説明

キナーゼ阻害剤としてのテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体およびその生物学的適用

本発明は、式(I)のキナーゼ阻害剤であって、−R〜R4=H;エーテルまたはポリエーテル、アミノ;NO;NH−カルバマート;NH−CO−R(Rは上記に定義された通りである);Nおよび1,2,3−トリアゾールタイプのその誘導体であり;−R=−OH;ハロゲン;−OR(Rは上記定義の通りである);OH−カルバマート;OH−カルバマート;NH,NH−カルバマート;NH−CO−R(Rは上記に定義された通りである);Nおよび1,2,3−トリアゾールタイプのその誘導体;N(R,R10)であり;−R’=HまたはC−C12アルキルであり;−R=H;R;(RまたはR’)−Si(Rは上記定義の通りである);置換されてもよいアリール、ヘテロアリール;ハロゲン(ヨウ素);アルキニルであり;−RおよびR=H、C−C12アルキルであり;RおよびR10=H、上記定義通りのR(またはR’)、ものに関する。これらの化合物は、キナーゼ阻害剤として、特に、癌の治療のために用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キナーゼ阻害剤としてのテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体に関しており、かつ薬理学的ツールとしておよび医薬としてのその使用のために行われている。
【0002】
本発明はまた、新規な生成物を構成するこれらの誘導体の発明に関する。
【0003】
本発明はまた、その製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明者らは、特に有利な合成経路の開発をもたらしたアクリジン誘導体に関する大量の専門知識を有しており、これは最も一般的には市販の生成物から出発して段階の数が少ない。
【0005】
本発明者らの研究の進行の結果、新規なテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジンを合成することによってこれらの誘導体のファミリーが拡大している。
【0006】
全てのこれらの誘導体の研究によって、予想外にも、細胞分裂を制御するキナーゼ、例えば、サイクリン依存性キナーゼ(cyclin-dependent kinases:CDKs)およびオーロラ・キナーゼに対して、しかしグリコーゲン・シンターゼ・キナーゼ−3(glycogen synthase kinase-3:GSK−3)に対しても阻害特性を証明することができるようになった。
【0007】
これらの阻害活性のおかげで、これらの誘導体は、これらのキナーゼの調節不全に関連する重篤な病理学的な状態を治療するための医薬の有効成分として特に有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、キナーゼ阻害剤として、テトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体のために行われる。
【0009】
本発明はまた、医薬としての使用のためのこれらの阻害剤に関する。
【0010】
本発明はまた、生成物として、新規であるこれらの誘導体のものにも関する。
【0011】
本発明はまた、これらの誘導体を調製するための方法のために行われる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の態様によれば、本発明は、キナーゼ阻害剤として、式(I):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中:
− R〜Rは、同一であっても異なってもよく、H;エーテルまたはポリエーテル基−(OR’)−OR(RおよびR’は、同一であっても異なってもよく、置換されてもよい、線状(linear)または分枝のC−C12アルキル基を示す);アミノ基NHまたはN(R,R10);NO;−NH−CO−OM型のNH−カルバメート(Mは、上記に規定されたR(またはR’)を示す)または塩;NH−CO−R(Rは上記の規定の通り);Nおよび1,2,3−チアゾールタイプのその誘導体を示す;
− Rは、−OH基;ハロゲン;−OR(Rは上記の定義の通りである);−O−CO−NHMタイプのOH− カルバマート(Mは、上記定義通りのR(またはR’)を示す);NH、−NH−CO−OMタイプのNH−カルバマート(Mは上記定義通りのR(またはR’)を示す)または塩;NH−CO−R(Rは上記の定義通りである);Nおよび1,2,3−トリアゾールタイプのその誘導体;N(R,R10)(Mは上記の定義の通りである)を示す;
− R’は、Hまたは上記で規定されるC−C12アルキル基を示すか、
またはR/R’は一緒になって=O基を示す;
− Rは、H;R基;(RまたはR’)−Si基を示す(Rは、上記で定義の通りである);適切に置換されてもよいアリール基;ヘテロアリール基;ハロゲン(ヨウ素);またはアルキニル基−C≡C−R(Rは上記の定義の通りである);
− RおよびRは同一であっても異なってもよく、Hまたは上記に定義された通りのC−C12アルキル基を示し;
− RおよびR10は、同一であっても異なってもよく、Hまたは上記に定義された通りのR(またはR’)基を示す
ただし、R〜R、RおよびR=H;RおよびR’が−C=O基を形成するかまたはR=OHおよびR’=H(またはその逆);R=−(CH−Si、CまたはCまたはCアルキルである化合物およびR〜R、RおよびR=H、R=−OCHおよびR’=H(またはその逆)およびR=Cアルキルである化合物を除く)
に対応するテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体のために行われる。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において、
− 「アルキル」は、線状または分枝の、必要に応じて置換された、炭化水素ベースの鎖であって、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を含んでいる鎖に関する;
− 「ハロゲン」は、F、Cl、Br、IおよびCF基を示す;
− 「アリール」は、1つ以上の芳香族環であって、必要に応じて置換されており、好ましくはフェニルラジカルを示す;
− 「ヘテロアリール」は、ヘテロ原子としてN、OまたはSを有するヘテロ環であって、必要に応じて置換されており、好ましくはピリジルまたはピリジニル基を示す。
【0016】
本発明はまた、上記の誘導体のラセミ体、およびまた個々に採取されるそのエナンチオマー体、さらに詳細には−5、−7および/または−8位の異性体のために行われる。
【0017】
有利には、これらの誘導体は、異常に活性化され、従って調節不全である標的キナーゼのATP部位をブロックすることが可能であり、これによって、それらのリン酸化活性を防ぐ。さらに、これらの誘導体は、70種のキナーゼのパネルについて行われる試験においてこれらのキナーゼに対する選択性を呈する。
【0018】
キナーゼ阻害剤としてのこの適用において、上記定義の誘導体類によって、細胞モデルにおけるキナーゼの機能を研究すること、ならびにガン、神経変性疾患、糖尿病、特にII型糖尿病、炎症性疾患、抑うつおよび双極性障害またはウイルス感染のような病理学的状態においてこのようなキナーゼの調節不全(過剰発現または異常な活性化)から生じる作用を研究することが可能になる。
【0019】
キナーゼ阻害剤としての使用に好ましい誘導体は、CDK選択性であり、かつCDK1およびCDK5に対して20μM未満、特に10μM未満のIC50値を呈する阻害剤に対応し、特に有利な誘導体は、2μM未満のIC50値を有する。
【0020】
これらの特徴に対応する誘導体は、以下を含む群から選択される:
− 5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8,9−ジメトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−クロロ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ケト−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−ブタニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ケト−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン。
【0021】
5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンは、特に好ましいキナーゼ阻害剤を構成し、IC50値は、CDK1に対して0.56〜0.74μM、CDK5に対して1.6〜2.3μMである。この誘導体は、CDK2−サイクリンAのATP部位において共結晶化された(図1を参照のこと)。この共結晶は、新規な生成物を構成し、この点において、本発明の分野の一部である。図1に与えられる提示は、用いられた処理ソフトウェアにおいてケイ素原子(Si)が利用可能でないならば、実際に存在するトリメチルシラニル基の代わりにR6においてtert−ブチルタイプの群により行われた。
【0022】
この群の誘導体は有利でもあり、10μM未満のGSK−3に対するIC50を呈する。
【0023】
上記で定義の誘導体の阻害活性は、キナーゼ調節不全に関連する病理学的状態を治療するための大きな利点をそれらに与える。
【0024】
第2の態様によると、本発明は、したがって、医薬としての使用のための、上記式(I)の誘導体のために行われ、これにはR〜R、RおよびR=H;RおよびR’が−C=O基を形成するか、またはR=OHおよびR’=Hであり(またはその逆);R=−(CH−Si、−C、またはCもしくはCアルキルであるもの;ならびにR〜R、RおよびR=Hであり、R=−OCHであり、R’=Hであり(またはその逆)、ならびにR=Cアルキルである化合物が含まれる。
【0025】
従って、本発明はより詳細には、上記定義の少なくとも1種のテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体、さらにはR〜R、RおよびR=H;RおよびR’が−C=O基を形成するか、R=OHおよびR’=H(またはその逆);R=−(CH−Si、CまたはCまたはCアルキルである化合物およびR〜R、RおよびR=H、R=−OCH、およびR’=H(またはその逆)、R=Cアルキルである化合物の治療上有効量を、薬学的に許容できる担体と組み合せて含む点で特徴付けられる医薬組成物のために行われる。
【0026】
これらの医薬組成物は、有利には、治療されるべき患者の状態および病理学的状態に従って所与の治療に適した形態である。経口、非経口または注射可能な投与のためのガレノス剤形がさらに詳細に言及される。
【0027】
これらのガレノス剤形を調製するために、治療上有効な量で用いられる有効成分が、投与の選択方法について薬学的に許容できる担体と混合される。
【0028】
経口投与のために、医薬組成物は、より詳細には、錠剤、ゲルカプセル、カプセル、丸剤、糖衣錠、ドロップなどの形態である。
【0029】
このような組成物は、摂取されるべき単位あたり有効成分1〜100mg、特に40〜60mgを含み得る。
【0030】
注射による静脈内投与、皮下投与または筋肉内投与のために、医薬組成物は、有利には、無菌または滅菌可能な溶液の形態である。
【0031】
それらは、有効成分10〜50mg、詳細には20〜30mgを含む。
【0032】
これらの組成物はCDKのATP部位をブロックするために特に有効であり、従って、特に癌細胞の無秩序な細胞分裂を停止させ得る。
【0033】
ガン治療に加えて、これらの医薬組成物はまた、神経変性疾患、糖尿病、特にII型糖尿病、炎症性疾患、抑うつおよび双極性障害を治療するために有効である。
【0034】
第3の態様によれば、本発明は、新規な生成物に対応する上記の式(I)の誘導体のために行われる。それらは、R〜Rが上記定義の通りである誘導体であるが、ただし、5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、5−ヒドロキシ−1−ブタニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンおよび5−ケト−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンは除かれる。
【0035】
好ましい誘導体類は以下を含む:
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8,9−ジメトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−クロロ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン。
【0036】
本発明の誘導体は、有利には、PatinおよびBelmot(1)によって記載され、かつ、図2において与えられたスキームによって示される方法論に従って得られる。
【0037】
この方法の原理はまた、本発明の新規な誘導体を得るために適用される。
【0038】
第4の態様によると、従って、本発明は、
− 式(II):
【0039】
【化2】

【0040】
(式中、
− R1〜R7は、上記定義の通りであり、上記に定義されるR8は、上記で規定され、アリルからの交差メタセシス反応によって誘導体化されてよいか、またはR8はHを示す)
の誘導体を、Co(CO)(またはロジウムまたはモリブデン錯体)等の触媒の存在下に、Pauson-Khand反応(PKRと略される)(1)に従って、式(I):
【0041】
【化3】

【0042】
の誘導体を与えることを可能にする条件下に反応させることを含む合成方法のために行われる:
R5がOM基を示す誘導体は、R5/R5’がケトン基を示す式(I)の誘導体を得るように酸化工程に供されてもよい。
【0043】
置換基R1〜R5のうちの1つが1,2,3−トリアゾールタイプのN誘導体を示す誘導体は、有利には、「クリックケミストリー」タイプの1,3−双極性反応によって得られる(3)。
【0044】
構造式(II)の化合物は、有利には、式(III):
【0045】
【化4】

【0046】
の2−クロロ−3−キノリンカルボキシアルデヒド誘導体(R’は、Hまたは上記定義のC−C12アルキル基を示す)と、式(IV):R−C≡CHのアルキンを用いるソノガシラ(Sonogashira)またはネギシ(Negishi)反応と、これに続く、アリルマグネシウムブロミドまたはアリル基(R8)上で置換された別のグリニャール試薬の添加によるグリニャール反応によって得られる。
【0047】
誘導体(III)は、それ自体、好ましくは、式(V):
【0048】
【化5】

【0049】
(式中、Ac=CHCO−)
の誘導体から、有機溶媒、例えば、DMF中、POClの存在下、Meth-Cohn et al.(2)によって記載された条件下の方法を行うことによって得られる。
【0050】
構造式(II)の合成中間体キノリンカルボアルデヒド誘導体は、新規な生成物であり、従って、そのようなものとして、また本発明に包含される。
【0051】
中間誘導体は、2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド、6−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド、6,7−ジメトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド、および7−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒドを含む。好ましくは、それらは、1−(2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール、1−(6−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール、1−(6,7−ジメトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オールおよび1−(7−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オールである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンの共結晶の構造をCDK2−サイクリンAのATP部位とともに示す。
【図2】図2は、テトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体の合成のスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の他の特徴および利点は、以下の実施例に与えられる。
【0054】
(実施例1:本発明に合致するテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体類の合成)
ソノガシラ(Sonogashira)反応:
構造式(III)のハロゲン化キノリンタイプの誘導体(1.00mmol)、PdCl(PPh(35mg、0.05mmol)およびCuI(9mg、0.05mmol)をアルゴン雰囲気下で混合する。一旦この系が脱気されれば、DMF(1ml)およびTEA(0.6ml)を反応媒体に添加する。次いでアルキン(1.10mmol)を滴下する。反応媒体を周囲温度で12時間にわたって攪拌する。次いで反応媒体を、シリカを通してろ過し、次いで溶媒留去する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0055】
【化6】

【0056】
(2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド)
Mp 125℃
IR: 2954, 2850, 2359, 2338, 1694, 1579, 1369, 1149, 1096cm-1
1H NMR (300MHz, CDCl3): δ=10.70(s, 1H), 8.72(s, 1H), 8.16(dd, 1H, J=8.5, 1.0Hz), 7.95(dd, 1H, J=8.1, 1.4Hz), 7.85(ddd, 1H, J=8.5, 7.0, 1.4Hz), 7.63(ddd, 1H, J=8.1, 7.0, 1.0Hz), 0.34(s, 9H);
13C NMR(75MHz, CDCl3): δ=191.0(CH), 150.0(C), 143.6(C), 136.8(CH), 133.0(CH), 129.7(CH), 129.4(CH), 128.8(C), 128.4(CH), 126.5(C), 102.5(C), 100.1(C), -0.3(CH3);
MS: m/z(%)=286(81) [MNa+], 254(100) [MH+], 180(17) [MH+-TMS]。
MS-HR: m/z [MH+]C15H15NOSiについての計算値: 254.1001; 実測値: 254.0997
【0057】
【化7】

【0058】
6−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド
Mp 155-156℃
IR: 3051, 3001, 2964, 2840, 2158, 1694, 1243, 1226, 837cm-1
1H NMR(300MHz, CDCl3): δ=10.69(s, 1H), 8.59(s, 1H), 8.05(d, 1H, J=9.3Hz), 7.49(dd, 1H, J=9.3, 2.8Hz), 7.16(d, 1H, J=2.8Hz), 3.96(s, 3H), 0.33(s, 9H);
13C NMR(75MHz, CDCl3): δ=191.3(CH), 159.1(C), 146.4(C), 141.2(C), 135.0(CH), 130.8(CH), 129.1(C), 127.9(C), 126.3(CH), 106.2(CH), 101.4(C), 100.2(C), 55.8(CH3), -0.2(CH3);
MS: m/z(%)=284(28) [MH+], 316(100) [M+CH3OH+H+]。
MSHR: m/z [MH+] C16H17NO2Siについての計算値: 284.1107; 実測値: 284.1112。
【0059】
【化8】

【0060】
6,7−ジメトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド
Mp 188℃
IR: 3015, 2957, 2931, 2860, 2830, 2163, 1688, 1257, 1215, 1113, 1008, 841cm-1.
1H NMR(300MHz, CDCl3): δ=10.65(s, 1H), 8.54(s, 1H), 7.47(s, 1H), 7.12(s, 1H), 4.05(s, 3H), 4.04(s, 3H), 0.33(s, 9H);
13C NMR(75MHz, CDCl3): δ=191.2(CH), 155.6(C), 151.3(C), 148.0(C), 142.1(C), 134.1(CH), 127.9(C), 122.8(C), 107.9(CH), 106.2(CH), 101.4(C), 100.4(C), 56.6(CH3), 56.4(CH3), 0.2(CH3);
MS: m/z(%)=314(100) [MH+], 346(85) [M+CH3OH+H+].
MSHR: m/z [MH+] C17H19NO3Siについての計算値: 314.1212; 実測値: 314.1207。
【0061】
【化9】

【0062】
7−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−カルバルデヒド
Mp 142℃
IR: 3008, 2959, 2896, 2856,2830, 1687, 1495, 1210, 1131, 1016, 841cm-1
1H NMR(300MHz, CDCl3): δ=10.60(s, 1H), 8.56(s, 1H), 7.75(d, 1H, J=9.0Hz), 7.40(d, 1H, J=2.3Hz), 7.20(dd, 1H, J=9., 2.3Hz), 3.92(s, 3H), 0.31(s, 9H);
13C NMR(75MHz, CDCl3): δ=190.8(CH), 163.7(C), 152.2(C), 144.3(C), 136.0(CH), 130.8(CH), 127.4(C), 122.1(C), 122.0(CH), 107.2(CH), 102.1(C), 100.2(C), 55.9(CH3), 0.2(CH3);
MS: m/z(%)=284(58) [MH+], 316(100) [M+CH3OH+H+]。
MSHR: m/z [MH+] C16H17NO2Siについての計算値: 284.1107; 実測値: 284.1111。
(グリニャール反応):
2−エチニルキノリン−3−カルバルデヒドタイプの誘導体(1.00mmol)を、アルゴン雰囲気下、10mlの新たに蒸留されたTHFに溶解させた。反応媒体を−78℃まで冷却した。次いで、EtO中のアリルマグネシウムブロミドの市販の1M溶液(1.50ml,1.50mmol)を滴下する。反応媒体を−78℃で4時間にわたって攪拌する。次いで、反応媒体をNHClの飽和水溶液中に入れて、水相を酢酸エチルにより抽出し、得られた有機相をNaClの飽和水溶液でリンスして、NaSOで乾燥させ、ろ過して溶媒留去する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0063】
【化10】

【0064】
1−(2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール
Mp 111℃
IR: 3232, 3074, 2958, 2899, 2161, 1247,1060cm-1
1H NMR(300MHz, CDCl3): δ=8.29(s, 1H), 8.09(dd, 1H, J=8.4, 1.1Hz), 7.79(d, 1H, J=8.0, 1.4Hz), 7.69(ddd, 1H, J=8.5, 7.0, 1.4Hz), 7.53(ddd, 1H, J=8.0, 7.0, 1.1Hz), 5.97-5.83(m, 1H), 5.36-5.33(m, 1H), 5.24(dd, 1H, J=7.0, 1.1Hz), 5.20(s, 1H), 2.85(m, 1H), 2.44(m, 2H), 0.31(s, 9H);
13C NMR(75MHz, CDCl3): δ=147.3(C), 141.2(C), 138.8(C), 134.4(CH), 132.7(CH), 129.9(CH), 129.3(CH), 129.2(C), 127.8(CH), 127.6(CH), 119.1(CH2), 102.1(C), 77.5(C), 70.2(CH), 42.9(CH2), 0.1(CH3);
MS: m/z(%)=296(100) [MH+]。
MSHR: m/z [MH+] C18H21NOSiについての計算値: 296.1474; 実測値: 296.1474。
【0065】
【化11】

【0066】
1−(6−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール
Mp 149℃
IR: 3252, 3075, 3012, 2961, 2937, 2901, 2830, 2161, 1621, 1492, 1239, 1027, 827cm-1
1H NMR (300MHz, CDCl3): δ=8.19(s, 1H), 8.00(d, 1H, J=8.8Hz), 7.32(dd, 1H, J=8.8, 2.7Hz), 7.05(d, 1H, J=2.7Hz), 5.97-5.83(m, 1H), 5.33-5.30(m, 1H), 5.24(d, 1H, J=6.4Hz), 5.20(s, 1H), 3.93(s, 3H), 2.85(m, 1H), 2.44(m, 2H), 0.31(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=147.3(C), 141.2(C), 138.8(C), 134.5(CH), 132.7(CH), 129.9(CH), 129.3(CH), 129.2(C), 127.8(CH), 127.6(CH), 119.2(CH2), 105.2(CH), 102.1(C), 77.5(C), 70.3(CH), 55.8(CH3), 43.0(CH2), 0.1(CH3);
MS: m/z(%)=326(100) [MH+]。
MSHR m/z [MH+] C19H23NO2Siについての計算値: 326.1576; 実測値:326.1571。
【0067】
【化12】

【0068】
1−(6,7−ジメトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール
Mp 65-67℃
IR: 3367, 3077, 3003, 2959, 2929, 2851, 2159, 1621, 1497, 1244, 1213, 1008, 840cm-1
1H NMR (300MHz, CDCl3): δ=8.10(s, 1H), 7.40(s, 1H), 7.00(s, 1H), 5.97-5.82(m, 1H), 5.33-5.27(m, 1H), 5.24(dd, 1H, J=6.4, 1.5Hz), 5.19(s, 1H), 4.00(s, 3H), 3.99(s, 3H), 2.85-2.79(m, 1H), 2.50-2.40(m, 1H), 2.36(s, 1H), 0.30(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=152.4(C), 150.2(C), 143.8(C), 138.1(C), 137.6(C), 134.6(CH), 130.7(CH), 123.2(C), 117.9(CH2), 107.1(CH), 104.6(CH), 102.1(C), 99.2(C), 69.9(CH), 55.9(CH3), 55.8(CH3), 42.7(CH2), -0.3(CH3);
MS: m/z(%)=356(100) [MH+]。
MSHR m/z [MH+] C20H25NO3Siについての計算値: 356.1682; 実測値: 356.1677。
【0069】
【化13】

【0070】
1−(7−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール
Mp 176-177℃
IR: 3196, 3078, 3013, 2958, 2901, 2840, 2160, 1622, 1497, 1234, 1215, 1026, 839, 816cm-1
1H NMR (300MHz, CDCl3): δ=8.21(s, 1H), 7.68(d, 1H, J=9.0Hz), 7.32(d, 1H, J=2.5Hz), 7.19(dd, 1H, J=9.0, 2.5Hz), 5.97-5.83(m, 1H), 5.34-5.29(m, 1H), 5.24(d, 1H, J=6.0Hz), 5.19(s, 1H), 3.92(s, 3H), 2.86-2.77(m, 1H), 2.50-2.39(m, 1H), 2.35(d, 1H, J=3.6Hz), 0.31(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=161.0(C), 149.0(C), 141.1(C), 136.7(C), 134.4(CH), 132.4(CH), 128.7(CH), 122.9(C), 121.0(CH), 119.0(CH2), 106.9(CH), 102.2(C), 100.3(C), 70.2(CH), 55.6(CH3), 43.0(CH2), -0.1(CH3);
MS: m/z(%)=326(100) [MH+]。
MSHR m/z [MH+] C19H23NO2Siについての計算値: 326.1576; 実測値: 326.1582。
(ポーソン・カンド(Pauson-Khand)反応):
式(II)のキノリンエンイン誘導体(1.00mmol)をアルゴン雰囲気下で、10mlの新たに蒸留されたDCMに溶解させる。次いでCo(CO)(420mg、1.20mmol)を添加する。反応媒体を周囲温度で2時間にわたって攪拌し、アルキン上の金属の錯体化をTLCによってモニタリングする。次いでNMO(1171mg、10.00mmol)を滴下して、反応媒体を周囲温度で12時間にわたって攪拌する。続いて、反応媒体を、シリカを通してろ過し、次いで溶媒留去する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0071】
【化14】

【0072】
5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
Mp 167-168℃
IR: 2968, 2950, 2894, 1686, 1273, 1157, 856cm-1
1H NMR(300MHz, CDCl3): δ=8.22(s, 1H), 8.12(dd, 1H, J=8.4, 0.9Hz), 7.85(dd, 1H, J=8.1, 0.9Hz), 7.70(ddd, 1H, J=8.4, 6.9, 0.9Hz), 7.59(ddd, 1H, J=8.1, 6.9, 0.9Hz), 5.21-5.18(m, 1H), 3.72-3.64(m, 1H), 2.84(dd, 1H, J=11.4, 6.6Hz), 2.55-2.48(m, 1H), 2.27(dd, 1H, J=18.0, 3.9Hz), 1.95(ddd, 1H, J=13.5, 13.5, 3.3Hz), 1.68(m, 1H), 0.35(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=212.1(C), 179.3(C), 149.9(C), 147.6(C), 142.7(C), 137.4(CH), 132.7(C), 130.6(CH), 129.5(CH), 128.4(C), 128.0(CH), 127.8(CH), 67.7(CH), 43.7(CH2), 37.9(CH2), 35.4(CH), 0.9(CH3);
MS: m/z(%)=324(68) [MH+], 306(100) [MH+-H2O]。
MSHR m/z [MH+] C19H21NO2Siについての計算値: 324.1420; 実測値: 324.1422。
元素分析: 実測値(理論値) C: 70.02(70.55); H: 6.42(6.54); N: 4.12(4.33);
【0073】
【化15】

【0074】
5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
Mp 186℃
IR: 3357, 3001, 2955, 2888, 2825, 1659, 1490, 1216, 851; 840, 827cm-1
NMR (300MHz, CDCl3): δ=8.05(s, 1H), 7.95(d, 1H, J=9.3Hz), 7.35(dd, 1H, J=9.3, 2.6Hz), 7.01(d, 1H, J=2.6Hz), 5.10-5.06(m, 1H), 3.88(s, 3H), 3.69-3.60(m, 1H), 2.72(dd, 1H, J=17.8, 6.8Hz), 2.47-2.42(m, 1H), 2.17(dd, 1H, J=17.9, 4.1Hz), 1.85(ddd, 1H, J=13.5, 13.5, 3.2Hz), 1.25(m, 1H), 0.35(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=212.5(C), 180.5(C), 159.0(C), 147.3(C), 143.8(C), 141.0(C), 136.0(CH), 133.3(C), 130.8(CH), 129.7(C), 123.7(CH), 104.9(CH3), 67.4(CH), 55.7(CH), 43.6(CH2), 37.9(CH2), 35.4(CH), 0.9(CH3);
MS: m/z(%)=338(84) [MH-CH4+], 354(100) [MH+], 729(33) [2MNa+]。
MSHR m/z [MH+] C20H23NO3Siについての計算値: 354.1525; 実測値: 354.1519。
元素分析: 実測値(理論値) C: 68.16(67.96); H: 6.58(6.56); N: 3.92(3.96);
【0075】
【化16】

【0076】
5−ヒドロキシ−8,9−ジメトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
Mp 221-222℃
IR: 3388, 2962, 2936, 2891, 2825, 1691, 1497, 1240, 846, 830cm-1
1H NMR (300MHz, CDCl3): δ=7.99(s, 1H), 7.28(s, 1H), 6.98(s, 1H), 5.11-5.07(m, 1H), 4.03(s, 3H), 3.97(s, 3H), 3.64-3.59(m, 1H), 2.77(dd, 1H, J=17.9, 6.8Hz), 2.58-2.44(m, 1H), 2.21(dd, 1H, J=17.9, 4.1Hz), 1.88(ddd, 1H, J=13.5, 13.5, 3.2Hz), 1.24(m, 1H), 0.35(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=212.2(C), 180.4(C), 153.5(C), 151.2(C), 147.5(C), 144.8(C), 140.8(C), 135.3(CH), 131.3(C), 124.6(C), 107.2(CH3), 104.9(CH3), 67.7(CH), 56.3(CH), 56.2(CH), 43.7(CH2), 38.1(CH2), 35.4(CH), 1.0(CH3);
MS: m/z(%)=368(79) [MH-CH4+], 384(100) [MH+], 789(29) [2MNa+]。
MSHR m/z [MH+] C21H25NO3Siについての計算値: 384.1631; 実測値:384.1636。
元素分析: 実測値(理論値+0.5 H2O) C: 63.82(64.26); H: 6.36(6.68); N: 3.57(3.57);
【0077】
【化17】

【0078】
5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
Mp 187℃
IR: 3440, 2962, 2947, 2903, 2851, 1693, 1621, 1228, 1140, 1019, 848, 835, 819cm-1
1H NMR (300MHz, CDCl3): δ=8.09(s, 1H), 7.66(d, 1H, J=9.0Hz), 7.31(d, 1H, J=2.2Hz), 7.19(dd, 1H, J=9.0, 2.2Hz), 5.10-5.08(m, 1H), 3.95(s, 3H), 3.66-3.56(m, 1H), 2.75(dd, 1H, J=18.0, 6.7Hz), 2.48-2.42(m, 1H), 2.17(dd, 1H, J=18.0, 4.0Hz), 1.85(ddd, 1H, J=13.5, 13.5, 3.3Hz), 0.35(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=212.3(C), 180.3(C), 161.4(C), 149.9(C), 149.3(C), 142.0(C), 137.1(CH), 130.8(C), 128.8(CH), 123.8(C), 121.3(CH), 106.8(CH3), 67.5(CH), 55.6(CH), 43.7(CH2), 38.1(CH2), 35.4(CH), 0.9(CH3);
MS: m/z(%)=338(66) [MH-CH4+], 354(100) [MH+], 729(17) [2MNa+]。
MSHR m/z [MH+] C20H23NO3Siについての計算値: 354.1525; 実測値: 354.1531。
【0079】
【化18】

【0080】
5−クロロ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン(323mg、1.00mmol)を、アルゴン雰囲気下において0℃で、新たに蒸留された10mlのDCMに溶解させる。次いで、SOCl(182μl,2.5mmol)を反応媒体に滴下して、これを0℃で15分間にわたり攪拌する。次いで、反応媒体をNaHCOの飽和水溶液に入れて、水相をDCMで抽出し、得られた有機相をNaClの飽和水溶液でリンスして、NaSOで乾燥し、ろ過し溶媒留去する。得られた残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
【0081】
Mp 169-170℃
IR: 3038, 2952, 2897, 1687, 1491, 1219, 1195, 1157, 841, 770cm-1
1H NMR(300MHz, CDCl3): δ=8.24(s, 1H), 8.11(dd, 1H, J=8.4, 1.1Hz), 7.85(dd, 1H, J=8.1, 1.4Hz), 7.78(ddd, 1H, J=8.4, 7.0, 1.4Hz), 7.61(ddd, 1H, J=8.1 ,7.0, 1.1Hz), 5.64(dd, 1H, J=3.5, 2.2Hz), 3.87-3.77(m, 1H), 2.90(dd, 1H, J=17.9, 6.9Hz), 2.71(ddd, 1H, J=14.2, 3.9, 2.2Hz), 2.34-2.24(m, 2H), 0.37(s, 9H);
13C NMR (75MHz, CDCl3): δ=211.2(C), 178.1(C), 148.9(C), 147.7(C), 143.4(C), 138.0(CH), 131.3(C), 131.0(CH), 129.5(CH), 128.3(C), 128.2(CH), 128.0(CH), 57.1(CH), 43.3(CH2), 38.7(CH2), 35.8(CH), 0.9(CH3);
MS: m/z(%)=326(92) [MH-CH4+], 342(100) [MH+]。
MSHR m/z [MH+] C19H20ClNOSiについての計算値: 342.1081; 実測値: 342.1079。
5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンのエナンチオマーの取得
エナンチオマー体は、下のスキーム1に従って得られる:
【0082】
【化19】

【0083】
(本発明による誘導体の変形体の合成)
この変形体は、5−ヒドロキシ−7−アミノ−8−メトキシ−1−トリメチルシリル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンの合成に関連して下のスキーム2によって図示される:
【0084】
【化20】

【0085】
(実施例2:酵素阻害試験)
試験は以下の通りに行われる:アッセイされるべき酵素を、例えば、アガロースビーズ上でのアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。触媒活性は、放射標識されたATPを用いて、標準的な最終濃度で測定された。試験化合物を種々の濃度で添加して、用量応答曲線(濃度の関数としての酵素の活性)を確立することを可能にした。IC50値は、これらの曲線から計算されて、μMで与えられる。IC50値は、酵素の50%阻害が観察される値を示す。
【0086】
標的キナーゼのタイプ(I)の化合物の選択性(70の他のキナーゼに対して)を証明する試験のための手順は最近報告された(4)。
【0087】
本発明の化合物で測定された、CDK1およびCDK5に対するIC50の値は、以下の表1に報告される:
【0088】
【表1】

【0089】
5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンのIC50は、CDK1に対してIC50値0.54μMおよびCDK5に対して1.6μMである。
【0090】
(実施例3:細胞毒性試験)
試験は、HT29細胞(ヒト結腸腺癌,寄託ATCC HTB 38)に関して以下の様な手順を用いて行われる:
HT29細胞は、10%FCSを補充したダルベッコのMEM培地で培養される。対数増殖期培養(log-phase culture)に由来する細胞を24ウェルのマイクロプレート(1ml−5×10細胞/ウェル)に播種して、2日間にわたりインキュベートする。DMSO(dimethyl sulfoxide:ジメチルスルホキシド)の溶液中の試験される化合物を、漸増濃度で最小容積(5μl)で添加する。コントロールの細胞には5μlのDMSOのみを与える。プレートを24時間にわたりインキュベートし、次いで培地を取り出して、細胞を、PBS(phosphate buffered saline solution:リン酸緩衝化生理食塩水溶液)を用いて2回洗浄し、その後に医薬なしの新鮮な培地を添加する。プレートを3日間にわたり再インキュベートして、その後にMTT試験(5)を用いて細胞生存の評価を行う。この試験は、ウェル中で、100μg/ウェルの割合で、30分間にわたり3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT, Sigma)をインキュベートする工程を包含する。培地を取り出した後、ホルマザン結晶を100μlのDMSOを用いて回収し、吸光度はマイクロプレートリーダー(モデル450,Bio-Rad)を用いて540nmで測定される。細胞の生存は、DMSOで処理したコントロールの%として表される。
【0091】
結果を以下の表2に示す:
【0092】
【表2】

【0093】
(実施例4:MTS試験)
SHSY細胞の生存率は、(6)に記載のようにMTS低下を測定することによって決定される。
【0094】
得られた結果を、以下の表3に示す:
【0095】
【表3】

【0096】
(参照)
1. Patin A. et Belmont P., Synthesis, 2005, 2400-2406
2.Meth-Cohn 0., Narine B., Tarnowski B., J. Chem. Soc, Perkin Trans . 1, 1981, 1520 et 1531.
3. KoIb H. C, Finn M. G. et Sharpless K. B., 2001, Angew. Chem. Int. Ed. 40, 2004-2021.
4. Bain J., Plater L., Elliott M., Shpiro N., Hastie C. J., Mdauchlan H., Klevernic I., Arthur J. S. C, Alessi D.
R. et Cohen P., Biochem. J., 2007, 408, 297-315.
5. Mossmann T . , J. Immunol .Meth . , 1983, 65, 55-63.
6. Ribas J. et Boix J., 2004, Exp . CeIl Res . , 295, 9-24.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中:
− R〜Rは、同一であっても異なってもよく、H;エーテルまたはポリエーテル基−(OR’)−OR(RおよびR’は、同一または異なってよく、置換されてもよい、線状または分枝C−C12アルキル基を示す);アミノ基NHまたはN(R,R10);NO;−NH−CO−OMタイプのNH−カルバマート(Mは、上記定義の通りのR(またはR’)を示す)または塩;NH−CO−R(Rは上記定義の通りである);Nおよび1,2,3−チアゾールタイプのその誘導体を示し;
− Rは、−OH基;ハロゲン;−OR(Rは上記定義の通りである);−O−CONHMタイプのOHカルバマート(Mは、上記定義のR(またはR’)を示す)であり、−O−CO−OMタイプのOH−カルバマート(Mは上記定義のR(またはR’)を示す);NH、−NH−CO−OMタイプのNH−カルバマート(Mは上記定義のR(またはR’)を示す)または塩;NH−CO−R(Rは上記の定義の通りである);Nおよび1,2,3−トリアゾールタイプのその誘導体;N(R,R10)(MおよびRは上記定義の通りである);を示し;
− R’は、Hまたは上記定義の通りのC−C12アルキル基を示し、
またはR/R’は一緒になって=O基を示し;
− Rは、H;R基;(RまたはR’)3−Si基(Rは上記定義の通りである);置換されてもよいアリール基;ヘテロアリール基;ハロゲン(ヨウ素);またはアルキニル基−C≡C−R(Rは上記定義の通りである)を示し;
− RおよびRは同一であっても異なってもよく、Hまたは上記定義の通りのC−C12アルキル基を示し;
− RおよびR10は、同一であっても異なってもよく、Hまたは上記定義の通りのR(またはR’)基を示すが、
ただし、R〜R、RおよびR=H;RおよびR’が−C=O基を形成するか、またはR=OHおよびR’=Hであり(またはその逆);R=−(CH−Si、−C、またはCもしくはCアルキルである化合物;ならびにR〜R、RおよびR=H、R=−OCHおよびR’=Hであり(またはその逆)、およびR=Cアルキルである化合物を除く)
に対応するテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体である点で特徴付けられるキナーゼ阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載の阻害剤のラセミ体およびまた個々に採取されるエナンチマー体。
【請求項3】
CDS選択性阻害剤である点で特徴付けられる、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項4】
CDK1に対しておよびCDK5に対して、20μM未満、特に10μM未満のIC50値を呈するという点で特徴付けられ、特に有利な誘導体は、2μM未満のIC50値を有する、請求項3に記載の阻害剤。
【請求項5】
請求項4に記載の阻害剤であって:
− 5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8,9−ジメトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−クロロ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ケト−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−ブタニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ケト−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
を含む群より選択される点で特徴付けられる、阻害剤。
【請求項6】
医薬としての使用のための、請求項1〜5のいずれか1つに記載のキナーゼ阻害剤であって、R〜R、RおよびR=Hであり;RおよびR’が−C=O基を形成するか、またはR=OHおよびR’=Hであり(またはその逆逆);R=−(CH−Si、−C、またはCもしくはCアルキルである化合物;ならびにR〜R、RおよびR=Hであり、R=−OCHおよびR’=Hであり(またはその逆)、ならびにR=Cアルキルである化合物を含む、キナーゼ阻害剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つにおいて規定されたような少なくとも1種のテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体、並びにまた、R〜R、RおよびR=Hであり;RおよびR’が−C=O基を形成するか、またはR=OHおよびR’=Hであり(またはその逆);R=−(CH−Si、−C、またはCもしくはCアルキルである化合物;ならびにR〜R、RおよびR=H、R=−OCHおよびR’=Hであり(またはその逆)、かつR=Cアルキルである化合物の治療上有効な量を、薬学的に許容される担体と組み合わせて含む点で特徴付けられる医薬組成物。
【請求項8】
経口投与、非経口投与または注射可能な投与のための形態である点で特徴付けられる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
経口投与のために、医薬組成物は錠剤、ゲルカプセル、カプセル、丸剤、糖衣錠、ドロップなどの形態である点で特徴付けられる請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
注射による静脈内投与、皮下投与または筋肉内投与のために、医薬組成物は、有利には、無菌または滅菌可能な溶液の形態である点で特徴付けられる請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
癌、神経変性疾患、糖尿病、特にII型糖尿病、炎症性疾患、抑うつおよび双極性障害を治療するための、請求項7〜10のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の式(I)のテトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体であって:
− R〜Rは、請求項1に定義された通りであり、ただし、5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、5−ヒドロキシ−1−ブタニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンおよび5−ケト−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オンを除く、テトラヒドロシクロペンタ[c]アクリジン誘導体。
【請求項13】
請求項12に記載の誘導体であって:
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8,9−ジメトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−8−メトキシ−1−tert−ブチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−9−メトキシ−1−トリメチルシラニル−3−メチル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−クロロ−1−トリメチルシラニル−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン、
− 5−ヒドロキシ−3,3a,4,5−テトラヒドロ−2H−シクロペンタ[c]アクリジン−2−オン
を含む群より選択される、誘導体。
【請求項14】
請求項12または13に記載の誘導体を得るための方法であって:
− 式(II):
【化2】

(式中、
− R1〜R7は、請求項1において定義された通りであり、請求項1において定義されたR8は、アリルからの交差メタセシス反応によって誘導体化されてよく、または、R8は、Hを示す)
の誘導体を、Co(CO)、ロジウムまたはモリブデン錯体等の触媒の存在下に、ポーソン・カンド反応(1)(PKRと略す)に従って、式(I):
【化3】

の誘導体を与えることを可能にする条件下に反応させる工程を含み、
R5が−OHを示す誘導体は、場合によっては、R5がケトン基を示す式(I)の誘導体を得るように酸化工程に付される点で特徴付けられる、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、式(II)の化合物は、式(III):
【化4】

の2−クロロ−3−キノリンカルボキシアルデヒド誘導体(R5’は、Hまたは上記定義のC1−C12アルキル基を示す)と式(IV):R6−C≡CHのアルキンを用いるSonogashiraまたはNegishi反応と、その後の、アリルマグネシウムブロミドまたはアリル基(R8)上で置換された他のグリニャール試薬の添加によるグリニャール反応とによって得られる点で特徴付けられる。
【請求項16】
誘導体(III)自体は、式(V):
【化5】

(式中、Ac=CHCO−)
の誘導体から、DMF等の有機溶媒中POClの存在下に方法を行うことによって得られる点で特徴付けられる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
新規な生成物としての、構造式(II)の合成中間体。
【請求項18】
1−(2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール、1−(6−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オール、1−(6,7−ジメトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オールまたは1−(7−メトキシ−2−(トリメチルシラニルエチニル)キノリン−3−イル)ブタ−3−エン−1−オールである点で特徴付けられる請求項17に記載の合成中間体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−509994(P2011−509994A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542727(P2010−542727)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050179
【国際公開番号】WO2009/090623
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(500049369)サーントゥル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シャーンティフィク (14)
【Fターム(参考)】