説明

キャリア組立体

【課題】第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとの取付け強度を確保しつつ、キャリア組立体の小型化を図ることができるキャリア組立体を提供すること。
【解決手段】第2のキャリアプレート8に設けられた連結片23が第1のキャリアプレート7側に折り曲げられて連結片23の突出方向先端部23bが第1のキャリアプレート7の放射方向外端部に電子ビーム溶接によって固着されることにより、ピニオンギヤP1の間に連結片23が介装されるようにして第1のキャリアプレート7と第2のキャリアプレート8が連結されるようにキャリア組立体を構成し、連結片23の第1のキャリアプレート7側の基端部23aに切欠き部28を設け、連結片23の基端部23aとピニオンギヤP1の角部29の間に隙間Sを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア組立体に関し、特に、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートを連結片を介して連結するとともに、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートの間にピニオンギヤを回転自在に支持するようにしたキャリア組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両等の自動車に搭載される自動変速機等に用いられる遊星歯車装置は、複数のピニオンを有するキャリアと、中心部分に位置してピニオンと噛合するサンギヤと、サンギヤの周りを包み込むように配置され、ピニオンと噛合するリングギヤとを備えており、このうちのキャリアは、2枚のキャリアプレートを有しているとともに、一方のキャリアプレートに設けられた連結片を折り曲げ、この連結片の先端を他方のキャリアプレートに固着することにより、ピニオンを回転自在に支持するピニオンシャフトを両側から支持するキャリア組立体を構成している。
【0003】
従来のこの種のキャリアプレートとしては、図6に示すようなものが知られている。図6において、第1のキャリアプレート51は、図示しないエンジンに接続される入力軸52の外周一端部に取付けられており、第1のキャリアプレート51の放射方向内方には円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔51aが形成されている。
【0004】
また、第1のキャリアプレート51には第2のキャリアプレート53が対向しており、この第2のキャリアプレート53の放射方向内方には第1のシャフト孔51aに対向する第2のシャフト孔53aが形成されている。
【0005】
また、第1のシャフト孔51aと第2のシャフト孔53aとの間にピニオンシャフト54が架設されており、このピニオンシャフト54にはピニオンギヤ55が回転自在に支持され、このピニオンギヤ55は、図7に仮想線で示すサンギヤ56に噛合されている。また、図8に示すように、第2のキャリアプレート53の放射方向外端部には連結片57が形成されており、この連結片57は、第2のキャリアプレート53の放射方向外方に突出している。
【0006】
このキャリア組立体にあっては、連結片57を第1のキャリアプレート51側に折り曲げて連結片57の突出方向先端部57bを第2のキャリアプレート53の放射方向外端部に溶接等によって固着することにより、ピニオンギヤ55の間に連結片57が介装されるようにして第1のキャリアプレート51と第2のキャリアプレート53とが連結されて構成される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−139061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来のキャリア組立体にあっては、連結片57を第1のキャリアプレート51側に折り曲げて連結片57の突出方向先端部57bを第1のキャリアプレート51の放射方向外端部に溶接等によって固着するようにしていたため、図9に示すように、連結片57の基端部57aがピニオンギヤ55の角部55aに接触してしまい、キャリア組立体の小型化を図ることができない。
【0008】
すなわち、連結片57が折り曲げられる前の状態、すなわち、図8に示すようにプレスによって打ち抜き成形された第2のキャリアプレート53の展開形状にあっては、第2のキャリアプレート53をプレスで打ち抜き成形する際の金型の強度を確保する必要があることから、連結片57の基端部57aの幅方向の両端部がR形状をしている。
換言すれば、連結片57の基端部57aの幅方向の両端部が直角に近いと金型によって第2のキャリアプレート53を打ち抜いたときに、基端部57aの幅方向の両端部に対応する金型部分が損傷してしまう。
【0009】
したがって、基端部57aの幅方向の両端部がR形状をしているため、連結片57の基端部57aを折り曲げた場合に、図9に示すように、連結片57の基端部57aがピニオンギヤ55の角部55a側に湾曲してしまい、連結片57の基端部57aがピニオンギヤ55の角部55aに接触してしまう。
【0010】
一方、ピニオンギヤ55の角部55aが連結片57の基端部57aに接触しないようにするには、第2のキャリアプレート53を放射方向に拡径することで解決することができるが、これでは、キャリア組立体の小型化を図ることができない。
【0011】
また、ピニオンギヤ55の角部55aが連結片57の基端部57aに接触しないようにするには、連結片57の幅を小さくすればよいが、このようにすれば、連結片57の突出方向先端部57bと第1のキャリアプレート51の溶接面積が小さくなってしまい、連結片57と第1のキャリアプレート51との溶接強度が小さくなって第1のキャリアプレート51と第2のキャリアプレート53との取付け強度が低下してしまう。
【0012】
したがって、従来のキャリア組立体は、第1のキャリアプレート51と第2のキャリアプレート53との取付け強度を確保しつつ、キャリア組立体の小型化を図ることが困難となってしまい、未だ改善の余地がある。
【0013】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとの取付け強度を確保しつつ、キャリア組立体の小型化を図ることができるキャリア組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るキャリア組立体は、上記目的を達成するため、(1)放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔を有する第1のキャリアプレートと、前記第1のキャリアプレートに対向して設けられ、放射方向内方に前記第1のシャフト孔に対向する第2のシャフト孔を有する第2のキャリアプレートと、前記第1のシャフト孔と前記第2のシャフト孔との間に架設されたピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトに対して回転自在に支持され、サンギヤと噛合されるピニオンギヤと、前記第2のキャリアプレートの放射方向外端部から突出し、前記第2のキャリアプレートの円周方向に対して前記第2のシャフト孔の間に設けられた複数の連結片とを備え、前記連結片が前記第1のキャリアプレート側に折り曲げられて前記連結片の突出方向先端部が前記第1のキャリアプレートの放射方向外端部に固着されることにより、前記ピニオンギヤの間に前記連結片が介装されるようにして前記第1のキャリアプレートと前記第2のキャリアプレートとが連結されるキャリア組立体において、前記連結片の前記第2のキャリアプレート側の基端部に逃げ部を設け、前記連結片の基端部と前記ピニオンギヤの第2のキャリアプレート側の角部との間に隙間を形成するものから構成されている。
【0015】
この構成により、連結片の第2のキャリアプレート側の基端部に逃げ部を設け、連結片の基端部とピニオンギヤの第2のキャリアプレート側の角部との間に隙間を形成したので、ピニオンギヤの角部が連結片の基端部に接触するのを防止することができる。
【0016】
このため、連結片の幅を十分に確保して基端部の突出方向先端部と第1のキャリアプレートの固着面積を十分に確保することができ、第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとの取付け強度を確保することができる。これに加えて、第2のキャリアプレートを放射方向に拡径する必要がないため、キャリア組立体の小型化を図ることができる。
【0017】
上記(1)に記載のキャリア組立体において、(2)前記逃げ部が、前記連結片の前記第2のキャリアプレート側の基端部に形成された切欠き部から構成されている。
この構成により、連結片の基端部に簡単な加工を施すことにより、連結片の基端部とピニオンギヤの角部の間に隙間を形成することができる。
【0018】
上記(1)または(2)に記載のキャリア組立体において、(3)前記連結片の突出方向先端部が、溶接によって前記第1のキャリアプレートの放射方向外端部に固着されるものから構成されている。
【0019】
この構成により、連結片の幅を大きくした場合でも、溶接によって連結片の突出方向先端部を第1のキャリアプレートに簡単に固着することができるため、キャリア組立体の組立作業の作業性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとの取付け強度を確保しつつ、キャリア組立体の小型化を図ることができるキャリア組立体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るキャリア組立体の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1〜図5は、本発明に係るキャリア組立体の一実施の形態を示す図であり、本発明のキャリア組立体をハイブリッド車両に適用した例を示している。
【0022】
まず、構成を説明する。
図1において、ハイブリッド車両は、2モータスプリットタイプのハイブリッド車両として構成されており、駆動力を出力することができる図示しない内燃エンジン(E/G)と、エンジンに接続されたドライブユニット1と、ドライブユニット1に図示しないディファレンシャル装置を介して接続された図示しない駆動車輪(後輪)とを備えて構成される。
【0023】
第1駆動手段1aは、例えばダンパ装置2等を介してエンジンに接続された動力分配用プラネタリギヤ(遊星歯車装置)3と、動力分配用プラネタリギヤ3に接続された第1モータMG1とを備えており、動力分配用プラネタリギヤ3および伝達軸4を介して出力軸5に接続されている。
また、第2駆動手段1bは、第2モータMG2と、第2モータMG2と出力軸5との間に介在される有段変速機6とを備えており、第2モータMG2は、有段変速機6を介して出力軸5に接続されている。
【0024】
キャリアCR1は、第1のキャリアプレート7および第2のキャリアプレート8によって回転自在に支持されているピニオンギヤP1を有しており、ピニオンギヤP1に噛合するサンギヤS1には第1モータMG1のロータシャフト9が接続されている。また、ピニオンギヤP1にはリングギヤR1が噛合しており、リングギヤR1には中空円板状の支持部材10が接続され、支持部材10を介して伝達軸4に接続されている。
【0025】
また、伝達軸4の後端側(X2方向)には、プラネタリギヤユニット6aを有する有段変速機6が接続されている。詳細には、伝達軸4と接続している出力軸5にハブ部材11を介してプラネタリギヤユニット6aのキャリアCR2が接続されている。
【0026】
キャリアCR2は、側板CR2a、CR2bにより回転自在に支持されているロングピニオンギヤP2、P4と、ショートピニオンギヤP3とを備えており、ロングピニオンギヤは、小径部分のピニオンギヤP2と大径部分のピニオンギヤP4とが一体的に形成されて、小径部分のピニオンギヤP2にショートピニオンギヤP3が噛合している。
【0027】
ショートピニオンギヤP3にはサンギヤS2が噛合しており、サンギヤS2は第2モータMG2のロータシャフト13が接続されている。また、ピニオンギヤP4にはサンギヤS3が噛合しており、サンギヤS3にはハブ部材21が接続されている。
【0028】
ハブ部材21には多板式ブレーキである第1ブレーキB1の摩擦板がスプライン嵌合しており、第1ブレーキB1に、油圧サーボ14の油圧を作用させることによりサンギヤS3を係止自在となっている。
【0029】
また、ショートピニオンギヤP3にはリングギヤR2が噛合しており、リングギヤR2には、多板式ブレーキである第2ブレーキB2の摩擦板がスプライン嵌合しており、第2ブレーキB2に、油圧サーボ15の油圧を作用させることによりリングギヤR2を係止自在となっている。
【0030】
そして、伝達軸4は、出力軸5に接続されており、出力軸5は、図示しないカップリングやプロペラシャフト等を介してディファレンシャル装置に連結され、さらにディファレンシャル装置から左右駆動軸を介して駆動車輪(後輪)に接続されている。
【0031】
一方、ドライブユニット1は、エンジンに連動して駆動する機械式のオイルポンプ装置12と、このオイルポンプ装置12から供給される油圧を受けて有段変速機6や第2モータMG2に、潤滑油、冷却油や油圧サーボ14、15の油圧を供給する油圧制御装置16とを備えている。
【0032】
オイルポンプ装置12は、動力分配用プラネタリギヤ3の下側に配設されており、入力軸17に連動して駆動されている。オイルポンプ装置12は、オイルポンプ装置12を駆動する駆動軸12aと、駆動軸12a上に配設された入力ギヤ12bと、オイルポンプ本体12cとを備えている。そして、入力ギヤ12bは環状ギヤ18に噛合しており、オイルポンプ装置12は、入力軸17に連動して駆動するようになっている。
【0033】
ここで、ハイブリッド車両の動力伝達を図1に沿って説明する。図1に示すように、エンジンから駆動力としてエンジントルクが出力されると、クランク軸19、ダンパ装置2、入力軸17、フランジ部20を介して動力分配用プラネタリギヤ3のキャリアCR1に入力される。
【0034】
一方、第1モータMG1により回生(発電)を行うように第1モータMG1のトルクを制御すると、エンジントルクの一部分が第1モータMG1に分配されるとともに、第1モータMG1のトルクがロータシャフト9、サンギヤS1を介して反力として伝達される。
【0035】
このとき、サンギヤS1の反力を受けてリングギヤR1が回転するとともにエンジントルクの残り部分が分配され、すなわち、第1駆動手段1aから出力される駆動力が伝達軸4に出力される。
【0036】
一方、有段変速機6は油圧制御装置16より第1ブレーキB1の油圧サーボ14や第2ブレーキB2の油圧サーボ15に油圧が供給されると、これら第1ブレーキB1または第2ブレーキB2が係止されて変速される。
【0037】
すなわち、第1ブレーキB1が係合し、かつ第2ブレーキB2が解放した状態にあっては、第1ブレーキB1によりサンギヤS3の回転が固定される。このとき、回転が固定されたサンギヤS3と、第2モータMG2の回転数により回転するサンギヤS2とにより、有段変速機6はキャリアCR2が高速回転する高速段(Hi)の状態となる。
【0038】
また、第2ブレーキB2が係合し、かつ第1ブレーキB1が解放した状態にあっては、第2ブレーキB2によりリングギヤR2の回転が固定される。このとき、回転が固定されたリングギヤR2と、第2モータMG2の回転数により回転するサンギヤS2の回転とにより、有段変速機6はキャリアCR2が低速回転する低速段(Lo)の状態となる。
なお、有段変速機6は、第1および第2ブレーキB1、B2の双方が解放した状態にあっては、サンギヤS3およびリングギヤR2の双方が空転状態となり、サンギヤS2の回転、すなわち、第2モータMG2の回転とキャリアCR2の回転とが互いに伝達されないニュートラル状態となる。
【0039】
また、第2モータMG2よりトルクが出力されると、第2モータMG2のトルクがロータシャフト13を介してサンギヤS2に伝達される。この際、有段変速機6が低速段(Lo)に切り換わっていれば比較的大きなトルクとなり、また、有段変速機6が高速段(Hi)に切り換わっていれば比較的小さなトルクとなって、キャリアCR2に出力される。すなわち、第2駆動手段1bから出力される駆動力が出力軸5に出力される。
【0040】
そして、第1駆動手段1aからのトルクと、第2駆動手段1bからのトルクとが、ドライブユニット1の出力軸5により合計された形の合計出力トルク(駆動車輪に出力される駆動力)として出力され、図示しないカップリングやプロペラシャフト等を介してディファレンシャル装置に出力され、さらにディファレンシャル装置から左右駆動軸を介して駆動車輪(後輪)に出力される。
【0041】
次に、動力分配用プラネタリギヤ3の構成を説明する。
上述したように動力分配用プラネタリギヤ3は、入力軸17に接続されているキャリアCR1と、第1モータMG1に接続されているサンギヤS1と、伝達軸4に接続されているリングギヤR1とを備えている。
【0042】
サンギヤS1は、中空軸状に形成された外歯の歯車で、その中空部分を貫通している入力軸17に回転自在に支持されている。また、サンギヤS1は、ピニオンギヤP1と噛合しており、第1モータMG1のロータシャフト9とはスプライン嵌合している。
【0043】
ピニオンギヤP1はリングギヤR1に噛合しており、リングギヤR1は、中空軸状に形成された内歯の歯車であり、ドラム状の支持部材10に接続され、支持部材10を介して伝達軸4に接続されている。
【0044】
キャリア組立体を構成するキャリアCR1は、図2に示すように、入力軸17の外周一端部に設けられたフランジ部20に取付けられ、放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔7aを有する円板状の第1のキャリアプレート7と、第1のキャリアプレート7に対向し、放射方向内方に第1のシャフト孔7aに対向する第2のシャフト孔8aを有する円板状の第2のキャリアプレート8と、第1のシャフト孔7aおよび第2のシャフト孔8aとの間に架設されたピニオンシャフトPSと、ピニオンシャフトPSに回転自在に支持されたピニオンギヤP1とを備えており、ピニオンギヤP1にはサンギヤS1およびリングギヤR1がそれぞれ噛合されている。
【0045】
また、図3、図4に示すように、第2のキャリアプレート8の放射方向外端部には4つの連結片23が形成されており、この連結片23は、第2のキャリアプレート8の放射方向外方に突出している。本実施の形態では、第1のキャリアプレート7、第2のキャリアプレート8、ピニオンシャフトPS、ピニオンギヤP1および連結片23がキャリア組立体を構成している。
【0046】
また、ピニオンギヤP1は軸受27を介してピニオンシャフトPSに回転自在に支持されており、ピニオンシャフトPSには軸受27に連通する油路26a、26bが形成されている。
【0047】
この油路26a、26bには入力軸17の軸線方向に形成された油路25aおよび油路25aに連通するとともに入力軸17の放射方向に形成された油路25bを介して潤滑油が供給されるようになっており、軸受27はこの潤滑油によって潤滑されるようになっている。
【0048】
なお、図1のキャリア組立体は、図3のC−C方向矢視断面図で示す部分を示しており、図2のキャリア組立体は、図3のD−D方向矢視断面図で示す部分を示している。また、図4(a)は、金型によって打ち抜き成形された第1のキャリアプレート7の正面図を示し、図4(b)は、金型によって打ち抜き成形された第2のキャリアプレート8の正面図を示すものである。
【0049】
このキャリア組立体にあっては、連結片23を第1のキャリアプレート7側に折り曲げて連結片23の突出方向先端部23bを第1のキャリアプレート51の放射方向外端部に電子ビーム溶接等によって固着することにより、ピニオンギヤP1の間に連結片23が介装されるようにして第1のキャリアプレート7と第2のキャリアプレート8とを連結して構成される。なお、図3において、電子ビーム溶接された部分を溶接部24で示す。
【0050】
また、連結片23の第2のキャリアプレート8側の基端部23aには、逃げ部としての切欠き部28が形成されており、この切欠き部28は、第2のキャリアプレート8の円周方向に切り込まれている。このため、図5に示すように、連結片23の基端部23aとピニオンギヤP1の第2のキャリアプレート8側の角部29との間に隙間Sが形成されている。
【0051】
以上のように構成されたキャリア組立体にあっては、第2のキャリアプレート8に設けられた連結片23が第1のキャリアプレート7側に折り曲げられて連結片23の突出方向先端部23bが第1のキャリアプレート7の放射方向外端部に電子ビーム溶接によって固着されることにより、ピニオンギヤP1の間に連結片23が介装されるようにして第1のキャリアプレート7と第2のキャリアプレート8とが連結されるようにキャリア組立体を構成し、連結片23の第1のキャリアプレート7側の基端部23aに切欠き部28を設け、連結片23の基端部23aとピニオンギヤP1の角部29との間に隙間Sを形成したので、ピニオンギヤP1の角部29が連結片23の基端部23aに接触するのを防止することができる。
【0052】
このため、連結片23の幅を十分に確保して連結片23の突出方向先端部23bと第1のキャリアプレート7の固着面積を十分に確保することができ、第1のキャリアプレート7と第2のキャリアプレート8との取付け強度を確保することができる。これに加えて、第2のキャリアプレート8を放射方向に拡径する必要がないため、キャリア組立体の小型化を図ることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、逃げ部を、連結片23の第1のキャリアプレート7側の基端部23aに形成された切欠き部28から構成したので、連結片23の基端部23aに簡単な加工を施すことにより、連結片23の基端部23aとピニオンギヤP1の角部29との間に隙間Sを形成することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、連結片23の突出方向先端部23bを、電子ビーム溶接によって第1のキャリアプレート7の放射方向外端部に固着したので、連結片23の幅を大きくした場合でも、電子ビーム溶接によって連結片23の突出方向先端部23bを第1のキャリアプレート7に簡単に固着することができ、キャリア組立体の組立作業の作業性を向上させることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、キャリア組立体をシングルピニオンタイプの遊星歯車装置に適用したものを説明したが、ダブルピニオンタイプやラビニヨタイプの遊星歯車装置にキャリア組立体を適用したものであってもよく、本発明を適用し得るキャリア組立体を備えたものであれば、どのような遊星歯車装置であっても構わない。
【0056】
また、本実施の形態では、電子ビーム溶接を用いる場合についての説明をしたが、他の溶接法を用いる場合でもよいことは勿論である。また、溶接に限らず、カシメ固定、接着、焼結拡散接合等の圧着であってもよい。
【0057】
また、本実施の形態では、第2のキャリアプレート8に連結片23を設けているが、第1のキャリアプレート7に連結片23を設けてもよい。この場合には、第2のキャリアプレート8が第1のキャリアプレートを構成し、第1のキャリアプレート7が第2のキャリアプレートを構成することは言うまでもない。
【0058】
また、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0059】
以上のように、本発明に係るキャリア組立体は、第1のキャリアプレートと第2のキャリアプレートとの取付け強度を確保しつつ、キャリア組立体の小型化を図ることができるという効果を有し、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートを連結片を介して連結するとともに、第1のキャリアプレートおよび第2のキャリアプレートの間にピニオンギヤを回転自在に支持するようにしたキャリア組立体等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係るキャリア組立体の一実施の形態を示す図であり、キャリア組立体を備えたハイブリッド車両のドライブユニットの構成図である。
【図2】本発明に係るキャリア組立体の一実施の形態を示す図であり、図3に示すキャリア組立体のD−D方向矢視断面図である。
【図3】本発明に係るキャリア組立体の一実施の形態を示す図であり、図2のE方向矢視図である。
【図4】本発明に係るキャリア組立体の一実施の形態を示す図であり、(a)は、打ち抜き成形された第1のキャリアプレートの正面図、(b)は、打ち抜き成形された第2のキャリアプレートの正面図である。
【図5】本発明に係るキャリア組立体の一実施の形態を示す図であり、図3の矢印F方向から見たピニオンギヤと連結片の位置関係を示す図である。
【図6】従来のキャリア組立体の断面図である。
【図7】図6のA方向矢視図である。
【図8】従来のキャリア組立体を示す図であり、(a)は、打ち抜き成形された第1のキャリアプレートの正面図、(b)は、打ち抜き成形された第2のキャリアプレートの正面図である。
【図9】図7の矢印B方向から見た従来のピニオンギヤと連結片の位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
7 第1のキャリアプレート(キャリア組立体)
7a 第1のシャフト孔
8 第2のキャリアプレート(キャリア組立体)
8a 第2のシャフト孔
23 連結片(キャリア組立体)
23a 基端部
23b 突出方向先端部
28 切欠き部(逃げ部)
29 角部
CR1 キャリア(キャリア組立体)
S1 サンギヤ
P1 ピニオンギヤ(キャリア組立体)
PS ピニオンシャフト(キャリア組立体)
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射方向内方に円周方向に離隔して設けられた複数の第1のシャフト孔を有する第1のキャリアプレートと、前記第1のキャリアプレートに対向して設けられ、放射方向内方に前記第1のシャフト孔に対向する第2のシャフト孔を有する第2のキャリアプレートと、前記第1のシャフト孔と前記第2のシャフト孔との間に架設されたピニオンシャフトと、前記ピニオンシャフトに対して回転自在に支持され、サンギヤと噛合されるピニオンギヤと、前記第2のキャリアプレートの放射方向外端部から突出し、前記第2のキャリアプレートの円周方向に対して前記第2のシャフト孔の間に設けられた複数の連結片とを備え、
前記連結片が前記第1のキャリアプレート側に折り曲げられて前記連結片の突出方向先端部が前記第1のキャリアプレートの放射方向外端部に固着されることにより、前記ピニオンギヤの間に前記連結片が介装されるようにして前記第1のキャリアプレートと前記第2のキャリアプレートとが連結されるキャリア組立体において、
前記連結片の前記第2のキャリアプレート側の基端部に逃げ部を設け、前記連結片の基端部と前記ピニオンギヤの第2のキャリアプレート側の角部との間に隙間を形成するようにしたことを特徴とするキャリア組立体。
【請求項2】
前記逃げ部が、前記連結片の前記第2のキャリアプレート側の基端部に形成された切欠き部から構成されることを特徴とする請求項1に記載のキャリア組立体。
【請求項3】
前記連結片の突出方向先端部が、溶接によって前記第1のキャリアプレートの放射方向外端部に固着されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャリア組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−216188(P2009−216188A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61092(P2008−61092)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】