説明

キナーゼ阻害剤としての1,3−ベンゾオキサゾリル誘導体

式Iの化合物、疾患、特に腫瘍および/または血管新生によって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療する薬剤を調製するためのそれらの調製および使用。式Iの化合物は、チロシンキナーゼ、特にTIE−2およびVEGFR、ならびにRafキナーゼの有効な阻害剤である。(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の化合物は、キナーゼ、特にチロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼに媒介されるシグナル伝達の阻害、調節、および/または調整に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、式Iの化合物であって、
【0003】
【化1】

【0004】
式中、
1、R2、R3は、それぞれ互いに独立して、R、Hal、CN、NO2、NHR、NRR、NHCOR、NHSO2R、OR、CO−R、CO−NHR、CF3、OCF3、SCF3、SO3R、SO2R、SO2NR、SR、COOH、またはCOORを示し、
Rは、H、あるいは非置換、または一、二、三、または四−R4−置換A、Ar、Het、(CH2qHet、または(CH2qArを示し、
Aは、1〜14個のC原子を有する非分岐、分岐、または環状アルキルを示し、1または2個のCH2基は、OまたはS原子および/または−CH=CH−基で置換されていてもよく、かつ/またはさらに1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClで置換されていてもよく、
Arは、フェニル、ナフチル、またはビフェニルを示し、それぞれ非置換であるか、あるいはA、Hal、OH、OA、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、NHCOA、SCF3、SO2A、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2、NHSO2A、SO2NH2、SO2NHA、SO2NA2、CHO、またはCOAで一、二、または三置換されており、
Hetは、1から4個のN、O、および/またはS原子を有する単環式または二環式の飽和、不飽和、または芳香族複素環を示し、これは非置換であるか、あるいはカルボニル酸素、Hal、A、−(CH2b−Ar、−(CH2b−シクロアルキル、OH、OA、NH2、NHA、NA2、NO2、CN、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2、NHCOA、NHCONH2、NHSO2A、CHO、COA、SO2NH2、および/またはS(O)gAで一、二、または三置換されていることができ、
Halは、F、Cl、Br、またはIを示し、
4は、Hal、OH、CN、NO2、CF3、OCF3、SCF3、SO2A、またはOAを示し、
Xは、O、S、SO2NH、またはNHを示し、
【0005】
【化2】

【0006】
は、フェニル、あるいは1から4個のN、O、および/またはS原子を有する単環式芳香族複素環を示し、
bは、0、1、2、3、または4を示し、
gは、0、1、または2を示し、
n、m、p、qは、それぞれ互いに独立して、1、2、3、または4を示す化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体に関する。
【0007】
式Iの化合物は、キナーゼ、特にチロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼに媒介されるシグナル伝達を阻害、調節(regulating)、および/または調整(modulating)できることが見出された。特に、本発明による化合物は、チロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼの阻害剤として適している。したがって、本発明による薬剤および薬剤組成物は、キナーゼ、および/またはキナーゼ媒介シグナル伝達、あるいは血管新生によって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療するために有効に用いることができる。したがって、本発明による化合物は、哺乳動物における、癌、腫瘍増殖、動脈硬化症、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、炎症性疾患などの治療および予防に適している。
【0008】
チロシンキナーゼは、タンパク質基質においてチロシン残基へのアデノシン三リン酸の末端リン酸の転移を触媒する酵素の一種である。チロシンキナーゼは、基質リン酸化を介して、多くの細胞機能のシグナル伝達において重要な役割を果たすと考えられている。シグナル伝達の正確な機序は依然として不明であるが、チロシンキナーゼは、細胞増殖、発癌、および細胞分化の重要な要因であることが示されている。
【0009】
チロシンキナーゼは、受容体型チロシンキナーゼ、または非受容体型チロシンキナーゼに分類することができる。受容体型チロシンキナーゼは、細胞外部分、膜貫通部分、および細胞内部分を有し、非受容体型チロシンキナーゼは、細胞内のみである。
【0010】
受容体型チロシンキナーゼは、異なる生物活性を有する多数の膜貫通受容体からなる。それゆえ、受容体型チロシンキナーゼの約20種の異なるサブファミリーが同定されている。EGFRまたはHERサブファミリーと称される、1つのチロシンキナーゼサブファミリーは、EGFR、HER2、HER3、およびHER4からなる。この受容体サブファミリーのリガンドには、上皮増殖因子(EGF)、組織増殖因子(TGF−α)、アンフィレグリン、HB−EGF、ベータセルリン、およびヘレグリンが含まれる。これらの受容体型チロシンキナーゼの別のサブファミリーは、インスリンサブファミリーであり、INS−R、IGF−IR、およびIR−Rが含まれる。PDGFサブファミリーには、PDGF−αおよび−β受容体、CSFIR、c−kit、ならびにFLK−IIが含まれる。さらに、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)すなわちVEGFR−2、胎児肝臓キナーゼ−1(FLK−1)、胎児肝臓キナーゼ−4(FLK−4)、およびfmsチロシンキナーゼ−1(flt−1)すなわちVEGFR−1からなるFLKファミリーがある。PDGFおよびFLKファミリーは、これら2つの群が類似しているため、通常、スプリットキナーゼドメイン(split kinase doain)受容体チロシンキナーゼの群にまとめられる(Laird A.D.およびJ.M.Cherrington、Expert.Opin.Investig.Drugs 12(1):51〜64、2003)。受容体型チロシンキナーゼに関する詳細な議論は、参照により本明細書の一部とする、Plowman等による論文、DN&P7(6):334〜339、1994を参照されたい。
【0011】
非受容体型チロシンキナーゼも同様に、多数のサブファミリーからなり、Src、Frk、Btk、Csk、Abl、Zap70、Fes/Fps、Fak、Jak、Ack、およびLIMKが含まれる。これらのサブファミリーはそれぞれ、種々のサブ群にさらに再分類される。たとえば、Srcサブファミリーは、もっとも大きなサブファミリーの1つである。これには、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lck、Blk、Hck、Fgr、およびYrkが含まれる。酵素のSrcサブファミリーは、腫瘍形成と関連づけられている。非受容体型チロシンキナーゼのより詳細な議論は、参照により本明細書の一部とする、Bolenによる論文、Oncogene、8:2025〜2031(1993)を参照されたい。
【0012】
受容体型チロシンキナーゼおよび非受容体型チロシンキナーゼは共に、癌、乾癬、および過剰免疫応答などの状態をもたらす細胞シグナル経路に関与している。
【0013】
癌は、その原因がシグナル伝達障害に認められる疾患である。特に、脱制御されたチロシンキナーゼによるシグナル伝達は、癌の増殖および拡散において主要な役割を果たす(Blume−Jensen P.およびT.Hunter、Nature 411:355〜365、2001;Hanahan D.およびR.A.Weinberg、Cell 100:57〜70、2000)。したがって、チロシンキナーゼ、特に受容体型チロシンキナーゼ、およびそれらに結合する増殖因子は、脱制御されたアポトーシス、組織浸潤、転移、および一般に癌をもたらすシグナル伝達機構に関与する可能性がある。
【0014】
特に、受容体型チロシンキナーゼは、癌の増殖および拡散のさらなる重要な機序である血管新生において役割を果たす(MustonenおよびAlitalo、J.Cell Biol.129:895〜898、1995)。これらの受容体型チロシンキナーゼの1つは、FLK−1とも称される、胎児肝臓キナーゼ1である。FLK−1のヒト類似体は、キナーゼ挿入ドメイン含有受容体KDRであり、これは高親和力でVEGFに結合することから、血管内皮細胞増殖因子受容体2、すなわちVEGFR−2としても知られている。マウス型のこの受容体もNYKと称されている(Oelrichs等、Oncogene 8(1):11〜15、1993)。VEGFおよびKDRは、血管内皮細胞の増殖、ならびにそれぞれ血管形成および血管新生と称される、血管の形成および発芽において重要な役割を果たすリガンド−受容体対である。
【0015】
血管新生は、血管内皮増殖因子(VEGF)の過剰な活性を特徴とする。VEGFは、実際は、リガンドのファミリーからなる(KlagsburnおよびD’Amore、Cytokine&Growth Factor Reviews 7:259〜270、1996)。VEGFは、高親和性膜貫通チロシンキナーゼ受容体KDR、およびFlt−1、または血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR−1)とも称される関連するfmsチロシンキナーゼ−1に結合する。細胞培養、および遺伝子ノックアウト実験は、それぞれの受容体が血管新生の種々の局面に寄与することを示唆している。KDRは、VEGFのマイトジェン機能を媒介し、Flt−1は、細胞接着に関連する機能など、非マイトジェン機能を調整すると考えられる。したがって、KDRを阻害することによって、マイトジェンVEGF活性レベルが調整される。実際、腫瘍増殖は、VEGF受容体アンタゴニストの抗血管新生作用に影響を受けることが示されている(Kim等、Nature 362、841〜844頁、1993)。
【0016】
VEGFの発現はまた、動物およびヒト腫瘍の、壊死部に隣接する低酸素領域で著しく増加する。さらに、VEGFは、癌遺伝子ras、raf、src、およびp53変異型(いずれも癌治療に重要である)の発現によってアップレギュレートされる。抗VEGFモノクローナル抗体は、ヌードマウスにおいて、ヒト腫瘍の増殖を阻害する。同じ腫瘍細胞は培養においてVEGFを発現し続けるが、この抗体はその分裂速度を低減しない。それゆえ、腫瘍由来のVEGFは、自己分泌マイトジェン因子として機能しない。したがって、VEGFは、その傍分泌性の血管内皮細胞の走化性およびマイトジェン活性を介して血管新生を促進することによって、in vivoで腫瘍増殖に寄与する。これらのモノクローナル抗体はまた、無胸腺マウスで典型的に血管化が充分でないヒト結腸癌の増殖を阻害し、接種細胞から生じる腫瘍数を低減する。
【0017】
固形腫瘍は、その増殖を支えるのに必要とされる血管の形成に関して血管新生に依存しているため、チロシンキナーゼ阻害剤で治療することができる。これらの固形腫瘍には、単球性白血病、あるいは脳、尿生殖路、リンパ系、胃および咽頭の癌、ならびに肺腺癌および小細胞肺癌を含む肺の癌が含まれる。
【0018】
固形腫瘍のさらなる例には、Raf活性化癌遺伝子(たとえば、K−ras、erb−B)の過剰発現または活性化が観察される癌腫が含まれる。そのような癌には、膵臓癌および乳癌が含まれる。したがって、これらのチロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼの阻害剤は、これらの酵素に起因する増殖性疾患の予防および治療に適している。
【0019】
VEGFの血管新生活性は、腫瘍に限定されない。VEGFは、糖尿病性網膜症において網膜または網膜近傍に生じる血管新生活性の原因となる。この網膜での血管増殖は、視力低下をもたらし、最後には失明に至る。新生血管形成に至る眼VEGFmRNAおよびタンパク質レベルは、霊長類での網膜静脈閉塞、およびマウスでのpO2レベルの低下などの状態によってさらに上昇する。抗VEGFモノクローナル抗体、またはVEGF受容体免疫融合体(immunofusion)の眼内注射は、霊長類モデルおよび齧歯類モデルの両方で、眼の新生血管形成を阻害する。ヒト糖尿病性網膜症におけるVEGFの誘発の原因にかかわらず、眼VEGFの阻害はこの疾患の治療に適している。
【0020】
細胞質チロシンキナーゼドメインを除去するが、膜アンカーを保持するように切断されたマウスKDR受容体相同体、Flt−1およびFlk−1のVEGF結合構築体のウイルスでの発現は、おそらくは膜貫通内皮細胞VEGF受容体とのヘテロダイマー形成による優性阻害機序によって、マウスにおいて移植性膠芽細胞腫の増殖を実質的に停止する。ヌードマウスにおいて通常は固形腫瘍として増殖する胚幹細胞は、両方のVEGF対立遺伝子がノックアウトされている場合、検出可能な腫瘍を形成しない。総合すると、これらのデータは、固形腫瘍の増殖におけるVEGFの役割を示している。KDRまたはFlt−1の阻害は、病的血管新生に関与し、腫瘍増殖は血管新生に依存することが知られているため、これらの受容体の阻害剤は、血管新生が病理全体の一部である疾患、たとえば炎症、糖尿病性網膜血管形成、ならびに種々の形態の癌の治療に適している(Weidner等、N.Engl.J.Med.324、1〜8頁、1991)。
【0021】
本発明は、VEGFRを調節、調整、または阻害することのできる化合物、ならびに調節されていない、または障害のあるVEGFR活性に関連する疾患を予防および/または治療するためのそれらの使用を対象とする。したがって、特に本発明による化合物は、ある種の形態の癌の治療、および糖尿病性網膜症または炎症などの病的血管新生に起因する疾患の場合に用いることができる。
【0022】
さらに、本発明による化合物は、VEGFRの活性または発現の単離および研究のために用いることができる。さらに、本発明による化合物は、特に、調節されていないまたは障害のあるVEGFR活性に関連する疾患の診断方法において用いるのに適している。
【0023】
内皮特異的受容体型チロシンキナーゼTIE−2のリガンドであるアンギオポイエチン1(Ang−1)は、新規な血管新生因子である(Davis等、Cell、1996、87:1161〜1169;Partanen等、Mol.Cell Biol.12:1698〜1707(1992);米国特許第5,521,073号;第5,879,672号;第5,877,020号;および第6,030,831号)。頭字語TIEは、「IgおよびEGF相同ドメインを有するチロシンキナーゼ」の略語である。TIEは、血管内皮細胞および初期造血細胞においてのみ発現する受容体型チロシンキナーゼのクラスを識別するために用いられる。TIE受容体キナーゼは典型的に、EGF様ドメイン、および鎖間のジスルフィド橋結合によって安定化した細胞外フォールドユニットからなる免疫グロブリン(IG)様ドメインの存在を特徴とする(Partanen等、Curr.Topics Microbiol.Immunol.、1999、237:159〜172)。血管発生の初期段階にその機能を発揮するVEGFとは対照的に、Ang1およびその受容体TIE−2は、血管発生の後期段階、すなわち血管転換(血管内腔の形成に関連する転換)および成熟中に作用する(Yancopoulos等、Cell、1998、93:661〜664;Peters K.G.、Circ.Res.、1998、83(3):342〜3;Suri等、Cell 87、1171〜1180(1996))。
【0024】
したがって、TIE−2の阻害は、血管新生によって開始される新しい血管系の転換および成熟を中断するはずであり、それにより血管新生のプロセスを中断するはずであることが予期される。さらに、VEGFR−2のキナーゼドメイン結合部位における阻害は、チロシン残基のリン酸化を遮断し、血管新生の開始を阻止する働きをするであろう。したがって、TIE−2および/またはVEGFR−2の阻害は腫瘍血管新生を妨げ、腫瘍増殖を遅延する、または完全に排除する働きをするはずであると仮定されなければならない。
【0025】
したがって、TIE−2および/またはVEGFR−2の阻害剤によって、不適切な血管新生に関連する癌および他の疾患の治療を提供することができる。
【0026】
本発明は、TIE−2を阻害、調節、および/または調整することのできる化合物、ならびに調節されていないまたは障害のあるTIE−2活性に関連する疾患を予防および/または治療するためのそれらの使用を対象とする。したがって、特に本発明による化合物は、ある種の形態の癌の治療、および糖尿病性網膜症または炎症などの病的血管新生に起因する疾患の場合に用いることができる。
【0027】
さらに、本発明による化合物は、TIE−2の活性または発現の単離および研究のために用いることができる。さらに、本発明による化合物は、特に、調節されていないまたは障害のあるTIE−2活性に関連する疾患の診断方法において用いるのに適している。
【0028】
本発明による化合物はさらに、ある種の現存する癌化学療法および放射線療法において付加的または相乗的効果を提供するために用いることができ、かつ/またはある種の現存する癌化学療法および放射線療法の効力を回復させるために用いることができる。
【0029】
本発明はさらに、Rafキナーゼの阻害剤としての化合物に関する。タンパク質リン酸化は、細胞機能を調節するための基礎的なプロセスである。タンパク質キナーゼおよびホスファターゼの協調作用は、リン酸化の程度を制御し、それゆえ特定の標的タンパク質の活性を制御する。タンパク質リン酸化の主たる役割の1つはシグナル伝達にあり、ここで細胞外シグナルは、たとえばp21ras/raf経路において、タンパク質リン酸化および脱リン酸化事象のカスケードによって増幅および伝播される。
【0030】
p21ras遺伝子は、ハーベイ(Harvey)(H−Ras)およびカーステン(Kirsten)(K−Ras)ラット肉腫ウイルスの癌遺伝子として発見された。ヒトでは、細胞Ras遺伝子(c−Ras)の特徴的な突然変異は、多くの異なる型の癌と関連づけられている。Rasを構成的に活性化するこれらの突然変異対立遺伝子は、培養において、たとえばマウス細胞系NIH3T3などの細胞を形質転換することが示されている。
【0031】
p21ras癌遺伝子は、ヒト固形癌腫の発生および進行の重要な要因であり、すべてのヒト癌腫の30%で突然変異している(Bolton等(1994)Ann.Rep.Med.Chem.29、165〜74;Bos.(1989)Cancer Res.49、4682〜9)。その正常な非変異型では、Rasタンパク質は、ほぼすべての組織において、増殖因子受容体に導かれるシグナル伝達カスケードの主要な要素である(Avruch等(1994)Trends Biochem.Sci.19、279〜83)。
【0032】
生化学的には、Rasは、グアニンヌクレオチド結合タンパク質であり、GTP結合活性化型とGDP結合静止型とのサイクリングは、Ras内因性GTPアーゼ活性および他の調節タンパク質によって厳密に制御される。Ras遺伝子産物は、グアニン三リン酸(GTP)およびグアニン二リン酸(GDP)に結合し、GTPをGDPに加水分解する。Rasは、GTP結合状態で活性である。癌細胞のRas突然変異体において、内因性GTPアーゼ活性は低下し、その結果として、タンパク質は、たとえば酵素Rafキナーゼなどの下流エフェクターに構成的増殖シグナルを伝達する。これがそれらの突然変異体を有する細胞の癌増殖をもたらす(Magnuson等(1994)Semin.Cancer Biol.5、247〜53)。Ras癌原遺伝子は、高等真核生物において、受容体型および非受容体型チロシンキナーゼによって開始された増殖および分化シグナルを伝達するために、機能的に無傷のC−Raf−1癌原遺伝子を必要とする。
【0033】
活性化Rasは、C−Raf−1癌原遺伝子の活性化に必要であるが、それによりRasがRaf−1タンパク質(Ser/Thr)キナーゼを活性化する生化学的段階は充分に特徴が明らかにされている。Rafキナーゼに対する非活性化抗体を投与してRafキナーゼシグナル経路を阻害することによって、あるいは優性阻害Rafキナーゼ、またはRafキナーゼの基質である優性阻害MEK(MAPKK)の共発現によって活性Rasの作用を阻害することにより、形質転換細胞の逆戻りおよび正常な増殖表現型がもたらされることが示されている(Daum等(1994)Trends Biochem.Sci.19、474〜80;Fridman等(1994)J Biol.Chem.269、30105〜8;Kolch等(1991)Nature 349、426〜28;概説としてWeinstein−Oppenheimer等、Pharm.&Therap.(2000)88、229〜279を参照されたい)。
【0034】
同様に、Rafキナーゼの阻害(アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドによる)は、in vitroおよびin vivoで様々なヒト腫瘍型の増殖の阻害との関連が認められている(Monia等、Nat.Med.1996、2、668〜75)。
【0035】
Raf−セリンおよびトレオニン特異的タンパク質キナーゼは、種々の細胞系において細胞増殖を刺激する非受容体型酵素である(Rapp U.R.等(1988)The Oncogene Handbook;T.Curran、E.P.Reddy、およびA.Skalka(編)、Elsevier Science Publishers;The Netherlands、213〜253頁;Rapp U.R.等(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184;Rapp U.R.等(1990)Inv Curr.Top.Microbiol.Immunol.PotterおよびMelchers(編)、Berlin、Springer−Verlag 166:129〜139)。
【0036】
3種のアイソザイムの特徴が明らかにされている。
【0037】
C−Raf(Raf−1)(Bonner T.I.等(1986)Nucleic Acids Res.14:1009〜1015)。A−Raf(Beck T.W.等(1987)Nucleic Acids Res.15:595〜609)、およびB−Raf(Qkawa S.等(1998)Mol.Cell.Biol.8:2651〜2654;Sithanandam G.等(1990)Oncogene:1775)。3種の酵素は、様々な組織での発現に差がある。Raf−1は、研究されたすべての器官およびすべての細胞系で発現し、A−RafおよびB−Rafは、それぞれ尿生殖組織および脳組織で発現する(Storm S.M.(1990)Oncogene 5:345〜351)。
【0038】
Raf遺伝子は、癌原遺伝子である。これらの遺伝子は、特に改変形態で発現されたとき、細胞の悪性形質転換を開始し得る。発癌活性化を導く遺伝子変化は、タンパク質のN末端阻害調節ドメインを除去または妨げることによって、構成的に活性なタンパク質キナーゼを生じる(Heidecker G.等(1990)Mol.Cell.Biol.10:2503〜2512;Rapp U.R.等(1987)、Oncogenes and Cancer;S.A.Aaronson、J.Bishop、T.Sugimura、M.Terada、K.Toyoshima、およびP.K.Vogt(編)、Japan Scientific Press、Tokyo)。発癌的に活性化されているが、野生型ではない、大腸菌発現ベクターを用いて調製されたRafタンパク質型のNIH3T3細胞へのマイクロインジェクションは、形態変換をもたらし、DNA合成を促進する(Rapp U.R.等(1987)、Oncogenes and Cancer;S.A.Aaronson、J.Bishop、T.Sugimura、M.Terada、K.Toyoshima、およびP.K.Vogt(編)、Japan Scientific Press、Tokyo;Smith M.R.等、(1990)Mol.Cell.Biol.10:3828〜3833)。
【0039】
したがって、活性化Raf−1は、細胞増殖の細胞内活性化因子である。Raf癌遺伝子が、細胞突然変異(Ras復帰突然変異細胞)または抗Ras抗体のマイクロインジェクションによる細胞Ras活性の遮断に起因するアポトーシスに打ち勝つため、Raf−1タンパク質セリンキナーゼは、マイトジェンシグナル伝達の下流エフェクターの候補である(Rapp U.R.等(1988)The Oncogene Handbook;T.Curran、E.P.Reddy、およびA.Skalka(編)、Elsevier Science Publishers;The Netherlands、213〜253頁;Smith M.R.等(1986)Nature(London)320:540〜543)。
【0040】
C−Raf機能は、種々の膜結合型癌遺伝子による形質転換、および血清に含まれるマイトジェンによる増殖刺激に必要とされる(Smith M.R.等(1986)Nature(London)320:540〜543)。Raf−1タンパク質セリンキナーゼ活性は、リン酸化を介してマイトジェンによって調節され(Morrison D.K.等(1989)Cell 58:648〜657)、これはさらに細胞内分布をもたらす(Olah Z.等(1991)Exp.Brain Res.84:403;Rapp U.R.等(1988)Cold Spring Harbor Sym.Quant.Biol.53:173〜184)。Raf−1活性化増殖因子には、血小板由来増殖因子(PDGF)(Morrison D.K.等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859)、コロニー刺激因子(Baccarini M.等(1990)EMBO J.9:3649〜3657)、インスリン(Blackshear P.J.等、(1990)J.Biol.Chem.265:12115〜12118)、上皮増殖因子(EGF)(Morrison R.K.等、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859)、インターロイキン−2(Turner B.C.等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1227)およびインターロイキン-3、ならびに顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(Carroll M.P.等、(1990)J.Biol.Chem.265:19812〜19817)が含まれる。
【0041】
細胞のマイトジェン処理後、一過性に活性化されたRaf−1タンパク質セリンキナーゼは、核周囲領域および核に移動する(Olah Z.等(1991)Exp.Brain Res.84:403;Rapp U.R.等(1988)Cold Spring Habor Sym.Quant.Biol.53:173〜184)。活性化Rafを含有する細胞は、遺伝子発現パターンが変わり(Heidecker G.等(1989)Genes and signal transduction in multistage carcinogenesis、N.Colburn(編)、Marcel Dekker,Inc.New York、339〜374頁)、Raf癌遺伝子は、一過性トランスフェクションアッセイにおいて、Ap−1/PEA3依存性プロモーターからの転写を活性化する(Jamal S.等(1990)Science 344:463〜466;Kaibuchi K.等(1989)J.Biol.Chem.264:20855〜20858;Wasylyk C.等(1989)Mol.Cell.Biol.9:2247〜2250)。
【0042】
細胞外マイトジェンによるRaf−1活性化には少なくとも2つの独立した経路がある。1つは、タンパク質キナーゼC(KC)を伴い、もう1つは、タンパク質チロシンキナーゼによって開始される(Blackshear P.J.等、(1990)J.Biol.Chem.265:12131〜12134;Kovacina K.S.等(1990)J.Biol.Chem.265:12115〜12118;Morrison D.K.等(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:8855〜8859;Siegel J.N.等(1990)J.Biol.Chem.265:18472〜18480;Turner B.C.等(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1227)。いずれの場合にも、活性化は、Raf−1タンパク質リン酸化を伴う。Raf−1リン酸化は、自己リン酸化によって増幅されたキナーゼカスケードの結果であるか、またはジアシルグリセロールによるPKC活性化に類似した、潜在的活性化リガンドとRaf−1調節ドメインとの結合によって開始された自己リン酸化がもっぱらの原因である可能性がある(Nishizuka Y.(1986)Science 233:305〜312)。
【0043】
本発明は、Rafキナーゼを阻害、調節、および/または調整することのできる化合物、ならびに調節されていないまたは障害のあるRafキナーゼ活性に関連する疾患を予防および/または治療するためのそれらの使用を対象とする。したがって、特に本発明による化合物は、ある種の形態の癌の治療に用いることができる。すでに述べたように、本発明による化合物は、ある種の現存する癌化学療法および放射線療法において付加的または相乗的効果を提供するために用いることができ、かつ/またはある種の現存する癌化学療法および放射線療法の効力を回復させるために用いることができる。
【0044】
さらに、本発明による化合物は、Rafキナーゼの活性または発現の単離および研究のために用いることができる。さらに、本発明による化合物は、特に、調節されていないまたは障害のあるRafキナーゼ活性に関連する疾患の診断方法において用いるのに適している。
【0045】
細胞調節が達成される主要な機序の1つは、膜を通過する細胞外シグナルの伝達、それに続く細胞内の生化学的経路の調整によるものである。タンパク質リン酸化は、細胞内シグナルが分子から分子に伝播され、最終的に細胞応答を引き起こす一過程である。これらのシグナル伝達カスケードは、高度に調節されており、多くのタンパク質キナーゼおよびタンパク質ホスファターゼの存在からわかるように、多くの場合重複している。タンパク質のリン酸化は、主としてセリン、トレオニン、またはチロシン残基で起こり、したがって、タンパク質キナーゼは、それらのリン酸化部位の特異性によって、すなわちセリン/トレオニンキナーゼ、およびチロシンキナーゼに分類されている。リン酸化は細胞内の非常に偏在的なプロセスであり、細胞表現型はこれらの経路の活性に大いに影響を受けるため、多数の疾病状態および/または疾患は、キナーゼカスケードの分子成分における異常活性化または機能的突然変異に起因すると現在考えられている。したがって、これらのタンパク質、およびそれらの活性を調整することのできる化合物の特徴を明らかにすることに、かなりの注目が向けられている(概説としてWeinstein−Oppenheimer等、Pharma.&Therap.2000、88、229〜279を参照されたい)。キナーゼの阻害、調節、および調整の種々の可能性には、たとえば、抗体、アンチセンスリボザイム、および阻害剤の提供が包含される。腫瘍学の研究において、チロシンキナーゼは特に、非常に有望な標的である。したがって、多数の合成小分子が、癌を治療するためのチロシンキナーゼ阻害剤として臨床開発中であり、たとえばイレッサ(Iressa)(登録商標)、またはグリベック(Gleevec)(登録商標)である。しかしながら、副作用、用量、腫瘍の耐性、腫瘍特異性、および患者選定などの多くの問題が、依然として解決されなければならない。
【0046】
WO02/44156は、TIE−2および/またはVEGFR2阻害剤としてのベンズイミダゾール誘導体を記載している。WO99/32436、WO02/062763、WO99/32455、WO00/42012、およびWO02/085857は、Rafキナーゼ阻害剤としての尿素誘導体を開示している。
【0047】
本発明は、有用な特性を有する新規な化合物、特に薬剤の調製に用いることのできる新規な化合物を発見するという目的に基づいた。
【0048】
したがって、チロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼのシグナル伝達を特異的に阻害、調節、および/または調整する小化合物の同定および提供が望ましく、本発明の目的である。
【0049】
本発明による化合物およびそれらの塩は、充分に耐性でありながら、非常に有用な薬理学的特性を有することが見出された。
【0050】
特に、本発明による化合物は、意外にも有効なキナーゼ阻害剤であることが見出された。
【0051】
たとえば、本発明による化合物は、チロシンキナーゼ阻害作用、特にTIE−2および/またはVEGFR阻害作用を示す。さらに、本発明による化合物は、Rafキナーゼの有効な阻害剤である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0052】
発明の概要
本発明は、上述の式Iの化合物に関する。
【0053】
本発明を通じて、1回を超えて生じるすべての基は、同一であっても異なっていてもよく、すなわち互いに独立している。上述および下述の基および変数は、他に明示的な記載のない限り、式Iに関して示した意味を有する。したがって、本発明は、特に、前記基の少なくとも1つが以下に示す好ましい意味の1つを有する式Iの化合物に関する。
【0054】
Halは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、特にフッ素、または塩素を示す。
【0055】
Aは、非分岐(直鎖)、分岐、または環状であり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14個のC原子を有するアルキルを示す。Aは、好ましくはメチル、さらにはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチルまたはt−ブチル、さらにはペンチル、1−、2−、または3−メチルブチル、1,1−、1,2−、または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−、または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−、または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、直鎖または分岐ヘプチル、オクチル、ノニル、またはデシルを示す。
【0056】
Aは、非常に特に好ましくは1、2、3、4、5、または6個のC原子を有するアルキルを示し、1または2個のCH2基は、OまたはS原子および/または−CH=CH−基で置換されていてもよく、かつ/またはさらに1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClで置換されていてもよく、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、または1,1,1−トリフルオロエチルなどである。
【0057】
シクロアルキルは、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはシクロヘプチルを示す。
【0058】
OAは、好ましくはメトキシ、さらにはエトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、またはt−ブトキシである。
【0059】
Arは、たとえば非置換フェニル、ナフチル、またはビフェニル、さらに好ましくは、たとえばA、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アセチル、プロピオニル、トリフルオロメチル、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ベンジルオキシ、スルホンアミド、メチルスルホンアミド、エチルスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、ブチルスルホンアミド、ジメチルスルホンアミド、フェニルスルホンアミド、カルボキシル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、アミノカルボニルで一、二、または三置換されているフェニル、ナフチル、またはビフェニルを示す。
【0060】
Arは、たとえばフェニル、o−、m−、またはp−トリル、o−、m−、またはp−エチルフェニル、o−、m−、またはp−プロピルフェニル、o−、m−、またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−、またはp−t−ブチルフェニル、o−、m−、またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−、またはp−ニトロフェニル、o−、m−、またはp−アミノフェニル、o−、m−、またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−、またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−、またはp−アセトアミドフェニル、o−、m−、またはp−メトキシフェニル、o−、m−、またはp−エトキシフェニル、o−、m−、またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−、またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−、またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−、またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−、またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−、またはp−フルオロフェニル、o−、m−、またはp−ブロモフェニル、o−、m−、またはp−クロロフェニル、o−、m−、またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−、またはp−(メチルスルホニル)フェニル、さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、または3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、または3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、または3,5−ジブロモフェニル、2,4−または2,5−ジニトロフェニル、2,5−または3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−、または2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノ−または3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−、または3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、または2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを示す。
【0061】
Hetは、好ましくは2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−、または3−ピロリル、1−、2、4−、または5−イミダゾリル、1−、3−、4−、または5−ピラゾリル、2−、4−、または5−オキサゾリル、3−、4−、または5−イソキサゾリル、2−、4−、または5−チアゾリル、3−、4−、または5−イソチアゾリル、2−、3−、または4−ピリジル、2−、4−、5−、または6−ピリミジニル、さらに好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−、または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−、または−5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、1−、2−、4−、または5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−、または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−、または7−ベンゾオキサゾリル、3−、4−、5−、6−、または7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−、または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−、または7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−、または7−ベンゾ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−、または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−、または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−、または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−、または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−、または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−または−5−イル、あるいは2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イルを示し、それぞれ非置換であるか、あるいは、たとえばカルボニル酸素、F、Cl、Br、メチル、エチル、プロピル、フェニル、ベンジル、−CH2−シクロヘキシル、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ニトロ、シアノ、カルボキシル、メトキシカルボニル、アミノカルボニル、メチルアミノカルボニル、ジメチルアミノカルボニル、アセトアミノ、ウレイド、メチルスルホニルアミノ、ホルミル、アセチル、アミノスルホニル、および/またはメチルスルホニルで一、二、または三置換されている。
【0062】
複素環基は、部分的または完全に水素化されてもよく、たとえば2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−、または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−、または5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、または−5−ピロリル、1−、2−、または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−、または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−、または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1、−2−、−3−、または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、または−6−ピリジル、1−、2−、3−、または4−ピペリジニル、2−、3−、または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−、または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−、または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−、または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−、または−5−ピリミジニル、1−、2−、または3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−、または−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−、または−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−、または8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−または6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニル、あるいは3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−または−7−イル、さらに好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニル、または2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニルを示す。
【0063】
Hetはさらに、たとえば2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2,6−ジオキソピペリジン−1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、2,6−ジオキソピペラジン−1−イル、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル、3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イル、2−カプロラクタム−1−イル(=2−オキソアゼパン−1−イル)、2−ヒドロキシ−6−オキソピペラジン−1−イル、2−メトキシ−6−オキソピペラジン−1−イル、または2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン−2−イルを示す。
【0064】
1は、好ましくはH、Hal、CF3、NO2、COOH、またはCOORを示す。R2は、好ましくはHを示す。R3は、好ましくはH、Hal、またはCO−NHRを示す。Rは、好ましくはH、あるいは非置換、または一、二、三、または四−R4−置換のA、Ar、Het、(CH2qHet、または(CH2qArを示す。R4は、好ましくはHal、OH、CN、NO2、CF3、OCF3、SCF3、SO2A、またはOAを示す。
【0065】
【化3】

【0066】
は、好ましくはフェニル、あるいは1から4個のN、O、および/またはS原子を有する単環式芳香族複素環を示し、
【0067】
【化4】

【0068】
は、特に好ましくはフェニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、またはピリミジニルを示し、
【0069】
【化5】

【0070】
は、非常に特に好ましくはフェニル、ピリジル、またはピリミジニルを示す。Xは、好ましくはO、S、SO2NH、またはNHを示す。
【0071】
本明細書では、「基(group)」「残基(residue)」「基(radical)」、または「基(groups)」「残基(residues)」「基(radicals)」という用語は、当分野での通例どおり同義に用いられる。
「置換されている」という用語は、他に指定のない限り、好ましくは上述の置換基による置換を指し、複数の異なる置換度が可能である。
【0072】
あらゆる比率のそれらの混合物を含む、これらの化合物の生理的に許容されるすべての塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体も本発明によるものである。
【0073】
式Iの化合物は、1つまたは複数のキラル中心を有することができる。したがって、式Iの化合物は、種々のエナンチオマー形態で生じることができ、ラセミ体、または光学活性形態で存在することができる。したがって、本発明はさらに式Iの化合物の光学活性形態(立体異性体)、エナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマー、ならびにこれらの化合物の水和物および溶媒和物に関する。
【0074】
本発明による化合物のラセミ体または立体異性体の薬剤有効性は異なる可能性があるため、エナンチオマーの使用が望ましいこともあり得る。これらの場合、最終生成物またはすでに中間体を、当分野の技術者に知られている化学的または物理的手段によってエナンチオマー化合物に分離することができ、あるいは合成においてそのようなものとして用いることもできる。
【0075】
ラセミアミンの場合、ジアステレオマーは、光学活性分割剤との反応によって混合物から形成される。適切な分割剤は、例えば、RおよびS体の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、適切にN保護されたアミノ酸(たとえばN−ベンゾイルプロリン、またはN−ベンゼンスルホニルプロリン)、または種々の光学活性カンファースルホン酸などの光学活性酸である。光学活性分割剤(たとえばジニトロベンゾイルフェニルグリシン、三酢酸セルロース、または炭水化物の他の誘導体、あるいはシリカゲルに固定されたキラル誘導体化メタクリル酸ポリマー)を用いるクロマトグラフエナンチオマー分割も有利である。この目的に適切な溶離剤は、水性またはアルコール性溶媒混合物であって、例えばヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリルで、例えば82:15:3の比率のものである。化合物の好ましいいくつかの群は、以下の下位式IaからIeで表すことができ、これらは式Iに従い、式中、詳細に指定されない基は、式Iに関して示した意味を有するが、
Iaにおいて、R1は、Hal、NO2、CF3、COOH、COOR、またはHを示し、
Ibにおいて、R2は、Hを示し、
Icにおいて、R3は、H、Hal、またはCO−NHRを示し、
Idにおいて、Yは、フェニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、またはピリミジニルを示し、
Ieにおいて、R1は、Hal、NO2、CF3、COOH、COOR、またはHを示し、
2は、Hを示し、
3は、H、Hal、またはCO−NHRを示し、
Yは、フェニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、またはピリミジニルを示し、
Xは、O、S、SO2NH、またはNHを示し、
n、pは、互いに独立して、1、2、3、または4を示し、
mは、1を示すものであり、
ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体である。
【0076】
化合物は、特に好ましくは下記の群から選択され、
a)ベンゾオキサゾール−2−イル−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
b)ベンゾオキサゾール−2−イル−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
c)N−ベンゾオキサゾール−2−イル−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
d)2−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−5−カルボン酸、
e)2−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−6−カルボン酸、
f)2−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−6−カルボン酸、
g)メチル 2−[4−(ピリジン−4−イルアミノ)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−6−カルボキシレート、
h)(5−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
i)(5−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
j)N−(5−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
k)(6−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
l)(6−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
m)N−(6−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
n)(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
o)(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
p)N−(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
q)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]−アミン、
r)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)−フェニル]アミン、
s)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(4−フルオロフェニルスルファニル)−フェニル]アミン、
t)N−[4−(ブロモトリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イルアミノ)フェニル]−4−フルオロベンゼンスルホンアミド、
u)[4−(2−アミノ−6−メチルピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)アミン、
v)N−メチル−4−[4−(ブロモトリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イルアミノ)フェノキシ]−ピリジン−2−カルボキサミド、
w)N−メチル−4−[4−(ブロモトリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イルアミノ)フェニルスルファニル]ピリジン−2−カルボキサミド、
x)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(2,4−ジフルオロフェニルスルファニル)フェニル]アミン、
ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体である。
【0077】
薬剤としてまたは生理的に許容される誘導体とは、たとえば本発明による化合物の塩、およびいわゆるプロドラッグ化合物を意味する。そのような誘導体は当分野の技術者に知られている。生理的に耐性である誘導体の概説は、Burger’s Medicinal Chemistry And Drug Discovery、第5版、Vol1:Principles and Practiceに記載されている。プロドラッグ化合物とは、たとえばアルキル基またはアシル基、糖またはオリゴペプチドで修飾されており、有機体において迅速に開裂または遊離されて、本発明による有効な化合物を提供する式Iの化合物を意味する。これらには、たとえばInt.J.Pharm.115(1995)、61〜67に記載されているように、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体も含まれる。
【0078】
適切な酸付加塩は、生理的または薬理的に許容されるすべての酸の無機または有機塩であり、たとえばハロゲン化物、特に塩酸塩または臭化水素酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、リン酸塩、メチルスルホン酸塩、またはp−トルエンスルホン酸塩である。
【0079】
式Iの化合物の溶媒和物とは、相互引力により形成される、式Iの化合物への不活性溶媒化合物の付加(adduction)を意味する。溶媒和物は、たとえば一水和物または二水和物などの水和物、あるいはアルコラート、すなわち、たとえばメタノールまたはエタノールなどのアルコールの付加化合物である。
「有効量」という表現は、組織、系、動物、またはヒトにおいて、たとえば研究者または医師から求められるまたは望まれる生物学的または医学的応答を引き起こす薬剤または薬剤活性成分の量を意味する。
【0080】
さらに、「治療上有効量」という表現は、この量を与えられていない相当する対象と比較して、以下の結果を有する量を意味する。その結果とは、疾患、症候群、疾患状態、状態、障害の治療の改善、治癒、予防、または除去、あるいは副作用の予防、あるいは疾患、状態、または障害の進行における低減である。「治療上有効量」という表現はまた、正常な生理機能を増大するのに有効な量も包含する。
【0081】
本発明はまた、本発明による式Iの化合物の混合物であって、例えば、2種のジアステレオマーの混合物で、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100、または1:1000の比率であるものに関する。これらは、特に好ましくは、立体異性化合物の混合物である。
【0082】
式Iの化合物、ならびに生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体を調製する方法であり、式中、R1およびnが、上述の意味を有する式IIの化合物を、
【0083】
【化6】

【0084】
式中、R2、R3、X、Y、m、およびpが、上述の意味を有する式IIIの化合物と反応させ、
【0085】
【化7】

【0086】
かつ/または式Iの塩基または酸を、その塩の1つに変換することを特徴とする。
【0087】
式Iの化合物の調製は、以下のスキームで表すこともできる。
【0088】
【化8】

【0089】
式IVおよびVの化合物は、特に好ましくは、溶媒ジクロロメタンおよびジメチルホルムアミドの存在下、室温で一晩、式IIの化合物に変換される。式IIおよびIIIの化合物は、特に好ましくは、ジメチルホルムアミドの存在下、110℃で一晩、式Iの化合物に変換される。
【0090】
それぞれの反応を、段階的に行うことも可能である。
【0091】
出発原料は、一般に知られている。出発原料が新規である場合、それ自体が知られている方法で調製することができる。
【0092】
所望であれば、出発原料は、反応混合物から単離されていないが、速やかに式Iの化合物にさらに変換されるように、その場で形成することもできる。
【0093】
出発原料は、溶媒の不在下、密封反応容器またはオートクレーブにおいて混合(溶解)することができる。しかしながら、出発原料を、不活性溶媒の存在下で反応させることも可能である。
【0094】
式IIおよびIIIの化合物の反応は、当分野の技術者に知られている方法で行われる。この反応は、まず適切な溶媒、特に不活性溶媒中で行われる。
【0095】
適切な不活性溶媒は、たとえばヘプタン、ヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロメタン、クロロホルム、またはジクロロメタン;例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、またはt−ブタノールなどのアルコール;例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル(好ましくはインドール窒素を置換)、テトラヒドロフラン(THF)、またはジオキサンなどのエーテル;例えばエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル(メチルグリコール、またはエチルグリコール)、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)などのグリコールエーテル;例えばアセトン、またはブタノンなどのケトン;例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、またはジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド;例えばアセトニトリルなどの二トリル;例えば酢酸エチルなどのエステル、例えば酢酸または無水酢酸などのカルボン酸または酸無水物、例えばニトロメタン、またはニトロベンゼンなどのニトロ化合物、あるいは所望であれば前記溶媒の相互の混合物、または水との混合物である。ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0096】
この反応は、不均質相において、好ましくは水相およびベンゼンまたはトルエン相を用いて行うこともできる。本発明では、たとえばヨウ化テトラブチルアンモニウムなどの相間移動触媒、および場合によって、たとえばジメチルアミノピリジンなどのアシル化触媒が用いられる。
【0097】
溶媒の量は重要でなく、好ましくは反応させる式Iの化合物1g当たり、10gから500gの溶媒を添加することができる。
【0098】
適切な反応温度は、10から180℃、好ましくは20から150℃、特に好ましくは60から120℃の温度である。
【0099】
この反応は、好ましくは1から200バールの圧力、特に好ましくは大気圧で行われる。
【0100】
この反応は、好ましくはpH4から10で行われる。
【0101】
反応の持続期間は、選択された反応条件によって決まる。一般に、反応持続期間は、0.5時間から10日、好ましくは1から24時間、特に好ましくは2から12時間である。
【0102】
式Iの化合物、およびそれらを調製するための出発原料は、さらに、たとえば前記反応に適している既知の条件下で、文献(たとえば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie(有機化学の方法)、Gerog−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な著作物)に記載されているような、知られている方法で調製される。それ自体知られているが、本明細書にはより詳細に述べられていない変法も用いることができる。
【0103】
溶媒を除去した後、式Iの化合物は、たとえば反応混合物に水を添加し、抽出するなどの、通常の後処理段階によって得ることができる。生成物をさらに精製するために、続いて蒸留または結晶化を行うことが有利であり得る。
【0104】
式IVおよびVの化合物の、式IIの化合物への変換は、上に示したプロセスによって行われる。用いる不活性溶媒は、特に好ましくはジクロロメタンおよびジメチルホルムアミドである。このプロセスは、好ましくは10から40度の温度、特に好ましくは室温で、大気圧で行われる。反応持続期間は、特に好ましくは2から12時間である。
【0105】
式Iの酸は、たとえば等量の酸および塩基をエタノールなどの不活性溶媒中で反応させ、蒸発することによって、塩基を用いて関連する付加塩に変換することができる。この反応に特に適切な塩基は、生理的に許容される塩を提供する塩基である。したがって、式Iの酸は、塩基(たとえば水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウム、あるいは水酸化カリウムまたは炭酸カリウム)を用いて、対応する金属塩、特にアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、あるいは対応するアンモニウム塩に変換することができる。たとえばエタノールアミンなどの、生理的に許容される塩を提供する有機塩基もこの反応に適している。
【0106】
他方、式Iの塩基は、たとえば等量の塩基および酸をエタノールなどの不活性溶媒中で反応させ、その後、蒸発させることによって、酸を用いて関連する酸付加塩に変換することができる。特にこの反応に適切な酸は、生理的に許容される塩を提供する酸である。したがって、例えば硫酸、硝酸、ハロゲン化水素酸(たとえば塩酸または臭化水素酸など)、リン酸(正リン酸など)、スルファミン酸などの無機酸、さらに有機酸、特に脂肪族、脂環式、アルアリファチック(araliphatic)、芳香族、または複素環式の一塩基または多塩基カルボン酸、スルホン酸、または硫酸であって、たとえばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタンまたはエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノおよびジスルホン酸、あるいはラウリル硫酸を用いることができる。
【0107】
生理的に許容されない酸との塩、たとえばピクリン酸塩は、式Iの化合物の単離および/または精製のために用いることができる。
【0108】
本発明はさらに、本発明による少なくとも1種の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるその塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体を含む薬剤に関する。
【0109】
本発明による薬剤組成物は、さらなる賦形剤および/または補助剤、および場合によって1種または複数のさらなる薬剤活性成分をさらに含んでもよい。
【0110】
本発明はさらに、薬剤を調製する方法であって、本発明による化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるその塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の1つが、固体、液体、または半液体賦形剤または補助剤と共に、適切な投与形態に形成されることを特徴とする方法に関する。
【0111】
本発明はまた、
(a)有効量の本発明による化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるその塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体と、
(b)有効量のさらなる薬剤活性成分と、の別個のパックからなるセット(キット)に関する。
【0112】
このセットは、たとえば箱、個別ボトル、袋、またはアンプルなどの適切な容器を含む。このセットは、たとえば、有効量の本発明による化合物、および/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として利用可能なその誘導体、溶媒和物、および立体異性体と、ならびに有効量のさらなる薬剤活性成分とを溶解または凍結乾燥形態でそれぞれ含有する別個のアンプルを含んでもよい。
【0113】
薬剤は、投与単位当たり所定量の活性成分を含む投与単位の形態で投与することができる。そのような単位は、治療される状態、投与方法、患者の年齢、体重および状態に応じて、たとえば0.5mgから1g、好ましくは1mgから700mg、特に好ましくは5mgから100mgの本発明による化合物を含むことができる。好ましい投与単位製剤は、上述のとおり、活性成分の日用量または部分用量、あるいはそれらの用量に相当する活性成分部分を含むものである。
【0114】
さらに、この種の薬剤は、薬剤分野で一般に知られている方法を用いて調製することができる。
【0115】
薬剤は、任意の所望の適切な方法、たとえば経口(口腔または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(口腔、舌下、または経皮を含む)、膣内、あるいは非経口(皮下、筋内、静脈内、または皮内を含む)法によって投与するために適応させることができる。そのような製剤は、薬剤分野で知られているあらゆる方法を用いて、たとえば活性成分を賦形剤または補助剤と組み合わせることによって調製することができる。
【0116】
経口投与用に適応された薬剤は、別個の単位として投与することができ、たとえばカプセル剤または錠剤、粉剤または顆粒剤、水性または非水性溶液の液剤または懸濁剤、食用泡剤または泡状食品、あるいは水中油型液体エマルションまたは油中水型液体エマルションなどである。
【0117】
したがって、たとえば、錠剤またはカプセル剤形態での経口投与の場合、活性成分は、経口、非毒性かつ薬剤として許容される不活性賦形剤、たとえばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。粉剤は、化合物を適切な微細粒度に粉砕し、それを同様に粉砕した薬剤賦形剤、たとえば食用炭水化物、たとえばデンプンまたはマンニトールなどと混合することによって調製される。同様に、香味剤、保存剤、分散剤、および染料も含有させてもよい。
【0118】
カプセル剤は、上述のとおり粉末混合物を調製し、成形したゼラチン外皮にそれを充填することによって製造される。流動促進剤および潤滑剤、たとえば高度分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体形態のポリエチレングリコールなどを、充填操作前に、粉末混合物に添加することができる。崩壊剤または可溶化剤、たとえば寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウムなども、カプセル摂取後の薬剤の有用性を向上させるために、同様に添加してもよい。
【0119】
さらに、所望であるか必要であれば、適切な結合剤、潤滑剤、および崩壊剤、ならびに染料を、同様に混合物に組み入れることができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、天然糖、たとえばグルコースまたはβ−ラクトースなど、トウモロコシから作られた甘味剤、天然および合成ゴム、たとえばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどが含まれる。これらの投与形態に用いられる潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれるが、これらに限定されない。錠剤は、たとえば、粉末混合物を調製し、混合物を粒状にするか、または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を添加し、全混合物を圧縮して錠剤を得ることによって製剤化される。粉末混合物は、上述のとおり、適切な様式で粉砕した化合物を、希釈剤またはベースと、場合によって結合剤、たとえばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、またはポリビニルピロリドンなどと、分解遅延剤、たとえばパラフィンなど、吸収促進剤、たとえば第四級塩などと、および/または吸収剤、たとえばベントナイト、カオリン、または第二リン酸カルシウムなどと混合することによって調製される。粉末混合物は、結合剤、たとえば糖ミツ、デンプン糊、アカディア(acadia)粘液、あるいはセルロースまたはポリマー材料の溶液などを用いて湿潤させ、ふるいを通してそれを圧縮することによって粒状にすることができる。粒状化の別法として、粉末混合物を打錠機に通して、分解されて小粒を形成する不均一な形状の塊を得ることができる。小粒は、錠剤鋳型に粘着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油を添加することによって、潤滑にすることができる。その後、潤滑混合物を圧縮して、錠剤を得る。本発明による化合物は、流動性不活性賦形剤と組み合わせ、その後粒状化または乾燥圧縮段階を行わずに、直接圧縮して錠剤を得ることもできる。シェラック密封層、糖またはポリマー材料層、およびロウの光沢層からなる透明または不透明保護層が存在してもよい。異なる投与単位を識別できるように、これらの被覆物に染料を添加することができる。
【0120】
経口液体、たとえば液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤などは、所与の量が予め指定された量の化合物を含むような投与単位の形態で調製することができる。シロップ剤は、化合物を適切な香味剤と共に水溶液に溶解することによって調製することができ、エリキシル剤は、非毒性アルコール媒体を用いて調製される。懸濁剤は、化合物を非毒性媒体に分散することによって製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤、たとえばエトキシル化イソステアリルアルコール、およびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど、保存剤、香味添加剤、たとえばハッカ油、あるいは天然甘味剤またはサッカリン、あるいは他の人工甘味剤なども同様に添加することができる。
【0121】
経口投与用の投与単位製剤は、所望であれば、マイクロカプセルに封入することができる。この製剤は、たとえば粒状材料をポリマー、ロウなどで被覆または包埋することによって、放出が延長または遅延するように調製することもできる。
【0122】
本発明による化合物、その塩、溶媒和物、および生理的機能性誘導体は、たとえば小さい単層ベシクル、大きい単層ベシクル、および多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形態で投与することもできる。リポソームは、種々のリン脂質、たとえばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどから形成することができる。
【0123】
本発明による化合物、ならびにその塩、溶媒和物、および生理的機能性誘導体は、化合物分子が結合する個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することもできる。これらの化合物は、標的薬剤担体として、可溶性ポリマーに結合させることもできる。そのようなポリマーは、パルミトイル基で置換された、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはポリエチレンオキシドポリリシンを含むことができる。これらの化合物は、さらに薬剤の制御放出を達成するのに適したある種の生分解性ポリマー、たとえばポリ酢酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋または両親媒性ブロックコポリマーに結合させてもよい。
【0124】
経皮投与用に適応された薬剤は、受容者の表皮と密接に長期接触させるための個別の硬膏剤として投与することができる。したがって、たとえば、活性成分は、Pharmaceutical Research、3(6)、318(1986)の一般項に記載されているように、イオン導入法によって硬膏剤から送達することができる。
【0125】
局所投与用に適応された薬剤は、軟膏剤、クリーム、懸濁剤、ローション剤、粉剤、液剤、ペースト(pastes)、ゲル、スプレー、エアロゾル、または油として製剤化することができる。
【0126】
眼または他の外部組織、たとえば口および皮膚の治療の場合、製剤は、好ましくは局所軟膏剤またはクリームとして適用される。軟膏を提供する製剤の場合、活性成分は、パラフィン系または水混和性クリームベースと共に用いることができる。あるいは、水中油型クリームベースまたは油中水型ベースを用いてクリームを提供するように製剤化することができる。
【0127】
眼への局所適用に適応された薬剤には、点眼液が含まれ、この場合、活性成分は、適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁される。
【0128】
口への局所適用に適応された薬剤は、ロゼンジ(lozenges)、トローチ剤、およびマウスウォッシュを含む。
【0129】
直腸投与用に適応された薬剤は、坐剤または浣腸の形態で投与することができる。
【0130】
担体物質が固体である経鼻投与用に適応された薬剤は、たとえば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含み、この薬剤は、鼻からの吸入が行われる様式、すなわち鼻に近接して保持された粉末を含有する容器から鼻道を経由して急速に吸入されることによって投与される。担体物質として液体を含む鼻用スプレーまたは点鼻薬として投与される適切な製剤には、活性成分の水溶液または油溶液が含まれる。
【0131】
吸引による投与に適応された薬剤には、微細粒状ダストまたはミストが含まれ、これはエアロゾル、ネブライザー、または注入器を備えた様々な型の加圧式ディスペンサによって発生させることができる。
【0132】
膣内投与用に適応された薬剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト(pastes)、泡、またはスプレー製剤として投与することができる。
【0133】
非経口投与用に適応された薬剤には、それによって製剤が治療される受容者の血液と等張となる、溶質、抗酸化剤、緩衝剤、および静菌剤を含む水性または非水性滅菌注射液、ならびに懸濁媒質および増粘剤を含んでもよい水性または非水性滅菌懸濁液が含まれる。これらの製剤は、単回用量または多回用量容器、たとえば密封アンプルおよびバイアルで投与することができ、使用直前に注射のために、滅菌担体液体、たとえば水の添加のみが必要であるように、凍結乾燥(freeze−dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態で保存される。この製法に従って調製される注射液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0134】
特に上に述べた成分に加えて、本発明による薬剤は、その特定の種類の薬剤製剤に関して当分野で通例である他の薬剤も含むことができるのは言うまでもなく、したがって、たとえば経口投与に適している製剤は、香味剤を含んでもよい。
【0135】
本発明の化合物の治療上有効量は、たとえば動物の年齢および体重、治療を要する正確な疾患状態、およびその重篤度、製剤の性質、ならびに投与方法を含むいくつかの要因によって決まり、最終的には治療を行う医師または獣医師によって決定される。しかしながら、腫瘍性増殖、たとえば結腸癌または乳癌を治療するための、本発明による化合物の有効量は、一般に1日当たり、受容者(哺乳動物)の体重1kg当たり、0.1から100mgの範囲、特に典型的には1日当たり、体重1kg当たり、1から10mgの範囲である。したがって、体重70kgである成体哺乳動物の1日当たりの実際量は、通常70から700mgであり、この量を、総日用量が同一となるように、1日当たりの単回用量として、または通常1日当たり一連(たとえば、2、3、4、5、または6回など)の部分用量で投与することができる。その塩、または溶媒和物、あるいは生理的機能性誘導体の有効量は、それ自体が本発明による化合物の有効量の一部分として決定することができる。類似の用量が上に挙げた他の状態の治療にも適していることが推測され得る。
使用
本発明による化合物は、好ましくは、本実施例に記載したように酵素アッセイにおいて容易に検出され得る有利な生物活性を示す。そのような酵素に基づくアッセイにおいて、本発明による化合物は、好ましくは、通常は適切な範囲、好ましくはマイクロモル範囲、より好ましくはナノモル範囲のIC50値によって示される阻害作用を示し、そのような作用をもたらす。
【0136】
本発明は、本明細書に記載のシグナル経路の活性化剤または阻害剤、好ましくは阻害剤としての本発明による化合物に関する。したがって本発明は、特に好ましくは、キナーゼの活性化剤または阻害剤、特に好ましくはチロシンキナーゼ、特にTIE−2および/またはVEGFRの阻害剤、および/またはRafキナーゼ、特にA−Raf、B−Raf、およびC−Raf−1の阻害剤としての本発明による化合物に関する。
【0137】
上に論じたように、本発明による化合物に影響を受けるシグナル経路は、種々の疾患に関連している。したがって、本発明による化合物は、1つまたは複数の前記シグナル経路と相互に作用することによって前記シグナル経路に依存している疾患の予防および/または治療に有用である。
【0138】
したがって、本発明はさらに、疾患、特にキナーゼおよび/またはキナーゼ媒介シグナル伝達によって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関する。本発明では、チロシンキナーゼの群から選択されたキナーゼが好ましい。チロシンキナーゼは、特に好ましくはTIE−2またはVEGFRである。Rafキナーゼの群から選択されたキナーゼも好ましい。Rafキナーゼは、特に好ましくはA−Raf、B−Raf、またはRaf−1である。
【0139】
本発明による化合物は、酵素Rafキナーゼの阻害剤であることが見出された。この酵素は、p21rasの下流エフェクターであるため、この阻害剤は、たとえばRafキナーゼに媒介される腫瘍および/または癌細胞増殖の治療において、Rafキナーゼ経路の阻害が指示されているヒトまたは動物薬で用いるための薬剤組成物に適していることがわかる。特に、ヒトおよび動物の固形癌、たとえばマウス癌の進行は、Rasタンパク質シグナル伝達カスケードに依存しており、したがってカスケードの中断、すなわちRafキナーゼの阻害による治療に感受性であるため、これらの化合物は、それらの癌の治療に適している。したがって、本発明による化合物、または薬剤として許容されるその塩は、Rafキナーゼ経路に媒介される疾患、特に、固形癌を含む癌、たとえば癌腫(たとえば、肺、膵臓、甲状腺、膀胱、または結腸)、骨髄疾患(たとえば、骨髄性白血病)、または腺腫(たとえば、絨毛状結腸腺腫)、病的血管新生、および転移性細胞遊走を治療するために投与される。これらの化合物はさらに、補体活性化依存性の慢性炎症(Niculescu等(2002)Immunol.Res.24:191〜199)、およびHIV−1(ヒト免疫不全ウイルス1型)誘発性免疫不全(Popik等(1998)J Virol 72:6406〜6413)の治療に適している。
【0140】
さらに、本発明の化合物は、チロシンキナーゼ誘発性疾患の治療における、哺乳動物、特にヒトに対する薬剤活性成分として適している。「チロシンキナーゼ誘発性疾患」という表現は、1種または複数のチロシンキナーゼの活性に依存する病的状態を指す。チロシンキナーゼは、増殖、接着、遊走、および分化を含む種々の細胞活動のシグナル伝達経路に、直接または間接的に関与する。チロシンキナーゼ活性に関連する疾患には、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍の増殖を促進する病的新生血管形成、眼新生血管形成(糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性など)、および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が含まれる。
【0141】
本明細書に論じた疾患は、通常2つの群、過剰増殖性疾患および非過剰増殖性疾患に分類される。これに関して、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患は、非癌性疾患とみなされ、その中で関節炎、炎症、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患は、通常、非過剰増殖性疾患とみなされる。
【0142】
これに関して、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病、および急性白血病は、癌性疾患とみなされ、そのすべてが、通常、過剰増殖性疾患の群であるとみなされる。特に癌細胞増殖、特にTIE−2、VEGFR、およびRafキナーゼに直接または間接的に媒介される癌細胞増殖は、本発明の標的となる疾患である。
【0143】
したがって本発明は、前記疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための本発明による化合物の使用、ならびにそのような投与を必要としている患者に本発明による1種または複数の化合物を投与することを含む、前記疾患を治療するための方法に関する。
【0144】
本発明による化合物は、異種移植腫瘍モデルにおいて、in vivoで抗増殖作用を有することを示すことができる。本発明による化合物は、たとえば腫瘍増殖を阻害する、リンパ増殖性疾患に伴う炎症を緩和する、移植拒絶または組織修復による神経障害を阻害するなどのために、過剰増殖性疾患を有する患者に投与される。本発明の化合物は、予防または治療目的に適している。本明細書では、「治療」という用語は、疾患の予防および既存状態の治療の両方を指すために用いられる。増殖の予防は、たとえば腫瘍の増殖を防ぐ、転移増殖を防ぐ、心臓血管手術に伴う再狭窄を減じるなどのために、顕性疾患の発症に先立って本発明による化合物を投与することによって達成される。あるいは、化合物は、患者の臨床症状を安定または改善することによって、進行中の疾患を治療するために用いられる。
【0145】
宿主および患者は、任意の哺乳動物種、たとえば霊長類種、特にヒト、ならびにマウス、ラット、およびハムスターを含む齧歯動物、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属することができる。動物モデルは、実験的研究に重要であり、ヒトの疾患治療のモデルを提供する。
【0146】
本発明の化合物による治療に対する特定の細胞の感受性は、in vitro試験によって判定することができる。典型的に、細胞の培養を、活性剤が細胞死を誘発する、または遊走を阻害するのに充分な期間、通常は約1時間から1週間、様々な濃度の本発明による化合物と共にインキュベートする。in vitro試験は、生検試料由来の培養細胞を用いて行うことができる。その後、処置後に残存する生存細胞をカウントする。
【0147】
用量は、用いられる特定の化合物、特定の疾患、患者の状態などに応じて異なる。治療用量は、典型的に、患者の生存性を維持しながら、標的組織において望ましくない細胞集団を大幅に減少するのに充分な量である。治療は、一般的に、大幅な低減が生じるまで、たとえば特定の細胞のカウントが少なくとも約50%低減するまで継続され、望ましくない細胞が体内で本質的に検出されなくなるまで継続してもよい。
【0148】
キナーゼ阻害剤を同定するために、種々のアッセイ系が利用可能である。シンチレーション近接アッセイ(Sorg等、J.of Biomolecular Screening、2002、7、11〜19)、およびフラッシュプレートアッセイでは、γATPを用いて基質としてのタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化を測定する。阻害化合物の存在下では、検出される放射性シグナルが低減するか、まったく検出されない。さらに、ホモジニアス時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(HTR−FRET)、および蛍光偏光(FP)技法は、アッセイ法として適している(Sills等、J.of Biomolecular Screening、2002、191〜214)。
【0149】
他の非放射性ELISAアッセイ法は、特定のホスホ−抗体(ホスホ−AB)を用いる。このホスホ−ABは、リン酸化基質にのみ結合する。この結合は、二次ペルオキシダーゼ複合抗ヒツジ抗体を用いて、化学発光によって検出することができる(Ross等、2002、Biochem.J.、まもなく発行、原稿BJ20020786)。
【0150】
細胞増殖の脱制御および細胞死(アポトーシス)に関連する多くの疾患がある。しかしながら、本発明による化合物で治療、予防、または緩和することのできる疾患および状態には、以下に挙げる疾患および状態が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明による化合物は、平滑筋細胞および/または炎症細胞の増殖、および/または脈管の内膜層への遊走の結果、たとえば新生内膜の閉塞性病変の場合など、脈管の血流が制限されるような、多くの異なる疾患および状態の治療および/または予防に適している。対象となる閉塞性移植血管疾患には、アテローム性動脈硬化症、移植後の冠血管疾患、静脈移植血管狭窄、吻合周囲プロテーゼ再狭窄、血管形成またはステント留置術後の再狭窄などが含まれる。
【0151】
本発明は、癌を治療または予防するための、本発明による化合物の使用を包含する。特に本発明は、固形腫瘍を治療および/または予防する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関し、固形腫瘍は、特に好ましくは脳腫瘍、尿生殖路の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃腫瘍、咽頭腫瘍、肺腫瘍からなる群から選択される。単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、および乳癌からなる群から選択された固形腫瘍も、好ましくは、本発明による化合物を含む薬剤で治療することができる。
【0152】
本発明による化合物は、癌を治療するために患者に投与することができる。本発明の化合物は、腫瘍血管新生を阻害し、それによって腫瘍の増殖に影響を及ぼす(J.Rak等、Cancer Researh、55:4575〜4580、1995)。本発明による化合物の血管新生阻害特性は、網膜新生血管形成に関連するある種の形態の失明の治療にも適している。
【0153】
したがって、本発明はさらに、血管新生によって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関する。
【0154】
血管新生が関与するそのような疾患は、眼疾患、たとえば網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性などである。
【0155】
しがたがって、本発明はさらに、上述の疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、本発明による化合物の使用に関する。
【0156】
炎症性疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用も本発明の範囲内である。そのような炎症性疾患の例には、関節リウマチ、乾癬、接触皮膚炎、遅延型過敏反応などが含まれる。
【0157】
本発明による化合物はまた、骨肉腫、変形性関節症、および腫瘍性骨軟化症とも称される、くる病などのある種の骨の異常の治療にも適している(Hasegawa等、Skeletal Radiol.28、41〜45頁、1999;Gerber等、Nature Medicine、Vol.5、No.6、623〜628頁、1999年6月)。VEGFは、成熟破骨細胞に発現するKDR/Flk−1によって破骨細胞骨吸収を直接促進するので(FEBS Let.473:161〜164(2000);Endocrinology、141:1667(2000))、本発明の化合物は、骨粗鬆症、およびパジェット病など、骨吸収に関連する状態の治療および予防にも適している。
【0158】
したがって、本発明はさらに、骨肉腫、変形性関節症、およびくる病からなる群から選択された骨の異常を治療する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関する。
【0159】
これらの化合物はまた、脳水腫、組織損傷、および虚血誘発性再潅流障害を低減することによって、発作などの脳虚血事象後に起こる組織損傷を低減または予防するために用いることもできる(Drug News Perspect 11:265〜270(1998);J.Clin.Invest.104:1613〜1620(1999))。
【0160】
本発明による化合物は、Rafキナーゼによって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療および予防する薬剤の調製にも適しており、Rafキナーゼは、A−Raf、B−Raf、およびRaf−1からなる群から選択される。
【0161】
疾患、好ましくは過剰増殖性疾患および非過剰増殖性疾患の群の疾患を治療するための使用が好ましい。これらは癌性疾患または非癌性疾患である。
【0162】
本発明はまた、乾癬、関節炎、炎症、子宮内膜症、瘢痕、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患からなる非癌性疾患の群から選択された疾患を治療する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関する。
【0163】
本発明はさらに、脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病、および急性白血病からなる癌性疾患の群から選択された疾患を治療する薬剤を調製するための、本発明による化合物ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用に関する。
【0164】
本発明による化合物は、治療される状態に対して特に有用であるように選択されるよく知られた他の治療剤と同時に投与してもよい。たとえば、骨疾患の場合、好ましい組み合わせには、たとえばアレンドロネート、およびリセドロネートなどの抗吸収性ビスホスホネート、たとえばαvβ3アンタゴニストなどのインテグリン遮断薬(以下にさらに定義する)、たとえばPrempro(登録商標)、Premarin(登録商標)、およびEndometrion(登録商標)などのホルモン置換療法に用いられる結合型エストロゲン、たとえばラロキシフェン、ドロロキシフェン、CP−336,156(Pfizer)、およびラソフォキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体調整剤(SERM)、カテプシンK阻害剤、ならびにATPプロトンポンプ阻害剤との組み合わせが含まれる。
【0165】
本発明の化合物はまた、知られている抗癌剤との組み合わせにも適している。これらの知られている抗癌剤には、以下のものが含まれる。エストロゲン受容体モジュレータ、アンドロゲン受容体モジュレータ、レチノイド受容体モジュレータ、細胞毒性剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤(prenyl−protein transferase inhibitors)、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、増殖因子阻害剤、および血管新生阻害剤である。本発明の化合物は、放射線療法と同時に投与するのに特に適している。放射線療法と組み合わせたVEGF阻害の相乗効果は、当分野において記載されている(WO00/61186を参照のこと)。
「エストロゲン受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、エストロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレータの例には、これらに限定されるものではないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン、およびSH646が含まれる。
「アンドロゲン受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、アンドロゲンの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレータの例には、フィナステリド、および他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール、および酢酸アビラテロン(abiraterone)が含まれる。
「レチノイド受容体モジュレータ」とは、機序にかかわらず、レチノイドの受容体への結合を妨害または阻害する化合物を指す。そのようなレチノイド受容体モジュレータの例には、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチンアミド、およびN−4−カルボキシフェニルレチンアミドが含まれる。
「細胞毒性剤」とは、主として細胞機能に対する直接作用によって細胞死を引き起こすか、あるいは細胞減数分裂を阻害または妨害する化合物を指し、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレータ、ミクロチューブリン阻害剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤が含まれる。
【0166】
細胞毒性剤の例には、これらに限定されるものではないが、チラパジミン(tirapazimine)、セルテネフ、カケクチン、イホスファミド、タソネルミン、ロニダミン、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール、ラニムスチン、フォテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロフォスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム(dibrospidium chloride)、プミテパ(pumitepa)、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン、イロフルベン、デキシフォスファミド(dexifosfamide)、シス−アミンジクロロ(2−メチルピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド、GPX100、(トランス,トランス,トランス)−ビス−μ−(ヘキサン−1,6−ジアミン)μ−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビスアントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド(pinafide)、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アナマイシン、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド、MEN10755、および4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニルダウノルビシンが含まれる(WO00/50032を参照のこと)。
【0167】
ミクロチューブリン阻害剤の例には、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン(norvincaleukoblastine)、ドセタキソール、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、アウリスタチン(auristatin)、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン(cryptophycin)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、およびBMS188797が含まれる。
【0168】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例は、トポテカン、ヒカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソベンジリデンシャールトルーシン(exobenzylidenechartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン(lurtotecan)、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシエトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a,5aB,8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]フェナンスリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソキノリン−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン、およびジメスナである。
【0169】
「抗増殖剤」には、アンチセンスRNAおよびDNAオリゴヌクレオチド、たとえばG3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231、およびINX3001など、ならびに代謝拮抗剤、たとえばエノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスフェート、フォステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシディン、トロキサシタビン(troxacitabine)、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b]−1,4−チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1、11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、および3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾンなどが含まれる。「抗増殖剤」にはさらに、トラスツズマブなど「血管新生阻害剤」の項に挙げたもの以外の増殖因子に対するモノクローナル抗体、および組換えウイルス媒介遺伝子転移を介して送達され得るp53などの腫瘍抑制遺伝子が含まれる(たとえば、米国特許第6,069,134号を参照のこと)。
【0170】
上記および下記において、すべての温度は℃で示される。以下の実施例において、「通常の後処理」は、必要であれば水を添加し、最終生成物の構成に応じて、必要であればpHを2から10に調整し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、生成物をシリカゲルのクロマトグラフィおよび/または結晶化によって精製することを意味する。シリカゲル上のRf値;溶離液:酢酸エチル/メタノール9:1。
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M+
FAB(高速原子衝撃)(M+H)+
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)+(他に指定のない限り)
実施例1
実施例に記載の本発明による化合物を、以下に記載のアッセイによって試験し、キナーゼ阻害活性を有することを見出した。他のアッセイは文献から知られており、当分野の技術者は容易に実施することができる(たとえば、Dhanabal等、Cancer Res.59:189〜197;Xin等、J.Biol.Chem.274:9116〜9121;Sheu等、Anticancer Res.18:4435〜4441;Ausprunk等、Dev.Biol.38:237〜248;Gimbrone等、J.Natl.Cancer Inst.52:413〜427;Nicosia等、In Vitro 18:538〜549を参照のこと)。
VEGF受容体キナーゼアッセイ
4:1のポリグルタミン酸/チロシン基質(pEY)に、放射性標識リン酸を組み込むことによって、VEGF受容体キナーゼ活性を測定する。そのリン酸化pEY生成物を濾過膜にトラップし、放射性標識リン酸の組み込みを、シンチレーションカウントによって定量する。
VEGF受容体キナーゼ
ヒトKDR(Terman、B.I.等、Oncogene(1991)Vol.6、1677〜1683頁)、およびFlt−1(Shibuya、M.等、Oncogene(1990)Vol.5、519〜524頁)の細胞内チロシンキナーゼドメインを、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)遺伝子融合タンパク質としてクローン化した。これは、KDRキナーゼの細胞質ドメインを、GST遺伝子のカルボキシ末端においてインフレーム融合としてクローニングすることによって行った。可溶性組換えGST−キナーゼドメイン融合タンパク質を、バキュロウイルス発現ベクター(pAcG2T、Pharmingen)を用いて、Spodoptera frugiperda(Sf21)昆虫細胞(Invitrogen)に発現させた。
溶解緩衝液:50mMのトリスpH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.5%のトリトンX−100、10%のグリセロール、それぞれ10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン、ならびに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(いずれもSigma)。
洗浄緩衝液:50mMのトリスpH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.05%のトリトンX−100、10%のグリセロール、それぞれ10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン、ならびに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド。
透析緩衝液:50mMのトリスpH7.4、0.5MのNaCl、5mMのDTT、1mMのEDTA、0.05%のトリトンX−100、50%のグリセロール、それぞれ10mg/mlのロイペプチン、ペプスタチン、およびアプロチニン、ならびに1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド。
10×反応緩衝液:200mMのトリス、pH7.4、1.0MのNaCl、50mMのMnCl2、10mMのDTT、および5mg/mlのウシ血清アルブミン[BSA](Sigma)。
酵素希釈緩衝液:50mMのトリス、pH7.4、0.1MのNaCl、1mMのDTT、10%のグリセロール、100mg/mlのBSA。
10×基質:750μg/mlのポリ(グルタミン酸/チロシン4:1)(Sigma)。
停止溶液:30%のトリクロロ酢酸、0.2Mのピロリン酸ナトリウム(共にFisher)。
洗浄溶液:15%のトリクロロ酢酸、0.2Mのピロリン酸ナトリウム。
フィルタプレート:Millipore#MAFC NOB、GF/Cガラスファイバ96ウェルプレート。
方法A−タンパク質精製
1.Sf21細胞を、5ウイルス粒子/細胞の感染多重度で組換えウイルスによって感染させ、27℃で48時間増殖させる。
2.すべてのステップを4℃で行う。感染細胞を1000×gの遠心分離によって収穫し、1/10容量の溶解緩衝液を用いて4℃で30分間溶解し、その後100.000×gで1時間遠心分離する。次いで、上澄みを、溶解緩衝液で平衡させたグルタチオンSepharoseカラム(Pharmacia)に通し、5容量の同じ緩衝液で洗浄、続いて5容量の洗浄緩衝液で洗浄する。組換えGST−KDRタンパク質を、洗浄緩衝液/10mM還元グルタチオン(Sigma)で溶出し、透析緩衝液で透析する。
方法B−VEGF受容体キナーゼアッセイ
1.50%DMSO中のアッセイに阻害剤またはコントロール5μlを添加する。
2.10×反応緩衝液5μl、25mMのATP/10μCi[33P]ATP(Amersham)5μl、および10×基質5μlを含有する反応混合物35μlを添加する。
3.酵素希釈緩衝液中のKDR(25nM)10μlを添加して、反応を開始する。
4.混合し、室温で15分間インキュベートする。
5.停止溶液50μlを添加して、反応を停止する。
6.4℃で15分間インキュベートする。
7.アリコート90μlをフィルタプレートに移す。
8.吸引し、洗浄溶液で3回洗浄する。
9.シンチレーションカクテル30μlを添加し、プレートを密封して、Wallac Microbetaシンチレーションカウンタでカウントする。
ヒト臍静脈内皮細胞有糸分裂誘発アッセイ
増殖因子に対するマイトジェン応答を媒介するVEGF受容体の発現は、血管内皮細胞に主として限定される。培養中のヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、VEGF処理に応答して増殖し、VEGF刺激に対するKDRキナーゼ阻害剤の効果を定量するためのアッセイ系として用いることができる。記載のアッセイでは、静止状態のHUVEC単層を、ビヒクルまたは試験化合物で処理し、2時間後にVEGFまたは塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を添加する。VEGFまたはbFGFに対するマイトジェン応答を、細胞DNAへの[3H]チミジンの取り込みを測定することによって求める。
HUVEC
初代培養単離物として凍結したHUVECを、Clonetics Corp.から入手する。細胞を内皮増殖培地(EGM、Clonetics)に維持し、継代3〜7でマイトジェンアッセイに用いる。
培養プレート:NUNCLON96ウェルポリスチレン組織培養プレート(NUNC#167008)
アッセイ培地:1g/mlグルコース(低グルコースDMEM、Mediatech)および10%(v/v)ウシ胎児血清(Clonetics)を含有するダルベッコ改変イーグル培地
試験化合物:試験化合物の作業ストック溶液を、100%ジメチルスルホキシド(DMSO)で連続希釈して、所望の最終濃度の400倍濃度とする。1倍濃度の最終希釈液は、細胞への添加の直前にアッセイ培地で作製する。
10×増殖因子:ヒトVEGF165(500ng/ml、R&D Systems)およびbFGF(10ng/ml、R&D Systems)をアッセイ培地溶液で調製する。
10×[3H]チミジン:[メチル−3H]チミジン(20Ci/mmol、Dupont−NEN)を希釈して、低グルコースDMEM倍地中80μCi/mlとする。
細胞洗浄培地:1mg/mlウシ血清アルブミン(Boehringer−Mannheim)を含有するハンクス平衡塩溶液(Mediatech)
細胞溶解溶液:1NのNaOH、2%(w/v)Na2CO3
方法1
EGMに維持したHUVEC単層をトリプシン処理によって収穫し、96ウェルプレートで、ウェル当たり、アッセイ培地100μl当たり細胞4000個の密度で平板培養する。5%CO2を含有する加湿雰囲気中37℃で24時間、細胞増殖を停止する。
方法2
増殖停止培地を、ビヒクル(0.25%[v/v]DMSO]または所望の最終濃度の試験化合物を含有するアッセイ培地100μlと交換する。判定はすべて3重で行う。次いで、37℃/5%CO2で2時間インキュベートして、試験化合物を細胞に取り込ませる。
方法3
2時間の前処理後、アッセイ培地、10×VEGF溶液、または10×bFGF溶液のいずれかをウェル当たり10μl添加することによって、細胞を刺激する。次いで、細胞を37℃/5%CO2でインキュベートする。
方法4
増殖因子の存在下、24時間後に、10×[3H]チミジン(10μl/ウェル)を添加する。
方法5
3H]チミジンを添加して3日後、培地を吸引によって除去し、細胞を細胞洗浄培地で2回洗浄する(400μl/ウェル、次いで200μl/ウェル)。細胞溶解溶液(100μl/ウェル)を添加し、30分間37℃に加温することによって、洗浄した接着細胞を溶解する。細胞溶解産物を、水150μlを含有する7mlガラスシンチレーションバイアルに移す。シンチレーションカクテル(5ml/バイアル)を添加し、細胞関連放射能を液体シンチレーション分光分析法によって求める。
【0171】
これらのアッセイによれば、式Iの化合物はVEGFの阻害剤であり、したがって、たとえば糖尿病性網膜症のような眼疾患の治療、およびたとえば固形腫瘍のような癌の治療などにおいて、血管新生の阻害に適している。本発明の化合物は、培養中のヒト血管内皮細胞のVEGF刺激有糸分裂誘発を阻害し、IC50値は0.01〜5.0μMの間である。これらの化合物はさらに、関連するチロシンキナーゼに対して選択性を示す(たとえば、FGFR1、およびSrcファミリー。SrcキナーゼおよびVEGFRキナーゼの関係に関しては、Eliceiri等、Molecular Cell、Vol.4、915〜924頁、1999年12月を参照のこと)。
【0172】
TIE−2試験は、たとえばWO02/44156に記載の方法と同様に行うことができる。
【0173】
このアッセイは、放射性33P−ATPの存在下、TIE−2キナーゼによる基質ポリ(Glu、Tyr)のリン酸化における試験物質の阻害活性を求めるものである。リン酸化された基質は、インキュベーション時に「フラッシュプレート」マイクロタイタープレートの表面に結合する。反応混合物を除去した後、マイクロタイタープレートを数回洗浄し、続いて表面上の放射性を測定する。測定される物質の阻害効果は、阻害を受けていない酵素反応と比べて低い放射性をもたらす。
実施例2
(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミンの調製
この調製は、以下のスキームと同様に行う。
【0174】
【化9】

【0175】
2−アミノ−4−クロロ−6−ニトロフェノール2gおよびジイミダゾール−1−イル−メタンチオン0.92gを、ジクロロメタン35mlおよびジメチルホルムアミド15mlに溶解し、室温で一晩攪拌する。この溶液を1NのHClで抽出する。MgSO4を用いて有機相を乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発乾固して、1.56gの5−クロロ−7−ニトロ−3H−ベンゾオキサゾール−2−チオンを得る。
【0176】
5−クロロ−7−ニトロ−3H−ベンゾオキサゾール−2−チオン100mgおよび4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニルアミン88mgを、ジメチルホルムアミド3mlに溶解し、110℃で一晩攪拌する。混合物を減圧下で蒸発乾固し、分取HPLCを用いて残渣を精製して、無定形固体物質である40mgの(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミンを得る。保持時間:3.68分、EI−MS(M+H)+399。
【0177】
保持時間の決定方法
カラム:MerckのChromolith SpeedROD、50×4.6mm2
溶離液:A:H2O、0.1%TFA
B:アセトニトリル、0.08%TFA
波長:220nm
勾配:5分、t=0分、A:B=95:5、t=4.4分:A:B=25:75、t=4.5分からt=5.0分:A:B=0:100
流速:3.00ml/分
以下の化合物を同様に得る。
【0178】
【表1】

【0179】
【表2】

【0180】
【表3】

【0181】
【表4】

【0182】
【表5】

【0183】
【表6】

【0184】
【表7】

【0185】
実施例3
薬理試験結果
【0186】
【表8】

【0187】
以下の実施例は薬剤組成物に関する。
実施例4
注射バイアル
本発明による活性成分100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gの再蒸留水3l溶液を、2Nの塩酸を用いてpH6.5に調整し、無菌濾過し、注射バイアルに移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各注射バイアルは、5mgの活性成分を含有する。
実施例5
坐剤
本発明による活性剤20gと大豆レシチン100g、カカオ脂1400gとの混合物を溶解し、鋳型に注入し、冷ます。各坐剤は、20mgの活性成分を含有する。
実施例6
液剤
本発明による活性成分1g、NaH2PO4・2H2O9.38g、Na2HPO4・12H2O28.48g、および塩化ベンザルコニウム0.1gから再蒸留水940ml中の溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lとし、照射により滅菌する。この液剤は、点眼液の形態で用いることができる。
実施例7
軟膏剤
本発明による活性成分500mgを、無菌条件下、ワセリン(Vaseline)99.5gと混合する。
実施例8
錠剤
活性成分1kg、ラクトース4kg、ジャガイモデンプン1.2kg、タルク0.2kg、およびステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を圧縮し、各錠剤が10mgの活性成分を含むように、通常の方法で錠剤を得る。
実施例9
被覆錠剤
錠剤を実施例Eと同様に圧縮し、続いて、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカント、および染料の被覆物を用いて通常の方法で被覆する。
実施例10
カプセル剤
活性成分2kgを、各カプセル剤が20mgの活性成分を含有するように、通常の方法で硬質ゼラチンカプセルに導入する。
実施例11
アンプル
本発明による活性成分1kgの再蒸留水60l溶液を、無菌濾過し、アンプルに移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各アンプルは、10mgの活性成分を含有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
【化1】

式中、
1、R2、R3は、それぞれ互いに独立して、R、Hal、CN、NO2、NHR、NRR、NHCOR、NHSO2R、OR、CO−R、CO−NHR、CF3、OCF3、SCF3、SO3R、SO2R、SO2NR、SR、COOH、またはCOORを示し、
Rは、H、あるいは非置換、またはが一、二、三、または四−R4−置換のA、Ar、Het、(CH2qHet、または(CH2qArを示し、
Aは、1〜14個のC原子を有する非分岐、分岐、または環状アルキルを示し、1または2個のCH2基は、OまたはS原子および/または−CH=CH−基で置換されていてもよく、かつ/またはさらに1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClで置換されていてもよく、
Arは、フェニル、ナフチル、またはビフェニルを示し、それぞれ非置換であるか、あるいはA、Hal、OH、OA、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、NHCOA、SCF3、SO2A、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2、NHSO2A、SO2NH2、SO2NHA、SO2NA2、CHO、またはCOAで一、二、または三置換されており、
Hetは、1から4個のN、O、および/またはS原子を有する単環式または二環式の飽和、不飽和、または芳香族の複素環を示し、これは非置換であっても、あるいはカルボニル酸素、Hal、A、−(CH2b−Ar、−(CH2b−シクロアルキル、OH、OA、NH2、NHA、NA2、NO2、CN、COOH、COOA、CONH2、CONHA、CONA2、NHCOA、NHCONH2、NHSO2A、CHO、COA、SO2NH2、および/またはS(O)gAで一、二、または三置換されていてもよく、
Halは、F、Cl、Br、またはIを示し、
4は、Hal、OH、CN、NO2、CF3、OCF3、SCF3、SO2A、またはOAを示し、
Xは、O、S、SO2NH、またはNHを示し、
【化2】

は、フェニル、あるいは1から4個のN、O、および/またはS原子を有する単環式芳香族複素環を示し、
bは、0、1、2、3、または4を示し、
gは、0、1、または2を示し、
n、m、p、qは、それぞれ互いに独立して、1、2、3、または4を示す、
化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項2】
1が、Hal、NO2、CF3、COOH、COOR、またはHを示す請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項3】
2が、Hを示す請求項1または2に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項4】
3が、H、Hal、またはCO−NHRを示す請求項1から3の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項5】
Yが、フェニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、またはピリミジニルを示す請求項1から4の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項6】
1は、Hal、NO2、CF3、COOH、COOR、またはHを示し、
2は、Hを示し、
3は、H、Hal、CO−NHRを示し、
Yは、フェニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジル、またはピリミジニルを示し、
Xは、O、S、SO2NH、またはNHを示し、
n、pは、互いに独立して、1、2、3、または4を示し、
mは、1を示す、
請求項1に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項7】
下記の群から選択された請求項1に記載の化合物、
a)ベンゾオキサゾール−2−イル−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
b)ベンゾオキサゾール−2−イル−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
c)N−ベンゾオキサゾール−2−イル−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
d)2−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−5−カルボン酸、
e)2−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−6−カルボン酸、
f)2−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−6−カルボン酸、
g)メチル 2−[4−(ピリジン−4−イルアミノ)フェニルアミノ]ベンゾオキサゾール−6−カルボキシレート、
h)(5−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
i)(5−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
j)N−(5−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
k)(6−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
l)(6−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]アミン、
m)N−(6−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
n)(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
o)(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)フェニル]−アミン、
p)N−(5−クロロ−7−ニトロベンゾオキサゾール−2−イル)−N’−ピリジン−4−イルベンゼン−1,4−ジアミン、
q)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルオキシ)フェニル]アミン、
r)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(ピリジン−4−イルスルファニル)−フェニル]アミン、
s)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(4−フルオロフェニルスルファニル)フェニル]アミン、
t)N−[4−(ブロモトリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イルアミノ)フェニル]−4−フルオロベンゼンスルホンアミド、
u)[4−(2−アミノ−6−メチルピリミジン−4−イルオキシ)フェニル]−(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)アミン、
v)N−メチル−4−[4−(ブロモトリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イルアミノ)−フェノキシ]ピリジン−2−カルボキサミド、
w)N−メチル−4−[4−(ブロモトリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イルアミノ)フェニルスルファニル]ピリジン−2−カルボキサミド、
x)(7−ブロモ−5−トリフルオロメチルベンゾオキサゾール−2−イル)−[4−(2,4−ジフルオロフェニルスルファニル)フェニル]アミン、
ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、薬剤として許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項8】
式Iの化合物、ならびに生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体を調製する方法であって、
式中、R1およびnが、請求項1に記載の意味を有する式IIの化合物を、
【化3】

式中、R2、R3、X、Y、m、およびpが、請求項1に記載の意味を有する式IIIの化合物と反応させ、
【化4】

かつ/または式Iの塩基または酸を、その塩の1つに変換することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から7の一項または複数項に記載の少なくとも1種の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるその塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体と、
場合によって賦形剤および/または補助剤と、を含む薬剤。
【請求項10】
請求項1から7の一項または複数項に記載の少なくとも1種の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるその塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体と、
少なくとも1種のさらなる薬剤活性成分と、を含む薬剤。
【請求項11】
(a)有効量の請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるその誘導体、溶媒和物、および立体異性体と、
(b)有効量のさらなる薬剤活性成分と、の別個のパックからなるセット(キット)。
【請求項12】
キナーゼの活性化剤または阻害剤としての、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項13】
チロシンキナーゼおよび/またはRafキナーゼの阻害剤としての、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体。
【請求項14】
疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項15】
キナーゼおよび/またはキナーゼ媒介シグナル伝達によって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項16】
キナーゼが、チロシンキナーゼの群から選択される請求項15に記載の使用。
【請求項17】
チロシンキナーゼが、TIE−2またはVEGFRである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
キナーゼが、Rafキナーゼの群から選択される請求項15に記載の使用。
【請求項19】
Rafキナーゼが、A−Raf、B−Raf、またはRaf−1である請求項18に記載の使用。
【請求項20】
固形腫瘍を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項21】
固形腫瘍が、脳腫瘍、尿生殖路の腫瘍、リンパ系の腫瘍、胃腫瘍、咽頭腫瘍、および肺腫瘍からなる群から選択される請求項20に記載の使用。
【請求項22】
固形腫瘍が、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、膠芽細胞腫、および乳癌からなる群から選択される請求項20に記載の使用。
【請求項23】
血管新生によって発生、媒介、および/または伝播される疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項24】
網膜血管形成、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、および/または炎症性疾患からなる群から選択された疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項25】
骨肉腫、変形性関節症、およびくる病からなる群から選択された骨の異常を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項26】
乾癬、関節リウマチ、接触皮膚炎、遅延型過敏反応、炎症、子宮内膜症、瘢痕、良性前立腺肥大、免疫疾患、自己免疫疾患、および免疫不全疾患からなる群から選択された疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項27】
脳腫瘍、肺癌、扁平上皮癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、結腸直腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科癌、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病、および急性白血病からなる群から選択された疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/またはあらゆる比率のそれらの混合物を含む、生理的に許容されるそれらの塩、誘導体、溶媒和物、および立体異性体の使用。
【請求項28】
疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、
治療上有効量の請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物が、1)エストロゲン受容体モジュレータ、2)アンドロゲン受容体モジュレータ、3)レチノイド受容体モジュレータ、4)細胞毒性剤、5)抗増殖剤、6)プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、10)増殖因子受容体阻害剤、および11)血管新生阻害剤の群の化合物と組み合わせて投与される使用。
【請求項29】
疾患を治療および/または予防する薬剤を調製するための、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物、ならびに/または生理的に許容されるそれらの塩および溶媒和物の使用であって、
治療上有効量の請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物が、放射線療法、ならびに1)エストロゲン受容体モジュレータ、2)アンドロゲン受容体モジュレータ、3)レチノイド受容体モジュレータ、4)細胞毒性剤、5)抗増殖剤、6)プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、7)HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、8)HIVプロテアーゼ阻害剤、9)逆転写酵素阻害剤、10)増殖因子受容体阻害剤、および11)血管新生阻害剤の群の化合物と組み合わせて投与される使用。

【公表番号】特表2007−506687(P2007−506687A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527292(P2006−527292)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009743
【国際公開番号】WO2005/037829
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】