ガングリオシドの酵素合成のための方法および化合物
【課題】セラミド、スフィンゴシンおよびそれらの類似体上にあらかじめ選択されたグリコシル化パターンを有するガングリオシド類似体を酵素的に調製するインビトロ法に対する必要性が、特に存在している。
【解決手段】本発明は、新規な合成スフィンゴ糖脂質およびそのような合成スフィンゴ糖脂質を含有する薬学的組成物を記載する。本発明はまた、新規な合成スフィンゴ糖脂質化合物および組成物、ならびに神経保護および癌治療の分野におけるそれらの利用法を記載する。
【解決手段】本発明は、新規な合成スフィンゴ糖脂質およびそのような合成スフィンゴ糖脂質を含有する薬学的組成物を記載する。本発明はまた、新規な合成スフィンゴ糖脂質化合物および組成物、ならびに神経保護および癌治療の分野におけるそれらの利用法を記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への引用)
本出願は、2002年8月29日出願のPCT/US02/27935号に関するものであり、上記出願は、その全体が参照として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規なスフィンゴ糖脂質類およびそれらの調製法と利用法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
スフィンゴ糖脂質類は、セラミドに結合した炭水化物部分を有する脂質の1クラスである。スフィンゴ糖脂質の代表的なクラスはガングリオシド類である。上記炭水化物部分は、少なくとも1つのシアリン酸部分を含む。ガングリオシド類は典型的にシアリン酸部分に加えて、糖部分を含み、構造内に存在する単糖とシアリン酸基の数によって分類される。ガングリオシド類は、シアリン酸残基の数により、モノ−、ジ−、トリ−またはポリ−シアロガングリオシドとして公知である。これらの分子を識別するために使用される略号としては、「GM1」、「GD3」、「GT1」などが挙げられ、「G」は、ガングリオシドを表し、「M」、「D」または「T」などは、シアリン酸残基の数をいい、数または数プラス文字(例えば、「GT1a」)は、この分子に関して観察されたTLCアッセイにおける溶出順序を言う。Lehninger、Biochemistry、p.294−296(Worth Pubkishers、1981年);Wiegandt、Glycolipids:New Comprehensive Biochemistry(Neubergerら編集、Elsevier、1985年)、p.199−260、を参照されたい。
【0004】
例えば、国際的な記号GM1aは、広く研究されてきたより一般的なガングリオシド類の1つを示す。この記号における「M」は、このガングリオシドが、モノシアロガングリオシドであることを示し、「1」は、TLC溶出プロフィルにおけるその位置を規定している。下付き文字、「a」、「b」または「c」もまた、特定のガングリオシドのTLCアッセイにおける位置を示している。末端の糖は、セラミド部分に結合している末端の反対側にある炭水化物部分の末端に位置している糖である。
【0005】
用語の「スフィンゴ糖脂質類」(GSL類)とは、6つのうち5つが、セラミドとUDP−グルコースから酵素的に形成されるグリコシルセラミド(GlcCer)由来である6つのクラスの化合物を含む属を言う。GlcCer形成に関与する上記酵素は、UDP−グルコース:N−アシルスフィンゴシングリコシルトランスフェラーゼ(GlcCerシンターゼ)である。生理的条件下でのGlcCer形成速度は、UDP−グルコースの組織濃度に依存し、これは次に、特定の組織におけるグルコース濃度に依存する(Zador,I.Z.ら、J.Clin.Invest.91:p.797−803(1993))。内因性セラミドに基づくインビトロアッセイでは、追加セラミドを含有する混合物よりも合成速度が低く、セラミドの組織濃度もまた、通常、速度制限的であることを示唆している(Brenkert,A.ら、Brain Res.36:p.183−193(1972))。
【0006】
GSL類のレベルは、増殖、分化、細胞間接着、細胞とマトリクス蛋白質との間の接着、細胞に対する微生物およびウィルスの結合、および腫瘍細胞の転移など、種々の細胞機能を制御する。さらに、GlcCer前駆体、セラミドは、分化または細胞増殖の阻害を引き起し(Bielawska,A.ら、FEBS Letters 307:p.211−214(1992))、ビタミンD3、腫瘍壊死因子α、インターロイキン類およびアポトーシス(プログラム化細胞死)の機能に関与している。スフィンゴル類(スフィンゴ様塩基類)、セラミドの前駆体およびセラミド異化作用産物もまた、恐らくプロテインキナーゼC(PKC)の阻害により、多くの細胞系に影響を与えることが示されている。
【0007】
スフィンゴ糖脂質類のクラスの1つであるガングリオシド類は、神経系において機能的に重要であることが公知であり、ガングリオシド類は、末梢神経系障害の治療に有用であることが証明されている。多数のガングリオシド類およびそれらの誘導体が、パーキンソン病など、多種多様の神経系障害の治療に使用されてきた。ガングリオシドGM1は、パーキンソン病および脳虚血発作の治療に関する第II相臨床開発において用いられている(米国特許第4,940,694号;米国特許第4,937,232号;および米国特許第4,716,223号を参照)。また、ガングリオシド類は、食細胞の活性に影響を及ぼし(米国特許第4,831,021号)、胃腸管疾患を生ずる生物の治療に用いられてきた(米国特許第4,762,822号)。動物の脳から精製されたガングリオシド類GM2およびGD2は、キーホールカサガイヘマシアニン(KLH)と共役させ、アジュバントQS21と混合して、第II相および第III相治験における癌ワクチンの基剤として、これらのガングリオシド類に対する免疫応答を誘発させるために用いられてきた(Progenics、ニューヨーク州タリータウン所在)。ガングリオシドGM3は、抗癌剤として使用するために研究されている(国際公開第98/52577号)。また、糖脂質類は、炎症性腸疾患の治療において関心が持たれている。Tubaroら、Naunyx−Schmiedebergg’s Arch.Pharmacol.348:p.670−678(1993)を参照されたい。
【0008】
ガングリオシド類は一般に、組織、特に動物の脳からの精製により単離される(GLYCOLIPID METHODOLOGY、Lloyd A.Witting編集、American Oil Chemists Society、Champaign、III.p.187−214(1976);米国特許第5,844,104号;米国特許第5,532,141号;Sonninoら、J.Lipid Res.33:p.1221−1226(1992));Sonninoら、Ind.J.Biochem.Biophys.,25:p.144−149(1998);Svennerholm、Adv.Exp.Med.Biol.125:p.533−44(1980)。また、ガングリオシド類は、ウシのバターミルクからも単離されてきた(Renら、J.Bio.Chem.267:p.12632−12638(1992);Takamizawaら、J.Bio.Chem.261:p.5625−5630(1986))。最適条件下でも、純粋ガングリオシド類、例えば、GM2およびGM3の収量は極めて少ない。また、哺乳動物組織からの精製は、それと共にウィルス、プリオン粒子などの汚染物質伝達の危険を伴う。したがって、ガングリオシド類を確保するための代替となる方法論が極めて望ましい。
【0009】
天然ガングリオシド類には多くの利点はあるが、天然ガングリオシド類に較べてより高められた生物学的利用能、標的特異性、活性などの特徴を有するガングリオシド類似体に対する必要性が存在している。さらに、スフィンゴシンおよびスフィンゴシン類似体から合成的に調製されたガングリオシド類似体には、ウシ海綿状脳炎などの動物疾病を伝達する危険性がない。
【0010】
ガングリオシド類の重要性により、純粋なガングリオシド類を高収量で合成する方法の開発に、努力が費やされてきた。ガングリオシド類を化学的に合成する方法は、Hasegawaら、J.Carbohydrate Chemistry、11(6):p.699−714(1992)およびSugimotoら、Carbohydrate Research、156:p.C1−C5(1986)に記載されている。米国特許第4,918,170号は、GM3およびGM4の合成を開示している。Schmidtらは、GM3の化学的合成を記載している(米国特許第5,977,329号)。これらの文献では、労力のかかる保護−活性化−カップリング−脱保護の方法を用いる多段階合成操作を記載しており、これらの段階で、中間体は一般に、抽出とカラムクロマトグラフィの組み合わせにより精製される。さらに、合成法はどれもガングリオシド類の大規模調製に適切ではない。
【0011】
炭水化物の化学的合成に伴う困難を考えると、ガングリオシド類の炭水化物部分の合成に、酵素を使用することはガングリオシド類の調製への有望なアプローチである。酵素ベースの合成は、位置選択性および立体選択性の利点を有する。さらに、酵素的合成は、非保護基質を用いて実施できる。酵素の2つの主要なクラス、グリコシルトランスフェラーゼ類(例えば、シアリルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ)およびグリコシダーゼ類が、炭水化物の合成に用いられる。グリコシダーゼ類は、さらにエキソグリコシダーゼ類(例えば、βーガラクトシダーゼ、βーグルコシダーゼ)およびエンドグリコシダーゼ類(例えば、エンドグリコセラミダーゼ)に分類される。これらのクラスの酵素は各々、炭水化物の調製に好結果で用いられている。一般的レビューに関しては、Croutら、Curr.Opin.Chem.Biol.2:p.98−111(1998)および上記Arsequellを参照されたい。
【0012】
グリコシルトランスフェラーゼは、オリゴ糖の調製に用いられてきており、良好な立体化学的および位置化学的制御を伴って、特異的生成物を製造するために有効であることが示されてきた。例えば、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼはラクトサミンの合成に用いられ、炭水化物の合成におけるグリコシルトランスフェラーゼの有用性を例示した(例えば、Wongら、J.Org.Chem.47:p.5416−5418(1982)を参照)。さらに、シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸のシアリン酸を、ガラクトースの3−OHまたは6−OHに移すために、多数の合成法が、α−シアリルトランスフェラーゼを利用してきた(例えば、Kevinら、Chem.Eur.J.2:p.1359−1362(1996)を参照)。治療的使用のためのグリコ共役体の合成における最近の進歩についての考察に関しては、Koellerら、Nature Biotechnology 18:p.835−841(2000)を参照されたい。
【0013】
グリコシダーゼ類は、通常、グリコシド結合の加水分解を触媒するが、適切な条件下では、この結合を形成するために使用することができる。炭水化物の合成に用いられる多くのグリコシダーゼは、エキソグリコシダーゼであり、グリコシルの移動は、基質の非還元末端に生じる。水によって妨げられて加水分解産物を生じるか、または受容体によって妨げられて新たなグリコシドまたはオリゴ糖を生じるグリコシル−酵素中間体におけるグリコシル供与体をグリコシダーゼが受け入れられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
治療特性を改善した合成ガングリオシド類似体のアレイに対する必要性に加え、合成ガングリオシド類似体を調製するための簡単な高収量法に対する必要性は依然として存在している。ガングリオシドまたはその合成類似体の生物活性は、一般に、特定のグリコ形体の存在または特定のグリコ形体の不在に依存しているため、特にセラミド、スフィンゴシンおよびそれらの類似体上に前選択されたグリコシル化パターンを有するガングリオシド類似体を酵素的に調製するインビトロ法に対する必要性が存在している。本発明は、これらの必要性および他の必要性への取り組みに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
糖脂質類は、一群の傷害を治療するために一般に用いられる。本発明は、糖脂質の代表的な1クラスであるガングリオシドに関して説明される。ガングリオシド類は、神経疾患および自己免疫障害を治療する薬剤として興味が持たれている。しかし、ガングリオシド類を用いて現在利用できる治療法は不十分である。一般に、治療目的で用いられるガングリオシド類は、ウシ脳などの生物媒体から時間のかかる方法によって精製されており、その結果、不純な調製物となる可能性がある。さらにガングリオシド類は一般に、腸管における吸収が不十分であるため、静脈内投与を必要とする。また、現在利用できるガングリオシド類は、血液脳関門の極めて少ない通過しか示さない。
【0016】
したがって、現在利用できるガングリオシド類は一般に、調製が容易にはできず、また、進行を止め、重症度を低下させ、および/または神経疾患および自己免疫疾患を治療するため、および神経突起生成ならびに神経形成を促進するために、被験体に投与することが簡便にはできない。本発明は、神経疾患および自己免疫疾患を治療するため、新規な改善された有効なガングリオシド類を開発する必要性を認識している。
【0017】
本発明は、一般式:
【0018】
【化10】
を有するガングリオシド誘導体の1クラスを提供することにより、当該分野における現在の不足に取り組んでおり、ここで、記号Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されるメンバーを表す。Xは、H、−OR3、−NR3R4、−SR3、および−CHR3R4から選択されるメンバーである。記号R1、R2およびR3は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、−C(=M)R5、−C(=M)−Z−R5、−SO2R5、および−SO3から独立して選択されるメンバーであり、記号MおよびZは、O、NR6またはSから独立して選択されるメンバーを表す。
【0019】
記号Yは、H、−OR7、−SR7、−NR7R8、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。R5、R6、R7およびR8は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。
【0020】
また、本発明は、本発明の化合物を組み込んでいる薬学的組成物ならびに治療法と診断に本発明の化合物を用いる方法を提供する。例えば、代表的な一実施形態において、被験体における神経系の障害を予防または処置する方法が提供される。上記方法は、投与を必要とする被験体に、本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含む。神経系の具体的な障害の治療は、本明細書においてより詳細に検討されている。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、ガングリオシドのグリコシルサブユニットを付加するために、酵素的触媒法を用いて本発明のガングリオシドを調製する方法を提供する。
【0022】
本発明の他の態様、目的および利点は、以下の詳細な説明から、当業者に明らかになるであろう。
【0023】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(略語)
糖部分の略語は、糖類の置換および非置換類似体双方を指す。したがって、アラビノシル;Fru、フルクトシル;Fuc、フコシル;Gal、ガラクトシル;GalNAc、N−アセチルガラクトシル;Glc、グルコシル;GlcNAc、N−アセチルグルコシル;Man、マンノシル;ManAC、マンノシルアセテート;Xyl、キシロシル;およびSiaならびにNeuAc、シアリル(N−アセチルノイラミニルおよびその誘導体)である。上記略語は、未修飾糖部分およびその置換類似体または他の類似体の双方を含むことが意図されている。
【0024】
(定義)
他に定義されない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する通常の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を一般に有する。一般に、本明細書に用いられる命名法ならびに分子生物学、有機化学、および核酸化学ならびに下記のハイブリダイゼーションにおける実験操作は、周知のものであり、当該分野において一般的に使用されている。核酸およびペプチドの合成に関しては、標準的な方法が用いられる。一般に酵素反応および精製工程は、製造元の仕様書に従って実施される。方法と操作は、一般に当該分野における従来の方法および本文書全体を通して提供されている種々の一般的文献(一般には、参照として本明細書に組み込まれているSambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在、を参照)に従って実施される。本明細書に用いられる命名法ならびに分析化学における実験操作および下記の有機合成は当該分野に公知であり使用されているものである。化学的合成および化学的分析のためには標準的方法またはその改良法が用いられる。
【0025】
「スフィンゴ糖脂質類似体」および「スフィンゴ糖脂質」は、本発明の化合物を称するために本明細書において用いられる。上記用語は、糖部分、塩基(例えば、スフィンゴ様骨格)または脂肪酸由来炭化水素が、天然スフィンゴ糖脂質類に見られる構造以外の構造であるスフィンゴ糖脂質構造を言うために用いられる。
【0026】
「糖」および「糖の」は、少なくとも1つの環式構造に存在する置換もしくは非置換のヘテロアルキル基を含む部分を言う。この定義による部分は、一般に少なくとも1つの還元性末端を有する。
【0027】
「ペプチド」は、その中のモノマーがアミノ酸であり、アミド結合を介して、一緒に結合しているポリマーをいい、あるいはポリペプチドとも称される。アミノ酸がα−アミノ酸である場合は、L−光学異性体かD−光学異性体のいずれかを用いることができる。さらに、非天然アミノ酸、例えばβ−アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンもまた含まれる。本発明には、遺伝子にコードされていないアミノ酸もまた使用できる。さらに、反応基を含むように修飾されたアミノ酸もまた、本発明に使用できる。本発明に用いられるアミノ酸は全て、D−異性体か、またはL−異性体であり得る。一般に、L−異性体が好ましい。さらに、他のペプチド模倣物もまた、本発明に有用である。一般的レビューに関しては、Spatola,A.F.著、CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS,PEPTIDES ANDPROTEINS、B.Weinstein編集、Marcel Dekker、ニューヨーク所在、p.267(1983)を参照されたい。
【0028】
用語の「アミノ酸」は、天然アミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然アミノ酸と同様な様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を言う。天然アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされたアミノ酸ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素に結合しているα炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を言う。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様な様式で機能する化学的化合物を言う。
【0029】
本明細書に用いられる「核酸」は、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖、またはより高度に集合したハイブリダイゼーションモチーフおよびそれらの任意の化学的修飾体を意味する。修飾体としては、限定はしないが、核酸リガンド塩基に、または核酸リガンド全体に追加の電荷、極性、水素結合、静電的相互作用および可動性を組み込む化学基を提供するものが挙げられる。このような修飾体としては、限定はしないが、ペプチド核酸、ホスホジエステル基修飾体(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート)、2’位糖修飾体、5位ピリミジン修飾体、8位プリン修飾体、環外アミンにおける修飾体、4−チオウリジンの置換体、5−ブロモまたは5−ヨード−ウラシルの置換体;骨格修飾体、メチル化体、イソ塩基類、イソシチジンおよびイソグアニジンなどの異常塩基対の組み合わせが挙げられる。修飾体としてはまた、PL、蛍光体または他の部分とのキャッピングなどの3’および5’修飾体も挙げられる。
【0030】
本明細書に用いられる「反応性官能基」とは、限定はしないが、オレフィン類、アセチレン類、アルコール類、フェノール類、エーテル類、オキシド類、ハライド類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、アミド類、シアネート類、イソシアネート類、チオシアネート類、イソチオシアネート類、アミン類、ヒドラジン類、ヒドラゾン類、ヒドラジド類、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル類、メルカプタン類、スルフィド類、ジスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、スルホン酸類、スルフィン酸類、アセタール類、ケタール類、酸無水物類、サルフェート類、スルフェン酸類、イソニトリル類、アミジン類、イミド類、イミデート類、ニトロン類、ヒドロキシアミン類、オキシム類、ヒドロキサム酸類、チオヒドロキサム酸類、アレン類、オルトエステル類、亜硫酸塩類、エナミン類、イナミン類、尿素類、プソイド尿素類、セミカルバジド類、カルボジイミド類、カルバメート類、イミン類、アジド類、アゾ化合物、アゾキシ化合物およびニトロソ化合物などの基を言う。また、反応性官能基としては、生物共役体を調製するために用いられるもの、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、アレイミド類なども挙げられる。これらの反応性官能基の各々を調製する方法は当該分野に周知であり、特定の目的のためのそれらの適用または修飾は、当業者の能力の範囲内にある(例えば、SandlerおよびKaro編集、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS、Academic Press、サンディエゴ所在、1989年を参照)。
【0031】
グリコシルトランスフェラーゼに対する「受容体部分」は、グリコシルトランスフェラーゼに対する基質である糖基の受容体として働く糖構造である。この受容体部分を対応するグリコシルトランスフェラーゼ、糖供与部分および他の必要な反応混合物成分と接触させ、この反応混合物を十分な時間温置すると、グリコシルトランスフェラーゼは、糖残基を糖供与体から受容体部分へと移す。上記受容体部分は、ある特定のグリコシルトランスフェラーゼの種々のタイプに対して様々であることが多い。例えば、哺乳動物ガラクトシド2−L−ガラクトシルトランスフェラーゼに対する受容体部分は、糖の非還元末端にGalβ1,4−Glc−Rを含む。したがって、用語の「受容体部分」は、特定の適用に対する対象の特定グリコシルトランスフェラーゼの文脈で考えられる。他のグリコシルトランスフェラーゼに対する受容体部分は本明細書に記載されている。
【0032】
用語の「シアリン酸」は、9個の炭素のカルボキシル化糖のファミリーメンバーを言う。リンカー類、反応性官能基、検出可能な標識、脂質ラフトおよび標的部分に包含される成分により誘導体化されているシアリン酸類似体もまた含まれる、シアリン酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセタミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オン酸(しばしば、Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと略記される)である。このファミリーの第2のメンバーは、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、ここでNeuAcのN−アセチル基はヒドロキシル化されている。シアリン酸ファミリーの第3のメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)である(Nadonoら、(1986)J.Biol.Chem.261:p.11550−11557;Kanamoriら、J.Biol.Chem.265:p.21811−21819(1990))。また、9−O−C1〜C6アシル−Neu5Ac様9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acなどの9−置換シアリン酸も含まれる。シアリン酸ファミリーのレビューには、例えば、Verki、Glycobiology2:p.25−40(1992);Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function、R.Schauer編集(Springer−Verlag、ニューヨーク所在(1992)を参照されたい。シアリル化操作におけるシアリン酸化合物の合成および使用法は、1992年10月に公表された国際出願公開第92/16640号に開示されている。
【0033】
ある細胞に関連して、用語の「組換え」が用いられる場合は、その細胞が、異種核酸を複製するか、または異種核酸にコードされたペプチドまたは蛋白質を発現することを示す。組換え細胞は、その細胞の天然の(非組換え)形態内には見られない遺伝子を含有することができる。また、組換え細胞は、人工的手段によって、遺伝子が修飾され、細胞内に再導入される細胞の天然形態において見られる遺伝子を含有することもできる。また、上記用語は、細胞から核酸を取り出すことなく修飾された、細胞にとって内因性の核酸を含有する細胞も含み、このような修飾としては、遺伝子置換、部位特異的変換、および関連した方法によって得られるものを含む。「組換えポリペプチド」は、組換え細胞によって産生されたポリペプチドである。本発明は、組換え蛋白質を含む細胞によって発現される酵素および/または基質を任意に利用する。
【0034】
用語の「単離された」とは、その物質を製造するために使用される成分から実質的にまたは本質的に遊離している物質を言う。本発明の方法によって製造される組成物に関して、用語の「単離された」とは、その組成物を調製するために使用される混合物中の物質に通常伴っている成分から実質的にまたは本質的に遊離している物質を言う。「単離された」および「純粋な」は、交換可能に用いられる。典型的には、本発明の方法によって製造された単離化合物は、好ましくは、ある範囲で示される純度のレベルを有する。スフィンゴ糖脂質化合物に関して純度範囲の下端は、約60%、約70%、または約80%であり、純度範囲の上端は、約70%、約08%、約90%またはさらに約90%以上である。
【0035】
本発明の方法によって製造された化合物が、約90%以上の純度である場合、それらの純度はまた、ある範囲として示されることが好ましい。純度範囲の下端は、約90%、約92%、約94%、約96%または約98%である。純度範囲の上端は、約92%、約94%、約96%、約98%または約100%である。
【0036】
純度は、当該分野で認められている任意の分析法(例えば、銀染色ゲル上のバンド強度、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLCまたは同様な手段)により決定される。
【0037】
本明細書に用いられる「本質的に集団の各メンバー」とは、前駆体基質に加えられる選択されたパーセンテージのグリコシル供与体が、基質の集団の個々のメンバー上の同一の受容体部位に付加される、本発明の方法により製造された化合物集団の特性を言う。「本質的に集団の各メンバー」は、グリコシル供与体に共役している基質上の部位の「均質性」をいい、また、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%均質である本発明の化合物を言う。
【0038】
「均質性」とは、グリコシル供与体が共役している受容体部分の集団にわたる構造的一致を言う。したがって、グリコシル化反応の最後に、その反応時に移された各グリコシル供与体が同じ構造を有する受容体部位と共役しているならば、その組成物は、約100%均質であると言われる。均質性は、典型的にはある範囲として表される。ペプチド共役体に関する均質性の範囲の下端は、約60%、約70%、または約80%であり、純度範囲の上端は、約70%、約08%、約90%または約90%以上である。
【0039】
本発明の方法により調製された組成物が、約90%以上か、またはそれに等しい場合、それらの均質性はまた、ある範囲として表されることが好ましい。均質性の範囲の下端は、約90%、約92%、約94%、約96%または約98%である。純度範囲の上端は、約92%、約94%、約96%、約98%または約100%の均質性である。スフィンゴ糖脂質類の純度は、典型的には当業者に公知の1つ以上の方法、例えば、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)、フライト分光法のマトリクス補助レーザー脱離質量時間(MALDITOF)、キャピラリ電気泳動などにより決定される。
【0040】
オリゴ糖は、還元性末端における糖が実際に還元性の糖であっても、またなくても、還元性末端と非還元性末端とを有していると考えられる。容認された命名法により、オリゴ糖は、本明細書において、左側に非還元性末端を有し、右側に還元性末端を有して描かれている。
【0041】
本明細書において記載されるオリゴ糖は、非還元糖に対する名称または略号(すなわちGal)に続いて、グリコシド結合の立体配置(αまたはβ)、環結合、(1または2)、結合に関与する還元糖の環の位置(2、3、4、6または8)、次いで還元糖の名称または略号(すなわちGlcNAc)によって一般に記載される。各糖は、ピラノースであることが好ましい。標準的な糖鎖生物学命名法のレビューに関しては、Essentials of Glycobiology Varkiら編集、CSHL Press(1999)を参照されたい。
【0042】
本明細書に用いられる「結合メンバー」とは、少なくとも1個のヘテロ原子を含む共有化学結合を言う。代表的な結合メンバーとしては、−C(O)NH−、−C(O)O−、−NH−、−S−、−O−などが挙げられる。
【0043】
記号
【0044】
【化11】
は、結合として使用されても、結合に垂直であることを示すとしても、示された部分が分子、固体支持体などの残りの部分に結合している点を示す。
【0045】
本発明の一定の化合物は、非溶媒和形態ならびに水和形態などの溶媒和形態において存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の一定の化合物は、多結晶または非結晶形態において存在し得る。一般に、全ての物理的形態が、本発明によって考慮された使用にとって等価であり、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0046】
本発明の一定の化合物は、非対称炭素原子(光学的中心)または二重結合、すなわちラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体を有し、個々の異性体が本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
本発明の化合物は、単一の異性体(例えば、鏡像異性体、シス−トランス異性体、位置異性体、ジアステレオマー)として、または異性体の混合物として調製できる。好ましい実施形態において、上記化合物は、実質的に単一の異性体として調製される。実質的に純粋異性体化合物を調製する方法は、当該分野に公知である。例えば、鏡像異性体の濃い化合物および純粋な鏡像異性体化合物は、光学中心における立体化学を変化させずにおくか、またはその完全な反転体を生じさせる反応と組み合わせて鏡像異性体として純粋な合成中間体を用いて調製することができる。あるいは、合成経路に伴う最終産物または中間体を単一の立体異性体へと分析することができる。ある特定の立体中心を反転させるか、または変化させずにおくための方法、および立体異性体の混合物を分析するための方法は当該分野に周知であり、特定の状況に対する適切な方法を選択することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。一般的には、Furnissら(編集者)、VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY第5版、Longman Scientific and Technical社、エセックス、1991年、p.809−816;およびHeller、Avv.Chem.Res.23:p.128(1990)を参照されたい。
【0048】
また、本発明の化合物は、そのような化合物を構成している1個以上の原子において、天然にはない比率の同位体を含有し得る。例えば、上記化合物は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体によって放射能標識できる。本発明の化合物の同位体の変型体は全て、放射性であってもなくても、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0049】
置換基が、それらの慣例的な化学式により、左から右へと明記されている場合、それらは、構造を右から左へと記することから生じる化学的に同一の置換基を等しく含む。例えば、−CH2O−は、−OCH2−とも表されることを意図している。
【0050】
用語の「アルキル」は、それ自体で、または他の置換基の一部として、他に明記されない限り、完全に飽和された、またはモノもしくはポリ不飽和であり得、指定された炭素原子数を有する(すなわち、C1〜C10は1個から10個の炭素を意味する)ジおよび多価基を含み得る直鎖または分枝鎖または環式炭化水素基を意味する。飽和炭化水素基の例としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、s−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの同族体ならびにそれらの異性体が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するアルキル基である。不飽和アルキル基の例としては、限定はしないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、およびより高級な同族体ならびに異性体が挙げられる。用語の「アルキル」は、他に特記しない限り、「ヘテロアルキル」および「アルキレン」など、下記により詳細に定義したアルキルの誘導体を含むことを意味する。炭化水素基に限定されたアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。
【0051】
用語の「アルキレン」は、それ自体で、または他の置換基の一部として、限定はしないが、−CH2CH2CH2CH2−によって代表されるようなアルカンから誘導された二価の基を意味し、さらに「ヘテロアルカン」としての下記の基をさらに含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、約1個から約40個の炭素原子を有し、本発明においては、30個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短鎖のアルキル基またはアルキレン基である。
【0052】
用語の「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ(またはチオアルコキシ)」は、慣例的意味において用いられ、それぞれ酸素原子、アミノ基、またはイオウ原子によって分子の残りの部分に結合しているアルキル基を言う。
【0053】
用語の「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または他の用語との組み合わせにおいて、他に明記しない限り、指定された炭素原子数およびO、N、SiおよびSよりなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなり、窒素原子およびイオウ原子が任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が任意に四級化されていてもよい安定な直鎖または分枝鎖または環式炭化水素基またはそれらの組み合わせを意味する。ヘテロ原子(単数または複数)、O、N、SiおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に置かれていてもよく、また、アルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に置かれていてもよい。例としては、限定はしないが、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−O−CH3、および−CH=CH−N(CH3)−CH3が挙げられる。例えば、−CH2−NH−OCH3および−CH2−O−Si(CH3)3など、2個のヘテロ原子まで連続していてもよい。同様に用語の「ヘテロアルキレン」は、それ自体で、または他の置換基の一部として、限定はしないが、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−および−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−によって代表されるようなヘテロアルキルから誘導された二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基に関してヘテロ原子は、鎖端の一方または双方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらにアルキレンおよびヘテロアルキレン結合基に関して、結合基の式が記されている方向によって結合基の方向性が意味されることはない。例えば、式−C(O)2R’−は、−C(O)2R’−と−R’C(O)2−の双方を表す。
【0054】
用語の「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それら自体で、または他の用語との組み合わせにおいて、他に明記しない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式型を表す。また、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残りの部分に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、限定はしないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定はしないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。
【0055】
用語の「ハロ」または「ハロゲン」は、それら自体で、または他の置換基の一部として、他に明記されない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。また、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語の「ハロ(C1〜C4)アルキル」は、限定はしないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0056】
用語の「アリール」は、他に明記しない限り、共に縮合しているか、または共有結合している単環または多環(好ましくは、1つから3つの環)であり得るポリ不飽和、芳香族炭化水素置換基を意味する。用語の「ヘテロアリール」は、N、O、およびSから選択される1個から4個のヘテロ原子を含有し、窒素原子およびイオウ原子が任意に酸化されており、窒素原子(単数または複数)が任意に四級化されているアリール基(または環)を言う。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して、分子の残りの部分に結合し得る。アリール基およびヘテロアリール基の非限定例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、下記の許容できる置換基の群から選択される。
【0057】
簡略化のため、用語の「アリール」は、他の用語と組み合わせて用いられる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記に定義したアリール環とヘテロアリール環の双方を含む。したがって、用語の「アリールアルキル」は、炭素原子(例えばメチレン基)が、例えば、酸素原子によって置換されたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)などのアルキル基にアリール基が結合している基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味する。
【0058】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)の各々は、示された基の置換体および非置換体の双方を含むことを意味する。各タイプの基の好ましい置換基は下記に提供されている。
【0059】
アルキル基およびヘテロアルキル基(しばしば、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称される基など)に対する置換基は、限定はしないが、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’−C(O)2R’、−NR−C(R’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2から選択される1つ以上の種々の基であり得、その数は、ゼロから(2m’+1)の範囲にあり、ここで、m’は、このような基における炭素原子の合計数である。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は各々、好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、例えば、1〜3個のハロゲンによって置換されたアリール、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基を言う。本発明の化合物が、例えば、1つ以上のR基を含む場合、R基の各々は、独立して選択され、これらの基の1つ以上が存在する場合、各々R’基、R’’基、R’’’基およびR’’’’基である。R’とR’’が、同一の窒素原子に結合している場合、それらは、その窒素原子と組合わされて、5員環、6員環または7員環を形成することができる。例えば、−NR’R’’は、限定はしないが、1−ピロジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。置換基についての上記の検討から、用語の「アルキル」は、ハロアルキル(例えば、−CF3および−CH2CF3)およびアシル(例えば、−C(O)CH3、−C(O)CF3、−C(O)CH2OCH3など)などの水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを当業者は理解するであろう。
【0060】
アルキル基に関して、記載した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基に関する置換基は種々あり、例えば、ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’−C(O)2R’、−NR−C(R’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2、−R’、−N3、−CH(Ph)2、フルオロ(C1〜C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1〜C4)アルキルから選択され、その数は、ゼロから芳香族環上の開放原子価の合計数の範囲である。本発明の化合物が、例えば、1つ以上のR基を含む場合、R基の各々は、独立して選択され、これらの基の1つ以上が存在する場合、各々R’基、R’’基、R’’’基およびR’’’’基である。
【0061】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、式−T−C(O)−(CRR’)q−U−の置換基によって任意に置換でき、ここで、TおよびUは、独立して−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、qは、0から40の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、式−A−(CH2)r−U−の置換基によって任意に置換でき、ここで、AおよびBは、独立して、−CRR’、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−または単結合であり、rは、0から40の整数である。このように形成された新たな環の単結合のうちの1つは、二重結合によって、任意に置換され得る。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、式−(CRR)s−X−(CR’’R’’’)d−の置換基によって任意に置換でき、ここで、sおよびdは、独立して0から40の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−である。置換基R、R’、R’’およびR’’’は、好ましくは独立して水素または置換もしくは非置換(C1〜C40)アルキルから選択される。
【0062】
本明細書に用いられる用語の「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0063】
本明細書に用いられる用語の「グリコシルトランスフェラーゼ」とは、活性化供与体分子から、各々が本明細書に定義されている特定の受容体分子への糖部分の転移を触媒してグリコシル結合を形成する酵素を言う。グリコシルトランスフェラーゼの例としては、限定はしないが、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ;フコシルトランスフェラーゼおよびGalNAcトランスフェラーゼが挙げられる。さらにグリコシルトランスフェラーゼは、反応基質と反応産物の立体化学によって、保持、すなわち、芳香族立体配置の保持に至るもの(例えば、UDP−グルコース−>α−グルコシド)または反転、すなわち、芳香族立体配置の反転に至るもの(例えば、UDP−グルコース−>β−グルコシド)として分類できる(Sinnott,M.L.(1990)Chem.Rev.90、p.1171−1202)。グリコシルトランスフェラーゼファミリーの分類群化は、Coutinho,P.M.& Henrissat,B.(1999)Carbohydrate−Active Enzymeserverにより説明されており、<<afmb.cnrs.fr/〜pedro/CAZY/db.html>>においてインターネット上で見ることができる。
【0064】
本明細書に用いられる用語の「トランスシアリダーゼ」とは、α−2,3グリコシド結合を介して、ガラクトースへのシアリン酸の付加を触媒する酵素を言う。トランスシアリダーゼ類は、多くのトリパノソーマ種および幾つかの他の寄生虫において見られる。寄生虫生体のトランスシアリダーゼ類は、シアリダーゼの加水分解活性を保持しているが、効率ははるかに低い。その結果、トランスシアリダーゼ類は、CMPシアリン酸の不在下、宿主のシアリル−グリコ共役体の末端シアリン酸を寄生虫の表面糖蛋白へ可逆的に転移することを触媒する。
【0065】
シャガス病の原因となるトリパノソーマクルースは、表面トランスシアリダーゼを有する。このトランスシアリダーゼは、末端β−ガラクトシル残基を含有する受容体へのα−2,3−結合シアリン酸の転移を優先的に触媒する(Ribeiraoら、Glycobiol.7:p.1237−1246;Takahashiら、1995年、Anal.Biochem.、230:p.333−342;Scudderら、1993年、J.Biol.Chem.、268:p.9886−9891;Vandekerckhoveら、1992年、Glycobiol.、2:p.541−548)。T.クルーストランスシアリダーゼ(TcTs)は、β−結合ガラクトース残基を末端に有し、もっぱら、α2−3シアロシド結合を合成する広範囲の糖、糖脂質および糖蛋白質の受容体に対して活性を有する(Scudderら、上記)。また、上記トランスシアリダーゼは、低率で、p−ニトロフェニルα−N−アセチルノイラミン酸などの合成α−シアリル化合物のシアリン酸も転移させる(NeuAc2−3Galβ1−4(Fucα1−3)Glcは、供与体−基質ではない)。N−アセチル−D−ノイラミン酸の修飾2−[4−メチルウンベリフェロン]−α−ケトシド(4MU−NANA)およびそれらの幾つかの誘導体もまた、TcTsに対する供与体として働くことができる(LeeおよびLee、1994年、Anal.Biochem、216:p.358−364)。3’−シアリル−ラクト−N−ビオースIの酵素的合成は、N−アセチルノイラミニル部分の受容体としてラクト−N−ビオースIおよび供与体として2’−(4−メチルウンベリフェニル)−α−D−N−アセリノイラミン酸からTcTsにより触媒された(Vetereら、2000年、Eur.J.Biochem.267:p.942−949)。α2,3−シアリル化供与体を合成するためのトランスシアリダーゼの使用に関するさらなる情報は、欧州特許出願第0 557 580 A2号;米国特許第5,409,817号に見ることができる。
【0066】
ヒルMacrobdella decoraの分子内トランスシアリダーゼは、シアリル−グリコ共役体における末端Neu5Ac(N−アセチルノイラミン酸)α2の開裂→3Gal結合に対して厳密な特異性を示し、分子内トランス−シアリル化反応を触媒する(Luoら、1999年、J.Mol.Biol.、285:p.323−332)。トランスシアリダーゼ類は、シアリン酸を主にガラクトース受容体上へ付加するが、シアリン酸を幾つかの他の糖に転移する。しかし、GalNAc上へのシアリン酸の転移には、シアリルトランスフェラーゼが必要である。トランスシアリダーゼ類の使用についてのさらなる情報は、PCT出願国際公開第93/18787号;Vetereら、1997年、Eur.J.Biochem.247:p.1083−1090に見ることができる。
【0067】
本明細書に用いられる用語の「シアリルトランスフェラーゼ」は、付加された糖の立体配置の反転により、グリコシド合成を触媒する酵素類をいい、これらは、単糖供与体として、糖ヌクレオチドを必要とする。シアリルトランスフェラーゼの一例は、カンピロバクターの酵素(CST−IおよびCST−II)である。例えば、米国特許第6,503,744号、米国特許第6,096,529号、および米国特許第6,210,933号ならびに米国特許出願公開第2002/2.042,369号を参照されたい。
【0068】
本発明の他の目的、態様および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0069】
(本発明の詳細な説明)
(序論)
多くの化合物、例えば、糖脂質の生物学的活性は、分子の特定の糖形態、セラミド様またはスフィンゴシン様骨格の有無に、また、セラミド誘導体においては、脂肪酸アミド構成要素の構造に依存する。天然に見られる構造以外の構造を有する糖脂質組成物の利点としては、例えば、クリアランス速度の低下による治療上の半減期の増加、生物利用能の増大および生体活性の変化が挙げられる。糖脂質の構造変化はまた、変化した糖脂質に対する特異的な特定の組織または細胞表面受容体に対してその糖脂質を標的化するために使用することもできる。
【0070】
本発明は、新規な構造を有する糖脂質を提供する。本発明の化合物は、セラミド類、スフィンゴシン類およびそれらの類似体を参照として、本明細書に例示される。検討の的となるものは、説明を明晰にするためのものであり、本発明が、本明細書に明白に挙げられたもの以外の糖脂質に適用できることを当業者は認識されるであろう。
【0071】
(化合物)
本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼ、トランス−シアリダーゼなどに対する好適な受容体部分を含む任意の基質を用いて実施することができる。代表的な基質としては、限定はしないが、スフィンゴシンおよびその類似体、セラミドおよびその類似体、ペプチド類、スフィンゴ糖脂質類および他の生体構造(例えば、糖脂質、細胞全体など)が挙げられる。
【0072】
当該の好ましい実施形態において、本発明は、式I:
【0073】
【化12】
によるスフィンゴ糖脂質誘導体の1クラスを提供することによって、当該分野における不足に取り組んでおり、ここで、記号Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されるメンバーを表す。Xは、H、−OR3、−NR3R4、−SR3、および−CHR3R4から選択されるメンバーである。記号R1、R2およびR3は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、−C(=M)R5、−C(=M)−Z−R5、−SO2R5、および−SO3から独立して選択されるメンバーであり、記号MおよびZは、O、NR6またはSから独立して選択されるメンバーを表す。
【0074】
記号Yは、H、−OR7、−SR7、−NR7R8、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。R5、R6、R7およびR8は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。
【0075】
XがOR3であり、R3が、−C(O)R5である本発明の化合物において、Yは一般にOH以外の基である。
【0076】
X、YまたはR1はいずれも、単独で、または組み合わせて、標的部分、検出可能標識または脂質ラフトに組み込まれることが意図されている種である部分を含むことができる。
【0077】
本発明の代表的化合物として、XがNHR4である上記の化合物が挙げられる。記号R4は、Hまたは−C(O)R5を表す。記号Yは、OHを表し、Zは、0である。R5は、置換もしくは非置換のアルキルから選択されるメンバー以外のものであることが好ましい。
【0078】
他の代表的実施形態において、本発明は、R1が、式:
【0079】
【化13】
を有する部分を含む、式Iによる化合物を提供し、ここで、R9、R10、R11、R12およびR13は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーである。記号Lは、O、S、またはNR16を表す。R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーである。記号R16、R17およびR18は、独立してH、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールを表す。さらに、R9とR10;R9とR11;R9とR12;R9とR13;R10とR11;R10とR12;R10とR13;R11とR12;R11とR13;およびR12とR13から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に結合して環を形成する。この環は、5員から7員を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル環系、置換もしくは非置換のアリール環系、置換もしくは非置換のヘテロアリール環系および置換もしくは非置換のヘテロアルキル環系から選択されるメンバーであることが好ましい。
【0080】
さらなる代表的な実施形態において、本発明は、R1が、式:
【0081】
【化14】
を有する部分を含む、式Iによる化合物を提供し、ここで、記号R11、R12およびR13は独立して、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14を表す。L、R14、R15、R16、R17およびR18は、実質的に上記のとおりである。
【0082】
他の代表的な実施形態において、本発明は、R1が、式:
【0083】
【化15】
を有する部分を含む、式(I)による化合物を提供し、ここで、記号R9、R10、R11、R13、R19、R20、R21は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーである。R13およびR15により置換された炭素と繋がっている結合の立体配置は、シスまたはトランスであり得る。
【0084】
記号Lは、O、S、またはNR16を表す。R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーである。記号R16、R17およびR18は、独立してH、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。
【0085】
さらに、R9とR10;R9とR11;R9とR12;R9とR13;R10とR11;R10とR12;R10とR13;R11とR12;R11とR13;およびR12とR13から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に結合して環を形成する。この環は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーである。
【0086】
さらなる代表的な実施形態において、R13は、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである。好ましいヘテロアリール基は、少なくとも1個の環内窒素原子を含むものである。代表的な窒素含有ヘテロアリール基はピリジル部分である。
【0087】
他の代表的な実施形態において、上記に検討した化合物のクラスとしては、R13が、−C(O)NR13aR13bである種が挙げられ、ここで、R13aおよびR13は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。
【0088】
上記の化合物のクラスとしてはまた、R11がNR11aR11bである種が挙げられる。記号R11aおよびR11bは、独立してH、置換もしくは非置換のアルキルもしくは置換もしくは非置換のヘテロアルキルを表す。
【0089】
本発明のスフィンゴ糖脂質の糖部分は、所望の生物活性を示す任意の構造であり得る。一般に、糖部分は、少なくとも1つのGal、Glc、GlcNACまたはSiaを含む。糖は任意にフコシル化される。一定の好ましい糖部分において、SiaはGal残基と結合している。他の好ましい糖部分において、Galは、Glcに結合している。さらに好ましい糖部分において、GlcNAcはGalに結合している。当該の好ましい糖部分モチーフは、Galに結合しているペヌリチメート(penulitimate)GalNAcに結合している末端Galを有する骨格を含み、これが次にスフィンゴ糖脂質骨格に結合しているGlcに結合している。上記糖部分は、アセチル化または脱アセチル化された1つ以上の基を有し得る。
【0090】
代表的な糖部分としては、以下のものが挙げられる。
【0091】
【化16】
さらなる代表的な実施形態において、シアリン酸置換オリゴ糖は硫酸化される。すなわち、シアリン酸置換オリゴ糖における1つ以上のヒドロキシル基が修飾されて、硫酸エステルを形成する。合成ガングリオシド類の硫酸エステルを調製する方法は、米国特許第5,849,717号に開示されている。
【0092】
本発明の合成スフィンゴ糖脂質の他の例において、シアリン酸残基のカルボン酸基がエステル化される「内部エステル」すなわち、オリゴ糖におけるカルボキシル基とヒドロキシル基との間にラクトンが形成されるものと、「外部エステル」すなわち、アルコールROHにより、カルボキシル基がエステル化されているものが挙げられる。ROHは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールであり得る。シアリン酸のカルボキシル基エステル化されている合成スフィンゴ糖脂質類を調製する方法は、米国特許第5,264,424号に開示されている。
【0093】
本発明のさらなる合成スフィンゴ糖脂質類としては、HNRまたはカルボン酸基または硫酸基を含有する脂肪族アミノ酸によりアミド化されている(すなわち、カルボン酸部分を誘導体化している)Sia残基が挙げられる。Rは上記のとおりである。官能化シアリン酸カルボキシル部分によって合成スフィンゴ糖脂質類を調製する方法は、米国特許第5,350,841号に開示されている。
【0094】
合成スフィンゴ糖脂質のさらに他の例において、オリゴ糖における1つ以上のヒドロキシル基および/またはシアリン酸残基がアシル化されている、すなわち、−OCORに変換されている。Rは上記のとおりである。アシル化シアリン酸残基によって合成スフィンゴ糖脂質類を調製する方法は、米国特許第5,484,775号および米国特許第5,264,424号に開示されている。
【0095】
スフィンゴシン基のN−アシル基((NC(O)R)は、多種多様なカルボン酸(または対応する活性化誘導体、例えば、活性エステル、酸ハロゲン化物など)から誘導することができる。アシル化は、従来の方法において、例えば、出発物質を、アシル化剤、特に残基が導入される酸の反応性の機能的誘導体によって反応させることにより実施できる。代表的な酸の反応性の機能的誘導体としては、ハロゲン化物、酸無水物、および活性エステルが挙げられる。アシル化は、塩基(例えば、TEA、ピリジンまたはコリジン)存在下で実施できる。アシル化は、任意に、無水条件下、室温で、または加熱して実施される。無機塩基の存在下、水性条件でアシル化を実施するために、ショッテン−バウマン法もまた使用できる。幾つかの場合、反応性の機能的誘導体として、酸類のエステル類を使用することも可能である。アシル化には、ペプチド化学において公知のものなど、例えば、カルボジイミド類またはイソキサゾール塩によって得られる混合酸無水物または誘導体を使用する活性化カルボキシル誘導体を含む方法を用いることも可能である。
【0096】
アシル化の代表的な方法としては、(1)酸アジドとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(2)酸とN,N’−カルボニルジイミダゾールから得られる酸のアシルイミダゾールとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(3)酸とトリフルオロ酢酸との混合無水物と、リソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(4)酸塩化物とリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(5)カルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミドなど)および任意に1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの物質存在下、酸とリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(6)加熱による酸とリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(7)高温における酸のメチルエステルとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(8)パラ−ニトロフェノールとのエステルなど、酸のフェノールエステルとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;および(9)酸の塩とヨウ化1−メチル−2−クロロピリジンまたは同様の生成物との間の交換から誘導されたエステルとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応、が挙げられる。
【0097】
上記酸は、飽和または不飽和、分枝鎖または直鎖の、置換もしくは非置換のアルキル酸、置換もしくは非置換の脂肪酸(例えば、ヒドロキシ脂肪酸)から誘導できる。上記酸は、C1〜C40の酸であることが好ましい。上記アシル基は、pが0〜40である以下の代表的構造を含み得る:−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)pCH3、−CHOH−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)2−CH=CH−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)2−C≡C−(CH2)pCH3、−CHOH−(CH2)3−CH=CH−(CH2)pCH3、アリール、アルキルアリール、またはリンカー。一般に、アシル成分の長さは、好ましくは、8〜30個の炭素、より好ましくは、10〜25個、さらにより好ましくは、16〜20個の炭素である。
【0098】
酸の非限定的一覧としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸およびそれらのフッ素化または臭素化類似体;2,2−ジクロロプロピオン酸、2,3−ジクロロプロピオン酸、2,2,3−トリクロロプロピオン酸、直鎖状−2,2−ジクロロ酪酸、2,2−ジクロロ吉草酸、2−クロロイソ吉草酸、2,3−ジクロロ吉草酸、ペンタフルオロプロピオン酸、3,3−ジクロロピバル酸、3−クロロ−2,2−ジメチルプロピオン酸、クロロ−ジフルオロ酢酸、2,2−ジクロロカプロン酸、2−モノクロロプロピオン酸、直鎖状−2−モノクロロ酪酸、2−モノクロロ吉草酸、および2−モノクロロカプロン酸ならびにこれらの酸のフッ素化または臭素化類似体;2−クロロパルミチン酸、2−クロロステアリン酸、2−クロロオレイン酸、2−クロロラウリン酸、2−クロロベヘン酸、4−クロロフェノキシ酢酸、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、2,3−ジヒドロキシ酪酸および2,3−ジヒドロキシ吉草酸、ならびにそれらのC1〜C40低級脂肪族エーテル類またはエステル類;メトキシ酢酸、2−ヒドロキシステアリン酸、2−(4−ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、2−ヒドロキシイソ酪酸および4−フルオロフェノキシ酢酸;ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸、最大4個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコールとのそれらのケタール類;メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプト酪酸および2−メルカプト吉草酸、ならびにそれらのC1〜C40低級脂肪族チオエーテル類またはチオエステル類;2−メルカプトラウリン酸、オレイン酸およびパルミチン酸;ならびにそれらのC1〜C4低級脂肪族チオエーテル類またはチオエステル類;マロン酸、グルタール酸、モノメチルグルタール酸、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタール酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマール酸、アゼライン酸、およびそれらのC1〜C40脂肪族エステル類;スルホ酢酸、2−スルホプロピオン酸、2−スルホ酪酸、2−スルホ吉草酸、およびそれらのC1〜C40脂肪族硫酸エステル類。また、2−スルホラウリン酸、2−スルホ−オレイン酸、2−スルホパルミチン酸、2−スルホステアリン酸および;それらのC1〜C40低級脂肪族硫酸エステル類;スルファミド類またはアミンが1つまたは2つのC1〜C40低級アルキル基またはC1〜C40低級アルキレン基により任意に置換されているスルファミド類;C1〜C4アルキル基、アシルスルホキシド基またはC1〜C40アルキルスルホン基により2位に置換されている酢酸、プロピオン酸、酪酸および吉草酸;シアン酢酸、2−シアンプロピオン酸、2−シアン酪酸、2−シアン吉草酸、アミノ酢酸、2−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、3−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ吉草酸、4−アミノ吉草酸、および1つまたは2つのC1〜C40アルキル基、C1〜C40アルキレン基またはC1〜C4アシル基により任意に置換されているアミンとのそれらの誘導体;ジ−メチルグリシン、3−ジメチルアミノプロピオン酸、カミチン、およびシステイン酸、が挙げられる。
【0099】
遊離のヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、または第一級または第二級アミノ基を含有する酸から誘導されたアシル基の特定例においては、アシル化反応時にこのような基を保護することが、一般に好ましい。このような基を保護する方法は、当該分野で利用可能である。このような保護基は、反応の最後に除去することが必要である。代表的な保護基としては、スルホンアミド基、アロック基、フタロイル基およびベンジルオキシカルボニル基が挙げられ、これらは、アミノ基の保護促進に役立つ。したがって、例えば、γ−アミノ酪酸を含有する誘導体の調製においては、アミノ基がフタロイル基に結合しているこの酸の誘導体を先ず調製し、リソスフィンゴ糖脂質によるアシル化後、ヒドラジン分解によって、フタロイル基を除去する。ベンジルオキシカルボニル基は、水素化分解によって除去できる。この残基は、ヒドロキシ基の保護にも利用可能である。カルボキシ基は、エステル化、例えば、ペプチド化学において用いられるアルコール類により保護することができる。
【0100】
また、本発明は、本発明による遊離カルボキシ官能基を有するスフィンゴ糖脂質の金属塩または有機塩基塩を調製する方法も提供し、これらもまた、本発明の一部を構成している。二塩基酸によるエステル類または過アシル化アミド類などの遊離酸官能基を有する、本発明の他の誘導体の金属塩または有機塩基塩を調製することも可能である。例えば、アミノアルコール類によるエステル類などの遊離アミノ官能基を含有するスフィンゴ糖脂質誘導体の酸付加塩もまた、本発明の一部を構成している。金属塩または有機塩基塩の中で、特に挙げるべきものは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩、またはアルミニウム塩、ならびに有機塩基塩、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ピペリジン、モルホリン、エフェドリン、フルフリルアミン、コリン、エチレンジアミンおよびアミノエタノールなどの脂肪族または芳香族またはヘテロ環式の第一級、第二級または第三級アミン類などの治療法に使用できるものである。本発明によるスフィンゴ糖脂質誘導体を提供できる酸の中でも、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸などの水素酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸およびマレイン酸などの炭素が最大7個の低級脂肪酸を特に挙げる必要がある。ピクリン酸などの治療上有用ではない酸または塩基を、本発明のスフィンゴ糖脂質誘導体の精製に用いることができ、やはり本発明の一部を構成している。
【0101】
本発明の代表的な化合物は、図16に記載されている。
【0102】
また、本発明は、上記の各化合物の薬学的に受容可能な全ての異性体、塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグを含む。また、このような化合物は、種々の異性体および互変異性体において存在でき、このような形態は全て、このような異性体および互変異性体の薬学的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物と共に、本発明に含まれることを意味している。
【0103】
(調製法)
本発明により、本発明の合成スフィンゴ糖脂質化合物は、他に指示されない限り、当該分野に公知の化学および酵素化学における従来の方法とプロトコルを用いて調製される。例えば、本発明の化合物は、下記のスキーム1〜6に概略化されるような化学的および酵素的工程により調製できる。
【0104】
本発明の化合物の糖部分は、参照としてそれぞれ、その全体を組み込んでいる米国特許第5,922,577号、米国特許第6,284,493号および米国特許第6,331,418号に記載された方法など、当該分野に公知の任意の手段により調製することができる。本発明の化合物の糖部分は、酵素的に調製され、本明細書に各々定義された供与体分子から受容体分子への単糖の転移に影響を与えるために特異的酵素が使用できる。
【0105】
より具体的には、本発明の合成スフィンゴ糖脂質化合物において見られる二糖、オリゴ糖および多糖は、グリコシルトランスフェラーゼ類の使用により生合成的に調製されることが好ましい。このようなグリコシルトランスフェラーゼ反応は、例えば、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルムなどの有機溶媒の単独、または組み合わせの存在下で実施できる。あるいは、このようなグリコシルトランスフェラーゼ反応は、生物学的緩衝剤、細胞ライセートなどのインビトロの生物学的媒体中で、またはグリコシルトランスフェラーゼがクロマトグラフィ支持体上に固定化され、反応混合物の他の成分を水性媒体中、クロマトグラフィ支持体と接触させることにより、上記成分をグリコシルトランスフェラーゼと接触させる、クロマトグラフィ支持体上で実施できる。
【0106】
糖のグリコシルトランスフェラーゼ媒介合成は、インビボまたはインビトロで実施できる。例えば、酵素的合成、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ媒介合成のために、細胞全体発現系が使用できる。グリコシルトランスフェラーゼ類の発現および糖構造の産生に有用な細胞タイプとしては、当業者に理解されると思われるが。細菌細胞、酵母細胞、および昆虫細胞が挙げられる。所望の糖産物は、それが合成された細胞から、細胞溶解により、または糖産物を培地に分泌する細胞を用いる場合には細胞培地からの単離により単離できる。次いでこの糖産物を、本明細書の他所に記載された手段によって精製し得るか、またはライセートまたは細胞培地において、さらなる精製なしに使用し得る。
【0107】
当業者に理解されるように、使用される酵素は、供与体へ転移される糖によって変化し得る。好適な酵素の例としては、限定はしないが、グリコシルトランスフェラーゼ類、トランス−シアリダーゼ類、およびシアリルトランスフェラーゼ類が挙げられる。本発明の所与の合成法に用いられるグリコシルトランスフェラーゼ(単数または複数)の選択は、出発物質として用いられる受容体と供与体の独自性および所望の最終産物の性質に依存する。本発明の方法は、1つ以上の糖が付加される、1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼの使用を含み得る。複数のグリコシルトランスフェラーゼ反応を同時に、すなわち、同時に同じ反応混合物中で、または連続的に実施できる。
【0108】
大規模インビトロ反応に関して十分な量のグリコシルトランスフェラーゼを得るために、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸をクローン化し、通常の当業者に公知の方法により、組換え溶解性酵素として発現させることができる。次いで発現した酵素を通常の当業者に公知の手段により精製し得るか、もしくは、ライセートまたは細胞培地において、さらなる精製をせずに使用し得る。
【0109】
例えば、糖部分:
【0110】
【化17】
は、受容体分子、例えば、グルコース(Glc)を含有するセラミドまたはスフィンゴイドを、ガラクトシルトランスフェラーゼおよびガラクトース(Gal)供与体分子と接触させて、
【0111】
【化18】
を形成することによって調製でき、次にこれをトランス−シアリダーゼおよびSia供与体分子と接触させて、
【0112】
【化19】
.
を形成することができ、次にこれをN−アセチル化ガラクトース(GalNAc)−トランスフェラーゼおよびGalNAc供与体分子と接触させて、
【0113】
【化20】
を形成することができ、次にこれをガラクトシルトランスフェラーゼおよびガラクトース(Gal)供与体分子と接触させて、所望の糖を形成することができる。
【0114】
所望の最終産物に依り、最初の単糖を、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ(グルコシルセラミドに関しては、例えばEC2.4.1.80)、またはセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(ガラクトシルセラミドに関しては、例えばEC2.4.1.45)のいずれかを用いて、基質、例えばセラミド、スフィンゴシン、またはそれらの類似体に加え得る。スフィンゴ糖脂質生合成のレビューに関しては、例えば、IchikawaおよびHirabatashi(1998)Trends Cell Biol.8;p.198−202を参照されたい。セラミドグルコシルトランスフェラーゼは、種々の出所から入手できる。例えば、ヒトヌクレオチド配列が知られている(GenBank登録番号D50840;Ichikawaら、(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 93:p.4638−4643)ので、上記酵素を得るために、組換え法を用いることができる。また、ヒトセラミドガラクトシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列も報告されている(GenBank登録番号U62899;KapitonovおよびYu(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.232:p.449−453)ので、上記酵素を容易に得ることができる。これらの反応に用いられる受容体は、N−アシルスフィンゴシン、スフィンゴシンおよびジヒドロスフィンゴシンのいずれかであり得る。グリコシルトランスフェラーゼに対する好適な供与体ヌクレオチド糖としては、UDP−GlcおよびCDP−Glcが挙げられ、一方、ガラクトシルトランスフェラーゼは、供与体として典型的にUDP−Galを利用する。
【0115】
本発明の化合物の糖部分の合成のための他の可能な生合成法は、下記のスキーム1に例示されている。好ましい一実施形態において、受容体分子は、非固定化される。例えば、受容体分子は、溶液において遊離しているか、そうでなければ、他の受容体分子と会合していない。
【0116】
追加の糖残基は、スフィンゴ糖脂質出発物質のグリコシル化パターンの事前の修飾なしで、本発明の化合物に加え得る。あるいは、本発明は、追加の糖残基を加える前に、スフィンゴ糖脂質のグリコシル化パターンを変化させる方法を提供する。もし、出発スフィンゴ糖脂質が、所望の糖付加を触媒するグリコシルトランスフェラーゼに対する好適な受容体を提供しないならば、当業者に公知の方法によって、受容体を含むようにスフィンゴ糖脂質を修飾することができる。
【0117】
例えば、シアリルトランスフェラーゼに対する好適な受容体を提供するために、ガラクトシルトランスフェラーゼを使用することにより、好適な受容体を合成して、ガラクトース残基を、例えば、Glcまたはグリコスフィンゴイドに結合している他の適切な糖部分に付加することができる。他の実施形態において、グリコスフィンゴイド結合オリゴ糖を、先ず全体的に、または部分的に「トリム」して、シアリルトランスフェラーゼに対する受容体または、1つ以上の適切な残基を付加できる部分を露出させて、好適な受容体を得ることができる。グリコシルトランスフェラーゼ類およびエンドグリコシダーゼ類などの酵素は、付加反応およびトリミング反応に有用である。
【0118】
シアリルトランスフェラーゼ類および他のグリコシルトランスフェラーゼ類は、単独で、または追加の酵素と関連させて使用できる。例えば、図1は、ウシのバターミルクから得られるラクトシルセラミドを、出発物質として用いる酵素的合成によるガングリオシドGM2合成のための2つの方法の概略図を提供している。第1の方法においては、セラミドを1種以上の酵素と接触させて、糖単位をセラミドに付加する。第2の経路においては、カルボン酸アミドの加水分解により、セラミドは、対応するスフィンゴシンに変換される。糖部分をスフィンゴシンに付加させるために、1種以上の酵素が用いられる。糖単位が調製された後、スフィンゴシンのアミノ基は、反応性カルボン酸誘導体によってアシル化され、それによってセラミドが形成される。
【0119】
図2は、ラクトシルセラミドから出発してスフィンゴ糖脂質GD2を合成するための2つの経路の概略図を示している。各々の経路が、2種の異なるシアリルトランスフェラーゼ(α2,3STおよびα2,8ST)ならびにGalNAcトランスフェラーゼの使用を含んでいる。1つの例示的経路において、脂肪酸が塩基による処理によってラクトシルセラミドから除去される(ステップ1)。あるいは、リソセラミド由来であり得る。次いで、アセチル化が行われ(ステップ2)、その後、α2,3シアリルトランスフェラーゼにより、α2,3結合において、シアリン酸がガラクトース残基へ付加される(ステップ3)。シアリル化ステップは、本明細書に記載されている有機溶媒の存在下で実施することが好ましく、それにより、この反応はほぼ完了へと至る。次に、GalNAcトランスフェラーゼを用いて、β1,4結合において、GalNAc残基がガラクトースへ付加される(ステップ5)。最後に、例えば、塩化ステロイルを用いる反応により、脂肪酸が付加され、スフィンゴ糖脂質が完成する(ステップ6)。アシル化は、工程のどの段階においても実施できる。
【0120】
図3は、本発明の化合物への、さらなる例示的経路を提供している。第1のスキームにおいて、グルコシルセラミドを、ガラクトシダーゼ、活性化ガラクトース供与体およびシアリルトランスフェラーゼと接触される。生じたシアリル化セラミドを、GalNAcトランスフェラーゼと接触させて、所望の産物を得る。代替の経路において、グルコシルセラミドをGalトランスフェラーゼ、続いてシアリルトランスフェラーゼにより処理する。シアリル化中間体をGalNAcトランスフェラーゼと接触させて所望の産物を得る。第3の経路の第1のステップにおいて、セラミドは、カルボン酸アミドの加水分解により、対応するスフィンゴシンに変換される。スフィンゴシンは、ガラクトシルトランスフェラーゼ、続いてシアリルトランスフェラーゼにより処理されたならば。シアリル化中間体をGalNAcトランスフェラーゼと接触させ、引き続いてスフィンゴシンのアミンをアシル化して、所望のセラミドを形成する。
【0121】
さらなるスキームを図5に提供している。グリコシルセラミドを、対応するスフィンゴシンへ加水分解し、これをシアリルトランスフェラーゼと接触させる。シアリル化化合物をGalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAc供与体により処理する。生じた化合物を、活性化カルボン酸誘導体を用いるアミン部分のアシル化によりセラミドへと変換する。
【0122】
(酵素)
(a.グリコシルトランスフェラーゼ類および選択されたグリコシル化パターンを有する基質の調製法)
本発明の方法では、選択されたグリコシル化パターンを有する糖を生産する能力に関して選択されるグリコシルトランスフェラーゼ類(例えば、フコシルトランスフェラーゼ類)を利用する。例えば、所望の特異性を有するのみならず、基質における所望の受容体基を高パーセンテージでグリコシリル化する能力のあるグリコシルトランスフェラーゼ類が選択される。オリゴ糖受容体部分、例えば、溶解性のオリゴ糖または比較的短いペプチドに付加しているオリゴ糖を使用するアッセイ系を用いて得られた結果に基づいて、グリコシルトランスフェラーゼを選択することが好ましい。一定の実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼは融合蛋白質である。代表的な融合蛋白質としては、2種の異なるグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼとコシルトランスフェラーゼ)の活性を示すグリコシルトランスフェラーゼ類が挙げられる。他の融合蛋白質としては、同じトランスフェラーゼ活性の2種の異なる変型体(例えば、FucT−VIとFucT−VII)が挙げられる。さらに他の融合蛋白質としては、トランスフェラーゼ活性の有用性を増大する(例えば、溶解性、安定性、回転率の増大)ドメインが挙げられる。
【0123】
所望のオリゴ糖構造を合成するために、グリコシルトランスフェラーゼ類を用いる多くの方法が知られており、本発明に一般的に適用できる。代表的な方法は、例えば、国際公開第96/32491号、Itoら、Pure Appl.Chem.65:p.753(1993)、および米国特許第5,352,670号、米国特許第5,374,541号、および米国特許第5,645,553号に記載されている。
【0124】
グリコシルトランスフェラーゼは、基質(例えば、蛋白質、糖ペプチド、脂質、糖脂質または成長オリゴ糖の非還元性末端)に対する、段階的様式における活性化糖類の付加を触媒する。非常に多くのグリコシルトランスフェラーゼが当該分野に知られている。
【0125】
グリコシルトランスフェラーゼが、選択された部位に所望のグリコシル残基を付加することができるという条件で、本発明の方法では、任意のグリコシルトランスフェラーゼが利用できる。このような酵素の例としては、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、グルクロノニルトランスフェラーゼなどが挙げられる。
【0126】
本発明は、トランスシアリダーゼまたはシアリルトランスフェラーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼの組合せを用いて実施される。例えば、トランスシアリダーゼに加えて、シアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼとの組み合わせを使用することができる。1種以上の酵素を用いる実施形態において、1種以上の酵素と適切なグリコシル供与体が最初の反応混合物において、任意に組み合わされる。あるいは、先行の酵素反応が完了するか、ほぼ完了したら、引き続く酵素反応のための酵素と試薬が反応媒体に加えられる。2つの酵素反応を単一の容器内で連続して行うことにより、中間体種が単離される過程を通しての総収量が改善される。さらに、過剰溶媒のクリーンアップと処理が減少する。
【0127】
本発明の方法に使用できるグリコシルトランスフェラーゼ類としては、限定はしないが、ガラクトシルトランスフェラーゼ類、フコシルトランスフェラーゼ類、グルコシルトランスフェラーゼ類、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ類、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ類、グルクロノニルトランスフェラーゼ類、シアリルトランスフェラーゼ類、マンノシルトランスフェラーゼ類、グルクロン酸トランスフェラーゼ類およびガラクツロン酸トランスフェラーゼ類が挙げられる。好適なグリコシルトランスフェラーゼ類としては、真核生物ならびに原核生物から得られたものが挙げられる。
【0128】
グリコシルトランスフェラーゼ反応を含む酵素的糖合成のために、グリコシルトランスフェラーゼは、任意の出所からクローン化または単離できる。多くのクローン化グリコシルトランスフェラーゼ類ならびにそれらのポリヌクレオチド配列が知られている。例えば、「The WWW Guide To Cloned Glycosyltransferase」、(http://www.vei.co.uk/TGN/gt_guide.htm)を参照されたい。また、グリコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列およびアミノ酸配列が推論されるグリコシルトランスフェラーゼ類をコードするヌクレオチド配列も、GenBank、Swiss−Prot、EMBLなどの種々の公的に利用できるデータベースにおいて見られる。
【0129】
グリコシルトランスフェラーゼ類をコードするDNAは、化学的合成により適切な細胞、または細胞系培養物からのmRNAの逆転写体をスクリーニングすることにより、適切な細胞からのゲノムライブラリーのスクリーニングにより、またはこれらの操作の組み合わせにより得ることができる。mRNAまたはゲノムDNAのスクリーニングは、グリコシルトランスフェラーゼ類の遺伝子配列から作製されたオリゴヌクレオチドプローブによって実施できる。プローブは、蛍光基、放射性原子または化学発光基などの検出可能な基により、公知の操作に従って標識化でき、従来のハイブリダイゼーションアッセイに使用できる。あるいは、グリコシルトランスフェラーゼ類の遺伝子配列は、グリコシルトランスフェラーゼ類の遺伝子配列から作製されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)操作の使用によって得ることができる。Mullisらに対する米国特許第4,683,195号、およびMullisに対する米国特許第4,683,202号を参照されたい。
【0130】
グリコシルトランスフェラーゼは、このグリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを含有するベクターによって形質転換した宿主細胞において合成できる。ベクターは、複製可能なDNA構築体である。ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼ類酵素をコードするDNAを増幅させるため、および/または、グリコシルトランスフェラーゼ類酵素をコードするDNAを発現させるために用いられる。発現ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼ類酵素をコードするDNA配列が、好適な宿主におけるグリコシルトランスフェラーゼの発現に影響を与える能力のある好適な制御配列に操作可能に結合している複製可能なDNA構築体である。このような制御配列に対する必要性は、選択された宿主および選択された形質転換法に依って変わる。一般に、制御配列は、転写プロモーター、転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位、および転写ならびに翻訳の終結を制御する配列を含む。増幅ベクターは、発現制御ドメインを必要としない。必要なことは、通常、複製源により与えられる、宿主において複製する能力と形質転換体の認識を助ける遺伝子選択だけである。
【0131】
本発明の組成物の調製における使用に好適なグリコシルトランスフェラーゼ類の例は、本明細書に記載されている。種々の量の各酵素(例えば、1〜100mU/mg蛋白質)を、対象のグリコシルトランスフェラーゼに対する受容体として可能な部位を有するオリゴ糖が結合している基質(例えば、1〜10mg/mlにおいて)と反応させることにより、他の好適なグリコシルトランスフェラーゼ類を容易に確認することができる。所望の部位に糖残基を付加するグリコシルトランスフェラーゼ類の能力を比較する。基質に結合したオリゴ糖の受容体として可能な部位をグリコシル化する能力を、同じ特異性を有する他のグリコシルトランスフェラーゼ類よりも効率的に示すグリコシルトランスフェラーゼ類が本発明の方法における使用に好適である。
【0132】
所望の形質転換を達成するために必要とされる具体的な酵素量は、当業者に容易に決定される。しかし、他の実施形態においては、より多量の酵素を使用することが望ましい。例えば、約30℃から約37℃の温度が好適である。
【0133】
本発明の方法の有効性は、組換え生産されたグリコシルトランスフェラーゼ類の使用によって増大化できる。組換え生産により、大規模の基質修飾に必要とされる大量のグリコシルトランスフェラーゼ類の製造が可能となる。グリコシルトランスフェラーゼ類を溶解性にし、したがって大量のグリコシルトランスフェラーゼ類の製造と精製を促進するグリコシルトランスフェラーゼ類の膜固定ドメインの削除は、グリコシルトランスフェラーゼ類をコードする修飾遺伝子の組換え発現によって達成できる。グリコシルトランスフェラーゼ類の組換え製造に好適な方法の説明については、米国特許第5,032,519号を参照されたい。
【0134】
また、標的基質が、固体支持体上に固定化されるグリコシル化法も本発明により提供される。用語の「固体支持体」は、半固体支持体も含む。グリコシル化反応の完了後、基質が遊離できるように、標的基質は、可逆的に固定化されることが好ましい。好適なマトリクスは当業者に公知である。グリコシル化反応が進行している間、基質を一時的に適切な樹脂に固定化するために、例えば、イオン交換を用いることができる。また、アフィニティーに基づく固定化に関しては、対象の基質に特異的に結合するリガンドも使用できる。対象の基質に結合する抗体は好適である。また、グリコシル化される対象の基質に特異的に結合する色素および他の分子も好適である。
【0135】
代表的な一実施形態において、トランス−シアリダーゼを除いて、使用される酵素は全て、グリコシルトランスフェラーゼ類である。他の代表的一実施形態において、1種以上の酵素は、グリコシダーゼである。
【0136】
(フコシルトランスフェラーゼ反応)
多くの糖は、生物活性を示すためには、特定のフコシル化構造の存在を必要とする。細胞間認識機構は、フコシル化オリゴ糖を必要とすることが多い。例えば、P−セレクチン、E−セレクチンなどの細胞接着分子として働く多くの蛋白質は、特定の細胞表面フコシル化炭水化物構造、例えば、シアリルルイスx構造およびシアリルルイスa構造と結合する。また、ABO血液型系を形成する特定の炭水化物構造は、フコシル化される。これら3つの群の各々における炭水化物構造は、Fucα1.2Galβ1−二糖単位を共有する。O型血液構造では、この二糖は末端構造である。A型構造は、末端GalNAc残基を二糖に付加するα1,3GalNAcトランスフェラーゼにより形成される。B型構造は、末端ガラクトース残基を付加するα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼにより形成される。ルイス血液型構造もまた、フコシル化される。例えば、ルイスx構造およびルイスa構造は、それぞれGalβ1,4(Fucα1,3)GlcNacおよびGalβ1,4(Fucα1,4)GlcNacである。これらの構造は、双方ともさらにシアリル化(NeuAcα2,3−)されて、対応するシアリル化構造を形成する。興味深い他のルイス血液型構造は、ルイスy構造およびルイスb構造であり、これらは、それぞれFucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ−ORおよびFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAcβ−ORである。ABOおよびルイスの血液型構造の構造およびそれらの合成に関与する酵素に関しては、Essentials of Glycobiology、Varkiら編集、16章(Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在、1999年)を参照されたい。
【0137】
フコシルトランスフェラーゼ類は、合成経路において、グアノシン−5’−ジホスホフコースから、糖受容体の特定のヒドロキシへ、フコース単位を転移するために用いられてきた。例えば、Ichikawaは、クローン化フコシルトランスフェラーゼによるシアリル化ラクトサミンのフコシル化を含む方法により、シアリルルイス−Xを調製した(Ichikawaら、J.Am.Chem.Soc.114:p.9283−9298(1992))。Loweは、細胞における非天然フコシル化活性を発現し、それによってフコシル化糖蛋白質、細胞表面などを製造する方法を記載している(米国特許第5,955,347号)。
【0138】
一実施形態において、フコシルトランスフェラーゼに対する受容体部分を有する基質を、フコース供与体部分、フコシルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼ活性に必要とされる他の試薬を含む反応混合物と接触されることにより、本発明の方法が実施される。フコースをフコース供与体部分からフコシルトランスフェラーゼ受容体部分へ転移するために十分な時間と適切な条件下で基質を反応混合物中に温置する。好ましい実施形態において、フコシルトランスフェラーゼは、組成物におけるフコシルトランスフェラーゼに関する受容体部分の少なくとも60%のフコシル化を触媒する。
【0139】
多数のフコシルトランスフェラーゼ類が当業者に公知である。簡潔に述べると、フコシルトランスフェラーゼ類は、L−フコースをGDP−フコースから、受容体糖のヒドロキシル位へ転移させるいずれかの酵素を含む。幾つかの実施形態において、例えば、受容体糖は、オリゴ糖グリコシドにおけるGalβ(1→3,4)GlcNAc基の中のGlcNAcである。この反応のために好適なフコシルトランスフェラーゼ類としては、ヒト乳から得られる公知のGalβ(1→3,4)GlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ類(FucT−III E.C.番号2.4.1.65)(例えば、Palcicら、Carbohydrate Res.190:p.1−11(1989);Prieelsら、J.Biol.Chem.256:p.10456−10463(1981);およびNunezら、Can.J.Chem.59:p.2086−2095(1981)を参照)、およびヒト血清に見られるβGal(1→4)βGlcNAcα(1→3)フコシルトランスフェラーゼ類(FucT−IV、FucT−V、FucT−VI、およびFucT−VII E.C.番号2.4.1.65)が挙げられる。βGal(1→3,4)βGlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ類の組換え体もまた利用できる(Dumasら、Bioorg.Med.Letters1:p.425−428(1991)およびKukowaka−Latalloら、Genes and Development 4:p.1288−1303(1990)を参照)。他の代表的なフコシルトランスフェラーゼ類としては、α1,2−フコシルトランスフェラーゼ(E.C.番号2.4.1.69)が挙げられる。酵素的フコシル化は、Malliconeら、Eur.J.Biochem.191:p.169−176(1990)または米国特許第5,374,655号;マンソン住血吸虫のα1,3−フコシルトランスフェラーゼ(Trotteinら、(2000)Mol.Biochem.Parasitol.107:p.279−287);およびα1,3−フコシルトランスフェラーゼIX(ヒトおよびマウスFucT−IXのヌクレオチド配列は、Kanekoら(1999)FEBS Lett.452:p.237−242、およびヒト遺伝子の染色体位置は、Kanekoら(1999)Cytogenet.Cell Genet.86:p.329−330)、に記載された方法により実施することができる。受容体として、巻貝のモノアラガイならびにリョクトウのN−結合GlcNAcを用いる、最近報告されたα1,3フコシルトランスフェラーゼ類が、それぞれvan Teteringra、FEBS Lett.461:p.311−314、およびLeiterら、(1999)J.Biol.Chem.274:p.21830−21839に記載されている。さらに、Raskoら、(2000)J.Biol.Chem.275:p.4988−94に記載されているヘリコバクターピロリのα(1,3/4)フコシルトランスフェラーゼ類、ならびにH.ピロリ(Wangら、(1999)Microbiology.145:p.3245−53)のα1,2フコシルトランスフェラーゼ類など、細菌のフコシルトランスフェラーゼ類。また、本発明において有用なフコシルトランスフェラーゼ類の記載に関しては、Staudacher,E.(1996)Trends in Glycoscience and Glycotechnology、8:p.391−408も参照されたい。
【0140】
フコース残基のフコシルトランスフェラーゼ触媒付加に関する好適な受容体部分としては、限定はしないが、GlcNAc−OR、Galβ1,3GlcNAc−OR、NeuAcα2,3Galβ1,3GlcNAc−OR、Galβ1,4GlcNAc−ORおよびNeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAc−ORが挙げられ、ここで、Rは、アミノ酸、糖、オリゴ糖または少なくとも1個の炭素原子を有するアグリコン基である。Rは、基質に結合しているか、または基質の一部である。ある特定の反応にとって適切なフコシルトランスフェラーゼは、所望のフコース結合型(例えば、α2、α3またはα4)、具体的な対象の受容体および所望の高収量フコシル化を達成するためのフコシルトランスフェラーゼの能力に基づいて選択される。好適なフコシルトランスフェラーゼ類およびそれらの特性は上記されている。
【0141】
もし、組成物における基質結合オリゴ糖が十分な割合でフコシルトランスフェラーゼ受容体部分を含まないならば、好適な受容体を合成することができる。例えば、フコシルトランスフェラーゼに対する受容体を合成する好ましい方法は、GlcNAc残基を、基質結合オリゴ糖上に存在するGlcNAcトランスフェラーゼ受容体部分に付加するGlcNAcトランスフェラーゼの使用を含む。好ましい実施形態において、対象の受容体として可能な部分を高い割合でグリコシル化する能力を有するトランスフェラーゼが選択される。次いで生じたGlcNAcβ−ORをフコシルトランスフェラーゼ類に対する受容体として使用できる。
【0142】
生じたGlcNAcβ−OR部分は、フコシルトランスフェラーゼ反応前にガラクトシル化でき、例えば、Galβ1,3GlcNAc−OR残基またはGalβ1,4GlcNAc−OR残基が得られる。幾つかの実施形態において、ガラクトシル化とフコシル化のステップは、同時に実施できる。ガラクトシル化受容体を必要とするフコシルトランスフェラーゼを選択することにより、所望の産物だけが形成される。したがって、この方法は:
(a)化合物Galβ1,4GlcNAcβ−ORまたはGalβ1,3GlcNAc−ORを形成するために十分な条件下で、UDP−ガラクトースの存在下、ガラクトシルトランスフェラーゼにより、式GlcNAcβ−ORの化合物をガラクトシル化する工程;および
(b)Fucα1,2Galβ1,4GlcNAc1β−O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GlcNAc−OR;
Fucα1,2Galβ1,4GalNAc1β−O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GalNAc−OR;
Galβ1,4(Fuc1、α3)GlcNAcβ−OR;または
Galβ1,3(Fucα1、4)GlcNAcβ−OR、
から選択される化合物を形成するために十分な条件下で、GDP−フコースの存在下、フコシルトランスフェラーゼを用いて、(a)で形成された化合物をフコシル化する工程、を含む。
【0143】
所望の活性を有する追加のフコシルトランスフェラーゼを含めることにより、上記の構造に追加のフコース残基を付加することができる。例えば、上記方法により、Fucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ−ORおよびFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAcβ−ORなどのオリゴ糖決定基を形成することができる。したがって、他の好ましい実施形態において、上記方法は、少なくとも2種のフコシルトランスフェラーゼの使用を含む。複数のフコシルトランスフェラーゼは、同時に、または連続的に用いられる。フコシルトランスフェラーゼ類が、連続的に用いられる場合、複数のフコシル化ステップの間で、糖蛋白質は精製されないことが一般に好ましい。複数のフコシルトランスフェラーゼが同時に用いられる場合、酵素活性は、2つの個々の酵素に由来し得るか、あるいは、1つのフコシルトランスフェラーゼ活性以上の活性を有する単一の酵素に由来し得る。
【0144】
(シアリルトランスフェラーゼ類)
アンカードメインが削除されたものなどの組換えシアリルトランスフェラーゼ類ならびに組換えシアリルトランスフェラーゼ類の製造法の例は、例えば、米国特許第5,541,083号に見られる。少なくとも15種の哺乳動物シアリルトランスフェラーゼ類が文書化されておち、これらのうち13種のcDNAが、現在までにクローン化されている(本明細書に用いられている系統的命名法に関しては、Tsujiら(1996)Glycobiology6:v−xivを参照)。これらのcDNAを、シアリルトランスフェラーゼ類の組換え製造に使用することができ、次いで本発明の方法に使用できる。
【0145】
ある特定の決定基が、α2,6結合シアリン酸を必要とし、シアリルトランスフェラーゼが用いられる場合を除いて、シアリル化は、トランス−シアリダーゼまたはシアリルトランスフェラーゼのいずれかを用いて達成できる。本発明は、適切な供与体部分の存在下、シアリルトランスフェラーゼまたはトランス−シアリダーゼに対する受容体を、適切な酵素と接触させることにより、上記受容体をシアリル化することを含む。シアリルトランスフェラーゼに対しては、CMP−シアリン酸が好ましい供与体部分である。しかしながら、トランス−シアリダーゼ類は、トランス−シアリダーゼがシアリン酸を付加できない遊離性基を含む供与体部分を使用することが好ましい。
【0146】
対象の受容体部分は、例えば、Galβ−ORを含む。幾つかの実施形態において、シアリン酸が受容体部分の非還元性末端に転移されて、化合物NeuACα2,3Galβ−ORまたはNeuACα2,6Galβ−ORを形成する条件下、CMP−シアリン酸の存在下で受容体部分をシアリルトランスフェラーゼと接触させる。この式において、Rは、アミノ酸、糖、オリゴ糖または少なくとも1個の炭素原子を有するアグリコン基である。代表的な一実施形態において、Galβ−ORは、Galβ1,4GlcNAc−Rであり、ここで、Rは、基質に結合しているか、または基質の一部である。
【0147】
代表的な一実施形態において、上記方法は、シアリル化とフコシル化の双方がされている化合物を提供する。大抵のシアリルトランスフェラーゼ類は、フコシル化された受容体に対して活性ではないため、シアリルトランスフェラーゼ反応とフコシルトランスフェラーゼ反応は、一般に連続的に行われる。しかしながら、FucT−VIIは、シアリル化された受容体にのみ作用する。したがって、FucT−VIIは、シアリルトランスフェラーゼによる同時反応において使用できる。
【0148】
シアリル化を達成するために、トランス−シアリダーゼが用いられる場合、フコシル化反応とシアリル化反応は、同時に、またはいずれの順序においても連続的に行うことができる。修飾される基質を、好適な量のトランス−シアリダーゼ、好適なシアリン酸供与体基質、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3、またはα1,4結合を作製することができる)および好適なフコシル供与体基質(例えば、GDP−フコース)を含有する反応混合物と共に温置する。
【0149】
本発明の使用に好適なシアリルトランスフェラーゼ類の例としては、ST3Gal III(例えば、ラットまたはヒトのST3Gal III)、ST3Gal IV、ST3Gal I、ST6Gal I、ST3Gal V、ST6Gal II、ST6GalNAc I、ST6GalNAc II、およびST6GalNAc III(本明細書に用いられているシアリルトランスフェラーゼの命名法は、Tsujiら、Glycobiology 6:v−xiv(1996)に記載されているとおりである)。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.6)と称される代表的なα(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、シアリン酸をGalβ1→3Glc二糖またはグリコシドの非還元性末端Galへ転移させる。Van den Eijndenら、J.Biol.Chem.256:p.3159(1981)、Weinsteinら、J.Biol.Chem.257:p.13845(1982)およびWenら、J.Biol.Chem.267:p.21011(1992)を参照されたい。他の代表的なα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.4)は、シアリン酸を二糖またはグリコシドの非還元性末端Galへ転移させる。Rearickら、J.Biol.Chem.254:p.4444(1979)およびGillespieら、J.Biol.Chem.267:p.21004(1992)を参照されたい。さらなる代表的酵素としては、Gal−βー1,4−GlcNAcα−2,6シアリルトランスフェラーゼが挙げられる(Kurosawaら、Eur.J.Biochem.219:p.375−381を参照)。また、本発明の方法に有用な基質に、第2の、または複数のシアリン酸残基を付加するために、α2,8−シアリルトランスフェラーゼも使用できる。さらなる例は、アガラクシア連鎖球菌(cpsK遺伝子として知られているST)、デュクレー菌(lst遺伝子として知られている)、インフルエンザ菌(HIO871遺伝子として知られている)のα2,3−シアリルトランスフェラーゼ類である。Chaffinら、Mol.Microbiol.、45:p.109−122(2002)を参照されたい。
【0150】
特許請求された方法において有用なシアリルトランスフェラーゼの例は、カンピロバクターのCST−Iである(例えば、米国特許第6,503744号、米国特許第6,096,529号、および米国特許第6,210933号ならびに国際公開第99/49051号、および公開の米国特許出願第2002/2,042,369号を参照)。この酵素は、Galβ1,4GlcまたはGalβ1,3GalNAcへのシアリン酸の転移を触媒する。
【0151】
本発明に用いられる他の代表的シアリルトランスフェラーゼ類としては、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼなど、空腸カンピロバクターから単離されたものが挙げられる。例えば、国際公開第99/49051号を参照されたい。他の実施形態において、本発明は、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の双方を有する二官能性シアリルトランスフェラーゼポリペプチド類を提供する。二官能性シアリルトランスフェラーゼを好適な糖受容体(例えば、末端ガラクトースを有する糖)およびシアリン酸供与体(例えば、CMP−シアリン酸)を有する反応混合物中に入れると、供与体からα2,3結合における受容体へと第1のシアリン酸の転移を触媒できる。次に、上記シアリルトランスフェラーゼは、シアリン酸供与体からα2,8−結合における第1のシアリン酸残基へと、第2のシアリン酸の転移を触媒する。このタイプのSiaα2,8−Siaα2,3−Gal構造は、スフィンゴ糖脂質類にしばしば見られる。例えば、欧州特許出願第11472200号を参照されたい。
【0152】
また、最近報告されたウィルスのα2,3−シアリルトランスフェラーゼも、本発明のシアリル化法に好適に使用される(Sujinoら、(2000)Glycobiology10:p.313−320)。この酵素、v−ST3Gal Iは、粘液腫ウィルス感染細胞から得られており、各々のアミノ酸配列の比較により示されるように、哺乳動物のST3Gal IVに明らかに関連している。v−ST3Gal Iは、タイプI(Galβ1,3−GlcNAcβ1−R)、タイプII(Galβ1,4−GlcNAc−β1−R)およびタイプIII(Galβ1,3GlcNAcβ1−R)の受容体のシアリル化を触媒する。また、上記酵素は、シアリン酸を、フコシル化された受容体部分へ転移することもできる(例えば、ルイスxおよびルイスa)。
【0153】
(ガラクトシルトランスフェラーゼ類)
実施形態の他の群において、グリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼである。代表的なガラクトシルトランスフェラーゼ類としては、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ類(E.C.番号2.4.1.151、例えば、Dabkowskiら、Transplant Proc.25:p.2921(1993)およびYamamotoら、Nature345:p.229−233(1990)を参照)、ウシ(GenBank j04989、Joziasseら、J.Biol.Chem.264:p.14290−14397(1989))、マウス(GenBank m26925;Larsenら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA86:p.8227−8231(1989))、ブタ(GenBank L36152;Strahanら、Immunogenetics 41:p.101−105(1995)))が挙げられる。他の好適なα1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、B型血液抗原の合成に関与するものである(EC2.4.1.37、Yamamotoら、J.Biol.Chem.265:p.1146−1151)(ヒト)。また、本発明は、α1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを用いても実施できる。
【0154】
例えば、EC2.4.1.90(LacNAcシンテターゼ)およびEC2.4.1.22(ラクトースシンテターゼ)(ウシ(D’Agostaroら、Eur.J.Biochem.183:p.211−217(1989))、ヒト(Masriら、Biochem.Biophys.Res.Commun.157:p.657−663(1988))、マウス(Nakazawaら、J.Biochem.104:p.165−168(1988))などのβ(1,4)ガラクトシルトランスフェラーゼ類、ならびにE.C.2.4.1.38およびセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.45、Stahlら、J.Neurosci.Res.38:p.234−242(1994))もまた、本発明の方法における使用に好適である。他の好適なガラクトシルトランスフェラーゼ類としては、例えば、α1,2ガラクトシルトランスフェラーゼ類が挙げられる(例えば、分裂酵母pombe、Chapellら、Mol.Biol.Cell5:p.519−528(1994))。他の1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ類は、グロボシド類を製造するために使用されるものである(例えば、Schaeperら、Carbohydrate Research 1992年、236巻、p.227−244)を参照。哺乳動物と細菌の双方の酵素が用いられる。
【0155】
本発明に用いられる他の代表的なガラクトシルトランスフェラーゼ類としては、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ類が挙げられる。好適な反応媒体に入れると、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ類は、供与体(例えば、UDP−Gal)から好適な糖受容体(例えば、末端GalNAc残基を有する糖)へのガラクトース残基の転移を触媒する。本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの一例は、C.jejuniなどのカンピロバクターにより産生されるものである。本発明の好ましい当該β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、C.jejuni株OH4384のものである。
【0156】
本発明の方法により、ガラクトシルトランスフェラーゼ類を用いて形成された化合物における代表的な結合としては:(1)Galβ1→4Glc;(2)Galβ1→4GlcNAc;(3)Galβ1→3GlcNAc;(4)Galβ1→6GlcNAc;(5)Galβ1→3GalNAc;(6)Galβ1→6GalNAc;(7)Galα1→3GalNAc;(8)Galα1→3Gal;(9)Galα1→4Gal;(10)Galβ1→3Gal;(11)Galβ1→4Gal;(12)Galβ1→6Gal;(13)Galβ1→4キシロース;(14)Galβ1→1’−スフィンゴシン;(15)Galβ1→1’−セラミド;(16)Galβ1→3ジグリセリド;(17)Galβ1→O−ヒドロキシリジン;および(18)Gal−S−システインが挙げられる。例えば、米国特許第6,268,193号;および米国特許第5,691,180号を参照されたい。
【0157】
(トランス−シアリダーゼ)
上記で検討したように、本発明の方法は、トランス−シアリダーゼを用いて、シアリン酸部分が基質に付加される少なくとも1つのステップを含む。本明細書に用いられる用語の「トランス−シアリダーゼ」とは、α−2,3グリコシド結合を介してシアリン酸のガラクトースへの付加を触媒する酵素を言う。トランス−シアリダーゼ類は、多くのトリパノソーマ種および幾つかの他の寄生虫に見られる。これらの寄生虫生体のトランス−シアリダーゼ類は、通常のシアリダーゼの加水分解活性を保持するが、効率ははるかに低く、CMP−シアリン酸の不在下、宿主のシアログリコ共役体から寄生虫の表面糖蛋白質への末端シアリン酸の可逆的転移を触媒する。シャガス病の原因となるトリパノソーマcruziは、多くのシアリダーゼ類の典型的な加水分解反応の代わりに、末端βーガラクトシル残基を含有する受容体へのα2,3−結合シアリン酸の転移を優先的に触媒する表面トランス−シアリダーゼを有する(Ribeiraeoら、Glycobiol.7:p.1237−1256(1997);Takahashiら、Anal.Biochem.230:p.333−342(1995);Scudderら、J,Biol.Chem.268:p.9886−9891(1993);およびVandekerckhoveら、Glycobiol.2:p.541−548(1992))。T.cruziトランス−シアリダーゼ(TcTs)は、末端が、βー結合ガラクトース残基である広範囲の糖受容体、糖脂質受容体および糖蛋白質受容体に対して活性を有し、もっぱらα2,3シアロシド結合を合成する(Scudderら、上記)。また、それは低率で、p−ニトロフェニル−α−N−アセチルノイラミン酸などの合成α−シアロシド類からシアリン酸を転移させるが、NeuAc2−3Galβ1−4(Fucα1−3)Glcは、供与体基質ではない。N−アセチル−D−ノイラミン酸(4MU−NANA)の修飾2−[4−メチルウンベリフェロン]−α−ケトシドおよびそれの幾つかの誘導体もまた、TcTsに対する供与体として働く(Lee & Lee、Anal.Biochem.216:p.358−364(1994))。3’−シアリル−ラクト−N−ビオースIの酵素的合成は、受容体としてのラクト−N−ビオースIおよびN−アセチルノイラミン部分の供与体としての2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセリノイラミンから、TcTSにより触媒される(Vetereら、Eur.J.Biochem.267:p.942−949(2000))。α2,3−シアリル化共役体を合成するためのトランス−シアリダーゼの使用に関するさらなる情報は、欧州特許出願第0 557 580 A2号および米国特許第5,409,817号に見ることができ、その各々は、参照として本明細書に組み込まれている。ヒルMacrobdella decoraの分子内トランス−シアリダーゼは、シアログリコ共役体における末端Neu5Ac(N−アセチルノイラミン酸)α2→3Gal結合の開裂に対して、厳密な特異性を示し、分子内トランス−シアロシル反応を触媒する(Luoら、J.Mol.Biol.285:323−332(1999)。トランス−シアリダーゼ類は、シアリン酸を、主にガラクトース受容体に付加させるが、それらは、シアリン酸を、幾つかの他の糖へ転移させる。しかしながら、GalNAcへのシアリン酸転移には、シアリルトランスフェラーゼが必要である。トランス−シアリダーゼの使用についてのさらなる情報は、PCT出願番号第93/18787号;およびVetereら、Eur.J.Biochem.247:p.1083−1090(1997)に見ることができる。
【0158】
(GalNAcトランスフェラーゼ類)
また、本発明は、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチド類を利用し得る。β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ類を反応混合物中に入れると、供与体(例えば、UDP−GalNAc)から好適な受容体糖(典型的には、末端ガラクトース残基を有する糖)へのGalNAc残基の転移を触媒する。生じた構造、GalNAcβ1,4−Galは、多くの糖化合物に見られるが、その中でもスフィンゴ糖脂質類および他のスフィンゴイド類にしばしば見られる。
【0159】
本発明において有用なβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼの一例は、C.jejuniなどのカンピロバクター種により産生されるものである。当該の好ましいβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、C.jejuni株OH4384のものである。
【0160】
本発明に用いられる代表的なGalNAcトランスフェラーゼは、以下の結合を形成する:(1)(GalNAcα1→3)[(Fudα1→2)]Galβ−;(2)GalNAcα1→Ser/The;(3)GalNAcβ1→4Gal;(4)GalNAcα1→3Gal;(5)GalNAcα1→3GalNAc;(6)(GalNAcβ1→4GlcUAβ1→3)n;(7)(GalNAcβ1→4IdUAα1→3−)n;(8)−Manβ→GalNAcαGlcNACαAsn。例えば、米国特許第6,268,193号および米国特許第5,691、180号を参照されたい。
【0161】
(GlcNAcトランスフェラーゼ類)
本発明は、任意にGlcNAcトランスフェラーゼ類を利用する。本発明の実施に有用な代表的N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ類は、以下の結合を形成できる:(1)GlcNAcβ1→4GlcNAc;(2)GlcNAcβ1→Asn;(3)GlcNAcβ1→2Man;(4)GlcNAcβ1→4Man;(5)GlcNAcβ1→3Gal;(6)GlcNAcβ1→3Man;(7)GlcNAcα1→3Man;(8)GlcNAcβ1→3Gal;(9)GlcNAcβ1→4Gal;(10)GlcNAcβ1→6Gal;(11)GlcNAcα1→4Gal;(12)GlcNAcα1→4GlcNAc;(13)GlcNAcβ1→6GalNAc;(14)GlcNAcβ1→3GalNAc;(15)GlcNAcβ→4GlcUA;(16)GlcNAcα1→4GlcUA;(17)GlcNAcα1→4IdUA。例えば、米国特許第6,268,193号および米国特許第5,691、180号を参照されたい。
【0162】
(他のグリコシルトランスフェラーゼ類)
フコシリルトランスフェラーゼ類およびシアリルトランスフェラーゼ類に関して詳細に記載したものと同様のトランスフェラーゼサイクルに、他のグリコシルトランスフェラーゼ類を代用することができる。特に、グリコシルトランスフェラーゼは、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ類、例えば、Alg8(Stagljovら、Proc.Natl.Acad.USA 91:p.5977(1994))またはAlg5(Heesenら、Eur.J.Biochem.224:p.71(1994))、例えば、α(1,3)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ類(Nagataら、J.Biol.Chem.267:p.12082−12089(1992)およびSmithら、J.Biol.Chem.269:p.15162(1994))およびポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら、J.Biol Chem.268:p.12609(1993))などのN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ類でもあり得る。好適なN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ類としては、GnTI(2.4.1.101、Hullら、BBRC 176:p.608(1991))、GnTII、およびGnTIII(Iharaら、J.Biochem.113:p.692(1993))、GnTV(Shoreibanら、J.Biol Chem.268:p.15381(1993))、O−結合N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Bierhuizenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:p.9326(1992))、N−アセチルグルコサミン−1−ホスフェートトランスフェラーゼ(Rajputら、Biochem.J.285:p.985(1992)、およびヒアルロナンシンターゼが挙げられる。好適なマンノシルトランスフェラーゼ類としては、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Manシンターゼ、OCh1、およびPmt1が挙げられる。
【0163】
(複数酵素によるオリゴ糖合成)
上記で検討したように、幾つかの実施形態において、所望のオリゴ糖部分を形成するために、2種以上の酵素が用いられる。例えば、ある特定のオリゴ糖部分は、所望の活性を示すために、ガラクトース、シアリン酸、およびフコースの付加を必要とし得る。したがって、本発明は、所望のオリゴ糖決定基の高収量合成を達成するために2種以上の酵素、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ類、トランス−シアリダーゼ類、またはスルホトランスフェラーゼ類が用いられる方法を提供する。
【0164】
幾つかの場合、基質結合オリゴ糖は、基質のインビボ生合成の際に、対象の特定グリコシルトランスフェラーゼに対する受容体部分を含む。このような基質は、基質のグリコシル化パターンの事前の修飾をせずに、本発明の方法を用いてグリコシル化できる。しかしながら、他の場合、対象の基質は、好適な受容体部分を欠いている。そのような場合は、基質のグリコシル化パターンを変化させ、その結果、基質結合オリゴ糖が、対象の予め選択された糖単位のグリコシルトランスフェラーゼ触媒付加のための受容体部分を含み、所望のオリゴ糖決定基を形成するように本発明の方法を用いることができる。
【0165】
代表的な一実施形態においては、前述の節で検討した複数酵素の方法論により、GalNAc、グルコース、ガラクトース、フコースおよびシアリン酸を含む糖の形成に至る。
【0166】
これらの方法において、シアリルトランスフェラーゼまたはトランス−シアリダーゼ(α2,3結合シアリン酸に対してのみ)のいずれかを用いることができる。トランス−シアリダーゼ反応は、修飾すべき蛋白質を、好適な量のガラクトシルトランスフェラーゼ(galβ1,3またはgalβ1,4)、好適なガラクトシル供与体(例えば、UDP−ガラクトース)、トランス−シアリダーゼ、好適なシアリン酸供与体基質、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3結合またはα1,4結合を作製できる)、好適なフコシル供与体基質(例えば、GDP−フコース)および二価の金属イオンを含有する反応混合物と共に温置することを含む。これらの反応は、連続的に、または同時に実施できる。
【0167】
シアリルトランスフェラーゼが用いられる場合、代表的一実施形態において、上記方法は、修飾すべき蛋白質を、好適な量のガラクトシルトランスフェラーゼ(galβ1,3またはgalβ1,4)、好適なガラクトシル供与体(例えば、UDP−ガラクトース)、シアリルトランスフェラーゼ(α2,3またはα2,6)および好適なシアリン酸供与体基質(例えば、CMPシアリン酸)を含有する反応混合物と共に温置することを含む。上記反応を、実質的に完了するまで進行させてから、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3結合またはα1,4結合を作製できる)および好適なフコシル供与体基質(例えば、GDP−フコース)を加える。シアリル化基質を必要とするフコシルトランスフェラーゼ(例えば、FucT VIII)が用いられる場合、上記反応は同時に実施できる。
【0168】
(グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物)
グリコシルトランスフェラーゼ類、基質および他の上記反応混合成分を水性反応媒体(溶液)中に混合することにより合わせる。上記媒体は、一般に約5から約9のpH値を有する。媒体の選択は、所望のレベルのpH値を維持するその媒体の能力に基づく。したがって、幾つかの実施形態において、媒体は、約7.5のpH値へ緩衝化される。緩衝剤が用いられる場合、媒体のpHは、用いられる具体的なグリコシルトランスフェラーゼに依存して、約5〜8.5に維持する必要がある。フコシルトランスフェラーゼに関しては、pHの範囲を、約7.2から7.8に維持することが好ましい。シアリルトランスフェラーゼに関しては、上記範囲は、約5.5から6.5が好ましい。好適な塩基は、NaOH、好ましくは、6MNaOHである。
【0169】
酵素量または濃度は、開始触媒率の目安である活性単位で表される。1活性単位は、所与の温度(具体的には37℃)およびpH値(典型的には7.5)における1分当たり1μmolの産物形成を触媒する。したがって、ある酵素の10単位は、37℃の温度、7.5のpH値において1分当たり10μmolの基質が、10μmolの産物に変換される、その酵素の触媒量である。
【0170】
また、上記反応媒体は、必要ならば、界面活性剤(例えば、トリトンまたはSDS)および有機溶媒、例えば、メタノールまたはエタノールを可溶化することを含み得る。上記酵素類は、溶液中遊離で利用できるか、またはポリマーなどの支持体に結合できる。したがって、反応中に幾らかの沈殿は形成し得るが、上記反応混合物は、最初は実質的に均一である。
【0171】
上記の過程が実施される温度は、かろうじて凍結より上の温度から、多くの感受性酵素が変性する温度までの範囲であり得る。その温度範囲は、好ましくは、約0℃から約45℃であり、より好ましくは、約20℃から約37℃である。
【0172】
このように形成された反応混合物は、グリコシル化される基質に付加したオリゴ糖基上に存在する所望の高収量の所望のオリゴ糖決定基を得る上で、十分な時間が維持される。大規模調製では、反応は、約8〜240時間、より典型的には約12時間と72時間との間で進行させる。
【0173】
実質的に均一な基質を有する基質組成物を得るために、1種以上のグリコシルトランスフェラーゼが用いられる実施形態においては、第1のグリコシルトランスフェラーゼ反応がほぼ完了したら、第2のグリコシルトランスフェラーゼ反応のための酵素類および試薬類を反応媒体に加えることができる。酵素の幾つかの組合せでは。グリコシルトランスフェラーゼ類および対応する基質は、最初の単一反応混合物中に合わせることができ。このような同時反応における酵素類は、他の酵素に対する受容体として働き得ない産物は形成しないことが好ましい。例えば、多くのシアリルトランスフェラーゼ類は、フコシル化受容体をシアリル化しないため、シアリル化受容体にのみ作用するフコシルトランスフェラーゼ(例えば、FcT VII)が用いられない限り、双方の酵素による同時反応は、所望の高収量の所望のオリゴ糖決定基を生じない可能性が大きい。2つのグリコシルトランスフェラーゼ反応を、単一の容器内で連続して行うことにより、中間体種が単離される操作で総収量が改善される。さらに、余分な溶媒および副産物のクリーンアップと処理が減少する。
【0174】
1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ反応は、グリコシルトランスフェラーゼサイクルの一部として実施できる。グリコシルトランスフェラーゼサイクルの好ましい条件および説明は記載されている。多数のグリコシルトランスフェラーゼサイクル(例えば、シアリルトランスフェラーゼサイクル、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルおよびフコシルトランスフェラーゼサイクル)が、米国特許第5,374,541号および国際公開第9425615号に記載されている。他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルは、Ichikawaら、J.Am.Chem.Soc.114:p.9283(1992)、Wongら、J.Org.Chem.57:p.4343(1992)、DeLucaら、J.Am.Chem.Soc.117:p.5869−5870(1995)、Ichikawaら、Carbohydrates and Carbohydrate Polymers、Yaltami編集(ATL Press、1993)に記載されている。
【0175】
上記のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに関しては、上記工程に用いられる種々の反応体の濃度または量は、温度やpH値などの反応条件ならびに、グリコシル化される受容体糖の選択および量などの多数の因子に依存する。グリコシル化工程は、触媒量の酵素の存在下、活性化するヌクレオチド、活性化された供与体糖および生成したPPiのスカベンジングの再生を可能にするため、この工程は、先に検討した化学量論的基質の濃度または量により制限される。本発明の方法に従って使用できる反応体の濃度に関する上限は、反応体の溶解度によって決まる。
【0176】
受容体が消費されるまで、グリコシル化が進行するように、活性化するヌクレオチド類、ホスフェート供与体、供与体糖および酵素が選択されることが好ましい。下記で検討される考察は、シアリルトランスフェラーゼの文脈においてであるが、一般に他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに適用可能である。
【0177】
各々の酵素は、触媒量で存在する。具体的な酵素の触媒量は、その酵素の基質濃度ならびに温度、時間およびpH値などの反応条件によって変わる。予め選択された基質濃度と反応条件下で、所与の酵素に関して触媒量を決定する手段は、当業者に周知である。
【0178】
他の代表的実施形態において、反応混合物は、少なくとも1種のグリコシルトランスフェラーゼ、供与体基質、受容体糖および二価の金属イオンを含有する。反応媒体における二価の金属イオンの濃度は、約2mMと約75mMとの間、好ましくは、約5mMと約50mMとの間、より好ましくは、約5mMと約30mMとの間に維持される。
【0179】
反応媒体における金属イオン濃度を定期的にモニタリングし、追加量の二価金属イオンを媒体に補足することにより、反応サイクルを好適な時間枠内で完了させることができる。また、1種以上のグリコシルトランスフェラーゼが用いられる場合、中間体産物を単離することなく連続的サイクルを同一の反応容器内で実施することができる。さらに、阻害的なピロホスフェートを除去することにより、反応サイクルは、実質的により高い基質(受容体)濃度で実施できる。本発明の使用に好ましい二価金属イオンとしては、Mn++、Mg++、Co++、Ca++、Zn++、およびそれらの組合せが挙げられる。二価金属イオンは、Mn++であることがより好ましい。
【0180】
他の実施形態において、糖部分は、活性糖を用いて調製される。本発明に有用な活性糖は、典型的には活性遊離基を含むように合成的に変化させたグリコシド類である。本明細書に用いられる用語の「活性遊離基」とは、酵素調節求核性置換反応において、容易に置換される部分を言う。多くの活性糖が当該分野に知られている。例えば、Vocadloら、CARBOHYDRATE CHEMISTRY AND BIOLOGY、2巻、Ernstら編集、Wiley−VCH Verlag:独国Weinheim所在、2000年;Kodamaら、Tetrahedron Lett.34:p.6419(1993);Lougheedら、J.Biol.Chem.274:p.37717(1999)を参照されたい。
【0181】
活性基の例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、トシレートエステル、メシレートエステル、トリフレートエステルなどが挙げられる。本発明に用いられる好ましい活性遊離基は、受容体へのグリコシドの酵素的転移を、立体的に有意に妨げないものである。したがって、活性グリコシド誘導体の好ましい実施形態としては、グリコシルフルオリド類およびグリコシルメシレート類が挙げられ、グリコシルフルオリド類が特に好ましい。グリコシルフルオリド類の中でも、α−ガラクトシルフルオリド、α−マンノシルフルオリド、α−グルコシルフルオリド、α−フコシルフルオリド、α−キシロシルフルオリド、α−シアリルフルオリド、α−N−アセチルグルコサミニルフルオリド、α−N−アセチルガラクトサミニルフルオリド、β−ガラクトシルフルオリド、β−マンノシルフルオリド、β−グルコシルフルオリド、β−フコシルフルオリド、β−キシロシルフルオリド、β−シアリルフルオリド、β−N−アセチルグルコサミニルフルオリドおよびβ−N−アセチルガラクトサミニルフルオリドが最も好ましい。
【0182】
例えば、グリコシルフルオリド類は、遊離糖から、先ず糖をアセチル化し、次にこれを、HF/ピリジンで処理することにより調製できる。これにより保護(アセチル化)グリコシルフルオリド(すなわち、α−グリコシルフルオリド)の熱力学的に最も安定なアノマーが生成する。より安定性の低いアノマー(すなわち、β−グリコシルフルオリド)が望まれる場合は、過アセチル化糖を、HBr/HOAcまたはHCIによって変換して、アノマーのブロミドまたはクロリドを生成させることによって調製できる。この中間体は、銀フルオリドなどのフルオリド塩と反応してグリコシルフルオリドを生成する。アセチル化グリコシルフルオリドは、メタノール中、緩和な(触媒的)塩基(例えば、NaOMe/MeOH)との反応により脱保護できる。なお、多くのグリコシルフルオリド類は、商品として入手できる。
【0183】
他の活性グリコシル誘導体は、当業者に公知の従来の方法を用いて調製できる。例えば、グリコシルメシレート類は、糖の完全ベンジル化ヘミアセタール体を、メシルクロリドで処理し、続いて触媒的水素化を行って、ベンジル基を除去することによって調製できる。
【0184】
好ましい実施形態において、上記方法は、グリコシル化、例えば、糖の適切なグリコシル受容体部分の約80%超のシアリル化をもたらす。一般に、約80%超のグリコシル化を得るために要する時間は、約48時間未満か。またはそれに等しい。
【0185】
(スキーム1)
【0186】
【化21】
スキーム1において、化学的または酵素的に調製されたセラミド骨格を、シアリルトランスフェラーゼおよびシアリン酸誘導体と接触させる。生じたシアリル化付加体を、GM2シンテターゼおよびGalNAc供与体を接触させる。生じた産物をGM1シンテターゼと接触させて、所望のグリコシルスフィンゴシンを得る。
【0187】
(スキーム2)
【0188】
【化22】
スキーム2において、セラミドはオゾン化されて、スフィンゴシンのアルキル鎖を不飽和の箇所で開裂し、アルデヒドの形成が生じる。このアルデヒドは、アルデヒドを所望のアルケンに変換するWittig反応の基質である。
【0189】
(スキーム3)
【0190】
【化23】
スキーム3は、Wittig条件下で、本発明の化合物を形成する他の例を提供している。スフィンゴ糖脂質のアルケン位の立体配置は、シス異性体をAIBNで処理し、混合物を照射することにより、シス異性体とトランス異性体との間で変換できる。
【0191】
(スキーム4)
【0192】
【化24】
スキーム4は、スフィンゴ糖脂質の調製法を示している。グリコシル化セラミドアルデヒドは、Mo=CH2の作用により、対応するメチレン誘導体へと変換される。生じるメチレン付加体を、Grubb触媒およびアルケンに接触させる。生じるオレフィンメタセシス反応により、所望のスフィンゴ糖脂質が生成する。
【0193】
(スキーム5)
【0194】
【化25】
スキーム5は、本発明のスフィンゴ糖脂質への他の代表的経路を提供している。グリコシル化チオフェニルセラミドは、Bu3SnHおよびAIBNによる反応でスタナン誘導体へと変換される。アルキル基、R7をグリコシル化セラミド骨格へ結合させるためにパラジウム結合化学が用いられる。
【0195】
(スキーム6)
【0196】
【化26】
スキーム6において、アルデヒドは、フェニルホウ酸の作用により、対応するベンジルアルケン誘導体へと変換される。塩基の第二位のヒドロキシル部分は、ジオクチルアミノ部分へと変換される。
【0197】
(スキーム7)
【0198】
【化27】
スキーム7により、アルデヒドは、対応するビニルハライドへと変換される。このハライドは、適切な第一スズ化合物またはホウ酸により置換されて所望の化合物を提供する。
【0199】
受容体がセラミドの場合、酵素的ステップは、セラミドの脂肪酸部分の加水分解によって任意に進行する。スフィンゴ糖脂質の脂肪酸部分を除去する方法は、当業者に公知である。例えば、Paulsonら(1985)Carbohydrate Res.137:p.39−62;Beith−Halahmiら(1967)Carbohydrate Res.5:p.25−30;AlaisおよびVeyrieries(1990)Carbohydrate Res.207:p.11−31;GrudlerおよびSchmidt(1985)Carbohydrate Res.135:p.203−218;Ponpipomら、(1978)Tetrahedron Lett.p.1717−1720;Muraseら(1989)Carbohydrate Res.188:p.71−80;Kameyamaら(1989)Carbohydrate Res.193:c1−c5;Hasegawaら(1991)J.Carohydrate Chem.10:439−459;SchwarzmannおよびSandhoff(987)Meth.Enzymol.138:p.319−341;GuadinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:p.1149−1150(参照として、本明細書に組み込まれている補足物質を含む)などの標準的な炭水化物およびスフィンゴ糖脂質の化学方法論を用いることができる。例えば、脂肪酸部分は、塩基の加水分解によって除去できる。グリコシル化反応が完了したら、このグリコシル化反応の産物に、同一の、または異なった脂肪酸を付加することができる。脂肪酸を結合させる方法は、当該分野で一般に知られており、例は、本明細書の上記に検討されている。
【0200】
(精製)
上記の方法により、製造した産物は、精製せずに用いることができる。しかし、幾つかの適用においては、上記化合物を精製することが望ましい。基質を精製するための照準的な周知の方法が一般に好適である。例えば、薄層または厚層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、または膜ろ過を使用できる。また、好ましくは、逆浸透膜を利用する膜ろ過または1つ以上のカラムクロマトグラフィ法が利用できる。 例えば、グリコシルトランスフェラーゼなどの蛋白質を除去するために、膜が、約3000から約10,000の分子量限界を有する膜ろ過を使用できる。次いで、塩および/または生成した糖を除去するために、ナノろ過または逆浸透を使用できる(例えば、国際公開第98/15581号を参照)。ナノフィルタ膜は、一価の塩は通すが、多価の塩および使用される膜に依って、約100ダルトンから約2,000ダルトン超の大きさの非荷電溶質を保持する逆浸透膜の1クラスである。したがって、典型的な適用において、本発明の方法により調製された糖は、上記膜に保持され、混入塩類は通過する。
【0201】
他の代表的精製法では、有機溶媒と関連させて膜を利用する。糖脂質とスフィンゴ糖脂質類の双方が、この方法によって精製できる。さらに、本明細書に記載されている中間体酵素反応産物のいずれもが、この方法によって精製できる。上記方法は、膜精製システムにおける反応産物を、有機溶媒の添加によって濃縮することを含む。好適な溶媒としては、限定はしないが、アルコール類(例えば、メタノール)、ハロカーボン類(例えば、クロロホルム)および炭化水素とアルコール類との混合物(例えば、キシレン/メタノール)が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶媒はメタノールである。濃縮ステップでは、反応産物を任意の選択された程度まで濃縮できる。一般に、濃縮の程度は、約1倍から約100倍であり、約5倍から約50倍を含み、また、約10倍から約20倍を含む。上記膜精製システムは、当業者に公知の種々のこのようなシステムから選択される。例えば、1つの有用な膜精製システムは、10K中空繊維である。代表的な一実施形態において、上記方法は、10K中空繊維膜精製システムを用いて、反応混合物を約10倍濃縮し、水を加えて上記溶液を、元の容量の約10分の1にダイアフィルトレーションし、上記濃縮水にメタノールを加え、ダイアフィルトレーションして透過水中に反応産物を通過させる工程を包含する。透過水溶液を濃縮して反応産物を得る。
【0202】
(検出可能標識)
代表的一実施形態において、本発明の化合物は、蛍光体または放射性同位体などの検出可能標識を含む。例えば、標識化されたグリコシル部分が、本明細書で検討した適切なグリコシルトランスフェラーゼに対する基質として働くことを依然として可能にさせる様式で、検出可能標識を、リンカーアームによってグリコシル部分(例えば、シアリン酸)に付加することができる。
【0203】
標識が利用される本発明の実施形態は、蛍光標識の使用によって例示される。蛍光標識は、それらの取り扱いに要する注意が少ないという利点を有し、高スループット視覚化法(コンピュータを含む統合システムにおける解析用画像デジタル化を含む光学分析)に受入れことができる。好ましい標識は、高感度、高安定性、低バックグランド、長い寿命、低い環境鋭敏性および標識における高特異性を典型的に特徴とする。
【0204】
多数の蛍光標識を、本発明の組成物に組み込むことができる。多数のこのような標識は、例えば、SIGMA化学会社(ミズーリ州セントルイス所在)、Molecular Probes(オレゴン州ユージーン所在)、R&D systems(ミネソタ州ミネアポリス所在)、Pharmacia LKB Biotechnology(ニュージャージ州ピスカタウェイ所在)、CLONTECH Laboratories社(カリフォルニア州パロアルト所在)、Chem Genes社、Aldrich化学会社(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)、Glen Research社、GIBCO BRI Life Technologies社(メリーランド州ガイセルスバーグ)、Fluka Chemica−Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG、スイス国Buchs所在)、およびApplied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)ならびに当業者に公知の他の多数の商品供給源から商品として入手できる。さらに、当業者は、特定の適用に対して、適切な蛍光体の選択の仕方を認識するであろうし、また、それが商品として容易に入手できない場合は、新規に必要な蛍光体を合成できるか、または商品として入手できる蛍光化合物を合成的に修飾して、所望の蛍光標識にすることができる。
【0205】
(薬学的製剤)
さらに他の実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアと混合した本発明による方法によって製造された化合物を含む薬学的製剤を提供する。
【0206】
次に、上記の所望のオリゴ糖決定基を有する基質が、種々の適用、例えば、抗原、診断用試薬として、また治療薬として使用できる。このように、本発明はまた、種々の病態に使用できる薬学的組成物を提供する。上記薬学的組成物は、上記の方法に従って作製された基質から構成される。
【0207】
本発明の薬学的組成物は、種々の薬物送達システムにおける使用に好適である。本発明における使用に好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mace出版社、ペンシルバニア州フィラデルフィア所在、第17版(1985)に見られる。薬物送達法の簡単なレビューには、Langer、Science249:p.1527−1533(1990)を参照されたい。
【0208】
上記薬学的組成物は、予防的/または治療的処置のために、非経口投与、鼻腔内投与、局所投与、経口投与、またはエアロゾルまたは経皮による局部投与が意図されている。一般に上記薬学的組成物は、非経口的に、例えば静脈内に投与される。非経口投与用製剤としては滅菌水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル類がある。水性キャリアとしては、生理食塩水および緩衝剤を含む水、アルコール性/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム溶液、乳酸化リンガー液または不揮発性油が挙げられ、静脈内媒体としては、体液補液および栄養補液、電解質補液(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガス類などの防腐剤や他の添加物もまた存在し得る。上記組成物は、生理学的条件に近づけるために、必要に応じて、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、界面活性剤などの薬学的に受容可能な補助物質を含有し得る。
【0209】
また、上記組成物は、免疫原性種、例えば、本発明の方法により調製されたKLHに共役しているアグリコ脂質も含有し得る。さらに、本発明の方法により調製された組成物およびそれらの免疫原性共役体を、アジュバントと組み合わせることができる。
【0210】
これらの組成物は、従来の滅菌法により滅菌できるか、または滅菌ろ過できる。生じる水性溶液は、それ自体で使用するために包装できるか、または凍結乾燥でき、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水性キャリアと組合わされる。上記製剤のpHは、典型的には3と11との間であり、より好ましくは、5から9であり、最も好ましくは、7から8である。
【0211】
上記化合物を含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与できる。治療適用において、組成物は、上記の疾病に既に罹っている患者に、その疾病およびその合併症の症状を治療する、または少なくとも部分的に阻止する上で十分な量において投与される。このことを達成する上で十分な量は、「治療的有効用量」と定義される。この使用に有効な量は、疾病の重症度ならびに患者の体重および全身状態に依存するが、一般に70kgの患者に対して、1日当たり、基質の約0.5mgから約2.000mgの範囲であり、1日当たり、上記化合物の約5mgから約200mgの投与量が一般に使用される。
【0212】
予防的適用において、本発明の基質を含有する組成物は、特定の疾病に感染し易いか、さもなければ、その危険にある患者に投与される。このような量は、「予防的有効用量」であると定義される。この使用において、正確な量はやはり、患者の健康状態と体重に依存するが、一般的には70キログラムの患者に対して約0.5mgから約2.000mgの範囲であり、より一般的には、70キログラムの体重当たり約5mgから約200mgの範囲である。
【0213】
組成物の単回投与または複数回投与が、治療医師により選択される用量レベルと様式で実施できる。いずれの場合においても、上記薬学製剤は、有効に患者を治療する上で十分な本発明の基質量を提供する必要がある。
【0214】
上記基質は、診断用試薬としても使用できる。例えば、所望のオリゴ糖決定基と対応するリガンドとの間の相互作用により、体内で基質が濃縮される位置を決定するために、標識化基質が使用できる。この使用のために、上記化合物を適切な放射性同位体、例えば、125I、14Cまたはトリチウムにより、または当業者に公知の他の標識により標識化できる。
【0215】
本発明のスフィンゴ糖脂質類の投与に関する用量範囲は、免疫応答の症状がある程度の抑制を示す、所望の効果を生じる上で十分に大きいものである。上記用量は、有害な副作用を生じるほど大きな用量であってはならない。一般に、上記用量は、動物における年齢、病態、性別および疾病の程度によって変わり、当業者によって決定することができる。上記用量が、何らかの表示外の場合、個々の医師により調製できる。
【0216】
作用持続時間を制御するために、追加の薬学的方法を使用し得る。制御放出製剤は、スフィンゴ糖脂質を共役、複合化または吸着するポリマーの使用により得ることができる。送達制御は、適切な高分子類(例えば、ポリエステル類、ポリアミノカルボキシメチルセルロースおよび硫酸プロタミン)の選択および高分子類の濃縮、ならびに放出を制御するための組み込み法により実施できる。放出制御製剤によって作用時間を制御するための他の可能な方法は、スフィンゴ糖脂質をポリエステル類、ポリアミノ酸、ヒドロゲル類、ポリ(乳酸)コポリマー類またはエチレン酢酸ビニルコポリマー類などのポリマー材料の粒子に組み込むことである。
【0217】
スフィンゴ糖脂質が、血漿蛋白質と結合することを防ぐために、例えば、コアセルベーション法、または界面重合化により、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−ミクロカプセルおよびポリ(メチメタクリレート)ミクロカプセルによって調製されたミクロカプセルにおいて、またはコロイド薬物送達システム、例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロ乳濁液、ナノ粒子およびナノカプセルまたはマクロ乳濁液において捕捉されることが好ましい。このような方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、A.Oslo編集、Mack、ペンシルバニア州イーストン所在、(1980)に開示されている。
【0218】
本発明のスフィンゴ糖脂質は、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェアまたはビーズの形態の合成または天然ポリマーなどの標的化可能な薬物送達システム、また、水中油乳濁液、ミセル、混合ミセル、リポソームおよび再密封赤血球などの脂質ベースシステムにおける使用に十分適合化されている。これらのシステムは、まとめてコロイド薬物送達システムとして知られている。典型的に、このような分散したスフィンゴ糖脂質を含有するコロイド粒子の直径は、約50mm〜2μmである。このコロイド粒子のサイズにより、これらは、注射などによる静脈内に、またはエアロゾルとして投与されることが可能となる。コロイドシステムの調製に用いられる材料は、典型的にフィルタ滅菌、非毒性および生体分解性の、例えばアルブミン、エチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、レシチン、リン脂質および大豆油により滅菌可能である。高分子コロイドシステムは、ミクロカプセル化のコアセルベーションと同様の方法により調製される。
【0219】
代表的な一実施形態において、スフィンゴ糖脂質類は、標準的送達システムとして用いられるリポソームの成分である。リン脂質類を水性媒体に静かに分散させると、それらは膨張し、水和し、脂質二重層を分離させる水性媒体の層を有する多層同心性二層ベシクルを自発的に形成する。このようなシステムは、通常、多層リポソーム類または多層ベシクル類(MLV類)と称され、約100nmから約4μmの範囲の直径を有する。MLV類を音波処理すると、直径が約20nmから約50nmの範囲のSUVのコア内に水性溶液を含有する小型の単層ベシクル類(SUVS)が形成される。
【0220】
リポソーム製造に有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジル化合物が挙げられる。脂質部分が、14個〜18個の炭素原子、特に16個から18個の炭素原子を含有し、飽和されているジアシル化ホスファチジルグリセロールが特に有用である。リン脂質の例としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0221】
本発明のスフィンゴ糖脂質類を含有するリポソーム類の調製においては、スフィンゴ糖脂質カプセル化効率、スフィンゴ糖脂質の不安定性、生じるリポソーム集団の均一性とサイズ、スフィンゴ糖脂質対脂質比、製剤の透過性不安定性および製剤の薬学的受容性などの変数を考慮する必要がある。Szokaら、Annual Review ofBiophysics and Bioengiねえりんg、9:p.467(1980);Deamerら、LIPOSOMES、Marcel Dekker、ニューヨーク所在、1983年、27:Hopeら,Chem.Phys.Lipids、40:p.89(1986))。
【0222】
本発明のスフィンゴ糖脂質を含有する標的化送達システムは、宿主、特に哺乳動物宿主に対し、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、血管内、局所、空洞内、経皮、鼻腔内および吸収などの種々の方法で投与できる。スフィンゴ糖脂質類の濃度は、具体的な適用、疾病の性質、投与回数などに依って変化する。標的化送達システム−カプセル化スフィンゴ糖脂質は、適切な水性の生理学的に許容できる媒体、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などとしての他の化合物を含む製剤において提供できる。
【0223】
本発明の方法により製造された化合物は、本発明の化合物に特異的に反応するモノクローナルまたはポリクローナル抗体に対する免疫原としても使用できる。種々の免疫グロブリン分子の製造および操作に関して、当業者に利用できる多数の方法が本発明に使用できる。抗体は、当業者に周知の種々の手段によって製造できる。
【0224】
非ヒト、例えば、マウス、ウサギ、ウマなどのモノクローナル抗体の製造は、周知であり、例えば、本発明の基質を含有する製剤によって、動物を免疫化することにより達成できる。免疫化動物から得られた抗体産生細胞は不死化されて、スクリーニングされるか、または所望の抗体産生に関して、先ずスクリーニングされてから不死化される。モノクローナル抗体産生の一般的操作手順の検討に関しては、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Mannual Cold Spring Harbor出版、ニューヨーク(1988)を参照されたい。
【0225】
治療を必要とする被験体(動物またはヒト)、好ましくは、哺乳動物は、治療的有効量、すなわち、単独で、または薬学的組成物の一部として、本発明の化合物の最適な有効性を提供する用量を投与され得る。当業者に認識されると思われるが、「治療的有効量」および投与様式は、被験体ごとに変わり、したがって、ケースバイケースに基づいて決定されることになる。考慮すべき因子としては、限定はしないが、治療を受ける被験体(例えば、哺乳動物)、その性別、体重、食事、併用薬、全体的な臨床病態、使用される具体的化合物およびこれらの化合物が使用される特定の使用法が挙げられる。治療的有効量または投与量は、インビトロ法またはインビボ法のいずれかによって決定できる。一般に、ある化合物または組成物の「治療的有効量」は、神経細胞の障害予防、治療または治癒をもたらす量である。例えば、パーキンソン病の予防、治療または治癒における本発明の化合物または組成物の治療的有効量は、その疾病の進行の速度比および/または運動技能の発達をもたらす量である。アルツハイマー病の予防、治療または治癒における本発明の化合物または組成物の治療的有効量は、例えば、被験体の記憶の改善をもたらす量である。エシェミア/発作の持続的作用の予防、治療または治癒における本発明の化合物または組成物の治療的有効量は、例えば、神経系機能(例えば、発話、運動など)の欠損減少および/または交感神経または副交感神経経路の改善をもたらす量である。
【0226】
投与様式としては、限定はしないが、経口、注射、静脈内(ボーラスおよび/または点滴)、皮下、筋肉内。経結腸、経直腸、鼻腔内および腹腔内投与など、当業者に公知のものが挙げられる。本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、経口摂取されることが好ましい。
【0227】
皮下針による注射では、上記用量は体液内へ送達されることが想定できる。他の投与経路に関しては、本発明の各化合物についての吸収効率が、薬理学において周知の方法により個々に決定できる。したがって、当業者には理解されると思われるが、最適な治療効果を得るためには、治療者が必要に応じて、用量の力価決定をし、投与経路を修正することが必要であると考えられる。有効用量レベル、すなわち、所望の結果を達成するために必要な用量レベルの決定は、当業者の能力範囲内にある。典型的には、本発明の化合物は、低用量レベルで投与され、所望の効果が得られるまで用量レベルが増加される。
【0228】
典型的な用量は、約0.1mg/kgから約1000mg/kg、好ましくは約0.1mg/kgから約100mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kgから約30mg/kg、さらに好ましくは約0.1mg/kgから約10mg/kg、より一層好ましくは約0.1mg/kgから約3mg/kgの範囲であり得る。有利なことに、本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、1日数回投与でき、また、他の用法用量もまた有用であり得る。本発明の化合物は、単回投与または複数回投与(例えば、1日2回から4回の分割投与)および/または連続的輸液における用法で投与できる。
【0229】
投与に関して、本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、投与前に滅菌できる。滅菌は、0.2ミクロン膜などの滅菌膜を通したろ過により、または他の従来の方法により容易に達成できる。本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、典型的には、凍結乾燥形態で、または水性溶液で、または水性溶液として保存できる。一定の投与様式において、pHは一因子であり得る。そのような場合、pHは、典型的には約2〜10の間の範囲、好ましくは約5〜8の間の範囲、より好ましくは6.5〜7.5の範囲、すなわち生理的pHである。
【0230】
(方法)
(処置および神経保護)
他の実施形態において、本発明は、神経系障害の予防または処置を必要とする動物またはヒトに、本発明の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、動物またはヒトにおける神経系障害の予防または処置のための方法を提供する。本発明の化合物は、任意の数の神経系障害を治療するために用いられる。代表的な神経系障害は、パーキンソン病、虚血、脳卒中、アルツハイマー病、うつ病、不安、脳炎、髄膜炎、筋萎縮性側索硬化症、外傷、脊髄損傷、神経損傷および神経再生よりなる群から選択される。他の代表的な実施形態において、上記障害は、神経膠腫などの増殖障害である。
【0231】
本発明の化合物は、神経保護的である(例えば、ニューロンおよびグリアを保護する)。用語の「神経保護」は、神経細胞の損傷から生じる徴候のいずれかの予防(発症前)、治療(発症)および/または治癒(発症後)に関する。このような徴候としては、パーキンソン病、虚血、低酸素症、脳卒中、てんかん、代謝機能障害、老化、毒性疾患、アルツハイマー病、中枢神経系障害(例えば、脊髄損傷)、多発性硬化症、ハンチントン病、CABG、うつ病、不安、脳炎、髄膜炎、筋萎縮性側索硬化症、外傷、脊髄損傷、神経損傷、ニューロパシーおよび神経再生が挙げられる。
【0232】
また、本発明の化合物は、神経形成性(例えば、ニューロンの分化ならびに幹細胞および始原細胞の増殖または分化を促進する)および/または神経突起生成性(例えば、神経突起の成長およびシナプス形成を促進する)であり、したがって、種々多様な神経疾患と病態の治療に有用であると考えられる。例えば、神経突起生成性化合物は、例えば、末梢ニューロパシーおよびニューロン損傷に関連した疾患(例えば、脳卒中、虚血性損傷、横断脊髄炎、外傷、脊髄損傷および糖尿病に伴うニューロパシー)においてなど、神経機能の回復を目的とした療法において有利に使用できる。
【0233】
また、本発明の化合物は、免疫系の多数の異なる細胞タイプ(例えば、CD4+T細胞、リンパ球およびNK細胞)の増殖を阻害する。したがって、選択された化合物は、免疫抑制的であり、それゆえ、多発性硬化症、関節リウマチ、類肉腫、腫瘍随伴疾患、シェーグレン、乾癬、強皮症、血管炎、慢性多発関節炎、紅斑性狼瘡、若年性真性糖尿病などの全身または臓器特異的自己免疫疾患の治療および/または処置のため、また、臓器移植拒絶ならびに骨髄または幹細胞移植の場合などの宿主に対する移植材料による拒絶を防ぐために有用である。
【0234】
また、本発明の化合物は、肝臓、肺、結腸、前立腺、乳房、膵臓および血管神経膠腫および神経上皮腫などの脳癌などの癌の治療に一般に有用である。さらに、本発明の化合物は、免疫抑制剤および免疫刺激剤として有用であり、臓器移植、自己免疫疾患、関節炎、全身性紅斑性狼蒼、過敏性腸疾患、放射能毒性ならびに炎症、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、外傷および敗血症において適用される。
【0235】
本発明の化合物は、T細胞およびB細胞を刺激または抑制するために使用でき、また抗体の抑制または刺激のために使用できる。T細胞およびB細胞を刺激および抑制する方法は、当該分野によく知られている。さらに、本発明の化合物は、G蛋白結合受容体細胞表面膜受容体系および核膜受容体などの膜受容体を阻害または活性化するための方法において使用できる。本発明の化合物はさらに、II型糖尿病の治療に、またエトリオポエチン(ethryopoeitin)代替物として使用できる。
【0236】
また、本発明の化合物は、血小板凝集の阻害剤としても有用である。さらに、本発明の化合物は、CCRC%およびCXC4などのG蛋白結合受容体を介して、ウィルス接着を阻害することによりAIDSの治療に有用である。また、本発明の化合物は、シャガス病ならびに、おのおのが参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第4,476,119号、米国特許第4,593,091号、米国特許第4,639,437号、米国特許第4,707,469号、米国特許第4,713,374号、米国特許第4,716,223号、米国特許第4,849,413号、米国特許第4,940694号、米国特許第5,045,532号、米国特許第5,135,921号、米国特許第5,183,807号、米国特許第5,190,025号、米国特許第5,210,185号、米国特許第5,218,094号、米国特許第5,229,373号、米国特許第5,260,464号、米国特許第5,264,424号、米国特許第5,350,841号、米国特許第5,424,294号、米国特許第5,484,775号、米国特許第5,519,007号、米国特許第5,521,164号、米国特許第5,523,294号、米国特許第5,667,285号、米国特許第5,792,858号、米国特許第5,795,869号、および米国特許第5,849,717号に記載されている疾患、障害、および病態などの疾病の治療にも有用である。
【0237】
本発明の化合物の作用の1つの可能な機構は、神経増殖因子類を刺激するものである。本発明の化合物の作用の他の可能な機構は、癌細胞、特に神経芽細胞腫細胞の増殖を阻害するものである。例えば、マウス神経芽細胞腫細胞に、ガングリオシドGM3を投与することにより、神経芽細胞腫細胞の増殖が阻害できることが示されている(Zhangら、1995年、Anticancer Res.15:p.661−6)。本発明のスフィンゴ糖脂質およびスフィンゴ糖脂質様化合物は、同様な阻害能力において使用できる。
【0238】
本発明の化合物および薬学的組成物は、ヒトなどの霊長類、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスなどの通常哺乳動物において、インビボで、またはインビトロで利用できる。神経保護剤としての本発明の化合物の有効性は、当該分野に公知のスクリーニングプロトコルを用いて決定できる。例えば、本発明の化合物の上記の生物学的性質は、例えば、インビトロスクリーニングプロトコル(例えば、細胞培養(MPTP(ラット腹縫腺メゾフェンタリック(mesophenthalic)細胞)、NMDA(マウス一次皮質ニューロン)、セラミド(神経芽細胞腫−ヒト))、CACO−2(経口吸収、RBCリーシス)ならびに神経保護有効性を評価するためのインビボ試験(例えば、パーキンソン病治療における有効性に関するマウスおよび霊長類MPTP毒性試験(IP、IVおよび/または経口)、脳卒中またはCABGによる神経損傷治療の有効性に関するラット脳卒中試験およびCABGの治療に関するイヌの試験)など、当該分野に公知の方法により、容易に特性化できる。
【0239】
本明細書に記載されている細胞ベースのアッセイにおいて、本発明の化合物は、GM1などのガングリオシドが有効である濃度よりも著しく低い、約0.1μMから約1μMの間の低濃度で50〜100%大きな神経保護活性を示した。
【0240】
以下の実施例を参照にして、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されるものであって、本発明が、これらの実施例に限定されるのではなく、本明細書に提供された教示の結果、明白となる任意の全ての変型を含むと解釈すべきである。
【実施例】
【0241】
(実施例1.GM1アルデヒド調製の一般的操作手順)
GM1(2.5g、1.62mmol)を、2500mLのメタノールに溶解した。この溶液を−70℃に冷却し、淡青色が現れなくなるまで(約30分)溶液にオゾンを通気した。溶液が無色になるまで、反応混合液に窒素を通気することにより、オゾンを除去した。次いで、80mLのジメチルスルフィドを加え、生じる混合物を室温で2時間攪拌した。溶液を窒素と共に蒸発乾固した。残渣をトルエン(50mL)と共に同時蒸発させ、この残渣を高度真空ポンプで1時間乾燥し、アルデヒドを含有する白色固体を得た。
【0242】
(実施例2.Wittig反応による:
【0243】
【化28】
の調製)
臭化3−クロロ−2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンジル−トリフェニルホスホニウム(2.58g、4.66mmol)ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)を含有する懸濁液を、−40℃に冷却してから、t−ブチルアルコール溶液(4.49mL)を加えた。10分後、この反応混合物を、DMF(200mL)に溶解させたアルデヒド溶液に徐々に加え、−40℃に冷却した。添加完了後、反応混合物を室温で1時間攪拌した。次いで、反応混合物をロータリー蒸発により濃縮し、残渣をクロマトグラフィ(シリカ、CHCl3/MeOH3:1、次いでMeOH/H2O/NH4OH60:40:7:1)を行って、1.5g(収率60%)の所望の生成物を、凡そ70/30のシス/トランス混合物として得た。ESI−MS;C67H106ClF4N3O31の計算値、1559;実測値1558[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ7.98(d、J 6.0Hz、2H)、7.84(d、J 6.0Hz、1H)、7.82(d、J 5.5Hz、2H)、7.60(d、J 5.5Hz、1H)、7.34(d、J 9.5Hz、2H)、6.64(d、J 16Hz、1H)、6.48(d、J 11.5Hz、2H)、5.93(dd、J 11.5/11.5Hz、2H)、4.79(d、J 8.5Hz、2H)、4.27(d、J8.0Hz、2H)、4.21(d、J 8.5Hz、2H)、3.00−4.00(m)、1.98(m、2H)、1.86(s、3H、COCH3)、1.78(s、3H、COCH3)、1.25(m)、0.83(t、3H、CH3)。
【0244】
(実施例3.Wittig反応による:
【0245】
【化29】
の調製)
出発イリドを変えたこと以外は、実施例2のWittig操作に従った。所望の生成物は、白色固体(収率43%)として得た。ESI−MS;C65H108N4O31の計算値、1440;実測値1439[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ8.46(d、J 4Hz、1H)、7.70(dd、J 6.5および9.6Hz、1H)、7.37(d、J 8.0Hz、1H)、7.18(dd、J 5.0および5.0Hz、1H)、6.64(dd、J15.5および6.0Hz、1H)、6.57(d、J 15.5Hz、1H)、4.82(d、J 8.5Hz、1H)、4.27(d、J8.0Hz、1H)、4.18−4.22(2d、2H)、3.10−3.93(m)、2.02(t、2H)、1.86(s、3H、COCH3)、1.75(s、3H、COCH3)、1.36(m、2H)、1.22(s)、1.06(m、2H、CH3)、0.83(t、3H、CH3)。
【0246】
(実施例4.Wittig反応による:
【0247】
【化30】
の調製)
出発イリドを変えたこと以外は、実施例2のWittig操作に従った。所望の生成物は、固体(収率21%)の50/50のシス/トランス混合物として得た。ESI−MS;C64H111N3O31の計算値、1417;実測値[M−1]−。
【0248】
(実施例5.Wittig反応による:
【0249】
【化31】
の調製)
出発イリドを変えたこと以外は、実施例2のWittig操作に従った。所望の生成物は、固体(収率45%)として得た。ESI−MS;C68H109ClN6O31の計算値、1540;実測値1539[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ8.00(d、J 9.0Hz、2H)、7.50(d、J 9.0Hz、2H)、4.80(d、J 8.5Hz、1H)、4.26(d、J8.0Hz)、4.22(d、J 7.5Hz、2H)、4.19(d、J 8.0Hz、1H)、3.05−4.00(m)、2.02(m、2H)、1.87(s、3H、COCH3)、1.75(s、3H、COCH3)、1.21(s)、0.83(t、J6.5Hz、CH3)。
【0250】
(実施例6.
【0251】
【化32】
の調製)
実施例1のGM1アルデヒド(20mg、0.013mmol)およびジオクチルアミン(6mg、0.024mmol)を、室温で攪拌しながら2.5mLのジメチルホルムアミド(DMF)に加えた。次いで、メタノール(5mL)中のトランス−2−フェニルビニルボロン酸(9mg、0.045mmol)を加えた。生じる溶液を室温で3日間攪拌した。次いで、反応混合物を、ロータリー蒸発させて濃縮乾固し、残渣を、1g HAXカートリッジを用いて固相抽出により精製した。次いで、溶出液は、HPLCを用いて精製し、9.5mg(収率43%)の白色固体を得た。ESI−MS;C83H144N4O31の計算値、1693;実測値1692[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ8.05(d、J 3.0Hz、1H)、7.70(m 5H)、6.40(m、1H)、6.25(dd、J 9.0および16Hz、1H)、4.80(d、J 8.5Hz、1H)、4.28(d、J8.0Hz、1H)、4.22(d、J 8.0Hz、1H)、4.16(d、J 4.2Hz、1H)、3.00−4.00(m)、2.10(m、2H)、1.86(s、3H、COCH3)、1.60(s、3H、COCH3)、1.19(s)、0.83(t、3H、CH3)。
【0252】
(実施例7.神経保護有効性評価のためのMPTP/VMCアッセイ(インビトロ))
腹側中脳(mesophenthalic)細胞(VMCs)を、ラット胎仔脳幹(15日齢)から単離した。各プレート上で細胞を対照と共に数日間培養する(48ウェルのプレート)。細胞を1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)(10μM)により24時間処理すると、30〜50%の細胞が死滅する。次いで毒素を除去する。次に、細胞を、DMSO中の本発明の化合物により処理する。24時間後、チロシンヒドロキナーゼ免疫染色および細胞数の計測を行う。
【0253】
対照は、NPTP(10μM−30〜50%の細胞死滅)およびGM1(30μM)またはLIGA−20(10μM)−30−50%保護である。
【0254】
(NMDA興奮毒性)
Dawsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:p.7797(1991)を参照されたい。滅菌H2O中、10mM NMDAおよび10mMグリシンの保存溶液を、マグネシウムのない対照塩溶液(CSS)(120mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl2、室温pH7.4の25mMトリス−塩酸、15mMグルコース)中、それぞれ500Mおよび10Mの操作濃度に希釈する。細胞を、スフィンゴ糖脂質模擬物によって3日間前処理する。次いで上記完全媒体を、細胞から慎重に除去し、マグネシウムのないCSSで3回静かに洗浄する。NMDA/グリシン/CSSの操作溶液を上記細胞に5分間加え、直ちに吸引し、MgCl2(1mM)を含有するCSSで置換して反応を停止させる。次いでスフィンゴ糖脂質模擬物を有する、および有さない完全媒体中、さらに20〜24時間培養してから、細胞生存にとって適切な培養器に関して評価する(トリパンブルー除外およびHoescht/ヨウ化プロピジウム染色)。
【0255】
(実施例8.リソ−ラクトシルセラミドのシアリル化)
本実施例では、リソ−ラクトシルセラミドに関する反応条件を記載する。ラクトシルセラミドを、ウシバターミルクから得、脂肪酸部分を塩基加水分解部分により除去し、リソ−ラクトシルセラミドを形成する。HEPES緩衝液(200mM、8%MeOH含有、pH7.5、50μL)中、リソ−ラクトシルセラミド(1.0mg、1.6μmol)およびCMP−シアリン酸(2.46mg、純度65%、2.40μmol)の混合物を、20分間音波処理した。次に、α2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、6U/mL、50mU)に次いでアルカリホスファターゼ(1μL、1.0x105U/mL、100U)を加えた。上記反応混合物を室温に維持した。1日後、さらにα2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、6U/mL、50mU)分を加えた。さらに4日後、
追加のα2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、6U/mL、50mU)分を加えた。室温でさらに1日後、薄層クロマトグラフィは、反応がほぼ終了していることを示した。
【0256】
(実施例9.ウシバターミルクより得られたラクトシルセラミドからのGM2合成)
ウシバターミルクより得られたラクトシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成に関する2つの経路を示す概略図が図1に示されている。左側に示された経路において、脂肪酸はシアリル化の前にラクトシルセラミドから除去されることはなく、反応は、有機溶媒の存在下では実施されない。対照的に右側の反応は、有機溶媒の存在下で、脂肪酸を除去して実施される。
【0257】
先ず、塩基と水とによる処理で、ラクトシルセラミドからの脂肪酸を加水分解する(ステップ1)。次にα2,3シアリルトランスフェラーゼ、好ましくは、ST3Gal IVを用いた酵素的転移により、シアリン酸残基をガラクトース残基へ付加する(ステップ2)。この反応は、有機溶媒の存在下で実施できる。次にGalNAcトランスフェラーゼを用いて、β1,4結合において、GalNAc残基をガラクトースへ付加する(ステップ3)が;このステップは、有機溶媒の存在下で実施しても、しなくてもよい。最後に、脂肪酸部分をスフィンゴシンに再付加して、所望のGM2ガングリオシドを得る。この反応は、シアリル化時、有機溶媒の存在により、典型的には、ほぼ完了まで進行する。
【0258】
(実施例10.植物グルコシルセラミドからのスフィンゴ糖脂質類の合成)
本実施例では、前駆体として、植物グルコシルセラミドを用いて、GM2ガングリオシドを合成する3つの代替法を記載する(図3)。経路1において、グリコシルセラミドへのGal残基の転移を触媒するために、β1,4−ガラクトシダーゼが用いられる。同時にGalにシアリン酸残基を結合するために、シアリルトランスフェラーゼサイクルにおいて、α2,3シアリルトランスフェラーゼが用いられる。次に、上記反応混合物に、UDP−GalNAcにより、またはGalNAcトランスフェラーゼサイクルの一部としてβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼを加える。このステップにおいて、GalNAc残基は、α2,3結合において、Gal残基に結合する。
【0259】
経路2は、グルコシルセラミドへのGalの付加が、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルまたはUDP−Glc/Galのいずれかを受容体糖として用いて、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により、触媒される点で、経路1に示された合成と異なっている。シアリル化とGalNAcの付加を上記のとおり実施してGM2を得る。
【0260】
経路3において、グリコシルトランスフェラーゼステップの前に、水性塩基による処理により、脂肪酸が先ず除去される。ガラクトシル化、シアリル化およびGalNAcトランスフェラーゼ反応は、経路2のとおり実施される。GalNAc残基の付加後、脂肪酸が上記分子に結合される。この脂肪酸は、もともと植物のグルコシルセラミドに見られるものと同じでもよいし、異なっていてもよい。図4に示されている実施例において、活性化C18脂肪酸を用いて、GM2合成がもたらされる。脂肪酸がグリコシル化反応の前に除去されると、一般により高い効率が見られる。
【0261】
(実施例11.グルコシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成)
本実施例では、前駆体として、グルコシルセラミドを用いてGM2および他のスフィンゴ糖脂質類を合成する3つの代替法を記載する(図4)。経路1において、グリコシルセラミドへのGal残基の転移を触媒するために、β1,4−ガラクトシダーゼが用いられる。同時にGalにシアリン酸残基を結合するために、シアリルトランスフェラーゼサイクルにおいて、α2,3シアリルトランスフェラーゼが用いられる。次に、上記反応混合物に、UDP−GalNAcにより、またはGalNAcトランスフェラーゼサイクルの一部としてβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼを加える。このステップにおいて、GalNAc残基は、α2,3結合において、Gal残基に結合する。
【0262】
経路2は、グルコシルセラミドへのGalの付加が、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルまたはUDP−Glc/Galのいずれかを受容体糖として用いて、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により、触媒される点で、経路1に示された合成と異なっている。シアリル化とGalNAcの付加を上記のとおり実施して、GM2を得る。
【0263】
経路3において、グリコシルトランスフェラーゼステップの前に、水性塩基による処理により、脂肪酸が先ず除去される。ガラクトシル化、シアリル化およびGalNAcトランスフェラーゼ反応は、経路2のとおり実施される。GalNAc残基の付加後、脂肪酸が上記分子に結合される。図3に示されている実施例において、活性化C18脂肪酸を用いて、GM2合成がもたらされる。脂肪酸がグリコシル化反応の前に除去されると、一般により高い効率が見られる。
【0264】
より複合化したスフィンゴ糖脂質を得るためには、各合成経路後に、追加のグリコシルトランスフェラーゼ類を用いて、追加の糖残基を付加することができる。
【0265】
(実施例12.哺乳動物細胞の増殖に及ぼす本発明化合物の効果)
(材料および方法)
化合物2、8、10、13、56、57、58、59、60および61を、本発明の方法により作製して、使用するまで粉末形態で保存する。
【0266】
9L細胞は、Wake Forest大学(ノースカロライナ州ウィンストンサレム所在)から入手し、他の5つの細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC、バージニア州マナサス所在)から入手した。最少必須培地イーグル(MEM)培地と基本培地イーグル(BME)培地、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ新生仔血清およびトリプシン−EDTA溶液は、ミズーリ州セントルイス所在のSigma Chemical社から入手した。ダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)と、リーボビツL−15培地は、ATCC(バージニア州マナサス所在)から入手した。MTT色素試薬は、ウィスコンシン州マジソン所在のPromega社から入手した。
【0267】
(細胞培養)
5%CO2/95%空気中、37℃で、9L細胞を、10%ウシ新生仔血清、2mMグルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンと共に、BME培地中で増殖させた。ATCCから得られた細胞系は、5%CO2/95%空気中、37℃でATCC推奨培地中で増殖させた。SK−N−MC(HTB−10)およびU−87(HTB−14)は、アール塩、2mMグルタミン、1mMピルビン酸、0.1M非必須アミノ酸(NEAA)および10%FBSと共にMEM中で増殖させた。U−118S(HTB−15)およびHs683(HTB−138)細胞は、DMEM、4mMグルタミン、4.5g/Lグルコース、1.5g/L重炭酸ナトリウムおよび10%FBS中で増殖させた。SW1088(HTB−12)細胞は、37℃の給湿空気環境(CO2は加えず)中、10%FBSと共に、リーボビッツL−15培地中で増殖させた。各細胞系の培地は3日ごとに取り替え、細胞は、解離剤として0.25%トリプシン−EDTA溶液を用いて毎週継体した。
【0268】
(増殖アッセイ)
80%コンフルエントで、0.25%トリプシン−EDTA溶液を用いて採取した。上記トリプシン化細胞を1ウェル当たり2000細胞で96ウェルプレートに入れた(極めて急速に増殖するため、1ウェル当たり1200細胞を入れたpL細胞を除いて)。10種の化合物、2、8、10、13、56、57、58、59、60および61の各々の作用保存液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。24時間、細胞を結合させ、培養物を与え、0.05μM、0.5μM、5μMおよび50μMの濃度の10種の化合物をそれぞれ投与した。各濃度について、6ウェルの反復を用いた。対照に、試験ウェルに加えられた培地中で希釈された同容量のDMSOを与えた。培地は、3日ごとに新鮮な試験化合物に取り替えた。培養7日後、MTT試験を用いて生菌を測定した。各ウェルから培地を除き、各ウェルに100μLの新鮮な培地、15μLのテトラゾリウム色素溶液を加え、37℃で4時間温置することによりMTTアッセイを実施した。4時間後、100μLの可溶化/停止溶液を各ウェルに加えた。上記プレートを室温で一晩温置し、各ウェルの黄色の強度をBio−Tek機器(Winooski、バーモント州)マイクロプレート走査光電分光光度計において、575nmで測定した。
【0269】
この増殖アッセイの結果は、図6〜図15に提供している。
【0270】
(神経突起増殖アッセイ)
後根神経節(DRG)神経細胞培養物を、15日齢胎仔におけるSDラットから確立する(Harlan社、インディアナ州インディアナポリス所在)(Eldridgeら、J.Cell.Biol.105:p.1023−1034を参照)。簡潔に述べると、胎仔を切開し、脊髄を単離する。次に、DRGsを脊髄から分離し、CMF培地に入れる。次に、DRG神経細胞を、0.25%トリプシンにより解離させ、ラット尾部コラーゲン(Collaborative Biomedical Products、マサチューセッツ州ベドフォード所在)でコーティングした8ウェルチャンバスライド(Nage Nunc、イリノイ州シカゴ所在)内に入れる。1μMから100μMの種々のスフィンゴ糖脂質を加える。48時間後、神経突起の長さを測定することにより、神経突起の増殖を評価する。
【0271】
(実施例13.免疫抑制アッセイ)
Bruunsgaadら、Clin.Exp.Immunol.119(3);p.433(2000)を参照されたい。
【0272】
ヘパリン化(50U/ml)血液から末梢神経単球を、Ficoll−Hypague(Pharmacia)密度勾配遠心分離により単離する(Boyumら、Scand.J.Clin.Lab.Invest.Suppl.97:p.9−29(1968)を参照)。簡潔に述べると、ヘパリン化血液を、FICOLL(Pharmaciaから入手)の上部に静かに置き(FICOLL対血清比1:2)、次いで、1600rpmで25分間遠心分離する。バッフィーコートを吸収し、2回洗浄してから、RPMI1640に再懸濁させる。細胞を、20mg/mLの植物性凝集素を含有する96ウェル丸底マイクロタイタープレートにおいて、10%ウシ胎仔ケッセイ糖脂質(1μMから100μM)と共に、また、それなしで1ウェル当たり2x105細胞の密度でスフィンゴ糖脂質(1μMから100μM)と共に、また、それなしで培養する。[3H]TDR(1μCi/ウェル、5Ci/mmol)を18時間加えることにより、リンパ球増殖をアッセイする。次にプレートを回収し、シンチレーションカウンターを用いてカウントする
(実施例14.アポトーシスに対する皮質細胞の保護)
アポトーシスを誘導するために、マウス皮質細胞を培養し、ガングリオシド類似体で処理する前に、3時間、50μM過酸化水素により処理された。上記細胞は、ガングリオシド類似体による処理時および処理後48時間、やはり過酸化水素で処理した。MTTアッセイを用いて、細胞死をアッセイした。
【0273】
上記処理の結果、過酸化水素で処理された細胞の凡そ30%が死滅した。Liga20(またはGM1)(凡そ0.1μM)による処理により、アポトーシスに対し、凡そ20%の細胞保護が提供された。同様の濃度における本発明の化合物は、凡そ同レベルの細胞保護を提供した。
【0274】
(実施例15.細胞死に対する皮質細胞の保護)
非アポトーシス細胞死を誘導するために、マウス皮質細胞を培養し、ガングリオシド類似体で処理する前に、3時間、50μM過酸化水素およびオリゴマイシン(0.01μM)により処理した。上記細胞は、ガングリオシド類似体による処理時および処理後48時間、やはり過酸化水素およびオリゴマイシンで処理した。MTTアッセイを用いて、細胞死をアッセイした。
【0275】
上記処理の結果、過酸化水素で処理された細胞の凡そ30%が死滅した。本発明の化合物による細胞処理は、細胞死に対し凡そ20%の細胞を保護した。
【0276】
(実施例16.MPTP処理マウスにおける線条体ドーパミン濃度の救護)
7〜8週齢のオスC57B1/6マウスをMPTP(1日2回、20mg/kg、皮下)で処理した。また上記マウスは、さいごのMPTP注射の24時間後から開始された、生理食塩水、GM1(30mg/kg)、本発明の化合物(0.3.3mg/kg、腹腔内、および30mg/kg、大腿)の1日1回投与を3週間受けた。脳を除去し、線条体ドーパミン濃度に関して分析した。TH免疫組織化学およびドーパミン神経細胞のカウントのために中脳を固定した。
【0277】
MPTP単独では、おおよそ76%の線条体ドーパミン損失が生じた。GMaおよび本発明の化合物(全ての投与量と投与経路において)は、線条体ドーパミン濃度を、ほぼ同程度まで増加させた。
【0278】
前述の検討および実施例は、本発明の一定の好ましい実施形態の詳細な説明を提供している。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の修飾体および等価体が作製できることは、通常の当業には明らかであろう、上記で検討および引用した全ての特許、学術誌および他の文書は全ての目的のために、それらの全体が、本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】図1は、ウシのバターミルクから得られた出発物質ラクトシルセラミドを用いる酵素的合成によるガングリオシドGM2合成のための2つの方法の概略図である。
【図2】図2は、ウシのバターミルクから得られたラクトシルセラミドからガングリオシドGD2合成のための2つの方法の概略図である。
【図3】図3は、出発物質として植物グルコシルセラミドを用いてGM2ガングリオシドを合成する3つの経路をまとめたものである。
【図4】図4は、グルコシルセラミドから出発してGM2および他のガングリオシドを合成する3つの経路をまとめたものである。
【図5】図5は、ラクトシルセラミドからの脱アシル化によるガングリオシドGM2の合成、2つの連続した酵素的グリコシル化および最後の化学的アシル化に用いられた図式である。
【図6】図6は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。50μMにおける化合物2は、全ての細胞系において、ほぼ100%(86%〜100%)の増殖阻害を生じさせる。
【図7】図7は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物8は、4つの細胞系で化合物2に関するプロフィルと同様のプロフィルを有し(50μMの化合物8により、77%〜89%の増殖阻害)、U−118細胞では、50μMの化合物8による増殖阻害は21%である。
【図8】図8は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。50μMの化合物10による9L細胞の阻害が46%であったことを除いて、化合物10は、化合物2と同様の活性を有する。
【図9】図9は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。Hs683細胞およびSw1088細胞を処置するために用いられた場合、化合物13は、50μMの濃度で使用された時に、各々42%および35%、増殖を阻害した。
【図10】図10は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。50μMの化合物56は、9L細胞を23%、U−118細胞を27%、Hs683細胞を48%、Sw1088細胞を68%、増殖阻害した。
【図11】図11は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物57は、9L細胞の増殖を11%〜37%阻害した。
【図12】図12は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物58は、5μMで9L細胞およびHs683細胞の増殖を阻害した(それぞれ27%と32%)。50μMにおいて、化合物58は、9L細胞、Hs683細胞、U−118細胞およびSw1088細胞の増殖を26%〜54%阻害した。
【図13】図13は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物59は、50μM化合物で全ての細胞系における増殖を強力に阻害した(91%〜100%)。
【図14】図14は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物60は、細胞増殖アッセイにおいて極めて活性であった。化合物60は、5μMで全ての被験細胞系において、増殖阻害活性を証明し(15%〜88%)、5μMで全ての細胞系において、強力な増殖阻害を証明した(95%〜100%)。
【図15】図15は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物61は、50μMで全ての細胞系の増殖を、66%〜100%阻害する。
【図16G】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16H】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16I】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16J】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16K】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16L】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16M】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16N】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16O】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16P】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16Q】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16R】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16S】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16T】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16U】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図17】図17は、本発明の化合物に含まれる代表的な糖部分の表である。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への引用)
本出願は、2002年8月29日出願のPCT/US02/27935号に関するものであり、上記出願は、その全体が参照として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規なスフィンゴ糖脂質類およびそれらの調製法と利用法に関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
スフィンゴ糖脂質類は、セラミドに結合した炭水化物部分を有する脂質の1クラスである。スフィンゴ糖脂質の代表的なクラスはガングリオシド類である。上記炭水化物部分は、少なくとも1つのシアリン酸部分を含む。ガングリオシド類は典型的にシアリン酸部分に加えて、糖部分を含み、構造内に存在する単糖とシアリン酸基の数によって分類される。ガングリオシド類は、シアリン酸残基の数により、モノ−、ジ−、トリ−またはポリ−シアロガングリオシドとして公知である。これらの分子を識別するために使用される略号としては、「GM1」、「GD3」、「GT1」などが挙げられ、「G」は、ガングリオシドを表し、「M」、「D」または「T」などは、シアリン酸残基の数をいい、数または数プラス文字(例えば、「GT1a」)は、この分子に関して観察されたTLCアッセイにおける溶出順序を言う。Lehninger、Biochemistry、p.294−296(Worth Pubkishers、1981年);Wiegandt、Glycolipids:New Comprehensive Biochemistry(Neubergerら編集、Elsevier、1985年)、p.199−260、を参照されたい。
【0004】
例えば、国際的な記号GM1aは、広く研究されてきたより一般的なガングリオシド類の1つを示す。この記号における「M」は、このガングリオシドが、モノシアロガングリオシドであることを示し、「1」は、TLC溶出プロフィルにおけるその位置を規定している。下付き文字、「a」、「b」または「c」もまた、特定のガングリオシドのTLCアッセイにおける位置を示している。末端の糖は、セラミド部分に結合している末端の反対側にある炭水化物部分の末端に位置している糖である。
【0005】
用語の「スフィンゴ糖脂質類」(GSL類)とは、6つのうち5つが、セラミドとUDP−グルコースから酵素的に形成されるグリコシルセラミド(GlcCer)由来である6つのクラスの化合物を含む属を言う。GlcCer形成に関与する上記酵素は、UDP−グルコース:N−アシルスフィンゴシングリコシルトランスフェラーゼ(GlcCerシンターゼ)である。生理的条件下でのGlcCer形成速度は、UDP−グルコースの組織濃度に依存し、これは次に、特定の組織におけるグルコース濃度に依存する(Zador,I.Z.ら、J.Clin.Invest.91:p.797−803(1993))。内因性セラミドに基づくインビトロアッセイでは、追加セラミドを含有する混合物よりも合成速度が低く、セラミドの組織濃度もまた、通常、速度制限的であることを示唆している(Brenkert,A.ら、Brain Res.36:p.183−193(1972))。
【0006】
GSL類のレベルは、増殖、分化、細胞間接着、細胞とマトリクス蛋白質との間の接着、細胞に対する微生物およびウィルスの結合、および腫瘍細胞の転移など、種々の細胞機能を制御する。さらに、GlcCer前駆体、セラミドは、分化または細胞増殖の阻害を引き起し(Bielawska,A.ら、FEBS Letters 307:p.211−214(1992))、ビタミンD3、腫瘍壊死因子α、インターロイキン類およびアポトーシス(プログラム化細胞死)の機能に関与している。スフィンゴル類(スフィンゴ様塩基類)、セラミドの前駆体およびセラミド異化作用産物もまた、恐らくプロテインキナーゼC(PKC)の阻害により、多くの細胞系に影響を与えることが示されている。
【0007】
スフィンゴ糖脂質類のクラスの1つであるガングリオシド類は、神経系において機能的に重要であることが公知であり、ガングリオシド類は、末梢神経系障害の治療に有用であることが証明されている。多数のガングリオシド類およびそれらの誘導体が、パーキンソン病など、多種多様の神経系障害の治療に使用されてきた。ガングリオシドGM1は、パーキンソン病および脳虚血発作の治療に関する第II相臨床開発において用いられている(米国特許第4,940,694号;米国特許第4,937,232号;および米国特許第4,716,223号を参照)。また、ガングリオシド類は、食細胞の活性に影響を及ぼし(米国特許第4,831,021号)、胃腸管疾患を生ずる生物の治療に用いられてきた(米国特許第4,762,822号)。動物の脳から精製されたガングリオシド類GM2およびGD2は、キーホールカサガイヘマシアニン(KLH)と共役させ、アジュバントQS21と混合して、第II相および第III相治験における癌ワクチンの基剤として、これらのガングリオシド類に対する免疫応答を誘発させるために用いられてきた(Progenics、ニューヨーク州タリータウン所在)。ガングリオシドGM3は、抗癌剤として使用するために研究されている(国際公開第98/52577号)。また、糖脂質類は、炎症性腸疾患の治療において関心が持たれている。Tubaroら、Naunyx−Schmiedebergg’s Arch.Pharmacol.348:p.670−678(1993)を参照されたい。
【0008】
ガングリオシド類は一般に、組織、特に動物の脳からの精製により単離される(GLYCOLIPID METHODOLOGY、Lloyd A.Witting編集、American Oil Chemists Society、Champaign、III.p.187−214(1976);米国特許第5,844,104号;米国特許第5,532,141号;Sonninoら、J.Lipid Res.33:p.1221−1226(1992));Sonninoら、Ind.J.Biochem.Biophys.,25:p.144−149(1998);Svennerholm、Adv.Exp.Med.Biol.125:p.533−44(1980)。また、ガングリオシド類は、ウシのバターミルクからも単離されてきた(Renら、J.Bio.Chem.267:p.12632−12638(1992);Takamizawaら、J.Bio.Chem.261:p.5625−5630(1986))。最適条件下でも、純粋ガングリオシド類、例えば、GM2およびGM3の収量は極めて少ない。また、哺乳動物組織からの精製は、それと共にウィルス、プリオン粒子などの汚染物質伝達の危険を伴う。したがって、ガングリオシド類を確保するための代替となる方法論が極めて望ましい。
【0009】
天然ガングリオシド類には多くの利点はあるが、天然ガングリオシド類に較べてより高められた生物学的利用能、標的特異性、活性などの特徴を有するガングリオシド類似体に対する必要性が存在している。さらに、スフィンゴシンおよびスフィンゴシン類似体から合成的に調製されたガングリオシド類似体には、ウシ海綿状脳炎などの動物疾病を伝達する危険性がない。
【0010】
ガングリオシド類の重要性により、純粋なガングリオシド類を高収量で合成する方法の開発に、努力が費やされてきた。ガングリオシド類を化学的に合成する方法は、Hasegawaら、J.Carbohydrate Chemistry、11(6):p.699−714(1992)およびSugimotoら、Carbohydrate Research、156:p.C1−C5(1986)に記載されている。米国特許第4,918,170号は、GM3およびGM4の合成を開示している。Schmidtらは、GM3の化学的合成を記載している(米国特許第5,977,329号)。これらの文献では、労力のかかる保護−活性化−カップリング−脱保護の方法を用いる多段階合成操作を記載しており、これらの段階で、中間体は一般に、抽出とカラムクロマトグラフィの組み合わせにより精製される。さらに、合成法はどれもガングリオシド類の大規模調製に適切ではない。
【0011】
炭水化物の化学的合成に伴う困難を考えると、ガングリオシド類の炭水化物部分の合成に、酵素を使用することはガングリオシド類の調製への有望なアプローチである。酵素ベースの合成は、位置選択性および立体選択性の利点を有する。さらに、酵素的合成は、非保護基質を用いて実施できる。酵素の2つの主要なクラス、グリコシルトランスフェラーゼ類(例えば、シアリルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ)およびグリコシダーゼ類が、炭水化物の合成に用いられる。グリコシダーゼ類は、さらにエキソグリコシダーゼ類(例えば、βーガラクトシダーゼ、βーグルコシダーゼ)およびエンドグリコシダーゼ類(例えば、エンドグリコセラミダーゼ)に分類される。これらのクラスの酵素は各々、炭水化物の調製に好結果で用いられている。一般的レビューに関しては、Croutら、Curr.Opin.Chem.Biol.2:p.98−111(1998)および上記Arsequellを参照されたい。
【0012】
グリコシルトランスフェラーゼは、オリゴ糖の調製に用いられてきており、良好な立体化学的および位置化学的制御を伴って、特異的生成物を製造するために有効であることが示されてきた。例えば、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼはラクトサミンの合成に用いられ、炭水化物の合成におけるグリコシルトランスフェラーゼの有用性を例示した(例えば、Wongら、J.Org.Chem.47:p.5416−5418(1982)を参照)。さらに、シチジン−5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸のシアリン酸を、ガラクトースの3−OHまたは6−OHに移すために、多数の合成法が、α−シアリルトランスフェラーゼを利用してきた(例えば、Kevinら、Chem.Eur.J.2:p.1359−1362(1996)を参照)。治療的使用のためのグリコ共役体の合成における最近の進歩についての考察に関しては、Koellerら、Nature Biotechnology 18:p.835−841(2000)を参照されたい。
【0013】
グリコシダーゼ類は、通常、グリコシド結合の加水分解を触媒するが、適切な条件下では、この結合を形成するために使用することができる。炭水化物の合成に用いられる多くのグリコシダーゼは、エキソグリコシダーゼであり、グリコシルの移動は、基質の非還元末端に生じる。水によって妨げられて加水分解産物を生じるか、または受容体によって妨げられて新たなグリコシドまたはオリゴ糖を生じるグリコシル−酵素中間体におけるグリコシル供与体をグリコシダーゼが受け入れられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
治療特性を改善した合成ガングリオシド類似体のアレイに対する必要性に加え、合成ガングリオシド類似体を調製するための簡単な高収量法に対する必要性は依然として存在している。ガングリオシドまたはその合成類似体の生物活性は、一般に、特定のグリコ形体の存在または特定のグリコ形体の不在に依存しているため、特にセラミド、スフィンゴシンおよびそれらの類似体上に前選択されたグリコシル化パターンを有するガングリオシド類似体を酵素的に調製するインビトロ法に対する必要性が存在している。本発明は、これらの必要性および他の必要性への取り組みに関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の概要)
糖脂質類は、一群の傷害を治療するために一般に用いられる。本発明は、糖脂質の代表的な1クラスであるガングリオシドに関して説明される。ガングリオシド類は、神経疾患および自己免疫障害を治療する薬剤として興味が持たれている。しかし、ガングリオシド類を用いて現在利用できる治療法は不十分である。一般に、治療目的で用いられるガングリオシド類は、ウシ脳などの生物媒体から時間のかかる方法によって精製されており、その結果、不純な調製物となる可能性がある。さらにガングリオシド類は一般に、腸管における吸収が不十分であるため、静脈内投与を必要とする。また、現在利用できるガングリオシド類は、血液脳関門の極めて少ない通過しか示さない。
【0016】
したがって、現在利用できるガングリオシド類は一般に、調製が容易にはできず、また、進行を止め、重症度を低下させ、および/または神経疾患および自己免疫疾患を治療するため、および神経突起生成ならびに神経形成を促進するために、被験体に投与することが簡便にはできない。本発明は、神経疾患および自己免疫疾患を治療するため、新規な改善された有効なガングリオシド類を開発する必要性を認識している。
【0017】
本発明は、一般式:
【0018】
【化10】
を有するガングリオシド誘導体の1クラスを提供することにより、当該分野における現在の不足に取り組んでおり、ここで、記号Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されるメンバーを表す。Xは、H、−OR3、−NR3R4、−SR3、および−CHR3R4から選択されるメンバーである。記号R1、R2およびR3は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、−C(=M)R5、−C(=M)−Z−R5、−SO2R5、および−SO3から独立して選択されるメンバーであり、記号MおよびZは、O、NR6またはSから独立して選択されるメンバーを表す。
【0019】
記号Yは、H、−OR7、−SR7、−NR7R8、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。R5、R6、R7およびR8は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。
【0020】
また、本発明は、本発明の化合物を組み込んでいる薬学的組成物ならびに治療法と診断に本発明の化合物を用いる方法を提供する。例えば、代表的な一実施形態において、被験体における神経系の障害を予防または処置する方法が提供される。上記方法は、投与を必要とする被験体に、本発明の化合物の治療的有効量を投与することを含む。神経系の具体的な障害の治療は、本明細書においてより詳細に検討されている。
【0021】
他の実施形態において、本発明は、ガングリオシドのグリコシルサブユニットを付加するために、酵素的触媒法を用いて本発明のガングリオシドを調製する方法を提供する。
【0022】
本発明の他の態様、目的および利点は、以下の詳細な説明から、当業者に明らかになるであろう。
【0023】
(発明の詳細な説明および好ましい実施形態)
(略語)
糖部分の略語は、糖類の置換および非置換類似体双方を指す。したがって、アラビノシル;Fru、フルクトシル;Fuc、フコシル;Gal、ガラクトシル;GalNAc、N−アセチルガラクトシル;Glc、グルコシル;GlcNAc、N−アセチルグルコシル;Man、マンノシル;ManAC、マンノシルアセテート;Xyl、キシロシル;およびSiaならびにNeuAc、シアリル(N−アセチルノイラミニルおよびその誘導体)である。上記略語は、未修飾糖部分およびその置換類似体または他の類似体の双方を含むことが意図されている。
【0024】
(定義)
他に定義されない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する通常の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を一般に有する。一般に、本明細書に用いられる命名法ならびに分子生物学、有機化学、および核酸化学ならびに下記のハイブリダイゼーションにおける実験操作は、周知のものであり、当該分野において一般的に使用されている。核酸およびペプチドの合成に関しては、標準的な方法が用いられる。一般に酵素反応および精製工程は、製造元の仕様書に従って実施される。方法と操作は、一般に当該分野における従来の方法および本文書全体を通して提供されている種々の一般的文献(一般には、参照として本明細書に組み込まれているSambrookら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第2版(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在、を参照)に従って実施される。本明細書に用いられる命名法ならびに分析化学における実験操作および下記の有機合成は当該分野に公知であり使用されているものである。化学的合成および化学的分析のためには標準的方法またはその改良法が用いられる。
【0025】
「スフィンゴ糖脂質類似体」および「スフィンゴ糖脂質」は、本発明の化合物を称するために本明細書において用いられる。上記用語は、糖部分、塩基(例えば、スフィンゴ様骨格)または脂肪酸由来炭化水素が、天然スフィンゴ糖脂質類に見られる構造以外の構造であるスフィンゴ糖脂質構造を言うために用いられる。
【0026】
「糖」および「糖の」は、少なくとも1つの環式構造に存在する置換もしくは非置換のヘテロアルキル基を含む部分を言う。この定義による部分は、一般に少なくとも1つの還元性末端を有する。
【0027】
「ペプチド」は、その中のモノマーがアミノ酸であり、アミド結合を介して、一緒に結合しているポリマーをいい、あるいはポリペプチドとも称される。アミノ酸がα−アミノ酸である場合は、L−光学異性体かD−光学異性体のいずれかを用いることができる。さらに、非天然アミノ酸、例えばβ−アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンもまた含まれる。本発明には、遺伝子にコードされていないアミノ酸もまた使用できる。さらに、反応基を含むように修飾されたアミノ酸もまた、本発明に使用できる。本発明に用いられるアミノ酸は全て、D−異性体か、またはL−異性体であり得る。一般に、L−異性体が好ましい。さらに、他のペプチド模倣物もまた、本発明に有用である。一般的レビューに関しては、Spatola,A.F.著、CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS,PEPTIDES ANDPROTEINS、B.Weinstein編集、Marcel Dekker、ニューヨーク所在、p.267(1983)を参照されたい。
【0028】
用語の「アミノ酸」は、天然アミノ酸および合成アミノ酸ならびに天然アミノ酸と同様な様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を言う。天然アミノ酸は、遺伝子コードによりコードされたアミノ酸ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメートおよびO−ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち、水素に結合しているα炭素、カルボキシル基、アミノ基およびR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを有する化合物を言う。このような類似体は、修飾R基(例えば、ノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持している。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様な様式で機能する化学的化合物を言う。
【0029】
本明細書に用いられる「核酸」は、DNA、RNA、一本鎖、二本鎖、またはより高度に集合したハイブリダイゼーションモチーフおよびそれらの任意の化学的修飾体を意味する。修飾体としては、限定はしないが、核酸リガンド塩基に、または核酸リガンド全体に追加の電荷、極性、水素結合、静電的相互作用および可動性を組み込む化学基を提供するものが挙げられる。このような修飾体としては、限定はしないが、ペプチド核酸、ホスホジエステル基修飾体(例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート)、2’位糖修飾体、5位ピリミジン修飾体、8位プリン修飾体、環外アミンにおける修飾体、4−チオウリジンの置換体、5−ブロモまたは5−ヨード−ウラシルの置換体;骨格修飾体、メチル化体、イソ塩基類、イソシチジンおよびイソグアニジンなどの異常塩基対の組み合わせが挙げられる。修飾体としてはまた、PL、蛍光体または他の部分とのキャッピングなどの3’および5’修飾体も挙げられる。
【0030】
本明細書に用いられる「反応性官能基」とは、限定はしないが、オレフィン類、アセチレン類、アルコール類、フェノール類、エーテル類、オキシド類、ハライド類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、エステル類、アミド類、シアネート類、イソシアネート類、チオシアネート類、イソチオシアネート類、アミン類、ヒドラジン類、ヒドラゾン類、ヒドラジド類、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル類、メルカプタン類、スルフィド類、ジスルフィド類、スルホキシド類、スルホン類、スルホン酸類、スルフィン酸類、アセタール類、ケタール類、酸無水物類、サルフェート類、スルフェン酸類、イソニトリル類、アミジン類、イミド類、イミデート類、ニトロン類、ヒドロキシアミン類、オキシム類、ヒドロキサム酸類、チオヒドロキサム酸類、アレン類、オルトエステル類、亜硫酸塩類、エナミン類、イナミン類、尿素類、プソイド尿素類、セミカルバジド類、カルボジイミド類、カルバメート類、イミン類、アジド類、アゾ化合物、アゾキシ化合物およびニトロソ化合物などの基を言う。また、反応性官能基としては、生物共役体を調製するために用いられるもの、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、アレイミド類なども挙げられる。これらの反応性官能基の各々を調製する方法は当該分野に周知であり、特定の目的のためのそれらの適用または修飾は、当業者の能力の範囲内にある(例えば、SandlerおよびKaro編集、ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS、Academic Press、サンディエゴ所在、1989年を参照)。
【0031】
グリコシルトランスフェラーゼに対する「受容体部分」は、グリコシルトランスフェラーゼに対する基質である糖基の受容体として働く糖構造である。この受容体部分を対応するグリコシルトランスフェラーゼ、糖供与部分および他の必要な反応混合物成分と接触させ、この反応混合物を十分な時間温置すると、グリコシルトランスフェラーゼは、糖残基を糖供与体から受容体部分へと移す。上記受容体部分は、ある特定のグリコシルトランスフェラーゼの種々のタイプに対して様々であることが多い。例えば、哺乳動物ガラクトシド2−L−ガラクトシルトランスフェラーゼに対する受容体部分は、糖の非還元末端にGalβ1,4−Glc−Rを含む。したがって、用語の「受容体部分」は、特定の適用に対する対象の特定グリコシルトランスフェラーゼの文脈で考えられる。他のグリコシルトランスフェラーゼに対する受容体部分は本明細書に記載されている。
【0032】
用語の「シアリン酸」は、9個の炭素のカルボキシル化糖のファミリーメンバーを言う。リンカー類、反応性官能基、検出可能な標識、脂質ラフトおよび標的部分に包含される成分により誘導体化されているシアリン酸類似体もまた含まれる、シアリン酸ファミリーの最も一般的なメンバーは、N−アセチル−ノイラミン酸(2−ケト−5−アセタミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノヌロピラノス−1−オン酸(しばしば、Neu5Ac、NeuAc、またはNANAと略記される)である。このファミリーの第2のメンバーは、N−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5GcまたはNeuGc)であり、ここでNeuAcのN−アセチル基はヒドロキシル化されている。シアリン酸ファミリーの第3のメンバーは、2−ケト−3−デオキシ−ノヌロソン酸(KDN)である(Nadonoら、(1986)J.Biol.Chem.261:p.11550−11557;Kanamoriら、J.Biol.Chem.265:p.21811−21819(1990))。また、9−O−C1〜C6アシル−Neu5Ac様9−O−ラクチル−Neu5Acまたは9−O−アセチル−Neu5Ac、9−デオキシ−9−フルオロ−Neu5Acおよび9−アジド−9−デオキシ−Neu5Acなどの9−置換シアリン酸も含まれる。シアリン酸ファミリーのレビューには、例えば、Verki、Glycobiology2:p.25−40(1992);Sialic Acids:Chemistry,Metabolism and Function、R.Schauer編集(Springer−Verlag、ニューヨーク所在(1992)を参照されたい。シアリル化操作におけるシアリン酸化合物の合成および使用法は、1992年10月に公表された国際出願公開第92/16640号に開示されている。
【0033】
ある細胞に関連して、用語の「組換え」が用いられる場合は、その細胞が、異種核酸を複製するか、または異種核酸にコードされたペプチドまたは蛋白質を発現することを示す。組換え細胞は、その細胞の天然の(非組換え)形態内には見られない遺伝子を含有することができる。また、組換え細胞は、人工的手段によって、遺伝子が修飾され、細胞内に再導入される細胞の天然形態において見られる遺伝子を含有することもできる。また、上記用語は、細胞から核酸を取り出すことなく修飾された、細胞にとって内因性の核酸を含有する細胞も含み、このような修飾としては、遺伝子置換、部位特異的変換、および関連した方法によって得られるものを含む。「組換えポリペプチド」は、組換え細胞によって産生されたポリペプチドである。本発明は、組換え蛋白質を含む細胞によって発現される酵素および/または基質を任意に利用する。
【0034】
用語の「単離された」とは、その物質を製造するために使用される成分から実質的にまたは本質的に遊離している物質を言う。本発明の方法によって製造される組成物に関して、用語の「単離された」とは、その組成物を調製するために使用される混合物中の物質に通常伴っている成分から実質的にまたは本質的に遊離している物質を言う。「単離された」および「純粋な」は、交換可能に用いられる。典型的には、本発明の方法によって製造された単離化合物は、好ましくは、ある範囲で示される純度のレベルを有する。スフィンゴ糖脂質化合物に関して純度範囲の下端は、約60%、約70%、または約80%であり、純度範囲の上端は、約70%、約08%、約90%またはさらに約90%以上である。
【0035】
本発明の方法によって製造された化合物が、約90%以上の純度である場合、それらの純度はまた、ある範囲として示されることが好ましい。純度範囲の下端は、約90%、約92%、約94%、約96%または約98%である。純度範囲の上端は、約92%、約94%、約96%、約98%または約100%である。
【0036】
純度は、当該分野で認められている任意の分析法(例えば、銀染色ゲル上のバンド強度、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLCまたは同様な手段)により決定される。
【0037】
本明細書に用いられる「本質的に集団の各メンバー」とは、前駆体基質に加えられる選択されたパーセンテージのグリコシル供与体が、基質の集団の個々のメンバー上の同一の受容体部位に付加される、本発明の方法により製造された化合物集団の特性を言う。「本質的に集団の各メンバー」は、グリコシル供与体に共役している基質上の部位の「均質性」をいい、また、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%均質である本発明の化合物を言う。
【0038】
「均質性」とは、グリコシル供与体が共役している受容体部分の集団にわたる構造的一致を言う。したがって、グリコシル化反応の最後に、その反応時に移された各グリコシル供与体が同じ構造を有する受容体部位と共役しているならば、その組成物は、約100%均質であると言われる。均質性は、典型的にはある範囲として表される。ペプチド共役体に関する均質性の範囲の下端は、約60%、約70%、または約80%であり、純度範囲の上端は、約70%、約08%、約90%または約90%以上である。
【0039】
本発明の方法により調製された組成物が、約90%以上か、またはそれに等しい場合、それらの均質性はまた、ある範囲として表されることが好ましい。均質性の範囲の下端は、約90%、約92%、約94%、約96%または約98%である。純度範囲の上端は、約92%、約94%、約96%、約98%または約100%の均質性である。スフィンゴ糖脂質類の純度は、典型的には当業者に公知の1つ以上の方法、例えば、液体クロマトグラフィ−質量分析(LC−MS)、フライト分光法のマトリクス補助レーザー脱離質量時間(MALDITOF)、キャピラリ電気泳動などにより決定される。
【0040】
オリゴ糖は、還元性末端における糖が実際に還元性の糖であっても、またなくても、還元性末端と非還元性末端とを有していると考えられる。容認された命名法により、オリゴ糖は、本明細書において、左側に非還元性末端を有し、右側に還元性末端を有して描かれている。
【0041】
本明細書において記載されるオリゴ糖は、非還元糖に対する名称または略号(すなわちGal)に続いて、グリコシド結合の立体配置(αまたはβ)、環結合、(1または2)、結合に関与する還元糖の環の位置(2、3、4、6または8)、次いで還元糖の名称または略号(すなわちGlcNAc)によって一般に記載される。各糖は、ピラノースであることが好ましい。標準的な糖鎖生物学命名法のレビューに関しては、Essentials of Glycobiology Varkiら編集、CSHL Press(1999)を参照されたい。
【0042】
本明細書に用いられる「結合メンバー」とは、少なくとも1個のヘテロ原子を含む共有化学結合を言う。代表的な結合メンバーとしては、−C(O)NH−、−C(O)O−、−NH−、−S−、−O−などが挙げられる。
【0043】
記号
【0044】
【化11】
は、結合として使用されても、結合に垂直であることを示すとしても、示された部分が分子、固体支持体などの残りの部分に結合している点を示す。
【0045】
本発明の一定の化合物は、非溶媒和形態ならびに水和形態などの溶媒和形態において存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と等価であり、本発明の範囲内に含まれる。本発明の一定の化合物は、多結晶または非結晶形態において存在し得る。一般に、全ての物理的形態が、本発明によって考慮された使用にとって等価であり、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0046】
本発明の一定の化合物は、非対称炭素原子(光学的中心)または二重結合、すなわちラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体を有し、個々の異性体が本発明の範囲内に含まれる。
【0047】
本発明の化合物は、単一の異性体(例えば、鏡像異性体、シス−トランス異性体、位置異性体、ジアステレオマー)として、または異性体の混合物として調製できる。好ましい実施形態において、上記化合物は、実質的に単一の異性体として調製される。実質的に純粋異性体化合物を調製する方法は、当該分野に公知である。例えば、鏡像異性体の濃い化合物および純粋な鏡像異性体化合物は、光学中心における立体化学を変化させずにおくか、またはその完全な反転体を生じさせる反応と組み合わせて鏡像異性体として純粋な合成中間体を用いて調製することができる。あるいは、合成経路に伴う最終産物または中間体を単一の立体異性体へと分析することができる。ある特定の立体中心を反転させるか、または変化させずにおくための方法、および立体異性体の混合物を分析するための方法は当該分野に周知であり、特定の状況に対する適切な方法を選択することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。一般的には、Furnissら(編集者)、VOGEL’S ENCYCLOPEDIA OF PRACTICAL ORGANIC CHEMISTRY第5版、Longman Scientific and Technical社、エセックス、1991年、p.809−816;およびHeller、Avv.Chem.Res.23:p.128(1990)を参照されたい。
【0048】
また、本発明の化合物は、そのような化合物を構成している1個以上の原子において、天然にはない比率の同位体を含有し得る。例えば、上記化合物は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素−125(125I)または炭素−14(14C)などの放射性同位体によって放射能標識できる。本発明の化合物の同位体の変型体は全て、放射性であってもなくても、本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0049】
置換基が、それらの慣例的な化学式により、左から右へと明記されている場合、それらは、構造を右から左へと記することから生じる化学的に同一の置換基を等しく含む。例えば、−CH2O−は、−OCH2−とも表されることを意図している。
【0050】
用語の「アルキル」は、それ自体で、または他の置換基の一部として、他に明記されない限り、完全に飽和された、またはモノもしくはポリ不飽和であり得、指定された炭素原子数を有する(すなわち、C1〜C10は1個から10個の炭素を意味する)ジおよび多価基を含み得る直鎖または分枝鎖または環式炭化水素基を意味する。飽和炭化水素基の例としては、限定はしないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、s−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの同族体ならびにそれらの異性体が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するアルキル基である。不飽和アルキル基の例としては、限定はしないが、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−および3−プロピニル、3−ブチニル、およびより高級な同族体ならびに異性体が挙げられる。用語の「アルキル」は、他に特記しない限り、「ヘテロアルキル」および「アルキレン」など、下記により詳細に定義したアルキルの誘導体を含むことを意味する。炭化水素基に限定されたアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。
【0051】
用語の「アルキレン」は、それ自体で、または他の置換基の一部として、限定はしないが、−CH2CH2CH2CH2−によって代表されるようなアルカンから誘導された二価の基を意味し、さらに「ヘテロアルカン」としての下記の基をさらに含む。典型的には、アルキル(またはアルキレン)基は、約1個から約40個の炭素原子を有し、本発明においては、30個以下の炭素原子を有する基が好ましい。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、一般に8個以下の炭素原子を有する、より短鎖のアルキル基またはアルキレン基である。
【0052】
用語の「アルコキシ」、「アルキルアミノ」および「アルキルチオ(またはチオアルコキシ)」は、慣例的意味において用いられ、それぞれ酸素原子、アミノ基、またはイオウ原子によって分子の残りの部分に結合しているアルキル基を言う。
【0053】
用語の「ヘテロアルキル」は、それ自体で、または他の用語との組み合わせにおいて、他に明記しない限り、指定された炭素原子数およびO、N、SiおよびSよりなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子からなり、窒素原子およびイオウ原子が任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子が任意に四級化されていてもよい安定な直鎖または分枝鎖または環式炭化水素基またはそれらの組み合わせを意味する。ヘテロ原子(単数または複数)、O、N、SiおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に置かれていてもよく、また、アルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に置かれていてもよい。例としては、限定はしないが、−CH2−CH2−O−CH3、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−CH2−N(CH3)−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2−CH2−S(O)−CH3、−CH2−CH2−S(O)2−CH3、−CH=CH−O−CH3、−Si(CH3)3、−CH2−CH=N−O−CH3、および−CH=CH−N(CH3)−CH3が挙げられる。例えば、−CH2−NH−OCH3および−CH2−O−Si(CH3)3など、2個のヘテロ原子まで連続していてもよい。同様に用語の「ヘテロアルキレン」は、それ自体で、または他の置換基の一部として、限定はしないが、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−および−CH2−S−CH2−CH2−NH−CH2−によって代表されるようなヘテロアルキルから誘導された二価の基を意味する。ヘテロアルキレン基に関してヘテロ原子は、鎖端の一方または双方を占めることができる(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さらにアルキレンおよびヘテロアルキレン結合基に関して、結合基の式が記されている方向によって結合基の方向性が意味されることはない。例えば、式−C(O)2R’−は、−C(O)2R’−と−R’C(O)2−の双方を表す。
【0054】
用語の「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」は、それら自体で、または他の用語との組み合わせにおいて、他に明記しない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアルキル」の環式型を表す。また、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、ヘテロ環が分子の残りの部分に結合している位置を占めることができる。シクロアルキルの例としては、限定はしないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定はしないが、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。
【0055】
用語の「ハロ」または「ハロゲン」は、それら自体で、または他の置換基の一部として、他に明記されない限り、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。また、「ハロアルキル」などの用語は、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味する。例えば、用語の「ハロ(C1〜C4)アルキル」は、限定はしないが、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、4−クロロブチル、3−ブロモプロピルなどを含むことを意味する。
【0056】
用語の「アリール」は、他に明記しない限り、共に縮合しているか、または共有結合している単環または多環(好ましくは、1つから3つの環)であり得るポリ不飽和、芳香族炭化水素置換基を意味する。用語の「ヘテロアリール」は、N、O、およびSから選択される1個から4個のヘテロ原子を含有し、窒素原子およびイオウ原子が任意に酸化されており、窒素原子(単数または複数)が任意に四級化されているアリール基(または環)を言う。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して、分子の残りの部分に結合し得る。アリール基およびヘテロアリール基の非限定例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル、および6−キノリルが挙げられる。上記のアリールおよびヘテロアリール環系の各々に対する置換基は、下記の許容できる置換基の群から選択される。
【0057】
簡略化のため、用語の「アリール」は、他の用語と組み合わせて用いられる場合(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記に定義したアリール環とヘテロアリール環の双方を含む。したがって、用語の「アリールアルキル」は、炭素原子(例えばメチレン基)が、例えば、酸素原子によって置換されたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2−ピリジルオキシメチル、3−(1−ナフチルオキシ)プロピルなど)などのアルキル基にアリール基が結合している基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味する。
【0058】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」および「ヘテロアリール」)の各々は、示された基の置換体および非置換体の双方を含むことを意味する。各タイプの基の好ましい置換基は下記に提供されている。
【0059】
アルキル基およびヘテロアルキル基(しばしば、アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、およびヘテロシクロアルケニルと称される基など)に対する置換基は、限定はしないが、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’−C(O)2R’、−NR−C(R’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2から選択される1つ以上の種々の基であり得、その数は、ゼロから(2m’+1)の範囲にあり、ここで、m’は、このような基における炭素原子の合計数である。R’、R’’、R’’’およびR’’’’は各々、好ましくは独立して、水素、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、例えば、1〜3個のハロゲンによって置換されたアリール、置換もしくは非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基またはアリールアルキル基を言う。本発明の化合物が、例えば、1つ以上のR基を含む場合、R基の各々は、独立して選択され、これらの基の1つ以上が存在する場合、各々R’基、R’’基、R’’’基およびR’’’’基である。R’とR’’が、同一の窒素原子に結合している場合、それらは、その窒素原子と組合わされて、5員環、6員環または7員環を形成することができる。例えば、−NR’R’’は、限定はしないが、1−ピロジニルおよび4−モルホリニルを含むことを意味する。置換基についての上記の検討から、用語の「アルキル」は、ハロアルキル(例えば、−CF3および−CH2CF3)およびアシル(例えば、−C(O)CH3、−C(O)CF3、−C(O)CH2OCH3など)などの水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基を含むことを意味することを当業者は理解するであろう。
【0060】
アルキル基に関して、記載した置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール基に関する置換基は種々あり、例えば、ハロゲン、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−CO2R’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’−C(O)2R’、−NR−C(R’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)2R’、−S(O)2NR’R’’、−NRSO2R’、−CNおよび−NO2、−R’、−N3、−CH(Ph)2、フルオロ(C1〜C4)アルコキシ、およびフルオロ(C1〜C4)アルキルから選択され、その数は、ゼロから芳香族環上の開放原子価の合計数の範囲である。本発明の化合物が、例えば、1つ以上のR基を含む場合、R基の各々は、独立して選択され、これらの基の1つ以上が存在する場合、各々R’基、R’’基、R’’’基およびR’’’’基である。
【0061】
アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、式−T−C(O)−(CRR’)q−U−の置換基によって任意に置換でき、ここで、TおよびUは、独立して−NR−、−O−、−CRR’−または単結合であり、qは、0から40の整数である。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、式−A−(CH2)r−U−の置換基によって任意に置換でき、ここで、AおよびBは、独立して、−CRR’、−O−、−NR−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−または単結合であり、rは、0から40の整数である。このように形成された新たな環の単結合のうちの1つは、二重結合によって、任意に置換され得る。あるいは、アリール環またはヘテロアリール環の隣接原子上の置換基のうちの2つは、式−(CRR)s−X−(CR’’R’’’)d−の置換基によって任意に置換でき、ここで、sおよびdは、独立して0から40の整数であり、Xは、−O−、−NR’−、−S−、−S(O)−、−S(O)2−、−S(O)2NR’−である。置換基R、R’、R’’およびR’’’は、好ましくは独立して水素または置換もしくは非置換(C1〜C40)アルキルから選択される。
【0062】
本明細書に用いられる用語の「ヘテロ原子」は、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)およびケイ素(Si)を含むことを意味する。
【0063】
本明細書に用いられる用語の「グリコシルトランスフェラーゼ」とは、活性化供与体分子から、各々が本明細書に定義されている特定の受容体分子への糖部分の転移を触媒してグリコシル結合を形成する酵素を言う。グリコシルトランスフェラーゼの例としては、限定はしないが、ガラクトシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ;フコシルトランスフェラーゼおよびGalNAcトランスフェラーゼが挙げられる。さらにグリコシルトランスフェラーゼは、反応基質と反応産物の立体化学によって、保持、すなわち、芳香族立体配置の保持に至るもの(例えば、UDP−グルコース−>α−グルコシド)または反転、すなわち、芳香族立体配置の反転に至るもの(例えば、UDP−グルコース−>β−グルコシド)として分類できる(Sinnott,M.L.(1990)Chem.Rev.90、p.1171−1202)。グリコシルトランスフェラーゼファミリーの分類群化は、Coutinho,P.M.& Henrissat,B.(1999)Carbohydrate−Active Enzymeserverにより説明されており、<<afmb.cnrs.fr/〜pedro/CAZY/db.html>>においてインターネット上で見ることができる。
【0064】
本明細書に用いられる用語の「トランスシアリダーゼ」とは、α−2,3グリコシド結合を介して、ガラクトースへのシアリン酸の付加を触媒する酵素を言う。トランスシアリダーゼ類は、多くのトリパノソーマ種および幾つかの他の寄生虫において見られる。寄生虫生体のトランスシアリダーゼ類は、シアリダーゼの加水分解活性を保持しているが、効率ははるかに低い。その結果、トランスシアリダーゼ類は、CMPシアリン酸の不在下、宿主のシアリル−グリコ共役体の末端シアリン酸を寄生虫の表面糖蛋白へ可逆的に転移することを触媒する。
【0065】
シャガス病の原因となるトリパノソーマクルースは、表面トランスシアリダーゼを有する。このトランスシアリダーゼは、末端β−ガラクトシル残基を含有する受容体へのα−2,3−結合シアリン酸の転移を優先的に触媒する(Ribeiraoら、Glycobiol.7:p.1237−1246;Takahashiら、1995年、Anal.Biochem.、230:p.333−342;Scudderら、1993年、J.Biol.Chem.、268:p.9886−9891;Vandekerckhoveら、1992年、Glycobiol.、2:p.541−548)。T.クルーストランスシアリダーゼ(TcTs)は、β−結合ガラクトース残基を末端に有し、もっぱら、α2−3シアロシド結合を合成する広範囲の糖、糖脂質および糖蛋白質の受容体に対して活性を有する(Scudderら、上記)。また、上記トランスシアリダーゼは、低率で、p−ニトロフェニルα−N−アセチルノイラミン酸などの合成α−シアリル化合物のシアリン酸も転移させる(NeuAc2−3Galβ1−4(Fucα1−3)Glcは、供与体−基質ではない)。N−アセチル−D−ノイラミン酸の修飾2−[4−メチルウンベリフェロン]−α−ケトシド(4MU−NANA)およびそれらの幾つかの誘導体もまた、TcTsに対する供与体として働くことができる(LeeおよびLee、1994年、Anal.Biochem、216:p.358−364)。3’−シアリル−ラクト−N−ビオースIの酵素的合成は、N−アセチルノイラミニル部分の受容体としてラクト−N−ビオースIおよび供与体として2’−(4−メチルウンベリフェニル)−α−D−N−アセリノイラミン酸からTcTsにより触媒された(Vetereら、2000年、Eur.J.Biochem.267:p.942−949)。α2,3−シアリル化供与体を合成するためのトランスシアリダーゼの使用に関するさらなる情報は、欧州特許出願第0 557 580 A2号;米国特許第5,409,817号に見ることができる。
【0066】
ヒルMacrobdella decoraの分子内トランスシアリダーゼは、シアリル−グリコ共役体における末端Neu5Ac(N−アセチルノイラミン酸)α2の開裂→3Gal結合に対して厳密な特異性を示し、分子内トランス−シアリル化反応を触媒する(Luoら、1999年、J.Mol.Biol.、285:p.323−332)。トランスシアリダーゼ類は、シアリン酸を主にガラクトース受容体上へ付加するが、シアリン酸を幾つかの他の糖に転移する。しかし、GalNAc上へのシアリン酸の転移には、シアリルトランスフェラーゼが必要である。トランスシアリダーゼ類の使用についてのさらなる情報は、PCT出願国際公開第93/18787号;Vetereら、1997年、Eur.J.Biochem.247:p.1083−1090に見ることができる。
【0067】
本明細書に用いられる用語の「シアリルトランスフェラーゼ」は、付加された糖の立体配置の反転により、グリコシド合成を触媒する酵素類をいい、これらは、単糖供与体として、糖ヌクレオチドを必要とする。シアリルトランスフェラーゼの一例は、カンピロバクターの酵素(CST−IおよびCST−II)である。例えば、米国特許第6,503,744号、米国特許第6,096,529号、および米国特許第6,210,933号ならびに米国特許出願公開第2002/2.042,369号を参照されたい。
【0068】
本発明の他の目的、態様および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなろう。
【0069】
(本発明の詳細な説明)
(序論)
多くの化合物、例えば、糖脂質の生物学的活性は、分子の特定の糖形態、セラミド様またはスフィンゴシン様骨格の有無に、また、セラミド誘導体においては、脂肪酸アミド構成要素の構造に依存する。天然に見られる構造以外の構造を有する糖脂質組成物の利点としては、例えば、クリアランス速度の低下による治療上の半減期の増加、生物利用能の増大および生体活性の変化が挙げられる。糖脂質の構造変化はまた、変化した糖脂質に対する特異的な特定の組織または細胞表面受容体に対してその糖脂質を標的化するために使用することもできる。
【0070】
本発明は、新規な構造を有する糖脂質を提供する。本発明の化合物は、セラミド類、スフィンゴシン類およびそれらの類似体を参照として、本明細書に例示される。検討の的となるものは、説明を明晰にするためのものであり、本発明が、本明細書に明白に挙げられたもの以外の糖脂質に適用できることを当業者は認識されるであろう。
【0071】
(化合物)
本発明の方法は、グリコシルトランスフェラーゼ、トランス−シアリダーゼなどに対する好適な受容体部分を含む任意の基質を用いて実施することができる。代表的な基質としては、限定はしないが、スフィンゴシンおよびその類似体、セラミドおよびその類似体、ペプチド類、スフィンゴ糖脂質類および他の生体構造(例えば、糖脂質、細胞全体など)が挙げられる。
【0072】
当該の好ましい実施形態において、本発明は、式I:
【0073】
【化12】
によるスフィンゴ糖脂質誘導体の1クラスを提供することによって、当該分野における不足に取り組んでおり、ここで、記号Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されるメンバーを表す。Xは、H、−OR3、−NR3R4、−SR3、および−CHR3R4から選択されるメンバーである。記号R1、R2およびR3は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、−C(=M)R5、−C(=M)−Z−R5、−SO2R5、および−SO3から独立して選択されるメンバーであり、記号MおよびZは、O、NR6またはSから独立して選択されるメンバーを表す。
【0074】
記号Yは、H、−OR7、−SR7、−NR7R8、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。R5、R6、R7およびR8は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。
【0075】
XがOR3であり、R3が、−C(O)R5である本発明の化合物において、Yは一般にOH以外の基である。
【0076】
X、YまたはR1はいずれも、単独で、または組み合わせて、標的部分、検出可能標識または脂質ラフトに組み込まれることが意図されている種である部分を含むことができる。
【0077】
本発明の代表的化合物として、XがNHR4である上記の化合物が挙げられる。記号R4は、Hまたは−C(O)R5を表す。記号Yは、OHを表し、Zは、0である。R5は、置換もしくは非置換のアルキルから選択されるメンバー以外のものであることが好ましい。
【0078】
他の代表的実施形態において、本発明は、R1が、式:
【0079】
【化13】
を有する部分を含む、式Iによる化合物を提供し、ここで、R9、R10、R11、R12およびR13は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーである。記号Lは、O、S、またはNR16を表す。R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーである。記号R16、R17およびR18は、独立してH、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールを表す。さらに、R9とR10;R9とR11;R9とR12;R9とR13;R10とR11;R10とR12;R10とR13;R11とR12;R11とR13;およびR12とR13から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に結合して環を形成する。この環は、5員から7員を有する置換もしくは非置換のシクロアルキル環系、置換もしくは非置換のアリール環系、置換もしくは非置換のヘテロアリール環系および置換もしくは非置換のヘテロアルキル環系から選択されるメンバーであることが好ましい。
【0080】
さらなる代表的な実施形態において、本発明は、R1が、式:
【0081】
【化14】
を有する部分を含む、式Iによる化合物を提供し、ここで、記号R11、R12およびR13は独立して、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14を表す。L、R14、R15、R16、R17およびR18は、実質的に上記のとおりである。
【0082】
他の代表的な実施形態において、本発明は、R1が、式:
【0083】
【化15】
を有する部分を含む、式(I)による化合物を提供し、ここで、記号R9、R10、R11、R13、R19、R20、R21は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーである。R13およびR15により置換された炭素と繋がっている結合の立体配置は、シスまたはトランスであり得る。
【0084】
記号Lは、O、S、またはNR16を表す。R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーである。記号R16、R17およびR18は、独立してH、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、または置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルを表す。
【0085】
さらに、R9とR10;R9とR11;R9とR12;R9とR13;R10とR11;R10とR12;R10とR13;R11とR12;R11とR13;およびR12とR13から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、任意に結合して環を形成する。この環は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールまたは非置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーである。
【0086】
さらなる代表的な実施形態において、R13は、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーである。好ましいヘテロアリール基は、少なくとも1個の環内窒素原子を含むものである。代表的な窒素含有ヘテロアリール基はピリジル部分である。
【0087】
他の代表的な実施形態において、上記に検討した化合物のクラスとしては、R13が、−C(O)NR13aR13bである種が挙げられ、ここで、R13aおよびR13は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである。
【0088】
上記の化合物のクラスとしてはまた、R11がNR11aR11bである種が挙げられる。記号R11aおよびR11bは、独立してH、置換もしくは非置換のアルキルもしくは置換もしくは非置換のヘテロアルキルを表す。
【0089】
本発明のスフィンゴ糖脂質の糖部分は、所望の生物活性を示す任意の構造であり得る。一般に、糖部分は、少なくとも1つのGal、Glc、GlcNACまたはSiaを含む。糖は任意にフコシル化される。一定の好ましい糖部分において、SiaはGal残基と結合している。他の好ましい糖部分において、Galは、Glcに結合している。さらに好ましい糖部分において、GlcNAcはGalに結合している。当該の好ましい糖部分モチーフは、Galに結合しているペヌリチメート(penulitimate)GalNAcに結合している末端Galを有する骨格を含み、これが次にスフィンゴ糖脂質骨格に結合しているGlcに結合している。上記糖部分は、アセチル化または脱アセチル化された1つ以上の基を有し得る。
【0090】
代表的な糖部分としては、以下のものが挙げられる。
【0091】
【化16】
さらなる代表的な実施形態において、シアリン酸置換オリゴ糖は硫酸化される。すなわち、シアリン酸置換オリゴ糖における1つ以上のヒドロキシル基が修飾されて、硫酸エステルを形成する。合成ガングリオシド類の硫酸エステルを調製する方法は、米国特許第5,849,717号に開示されている。
【0092】
本発明の合成スフィンゴ糖脂質の他の例において、シアリン酸残基のカルボン酸基がエステル化される「内部エステル」すなわち、オリゴ糖におけるカルボキシル基とヒドロキシル基との間にラクトンが形成されるものと、「外部エステル」すなわち、アルコールROHにより、カルボキシル基がエステル化されているものが挙げられる。ROHは、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールであり得る。シアリン酸のカルボキシル基エステル化されている合成スフィンゴ糖脂質類を調製する方法は、米国特許第5,264,424号に開示されている。
【0093】
本発明のさらなる合成スフィンゴ糖脂質類としては、HNRまたはカルボン酸基または硫酸基を含有する脂肪族アミノ酸によりアミド化されている(すなわち、カルボン酸部分を誘導体化している)Sia残基が挙げられる。Rは上記のとおりである。官能化シアリン酸カルボキシル部分によって合成スフィンゴ糖脂質類を調製する方法は、米国特許第5,350,841号に開示されている。
【0094】
合成スフィンゴ糖脂質のさらに他の例において、オリゴ糖における1つ以上のヒドロキシル基および/またはシアリン酸残基がアシル化されている、すなわち、−OCORに変換されている。Rは上記のとおりである。アシル化シアリン酸残基によって合成スフィンゴ糖脂質類を調製する方法は、米国特許第5,484,775号および米国特許第5,264,424号に開示されている。
【0095】
スフィンゴシン基のN−アシル基((NC(O)R)は、多種多様なカルボン酸(または対応する活性化誘導体、例えば、活性エステル、酸ハロゲン化物など)から誘導することができる。アシル化は、従来の方法において、例えば、出発物質を、アシル化剤、特に残基が導入される酸の反応性の機能的誘導体によって反応させることにより実施できる。代表的な酸の反応性の機能的誘導体としては、ハロゲン化物、酸無水物、および活性エステルが挙げられる。アシル化は、塩基(例えば、TEA、ピリジンまたはコリジン)存在下で実施できる。アシル化は、任意に、無水条件下、室温で、または加熱して実施される。無機塩基の存在下、水性条件でアシル化を実施するために、ショッテン−バウマン法もまた使用できる。幾つかの場合、反応性の機能的誘導体として、酸類のエステル類を使用することも可能である。アシル化には、ペプチド化学において公知のものなど、例えば、カルボジイミド類またはイソキサゾール塩によって得られる混合酸無水物または誘導体を使用する活性化カルボキシル誘導体を含む方法を用いることも可能である。
【0096】
アシル化の代表的な方法としては、(1)酸アジドとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(2)酸とN,N’−カルボニルジイミダゾールから得られる酸のアシルイミダゾールとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(3)酸とトリフルオロ酢酸との混合無水物と、リソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(4)酸塩化物とリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(5)カルボジイミド(ジシクロヘキシルカルボジイミドなど)および任意に1−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの物質存在下、酸とリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(6)加熱による酸とリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(7)高温における酸のメチルエステルとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;(8)パラ−ニトロフェノールとのエステルなど、酸のフェノールエステルとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応;および(9)酸の塩とヨウ化1−メチル−2−クロロピリジンまたは同様の生成物との間の交換から誘導されたエステルとリソスフィンゴ糖脂質誘導体との反応、が挙げられる。
【0097】
上記酸は、飽和または不飽和、分枝鎖または直鎖の、置換もしくは非置換のアルキル酸、置換もしくは非置換の脂肪酸(例えば、ヒドロキシ脂肪酸)から誘導できる。上記酸は、C1〜C40の酸であることが好ましい。上記アシル基は、pが0〜40である以下の代表的構造を含み得る:−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)pCH3、−CHOH−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)2−CH=CH−(CH2)pCH3、−CH=CH−(CH2)2−C≡C−(CH2)pCH3、−CHOH−(CH2)3−CH=CH−(CH2)pCH3、アリール、アルキルアリール、またはリンカー。一般に、アシル成分の長さは、好ましくは、8〜30個の炭素、より好ましくは、10〜25個、さらにより好ましくは、16〜20個の炭素である。
【0098】
酸の非限定的一覧としては、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸およびそれらのフッ素化または臭素化類似体;2,2−ジクロロプロピオン酸、2,3−ジクロロプロピオン酸、2,2,3−トリクロロプロピオン酸、直鎖状−2,2−ジクロロ酪酸、2,2−ジクロロ吉草酸、2−クロロイソ吉草酸、2,3−ジクロロ吉草酸、ペンタフルオロプロピオン酸、3,3−ジクロロピバル酸、3−クロロ−2,2−ジメチルプロピオン酸、クロロ−ジフルオロ酢酸、2,2−ジクロロカプロン酸、2−モノクロロプロピオン酸、直鎖状−2−モノクロロ酪酸、2−モノクロロ吉草酸、および2−モノクロロカプロン酸ならびにこれらの酸のフッ素化または臭素化類似体;2−クロロパルミチン酸、2−クロロステアリン酸、2−クロロオレイン酸、2−クロロラウリン酸、2−クロロベヘン酸、4−クロロフェノキシ酢酸、2−ヒドロキシプロピオン酸(乳酸)、3−ヒドロキシプロピオン酸、2−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、2,3−ジヒドロキシ酪酸および2,3−ジヒドロキシ吉草酸、ならびにそれらのC1〜C40低級脂肪族エーテル類またはエステル類;メトキシ酢酸、2−ヒドロキシステアリン酸、2−(4−ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、2−ヒドロキシイソ酪酸および4−フルオロフェノキシ酢酸;ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸、最大4個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコールとのそれらのケタール類;メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプト酪酸および2−メルカプト吉草酸、ならびにそれらのC1〜C40低級脂肪族チオエーテル類またはチオエステル類;2−メルカプトラウリン酸、オレイン酸およびパルミチン酸;ならびにそれらのC1〜C4低級脂肪族チオエーテル類またはチオエステル類;マロン酸、グルタール酸、モノメチルグルタール酸、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタール酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマール酸、アゼライン酸、およびそれらのC1〜C40脂肪族エステル類;スルホ酢酸、2−スルホプロピオン酸、2−スルホ酪酸、2−スルホ吉草酸、およびそれらのC1〜C40脂肪族硫酸エステル類。また、2−スルホラウリン酸、2−スルホ−オレイン酸、2−スルホパルミチン酸、2−スルホステアリン酸および;それらのC1〜C40低級脂肪族硫酸エステル類;スルファミド類またはアミンが1つまたは2つのC1〜C40低級アルキル基またはC1〜C40低級アルキレン基により任意に置換されているスルファミド類;C1〜C4アルキル基、アシルスルホキシド基またはC1〜C40アルキルスルホン基により2位に置換されている酢酸、プロピオン酸、酪酸および吉草酸;シアン酢酸、2−シアンプロピオン酸、2−シアン酪酸、2−シアン吉草酸、アミノ酢酸、2−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、3−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、2−アミノ吉草酸、4−アミノ吉草酸、および1つまたは2つのC1〜C40アルキル基、C1〜C40アルキレン基またはC1〜C4アシル基により任意に置換されているアミンとのそれらの誘導体;ジ−メチルグリシン、3−ジメチルアミノプロピオン酸、カミチン、およびシステイン酸、が挙げられる。
【0099】
遊離のヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、または第一級または第二級アミノ基を含有する酸から誘導されたアシル基の特定例においては、アシル化反応時にこのような基を保護することが、一般に好ましい。このような基を保護する方法は、当該分野で利用可能である。このような保護基は、反応の最後に除去することが必要である。代表的な保護基としては、スルホンアミド基、アロック基、フタロイル基およびベンジルオキシカルボニル基が挙げられ、これらは、アミノ基の保護促進に役立つ。したがって、例えば、γ−アミノ酪酸を含有する誘導体の調製においては、アミノ基がフタロイル基に結合しているこの酸の誘導体を先ず調製し、リソスフィンゴ糖脂質によるアシル化後、ヒドラジン分解によって、フタロイル基を除去する。ベンジルオキシカルボニル基は、水素化分解によって除去できる。この残基は、ヒドロキシ基の保護にも利用可能である。カルボキシ基は、エステル化、例えば、ペプチド化学において用いられるアルコール類により保護することができる。
【0100】
また、本発明は、本発明による遊離カルボキシ官能基を有するスフィンゴ糖脂質の金属塩または有機塩基塩を調製する方法も提供し、これらもまた、本発明の一部を構成している。二塩基酸によるエステル類または過アシル化アミド類などの遊離酸官能基を有する、本発明の他の誘導体の金属塩または有機塩基塩を調製することも可能である。例えば、アミノアルコール類によるエステル類などの遊離アミノ官能基を含有するスフィンゴ糖脂質誘導体の酸付加塩もまた、本発明の一部を構成している。金属塩または有機塩基塩の中で、特に挙げるべきものは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩、またはアルミニウム塩、ならびに有機塩基塩、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ピペリジン、モルホリン、エフェドリン、フルフリルアミン、コリン、エチレンジアミンおよびアミノエタノールなどの脂肪族または芳香族またはヘテロ環式の第一級、第二級または第三級アミン類などの治療法に使用できるものである。本発明によるスフィンゴ糖脂質誘導体を提供できる酸の中でも、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸などの水素酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸およびマレイン酸などの炭素が最大7個の低級脂肪酸を特に挙げる必要がある。ピクリン酸などの治療上有用ではない酸または塩基を、本発明のスフィンゴ糖脂質誘導体の精製に用いることができ、やはり本発明の一部を構成している。
【0101】
本発明の代表的な化合物は、図16に記載されている。
【0102】
また、本発明は、上記の各化合物の薬学的に受容可能な全ての異性体、塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグを含む。また、このような化合物は、種々の異性体および互変異性体において存在でき、このような形態は全て、このような異性体および互変異性体の薬学的に受容可能な塩、水和物、溶媒和物と共に、本発明に含まれることを意味している。
【0103】
(調製法)
本発明により、本発明の合成スフィンゴ糖脂質化合物は、他に指示されない限り、当該分野に公知の化学および酵素化学における従来の方法とプロトコルを用いて調製される。例えば、本発明の化合物は、下記のスキーム1〜6に概略化されるような化学的および酵素的工程により調製できる。
【0104】
本発明の化合物の糖部分は、参照としてそれぞれ、その全体を組み込んでいる米国特許第5,922,577号、米国特許第6,284,493号および米国特許第6,331,418号に記載された方法など、当該分野に公知の任意の手段により調製することができる。本発明の化合物の糖部分は、酵素的に調製され、本明細書に各々定義された供与体分子から受容体分子への単糖の転移に影響を与えるために特異的酵素が使用できる。
【0105】
より具体的には、本発明の合成スフィンゴ糖脂質化合物において見られる二糖、オリゴ糖および多糖は、グリコシルトランスフェラーゼ類の使用により生合成的に調製されることが好ましい。このようなグリコシルトランスフェラーゼ反応は、例えば、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、クロロホルムなどの有機溶媒の単独、または組み合わせの存在下で実施できる。あるいは、このようなグリコシルトランスフェラーゼ反応は、生物学的緩衝剤、細胞ライセートなどのインビトロの生物学的媒体中で、またはグリコシルトランスフェラーゼがクロマトグラフィ支持体上に固定化され、反応混合物の他の成分を水性媒体中、クロマトグラフィ支持体と接触させることにより、上記成分をグリコシルトランスフェラーゼと接触させる、クロマトグラフィ支持体上で実施できる。
【0106】
糖のグリコシルトランスフェラーゼ媒介合成は、インビボまたはインビトロで実施できる。例えば、酵素的合成、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ媒介合成のために、細胞全体発現系が使用できる。グリコシルトランスフェラーゼ類の発現および糖構造の産生に有用な細胞タイプとしては、当業者に理解されると思われるが。細菌細胞、酵母細胞、および昆虫細胞が挙げられる。所望の糖産物は、それが合成された細胞から、細胞溶解により、または糖産物を培地に分泌する細胞を用いる場合には細胞培地からの単離により単離できる。次いでこの糖産物を、本明細書の他所に記載された手段によって精製し得るか、またはライセートまたは細胞培地において、さらなる精製なしに使用し得る。
【0107】
当業者に理解されるように、使用される酵素は、供与体へ転移される糖によって変化し得る。好適な酵素の例としては、限定はしないが、グリコシルトランスフェラーゼ類、トランス−シアリダーゼ類、およびシアリルトランスフェラーゼ類が挙げられる。本発明の所与の合成法に用いられるグリコシルトランスフェラーゼ(単数または複数)の選択は、出発物質として用いられる受容体と供与体の独自性および所望の最終産物の性質に依存する。本発明の方法は、1つ以上の糖が付加される、1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼの使用を含み得る。複数のグリコシルトランスフェラーゼ反応を同時に、すなわち、同時に同じ反応混合物中で、または連続的に実施できる。
【0108】
大規模インビトロ反応に関して十分な量のグリコシルトランスフェラーゼを得るために、グリコシルトランスフェラーゼをコードする核酸をクローン化し、通常の当業者に公知の方法により、組換え溶解性酵素として発現させることができる。次いで発現した酵素を通常の当業者に公知の手段により精製し得るか、もしくは、ライセートまたは細胞培地において、さらなる精製をせずに使用し得る。
【0109】
例えば、糖部分:
【0110】
【化17】
は、受容体分子、例えば、グルコース(Glc)を含有するセラミドまたはスフィンゴイドを、ガラクトシルトランスフェラーゼおよびガラクトース(Gal)供与体分子と接触させて、
【0111】
【化18】
を形成することによって調製でき、次にこれをトランス−シアリダーゼおよびSia供与体分子と接触させて、
【0112】
【化19】
.
を形成することができ、次にこれをN−アセチル化ガラクトース(GalNAc)−トランスフェラーゼおよびGalNAc供与体分子と接触させて、
【0113】
【化20】
を形成することができ、次にこれをガラクトシルトランスフェラーゼおよびガラクトース(Gal)供与体分子と接触させて、所望の糖を形成することができる。
【0114】
所望の最終産物に依り、最初の単糖を、セラミドグルコシルトランスフェラーゼ(グルコシルセラミドに関しては、例えばEC2.4.1.80)、またはセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(ガラクトシルセラミドに関しては、例えばEC2.4.1.45)のいずれかを用いて、基質、例えばセラミド、スフィンゴシン、またはそれらの類似体に加え得る。スフィンゴ糖脂質生合成のレビューに関しては、例えば、IchikawaおよびHirabatashi(1998)Trends Cell Biol.8;p.198−202を参照されたい。セラミドグルコシルトランスフェラーゼは、種々の出所から入手できる。例えば、ヒトヌクレオチド配列が知られている(GenBank登録番号D50840;Ichikawaら、(1996)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 93:p.4638−4643)ので、上記酵素を得るために、組換え法を用いることができる。また、ヒトセラミドガラクトシルトランスフェラーゼのヌクレオチド配列も報告されている(GenBank登録番号U62899;KapitonovおよびYu(1997)Biochem.Biophys.Res.Commun.232:p.449−453)ので、上記酵素を容易に得ることができる。これらの反応に用いられる受容体は、N−アシルスフィンゴシン、スフィンゴシンおよびジヒドロスフィンゴシンのいずれかであり得る。グリコシルトランスフェラーゼに対する好適な供与体ヌクレオチド糖としては、UDP−GlcおよびCDP−Glcが挙げられ、一方、ガラクトシルトランスフェラーゼは、供与体として典型的にUDP−Galを利用する。
【0115】
本発明の化合物の糖部分の合成のための他の可能な生合成法は、下記のスキーム1に例示されている。好ましい一実施形態において、受容体分子は、非固定化される。例えば、受容体分子は、溶液において遊離しているか、そうでなければ、他の受容体分子と会合していない。
【0116】
追加の糖残基は、スフィンゴ糖脂質出発物質のグリコシル化パターンの事前の修飾なしで、本発明の化合物に加え得る。あるいは、本発明は、追加の糖残基を加える前に、スフィンゴ糖脂質のグリコシル化パターンを変化させる方法を提供する。もし、出発スフィンゴ糖脂質が、所望の糖付加を触媒するグリコシルトランスフェラーゼに対する好適な受容体を提供しないならば、当業者に公知の方法によって、受容体を含むようにスフィンゴ糖脂質を修飾することができる。
【0117】
例えば、シアリルトランスフェラーゼに対する好適な受容体を提供するために、ガラクトシルトランスフェラーゼを使用することにより、好適な受容体を合成して、ガラクトース残基を、例えば、Glcまたはグリコスフィンゴイドに結合している他の適切な糖部分に付加することができる。他の実施形態において、グリコスフィンゴイド結合オリゴ糖を、先ず全体的に、または部分的に「トリム」して、シアリルトランスフェラーゼに対する受容体または、1つ以上の適切な残基を付加できる部分を露出させて、好適な受容体を得ることができる。グリコシルトランスフェラーゼ類およびエンドグリコシダーゼ類などの酵素は、付加反応およびトリミング反応に有用である。
【0118】
シアリルトランスフェラーゼ類および他のグリコシルトランスフェラーゼ類は、単独で、または追加の酵素と関連させて使用できる。例えば、図1は、ウシのバターミルクから得られるラクトシルセラミドを、出発物質として用いる酵素的合成によるガングリオシドGM2合成のための2つの方法の概略図を提供している。第1の方法においては、セラミドを1種以上の酵素と接触させて、糖単位をセラミドに付加する。第2の経路においては、カルボン酸アミドの加水分解により、セラミドは、対応するスフィンゴシンに変換される。糖部分をスフィンゴシンに付加させるために、1種以上の酵素が用いられる。糖単位が調製された後、スフィンゴシンのアミノ基は、反応性カルボン酸誘導体によってアシル化され、それによってセラミドが形成される。
【0119】
図2は、ラクトシルセラミドから出発してスフィンゴ糖脂質GD2を合成するための2つの経路の概略図を示している。各々の経路が、2種の異なるシアリルトランスフェラーゼ(α2,3STおよびα2,8ST)ならびにGalNAcトランスフェラーゼの使用を含んでいる。1つの例示的経路において、脂肪酸が塩基による処理によってラクトシルセラミドから除去される(ステップ1)。あるいは、リソセラミド由来であり得る。次いで、アセチル化が行われ(ステップ2)、その後、α2,3シアリルトランスフェラーゼにより、α2,3結合において、シアリン酸がガラクトース残基へ付加される(ステップ3)。シアリル化ステップは、本明細書に記載されている有機溶媒の存在下で実施することが好ましく、それにより、この反応はほぼ完了へと至る。次に、GalNAcトランスフェラーゼを用いて、β1,4結合において、GalNAc残基がガラクトースへ付加される(ステップ5)。最後に、例えば、塩化ステロイルを用いる反応により、脂肪酸が付加され、スフィンゴ糖脂質が完成する(ステップ6)。アシル化は、工程のどの段階においても実施できる。
【0120】
図3は、本発明の化合物への、さらなる例示的経路を提供している。第1のスキームにおいて、グルコシルセラミドを、ガラクトシダーゼ、活性化ガラクトース供与体およびシアリルトランスフェラーゼと接触される。生じたシアリル化セラミドを、GalNAcトランスフェラーゼと接触させて、所望の産物を得る。代替の経路において、グルコシルセラミドをGalトランスフェラーゼ、続いてシアリルトランスフェラーゼにより処理する。シアリル化中間体をGalNAcトランスフェラーゼと接触させて所望の産物を得る。第3の経路の第1のステップにおいて、セラミドは、カルボン酸アミドの加水分解により、対応するスフィンゴシンに変換される。スフィンゴシンは、ガラクトシルトランスフェラーゼ、続いてシアリルトランスフェラーゼにより処理されたならば。シアリル化中間体をGalNAcトランスフェラーゼと接触させ、引き続いてスフィンゴシンのアミンをアシル化して、所望のセラミドを形成する。
【0121】
さらなるスキームを図5に提供している。グリコシルセラミドを、対応するスフィンゴシンへ加水分解し、これをシアリルトランスフェラーゼと接触させる。シアリル化化合物をGalNAcトランスフェラーゼおよびGalNAc供与体により処理する。生じた化合物を、活性化カルボン酸誘導体を用いるアミン部分のアシル化によりセラミドへと変換する。
【0122】
(酵素)
(a.グリコシルトランスフェラーゼ類および選択されたグリコシル化パターンを有する基質の調製法)
本発明の方法では、選択されたグリコシル化パターンを有する糖を生産する能力に関して選択されるグリコシルトランスフェラーゼ類(例えば、フコシルトランスフェラーゼ類)を利用する。例えば、所望の特異性を有するのみならず、基質における所望の受容体基を高パーセンテージでグリコシリル化する能力のあるグリコシルトランスフェラーゼ類が選択される。オリゴ糖受容体部分、例えば、溶解性のオリゴ糖または比較的短いペプチドに付加しているオリゴ糖を使用するアッセイ系を用いて得られた結果に基づいて、グリコシルトランスフェラーゼを選択することが好ましい。一定の実施形態において、グリコシルトランスフェラーゼは融合蛋白質である。代表的な融合蛋白質としては、2種の異なるグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、シアリルトランスフェラーゼとコシルトランスフェラーゼ)の活性を示すグリコシルトランスフェラーゼ類が挙げられる。他の融合蛋白質としては、同じトランスフェラーゼ活性の2種の異なる変型体(例えば、FucT−VIとFucT−VII)が挙げられる。さらに他の融合蛋白質としては、トランスフェラーゼ活性の有用性を増大する(例えば、溶解性、安定性、回転率の増大)ドメインが挙げられる。
【0123】
所望のオリゴ糖構造を合成するために、グリコシルトランスフェラーゼ類を用いる多くの方法が知られており、本発明に一般的に適用できる。代表的な方法は、例えば、国際公開第96/32491号、Itoら、Pure Appl.Chem.65:p.753(1993)、および米国特許第5,352,670号、米国特許第5,374,541号、および米国特許第5,645,553号に記載されている。
【0124】
グリコシルトランスフェラーゼは、基質(例えば、蛋白質、糖ペプチド、脂質、糖脂質または成長オリゴ糖の非還元性末端)に対する、段階的様式における活性化糖類の付加を触媒する。非常に多くのグリコシルトランスフェラーゼが当該分野に知られている。
【0125】
グリコシルトランスフェラーゼが、選択された部位に所望のグリコシル残基を付加することができるという条件で、本発明の方法では、任意のグリコシルトランスフェラーゼが利用できる。このような酵素の例としては、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、シアリルトランスフェラーゼ、マンノシルトランスフェラーゼ、キシロシルトランスフェラーゼ、グルコシルトランスフェラーゼ、グルクロノニルトランスフェラーゼなどが挙げられる。
【0126】
本発明は、トランスシアリダーゼまたはシアリルトランスフェラーゼおよびグリコシルトランスフェラーゼの組合せを用いて実施される。例えば、トランスシアリダーゼに加えて、シアリルトランスフェラーゼとガラクトシルトランスフェラーゼとの組み合わせを使用することができる。1種以上の酵素を用いる実施形態において、1種以上の酵素と適切なグリコシル供与体が最初の反応混合物において、任意に組み合わされる。あるいは、先行の酵素反応が完了するか、ほぼ完了したら、引き続く酵素反応のための酵素と試薬が反応媒体に加えられる。2つの酵素反応を単一の容器内で連続して行うことにより、中間体種が単離される過程を通しての総収量が改善される。さらに、過剰溶媒のクリーンアップと処理が減少する。
【0127】
本発明の方法に使用できるグリコシルトランスフェラーゼ類としては、限定はしないが、ガラクトシルトランスフェラーゼ類、フコシルトランスフェラーゼ類、グルコシルトランスフェラーゼ類、N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ類、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ類、グルクロノニルトランスフェラーゼ類、シアリルトランスフェラーゼ類、マンノシルトランスフェラーゼ類、グルクロン酸トランスフェラーゼ類およびガラクツロン酸トランスフェラーゼ類が挙げられる。好適なグリコシルトランスフェラーゼ類としては、真核生物ならびに原核生物から得られたものが挙げられる。
【0128】
グリコシルトランスフェラーゼ反応を含む酵素的糖合成のために、グリコシルトランスフェラーゼは、任意の出所からクローン化または単離できる。多くのクローン化グリコシルトランスフェラーゼ類ならびにそれらのポリヌクレオチド配列が知られている。例えば、「The WWW Guide To Cloned Glycosyltransferase」、(http://www.vei.co.uk/TGN/gt_guide.htm)を参照されたい。また、グリコシルトランスフェラーゼのアミノ酸配列およびアミノ酸配列が推論されるグリコシルトランスフェラーゼ類をコードするヌクレオチド配列も、GenBank、Swiss−Prot、EMBLなどの種々の公的に利用できるデータベースにおいて見られる。
【0129】
グリコシルトランスフェラーゼ類をコードするDNAは、化学的合成により適切な細胞、または細胞系培養物からのmRNAの逆転写体をスクリーニングすることにより、適切な細胞からのゲノムライブラリーのスクリーニングにより、またはこれらの操作の組み合わせにより得ることができる。mRNAまたはゲノムDNAのスクリーニングは、グリコシルトランスフェラーゼ類の遺伝子配列から作製されたオリゴヌクレオチドプローブによって実施できる。プローブは、蛍光基、放射性原子または化学発光基などの検出可能な基により、公知の操作に従って標識化でき、従来のハイブリダイゼーションアッセイに使用できる。あるいは、グリコシルトランスフェラーゼ類の遺伝子配列は、グリコシルトランスフェラーゼ類の遺伝子配列から作製されるPCRオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)操作の使用によって得ることができる。Mullisらに対する米国特許第4,683,195号、およびMullisに対する米国特許第4,683,202号を参照されたい。
【0130】
グリコシルトランスフェラーゼは、このグリコシルトランスフェラーゼをコードするDNAを含有するベクターによって形質転換した宿主細胞において合成できる。ベクターは、複製可能なDNA構築体である。ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼ類酵素をコードするDNAを増幅させるため、および/または、グリコシルトランスフェラーゼ類酵素をコードするDNAを発現させるために用いられる。発現ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼ類酵素をコードするDNA配列が、好適な宿主におけるグリコシルトランスフェラーゼの発現に影響を与える能力のある好適な制御配列に操作可能に結合している複製可能なDNA構築体である。このような制御配列に対する必要性は、選択された宿主および選択された形質転換法に依って変わる。一般に、制御配列は、転写プロモーター、転写を制御する任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位、および転写ならびに翻訳の終結を制御する配列を含む。増幅ベクターは、発現制御ドメインを必要としない。必要なことは、通常、複製源により与えられる、宿主において複製する能力と形質転換体の認識を助ける遺伝子選択だけである。
【0131】
本発明の組成物の調製における使用に好適なグリコシルトランスフェラーゼ類の例は、本明細書に記載されている。種々の量の各酵素(例えば、1〜100mU/mg蛋白質)を、対象のグリコシルトランスフェラーゼに対する受容体として可能な部位を有するオリゴ糖が結合している基質(例えば、1〜10mg/mlにおいて)と反応させることにより、他の好適なグリコシルトランスフェラーゼ類を容易に確認することができる。所望の部位に糖残基を付加するグリコシルトランスフェラーゼ類の能力を比較する。基質に結合したオリゴ糖の受容体として可能な部位をグリコシル化する能力を、同じ特異性を有する他のグリコシルトランスフェラーゼ類よりも効率的に示すグリコシルトランスフェラーゼ類が本発明の方法における使用に好適である。
【0132】
所望の形質転換を達成するために必要とされる具体的な酵素量は、当業者に容易に決定される。しかし、他の実施形態においては、より多量の酵素を使用することが望ましい。例えば、約30℃から約37℃の温度が好適である。
【0133】
本発明の方法の有効性は、組換え生産されたグリコシルトランスフェラーゼ類の使用によって増大化できる。組換え生産により、大規模の基質修飾に必要とされる大量のグリコシルトランスフェラーゼ類の製造が可能となる。グリコシルトランスフェラーゼ類を溶解性にし、したがって大量のグリコシルトランスフェラーゼ類の製造と精製を促進するグリコシルトランスフェラーゼ類の膜固定ドメインの削除は、グリコシルトランスフェラーゼ類をコードする修飾遺伝子の組換え発現によって達成できる。グリコシルトランスフェラーゼ類の組換え製造に好適な方法の説明については、米国特許第5,032,519号を参照されたい。
【0134】
また、標的基質が、固体支持体上に固定化されるグリコシル化法も本発明により提供される。用語の「固体支持体」は、半固体支持体も含む。グリコシル化反応の完了後、基質が遊離できるように、標的基質は、可逆的に固定化されることが好ましい。好適なマトリクスは当業者に公知である。グリコシル化反応が進行している間、基質を一時的に適切な樹脂に固定化するために、例えば、イオン交換を用いることができる。また、アフィニティーに基づく固定化に関しては、対象の基質に特異的に結合するリガンドも使用できる。対象の基質に結合する抗体は好適である。また、グリコシル化される対象の基質に特異的に結合する色素および他の分子も好適である。
【0135】
代表的な一実施形態において、トランス−シアリダーゼを除いて、使用される酵素は全て、グリコシルトランスフェラーゼ類である。他の代表的一実施形態において、1種以上の酵素は、グリコシダーゼである。
【0136】
(フコシルトランスフェラーゼ反応)
多くの糖は、生物活性を示すためには、特定のフコシル化構造の存在を必要とする。細胞間認識機構は、フコシル化オリゴ糖を必要とすることが多い。例えば、P−セレクチン、E−セレクチンなどの細胞接着分子として働く多くの蛋白質は、特定の細胞表面フコシル化炭水化物構造、例えば、シアリルルイスx構造およびシアリルルイスa構造と結合する。また、ABO血液型系を形成する特定の炭水化物構造は、フコシル化される。これら3つの群の各々における炭水化物構造は、Fucα1.2Galβ1−二糖単位を共有する。O型血液構造では、この二糖は末端構造である。A型構造は、末端GalNAc残基を二糖に付加するα1,3GalNAcトランスフェラーゼにより形成される。B型構造は、末端ガラクトース残基を付加するα1,3ガラクトシルトランスフェラーゼにより形成される。ルイス血液型構造もまた、フコシル化される。例えば、ルイスx構造およびルイスa構造は、それぞれGalβ1,4(Fucα1,3)GlcNacおよびGalβ1,4(Fucα1,4)GlcNacである。これらの構造は、双方ともさらにシアリル化(NeuAcα2,3−)されて、対応するシアリル化構造を形成する。興味深い他のルイス血液型構造は、ルイスy構造およびルイスb構造であり、これらは、それぞれFucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ−ORおよびFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAcβ−ORである。ABOおよびルイスの血液型構造の構造およびそれらの合成に関与する酵素に関しては、Essentials of Glycobiology、Varkiら編集、16章(Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー所在、1999年)を参照されたい。
【0137】
フコシルトランスフェラーゼ類は、合成経路において、グアノシン−5’−ジホスホフコースから、糖受容体の特定のヒドロキシへ、フコース単位を転移するために用いられてきた。例えば、Ichikawaは、クローン化フコシルトランスフェラーゼによるシアリル化ラクトサミンのフコシル化を含む方法により、シアリルルイス−Xを調製した(Ichikawaら、J.Am.Chem.Soc.114:p.9283−9298(1992))。Loweは、細胞における非天然フコシル化活性を発現し、それによってフコシル化糖蛋白質、細胞表面などを製造する方法を記載している(米国特許第5,955,347号)。
【0138】
一実施形態において、フコシルトランスフェラーゼに対する受容体部分を有する基質を、フコース供与体部分、フコシルトランスフェラーゼおよびフコシルトランスフェラーゼ活性に必要とされる他の試薬を含む反応混合物と接触されることにより、本発明の方法が実施される。フコースをフコース供与体部分からフコシルトランスフェラーゼ受容体部分へ転移するために十分な時間と適切な条件下で基質を反応混合物中に温置する。好ましい実施形態において、フコシルトランスフェラーゼは、組成物におけるフコシルトランスフェラーゼに関する受容体部分の少なくとも60%のフコシル化を触媒する。
【0139】
多数のフコシルトランスフェラーゼ類が当業者に公知である。簡潔に述べると、フコシルトランスフェラーゼ類は、L−フコースをGDP−フコースから、受容体糖のヒドロキシル位へ転移させるいずれかの酵素を含む。幾つかの実施形態において、例えば、受容体糖は、オリゴ糖グリコシドにおけるGalβ(1→3,4)GlcNAc基の中のGlcNAcである。この反応のために好適なフコシルトランスフェラーゼ類としては、ヒト乳から得られる公知のGalβ(1→3,4)GlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ類(FucT−III E.C.番号2.4.1.65)(例えば、Palcicら、Carbohydrate Res.190:p.1−11(1989);Prieelsら、J.Biol.Chem.256:p.10456−10463(1981);およびNunezら、Can.J.Chem.59:p.2086−2095(1981)を参照)、およびヒト血清に見られるβGal(1→4)βGlcNAcα(1→3)フコシルトランスフェラーゼ類(FucT−IV、FucT−V、FucT−VI、およびFucT−VII E.C.番号2.4.1.65)が挙げられる。βGal(1→3,4)βGlcNAcα(1→3,4)フコシルトランスフェラーゼ類の組換え体もまた利用できる(Dumasら、Bioorg.Med.Letters1:p.425−428(1991)およびKukowaka−Latalloら、Genes and Development 4:p.1288−1303(1990)を参照)。他の代表的なフコシルトランスフェラーゼ類としては、α1,2−フコシルトランスフェラーゼ(E.C.番号2.4.1.69)が挙げられる。酵素的フコシル化は、Malliconeら、Eur.J.Biochem.191:p.169−176(1990)または米国特許第5,374,655号;マンソン住血吸虫のα1,3−フコシルトランスフェラーゼ(Trotteinら、(2000)Mol.Biochem.Parasitol.107:p.279−287);およびα1,3−フコシルトランスフェラーゼIX(ヒトおよびマウスFucT−IXのヌクレオチド配列は、Kanekoら(1999)FEBS Lett.452:p.237−242、およびヒト遺伝子の染色体位置は、Kanekoら(1999)Cytogenet.Cell Genet.86:p.329−330)、に記載された方法により実施することができる。受容体として、巻貝のモノアラガイならびにリョクトウのN−結合GlcNAcを用いる、最近報告されたα1,3フコシルトランスフェラーゼ類が、それぞれvan Teteringra、FEBS Lett.461:p.311−314、およびLeiterら、(1999)J.Biol.Chem.274:p.21830−21839に記載されている。さらに、Raskoら、(2000)J.Biol.Chem.275:p.4988−94に記載されているヘリコバクターピロリのα(1,3/4)フコシルトランスフェラーゼ類、ならびにH.ピロリ(Wangら、(1999)Microbiology.145:p.3245−53)のα1,2フコシルトランスフェラーゼ類など、細菌のフコシルトランスフェラーゼ類。また、本発明において有用なフコシルトランスフェラーゼ類の記載に関しては、Staudacher,E.(1996)Trends in Glycoscience and Glycotechnology、8:p.391−408も参照されたい。
【0140】
フコース残基のフコシルトランスフェラーゼ触媒付加に関する好適な受容体部分としては、限定はしないが、GlcNAc−OR、Galβ1,3GlcNAc−OR、NeuAcα2,3Galβ1,3GlcNAc−OR、Galβ1,4GlcNAc−ORおよびNeuAcα2,3Galβ1,4GlcNAc−ORが挙げられ、ここで、Rは、アミノ酸、糖、オリゴ糖または少なくとも1個の炭素原子を有するアグリコン基である。Rは、基質に結合しているか、または基質の一部である。ある特定の反応にとって適切なフコシルトランスフェラーゼは、所望のフコース結合型(例えば、α2、α3またはα4)、具体的な対象の受容体および所望の高収量フコシル化を達成するためのフコシルトランスフェラーゼの能力に基づいて選択される。好適なフコシルトランスフェラーゼ類およびそれらの特性は上記されている。
【0141】
もし、組成物における基質結合オリゴ糖が十分な割合でフコシルトランスフェラーゼ受容体部分を含まないならば、好適な受容体を合成することができる。例えば、フコシルトランスフェラーゼに対する受容体を合成する好ましい方法は、GlcNAc残基を、基質結合オリゴ糖上に存在するGlcNAcトランスフェラーゼ受容体部分に付加するGlcNAcトランスフェラーゼの使用を含む。好ましい実施形態において、対象の受容体として可能な部分を高い割合でグリコシル化する能力を有するトランスフェラーゼが選択される。次いで生じたGlcNAcβ−ORをフコシルトランスフェラーゼ類に対する受容体として使用できる。
【0142】
生じたGlcNAcβ−OR部分は、フコシルトランスフェラーゼ反応前にガラクトシル化でき、例えば、Galβ1,3GlcNAc−OR残基またはGalβ1,4GlcNAc−OR残基が得られる。幾つかの実施形態において、ガラクトシル化とフコシル化のステップは、同時に実施できる。ガラクトシル化受容体を必要とするフコシルトランスフェラーゼを選択することにより、所望の産物だけが形成される。したがって、この方法は:
(a)化合物Galβ1,4GlcNAcβ−ORまたはGalβ1,3GlcNAc−ORを形成するために十分な条件下で、UDP−ガラクトースの存在下、ガラクトシルトランスフェラーゼにより、式GlcNAcβ−ORの化合物をガラクトシル化する工程;および
(b)Fucα1,2Galβ1,4GlcNAc1β−O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GlcNAc−OR;
Fucα1,2Galβ1,4GalNAc1β−O1R;
Fucα1,2Galβ1,3GalNAc−OR;
Galβ1,4(Fuc1、α3)GlcNAcβ−OR;または
Galβ1,3(Fucα1、4)GlcNAcβ−OR、
から選択される化合物を形成するために十分な条件下で、GDP−フコースの存在下、フコシルトランスフェラーゼを用いて、(a)で形成された化合物をフコシル化する工程、を含む。
【0143】
所望の活性を有する追加のフコシルトランスフェラーゼを含めることにより、上記の構造に追加のフコース残基を付加することができる。例えば、上記方法により、Fucα1,2Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ−ORおよびFucα1,2Galβ1,3(Fucα1,4)GlcNAcβ−ORなどのオリゴ糖決定基を形成することができる。したがって、他の好ましい実施形態において、上記方法は、少なくとも2種のフコシルトランスフェラーゼの使用を含む。複数のフコシルトランスフェラーゼは、同時に、または連続的に用いられる。フコシルトランスフェラーゼ類が、連続的に用いられる場合、複数のフコシル化ステップの間で、糖蛋白質は精製されないことが一般に好ましい。複数のフコシルトランスフェラーゼが同時に用いられる場合、酵素活性は、2つの個々の酵素に由来し得るか、あるいは、1つのフコシルトランスフェラーゼ活性以上の活性を有する単一の酵素に由来し得る。
【0144】
(シアリルトランスフェラーゼ類)
アンカードメインが削除されたものなどの組換えシアリルトランスフェラーゼ類ならびに組換えシアリルトランスフェラーゼ類の製造法の例は、例えば、米国特許第5,541,083号に見られる。少なくとも15種の哺乳動物シアリルトランスフェラーゼ類が文書化されておち、これらのうち13種のcDNAが、現在までにクローン化されている(本明細書に用いられている系統的命名法に関しては、Tsujiら(1996)Glycobiology6:v−xivを参照)。これらのcDNAを、シアリルトランスフェラーゼ類の組換え製造に使用することができ、次いで本発明の方法に使用できる。
【0145】
ある特定の決定基が、α2,6結合シアリン酸を必要とし、シアリルトランスフェラーゼが用いられる場合を除いて、シアリル化は、トランス−シアリダーゼまたはシアリルトランスフェラーゼのいずれかを用いて達成できる。本発明は、適切な供与体部分の存在下、シアリルトランスフェラーゼまたはトランス−シアリダーゼに対する受容体を、適切な酵素と接触させることにより、上記受容体をシアリル化することを含む。シアリルトランスフェラーゼに対しては、CMP−シアリン酸が好ましい供与体部分である。しかしながら、トランス−シアリダーゼ類は、トランス−シアリダーゼがシアリン酸を付加できない遊離性基を含む供与体部分を使用することが好ましい。
【0146】
対象の受容体部分は、例えば、Galβ−ORを含む。幾つかの実施形態において、シアリン酸が受容体部分の非還元性末端に転移されて、化合物NeuACα2,3Galβ−ORまたはNeuACα2,6Galβ−ORを形成する条件下、CMP−シアリン酸の存在下で受容体部分をシアリルトランスフェラーゼと接触させる。この式において、Rは、アミノ酸、糖、オリゴ糖または少なくとも1個の炭素原子を有するアグリコン基である。代表的な一実施形態において、Galβ−ORは、Galβ1,4GlcNAc−Rであり、ここで、Rは、基質に結合しているか、または基質の一部である。
【0147】
代表的な一実施形態において、上記方法は、シアリル化とフコシル化の双方がされている化合物を提供する。大抵のシアリルトランスフェラーゼ類は、フコシル化された受容体に対して活性ではないため、シアリルトランスフェラーゼ反応とフコシルトランスフェラーゼ反応は、一般に連続的に行われる。しかしながら、FucT−VIIは、シアリル化された受容体にのみ作用する。したがって、FucT−VIIは、シアリルトランスフェラーゼによる同時反応において使用できる。
【0148】
シアリル化を達成するために、トランス−シアリダーゼが用いられる場合、フコシル化反応とシアリル化反応は、同時に、またはいずれの順序においても連続的に行うことができる。修飾される基質を、好適な量のトランス−シアリダーゼ、好適なシアリン酸供与体基質、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3、またはα1,4結合を作製することができる)および好適なフコシル供与体基質(例えば、GDP−フコース)を含有する反応混合物と共に温置する。
【0149】
本発明の使用に好適なシアリルトランスフェラーゼ類の例としては、ST3Gal III(例えば、ラットまたはヒトのST3Gal III)、ST3Gal IV、ST3Gal I、ST6Gal I、ST3Gal V、ST6Gal II、ST6GalNAc I、ST6GalNAc II、およびST6GalNAc III(本明細書に用いられているシアリルトランスフェラーゼの命名法は、Tsujiら、Glycobiology 6:v−xiv(1996)に記載されているとおりである)。α(2,3)シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.6)と称される代表的なα(2,3)シアリルトランスフェラーゼは、シアリン酸をGalβ1→3Glc二糖またはグリコシドの非還元性末端Galへ転移させる。Van den Eijndenら、J.Biol.Chem.256:p.3159(1981)、Weinsteinら、J.Biol.Chem.257:p.13845(1982)およびWenら、J.Biol.Chem.267:p.21011(1992)を参照されたい。他の代表的なα2,3−シアリルトランスフェラーゼ(EC2.4.99.4)は、シアリン酸を二糖またはグリコシドの非還元性末端Galへ転移させる。Rearickら、J.Biol.Chem.254:p.4444(1979)およびGillespieら、J.Biol.Chem.267:p.21004(1992)を参照されたい。さらなる代表的酵素としては、Gal−βー1,4−GlcNAcα−2,6シアリルトランスフェラーゼが挙げられる(Kurosawaら、Eur.J.Biochem.219:p.375−381を参照)。また、本発明の方法に有用な基質に、第2の、または複数のシアリン酸残基を付加するために、α2,8−シアリルトランスフェラーゼも使用できる。さらなる例は、アガラクシア連鎖球菌(cpsK遺伝子として知られているST)、デュクレー菌(lst遺伝子として知られている)、インフルエンザ菌(HIO871遺伝子として知られている)のα2,3−シアリルトランスフェラーゼ類である。Chaffinら、Mol.Microbiol.、45:p.109−122(2002)を参照されたい。
【0150】
特許請求された方法において有用なシアリルトランスフェラーゼの例は、カンピロバクターのCST−Iである(例えば、米国特許第6,503744号、米国特許第6,096,529号、および米国特許第6,210933号ならびに国際公開第99/49051号、および公開の米国特許出願第2002/2,042,369号を参照)。この酵素は、Galβ1,4GlcまたはGalβ1,3GalNAcへのシアリン酸の転移を触媒する。
【0151】
本発明に用いられる他の代表的シアリルトランスフェラーゼ類としては、α(2,3)シアリルトランスフェラーゼなど、空腸カンピロバクターから単離されたものが挙げられる。例えば、国際公開第99/49051号を参照されたい。他の実施形態において、本発明は、α2,3シアリルトランスフェラーゼ活性およびα2,8シアリルトランスフェラーゼ活性の双方を有する二官能性シアリルトランスフェラーゼポリペプチド類を提供する。二官能性シアリルトランスフェラーゼを好適な糖受容体(例えば、末端ガラクトースを有する糖)およびシアリン酸供与体(例えば、CMP−シアリン酸)を有する反応混合物中に入れると、供与体からα2,3結合における受容体へと第1のシアリン酸の転移を触媒できる。次に、上記シアリルトランスフェラーゼは、シアリン酸供与体からα2,8−結合における第1のシアリン酸残基へと、第2のシアリン酸の転移を触媒する。このタイプのSiaα2,8−Siaα2,3−Gal構造は、スフィンゴ糖脂質類にしばしば見られる。例えば、欧州特許出願第11472200号を参照されたい。
【0152】
また、最近報告されたウィルスのα2,3−シアリルトランスフェラーゼも、本発明のシアリル化法に好適に使用される(Sujinoら、(2000)Glycobiology10:p.313−320)。この酵素、v−ST3Gal Iは、粘液腫ウィルス感染細胞から得られており、各々のアミノ酸配列の比較により示されるように、哺乳動物のST3Gal IVに明らかに関連している。v−ST3Gal Iは、タイプI(Galβ1,3−GlcNAcβ1−R)、タイプII(Galβ1,4−GlcNAc−β1−R)およびタイプIII(Galβ1,3GlcNAcβ1−R)の受容体のシアリル化を触媒する。また、上記酵素は、シアリン酸を、フコシル化された受容体部分へ転移することもできる(例えば、ルイスxおよびルイスa)。
【0153】
(ガラクトシルトランスフェラーゼ類)
実施形態の他の群において、グリコシルトランスフェラーゼは、ガラクトシルトランスフェラーゼである。代表的なガラクトシルトランスフェラーゼ類としては、α(1,3)ガラクトシルトランスフェラーゼ類(E.C.番号2.4.1.151、例えば、Dabkowskiら、Transplant Proc.25:p.2921(1993)およびYamamotoら、Nature345:p.229−233(1990)を参照)、ウシ(GenBank j04989、Joziasseら、J.Biol.Chem.264:p.14290−14397(1989))、マウス(GenBank m26925;Larsenら、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA86:p.8227−8231(1989))、ブタ(GenBank L36152;Strahanら、Immunogenetics 41:p.101−105(1995)))が挙げられる。他の好適なα1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、B型血液抗原の合成に関与するものである(EC2.4.1.37、Yamamotoら、J.Biol.Chem.265:p.1146−1151)(ヒト)。また、本発明は、α1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを用いても実施できる。
【0154】
例えば、EC2.4.1.90(LacNAcシンテターゼ)およびEC2.4.1.22(ラクトースシンテターゼ)(ウシ(D’Agostaroら、Eur.J.Biochem.183:p.211−217(1989))、ヒト(Masriら、Biochem.Biophys.Res.Commun.157:p.657−663(1988))、マウス(Nakazawaら、J.Biochem.104:p.165−168(1988))などのβ(1,4)ガラクトシルトランスフェラーゼ類、ならびにE.C.2.4.1.38およびセラミドガラクトシルトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.45、Stahlら、J.Neurosci.Res.38:p.234−242(1994))もまた、本発明の方法における使用に好適である。他の好適なガラクトシルトランスフェラーゼ類としては、例えば、α1,2ガラクトシルトランスフェラーゼ類が挙げられる(例えば、分裂酵母pombe、Chapellら、Mol.Biol.Cell5:p.519−528(1994))。他の1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ類は、グロボシド類を製造するために使用されるものである(例えば、Schaeperら、Carbohydrate Research 1992年、236巻、p.227−244)を参照。哺乳動物と細菌の双方の酵素が用いられる。
【0155】
本発明に用いられる他の代表的なガラクトシルトランスフェラーゼ類としては、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ類が挙げられる。好適な反応媒体に入れると、β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ類は、供与体(例えば、UDP−Gal)から好適な糖受容体(例えば、末端GalNAc残基を有する糖)へのガラクトース残基の転移を触媒する。本発明のβ1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの一例は、C.jejuniなどのカンピロバクターにより産生されるものである。本発明の好ましい当該β1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼは、C.jejuni株OH4384のものである。
【0156】
本発明の方法により、ガラクトシルトランスフェラーゼ類を用いて形成された化合物における代表的な結合としては:(1)Galβ1→4Glc;(2)Galβ1→4GlcNAc;(3)Galβ1→3GlcNAc;(4)Galβ1→6GlcNAc;(5)Galβ1→3GalNAc;(6)Galβ1→6GalNAc;(7)Galα1→3GalNAc;(8)Galα1→3Gal;(9)Galα1→4Gal;(10)Galβ1→3Gal;(11)Galβ1→4Gal;(12)Galβ1→6Gal;(13)Galβ1→4キシロース;(14)Galβ1→1’−スフィンゴシン;(15)Galβ1→1’−セラミド;(16)Galβ1→3ジグリセリド;(17)Galβ1→O−ヒドロキシリジン;および(18)Gal−S−システインが挙げられる。例えば、米国特許第6,268,193号;および米国特許第5,691,180号を参照されたい。
【0157】
(トランス−シアリダーゼ)
上記で検討したように、本発明の方法は、トランス−シアリダーゼを用いて、シアリン酸部分が基質に付加される少なくとも1つのステップを含む。本明細書に用いられる用語の「トランス−シアリダーゼ」とは、α−2,3グリコシド結合を介してシアリン酸のガラクトースへの付加を触媒する酵素を言う。トランス−シアリダーゼ類は、多くのトリパノソーマ種および幾つかの他の寄生虫に見られる。これらの寄生虫生体のトランス−シアリダーゼ類は、通常のシアリダーゼの加水分解活性を保持するが、効率ははるかに低く、CMP−シアリン酸の不在下、宿主のシアログリコ共役体から寄生虫の表面糖蛋白質への末端シアリン酸の可逆的転移を触媒する。シャガス病の原因となるトリパノソーマcruziは、多くのシアリダーゼ類の典型的な加水分解反応の代わりに、末端βーガラクトシル残基を含有する受容体へのα2,3−結合シアリン酸の転移を優先的に触媒する表面トランス−シアリダーゼを有する(Ribeiraeoら、Glycobiol.7:p.1237−1256(1997);Takahashiら、Anal.Biochem.230:p.333−342(1995);Scudderら、J,Biol.Chem.268:p.9886−9891(1993);およびVandekerckhoveら、Glycobiol.2:p.541−548(1992))。T.cruziトランス−シアリダーゼ(TcTs)は、末端が、βー結合ガラクトース残基である広範囲の糖受容体、糖脂質受容体および糖蛋白質受容体に対して活性を有し、もっぱらα2,3シアロシド結合を合成する(Scudderら、上記)。また、それは低率で、p−ニトロフェニル−α−N−アセチルノイラミン酸などの合成α−シアロシド類からシアリン酸を転移させるが、NeuAc2−3Galβ1−4(Fucα1−3)Glcは、供与体基質ではない。N−アセチル−D−ノイラミン酸(4MU−NANA)の修飾2−[4−メチルウンベリフェロン]−α−ケトシドおよびそれの幾つかの誘導体もまた、TcTsに対する供与体として働く(Lee & Lee、Anal.Biochem.216:p.358−364(1994))。3’−シアリル−ラクト−N−ビオースIの酵素的合成は、受容体としてのラクト−N−ビオースIおよびN−アセチルノイラミン部分の供与体としての2’−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−N−アセリノイラミンから、TcTSにより触媒される(Vetereら、Eur.J.Biochem.267:p.942−949(2000))。α2,3−シアリル化共役体を合成するためのトランス−シアリダーゼの使用に関するさらなる情報は、欧州特許出願第0 557 580 A2号および米国特許第5,409,817号に見ることができ、その各々は、参照として本明細書に組み込まれている。ヒルMacrobdella decoraの分子内トランス−シアリダーゼは、シアログリコ共役体における末端Neu5Ac(N−アセチルノイラミン酸)α2→3Gal結合の開裂に対して、厳密な特異性を示し、分子内トランス−シアロシル反応を触媒する(Luoら、J.Mol.Biol.285:323−332(1999)。トランス−シアリダーゼ類は、シアリン酸を、主にガラクトース受容体に付加させるが、それらは、シアリン酸を、幾つかの他の糖へ転移させる。しかしながら、GalNAcへのシアリン酸転移には、シアリルトランスフェラーゼが必要である。トランス−シアリダーゼの使用についてのさらなる情報は、PCT出願番号第93/18787号;およびVetereら、Eur.J.Biochem.247:p.1083−1090(1997)に見ることができる。
【0158】
(GalNAcトランスフェラーゼ類)
また、本発明は、β1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチド類を利用し得る。β1,4−GalNAcトランスフェラーゼ類を反応混合物中に入れると、供与体(例えば、UDP−GalNAc)から好適な受容体糖(典型的には、末端ガラクトース残基を有する糖)へのGalNAc残基の転移を触媒する。生じた構造、GalNAcβ1,4−Galは、多くの糖化合物に見られるが、その中でもスフィンゴ糖脂質類および他のスフィンゴイド類にしばしば見られる。
【0159】
本発明において有用なβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼの一例は、C.jejuniなどのカンピロバクター種により産生されるものである。当該の好ましいβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼポリペプチドは、C.jejuni株OH4384のものである。
【0160】
本発明に用いられる代表的なGalNAcトランスフェラーゼは、以下の結合を形成する:(1)(GalNAcα1→3)[(Fudα1→2)]Galβ−;(2)GalNAcα1→Ser/The;(3)GalNAcβ1→4Gal;(4)GalNAcα1→3Gal;(5)GalNAcα1→3GalNAc;(6)(GalNAcβ1→4GlcUAβ1→3)n;(7)(GalNAcβ1→4IdUAα1→3−)n;(8)−Manβ→GalNAcαGlcNACαAsn。例えば、米国特許第6,268,193号および米国特許第5,691、180号を参照されたい。
【0161】
(GlcNAcトランスフェラーゼ類)
本発明は、任意にGlcNAcトランスフェラーゼ類を利用する。本発明の実施に有用な代表的N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ類は、以下の結合を形成できる:(1)GlcNAcβ1→4GlcNAc;(2)GlcNAcβ1→Asn;(3)GlcNAcβ1→2Man;(4)GlcNAcβ1→4Man;(5)GlcNAcβ1→3Gal;(6)GlcNAcβ1→3Man;(7)GlcNAcα1→3Man;(8)GlcNAcβ1→3Gal;(9)GlcNAcβ1→4Gal;(10)GlcNAcβ1→6Gal;(11)GlcNAcα1→4Gal;(12)GlcNAcα1→4GlcNAc;(13)GlcNAcβ1→6GalNAc;(14)GlcNAcβ1→3GalNAc;(15)GlcNAcβ→4GlcUA;(16)GlcNAcα1→4GlcUA;(17)GlcNAcα1→4IdUA。例えば、米国特許第6,268,193号および米国特許第5,691、180号を参照されたい。
【0162】
(他のグリコシルトランスフェラーゼ類)
フコシリルトランスフェラーゼ類およびシアリルトランスフェラーゼ類に関して詳細に記載したものと同様のトランスフェラーゼサイクルに、他のグリコシルトランスフェラーゼ類を代用することができる。特に、グリコシルトランスフェラーゼは、例えば、グルコシルトランスフェラーゼ類、例えば、Alg8(Stagljovら、Proc.Natl.Acad.USA 91:p.5977(1994))またはAlg5(Heesenら、Eur.J.Biochem.224:p.71(1994))、例えば、α(1,3)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ、β(1,4)N−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ類(Nagataら、J.Biol.Chem.267:p.12082−12089(1992)およびSmithら、J.Biol.Chem.269:p.15162(1994))およびポリペプチドN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(Homaら、J.Biol Chem.268:p.12609(1993))などのN−アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ類でもあり得る。好適なN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ類としては、GnTI(2.4.1.101、Hullら、BBRC 176:p.608(1991))、GnTII、およびGnTIII(Iharaら、J.Biochem.113:p.692(1993))、GnTV(Shoreibanら、J.Biol Chem.268:p.15381(1993))、O−結合N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Bierhuizenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:p.9326(1992))、N−アセチルグルコサミン−1−ホスフェートトランスフェラーゼ(Rajputら、Biochem.J.285:p.985(1992)、およびヒアルロナンシンターゼが挙げられる。好適なマンノシルトランスフェラーゼ類としては、α(1,2)マンノシルトランスフェラーゼ、α(1,3)マンノシルトランスフェラーゼ、β(1,4)マンノシルトランスフェラーゼ、Dol−P−Manシンターゼ、OCh1、およびPmt1が挙げられる。
【0163】
(複数酵素によるオリゴ糖合成)
上記で検討したように、幾つかの実施形態において、所望のオリゴ糖部分を形成するために、2種以上の酵素が用いられる。例えば、ある特定のオリゴ糖部分は、所望の活性を示すために、ガラクトース、シアリン酸、およびフコースの付加を必要とし得る。したがって、本発明は、所望のオリゴ糖決定基の高収量合成を達成するために2種以上の酵素、例えば、グリコシルトランスフェラーゼ類、トランス−シアリダーゼ類、またはスルホトランスフェラーゼ類が用いられる方法を提供する。
【0164】
幾つかの場合、基質結合オリゴ糖は、基質のインビボ生合成の際に、対象の特定グリコシルトランスフェラーゼに対する受容体部分を含む。このような基質は、基質のグリコシル化パターンの事前の修飾をせずに、本発明の方法を用いてグリコシル化できる。しかしながら、他の場合、対象の基質は、好適な受容体部分を欠いている。そのような場合は、基質のグリコシル化パターンを変化させ、その結果、基質結合オリゴ糖が、対象の予め選択された糖単位のグリコシルトランスフェラーゼ触媒付加のための受容体部分を含み、所望のオリゴ糖決定基を形成するように本発明の方法を用いることができる。
【0165】
代表的な一実施形態においては、前述の節で検討した複数酵素の方法論により、GalNAc、グルコース、ガラクトース、フコースおよびシアリン酸を含む糖の形成に至る。
【0166】
これらの方法において、シアリルトランスフェラーゼまたはトランス−シアリダーゼ(α2,3結合シアリン酸に対してのみ)のいずれかを用いることができる。トランス−シアリダーゼ反応は、修飾すべき蛋白質を、好適な量のガラクトシルトランスフェラーゼ(galβ1,3またはgalβ1,4)、好適なガラクトシル供与体(例えば、UDP−ガラクトース)、トランス−シアリダーゼ、好適なシアリン酸供与体基質、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3結合またはα1,4結合を作製できる)、好適なフコシル供与体基質(例えば、GDP−フコース)および二価の金属イオンを含有する反応混合物と共に温置することを含む。これらの反応は、連続的に、または同時に実施できる。
【0167】
シアリルトランスフェラーゼが用いられる場合、代表的一実施形態において、上記方法は、修飾すべき蛋白質を、好適な量のガラクトシルトランスフェラーゼ(galβ1,3またはgalβ1,4)、好適なガラクトシル供与体(例えば、UDP−ガラクトース)、シアリルトランスフェラーゼ(α2,3またはα2,6)および好適なシアリン酸供与体基質(例えば、CMPシアリン酸)を含有する反応混合物と共に温置することを含む。上記反応を、実質的に完了するまで進行させてから、フコシルトランスフェラーゼ(α1,3結合またはα1,4結合を作製できる)および好適なフコシル供与体基質(例えば、GDP−フコース)を加える。シアリル化基質を必要とするフコシルトランスフェラーゼ(例えば、FucT VIII)が用いられる場合、上記反応は同時に実施できる。
【0168】
(グリコシルトランスフェラーゼ反応混合物)
グリコシルトランスフェラーゼ類、基質および他の上記反応混合成分を水性反応媒体(溶液)中に混合することにより合わせる。上記媒体は、一般に約5から約9のpH値を有する。媒体の選択は、所望のレベルのpH値を維持するその媒体の能力に基づく。したがって、幾つかの実施形態において、媒体は、約7.5のpH値へ緩衝化される。緩衝剤が用いられる場合、媒体のpHは、用いられる具体的なグリコシルトランスフェラーゼに依存して、約5〜8.5に維持する必要がある。フコシルトランスフェラーゼに関しては、pHの範囲を、約7.2から7.8に維持することが好ましい。シアリルトランスフェラーゼに関しては、上記範囲は、約5.5から6.5が好ましい。好適な塩基は、NaOH、好ましくは、6MNaOHである。
【0169】
酵素量または濃度は、開始触媒率の目安である活性単位で表される。1活性単位は、所与の温度(具体的には37℃)およびpH値(典型的には7.5)における1分当たり1μmolの産物形成を触媒する。したがって、ある酵素の10単位は、37℃の温度、7.5のpH値において1分当たり10μmolの基質が、10μmolの産物に変換される、その酵素の触媒量である。
【0170】
また、上記反応媒体は、必要ならば、界面活性剤(例えば、トリトンまたはSDS)および有機溶媒、例えば、メタノールまたはエタノールを可溶化することを含み得る。上記酵素類は、溶液中遊離で利用できるか、またはポリマーなどの支持体に結合できる。したがって、反応中に幾らかの沈殿は形成し得るが、上記反応混合物は、最初は実質的に均一である。
【0171】
上記の過程が実施される温度は、かろうじて凍結より上の温度から、多くの感受性酵素が変性する温度までの範囲であり得る。その温度範囲は、好ましくは、約0℃から約45℃であり、より好ましくは、約20℃から約37℃である。
【0172】
このように形成された反応混合物は、グリコシル化される基質に付加したオリゴ糖基上に存在する所望の高収量の所望のオリゴ糖決定基を得る上で、十分な時間が維持される。大規模調製では、反応は、約8〜240時間、より典型的には約12時間と72時間との間で進行させる。
【0173】
実質的に均一な基質を有する基質組成物を得るために、1種以上のグリコシルトランスフェラーゼが用いられる実施形態においては、第1のグリコシルトランスフェラーゼ反応がほぼ完了したら、第2のグリコシルトランスフェラーゼ反応のための酵素類および試薬類を反応媒体に加えることができる。酵素の幾つかの組合せでは。グリコシルトランスフェラーゼ類および対応する基質は、最初の単一反応混合物中に合わせることができ。このような同時反応における酵素類は、他の酵素に対する受容体として働き得ない産物は形成しないことが好ましい。例えば、多くのシアリルトランスフェラーゼ類は、フコシル化受容体をシアリル化しないため、シアリル化受容体にのみ作用するフコシルトランスフェラーゼ(例えば、FcT VII)が用いられない限り、双方の酵素による同時反応は、所望の高収量の所望のオリゴ糖決定基を生じない可能性が大きい。2つのグリコシルトランスフェラーゼ反応を、単一の容器内で連続して行うことにより、中間体種が単離される操作で総収量が改善される。さらに、余分な溶媒および副産物のクリーンアップと処理が減少する。
【0174】
1つ以上のグリコシルトランスフェラーゼ反応は、グリコシルトランスフェラーゼサイクルの一部として実施できる。グリコシルトランスフェラーゼサイクルの好ましい条件および説明は記載されている。多数のグリコシルトランスフェラーゼサイクル(例えば、シアリルトランスフェラーゼサイクル、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルおよびフコシルトランスフェラーゼサイクル)が、米国特許第5,374,541号および国際公開第9425615号に記載されている。他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルは、Ichikawaら、J.Am.Chem.Soc.114:p.9283(1992)、Wongら、J.Org.Chem.57:p.4343(1992)、DeLucaら、J.Am.Chem.Soc.117:p.5869−5870(1995)、Ichikawaら、Carbohydrates and Carbohydrate Polymers、Yaltami編集(ATL Press、1993)に記載されている。
【0175】
上記のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに関しては、上記工程に用いられる種々の反応体の濃度または量は、温度やpH値などの反応条件ならびに、グリコシル化される受容体糖の選択および量などの多数の因子に依存する。グリコシル化工程は、触媒量の酵素の存在下、活性化するヌクレオチド、活性化された供与体糖および生成したPPiのスカベンジングの再生を可能にするため、この工程は、先に検討した化学量論的基質の濃度または量により制限される。本発明の方法に従って使用できる反応体の濃度に関する上限は、反応体の溶解度によって決まる。
【0176】
受容体が消費されるまで、グリコシル化が進行するように、活性化するヌクレオチド類、ホスフェート供与体、供与体糖および酵素が選択されることが好ましい。下記で検討される考察は、シアリルトランスフェラーゼの文脈においてであるが、一般に他のグリコシルトランスフェラーゼサイクルに適用可能である。
【0177】
各々の酵素は、触媒量で存在する。具体的な酵素の触媒量は、その酵素の基質濃度ならびに温度、時間およびpH値などの反応条件によって変わる。予め選択された基質濃度と反応条件下で、所与の酵素に関して触媒量を決定する手段は、当業者に周知である。
【0178】
他の代表的実施形態において、反応混合物は、少なくとも1種のグリコシルトランスフェラーゼ、供与体基質、受容体糖および二価の金属イオンを含有する。反応媒体における二価の金属イオンの濃度は、約2mMと約75mMとの間、好ましくは、約5mMと約50mMとの間、より好ましくは、約5mMと約30mMとの間に維持される。
【0179】
反応媒体における金属イオン濃度を定期的にモニタリングし、追加量の二価金属イオンを媒体に補足することにより、反応サイクルを好適な時間枠内で完了させることができる。また、1種以上のグリコシルトランスフェラーゼが用いられる場合、中間体産物を単離することなく連続的サイクルを同一の反応容器内で実施することができる。さらに、阻害的なピロホスフェートを除去することにより、反応サイクルは、実質的により高い基質(受容体)濃度で実施できる。本発明の使用に好ましい二価金属イオンとしては、Mn++、Mg++、Co++、Ca++、Zn++、およびそれらの組合せが挙げられる。二価金属イオンは、Mn++であることがより好ましい。
【0180】
他の実施形態において、糖部分は、活性糖を用いて調製される。本発明に有用な活性糖は、典型的には活性遊離基を含むように合成的に変化させたグリコシド類である。本明細書に用いられる用語の「活性遊離基」とは、酵素調節求核性置換反応において、容易に置換される部分を言う。多くの活性糖が当該分野に知られている。例えば、Vocadloら、CARBOHYDRATE CHEMISTRY AND BIOLOGY、2巻、Ernstら編集、Wiley−VCH Verlag:独国Weinheim所在、2000年;Kodamaら、Tetrahedron Lett.34:p.6419(1993);Lougheedら、J.Biol.Chem.274:p.37717(1999)を参照されたい。
【0181】
活性基の例としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、トシレートエステル、メシレートエステル、トリフレートエステルなどが挙げられる。本発明に用いられる好ましい活性遊離基は、受容体へのグリコシドの酵素的転移を、立体的に有意に妨げないものである。したがって、活性グリコシド誘導体の好ましい実施形態としては、グリコシルフルオリド類およびグリコシルメシレート類が挙げられ、グリコシルフルオリド類が特に好ましい。グリコシルフルオリド類の中でも、α−ガラクトシルフルオリド、α−マンノシルフルオリド、α−グルコシルフルオリド、α−フコシルフルオリド、α−キシロシルフルオリド、α−シアリルフルオリド、α−N−アセチルグルコサミニルフルオリド、α−N−アセチルガラクトサミニルフルオリド、β−ガラクトシルフルオリド、β−マンノシルフルオリド、β−グルコシルフルオリド、β−フコシルフルオリド、β−キシロシルフルオリド、β−シアリルフルオリド、β−N−アセチルグルコサミニルフルオリドおよびβ−N−アセチルガラクトサミニルフルオリドが最も好ましい。
【0182】
例えば、グリコシルフルオリド類は、遊離糖から、先ず糖をアセチル化し、次にこれを、HF/ピリジンで処理することにより調製できる。これにより保護(アセチル化)グリコシルフルオリド(すなわち、α−グリコシルフルオリド)の熱力学的に最も安定なアノマーが生成する。より安定性の低いアノマー(すなわち、β−グリコシルフルオリド)が望まれる場合は、過アセチル化糖を、HBr/HOAcまたはHCIによって変換して、アノマーのブロミドまたはクロリドを生成させることによって調製できる。この中間体は、銀フルオリドなどのフルオリド塩と反応してグリコシルフルオリドを生成する。アセチル化グリコシルフルオリドは、メタノール中、緩和な(触媒的)塩基(例えば、NaOMe/MeOH)との反応により脱保護できる。なお、多くのグリコシルフルオリド類は、商品として入手できる。
【0183】
他の活性グリコシル誘導体は、当業者に公知の従来の方法を用いて調製できる。例えば、グリコシルメシレート類は、糖の完全ベンジル化ヘミアセタール体を、メシルクロリドで処理し、続いて触媒的水素化を行って、ベンジル基を除去することによって調製できる。
【0184】
好ましい実施形態において、上記方法は、グリコシル化、例えば、糖の適切なグリコシル受容体部分の約80%超のシアリル化をもたらす。一般に、約80%超のグリコシル化を得るために要する時間は、約48時間未満か。またはそれに等しい。
【0185】
(スキーム1)
【0186】
【化21】
スキーム1において、化学的または酵素的に調製されたセラミド骨格を、シアリルトランスフェラーゼおよびシアリン酸誘導体と接触させる。生じたシアリル化付加体を、GM2シンテターゼおよびGalNAc供与体を接触させる。生じた産物をGM1シンテターゼと接触させて、所望のグリコシルスフィンゴシンを得る。
【0187】
(スキーム2)
【0188】
【化22】
スキーム2において、セラミドはオゾン化されて、スフィンゴシンのアルキル鎖を不飽和の箇所で開裂し、アルデヒドの形成が生じる。このアルデヒドは、アルデヒドを所望のアルケンに変換するWittig反応の基質である。
【0189】
(スキーム3)
【0190】
【化23】
スキーム3は、Wittig条件下で、本発明の化合物を形成する他の例を提供している。スフィンゴ糖脂質のアルケン位の立体配置は、シス異性体をAIBNで処理し、混合物を照射することにより、シス異性体とトランス異性体との間で変換できる。
【0191】
(スキーム4)
【0192】
【化24】
スキーム4は、スフィンゴ糖脂質の調製法を示している。グリコシル化セラミドアルデヒドは、Mo=CH2の作用により、対応するメチレン誘導体へと変換される。生じるメチレン付加体を、Grubb触媒およびアルケンに接触させる。生じるオレフィンメタセシス反応により、所望のスフィンゴ糖脂質が生成する。
【0193】
(スキーム5)
【0194】
【化25】
スキーム5は、本発明のスフィンゴ糖脂質への他の代表的経路を提供している。グリコシル化チオフェニルセラミドは、Bu3SnHおよびAIBNによる反応でスタナン誘導体へと変換される。アルキル基、R7をグリコシル化セラミド骨格へ結合させるためにパラジウム結合化学が用いられる。
【0195】
(スキーム6)
【0196】
【化26】
スキーム6において、アルデヒドは、フェニルホウ酸の作用により、対応するベンジルアルケン誘導体へと変換される。塩基の第二位のヒドロキシル部分は、ジオクチルアミノ部分へと変換される。
【0197】
(スキーム7)
【0198】
【化27】
スキーム7により、アルデヒドは、対応するビニルハライドへと変換される。このハライドは、適切な第一スズ化合物またはホウ酸により置換されて所望の化合物を提供する。
【0199】
受容体がセラミドの場合、酵素的ステップは、セラミドの脂肪酸部分の加水分解によって任意に進行する。スフィンゴ糖脂質の脂肪酸部分を除去する方法は、当業者に公知である。例えば、Paulsonら(1985)Carbohydrate Res.137:p.39−62;Beith−Halahmiら(1967)Carbohydrate Res.5:p.25−30;AlaisおよびVeyrieries(1990)Carbohydrate Res.207:p.11−31;GrudlerおよびSchmidt(1985)Carbohydrate Res.135:p.203−218;Ponpipomら、(1978)Tetrahedron Lett.p.1717−1720;Muraseら(1989)Carbohydrate Res.188:p.71−80;Kameyamaら(1989)Carbohydrate Res.193:c1−c5;Hasegawaら(1991)J.Carohydrate Chem.10:439−459;SchwarzmannおよびSandhoff(987)Meth.Enzymol.138:p.319−341;GuadinoおよびPaulson(1994)J.Am.Chem.Soc.116:p.1149−1150(参照として、本明細書に組み込まれている補足物質を含む)などの標準的な炭水化物およびスフィンゴ糖脂質の化学方法論を用いることができる。例えば、脂肪酸部分は、塩基の加水分解によって除去できる。グリコシル化反応が完了したら、このグリコシル化反応の産物に、同一の、または異なった脂肪酸を付加することができる。脂肪酸を結合させる方法は、当該分野で一般に知られており、例は、本明細書の上記に検討されている。
【0200】
(精製)
上記の方法により、製造した産物は、精製せずに用いることができる。しかし、幾つかの適用においては、上記化合物を精製することが望ましい。基質を精製するための照準的な周知の方法が一般に好適である。例えば、薄層または厚層クロマトグラフィ、カラムクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、または膜ろ過を使用できる。また、好ましくは、逆浸透膜を利用する膜ろ過または1つ以上のカラムクロマトグラフィ法が利用できる。 例えば、グリコシルトランスフェラーゼなどの蛋白質を除去するために、膜が、約3000から約10,000の分子量限界を有する膜ろ過を使用できる。次いで、塩および/または生成した糖を除去するために、ナノろ過または逆浸透を使用できる(例えば、国際公開第98/15581号を参照)。ナノフィルタ膜は、一価の塩は通すが、多価の塩および使用される膜に依って、約100ダルトンから約2,000ダルトン超の大きさの非荷電溶質を保持する逆浸透膜の1クラスである。したがって、典型的な適用において、本発明の方法により調製された糖は、上記膜に保持され、混入塩類は通過する。
【0201】
他の代表的精製法では、有機溶媒と関連させて膜を利用する。糖脂質とスフィンゴ糖脂質類の双方が、この方法によって精製できる。さらに、本明細書に記載されている中間体酵素反応産物のいずれもが、この方法によって精製できる。上記方法は、膜精製システムにおける反応産物を、有機溶媒の添加によって濃縮することを含む。好適な溶媒としては、限定はしないが、アルコール類(例えば、メタノール)、ハロカーボン類(例えば、クロロホルム)および炭化水素とアルコール類との混合物(例えば、キシレン/メタノール)が挙げられる。好ましい実施形態において、上記溶媒はメタノールである。濃縮ステップでは、反応産物を任意の選択された程度まで濃縮できる。一般に、濃縮の程度は、約1倍から約100倍であり、約5倍から約50倍を含み、また、約10倍から約20倍を含む。上記膜精製システムは、当業者に公知の種々のこのようなシステムから選択される。例えば、1つの有用な膜精製システムは、10K中空繊維である。代表的な一実施形態において、上記方法は、10K中空繊維膜精製システムを用いて、反応混合物を約10倍濃縮し、水を加えて上記溶液を、元の容量の約10分の1にダイアフィルトレーションし、上記濃縮水にメタノールを加え、ダイアフィルトレーションして透過水中に反応産物を通過させる工程を包含する。透過水溶液を濃縮して反応産物を得る。
【0202】
(検出可能標識)
代表的一実施形態において、本発明の化合物は、蛍光体または放射性同位体などの検出可能標識を含む。例えば、標識化されたグリコシル部分が、本明細書で検討した適切なグリコシルトランスフェラーゼに対する基質として働くことを依然として可能にさせる様式で、検出可能標識を、リンカーアームによってグリコシル部分(例えば、シアリン酸)に付加することができる。
【0203】
標識が利用される本発明の実施形態は、蛍光標識の使用によって例示される。蛍光標識は、それらの取り扱いに要する注意が少ないという利点を有し、高スループット視覚化法(コンピュータを含む統合システムにおける解析用画像デジタル化を含む光学分析)に受入れことができる。好ましい標識は、高感度、高安定性、低バックグランド、長い寿命、低い環境鋭敏性および標識における高特異性を典型的に特徴とする。
【0204】
多数の蛍光標識を、本発明の組成物に組み込むことができる。多数のこのような標識は、例えば、SIGMA化学会社(ミズーリ州セントルイス所在)、Molecular Probes(オレゴン州ユージーン所在)、R&D systems(ミネソタ州ミネアポリス所在)、Pharmacia LKB Biotechnology(ニュージャージ州ピスカタウェイ所在)、CLONTECH Laboratories社(カリフォルニア州パロアルト所在)、Chem Genes社、Aldrich化学会社(ウィスコンシン州ミルウォーキー所在)、Glen Research社、GIBCO BRI Life Technologies社(メリーランド州ガイセルスバーグ)、Fluka Chemica−Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG、スイス国Buchs所在)、およびApplied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティ)ならびに当業者に公知の他の多数の商品供給源から商品として入手できる。さらに、当業者は、特定の適用に対して、適切な蛍光体の選択の仕方を認識するであろうし、また、それが商品として容易に入手できない場合は、新規に必要な蛍光体を合成できるか、または商品として入手できる蛍光化合物を合成的に修飾して、所望の蛍光標識にすることができる。
【0205】
(薬学的製剤)
さらに他の実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能なキャリアと混合した本発明による方法によって製造された化合物を含む薬学的製剤を提供する。
【0206】
次に、上記の所望のオリゴ糖決定基を有する基質が、種々の適用、例えば、抗原、診断用試薬として、また治療薬として使用できる。このように、本発明はまた、種々の病態に使用できる薬学的組成物を提供する。上記薬学的組成物は、上記の方法に従って作製された基質から構成される。
【0207】
本発明の薬学的組成物は、種々の薬物送達システムにおける使用に好適である。本発明における使用に好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mace出版社、ペンシルバニア州フィラデルフィア所在、第17版(1985)に見られる。薬物送達法の簡単なレビューには、Langer、Science249:p.1527−1533(1990)を参照されたい。
【0208】
上記薬学的組成物は、予防的/または治療的処置のために、非経口投与、鼻腔内投与、局所投与、経口投与、またはエアロゾルまたは経皮による局部投与が意図されている。一般に上記薬学的組成物は、非経口的に、例えば静脈内に投与される。非経口投与用製剤としては滅菌水性または非水性溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステル類がある。水性キャリアとしては、生理食塩水および緩衝剤を含む水、アルコール性/水溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。非経口媒体としては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム溶液、乳酸化リンガー液または不揮発性油が挙げられ、静脈内媒体としては、体液補液および栄養補液、電解質補液(リンガーデキストロースに基づくものなど)などが挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガス類などの防腐剤や他の添加物もまた存在し得る。上記組成物は、生理学的条件に近づけるために、必要に応じて、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤、界面活性剤などの薬学的に受容可能な補助物質を含有し得る。
【0209】
また、上記組成物は、免疫原性種、例えば、本発明の方法により調製されたKLHに共役しているアグリコ脂質も含有し得る。さらに、本発明の方法により調製された組成物およびそれらの免疫原性共役体を、アジュバントと組み合わせることができる。
【0210】
これらの組成物は、従来の滅菌法により滅菌できるか、または滅菌ろ過できる。生じる水性溶液は、それ自体で使用するために包装できるか、または凍結乾燥でき、凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水性キャリアと組合わされる。上記製剤のpHは、典型的には3と11との間であり、より好ましくは、5から9であり、最も好ましくは、7から8である。
【0211】
上記化合物を含有する組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与できる。治療適用において、組成物は、上記の疾病に既に罹っている患者に、その疾病およびその合併症の症状を治療する、または少なくとも部分的に阻止する上で十分な量において投与される。このことを達成する上で十分な量は、「治療的有効用量」と定義される。この使用に有効な量は、疾病の重症度ならびに患者の体重および全身状態に依存するが、一般に70kgの患者に対して、1日当たり、基質の約0.5mgから約2.000mgの範囲であり、1日当たり、上記化合物の約5mgから約200mgの投与量が一般に使用される。
【0212】
予防的適用において、本発明の基質を含有する組成物は、特定の疾病に感染し易いか、さもなければ、その危険にある患者に投与される。このような量は、「予防的有効用量」であると定義される。この使用において、正確な量はやはり、患者の健康状態と体重に依存するが、一般的には70キログラムの患者に対して約0.5mgから約2.000mgの範囲であり、より一般的には、70キログラムの体重当たり約5mgから約200mgの範囲である。
【0213】
組成物の単回投与または複数回投与が、治療医師により選択される用量レベルと様式で実施できる。いずれの場合においても、上記薬学製剤は、有効に患者を治療する上で十分な本発明の基質量を提供する必要がある。
【0214】
上記基質は、診断用試薬としても使用できる。例えば、所望のオリゴ糖決定基と対応するリガンドとの間の相互作用により、体内で基質が濃縮される位置を決定するために、標識化基質が使用できる。この使用のために、上記化合物を適切な放射性同位体、例えば、125I、14Cまたはトリチウムにより、または当業者に公知の他の標識により標識化できる。
【0215】
本発明のスフィンゴ糖脂質類の投与に関する用量範囲は、免疫応答の症状がある程度の抑制を示す、所望の効果を生じる上で十分に大きいものである。上記用量は、有害な副作用を生じるほど大きな用量であってはならない。一般に、上記用量は、動物における年齢、病態、性別および疾病の程度によって変わり、当業者によって決定することができる。上記用量が、何らかの表示外の場合、個々の医師により調製できる。
【0216】
作用持続時間を制御するために、追加の薬学的方法を使用し得る。制御放出製剤は、スフィンゴ糖脂質を共役、複合化または吸着するポリマーの使用により得ることができる。送達制御は、適切な高分子類(例えば、ポリエステル類、ポリアミノカルボキシメチルセルロースおよび硫酸プロタミン)の選択および高分子類の濃縮、ならびに放出を制御するための組み込み法により実施できる。放出制御製剤によって作用時間を制御するための他の可能な方法は、スフィンゴ糖脂質をポリエステル類、ポリアミノ酸、ヒドロゲル類、ポリ(乳酸)コポリマー類またはエチレン酢酸ビニルコポリマー類などのポリマー材料の粒子に組み込むことである。
【0217】
スフィンゴ糖脂質が、血漿蛋白質と結合することを防ぐために、例えば、コアセルベーション法、または界面重合化により、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−ミクロカプセルおよびポリ(メチメタクリレート)ミクロカプセルによって調製されたミクロカプセルにおいて、またはコロイド薬物送達システム、例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロ乳濁液、ナノ粒子およびナノカプセルまたはマクロ乳濁液において捕捉されることが好ましい。このような方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第16版、A.Oslo編集、Mack、ペンシルバニア州イーストン所在、(1980)に開示されている。
【0218】
本発明のスフィンゴ糖脂質は、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェアまたはビーズの形態の合成または天然ポリマーなどの標的化可能な薬物送達システム、また、水中油乳濁液、ミセル、混合ミセル、リポソームおよび再密封赤血球などの脂質ベースシステムにおける使用に十分適合化されている。これらのシステムは、まとめてコロイド薬物送達システムとして知られている。典型的に、このような分散したスフィンゴ糖脂質を含有するコロイド粒子の直径は、約50mm〜2μmである。このコロイド粒子のサイズにより、これらは、注射などによる静脈内に、またはエアロゾルとして投与されることが可能となる。コロイドシステムの調製に用いられる材料は、典型的にフィルタ滅菌、非毒性および生体分解性の、例えばアルブミン、エチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、レシチン、リン脂質および大豆油により滅菌可能である。高分子コロイドシステムは、ミクロカプセル化のコアセルベーションと同様の方法により調製される。
【0219】
代表的な一実施形態において、スフィンゴ糖脂質類は、標準的送達システムとして用いられるリポソームの成分である。リン脂質類を水性媒体に静かに分散させると、それらは膨張し、水和し、脂質二重層を分離させる水性媒体の層を有する多層同心性二層ベシクルを自発的に形成する。このようなシステムは、通常、多層リポソーム類または多層ベシクル類(MLV類)と称され、約100nmから約4μmの範囲の直径を有する。MLV類を音波処理すると、直径が約20nmから約50nmの範囲のSUVのコア内に水性溶液を含有する小型の単層ベシクル類(SUVS)が形成される。
【0220】
リポソーム製造に有用な脂質の例としては、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルエタノールアミンなどのホスファチジル化合物が挙げられる。脂質部分が、14個〜18個の炭素原子、特に16個から18個の炭素原子を含有し、飽和されているジアシル化ホスファチジルグリセロールが特に有用である。リン脂質の例としては、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0221】
本発明のスフィンゴ糖脂質類を含有するリポソーム類の調製においては、スフィンゴ糖脂質カプセル化効率、スフィンゴ糖脂質の不安定性、生じるリポソーム集団の均一性とサイズ、スフィンゴ糖脂質対脂質比、製剤の透過性不安定性および製剤の薬学的受容性などの変数を考慮する必要がある。Szokaら、Annual Review ofBiophysics and Bioengiねえりんg、9:p.467(1980);Deamerら、LIPOSOMES、Marcel Dekker、ニューヨーク所在、1983年、27:Hopeら,Chem.Phys.Lipids、40:p.89(1986))。
【0222】
本発明のスフィンゴ糖脂質を含有する標的化送達システムは、宿主、特に哺乳動物宿主に対し、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、血管内、局所、空洞内、経皮、鼻腔内および吸収などの種々の方法で投与できる。スフィンゴ糖脂質類の濃度は、具体的な適用、疾病の性質、投与回数などに依って変化する。標的化送達システム−カプセル化スフィンゴ糖脂質は、適切な水性の生理学的に許容できる媒体、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などとしての他の化合物を含む製剤において提供できる。
【0223】
本発明の方法により製造された化合物は、本発明の化合物に特異的に反応するモノクローナルまたはポリクローナル抗体に対する免疫原としても使用できる。種々の免疫グロブリン分子の製造および操作に関して、当業者に利用できる多数の方法が本発明に使用できる。抗体は、当業者に周知の種々の手段によって製造できる。
【0224】
非ヒト、例えば、マウス、ウサギ、ウマなどのモノクローナル抗体の製造は、周知であり、例えば、本発明の基質を含有する製剤によって、動物を免疫化することにより達成できる。免疫化動物から得られた抗体産生細胞は不死化されて、スクリーニングされるか、または所望の抗体産生に関して、先ずスクリーニングされてから不死化される。モノクローナル抗体産生の一般的操作手順の検討に関しては、HarlowおよびLane、Antibodies、A Laboratory Mannual Cold Spring Harbor出版、ニューヨーク(1988)を参照されたい。
【0225】
治療を必要とする被験体(動物またはヒト)、好ましくは、哺乳動物は、治療的有効量、すなわち、単独で、または薬学的組成物の一部として、本発明の化合物の最適な有効性を提供する用量を投与され得る。当業者に認識されると思われるが、「治療的有効量」および投与様式は、被験体ごとに変わり、したがって、ケースバイケースに基づいて決定されることになる。考慮すべき因子としては、限定はしないが、治療を受ける被験体(例えば、哺乳動物)、その性別、体重、食事、併用薬、全体的な臨床病態、使用される具体的化合物およびこれらの化合物が使用される特定の使用法が挙げられる。治療的有効量または投与量は、インビトロ法またはインビボ法のいずれかによって決定できる。一般に、ある化合物または組成物の「治療的有効量」は、神経細胞の障害予防、治療または治癒をもたらす量である。例えば、パーキンソン病の予防、治療または治癒における本発明の化合物または組成物の治療的有効量は、その疾病の進行の速度比および/または運動技能の発達をもたらす量である。アルツハイマー病の予防、治療または治癒における本発明の化合物または組成物の治療的有効量は、例えば、被験体の記憶の改善をもたらす量である。エシェミア/発作の持続的作用の予防、治療または治癒における本発明の化合物または組成物の治療的有効量は、例えば、神経系機能(例えば、発話、運動など)の欠損減少および/または交感神経または副交感神経経路の改善をもたらす量である。
【0226】
投与様式としては、限定はしないが、経口、注射、静脈内(ボーラスおよび/または点滴)、皮下、筋肉内。経結腸、経直腸、鼻腔内および腹腔内投与など、当業者に公知のものが挙げられる。本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、経口摂取されることが好ましい。
【0227】
皮下針による注射では、上記用量は体液内へ送達されることが想定できる。他の投与経路に関しては、本発明の各化合物についての吸収効率が、薬理学において周知の方法により個々に決定できる。したがって、当業者には理解されると思われるが、最適な治療効果を得るためには、治療者が必要に応じて、用量の力価決定をし、投与経路を修正することが必要であると考えられる。有効用量レベル、すなわち、所望の結果を達成するために必要な用量レベルの決定は、当業者の能力範囲内にある。典型的には、本発明の化合物は、低用量レベルで投与され、所望の効果が得られるまで用量レベルが増加される。
【0228】
典型的な用量は、約0.1mg/kgから約1000mg/kg、好ましくは約0.1mg/kgから約100mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kgから約30mg/kg、さらに好ましくは約0.1mg/kgから約10mg/kg、より一層好ましくは約0.1mg/kgから約3mg/kgの範囲であり得る。有利なことに、本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、1日数回投与でき、また、他の用法用量もまた有用であり得る。本発明の化合物は、単回投与または複数回投与(例えば、1日2回から4回の分割投与)および/または連続的輸液における用法で投与できる。
【0229】
投与に関して、本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、投与前に滅菌できる。滅菌は、0.2ミクロン膜などの滅菌膜を通したろ過により、または他の従来の方法により容易に達成できる。本発明の化合物は、単独で、または薬学的組成物の一部として、典型的には、凍結乾燥形態で、または水性溶液で、または水性溶液として保存できる。一定の投与様式において、pHは一因子であり得る。そのような場合、pHは、典型的には約2〜10の間の範囲、好ましくは約5〜8の間の範囲、より好ましくは6.5〜7.5の範囲、すなわち生理的pHである。
【0230】
(方法)
(処置および神経保護)
他の実施形態において、本発明は、神経系障害の予防または処置を必要とする動物またはヒトに、本発明の化合物の治療的有効量を投与する工程を包含する、動物またはヒトにおける神経系障害の予防または処置のための方法を提供する。本発明の化合物は、任意の数の神経系障害を治療するために用いられる。代表的な神経系障害は、パーキンソン病、虚血、脳卒中、アルツハイマー病、うつ病、不安、脳炎、髄膜炎、筋萎縮性側索硬化症、外傷、脊髄損傷、神経損傷および神経再生よりなる群から選択される。他の代表的な実施形態において、上記障害は、神経膠腫などの増殖障害である。
【0231】
本発明の化合物は、神経保護的である(例えば、ニューロンおよびグリアを保護する)。用語の「神経保護」は、神経細胞の損傷から生じる徴候のいずれかの予防(発症前)、治療(発症)および/または治癒(発症後)に関する。このような徴候としては、パーキンソン病、虚血、低酸素症、脳卒中、てんかん、代謝機能障害、老化、毒性疾患、アルツハイマー病、中枢神経系障害(例えば、脊髄損傷)、多発性硬化症、ハンチントン病、CABG、うつ病、不安、脳炎、髄膜炎、筋萎縮性側索硬化症、外傷、脊髄損傷、神経損傷、ニューロパシーおよび神経再生が挙げられる。
【0232】
また、本発明の化合物は、神経形成性(例えば、ニューロンの分化ならびに幹細胞および始原細胞の増殖または分化を促進する)および/または神経突起生成性(例えば、神経突起の成長およびシナプス形成を促進する)であり、したがって、種々多様な神経疾患と病態の治療に有用であると考えられる。例えば、神経突起生成性化合物は、例えば、末梢ニューロパシーおよびニューロン損傷に関連した疾患(例えば、脳卒中、虚血性損傷、横断脊髄炎、外傷、脊髄損傷および糖尿病に伴うニューロパシー)においてなど、神経機能の回復を目的とした療法において有利に使用できる。
【0233】
また、本発明の化合物は、免疫系の多数の異なる細胞タイプ(例えば、CD4+T細胞、リンパ球およびNK細胞)の増殖を阻害する。したがって、選択された化合物は、免疫抑制的であり、それゆえ、多発性硬化症、関節リウマチ、類肉腫、腫瘍随伴疾患、シェーグレン、乾癬、強皮症、血管炎、慢性多発関節炎、紅斑性狼瘡、若年性真性糖尿病などの全身または臓器特異的自己免疫疾患の治療および/または処置のため、また、臓器移植拒絶ならびに骨髄または幹細胞移植の場合などの宿主に対する移植材料による拒絶を防ぐために有用である。
【0234】
また、本発明の化合物は、肝臓、肺、結腸、前立腺、乳房、膵臓および血管神経膠腫および神経上皮腫などの脳癌などの癌の治療に一般に有用である。さらに、本発明の化合物は、免疫抑制剤および免疫刺激剤として有用であり、臓器移植、自己免疫疾患、関節炎、全身性紅斑性狼蒼、過敏性腸疾患、放射能毒性ならびに炎症、乾癬、皮膚炎、多発性硬化症、外傷および敗血症において適用される。
【0235】
本発明の化合物は、T細胞およびB細胞を刺激または抑制するために使用でき、また抗体の抑制または刺激のために使用できる。T細胞およびB細胞を刺激および抑制する方法は、当該分野によく知られている。さらに、本発明の化合物は、G蛋白結合受容体細胞表面膜受容体系および核膜受容体などの膜受容体を阻害または活性化するための方法において使用できる。本発明の化合物はさらに、II型糖尿病の治療に、またエトリオポエチン(ethryopoeitin)代替物として使用できる。
【0236】
また、本発明の化合物は、血小板凝集の阻害剤としても有用である。さらに、本発明の化合物は、CCRC%およびCXC4などのG蛋白結合受容体を介して、ウィルス接着を阻害することによりAIDSの治療に有用である。また、本発明の化合物は、シャガス病ならびに、おのおのが参照として本明細書に組み込まれている、米国特許第4,476,119号、米国特許第4,593,091号、米国特許第4,639,437号、米国特許第4,707,469号、米国特許第4,713,374号、米国特許第4,716,223号、米国特許第4,849,413号、米国特許第4,940694号、米国特許第5,045,532号、米国特許第5,135,921号、米国特許第5,183,807号、米国特許第5,190,025号、米国特許第5,210,185号、米国特許第5,218,094号、米国特許第5,229,373号、米国特許第5,260,464号、米国特許第5,264,424号、米国特許第5,350,841号、米国特許第5,424,294号、米国特許第5,484,775号、米国特許第5,519,007号、米国特許第5,521,164号、米国特許第5,523,294号、米国特許第5,667,285号、米国特許第5,792,858号、米国特許第5,795,869号、および米国特許第5,849,717号に記載されている疾患、障害、および病態などの疾病の治療にも有用である。
【0237】
本発明の化合物の作用の1つの可能な機構は、神経増殖因子類を刺激するものである。本発明の化合物の作用の他の可能な機構は、癌細胞、特に神経芽細胞腫細胞の増殖を阻害するものである。例えば、マウス神経芽細胞腫細胞に、ガングリオシドGM3を投与することにより、神経芽細胞腫細胞の増殖が阻害できることが示されている(Zhangら、1995年、Anticancer Res.15:p.661−6)。本発明のスフィンゴ糖脂質およびスフィンゴ糖脂質様化合物は、同様な阻害能力において使用できる。
【0238】
本発明の化合物および薬学的組成物は、ヒトなどの霊長類、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスなどの通常哺乳動物において、インビボで、またはインビトロで利用できる。神経保護剤としての本発明の化合物の有効性は、当該分野に公知のスクリーニングプロトコルを用いて決定できる。例えば、本発明の化合物の上記の生物学的性質は、例えば、インビトロスクリーニングプロトコル(例えば、細胞培養(MPTP(ラット腹縫腺メゾフェンタリック(mesophenthalic)細胞)、NMDA(マウス一次皮質ニューロン)、セラミド(神経芽細胞腫−ヒト))、CACO−2(経口吸収、RBCリーシス)ならびに神経保護有効性を評価するためのインビボ試験(例えば、パーキンソン病治療における有効性に関するマウスおよび霊長類MPTP毒性試験(IP、IVおよび/または経口)、脳卒中またはCABGによる神経損傷治療の有効性に関するラット脳卒中試験およびCABGの治療に関するイヌの試験)など、当該分野に公知の方法により、容易に特性化できる。
【0239】
本明細書に記載されている細胞ベースのアッセイにおいて、本発明の化合物は、GM1などのガングリオシドが有効である濃度よりも著しく低い、約0.1μMから約1μMの間の低濃度で50〜100%大きな神経保護活性を示した。
【0240】
以下の実施例を参照にして、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、例示のみを目的として提供されるものであって、本発明が、これらの実施例に限定されるのではなく、本明細書に提供された教示の結果、明白となる任意の全ての変型を含むと解釈すべきである。
【実施例】
【0241】
(実施例1.GM1アルデヒド調製の一般的操作手順)
GM1(2.5g、1.62mmol)を、2500mLのメタノールに溶解した。この溶液を−70℃に冷却し、淡青色が現れなくなるまで(約30分)溶液にオゾンを通気した。溶液が無色になるまで、反応混合液に窒素を通気することにより、オゾンを除去した。次いで、80mLのジメチルスルフィドを加え、生じる混合物を室温で2時間攪拌した。溶液を窒素と共に蒸発乾固した。残渣をトルエン(50mL)と共に同時蒸発させ、この残渣を高度真空ポンプで1時間乾燥し、アルデヒドを含有する白色固体を得た。
【0242】
(実施例2.Wittig反応による:
【0243】
【化28】
の調製)
臭化3−クロロ−2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンジル−トリフェニルホスホニウム(2.58g、4.66mmol)ジメチルホルムアミド(DMF)(50mL)を含有する懸濁液を、−40℃に冷却してから、t−ブチルアルコール溶液(4.49mL)を加えた。10分後、この反応混合物を、DMF(200mL)に溶解させたアルデヒド溶液に徐々に加え、−40℃に冷却した。添加完了後、反応混合物を室温で1時間攪拌した。次いで、反応混合物をロータリー蒸発により濃縮し、残渣をクロマトグラフィ(シリカ、CHCl3/MeOH3:1、次いでMeOH/H2O/NH4OH60:40:7:1)を行って、1.5g(収率60%)の所望の生成物を、凡そ70/30のシス/トランス混合物として得た。ESI−MS;C67H106ClF4N3O31の計算値、1559;実測値1558[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ7.98(d、J 6.0Hz、2H)、7.84(d、J 6.0Hz、1H)、7.82(d、J 5.5Hz、2H)、7.60(d、J 5.5Hz、1H)、7.34(d、J 9.5Hz、2H)、6.64(d、J 16Hz、1H)、6.48(d、J 11.5Hz、2H)、5.93(dd、J 11.5/11.5Hz、2H)、4.79(d、J 8.5Hz、2H)、4.27(d、J8.0Hz、2H)、4.21(d、J 8.5Hz、2H)、3.00−4.00(m)、1.98(m、2H)、1.86(s、3H、COCH3)、1.78(s、3H、COCH3)、1.25(m)、0.83(t、3H、CH3)。
【0244】
(実施例3.Wittig反応による:
【0245】
【化29】
の調製)
出発イリドを変えたこと以外は、実施例2のWittig操作に従った。所望の生成物は、白色固体(収率43%)として得た。ESI−MS;C65H108N4O31の計算値、1440;実測値1439[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ8.46(d、J 4Hz、1H)、7.70(dd、J 6.5および9.6Hz、1H)、7.37(d、J 8.0Hz、1H)、7.18(dd、J 5.0および5.0Hz、1H)、6.64(dd、J15.5および6.0Hz、1H)、6.57(d、J 15.5Hz、1H)、4.82(d、J 8.5Hz、1H)、4.27(d、J8.0Hz、1H)、4.18−4.22(2d、2H)、3.10−3.93(m)、2.02(t、2H)、1.86(s、3H、COCH3)、1.75(s、3H、COCH3)、1.36(m、2H)、1.22(s)、1.06(m、2H、CH3)、0.83(t、3H、CH3)。
【0246】
(実施例4.Wittig反応による:
【0247】
【化30】
の調製)
出発イリドを変えたこと以外は、実施例2のWittig操作に従った。所望の生成物は、固体(収率21%)の50/50のシス/トランス混合物として得た。ESI−MS;C64H111N3O31の計算値、1417;実測値[M−1]−。
【0248】
(実施例5.Wittig反応による:
【0249】
【化31】
の調製)
出発イリドを変えたこと以外は、実施例2のWittig操作に従った。所望の生成物は、固体(収率45%)として得た。ESI−MS;C68H109ClN6O31の計算値、1540;実測値1539[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ8.00(d、J 9.0Hz、2H)、7.50(d、J 9.0Hz、2H)、4.80(d、J 8.5Hz、1H)、4.26(d、J8.0Hz)、4.22(d、J 7.5Hz、2H)、4.19(d、J 8.0Hz、1H)、3.05−4.00(m)、2.02(m、2H)、1.87(s、3H、COCH3)、1.75(s、3H、COCH3)、1.21(s)、0.83(t、J6.5Hz、CH3)。
【0250】
(実施例6.
【0251】
【化32】
の調製)
実施例1のGM1アルデヒド(20mg、0.013mmol)およびジオクチルアミン(6mg、0.024mmol)を、室温で攪拌しながら2.5mLのジメチルホルムアミド(DMF)に加えた。次いで、メタノール(5mL)中のトランス−2−フェニルビニルボロン酸(9mg、0.045mmol)を加えた。生じる溶液を室温で3日間攪拌した。次いで、反応混合物を、ロータリー蒸発させて濃縮乾固し、残渣を、1g HAXカートリッジを用いて固相抽出により精製した。次いで、溶出液は、HPLCを用いて精製し、9.5mg(収率43%)の白色固体を得た。ESI−MS;C83H144N4O31の計算値、1693;実測値1692[M−1]−。1H−NMR(500MHz、95%DMSO−d6+5%D2O)δ8.05(d、J 3.0Hz、1H)、7.70(m 5H)、6.40(m、1H)、6.25(dd、J 9.0および16Hz、1H)、4.80(d、J 8.5Hz、1H)、4.28(d、J8.0Hz、1H)、4.22(d、J 8.0Hz、1H)、4.16(d、J 4.2Hz、1H)、3.00−4.00(m)、2.10(m、2H)、1.86(s、3H、COCH3)、1.60(s、3H、COCH3)、1.19(s)、0.83(t、3H、CH3)。
【0252】
(実施例7.神経保護有効性評価のためのMPTP/VMCアッセイ(インビトロ))
腹側中脳(mesophenthalic)細胞(VMCs)を、ラット胎仔脳幹(15日齢)から単離した。各プレート上で細胞を対照と共に数日間培養する(48ウェルのプレート)。細胞を1−メチル−4−フェニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(MPTP)(10μM)により24時間処理すると、30〜50%の細胞が死滅する。次いで毒素を除去する。次に、細胞を、DMSO中の本発明の化合物により処理する。24時間後、チロシンヒドロキナーゼ免疫染色および細胞数の計測を行う。
【0253】
対照は、NPTP(10μM−30〜50%の細胞死滅)およびGM1(30μM)またはLIGA−20(10μM)−30−50%保護である。
【0254】
(NMDA興奮毒性)
Dawsonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:p.7797(1991)を参照されたい。滅菌H2O中、10mM NMDAおよび10mMグリシンの保存溶液を、マグネシウムのない対照塩溶液(CSS)(120mM NaCl、5.4mM KCl、1.8mM CaCl2、室温pH7.4の25mMトリス−塩酸、15mMグルコース)中、それぞれ500Mおよび10Mの操作濃度に希釈する。細胞を、スフィンゴ糖脂質模擬物によって3日間前処理する。次いで上記完全媒体を、細胞から慎重に除去し、マグネシウムのないCSSで3回静かに洗浄する。NMDA/グリシン/CSSの操作溶液を上記細胞に5分間加え、直ちに吸引し、MgCl2(1mM)を含有するCSSで置換して反応を停止させる。次いでスフィンゴ糖脂質模擬物を有する、および有さない完全媒体中、さらに20〜24時間培養してから、細胞生存にとって適切な培養器に関して評価する(トリパンブルー除外およびHoescht/ヨウ化プロピジウム染色)。
【0255】
(実施例8.リソ−ラクトシルセラミドのシアリル化)
本実施例では、リソ−ラクトシルセラミドに関する反応条件を記載する。ラクトシルセラミドを、ウシバターミルクから得、脂肪酸部分を塩基加水分解部分により除去し、リソ−ラクトシルセラミドを形成する。HEPES緩衝液(200mM、8%MeOH含有、pH7.5、50μL)中、リソ−ラクトシルセラミド(1.0mg、1.6μmol)およびCMP−シアリン酸(2.46mg、純度65%、2.40μmol)の混合物を、20分間音波処理した。次に、α2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、6U/mL、50mU)に次いでアルカリホスファターゼ(1μL、1.0x105U/mL、100U)を加えた。上記反応混合物を室温に維持した。1日後、さらにα2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、6U/mL、50mU)分を加えた。さらに4日後、
追加のα2,3シアリルトランスフェラーゼ(10μL、6U/mL、50mU)分を加えた。室温でさらに1日後、薄層クロマトグラフィは、反応がほぼ終了していることを示した。
【0256】
(実施例9.ウシバターミルクより得られたラクトシルセラミドからのGM2合成)
ウシバターミルクより得られたラクトシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成に関する2つの経路を示す概略図が図1に示されている。左側に示された経路において、脂肪酸はシアリル化の前にラクトシルセラミドから除去されることはなく、反応は、有機溶媒の存在下では実施されない。対照的に右側の反応は、有機溶媒の存在下で、脂肪酸を除去して実施される。
【0257】
先ず、塩基と水とによる処理で、ラクトシルセラミドからの脂肪酸を加水分解する(ステップ1)。次にα2,3シアリルトランスフェラーゼ、好ましくは、ST3Gal IVを用いた酵素的転移により、シアリン酸残基をガラクトース残基へ付加する(ステップ2)。この反応は、有機溶媒の存在下で実施できる。次にGalNAcトランスフェラーゼを用いて、β1,4結合において、GalNAc残基をガラクトースへ付加する(ステップ3)が;このステップは、有機溶媒の存在下で実施しても、しなくてもよい。最後に、脂肪酸部分をスフィンゴシンに再付加して、所望のGM2ガングリオシドを得る。この反応は、シアリル化時、有機溶媒の存在により、典型的には、ほぼ完了まで進行する。
【0258】
(実施例10.植物グルコシルセラミドからのスフィンゴ糖脂質類の合成)
本実施例では、前駆体として、植物グルコシルセラミドを用いて、GM2ガングリオシドを合成する3つの代替法を記載する(図3)。経路1において、グリコシルセラミドへのGal残基の転移を触媒するために、β1,4−ガラクトシダーゼが用いられる。同時にGalにシアリン酸残基を結合するために、シアリルトランスフェラーゼサイクルにおいて、α2,3シアリルトランスフェラーゼが用いられる。次に、上記反応混合物に、UDP−GalNAcにより、またはGalNAcトランスフェラーゼサイクルの一部としてβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼを加える。このステップにおいて、GalNAc残基は、α2,3結合において、Gal残基に結合する。
【0259】
経路2は、グルコシルセラミドへのGalの付加が、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルまたはUDP−Glc/Galのいずれかを受容体糖として用いて、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により、触媒される点で、経路1に示された合成と異なっている。シアリル化とGalNAcの付加を上記のとおり実施してGM2を得る。
【0260】
経路3において、グリコシルトランスフェラーゼステップの前に、水性塩基による処理により、脂肪酸が先ず除去される。ガラクトシル化、シアリル化およびGalNAcトランスフェラーゼ反応は、経路2のとおり実施される。GalNAc残基の付加後、脂肪酸が上記分子に結合される。この脂肪酸は、もともと植物のグルコシルセラミドに見られるものと同じでもよいし、異なっていてもよい。図4に示されている実施例において、活性化C18脂肪酸を用いて、GM2合成がもたらされる。脂肪酸がグリコシル化反応の前に除去されると、一般により高い効率が見られる。
【0261】
(実施例11.グルコシルセラミドからのガングリオシドGM2の合成)
本実施例では、前駆体として、グルコシルセラミドを用いてGM2および他のスフィンゴ糖脂質類を合成する3つの代替法を記載する(図4)。経路1において、グリコシルセラミドへのGal残基の転移を触媒するために、β1,4−ガラクトシダーゼが用いられる。同時にGalにシアリン酸残基を結合するために、シアリルトランスフェラーゼサイクルにおいて、α2,3シアリルトランスフェラーゼが用いられる。次に、上記反応混合物に、UDP−GalNAcにより、またはGalNAcトランスフェラーゼサイクルの一部としてβ1,4−GalNAcトランスフェラーゼを加える。このステップにおいて、GalNAc残基は、α2,3結合において、Gal残基に結合する。
【0262】
経路2は、グルコシルセラミドへのGalの付加が、ガラクトシルトランスフェラーゼサイクルまたはUDP−Glc/Galのいずれかを受容体糖として用いて、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素により、触媒される点で、経路1に示された合成と異なっている。シアリル化とGalNAcの付加を上記のとおり実施して、GM2を得る。
【0263】
経路3において、グリコシルトランスフェラーゼステップの前に、水性塩基による処理により、脂肪酸が先ず除去される。ガラクトシル化、シアリル化およびGalNAcトランスフェラーゼ反応は、経路2のとおり実施される。GalNAc残基の付加後、脂肪酸が上記分子に結合される。図3に示されている実施例において、活性化C18脂肪酸を用いて、GM2合成がもたらされる。脂肪酸がグリコシル化反応の前に除去されると、一般により高い効率が見られる。
【0264】
より複合化したスフィンゴ糖脂質を得るためには、各合成経路後に、追加のグリコシルトランスフェラーゼ類を用いて、追加の糖残基を付加することができる。
【0265】
(実施例12.哺乳動物細胞の増殖に及ぼす本発明化合物の効果)
(材料および方法)
化合物2、8、10、13、56、57、58、59、60および61を、本発明の方法により作製して、使用するまで粉末形態で保存する。
【0266】
9L細胞は、Wake Forest大学(ノースカロライナ州ウィンストンサレム所在)から入手し、他の5つの細胞系は、American Type Culture Collection(ATCC、バージニア州マナサス所在)から入手した。最少必須培地イーグル(MEM)培地と基本培地イーグル(BME)培地、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ新生仔血清およびトリプシン−EDTA溶液は、ミズーリ州セントルイス所在のSigma Chemical社から入手した。ダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)と、リーボビツL−15培地は、ATCC(バージニア州マナサス所在)から入手した。MTT色素試薬は、ウィスコンシン州マジソン所在のPromega社から入手した。
【0267】
(細胞培養)
5%CO2/95%空気中、37℃で、9L細胞を、10%ウシ新生仔血清、2mMグルタミンおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンと共に、BME培地中で増殖させた。ATCCから得られた細胞系は、5%CO2/95%空気中、37℃でATCC推奨培地中で増殖させた。SK−N−MC(HTB−10)およびU−87(HTB−14)は、アール塩、2mMグルタミン、1mMピルビン酸、0.1M非必須アミノ酸(NEAA)および10%FBSと共にMEM中で増殖させた。U−118S(HTB−15)およびHs683(HTB−138)細胞は、DMEM、4mMグルタミン、4.5g/Lグルコース、1.5g/L重炭酸ナトリウムおよび10%FBS中で増殖させた。SW1088(HTB−12)細胞は、37℃の給湿空気環境(CO2は加えず)中、10%FBSと共に、リーボビッツL−15培地中で増殖させた。各細胞系の培地は3日ごとに取り替え、細胞は、解離剤として0.25%トリプシン−EDTA溶液を用いて毎週継体した。
【0268】
(増殖アッセイ)
80%コンフルエントで、0.25%トリプシン−EDTA溶液を用いて採取した。上記トリプシン化細胞を1ウェル当たり2000細胞で96ウェルプレートに入れた(極めて急速に増殖するため、1ウェル当たり1200細胞を入れたpL細胞を除いて)。10種の化合物、2、8、10、13、56、57、58、59、60および61の各々の作用保存液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製した。24時間、細胞を結合させ、培養物を与え、0.05μM、0.5μM、5μMおよび50μMの濃度の10種の化合物をそれぞれ投与した。各濃度について、6ウェルの反復を用いた。対照に、試験ウェルに加えられた培地中で希釈された同容量のDMSOを与えた。培地は、3日ごとに新鮮な試験化合物に取り替えた。培養7日後、MTT試験を用いて生菌を測定した。各ウェルから培地を除き、各ウェルに100μLの新鮮な培地、15μLのテトラゾリウム色素溶液を加え、37℃で4時間温置することによりMTTアッセイを実施した。4時間後、100μLの可溶化/停止溶液を各ウェルに加えた。上記プレートを室温で一晩温置し、各ウェルの黄色の強度をBio−Tek機器(Winooski、バーモント州)マイクロプレート走査光電分光光度計において、575nmで測定した。
【0269】
この増殖アッセイの結果は、図6〜図15に提供している。
【0270】
(神経突起増殖アッセイ)
後根神経節(DRG)神経細胞培養物を、15日齢胎仔におけるSDラットから確立する(Harlan社、インディアナ州インディアナポリス所在)(Eldridgeら、J.Cell.Biol.105:p.1023−1034を参照)。簡潔に述べると、胎仔を切開し、脊髄を単離する。次に、DRGsを脊髄から分離し、CMF培地に入れる。次に、DRG神経細胞を、0.25%トリプシンにより解離させ、ラット尾部コラーゲン(Collaborative Biomedical Products、マサチューセッツ州ベドフォード所在)でコーティングした8ウェルチャンバスライド(Nage Nunc、イリノイ州シカゴ所在)内に入れる。1μMから100μMの種々のスフィンゴ糖脂質を加える。48時間後、神経突起の長さを測定することにより、神経突起の増殖を評価する。
【0271】
(実施例13.免疫抑制アッセイ)
Bruunsgaadら、Clin.Exp.Immunol.119(3);p.433(2000)を参照されたい。
【0272】
ヘパリン化(50U/ml)血液から末梢神経単球を、Ficoll−Hypague(Pharmacia)密度勾配遠心分離により単離する(Boyumら、Scand.J.Clin.Lab.Invest.Suppl.97:p.9−29(1968)を参照)。簡潔に述べると、ヘパリン化血液を、FICOLL(Pharmaciaから入手)の上部に静かに置き(FICOLL対血清比1:2)、次いで、1600rpmで25分間遠心分離する。バッフィーコートを吸収し、2回洗浄してから、RPMI1640に再懸濁させる。細胞を、20mg/mLの植物性凝集素を含有する96ウェル丸底マイクロタイタープレートにおいて、10%ウシ胎仔ケッセイ糖脂質(1μMから100μM)と共に、また、それなしで1ウェル当たり2x105細胞の密度でスフィンゴ糖脂質(1μMから100μM)と共に、また、それなしで培養する。[3H]TDR(1μCi/ウェル、5Ci/mmol)を18時間加えることにより、リンパ球増殖をアッセイする。次にプレートを回収し、シンチレーションカウンターを用いてカウントする
(実施例14.アポトーシスに対する皮質細胞の保護)
アポトーシスを誘導するために、マウス皮質細胞を培養し、ガングリオシド類似体で処理する前に、3時間、50μM過酸化水素により処理された。上記細胞は、ガングリオシド類似体による処理時および処理後48時間、やはり過酸化水素で処理した。MTTアッセイを用いて、細胞死をアッセイした。
【0273】
上記処理の結果、過酸化水素で処理された細胞の凡そ30%が死滅した。Liga20(またはGM1)(凡そ0.1μM)による処理により、アポトーシスに対し、凡そ20%の細胞保護が提供された。同様の濃度における本発明の化合物は、凡そ同レベルの細胞保護を提供した。
【0274】
(実施例15.細胞死に対する皮質細胞の保護)
非アポトーシス細胞死を誘導するために、マウス皮質細胞を培養し、ガングリオシド類似体で処理する前に、3時間、50μM過酸化水素およびオリゴマイシン(0.01μM)により処理した。上記細胞は、ガングリオシド類似体による処理時および処理後48時間、やはり過酸化水素およびオリゴマイシンで処理した。MTTアッセイを用いて、細胞死をアッセイした。
【0275】
上記処理の結果、過酸化水素で処理された細胞の凡そ30%が死滅した。本発明の化合物による細胞処理は、細胞死に対し凡そ20%の細胞を保護した。
【0276】
(実施例16.MPTP処理マウスにおける線条体ドーパミン濃度の救護)
7〜8週齢のオスC57B1/6マウスをMPTP(1日2回、20mg/kg、皮下)で処理した。また上記マウスは、さいごのMPTP注射の24時間後から開始された、生理食塩水、GM1(30mg/kg)、本発明の化合物(0.3.3mg/kg、腹腔内、および30mg/kg、大腿)の1日1回投与を3週間受けた。脳を除去し、線条体ドーパミン濃度に関して分析した。TH免疫組織化学およびドーパミン神経細胞のカウントのために中脳を固定した。
【0277】
MPTP単独では、おおよそ76%の線条体ドーパミン損失が生じた。GMaおよび本発明の化合物(全ての投与量と投与経路において)は、線条体ドーパミン濃度を、ほぼ同程度まで増加させた。
【0278】
前述の検討および実施例は、本発明の一定の好ましい実施形態の詳細な説明を提供している。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の修飾体および等価体が作製できることは、通常の当業には明らかであろう、上記で検討および引用した全ての特許、学術誌および他の文書は全ての目的のために、それらの全体が、本明細書に組み込まれている。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】図1は、ウシのバターミルクから得られた出発物質ラクトシルセラミドを用いる酵素的合成によるガングリオシドGM2合成のための2つの方法の概略図である。
【図2】図2は、ウシのバターミルクから得られたラクトシルセラミドからガングリオシドGD2合成のための2つの方法の概略図である。
【図3】図3は、出発物質として植物グルコシルセラミドを用いてGM2ガングリオシドを合成する3つの経路をまとめたものである。
【図4】図4は、グルコシルセラミドから出発してGM2および他のガングリオシドを合成する3つの経路をまとめたものである。
【図5】図5は、ラクトシルセラミドからの脱アシル化によるガングリオシドGM2の合成、2つの連続した酵素的グリコシル化および最後の化学的アシル化に用いられた図式である。
【図6】図6は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。50μMにおける化合物2は、全ての細胞系において、ほぼ100%(86%〜100%)の増殖阻害を生じさせる。
【図7】図7は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物8は、4つの細胞系で化合物2に関するプロフィルと同様のプロフィルを有し(50μMの化合物8により、77%〜89%の増殖阻害)、U−118細胞では、50μMの化合物8による増殖阻害は21%である。
【図8】図8は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。50μMの化合物10による9L細胞の阻害が46%であったことを除いて、化合物10は、化合物2と同様の活性を有する。
【図9】図9は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。Hs683細胞およびSw1088細胞を処置するために用いられた場合、化合物13は、50μMの濃度で使用された時に、各々42%および35%、増殖を阻害した。
【図10】図10は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。50μMの化合物56は、9L細胞を23%、U−118細胞を27%、Hs683細胞を48%、Sw1088細胞を68%、増殖阻害した。
【図11】図11は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物57は、9L細胞の増殖を11%〜37%阻害した。
【図12】図12は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物58は、5μMで9L細胞およびHs683細胞の増殖を阻害した(それぞれ27%と32%)。50μMにおいて、化合物58は、9L細胞、Hs683細胞、U−118細胞およびSw1088細胞の増殖を26%〜54%阻害した。
【図13】図13は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物59は、50μM化合物で全ての細胞系における増殖を強力に阻害した(91%〜100%)。
【図14】図14は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物60は、細胞増殖アッセイにおいて極めて活性であった。化合物60は、5μMで全ての被験細胞系において、増殖阻害活性を証明し(15%〜88%)、5μMで全ての細胞系において、強力な増殖阻害を証明した(95%〜100%)。
【図15】図15は、脳癌細胞を本発明の種々の化合物で処置した場合の上記細胞増殖の減弱を示している。化合物61は、50μMで全ての細胞系の増殖を、66%〜100%阻害する。
【図16G】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16H】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16I】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16J】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16K】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16L】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16M】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16N】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16O】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16P】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16Q】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16R】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16S】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16T】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図16U】図16は、本発明の代表的な化合物の表である。
【図17】図17は、本発明の化合物に含まれる代表的な糖部分の表である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】
を有する化合物であって、
ここで、
Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されるメンバーであり;
Xは、H、−OR3、−NR3R4、−SR3、および−CHR3R4から選択されるメンバーであり;
R1、R2およびR3は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、−C(=M)R5、−C(=M)−Z−R5、−SO2R5、および−SO3から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
MおよびZは、O、NR6もしくはSから独立して選択されるメンバーであり;
Yは、H、−OR7、−SR7、−NR7R8、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーであり、
ここで、
R5、R6、R7およびR8は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、但し、Xが、NHR4であって、ここで、R4が、Hおよび−C(C=O)R5から選択されるメンバーであって、R5が、置換もしくは非置換のアルキルであり;YがOHであり;そして、ZがOである、NHR4である場合、R5が、置換もしくは非置換のアルキルから選択されるメンバー以外である、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、R1が、以下の式:
【化2】
を有し、
ここで、
R9、R10、R11、R12およびR13は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
Lは、O、S、およびNR16から選択されるメンバーであり;
R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
R16、R17およびR18は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、そしてここで、
R9およびR10;R9およびR11;R9およびR12;R9およびR13;R10およびR11;R10およびR12;R10およびR13;R11およびR12;R11およびR13;ならびにR12およびR13から選択されるメンバーが、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて結合して環を形成し、ここで、該環が、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物であって、R13が、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーであり、ここで、該ヘテロアリールが、少なくとも1個の環内窒素原子を含む、化合物。
【請求項5】
R13が、置換もしくは非置換のピリジルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項3に記載の化合物であって、R13が、−C(O)NR13aR13bであり、ここで、
R13aおよびR13bが、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項7】
請求項3に記載の化合物であって、ここで、R11が、NR11aR11bであり、
ここで、
R11aおよびR11bが、H、置換もしくは非置換のアルキルおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーである、化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、R1が、以下の式:
【化3】
を有し、
ここで、
R11、R12およびR13が、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CN、−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
Lは、O、S、およびNR16から選択されるメンバーであり、
R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
R16、R17およびR18は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、そしてここで、
R11およびR12;R11およびR13;ならびにR12およびR13から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて結合して環を形成し、該環は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、R13が、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーであり、該ヘテロアリールが、少なくとも1個の環内窒素原子を含む、化合物。
【請求項10】
R13が、置換もしくは非置換のピリジルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項8に記載の化合物であって、ここで、R13が、−C(O)NR13aR13bであり、ここで、
R13aおよびR13bは、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項12】
請求項8に記載の化合物であって、ここで、R11が、NR11aR11bであり、
ここで、
R11aおよびR11bは、H、置換もしくは非置換のアルキルおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、R1が、以下の式:
【化4】
を有し、
R9、R10、R11、R13、R19、R20およびR21は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
Lは、O、S、およびNR16から選択されるメンバーであり;
R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
R16、R17およびR18は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、そしてここで、
R9およびR10;R9およびR11;R9およびR13;R9およびR21;R9およびR19;R9およびR20;R9およびR21;R10およびR11;R10およびR13;R10およびR19;R10およびR20;R10およびR21;R11およびR13;R11およびR19;R11およびR20;R11およびR21;およびR13およびR19;R13およびR20;R13およびR21;R19およびR20;R19およびR21;ならびにR20およびR21から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて結合して環を形成し、該環は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項14】
R5が、CH3である、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、前記糖が、以下:
【化5】
よりなる群から選択される式を有する、化合物。
【請求項16】
前記糖が、脱アセチル化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
図16から選択されるメンバーである式を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項19】
動物またはヒトにおける神経系障害の予防または処置のための方法であって、それらを必要とする動物またはヒトに、治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
前記神経系障害が、パーキンソン病、虚血、脳卒中、アルツハイマー病、うつ病、不安、脳炎、髄膜炎、筋萎縮性側索硬化症、外傷、脊髄損傷、神経損傷、ニューロパシーおよび神経再生からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ヒトにおける神経膠腫の処置のための方法であって、それを必要とするヒトに、治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の合成スフィンゴ糖脂質化合物を合成する方法であって、以下:
(a)スフィンゴイド部分およびグルコース(Glc)を含む受容体分子を、ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素およびガラクトース(Gal)供与体分子に接触させて、
【化6−1】
を形成する工程;
(b)該
【化6−2】
を、トランスシアリダーゼ酵素およびシアリン酸(Sia)供与体分子に接触させて、
【化7−1】
を形成する工程;
(c)該
【化7−2】
を、N−アセチルガラクトース(GalNAc)−トランスフェラーゼ酵素およびGalNAc供与体分子に接触させて、
【化8−1】
を形成する工程;
(d)該
【化8−2】
を、ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素およびガラクトース(Gal)供与体分子に接触させて、
【化9−1】
を形成する工程;ならびに、
(e)該
【化9−2】
を、該記合成スフィンゴ糖脂質の形成に適切な条件下で、脂肪酸部分と接触させる工程、
を包含する、方法。
【請求項1】
式:
【化1】
を有する化合物であって、
ここで、
Zは、O、S、C(R2)2およびNR2から選択されるメンバーであり;
Xは、H、−OR3、−NR3R4、−SR3、および−CHR3R4から選択されるメンバーであり;
R1、R2およびR3は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、−C(=M)R5、−C(=M)−Z−R5、−SO2R5、および−SO3から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
MおよびZは、O、NR6もしくはSから独立して選択されるメンバーであり;
Yは、H、−OR7、−SR7、−NR7R8、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーであり、
ここで、
R5、R6、R7およびR8は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、但し、Xが、NHR4であって、ここで、R4が、Hおよび−C(C=O)R5から選択されるメンバーであって、R5が、置換もしくは非置換のアルキルであり;YがOHであり;そして、ZがOである、NHR4である場合、R5が、置換もしくは非置換のアルキルから選択されるメンバー以外である、化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物であって、R1が、以下の式:
【化2】
を有し、
ここで、
R9、R10、R11、R12およびR13は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
Lは、O、S、およびNR16から選択されるメンバーであり;
R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
R16、R17およびR18は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、そしてここで、
R9およびR10;R9およびR11;R9およびR12;R9およびR13;R10およびR11;R10およびR12;R10およびR13;R11およびR12;R11およびR13;ならびにR12およびR13から選択されるメンバーが、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて結合して環を形成し、ここで、該環が、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の化合物であって、R13が、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーであり、ここで、該ヘテロアリールが、少なくとも1個の環内窒素原子を含む、化合物。
【請求項5】
R13が、置換もしくは非置換のピリジルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
請求項3に記載の化合物であって、R13が、−C(O)NR13aR13bであり、ここで、
R13aおよびR13bが、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項7】
請求項3に記載の化合物であって、ここで、R11が、NR11aR11bであり、
ここで、
R11aおよびR11bが、H、置換もしくは非置換のアルキルおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーである、化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物であって、R1が、以下の式:
【化3】
を有し、
ここで、
R11、R12およびR13が、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CN、−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
Lは、O、S、およびNR16から選択されるメンバーであり、
R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
R16、R17およびR18は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、そしてここで、
R11およびR12;R11およびR13;ならびにR12およびR13から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて結合して環を形成し、該環は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の化合物であって、R13が、置換もしくは非置換のヘテロアリールから選択されるメンバーであり、該ヘテロアリールが、少なくとも1個の環内窒素原子を含む、化合物。
【請求項10】
R13が、置換もしくは非置換のピリジルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項8に記載の化合物であって、ここで、R13が、−C(O)NR13aR13bであり、ここで、
R13aおよびR13bは、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、および置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項12】
請求項8に記載の化合物であって、ここで、R11が、NR11aR11bであり、
ここで、
R11aおよびR11bは、H、置換もしくは非置換のアルキルおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから独立して選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項13】
請求項1に記載の化合物であって、ここで、R1が、以下の式:
【化4】
を有し、
R9、R10、R11、R13、R19、R20およびR21は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、NR14R15、OR14、−CNおよび−C(=L)R14から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
Lは、O、S、およびNR16から選択されるメンバーであり;
R14およびR15は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキル、C(O)R17、OR17、SR17およびNR17R18から独立して選択されるメンバーであり、
ここで、
R16、R17およびR18は、H、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキルから独立して選択されるメンバーであり、そしてここで、
R9およびR10;R9およびR11;R9およびR13;R9およびR21;R9およびR19;R9およびR20;R9およびR21;R10およびR11;R10およびR13;R10およびR19;R10およびR20;R10およびR21;R11およびR13;R11およびR19;R11およびR20;R11およびR21;およびR13およびR19;R13およびR20;R13およびR21;R19およびR20;R19およびR21;ならびにR20およびR21から選択されるメンバーは、それらが結合している原子と一緒になって、必要に応じて結合して環を形成し、該環は、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリールおよび置換もしくは非置換のヘテロアルキルから選択されるメンバーである、
化合物。
【請求項14】
R5が、CH3である、請求項3に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物であって、前記糖が、以下:
【化5】
よりなる群から選択される式を有する、化合物。
【請求項16】
前記糖が、脱アセチル化されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
図16から選択されるメンバーである式を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物と薬学的に受容可能なキャリアとを含む、薬学的組成物。
【請求項19】
動物またはヒトにおける神経系障害の予防または処置のための方法であって、それらを必要とする動物またはヒトに、治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項20】
前記神経系障害が、パーキンソン病、虚血、脳卒中、アルツハイマー病、うつ病、不安、脳炎、髄膜炎、筋萎縮性側索硬化症、外傷、脊髄損傷、神経損傷、ニューロパシーおよび神経再生からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ヒトにおける神経膠腫の処置のための方法であって、それを必要とするヒトに、治療的有効量の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項22】
請求項1に記載の合成スフィンゴ糖脂質化合物を合成する方法であって、以下:
(a)スフィンゴイド部分およびグルコース(Glc)を含む受容体分子を、ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素およびガラクトース(Gal)供与体分子に接触させて、
【化6−1】
を形成する工程;
(b)該
【化6−2】
を、トランスシアリダーゼ酵素およびシアリン酸(Sia)供与体分子に接触させて、
【化7−1】
を形成する工程;
(c)該
【化7−2】
を、N−アセチルガラクトース(GalNAc)−トランスフェラーゼ酵素およびGalNAc供与体分子に接触させて、
【化8−1】
を形成する工程;
(d)該
【化8−2】
を、ガラクトシルトランスフェラーゼ酵素およびガラクトース(Gal)供与体分子に接触させて、
【化9−1】
を形成する工程;ならびに、
(e)該
【化9−2】
を、該記合成スフィンゴ糖脂質の形成に適切な条件下で、脂肪酸部分と接触させる工程、
を包含する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16R】
【図16S】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16R】
【図16S】
【図17】
【公表番号】特表2006−519878(P2006−519878A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509208(P2006−509208)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006904
【国際公開番号】WO2004/080960
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(500253106)ネオーズ テクノロジーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006904
【国際公開番号】WO2004/080960
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(500253106)ネオーズ テクノロジーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]