説明

キャリア物質を用いたインスリン分泌ペプチド薬物結合体

【課題】インスリン分泌ペプチド、非ペプチド性重合体、およびキャリア物質が共有結合によって相互連結されており、生体内持続性および安定性が向上したインスリン分泌ペプチドおよびその利用の提供をする。
【解決手段】インスリン分泌ペプチド(insulinotopic peptide)と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを介して連結され、前記インスリン分泌ペプチドのアミノ末端以外のアミノ酸残基に前記非ペプチド性リンカーが結合した、インスリン分泌ペプチド結合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン分泌ペプチドの持続型剤形のためのインスリン分泌ペプチドに係り、より具体的には、インスリン分泌ペプチド、非ペプチド性重合体、およびキャリア物質が共有結合によって相互連結されて血中半減期が著しく増加し、特定のアミノ酸残基との選択的結合方法及び特定アミノ酸残基の変形によって生体内效力長続き效果をより画期的に増加させた変形されたインスリン分泌ペプチド結合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ペプチドは、安定性が低くて容易に変性し、体内タンパク質加水分解酵素によって分解されてその活性を失い、また、相対的に小さくて腎臓を介して容易に除去されるため、薬理成分としてペプチドを含む医薬品の血中濃度および力価を維持するにはペプチド薬物を患者に頻りに投与する必要がある。ところが、ペプチド薬物は殆ど注射剤として患者に投与され、その結果生理活性ペプチドの血中濃度を維持するために頻繁に注射される。これは患者に大きな苦痛を与える。かかる問題点を克服するために様々な試みが行われてきたが、その一環としては、ペプチド薬物の生体膜透過度を増加させて口腔または鼻腔を介しての吸入によりペプチドの薬物を体内に伝達する試みがあった。しかし、この方法は、注射剤に比べてペプチドの体内伝達効率が著しく低く、よってペプチド薬物の体内活性を所望の条件に維持するところに難しさがある。
【0003】
また、ペプチド薬物の血中安定性を増加させ、血中薬物濃度を長時間高く持続させて薬効を極大化しようとする努力が続けられてきた。このようなペプチド薬物の持続型製剤は、ペプチド薬物の安定性を高めることおよび薬物そのものの力価を十分高く維持しなければならないことが要求される一方、患者に免疫反応を誘発してはならない。
【0004】
また、ペプチドを安定化させ且つタンパク質加水分解酵素による分解を抑制するための方法として、タンパク質加水分解酵素に敏感な特定のアミノ酸配列を変更する試みが行われてきた。例えば、血中グルコース濃度を減少させる作用を行い、第2型糖尿病治療効能を持っているGLP−1(7−37または7−36アミド)の場合、生理活性半減期が4分以下と非常に短いが(非特許文献1)、これはジペプチジルペプチダーゼ(Dipeptidyl peptidase IV、以下「DPP IV」という)によるGLP−1のアミノ酸8番(Ala)と9番(Asp)間の切断によるGLP−1の力価喪失に起因し、よってDPP IVに抵抗性を持つGLP−1類似体に対する様々な研究が行われてきた。例えば、AlaをGlyで置換し(非特許文献2、非特許文献3)或いはLeu、D−Alaで置換することにより(非特許文献4)、DPP IVに対する抵抗性を増加させながら活性を維持する試みがあった。また、GLP−1のN末端アミノ酸HisはGLP−1の活性に非常に重要であると同時に、DPP IVのターゲットである。したがって、特許文献1ではN末端をアルキルまたはアシル基に変形し、Gallwitz等は7番HisをN−メチル化(N−methylation)、α−メチル化(alpha−methylation)させ、或いはHis全体をイミダゾールで置換することにより、DPP IV抵抗性を増加させ且つ生理活性を維持した。
【0005】
このような変形体以外にアメリカドクトカゲ(glia monster)の唾液分泌物から精製されたGLP−1類似体であるエキセンディン−4(特許文献2)は、DPP IVに対する抵抗性と共にGLP−1より高い生理活性を有し、よって体内半減期が2〜4時間とGLP−1に比べて長くなった。ところが、DPP IVの抵抗性を増加させる方法のみでは十分な生理活性の持続時間を期待することができないが、例えば現在市販中のエキセンディン−4(エキセナチド(exenatide))の場合、患者に1日2回注射によって投与されなければならないが、これは依然として患者に大きい負担となっている。
【0006】
このようなインスリン分泌ペプチドの問題点は、ペプチドの大きさが小さくて腎臓から回収されず体外に消失することに起因するところが大きく、よって、腎臓における消失を抑制するために、例えばポリエチレングリコール(PEG)などの高溶解度の高分子物質をペプチドの表面に化学的に付加させる方法が使用されてきた。
【0007】
PEGは、目的ペプチドの特定の部位または様々な部位に非特異的に結合してペプチドの分子量を増加させることにより腎臓による消失を抑制し且つ加水分解を防止する効果があり、特別な副作用も起こさない。例えば、特許文献3では、NPR−Aに結合してcGMPの生産を活性化することにより動脈内の血圧を減少させ、よって鬱血性心不全症(Congestive heart failure)治療剤として用いられるB型ナトリウム配設増加ペプチド(B−type natriuretic peptide、BNP)にPEGを結合して生理活性を持続させることについて記述しており、特許文献4では、エキセンディン−4のリジン残基にPEGを結合させて生体内持続時間を増加させる方法について記述している。ところが、これらの方法はPEG分子量を増加させてペプチド薬物の生体内持続時間を延長することができる一方、分子量が増加するほどペプチド薬物の力価が著しく低くなり、且つペプチドとの反応性が低くなって収率が減少するという問題がある。
【0008】
特許文献5では、組み換え遺伝子技術を用いたGLP−1、エキセンディン−4またはその類似体とヒト血清アルブミンまたは免疫グロブリン断片(Fc)との融合タンパク質について記述しており、特許文献6では、副甲状腺ホルモン(PTH)またはその類似体とFcの融合タンパク質について記述している。これらの方法は、低いPEG化(pegylation)収率問題と非特異性を克服することができる一方、血中半減期増加効果が予想より画期的でなく、場合によっては力価が低いという問題点を持っている。血中半減期増加効果を極大化するために、様々な種類のペプチドリンカーが使用されることもあるが、免疫反応を誘発する可能性がある。また、例えばBNPなど、ジスルフィド結合(disulfide bond)を持っているペプチドを用いる場合、折り畳み異常(misfolding)の確率が高くて適用が難しいという問題点がある。
【0009】
この他に、GLP−1誘導体であるNN2211は、GLP−1のアミノ酸を置換し、アシル側鎖(acyl side chain)を結合させてアルブミンと非共有結合させることにより、体内持続時間を増加させたが、半減期が11〜15時間とエキセンディン−4に比べてあまり増加せず、依然として1日1回注射による投与が必要である(非特許文献5)。また、CJC−1131の場合、GLP−1とアルブミンとが血液内で共有結合するようにマレイミド(Maleimide)反応基が連結されたGLP−1誘導体であって、生体内半減期の増加を目的として開発を試みたが、最近、開発が中断された状態である。後続の物質であるCJC−1134は、組み換えアルブミンと共有結合によって連結されたエキセンディン−4であって、血中半減期が約17時間(Rat)と著しい血中安定性増加効果を示していない(非特許文献6)。
【特許文献1】米国特許第5,545,618号明細書
【特許文献2】米国特許第5,424,686号明細書
【特許文献3】WO2006/076471パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,924,264号明細書
【特許文献5】WO02/46227パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,756,480号明細書
【非特許文献1】Kreymann et al., 1987
【非特許文献2】Deacon et al., 1998
【非特許文献3】Burcelin et al., 1999
【非特許文献4】Xiao et al., 2001
【非特許文献5】Nauck et al., 2004
【非特許文献6】Thibauoleau et al., 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、インスリン分泌ペプチドの血中半減期の増加および生体内活性の維持を同時に極大化することが可能な方法として、キャリア物質、非ペプチド性重合体及びインスリン分泌ペプチドを共有結合によって部位選択的に相互連結させる製造方法を使用し、インスリン分泌ペプチッドの中でエキセンディン−4アミノ末端のアミン基をとり除いた脱アミノ化(deamination,DA)エキセンディ−4のリシン(lysine)残基に非ペプチッド性重合体を結合させたインスリン分泌ペプチッド結合体の生体内效力長続き效果が画期的に増加されることを確認してみた発明を完成した。
【0011】
本発明の目的は、インスリン分泌ペプチドの生体内活性を維持しながら血中半減期を延長させ、著しく優れたインスリン分泌ペプチド持続型製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一様態によれば、インスリン分泌ペプチド、両末端に反応基を持つ非ペプチド性重合体、およびキャリア物質が相互共有結合によって連結されている持続型インスリン分泌ペプチド結合体に関することである。
【0013】
本発明のインスリン分泌ペプチドは、インスリン分泌機能を保有したペプチドであって、膵臓ベータ細胞のインスリンの合成および発現を刺激する。このようなペプチドは、前駆物質(precursors)、誘導体(derivatives)、断片(fragments)、変異体(variants)などを含み、好ましくはGLP(Glucagon like peptide)−1、エキセンディン−3、エキセンディン−4などである。
【0014】
GLP−1は、小腸から分泌されるホルモンであって、一般にインスリンの生合成および分泌を促進し、グルカゴンの分泌を抑制し、細胞内のグルコース吸収を促進する。小腸からグルカゴン前駆体は3つのペプチドに分解されるが、グルカゴン、GLP−1、GLP−2である。ここで、GLP−1はGLP−1(1〜37)を意味し、インスリン分泌機能のない形態であり、GLP−1(7〜37)の形にプロセッシングされて活性型GLP−1(7〜37)になる。GLP−1(7〜37)のアミノ酸配列は下記の通りである。
【0015】
GLP−1(7〜37)
HAEGT FTSDV SSYLE GQAAK EPIAW LVKGR G
GLP−1誘導体は、GLP−1と比較したときに少なくとも80%のアミノ酸配列で相同性を示し、化学的に修飾された形態であってもよく、インスリン分泌機能も少なくとも同等またはそれ以上を示すペプチドを意味する。
【0016】
GLP−1断片は、天然型GLP−1のアミノ末端またはカルボキシ末端に対して一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、追加されたアミノ酸は天然に存在しないアミノ酸(例:D型アミノ酸)も可能である。
【0017】
GLP−1変異体は、天然型GLP−1とアミノ酸配列が少なくとも一つ異なるペプチドであって、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
【0018】
エキセンディン−3とエキセンディン−4は、GLP−1と53%のアミノ酸配列類似性を示す39個のアミノ酸からなるインスリン分泌ペプチドであり、エキセンディン−3とエキセンディン−4のアミノ酸配列は下記の通りである。
【0019】
エキセンディン−3
HSDGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS
エキセンディン−4
HGEGT FTSDL SKQME EEAVR LFIEW LKNGG PSSGA PPPS
エキセンディン誘導体は、エキセンディンと比較したときに少なくとも80%のアミノ酸配列で相同性を示し、化学的に修飾された形態であってもよく、インスリン分泌機能も少なくとも同等またはそれ以上を示すペプチドを意味する。
【0020】
エキセンディン断片は、天然型エキセンディンのアミノ末端またはカルボキシ末端に対して一つまたはそれ以上のアミノ酸が追加または削除された形態を意味し、追加されたアミノ酸は天然に存在しないアミノ酸(例:D型アミノ酸)も可能である。
【0021】
エキセンディン変異体は、天然型エキセンディンとアミノ酸配列が少なくとも一つ異なるペプチドであって、インスリン分泌機能を保有したペプチドを意味する。
【0022】
エキセンディン誘導体,断片,変異体でそれぞれ使われた製造方法は独立的に使われることができるし、組み合わせて使うこともできる。例えばアミノ酸序列が一つ以上違ってアミノ末端のアミノ酸残基に脱アミノ化(deamination)されたインスリン分泌ペプチッドも含まれる。
【0023】
具体的な一様態として、本発明で使用した天然型インスリン分泌ペプチドと変形されたインスリン分泌ペプチドは固相(solid phase)合成法によって合成でき、天然型インスリン分泌ペプチドを含んだ大部分の天然型ペプチドは組み換え方法でも生産可能である。
【0024】
また、本発明で使用されたエキセンディン−4は、様々な部位で非ペプチド性重合体と結合できる。
【0025】
本発明で製造した結合体は、エキセンディン−4の結合部位によって活性差異があり得る。
【0026】
例えば、アミノ末端とカルボキシ末端を含んだアミノ末端以外の部位にそれぞれカップリングしてインビトロ(in vitro)活性の差異を確認することができる。
【0027】
アルデヒド反応基は、低いpHでアミノ末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0の条件ではリジン残基とも共有結合を形成することができる。反応pHを異にしてPEG化(Pegylation)反応を行った後、イオン交換カラムを用いて反応混合物から位置異性体を分離することができる。
【0028】
生体内活性に重要な部位であるアミノ末端以外の位置にカップリングする場合、天然型アミノ酸配列で修飾しようとするアミノ酸残基位置に反応性チオール基を導入して非ペプチド性重合体のマレイミドリンカーを用いて共有結合を形成することができる。
【0029】
生体内活性に重要な部位であるアミノ末端以外の位置にカップリングする場合、天然型アミノ酸配列で修飾しようとするアミノ酸残基位置に反応性のあるアミン基を導入して非ペプチド性重合体のアルデヒドリンカーを用いて共有結合を形成することができる。
【0030】
非ペプチッド性重合体にアルデヒドリンカーを用いると、アミノ末端とリジン残基にあるアミン基と反応し、選択的に反応収率を向上させるために、変形した形態のインスリン分泌ペプチドを使用することができる。例えば、アミノ末端ブロッキング方法、リジン残基置換方法、カルボキシ末端へのアミン基導入方法を用いて反応することが可能なアミン基を所望の位置に一つのみ維持することができ、PEG化およびカップリング収率を向上させることができる。アミノ末端の保護方法はジメチル化(dimethylation)の他にメチル化(methylation)、脱アミノ化(deamination)、アセチル化(acetylation)方法でも可能であり、このようなアルキル化(alkylation)方法に限定されない。
【0031】
したがって、本発明の好適な様態として、本発明のインスリン分泌ペプチド結合体は、インスリン分泌ペプチドのアミノ末端以外のアミン基に特異的に免疫グロブリンFc領域を結合したエキセンディン−4結合体である。
【0032】
具体的な一実施例として、本発明者は、インスリン分泌ペプチドのリジン残基に選択的にカップリングするための方法として、天然型エキセンディン−4にPEGを結合させるときにpH9.0で反応させてリジン残基にPEG化反応を誘導し、他の方法としては、アミノ末端が除去または保護された形態のエキセンディン−4を合成してカップリングする方法を使用した。N末端ヒスチジンのαアミン基を除去して合成し、またはN末端ヒスチジンにメチル基を2つ付けてリンカーPEGのN末端結合を予め防止した。このようなアミノ末端修飾方法はインビトロ(in vitro)活性に全く影響を与えない(表1)。
【0033】
アミノ末端カップリングの場合とは異なり、リジン残基にカップリングされると、インビトロ活性が約6%程度維持されることを確認することができる(表1)。またアミノ末端との結合を遮断する方法の中で脱アミノ化(deamination)方法を使ったDA−エキセンディン結合体が,天然型エキセンディン−4結合体と同等なイン−ビトロ(in vitro)で活性及び血中半減期を見せたが(表1)イン−ビボ(in vivo)效力試験では予測することができなかった越等な持続性效果を見せてくれた(図4)。
【0034】
したがって、本発明で製造したDA−エキセンディン−4−PEG−免疫グロブリンFc結合体は、血中半減期が50時間以上画期的に増加し、活性に影響を与えないリジン残基にカップリングさせて力価減少も最小化させ、アミノ末端のアミン基除去で従来に予測することができなかった向上した生体内活性及び持続性を見せた。結果的に生体内效力維持面で画期的に改善した生体内活性が維持された新規な持続型エキセンディン−4剤形を製造することができる。
【0035】
本発明で使われるインスリン分泌ペプチドはキャリア物質と非ペプチド性重合体で繋がれる。
【0036】
本発明で使用可能なキャリア物質は兔疫グロブリンFc領域、アルブミン(albumin)、トレンスペリン(transferring)及びPEGで構成された群で選択されることができるし、好ましくは兔疫グロブリンFc領域である。
【0037】
免疫グロブリンFc領域は、生体内で代謝される生分解性のポリペプチドであるため、薬物のキャリアとして使用するのに安全である。また、免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンの全体分子に比べて相対的に分子量が少ないから、結合体の製造、精製および収率の面で有利であるうえ、アミノ酸配列が抗体ごとに異なって高い非均質性を示すFab部分が除去されるから、物質の同質性が大きく増加し且つ血中抗原性の誘発可能性も低くなるという効果も期待することができる。
【0038】
本発明において、「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域、重鎖不変領域1(CH1)並びに軽鎖不変領域(CL1)を除いた、重鎖不変領域2(CH2)および重鎖不変領域3(CH3)部分を意味し、重鎖不変領域にヒンジ部分を含むこともある。また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型と実質的に同等またはより向上した効果を持つ限りは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域のみを除き、一部または全体重鎖不変領域1(CH1)および/または軽鎖不変領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。また、CH2および/またはCH3に該当する相当長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。すなわち、本発明の免疫グロブリンFc領域は1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCH4ドメイン、2)CH1ドメインおよびCH2ドメイン、3)CH1ドメインおよびCH3ドメイン、4)CH2ドメインおよびCH3ドメイン、5)1つまたは2つ以上のドメインと免疫グロブリンのヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖不変領域の各ドメインと軽鎖不変領域の二量体であってもよい。
【0039】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然型アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体(mutant)を含む。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列中の少なくとも一つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保全的または保全的置換、またはこれらの組み合わせによって相異なる配列を持つものを意味する。例えば、IgGFcの場合、結合に重要であると知られている214〜238、297〜299、318〜322、または327〜331番のアミノ酸残基が変形のために適当な部位として利用できる。また、二硫化結合を形成することが可能な部位が除去され、または天然型FcからN末端の幾つかのアミノ酸が除去され、または天然型FcのN末端にメチオニン残基が付加されることもできるなど、多様な種類の誘導体が可能である。また、エフェクター機能を無くすために、補体結合部位、例えばClq結合部位が除去されることも可能であり、ADCC部位が除去されることも可能である。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を製造する技術は国際特許公開WO97/34631号、国際特許公開第96/32478号などに開示されている。
【0040】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質およびペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野に公知になっている(H. Neurath, R. L. Hill, The proteins, Academic Press, New York, 1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0041】
場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミル化(amidation)などで修飾されることも可能である。
【0042】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同一の生物学的活性を示すが、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を増大させた誘導体である。
【0043】
また、このようなFc領域は、ヒト、および牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然型から得られることも可能であり、形質転換された動物細胞または微生物から得られた組み換え型またはその誘導体であり得る。ここで、天然型から得る方法は、全体免疫グロブリンをヒトまたは動物の生体から分離した後、タンパク質分解酵素を処理して得ることができる。パパインを処理する場合にはFabおよびFcで切断され、ペプシンを処理する場合にはpF’cおよびF(ab’)2で切断される。これをサイズ排除クロマトグラフィー(size−exclusion chromatography)などを用いてFcまたはpF’cを分離することができる。
【0044】
好ましくはヒト由来のFc領域を微生物から得た組み換え型免疫グロブリンFc領域である。
【0045】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然型糖鎖、天然型に比べて増加した糖鎖、天然型に比べて減少した糖鎖、または糖鎖が除去された形態であり得る。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減または除去には化学的方法、酵素学的方法、および微生物を用いた遺伝工学的方法などの通常の方法が利用できる。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(clq)の結合力が著しく低下し、抗体−依存性細胞毒性または補体−依存性細胞毒性が減少または除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このような点から、薬物のキャリアとしての本来の目的にさらに符合する形態は、脱糖化または非糖化の免疫グロブリンFc領域であるといえる。
【0046】
本発明において、「脱糖化(Deglycosylation)」とは酵素で糖を除去したFc領域をいい、「非糖化(Aglycosylation)」とは原核動物、好ましくは大腸菌で生産して糖化していないFc領域をいう。
【0047】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、または牛、山羊、豚、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であり、好ましくはヒト起源である。また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来またはこれらの組み合わせ(combination)またはこれらの混成(hybrid)によるFc領域である。好ましくはヒトの血液に最も豊富なIgGまたはIgM由来であり、最も好ましくはリガンド結合タンパク質の半減期を向上させるものと公知になっているIgG由来である。
【0048】
一方、本発明において、「組み合わせ(combination)」とは、二量体または多量体を形成するとき、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域を暗号化するポリペプチドが相異なる起源の単鎖ポリペプチドと結合を形成することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgD Fc、およびIgE Fc断片よりなる群から選択された2つ以上の断片から二量体または多量体の製造が可能である。
【0049】
本発明において、「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリンFc領域内に2つ以上の相異なる起源の免疫グロブリンFc断片に該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、様々な形態のハイブリッドが可能である。すなわち、IgG Fc、IgM Fc、IgE Fc、およびIgD FcのCH1、CH2、CH3、およびCH4よりなる群から1個ないし4個のドメインから構成されたドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含むことができる。
【0050】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではこれらの組み合わせまたはこれらの混成化も可能である。好ましくは、IgG2およびIgG4のサブクラスであり、最も好ましくは補体依存的毒性(CDC、Complementdependant cytotoxicity)などのイフェクター機能(effector function)が殆どないIgG4のFc領域である。
【0051】
すなわち、最も好ましい本発明の薬物のキャリア用免疫グロブリンFc領域は、ヒトIgG4由来の非糖化Fc領域である。ヒト由来のFc領域はヒト生体で抗原として作用し、これに対する新規抗体を生成するなどの好ましくない免疫反応を起こし得る非ヒト由来のFc領域に比べて望ましい。
【0052】
本発明において、「非ペプチド性重合体」は、繰り返し単位が2つ以上結合した生体適合性重合体を意味し、前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく、任意の共有結合によって互いに連結される。
【0053】
本発明で使用可能な非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、PLA(polylactic acid)およびPLGA(polylactic−glycolic acid)などの生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択でき、好ましくはポリエチレングリコールである。当該分野に既に知られているこれらの誘導体および当該分野の技術水準で容易に製造することが可能な誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0054】
既存のインフレームフュージョン(inframe fusion)方法で製造された融合タンパク質で使用されたペプチド性リンカーの欠点は、生体内でタンパク質分解酵素によって容易に切断され、キャリアによる活性薬物の血中半減期増加効果が期待ほど得られないことである。ところが、本発明では、タンパク質分解酵素に抵抗性がある重合体を用いてキャリアと類似にペプチドの血中半減期を維持することができる。したがって、本発明において使用可能な非ペプチド性重合体は、前述した役割、すなわち生体内タンパク質分解酵素に抵抗性がある重合体であればいずれでもよい。非ペプチド性重合体は、分子量1〜100kDaの範囲、好ましくは1〜20kDaの範囲であることが好ましい。また、前記キャリア物質と結合する本発明の非ペプチド性重合体は、1種類の重合体だけでなく、相異なる種類の重合体の組み合わせが使用されることも可能である。
【0055】
本発明に用いられる非ペプチド性重合体は、キャリア物質およびタンパク質薬物と結合できる反応基を持つ。
【0056】
前記非ペプチド性重合体の両末端反応基は、反応アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、およびスクシニミド(succinimide)誘導体よりなる群から選ばれることが好ましい。前記において、スクシニミド誘導体としては、スクシニミジルプロピオネート、ヒドロキシスクシニミジル、スクシニミジルカルボキシメチル、またはスクシニミジルカーボネートが利用できる。特に、前記非ペプチド性重合体が両末端に反応アルデヒド基の反応基を持つ場合、非特異的反応を最小化し、非ペプチド性重合体の両末端で生理活性ポリペプチドおよび免疫グロブリンとそれぞれ結合するのに効果的である。アルデヒド結合による還元性アルキル化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものより一層安定的である。アルデヒド反応基は、低いpHでアミノ末端に選択的に反応し、高いpH、例えばpH9.0の条件ではリジン残基と共有結合を形成することができる。
【0057】
前記非ペプチド性重合体の両末端反応基は同一であってもよく、異なってもよい。例えば、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、またはブチルアルデヒド基を持つことができる。両末端にヒドロキシ反応基を持つポリ(エチレングリコール)を非ペプチド性重合体として用いる場合には、公知の化学反応によって前記ヒドロキシ基を前記多様な反応基として活性化し、或いは商業的に入手可能な変形した反応基を持つポリ(エチレングリコール)を用いて本発明のタンパク質結合体を製造することができる。
【0058】
このような本の発明のインスリン分泌ペプチド結合体はインスリン合成及び分泌促進、食欲抑制、体重減少、ベータ細胞(beta−cell)の血中グルコース敏感度の増加、ベータ細胞の増殖の促進、胃排出の遲延、グルカゴン抑制のような既存のインスリン分泌ペプチドの生体内活性が維持されただけでなくインスリン分泌ペプチドの血中半減期及びこれによる上記ペプチドの生体内長続き效果が画期的に増加するようにするので、糖尿、肥満、急性冠症候群(acute coronary syndrome)、多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome)の治療に有用である。
【0059】
また、本発明の別の様態として、本発明は、(1)両末端にアルデヒド、マレイミド、またはスクシニミド誘導体反応基を持つ非ペプチド性重合体を用いてインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に共有結合によって連結する段階と、(2)前記(1)の反応混合物から、アミノ末端以外の位置に非ペプチド性重合体が共有結合したインスリン分泌ペプチドを含む連結体を分離する段階と、(3)分離された連結体の非ペプチド性重合体の他方の末端にキャリア物質を共有結合によって連結し、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれキャリア物質およびインスリン分泌ペプチドに結合したペプチド結合体を生成する段階とを含む、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法を提供する。
【0060】
また、好適な一様態として、本発明は、(1)両末端にアルデヒド反応基を持つ非ペプチド性重合体をエキセンディン−4のリジン残基に共有結合によって連結する段階と、(2)(1)の反応混合物から、リジン残基に非ペプチド性重合体が共有結合したエキセンディン−4を含む連結体を分離する段階と、(3)分離された連結体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結し、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびエキセンディン−4に結合したタンパク質結合体を生成する段階とを含む、製造方法を提供する。さらに好ましくは、(1)の非ペプチド性重合体およびエキセンディン−4のリジン残基はpH9.0以上で連結される。
【0061】
また、本発明の別の様態として、本発明のインスリン分泌ペプチド結合体を含む糖尿病治療用薬学的組成物を提供する。
【0062】
本発明において、「投与」は、いずれの適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記結合体の投与経路は、薬物が目的の組織に到達することができる限りはいずれの一般な経路を介しても投与できる。例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられるが、これに制限されない。ところが、経口投与の場合には、ペプチドは消化がなされるため、経口用組成物は活性薬剤をコートし、或いは胃における分解から保護されるように剤形化することが好ましい。好ましくは、注射剤として投与できる。また、薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
【0063】
本発明の結合体を含んだ薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与の場合には結合剤、滑濁剤、崩解剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与の場合には基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。
【0064】
本発明の薬学的組成物の剤形は、上述したような薬学的に許容される担体と混合して様々に製造できる。例えば、経口投与の場合には錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、サスペンション、シロップ、ウエハースなどの形で製造することができ、注射剤の場合には単位投薬アンプルまたは多数回投薬の形態で製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放型製剤などに剤形化することができる。
【0065】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、または鉱物油などが使用できる。また、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0066】
本発明の薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別および体重、並びに疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類によって決定される。本発明の薬学的組成物は、生体内持続性および力価に優れるので、本発明の薬学的製剤の投与回数および頻度を著しく減少させることができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明のインスリン分泌ペプチドは、ペプチドの生体内活性が比較的高く維持され、血中半減期が著しく増加して様々なペプチド薬物の持続型剤形の開発に有用に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、下記実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0069】
<実施例1:エキセンディン−4のPEG化(pegylation)と位置異性体の分離>
3.4K ButyrALD(2)PEG(2つのブチルアルデヒド基を持っているPEG)をエキセンディン−4(AP、米国)のN−termにPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:15、ペプチド濃度を3mg/mLにして4℃で90分間反応した。この際、反応は100mMのNaOAc pH4.0で還元剤としての20mM SCB(NaCNBH3)を添加して行った。3.4K ButyrALD(2)PEGをエキセンディン−4のLysにPEG化させるために、ペプチドとPEGのモル比を1:30、ペプチド濃度を3mg/mLにして4℃で3時間反応した。この際、反応は10mM Na−ホウ酸塩pH9.0で還元剤としての20mM SCBを添加して行った。各反応液は、SOURCE Q(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)を介して1次的にはモノPEG化ペプチド(Mono−pegylated Peptide)を精製し、SOURCE S(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)を介して異性体を分離した。N−termPEG化ピーク(N−term Pegylated Peak)が最も前側に出るし、その後ろ側には順次2つのLysPEG化ピーク(Lys Pegylated Peak)が出ることが分かった。
【0070】
カラム(Column):SOURCE Q(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→40%、80分B(A:20mMトリスpH8.5、B:A+0.5M NaCl)
カラム(Column):SOURCES(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→100%、45分B(A:20mMクエン酸pH3.0、B:A+0.5M KCl)。
【0071】
<実施例2:エキセンディン−4(N)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の製造>
実施例1の方法を用いて3.4K ButyrALD(2)PEGをエキセンディン−4のN−termと反応させた後、N−term異性体のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングさせた。ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質の濃度を50mg/mLにして4℃で17時間反応した。反応液は、100mM K−P pH6.0であり、還元剤としての20mM SCBを添加した。カップリング反応液は、2つの精製カラムを経て精製される。まず、カップリング反応に参加していない多量の免疫グロブリンFcを除去するために、SOURCE Q(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)を利用した。20mM Tris(pH7.5)で1M NaClを用いて塩グラジエント(Salt gradient)を与えると、相対的に結合力の弱い免疫グロブリンFcがまず溶出され、その後直ちにエキセンディン−4免疫グロブリンFcが溶出される。1次精製によってある程度免疫グロブリンFcが除去されるが、イオン交換カラム(Ion Exchange Column)で免疫グロブリンFcとエキセンディン−4免疫グロブリンFcとの結合力差異が大きくなく、完全には分離されない。したがって、両物質の疎水性(hydrophobicity)を用いて2次精製を行った。SOURCE ISO(HR16mL、アマシャムバイオサイエンス)に20mM Tris(pH7.5)1.5M硫安(Ammonium Sulfate)を用いて、1次精製された試料を結合させた後、段々硫安の濃度を低めながら試料を溶出させる。HICカラムに結合力が弱い免疫グロブリンFcがまず溶出され、結合力の強いエキセンディン−4−免疫グロブリンFc試料が後で溶出される。しかし、これらの疎水性差異が大きくてイオン交換カラム(Ion exchange column)より一層分離し易い。
【0072】
カラム(Column):SOURCE Q(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)
流速:2.0mL/分
勾配:A0→25%、60分B(A:20mMトリスpH7.5、B:A+1M NaCl)
カラム(Column):SOURCE ISO(HR16mL、アマシャムバイオサイエンス)
流速:7.0mL/分
勾配:A100→0%、80分B(A:20mMトリスpH7.5、B:A+1.5M 硫安)。
【0073】
<実施例3:エキセンディン−4(Lys)−免疫グロブリンFc結合体の製造>
実施例1の方法を用いて3.4K ButyrALD(2)PEGをエキセンディン−4のLysと反応させた後、Lys異性体のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングさせた。2つのLys異性体ピークのうち反応が多く進行しN−term異性体と画然に区分される最も後ろ側の異性体ピークを用いてカップリングを行った。ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:8、全体タンパク質の濃度を50mg/mLにして4℃で16時間反応した。反応液は100mM K−P pH6.0であり、還元剤としての20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、SOURCE Q16mLとSOURCE ISO16mLを用いた2段階精製方法は実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度99%を示した(図1)。
【0074】
<実施例4:脱アミノ化エキセンディン−4(Lys)−免疫グロブリンFc結合体の製造>
脱アミン化エキセンディン−4(Anygen Inc.,韓国)を用いて実施例1と同様の方法で3.4K ButyrALD(2)PEGを脱アミン化エキセンディン−4のLysと反応させた後、別途の異性体(isomer)分離過程なしでモノマー(monomer)のみを精製して免疫グロブリンFcとカップリングした。ペプチドと3.4K ButyrALD(2)のモル比を1:30、ペプチド濃度を3mg/mにして常温で3時間反応した。反応液は100mM Na−ホウ酸塩pH9.0であり、還元剤としての20mM SCBを添加した。SOURCE Q(XK16mL、アマシャムバイオサイエンス)を用いてモノ−PEG化ペプチド(Mono−Pegylated Peptide)を精製した。
【0075】
ペプチドと免疫グロブリンFcのモル比を1:15、全体タンパク質の濃度を80mg/mLにして4℃で15時間反応した。反応液は100mM K−P pH6.0であり、還元剤としての20mM SCBを添加した。カップリング反応の後、SOURCE Q16mLとSOURCE ISO16mLを用いた2段階精製方法は実施例2と同様である。HPLC逆相分析の結果、純度96%を示した(図2)。
【0076】
<実施例5:脱アミノ化エキセンディン−4(Lys)−アルブミン(albumin)結合体の製造>
脱アミノ化エキセンディン−4とキャリアとして人間血液由來のアルブミン(緑十字,韓国)を用いて実施例4と同様方法で脱アミノ化エキセンディン−4(Lys)−アルブミン(albumin)結合体を製造した。HPLC逆相分析の結果、純度95%を示した。
【0077】
<実施例6:ジメチル化(dimethylation)エキセンディン−4(Lys)− 免疫グロブリンFc結合体の製造>
ジメチル化(dimethylation)エキセンディン−4(American Peptide Inc.,米国)を用いて実施例4と同様の方法でジメチル化エキセンディン−4(Lys)−免疫グロブリンFc結合体を製造した。HPLC逆相分析の結果、純度96%を示した。
【0078】
<実施例7:GLP−1(N)−免疫グロブリンFc結合体の製造>
GLP−1(American Peptide Inc., 米国)を用いて実施例2と同様の方法でGLP−1−(N)−免疫グロブリンFc結合体を製造した。HPLC逆相分析の結果、純度96%を示した。
【0079】
<実施例8:プロピオンALDリンカーPEGを用いた結合体の製造>
3.4KプロピオンALD(2)PEGを用いて実施例1と同一の方法で3.4K−エキセンディン−4を製造した。その後、実施例3と同一の方法で免疫グロブリンFcとカップリングした。
【0080】
<実施例9:持続型エキセンディン−4インビトロ活性の測定>
エキセンディン−4持続型製剤の効力を測定する方法として、インビトロ細胞の活性を測定する方法を利用した。通常、GLP−1のインビトロ活性の測定方法として用いられる、インスリノーマセルまたはランゲルハンス島を分離してGLP−1処理による細胞内のcAMP増加有無を測定する試験で進行する。
【0081】
本試験で使用されたインビトロ活性測定方法は、RIN−m5F(ATCC.)であり、この細胞はラットインスリノーマ細胞として知られており、GLP−1受容体を持っていて、GLP−1系統のインビトロ活性を測定する方法として用いられている。RIN−m5FにGLP−1、エキセンディン−4および試験物質を濃度別に処理して試験物質による細胞内の信号伝達物質cAMPの発生程度を測定することによりEC50値を測定し、比較する試験で行った。
【0082】
【表1】

【0083】
−DM Exendin−4:ジメチル化(dimethylation)エキセンディン−4
−DA Exendin−4:脱アミノ化エキセ
ンディン−4
−Exendin−4(N)−PEG−Fc:エキセンディン−4のN末端とFc領域がPEGで連結した結合体
−DM Exendin−4:ジメチル化(dimethylation)エキセンディン−4のN末端とFc領域がPEGで連結した結合体
−DA Exendin−4:脱アミノ化エキセンディン−4のリジン残基とFc領域がPEGで連結した結合体
−N.D.:未定(Not determined)
【0084】
【表2】

【0085】
<実施例10:持續型エキセンディン−4のインビヴォ(in vivo)效力試験>
エキセンディン−4の持續型製劑の效力を測定する方法でdb/dbマウスで飼料を制限しない状態で血中グルコース濃度減少效果を測定する方法を利用した(図4)。天然型エキセンディン−4結合体は192時間以後から血中グルコース濃度減少效果が消える一方に、DAエックセンディン−4結合体は1回投与で240時間以上血中グルコース濃度減少效果が維持されることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のインスリン分泌ペプチドは、ペプチドの生体内活性が比較的高く維持され、血中半減期が著しく増加して様々なペプチド薬物の持続型剤形の開発に有用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】天然型エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相カラムで分析した結果である。
【図2】脱アミノ化エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体の純度を逆相カラムで分析した結果である。
【図3】脱アミノ化エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体を12%SDS−PAGEで分析した結果である。
【図4】脱アミノ化エキセンディン−4(Lys)−PEG−免疫グロブリンFc結合体を血中グルコース濃度減少效果を測定した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン分泌ペプチド(insulinotopic peptide)と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを介して連結され、前記インスリン分泌ペプチドのアミノ末端以外のアミノ酸残基に前記非ペプチド性リンカーが結合したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項2】
インスリン分泌ペプチドは、GLP(Glucagon like peptide)−1、エキセンディン−3(Exendin−3)、エキセンディン−4(Exendin−4)またはこれらの誘導体、断片(fragments)、および変異体(variants)を含む群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項3】
誘導体は、天然型のインスリン分泌ペプチドのアミノ末端のアミン基が置換(substitution)、除去(deletion)または修飾(modification)されたインスリン分泌機能を保有するペプチド、これらの断片またはこれらの変異体を含む群から選ばれることを特徴とする、請求項2に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項4】
アミノ末端のアミン基が置換(substitution)、除去(deletion)または修飾(modification)されたエキセンディン−4誘導体と免疫グロブリンFc領域とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを介して連結され、天然型のエキセンディン−4結合体より血糖低下效果及び效果の持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項5】
エキセンディン−4誘導体は、エキセンディン−4のアミノ末端のアミン基が除去された 脱アミノ化(Deamination)エキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項4に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項6】
アミノ末端のアミン基が除去された脱アミノ化(Deamination)エキセンディン−4誘導体とアルブミン(albumin)とが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコールの共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、ポリサッカライド、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、生分解性高分子、脂質重合体、キチン類、ヒアルロン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選ばれる非ペプチド性リンカーを介して連結され、天然型のエキセンディン−4結合体より血糖低下效果及び效果の持続性が向上したことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項7】
非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域とインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に結合したことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項8】
免疫グロブリンFc領域が糖化しないことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項9】
免疫グロブリンFc領域が、CH1、CH2、CH3、およびCH4ドメインよりなる群から1個〜4個選ばれるドメインから構成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項10】
免疫グロブリンFc領域がヒンジ領域をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項11】
免疫グロブリンFc領域がIgG、IgA、IgD、IgEまたはIgM由来のFc領域であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項12】
免疫グロブリンFc領域のそれぞれのドメインが、IgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMよりなる群から選ばれる免疫グロブリンに由来した相異なる起源を持つドメインのハイブリッドであることを特徴とする、請求項11に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項13】
免疫グロブリンFc領域が同一起源のドメインからなる単鎖免疫グロブリンから構成された二量体または多量体(免疫グロブリンFcの組み合わせ)であることを特徴とする、請求項11に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項14】
免疫グロブリンFc領域がIgG4 Fc領域であることを特徴とする、請求項11に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項15】
免疫グロブリンFc領域がヒト非糖化IgG4 Fc領域であることを特徴とする、請求項14に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項16】
非ペプチド性重合体の反応基が、アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、およびスクシニミド誘導体よりなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項17】
スクシニミド誘導体がスクシニミジルプロピオネート、スクシニミジルカルボキシメチル、ヒドロキシスクシニミジル、またはスクシニミジルカーボネートであることを特徴とする、請求項16に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項18】
非ペプチド性重合体が両末端に反応アルデヒド基の反応基を持つことを特徴とする、請求項17に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項19】
非ペプチド性重合体がポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項18に記載のインスリン分泌ペプチド結合体。
【請求項20】
(1)両末端にアルデヒド、マレイミド、またはスクシニミド誘導体反応基を持つ非ペプチド性重合体をインスリン分泌ペプチドのアミン基またはチオール基に共有結合によって連結する段階と、
(2)前記(1)の反応混合物から、アミノ末端以外のアミノ酸残基に非ペプチド性重合体が共有結合したインスリン分泌ペプチドを含む連結体を分離する段階と、
(3)分離された連結体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結し、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドに結合したペプチド結合体を生成する段階とを含むことを特徴とする、インスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項21】
(1)両末端にアルデヒド反応基を持つ非ペプチド性重合体を用いてエキセンディン−4のリジン残基にpH9.0以上で共有結合によって連結する段階と、
(2)(1)の反応混合物から、リジン残基に非ペプチド性重合体が共有結合したエキセンディン−4を含む連結体を分離する段階と、
(3)分離された連結体の非ペプチド性重合体の他方の末端に免疫グロブリンFc領域を共有結合によって連結し、非ペプチド性重合体の両末端がそれぞれ免疫グロブリンFc領域およびインスリン分泌ペプチドに結合したタンパク質結合体を生成する段階とを含むことを特徴とする、エキセンディン−4結合体の製造方法。
【請求項22】
インスリン分泌ペプチドは、脱アミノ化(Deamination)エキセンディン−4誘導体であることを特徴とする、請求項20または請求項21に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項23】
非ペプチド性重合体は、ポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項20または請求項21に記載のインスリン分泌ペプチド結合体の製造方法。
【請求項24】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のタンパク質結合体を含む糖尿病治療用薬学的組成物。
【請求項25】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のタンパク質結合体または請求項24に記載の薬学的組成物を投与する段階を含む糖尿,肥満,急性冠症候群(acute coronary syndrome)、または多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome)の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−169195(P2008−169195A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−226155(P2007−226155)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(507293549)ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】