説明

ガス状炭化水素の処理・回収方法

【課題】ガソリン蒸気中に含まれる水分の影響で吸着剤が被毒されることを防ぎ、小型で安価なガス状炭化水素の処理・回収装置及びその方法を得る。
【解決手段】ガソリン給油時に漏れ出すガソリン蒸気を処理するものにおいて、水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置9と、第一凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置10と、第二凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気の吸脱着装置11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気放出ガス中に含まれるガス状炭化水素の処理・回収装置及びその方法に係り、特に、ガソリンスタンドなどの給油施設等において、ガソリン等の揮発性に富む可燃性のガソリン蒸気を処理するための装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の吸脱着剤によるガス状炭化水素の除去方法に、排気ガス発生源から発生したガス(約40vol%のガソリン蒸気を含む排気ガス)をブロア又は自圧で、排気ガス送気管より吸着塔に送気し、吸着工程を終えた処理済み排気ガスを、吸着塔(脱着工程に切り換えた後は脱着塔)の頂部から排出管を介して、1vol%以下のガソリン蒸気を含む空気(クリーンなガス)として大気中に放出するようにしたものがある。
この場合、吸着塔は、上記の吸着工程と後記の脱着工程とを交互に切り換えながら運転するが、この切り換え時間(Swing Time)を5分程度としている。
【0003】
一方、吸着工程を終えた後の吸着塔に、パージ用ガス送気管を介してパージ用ガスを送気し、真空ポンプで吸引することにより脱着する。パージ用ガスとして吸着運転時に吸着塔の頂部から排出されるクリーンなガスの一部を使用し、真空ポンプは約25Torrで運転する。
脱着後のガソリン蒸気含有パージ排ガスは、送気管を介してガソリン回収器に送気し、分配管を通して液体ガソリンと接触させ、液体(ガソリン吸収液)としてパージ排ガス中のガソリン蒸気を回収する。
【0004】
ガソリン回収器からの排気ガス中には、僅かなガソリン蒸気が残存するので、返送管を介して再度排気ガス管に戻し、排気ガス発生源からの排気ガスと一緒にして吸着処理を行い、また、吸着塔内の吸着剤層を冷却するために内筒に冷却水を循環させている。
このように構成することにより、ガソリン蒸気はほぼ全量液体ガソリンとして回収でき、吸着塔から排出するガソリン蒸気の濃度は十分低くなり、大気汚染を引き起こさないレベルにすることができるとしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第2766793号公報(第3−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の真空ポンプでガソリン蒸気を脱着する回収方法では、ポンプの動力エネルギーが極めて大きくなり、現実的ではなかった。
また、大量の排気ガスを全量吸着処理するためには、吸着塔を大きくするか、吸着と脱着の切り換え時間(Swing Time)を短くすることが必要であるが、大きな吸着塔を使用する場合には、設置面積の問題や、吸着剤のコストの問題などが残されている。また、切り換え時間を短くすると吸着したガソリン蒸気を十分に脱着できなかったり、バルブなどの寿命が短くなるなどの問題があった。
更に、吸着塔を大きくして、大量の吸着剤を使用する場合、吸着塔の圧力損失が大きくなり、処理ガス流量が遅くなり、効率的に処理できないといった問題があった。
【0007】
さらに、ガソリン蒸気には必ず空気中の水分が含まれているが、従来の方式では、ガソリン蒸気とともにこの水分も同時に吸着されるため、吸着剤の吸着性能が低下する問題があった。
また、給油所の地下貯蔵タンクから漏れ出すガソリン蒸気の回収に用いる場合は、地下タンクに給油する時間帯に大量に発生するガソリン蒸気に対応する必要がある。そのため、装置能力をピークに合わせて設計する必要があり、装置を必要以上に大きくする必要があった。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、ガソリン蒸気中に含まれる水分の影響で吸着剤が被毒されることを防ぎ、さらに小型で安価なガス状炭化水素の処理・回収装置及びその方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るガス状炭化水素の処理・回収装置は、ガソリン給油時に漏れ出すガソリン蒸気を処理するものにおいて、水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置と、第一凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置と、第二凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気の吸脱着装置とを備えたものである。
【0010】
また、この発明に係るガス状炭化水素の処理・回収方法は、水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置と、第一凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置と、第二凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気の吸脱着装置とを備え、ガソリン給油時に漏れ出すガソリン蒸気を処理するものにおいて、吸脱着装置は、吸着塔と脱着塔を少なくとも1塔ずつ有しており、0℃以上の空間、−30℃以上の空間、吸着剤が充填された空間の順序でガソリン蒸気を処理するものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置と、ガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置と、ガソリン蒸気を吸着除去する吸脱着装置とを配設することにより、排気ガスを極めてクリーン(ガソリン濃度1Vol%以下)にでき、しかも小型で安価なガソリン蒸気回収装置を実現することができる。特に、ガソリン蒸気中に水分が含まれている場合でも、吸着剤が水分で被毒されるおそれが無いと共に、第一凝縮装置や吸脱着塔の配管内で結氷することがないため、安定な運転動作が実現できる。
また、2つの温度帯を作り、水分とガソリンの回収の役割を分離するようにしたことにより、水分が凍ることによる無駄なエネルギーの消費を低減することができ、省エネルギーのガソリン蒸気回収装置が実現できる。更に、第一凝縮装置と吸脱着塔では間接冷却を行い、第二凝縮装置では直接冷却を行うようにしたことにより、冷凍機のオンオフ運転に加えて、冷媒の流れを制御することで、凝縮装置の運転を制御することができ、省エネルギーのガソリン蒸気回収装置が実現できる。また、第ニ凝縮装置を設けてガソリン蒸気を効率よく回収してから、ガソリン蒸気を第一吸脱着塔に供給しているようにしているため、極めて少量の吸着剤でガソリン蒸気を吸着でき、吸着剤の使用量を大幅に低減することができる。
さらに、ガソリン吸着動作が終了後に、時間をかけて第一吸脱着塔に貯留されているガソリンの回収操作を実施することにより、第一吸脱着塔に付設した脱着関連機器の性能を小さくすることができ、安価なガソリン蒸気回収装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【0013】
図1において、1はガソリンを貯蔵するガソリン貯蔵タンク、2はガソリン貯蔵タンク1にタンクローリなどからガソリンを給油する際に使用する給油パイプ、3a、3b、3cはガソリン蒸気含有空気の流れ方向を切り換える三方切換弁、4は三方切換弁3aによってガソリン蒸気が大気に排出される通路に備えられた圧力調整弁、5は冷凍機、6は冷凍機5に接続され、温度媒体(ブライン液など)を冷却する熱交換器、7は熱交換器6によって冷却された温度媒体を収容する温度媒体槽、8は冷却された温度媒体を温度媒体槽7から送り出す液体循環ポンプ、9は液体循環ポンプ8によって送られた温度媒体によって冷却される第一凝縮装置、10は冷凍機5によって冷却される第二凝縮装置、11は液体循環ポンプ8によって送られた温度媒体によって冷却される第一吸脱着塔、12a、12bは第一吸脱着塔11および第二吸脱着塔16から排出されるガソリン蒸気を除去した空気が通過する二方弁、13は第一吸脱着塔12に吸着されたガソリンをガソリン蒸気として第一吸脱着塔12から取り出す吸引ポンプ、14は吸引ポンプ13によって取り出されたガソリン蒸気含有空気を加圧圧縮する加圧ポンプ、15は加圧ポンプ14によって加圧圧縮されたガソリン蒸気含有空気からガソリンを液化回収する第三凝縮装置、16は第三凝縮装置15から排出されたガソリン蒸気含有空気からガソリンを吸着回収する第二吸脱着塔、17a、17bは第一吸脱着塔11および第ニ吸脱着塔16に備えられている流量調節弁、18は液化されたガソリンをガソリン貯蔵タンク1に戻すガソリン配管、19は第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16内の圧力を調節する圧力コントローラである。上記第一凝縮装置9、第二凝縮装置10、第一吸脱着塔11は、ガソリン蒸気の流れ方向の上流側(前段)から下流側(後段)に向かって順次配置され、かつ据付け位置的には下部から上部に向かって積層されている。
【0014】
次に、図1のガス状炭化水素の処理・回収装置の動作について説明する。本実施の形態に示す装置の運転は、通常、吸着工程、第一再生工程、第二再生工程の3つのステップで行なわれる。まず、吸着工程について説明する。通常、三方切換弁3aは大気排出側につなげられ、ガソリン貯蔵タンク1の圧力が圧力調整弁4によって制御され、ガソリン貯蔵タンク1の圧力が所定圧力よりも高くならないようになっている。
【0015】
ガソリン給油が開始される際には、三方切換弁3aが回収装置側に切り換えられると共に、二方弁12aが開く。また、三方切換弁3aが切り換えられ、タンクローリ車などからガソリン給油パイプ2を介してガソリン貯蔵タンク1に給油が開始されると、ガソリン貯蔵タンク1に充満しているガソリン蒸気がガソリン貯蔵タンク1から排出される。この時のガソリン蒸気のガソリン濃度は常温で30〜40vol%程度である。ガソリン貯蔵タンク1から排出されたガソリン蒸気は、三方切換弁3aを介して、第一凝縮装置9に送気される。第一凝縮装置9は、冷凍機5によって冷却された温度媒体が液体循環ポンプ8によって供給されることにより、間接的に冷却される。通常、第一凝縮装置9の内部は0℃から5℃程度に保たれており、ガソリン蒸気の一部およびガス中に含まれた水分が凝縮し、気液分離器(図示せず)などによって気体(ガソリン蒸気)と液体(ガソリン)に分離される。液体は第一凝縮装置9の下側に溜まり、ガソリン配管18を介してガソリン貯蔵タンク1に返送される。なお、図1では、第一凝縮装置9の下側からガソリン蒸気を流通するようにしているが、第一凝縮装置9の上方からガソリン蒸気を導入して下方に流通させることにより、液化したガソリンや水分が重力とガス流により効率的に下方に流され、これらの液化物の回収が容易になる。
【0016】
ところで、第一凝縮装置9の運転条件である、圧力0.1MPa、冷却温度5℃の条件では、ガソリン蒸気の濃度は20vol%程度になる。なお、ガソリン蒸気の飽和濃度を調べたところ、圧力0.1MPa、温度5℃では飽和ガソリン蒸気濃度は約20vol%であり、この条件ではガソリン蒸気濃度が理論的に20vol%以下になることはない。また、温度を下げることにより、第一凝縮装置9の出口でのガソリン蒸気濃度を低減することはできる。しかし、設定温度を氷点以下にすると、ガス中に含まれる水が第一凝縮装置9で結氷し、第一凝縮装置9内部での圧力損失を増大させるため、第一凝縮装置9の設定温度は0℃から5℃程度にすることが望ましい。
【0017】
続いて、第一凝縮装置9で処理できなかった20vol%程度のガソリン蒸気は第二凝縮装置10に供給される。第二凝縮装置10は、冷凍機5によって冷却された冷媒が第二凝縮装置10に供給されることにより、直接的に冷却される。通常、第二凝縮装置10の内部は−20℃から−10℃程度に保たれており、ガソリン蒸気の一部が凝縮し、気体(ガソリン蒸気)と液体(ガソリン)に分離される。液体は第一凝縮装置9の下側に溜まり、ガソリン配管18を介してガソリン貯蔵タンク1に返送される。なお、第二凝縮装置10の内部は氷点以下に冷却されているが、第一凝縮装置9で水分の大部分は取り除いているため、第二凝縮装置10で結氷する水分は非常に僅かである。また、図1では、第二凝縮装置10の下側からガソリン蒸気を流通するようにしているが、第一凝縮装置9の場合と同様、第二凝縮装置10の上方からガソリン蒸気を導入して下方に流通させることにより、液化したガソリンや水分が重力とガス流により効率的に下方に流され、これらの液化物の回収が容易になる。
【0018】
ところで、第二凝縮装置10の運転条件である、圧力0.1MPa、冷却温度−10℃の条件では、ガソリン蒸気の濃度は8vol%程度になる。なお、ガソリン蒸気の飽和濃度を調べたところ、圧力0.1MPa、温度−10℃では飽和ガソリン蒸気濃度は約8vol%であり、この条件ではガソリン蒸気濃度が理論的に8vol%以下になることはない。また、温度を下げることにより、第二凝縮装置10の出口でのガソリン蒸気濃度を低減することはできる。しかし、−30℃に冷却してもガソリン蒸気の濃度は5vol%程度であり、−30℃以下に冷却してもガソリン蒸気濃度はほとんど低下しないことがわかった。−30℃以下に冷却するには使用するエネルギーが増大するため、効率的なエネルギー利用ができない。したがって、第二凝縮装置10の設定温度は−30℃以上にすることが望ましい。
【0019】
続いて、第二凝縮装置10で処理できなかった8vol%程度のガソリン蒸気は第一吸脱着塔11に送気されて処理される。図1では、第一吸脱着塔11が吸着塔として動作している場合について示している。したがって、二方弁12aは開放(黒塗り)、流量調節弁17a(白抜き)は閉鎖の状態にある。吸着塔として任意の時間吸着処理した後は脱着塔として使用する。この場合には二方弁12aは閉鎖、流量調節弁17aは開放の状態で使用する。
【0020】
第一吸脱着塔11にはガソリン蒸気を吸着する吸着剤が封入されている。ガソリン蒸気の吸着剤としては、シリカゲルを用いた。特に4〜100オングストロームの孔径をもつシリカゲル又は合成ゼオライトの単独又はこれらの混合物が有効である。この吸着剤中をガソリン蒸気が通過することによりガソリン成分は吸着除去され、1vol%以下のガソリン濃度の清浄空気となって二方弁12aを介して大気に放出される。
【0021】
第一吸脱着塔11は、ガソリン蒸気の吸脱着の役割に関係なく、常に液体循環ポンプ8によって供給される温度媒体により一定温度に冷却されている。すなわち、第一凝縮装置9および第一吸脱着塔11の冷却系統は設定温度である0〜5℃に維持されるように常に運転制御されている。これは、第一吸脱着塔11に充填されているシリカゲルはフィンチューブ熱交換器などの熱交換器(図示せず)からの伝熱によって冷却されるため、ある程度の冷却時間が必要不可欠であり、瞬時の運転に対応できないためである。さらに、短時間に冷却できるように冷却能力が大きい冷凍機5を備えることは、設備コストに悪い影響を与え、安価なガソリン回収装置を提供できなくなるからである。なお、第一吸脱着塔11内部の温度を低くすることにより、吸着容量を大きくし、シリカゲルの使用量を低減することはできる。しかし、第一吸脱着塔11の内部温度を氷点以下にすると、第一吸脱着塔11内で水が結氷するために、シリカゲルなどの吸着剤に氷が徐々に蓄積されて、吸着剤のガソリン吸着能力が低下するという問題が発生する。したがって、第一吸脱着塔11の内部温度は氷点以上にする方がよい。
以上のことから、第一凝縮装置9および第一吸脱着塔11の冷却系統と第二凝縮装置10の冷却系統という温度帯が異なる2系統の冷却系統を有することにより、効率的なガソリン回収を行うことができる。
【0022】
第一吸脱着塔11は大気圧のガスを吸着するので、第一吸脱着塔11の外部構造の形状に制約を受けないが、脱着時には吸着塔内部の圧力は0.02MPa程度になるために、円筒構造としている。このような構造にすることにより、壁面にかかる圧力を均一化することができ、第一吸脱着塔11内の圧力が0.02MPa程度になっても、安全性の高い、すなわち形状変形などをすることのない吸脱着塔11が実現できる。また、第一吸脱着塔11の内部構造は、シリカゲル又は合成ゼオライトへの伝熱を考慮し、フィンチューブ熱交換器(アルミフィンで伝熱管に温度媒体を流す)を配置し、アルミフィンの間にシリカゲル又は合成ゼオライトを詰め込むと同時に、上下にシリカゲル流出防止ネットを設け、シリカゲルが配管に流出することを防止すると共に、ガスの流れをよくしている。この場合、シリカゲルへのガソリン蒸気の吸着を均一化するために、第一吸脱着塔11に均一にガソリン蒸気が流れるように、パンチングメタルなどで作られた整流板を設置するようにしてもよい。フィンチューブ熱交換器のフィンの向きは、ガソリン蒸気が流れる際の圧損にならないように、ガソリン蒸気の流れ方向と平行になるようにセットすることが望ましい。また、外壁近傍に充填されているシリカゲルを効率よく冷却するために、フィンチューブ熱交換器と外壁との間に隙間ができないようにする必要がある。
【0023】
この場合、ベントが有る側についてはベント部分に接触するような格子状や板状の金属(伝熱特性に優れたにアルミや銅が最適)を設け、ベントが無い側についてはフィンチューブ熱交換器のフィンそのものの長さを長くすることにより、外壁とフィンチューブ熱交換器の間の隙間を無くすようにすることが有効である。また、外壁とフィンチューブ熱交換器の間の隙間部分を無くすように、金属棒やフィン付きパイプなどを挿入するようにしてもよい。また、フィンチューブ熱交換器の伝熱管に温度媒体を流す場合、伝熱管に入る前に温度媒体が流れる配管を分岐し、フィンチューブ熱交換器を複数のブロックに分けて、並列に温度媒体を流すようにした方がよい。これにより、温度媒体が流れる配管の圧力損失を低減することができ、温度媒体を第一吸脱着塔11に供給する液体循環ポンプ8の容量を低減することができる。
【0024】
さらに、このケースでは、下から上に向かってガソリン蒸気が流れるので、フィンチューブ熱交換器と下部のシリカゲル流出防止ネットを接するように配置することが望ましい。これにより、シリカゲル流出防止ネットとフィンチューブ熱交換器の間に空間、すなわち、シリカゲルだけが充填されている空間を無くすことができ、吸着時にシリカゲルの冷却を十分に実施することができる。この結果、最も高いガソリン濃度のガソリン蒸気が入ってくる部分に存在するシリカゲルの温度が上昇するのを防止でき、安全な第一吸脱着塔11を提供することができる。なお、上から下にガソリン蒸気が流れる場合は、上部のシリカゲル流出防止ネットとフィンチューブ熱交換器を接することは言うまでもない。
【0025】
第一吸脱着塔11の前段に第一凝縮装置9および第二凝縮装置10を設けない場合は、第一吸脱着塔11に高濃度のガソリン蒸気が流れ込んでくると共に、ガソリン蒸気中に含まれた水分が吸着剤に吸着され、ガソリン蒸気の吸着性能が落ち、必要以上の量の吸着剤が必要になる。また、第一吸脱着塔11の温度を氷点下に下げた場合には、吸着剤表面に水分が結氷してガスが詰まるなど大きなトラブルが発生することがある。
本実施の形態は、第一吸脱着塔11の前段に第一凝縮装置9および第二凝縮装置10を設けているため、ガソリン蒸気とともに水分も除去されるので、第一吸脱着塔11における水分の悪影響を未然に防ぐことができる。また、第一吸脱着塔11で処理するガソリン量を大幅に低減できるため、第一吸脱着塔11を小さく、安価に製作することができる。さらに、本実施の形態ではガソリン貯蔵タンク1から排出した高濃度(40vol%)のガソリンを第一凝縮装置9で20vol%まで低減でき、第二凝縮装置10で8vol%まで低減できるため、第一吸脱着塔11で処理するガソリン量は全吸引量に対して20%(=8%/40%)に低減することができる。すなわち、第一吸脱着塔11の前段に第一凝縮装置および第二凝縮装置6を設けたことにより、第一吸脱着塔11の容積をおよそ1/5にすることができる。
【0026】
次に、第二凝縮装置10の冷却温度が第一吸脱着塔11のシリカゲル充填量に与える影響について述べる。図2は、第二凝縮装置10内部の冷却温度と、第一吸脱着塔11の出口でガソリン蒸気濃度を1vol%以下にする場合に必要なシリカゲル充填量の関係を示したものである。なお、第二凝縮装置10の冷却温度が5℃の場合に必要なシリカゲル量を基準として、シリカゲル低減量を示している。このように、第二凝縮装置10の冷却温度を低くすることにより、第一吸脱着塔11に充填するシリカゲル量を少なくできる。しかし、−30℃以下に冷却してもシリカゲル量がほとんど減らないことが判明した。色々な種類のガソリンについて実験で調べた結果、ガソリン蒸気の組成に関係なく、冷却温度を−30℃以下にしても、ガソリン蒸気の飽和濃度がほとんど低下しなくなるという事実がわかり、これがシリカゲル低減量の減少に影響していると考えられる。したがって、投入エネルギーを考慮した場合、第二凝縮装置10の冷却温度を−30℃以下にすることは効率的でなく、第二凝縮装置10の冷却温度を−30℃以上にすることが望ましい。
【0027】
次に、第一吸脱着塔11の再生工程、すなわち、ガソリン蒸気の脱着プロセスについて説明する。第一吸脱着塔11の再生工程は、第一吸脱着塔11からガソリンを脱着して、第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16を介して大気に排出する第一再生工程と、第二吸脱着塔16からガソリンを脱着して、第一凝縮装置9、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を介して大気に排出する第二再生工程の2つの工程がある。まず、第一再生工程について説明する。
【0028】
吸着剤に吸着したガソリンを脱着する場合には、吸引ポンプ13によって三方切換弁3bを介して第一吸脱着塔11からガスを吸引して吸着剤からガソリンを脱着する。このとき二方弁12aは閉鎖する。また、第一吸脱着塔11内の圧力が所定の圧力に低下すると、流量調節弁17aを開き、大気から一定流量の空気が第一吸脱着塔11に流れ込むようにし、第一吸脱着塔11内部の圧力がほぼ一定になるようにする。吸着時には第一吸脱着塔11は0.1MPaの大気圧状態で動作しているが、脱着時には吸引ポンプ13により大気圧以下に減圧されるため、この圧力差によって吸着剤に吸着したガソリンが高濃度に濃縮された状態で脱着される。この場合、ガソリン蒸気のガス流量や吸着時の吸着量にもよるが、第一吸脱着塔11内の圧力を0.02〜0.04MPaに制御することにより、ガソリン蒸気濃度を20〜40vol%にすることができる。
【0029】
脱着したガソリン蒸気は、三方切換弁3cを介して加圧ポンプ14に導かれる。加圧ポンプ14によりガソリン蒸気は0.3MPa程度に加圧されて、第3凝縮装置15に供給される。すなわち、第三凝縮装置15には、ガソリン濃度30vol%、圧力0.3MPaの高濃度・加圧ガソリン蒸気が供給されることになる。第三凝縮装置15は、冷凍機5によって冷却された温度媒体が液体循環ポンプ8によって供給されることにより、間接的に冷却される。通常、第三凝縮装置15内部は0℃から5℃程度に保たれており、ガソリン蒸気の一部およびガス中に含まれた水分が凝縮し、気液分離器(図示せず)などによって気体(ガソリン蒸気)と液体(ガソリン)に分離される。液体は第三凝縮装置15の下側に溜まり、ガソリン配管18を介してガソリン貯蔵タンク1に返送される。なお、図1に示すように、第三凝縮装置15の上方からガソリン蒸気を導入して下方に流通させることにより、液化したガソリンや水分が重力とガス流により効率的に下方に流され、これらの液化物の回収が容易になる。
【0030】
ところで、第三凝縮装置15の運転条件である、圧力0.3MPa、冷却温度5℃の条件では、出口のガソリン蒸気の濃度は8vol%程度になる。なお、ガソリン蒸気の飽和濃度線図からわかるように、圧力0.3MPa、温度5℃では飽和ガソリン蒸気濃度は約8vol%であり、この条件ではガソリン蒸気濃度が理論的に8vol%以下になることはない。また、温度を下げることにより、第三凝縮装置15の出口でのガソリン蒸気濃度を低減することはできる。しかし、設定温度を氷点以下にすると、ガス中に含まれる水が第三凝縮装置15で結氷し、第三凝縮装置15内部での圧力損失を増大させるため、第三凝縮装置15の設定温度は0℃から5℃程度にすることが望ましい。また、第三凝縮装置15では、0.3MPa程度に加圧されるため、円筒構造としている。このような構造にすることにより、壁面にかかる圧力を均一化することができ、第三凝縮装置15内の圧力が0.3MPa程度になっても、安全性の高い、すなわち形状変形などをすることのない第三凝縮装置15が実現できる。
【0031】
続いて、第三凝縮装置15で処理できなかった8vol%程度のガソリン蒸気は第二吸脱着塔16に送気されて処理される。図1では、第二吸脱着塔16が吸着塔として動作している場合について示している。したがって、二方弁12bは開放(黒塗り)、流量調節弁17b(白抜き)は閉鎖の状態にある。吸着塔として任意の時間吸着処理した後は脱着塔として使用する。この場合には二方弁12bは閉鎖、流量調節弁17bは開放の状態で使用する。
【0032】
第二吸脱着塔16にもガソリン蒸気を吸着する吸着剤が封入されており、第一吸脱着塔11と同様である。この吸着剤中をガソリン蒸気が通過することによりガソリン成分は吸着除去され、1vol%以下のガソリン濃度の清浄空気となって二方弁12bを介して大気に放出される。なお、第二吸脱着塔16も、ガソリン蒸気の吸脱着の役割に関係なく、常に液体循環ポンプ8によって供給される温度媒体により一定温度に冷却されている。すなわち、第一吸脱着塔11と同様に0〜5℃に維持されるように常に運転制御されている。また、第二吸脱着塔16は圧力が0.3MPa程度のガスを吸着し、脱着時には吸着塔内部の圧力は0.02MPa程度になるために、圧力の影響を受ける。このことから円筒構造としている。このような構造にすることにより、壁面にかかる圧力を均一化することができ、第二の吸脱着塔16内の圧力が0.03から0.3MPa程度に圧力スウィングされても、安全性の高い、すなわち形状変形などをすることのない第二吸脱着塔16が実現できる。更に、内部構造については、第一吸脱着塔11と同じ構造とすることが望ましい。
【0033】
このようにして、第一再生工程では、加圧状態で冷却、吸着されることにより、第一吸脱着塔11から排出されたガソリン蒸気を効率的に液化回収することができる。なお、脱着時には、第一吸脱着塔11内部の温度を高くすることにより、脱着速度を早くしたり、ガソリン蒸気濃度を濃くすることはできるが、温度をスウィングすることにより、消費エネルギーが増大するために、脱着時に温度を高くせず、吸着時と同じ温度で脱着を行うことがエネルギー的に効果的である。
【0034】
次に、第二吸脱着塔16からガソリンを脱着して、第一凝縮装置9、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を介して大気に排出する第二再生工程について説明する。第二吸脱着塔16内の吸着剤に吸着したガソリンを脱着する場合には、吸引ポンプ13により三方切換弁3bを介して第二吸脱着塔16からガスを吸引して吸着剤からガソリンを脱着する。このとき二方弁12bは閉鎖する。また、第二吸脱着塔16内の圧力が所定の圧力に低下すると、流量調節弁17bが開き、大気から一定流量の空気が第二吸脱着塔16に流れ込むようにし、第二吸脱着塔16内部の圧力がほぼ一定になるようにする。吸着時には第二吸脱着塔16は0.3MPaの大気圧状態で動作しているが、脱着時には吸引ポンプ13により大気圧以下に減圧されるため、この圧力差によって吸着剤に吸着したガソリンが高濃度に濃縮された状態で脱着される。この場合、ガソリン蒸気のガス流量や吸着時の吸着量にもよるが、第二吸脱着塔16内の圧力を0.02〜0.04MPaに制御することにより、ガソリン蒸気濃度を20〜40vol%にすることができる。
【0035】
脱着したガソリン蒸気は、三方切換弁3cを介して第一凝縮装置9に導かれる。すなわち、第一凝縮装置9には、ガソリン濃度30vol%、圧力0.1MPaの高濃度のガソリン蒸気が供給されることになる。前述したように、第一凝縮装置9の内部は0℃から5℃程度に保たれており、ガソリン蒸気の一部およびガス中に含まれた水分が凝縮し、気液分離器(図示せず)などによって気体(ガソリン蒸気)と液体(ガソリン)に分離される。続いて、第一凝縮装置9で処理できなかった20vol%程度のガソリン蒸気は、吸着時と同様に第二凝縮装置10により供給される。ここで更に液化回収され、第二凝縮装置10で処理できなかった8vol%程度のガソリン蒸気だけが第一吸脱着塔11に送気される。第一吸脱着塔11では、吸着剤中をガソリン蒸気が通過することによりガソリン成分は吸着除去され、1vol%以下のガソリン濃度の清浄空気となって二方弁12aを介して大気に放出される。
【0036】
以上述べたように、吸着工程、第一再生工程、第二再生工程を実施することにより、一連の動作が終了することになる。通常は、ガソリン貯蔵タンク1に給油がある毎に、これらの一連の操作を繰り返すことになる。この動作によって、最大でも1vol%のガソリン蒸気を大気に排出することしかなく、環境負荷が非常に小さいガス状炭化水素の処理・回収装置である。また、最大でも1vol%のガソリン蒸気を排出するだけであるため、40vol%のガソリン蒸気のうち39vol%まで回収でき、回収効率が97.5%と非常に高効率の回収装置である。また、2つの温度帯で凝縮操作を行ってから吸着操作を行うようにしているため、第一吸脱着塔11を大幅に小型化でき、装置全体をコンパクト化できるという効果も有している。
【0037】
なお、脱着時の第一吸脱着塔11および第二吸脱着塔16からのガソリン蒸気の排出口は、吸着時の第一吸脱着塔11および第二吸脱着塔16へのガソリン蒸気の供給口と同一部分に設けるようにしている。吸脱着塔11、16出口のガソリン蒸気濃度を1vol%以下になるように吸脱着塔11、16を運用しているため、吸着時には吸脱着塔11、16のガソリン蒸気吸入口の近傍では高密度にガソリン蒸気が吸着し、吸脱着塔11、16のガソリン蒸気排出口の近傍ではガソリン蒸気があまり吸着していない状態になっている。脱着時に吸脱着塔11、16から排出するガソリン蒸気を凝縮によって効率的に回収するには、ガソリン蒸気濃度をできるだけ高くする必要がある。したがって、高密度に吸着している部分からガソリン蒸気を排出する方が高濃度のガソリン蒸気を排出できるため、ガソリン蒸気が高密度に吸着している部分、すなわち、吸脱着塔11、16において吸着時のガソリン蒸気吸入口の近傍から、脱着時にガソリン蒸気を吸引排出するようにした方がよい。
【0038】
吸引ポンプ13による圧力差を利用する脱着方法だけでは、その効率があまり高くないため、パージガスを外部から導入することが有効であり、本実施の形態では吸引とパージガスによるガス置換を併用することにより、吸脱着塔11、16からのガソリン蒸気の脱着を行っている。本実施の形態では、吸脱着塔11、16に送るパージガスは大気中の空気である。空気には一定量の水分が含まれているため、パージガスの吸脱着塔11、16への供給をできるだけ少なくする必要がある。したがって、前述したように、脱着時には、ある時間経過し、吸脱着塔11、16内の圧力が所定の圧力に低下すると、流量調節弁17a、17bが開き、大気から一定流量の空気が吸脱着塔11、16に流れ込ませることにより、吸脱着塔11、16内部の圧力をほぼ一定にするようにして脱着を行っている。図3はパージガス量の制御方法を説明するための図である。このようにすることにより、時間経過に伴って吸引ガス量が低下することを防止でき、安定的にガソリン蒸気の脱着操作を行うことができる。
【0039】
パージガスの導入のタイミングとしては、タイマーなどを用いて脱着から一定時間経過した後にパージガスを導入する方式(タイマー方式)、吸脱着塔11、16の内部圧力が設定値に到達した時にパージガスを導入する方式(圧力計測方式)、吸脱着塔11、16から排出されるガソリン蒸気のガス量が設定値に到達した時にパージガスを導入する方式(ガス量計測方式)が考えられる。タイマー方式はイニシャルコストという点では最も有利であるが、吸脱着塔11、16に吸着しているガソリンの量によって、パージガスが導入されるタイミングがずれ、パージガス導入の有効性が軽減されるおそれがある。すなわち、吸着量が多いと、吸脱着塔11、16にガソリン蒸気が十分あるときにパージガスが導入されることになり、吸脱着塔11、16から排出されるガソリン蒸気濃度が低下する。逆に吸着量が少ないと、吸脱着塔11、16から排出されるガソリン蒸気ガス量が少ない時間帯が増加することになり、吸脱着塔11、16から効率的にガソリン蒸気を排出できなくなる。圧力計測方式およびガス量計測方式は、前述したタイマー方式の問題点を解消することができ、効率的な脱着を実現できる。なお、本ガソリン回収装置では、安全上、ガソリン蒸気が流れる配管系に圧力計をつけることが不可欠である。したがって、圧力計測方式はそれらの圧力計と兼用できるため、3つの方式の中で最も有効であると考えられる。
【0040】
ガソリンスタンドのガソリン貯蔵タンクへの給油は通常定期的に一定時間行われる。このため、ガソリン蒸気が発生するのは一日のうちの一定時間に限られている。したがって、装置の稼働率を高めるという観点にたてば、ガソリン蒸気が発生している時間帯は吸着操作を行い、ガソリン蒸気が発生していない時間帯に吸脱着塔11、16の再生を行うことが有効であると考えられる。次に、図4を用いて、ガス量を減らして長時間運転することによるガソリン回収の有効性を述べる。このように、ガス流量を減らすことにより、回収率が低下することがわかった。また、ガス流量が40L/min以上になると、回収率が増加しないことが明らかになった。これは、ガス流量が多くなると、流量調節弁17aから流入してくる空気量が多くなるため、ガソリン蒸気濃度がその空気によって薄められ、第三凝縮装置15でのガソリン凝縮量が低下するためである。したがって、第一吸脱着塔11からガソリン蒸気を脱着する場合には、ガス流量は多くとも40L/minとすることが望ましいことがわかった。以上のことから、低流量で長時間をかけて第一吸脱着塔11を再生することにより、高効率で回収することができる。
【0041】
次に、ガス状炭化水素の処理・回収装置の制御方法について説明する。回収装置が停止時には、吸引ポンプ13や加圧ポンプ14が停止し、二方弁12a、12bが全閉状態で、流量調節弁17a、17bが閉まった状態になっている。第一吸脱着塔11および第二吸脱着塔16が冷凍機5によって冷却された温度媒体により冷却されている。ガソリン貯蔵タンク1に給油が開始される状態になると、三方切換弁3aが切り換わると共に、二方弁12aが開き、第二凝縮装置10の冷却が開始される。第二凝縮装置10内部の温度が設定値に達すると、ガソリン蒸気の回収が開始される。ガソリン貯蔵タンク1への給油およびガソリン蒸気の発生が終了すると、三方切換弁3aが切り換わると共に、二方弁12aが閉まり、第二凝縮装置10の冷却が停止する。その後、二方弁12bが開くと共に、吸引ポンプ13および加圧ポンプ14が稼動すると、第一吸脱着塔11からガソリン蒸気が脱着され、第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16を通過して大気に排出される。この際、吸引ポンプ13の稼動により第一吸脱着塔11内の圧力が所定濃度に低下すると、流量調節弁17aが開き始め、第一吸脱着塔11に所定の流量が流れるように流量調節弁17aの開度が制御される。タイマーなどにより、第一再生工程が終了すると、吸引ポンプ13や加圧ポンプ14が停止し、流量調節弁17aが閉まった状態になり、二方弁12bが閉状態になる。その後、第二凝縮装置10の冷却が開始され、第二凝縮装置10内部の温度が設定値に達すると、第二吸脱着塔16の再生が開始される。二方弁12aが開くと共に、吸引ポンプ13および加圧ポンプ14が稼動すると、第二吸脱着塔16からガソリン蒸気が脱着され、第一凝縮装置9、第二凝縮装置10、第一吸脱着塔11の順で通過して大気に排出される。この際、吸引ポンプ13の稼動により第二吸脱着塔16内の圧力が所定濃度に低下すると、流量調節弁17bが開き始め、第二吸脱着塔16に所定の流量が流れるように流量調節弁17bの開度が制御される。一定時間、再生処理が完了すると、第二凝縮装置10の冷却が停止すると共に、吸引ポンプ13や加圧ポンプ14が停止し、二方弁12a、12bが全閉状態で、流量調節弁17a、17bが閉まった状態になる。このようにして、回収装置の運転が繰り返される。
【0042】
最後に、加圧ポンプ14および圧力コントローラ19を用いて、第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16の内部圧力を高めることの効果について述べる。図5は第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16の内部圧力と第二吸脱着塔16に充填される吸着剤の重量の関係を示したものである。このように、内部圧力を高めることにより、シリカゲルの充填量を少なくできることが明らかになった。しかし、0.4MPa以上にしてもシリカゲル充填量はほとんど減らないことがわかった。一方、圧力を高めると、第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16の耐圧性を高める必要があるため、装置が高コストになる。したがって、第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16の内部圧力は0.2〜0.3MPaとすることが効率的であることを確認できた。なお、図6は、加圧ポンプ14と圧力コントローラ19を備えないていないガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。これにより、装置を構成する部品点数を減らすことができる。しかし、第二吸脱着塔16に使用するシリカゲル量が2倍以上になるため、第二吸脱着塔16が大きくなり、装置コストはそれほど低下しないことがわかった。
以上のことから、加圧ポンプ14と圧力コントローラ19を設けて、第三凝縮装置15および第二吸脱着塔16の内部圧力を高くても0.4MPaに、望ましくは0.2〜0.3MPaに高めることにより、安価な回収装置を提供できる効果がある。
【0043】
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態2と上記実施の形態1との違いは、三方切換弁3aを用いない点である。この実施の形態2では、図7で示すように、三方切換弁3aは不要になり、バルブ21を新たに備えることになる。このような構成にし、圧力調整弁4の設定値よりも回収装置における圧力損失を小さくすることにより、通常は回収装置にガソリン蒸気が流れ、回収装置にガスのつまりなどの不具合が発生した場合に、自動的に圧力調整弁4を経由してガソリン蒸気を大気に排出することができるようになる。なお、この実施の形態2の回収装置は2つの温度帯を有する凝縮により吸着剤の使用量を非常に少なくでき、回収装置の圧力損失を極限まで低減できたために、このような装置が実現できる。
これにより、回収装置にガスのつまりなどが発生しても、回収装置およびガソリン貯蔵タンク1内の圧力が圧力調整弁4の設定値よりも高くなることはなく、安全な回収装置を提供できる効果がある。
【0044】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
上記実施の形態1では、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14が連続して設置されていたが、この実施の形態3においては、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14の間に一定容積を有する圧力バッファ容器31および圧力計測器32を設けることにより、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14の間の圧力をモニタリングすることにより、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14の運転の誤動作を検出することができ、危険な運転を未然に防止できる。すなわち、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14との間の圧力が負圧になった場合の加圧ポンプ14の能力低下、または、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14との間の圧力が正圧になった場合の吸引ポンプ13の能力低下を防止することができる。また、吸引ポンプ13と加圧ポンプ14の間に一定容積の空間を備えることにより、急激な圧力変動を緩和することができ、余裕のある運転異常検出を実現できる。
これにより、回収装置内の吸脱着塔11、16からの脱着工程において、吸引ポンプ13または加圧ポンプ14の不具合を検出することができると共に、不具合の急激な拡大を防止でき、安全な回収装置を提供できる効果がある。
【0045】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態4と上記実施の形態1との違いは、第一吸脱着塔11の再生時におけるガス処理のフロー、すなわち、実施の形態1に示した第二再生工程が異なる点である。そして、この実施の形態4では、図9で示すように、三方切換弁3cが吸引ポンプ13と加圧ポンプ14の間ではなく、第三凝縮装置15と第二吸脱着塔16の間に設けられている。また、第三凝縮装置15内の圧力を調節する圧力コントローラ19bが第二吸脱着塔16内の圧力を調節する圧力コントローラ19aとは別に設けられている。
実施の形態1では、第二吸脱着塔16から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、第一凝縮装置9に供給され、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を通過して大気に排出される。しかし、この実施の形態4では、第二吸脱着塔16から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧され、第三凝縮装置15に供給される。その後、第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を通過して大気に排出される。このようなフローにすることにより、加圧ポンプ14を有効に利用することができ、第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は効率よく回収することができる。なお、冷凍機5の冷媒の蒸発温度を下げられない場合には、このようなフローを利用することが有効であり、効率よくガソリンを回収できる効果がある。
【0046】
実施の形態5.
図10はこの発明の実施の形態5に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態5と上記実施の形態1との違いは、第一吸脱着塔11の再生時におけるガス処理のフロー、すなわち、実施の形態1に示した第一再生工程が異なる点である。実施の形態1では、図1で示すように、第三凝縮装置15の後段に第二吸脱着塔16を設置していたが、この実施の形態5においては、図10に示すように、第三凝縮装置15の後段にガス貯留容器41を備えている点である。また、42はガス貯留容器41と三方切換弁3bの間に設けたマスフローコントローラとしての流量調節弁、43はガス貯留容器41と第三凝縮装置15の間に設けた締切弁である。
実施の形態1では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ13によって加圧されて、第三凝縮装置15に供給される。第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は、第二吸脱着塔16を通過して大気に排出される。しかし、この実施の形態5では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧され、第三凝縮装置15に供給される。ここまでは実施の形態1と同じであるが、その後、第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は、そのままガス貯留容器41に冷却、加圧圧縮された状態で封入される。ガス貯留容器41の圧力が所定圧力になると、第一再生工程が終了する。その後、ガス貯留容器41に貯留されたガソリン蒸気は、流量調節弁42を介して第一吸脱着塔11に供給され、第一吸脱着塔11内の吸着剤によってガソリン蒸気が除去され、大気に排出される。このような構成および処理フローにすることにより、システム構成を簡素化でき、装置を低コスト化できる。また、吸引ポンプ13および加圧ポンプ14の稼働時間を低減することができ、省エネルギーを図ることができる。
以上のことから、第二吸脱着塔16の代わりにガス貯留容器41を備えることにより、低コストで省エネルギーな回収装置を提供できる効果がある。
【0047】
実施の形態6.
図11はこの発明の実施の形態6に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態6と上記実施の形態1との違いは、第一吸脱着塔11の再生時におけるガス処理のフロー、すなわち、実施の形態1に示した第一再生工程が異なる点および第二再生工程が無くなる点である。また、構成機器としては、実施の形態1では、図1で示すように、第三凝縮装置15の内部は温度媒体によって0〜5℃に冷却されていたが、この実施の形態6においては、図11に示すように、冷凍機5から冷媒によって直接冷却できるようにした第四凝縮装置51を備え、第二吸脱着塔16をなくした点である。
実施の形態1では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧されて、第三凝縮装置15に供給される。第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は、第二吸脱着塔16を通過して大気に排出される。しかし、この実施の形態6では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧され、第四凝縮装置51に供給される。この第四凝縮装置51の内部は冷凍機5よって冷却された冷媒によって直接冷却され、−30℃程度になっている。圧力0.3MPa、冷却温度−30℃の条件では、ガソリン蒸気の濃度は1vol%程度になる。したがって、そのまま大気に放出される。このことにより、システム構成を簡素化でき、装置を低コスト化できる。また、第三再生工程を無くすことができ、吸引ポンプ13および加圧ポンプ14の稼働時間を低減することができ、省エネルギーを図ることができる。
以上のことから、第三凝縮装置15の代わりに第4凝縮装置51を備えることにより、低コストで省エネルギーな回収装置を提供できる効果がある。
【0048】
実施の形態7.
図12はこの発明の実施の形態7に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態7と上記実施の形態1との違いは、第一吸脱着塔11と同等の性能、大きさの第三吸脱着塔61を第一吸脱着塔11と並列に備えるようにし、第二吸脱着16を無くした点である。すなわち、第一吸脱着塔11で第二凝縮装置10から排出されたガソリン蒸気を吸着すると同時に、第三吸脱着塔61から吸着しているガソリン蒸気を脱着するようにした点が異なる。
【0049】
図において、61は第一吸脱着塔11と仕様が同じであり、第一吸脱着塔11と並列に備えられた第三吸脱着塔、62a、62bは第二凝縮装置10から排出されたガソリン蒸気を第一吸脱着塔11または第三吸脱着塔61に導く吸着用バルブ、63a、63bは第一吸脱着塔11または第三吸脱着塔13からガソリン蒸気を脱着する際に使用する脱着用バルブ、64a、64bは第一吸脱着塔11または第三吸脱着塔13から処理したガソリン蒸気を大気に排出するための排気バルブ、65a、65bは第一吸脱着塔11または第三吸脱着塔13からガソリン蒸気を脱着する際に、第一吸脱着塔11または第三吸脱着塔13に空気を導入するガス流量調節バルブである。
【0050】
次に、動作について説明する。この実施の形態7に示す装置の運転は、通常、吸着工程、再生工程の2つのステップで行なわれる。まず、吸着工程について説明する。ガソリン給油が開始される際には、三方切換弁3aが回収装置側に切り換わる。三方切換弁3aが切り換わり、タンクローリ車などからガソリン給油パイプ2を介してガソリン貯蔵タンク1に給油が開始されると、ガソリン貯蔵タンク1に充満しているガソリン蒸気がガソリン貯蔵タンク1から排出される。この時のガソリン蒸気のガソリン濃度は常温で30〜40vol%程度である。ガソリン貯蔵タンク1から排出されたガソリン蒸気は、三方切換弁3aを介して、第一凝縮装置9に送気される。第一凝縮装置9は、冷凍機5によって冷却された温度媒体が液体循環ポンプ8によって供給されることにより、間接的に冷却される。通常、第一凝縮装置9内部は0℃から5℃程度に保たれており、ガソリン蒸気の一部およびガス中に含まれた水分が凝縮し、気液分離器(図示せず)などによって気体(ガソリン蒸気)と液体(ガソリン)に分離される。液体は第一凝縮装置9の下側に溜まり、ガソリン配管18を介してガソリン貯蔵タンク1に返送される。
【0051】
続いて、第一凝縮装置9で処理できなかった20vol%程度のガソリン蒸気は第二凝縮装置10に供給される。第二凝縮装置10は、冷凍機5によって冷却された冷媒が第二凝縮装置10に供給されることにより、直接的に冷却される。通常、第二凝縮装置9内部は−20℃から−10℃程度に保たれており、ガソリン蒸気の一部が凝縮し、気体(ガソリン蒸気)と液体(ガソリン)に分離され、凝縮されなかったガソリン蒸気のみが排出されることになる。液体は第一凝縮装置9の下側に溜まり、ガソリン配管18を介してガソリン貯蔵タンク1に返送される。なお、実施の形態1では、ガソリン貯蔵タンク1から排出されるガソリン蒸気を吸着している際には、脱着操作を行わないため、吸着操作が終了すると、第二凝縮装置10の冷却を停止していた。しかし、この実施の形態7では、ガソリン貯蔵タンク1から排出されるガソリン蒸気を吸着している際にも、もう一方の吸脱着塔からガソリン蒸気の脱着操作を行うため、回収を行っている際には、第二凝縮装置10の冷却を停止することはない。
【0052】
続いて、第二凝縮装置10で処理できなかった8vol%程度のガソリン蒸気は吸脱着塔11、61に送気されて処理される。図12では、11が吸着塔、61が脱着塔として動作している場合について示している。したがって、吸着用バルブ62aは開放(黒塗り)、62b(白抜き)は閉鎖の状態にある。吸着塔として任意の時間吸着処理した後は脱着塔として使用する。この場合は吸着用バルブ62aが閉鎖、62bが開放の状態で使用する。さらにガソリンの脱着が終了した時点で、再び吸着塔として用い、この動作を時間的に繰り返して使用する。吸着・脱着の切り換えは、前述のように吸着バルブ62a、62bの切り換えでコントロールする。吸脱着塔11、61にはガソリン蒸気を吸着する吸着剤が封入されている。この吸着剤中をガソリン蒸気が通過することによりガソリン成分は吸着除去され、1vol%以下のガソリン濃度の清浄空気となって排気バルブ64aを介して大気に放出される。吸脱着塔11、61は、ガソリン蒸気の吸脱着の役割に関係なく、常に液体循環ポンプ8によって供給される温度媒体により一定温度に冷却されている。すなわち、第一凝縮装置9および吸脱着塔11、61の冷却系統は設定温度に維持されるように常に運転制御されている。
【0053】
次に、ガソリン蒸気の脱着プロセスについて説明する。吸着剤に吸着したガソリンを脱着する場合には、吸引ポンプ13により吸脱着塔61からガスを吸引して吸着剤からガソリンを脱着する。このとき脱着用バルブ63bは開放、63aは閉鎖にしておく。吸着時には吸着塔は0.1MPaの大気圧状態で動作しているが、脱着時には吸引ポンプ13により大気圧以下に減圧されるため、この圧力差によって吸着剤に吸着したガソリンが脱着される。脱着したガソリン蒸気は、加圧ポンプ14により加圧され、第三凝縮装置15に供給される。第三凝縮装置15内部の圧力は圧力コントローラ19によって0.3MPaの高圧状態に保たれており、高効率でガソリン蒸気が液化回収される。圧力コントローラ19から排出されたガソリン蒸気は第二凝縮装置9に戻され、ガソリン分を再度凝縮回収した後、再び吸脱着塔11に戻される。この操作を繰り返す間に、全量のガソリンが凝縮装置9、10、15において凝縮回収される。
【0054】
吸引ポンプ13の吸引による圧力差を利用する脱着方法だけでは、その効率があまり高くないため、パージガスを外部から導入することが有効である。この実施の形態7では、このパージガスとしてガス流量調節バルブ65bを介して吸脱着塔11から大気に排出する清浄なガスの一部を脱着塔61に送って使用している。この場合、ガス流量調節バルブ65bは開放状態で規定量のガスを流通できる状態であり、ガス流量調節バルブ65aは閉鎖になっていてガスは流れないようになっている。なお、この実施の形態7では、前段の第一凝縮装置9でガス中の水分量を十分低くしているため、パージガスに含まれる水分が第三吸脱着塔61内の吸着剤に悪影響を与えることは殆どない。
【0055】
ガソリンスタンドのガソリン貯蔵タンクへの給油は通常定期的に一定時間行われる。このため、ガソリン蒸気が発生するのは一日のうちの一定時間に限られている。したがって、装置の稼働率を高めるという観点にたてば、本実施の形態は吸着操作と脱着操作を同時に行うので、吸着操作と脱着操作をシリーズで行うことができ、かつ、脱着時間を長くすることができるという実施の形態1と比較すると、稼働率は低いと言える。しかし、吸着動作と脱着動作を同時に行うため、吸着操作や脱着操作を実施していない時、すなわち、ガソリン蒸気を回収しない場合は冷却を停止できることができ、冷却に使用していたエネルギーを少なくすることができ、省エネルギー機器ということができる。
以上のことから、吸着操作と脱着操作を同時に行いながら運転を行うことにより、省エネルギーで効率的なガソリン回収を行うことができる。
【0056】
次に、吸脱着塔11、61の切り換えについて説明する。この実施の形態7では、タイマーを用いて、吸脱着塔11、61の切り換えを行う場合について説明する。前述したように、ガソリン蒸気は第一吸脱着塔11を通過することによってガソリン成分が吸着除去され、ガソリン濃度が1vol%以下の清浄空気となって排出バルブ64aを介して大気に放出される。しかし、第一吸脱着塔11に供給されるガソリン蒸気量が増大するにつれて、第一吸脱着塔11の吸着能力が徐々に低下する。この状態が続き、第一吸脱着塔11出口でのガソリン濃度が1vol%に近づくと、吸脱着塔11、61の切り換えが必要になる。ガソリンスタンドにおいて、ガソリン貯蔵タンク1への給油は定期的に一定時間行われるため、回収開始後単純に一定時間で切り換えを行うのが最も簡単な制御となる。したがって、吸脱着塔11、61の切り換えは、三方切換弁3aが切り換った場合や、回収装置が動作をした際をスタート時間として一定時間の間隔で切り換えていくことが有効である。また、実際の切り換え動作としては、吸着用バルブ62a、62bを同時に閉じている状態を作らず、ガソリン蒸気が常に流れているようにして切り換えを実施する方がよい。すなわち、第一吸脱着塔11で吸着し、第三吸脱着塔61で脱着している場合、閉じている吸着用バルブ62b、脱着用バルブ63a、排出バルブ64bを開状態にし、次に元々開いていた吸着用バルブ62a、脱着用バルブ63b、排出バルブ64aを閉状態にして切換を実施する方がよい。これにより、吸脱着塔11、61にガソリン蒸気が供給されないようになることはなくなり、ガソリン貯蔵タンク1へのガソリン給油スピードが遅くなったり、ガソリン貯蔵タンク1内の圧力が高くなることがなくなり、安全なガソリン回収装置を提供することができる。
【0057】
最後に、この実施の形態7のガス状炭化水素の処理・回収装置の制御方法について説明する。回収装置が停止時には、吸引ポンプ13や加圧ポンプ14が停止し、吸着用バルブ62a、62b、脱着用バルブ63a、63b、排出バルブ64a、64bが全閉状態で、ガス流量調節バルブ65a、65bが閉まった状態になっている。三方切換弁3aが切り換えられ、給油が開始されると、運転信号を受けて、例えば、三方切換弁3aの切り換え信号を受けて、吸着用バルブ62a、脱着用バルブ63b、排出バルブ64aが開状態になり、ガソリン貯蔵タンク1への給油が開始されると、第一凝縮装置9、第二凝縮装置10、第一吸脱着塔11にガソリン蒸気が流れ込む。吸着操作の開始と同時に、吸引ポンプ13および加圧ポンプ14が稼動する。吸引ポンプ13の稼動により第三吸脱着塔61内の圧力が所定濃度に低下すると、ガス流量調節バルブ65bが開き始め、第三吸脱着塔61に所定の流量が流れるようにガス流量調節バルブ65bの開度が制御される。
【0058】
このようにして給油が一定時間続けられると、吸脱着塔11、61の切り換えが実施される。タイマーなどから切り換え信号を受けると、前述したように、閉まっていた吸着用バルブ62b、脱着用バルブ63a、排出バルブ64bが開状態になり、ガス流量調節バルブ65bが閉まった状態になる。次に、吸着用バルブ62a、脱着用バルブ63b、排気バルブ64aが開状態になり、第三吸脱着塔61が吸着操作となり、第一吸脱着塔11が脱着操作となる。吸引ポンプ13の稼動により第三吸脱着塔61内の圧力が所定圧力に低下すると、ガス流量調節バルブ65bが開き始め、第三吸脱着塔61に所定の流量が流れるようにガス流量調節バルブ65bの開度が制御される。このような手順で切り換え運転が繰り返され、ガソリン貯蔵タンク1への給油機が停止すると、三方切換弁3aが切り換えられ、その停止信号を受けて吸引ポンプ13や加圧ポンプ14が停止し、ガス流量調節バルブ65bが閉まった状態になり、吸着用バルブ62a、脱着用バルブ63b、排気バルブ64aが閉状態になる。
【0059】
以上のように、この実施の形態7に係るガス状炭化水素の処理・回収装置は、2つの温度帯の凝縮装置9、10と吸脱着塔11、61を組み合わせているので、最大でも1vol%のガソリン蒸気を排出することしかなく、環境負荷が非常に小さいガス状炭化水素の処理・回収装置である。また、最大でも1vol%のガソリン蒸気を排出するだけであるため、40vol%のガソリン蒸気のうち39vol%まで回収でき、回収効率が97.5%と非常に高効率の回収装置である。また、凝縮操作を行ってから吸着操作を行うようにしているため、吸脱着塔11、61を小型化でき、装置全体をコンパクト化できるという効果も有している。更に、吸着動作と脱着動作を同時に行うため、無駄な運転を低減することができ、ランニングコストを少なくすることができる。
【0060】
実施の形態8.
図13はこの発明の実施の形態8に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態8と上記実施の形態7との違いは、第一吸脱着塔11の再生時におけるガス処理のフローが異なる点である。また、構成機器としては、実施の形態8では、図13で示すように、図12における加圧ポンプ14、第三凝縮装置15、圧力コントローラ19を備えていない点である。
実施の形態7では、第三吸脱着塔61から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧されて、第三凝縮装置15に供給される。第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を通過して大気に排出される。しかし、この実施の形態8では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、第一凝縮装置9に供給される。第一凝縮装置9で、ガソリン貯蔵タンク1から排出されるガソリン蒸気と合流して、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を通過して大気に排出される。このことにより、システム構成を簡素化でき、装置を低コスト化できる。
以上のことから、加圧ポンプ14、第三凝縮装置15、圧力コントローラ19を無くすことにより、低コストで省エネルギーな回収装置を提供できる効果がある。
【0061】
実施の形態9.
図14はこの発明の実施の形態9に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
この実施の形態9と上記実施の形態7との違いは、第一吸脱着塔11の再生時におけるガス処理のフローが異なる点である。また、構成機器としては、実施の形態7では、図12で示すように、第三凝縮装置15の内部は温度媒体によって0〜5℃に冷却されていたが、この実施の形態9においては、図14に示すように、冷凍機5から冷媒によって直接冷却できるようにした第四凝縮装置51を備えている点である。
実施の形態7では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧されて、第三凝縮装置15に供給される。第三凝縮装置15を通過したガソリン蒸気は、第二凝縮装置10および第一吸脱着塔11を通過して大気に排出される。しかし、この実施の形態9では、第一吸脱着塔11から吸引ポンプ13によって脱着されたガソリン蒸気は、加圧ポンプ14によって加圧され、第四凝縮装置51に供給される。この第四凝縮装置51の内部は冷凍機5よって冷却された冷媒によって直接冷却され、−30℃程度になっている。圧力0.3MPa、冷却温度−30℃の条件では、ガソリン蒸気の濃度は1vol%程度になり、第一吸脱着塔11に供給される。このことにより、第一吸脱着塔11で吸着除去するガソリン蒸気量を低減することができ、吸脱着塔11、61の切り換え時間を長くすることができ、バルブの寿命を延ばすことができる。また、バルブの切り換え回数を減らすことができるため、より安定した運転を実現できる。
以上のことから、第三凝縮装置15の代わりに第4凝縮装置51を備えることにより、低コストで信頼性の高い回収装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施の形態1に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図2】冷却温度とシリカゲル充填量の関係を示す特性図である。
【図3】パージガス量の制御方法を説明するための特性図である。
【図4】処理ガス流量と回収率の関係を示す特性図である。
【図5】内部圧力とシリカゲル重点量の関係を示す特性図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図11】この発明の実施の形態6に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図12】この発明の実施の形態7に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図13】この発明の実施の形態8に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【図14】この発明の実施の形態9に係るガス状炭化水素の処理・回収装置のフローを示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ガソリン貯蔵タンク、2 給油パイプ、3 三方切換弁、4 圧力調整弁、5 冷凍機、6 熱交換器、7 温度媒体槽、8 液体循環ポンプ、9 第一凝縮装置、10 第二凝縮装置、11 第一吸脱着塔、12 二方弁、13 吸引ポンプ、14 加圧ポンプ、15 第三凝縮装置、16 第二吸脱着塔、17 流量調節弁、18 ガソリン配管、19 圧力コントローラ、21 バルブ、31 圧力バッファ容器、32 圧力計測器、41 ガス貯留容器、42 マスフローコントローラ、43 締切弁、51 第四凝縮装置、61 第三吸脱着塔、62 吸着用バルブ、63 脱着用バルブ、64 排気バルブ、65 ガス流量調節バルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリン給油時に漏れ出すガソリン蒸気を処理するためのガス状炭化水素の処理・回収装置において、
水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置と、前記第一凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置と、前記第二凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気の吸脱着装置とを備えたことを特徴とするガス状炭化水素の処理・回収装置。
【請求項2】
第一凝縮装置と第二凝縮装置の冷却温度を異なるようにしたことを特徴とする請求項1記載のガス状炭化水素の処理・回収装置。
【請求項3】
第一凝縮装置の冷却温度を0℃から5℃程度とし、第二凝縮装置の冷却温度を−30℃以上とすることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のガス状炭化水素の処理・回収装置。
【請求項4】
給油時に漏れ出すガソリン蒸気をガソリン貯蔵施設から回収する装置において、
ガソリン蒸気中に含まれる水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置と、前記第一凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置と、前記第二凝縮装置の後段のガス下流側に設けた第一吸脱着装置と、前記第一吸脱着装置からガソリン蒸気を取り出す吸引ポンプと、前記吸引ポンプで取り出したガソリン蒸気を加圧する加圧ポンプと、加圧されたガソリン蒸気を除去する第三凝縮装置と、前記第三凝縮装置で回収できなかったガソリン蒸気を回収する第二吸脱着塔とを備えたことを特徴とするガソリン蒸気の処理・回収装置。
【請求項5】
吸脱着装置の内部にフィンチューブ熱交換器を設け、該フインチューブ熱交換器のフィン間に吸着剤である孔径4〜100オングストロ−ムのシリカゲル又は合成ゼオライトの単独又はこれらの混合物を詰め込んだことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガス状炭化水素の処理・回収装置。
【請求項6】
冷凍または冷却装置によって温度制御された温度媒体を用いて冷却する冷却経路と、冷凍または冷却装置に充填されている冷媒を用いて冷却する冷却経路を用いて、凝縮装置および吸脱着装置の温度を制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のガス状炭化水素の処理・回収装置。
【請求項7】
水分およびガソリン蒸気を除去する第一凝縮装置と、前記第一凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気を除去する第二凝縮装置と、前記第二凝縮装置の後段のガス下流側に設けたガソリン蒸気の吸脱着装置とを備え、ガソリン給油時に漏れ出すガソリン蒸気を処理するためのガス状炭化水素の処理・回収するものにおいて、
前記吸脱着装置は、吸着塔と脱着塔を少なくとも1塔ずつ有しており、0℃以上の空間、−30℃以上の空間、吸着剤が充填された空間の順序でガソリン蒸気を処理することを特徴とするガス状炭化水素の処理・回収方法。
【請求項8】
前記吸脱着塔の再生時間を1時間以上とすることを特徴とする請求項7記載のガス状炭化水素の処理・回収方法。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかの装置によりガス状炭化水素を処理・回収することを特徴とするガス状炭化水素の処理・回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−28723(P2009−28723A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229690(P2008−229690)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【分割の表示】特願2006−117441(P2006−117441)の分割
【原出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000151346)株式会社タツノ・メカトロニクス (167)
【Fターム(参考)】