説明

ガラス板アッセンブリ、ガラス板表面の光触媒の活性化方法及びタイル施工構造

【課題】ガラス板又はガラスタイルの表面の光触媒を十分に励起させることができるガラス板アッセンブリ、ガラス板表面の光触媒の活性化方法及びタイル施工構造を提供する。
【解決手段】ガラス板4の室内側の表面には酸化チタンなどの光触媒層5が設けられ、室外側の表面にはUVカットフィルム等よりなるUVカット層6が設けられている。1次コイル11に交流を通電すると2次コイル10に誘導電流が流れ、UVLED8が紫外線を発光する。この紫外線は、ガラス板4内に入射し、全反射をくり返しながらガラス板4の全面に行き渡る。この紫外線が当ることにより、光触媒層5が励起され、光触媒作用が奏される。例えば、ガラス万4の室内側に結露等により水が付くと、薄く広がり、水滴状となることがなく、防曇あるいは水垢防止作用が奏される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に光触媒を設けたガラス板又はガラスタイルの利用に関するものであり、特にこの光触媒を紫外線で活性化するようにしたガラス板アッセンブリ、ガラス板表面の光触媒の活性化方法及びタイル施工構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒が超親水性を示したり、紫外線によって励起したときには活性酸素を発生し、付着している有機物を酸化分解する等の作用を奏することは周知である。
【0003】
ガラス板の表面に光触媒を設ける公知文献として特開2002−127310号がある。同号では、ガラス板の表面に熱線反射層を設け、その上に光触媒層を設けている。この光触媒層が有する親水性により、ガラス板表面に水滴が付着することが防止される。
【0004】
ガラス板の側端面から光をガラス板に入射させる公知文献として特開2004−12946号がある。同号では、ガラスの内部にマイクロクラック等の乱反射部分を設け、側端面からの光をガラス表面側へ散乱させ、ガラス板全体を発光板として機能させうるようにしている。
【特許文献1】特開2002−127310号
【特許文献2】特開2004−12946号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ガラス板又はガラスタイルの表面の光触媒を十分に励起させることができるガラス板アッセンブリ、ガラス板表面の光触媒の活性化方法及びタイル施工構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のガラス板アッセンブリは、紫外線透過性を有したガラス板と、該ガラス板の端面からガラス板内に紫外線を入射させる紫外線光源とを有するガラス板アッセンブリであって、該ガラス板の少なくとも一方の板面に光触媒が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のガラス板アッセンブリは、請求項1において、前記ガラス板の少なくとも一部を囲む枠が設けられており、該枠に前記紫外線光源が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3のガラス板アッセンブリは、請求項2において、該紫外線光源に対して給電するための2次コイルが一体に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4のガラス板アッセンブリは、請求項1ないし3のいずれか1項において、該ガラス板の一方の板面に光触媒が設けられ、他方の板面に紫外線カット層が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5のガラス板表面の光触媒の活性化方法は、少なくとも一方の板面に光触媒が設けられたガラス板の端面から紫外線を該ガラス板内に入射させ、この紫外線を該光触媒に当てることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6のタイル施工構造は、下地板に紫外線透過性を有した複数枚のガラスタイルが目地間隙をあけて張り付けられ、該目地間隙に目地材が充填されたタイル施工構造において、該ガラスタイルの前面に光触媒が設けられており、該目地材は紫外線透過性を有しており、一部の該ガラスタイルの端面から該ガラスタイル内に紫外線を入射させる紫外線光源が設置されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7のタイル施工構造は、請求項6において、該目地材は紫外線透過性を有したガラスビーズを含有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項8のタイル施工構造は、請求項6又は7において、該目地材の少なくとも前面側に光触媒が存在することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1のガラス板アッセンブリ及び請求項5のガラス板表面の光触媒の活性化方法では、ガラス板の端面から紫外線が入射され、この紫外線がガラス板表面の光触媒に当たることにより、光触媒が励起される。これにより、優れた防汚作用が奏される。
【0015】
請求項2のガラス板アッセンブリでは、紫外線光源がガラス板と一体になっているから、ガラス板の施工が容易である。
【0016】
請求項3のガラス板アッセンブリでは、この2次コイルに対峙させるようにして1次コイルを配置しておき、この1次コイルに交流を通電すると、2次コイルに誘導電流が流れ、紫外線光源が発光する。このガラス板アッセンブリは、該ガラス板アッセンブリを電源に直接に接続しないため、施工や交換等のメンテナンスが容易である。
【0017】
請求項4のガラス板アッセンブリにあっては、例えば紫外線カット層が室外側となるようにこのガラス板を設置することにより、室外への紫外線漏洩を防止することができる。
【0018】
請求項6のタイル施工構造にあっては、一部のガラスタイルの端面から紫外線を該ガラスタイル内に入射すると、この紫外線が紫外線透過性目地材を介して隣接ガラスタイルにも伝播するようになる。このため、紫外線光源を少なくしてもすべてのガラス板タイル表面の光触媒を励起させ、防汚することができる。
【0019】
請求項7の通り、この紫外線透過性を有した目地材としては、紫外線透過性を有したガラスビーズを含むものが好適である。
【0020】
請求項8の通り、この目地材にも光触媒を設けておくことにより、目地を防汚することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係るガラス板アッセンブリを採用したガラス窓の正面図、図2は図1のII−II線断面図、図3は実施の形態に係るタイル施工構造を示す断面図である。
【0022】
図1,2に示す窓は引き違い式窓であり、窓枠1にガラス戸2が左右方向スライド自在に装着されている。なお、本発明は、引き違い式以外の窓にも適用できる。
【0023】
このガラス戸2は、戸枠3と、該戸枠3に嵌め込まれたガラス板4とを有する。ガラス板4の室内側の表面には酸化チタンなどの光触媒層5が設けられ、室外側の表面にはUVカットフィルム等よりなるUVカット層6が設けられている。
【0024】
戸枠3の縦枠部の内部には、ガラス板4の端面に対峙して紫外線照射用UVLED8が設けられている。このUVLED8は基板9に取り付けられており、この基板9の反対側の面には2次コイル10が設けられている。この2次コイル10はUVLED8に給電可能に接続されている。窓枠1の縦枠部分には、この2次コイル10に対峙するように1次コイル11が設けられている。
【0025】
このように構成されたガラス窓において、1次コイル11に交流を通電すると2次コイル10に誘導電流が流れ、この電流によりUVLED8が紫外線を発光する。この紫外線は、ガラス板4内に入射し、全反射をくり返しながらガラス板4の全面に行き渡る。
【0026】
この紫外線が当ることにより、光触媒層5が励起され、光触媒作用が奏される。例えば、ガラス板4の室内側に結露等により水が付くと、薄く広がり、水滴状となることがなく、防曇あるいは水垢防止作用が奏される。また、ガラス板4に有機物が付着している場合には、光触媒作用によって生じた活性酸素によって分解され、防カビあるいは防汚作用等が奏される。
【0027】
この実施の形態ではガラス板4の室外側にUVカット層6が設けられているので、紫外線が外部に漏れることが防止される。また、1次コイル11と2次コイル10とによってUVLED8に給電するため、ガラス戸を電源に接続することが不要であり、施工やメンテナンスが容易である。
【0028】
図1,2は本発明の一例を示すものであり、本発明は他の態様をもとりうる。例えば、UVLEDの代わりに有機ELを用いてもよい。また、光触媒層5を室外側に設けてもよい。窓のタイプは引き違い式以外であってもよい。非開閉式の窓の場合、紫外線光源に対し商用電源から直に給電するように配線で接続してもよい。
【0029】
図3はガラス壁の実施の形態を示す断面図である。
【0030】
下地板20に接着剤21によって複数枚の紫外線透過性を有したガラスタイル22が目地間隙をあけて張り付けられている。ガラスタイル22の表面には光触媒層23が設けられている。目地間隙には紫外線透過性を有した目地材24が充填されている。この目地材24の表面には光触媒層24aが設けられている。
【0031】
ガラスタイル22のうち、最も端に位置するガラスタイル22の端面に対峙してUVLED25が設けられている。
【0032】
このUVLED25が点灯すると、該UVLED25からの紫外線がガラスタイル22の端面からその内部に入射し、全反射をくり返すことによりガラスタイル22の全体に行き渡る。また、ガラスタイル22の他の端面に達したの紫外線の一部は、該端面から紫外線透過性目地材24を通って、隣接するガラスタイル22に入射し、さらに隣接するガラスタイル22にも入射する。
【0033】
この紫外線が当ることにより、光触媒層23,24aの光触媒が励起し、結露防止、防カビ、防汚等の作用が奏される。
【0034】
この実施の形態では、目地材24が紫外線透過性を有しているため、一部のガラスタイル22にUVLEDを設けるだけで、複数のガラスタイル22及び目地材24の光触媒を励起させることができる。なおUVLEDの代りに有機UL等を用いてもよい。
【0035】
上記の紫外線透過性を有した目地材24としては、紫外線透過性のガラスビーズを多量に含んだものが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は実施の形態に係るガラス板アッセンブリを採用したガラス窓の正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】実施の形態に係るタイル施工構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
4 ガラス板
5 光触媒層
8,25 UVLED
10 2次コイル
11 1次コイル
22 ガラスタイル
24 目地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線透過性を有したガラス板と、該ガラス板の端面からガラス板内に紫外線を入射させる紫外線光源とを有するガラス板アッセンブリであって、
該ガラス板の少なくとも一方の板面に光触媒が設けられていることを特徴とするガラス板アッセンブリ。
【請求項2】
請求項1において、前記ガラス板の少なくとも一部を囲む枠が設けられており、該枠に前記紫外線光源が設けられていることを特徴とするガラス板アッセンブリ。
【請求項3】
請求項2において、該紫外線光源に対して給電するための2次コイルが一体に設けられていることを特徴とするガラス板アッセンブリ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該ガラス板の一方の板面に光触媒が設けられ、他方の板面に紫外線カット層が設けられていることを特徴とするガラス板アッセンブリ。
【請求項5】
少なくとも一方の板面に光触媒が設けられたガラス板の端面から紫外線を該ガラス板内に入射させ、この紫外線を該光触媒に当てることを特徴とするガラス板表面の光触媒の活性化方法。
【請求項6】
下地板に紫外線透過性を有した複数枚のガラスタイルが目地間隙をあけて張り付けられ、該目地間隙に目地材が充填されたタイル施工構造において、
該ガラスタイルの前面に光触媒が設けられており、
該目地材は紫外線透過性を有しており、
一部の該ガラスタイルの端面から該ガラスタイル内に紫外線を入射させる紫外線光源が設置されていることを特徴とするタイル施工構造。
【請求項7】
請求項6において、該目地材は紫外線透過性を有したガラスビーズを含有することを特徴とするタイル施工構造。
【請求項8】
請求項6又は7において、該目地材の少なくとも前面側に光触媒が存在することを特徴とするタイル施工構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−315892(P2006−315892A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138690(P2005−138690)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】