説明

キャットアンドマウス型ロータリエンジン及びエネルギー交換システム

【課題】動的バランスの釣り合い、歯車にかかる荷重による異常摩耗や強度不足による破損の問題を解消し、かつコンパクトでコストのかからないキャットアンドマウス型ロータリエンジン及びそれを用いたエネルギー交換システムを提供する。
【解決手段】流体流入孔及び流体流出孔を設けたハウジング内に設置された第一ディスクロータ及び第二ディスクロータと、第一ロータシャフト及び第二ロータシャフトと、第一ロータシャフト側クランクアームと、第二ロータシャフト側クランクアームと、パワーテイクオフ軸と、パワーテイクオフ軸側第一クランクアーム及びパワーテイクオフ軸側第二クランクアームと、を含み、前記流体流入孔から流入せしめられた流体によって変化することで前記第一ディスクロータ及び第二ディスクロータが回転せしめられ、その回転運動を出力として取り出すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状シリンダー内のピストンに遅速の相対動きを与えて高圧水蒸気のような熱エネルギーを運動エネルギーに変換させるキャットアンドマウス型のロータリエンジン及びそれを用いたエネルギー交換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、円環状シリンダー内のピストンに遅速の相対的動きを与えてエネルギーを生じさせる所謂キャットアンドマウス型のロータリエンジンが知られている(特許文献1)
【0003】
本発明者らは、キャットアンドマウス型ロータリエンジンについてさらに鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−138982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、本発明の目的は、動的バランスの釣り合い、歯車にかかる荷重による異常摩耗や強度不足による破損の問題を解消し、かつコンパクトでコストのかからないキャットアンドマウス型ロータリエンジン及びそれを用いたエネルギー交換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るキャットアンドマウス型ロータリエンジンは、流体流入孔及び流体流出孔を設けたハウジング内に設置され、相対向して互いに回転可能に設けられた第一ディスクロータ及び第二ディスクロータと、
前記第一ディスクロータ及び前記第二ディスクロータは、第一ディスクロータ本体及び第二ディスクロータ本体の外縁部にそれぞれ設けられた第一ピストン部及び第二ピストン部とを備え、
前記第一ディスクロータ本体及び第二ディスクロータ本体の片面中心部にそれぞれ設けられた第一ロータシャフト及び第二ロータシャフトと、
前記第一ピストン部に対して同位相又は180°位相をずらして前記第一ロータシャフトに設けられた第一ロータシャフト側クランクアームと、
前記第二ピストン部に対して同位相又は180°位相をずらして前記第二ロータシャフトに設けられた第二ロータシャフト側クランクアームと、
動力を伝達して回転運動を行うパワーテイクオフ軸と、
前記パワーテイクオフ軸に互いに180°位相をずらして固定されたパワーテイクオフ軸側第一クランクアーム及びパワーテイクオフ軸側第二クランクアームと、を含み、
前記第一ロータシャフト側クランクアームとパワーテイクオフ軸側第一クランクアームとが第一連接棒を介して連結せしめられ、前記第二ロータシャフト側クランクアームとパワーテイクオフ軸側第二クランクアームとが第二連接棒を介して連結せしめられてなり、
前記ハウジングと第一ピストン部及び第二ピストン部との間の空間が、前記流体流入孔から流入せしめられた流体によって変化することで前記第一ディスクロータ及び第二ディスクロータが回転せしめられ、その回転運動を出力として取り出すようにしたことを特徴とする。
【0007】
前記流体としては、例えば高圧ガス、水蒸気、空気などが挙げられるが、高圧流体であればよいものであるから、高圧液体なども使用できる。
【0008】
また、前記第一ディスクロータ本体及び前記第二ディスクロータ本体の当接面に、一方のディスクロータ本体と同心のピストンリングを前記一方のディスクロータ本体に内蔵し、前記ピストンリングを他方のディスクロータ本体に圧接状態で面接触させてなる構成とするのが好ましい。このようにすることで、気密性が向上するという利点がある。
【0009】
さらに、前記第一ピストン部及び第二ピストン部の前後進方向の面に、水平部材と垂直部材を接合部を介して接続してなる上部L型シーリング部材と、水平部材と垂直部材を接合部を介して接続してなる下部L型シーリング部材とを上下方向に相対向して設けてなるロ字状ピストンシーリング部材を設け、
前記上部L型シーリング部材の前記接合部内面に凹溝を形成し上部傾斜面を設け、
前記上部L型シーリング部材の前記水平部材と平行に、一端部に力点としてのウェイト部材を有する上部梃子状バランス部材を設け、前記上部梃子状バランス部材の他端部を作用点として前記上部傾斜面に当接せしめ、前記上部梃子状バランス部材の作用点が前記上部傾斜面に遠心力の反対の力を生じさせ、
前記下部L型シーリング部材の前記接合部内面に隆起斜面を設け、
前記下部L型シーリング部材の前記水平部材と平行に、一端部に力点としてのウェイト部材を有する下部梃子状バランス部材を設け、前記下部梃子状バランス部材の他端部を作用点として前記隆起斜面に当接せしめ、前記下部梃子状バランス部材の作用点が前記隆起斜面に遠心力の反対の力を生じさせてなるように構成するのが好適である。これにより、さらに気密性が向上するという利点がある。
【0010】
さらに、前記第一ピストン部及び前記第二ピストン部のそれぞれの両側部に質量の同じ一対の上部バランスウェイト部材を設け、前記一対の上部バランスウェイト部材と同じ質量である下部バランスウェイト部材を前記第一ピストン部及び前記第二ピストン部の180°反対側に設けてなるように構成するのが好適である。このように構成することで、動的・静的に優れたバランスを図ることができる。
【0011】
また、相対向して互いに回転可能に設けられた第一ディスクロータ及び第二ディスクロータの外側に前記第一ロータシャフト及び前記第二ロータシャフトを軸心として回動可能に設置され、前記流体流入孔及び流体流出孔に対応して開口部が設けられた以外は密閉空間とされた弁ハウジングをさらに有し、前記弁ハウジングを回動せしめることで、前記流体流入孔及び流体流出孔の流量が規制されるように構成するのが好適である。
【0012】
本発明に係るエネルギー交換システムは、前記キャットアンドマウス型ロータリエンジンと、容積型内燃機関と、排気ガス熱交換器と、復水器と、を有するエネルギー交換システムであって、前記容積型内燃機関のシリンダヘッド及びシリンダの高温部に水を溜める受け皿フィンを設け、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器に水を注入し、
オイル分離器を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジンの内部から各部に分散供給してなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るエネルギー交換システムは、前記キャットアンドマウス型ロータリエンジンと、容積型内燃機関と、排気ガス熱交換器と、復水器と、を有するエネルギー交換システムであって、前記容積型内燃機関のシリンダヘッド及びシリンダの高温部に水を溜める受け皿フィンを設け、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力のバランス調整が不能な場合には前記容積型内燃機関からの排気ガスを排気ガス熱交換器を通さずに大気に放出するようにし、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器に水を注入し、
オイル分離器を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジンの内部から各部に分散供給してなるように構成してもよい。
【0014】
このように構成することで、前記容積型内燃機関からの排気ガス→水蒸気→水へとサイクルさせることにより従来は損失としていたエネルギーの再利用が可能となる。すなわち、ガソリンエンジン等の容積型内燃機関と、本発明の外燃式であるキャットアンドマウス型ロータリエンジンを組み合わせることで、排気ガス→水蒸気→水へとサイクルさせることにより従来は損失としていたエネルギーの再利用を可能とするものである。上記したシステムでは、密閉サイクルとなっている。
【0015】
前記容積型内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、天然ガスエンジンなどの容積型内燃機関、レシプロ式エンジンやロータリ式エンジンなどを含む。
【0016】
また、前記エネルギー交換システムにおいて、前記復水器に温度センサーを取り付け、前記復水器が異常温度となり、復水作用が不能となった場合だけ、外部から冷却水を噴射し冷却し、正常温度に戻すようにするのが好ましい。
【0017】
さらに、前記キャットアンドマウス型ロータリエンジンと、容積型内燃機関と、排気ガス熱交換器と、マフラー付き簡易オイルセパレーターと、を有するエネルギー交換システムであって、
前記容積型内燃機関のシリンダヘッド及びシリンダの高温部に水を溜める受け皿フィンを設け、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器に水を注入し、
前記両者の蒸発圧力のバランス調整が不能な場合には前記容積型内燃機関から排気ガスを排気ガス熱交換器を通さずに大気に放出するようにし、
オイル分離器を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジンの内部から各部に分散供給してなり、
前記ロータリエンジンからの排気ガスを排出口から排気し、オイルについては回収、冷却された蒸気についてはオイル分離器で回収されてなるようにするのが好適である。
【0018】
上記したシステムでは、前記ロータリエンジンからの排気ガスを排出口から排気するため、オープンサイクルとなっている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、動的バランスの釣り合い、歯車にかかる荷重による異常摩耗や強度不足による破損の問題を解消し、かつコンパクトでコストのかからないキャットアンドマウス型ロータリエンジン及びそれを用いたエネルギー交換システムを提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンの一つの実施の形態を示す概略斜視図である。
【図2】図1の要部分解図である。
【図3】図1のリンク機構の概念説明図である。
【図4】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンの断面図であって、(a)は(b)のa−a線からみたリンク機構の概略図、(b)は縦断面図、(c)は(b)のc−c線からみたリンク機構の概略図である。
【図5】リンク機構の要部概略図である。
【図6】図4(b)のVI−VI線断面図である。
【図7】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおけるピストン部の遅速の動きを司るメカニズムの説明図である。
【図8】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおけるロ字状ピストンシーリング部材の概略分解斜視図である。
【図9】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおけるロ字状ピストンシーリング部材の概略説明図である。
【図10】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおけるシーリング機構を示す概略説明図である。
【図11】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおけるバランスウェイト部材の配置を示す概略説明図である。
【図12】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおける節量機構を示す概略説明図であって、(a)はキャットアンドマウス型ロータリエンジンの縦断面図、(b)は(a)のb−b線からみた節量機構の概略図である。
【図13】節量機構に用いられる弁ハウジングをよく示す概略説明図である。
【図14】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおける節量機構を用いたピストン部の遅速の動きを司るメカニズムの説明図である。
【図15】節量機能とそれに応じた指圧線図を示すグラフである。
【図16】本発明のエネルギー交換システムの一つの実施の形態を示す概略図である。
【図17】本発明のエネルギー交換システムに用いられるオイル分離器を示す概略図である。
【図18】本発明のエネルギー交換システムに用いられるレシプロエンジンを示す概略図である。
【図19】本発明のエネルギー交換システムの別の実施の形態を示す概略図である。
【図20】本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンにおけるオイル供給機構の一つの実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、図示例は例示的に示されたもので、本発明の技術的思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことは言うまでもない。
【0022】
図1及び図2において符号10は、本発明に係るキャットアンドマウス型ロータリエンジンを示す。
【0023】
キャットアンドマウス型ロータリエンジン10は、図1及び図2によく示される如く、流体流入孔12及び流体流出孔14を設けたハウジング16内に設置され、相対向して互いに回転可能に設けられた第一ディスクロータ18及び第二ディスクロータ20と、前記第一ディスクロータ18及び前記第二ディスクロータ20は、第一ディスクロータ本体22及び第二ディスクロータ本体24の外縁部にそれぞれ設けられた第一ピストン部26及び第二ピストン部28とを備え、前記第一ディスクロータ本体22及び第二ディスクロータ本体24の片面中心部にそれぞれ設けられた第一ロータシャフト30及び第二ロータシャフト32と、前記第一ピストン部26に対して同位相又は180°位相をずらして前記第一ロータシャフト30に設けられた第一ロータシャフト側クランクアーム34と、前記第二ピストン部に対して同位相又は180°位相をずらして前記第二ロータシャフト32に設けられた第二ロータシャフト側クランクアーム36と、動力を伝達して回転運動を行うパワーテイクオフ軸38と、前記パワーテイクオフ軸38に互いに180°位相をずらして固定されたパワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40及びパワーテイクオフ軸側第二クランクアーム42と、前記第一ロータシャフト側クランクアーム34とパワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40とが第一連接棒44を介して連結せしめられ、前記第二ロータシャフト側クランクアーム36とパワーテイクオフ軸側第二クランクアーム42とが第二連接棒46を介して連結せしめられ、てなり、前記ハウジング16と第一ピストン部26及び第二ピストン部28との間の空間が、前記流体流入孔12から流入せしめられた流体によって変化することで前記第一ディスクロータ18及び第二ディスクロータ20が回転せしめられ、その回転運動を出力として取り出すようにされている。なお、図示例では、流体としては高圧ガスとして高圧水蒸気を用いる例を示す。
【0024】
なお、第一ロータシャフト30、第二ロータシャフト32及びパワーテイクオフ軸38にはそれぞれ、軸受け31,33,39,41が取り付けられている。また、第一ロータシャフト30及び第二ロータシャフト32は第一ディスクロータ本体22及び第二ディスクロータ本体24にそれぞれキー部材59によって取り付けられている。なお、第一ロータシャフト30及び第二ロータシャフト32は第一ディスクロータ本体22及び第二ディスクロータ本体24に一体的に設けられる構成でもよい。
【0025】
前記パワーテイクオフ軸38は、定速回転されており、端部にはフライホイール(図示は省略)が取り付けられている。
【0026】
図3に、図1に示した第一ロータシャフト側クランクアーム34、パワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40及び第一連接棒44からなるリンク機構の概念説明図を示す。リンク機構48は、図1のリンク機構の概念説明図である。
【0027】
図3において、線分O1O3は線分O2O4と等しく、線分O1O2は線分O3O4と等しい長さとされている。そして、三角形O1O3O5は三角形O5O2O4と合同とされている。
【0028】
図1に示した第一ロータシャフト側クランクアーム34、パワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40及び第一連接棒44は、図3で示したリンク機構48の線分O1O3、線分O2O4及び線分O3O4に相当する。
【0029】
図4に本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンの断面図を示す。図4(a)は図4(b)のa−a線からみたリンク機構の概略図であり、図4(b)はキャットアンドマウス型ロータリエンジンの縦断面図、図4(c)は図4(b)のc−c線からみたリンク機構の概略図である。
【0030】
図4に示したように、動的バランスをとるために、第一ロータシャフト側クランクアーム34、第二ロータシャフト側クランクアーム36、パワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40及びパワーテイクオフ軸側第二クランクアーム42にそれぞれカウンターウェイト50,52,54,56が設けられている。このようにすれば、リンク機構48の釣り合い重さを釣り合わせることができ、また振動を軽減することができる効果がある。なお、符号58は、キャットアンドマウス型ロータリエンジン10を収容するための外枠である。また、符号100、102、103及び105は、後述するバランスをとるためのウェイト部材である。
【0031】
また、図5及び図6によく示されるように、第一ロータシャフト側クランクアーム34及びパワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40の端部には、それぞれ死点解消のためのギア部49,51がそれぞれ設けられている。ギア部49,51は、それぞれ第一ロータシャフト側クランクアーム34及びパワーテイクオフ軸側第一クランクアーム40の長手方向中心軸に対して、偏心して設けられている。このギア部49,51が互いに噛み合うことにより、図5及び図6に示す死点の位置でも回転運動が続けられることとなる。前記第二ロータシャフト側クランクアーム36とパワーテイクオフ軸側第二クランクアーム42についても同様にギア部49,51が設けられている。
【0032】
本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジン10におけるピストン部26,28の遅速の動きを司るメカニズムの説明図を図7に示す。キャットアンドマウス型ロータリエンジン10の作動状態を図7(a)〜(e)を基に説明する。
【0033】
図7(a)は、流体流入孔12と流体流出孔14はそれぞれ第一ピストン部26,第二ピストン部28によって塞がれている。この状態から矢印の方向に右回転すると、第一ピストン部26と第二ピストン部28との間の狭い空間(図7(a)から図7(b)の間)に高圧流体が流入し続け、第一ピストン部26は第二ピストン部28よりスピードが上がり、図7(c)〜(e)の状態になり、流体流入孔12と流体流出孔14はそれぞれ第二ピストン部28と第一ピストン部26によって塞がれる。よって、図7(a)において、第一ピストン部26,第二ピストン部28が入れ替わった状態となる。そして、この状態から矢印の方向に右回転すると、第一ピストン部26と第二ピストン部28との間の狭い空間に高圧流体が流入し続け、今度は第二ピストン部28が第一ピストン部26よりスピードが上がり、最終的に図7(a)の状態となる。
【0034】
このようにして、第一ピストン部26と第二ピストン部28とが速くなったり、遅くなったりするサイクルを繰り返して、スピードを入れ替えながら、回転運動が行われる。
【0035】
潤滑の問題については、ボールベアリング、プレーンメタルなどを使用することによりキャットアンドマウス型ロータリエンジン10の内部にオイルを供給することで容易に解決を図ることができる。
【0036】
オイルを供給する方法を図20に基づいて説明する。図20によく示すように、ロータリエンジン10の内部にオイルポンプを設け、摺動する各構成部品間(摺動部品間)にオイルを供給することで、摩耗・摩擦を少なくすることが可能となり、特にロータリエンジン10は潤滑の他に気体の気密にはオイルを付着させることが大事であり、そのため図20に示す様に、回転軸の中心部にオイル通路穴312,314を設け、オイルを供給することにより、必要な箇所にオイルが行き渡ることとなる。
【0037】
図10において、符号60はピストンリングである。ピストンリング60は、前記第一ディスクロータ本体22及び前記第二ディスクロータ本体24の当接面に、一方のディスクロータ本体と同心のピストンリングを前記一方のディスクロータ本体に内蔵し、前記ピストンリングを他方のディスクロータ本体に圧接状態で面接触させてなるように構成されている。
【0038】
また、図4に示すように、前記第一ディスクロータ18及び前記第二ディスクロータ20の端部摺動面にもピストンリング62,64が設けられている。
【0039】
図9及び図10において、符号66はロ字状ピストンシーリング部材である。ロ字状ピストンシーリング部材66は、図8によく示されるように、前記第一ピストン部26及び第二ピストン部28の前後進方向の面に、水平部材68と垂直部材70を接合部72を介して接続してなる上部L型シーリング部材74と、水平部材76と垂直部材78を接合部80を介して接続してなる下部L型シーリング部材82とを上下方向に相対向して設けてなる。
【0040】
前記上部L型シーリング部材74の前記接合部72内面には凹溝84を形成し上部傾斜面86が設けられている。また、前記下部L型シーリング部材82の前記接合部80内面には隆起斜面88が設けられている。
【0041】
図9において、符号90は上部梃子状バランス部材、符号92は下部梃子状バランス部材である。
【0042】
前記上部梃子状バランス部材90は、前記上部L型シーリング部材74の前記水平部材68と平行に、一端部に力点としてのウェイト部材W、中央部付近に回動支点S、他端部に作用点Qを有する棒状部材94から構成されている。前記上部梃子状バランス部材90は、一端部にウェイト部材Wが設けられているため、前記第一ディスクロータ18及び前記第二ディスクロータ20の回転により生ずる遠心力によって、前記上部梃子状バランス部材90の他端部にある作用点Qが前記上部傾斜面86に当接せしめられる。すると、前記上部梃子状バランス部材90の作用点Qが前記上部傾斜面86に対して、遠心力の反対の力Fを生じさせる(図9)。なお、図9において、点線で示した矢印は、遠心力の反対の力Fを分解した力である。ウェイト部材Wに作用する遠心力の梃子比率での力の分力が前記上部傾斜面86に直角に作用して傾斜面分のベクトルが生じる。
【0043】
また、前記下部梃子状バランス部材92は、前記下部L型シーリング部材82の前記水平部材76と平行に、一端部に力点としてのウェイト部材W、中央部付近に回動支点S、他端部に作用点Qを有する棒状部材94から構成されている。前記下部梃子状バランス部材92は、一端部にウェイト部材Wが設けられているため、前記第一ディスクロータ18及び前記第二ディスクロータ20の回転により生ずる遠心力によって、前記下部梃子状バランス部材92の他端部にある作用点Qが前記隆起斜面88に当接せしめられる。すると、前記下部梃子状バランス部材92の作用点Qが前記隆起斜面88に対して、遠心力の反対の力Fを生じさせる(図9)。なお、図9において、点線で示した矢印は、遠心力の反対の力Fを分解した力である。ウェイト部材Wに作用する遠心力の梃子比率での力の分力が前記隆起斜面88に直角に作用して斜面分のベクトルが生じる。
【0044】
図10において、図10(a)は図10(c)のa−a線断面図である。第一ピストン部26には、前述したロ字状ピストンシーリング部材66、上部梃子状バランス部材90が設けられている。第二ピストン部28も同様の構成である。
【0045】
図9及び図10(a)の例では、梃子状バランス部材を用いた例を示したが、遠心力の反対の力Fを生じさせる作用を有すればよいものであるから、図10(b)に示すように、スプリング部材96を用いて、前記上部傾斜面86又は前記隆起斜面88に対して遠心力の反対の力Fを生じさせる構成としてもよい。
【0046】
さらに、ピストンリング60,62,64については、図10(d)の要部拡大図である図10(e)及び図10(f)に良く示される如く、前記第一ディスクロータ18及び前記第二ディスクロータ20同士の面接触の方向に付勢させるバネ部材98(図示例では板バネ)を設けるようにするのが好適である。
【0047】
次に、動的・静的バランスをとるための、バランシング機構を図11に基づいて説明する。
【0048】
図11(a)及び図11(b)において、符号Wa,Wb,Wcは、第一ディスクロータにそれぞれ設けられたバランスウェイト部材を概念的に示す説明図である。図11(c)は要部摘示図である。
【0049】
前記第一ピストン部26及び前記第二ピストン部28のそれぞれの両側部に質量の同じ一対の上部バランスウェイト部材Wa,Wbを設け、前記一対の上部バランスウェイト部材Wa,Wbと同じ質量であるバランスウェイト部材Wcを前記第一ピストン部26及び前記第二ピストン部28の180°反対側に設けてなるようにする。
【0050】
より具体的には、バランスウェイト部材Wa,Wb,Wcは、次の関係式(1)〜(3)の全てを満たすように配置するのが、動的・静的バランスをとる観点から最良である。
【0051】
【数1】

【0052】
【数2】

【0053】
【数3】

【0054】
次に、図12〜図15に基づき、本発明のキャットアンドマウス型ロータリエンジンの別の実施の形態を示す。キャットアンドマウス型ロータリエンジン104は、節量機構106が設けられている以外は図4に示したキャットアンドマウス型ロータリエンジン10と同様の構成である。
【0055】
節量機構106は、弁ハウジングとそれを回動せしめる回動機構とからなる。
【0056】
図14(a)〜図14(c)に良く示される如く、キャットアンドマウス型ロータリエンジン104は、相対向して互いに回転可能に設けられた第一ディスクロータ18及び第二ディスクロータ20の外側に前記第一ロータシャフト30及び前記第二ロータシャフト32を軸心として回動可能に設置され、前記流体流入孔12及び流体流出孔14に対応して開口部108,110が設けられた以外は密閉空間とされた弁ハウジング112をさらに有し、前記弁ハウジング112を回動せしめることで、前記流体流入孔12の流量が規制される構成とされている。
【0057】
前記弁ハウジング112を回動せしめる回動機構としては、図12(b)及び図13に示されるように、弁ハウジング112にラック部材118を設け、ピニオンギア114を有するレバー部材116のピニオンギア114を前記ラック部材118に係合せしめ、前記レバー部材116先端に設けられたワイヤー部材115を動かすことで弁ハウジング112が回動自在とされている。このワイヤー部材115は例えば自動車のアクセル等に連結することによって適宜最良の出力選定が可能となる。キャットアンドマウス型ロータリエンジン104におけるピストン部の遅速の動きを司るメカニズムの説明図を図14に示す。
【0058】
図15は、弁ハウジング112による節量機能とそれに応じた指圧線図である。図において、縦軸のPは圧力を示し、Vは容積を示す。図15において、曲線Va,Vb,Vcは、それぞれ図14(a),図14(b),図14(c)に示した第一ピストン部26と第二ピストン部28の間の容積a,b,cの変化を示す。図14(a),図14(b),図14(c)の状態では、図14(a),図14(b),図14(c)の容積a,b,cは図15における曲線Va,Vb,Vcの最初の容積V1,V2,V3であり、圧力は供給蒸気圧P2である。この状態から、図14の例では第一ピストン部26が押されて容積a,b,cが増加すると図15に示すように圧力は減少する。なお、図15において、P1は背圧である。
【0059】
図14(a)の状態では、第二ピストン部28と流体流入孔12が一致してガスの流入がストップした状態であり、図15の指圧線図では曲線Vaに相当する。図14(b)の状態では、第二ピストン部28と流体流入孔12が一致してガスの流入がストップした状態であり、図15の指圧線図では曲線Vb に相当する。図14(c)の状態では、第二ピストン部28と流体流入孔12が一致してガスの流入がストップした状態であり、容積cは最大となっており、出力が最も出る状態で、図15の指圧線図では曲線Vc に相当する。
【0060】
図15の曲線Va,Vb,Vcの終点は、蒸気を流入しきった状態となっている。このようにして、圧力と容積を適宜調節することで、最良の出力選定が可能となる。
【0061】
図16(a)に、本発明のエネルギー交換システムの一つの実施の形態の概略図を示す。図16(a)において、エネルギー交換システム120は、キャットアンドマウス型ロータリエンジン10と、レシプロエンジン212と、排気ガス熱交換器214と、復水器216と、を有するエネルギー交換システムであって、前記レシプロエンジン212のシリンダヘッド232及びシリンダ126の高温部に水を溜める受け皿フィン300を設け、前記レシプロエンジン212と前記排気ガス熱交換器214から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器214に情報により安定的な水供給状態より多く水128を注入し、前記両者の蒸発圧力のバランス調整が不能な場合には前記レシプロエンジン212からの排気ガスを排気ガス熱交換器214を通さずに大気に放出するようにし、オイル分離器200を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジン10の内部から各部に分散供給してなるように構成されている。
【0062】
レシプロエンジン212としては、従来の排気ガス放出エンジンを用いることができる。本明細書では、容積型内燃機関の例としてガソリン式レシプロエンジンであるレシプロエンジン212を用いた。図18にレシプロエンジン212を示す。復水器216としては、公知の熱交換器を復水器として用いることができる。
【0063】
特に外気環境温度が高い場合や蒸気ガスが断熱膨張不足の場合は復水効率が悪化するため、水噴射ノズル装置294が設けられており、蒸気温度や外気温度を検知しその条件に依って復水器216を冷却する。
【0064】
また、前記レシプロエンジン212のシリンダヘッド232及びシリンダ126に温度センサー222を取りつけて、前記温度センサー222の情報により前記シリンダ126の高温部224にノズルから水を噴射して冷却すると同時に発生した水蒸気を利用して作動するように構成されている。
【0065】
また、前記レシプロエンジン212のシリンダヘッド232及びシリンダ126の高温部に水を溜める受け皿フィン300を設けてあり、高温部224に水を噴射しても直ちに下に流れ落ちない様になっている。溜まった水でシリンダヘッド232及びシリンダ126の熱を速やかに水の気化に依って奪う。このように、受け皿フィン300(水受け)を設ける事によって水の過不足を避けうるし、均等な熱伝導が得られる。レシプロエンジン212サイドから発生した水蒸気は排気ガス熱交換器214の水蒸気と一緒になり一定の圧力の基に高圧の水蒸気が得られる。尚、シリンダヘッド232及びシリンダ126は所定の温度以下にする為に圧力を制限する必要が有る場合は調圧弁204で最高圧を調整決定する必要がある。尚、レシプロエンジン212の表面からは、熱放散があるので断熱剤で表面を覆うことでエネルギー効率を高める事が可能になる。
【0066】
エネルギー交換システム120は、レシプロエンジン212の構成部品(図ではシリンダヘッド232及びシリンダ126)の高温部224に温度センサー222をセットし、その情報をコントローラ228に送り水ポンプ230から圧力水を図15に示すように代表個所で示したシリンダ126の高温部224にノズルから噴射することによって噴射冷却させると同時に水蒸気を発生させる。なお、高温部224というのは運転中に高温となる箇所を意味するもので、図示例では代表的な箇所を示した。
【0067】
かかる温度センサー222をシリンダ126に設けるのはオイルの機能を損なわないように、即ちピストンの焼付けの回避のためであり、そして温度センサー222をシリンダヘッド232に設けるのはバルブステムやバルブシートのトラブル回避するためであり、適切な冷却を施すためである。
【0068】
なお、温度センサー222の温度設定にあたって、シリンダの温度が際限無く低温度に、低くするのは考えものであり、シリンダの温度を100℃以上に保ちシリンダ壁に結露を避ける事が大切である。シリンダが冷えている状態では、水噴射を停止状態に保持する為にも、温度センサーは重要な役割を果たす。
【0069】
レシプロエンジン212の排気ポート238から出る排気ガスは、情報を得て進路を変更するためのバルブ298を介して排気ガス熱交換器214の排気ガス取り入れ口240に入り、水蒸気を加熱した後、排気ガス熱交換器214の排気ガス出口242から空中に放出される。
【0070】
図示例ではバルブ298は、温度・圧力センサーを設けてあり、レシプロエンジン212のセンサー226,227と排気ガス熱交換器214のセンサー316,318の情報を受けて、前記レシプロエンジン212と前記排気ガス熱交換器214から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスすることが不可能な場合、排気ガス熱交換器214を通さずに大気に放出するようにされている。これにより、レシプロエンジン212のシリンダヘッド232、シリンダ126の蒸発温度を排気ガス熱交換器214の蒸発温度以下に保持する。
【0071】
一般に、シリンダの温度が上昇しピストンリングに膠着状態が発生するシリンダの温度は250℃〜270℃と言われている。仮に、この温度を250℃とすると、水蒸気の蒸発温度を余裕をみて200℃にするためには、圧力をゲージ圧力で15.5Kg/cm2以下に保つ必要がある。
【0072】
レシプロエンジン212側のシリンダ126とシリンダヘッド232の伝熱量と排気ガス熱交換器214の伝熱量を比較すると排気ガス熱交換器214の方に熱量が多くあるので蒸発が活発になり先の圧力が15.5Kg/cm2以上になるとレシプロエンジン212サイドは、蒸発温度が高くなり、レシプロエンジン212サイドは、所定の温度を超すことになり、危険となるおそれが生じる。したがって、シリンダ126及びシリンダヘッド232の温度を一定以下に抑えるためには、排気ガス熱交換器214に排気ガスを一時的に通さずに大気にバイパスさせて蒸発を制限する必要が生じる。このように、排気ガスを一時的に通さずに大気にバイパスさせることで、シリンダ126とシリンダヘッド232から熱を奪いレシプロエンジン212は熱的に安定することとなる。
【0073】
図16(b)に情報を得て進路を変更するためのバルブ298を示す。バルブ298は、T字型パイプ284内にセンシング情報に応じて進路を変更するための可動弁部材286が設けられている。
【0074】
レシプロエンジン212の蒸発温度と排気ガス熱交換器214の蒸発温度を比較した場合、レシプロエンジン212の壁温とマフラーの壁温を比較するとシリンダヘッドよりマフラーサイドの方が高い。ここで問題は、蒸気の蒸発温度は圧力が決まれば蒸気温度は一義的に決まる。蒸気の消費量(ロータリエンジン10)供給と蒸気の発生量のバランスが崩れ極端に蒸気の消費量が少なくなるとシリンダヘッドの壁温が高くなりピストン・バルブに焼きつき等のトラブルが発生する危険性が生じる。蒸気アキュムレータの容量が大きければ問題無いが実際には無理である。その為、エネルギーロスは若干有るがアキュムレータ260に排気ガス熱交換器214からの蒸気を逃がして圧力を一時的に下げることも可能である。種々の環境条件をセンシングして水ポンプ230から適宜適所に水を供給するようにすればよい。
【0075】
一方、ジャケット124内に溜まった水蒸気は、シリンダ126の上部にある蒸気出口234からバルブ296を介して排気ガス熱交換器214の水蒸気入口236に入る。なお、符号125は、水溜め部で、底に水が溜まる様になっている。この加熱された加熱蒸気は、ロータリエンジン10の流体流入孔12と排気ガス熱交換器214の蒸気出口244をアキュムレータ260を介して連結することにより、排気ガス熱交換器214の蒸気出口244から出て、ロータリエンジン10で運動エネルギーに変換され、図示していない発電機などを回転させる。なお、符号256は、排気ガス熱交換器214のドレイン排出口であり、運転時停止弁206を介して密閉タンク281へと接続されており、さらにオイル分離器200へと接続されている。なお、符号201は安全弁、203は調速弁である。
【0076】
ロータリエンジン10で仕事を成し終えた水蒸気は、流体流出孔14から復水器216の低圧蒸気取り入れ口246に入り、冷却ファン248の冷却風によって冷却され水蒸気は復水し、水滴出口250から出てオイル分離器200に入り再利用される。
【0077】
オイル分離器200は、ロータリエンジン10の蒸気機密箇所且つ部品同士の摺動部に十分なオイルを行き渡らせた後、再利用のため一時的に水と油を分離するために設けられている。蒸気が復水すると同時にオイルも液状化し且つ水と混濁状態になるが、適当な時間経過後、水と油は分離される。この状態から排気ガス熱交換器214に入ると高温のため、水は排気ガス熱交換器214へ送られ、蒸気に変わる。他方オイルはロータリエンジン10に圧送されることになる。
【0078】
オイル分離器200の構成を図17に示す。符号301はフロートであり浮きの作用を果たし、302はフィルター付オイル吸い込み口である。符号303はフロートの支点を表し、311はフレキシブルパイプ、304はフィルター付水吸い込み口、305はオイル・水の補給口、306はオイルの上面、307は水の境界線を表す。符号308はタンクである。309は水ポンプ230に接続され、310は復水器216に接続されている。オイルは、ロータリエンジン10の蒸気機密箇所且つ部品同士行き渡る様にギアポンプ292を経てロータリエンジン10の中心部に入る様に構成されており回転と共にオイルは各個所に行き渡り、一部は蒸気と共にオイル分離器200に戻り、潤滑オイルとして各部から飛散したオイルは戻しパイプ(図示無し)を経てこの部分のオイルもオイル分離器200に戻る。なお、符号254は水を分配するための分配器である。
【0079】
図19(a)に、本発明のエネルギー交換システムの別の実施の形態の概略図を示す。図19(a)において、本発明のエネルギー交換システム122は、キャットアンドマウス型ロータリエンジン10と、レシプロエンジン212と、排気ガス熱交換器214と、マフラー付き簡易オイルセパレーター270と、を有するエネルギー交換システムであって、前記レシプロエンジン212のシリンダヘッド232及びシリンダ126の高温部に水を溜める受け皿フィン300を設け、前記レシプロエンジン212と前記排気ガス熱交換器214から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器214に水を注入し、前記両者の蒸発圧力のバランス調整が不能な場合には前記レシプロエンジン212から排気ガスを排気ガス熱交換器214を通さずに大気に放出するようにし、オイル分離器200を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジン10の内部から各部に分散供給してなり、前記ロータリエンジン10からの排気ガスをマフラー280から排気し、オイルについては回収、冷却された蒸気についてはオイル分離器200で回収されてなるように構成されている。
【0080】
図19(a)に示したシステムのうち、図16(a)に示したシステムの大きな違いは、前記ロータリエンジン10からの排気ガスをマフラー280から排気し、大気に放出している点にある。図19(a)において、同一部材については、同一符号で示してある。
【0081】
符号276は、オイルセパレータであり、円環状とされたパイプ内部にメタルウールを設けてある(図19(a)及び図19(b)参照)。これにより、蒸気ガスを円運動させてオイルを分離することができる。274は冷却フィンである。また、冷却ファン248の冷却風によって排気ガスが冷却される。
【0082】
さらに、内部にオイルを分離するためのメタルウールと272と、排気ガスを大気に放出するためのマフラー280とを有するマフラー付き簡易オイルセパレーター270により、冷却されたかった排気ガスはマフラー280から大気に放出され、冷却された水とオイルはオイル分離器200へと運ばれる。
【0083】
このように構成することで、排気ガス→水蒸気→水へとサイクルさせることにより
従来は損失としていたエネルギーの再利用が可能となる。
【符号の説明】
【0084】
10:キャットアンドマウス型ロータリエンジン、12:流体流入孔、14:流体流出孔、16:ハウジング、18:第一ディスクロータ、20:第二ディスクロータ、22:第一ディスクロータ本体、24:第二ディスクロータ本体、26:第一ピストン部、28:第二ピストン部、30:第一ロータシャフト、31,33,39,41:軸受け、32:第二ロータシャフト、34:第一ロータシャフト側クランクアーム、36:第二ロータシャフト側クランクアーム、38:パワーテイクオフ軸、40:パワーテイクオフ軸側第一クランクアーム、42:パワーテイクオフ軸側第二クランクアーム、44:第一連接棒、46:第二連接棒、48:リンク機構、49,51:ギア部、50,52,54,56:カウンターウェイト、58:外枠、59:キー部材、60,62,64:ピストンリング、66:ロ字状ピストンシーリング部材、68,76:水平部材、70,78:垂直部材、72,80:接合部、74:上部L型シーリング部材、82:下部L型シーリング部材、84:凹溝、86:上部傾斜面、88:隆起斜面、90:上部梃子状バランス部材、92:下部梃子状バランス部材、94:棒状部材、96:スプリング部材、98:バネ部材、100,102,103,105:ウェイト部材、104:キャットアンドマウス型ロータリエンジン、106:節量機構、108,110:開口部、112:弁ハウジング、114:ピニオンギア、115:ワイヤー部材、116: レバー部材、118:ラック部材、120:エネルギー交換システム、122:エネルギー交換システム、124:ジャケット、125:水溜め部、126:シリンダ、128:水、200:オイル分離器、201:安全弁、203:調速弁、204:調圧弁、206:運転時停止弁、212:レシプロエンジン、214:排気ガス熱交換器、216:復水器、222,320:温度センサー、224:高温部、226,227,316,318,322:センサー、228:コントローラ、230:水ポンプ、232:シリンダヘッド、234:蒸気出口、236:水蒸気入口、238:排気ポート、240:排気ガス取り入れ口、242:排気ガス出口、244:蒸気出口、246:低圧蒸気取り入れ口、248:冷却ファン、250:水滴出口、254:分配器、256:ドレイン排出口、260:アキュムレータ、262:水温による切り替え弁、264:流量調整逆止弁、270:マフラー兼簡易オイルセパレーター、276:オイルセパレーター、280:マフラー、281:密閉タンク、284:T字型パイプ、286:可動弁部材、292:ギアポンプ、294:水噴射ノズル装置、296,298:バルブ、300:受け皿フィン、301:フロート、302:フィルター付オイル吸い込み口、303:フロートの支点、304:フィルター付水吸い込み口、305:オイル・水の補給口、306:オイルの上面、307:水の境界線、308:タンク、309,310:接続ポート、311:フレキシブルパイプ、312,314:オイル通路穴、S:回動支点、Q:作用点、W:ウェイト部材、Wa,Wb,Wc:バランスウェイト部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入孔及び流体流出孔を設けたハウジング内に設置され、相対向して互いに回転可能に設けられた第一ディスクロータ及び第二ディスクロータと、
前記第一ディスクロータ及び前記第二ディスクロータは、第一ディスクロータ本体及び第二ディスクロータ本体の外縁部にそれぞれ設けられた第一ピストン部及び第二ピストン部とを備え、
前記第一ディスクロータ本体及び第二ディスクロータ本体の片面中心部にそれぞれ設けられた第一ロータシャフト及び第二ロータシャフトと、
前記第一ピストン部に対して同位相又は180°位相をずらして前記第一ロータシャフトに設けられた第一ロータシャフト側クランクアームと、
前記第二ピストン部に対して同位相又は180°位相をずらして前記第二ロータシャフトに設けられた第二ロータシャフト側クランクアームと、
動力を伝達して回転運動を行うパワーテイクオフ軸と、
前記パワーテイクオフ軸に互いに180°位相をずらして固定されたパワーテイクオフ軸側第一クランクアーム及びパワーテイクオフ軸側第二クランクアームと、を含み、
前記第一ロータシャフト側クランクアームとパワーテイクオフ軸側第一クランクアームとが第一連接棒を介して連結せしめられ、前記第二ロータシャフト側クランクアームとパワーテイクオフ軸側第二クランクアームとが第二連接棒を介して連結せしめられてなり、
前記ハウジングと第一ピストン部及び第二ピストン部との間の空間が、前記流体流入孔から流入せしめられた流体によって変化することで前記第一ディスクロータ及び第二ディスクロータが回転せしめられ、その回転運動を出力として取り出すようにしたことを特徴とするキャットアンドマウス型ロータリエンジン。
【請求項2】
前記第一ディスクロータ本体及び前記第二ディスクロータ本体の当接面に、一方のディスクロータ本体と同心のピストンリングを前記一方のディスクロータ本体に内蔵し、前記ピストンリングを他方のディスクロータ本体に圧接状態で面接触させてなることを特徴とする請求項1記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジン。
【請求項3】
前記第一ピストン部及び第二ピストン部の前後進方向の面に、水平部材と垂直部材を接合部を介して接続してなる上部L型シーリング部材と、水平部材と垂直部材を接合部を介して接続してなる下部L型シーリング部材とを上下方向に相対向して設けてなるロ字状ピストンシーリング部材を設け、
前記上部L型シーリング部材の前記接合部内面に凹溝を形成し上部傾斜面を設け、
前記上部L型シーリング部材の前記水平部材と平行に、一端部に力点としてのウェイト部材を有する上部梃子状バランス部材を設け、前記上部梃子状バランス部材の他端部を作用点として前記上部傾斜面に当接せしめ、前記上部梃子状バランス部材の作用点が前記上部傾斜面に遠心力と反対の力を生じさせ、
前記下部L型シーリング部材の前記接合部内面に隆起斜面を設け、
前記下部L型シーリング部材の前記水平部材と平行に、一端部に力点としてのウェイト部材を有する下部梃子状バランス部材を設け、前記下部梃子状バランス部材の他端部を作用点として前記隆起斜面に当接せしめ、前記下部梃子状バランス部材の作用点が前記隆起斜面に遠心力と反対の力を生じさせてなることを特徴とする請求項1又は2記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジン。
【請求項4】
前記第一ピストン部及び前記第二ピストン部のそれぞれの両側部に質量の同じ一対の上部バランスウェイト部材を設け、前記一対の上部ウェイト部材と同じ質量であるバランスウェイト部材を前記第一ピストン部及び前記第二ピストン部の180°反対側に設けてなることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジン。
【請求項5】
相対向して互いに回転可能に設けられた第一ディスクロータ及び第二ディスクロータの外側に前記第一ロータシャフト及び前記第二ロータシャフトを軸心として回動可能に設置され、前記流体流入孔及び流体流出孔に対応して開口部が設けられた以外は密閉空間とされた弁ハウジングをさらに有し、前記弁ハウジングを回動せしめることで、前記流体流入孔及び流体流出孔の流量が規制されることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジン。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジンと、容積型内燃機関と、排気ガス熱交換器と、復水器と、を有するエネルギー交換システムであって、前記容積型内燃機関のシリンダーヘッド及びシリンダの高温部に水を溜める受け皿フィンを設け、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器に水を注入し、
オイル分離器を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジンの内部から各部に分散供給してなることを特徴とするエネルギー交換システム。
【請求項7】
請求項1〜5いずれか1項記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジンと、容積型内燃機関と、排気ガス熱交換器と、復水器と、を有するエネルギー交換システムであって、前記容積型内燃機関のシリンダーヘッド及びシリンダの高温部に水を溜める受け皿フィンを設け、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力のバランス調整が不能な場合には前記容積型内燃機関からの排気ガスを排気ガス熱交換器を通さずに大気に放出するようにし、
オイル分離器を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジンの内部から各部に分散供給してなることを特徴とするエネルギー交換システム。
【請求項8】
前記エネルギー交換システムにおいて、復水器が異常温度となり、復水作用が不能となった場合だけ、外部から冷却水を噴射し冷却し、正常温度に戻すようにすることを特徴とする請求項6又は7記載のエネルギー交換システム。
【請求項9】
請求項1〜5いずれか1項記載のキャットアンドマウス型ロータリエンジンと、容積型内燃機関と、排気ガス熱交換器と、マフラー付き簡易オイルセパレーターと、を有するエネルギー交換システムであって、
前記容積型内燃機関のシリンダーヘッド及びシリンダの高温部に水を溜める受け皿フィンを設け、
前記容積型内燃機関と前記排気ガス熱交換器から出る蒸気との両者の蒸発圧力をバランスさせるために排気ガス熱交換器に水を注入し、
前記両者の蒸発圧力のバランス調整が不能な場合には前記容積型内燃機関から排気ガスを排気ガス熱交換器を通さずに大気に放出するようにし、
オイル分離器を設け、潤滑オイルを前記ロータリエンジンの内部から各部に分散供給してなり、
前記ロータリエンジンからの排気ガスを排出口から排気し、オイルについては回収、冷却された蒸気についてはオイル分離器で回収されてなるようにしたことを特徴とするエネルギー交換システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−67650(P2012−67650A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212076(P2010−212076)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(591086429)
【出願人】(594024464)
【Fターム(参考)】