説明

キナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の製造方法及び製造中間体

式(1)で表されるアシルフェニルアラニン誘導体に、カルボニル基導入試薬及びアントラニル酸誘導体を反応させることにより、非対称型ウレア中間体へと導き、この非対称型ウレア中間体を塩基の存在下でキナゾリンジオン体へと導き、得られたキナゾリンジオン体のキナゾリンジオン環アミドをN−アルキル化剤によってN−アルキル化することを含む、式(5)で表されるキナゾリンジオン環を有するフェニルアラニン誘導体の製造方法を提供する。この製造方法は、α4インテグリン阻害作用を有する薬剤として有用性の高い化合物であるキナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の工業化に適した製造方法である。式(1)及び式(5)において、R1は置換基を有するフェニル基等、R2はアルキル基等、R3はジアルキルアミノ基等、R4はアルキル基等を示す。


【発明の詳細な説明】
発明の背景
本発明は、α4インテグリン阻害作用を有する薬剤として有用性の高い化合物であるキナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の製造方法及びその中間体に関する。
近年、α4インテグリン依存性の接着過程が病態に関与すると考えられる炎症性疾患、例えばリウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、シューグレン症候群、喘息、乾せん、アレルギー、糖尿病、心臓血管性疾患、動脈硬化症、再狭窄、腫瘍増殖、腫瘍転移、移植拒絶などの研究が進み、α4インテグリン阻害作用を有する化合物の治療薬又は予防薬への応用が期待されている。
本出願人は既にα4インテグリン依存性の接着過程が病態に関与すると考えられる炎症性疾患に対する治療剤又は予防剤として有用性の高いα4インテグリン阻害作用を有する新規フェニルアラニン誘導体に関する発明を行い、特許出願を行っている(WO2002−16329)。
従来、このようなキナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の製法としては、固相樹脂上にフェニルアラニン誘導体を担持させて、アミド中間体を経由してキナゾリンジオン骨格を構築する方法が報告されている(WO2002−16329及びSynlett,,333−336,2001)。
しかしながら、一般的に固相合成法は、幅広い誘導体の合成として優れた利点を有するものの、固相樹脂上に担持可能な誘導体量には限界があり、この結果として一回に調製することのできる目的物量は極めて少なく、工業化に適した方法とは言えなかった。また、固相合成では一般的に反応試剤を大過剰に使用するが、これは工業化の観点から相応しくない。
また、固相合成法をベースとしてこれを液相法に置き換えることによって、例えば既知の報告例(S.M.Gadekar等、J.Am.Chem.Soc.4666−4667,1964、及び、L.Gouillex等、Tetrahedron lett.,37(39),7031,1996)に従い、アントラニル酸のカルボン酸とアミンを反応させてアミドとし、続いてアントラニル酸のアミノ基をクロロギ酸エチルや1,1’−カルボニルジイミダゾールと反応させてカルバメート又はカルボニルイミダゾリル化した後に、塩基によってキナゾリンジオン環を形成する合成方法によって、キナゾリンジオン骨格を構築することができるが、当該化合物を合成する場合には反応工程数が長く収率が低いとの問題があった。
一方、ウレア中間体を経由する方法としては、アミンとイソシアナートを反応させてウレアとし、塩基によってキナゾリンジオン環を形成する方法が知られている(例、WO2002−16329、及び、B.Taub,J.Org.Chem.,26,5238−5239,1961)。
しかしながら、イソシアナートは一般的に刺激臭のある液体で毒性が高く、自己重合してイソシアヌル酸エステルとなったり、空気中の水分と反応して分解することが知られている。このように、一般的にイソシアナートは化学的な安定性が低く、また毒性を有している。
こうしたことから、工業化に適したキナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の製造方法を見出す必要があった。
【発明の開示】
本発明はα4インテグリン阻害作用を有する薬剤として有用性の高い化合物であるキナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の工業化に適した製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、又、上記キナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体の製造中間体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の問題を解決すべく検討した結果、カルボニル基導入試薬を用いて非対称型ウレア中間体を経由することを特徴とする合成方法によって、穏和な反応温度でかつ煩雑な溶剤抽出や濃縮を伴わない簡便な操作によって、高収率でキナゾリンジオン骨格を有するフェニルアラニン誘導体へと導く工業的な製造方法を見い出し、本発明を完成させるに至った。
[1]すなわち、本発明は、式(1)で表されるアシルフェニルアラニン誘導体

〔式中、R1は置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいピリジル基のいずれかを表し、R2は置換基を有してもよいアルキル基を表す。また、化学的に許容されうる酸類との塩若しくはフリー体を表す。〕に、
カルボニル基導入試薬、及び、式(2)で表されるアントラニル酸誘導体

〔式中、R3はジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基で置換されたアルキル基、アルケニル基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基のいずれかを表し、R4は水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいベンジル基のいずれかを表し、R5はアルキル基、アルキルカルボニル基のいずれかを表す。また、化学的に許容されうる酸類との塩若しくはフリー体を表す。〕を反応させることにより、式(3)で表される非対称型ウレア中間体

〔式中、R1〜R5は上記で定義した通りである。〕
へと導き、この非対称型ウレア中間体を塩基の存在下で式(4)で表されるキナゾリンジオン体

〔式中、R1〜R4は上記で定義した通りである。〕
へと導き、
得られたキナゾリンジオン体が式(4)中のR4が水素原子である場合には、さらにこのキナゾリンジオン体のキナゾリンジオン環アミドをN−アルキル化剤によってN−アルキル化することを特徴とする、式(5)で表されるキナゾリンジオン環を有するフェニルアラニン誘導体

〔式中、R1〜R3は上記で定義した通りであり、R4はアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基のいずれかを表す。〕
の製造方法を提供する。
本発明は、又、式(5)で表されるキナゾリンジオン環を有するフェニルアラニン誘導体の製造中間体である下記の化合物(1)〜(5)を提供する。
(1) 式(1)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基であるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステル及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
(2) 式(2)のR3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステル及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
(3) 式(3)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基、R3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
(4) 式(2)のR3がジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基のいずれか、R4が水素原子、R5がメチル基である化合物及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
(5) 式(3)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基、R3がジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基のいずれか、R4が水素原子、R5がメチル基である化合物及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明としては、下記の形態が好ましい。
[2]式(2)〜(5)中、R3がジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基のいずれかである上記[1]記載の製造方法。
[3]式(2)〜(5)中、R3がジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基のいずれかである上記[1]記載の製造方法。
[4]式(2)〜(5)中、R3がジアルキルアミノ基である上記[1]記載の製造方法。
[5]カルボニル基導入試薬が、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はクロロギ酸エステルである上記[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]塩基が炭酸カリウム又はナトリウムメトキシドである上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]N−アルキル化剤がp−トルエンスルホン酸メチルである上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]式(1)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基である式(1)の化合物に、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はクロロギ酸エステルから選ばれるカルボニル基導入試薬と、R3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である式(2)の化合物を反応させ、2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルを得、これを炭酸カリウム又はナトリウムメトキシドの存在下、式(4)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルに変換し、次いでp−トルエンスルホン酸メチルを用いてN−アルキル化してNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルを得る上記[1]記載の製造方法。
[9]式(1)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基である式(1)の化合物に、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はクロロギ酸エステルから選ばれるカルボニル基導入試薬と、R3がジメチルアミノ基、R4がメチル基、R5がメチル基である式(2)の化合物を反応させ、式(3)の化合物を得、これを炭酸カリウム又はナトリウムメトキシドの存在下、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルを得る上記[1]記載の製造方法。
次に、本発明における化合物について説明する。
R1は、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいピリジル基のいずれかである。ここで、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲノアルキル基(パーフルオロアルキル基を含む)、アルコキシ基、ハロゲノアルコキシ基(パーフルオロアルコキシ基を含む)、アルキルチオ基、ニトロ基、アルキルスルホニルアミノ基、テトラゾリル基等が挙げられる。ここで、成分としてのアルキル基は炭素数1〜6が好ましく、特に好ましくは、炭素数1〜3である。なお、上記置換基の数は、1〜5であり、好ましくは、1〜3であり、それらは同一でも異なってもよい。R1としては、ハロゲン原子及び/又はアルキル基で置換されたフェニル基が好ましく、例えば、2,6−ジクロロフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−クロロ−6−メチルフェニル基、2−クロロフェニル基、2−メチルフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジクロロ−4−メチルフェニル基等が好ましい。
R2は、置換基を有してもよいアルキル基である。ここで、アルキル基は、炭素数1〜6が好ましく、特に好ましくは1〜3である。
R2が置換基を有する場合の置換基としては、置換または無置換の低級アルキルカルボニルオキシ基、置換または無置換の低級アルコキシカルボニルオキシ基、置換または無置換のアミノ基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のヘテロアリール基、置換または無置換のカルバモイル基が挙げられる。
ここで、R2の置換基が低級アルキルカルボニルオキシ基、低級アルコキシカルボニルオキシ基、低級アルコキシ基である場合のアルキルおよびアルコキシは、炭素数1〜6が好ましく、鎖状、環状、直鎖、分岐のものが含まれる。
また、R2の置換基がアリール基である場合、炭素数6〜10の単環〜2環式芳香族炭化水素基を示す。例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R2の置換基がヘテロアリール基である場合、環原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を1〜4個含有する5〜8員の単環〜3環式の芳香族ヘテロ環基を示す。例えば、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イソキサゾリル基、オキサゾリル基、イソチアゾリル基、チアゾリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、ベンズイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基が挙げられる。ここで、アリール基、ヘテロアリール基の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が挙げられる。このうち、ピリジル基、フリル基、チエニル基が好ましい。
なお、R2の置換基が低級アルキルカルボニルオキシ基または低級アルコキシカルボニルオキシ基である場合の置換基としては、低級アルキル基、低級アルケニル基、低級アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、低級アルキルで置換されたアミノ基(1置換又は2置換を含む)が挙げられる。このうち、メチル基、エチル基が好ましい。
また、R2の置換基がアミノ基である場合の置換基としては、低級アルキル基、低級アルコシキカルボニル基、低級アルキルスルホニル基が挙げられる。このうち、メチル基、エチル基が好ましい。また、ここで2つの置換基は結合して環を形成してよく、また環を形成するとき間に酸素、窒素、硫黄原子をはさんでもよい。例えば、1−ピペリジニル基や4−モルホリニル基のような環状アミノ基、2−オキソ−1−ピロリジニル基のような環状アミド基、2−オキソイミダゾリン−1−イル基や2−オキソイミダゾリジン−1−イル基のような環状ウレア基も、置換のアミノ基に含まれる。
また、R2の置換基がアリールまたはヘテロアリールである場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基が挙げられる。
また、R2の置換基がカルバモイル基である場合の置換基としては、低級アルキル基、フェニル基が挙げられ、モノ、ジ置換体が含まれる。
R2が置換基を有する場合の置換基としては、低級アルキルカルボニルオキシ基、塩素原子、ピリジル基、フリル基、チエニル基、ジ低級アルキルカルバモイル基が好ましい。
式(1)において、アミノ基は、ベンゼン環上のオルト、メタ、パラ位の中でパラ位にあるのが好ましい。
R3は、ジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基で置換されたアルキル基、アルケニル基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基のいずれかを表し、R4は水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいベンジル基のいずれかを表す。R5は、塩基によりCOOR5中、OR5が脱離するものであればよいが、アルキル基、アルキルカルボニル基が好ましい。R3〜R5において、成分としてのアルキル基は炭素数1〜6が好ましく、特に好ましくは、炭素数1〜3である。
R3としては、ジアルキルアミノ基、水素原子、ハロゲン原子、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基が好ましく、特に好ましくはジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基である。
ジアルキルアミノ基としては、炭素数1〜6のアルキル基で2置換されたアミノ基(ここで、環状のアミノ基を含む)を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基で2置換されたアミノ基若しくは炭素数2〜6の環状のアミノ基であり、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ジプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、エチルプロピルアミノ基等が挙げられる。
モノアルキルアミノ基としては、炭素数1〜6のアルキル基で1置換されたアミノ基(ここで、環状アルキル基のついたアルキルアミノ基を含む)を表し、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で1置換されたアミノ基、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロプロピルメチルアミノ基等が挙げられる。
ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基としては、前出のジアルキルアミノ基と同様の基で置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは、前出のジアルキルアミノ基と同様の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ジプロピルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、エチルプロピルアミノ基のいずれかで置換されたメチル基、エチル基、プロピル基のいずれか等が挙げられる。特に好ましくは、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、メチルエチルアミノメチル基等が挙げられる。
モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基としては、前出のモノアルキルアミノ基と同様の基で置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは、前出のモノアルキルアミノ基と同様の基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロプロピルメチルアミノ基のいずれかで置換されたメチル基、エチル基、プロピル基のいずれか等が挙げられる。特に好ましくは、メチルアミノメチル基、エチルアミノメチル基、メチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基等が挙げられる。
アミノ基で置換されたアルキル基としては、アミノ基で置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは、アミノ基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基等が挙げられる。
アルケニル基で置換されたアルキル基としては、炭素数2〜6のアルケニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは、炭素数2〜4のアルケニル基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、−CH2CH=CH2、−CH2CH2CH=CH2等が挙げられる。
アルキニル基で置換されたアルキル基としては、炭素数2〜6のアルキニル基で置換された炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは、炭素数2〜4のアルキニル基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であり、例えば、−CH2C≡CH、−CH2CH2C≡CH等が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基を表し、好ましくは炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基を表し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基等が挙げられる。
アルキルチオ基としては、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたチオ基を表し、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基で置換されたチオ基を表し、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等が挙げられる。
アリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基を表す。
特に、R3としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、シクロプロピルメチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルアミノメチル基、エチルアミノメチル基、プロピルアミノメチル基、メチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基、プロピルアミノエチル基、HC≡CCH2基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メチルチオ基、エチルチオ基が好ましい。
R4としては、水素原子、アルキル基が好ましいが、式(2)、(3)、(4)としては水素原子であるのが更に好ましく、式(5)としてはアルキル基であるのが更に好ましい。なお、ベンジル基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられるが、無置換のベンジル基が好ましい。
R5としては、特にアルキル基が好ましい。
式(2)において、R3はアミノ基に対してパラ位の位置にあるのが好ましい。
式(1)で表される合成中間体は、以下の通りにして合成できる。
式(1)で表される合成中間体は、芳香環上にニトロ基を有するフェニルアラニンと酸クロライドを既知法であるショッテン−バウマン反応条件下(例えば、N.O.V.Sonntag,Chem.Rev.52,272,1953)で縮合反応させることによってアシルフェニルアラニン誘導体とし、続いてこのカルボン酸を既知法(例えば、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations(2nd Ed.),p.1932−1941,Wiley−VCH,New York)でエステル化することによりアシルフェニルアラニン アルキルエステルを合成する。これを水素ガス存在下で定法(例えば、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations(2nd Ed.),p.821−828,Wiley−VCH,New York)である遷移金属触媒を用いる接触還元を行うことにより、対応する式(1)で表される化合物を得ることができる。
例えば、新規な合成中間体である、式(1)においてR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基であるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステルの製造方法としては、公知で市販入手可能な4−ニトロ−L−フェニルアラニンと、同じく公知で市販入手可能な2,6−ジクロロベンゾイルクロライドを縮合し、メチルエステル化、ニトロ基の還元反応工程を経て合成できる。
具体的には、4−ニトロ−L−フェニルアラニンと2,6−ジクロロベンゾイルクロライドを水酸化ナトリウム水溶液・アセトン混合溶媒中において、5−15℃に反応温度を保ちながら縮合反応を行い、晶析工程を経て、対応する縮合体、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ニトロ−L−フェニルアラニンをほぼ定量的に得る。
続いて、この縮合体をメタノールに懸濁させ、濃硫酸を加えて加熱することによりメチルエステル化反応を行い、晶析工程を経て、対応するメチルエステル化体、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ニトロ−L−フェニルアラニンメチルエステルをほぼ定量的に得る。
続いて、このメチルエステル化体を既知法(例えば、F.S.Dovell et al.,J.Am.Chem.Soc.,87,2767,1965)であるニトロ基の遷移金属触媒、好ましくは硫黄で被毒したプラチナ炭素触媒と水素ガスを用いた接触還元反応を行い、晶析工程を経て、式(1)でR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基であるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステルを高収率で得る。
なお、4−ニトロ−L−フェニルアラニンから3工程を経た収率は約90%である。
但し、ここで記載した合成方法のみが式(1)の化合物を与える唯一の方法ではなく、この方法に限定されるわけではない。また、収率は平均値を示したものであり、これに限定されるわけではない。
一方、式(2)で表される化合物の製造方法としては、市販で入手可能な三置換ベンゼン誘導体等から既知法によって導くことが可能である。
例えば、新規な合成中間体である式(2)のR3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステルの製造方法としては、公知で市販入手可能である5−クロロ−2−ニトロ安息香酸から、ジメチルアミノ化、メチルエステル化、ニトロ基の還元工程を経て合成することができる。
具体的には、まず、5−クロロ−2−ニトロ安息香酸をジメチルアミン水溶液に溶解させ、これを加熱することによって5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸へと導き、反応液に塩酸を加えることによって生成物を固体として析出させ、これを分離することによって5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸をほぼ定量的に得る。
続いて、この5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸を既知法である濃硫酸/メタノールに溶解させ、加熱することによりメチルエステル化反応を行い、5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸メチルエステルとする。反応液にトルエンと水を加え、生成物を有機層に抽出して濃縮、晶析を経た後、5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸を高収率で得る。
続いて、5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸メチルエステルのニトロ基を塩酸酸性下、メタノール溶媒中で遷移金属触媒例えばパラジウムカーボンと水素ガスを用いた接触還元反応を行い、晶析工程を経て、式(2)で表される5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステル・二塩酸塩を高収率で得る。
なお、5−クロロ−2−ニトロ安息香酸から3工程を経た収率は約80%である。
また、ここで得られる式(2)で表される5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステルは、酸性物質との塩、例えば塩酸塩として安定的に取り上げることができる。
但し、ここで記載した合成方法のみが式(2)の化合物を与える唯一の方法ではなく、この方法に限定されるわけではない。また、収率は平均値を表したものであり、これに限定されるわけではない。
本発明の製造方法における工程1について説明する。
本発明において式(5)で表されるキナゾリンジオン環を有するフェニルアラニン誘導体の製造方法としては、上述した重要中間体である式(1)の化合物と式(2)の化合物をカルボニル基導入試薬(好ましくは1,1’−カルボニルジイミダゾールまたはクロロギ酸エステル)を用いることによって、式(3)に表される非対称型ウレア中間体へと導き、式(3)の化合物を穏和な塩基性条件下で式(4)の化合物へと変換する。
式(4)におけるR4が水素原子である化合物の場合には、式(4)の化合物を単離することなく、塩基性条件下で引き続いてN−アルキル化剤によってN−アルキル化反応を行うことによって製造が可能である。また、式(4)の化合物を単離し、次いでN−アルキル化反応を行ってもよい。
例えば、前述した式(1)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステルを、適切な溶解性を有する有機溶媒(特に好ましくはアセトニトリル)を用いて、1,1’−カルボニルジイミダゾールにより式(1)のアミノ基をカルボニルイミダゾリル化し、引き続きこの中間体を単離することなく、式(2)で表される5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステルを反応液に投入することよって、非対称型ウレア中間体である式(3)で表される2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルを高収率で得ることができる。
本明細書において、「カルボニル基導入試薬」とは、キナゾリンジオン環の原子団中、カルボニル基のみが本試薬由来となるものを意味する。例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール(合成例としてOrganic syntheses collective Volume V,P.201−204,Wiley,New York,1973)、クロロギ酸エステル等が挙げられる。共に公知で、市販されており、入手可能である。
また、1,1’−カルボニルジイミダゾールのイミダゾリル基を他のヘテロアリール脱離基に置換したもの、例えば、1,1’−カルボニルジ(1,2,4−トリアゾール)(本試薬はイミダゾリル基がトリアゾイル基で置換されており、市販で入手可能である)を用いることも可能である。置換基としては、イミダゾリル基やトリアゾイル基のみに限定されるわけではなく他のヘテロアリール脱離基を用いることも可能である。
さらには、N,N’−ジサクシンイミジル カーボネート(DSC)(本試薬はN−ヒドロキシサクシンイミドを脱離基とする、市販で入手可能なカルボニル基導入試薬である)を用いることも可能である。
クロロギ酸エステルとしては、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸ニトロフェニル、クロロギ酸メトキシフェニル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸オクチル、クロロギ酸ベンジルなどの炭素数2〜10の試薬が挙げられるが、これに限定される訳ではない。
また、カルボニル導入試薬として、ホスゲン、ホスゲンアナログ(トリホスゲン等)も使用可能である。なお、これらは、気体若しくは液体であり、上記試薬に比べ、極めて毒性が高く(参考:RTECS SY 5600000)、その取り扱いが難しく、又、一般的に特殊な設備が要求され、流通にも制限があることなどから、カルボニル基導入試薬の中では、あまり好ましくない。
カルボニル導入試薬としては、特に1,1’−カルボニルジイミダゾールが好ましい。1,1’−カルボニルジイミダゾールを用いた場合、特に、副生成物の生成量が少なく、目的とする非対称型ウレア中間体を高収率で与える点で優れている。
なお、カルボニル基導入試薬は、式(1)の化合物1モルに対して、0.8〜1.2モル当量の範囲で用いるのがよい。
又、式(1)の化合物1モルあたり、式(2)の化合物を0.8〜1.2モル当量の範囲で用いるのがよい。
本反応溶媒としては、式(1)で表される化合物(例えば、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステル)に対し、適切な溶解性を有する有機溶媒が挙げられ、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン等)、ピリジン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、又は、それらの混和溶媒等を用いることが可能である。とりわけアセトニトリルを用いた際には、反応液から生成物を濾過によって簡単に分離することが可能であり、単純な濾過分離操作のみによって純度の高い式(3)で示される非対称型ウレア中間体を単離することができる。このため、溶剤抽出や溶媒濃縮操作などの煩雑な操作を一切必要としないことから工業化プロセスとして有用である。また、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いて反応を行い、続いて貧溶媒、例えば炭素数1〜10のアルコールや水を加えて非対称型ウレア中間体を固体として析出させて、これをろ過分離して目的物の結晶を得ることも可能である。従って、本反応溶媒としては、アセトニトリルやN,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
上述の反応濃度としては、工業化プロセスとして適用可能な濃度、例えば反応溶媒にアセトニトリルを使用した場合では、1〜0.01Mで行うのがよく、望ましくは0.2M付近で実施することが反応液や晶析液の撹拌時における流動性の観点から好ましい。
式(1)の化合物とカルボニル基導入試薬(例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール)でカルボニルイミダゾリル化させる反応温度としては、0℃付近〜当該反応溶媒の沸点以下の範囲内で実施するのが好ましく、0℃付近〜10℃以下の温度で反応を実施した方が副反応の抑制と収率の向上に有用であることから工業的により好ましい。反応時間は、1〜5時間程度が好ましい。
続く、カルボニルイミダゾリル化された式(1)の化合物と、式(2)で示される5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステルとの縮合反応における温度においては0℃〜適用される溶媒の沸点以下の範囲内が好ましい。特に、反応温度を50℃付近で実施する場合、2〜3時間程度でウレア結合形成反応が完結し、式(3)で示される非対称型ウレア中間体を高収率で得ることができるのでより好ましい。
但し、反応温度及び反応時間がこれに限定されるわけではなく、反応時間は反応温度との兼ね合いで決まり、反応液をHPLC等の分析手法によって管理することが工業的観点からは望ましい。
上述の反応に於いて、原料及び試薬の投入順序については、特に限定はしないが式(1)の化合物を先にカルボニル基導入試薬と反応させてカルボニルイミダゾリル化し、次いで式(2)の化合物と反応させる場合の方法の方が、式(2)の化合物を先にカルボニルイミダゾリル化する場合の方法に比べて、収率が高く、副反応の観点から好ましい。しかしながら、本発明の製造方法では、式(2)の化合物を先にカルボニルイミダゾリル化してもよく、又、式(1)の化合物、カルボニル基導入試薬及び式(2)の化合物を同時に反応させてもよい。
次に、工程2について説明する。
式(3)に示される非対称型ウレア中間体は、適切な反応溶媒中において、塩基の存在下でキナゾリンジオン環を形成して式(4)に示されるキナゾリンジオン体を与える。
その際の「塩基」としては、無機塩基、有機塩基が含まれる。ここで、無機塩基としては、アルカリ金属との塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等)やアルカリ土類金属との塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)が挙げられる。また、有機塩基としては、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、ジシクロヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン(DIPEA)等が挙げられる。好ましくは、無機塩基、中でも、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシドが好ましい。
塩基の量として、式(3)の化合物1モルに対し、0.1〜2.0モル当量を用いるのが好ましいが、1モル当量以下の触媒量を用いるのが好ましい。反応時間は1〜6時間とするのがよい。
例えば、塩基として炭酸カリウムを用いた場合では、0.1〜2モル当量、好ましくは0.2〜0.4モル当量が好ましく、塩基としてナトリウムメトキシドを用いる場合では、0.1〜1.0モル当量、好ましくは0.2〜0.4モル当量が好ましい。この時の反応時間としては1〜2時間程度でよい。
上述の反応における溶媒としては、式(3)に示す化合物が溶解し、かつ、反応が円滑に進行する溶媒であればよく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルホルムアミドを主成分とするアルコールとの混合溶媒等が挙げられるが、これに限られない。
なお、塩基に炭酸カリウムを用いた場合では、DMF/メタノール混合溶媒を使用することが反応時間の短縮化の観点から好ましい。DMF/メタノールの混合溶媒の組成比としては10/1付近が適しているが、これに限定されない。
上述の反応における反応濃度としては、工業化プロセスとして適用可能な濃度で0.01〜2Mの範囲、例えばDMF/メタノール混合溶媒では0.25M付近で反応を実施することが好ましいが、これに限定されるわけではない。
反応温度としては、0℃〜当該溶媒の沸点以下、好ましくは25℃付近が適している。
上述の反応の結果生じた式(4)に示されるキナゾリンジオン体は反応液に水若しくは塩酸水溶液を滴下するか、又は、水若しくは塩酸水溶液に反応液を加えることにより固体として析出し、これを一般的な分離方法によって単離することが可能である。
なお、塩基として炭酸カリウムを用いる場合では、式(4)の化合物を単離することなく、式(3)に示される非対称型ウレア中間体からキナゾリンジオン環形成反応を経てN−メチル化反応を連結化することができ、反応工程数を一段階減らすことができる。工業化の観点から生産効率の向上を考えた場合、この方法では式(4)の化合物の単離操作を簡略化することができて、工業化プロセスとして特に有用性が高い。
最後に、工程3について説明する。
式(4)において、R4が水素原子である場合には、塩基存在下、N−アルキル化剤により式(5)に示されるキナゾリンジオン体へと導くことができる。
なお、上述の工程2で生成した、式(4)で表されるキナゾリンジオン体を単離した後、N−アルキル化を行うことも可能であるが、単離することなくN−アルキル化を行う方が、工業的観点で好ましい。
本明細書において、「N−アルキル化剤」とは、窒素上にアルキル基を導入できる試薬を意味し、例えば、ハロアルカン、スルホン酸アルキル、置換基を有してもよいベンジルハライド等が挙げられる。
ここで、ハロアルカン、スルホン酸アルキルとしては、炭素数1〜10のものが好ましい。更に炭素数1〜6のものが好ましく、特に炭素数1〜3のものが好ましい。ハロアルカンとしては、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等が挙げられ、スルホン酸アルキルとしては、例えば、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、エタンスルホン酸メチル、エタンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル等が挙げられる。ベンジルハライドとしては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド等が挙げられ、その置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
例えば、式(5)においてR4がメチル基である化合物の製造では、p−トルエンスルホン酸メチルが工業化の観点から適している。即ち、p−トルエンスルホン酸メチルは、ヨウ化メチルに比べて沸点が高く、室温下での取り扱いが容易である。また、p−トルエンスルホン酸メチルは、メタンスルホン酸メチルに比べて反応液の流動性が好ましく、送液操作を伴う工業化プロセスに適している。
N−アルキル化剤の使用量としては、式(3)又は式(4)の化合物に対して、1〜10モル当量の範囲、好ましくは1.2〜2.0モル当量付近が適しているが、反応の進捗に応じて試薬量を増減することもできる。
塩基としては、無機塩基、有機塩基が含まれる。ここで、無機塩基としては、アルカリ金属との塩(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等)やアルカリ土類金属との塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)が挙げられる。また、有機塩基としては、トリエチルアミン、エタノールアミン、モルホリン、ピペリジン、ジシクロヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン(DIPEA)等が挙げられる。好ましくは、無機塩基、中でも、炭酸カリウムが好ましい。
塩基の量は、式(3)又は式(4)に示す化合物に対して、1.5〜2モル当量が好ましく、1.8モル当量程度が好ましいが、これに限定されるわけではなく、反応の進捗に応じて増減させることが可能である。
反応溶媒としては、式(3)又は式(4)に示す化合物が溶解し、かつ、反応が円滑に進行する溶媒であればよく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルホルムアミドを主成分とするアルコールとの混合溶媒等が挙げられるが、これに限られない。なお、塩基に炭酸カリウムを用いた場合では、DMF/メタノール混合溶媒を使用することが反応時間の短縮化の観点から好ましい。DMF/メタノールの混合溶媒の組成比としては10/1付近が適しているが、これに限定されない。上述の反応における反応濃度としては、工業化プロセスとして適用可能な濃度で0.01〜2Mの範囲、例えばDMF/メタノール混合溶媒では0.25M付近で反応を実施することが好ましいが、これに限定されるわけではない。
反応温度としては、0℃〜当該反応溶媒の沸点以下、好ましくは40℃付近が適しているが、これに限定されない。反応時間としては3〜18時間でよいが、反応液をHPLC等の分析手法によって管理することが工業的観点から好ましい。
例えば、式(4)でR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基、R3がジメチルアミノ基である非対称型ウレア中間体をDMF/メタノール混合溶媒に25℃で溶解させ、式(4)の化合物に対して0.2モル当量の炭酸カリウムを用いて2時間撹拌してキナゾリンジオン環形成反応を行い、引き続き1.5モル当量のp−トルエンスルホン酸メチル及び1.8モル当量の炭酸カリウムを加えてN−メチル化反応を行い、式(4)から2工程を経由して、式(5)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルを収率80〜90%で得ることができる。
式(5)に示される化合物は、反応溶媒に水を添加することよって固体として析出させて、濾別などの一般的な分離操作によって単離することができる。但し、この方法のみに限定されるものではない。
上記の製造方法は、式(2)においてR4が水素原子である化合物を用いた場合について説明したものであるが、式(2)においてR4がアルキル基又は置換基を有してもよいベンジル基である化合物については、N−アルキル化剤を用いる反応工程が不要であるから、式(1)の化合物と式(2)の化合物をカルボニル基導入試薬(好ましくは1,1’−カルボニルジイミダゾール)を用いることによって、式(3)に表される非対称型ウレア中間体へと導き、式(3)の化合物を穏和な塩基性条件下で式(4)の化合物へと変換し、これを単離することによって(この場合、式(4)と式(5)とが同じとなるので)、本発明で目的とする式(5)の化合物を得ることができる。
以上の製造方法により、式(1)及び式(2)で示される重要中間体から、重要中間体(3)を経由して、式(5)で表されるキナゾリンジオン環を有するフェニルアラニン誘導体の工業化に適した製造方法が提供される。
なお、R3が、モノアルキルアミノ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基で置換されたアルキル基である場合には、そのアミノ基を構成する窒素原子に直接結合している水素原子を、予め適当な保護基で保護しておき、後に適当な脱保護の手段により脱保護してもよい。保護、脱保護の手段としては、Theodora W.Greene,Peter G.M.Wuts著,“Protecting group in organic synthesis”,Second edition,John Wiley & Sons Inc.,New York,1991年,P.309−385)記載の手段等が挙げられる。
例えば、通常のアシル化方法でアシル化剤を用いることにより、アミノ基を構成する窒素原子に直接結合している水素原子を、置換基を有してもよい炭素数2〜7のアルキルカルボニル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基等)、置換基を有してもよいアリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基等)、置換基を有してもよいアリールアルキルカルボニル基(例えば、ベンジルカルボニル基等)、置換基を有してもよい炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等)、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、置換基を有してもよいアリールアルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等)等に置換してもよい。
この場合には、本発明における第1、第2若しくは第3工程の反応の終了後に、特に本発明における第3工程のN−アルキル化反応の終了後に、置換基を有してもよい炭素数2〜7のアルキルカルボニル基、置換基を有してもよいアリールカルボニル基、置換基を有してもよいアリールアルキルカルボニル基の場合は酸性条件下または塩基性条件下等で、置換基を有してもよい炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基の場合は塩基性条件下等で、ターシャリーブトキシカルボニル基の場合は酸性条件下等で、置換基を有してもよいアリールアルキルオキシカルボニル基の場合は接触還元(水素添加反応)条件下等で、脱保護することができる。
また、例えば、通常のベンジル化方法でベンジル化試薬を用いることにより、アミノ基を構成する窒素原子に直接結合している水素原子を、置換基を有してもよいアリールアルキル基(ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、ハロベンジル基等)等に置換しても良い。この場合には、本発明における第1、第2若しくは第3工程の反応の終了後に、特に本発明における第3工程のN−アルキル化反応の終了後に、接触還元(水素添加反応)条件下等で、脱保護することができる。
なお、上記保護基における「置換してもよい」場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基等が挙げられる。
なお、本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。また、置換基中の成分としての「ハロゲノ」としては、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードを意味する。
また、式(1)または式(2)において、「化学的に許容されうる酸類」としては、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、臭化水素酸等)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、クエン酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、トリフルオロ酢酸、タンニン酸、酪酸、ヒベンズ酸、パモ酸、エナント酸、デカン酸、テオクル酸、サリチル酸、乳酸、シュウ酸、マンデル酸、リンゴ酸等)、有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等)が挙げられる。式(1)で示される化合物においては、フリー体が特に好ましく、式(2)で示される化合物においては、塩酸塩が特に好ましい。尚、更に、水和物、溶媒和物になっていてもよい。
また、本発明において、式(5)においてR3がジアルキルアミノ基である場合の化合物が薬効的に優れている点で、式(2)および(3)においてR3がジアルキルアミノ基である場合が好ましい。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基が好ましく、特に、R3がジメチルアミノ基である場合が好ましい。
また、同様に、式(2)および(3)においてR3がモノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基のいずれかである場合も好ましい。特に、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、シクロプロピルメチルアミノ基、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、メチルアミノメチル基、エチルアミノメチル基、プロピルアミノメチル基、メチルアミノエチル基、エチルアミノエチル基、プロピルアミノエチル基、HC≡CCH2基、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、メチルチオ基、エチルチオ基が好ましい。
このうち、式(2)および(3)において、R3がモノアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基の場合には、アミノ基を構成する窒素原子に直接結合している水素原子を、置換基を有してもよい炭素数2〜7のアルキルカルボニル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、トリフルオロアセチル基等)、置換基を有してもよいアリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基等)、置換基を有してもよいアリールアルキルカルボニル基(例えば、ベンジルカルボニル基等)、置換基を有してもよい炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基等)、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)、置換基を有してもよいアリールアルキルオキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル基等)等に置換してもよい。また、アミノ基を構成する窒素原子に直接結合している水素原子を、置換基を有してもよいアリールアルキル基(ベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、メトキシベンジル基、ハロベンジル基等)等に置換してもよい。なお、上記保護基における「置換してもよい」場合の置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、水酸基、ハロゲノアルキル基、ハロゲノアルコキシ基等が挙げられる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。但し、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
<分析条件>
H及び13C NMRはTMSを内部標準物質として、ブルッカー社製アバンス400MHz NMRで測定を実施した。DMSO−dはユーリソトップ社製品(0.03%TMS含有)を使用した。HPLC装置は(株)島津製作所製のLC10シリーズ(ポンプLC−10AT・コントローラーSCL−10A・検出器SPD−10Avp)を使用した。オートサンプラーは協和精密(株)社製KMT−100Xを使用した(注入量は特に記載のない限り10μl)。カラムオーブンはスガイ製U−620を使用した。クロマト波形処理には(株)島津製作所のC−R7Aを用いた。本実施例において、使用した原料及び試薬類はいずれも市販品を特に精製することなくそのまま使用した。
<HPLC分析条件>
溶離液組成: A液 0.1%TFA水溶液
B液 0.1%TFA含有アセトニトリル
流量: 1.0mL/min
検出器: UV、254nm
使用カラム: 逆相ODSシリカゲルカラム(GLサイエンス製ODS−2)
カラムサイズ内径φ4.6mm x 長150mm
カラム温度: 40℃
グラジエント分析条件: (A液/B液)=初期(90/10)−25分後(10/90)−30分後(10/90)
サンプル注入量: 10μl
<合成中間体(1)の合成参考例>
式(6)に表される化合物の合成例

α−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成
水 200mL及びアセトン 91mLを混合し、これに4−ニトロ−L−フェニルアラニン 72.4g(344mmol)を加えて10℃以下に冷却した。この溶液に温度が15℃を越えないようにして6M水酸化ナトリウム水溶液 68mLを滴下した。pH14付近を保ちながら、2,6−ジクロロベンゾイルクロライド73.58g(344mmol)をゆっくりと滴下した。pH14付近を保つために必要に応じて水酸化ナトリウム水溶液を滴下した。滴下終了から2時間後、反応液の温度を15℃以下に保ちながら、6M塩酸86mLを加えて白色結晶を析出させた。10℃以下で熟成を行った後に結晶を分離し、60℃下で減圧乾燥を行いNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ニトロ−L−フェニルアラニンを128.5g得た(収率:97%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):9.12(d,1H,J=8.42Hz),8.16(d,2H,J=8.78Hz),7.59(d,J=8.77Hz),7.42(m,3H),3.29(m),3.07(dd,1H,J=3.64 and 10.42Hz).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):172.25,163.74,146.68,146.18,131.51,131.37,131.05,128.37,123.55,53.17,36.74.
MS(FAB):m/z 383.1(M+H)
HRMS(FAB):m/z 383.0219(M+H)
続いて、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ニトロ−L−フェニルアラニン 117.3g(306mmol)をメタノール 592mLに加えて溶解させ、これに95%濃硫酸31.6gを発熱に注意しながら滴下した。滴下後、反応温度40℃で3時間反応を行い、反応の完結をHPLCで確認した後、反応液を30℃以下に冷却した。反応液温度が30℃を越えないようにして予め10℃付近に冷却した水 395mLを1時間掛けて滴下した。起晶後、晶析液を10℃以下に保ち、5時間熟成を行った。結晶を濾過分離した後、60℃で減圧乾燥を行い、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ニトロ−L−フェニルアラニンメチルエステル 117.8gを得た(収率97%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):9.23(d,1H,J=8.2Hz),8.18(d,2H,J=8.8Hz),7.59(d,2H,J=8.8Hz),7.38−7.46(m,3H),4.88(ddd,1H,J=6.4,8.2 and 11Hz),3.69(s,3H),3.31(dd,1H,J=6.4 and 14Hz),3.10(dd,1H,J=11 and 14Hz).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):171.27,163.83,146.74,145.80,136.15,131.49,131.05,128.42,123.58,53.07,52.40,36.39.
MS(FAB):m/z 397.2(M+H)
HRMS(FAB):m/z 397.0345(M+H)
続いて、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−ニトロ−L−フェニルアラニンメチルエステル 115.94g(290mmol)と3%プラチナカーボン粉末(ウェット品) 28.37g(0.5モル%対基質)をメタノール 825mLに懸濁させた。この懸濁液を水素ガス雰囲気下でニトロ基の還元反応を30℃で5時間実施した。反応の完結をHPLCで確認した後、プラチナ触媒を濾別し、反応液の濃度調製を行った。これに水539mLを液温度30℃付近で滴下し、その後10℃以下で冷却晶析を行った。結晶を濾別して、60℃で減圧乾燥後、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステルを84.61g得た(収率80%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):9.23(d,1H,J=7.8Hz),7.38−7.47(m,3H),6.90(d,2H,J=7.0Hz),6.47(d,2H,J=7.0Hz),4.57(ddd,1H,J=5.8,7.8 and 9.1Hz),3.62(s,3H),2.90(dd,1H,J=5.8 and 14Hz),2.79(dd,1H,J=9.1 and 14Hz).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):171.87,163.88,147.52,136.43,131.65,131.34,129.90,128.34,124.01,114.14,54.57,52.07,36.40.
MS(FAB):m/z 367.2(M+H)
HRMS(FAB):m/z 367.0585(M+H)
<合成中間体(2)の合成参考例>
式(7)に表される化合物の合成例

2−アミノ−5−(ジメチルアミノ)安息香酸メチルエステル・二塩酸塩の合成
5−クロロ−2−ニトロ安息香酸 30.0g(148mmol)を氷浴下で50%ジメチルアミン水溶液 78mL(744mmol)に撹拌溶解させた。この溶液を耐圧容器に入れて密封した後、オイルバスにおいて23時間60℃で加熱撹拌した。反応液を十分に冷却し、内圧を開放し、HPLC分析にて反応の終了を確認した後に、反応液を別の容器に移し(水を約50ml使用)、濃塩酸 49.6mL加えて次に水 200mLを加えた。塩酸を加えることにより黄色結晶が析出した。晶析液を10℃で一晩熟成し、ろ過分離し、減圧乾燥後に5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸を30.95g得た(収率99%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):8.88(bs,1H),7.97(d,1H,J=9.4Hz,aryl coupling=1.76Hz),6.78(d,1H,J=9.4Hz,aryl coupling=2.84 and 1.92Hz),6.71(s,1H,aryl coupling=2.88 and 1.60Hz),3.08(s,6H).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):168.58,153.86,133.94,132.85,127.03,111.44,109.69,40.24.
MS(ESI):m/z 211.17(M+H),209.27(M−H)
続いて、5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸 40.0g(190.30mmol)をメタノール 160mLに25℃で懸濁させた。この懸濁液を氷浴下で冷却し、濃硫酸53.6mL加えた。濃硫酸投入後、液温度は約30℃まで上昇した。これをこのまま60℃のバスに浸して20時間に渡り加熱撹拌した。反応の進捗をHPLCで確認し、原料の消失を確認した後、トルエン 400mLを加えて希釈した。これに水 200mLと水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム38.06gを水200mLに溶解させたもの)を加えた。水層をトルエン200mLで抽出し、トルエン溶媒を合わせた。トルエン層を飽和重曹水300mLで洗浄した。トルエン層を減圧濃縮(バス温度50℃)して、目的物が約20wt%となるように調整した。減圧留去後に目的物の結晶が析出し、室温で1時間ほど熟成を行った後、n−ヘプタン220mLを加えて5℃でさらに一晩撹拌した。結晶を吸引ろ過により分離し、n−ヘプタン100mLで結晶を洗浄した。このウエット結晶を60℃で3時間減圧乾燥を行い、5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸メチルエステルを黄色結晶性粉末として34.82g得た(収率82%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):8.02(d,1H,J=9.4Hz),6.82(d,1H,J=9.36Hz,aryl coupling=2.56Hz),6.78(s,1H,aryl coupling=2.4Hz),3.83(s,3H),3.10(s,6H).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):167.70,153.92,132.71,132.34,127.24,111.87,110.07,53.21,40.28.
MS(FAB):m/z 224.24(M)
HR MS(FAB):m/z 224.0830(M)
続いて、5−ジメチルアミノ−2−ニトロ安息香酸メチルエステル 10.06g(44.9mmol)をメタノール50mLに加えて懸濁させ、これに10M塩酸を9.0mL及び5%パラジウム炭素 1.96g(ウェット、1mol%対基質)を加えた。反応容器を水素ガスで置換して室温下で一晩撹拌した。パラジウム触媒をセライトを用いて濾別し、ろ過液を約半量まで減圧濃縮した。その後、この溶液にアセトン80mLを加えて減圧濃縮を3回繰り返すことによって式(12)で表される化合物を析出させ、さらに10℃以下で熟成を行い、減圧乾燥後に2−アミノ−5−(ジメチルアミノ)安息香酸メチルエステル・二塩酸塩を11.16g得た(収率93%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):8.09(s,1H),7.72(d,1H,J=9.0Hz),6.96(d,1H,9.08Hz),5.50(bs),3.83(s,3H),3.04(s,6H).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):167.12,131.64,126.66,123.29,118.7,108.88,52.18,45.84.
MS(FAB):m/z 195.3(M+H)
HR MS(FAB):m/z 195.1122(M+H)
【実施例1】
<工程1>
式(8)に代表される化合物の合成例

2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルの合成
方法1:カルボニル基導入試薬として、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)を用いた場合
アセトニトリル 310mLに1,1’−カルボニルジイミダゾール 9.73g(59.41mmol)を加えて溶解させ、この溶液を10℃以下に冷却して式(6)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステル 20.78g(56.58mmol)を加えて撹拌した。2時間後に、この反応液に式(7)で表される2−アミノ−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル・二塩酸塩 15.06g(54.50mmol)を加え、50℃に加熱して2時間撹拌した。反応終了後、反応液にメタノール 62mLを加えて、溶液を10℃以下に冷却し、10時間以上の熟成を実施した後、結晶を濾別により分離して減圧乾燥後に目的とする式(8)で表される2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルを30.03g得た(収率88%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 9.56(s,1H),9.46(s,1H),9.22(d,1H,J=8.0Hz),8.07(d,1H,J=9.24Hz),7.47−7.38(m,5H),7.19(m,3H),7.06(m,1H),4.69(m,1H),3.88(s,3H),3.66(s,3H),3.06(dd,1H,J=14.1 and 5.3Hz),2.93−2.88(m,1H),2.88(s,6H)
13C NMR(100MHz,DMSO−d):δ 171.72,168.20,163.88,152.87,145.63,138.89,136.38,131.80,131.64,131.37,130.46,129.78,128.36,122.83,119.31,118.54,117.18,112.99,54.09,52.59,52.18,40.80,36.34.
MS(FAB):m/z 586.3(M)
HR MS(FAB):586.1407(M)
方法2:カルボニル基導入試薬として、クロロギ酸フェニルを用いた場合
アセトニトリル 30mLに式(6)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステル 2.08g(5.45mmol)を加えて室温で撹拌、溶解させた。次いで氷浴下で冷却し、これにトリエチルアミン 0.83mLとクロロギ酸フェニル 0.72mL(5.72mmol)を加えた。反応液を室温に戻して1.5時間撹拌した後、2−アミノ−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル・二塩酸塩 1.46g(5.45mmol)とトリエチルアミン 1.51mLを加えて室温下で3日間撹拌した。析出した結晶を濾別してメタノールで洗浄し、減圧乾燥後に目的とする式(8)で表される2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルを有する結晶性固体を2.55g得た(含量61.3wt%、収率49%)。
なお、物性情報については前述の方法1の記載値と一致した。
方法3:カルボニル基導入試薬として、N,N’−ジサクシンイミジル カーボネート(DSC)を用いた場合
アセトニトリル 15mLに式(6)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステル 1.32g(3.60mmol)を加えて室温で撹拌、溶解させた。この溶液にN,N’−ジサクシンイミジル カーボネート(DSC)1.0g(3.90mmol)を加えて室温で撹拌した。この反応液に2−アミノ−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル・二塩酸塩 0.98g(3.68mmol)とN,N−ジイソプロピル−N−エチルアミン(DIPEA)1.92gを加えて50℃で2.5時間撹拌した。反応の進行に伴い目的物が固体として析出し、この懸濁液を10℃以下で冷却した。結晶を濾別し、メタノールで結晶を洗浄して減圧乾燥後に目的とする式(8)で表される2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルを1.16g得た(収率55%)。なお、物性情報については前述の方法1の記載値と一致した。
<工程2>
式(9)に代表される化合物の合成例

α−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成
N,N−ジメチルホルムアミド 200mLに式(8)で表される2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル 40.0g(68.14mmol)を加えて25℃下で撹拌溶解させた。これに28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液 5.4mLを加えて25℃で2時間撹拌した。反応終了後、反応液を塩酸水溶液 210mLに滴下して式(14)で表される目的物を析出させ、これを分離、減圧乾燥を行って標記化合物を36.74g得た(収率97.2%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 11.20(bs,1H),9.29(d,1H,J=8.12Hz),7.47−7.38(m,5H),7.29−7.26(m,1H),7.18(d,2H,J=8.3Hz),7.12(m,2H),4.81(m,1H),3.69(s,3H),3.22(dd,1H,J=14.1 and 4.8Hz),3.02(dd,1H,J=14.0 and 3.8Hz),2.91(s,6H).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):δ 171.70,163.99,162.75,150.18,146.80,137.15,136.34,134.80,131.78,131.36,131.15,129.84,129.18,128.32,122.05,116.48,115.03,108.50,53.70,52.29,40.93,36.36.
MS(FAB):m/z 555.2(M+H)
HR MS(FAB):m/z 555.1172(M+H)
<工程3>
式(10)に代表される化合物の合成例

(方法1) 式(9)のN−メチル化反応によるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成 [式(9)で示される化合物を単離した場合の製法]
式(9)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステル 30.0g(54.0mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)180mL及びメタノール20mLを含む溶液に加えて25℃で攪拌、溶解させた。これにp−トルエンスルホン酸メチル 15.3g(81.1mmol)を含むDMF溶液(DMFとして20mL)と炭酸カリウム 15.0g(108.1mmol)を加えた。投入後、反応温度40℃で6時間撹拌を行い、この反応液を予め10℃以下に冷却した塩酸水溶液(6M塩酸 1.8mL及び水250mL)に発熱に注意しながら滴下した。析出物を濾別して60℃で減圧乾燥を行い、式(10)で表される標記化合物を25.3g得た(収率82%)。
(方法2) Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルの合成 [式(9)で示される化合物を単離しない場合の製法]
式(8)で表される2−(3−{4−[2−(S)−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル 20g(34.07mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)110mLに20℃で撹拌溶解させた。これにメタノール 11mLと炭酸カリウム0.94g(6.81mmol)を加えて25℃で1時間撹拌した。キナゾリンジオン環形成反応の終了をHPLCで確認した後に、式(9)で表される化合物を単離することなく、この反応液にp−トルエンスルホン酸メチル 7.74mL(51.11mmol)を含むDMF溶液(DMF 14mL)と炭酸カリウム 8.46g(61.33mmol)を加え、40℃でN−メチル化反応を実施した。反応終了後、反応液を水に添加して式(10)で表される標記化合物を固体として析出させ、析出物を濾別して減圧乾燥を行い、16.71g得た(収率86.2%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d):δ 9.29(d,1H,J=8.12Hz),7.47−7.36(m,6H),7.32−7.29(m,1H),7.24(d,1H,J=2.84Hz),7.18(d,2H,J=8.28Hz),4.82(m,1H),3.69(s,3H),3.49(s,3H),3.23(dd,1H,J=14.1 and 4.6Hz),3.02(dd,1H,J=13.9 and 3.5Hz),2.94(s,6H).
13C NMR(100MHz,DMSO−d):δ 171.73,163.99,161.88,150.37,146.73,137.20,136.34,135.34,132.06,131.78,131.36,129.89,128.99,128.32,121.34,116.21,116.00,109.15,53.65,52.29,40.75,36.35,30.88.
MS(ESI):m/z 569.33(M+H)
Anal.Calcd for C2826Cl:C,59.06;H,4.60;N,9.84;Cl,12.45.Found:C,59.08;H,4.64;N,9.82;Cl,12.43.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアシルフェニルアラニン誘導体

〔式中、R1は置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいピリジル基のいずれかを表し、R2は置換基を有してもよいアルキル基を表す。また、化学的に許容されうる酸類との塩若しくはフリー体を表す。〕に、
カルボニル基導入試薬、及び、式(2)で表されるアントラニル酸誘導体

〔式中、R3はジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アミノ基で置換されたアルキル基、アルケニル基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基のいずれかを表し、R4は水素原子、アルキル基、置換基を有してもよいベンジル基のいずれかを表し、R5はアルキル基、アルキルカルボニル基のいずれかを表す。また、化学的に許容されうる酸類との塩若しくはフリー体を表す。〕を反応させることにより、式(3)で表される非対称型ウレア中間体

〔式中、R1〜R5は上記で定義した通りである。〕
へと導き、この非対称型ウレア中間体を塩基の存在下で式(4)で表されるキナゾリンジオン体

〔式中、R1〜R4は上記で定義した通りである。〕
へと導き、
得られたキナゾリンジオン体が式(4)中のR4が水素原子である場合には、さらにこのキナゾリンジオン体のキナゾリンジオン環アミドをN−アルキル化剤によってN−アルキル化することを特徴とする、式(5)で表されるキナゾリンジオン環を有するフェニルアラニン誘導体

〔式中、R1〜R3は上記で定義した通りであり、R4はアルキル基、置換基を有してもよいベンジル基のいずれかを表す。〕
の製造方法。
【請求項2】
式(2)〜(5)中、R3がジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、モノアルキルアミノ基で置換されたアルキル基、アルキニル基で置換されたアルキル基のいずれかである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(2)〜(5)中、R3がジアルキルアミノ基、モノアルキルアミノ基、アミノ基、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基のいずれかである請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
式(2)〜(5)中、R3がジアルキルアミノ基である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
カルボニル基導入試薬が、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はクロロギ酸エステルである請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
塩基が炭酸カリウム又はナトリウムメトキシドである請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
N−アルキル化剤がp−トルエンスルホン酸メチルである請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
式(1)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基である式(1)の化合物に、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はクロロギ酸エステルから選ばれるカルボニル基導入試薬と、R3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である式(2)の化合物を反応させ、2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステルを得、これを炭酸カリウム又はナトリウムメトキシドの存在下、式(4)で表されるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルに変換し、次いでp−トルエンスルホン酸メチルを用いてN−アルキル化してNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルを得る請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
式(1)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基である式(1)の化合物に、1,1’−カルボニルジイミダゾール又はクロロギ酸エステルから選ばれるカルボニル基導入試薬と、R3がジメチルアミノ基、R4がメチル基、R5がメチル基である式(2)の化合物を反応させ、式(3)の化合物を得、これを炭酸カリウム又はナトリウムメトキシドの存在下、Nα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−(1−メチル−6−ジメチルアミノ−2,4[1H,3H]−キナゾリンジオン−3−イル)−L−フェニルアラニンメチルエステルを得る請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の式(1)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基であるNα−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−アミノ−L−フェニルアラニンメチルエステル及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
【請求項11】
請求項1記載の式(2)のR3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である5−ジメチルアミノ−2−アミノ安息香酸メチルエステル及びその化学的に許容されうる酸類との塩。
【請求項12】
請求項1記載の式(3)のR1が2,6−ジクロロフェニル基、R2がメチル基、R3がジメチルアミノ基、R4が水素原子、R5がメチル基である2−(3−{4−[2−(2,6−ジクロロベンゾイルアミノ)−2−メトキシカルボニルエチル]フェニル}ウレイド)−5−ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル。

【国際公開番号】WO2004/074264
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502788(P2005−502788)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001982
【国際出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】