説明

キャリア位相同期回路およびキャリア位相同期方法

【課題】 キャリア位相スリップの影響を低減する。
【解決手段】 キャリア位相変動成分を補償する1次ループと、初期位相推定回路と、1次ループの周波数引き込み終了後に、初期推定位相に第1の係数を乗じた値をループフィルタの初期値として設定し、位相検出回路の検出位相と第2の係数の乗算値をループフィルタで積分した結果を加算回路で加算して可変発振回路に入力する制御信号とする2次ループとを備えたキャリア位相同期回路において、初期位相推定回路は、位相検出回路の検出位相を所定の時間間隔で平均する移動平均回路と、移動平均回路から出力される移動平均位相を所定の抽出タイミングでサンプリングする抽出回路と、抽出回路で得られる異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値を所定の制御タイミングで平均化し、初期推定位相として出力する選択制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信全般で使用されるバーストモデムのキャリア再生に用いられるキャリア位相同期回路およびキャリア位相同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来のキャリア位相同期回路の構成例を示す(特許文献1)。図において、受信信号は、可変発振回路59の出力信号と乗算回路51で乗じられ、以下に示す位相同期ループ構成による周波数制御を行って出力される。位相検出回路52は乗算回路51の出力信号を入力し、入力シンボル位相と送信基準シンボル位相の位相差をシンボル位相量として、平均回路53、乗算回路54、乗算回路55にそれぞれ出力する。この回路における位相検出はコスタス演算等で実現できる。平均回路53は、入力するシンボル位相量を平均して雑音を平滑化した結果をスイッチ回路60に出力する。スイッチ回路60は、タイミング制御回路61から出力される制御タイミングT1 で平均回路53の出力をサンプリングし、初期推定位相として乗算回路56および加算回路57に出力する。乗算回路56は、入力する初期推定位相と第1の係数を乗算し、その乗算結果を制御タイミングT1 でループフィルタ58の初期値に設定する。また、乗算回路54は、位相検出回路52で検出されたシンボル位相量と第1の係数を乗算し、その乗算結果を加算回路57に出力する。
【0003】
一方、乗算回路55は、位相検出回路52で検出されたシンボル位相量と第2の係数を乗算し、その乗算結果をループフィルタ58に出力する。ループフィルタ58は、制御タイミングT1 で初期位相が設定された後に積分回路として起動し、乗算回路55の出力を積分する。したがって、ループフィルタ58は、制御タイミングT1 以前はゼロを出力する。加算回路57は、スイッチ回路60から出力される初期推定位相と、乗算回路54の出力と、ループフィルタ58で積分された結果を入力し、それらを加算した結果を可変発振回路59に出力する。可変発振回路59は、入力に応じて正弦波信号を出力する数値制御発振器(NCO:Numerical Controlled Oscillator)である。可変発振回路59から出力される正弦波信号は、乗算回路51で受信信号と乗じられ、受信信号の周波数制御が行われる。
【0004】
一般に、位相検出回路52の検出位相と第1の係数の乗算値で可変発振回路59の出力周波数を制御するループを1次ループという。この1次ループの出力と、位相検出回路52の検出位相と第2の係数の乗算値をループフィルタ58で積分した結果を加算し、その加算値で可変発振回路59の出力周波数を制御するループを2次ループという。
【0005】
このような従来のキャリア位相同期回路において、第1の係数を比較的大きな値に設定することにより、キャリア位相の変動成分を1次ループで高速に除去することが可能となる。しかし、1次ループで除去できるのは受信キャリア位相の変動成分であるため、最終的に位相検出回路52から定常位相オフセットが残留成分として出力される。この定常位相オフセットは理想的には一定値に収束する。したがって、平均回路53で変動成分を除去し、スイッチ回路60において制御タイミングT1 で抽出された値を初期推定位相として加算回路57に供給することにより、瞬間的に位相オフセットを補正できる。さらに、乗算回路56で初期推定位相と第1の係数を乗算し、その乗算結果をループフィルタ58の初期値として設定し、2次ループに切り替える。このように、1次ループの結果を元に2次ループの初期値を設定することにより、周波数引き込み状態はループ切り替え後も維持される。
【0006】
以上示した従来のキャリア位相同期回路の特徴は次のようになる。制御タイミングT1 までに1次ループでキャリア位相変動成分を高速に補償し、制御タイミングT1 で残留する定常位相オフセットを推定する。この推定結果を平均化してスイッチ回路60でサンプリングし、このサンプリング結果を初期推定位相として加算回路57に入力し、1次ループの制御値に加算することにより、瞬間的に定常位相オフセットを補償する。かつ、この瞬間に初期推定位相(定常位相オフセット)と第1の係数の乗算結果を2次ループのループフィルタの初期値に設定し、1次ループからループゲインの小さい2次ループに切り替えることにより、低C/N環境および周波数オフセットが大きい劣悪な環境でも、安定的にキャリア位相変動に追従したキャリア位相同期が可能となる。
【0007】
図6は、従来のキャリア位相同期回路の1次ループにおける位相と周波数の関係を示す。ここでは、簡単のために雑音がなく、送信キャリアに対する受信キャリアの周波数オフセットをΔf、送信キャリアで送信シンボル位相がπ/4となる無変調CRパタンを送信した場合を想定し、定常状態を示す。
【0008】
図6に示すように、受信信号の周波数オフセットΔfを補償するために、定常状態では可変発振回路59にΔfが入力される。したがって、第1の係数をKとすると、位相検出回路52の出力はΔf/Kに収束する。従来構成では、このΔf/Kを平均回路53で平均した値を1次ループにおける初期推定位相としている。雑音がない理想状況における位相検出回路52の出力を図7(a) に示し、その平均の出力である初期推定位相を図7(b) に示す。図に示すように、いずれにおいても受信開始当初の出力はゼロであるが、徐々に変化し、やがてΔf/Kに収束して定常状態となる。理想的にはΔf/Kが初期推定位相として出力され、各回路に供給されることになる。
【特許文献1】特許第2540792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、低C/Nや大きな周波数オフセットが存在する環境ではキャリア位相スリップが発生しやすい。そのため、大きな雑音が付加されたときにキャリアが位相スリップすることを防ぐために、通常は第1の係数Kを小さな値に設定し、位相検出を誤った場合でも誤判定の影響がなくべく小さくなる手法が採用される。
【0010】
しかし、第1の係数Kを小さな値に設定すると、1次ループにおけるキャリア位相変動成分の除去に要する時間を増やすためにプリアンブル長を長くする必要がある。そのため、フレーム効率が低下し、従来回路の特徴であった1次ループによる高速引き込み性能が損なわれる。さらに、第1の係数Kを小さな値に設定すると、受信信号が大きな周波数変動を受けた場合に、受信キャリア位相の変動にキャリア再生回路内のフィードバック制御が追従できず、プリアンブル内で定常位相オフセット状態に至らない場合もある。この場合は、雑音ではなく周波数変動によるキャリア位相スリップが生じるため、やはり位相同期を実現できない。したがって、従来回路の特徴を活かすためには、第1の係数Kをある程度大きな値に設定することが求められる。
【0011】
ところが、第1の係数Kを大きな値にすると、上記のように雑音によるキャリア位相スリップが発生しやすくなる。ここで、キャリア位相スリップが存在する場合の位相検出回路出力を図8(a) に示し、対応する平均回路出力を図8(b) に示す。従来の平均回路53およびスイッチ回路60の構成では、キャリア位相スリップの有無に拘らず制御タイミングT1 における値(図8(b) のz)を初期推定位相とし、その値を2次ループのループフィルタ58や可変発振回路59に供給していた。
【0012】
ここで、キャリア位相スリップが生じると、図8(b) に示すように「z」は本来出力すべきΔf/Kとは大きく異なり、ループフィルタ58や可変発振回路59に誤った値を初期値設定することになる。このような誤った初期値が設定されたキャリア位相同期回路は、推定期間に生じたキャリア位相スリップを十分に回復することなくデータ部の復調を開始することになる。このように、雑音や周波数オフセットでキャリア位相スリップが起こった場合、推定精度が劣化した初期推定位相を用いてループフィルタの初期値設定や瞬時位相補正を行うと、データ部の復調中に再びキャリア位相スリップが生じ、バースト不検出率を高める問題があった。
【0013】
本発明は、受信信号が大きな周波数オフセットを受ける場合や低C/Nのような大きな雑音の影響を受ける環境において、キャリア位相スリップの影響を低減し、バースト同期検出確率を高めるキャリア位相同期回路およびキャリア位相同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の発明は、可変発振回路の出力に応じて受信信号の周波数を制御して出力するとともに、その出力を位相検出回路に入力し、その検出位相に第1の係数を乗じた制御信号で可変発振回路の出力周波数を制御してキャリア位相変動成分を補償する1次ループと、位相検出回路の検出位相を平均化し、その平均値を所定の制御タイミングでサンプリングして初期推定位相として出力する初期位相推定回路と、1次ループの可変発振回路に入力する制御信号と初期推定位相を加算回路で加算して受信信号の定常位相オフセットを補償するとともに、1次ループの周波数引き込み終了後に、初期推定位相に第1の係数を乗じた値をループフィルタの初期値として設定し、位相検出回路の検出位相と第2の係数の乗算値をループフィルタで積分した結果を加算回路で加算して可変発振回路に入力する制御信号とする2次ループとを備えたキャリア位相同期回路において、初期位相推定回路は、位相検出回路の検出位相を所定の時間間隔で平均する移動平均回路と、移動平均回路から出力される移動平均位相を所定の抽出タイミングでサンプリングする抽出回路と、抽出回路で得られる異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値を所定の制御タイミングで平均化し、初期推定位相として出力する選択制御手段とを備える。
【0015】
ここで、初期位相推定回路の選択制御手段は、所定の制御タイミングで、異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値の中央値を選択する構成としてもよい。また、初期位相推定回路の選択制御手段は、異なる抽出タイミングにおける複数Nの移動平均位相サンプリング値の中央値近傍の複数M(M<N)の移動平均位相サンプリング値を選択し、所定の制御タイミングで、複数Mの移動平均位相サンプリング値の平均をとって出力する構成としてもよい。
【0016】
第2の発明は、可変発振回路の出力に応じて受信信号の周波数を制御して出力するとともに、その出力を位相検出回路に入力し、その検出位相に第1の係数を乗じた制御信号で可変発振回路の出力周波数を制御してキャリア位相変動成分を補償する1次ループと、位相検出回路の検出位相を平均化し、その平均値を所定の制御タイミングでサンプリングして初期推定位相として出力する初期位相推定回路と、1次ループの可変発振回路に入力する制御信号と初期推定位相を加算回路で加算して受信信号の定常位相オフセットを補償するとともに、1次ループの周波数引き込み終了後に、初期推定位相に第1の係数を乗じた値をループフィルタの初期値として設定し、位相検出回路の検出位相と第2の係数の乗算値をループフィルタで積分した結果を加算回路で加算して可変発振回路に入力する制御信号とする2次ループとを備え、受信信号のキャリア位相同期をとるキャリア位相同期方法において、初期位相推定回路は、移動平均回路で位相検出回路の検出位相を所定の時間間隔で平均し、抽出回路で移動平均回路から出力される移動平均位相を所定の抽出タイミングでサンプリングし、選択制御手段で、抽出回路で得られる異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値を所定の制御タイミングで平均化し、初期推定位相として出力する。
【0017】
ここで、初期位相推定回路の選択制御手段は、所定の制御タイミングで、異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値の中央値を選択してもよい。また、初期位相推定回路の選択制御手段は、異なる抽出タイミングにおける複数Nの移動平均位相サンプリング値の中央値近傍の複数M(M<N)の移動平均位相サンプリング値を選択し、所定の制御タイミングで、複数Mの移動平均位相サンプリング値の平均をとって出力してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、受信信号が大きな周波数オフセットを受ける場合や低C/Nのような大きな雑音の影響を受ける環境において、初期位相推定回路で検出位相の移動平均およびその平均化処理を行うことにより、1次ループにおけるキャリア位相スリップの影響を回避し、初期位相推定精度を高めることができる。これにより、バースト同期検出確率を高め、通信回線品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明のキャリア位相同期回路の第1の実施形態を示す。図において、受信信号は、可変発振回路22の出力信号と乗算回路11で乗じられ、以下に示す位相同期ループ構成による周波数制御を行って出力される。位相検出回路12は乗算回路11の出力信号を入力し、入力シンボル位相と送信基準シンボル位相の位相差を検出し、移動平均回路13、乗算回路18、乗算回路19にそれぞれ出力する。この回路における位相検出はコスタス演算等で実現できる。
【0020】
移動平均回路13は、位相検出回路12から入力する検出位相を所定の時間間隔で平均し、雑音を平滑化した移動平均位相を抽出回路15に出力する。抽出回路15は、タイミング制御回路14から一定間隔で出力される抽出タイミングで移動平均位相をサンプリングし、各抽出タイミングのサンプリング結果をタイミングをずらして複数系列で出力する。選択回路16は、複数系列の移動平均位相サンプリング値を各抽出タイミングごとに比較し、1つの移動平均位相サンプリング値を選択して出力する。スイッチ回路23は、タイミング制御回路14から出力される制御タイミングT1 で選択回路16の出力をサンプリングし、初期推定位相として乗算回路17および加算回路20に出力する。なお、スイッチ回路23は、制御タイミングT1 以外ではゼロを出力する。乗算回路17は、入力する初期推定位相と第1の係数を乗算し、その乗算結果を制御タイミングT1 でループフィルタ21の初期値に設定する。また、乗算回路18は、位相検出回路12で検出されたシンボル位相量と第1の係数を乗算し、その乗算結果を加算回路20に出力する。
【0021】
一方、乗算回路19は、位相検出回路12で検出されたシンボル位相量と第2の係数を乗算し、その乗算結果をループフィルタ21に出力する。ループフィルタ21は、制御タイミングT1 で初期位相が設定された後に積分回路として起動し、乗算回路17の出力を積分する。したがって、ループフィルタ21は、制御タイミングT1 以前はゼロを出力する。加算回路20は、スイッチ回路23から出力される初期推定位相と、乗算回路18の出力と、ループフィルタ21で積分された結果を入力し、それらを加算した結果を可変発振回路22に出力する。可変発振回路22は、入力に応じて正弦波信号を出力する数値制御発振器(NCO)である。可変発振回路22から出力される正弦波信号は、乗算回路11で受信信号と乗じられ、受信信号の周波数制御が行われる。
【0022】
本発明の特徴とするところは、移動平均回路13、タイミング制御回路14、抽出回路15、選択回路16およびスイッチ回路23で構成される初期位相推定回路において、キャリア位相の初期位相推定を行うところにある。以下、本発明の特徴とする初期位相推定回路の機能について詳細に説明する。
【0023】
ここで、位相検出回路12の出力(制御タイミングT1 の検出位相が初期推定位相)を図2(a) に示し、移動平均回路13の出力を図2(b) に示す。図2(a) に示すように、キャリア位相スリップが初期位相推定値に及ぼす影響は局所的であり、時間が経過するればΔf/Kに漸近することが知られている。抽出回路15は、移動平均回路13から出力される移動平均位相を一定間隔の抽出タイミングでサンプリングし、各抽出タイミングのサンプリング結果をタイミングをずらして複数系列で出力する構成である。抽出回路15から出力される系列数を3とした場合の移動平均位相サンプリング値A,B,Cを図3(a),(b),(c) に示す。なお、移動平均位相サンプリング値の包絡線は図2(b) に示す移動平均回路13の出力波形となるが、キャリア位相スリップの影響が大きい区間は移動平均位相サンプリング値A,B,Cで順次ずれることになる。
【0024】
選択回路16は、ここでは3系列の移動平均位相サンプリング値の1つを抽出タイミングごとに選択して出力するが、例えば3系列の中央値を出力する構成とした場合の選択回路出力を図3(d) に示す。図中太線は、選択される移動平均位相サンプリング値を示す。図2および図3に示すように、移動平均回路13から出力される移動平均位相は抽出タイミングで離散的にサンプリングされ、抽出回路15から平均する時間区間が異なる複数の移動平均位相サンプリング値が出力され、選択回路16で1つの移動平均位相サンプリング値が順次選択される。したがって、スイッチ回路23でサンプリングする制御タイミングT1 では、移動平均位相サンプリング値Bにキャリア位相スリップの影響が現れていても、タイミングのずれた移動平均位相サンプリング値A,Cではその影響は緩和されており、キャリア位相スリップの影響が小さい移動平均位相サンプリング値が選択されることになる。このように、キャリア位相スリップの局所的な影響が小さいほぼ正しい移動平均位相サンプリング値が選択回路16から出力されており、スイッチ回路23に与える制御タイミングT1 で最適な初期位相推定値を出力することができる。
【0025】
なお、図2および図3に示す例は、キャリア位相スリップが制御タイミングT1 の直前で発生した場合であるが、それより早い時間に発生していても同様である。キャリア位相スリップが制御タイミングT1 よりも早い時間に発生した場合には、移動平均回路13の出力を制御タイミングT1 で直接サンプリングして初期位相推定値としてもよいが、本実施形態の構成はキャリア位相スリップの発生タイミングに拘らず、キャリア位相スリップの影響のない初期位相推定値を出力することができる特徴がある。
【0026】
また、本実施形態では、抽出回路15から3系列の移動平均位相サンプリング値を出力し、選択回路16でその中央値を選択する例を示したが、移動平均位相サンプリング値の系列数は任意であり、またその中の1つを選択する基準も中央値に限らず、任意に設定することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図4は、本発明のキャリア位相同期回路の第2の実施形態を示す。本実施形態の特徴は、図1に示す構成における初期位相推定回路であるので、当該回路の構成のみを示す。
【0028】
図において、移動平均回路41は、位相検出回路(図1:12)から入力する検出位相を所定の時間間隔で平均し、雑音を平滑化した移動平均位相を抽出回路42に出力する。抽出回路42は、タイミング制御回路46から一定間隔で出力される抽出タイミングで移動平均位相をサンプリングし、各抽出タイミングのサンプリング結果をタイミングをずらして複数系列で出力する。本実施形態における抽出タイミングの間隔は任意でよいが、ここでは第1の実施形態の抽出タイミングよりも狭い間隔とし、抽出回路42が出力する移動平均位相サンプリング値の系列数をNとする。
【0029】
選択回路43は、N系列の移動平均位相サンプリング値を入力し、その中央値近傍のM系列の移動平均位相サンプリング値を選択して出力する。図4(b),(c) にはN=8、M=3の場合の抽出回路出力および選択回路出力を示す。平均回路44は、選択回路43から出力されるM系列の移動平均位相サンプリング値の平均をとって出力する。スイッチ回路45は、タイミング制御回路46から出力される制御タイミングT1 で平均回路44の出力をサンプリングし、初期推定位相として出力する。なお、スイッチ回路45は、制御タイミングT1 以外ではゼロを出力する。
【0030】
なお、本実施形態で示した抽出回路42の抽出系列数N、選択回路43の選択系列数Mは、それぞれ任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のキャリア位相同期回路の第1の実施形態を示す図。
【図2】第1の実施形態における位相検出回路出力および移動平均回路出力の一例を示す図。
【図3】第1の実施形態における抽出回路出力および選択回路出力の一例を示す図。
【図4】本発明のキャリア位相同期回路の第2の実施形態を示す図。
【図5】従来のキャリア位相同期回路の構成例を示す図。
【図6】従来のキャリア位相同期回路の1次ループにおける位相と周波数の関係を説明する図。
【図7】従来構成における位相検出回路出力および平均回路出力の一例を示す図。
【図8】従来構成におけるキャリア位相スリップ時の出力例を示す図。
【符号の説明】
【0032】
11,17,18,19 乗算回路
12 位相検出回路
13 移動平均回路
14 タイミング制御回路
15 抽出回路
16 選択回路
20 加算回路
21 ループフィルタ
22 可変発振回路
23 スイッチ回路
41 移動平均回路
42 抽出回路
43 選択回路
44 平均回路
45 スイッチ回路
46 タイミング制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変発振回路の出力に応じて受信信号の周波数を制御して出力するとともに、その出力を位相検出回路に入力し、その検出位相に第1の係数を乗じた制御信号で前記可変発振回路の出力周波数を制御してキャリア位相変動成分を補償する1次ループと、
前記位相検出回路の検出位相を平均化し、その平均値を所定の制御タイミングでサンプリングして初期推定位相として出力する初期位相推定回路と、
前記1次ループの前記可変発振回路に入力する制御信号と前記初期推定位相を加算回路で加算して前記受信信号の定常位相オフセットを補償するとともに、前記1次ループの周波数引き込み終了後に、前記初期推定位相に前記第1の係数を乗じた値をループフィルタの初期値として設定し、前記位相検出回路の検出位相と第2の係数の乗算値をループフィルタで積分した結果を前記加算回路で加算して前記可変発振回路に入力する制御信号とする2次ループと
を備えたキャリア位相同期回路において、
前記初期位相推定回路は、
前記位相検出回路の検出位相を所定の時間間隔で平均する移動平均回路と、
前記移動平均回路から出力される移動平均位相を所定の抽出タイミングでサンプリングする抽出回路と、
前記抽出回路で得られる異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値を前記所定の制御タイミングで平均化し、前記初期推定位相として出力する選択制御手段と
を備えたことを特徴とするキャリア位相同期回路。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリア位相同期回路において、
前記初期位相推定回路の選択制御手段は、前記所定の制御タイミングで、前記異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値の中央値を選択する構成であることを特徴とするキャリア位相同期回路。
【請求項3】
請求項1に記載のキャリア位相同期回路において、
前記初期位相推定回路の選択制御手段は、前記異なる抽出タイミングにおける複数Nの移動平均位相サンプリング値の中央値近傍の複数M(M<N)の移動平均位相サンプリング値を選択し、前記所定の制御タイミングで、複数Mの移動平均位相サンプリング値の平均をとって出力する構成であることを特徴とするキャリア位相同期回路。
【請求項4】
可変発振回路の出力に応じて受信信号の周波数を制御して出力するとともに、その出力を位相検出回路に入力し、その検出位相に第1の係数を乗じた制御信号で前記可変発振回路の出力周波数を制御してキャリア位相変動成分を補償する1次ループと、
前記位相検出回路の検出位相を平均化し、その平均値を所定の制御タイミングでサンプリングして初期推定位相として出力する初期位相推定回路と、
前記1次ループの前記可変発振回路に入力する制御信号と前記初期推定位相を加算回路で加算して前記受信信号の定常位相オフセットを補償するとともに、前記1次ループの周波数引き込み終了後に、前記初期推定位相に前記第1の係数を乗じた値をループフィルタの初期値として設定し、前記位相検出回路の検出位相と第2の係数の乗算値をループフィルタで積分した結果を前記加算回路で加算して前記可変発振回路に入力する制御信号とする2次ループとを備え、
前記受信信号のキャリア位相同期をとるキャリア位相同期方法において、
前記初期位相推定回路は、移動平均回路で前記位相検出回路の検出位相を所定の時間間隔で平均し、抽出回路で前記移動平均回路から出力される移動平均位相を所定の抽出タイミングでサンプリングし、選択制御手段で、前記抽出回路で得られる異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値を前記所定の制御タイミングで平均化し、前記初期推定位相として出力する
ことを特徴とするキャリア位相同期方法。
【請求項5】
請求項4に記載のキャリア位相同期方法において、
前記初期位相推定回路の選択制御手段は、前記所定の制御タイミングで、前記異なる抽出タイミングにおける複数の移動平均位相サンプリング値の中央値を選択することを特徴とするキャリア位相同期方法。
【請求項6】
請求項4に記載のキャリア位相同期方法において、
前記初期位相推定回路の選択制御手段は、前記異なる抽出タイミングにおける複数Nの移動平均位相サンプリング値の中央値近傍の複数M(M<N)の移動平均位相サンプリング値を選択し、前記所定の制御タイミングで、複数Mの移動平均位相サンプリング値の平均をとって出力することを特徴とするキャリア位相同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−143012(P2007−143012A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336859(P2005−336859)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】