを特徴とする。
【0014】
なお、本明細書において「熱交換器」とは、低温側媒体と高温側媒体とが直接的に接触することのない形式の熱交換器をいう。
【0015】
請求項3に記載した発明は、請求項1または2に記載のガス処理装置10に関し、「処理対象ガスFに分解助剤Aとして水分を送給する分解助剤送給ユニット23を備えている」ことを特徴とする。
【0016】
この発明では、処理対象ガスFに分解助剤Aとして水分を送給しており、処理対象ガスF中の処理対象物を、単に大気圧プラズマPの熱で熱分解するだけでなく、当該水分が分解することによって生じた水素と反応させることで、より効率的に分解することができる。
【0017】
請求項4に記載した発明は、請求項1または2に記載のガス処理装置10に関し、「処理対象ガスFに分解助剤Aとして水素またはアンモニアを送給する分解助剤送給ユニット23を備えている」ことを特徴とする。
【0018】
この発明では、処理対象ガスFに分解助剤Aとして水素またはアンモニアを送給しており、処理対象ガスF中の処理対象物を、単に大気圧プラズマPの熱で熱分解するだけでなく、請求項3に記載の発明と同様に、当該水素あるいはアンモニアが分解することによって生じた水素と反応させることで、より効率的に分解することができる。
【0019】
請求項5に記載した発明は、請求項3または4に記載のガス処理装置10に関し、「分解助剤送給ユニット23は、分解助剤Aを処理対象ガスFに送給する配管62と、配管62内を通流する分解助剤Aの流量を調整する流量調整手段66と、処理対象ガスF中の処理対象物の流量信号S1に基づいて流量調整手段66に分解助剤Aの流量信号S2を出力する流量制御手段69とを有する」ことを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、処理対象ガスFに分解助剤Aとして供給される水分、水素あるいはアンモニアの流量は、半導体製造装置などから出力される処理対象ガスF中の処理対象物の流量信号S1に基づき、流量制御手段69および流量調整手段66によって処理対象物の分解に必要な流量に調整される。したがって、処理対象物の流量に対して分解助剤Aの流量が少なくなり、処理対象ガスFの分解効率が低くなるのを回避できる。また、水分を分解助剤Aとして用いる場合には、処理対象物の流量に対して水分の流量が多くなることにより余剰の水分が生じ、この余剰の水分に由来する酸素が反応器22の内部で高温の作動ガスG(窒素)と反応し、窒素酸化物(NOx)が副生することも回避できる。
【0021】
請求項6に記載した発明は、請求項5に記載のガス処理装置10に関し、「反応器22は外管46および大気圧プラズマPを囲繞する内管48で構成された二重管構造を有しており、外管46には、処理対象ガスFを外管46と内管48との間の空間Sに導入する処理対象ガス導入口50が設けられており、内管48には、空間Sを通流した後の処理対象ガスFを大気圧プラズマPに向けて吹き込む処理対象ガス送給口52が設けられている」ことを特徴とするものである。
【0022】
この発明では、反応器22が二重管構成を有しているとともに、処理対象ガスFは、外管46と内管48との間の空間Sを通流した後、大気圧プラズマPに送給される。このため、空間Sを通流する処理対象ガスFに内管48を介して反応器22内部の熱が与えられるようになり、大気圧プラズマPに送給する処理対象ガスFを予熱することができる。さらに、高温の排ガスRと排ガスRよりも低い温度の処理対象ガスFとの間で熱交換が行なわれるようになり、大気圧プラズマPに送給する処理対象ガスFの予熱と排ガスRの冷却とを同時に実行することができる。
【0023】
請求項7に記載した発明は、請求項6に記載のガス処理装置10に関し、「分解助剤Aは、外管46と内管48との間の空間Sまたは処理対象ガス送給口52に供給される」ことを特徴とする。
【0024】
この発明では、外管46と内管48との間の空間Sまたは処理対象ガス送給口52に分解助剤Aを送給しており、処理対象ガスFが高温の作動ガスGと混ざる前に分解助剤Aを当該処理対象ガスFに混合することができる。したがって、例えば分解助剤Aとして水分を用いた場合、水分による処理対象ガスFの分解反応を処理対象ガスFが作動ガスGと混ざる前に開始させることができ、窒素酸化物の副生を抑えつつ、処理対象ガスFの分解効率を高めることができる。
【0025】
請求項8に記載した発明は、請求項6または7に記載のガス処理装置10に関し、「プラズマ分解機12に供給される処理対象ガスFを水洗する入口スクラバー14、および冷却部13で冷却された排ガスRを水洗する出口スクラバー15を備えている」ことを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、ガス処理装置10に供給される処理対象ガスFを水洗する入口スクラバー14を備えているので、処理対象ガスFに含まれている固形成分や水溶性成分を処理対象ガスFがプラズマ分解機12に供給される前に予め除去しておくことができる。
【0027】
また、冷却部13で冷却された排ガスRを水洗する出口スクラバー15を備えているので、排ガスRに含まれている固形成分や水溶性成分を除去し、より清浄な排ガスRとしてガス処理装置10から排出することができる。また、出口スクラバー15で水洗されるのは、冷却部13で冷却された排ガスR、つまり、窒素酸化物が生成しない温度まで冷却された排ガスRであるから、出口スクラバー15において噴射された水に由来する酸素によって窒素酸化物が不所望に副生されるおそれはない。
【0028】
請求項9に記載した発明は、請求項8に記載のガス処理装置10に関し、「入口スクラバー14は、処理対象ガスFに向けて水Wを噴射する水噴射ノズル102と、水噴射ノズル102に水Wを供給する水供給装置104と、処理対象ガスF中の処理対象物の流量信号S1に基づき、処理対象物の流量がゼロのときは水供給装置104を停止させ、処理対象物の流量がゼロより大きいときは水供給装置104を作動させる水供給制御手段106とを有する」ことを特徴とする。
【0029】
この発明によれば、入口スクラバー14の水噴射ノズル102に水Wを供給する水供給装置104は、処理対象物の流量がゼロのとき、水供給制御手段106によって停止されるようになっている。このため、処理対象物がゼロであるにもかかわらず入口スクラバー14で水Wが噴射されることにより、処理対象ガスF中に混入した水Wが反応器22において熱分解され、当該水Wに由来する酸素と高温の作動ガスGとが反応して窒素酸化物が副生されるのを回避することができる。
【0030】
請求項10に記載した発明は、請求項6ないし9のいずれかに記載のガス処理装置10に関し、「プラズマ分解機12は、内部で発生させた大気圧プラズマPを反応器22に供給するプラズマ発生装置16を備えている」ことを特徴とする。
【0031】
この発明において、大気圧プラズマPは、プラズマ発生装置16の内部で発生した後、反応器22内に供給される。これに対し、処理対象ガスFは、反応器22の内管48に設けられた処理対象ガス導入口50を通って内管48の内側に与えられる。つまり、処理対象ガスFはプラズマ発生装置16の内部を通過しないので、プラズマ発生装置16の内部で大気圧プラズマPと処理対象ガスFとが接触するのを回避することができる。
【0032】
したがって、本発明によれば、窒素酸化物の副生量を極小化することができる。すなわち、大気圧プラズマPと酸素を含む処理対象ガスFとが接触する際の温度が高いほど、窒素酸化物が副生される可能性は高くなるが、この発明に係るプラズマ分解機12は反応器22とは別にプラズマ発生装置16を備えているので、最も高温となる「大気圧プラズマPが発生する部分」を処理対象ガスFが供給される反応器22から離隔することができ、この最も高温となる部分に酸素を含む処理対象ガスFが入ることを防止することができる。
【0033】
また、処理対象ガスFはプラズマ発生装置16内を通過しないので、大気圧プラズマPを発生させる電極16b、16cなどが処理対象ガスFと接触して腐食するおそれがない。
【0034】
請求項11に記載した発明は、請求項1ないし10のいずれかに記載のガス処理装置10に関し、「反応器22には反応器22内の温度を検出する温度検出手段58が設けられており、プラズマ分解機12には、温度検出手段58が検出した温度検出値に応じて大気圧プラズマPに送給する作動ガスGの量を制御する質量流量制御手段38が設けられている」ことを特徴とするものである。
【0035】
大気圧プラズマPは、作動ガスGの送給量を変更することによって、その出力(具体的には噴出量や温度)を調節することが可能である。そこで、本発明では、反応器22内の温度を検出する温度検出手段58が設けられているとともに、温度検出手段58による温度検出値に応じて大気圧プラズマPに送給する作動ガスGの量を増減させる質量流量制御手段38が設けられているので、反応器22内の温度が所定の値となるように大気圧プラズマPの出力を制御することができる。つまり、反応器22内の温度が所定値より高くなると作動ガスGの送給量を低らして大気圧プラズマPの出力を低下させ、逆に、反応器22内の温度が所定値より低くなると作動ガスGの送給量を増やして大気圧プラズマPの出力を上昇させることができる。
【0036】
このため、例えば、反応器22内の温度が難分解性のパーフルオロカーボンを容易に熱分解できる所定の温度(概ね1300℃以上の温度)となるように設定すると、温度検出手段58にて検出された反応器22内の温度に応じて質量流量制御手段38が作動して大気圧プラズマPに送給される作動ガスGの量が増減され、大気圧プラズマPの出力が調節される。この結果、反応器22内の温度は常に設定温度に保持され、処理対象ガスFを反応器22内にて確実に除害することができる。また、反応器22は大気圧プラズマPの出力が極大化した際に生じる超高温の熱に定常的に曝されることがないため、これらの部材が超高温の熱によって損傷するのを極力遅延させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、作動ガスと熱分解後の処理対象ガスとを含む高温の排ガスは、プラズマ分解機から排出された後、冷却部において酸素または水分と接触することのない状態で窒素酸化物が生成しない温度に冷却されるので、温度の高い窒素と酸素とが接触する機会を著しく低減させることができ、窒素酸化物の副生を極小化することができる。
【0038】
また、請求項3および4に係る発明によれば、窒素酸化物の発生を抑制しつつ処理対象ガスの分解を高くすることができる。
【0039】
さらに、請求項6に係る発明によれば、反応器が二重管で構成され、排ガスRと処理対象ガスFとの間で熱交換が行われるので、大気圧プラズマに送給する処理対象ガスを十分に予熱することが可能であり、同時に熱分解後の高温の排ガスを冷却することができる。したがって、大気圧プラズマの出力を低減できると共に、大流量の処理対象ガスを確実にかつ効率的に熱分解して除害することができ、さらに熱分解後の排ガスの冷却部における冷却負担を低減することができる。
【0040】
以上のように、本発明によれば、窒素酸化物の副生を極めて小さくしつつ、処理対象ガスを分解することのできるガス処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を図示実施例に従って説明する。図1は本実施例に係るガス処理装置10の概要を示した構成図である。この図が示すように、本実施例のガス処理装置10は、大略、プラズマ分解機12と冷却部13と入口スクラバー14と出口スクラバー15とで構成されている。
【0042】
プラズマ分解機12は、高温の大気圧プラズマPを用いて処理対象ガスFを熱分解するものであり、プラズマ発生装置16、電源ユニット18、作動ガス送給ユニット20、反応器22および分解助剤送給ユニット23などで構成されている。
【0043】
プラズマ発生装置16は、高温の大気圧プラズマPをその内部で発生させるものであり、黄銅などの金属材料からなり、上下両面が開口した短筒状のトーチボディ16aを有する。このトーチボディ16aの先端にはアノード16bが連設されており、その内部には棒状のカソード16cが取着されている。
【0044】
アノード16bは、銅またはタングステンなどの高い導電性を有する高融点金属で構成され、内部にプラズマ発生室16dが凹設された円筒状のノズルである。このアノード16bの下面中心部にはプラズマ発生室16d内で生成した大気圧プラズマPを噴出させるプラズマ噴出孔16eが貫設されており、アノード16b側面の上部には作動ガス送給口16fが設けられている。
【0045】
カソード16cは、銅などの高い導電性を有する高融点金属からなる本体部と、トリウム或いはランタンを混入させたタングステンからなり、先端に向けてその外径が紡錘状に縮径した先端部とで構成された棒状の部材である。このカソード16cの先端部分は、アノード16b内に凹設されたプラズマ発生室16dに配設されている。
【0046】
なお、アノード16bとカソード16cとの間には、トーチボディ16aを介してこれらの間で通電(短絡)しないように四フッ化エチレン樹脂やセラミックなどの絶縁材料(図示せず)が介装されている。また、アノード16bおよびカソード16cの内部には、冷却水通流路(図示せず)が設けられており、これらの部材を冷却するようにしている。
【0047】
そして、以上のように構成されたアノード16bおよびカソード16cには、所定の放電電圧を印加してアノード16bとカソード16cとの間にアークを生起する電源ユニット18が接続されている。
【0048】
電源ユニット18は、上述したアノード16bおよびカソード16cに所定の放電電圧を印加してプラズマアークを生起させるものであり、具体的には図2に示すように、交流電源24を整流器26で全波整流し、平滑リアクトル28aおよび平滑コンデンサ28bにて構成された直流フィルタ28で平滑して直流化した後、この直流をIGBT、トランジスタ等のスイッチング素子で高周波スイッチングさせるインバータ30により高周波交流に変換し、この高周波交流を変圧器32で所定の電圧に変圧後、再び整流器34で整流し、平滑リアクトル36aおよび平滑コンデンサ36bにて構成された直流フィルタ36で平滑して直流を供給する、いわゆるスイッチング方式の直流電源装置が好適である。
【0049】
作動ガス送給ユニット20(図1参照)は、アノード16bのプラズマ発生室16d内に作動ガスGとして用いられる窒素ガスを送給するものであり、作動ガスGを貯蔵する貯蔵タンク20aと、この貯蔵タンク20aとアノード16bに設けられた作動ガス送給口16fとを連通する作動ガス送給配管20bとを有する。
【0050】
ところで、本実施例のプラズマ分解機12には、作動ガス送給配管20bに質量流量制御手段38が取付けられている。この質量流量制御手段38は、作動ガス送給配管20bを介してプラズマ発生室16d内に送給する作動ガスGの量を制御するものである。具体的には、図3に示すように、センサ管路(図示せず)内を流れる作動ガスGの質量流量を測定し、その測定値を流量信号として出力する流量センサ40と、作動ガス送給配管20b内の作動ガスGの通流量を制御する電磁弁にて構成されたコントロールバルブ42と、流量センサ40の流量信号と後述する温度検出手段58の出力する流量設定信号L1とを比較し、両者が等しくなるようにコントロールバルブ42に対して制御電流を出力する比較制御回路44とを具備する。
【0051】
反応器22は、図4に示すように、外管46および内管48を備える二重管で構成された本体22aを有する。この本体22aを構成する外管46および内管48は、SUS304やハステロイ(登録商標)などの耐蝕性を有する金属材料で形成された直管型の部材であり、これらの長手方向両端部を互いに連結することによって外管46と内管48との間に所定の空間Sが形成されている。なお、本体22aを構成する材料は、内管48の内面と空間Sとの間の熱伝導性を考慮した場合、上述したように金属材料が好適であるが、例えば、処理対象ガスFの腐蝕性が極めて強く、耐蝕性の金属材料をも腐蝕するような場合には、本体22aをキャスタブルやセラミックなどの材料で構成するようにしてもよい。つまり、本体22aを構成する材料は金属材料に限定されるものではない。
【0052】
また、外管46の下部(すなわちプラズマ発生装置16から最も離間した端部)には、半導体製造装置などから排出される処理対象ガスFを空間Sに導入するための処理対象ガス導入口50が貫設されており、内管48の上部(すなわちプラズマ発生装置16に最も近接した端部)には、空間S内に導入した処理対象ガスFを大気圧プラズマPに向けてスパイラル状に吹き込む複数の処理対象ガス送給口52が貫設されている(図5参照)。このため、処理対象ガスFは、外管46と内管48との間の空間Sを下から上(すなわち大気圧プラズマPの下流側から上流側)に向けて通流した後、大気圧プラズマPに送給されることとなる。
【0053】
そして、本体22aには、内部に噴出させた大気圧プラズマPの下流側先端に対応する位置に段部54が設けられており、段部54より上側の大気圧プラズマPに対面する部分Lにおける外管46および内管48の径が拡大されると共に、当該拡径部分Lにおける内管48の内面には、キャスタブルからなり拡径部分Lにおける内管48の内径と略同等の外径を有する円筒状の耐火壁56が交換可能に嵌挿されている。
【0054】
この反応器22は上端がプラズマ発生装置16の大気圧プラズマP噴出側に連結されており、下端に設けられた開口22bが反応器22内で分解処理した処理対象ガスFと作動ガスGとを含む排ガスRの排出端となっている。
【0055】
また、大気圧プラズマPならびに処理対象ガスFを囲繞するこの反応器22では、その内部空間に、高温の大気圧プラズマPによって温められた高温領域が形成されることになる。そして、本実施例では、この反応器22に、反応器22内の温度を検出する温度検出手段58が取り付けられている。
【0056】
温度検出手段58は、図1に示すように、反応器22の内表面側と外表面側とを連通するようにして取り付けられ、反応器22の内面と大気圧プラズマPとの隙間(すなわち上述した高温領域)の温度を検出する1または複数の熱電対58aと、熱電対58aおよび質量流量制御手段38に対して電気的に接続され、熱電対58aから入力される温度検出信号L2が予め設定する設定温度と一致するように質量流量制御手段38に所定の信号(本実施例の場合は「流量設定信号L1」)を出力するコントローラ58bとで構成されている。
【0057】
分解助剤送給ユニット23は、図4に示すように、処理対象ガスFの分解助剤Aである水分を反応器22に送給するためのユニットであり、外管46の内面に取り付けられて空間Sに開口する、SUS304などの金属で形成されたノズル60と、ノズル60に分解助剤Aを導く配管62と、配管62に取り付けられた流量計64と、ノズル60と流量計64との間の配管に取り付けられた、流量調整手段66としての流量調整バルブ66と、ストップバルブ68と、流量調整バルブ66に対して電気的に接続され、図示しない半導体製造装置から出力された、処理対象ガスF中の処理対象物の流量信号S1に基づいて処理対象ガスF中の処理対象物の分解に必要な量の流量信号S2を流量調整バルブ66に出力する流量制御手段69とで構成されている。なお、「処理対象ガスF中の処理対象物の分解に必要な量」とは、添加した水分の全てが処理対象物の分解に使用される量のことを意味する。
【0058】
冷却部13は、図1に示すように、反応器22の開口22bから排出された高温の排ガスRを受け入れ、排ガスRが有する熱を奪って、排ガスRを少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却するものであり、本実施例では、排ガス導入ダクト70と、熱交換器72と、排ガス排出ダクト74とで大略構成されている。
【0059】
排ガス導入ダクト70は、一端が反応器22の開口22bに接続され、他端が熱交換器72に接続されたダクトであり、その内面は耐火材76でライニングされている。もちろん、耐火材76は、耐火材と断熱材との積層材であってもよい。また、耐火材等の材質は、排ガスRの性質に応じて耐熱性や耐摩耗性に優れた材質が選択される。
【0060】
熱交換器72は、図6に示すように、略直方体状のケーシング77と、ケーシング77が有する1の面(図6中の左側面)に設けられた複数の開口Oと当該面に対向する他の面(図6中の右側面)に設けられた開口Oとを連通するようにしてケーシング77の内部に取り付けられた複数の伝熱管78と、伝熱管78に直交する向きにケーシング77の内側を仕切る複数のプレート80と、ケーシング77(本実施例では図6中の上面)に設けられた、冷却水Cをケーシング77の内部に導入するための冷却水入口孔82に接続された冷却水導入管84と、冷却水Cをケーシング77の内部から排出するための冷却水出口孔86にそれぞれ接続された冷却水排出管88とを有している。
【0061】
また、複数のプレート80は、一端がケーシング77内部の上面と接続され、他端がケーシング77内部の下面から離間した状態で取り付けられている複数のプレート80aと、一端がケーシング77内部の上面から離間し、他端がケーシング77内部の下面に接続された状態で取り付けられている複数のプレート80bとが互いに交互に配設されることにより構成されている。
【0062】
なお、本実施例では、耐腐食性を考慮して伝熱管78にハステロイを使用しているが、排ガスRの性質に応じた耐腐食性および耐熱性を有する材質であれば、他の材質を用いてもよい。また、熱交換器72の能力は所定の排ガスRを窒素酸化物生成温度下限である500℃程度よりも低い温度まで冷却できればよい。その際、排ガスRの温度をできるだけ短い時間で冷却(つまり、急冷)できるようにすることが好ましい。
【0063】
排ガス排出ダクト74は、図1に示すように、一端が熱交換器72に接続され、他端が出口スクラバー15に接続されたダクトである。なお、本実施例では、排ガス排出ダクト74の内面は耐火材でライニングされていないが、熱交換器72から排出された排ガスRの温度設定や排ガスRの性質に応じて耐熱性や耐摩耗性に優れた耐火材などでライニングしてもよい。
【0064】
このように、冷却部13は、プラズマ分解機12から排出された排ガスRに酸素または水分が接触することなく、窒素酸化物が生成しない温度まで排ガスRを冷却できるようになっている。(なお、前記「酸素または水分」には、処理対象ガスFがプラズマ分解機12に供給される前において処理対象ガスFそのものに含まれていた酸素または水分、あるいは処理対象ガスFが大気圧プラズマPに与えられるまでに処理対象ガスFに加えられた酸素または水分は含まれない。例えば、ノズル60から処理対象ガスFに添加される水分は、前記「酸素または水分」には含まれない。)
【0065】
入口スクラバー14は、図示しない半導体製造装置などから供給される処理対象ガスFに水Wを噴霧することにより、処理対象ガスF中に含まれる固形成分や水溶性成分を水洗除去するものであり、半導体製造装置などに接続された入口ダクト90と、水洗された後の処理対象ガスFを処理対象ガス導入口50に導く出口ダクト92と、入口スクラバー本体94と、処理対象ガスFに水Wを噴霧する水噴射手段95とを有している。
【0066】
入口スクラバー本体94は、プラズマ分解機12の近傍に立設された中空の円柱状体であり、その下部に入口ダクト90が接続された入口ダクト接続孔96が設けられており、その上端部に出口ダクト92が接続された出口ダクト接続孔98が設けられている。また、入口スクラバー本体94の底部は、水噴射手段95で噴射する水Wを貯留するための水貯留槽100となっている。
【0067】
水噴射手段95は、処理対象ガスFに向けて水Wを噴射する水噴射ノズル102と、水噴射ノズル102に水Wを供給する水供給装置104と、水供給制御手段106とを有している。
【0068】
水噴射ノズル102は、入口スクラバー本体94の内部に配設されたスプレーノズル102aと、一端が入口スクラバー本体94の下端側部に貫設され、他端がスプレーノズル102aに接続された配管102bとで構成されており、水貯留槽100とスプレーノズル102aとは配管102bを介して連通されている。
【0069】
水供給装置104は、水貯留槽100に貯留された水Wをスプレーノズル102aまで汲み上げるためのポンプであって配管102bに取り付けられており、水供給制御手段106からの停止信号S3によって水Wの汲み上げを停止し、作動信号S4によって水Wの汲み上げを行う。
【0070】
水供給制御手段106は、水供給装置104に停止信号S3あるいは作動信号S4を出力する手段であり、具体的には、処理対象ガスF中の処理対象物の流量信号S1を受け、処理対象物の流量がゼロのときは水供給装置104へ停止信号S3を出力し、処理対象物の流量がゼロより大きいときは水供給装置104の作動信号S4を出力する。
【0071】
出口ダクト92には、入口スクラバー本体94から排出された処理対象ガスF中に含まれるミスト(気化していない粒子状の水W)を捕捉し、当該ミストが反応器22に不所望に流入するのを防止するためのフィルタ107が取り付けられている。
【0072】
出口スクラバー15は、冷却部13で冷却された排ガスR中に含まれる固形成分や水溶性成分を水洗除去するものであり、排ガス排出ダクト74に接続された入口ダクト108と、水洗された後の排ガスRをガス処理装置10の外に導く出口ダクト110と、出口スクラバー本体112と、排ガスRに水Wを噴霧する水噴射手段114とを有している。
【0073】
出口スクラバー本体112は、プラズマ分解機12の側方に立設された中空の円柱状体であり、その下側部に入口ダクト108が接続される入口ダクト接続孔116が設けられており、その上端側部に出口ダクト110が接続される出口ダクト接続孔118が設けられている。また、出口スクラバー本体112の底部は、水噴射手段114で噴射する水Wを貯留するための水貯留槽120となっている。
【0074】
水噴射手段114は、排ガスRに向けて水Wを噴射する水噴射ノズル122と、水噴射ノズル122に水Wを供給する水供給装置124とで構成されている。
【0075】
水噴射ノズル122は、出口スクラバー本体112の内部に配設されたスプレーノズル122aと、一端が出口スクラバー本体112の下端側部に貫設され、他端がスプレーノズル122aに接続された配管122bとで構成されており、水貯留槽120とスプレーノズル112aとが配管122bを介して連通されている。
【0076】
水供給装置124は、水貯留槽120に貯留された水Wをスプレーノズル122aまで汲み上げるためのポンプであり、配管122bに取り付けられている。
【0077】
本実施例に係るガス処理装置10を用いて処理対象ガスFを除害する際には、まず、図示しないプラズマ分解機12の電源をオンにして、コントローラ58bの設定温度を処理対象ガスFが容易に熱分解する所定の温度に設定した温度検出手段58を作動させると共に、質量流量制御手段38を作動させてプラズマ発生室16d内に作動ガスGを送給する。また、冷却部13への冷却水Cの供給および出口スクラバー15の水供給装置124を作動させてスプレーノズル122aからの水噴射を開始する。
【0078】
続いて、電源ユニット18を作動させると共に、プラズマ分解機12の大気圧プラズマ点火スイッチ(図示せず)をオンにしてプラズマ発生装置16の電極16b、16c間に電圧を印加し、プラズマ噴出孔16eから大気圧プラズマPを噴出させる。
【0079】
ここで、大気圧プラズマP噴出直後のように、熱電対58aにて計測される反応器22内の温度が設定温度よりも低い場合、温度検出手段58のコントローラ58bから質量流量制御手段38の比較制御回路44に対して作動ガスGの送給量を増やすよう所定の流量設定信号L1が与えられる。すると、比較制御回路44においてこの流量設定信号L1と流量センサ40の流量信号とが比較され、この比較制御回路44からコントロールバルブ42に対して両者が等しくなるように(具体的には、作動ガスGの送給量を増やすように)所定の制御電流が与えられる。この結果、コントロールバルブ42が開操作されてプラズマ発生室16d内への作動ガスGの送給量が増やされ、大気圧プラズマPの出力が上昇し、反応器22内が急速に昇温するようになる。
【0080】
続いて、温度検出手段58にて検出される反応器22内の温度が所定の設定温度に達したところで、半導体製造装置などから処理対象ガスFを入口スクラバー14に供給する。
【0081】
入口スクラバー14へ処理対象ガスFの供給が開始される直前には、水供給制御手段106に出力される流量信号S1がゼロより大きくなり、水供給制御手段106から水供給装置104に作動信号S4が出力され、水供給装置104が作動を開始することにより、水貯留槽100に貯留された水Wがスプレーノズル102aから噴射される。
【0082】
入口スクラバー14で水洗された処理対象ガスFは、出口ダクト92および処理対象ガス導入口50を介して反応器22に導入され、大気圧プラズマPを囲繞するようにしてスパイラル状に供給される。また、同時に分解助剤Aがノズル60から空間Sに供給され、処理対象ガスFの分解が開始される(なお、分解助剤Aの働きについては後述する。)。
【0083】
内管48の内側で分解された処理対象ガスFと作動ガスGとを含む排ガスRは、反応器22の開口22bから排出された後、冷却部13の排ガス導入ダクト70を通流し、熱交換器72の側面に設けられた開口Oから伝熱管78の内部に導入される。そして、排ガスRが伝熱管78の内部を通過する際、排ガスRの有する熱が伝熱管78を介して冷却水Cに与えられる。このとき、冷却水入口孔82から導入された冷却水Cは、プレート80により仕切られたケーシング77の内部を蛇行して通流した後に冷却水出口孔86から排出される。したがって、本実施例の冷却部13によれば、冷却水Cが伝熱管78と接触する機会が増大するので、排ガスRを効率的に冷却することができる。
【0084】
このようにして、排ガスRは、少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却された後、熱交換器72から排出され、排ガス排出ダクト74を通って出口スクラバー15に与えられる。
【0085】
出口スクラバー15に与えられた排ガスRは、スプレーノズル122aから噴射された水Wによって水洗された後、出口ダクト110を通ってガス処理装置10の外に導かれる。
【0086】
本実施例のガス処理装置10によれば、プラズマ分解機12から排出された処理対象ガスFと作動ガスGとを含む高温の排ガスRは、プラズマ分解機12から排出された後、酸素および水分と接触することなく冷却部13によって窒素酸化物が生成しない温度まで冷却される。したがって、温度の高い窒素と酸素とが結合する機会がなく、窒素酸化物を副生することなく処理対象ガスFを熱分解することができる。
【0087】
また、詳しくは後述するが、処理対象ガスFに分解助剤Aとして水分を送給しているので、処理対象ガスF中の処理対象物を、単に大気圧プラズマPの熱で熱分解するだけでなく、当該水分に含まれる水素と反応させることで、より効率的に分解することができる。
【0088】
また、処理対象ガスFに分解助剤Aとして供給される水分の流量は、半導体製造装置などから出力される、処理対象ガスF中の処理対象物の流量信号S1に基づき、流量制御手段69および流量調整手段66によって処理対象物の分解に必要な流量に調整される。したがって、処理対象物の流量に対して水分の流量が少なくなり、処理対象ガスFの分解効率が低くなるのを回避できる。また、処理対象物の流量に対して水分の流量が多くなることにより余剰の水分が生じ、この余剰の水分に由来する酸素が反応器22の内部で高温の作動ガスG(窒素)と反応し、窒素酸化物(NOx)が副生するのも回避できる。
【0089】
また、本実施例によれば、反応器22が二重管で構成されると共に、外管46の下部に処理対象ガス導入口50が設けられ、内管48の上部に処理対象ガス送給口52が設けられているので、処理対象ガスFは、外管46と内管48との間の空間Sを下から上に向けて通流した後、大気圧プラズマPに送給される。この際、空間Sを通流する処理対象ガスFに内管48を介して反応器22内部の熱が与えられるようになり、大気圧プラズマPに送給する処理対象ガスFが予熱される。具体的には、反応器22内の設定温度を1100℃〜1300℃の範囲の所定温度とした場合、空間Sを通過して処理対象ガス送給口52から大気圧プラズマPに向けて送給される処理対象ガスFの温度を、概ね800〜1000℃程度まで昇温させることができる。なお、処理対象ガス導入口50と、処理対象ガス送給口52との位置関係は、処理対象ガスFが空間Sを通流して十分に予熱されることが可能であれば、本実施例の態様に限られず、他の態様であってもよい。
【0090】
また、反応器22内面の大気圧プラズマPに対面する位置にキャスタブルからなる耐火壁56が設けられているので、大気圧プラズマPによる反応器22の熱劣化を防止して反応器22の耐久性を向上させることができると共に、反応器22の耐火壁56よりも下流側では、高温の排ガスRと低温の処理対象ガスFとの間で十分に熱交換することができる。また、反応器22に段部54を設けることによって、外管46と内管48との間の空間Sを通流する処理対象ガスFの流れに乱流を生じさせ、空間Sでの滞留時間を長くすることができるので、大気圧プラズマPに送給する処理対象ガスFをより効果的に予熱することができる。さらに、耐火壁56が交換可能に取り付けられているので、大気圧プラズマPの熱で耐火壁56が熱劣化したとしても、この部分だけを交換すればよく、メンテナンス時の停止時間を短縮してガス処理装置10の稼働率を向上させることができる。
【0091】
また、高温の排ガスRと低温の処理対象ガスFとの間で熱交換が行なわれるので、大気圧プラズマPに送給する処理対象ガスFの予熱と排ガスRの冷却とを同時に実行することができる。このため、後段の冷却部13が担う排ガスRの冷却負担を低減することも可能となる。
【0092】
また、このように予熱された処理対象ガスFが処理対象ガス送給口52から内管48の内側に導入される前に、ノズル60から供給された水分(分解助剤A)が処理対象ガスFに添加されると、以下のような反応が生じる。
[化1]
CF4+2H2O→CO2+4HF
[化2]
SF6+3H2O→SO3+6HF
【0093】
ここで、外管46と内管48との間の空間Sに分解助剤Aである水蒸気を供給しているので、処理対象ガスFが高温の作動ガスGと混ざる前に水蒸気を処理対象ガスFに混合することができる。したがって、水蒸気による処理対象ガスFの分解反応を処理対象ガスFが作動ガスGと混ざる前に開始させることができ、窒素酸化物の副生を抑えつつ、処理対象ガスFの分解効率を高めることができる。
【0094】
つまり、処理対象ガスFは、外管46と内管48との間の空間Sを通流することにより反応器22内部の熱を受けて予熱される。この予熱された処理対象ガスFに対して分解助剤Aとしての水蒸気を添加すると、[化1]や[化2]に示した分解反応は水蒸気が添加されるのとほぼ同時に生じる。このため、処理対象ガスFが作動ガスGと混ざる際、水蒸気に含まれていた酸素は、すでに処理対象ガスFに含まれる炭素や硫黄と反応して化学的に安定なCO2やSO3となっており、作動ガスGに含まれる高温の窒素と酸素とが反応して窒素酸化物が発生するのを抑制することができる。なお、分解助剤Aを処理対象ガス送給口52に供給しても同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、本実施例では、ノズル60は、SUS304などの金属で形成されている。これにより、分解助剤Aとして水を用いる場合においてノズル60に送給された水は、ノズル60の内部を通流する際にノズル60の外側を流れる、予熱された処理対象ガスFからの熱を受け、ノズル60から排出されるときには気化して水蒸気になっている。したがって、分解助剤Aとしての水を気化するための特別な装置を設ける必要がない。また、例えば、0.5L/minのCF4を処理する場合に添加すべき水の量は、0.8g/min(水蒸気ならば1L/min)程度であることから、水の気化に要する熱量は、800〜1000℃程度まで予熱された処理対象ガスFが有する熱量に比べて微量であることから、水の気化熱に処理対象ガスFが有する熱を用いても問題は生じない。
【0096】
また、本実施例に係るガス処理装置10は、ガス処理装置10に供給される処理対象ガスFを水洗する入口スクラバー14を備えているので、処理対象ガスFに含まれている固形成分や水溶性成分を処理対象ガスFがプラズマ分解機12に供給される前に予め除去しておくことができる。また、入口スクラバー14の水噴射ノズル102に水Wを通流させる水供給装置104は、処理対象物の流量がゼロのとき、水供給制御手段106からの停止信号S3を受けて停止するようになっている。このため、処理対象物がゼロであるにもかかわらず入口スクラバー14で水Wが噴射されることにより、処理対象ガスF中に混入した水Wが反応器22において熱分解され、当該水Wに由来する酸素と高温の作動ガスGとが反応して窒素酸化物が副生されるのを回避することができる。
【0097】
また、ガス処理装置10は、冷却部13で冷却された排ガスRを水洗する出口スクラバー15を備えているので、排ガスRに含まれている固形成分や水溶性成分を除去し、より清浄な排ガスRとしてガス処理装置10から排出することができる。なお、出口スクラバーで水洗されるのは、冷却部で冷却された排ガス、つまり、窒素酸化物が生成しない温度まで冷却された排ガスの排ガスであるから、出口スクラバーにおいて噴射された水に由来する酸素によって窒素酸化物が不所望に副生されるおそれはない。なお、上記湿式スクラバーで使用する水として、冷却部13から排出された温度の高い冷却水Cを用いることが好適である。温度の高い水は分子運動が活発であり、この水を排ガスRに噴霧することにより、排ガスRの洗浄効率を向上させることができるからである。
【0098】
また、大気圧プラズマPは、プラズマ発生装置16の内部で発生した後、反応器22内に供給される。これに対し、処理対象ガスFは、反応器22の内管48に設けられた処理対象ガス導入口50を通って内管48の内側に与えられる。つまり、処理対象ガスFはプラズマ発生装置16の内部を通過しないので、プラズマ発生装置16の内部で大気圧プラズマPと処理対象ガスFとが接触するのを回避することができる。
【0099】
したがって、ガス処理装置10によれば、窒素酸化物の副生量を極小化することができる。すなわち、大気圧プラズマPと酸素を含む処理対象ガスFとが接触する際の温度が高いほど、窒素酸化物が副生される可能性は高くなるが、この発明に係るプラズマ分解機12は反応器22とは別にプラズマ発生装置16を備えているので、最も高温となる「大気圧プラズマPが発生する部分」を処理対象ガスFが供給される反応器22から離隔することができ、この最も高温となる部分に酸素を含む処理対象ガスFが入ることを防止することができる。
【0100】
また、処理対象ガスFはプラズマ発生装置16内を通過しないので、大気圧プラズマPを発生させる電極16b、16cなどが処理対象ガスFと接触して腐食するおそれがない。
【0101】
また、単に処理対象ガスFを予熱するだけでも低温分解性の処理対象ガスFは分解されてしまうので、パーフルオロカーボンのような難分解性の処理対象ガスFに対して効率的に熱エネルギーを与えることができる。したがって、大気圧プラズマPの出力を低減して反応器22内の温度を1100℃〜1300℃の範囲に設定した場合であっても、難分解性の処理対象ガスFを十分に分解することができるとともに、大流量の処理対象ガスFを処理することも可能となる。また、このように大気圧プラズマPの出力を低減することによって、プラズマ発生装置16や反応器22の熱劣化による損傷を遅延させることができる。
【0102】
さらに、本実施例のプラズマ分解機12では、反応器22内の温度を検出すると共に、この温度検出値に応じてプラズマ発生装置16に送給する作動ガスGの量を増減させ、反応器22内の温度が所定の値となるように大気圧プラズマPの出力を制御している。つまり、反応器22内の温度が所定値より高くなると作動ガスGの送給量を減らして大気圧プラズマPの出力を低下させ、逆に、反応器22内の温度が所定値より低くなると作動ガスGの送給量を増やして大気圧プラズマPの出力を上昇させるようにしている。
【0103】
このため、反応器22内の温度が上述のように難分解性のパーフルオロカーボンを容易に熱分解できる所定の温度(概ね1300℃以上でかつ反応器22にダメージを与えないような温度)となるように設定すると、温度検出手段58にて検出された反応器22内の温度に応じて質量流量制御手段38が作動して作動ガスGの送給量が増減され、大気圧プラズマPの出力が調節される。この結果、反応器22内の温度は常に設定温度に保持され、難分解性のパーフルオロカーボンを含むあらゆる種類のPFCs等(処理対象物)を反応器22内にて確実に除害することができる。また、プラズマ発生装置16や反応器22は大気圧プラズマPの出力が極大化した際に生じる超高温の熱に定常的に曝されることがないため、これらの部材が超高温の熱によって損傷するのを極力遅延させることができる。
【実施例】
【0104】
本実施例に係るガス処理装置10を用いて処理対象ガスFの熱分解を行った。ガス処理装置10の運転条件として、温度検出手段58のコントローラ58bにおける温度設定値は1200℃とした。また、プラズマの直流電圧は100V程度で直流電流を60Aで一定とした。この結果、作動ガスGとしての窒素ガスの流量は、ほぼ20L(リットル)/min程度となった。また、熱交換器72への冷却水Cは20℃のものを10L/minで流通し、冷却を続けた。ちなみに、熱交換器72から排出された排ガスRの温度は50℃であった。
【0105】
このような条件の下で80L/minの窒素に100cc/minのCF4を含む処理対象ガスFを処理するため、4通りの方法で分解処理を行った。
【0106】
まず、分解助剤Aを添加せずに処理対象ガスFの処理を行った。このとき、CF4の分解率は90%で熱交換器72の出口における窒素酸化物の濃度はNO、NO2ともに検知限界の1ppm未満であった。
【0107】
次に、分解助剤Aとして水素ガス3L/minをノズル60から処理対象ガスFに添加した。水素ガスの流量は流量計64で確認しつつ、流量調整バルブ66を操作して行った。このとき、CF4の分解率は99%で熱交換器72の出口における窒素酸化物の濃度はNO、NO2ともに検知限界の1ppm未満であった。
【0108】
また、分解助剤Aとしてアンモニアガス2L/minをノズル60から処理対象ガスFに添加した。そのときのCF4の分解率は99%、熱交換器72の出口における窒素酸化物の濃度はNO、NO2ともに検知限界の1ppm未満であった。
【0109】
さらに、水をノズル60から0.2cc/min供給した。このとき、CF4の分解率は99%で熱交換器72の出口における窒素酸化物の濃度はNOが20ppm、NO2が1ppmであった。
【0110】
従来の技術(プラズマ分解機3の直後に湿式スクラバーを接続する場合)では、数千ppmの窒素酸化物が発生していたことから、本発明に係るガス処理装置10によれば、窒素酸化物の発生を極めて少なくすることができることがわかる。
【0111】
なお、上述の実施例では、冷却部13において熱交換器72を使用する例を記載したが、冷却部13は、排ガスRに酸素または水分が混入しない状態で、排ガスRを少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却することができるものであれば、例えば、長いダクトの内側に排ガスRを通流させて、該ダクトの外側を水冷するような他の方法によるものであってもよい。また、冷却部13における低温側媒体には、上述の実施例のように水を用いてもよいし(水冷)、気体(空冷)や油(油冷)を用いてもよい。
【0112】
また、上述の実施例では、反応器22の所定位置に段部54を設け、段部54より上方に耐火壁56を設ける場合を示したが、このような段部54を設けずに反応器22の本体22aをストレートな管とし、その内周面全面或いは上方側のみに耐火壁56を設けるようにしてもよい。但し、反応器22の内周面全面に耐火壁56を設けた場合には、空間Sを通る処理対象ガスFの予熱効果は低下する。
【0113】
また、上述の実施例では、反応器22として二重管で構成されているものを示したが、反応器22を三重管以上の多重管とし(図示せず)、管壁を介して径方向にて互いに隣接する密閉空間を通流する処理対象ガスF同士が向流し、且つ反応器22内に噴出させた大気圧プラズマPの噴出方向と反応器22内部に最も近い密閉空間を通流する処理対象ガスFの通流方向とが向流するようにしてもよい。つまり、反応器22の内部に最も近い二重管部分において大気圧プラズマPの噴出方向と当該二重管部分の密閉空間を通流する処理対象ガスFの通流方向とが向流するようにしていれば、その外側を通流する処理対象ガスFの流路はいかなるものであってもよい。なお、上述したように三重管以上の多重管を用いれば、反応器22の管壁を通して外部へと放散される熱をより効果的に処理対象ガスFの予熱に利用することができる。
【0114】
また、上述の実施例では、図1に示すように、プラズマ発生装置16と反応器22とを上下に配設して大気圧プラズマPを垂直方向に噴出させる場合を示したが、プラズマ発生装置16と反応器22とを水平方向に配設すると共に、大気圧プラズマPを水平方向に噴出させるようにしてもよい。
【0115】
また、本実施例では、大気圧プラズマPを発生させる装置として、直流アーク放電を利用するものを用いているが、大気圧プラズマPを発生させることができるものであれば、これに限られず、マイクロ波プラズマなどの熱プラズマを用いることができる。
【0116】
また、大気圧プラズマPによる分解の際に還元雰囲気となるように処理対象ガスFを調整しておくことにより、酸素と窒素との反応が抑制されるので窒素酸化物の発生をさらに抑制することができる。
【0117】
また、水分の替わりに、水素あるいはアンモニアを分解助剤Aとして供給してもよい。水素あるいはアンモニアを分解助剤Aとして供給すると以下のような反応が生じる。
[化3]
CF4+4H2→CH4+4HF
[化4]
SF6+4H2→H2S+6HF
[化5]
3CF4+8NH3→3CH4+4N2+12HF
[化6]
3SF6+8NH3→3H2S+4N2+18HF
【0118】
つまり、予熱された処理対象ガスFに対して分解助剤Aとしての水素あるいはアンモニアを添加すると、処理対象ガスFが予熱されていない場合に比べて[化3]ないし[化6]に示した分解反応が発生し易い。また、水素またはアンモニアを添加しても窒素酸化物が発生する原因となる酸素を反応器に導入することにはならず、窒素酸化物の副生を助長する心配なく、処理対象ガスFの分解効率を高めることができる。
【0119】
また、処理対象ガスFに水と反応するガスが含まれていない場合、ノズル60から添加された水はそのまま作動ガスGと接触して窒素酸化物の発生原因となりうる。そこで、処理対象ガスFに水と反応するガスが含まれているか否かを検知するようにして当該ガスが含まれていないときはストップバルブ68を閉じて水の添加を停止し、当該ガスが含まれているときはストップバルブ68を開けて水の添加を行うといった制御をすればよい。
【0120】
また、質量流量制御手段38の比較制御回路44に与える流量設定信号L1として、温度検出手段58が出力する可変の信号に替えて作動ガスGの送給量を一定にするような所定の信号を与えるとともに、図7に示すように、新たに電源ユニット18が出力する電力を制御する電力制御手段126を設け、この電力制御手段126に温度検出手段58が出力する信号を電流切替信号として与えるようにしてもよい。
【0121】
電力制御手段126は、電源ユニット18の出力する電力を可変させるためのものであり、電流検出器128と電流設定手段130とを有する。
【0122】
電流検出器128は、カレントトランス(CT)などで構成され、電源ユニット18の出力電流を検出して当該検出電流値に対応した所定の電圧を出力するものである。
【0123】
電流設定手段130は、図8に示すように、可変式の基準電圧出力手段132(本実施例の場合はボリューム)および比較増幅器134で構成されており、電流検出器128が出力する電圧と基準電圧出力手段132が出力する基準電圧とを比較増幅器134で比較・増幅し、電源ユニット18のインバータ30に向けて所定の電流設定信号を出力し、これによりインバータ30を可変操作するものである。ここで、基準電圧出力手段132は、配線を介して温度検出手段58から与えられる電流切替信号によって自動的に切替えられるようになっている。また、基準電圧出力手段132としてボリュームを用いた場合には、電流設定手段130によるインバータ30の可変操作が機械的な制御になるが、基準電圧出力手段132として温度検出手段58から与えられる電流切替信号に基づいて所定のアナログ電圧を出力するD/Aモジュール(図示せず)を用い、電流設定手段130によるインバータ30の可変操作をリニアな連続制御とするようにしてもよい。
【0124】
また、反応器22内の温度を検出する温度検出手段58を設け、作動ガス送給ユニット20には温度検出手段58が検出した温度検出値に基づきプラズマ発生室16d内に送給する作動ガスGの量を制御する質量流量制御手段38を設けるとともに、電源ユニット18には温度検出手段58が検出した温度検出値に基づきプラズマ発生装置16の電極16b、16cに供給する電力量を制御する電力制御手段126を取付けるようにしてもよい。
【0125】
さらに、本実施例では、入口スクラバー14と出口スクラバー15とを別々に設けているが、1つの水貯留槽の上部に入口スクラバー本体94および出口スクラバー本体112を立設して水貯留槽を共通化してもよい。このとき、入口スクラバー本体94の内部と出口スクラバー本体112の内部とが互いに直接連通しないように隔壁などを設ける必要があることはいうまでもない。
【0126】
また、本装置は、フッ化化合物以外にも、熱分解することのできるガスであれば、どのようなガスの処理にも用いることができる。
【0127】
また、入口スクラバー14や出口スクラバー15において噴射する水Wに、処理対象ガスF中に含まれる固形成分や水溶性成分の水洗に適した薬剤を添加するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明における一実施例のガス処理装置を示す構成図である。
【図2】本発明における一実施例の電源ユニットを示す回路図である。
【図3】本発明における一実施例の質量流量制御手段を示す構成図である。
【図4】本発明における一実施例のプラズマ分解機を示す構成図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】本発明における一実施例の熱交換器本体を示す構成図である。
【図7】電力制御手段を備える実施例を示す図である。
【図8】本発明における一実施例の電力制御手段を示す構成図である。
【図9】従来のプラズマ分解機を示す図である。
【符号の説明】
【0129】
A… 分解助剤
C… 冷却水
F… 処理対象ガス
G… 作動ガス
L1… 流量設定信号
L2… 温度検出信号
S1、S2… 流量信号
S3… 停止信号
S4… 作動信号
P… 大気圧プラズマ
R… 排ガス
S… 空間
10… ガス処理装置
12… プラズマ分解機
13… 冷却部
14… 入口スクラバー
15… 出口スクラバー
16… プラズマ発生装置
16a… トーチボディ
16b… アノード(電極)
16c… カソード(電極)
16d… プラズマ発生室
16e… プラズマ噴出孔
16f… 作動ガス送給口
18… 電源ユニット
20… 作動ガス送給ユニット
20a… 貯蔵タンク
20b… 作動ガス送給配管
22… 反応器
23… 分解助剤送給ユニット
24… 交流電源
26… 整流器
28… 直流フィルタ
30… インバータ
32… 変圧器
34… 整流器
36… 直流フィルタ
38… 質量流量制御手段
40… 流量センサ
42… コントロールバルブ
44… 比較制御回路
46… 外管
48… 内管
50… 処理対象ガス導入口
52… 処理対象ガス送給口
54… 段部
56… 耐火壁
58… 温度検出手段
58a… 熱電対
58b… コントローラ
60… ノズル
62… 配管
64… 流量計
66… 流量調整手段(流量調整バルブ)
68… ストップバルブ
69… 流量制御手段
70… 排ガス導入ダクト
72… 熱交換器
74… 排ガス排出ダクト
76… 耐火材
77… ケーシング
78… 伝熱管
80… プレート
82… 冷却水入口孔
84… 冷却水導入管
86… 冷却水出口孔
88… 冷却水排出管
90… 入口ダクト
92… 出口ダクト
94… 入口スクラバー本体
95… 水噴射手段
96… 入口ダクト接続孔
98… 出口ダクト接続孔
100… 水貯留槽
102… 水噴射ノズル
102a… スプレーノズル
102b… 配管
104… 水供給装置
106… 水供給制御手段
107… フィルタ
108… 入口ダクト
110… 出口ダクト
112… 出口スクラバー本体
114… 水噴射手段
116… 入口ダクト接続孔
118… 出口ダクト接続孔
120… 水貯留槽
122… 水噴射ノズル
122a… スプレーノズル
122b… 配管
124… 水供給装置
126… 電力制御手段
128… 電流検出器
130… 電流設定手段
132… 基準電圧出力手段
134… 比較増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧プラズマおよび前記大気圧プラズマに向けて供給される処理対象ガスを囲繞し、その内部にて前記処理対象ガスの熱分解を行う反応器を有し、窒素ガスを作動ガスとして使用するプラズマ分解機、および
前記プラズマ分解機から排出された熱分解後の前記処理対象ガスと前記作動ガスとを含む排ガスに酸素または水分が混入しない状態で、前記排ガスを少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却する冷却部を備えるガス処理装置。
【請求項2】
前記冷却部は、熱交換器を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記処理対象ガスに分解助剤として水分を送給する分解助剤送給ユニットを備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス処理装置。
【請求項4】
前記処理対象ガスに分解助剤として水素またはアンモニアを送給する分解助剤送給ユニットを備えていることを特徴とする、請求項1または2に記載のガス処理装置。
【請求項5】
前記分解助剤送給ユニットは、前記分解助剤を前記処理対象ガスに送給する配管と、前記配管内を通流する前記分解助剤の流量を調整する流量調整手段と、前記処理対象ガス中の処理対象物の流量信号に基づいて前記流量調整手段に前記処理対象物の流量に応じた前記分解助剤の流量信号を出力する流量制御手段とを有することを特徴とする、請求項3または4に記載のガス処理装置。
【請求項6】
前記反応器は外管および前記大気圧プラズマを囲繞する内管で構成された二重管構造を有しており、
前記外管には、前記処理対象ガスを前記外管と前記内管との間の空間に導入する処理対象ガス導入口が設けられており、
前記内管には、前記空間を通流した後の前記処理対象ガスを前記大気圧プラズマに向けて吹き込む処理対象ガス送給口が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のガス処理装置。
【請求項7】
前記分解助剤は、前記外管と前記内管との間の前記空間または前記処理対象ガス送給口に供給されることを特徴とする、請求項6に記載のガス処理装置。
【請求項8】
前記プラズマ分解機に供給された前記処理対象ガスを水洗する入口スクラバー、および
前記冷却部で冷却された前記排ガスを水洗する出口スクラバーを備えていることを特徴とする、請求項6または7に記載のガス処理装置。
【請求項9】
前記入口スクラバーは、前記処理対象ガスに向けて水を噴射する水噴射ノズルと、前記水噴射ノズルに前記水を供給する水供給装置と、前記処理対象ガス中の前記処理対象物の前記流量信号に基づき、前記処理対象物の流量がゼロのときは前記水供給装置を停止させ、前記処理対象物の流量がゼロより大きいときは前記水供給装置を作動させる水供給制御手段とを有することを特徴とする、請求項8に記載のガス処理装置。
【請求項10】
前記プラズマ分解機は、内部で発生させた前記大気圧プラズマを前記反応器に供給するプラズマ発生装置を備えていることを特徴とする、請求項6ないし9のいずれかに記載のガス処理装置。
【請求項11】
前記反応器には前記反応器内の温度を検出する温度検出手段が設けられており、
前記プラズマ分解機には、前記温度検出手段が検出した温度検出値に応じて、前記大気圧プラズマに送給する前記作動ガスの量を制御する質量流量制御手段が設けられていることを特徴とする、請求項1ないし10のいずれかに記載のガス処理装置。
【請求項12】
前記処理対象ガスがフッ化化合物であることを特徴とする、請求項1ないし11のいずれかに記載のガス処理装置。
【請求項13】
窒素ガスを作動ガスとして使用する大気圧プラズマに処理対象ガスを供給して前記処理対象ガスを熱分解し、
熱分解された前記処理対象ガスと前記作動ガスとを含む排ガスに酸素および水分が混入しない状態で、前記排ガスを少なくとも窒素酸化物が生成しない温度まで冷却するガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−194674(P2008−194674A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231860(P2007−231860)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(592010106)カンケンテクノ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】