説明

ガラス板等ワークの切断方法及び装置

【課題】 ワークを回転円盤型のカッターによって切断するとき、液体を供給し冷却及び切断面の研磨を促進し、ワークの切断と切断面の仕上げを同時に行うことができるガラス板等ワークの切断方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ワークWの他側面に設置されて液体を貯留する切断液供給路9内に、カッター3の刃先を臨ませて移動させることにより、ワークWの切断部に切断液供給路9内の液体を供給しながらワークWを切断する方法とした。またワーク台2に支持されるガラス板等のワークWを一側面から回転円盤型のカッター3を切断方向に移動させて切断する切断装置1において、ワークWの他側面でワーク台2に液体を貯留する切断液供給路9を切断方向に沿わせて設け、ワークWを切断する際にカッター3の刃先を切断液供給路9内に挿入して移動させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス,合せガラス,金属複合ガラス等のガラス板やセラミックをカッターに液体を供給しながら切断するガラス板等ワークの切断方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜姿勢の載置台(ワーク台)に載置セットされる合せガラス等のガラス(板材)を、回転円盤型のカッターによって表面(上面側)から切断方向に移動させて切断する切断装置は既に公知である(例えば特許文献1。)。
この切断装置はワーク台に載置したガラスを上下動可能な移動台で挟持した状態で、上向きに切削する方向に回転するカッターを、ガラスの上面側で移動台に沿わせ上方から下方の切断方向に移動させながら切断する構造となっている。さらにカッターには給水管を設けガラスの切断部に水を供給し冷却する構造となっている。
【特許文献1】特開平8−325026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1で示される切断装置は、ワーク台に載置したガラスを移動台で挟持するので、上向き回転のカッターによる切断時にガラスの捩れや振動を防止する利点はあるが、カッターを移動可能に支持する移動台の上下機構が複雑化すること、及び切断工程毎に長大な移動台を挟持操作する煩雑な作業を要する等の欠点がある。
【0004】
また上向きに回転するカッターは、例えば微細合成ダイヤモンド砥粒をレジンボンド等の結合材によって極薄円盤のソリッド型に形成したものを用いて切断する場合に、回転方向上手側の切断コーナー部(下面側の切断コーナー部)は滑らかなエッジにすることができるが、回転方向下手側の切断コーナー部(上面側の切断コーナー部)には回転方向への欠けや返りを生じ易く、ギザギザ状の鋭利なエッジが形成される。
【0005】
この切断面に形成される鋭利なエッジは、ガラスの運搬や施工をする際に身体に切り傷を与える危惧があるため、一般に切断作業後に別工程によってエッジ部の面取り作業が行われコスト高になる等の問題がある。
またカッター側に給水管を設けた切断装置は、水によってガラスの切断部を冷却できるが、水はそのまま直下に落下したり回転方向下手側に放出されるので、切断作業時に生ずる切削粉やカッターから離脱した砥粒が水によって持ち回しされることなく排出され、切削粉等を混入した砥粒水が切断液として有効利用されていないものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのガラス板等ワークの切断方法及び装置は、第1に、ワーク台2に支持するガラス板等のワークWを一側面から回転円盤型のカッター3を切断方向に移動させて切断するに、上記ワークWの他側面に設置されて液体を貯留する切断液供給路9内に、カッター3の刃先を臨ませて移動させることにより、ワークWの切断部に切断液供給路9内の液体を供給しながら切断するワークの切断方法にしたことを特徴としている。
【0007】
第2に、切断液供給路9の一側と他側に、液体を供給する給液管27と供給される液体を排出する排液管29を設けて、液体を切断液供給路9に連続的に供給することを特徴としている。
【0008】
第3に、切断液供給路9から流出する液体の流出量を調節することにより、切断液供給路9内の液体量を調節することを特徴としている。
【0009】
第4に、ワーク台2に支持されるガラス板等のワークWを一側面から回転円盤型のカッター3を切断方向に移動させて切断する切断装置1において、上記ワークWの他側面でワーク台2に液体を貯留する切断液供給路9を切断方向に沿わせて設け、ワークWを切断する際にカッター3の刃先を切断液供給路9内に挿入して移動させる構成としたことを特徴としている。
【0010】
第5に、切断液供給路9を、カッター3を挿入して移動させる程度の巾にしたカッター案内溝33と、カッター案内溝33に沿って貯留した液体を供給する液路孔35とによって形成したことを特徴としている。
【0011】
第6に、切断液供給路9に液体を供給する複数のノズル孔37を有する給液管路36を切断液供給路9の近傍に沿って設けたことを特徴としている。
【0012】
第7に、給液管路36の一側と他側に液体を供給する給液管27と供給される液体を排出する排液管29を設け、排液管29側に液体の排出量を調節するバルブ28を設けたことを特徴としている。
【0013】
第8に、切断液供給路9の両側に、該切断液供給路9からワーク台2上に流出する液体を回収する液体回収路10,10を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成される本発明によれば、液体を貯留する切断液供給路内にカッターの刃先を臨ませて移動させ、ワークの切断部に切断液供給路内の液体を供給しながら切断する切断方法としたので、ワークを切断する際に生ずる切削粉等を切断液供給路の液体に効率よく簡単に混入することができる。また切削粉が混入された切断液をワークの切断部に確実に供給し、カッターの回転による切断作業時の冷却及び切断面の研磨を促進し、ワークの切断と切断面の仕上げを行うことができる。
【0015】
切断液供給路の一側から液体を供給し他側から排出し回転するカッターに対し液体を連続的に供給し、効率のよい冷却を簡単に行うことができる。また切削粉を混入した切断液を切断部に確実に供給し、ワークの切断面を綺麗に仕上げることができる。
【0016】
切断液供給路に設けたバルブの絞り操作等の流出量調節手段によって、切断液供給路内の液体の貯留量を多くしカッターに切断及び冷却に十分な液量を供給することができる。
【0017】
ワーク台に支持されるワークを一側面からカッターを切断方向に移動させて切断する切断装置に、ワークの他側面でワーク台に液体を貯留する切断液供給路を切断方向に沿わせて設けることにより、カッターの刃先を切断液供給路内に挿入した状態で切断方向に移動させてワークを切断するとき、切断方向への冷却を簡単に行うことができる。またワークの切断時に生ずる切削粉を切断液供給路内の液体に効率よく混入することができ、切削粉を混入した切断液を切断部に供給し、ワークの切断と切断面の研磨を同時に行うことができる。
【0018】
カッターを挿入移動させる小巾のカッター案内溝と、カッター案内溝に沿って設けた液路孔内に液体を十分に溜めることができ、切断時のカッターに対し液体をカッター案内溝から刃先側に確実に供給することができる。また切断時に生ずる切削粉等を受けてカッターに供給し持ち回しさせることができるので、ワークの切断面を綺麗に仕上げることができる。
【0019】
切断液供給路と近傍に沿って設けた給液管路を複数のノズル孔によって接続したことにより、切断液供給路の全長に対し給液管路から液体を均等に供給することができる。
【0020】
給液管路の一側と他側に液体を供給する給液管と供給される液体を排出する排液管を設け、排液管側に液体の排出量を調節するバルブを設けたことにより、回転するカッターに対し液体を簡単な構成によってガラス切断及び冷却に十分な液体を連続的に供給する。また切削粉を混入した切断液を切断部に確実に供給しワークの切断面を綺麗に仕上げることができる。
【0021】
切断液供給路と液体回収路の間に、ワークを液体を介しワーク台に支持する液体層を簡単に形成することができる。また液体層により切断部の冷却を促進すると共にカッターによる切断時の振動を緩衝することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図示する本発明の実施形態について説明する。図面において符号1は本発明の切断方法によってワークとなる合せガラス(以下単にガラスと言う)Wを綺麗な切断面で切断することができる切断装置を示す。この切断装置1はガラスWを所定の切断姿勢で載置するワーク台(載置台)2と、該ワーク台2に載置セットされたガラスWを切断するディスク回転型のカッター3を備えた切断ユニット4と、カッター3で切断されるガラスWの切断部に切断液を供給する給液構造(給液部)5等から構成される。
【0023】
上記各部の詳細な構成について説明する。先ずワーク台2は切断されるガラスWを支持する平面視方形状の板体で形成され、機体フレーム6によってカッター3が移動する切断方向に沿う傾斜姿勢で支持される。
このワーク台2は低位となる前側左右方向に沿って棒状又は柱状のガラス受具7を突設し、ワーク台2に載置されるガラスWの下側を受け止め支持しながら、横方向にスライド移動可能に支持することができる。
【0024】
またワーク台2はガラス受具7に沿って切断位置決め具8を横方向に移動調節可能に備えている。この切断位置決め具8はガラス受具7に沿って設けられた目盛付きのスケールバー8aに移動調節可能に組付け構成され、ガラスWの左端面に接当させてカッター3による切断位置への繰り出し量を設定することができる。
【0025】
そして、ワーク台2の右端側にはガラス受具7に直交する方向に、カッター3の刃先を挿入して移動させる切断液供給路9を縦溝状に形成し切断移動経路にしている。
また図示例のワーク台2は切断液供給路9の両側に凹溝状の液体回収路10,10を略平行状に穿設している。この液体回収路10,10は、後述する給液構造5の切断液供給路9からガラスWの裏側に向けて供給される液体を回収することができる。
【0026】
この構成によりワーク台2に載置されるガラスWは、その左端に切断位置決め具8を接当させた状態で、図2の点線で示す位置から実線で示すように必要寸法だけ移動することにより、カッター3の切断位置(切断移動経路)から左端までの長さを簡単に定めることができる。
またワーク台2は切断液供給路9の上方に、側面視でゲート型をなす支持フレーム11を機体フレーム6の前後側から立設し、上部フレーム12に切断ユニット4を設置している。
【0027】
次に切断ユニット4について説明する。図1,図4で示すように切断ユニット4は、横向きH型断面をなす上部フレーム12に沿って上下動するリニア駆動部13を取付固定し、その移動子に切断部台(カッター支持フレーム)15を取付支持している。切断部台15は上部フレーム12とリニア駆動部13を囲う箱型フレームの下面に、ブラケットを介し回動支持軸16を設け、該回動支持軸16の中途部にカッターフレーム17を取付けている。
回動支持軸16は端部に設けたアーム18を、切断部台15の一側に設けた伸縮シリンダー19の作動子(ピストン)と連結している。
【0028】
カッターフレーム17は図1で示すように、回動支持軸16の前後位置にカッター3と駆動モーター20を配設している。図4で示すようにカッター3は、カッターフレーム17に軸支されるカッター軸21の右端に着脱可能に取付固定され、左端においてカッター軸21が駆動モーター20からベルト伝動機構22を介して所定の切断回転数で回転される。またカッター3の左右には、カッターフレーム17側に支持される液体の供給ノズル23が配設され、任意の切削液又は後述する給液構造5の液体タンク25内の水等をカッター3の切断箇所(切断部)に供給することができる。
【0029】
次に給液構造5について説明する。図1,図3,図4で示すように給液構造5は、前記液体タンク25に設置される給液ポンプ26と、ワーク台2に形成した切断液供給路9の上端部とを給液管27によって接続し、水を切断液供給路9の後述するカッター案内溝33から送り出しガラスWの裏面に供給することができる。そして、切断液供給路9の下端部には水の戻し路を形成するバルブ28付きの排液管29を備え、水の排出量を調節可能にしながら端部から回収ケース30内に排水する。
【0030】
この構成によりバルブ28を絞ると、カッター3への給水を十分にすることができる。
また回収ケース30内に排出される水は、底部に形成される排出口31からフィルター32に排出され、該フィルター32によって濾過され液体タンク25に回収される。この回収ケース30は切断液供給路9の両側の液体回収路10,10から排出される水も受けて液体タンク25に回収することができる。
【0031】
この実施形態における切断液供給路9は、図4〜図6で示すようにカッター3の刃先を挿入し切断方向に移動させるカッター案内溝33と、該カッター案内溝33に水を溜めた状態で供給する液路孔35とでアリ溝状断面に形成される。そして、液路孔35に沿った近傍(この例では下部)に給液管路36を形成している。この給液管路36は給液ポンプ26に給液管27を介して接続され、液路孔35内に水を供給する。
【0032】
上記カッター案内溝33は、カッター3の刃先の厚さよりやや広い程度の溝巾とし、カッター3が挿入した状態で、溝の両側壁と刃先の両側に小さな隙間(小隙)を形成することができる。液路孔35はカッター案内溝33より広巾で大きな断面となし、給液管27が接続される給液管路36に対し、溝方向に給液間隔を有して穿設した複数のノズル孔37を介し連通させている。また液路孔35は終端側に形成される排液孔に前記バルブ28を有する排液管29を設けている。
【0033】
この構成により、ワーク台2にガラスWが載置セットされると、ガラスWの裏面がカッター案内溝33を塞いだ状態にすることができる。そして、給液管27を介し給液管路36内に水が供給されると、ノズル孔37,37・・から液路孔35及びカッター案内溝33内に水を充填し、バルブ28の絞り量に応じて水をカッター案内溝33から流出させることができる。
【0034】
これにより切断ユニット4が移動しカッター3によってガラスWを傾斜上手側から切断を行うと、ガラスWの端部から切断溝が徐々に切断方向に沿って形成され、切断溝から流出する水はカッター3の側面に供給されながらガラスWの上面側を流下し、冷却作用をしながら傾斜下手側で回収ケース30に収容される。
【0035】
上記給液構造5の構造において、切断液供給路9と液体回収路10,10及び給液管路36,ノズル孔37は何れも、1枚板状のワーク台2に対し穴あけ加工手段によって一体的に形成することができるので、各流路を配管継手等を省略した簡潔で廉価な構成によって製作することができる。
【0036】
尚、少なくとも切断液供給路9と液体回収路10,10は穴あけ加工手段によって1枚状板に形成することが望ましく、この場合には例えばアングルフレームによって枠組みされたワーク台2に対し着脱可能に設けることができる。また切断液供給路9から流出する液体は両側に形成される平坦面39とガラス底面間の境界面又は微小間隙を経て、液体回収路10,10に流し入れることにより、液体タンク25内に簡単に回収することができる。
【0037】
この構成によりガラスWによって塞がれた切断液供給路9と液体回収路10,10との間に、カッター案内溝33から流出する水によって水膜状の液体層を形成することができる。これによりガラスWは切断部がワーク台2の表面と液体層を介して支持され直接的な接触を防止することができる。
【0038】
従って、カッター3が切断する際にガラスWに振動を生じたとしても、液体層が液体ベッド状の振動吸収部材を形成する。これにより従来のもののようにワーク台2の表面に貼着されるスポンジ等の振動吸収部材の設置構造を省略しながら、ワーク台2にガラスWを直接的に支持し振動を吸収することができ、ガラスWの割れやクラックの発生を防止することができる。このとき液体層は液体回収路10,10の間で形成される層巾に規制されるので、層厚を略一定にすることができると共に、層巾以上にガラスWを広範囲に濡らすことがない。
【0039】
以上のように構成される切断装置1によるガラスWの切断作業は、先ず切断ユニット4が図1の実線で示すカッター3を上昇させた切断待機姿勢において、ガラスWがワーク台2上に載置され、ガラス受具7及び切断位置決め具8によって所定の切断位置に位置決めセットされる。次いで、駆動モーター20及び給液ポンプ26が駆動され、且つ伸縮シリンダー19及びリニア駆動部13が作動操作される。
【0040】
これにより下向き回転するカッター3は、回動支持軸16を中心に下降し所定の切断高さに支持され、切断位置決め具8と直交する切断方向にリニア駆動部13により前進(下降)移動してガラスWの切断を行う。このときカッター3には供給ノズル23及び切断液供給路9から水が供給される。
次いで、切断が終了される点線で示す終端位置で、カッター3の回転及び給液ポンプ26による水の供給が停止され、駆動モーター20及びリニア駆動部13の退避作動によって、切断ユニット4はカッター3を上昇させ元の待機位置に復帰し一連の切断作業を完了する。尚、上記各部の作動は図示しない操作盤によって、自動操作或いは手動操作によって所望に行われる。
【0041】
上記のように構成される切断装置1は、水を貯留する切断液供給路9内にカッター3の刃先を挿入移動させカッター3に水を供給しながら切断する方法によって、カッター3及びガラスWの切断方向への冷却を簡単に行う。このときワークWの切断時に生ずる切削粉や砥粒はカッター3を介し切断液供給路9に導入することができ、切削粉等を外部への飛散を防止して切断液供給路9内の水に効率よく混入することができる。
【0042】
そして、切削粉が混入された水(切断液)は図5,図6で示すように、切断液供給路9のカッター案内溝33を介してカッター3に供給することができ、水と共にカッター3の側面等に付着した切削粉の一部を持ち回してガラスWの切断部に再供給させ、ガラスWの切断面をカッター3の側面を介し切削粉等で研磨することができる。
【0043】
即ち、切断液供給路9内で切削粉等の滞留が促進され、切削粉を含む切断液はカッター3の切断方向移動と回転によって順次掻き上げられ、切断面の回転方向下手側の切断コーナー部(同図では下面側の切断コーナー部)に対し、多量の切削粉を水と共に勢いよく供給して面取り加工と同様の研磨作用を行うことができる。
これにより上記切断コーナー部に従来のもののように回転方向への欠けや返りを残すことなく、滑らかなエッジに形成され指で撫でても切り傷を与えない程に仕上げることができる。また切断面の回転方向上手側の切断コーナー部も滑らかなエッジに形成することができる。
【0044】
従って、ガラスWは切断と同時に切断面を滑らかに研磨した状態で仕上げることができるので、切断コーナー部の面取りを後加工によって行う等の煩雑な仕上げ工程を省略することができる。またガラスWの切断と切断面の仕上げを同時に行う切断装置1を、簡潔な構成によって廉価に提供することができる。
また切断面の切断コーナー部は、大きな斜面やアール面で研削することなく、切削粉や砥粒によって滑らかなエッジに形成されるので、切断面を常に均質に仕上げることができる等の利点もある。
【0045】
また切断装置1はバルブ28の絞り操作によって、排液管29から排出される水の排出量を少なくし、カッター案内溝33から流出させる水量を増やすので、ガラスWの切断部に多量の水を供給し冷却及び研磨作用を簡単に調節することができる。従って、厚いガラスや硬質ガラス並びに合せガラスを切断する場合でも、過熱や切削粉の飛散を防止した切断を行うことができ、特にカッター表面砥粒の目詰まりを生じ易い合せガラスの場合でも、中間膜を形成する合成樹脂材等の加熱や熔解を防止してスムーズな切断を行うことができる。
【0046】
さらに、切断液供給路9は両側に所定巾の平坦面39を介して液体回収路10,10を設けているので、切断液供給路9と液体回収路10,10の間に、ガラスWを液体を介しワーク台2に支持する液体層を簡単に形成することができる。ワーク台2とワークWの間に形成される液体層は、切断時の冷却を促進すると共にガラスWの振動を緩衝するために用いられるスポンジ等の振動吸収部材を不要にすることができる。
【0047】
またワーク台2に載置されるガラスWがカッター案内溝33を塞いだ状態で、バルブ28を絞り操作し、水の流量を大きくすると、平坦面39に水膜状に形成される液体層により重たいガラスWをワーク台2上で左右方向に移動させたり、切断位置決め具8を操作して行う位置決め作業を楽に行うことができる。
【0048】
また供給ノズル23及び切断液供給路9に供給し排出される水は、回収ケース30を介しフィルター32に回収され切削粉や砥粒が除去されるので、給液ポンプ26によって再び切断用の液体として循環利用することができる。尚、この実施形態において、切断ユニット4側から供給ノズル23,23の外側寄りにガラスWの表面に可撓性を有して接触する板状の遮蔽部材24を設けるか、或いは後述する液体誘導装置50を設けることが望ましい。この場合には、供給ノズル23,23から供給される水及びガラスWの表面を流下する水の拡散を防止して回収することができる。
【0049】
また切断液供給路9から流出する液体の流出量を調節する流出量調節手段は、排液管29側に設けたバルブ28の絞り操作をする構成としたが、これに限ることなく給液ポンプ26による供給量を調節する手段にすることができる。
また切断装置1は、ワーク台2の上方に支持したカッター3により傾斜上手側から切断する構成としたが、カッター3をワーク台2の下側に公知の手段によって移動可能に支持し、ワークWを下面側から切断する方式にすることもできる。この場合には切断液供給路9はワークWの上面側に接離可能に設置される。
【0050】
また合成ダイヤモンド砥粒をソリッド型の極薄円盤に形成したカッター3は、合せガラスの切断並びに各種のガラス或いはセラミック板材等も好適に切断することができる。この他カッター3は金属板材等の各種ワークの切断に適したカッターを使用することができ、この場合の液体はワークに適応する切削液を選択し供給することができる。
【0051】
次に図7〜図9を参照し前記液体誘導装置50について説明する。液体誘導装置50は前記遮蔽部材24と同様なスポンジ等の可撓性及び弾力性を有する誘導部材51を有するフレーム杆52,52と、該フレーム杆52,52の前後端を機体フレーム6側から上下動可能に支持するリンク杆53,53と、フレーム杆52,52をリンク杆53,53を介し押圧方向(下向き方向)に付勢するスプリング55等から構成される。
図示するように左右のフレーム杆52,52は、切断液供給路9を中心に左右に形成される液体回収路10,10の外側寄りの上方にユニット構造によって配置される。
【0052】
以上のように構成される液体誘導装置50は、図8の実線で示されるように、誘導部材51が自重及びスプリング55の付勢力によってガラスWを押圧し作業姿勢にすることができる。このとき誘導部材51,51はガラスWの形状に沿って圧縮変形し密着するので、外部に水を拡散することなく下方に誘導することができる。また誘導部材51,51はカッター3の両側で弾力性を有しガラスWを押圧するので切断時の振動を防止することができる。
【0053】
そして、スプリング55,55・・の付勢力に抗してフレーム杆52,52を上動させると、同図に点線で示すように非作業姿勢に切り換えることができる。これにより誘導部材51,51によるガラスWの押圧を解除することができ、ワーク台2に対するガラスWの移動を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係わる切断装置の構成を示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1のカッター装置を省略して示す平面図である。
【図4】カッター装置の構成及び切断作業の状態を示す正面図である。
【図5】切断液供給路の構成及び切断作業の状態を示す側断面図である。
【図6】図5のA−A線拡大断面図である。
【図7】ワーク台に液体誘導装置を設けた状態を示す側断面図である。
【図8】液体誘導装置の構成を示す側面図である。
【図9】液体誘導装置の構成及び作用を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 切断装置
2 ワーク台
3 カッター
5 給液構造
9 切断液供給路
10 液体回収路
27 給液管
28 バルブ
29 排液管
33 カッター案内溝
35 液路孔
36 給液管路
37 ノズル孔
39 平坦面
W ワーク(ガラス)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク台(2)に支持するガラス板等のワーク(W)を一側面から回転円盤型のカッター(3)を切断方向に移動させて切断するに、上記ワーク(W)の他側面に設置されて液体を貯留する切断液供給路(9)内に、カッター(3)の刃先を臨ませて移動させることにより、ワーク(W)の切断部に切断液供給路(9)内の液体を供給しながら切断するガラス等ワークの切断方法。
【請求項2】
切断液供給路(9)の一側と他側に、液体を供給する給液管(27)と供給される液体を排出する排液管(29)を設けて、液体を切断液供給路(9)に連続的に供給する請求項1のガラス板等ワークの切断方法。
【請求項3】
切断液供給路(9)から流出する液体の流出量を調節することにより切断液供給路(9)内の液体量を調節する請求項1又は2のガラス板等ワークの切断方法。
【請求項4】
ワーク台(2)に支持されるガラス板等のワーク(W)を一側面から回転円盤型のカッター(3)を切断方向に移動させて切断する切断装置(1)において、上記ワーク(W)の他側面でワーク台(2)に液体を貯留する切断液供給路(9)を切断方向に沿わせて設け、ワーク(W)を切断する際にカッター(3)の刃先を切断液供給路(9)内に挿入して移動させる構成としたガラス板等ワークの切断装置。
【請求項5】
切断液供給路(9)を、カッター(3)を挿入して移動させる程度の巾にしたカッター案内溝(33)と、カッター案内溝(33)に沿って貯留した液体を供給する液路孔(35)とによって形成した請求項4のガラス板等ワークの切断装置。
【請求項6】
切断液供給路(9)に液体を供給する複数のノズル孔(37)を有する給液管路(36)を切断液供給路(9)の近傍に沿って設けた請求項4又は5のガラス板等ワークの切断装置。
【請求項7】
給液管路(36)の一側と他側に液体を供給する給液管(27)と供給される液体を排出する排液管(29)を設け、排液管(29)側に液体の排出量を調節するバルブ(28)を設けた請求項4又は5又は6のガラス板等ワークの切断装置。
【請求項8】
切断液供給路(9)の両側に、該切断液供給路(9)からワーク台(2)上に流出する液体を回収する液体回収路(10),(10)を設けた請求項4又は5又は6又は7のガラス板等ワークの切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−312567(P2006−312567A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135609(P2005−135609)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(392030184)エステック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】