説明

ガンマ回路及びそれを用いた表示用駆動回路

【課題】ガンマ回路31のプッシュプルアンプにおける貫通電流を抑止する。
【解決手段】ガンマ回路31において、プッシュプルアンプ10に代えて、互いに隣接した基準電位を入力し、入力した基準電位と同一の電位の出力電圧を出力するNトップ型レギュレータ40−4〜40−1と、Pトップ型レギュレータ50−3〜50−0とを設けた。その結果、階調電位の出力端子VH0〜VH63及びVL0〜VL63に接続される負荷が“L”になっても“H”になっても互いに隣接するNトップ型レギュレータ40とPトップ型レギュレータ50とは、相補的に動作してプッシュプルアンプ10と同等に動作することができる。更に、プッシュプルアンプ10で発生した貫通電流がほとんど発生しなくなりためガンマ回路31の消費電流を大幅に削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等の表示装置において、画像等を表示するための階調電位を補正する低消費電流のガンマ回路とそれを用いた表示用駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の表示用駆動回路に用いられるガンマ回路を示す構成図である。
このガンマ回路は、正極性の回路部と、これとほぼ同様の構成の、図示しない負極性の回路部とを有している。図7に示すように、ガンマ回路の正極性の回路部は、複数の正極性基準電位VHI63,VHI55,・・・・,VHI0を有する入力端子VHI63,VHI55,・・・・,VHI0を備えている。正極性基準電位は、入力端子VHI63の電位が最も高く、以下、VHI55,VHI31,VHI7,VHI0の順で低くなる。
【0003】
各入力端子VHI63〜VHI0には、複数のプッシュプルアンプ10−4,10−3,・・・・,10−0がそれぞれ接続されている。プッシュプルアンプ10−4とプッシュプルアンプ10−0との間には、複数の抵抗素子20−63,20−62,・・・・20−1が直列に接続された抵抗ラダー20が配置されている。
【0004】
各抵抗素子20−63〜20−1の間には、プッシュプルアンプ10−4の出力電圧を順次降下させた電位を出力するため、複数の出力端子VH63,VH62,・・・・VH0が接続されている。複数の出力端子VH63〜VH0には、表示素子の階調を示すデジタル信号である表示データを複数のアナログ電圧に変換するためのデジタル/アナログコンバータ(以下「DAC」という。)25が接続されている。
【0005】
ガンマ回路の負極性の回路部は、図7の複数の入力端子VHI63,VHI62,・・・・,VHI0と複数の出力端子VH63,VH62・・・・,VH0に代えて、複数の入力端子VLI63,VLI62,・・・・・VLI0と複数の出力端子VL63,VL62,・・・・VL0が設けられた構成である。負極性基準電位は、入力端子VLI63の電位が最も高く、以下、VLI55,VLI31,VLI7,VLI0の順で低くなる。
【0006】
このような構成のカンマ回路では、次のような動作を行う。入力端子VHI63に入力された正極性基準電位は、プッシュプルアンプ10−4により電位はそのままで、電流供給能力を強化されて正極性階調電位として出力される。同様に、入力端子VHI55に入力された正極性基準電位は、プッシュプルアンプ10−3に、VHI31は10−2に、VHI7は10−1に、VHI0は10−0にそれぞれ入力され、電位はそのままで、電流供給能力を強化されて正極性階調電位として出力される。負極性の回路部においても同様の動作が行われる。このようして正極性の回路部及び負極性の回路部により、画像等の表示が行われる。
【0007】
図8は、図7中のプッシュプルアンプ10−2を示す構成図である。
このプッシュプルアンプ10−2は、入力端子VHI31である入力端子INと、出力端子VH31である出力端子OUTとを有している。入力端子IN及び出力端子OUTには、オペアンプ11が接続されこの出力側にはPチャネルMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)12のゲートと、NチャネルMOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)13のゲートとが接続されている。
【0008】
電源端子ノードVDD、PMOS12、出力端子OUT、NMOS13、及び接地ノードGNDは、直列に接続されている。
【0009】
ここで、ある液晶素子の階調が切り替わったことにより、今まで、VL59が選択されていた状態からVH9が選択された場合を仮定する。今まで、VL59が選択されていた状態からVL59よりハイレベルのVH9が選択されるので、出力端子VH9の負荷が“L”となり、抵抗ラダー20の分圧によりプッシュプルアンプ10−2の出力端子OUTの電位も“L”となる。この“L”が帰還されてオペアンプ11の非反転入力端子に入力されるので、オペアンプ11は、“L”を出力する。その結果、PMOS12はオン、NMOS13はオフとなってプッシュプルアンプ10−2は、電流I1を吐き出す動作を行う。
【0010】
次に、VH9が選択されていた状態からVL15が選択された場合を仮定する。VH9>VL15であるから、出力端子VL15には、ハイレベル(以下「“H”」という。)の負荷が接続されたことになり、プッシュプルアンプ10−1は、電流I2を引き込み、当該の負荷をディスチャージしてVL15まで引き下げる動作を行う。
【0011】
このようなガンマ回路及び表示用駆動回路に関する技術としては、例えば、下記の特許文献がある。特許文献1には、Pトップ型の演算増幅器とNトップ型の演算増幅器を用いた表示用駆動回路の技術が記載されている。又、特許文献2には、抵抗ラダーを用いた表示用駆動回路の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−224621号公報
【0013】
【特許文献2】特開2001−100711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来のプッシュプルアンプ10(=10−4〜10−0)を用いたガンマ回路では、プッシュプルアンプ10内のPMOS12及びNMOS13が同時にオンとなるタイミングがあるため、これらを介して電源ノードVDDから接地ノードGNDへ貫通電流I0が流れるという課題があった。そこで、プッシュプルアンプ10の代わりに消費電流の少ないPトップ型のレギュレータ、又はNトップ型のレギュレータで置き換えることが考えられるが、引き込み又は吐き出しの動作の片方しか動作できないため表示異常を起こすという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のガンマ回路は、複数の異なる電位を有する基準電圧における隣接した第1及び第2の電位のうち、前記第1の電位を入力し、前記第1の電位に基づき、第1の出力電圧における第1の極性側の変動を抑制して前記第1の出力電圧を一定電圧に保持する複数の第1のレギュレータと、前記第2の電位を入力し、前記第2の電位に基づき、第2の出力電圧における前記第1の極性側とは相反する第2の極性側の変動を抑制して前記第2の出力電圧を一定電圧に保持する複数の第2のレギュレータと、複数の前記第1の出力電圧及び複数の前記第2の出力電圧を分圧して階調レベルを有する複数のアナログ電圧を出力する分圧回路とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガンマ回路及びそれを用いた表示用駆動回路によれば、複数の異なる電位を有する基準電圧を入力し、プッシュプルアンプ及び分圧回路により、階調レベルを有する複数の電圧を出力するガンマ回路において、プッシュプルアンプの代わりに第1のレギュレータと第2のレギュレータを用い、互いに隣接する基準電位をそれぞれに入力するように構成している。
【0017】
そのため、アナログ電圧に第1の極性側の変動があっても、第2の極性側の変動があっても、互いに隣接する第1及び第2のレギュレータが相補的に動作してその変動を抑制するのでプッシュプルアンプと同様の動作を行うことができる。本発明では、プッシュプルアンプを使用しないので、貫通電流がほとんど発生しなくなり、このためガンマ回路及びそれを用いた表示用駆動回路の消費電流を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例1におけるガンマ回路31を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1における表示用駆動回路の全体を示す構成図である。
【図3】図3は、図1中のNトップ型レギュレータ40を示す構成図である。
【図4】図4は、図1中のPトップ型レギュレータ50を示す構成図である。
【図5】図5は、図2の表示用駆動回路の動作を示す波形図である。
【図6】図6は、本発明の実施例1におけるガンマ回路31Bを示す構成図である。
【図7】図7は、図7は、従来の表示用駆動回路に用いられるガンマ回路を示す構成図である。
【図8】図8は、図7中のプッシュプルアンプ10−2を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0020】
(実施例1の表示用駆動回路の構成)
図2は、本発明の実施例1における表示用駆動回路の全体を示す構成図である。
【0021】
この表示用駆動回路は、一つの集積回路として構成されており、この集積回路を複数個用いることにより、表示パネルに1ライン分の表示データ信号を出力する構成になっている。
【0022】
本表示用駆動回路は、赤、緑、青の3色を1セットとした表示データX0P,X0N,Y0P,Y0N,Z0P,Z0N,・・・・を入力する差動入力インターフェース部32を有している。差動入力インナターフェース部32の出力側には、差動入力インターフェース部32からの信号を一時取り込む、データラッチ部33が接続されている。
【0023】
バッファ34は、一対の信号CKPとCKNを入力し、クロック信号をデータラッチ部33及びシフトレジスタ回路35に供給する機能を有している。シフトレジスタ回路35には、シフト動作の開始又は完了の信号であるSPOI及びSPIOが入出力される構成になっており、出力側には表示データを取り込む表示データラッチ部36が接続されている。
【0024】
表示データラッチ部36は、出力指示信号LSが入力される構成になっており、その出力側には、デジタル/アナログコンバータ(例えば、DAC(=D/Aコンバータ))37が接続されている。DAC37は、又、階調レベルを有する複数のアナログ電圧(例えば、階調電位)VH63〜VH0及び階調電位VL63〜VH0を出力するガンマ回路31が接続されている。DAC37の出力側には、図示しない表示素子(例えば、液晶表示素子)を駆動する出力バッファ38が接続されている。
【0025】
出力バファ38の出力側には、液晶表示素子を駆動するための図示しないY電極線が接続されている。以下、図を用いないで液晶パネル等の構成について説明する。Y電極線は、液晶パネルにおいて、複数のX電極線とマトリックス状に直交配置され、その交差箇所に液晶セルが配置されて構成されている。
【0026】
この液晶セルは、薄膜トランジスタ(以下「TFT」という。)等のアクティブ素子及び表示素子(例えば、液晶表示素子)等で形成されており、液晶表示素子は容量として動作する。
【0027】
X電極線は、走査信号線とも呼ばれ、走査信号を出力する走査信号回路の出力端子に接続されている。Y電極線はデータ信号線とも呼ばれ、各液晶表示素子に対する表示データ信号を出力する表示用駆動回路の出力バッファ38に接続されている。
【0028】
(実施例1のガンマ回路31の構成)
図1は、本発明の実施例1におけるガンマ回路31を示す構成図である。
【0029】
このガンマ回路31は、正極性の回路部と、これとほぼ同様の構成の、図示しない負極性の回路部とを有している。図1に示すように、ガンマ回路31の正極性の回路部は、複数の異なる電位を有する基準電位(例えば、正極性基準電位)VHI63,VHI55,・・・・,VHI0を有する入力端子VHI63,VHI55,・・・・,VHI0を備えている。正極性基準電位は、入力端子VHI63の電位が最も高く、以下、VHI55,VHI31,VHI7,VHI0の順で低くなる。
【0030】
各入力端子VHI63〜VHI0には、複数の第1のレギュレータ(例えば、Nトップ型レギュレータ)40(=40−4,40−3,・・・・,40−1)及び第2のレギュレータ(例えば、Pトップ型レギュレータ)50(=50−3,50−2,・・・・50−0)がそれぞれ接続されている。Nトップ型レギュレータ40−4とPトップ型レギュレータ50−0との間には、複数の抵抗素子60−63,60−62,・・・・60−1が直列に接続された分圧回路(例えば、抵抗ラダー)60が設置されている。
【0031】
各抵抗素子60−63〜60−1の間には、Nトップ型レギュレータ40−4の出力電圧を順次降下させた電位を出力するため、複数の出力端子VH63,VH62,・・・・VH0が接続されている。複数の出力端子VH63〜VH0には、表示素子の階調を示すデジタル信号である表示データを複数のアナログ電圧に変換するためのDAC37が接続されている。
【0032】
ガンマ回路31の負極性の回路部は、図1の複数の入力端子VHI63,VHI62,・・・・,VHI0と複数の出力端子VH63,VH62・・・・,VH0に代えて、複数の入力端子VLI63,VLI62,・・・・・VLI0と複数の出力端子VL63,VL62,・・・・VL0が設けられた構成である。負極性基準電位は、入力端子VLI63の電位が最も高く、以下、VLI55,VLI31,VLI7,VLI0の順で低くなる。
【0033】
図3は、図1中のNトップ型レギュレータ40を示す構成図である。
Nトップレギュレータ40は、第1の電位である基準電圧を入力する反転入力端子IN及び出力端子OUTの出力電圧を帰還させて入力する非反転入力端子を有する演算増幅器(例えば、オペアンプ)41と、第1の電源ノードVDDと出力端子OUTに接続されオペアンプ41の出力をゲートに入力する第1のトランジスタ(例えば、PMOS)43と、出力端子OUTと第2の電源ノード(例えば、接地ノード)GNDとの間に接続された定電流源42とを有している。
【0034】
図4は、図1中のPトップ型レギュレータ50を示す構成図である。
Pトップ型レギュレータ50は、第2の電位である基準電圧を入力する反転入力端子IN及び出力端子OUTの電圧を帰還させて入力する非反転入力端子を有する演算増幅器(例えば、オペアンプ)51と、出力端子OUTと接地ノードGNDとの間に接続されオペアンプ51の出力をゲートに入力する第2のトランジスタ(例えば、NMOS)53と、電源ノードVDDと出力端子OUTとに接続された定電流源52とを有している。
【0035】
(実施例1の表示用駆動回路の概略の動作)
図2において、本表示用駆動回路では、赤、緑、青の3色を1セットとした表示データが差動入力インターフェース部32に入力される。表示データは、X0P、X0N、Y0P、Y0N・・・のようにP及びNの1対で相補的に入力され、X、Y、Zは色の違いを表している。差動入力インターフェース部32は、入力した信号を電源の振幅による信号に変換してデータラッチ部33へ出力する。データラッチ部33は、差動入力インターフェース部32からの信号を一時取り込み、バッファ34からのクロック信号により6ビット(64階調)×3色の表示データを出力する。
【0036】
シフトレジスタ回路35は、SPOI信号によって動作を開始し、バッファ34からのクロックによりシフト動作を行い、一連のシフト動作を完了するとSPIO信号を図示しない別の集積回路に出力する。シフトレジスタ回路35と表示データラッチ部36とは、160×3色=480本の信号線で接続されている。
【0037】
シフトレジスタ回路35から表示データラッチ部36には、クロック信号CKの入力のタイミングで制御信号が出力される。この制御信号に基づいて、表示データラッチ部36は、データラッチ部33からの6ビット×3色の表示データを表示データラッチ部36の所定の場所に取り込む。
【0038】
表示データラッチ部36は、出力指示信号LSにより160×3色=480本の6ビットの表示データをDAC37に出力する。
【0039】
ガンマ回路31には、正極性基準電位VH0〜VH63と負極性基準電位VL0〜VL63とを有する基準電圧が印加されている。ガンマ回路31ではこれらの基準電圧を分圧して、階調レベルを有する複数の電圧を階調電位として出力する。
【0040】
DAC37では、表示データラッチ部36から入力された6ビットの表示データの値により対応する階調電位を選択し、アナログの表示データ信号として、正極性/負極性反転信号REVのタイミングにより、出力バッファ38に出力する。
【0041】
出力バッファ38では、入力した表示データ信号を駆動し、走査信号により活性化されているラインの液晶表示素子に与える。
【0042】
液晶表示素子に表示を行う場合、走査信号回路は、X電極線に対応した走査信号を順次活性化しX電極線を走査する。各X電極線に接続されたTFTは、活性化した走査信号が与えられた期間にオン状態になる。この走査に同期して、表示用駆動回路から表示データごとの階調レベルを有する電圧を表示データ信号として与えることにより、その表示データ信号がオン状態のTFTを介して1ライン分の液晶表示素子に書き込まれ、共通電極との電位差により各液晶素子がライン表示される。表示データ信号は、階調レベルに応じた電位を有しており、表示データ信号の電位に対応して各液晶素子の光透過率が可変に制御される。
【0043】
液晶は、電気化学的特性により、一定方向の電界を長時間印加し続けていると劣化するので、LCDでは、一定の周期で共通電極の電位に対して液晶表示素子を交流駆動する必要がある。
【0044】
(実施例1の表示用駆動回路の詳細動作の説明)
図5は、図2の表示用駆動回路の動作を示す波形図である。
【0045】
図5を用いてガンマ回路31及び表示用駆動回路の動作を説明する。図5において、表示データラッチ部36の出力、データ:3b、データ:09及びデータ:0fとは、6ビットの表示データの値を示す16進数である。例えば、16進数の2bは、10進数の59であり、以下同様に09は9、0fは15である。図5のDAC37出力のVL59,VH9,L15の波形は、DAC37から出力される階調電位の波形を示し、出力バッファのVL59,VH9,VL15の波形は、出力バッファ38から液晶表示素子に出力される表示データ信号の波形である。
【0046】
ここで、ある液晶素子に対応する、表示データ“3b”がDAC37に入力されたとすると、DAC37では、表示データ“3b”に対応する階調電位VL59が選択され、出力バッファ38を介して同電位の表示データ信号が出力される。次に、当該の液晶素子に対する表示データが“3b”から“09”に遷移したとすると、DAC37では、表示データ“09”に対応する階調電位VH9が選択され、出力バッファ38を介して同電位表示データ信号が出力される。表示データ“0f”についても同様である。
【0047】
次に、ガンマ回路31側から見た動作を図1、図3及び図4を用いて説明する。例えば、ある液晶素子に対応する表示データが“3b”から“09”に遷移したとすると、DAC37では、表示データ“09”に対応する階調電位VH9が選択され、出力バッファ38を介して同電位の表示データ信号が出力される。
【0048】
VL59<VH9であるから、出力端子VH9には、“L”の負荷が接続されたことになり、出力端子VH9には、第1の極性側(例えば、負極性)の変動が起こる。その結果、抵抗ラダー60の分圧によりNトップ型レギュレータ40−2の出力端子OUTの電位が“L”となり、Nトップレギュレータ40−2は、当該の負荷をチャージしてVH9端子の電位をVH9まで引き上げる動作を行う。
【0049】
図3を用いて更に詳細に説明する。ある液晶素子に対応する表示データが“3b”から“09”に遷移したとすると、今まで、電位VL59が選択されていた状態から電位VH9が選択されるので、出力端子VH9の負荷が“L”となり、Nトップ型レギュレータ40−2の出力端子OUTの電位も“L”となる。この“L”が帰還されてオペアンプ41の非反転入力端子に入力されるので、オペアンプ41は“L”を出力する。その結果、PMOS43はオンとなって、電流I1が吐き出され、負荷をチャージしてVH9端子の電位をVH9まで引き上げる。
【0050】
次に、当該の液晶素子に対する表示データが“09”から“0f”に遷移したとすると、DAC37では、表示データ“0f”に対応する階調電位VL15が選択され、出力バッファ38を介して同電位の表示信号が出力される。VL15<VH9であるから、出力端子VL15には、“H”の負荷が接続されたことになり、第2の極性側(例えば、正極性)の変動が起こる。
【0051】
その結果、図示しないが図4に示すPトップ型レギュレータ50と同一の構成であるPトップ型レギュレータ50A−1の出力端子OUTの電位が“H”となり、当該の負荷をディスチャージしてVL15端子の電位をVL15まで引き下げる動作を行う。つまり、負荷が“H”となるので、Pトップレギュレータ50Aの出力端子OUTの電位も“H”となり、図示しない、NMOSA12はオンとなって、電流I2が引き込まれる。
【0052】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、ガンマ回路31において、プッシュプルアンプ10に代えて、互いに隣接した基準電位を入力し、入力した基準電位と同一の電位の出力電圧を出力するNトップ型レギュレータ40−4〜40−1及びNトップ型レギュレータ40A−4〜40A−1と、Pトップ型レギュレータ50−3〜50−0及びPトップ型レギュレータ50A−3〜50A−0とを設けている。
【0053】
その結果、階調電位の出力端子VH63〜VH0及びVL63〜VL0に接続される負荷が“L”になっても“H”になっても隣接するNトップ型レギュレータ40(A)とPトップ型レギュレータ50(A)とは、相補的に動作してプッシュプルアンプ10と同等に動作することができる。更に、プッシュプルアンプ10で発生した貫通電流がほとんど発生しなくなるためガンマ回路31の消費電流を大幅に削減することができる。
【実施例2】
【0054】
(実施例2の構成)
前記実施例1では、複数の異なる電位を有する基準電圧が印加される複数の入力端子に新たに、入力端子VHI56、VHI32、VHI8、VLI56、VLI32及びVLI8を追加し、それぞれに基準電位を入力する構成となっている。これに対し、本実施例2では基準電圧の電位を新たに追加せずに、既存の基準電圧の入力端子間に抵抗ラダー70を設けている。
【0055】
図6は、本発明の実施例2におけるガンマ回路31Bを示す構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0056】
このガンマ回路31Bは、正極性の回路部と、これとほぼ同様の構成の図示しない負極性の回路部とを有している。図6に示すように、ガンマ回路31Bの正極性の回路部は、複数の正極性基準電位VHI63,VHI55,・・・・,VHI0を有する入力端子VHI63,VHI55,・・・・,VHI0を備えている。正極性基準電位は、入力端子VHI63の電位が最も高く、以下、VHI55,VHI31,VHI7,VHI0の順で低くなる。
【0057】
入力端子VHI63とVHI0との間には、複数の抵抗素子70−n,70−n−1,・・・・70−1が直列に接続された抵抗ラダー70が配置されている。この抵抗ラダー70の分圧により、VHI56,VHI32及びVHI18の電位を有する入力端子VHI56,VHI32及びVHI18が設けられている。
【0058】
実施例1と同様に、各入力端子VHI63,VHI56,VHI32,VHI18,VHI17,VHI0には、複数のNトップ型レギュレータ40−4,40−3,・・・・,40−1及びPトップ型レギュレータ50−3,50−2,・・・・50−0がそれぞれ接続されている。本実施例2における正極性の回路部のその他の構成は、実施例1の構成と同様である。
【0059】
ガンマ回路31Bの負極性の回路部は、図6の複数の入力端子VHI63,VHI62,・・・・,VHI0と複数の出力端子VH63,VH62・・・・,VH0に代えて、複数の入力端子VLI63,VLI62,・・・・・VLI0と複数の出力端子VL63,VL62,・・・・VL0が設けられた構成である。
【0060】
(実施例2の動作)
実施例2の動作は、抵抗ラダー70及び70Aにおいて基準電圧を分圧する動作が追加されている。他の動作は、実施例1と同様である。
【0061】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1と同様に、階調電位の出力端子VH63〜VH0及びVL63〜VL0に接続される負荷が“L”になっても“H”になっても隣接するNトップ型レギュレータ40(A)とPトップ型レギュレータ50(A)とは、相補的に動作してプッシュプルアンプ10と同等に動作することができる。更に、プッシュプルアンプ10で発生した貫通電流がほとんど発生しなくなりためガンマ回路31Bの消費電流を大幅に削減することができる。
【0062】
又、実施例1の効果に加え、抵抗ラダー70を設けて分圧して新たな基準電圧を発生されているので、基準電圧発生用の既存の回路に変更を加える必要がないため、本発明の実施が容易となる。
【0063】
(変形例)
本発明は、上記実施例に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
【0064】
(a) 実施例1及び2では、64階調を表す6ビットの表示データの例で説明したが、5ビット、6ビット、8ビット等の表示データであってもよい。
【0065】
(b) 実施例1及び2では、図2の構成の表示用駆動回路で説明したが、他の構成及び作用を有する表示用駆動回路でもよい。
【0066】
(c) 実施例1及び2では、表示装置としてLCDを例に説明したが、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の他の表示装置でもよい。
【0067】
(d) 実施例1及び2では、1対の隣接した基準電位のうち電位の高い入力端子にNトップレギュレータ40を接続し、電位の低い入力端子にPトップレギュレータ50を接続したが、電位の高い入力端子にPトップレギュレータ50を接続し、電位の低い入力端子にNトップレギュレータ40を接続してもよい。
【0068】
(e) 本発明は、表示装置での利用に限らず、広く、プッシュプルアンプを使用している各種回路への適用が可能である。
【符号の説明】
【0069】
31 ガンマ回路
32 差動入力インターフェース部
33 データラッチ部
34 バッファ
35 シフトレジスタ回路
36 表示データラッチ部
37 D/Aコンバータ回路
38 出力バッファ
40−1〜40−4 Nトップ型レギュレータ
50−0〜50−3 Pトップ型レギュレータ
41、51 オペアンプ
42、52 定電流源
43 PMOS
53 NMOS
60、70 抵抗ラダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる電位を有する基準電圧における隣接した第1及び第2の電位のうち、前記第1の電位を入力し、前記第1の電位に基づき、第1の出力電圧における第1の極性側の変動を抑制して前記第1の出力電圧を一定電圧に保持する複数の第1のレギュレータと、
前記第2の電位を入力し、前記第2の電位に基づき、第2の出力電圧における前記第1の極性側とは相反する第2の極性側の変動を抑制して前記第2の出力電圧を一定電圧に保持する複数の第2のレギュレータと、
複数の前記第1の出力電圧及び複数の前記第2の出力電圧を分圧して階調レベルを有する複数のアナログ電圧を出力する分圧回路と、
を有することを特徴とするガンマ回路。
【請求項2】
前記第1のレギュレータは、前記複数の異なる電位を有する正極性又は負極性の前記基準電圧における最も電位の高い電位を前記第1の電位として入力し、前記第1の電位に基づき、前記第1の出力電圧における第1の極性側の変動を抑制して前記第1の出力電圧を一定電圧に保持することを特徴とする請求項1記載のガンマ回路。
【請求項3】
前記第2のレギュレータは、前記複数の異なる電位を有する正極性又は負極性の前記基準電圧における最も電位の低い電位を前記第2の電位として入力し、前記第2の電位に基づき、前記第2の出力電圧における第2の極性側の変動を抑制して前記第2の出力電圧を一定電圧に保持することを特徴とする請求項1又は2記載のガンマ回路。
【請求項4】
前記第1のレギュレータは、
前記第1の電位と第1の出力端子から出力される前記第1の出力電圧とを入力し、前記第1の電位と前記第1の出力電圧との差を打ち消す第1の演算増幅器と、
第1の電源ノードと前記第1の出力端子との間に接続され、前記第1の演算増幅器の出力に基づき導通状態が制御される第1のトランジスタと、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガンマ回路。
【請求項5】
前記第2のレギュレータは、
前記第2の電位と第2の出力端子から出力される前記第2の出力電圧とを入力し、前記第2の電位と前記第2の出力電圧との差を打ち消す第2の演算増幅器と、
前記第2の電源ノードと前記第2の出力端子との間に接続され、前記第2の演算増幅器の出力に基づき導通状態が制御される第2のトランジスタと、
を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のガンマ回路。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のガンマ回路と、
前記階調レベルを有する複数のアナログ電圧と表示素子の階調を示すデジタル信号である表示データとを入力し、前記表示データを前記アナログ電圧に変換するデジタル/アナログコンバータと、
変換された前記アナログ電圧により前記表示素子を駆動する出力回路と、
を有する表示用駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−181818(P2010−181818A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27578(P2009−27578)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】