キャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡
【課題】シャッター眼鏡の適切なシャッターの開閉タイミングを得るためのキャリブレーションを行なう。
【解決手段】表示装置10は、フレーム毎に左眼用映像である白と右眼用映像である黒を交互に表示させる。シャッター眼鏡20は、表示装置10から受信した基準パルスに従って、左右のシャッター21L、21Rを開閉動作させながら、右眼用レンズの透過光を光センサー25で測定する。基準パルスと映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態では、光センサー25の出力がアクティブとなる期間をゼロにするキャリブレーションを行なう。
【解決手段】表示装置10は、フレーム毎に左眼用映像である白と右眼用映像である黒を交互に表示させる。シャッター眼鏡20は、表示装置10から受信した基準パルスに従って、左右のシャッター21L、21Rを開閉動作させながら、右眼用レンズの透過光を光センサー25で測定する。基準パルスと映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態では、光センサー25の出力がアクティブとなる期間をゼロにするキャリブレーションを行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる複数の映像を時分割で表示する表示装置と、映像の観察者がかけるシャッター眼鏡の組み合わせからなり、表示装置側の映像の切り換わりに同期してシャッター眼鏡の左右のシャッターを開閉させて観察者に立体映像を提示する映像表示システムに係り、特に、表示装置側での映像切り換えに対するシャッター眼鏡のシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを行なうキャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
左右の眼に視差のある映像を表示することで、観察者に立体的に見える立体映像を提示することができる。立体映像を提示する方式の1つとして、観察者に特殊な光学特性を持った眼鏡をかけさせ、両眼に視差をつけた画像を提示するものが挙げられる。例えば、時分割立体映像表示システムは、互いに異なる複数の映像を時分割で表示する表示装置と、映像の観察者がかけるシャッター眼鏡の組み合わせからなる。表示装置は、左眼用映像及び右眼用映像を非常に短い周期で交互に画面表示すると同時に、左眼用映像及び右眼用映像の周期に同期して左眼及び右眼に映像を分離して提供する。一方、観察者が装着したシャッター眼鏡は、左眼用映像がディスプレイされる間に、シャッター眼鏡の左眼部が光を透過させ、右眼部が遮光し、右眼用映像がディスプレイされる間に、シャッター眼鏡の右眼部が光を透過させ、左眼部が遮光する(例えば、特許文献1〜3を参照のこと)。
【0003】
時分割立体映像表示システムでは、左眼用映像及び右眼用映像を時分割で表示する際、クロストークを生じないように左眼用映像及び右眼用映像を分離することが技術課題の1つとなる。例えば、左眼用シャッター及び右眼用シャッターをともに遮光状態に切り換える時期を、フレーム期間が切り換わる時期よりも早い時期に設定することにより、左眼用シャッターと右眼用シャッターとを同時に遮光状態とする同時遮光期間を、各フレーム期間の一部分に設けることで、残像によるちらつきを抑制する立体画像表示方法について提案がなされている(例えば、特許文献4を参照のこと)。
【0004】
時分割映像表示システムでは、一般的に、表示装置は、左眼用映像及び右眼用映像の切り換えに同期して基準パルスを生成し、シャッター眼鏡に対して基準パルスに基づくシャッターの開閉タイミングを通知する。そして、シャッター眼鏡側では、通知されたシャッター開閉タイミング信号に基づいて、左右のシャッターを交互に開閉動作させる。表示装置とシャッター眼鏡間の通信は、多くの場合、赤外線通信による表示装置からシャッター眼鏡への一方向通信であった。
【0005】
表示装置側では、映像信号を切り換えてから(すなわち、基準パルスを生成してから)画面の表示が視覚上切り換わるまでに遅延時間が生じる。この遅延時間は、映像の切り換わりタイミングとシャッター眼鏡側でのシャッターの開閉タイミングとの位相差となり、クロストークの原因となる。この位相差を解消する1つの方法として、シャッター眼鏡側で基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを行なえばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−138384号公報
【特許文献2】特開2000−36969号公報
【特許文献3】特開2003−45343号公報
【特許文献4】特開2003−304115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表示装置側での映像切り換えに対するシャッター眼鏡のシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを好適に行なうことができる、優れたキャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッター眼鏡のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を備え、
前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信し、
前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
キャリブレーション装置である。
【0009】
本願の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載のキャリブレーション装置は、前記表示装置がフレーム毎に白画面と黒画面を交互に切り換える際に、前記処理部が、白画面の表示期間とシャッターの開成期間の重なる期間に表示光が前記レンズを透過して前記光センサーから出力される出力パルス幅tを、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングの補正量τを変更しながら測定し、得られるτ−t曲線に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量を決定するように構成されている。
【0010】
本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載のキャリブレーション装置の光センサーは、前記シャッター眼鏡の右眼用レンズの透過光を受光する位置に配設されている。そして、前記表示装置がフレーム毎に左眼用映像としての白画面と右眼用映像としての黒画面を交互に切り換える際に、前記τ−t曲線において、出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAと、出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、時点A及び時点Bの中央となる時点Pに基づいて右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を決定するとともに、右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させた時点Qで左眼用シャッターのタイミング補正量τQを決定するように構成されている。
【0011】
本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載のキャリブレーション装置の処理部は、前記表示装置の画面上部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、前記表示装置の画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求めるように構成されている。
【0012】
また、本願の請求項5に記載の発明は、
レンズ毎のシャッターと、少なくとも一方のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、第1の通信部と、前記シャッターの駆動を制御する制御部を備えたシャッター眼鏡と、
表示部と、前記表示部に表示する映像信号を発生する信号発生器と、第2の通信部を備えた表示装置と、
で構成され、
前記表示装置は、レンズ毎の映像を時分割で切り換えて表示するとともに、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記第2の通信部から送信し、
前記シャッター眼鏡の前記制御部は、前記第1の通信部で受信した前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、レンズ毎のシャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
映像表示システムである。
【0013】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0014】
本願の請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の映像表示システムにおいて、前記シャッター眼鏡は、前記の決定した補正量τに関する情報を、前記第1の通信部から前記表示装置に送信し、前記表示装置は、前記シャッター眼鏡から送信された補正量τに関する情報を前記第2の通信部で受信して格納するように構成されている。
【0015】
本願の請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、表示装置は、格納した補正量τに関する情報を、前記第2の通信部からシャッター眼鏡に送信するように構成されている。
【0016】
本願の請求項8に記載の発明によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、表示装置は、前記基準パルスを前記補正量τで補正してから送信するように構成されている。
【0017】
また、本願の請求項9に記載の発明は、
レンズと、
レンズ毎に取り付けられたシャッターと、
前記レンズを支持するリムと、
前記リムに折り畳み可能に取り付けられたテンプルと、
少なくとも一方のテンプルの内側に、折り畳んだ状態で少なくとも一方のレンズの透過光を受光できるように配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を具備するシャッター眼鏡である。
【0018】
本願の請求項10に記載の発明によれば、請求項10に記載のシャッター眼鏡の前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信する。そして、前記テンプルを折り畳んで前記光センサーが前記少なくとも一方のレンズの透過光を受光しながら、前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定するように構成されている。
【0019】
本願の請求項11に記載の発明によれば、請求項10に記載のシャッター眼鏡は、決定した補正量τに関する情報を前記通信部から前記表示装置に送信するように構成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表示装置側での映像切り換えに対するシャッター眼鏡のシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを好適に行なうことができる、優れたキャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡を提供することができる。
【0021】
本願の請求項1、5、9、10に記載の発明によれば、シャッター眼鏡のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーを用いて、基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定することができる。
【0022】
本願の請求項2に記載の発明によれば、表示装置でフレーム毎に白画面と黒画面を交互に切り換えさせ、基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングの補正量τを変更しながら、光センサーの出力パルス幅tの変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量を決定することができる。
【0023】
本願の請求項3に記載の発明によれば、右眼用レンズの透過光を受光する位置に配設されている光センサーの、出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aと、t=0からt>0になった時点Bの中央となる時点Pに基づいて右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を決定するとともに、その位相を180度だけ反転させた時点Qで左眼用シャッターのタイミング補正量τQを決定することができる。
【0024】
本願の請求項4に記載の発明によれば、キャリブレーションの対象となる表示装置が大画面の場合であっても、画面上部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求めるとともに、画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求めることによって、より正確に画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求め、より正確な右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2を決定することができる。
【0025】
本願の請求項6乃至8、11に記載の発明によれば、シャッター眼鏡側でキャリブレーションを実行して得られたシャッターの開閉タイミングの補正量τを表示装置で保持することができるむので、同じ表示装置を利用する複数のシャッター眼鏡で補正量τを共用することができ、シャッター眼鏡毎にキャリブレーションを行なう必要はない。
【0026】
本願の請求項8に記載の発明によれば、表示装置が補正量τで補正した基準パルスをシャッター眼鏡に送信するので、一旦キャリブレーションが行われた表示装置を利用する各シャッター眼鏡は、基準パルスに対する映像の切り換わりタイミングの位相差を全く考慮する必要がない。
【0027】
本願の請求項9、10に記載の発明によれば、ユーザーは、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なうときには、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡をキャリブレーション用の映像を表示している表示装置の画面にかざすという操作を行なうだけでよい。
【0028】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明を適用可能な立体映像表示システム1の構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、Lサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示した図である。
【図3】図3は、Rサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示した図である。
【図4】図4は、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差がない場合の各部のタイミングチャートを示した図である。
【図5】図5は、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で右眼用シャッター21Rを常時開成状態にしたときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図6】図6は、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させたときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図7】図7は、基準パルスに対する右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの補正量τ[msec]と、光センサー25の出力が出力状態となるパルス幅t[msec]を示した図である。
【図8】図8は、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの補正量τと光センサー25の出力パルス幅tとの関係(τ−t曲線)を示した図である。
【図9】図9は、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングを時点Qに合わせたときのタイミングチャートを示した図である。
【図10】図10は、キャリブレーションを行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、表示部11が液晶ディスプレイで構成される場合の、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させながら光センサー25の出力を測定したときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図12】図12は、表示装置10が映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけ、シャッター眼鏡20が補正後の基準パルスに従って動作するときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図13】図13は、表示装置10が補正量τで遅延をかけた基準パルスを送信する場合の、表示装置10とシャッター眼鏡20間の動作シーケンスを示した図である。
【図14】図14は、大画面の表示部11の画面上部にシャッター眼鏡20を設置したときの映像信号と光センサー25の出力パルスを示したタイミングチャートである。
【図15】図15は、大画面の表示部11の画面中央部にシャッター眼鏡20を設置したときの映像信号と光センサー25の出力パルスを示したタイミングチャートである。
【図16】図16は、大画面の表示部11の画面下部にシャッター眼鏡20を設置したときの映像信号と光センサー25の出力パルスを示したタイミングチャートである。
【図17】図17は、大画面の表示装置10についてキャリブレーションを行なうための動作シーケンスを示した図である。
【図18】図18は、左側のテンプルの内側に光センサー25が取り付けられたシャッター眼鏡20の構成例を示した図である。
【図19】図19は、シャッター眼鏡20の左右のテンプルを折り畳んだ様子を示した図である。
【図20】図20は、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡20を表示装置10の画面にかざしてシャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なう様子を示した図である。
【図21】図21は、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なう際のユーザーの操作手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
図1には、本発明を適用可能な時分割立体映像表示システム1の構成を模式的に示している。図示の時分割立体映像表示システム1は、表示装置10と、観察者が装着するシャッター眼鏡20で構成される。表示装置10は、左眼用映像、右眼用映像など複数の互いに異なる映像を時分割で切り換えて表示する。これに対し、シャッター眼鏡20は、表示装置10の映像切り替えに同期して左右のレンズに備えられたシャッターを開閉操作して、左眼用映像と右眼用映像を分離する。
【0032】
表示装置10は、映像表示を行なう表示部11と、シャッター眼鏡20との間でデータ通信を行なう通信部12と、映像信号を発生する信号発生器13を備えている。表示部11と信号発生器13とは、例えばHDMI(High−Definition Multimedia Interface)の映像信号インターフェースで接続されており、信号発生器13は、映像信号を表示部11に供給する。立体映像を表示する際、信号発生器13は、左眼用映像L及び右眼用映像Rを交互に出力し、表示部11での映像切り換えを行なう。
【0033】
シャッター眼鏡20は、左右それぞれのレンズに取り付けられたシャッター21R、21Lと、表示装置10との間でデータ通信を行なう通信部22と、通信部22で受信したデータを処理する処理部23と、左右それぞれのレンズに取り付けられたシャッター21R、21Lを開閉動作させる右眼シャッター駆動部24R及び左眼シャッター駆動部24Lと、右眼のレンズ付近に配設された光センサー25と、光センサー25の出力信号を処理する信号処理部26を備えている。光センサー25及び信号処理部26は、シャッターの開閉タイミングのキャリブレーションに用いるが、この点の詳細については後述に譲る。
【0034】
表示装置10側では、信号発生器13が左眼用映像L及び右眼用映像Rの切り換えに同期して基準パルスを生成し、この基準パルスを通信部12からシャッター眼鏡20へ送信する。シャッター眼鏡20側では、処理部23が通信部22で受信した基準パルスに基づいて、左眼用シャッター駆動部24L及び右眼用シャッター駆動部24Rを通じて左右のシャッター21L、21Rを開閉動作させる。
【0035】
図2には、Lサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示している。図示のように、Lサブフレーム期間には、基準パルスに基づいて左眼用シャッター21Lを開成状態、右眼用シャッター21Rを閉成状態とし、左眼用映像Lに基づく表示光LLが左眼用レンズのみを透過する。また、図3には、Rサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示している。図示のように、Rサブフレーム期間には、基準パルスに基づいて右眼用シャッター21Rを開成状態、左眼用シャッター21Lを閉成状態とし、右眼用映像Rに基づく表示光RRが右眼用レンズのみを透過する。
【0036】
表示装置10とシャッター眼鏡20間のデータ通信は、互いの通信部12と通信部22間で行なわれる。本実施形態では、シャッター眼鏡20はコードレスであることを想定している。本実施形態では、通信部12と通信部22間の無線通信手段として、IEEE802.15.4などのワイヤレス・ネットワークを用いるものとする。
【0037】
ワイヤレス・ネットワークは消費電力が高いため、シャッター眼鏡20が表示装置10からのシャッターの開閉タイミングの通知を常時受信待ちしていると、電源の負担が過大になる。これに対し、シャッター眼鏡20と表示装置10との間でクロック周波数の同期をとるとともにシャッターの開閉に用いるカウンターの値を一致させることで、表示装置10からシャッター眼鏡20へ開閉タイミングとパラメーター通知を間欠的に行なえばよくなる。すなわち、シャッター眼鏡20は、立体映像を表示している期間であっても常時受信待ちする必要はなくなり、消費電力を低減することができる。ワイヤレス・ネットワークを利用した映像表示システムは、例えば本出願人に既に譲渡されている特願2009−276948号明細書に開示されている。
【0038】
図1に示したシステム構成例では、表示装置10とシャッター眼鏡20が1対1で通信を行なうが、表示装置10の通信部12がアクセスポイントとして動作して、それぞれ端末局として動作する複数のシャッター眼鏡を収容することも可能である。ワイヤレス・ネットワークは双方向通信であり、シャッター眼鏡20から表示装置10へデータ通信を行なうこともでき、システム1が提供できるサービスが拡充する。
【0039】
表示装置10側では、信号発生器13で映像信号を切り換えてから(すなわち、基準パルスを生成してから)表示部11の表示が視覚上切り換わるまでに遅延時間が生じる。この遅延時間は、映像の切り換わりタイミングとシャッター眼鏡20側でのシャッター21L、21Rの開閉タイミングとの位相差となり、クロストークの原因となる。
【0040】
左眼用シャッター21Lと右眼用シャッター21Rとを同時に遮光状態とする同時遮光期間を長くとると、位相差に起因するクロストークを回避できるが、開口期間が短くなり、観察者に見える映像が暗くなってしまう。よって、位相差に起因するクロストークを回避するためには、基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションが必要である。
【0041】
本実施形態では、表示装置10側では表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させ、シャッター眼鏡20側では、シャッターの開閉タイミングの補正量を変化させながら右眼レンズに取り付けられた光センサー25の出力を測定し、その結果に基づいてキャリブレーションを行なう。
【0042】
例えば、シャッターカメラ20のキャリブレーション・ボタン27を押下すると、キャリブレーション・モードに移行する。キャリブレーション・モード下では、シャッター眼鏡20側では、光センサー25による受光量の測定が開始される。また、キャリブレーションを開始することが、通信部22及び12を通じてシャッター眼鏡20から表示装置10に伝えられる。表示装置10は、これに応答して、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させる。
【0043】
表示装置10は、表示部11での白黒映像の切り換えに同期した基準パルスを通信部12から通知する。以下では、左眼用映像を白、右眼用映像を黒とする。これに対し、シャッター眼鏡20側では、基準パルスに基づいて、左眼用シャッター駆動部24L及び右眼用シャッター駆動部24Rを通じて左右のシャッター21L、21Rを開閉動作させる。
【0044】
位相差が許容範囲内であり、表示部11で左眼用映像である白を表示しているが右眼用シャッター21Rが閉成しているときや、右眼用シャッター21Rは開成しているが表示部11で右眼用映像である黒を表示しているときは、光センサー25の出力は無出力状態(インアクティブ)となる。言い換えれば、位相差が許容範囲を超え、表示部11で左眼用映像である白を表示しているとともに、右眼用シャッター21Rは開成しているときには、光センサー25の出力は出力状態(アクティブ)になる。
【0045】
図4には、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差がない場合の各部のタイミングチャートを示している。
【0046】
表示装置10は、白の映像から黒の映像に切り換わるタイミングを示す基準パルスを、通信部12から送信する。シャッター眼鏡20は、表示装置10から受信した基準パルスに従って、右眼用映像の表示期間の開始タイミングに合わせて右眼用シャッター21Rを所定の開口期間Rだけ開成するとともに、左眼用映像の表示期間の開始タイミングに合わせて左眼用シャッター21Lを所定の開口期間Rだけ開成する。左眼用映像は白、右眼用映像は黒であるから、シャッター眼鏡20をかけた観察者には、左眼で白の映像が見え、右眼で黒の映像が見え、クロストークは生じない。したがって、右眼用レンズの透過光を光センサー25で測定すると、その出力(光センサー25の出力信号を信号処理部26で測定した結果)は無出力状態となる。
【0047】
ここで、表示装置10側で生成する基準パルスと、表示部11での映像の切り換わり及びシャッター眼鏡20側でのシャッターの開閉タイミングの間に位相差が生じたとする。図5には、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で右眼用シャッター21Rを常時開成状態にしたときの各部のタイミングチャートを示している。
【0048】
表示部11で右眼用映像である黒が表示出力されている間は、光センサー25の出力信号は無出力状態である。表示部11で左眼用映像である白が表示出力されると、光センサー25の出力信号が出力状態に変わる。光センサー25の出力信号は、信号変換部26によりディジタル変換された後、処理部23に入力される。光センサー25の出力パルスは、基準パルスに対して位相差を持つ。
【0049】
また、図6には、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させたときの各部のタイミングチャートを示している。
【0050】
基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差がなければ、表示部11で左眼用映像である白を表示している期間では、右眼用シャッター21Rが閉成していることから、図4に示したように光センサー25の出力は無出力状態(インアクティブ)となるはずである。これに対し、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じると、表示部11で左眼用映像である白を表示している期間に右眼用シャッター21Rは開成している。このため、図6に示すように、光センサー25の出力が出力状態(アクティブ)になる期間、すなわち出力パルスが生じる。
【0051】
光センサー25の出力が出力状態になる期間があるということは、表示している左眼用映像のフレームが反対の右眼用のレンズから見えてしまうということである。光センサー25の出力パルス幅tは、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差に応じて変化する。言い換えれば、キャリブレーション・モード下で光センサー25の出力パルス幅をゼロにすることがキャリブレーションである。
【0052】
図7に示すように、基準パルスに対する右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの補正量をτ[msec]、光センサー25の出力が出力状態となる出力パルス幅をt[msec]とする。処理部23は、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの位相差τを徐々に移動させながら、パルス幅tがゼロとなりクロストークのない補正量τの区間を探索する。続いて、処理部23は、クロストークのない区間の中で、シャッターの開口期間を決定する。観察者により明るい映像を提示するには、クロストークを回避しながらより大きな開口期間を設定することが好ましい。
【0053】
図8には、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの補正量τと光センサー25の出力パルス幅tとの関係(τ−t曲線)を示している。
【0054】
同図において、光センサー25の出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τをτAとする。その後は、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしていくと、光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間(図8(a))が続く。
【0055】
さらに、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングが表示部11で左眼用映像である白の表示に切り換わるタイミングに達すると、光センサー25が発光を検出し、その出力パルス幅tがt=0からt>0になる時点Bが現れる。その時点Bの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τをτBとする。
【0056】
光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間(図8(a))内では、クロストークが回避される。本実施形態では、光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間(図8(a))の中央、すなわち、同図中の時点Pにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τに決定する。
【0057】
時点B以降は、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τの増加に従って、開口期間内で光センサー25が左眼用映像である白の表示を検出する時間幅が増加していくので、光センサー25の出力パルス幅tが増加する区間(図8(b))が続く。
【0058】
さらに右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを増大させると、右眼用シャッター21Rの開口期間全体にわたって光センサー25が左眼用映像である白の表示を検出するようになり、光センサー25の出力パルス幅tはピークで一定となる。
【0059】
光センサー25の出力パルス幅tがピークとなる区間(図8(c))は、さらに右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを増大させて、表示部11で右眼用映像である黒の表示に切り換わるタイミングに達するまで続く。さらにτを増大させると、右眼用シャッター21Rの開口期間内で光センサー25が左眼用映像である白の表示を検出する時間幅が減少するので、光センサー25の出力パルス幅tが減少する区間(図8(d))が続く。
【0060】
光センサー25の出力パルス幅tがピークで一定となる区間(図8(c))では、表示部で左眼用映像すなわち白を表示する発光タイミングと右眼用シャッター21Rの開口タイミングが合っているときである。光センサー25の出力パルス幅tがピークで一定となる区間(図8(c))は、開口期間Rのデューティーを高くする程狭く、デューティーを低くするほど広くなる。開口期間Rを適切な値に設定する。
【0061】
上述のようにして、右眼用シャッター21Rの開口タイミングのキャリブレーションと、右眼用シャッター21Rの開口時間のキャリブレーションが完了したならば、続いて、左眼用シャッター21Lの開口タイミングのキャリブレーションを行なう。左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQは、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させたところで決まる。図9には、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングを時点Qに合わせたときのタイミングチャートを示している。
【0062】
図10には、キャリブレーションを行なうために処理部23で実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0063】
処理部23は、まず、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを初期値ゼロに設定する(ステップS1001)。
【0064】
そして、処理部23は、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを、位相差が1周期に達するまでの範囲で(ステップS1003のNo)、所定量ずつ増分させながら(ステップS1004)、光センサー25の出力パルス幅tを逐次測定する(ステップS1002)。なお、ステップS1004における1回当たりの増分量は、測定の劉度に相当する。
【0065】
このようにして右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを変えながら光センサー25の出力パルス幅tを測定した結果に基づいて、図8に示したτ−t曲線を描くことができる(ステップS1005)。
【0066】
τ−t曲線で、光センサー25の出力パルス幅tがt>0からt=0になる時点Aにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τAと、t=0からt>0になる時点Bにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τBを得ると、時点Aと時点Bの中央の時点Pを決定する(ステップS1006)。
【0067】
そして、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を算出して、これを右眼用シャッター21Rのタイミング補正量に決定する(ステップS1007)。
【0068】
また、時点Pから位相を180度だけ移動させた時点Qを決定する(ステップS1008)。
【0069】
次いで、右眼用シャッター21Rの開口期間Rを、適切な値に設定する(ステップS1009)。
【0070】
さらに、左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQは、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させたところに決定して(ステップS1010)、本処理ルーチンを終了する。
【0071】
以上のようにしてシャッター眼鏡20の左右のシャッター21L、21Rそれぞれの開閉タイミングのキャリブレーションが完了すると、表示部11の画面を見易い条件を実現することができる。
【0072】
なお、図6に示したタイミングチャートでは、表示部11が左眼用映像である白を表示する期間は常に発光している状態で、シャッター眼鏡20のレンズに表示光が入射していることを前提としている。このような場合、白画面の表示期間と右眼用シャッター21Rが開成している期間の論理積をとった光センサー25の出力パルスが常に映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を表すことになるので、光センサー25の出力パルスを1回測定するだけで済む。すなわち、キャリブレーション時間を短くすることができる。これに対し、表示部11が液晶ディスプレイで構成される場合、液晶表示パネルが白及び黒の画面を交互に描画する一方、バックライトが液晶表示パネルとは同期せずにオンオフ駆動しながら表示光を照射する。すなわち、表示部11は、左眼用映像である白を表示する期間は常に発光するのではなく、バックライトがオンとなる期間だけ発光する。このため、光センサー25の出力パルスは、白画面の表示期間のうちバックライトがオンの期間と右眼用シャッター21Rが開成している期間の論理積をとった期間となり、映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を必ずしも表すものとは限らない。
【0073】
図11には、表示部11が液晶ディスプレイで構成される場合の、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させながら光センサー25の出力を測定したときの各部のタイミングチャートを示している。バックライトが液晶表示パネルとは同期せずにオンオフ駆動するので、光センサー25の出力パルスの波形は、映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を必ずしも表すものとは限らない。そこで、キャリブレーション時間を長めにとって、光センサー25の出力パルスを数回測定し、複数の測定結果に基づいて時間軸最大値の出力パルスをサンプリングするように、パルス波形を整形する必要がある。
【0074】
上述したように、図10に示した処理手順に従って、表示装置10の表示部11における映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を補正するためのシャッター開閉タイミングの補正量τを測定することができる。図10に示した処理手順は、シャッター眼鏡20内の処理部23で実行することができる。あるいは、光センサー25の出力パルス幅tを表示装置10に送信し、表示装置10側で図10に示した処理手順を実行することもできる。
【0075】
シャッター開閉タイミングの補正量τは、表示装置10の製品モデル毎、あるいは固体毎に固定の値である。したがって、表示装置10の時分割映像を観察するシャッター眼鏡毎にキャリブレーションを行なう必要はなく、同じ補正量τを複数のシャッター眼鏡で共用するようにしてもよい。ある1台のシャッター眼鏡20を用いてキャリブレーションして得られたシャッター開閉タイミングの補正量τを、表示装置10に保管して、表示装置10はその他の1台以上のシャッター眼鏡に対し同じ補正量τを利用させる。
【0076】
また、得られたシャッター開閉タイミングの補正量τの利用方法も2通り考えられる。1つの方法によれば、表示装置10がシャッター眼鏡20にシャッター開閉タイミングの補正量τを送信し、シャッター眼鏡20は表示装置10から通知される基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけて左右のシャッター21L、21Lを開閉動作させる。2つ目の方法によれば、表示装置10は、映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけ、補正後の基準パルスをシャッター眼鏡20に通知する。2つ目の方法によれば、シャッター眼鏡20側では表示装置10の表示部11における映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を全く考慮する必要がない。
【0077】
図12には、表示装置10が映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけて補正し、シャッター眼鏡20が補正後の基準パルスに従って動作するときの各部のタイミングチャートを示している。
【0078】
また、図13には、表示装置10が映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけて補正し、シャッター眼鏡20が補正後の基準パルスに従って動作するときの、表示装置10とシャッター眼鏡20間の動作シーケンスを示している。以下、同動作シーケンスについて説明する。
【0079】
キャリブレーションを行なう際、表示装置10は、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させながら、映像信号の切り換わりを示す基準パルスをシャッター眼鏡20に送信する。
【0080】
これに対し、シャッター眼鏡20は、右眼用シャッター21Rのシャッター開閉タイミングの補正量τを移動させながら、光センサー25の出力パルス幅tを測定して、光センサー25の出力パルス幅がゼロ、すなわちクロストークを生じさせない適切なシャッタータイミングの補正量τを得る。そして、シャッター眼鏡20は、得られた補正量τを、表示装置10に送信する。
【0081】
表示装置10は、受信した補正量τを格納する。シャッター開閉タイミングの補正量τは、表示装置10の製品モデル毎、あるいは固体毎に固定の値である。その後、表示装置10は、左眼用映像と右眼用映像を交互に切り換えて時分割立体映像を表示する際、映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対して補正量τだけの遅延をかけて補正し、補正後の基準パルスをシャッター眼鏡に送信する。
【0082】
シャッター眼鏡20は、基準パルスを受信すると、左右のシャッター21L、21Rの開口時間Rを設定する。そして、受信した基準パルスに応答して右眼用シャッター21Rを開成し、開口時間が終了すると右眼用シャッター21Rを閉成する。続いて、左眼用シャッター21Lの開口時間が到来すると左眼用シャッター21Lを開成し、開口時間が終了すると左眼用シャッター21Lを閉成する。
【0083】
τ−t曲線、すなわち、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの補正量τと光センサー25の出力パルス幅tとの関係から適切な補正量τPが得られることは、図8を参照しながら既に説明した通りである。
【0084】
ここで、補正量τPを求める際に探索する時点Aは、表示部11の表示映像が白から黒に切り換わるタイミングであり、画面を上から下に向かってスキャンするときには画面の下部に相当する。また、同様に探索する時点Bは、表示部11の表示映像が黒から白に切り換わるタイミングであり、画面上部に相当する。
【0085】
表示部11が大画面の場合、同じ場所のシャッター眼鏡20から画面上のすべての部位からの表示光を受けることは難しい。例えば、シャッター眼鏡20を表示部11の画面上部に設置した場合、表示部11の表示映像が白から黒に切り換わるタイミングにおける画面上部からの表示光は十分届くが、表示映像が黒から白に切り換わるタイミングにおける画面下部からの表示光は届きにくい。このため、シャッター眼鏡20を表示部の画面上部に設置すると、図14に示すように、時点Aを正確に検出することはできるが、光センサー25の出力パルスは終端部分が欠けてしまうので、時点Bを誤検出してしまう。
【0086】
また、シャッター眼鏡20を表示部11の画面中央部に設置した場合、表示部11の表示映像が白から黒に切り換わるタイミングにおける画面上部からの表示光、並びに、表示映像が黒から白に切り換わるタイミングにおける画面下部からの表示光のいずれも届きにくい。このため、シャッター眼鏡20を表示部の画面上部に設置すると、図15に示すように、光センサー25の出力パルスは先端部分及び終端部分のいずれも欠けてしまい、時点A及び時点Bを誤検出してしまう。
【0087】
また、シャッター眼鏡20を表示部11の画面下部に設置した場合、表示部11の表示映像が黒から白に切り換わるタイミングにおける画面下部からの表示光は十分届くが、表示映像が白から黒に切り換わるタイミングにおける画面上部からの表示光は届きにくい。このため、シャッター眼鏡20を表示部の画面下部に設置すると、図16に示すように、時点Bを正確に検出することはできるが、光センサー25の出力パルスは終端部分が欠けてしまうので、時点Aを誤検出してしまう。
【0088】
そこで、本発明者らは、大画面の表示装置10については、画面上部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Bを探索するとともに、画面下部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Aを探索し、これらの結果で補間し合ってキャリブレーションを行なう方法を提案する。
【0089】
図17には、画面上部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Bを探索するとともに、画面下部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Aを探索して、大画面の表示装置10についてキャリブレーションを行なうための動作シーケンスを示している。
【0090】
シャッター眼鏡20側で、例えばユーザーがキャリブレーション・ボタン27が押下操作されたことに応答して、キャリブレーションが開始する。このとき、シャッター眼鏡20は、通信部22を介して、表示装置10にキャリブレーションの開始を通知する。
【0091】
表示装置10は、キャリブレーションの開始通知を受け取ると、表示部11の画面上で、シャッター眼鏡20の設置領域を白表示し、それ以外の領域を黒表示する。ここでは、画面上部を用いてτ−t曲線の時点Bを検出するために、表示装置10は、表示部11の画面上部を白表示する。
【0092】
ユーザーは、シャッター眼鏡20を表示部11の画面上部にかざして、キャリブレーションの準備ができると、例えばキャリブレーション・ボタン27を押下操作する。そして、シャッター眼鏡20は、通信部22を介して、表示装置10にキャリブレーションの準備ができたことを通知する。
【0093】
表示装置10は、通知を受け取ると、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させるとともに、白黒映像の切り換えに同期した基準パルスを通信部12から通知する。
【0094】
これに対し、シャッター眼鏡20側では、基準パルスに基づいて右眼用シャッター21Rを開閉動作させる。このとき、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしながら、右眼用シャッター21Rの透過光を検出する光センサー25の出力パルス幅tを測定して、τ−t曲線を描く。そして、光センサー25の出力パルス幅tがt=0からt>0になる時点Bの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τBを検出し終えると、通信部22を介して表示装置10に通知する。
【0095】
表示装置10は、時点Bの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τBを検出した旨の通知を受け取ると、続いて、表示部11の画面下部を用いてτ−t曲線の時点Aを検出するために、表示装置10は、表示部11の画面下部を白表示する。
【0096】
ユーザーは、シャッター眼鏡20を表示部11の画面下部にかざして、キャリブレーションの準備ができると、例えばキャリブレーション・ボタン27を押下操作する。そして、シャッター眼鏡20は、通信部22を介して、表示装置10にキャリブレーションの準備ができたことを通知する。
【0097】
表示装置10は、通知を受け取ると、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させるとともに、白黒映像の切り換えに同期した基準パルスを通信部12から通知する。
【0098】
これに対し、シャッター眼鏡20側では、基準パルスに基づいて右眼用シャッター21Rを開閉動作させる。このとき、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしながら、右眼用シャッター21Rの透過光を検出する光センサー25の出力パルス幅tを測定して、τ−t曲線を描く。そして、光センサー25の出力パルス幅tがt>0からt=0になる時点Aの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τAを検出する。
【0099】
シャッター眼鏡20は、光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間の中央である時点Pにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τに決定する。また、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させたところを左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQに決定する。そして、シャッター眼鏡20は、キャリブレーションにより得られた右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP及び左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQを、通信部22を介して表示装置20に通知する。
【0100】
表示装置10は、キャリブレーション結果の通知を受け取ると、これを格納するとともに、キャリブレーションのためのフレーム毎の黒、白示を終了し、通常の映像表示に戻る。
【0101】
その後、表示装置10は、映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τP、τQだけの遅延をかけて、補正後の基準パルスをシャッター眼鏡20に通知する。
【0102】
最後に、シャッター眼鏡20の光センサー25の実装方法について説明する。
【0103】
眼鏡フレームは、一般に、耳に掛けるための左右のテンプル(眼鏡のつる)を有し、テンプルはレンズを固定するリムに蝶番で支持され、折り畳むことができる。図18には、左側のテンプルの内側に光センサー25が取り付けられたシャッター眼鏡20の構成例を示している。また、図19には、このシャッター眼鏡20の左右のテンプルを折り畳んだ様子を示している。図19から分かるように、テンプルを折り畳むことによって、左のテンプルに取り付けられた光センサー25は、右眼用レンズの透過光を受光できる場所に位置する。したがって、ユーザーは、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なうときには、図20に示すように、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡20を、フレーム毎に黒、白、黒、…の映像表示を切り換える表示装置10の画面にかざすという操作を行なうだけでよい。
【0104】
図21には、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なう際のユーザーの操作手順をフローチャートの形式で示している。
【0105】
まず、ユーザーは、キャリブレーション・ボタン27を押下操作するなどして、表示装置10に対してキャリブレーションの開始を通知する。これによって、表示装置10側では、信号発生器13から、キャリブレーション用のフレーム毎の黒、白、黒、…の映像信号が出力される(ステップS2101)。
【0106】
そして、表示装置10の表示部11の画面には、フレーム毎の黒、白、黒、…の画像が表示される(ステップS2102)。但し、映像の切り換わりは、基準パルスに対して遅延している。
【0107】
続いて、ユーザーは、図19に示したように、シャッター眼鏡20の左右のテンプルを折り畳む(ステップS2103)。そして、図20に示したように、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡20を、フレーム毎に黒、白、黒、…の映像表示を切り換える表示装置10の画面にかざす(ステップS2104)。
【0108】
ユーザーがキャリブレーション・ボタン27を押下操作すると、シャッター眼鏡20内では、キャリブレーション処理が開始する(ステップS2105)。すなわち、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしながら、右眼用シャッター21Rの透過光を検出する光センサー25の出力パルス幅tを測定して、τ−t曲線を描く。そして、このτ−t曲線に基づいて、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP並びに左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQを決定する。
【0109】
ユーザーは、キャリブレーション処理が行われている1〜2秒の間、表示装置10の画面にかざしたシャッター眼鏡20を動かさずに保持する(ステップS2106)。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0111】
本明細書では、複数の互いに異なる映像を時分割で表示する表示装置として液晶ディスプレイを用いた実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、旧来のCRT(Cathod Ray Tube)ディスプレイの他、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)、エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルを用いることができる。
【0112】
また、本明細書では、シャッター眼鏡と表示装置とを接続する通信手段として、例えばIEEE802.15.4などのワイヤレス・ネットワークを適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。シャッター眼鏡と表示装置間で双方向の通信が可能であれば、その他の無線通信技術あるいは有線通信技術を適用することも可能である。
【0113】
本明細書で説明した実施形態における一連の処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれにより行なうこともできる。当該処理をソフトウェアによって実現する場合には、ソフトウェアにおける処理手順をコンピューター可読形式に記述したコンピューター・プログラムを所定のコンピューターにインストールして実行すればよい。また、このコンピューター・プログラムは、液晶ディスプレイなどの製品に組み込んでおくこともできる。
【0114】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0115】
1…時分割立体映像表示システム
10…表示装置
11…表示部
12…通信部
13…信号発生器
20…シャッター眼鏡
21L…左眼用シャッター、21R…右眼用シャッター
22…通信部
23…処理部
24L…左眼用シャッター駆動部、24R…右眼用シャッター駆動部
25…光センサー
26…信号処理部
27…キャリブレーション・ボタン
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる複数の映像を時分割で表示する表示装置と、映像の観察者がかけるシャッター眼鏡の組み合わせからなり、表示装置側の映像の切り換わりに同期してシャッター眼鏡の左右のシャッターを開閉させて観察者に立体映像を提示する映像表示システムに係り、特に、表示装置側での映像切り換えに対するシャッター眼鏡のシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを行なうキャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
左右の眼に視差のある映像を表示することで、観察者に立体的に見える立体映像を提示することができる。立体映像を提示する方式の1つとして、観察者に特殊な光学特性を持った眼鏡をかけさせ、両眼に視差をつけた画像を提示するものが挙げられる。例えば、時分割立体映像表示システムは、互いに異なる複数の映像を時分割で表示する表示装置と、映像の観察者がかけるシャッター眼鏡の組み合わせからなる。表示装置は、左眼用映像及び右眼用映像を非常に短い周期で交互に画面表示すると同時に、左眼用映像及び右眼用映像の周期に同期して左眼及び右眼に映像を分離して提供する。一方、観察者が装着したシャッター眼鏡は、左眼用映像がディスプレイされる間に、シャッター眼鏡の左眼部が光を透過させ、右眼部が遮光し、右眼用映像がディスプレイされる間に、シャッター眼鏡の右眼部が光を透過させ、左眼部が遮光する(例えば、特許文献1〜3を参照のこと)。
【0003】
時分割立体映像表示システムでは、左眼用映像及び右眼用映像を時分割で表示する際、クロストークを生じないように左眼用映像及び右眼用映像を分離することが技術課題の1つとなる。例えば、左眼用シャッター及び右眼用シャッターをともに遮光状態に切り換える時期を、フレーム期間が切り換わる時期よりも早い時期に設定することにより、左眼用シャッターと右眼用シャッターとを同時に遮光状態とする同時遮光期間を、各フレーム期間の一部分に設けることで、残像によるちらつきを抑制する立体画像表示方法について提案がなされている(例えば、特許文献4を参照のこと)。
【0004】
時分割映像表示システムでは、一般的に、表示装置は、左眼用映像及び右眼用映像の切り換えに同期して基準パルスを生成し、シャッター眼鏡に対して基準パルスに基づくシャッターの開閉タイミングを通知する。そして、シャッター眼鏡側では、通知されたシャッター開閉タイミング信号に基づいて、左右のシャッターを交互に開閉動作させる。表示装置とシャッター眼鏡間の通信は、多くの場合、赤外線通信による表示装置からシャッター眼鏡への一方向通信であった。
【0005】
表示装置側では、映像信号を切り換えてから(すなわち、基準パルスを生成してから)画面の表示が視覚上切り換わるまでに遅延時間が生じる。この遅延時間は、映像の切り換わりタイミングとシャッター眼鏡側でのシャッターの開閉タイミングとの位相差となり、クロストークの原因となる。この位相差を解消する1つの方法として、シャッター眼鏡側で基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを行なえばよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−138384号公報
【特許文献2】特開2000−36969号公報
【特許文献3】特開2003−45343号公報
【特許文献4】特開2003−304115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表示装置側での映像切り換えに対するシャッター眼鏡のシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを好適に行なうことができる、優れたキャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を参酌してなされたものであり、請求項1に記載の発明は、
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッター眼鏡のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を備え、
前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信し、
前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
キャリブレーション装置である。
【0009】
本願の請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載のキャリブレーション装置は、前記表示装置がフレーム毎に白画面と黒画面を交互に切り換える際に、前記処理部が、白画面の表示期間とシャッターの開成期間の重なる期間に表示光が前記レンズを透過して前記光センサーから出力される出力パルス幅tを、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングの補正量τを変更しながら測定し、得られるτ−t曲線に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量を決定するように構成されている。
【0010】
本願の請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載のキャリブレーション装置の光センサーは、前記シャッター眼鏡の右眼用レンズの透過光を受光する位置に配設されている。そして、前記表示装置がフレーム毎に左眼用映像としての白画面と右眼用映像としての黒画面を交互に切り換える際に、前記τ−t曲線において、出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAと、出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、時点A及び時点Bの中央となる時点Pに基づいて右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を決定するとともに、右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させた時点Qで左眼用シャッターのタイミング補正量τQを決定するように構成されている。
【0011】
本願の請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載のキャリブレーション装置の処理部は、前記表示装置の画面上部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、前記表示装置の画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求めるように構成されている。
【0012】
また、本願の請求項5に記載の発明は、
レンズ毎のシャッターと、少なくとも一方のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、第1の通信部と、前記シャッターの駆動を制御する制御部を備えたシャッター眼鏡と、
表示部と、前記表示部に表示する映像信号を発生する信号発生器と、第2の通信部を備えた表示装置と、
で構成され、
前記表示装置は、レンズ毎の映像を時分割で切り換えて表示するとともに、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記第2の通信部から送信し、
前記シャッター眼鏡の前記制御部は、前記第1の通信部で受信した前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、レンズ毎のシャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
映像表示システムである。
【0013】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0014】
本願の請求項6に記載の発明によれば、請求項5に記載の映像表示システムにおいて、前記シャッター眼鏡は、前記の決定した補正量τに関する情報を、前記第1の通信部から前記表示装置に送信し、前記表示装置は、前記シャッター眼鏡から送信された補正量τに関する情報を前記第2の通信部で受信して格納するように構成されている。
【0015】
本願の請求項7に記載の発明によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、表示装置は、格納した補正量τに関する情報を、前記第2の通信部からシャッター眼鏡に送信するように構成されている。
【0016】
本願の請求項8に記載の発明によれば、請求項6に記載の映像表示システムにおいて、表示装置は、前記基準パルスを前記補正量τで補正してから送信するように構成されている。
【0017】
また、本願の請求項9に記載の発明は、
レンズと、
レンズ毎に取り付けられたシャッターと、
前記レンズを支持するリムと、
前記リムに折り畳み可能に取り付けられたテンプルと、
少なくとも一方のテンプルの内側に、折り畳んだ状態で少なくとも一方のレンズの透過光を受光できるように配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を具備するシャッター眼鏡である。
【0018】
本願の請求項10に記載の発明によれば、請求項10に記載のシャッター眼鏡の前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信する。そして、前記テンプルを折り畳んで前記光センサーが前記少なくとも一方のレンズの透過光を受光しながら、前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定するように構成されている。
【0019】
本願の請求項11に記載の発明によれば、請求項10に記載のシャッター眼鏡は、決定した補正量τに関する情報を前記通信部から前記表示装置に送信するように構成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表示装置側での映像切り換えに対するシャッター眼鏡のシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションを好適に行なうことができる、優れたキャリブレーション装置、映像表示システム、並びにシャッター眼鏡を提供することができる。
【0021】
本願の請求項1、5、9、10に記載の発明によれば、シャッター眼鏡のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーを用いて、基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定することができる。
【0022】
本願の請求項2に記載の発明によれば、表示装置でフレーム毎に白画面と黒画面を交互に切り換えさせ、基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングの補正量τを変更しながら、光センサーの出力パルス幅tの変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量を決定することができる。
【0023】
本願の請求項3に記載の発明によれば、右眼用レンズの透過光を受光する位置に配設されている光センサーの、出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aと、t=0からt>0になった時点Bの中央となる時点Pに基づいて右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を決定するとともに、その位相を180度だけ反転させた時点Qで左眼用シャッターのタイミング補正量τQを決定することができる。
【0024】
本願の請求項4に記載の発明によれば、キャリブレーションの対象となる表示装置が大画面の場合であっても、画面上部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求めるとともに、画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求めることによって、より正確に画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求め、より正確な右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2を決定することができる。
【0025】
本願の請求項6乃至8、11に記載の発明によれば、シャッター眼鏡側でキャリブレーションを実行して得られたシャッターの開閉タイミングの補正量τを表示装置で保持することができるむので、同じ表示装置を利用する複数のシャッター眼鏡で補正量τを共用することができ、シャッター眼鏡毎にキャリブレーションを行なう必要はない。
【0026】
本願の請求項8に記載の発明によれば、表示装置が補正量τで補正した基準パルスをシャッター眼鏡に送信するので、一旦キャリブレーションが行われた表示装置を利用する各シャッター眼鏡は、基準パルスに対する映像の切り換わりタイミングの位相差を全く考慮する必要がない。
【0027】
本願の請求項9、10に記載の発明によれば、ユーザーは、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なうときには、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡をキャリブレーション用の映像を表示している表示装置の画面にかざすという操作を行なうだけでよい。
【0028】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明を適用可能な立体映像表示システム1の構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、Lサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示した図である。
【図3】図3は、Rサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示した図である。
【図4】図4は、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差がない場合の各部のタイミングチャートを示した図である。
【図5】図5は、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で右眼用シャッター21Rを常時開成状態にしたときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図6】図6は、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させたときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図7】図7は、基準パルスに対する右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの補正量τ[msec]と、光センサー25の出力が出力状態となるパルス幅t[msec]を示した図である。
【図8】図8は、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの補正量τと光センサー25の出力パルス幅tとの関係(τ−t曲線)を示した図である。
【図9】図9は、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングを時点Qに合わせたときのタイミングチャートを示した図である。
【図10】図10は、キャリブレーションを行なうための処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、表示部11が液晶ディスプレイで構成される場合の、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させながら光センサー25の出力を測定したときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図12】図12は、表示装置10が映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけ、シャッター眼鏡20が補正後の基準パルスに従って動作するときの各部のタイミングチャートを示した図である。
【図13】図13は、表示装置10が補正量τで遅延をかけた基準パルスを送信する場合の、表示装置10とシャッター眼鏡20間の動作シーケンスを示した図である。
【図14】図14は、大画面の表示部11の画面上部にシャッター眼鏡20を設置したときの映像信号と光センサー25の出力パルスを示したタイミングチャートである。
【図15】図15は、大画面の表示部11の画面中央部にシャッター眼鏡20を設置したときの映像信号と光センサー25の出力パルスを示したタイミングチャートである。
【図16】図16は、大画面の表示部11の画面下部にシャッター眼鏡20を設置したときの映像信号と光センサー25の出力パルスを示したタイミングチャートである。
【図17】図17は、大画面の表示装置10についてキャリブレーションを行なうための動作シーケンスを示した図である。
【図18】図18は、左側のテンプルの内側に光センサー25が取り付けられたシャッター眼鏡20の構成例を示した図である。
【図19】図19は、シャッター眼鏡20の左右のテンプルを折り畳んだ様子を示した図である。
【図20】図20は、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡20を表示装置10の画面にかざしてシャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なう様子を示した図である。
【図21】図21は、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なう際のユーザーの操作手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0031】
図1には、本発明を適用可能な時分割立体映像表示システム1の構成を模式的に示している。図示の時分割立体映像表示システム1は、表示装置10と、観察者が装着するシャッター眼鏡20で構成される。表示装置10は、左眼用映像、右眼用映像など複数の互いに異なる映像を時分割で切り換えて表示する。これに対し、シャッター眼鏡20は、表示装置10の映像切り替えに同期して左右のレンズに備えられたシャッターを開閉操作して、左眼用映像と右眼用映像を分離する。
【0032】
表示装置10は、映像表示を行なう表示部11と、シャッター眼鏡20との間でデータ通信を行なう通信部12と、映像信号を発生する信号発生器13を備えている。表示部11と信号発生器13とは、例えばHDMI(High−Definition Multimedia Interface)の映像信号インターフェースで接続されており、信号発生器13は、映像信号を表示部11に供給する。立体映像を表示する際、信号発生器13は、左眼用映像L及び右眼用映像Rを交互に出力し、表示部11での映像切り換えを行なう。
【0033】
シャッター眼鏡20は、左右それぞれのレンズに取り付けられたシャッター21R、21Lと、表示装置10との間でデータ通信を行なう通信部22と、通信部22で受信したデータを処理する処理部23と、左右それぞれのレンズに取り付けられたシャッター21R、21Lを開閉動作させる右眼シャッター駆動部24R及び左眼シャッター駆動部24Lと、右眼のレンズ付近に配設された光センサー25と、光センサー25の出力信号を処理する信号処理部26を備えている。光センサー25及び信号処理部26は、シャッターの開閉タイミングのキャリブレーションに用いるが、この点の詳細については後述に譲る。
【0034】
表示装置10側では、信号発生器13が左眼用映像L及び右眼用映像Rの切り換えに同期して基準パルスを生成し、この基準パルスを通信部12からシャッター眼鏡20へ送信する。シャッター眼鏡20側では、処理部23が通信部22で受信した基準パルスに基づいて、左眼用シャッター駆動部24L及び右眼用シャッター駆動部24Rを通じて左右のシャッター21L、21Rを開閉動作させる。
【0035】
図2には、Lサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示している。図示のように、Lサブフレーム期間には、基準パルスに基づいて左眼用シャッター21Lを開成状態、右眼用シャッター21Rを閉成状態とし、左眼用映像Lに基づく表示光LLが左眼用レンズのみを透過する。また、図3には、Rサブフレーム期間におけるシャッター眼鏡20の制御動作を示している。図示のように、Rサブフレーム期間には、基準パルスに基づいて右眼用シャッター21Rを開成状態、左眼用シャッター21Lを閉成状態とし、右眼用映像Rに基づく表示光RRが右眼用レンズのみを透過する。
【0036】
表示装置10とシャッター眼鏡20間のデータ通信は、互いの通信部12と通信部22間で行なわれる。本実施形態では、シャッター眼鏡20はコードレスであることを想定している。本実施形態では、通信部12と通信部22間の無線通信手段として、IEEE802.15.4などのワイヤレス・ネットワークを用いるものとする。
【0037】
ワイヤレス・ネットワークは消費電力が高いため、シャッター眼鏡20が表示装置10からのシャッターの開閉タイミングの通知を常時受信待ちしていると、電源の負担が過大になる。これに対し、シャッター眼鏡20と表示装置10との間でクロック周波数の同期をとるとともにシャッターの開閉に用いるカウンターの値を一致させることで、表示装置10からシャッター眼鏡20へ開閉タイミングとパラメーター通知を間欠的に行なえばよくなる。すなわち、シャッター眼鏡20は、立体映像を表示している期間であっても常時受信待ちする必要はなくなり、消費電力を低減することができる。ワイヤレス・ネットワークを利用した映像表示システムは、例えば本出願人に既に譲渡されている特願2009−276948号明細書に開示されている。
【0038】
図1に示したシステム構成例では、表示装置10とシャッター眼鏡20が1対1で通信を行なうが、表示装置10の通信部12がアクセスポイントとして動作して、それぞれ端末局として動作する複数のシャッター眼鏡を収容することも可能である。ワイヤレス・ネットワークは双方向通信であり、シャッター眼鏡20から表示装置10へデータ通信を行なうこともでき、システム1が提供できるサービスが拡充する。
【0039】
表示装置10側では、信号発生器13で映像信号を切り換えてから(すなわち、基準パルスを生成してから)表示部11の表示が視覚上切り換わるまでに遅延時間が生じる。この遅延時間は、映像の切り換わりタイミングとシャッター眼鏡20側でのシャッター21L、21Rの開閉タイミングとの位相差となり、クロストークの原因となる。
【0040】
左眼用シャッター21Lと右眼用シャッター21Rとを同時に遮光状態とする同時遮光期間を長くとると、位相差に起因するクロストークを回避できるが、開口期間が短くなり、観察者に見える映像が暗くなってしまう。よって、位相差に起因するクロストークを回避するためには、基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングのキャリブレーションが必要である。
【0041】
本実施形態では、表示装置10側では表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させ、シャッター眼鏡20側では、シャッターの開閉タイミングの補正量を変化させながら右眼レンズに取り付けられた光センサー25の出力を測定し、その結果に基づいてキャリブレーションを行なう。
【0042】
例えば、シャッターカメラ20のキャリブレーション・ボタン27を押下すると、キャリブレーション・モードに移行する。キャリブレーション・モード下では、シャッター眼鏡20側では、光センサー25による受光量の測定が開始される。また、キャリブレーションを開始することが、通信部22及び12を通じてシャッター眼鏡20から表示装置10に伝えられる。表示装置10は、これに応答して、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させる。
【0043】
表示装置10は、表示部11での白黒映像の切り換えに同期した基準パルスを通信部12から通知する。以下では、左眼用映像を白、右眼用映像を黒とする。これに対し、シャッター眼鏡20側では、基準パルスに基づいて、左眼用シャッター駆動部24L及び右眼用シャッター駆動部24Rを通じて左右のシャッター21L、21Rを開閉動作させる。
【0044】
位相差が許容範囲内であり、表示部11で左眼用映像である白を表示しているが右眼用シャッター21Rが閉成しているときや、右眼用シャッター21Rは開成しているが表示部11で右眼用映像である黒を表示しているときは、光センサー25の出力は無出力状態(インアクティブ)となる。言い換えれば、位相差が許容範囲を超え、表示部11で左眼用映像である白を表示しているとともに、右眼用シャッター21Rは開成しているときには、光センサー25の出力は出力状態(アクティブ)になる。
【0045】
図4には、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差がない場合の各部のタイミングチャートを示している。
【0046】
表示装置10は、白の映像から黒の映像に切り換わるタイミングを示す基準パルスを、通信部12から送信する。シャッター眼鏡20は、表示装置10から受信した基準パルスに従って、右眼用映像の表示期間の開始タイミングに合わせて右眼用シャッター21Rを所定の開口期間Rだけ開成するとともに、左眼用映像の表示期間の開始タイミングに合わせて左眼用シャッター21Lを所定の開口期間Rだけ開成する。左眼用映像は白、右眼用映像は黒であるから、シャッター眼鏡20をかけた観察者には、左眼で白の映像が見え、右眼で黒の映像が見え、クロストークは生じない。したがって、右眼用レンズの透過光を光センサー25で測定すると、その出力(光センサー25の出力信号を信号処理部26で測定した結果)は無出力状態となる。
【0047】
ここで、表示装置10側で生成する基準パルスと、表示部11での映像の切り換わり及びシャッター眼鏡20側でのシャッターの開閉タイミングの間に位相差が生じたとする。図5には、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で右眼用シャッター21Rを常時開成状態にしたときの各部のタイミングチャートを示している。
【0048】
表示部11で右眼用映像である黒が表示出力されている間は、光センサー25の出力信号は無出力状態である。表示部11で左眼用映像である白が表示出力されると、光センサー25の出力信号が出力状態に変わる。光センサー25の出力信号は、信号変換部26によりディジタル変換された後、処理部23に入力される。光センサー25の出力パルスは、基準パルスに対して位相差を持つ。
【0049】
また、図6には、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じた状態で、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させたときの各部のタイミングチャートを示している。
【0050】
基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差がなければ、表示部11で左眼用映像である白を表示している期間では、右眼用シャッター21Rが閉成していることから、図4に示したように光センサー25の出力は無出力状態(インアクティブ)となるはずである。これに対し、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差が生じると、表示部11で左眼用映像である白を表示している期間に右眼用シャッター21Rは開成している。このため、図6に示すように、光センサー25の出力が出力状態(アクティブ)になる期間、すなわち出力パルスが生じる。
【0051】
光センサー25の出力が出力状態になる期間があるということは、表示している左眼用映像のフレームが反対の右眼用のレンズから見えてしまうということである。光センサー25の出力パルス幅tは、基準パルスと表示部11での映像の切り換わりタイミングの間に位相差に応じて変化する。言い換えれば、キャリブレーション・モード下で光センサー25の出力パルス幅をゼロにすることがキャリブレーションである。
【0052】
図7に示すように、基準パルスに対する右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの補正量をτ[msec]、光センサー25の出力が出力状態となる出力パルス幅をt[msec]とする。処理部23は、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの位相差τを徐々に移動させながら、パルス幅tがゼロとなりクロストークのない補正量τの区間を探索する。続いて、処理部23は、クロストークのない区間の中で、シャッターの開口期間を決定する。観察者により明るい映像を提示するには、クロストークを回避しながらより大きな開口期間を設定することが好ましい。
【0053】
図8には、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの補正量τと光センサー25の出力パルス幅tとの関係(τ−t曲線)を示している。
【0054】
同図において、光センサー25の出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τをτAとする。その後は、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしていくと、光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間(図8(a))が続く。
【0055】
さらに、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングが表示部11で左眼用映像である白の表示に切り換わるタイミングに達すると、光センサー25が発光を検出し、その出力パルス幅tがt=0からt>0になる時点Bが現れる。その時点Bの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τをτBとする。
【0056】
光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間(図8(a))内では、クロストークが回避される。本実施形態では、光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間(図8(a))の中央、すなわち、同図中の時点Pにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τに決定する。
【0057】
時点B以降は、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τの増加に従って、開口期間内で光センサー25が左眼用映像である白の表示を検出する時間幅が増加していくので、光センサー25の出力パルス幅tが増加する区間(図8(b))が続く。
【0058】
さらに右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを増大させると、右眼用シャッター21Rの開口期間全体にわたって光センサー25が左眼用映像である白の表示を検出するようになり、光センサー25の出力パルス幅tはピークで一定となる。
【0059】
光センサー25の出力パルス幅tがピークとなる区間(図8(c))は、さらに右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを増大させて、表示部11で右眼用映像である黒の表示に切り換わるタイミングに達するまで続く。さらにτを増大させると、右眼用シャッター21Rの開口期間内で光センサー25が左眼用映像である白の表示を検出する時間幅が減少するので、光センサー25の出力パルス幅tが減少する区間(図8(d))が続く。
【0060】
光センサー25の出力パルス幅tがピークで一定となる区間(図8(c))では、表示部で左眼用映像すなわち白を表示する発光タイミングと右眼用シャッター21Rの開口タイミングが合っているときである。光センサー25の出力パルス幅tがピークで一定となる区間(図8(c))は、開口期間Rのデューティーを高くする程狭く、デューティーを低くするほど広くなる。開口期間Rを適切な値に設定する。
【0061】
上述のようにして、右眼用シャッター21Rの開口タイミングのキャリブレーションと、右眼用シャッター21Rの開口時間のキャリブレーションが完了したならば、続いて、左眼用シャッター21Lの開口タイミングのキャリブレーションを行なう。左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQは、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させたところで決まる。図9には、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングを時点Qに合わせたときのタイミングチャートを示している。
【0062】
図10には、キャリブレーションを行なうために処理部23で実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0063】
処理部23は、まず、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを初期値ゼロに設定する(ステップS1001)。
【0064】
そして、処理部23は、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを、位相差が1周期に達するまでの範囲で(ステップS1003のNo)、所定量ずつ増分させながら(ステップS1004)、光センサー25の出力パルス幅tを逐次測定する(ステップS1002)。なお、ステップS1004における1回当たりの増分量は、測定の劉度に相当する。
【0065】
このようにして右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを変えながら光センサー25の出力パルス幅tを測定した結果に基づいて、図8に示したτ−t曲線を描くことができる(ステップS1005)。
【0066】
τ−t曲線で、光センサー25の出力パルス幅tがt>0からt=0になる時点Aにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τAと、t=0からt>0になる時点Bにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τBを得ると、時点Aと時点Bの中央の時点Pを決定する(ステップS1006)。
【0067】
そして、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を算出して、これを右眼用シャッター21Rのタイミング補正量に決定する(ステップS1007)。
【0068】
また、時点Pから位相を180度だけ移動させた時点Qを決定する(ステップS1008)。
【0069】
次いで、右眼用シャッター21Rの開口期間Rを、適切な値に設定する(ステップS1009)。
【0070】
さらに、左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQは、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させたところに決定して(ステップS1010)、本処理ルーチンを終了する。
【0071】
以上のようにしてシャッター眼鏡20の左右のシャッター21L、21Rそれぞれの開閉タイミングのキャリブレーションが完了すると、表示部11の画面を見易い条件を実現することができる。
【0072】
なお、図6に示したタイミングチャートでは、表示部11が左眼用映像である白を表示する期間は常に発光している状態で、シャッター眼鏡20のレンズに表示光が入射していることを前提としている。このような場合、白画面の表示期間と右眼用シャッター21Rが開成している期間の論理積をとった光センサー25の出力パルスが常に映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を表すことになるので、光センサー25の出力パルスを1回測定するだけで済む。すなわち、キャリブレーション時間を短くすることができる。これに対し、表示部11が液晶ディスプレイで構成される場合、液晶表示パネルが白及び黒の画面を交互に描画する一方、バックライトが液晶表示パネルとは同期せずにオンオフ駆動しながら表示光を照射する。すなわち、表示部11は、左眼用映像である白を表示する期間は常に発光するのではなく、バックライトがオンとなる期間だけ発光する。このため、光センサー25の出力パルスは、白画面の表示期間のうちバックライトがオンの期間と右眼用シャッター21Rが開成している期間の論理積をとった期間となり、映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を必ずしも表すものとは限らない。
【0073】
図11には、表示部11が液晶ディスプレイで構成される場合の、シャッター眼鏡20側で左右のシャッター21L、21Rを基準パルスに従って開閉動作させながら光センサー25の出力を測定したときの各部のタイミングチャートを示している。バックライトが液晶表示パネルとは同期せずにオンオフ駆動するので、光センサー25の出力パルスの波形は、映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を必ずしも表すものとは限らない。そこで、キャリブレーション時間を長めにとって、光センサー25の出力パルスを数回測定し、複数の測定結果に基づいて時間軸最大値の出力パルスをサンプリングするように、パルス波形を整形する必要がある。
【0074】
上述したように、図10に示した処理手順に従って、表示装置10の表示部11における映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を補正するためのシャッター開閉タイミングの補正量τを測定することができる。図10に示した処理手順は、シャッター眼鏡20内の処理部23で実行することができる。あるいは、光センサー25の出力パルス幅tを表示装置10に送信し、表示装置10側で図10に示した処理手順を実行することもできる。
【0075】
シャッター開閉タイミングの補正量τは、表示装置10の製品モデル毎、あるいは固体毎に固定の値である。したがって、表示装置10の時分割映像を観察するシャッター眼鏡毎にキャリブレーションを行なう必要はなく、同じ補正量τを複数のシャッター眼鏡で共用するようにしてもよい。ある1台のシャッター眼鏡20を用いてキャリブレーションして得られたシャッター開閉タイミングの補正量τを、表示装置10に保管して、表示装置10はその他の1台以上のシャッター眼鏡に対し同じ補正量τを利用させる。
【0076】
また、得られたシャッター開閉タイミングの補正量τの利用方法も2通り考えられる。1つの方法によれば、表示装置10がシャッター眼鏡20にシャッター開閉タイミングの補正量τを送信し、シャッター眼鏡20は表示装置10から通知される基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけて左右のシャッター21L、21Lを開閉動作させる。2つ目の方法によれば、表示装置10は、映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけ、補正後の基準パルスをシャッター眼鏡20に通知する。2つ目の方法によれば、シャッター眼鏡20側では表示装置10の表示部11における映像の切り換わりタイミングの基準パルスからの位相差を全く考慮する必要がない。
【0077】
図12には、表示装置10が映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけて補正し、シャッター眼鏡20が補正後の基準パルスに従って動作するときの各部のタイミングチャートを示している。
【0078】
また、図13には、表示装置10が映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τだけの遅延をかけて補正し、シャッター眼鏡20が補正後の基準パルスに従って動作するときの、表示装置10とシャッター眼鏡20間の動作シーケンスを示している。以下、同動作シーケンスについて説明する。
【0079】
キャリブレーションを行なう際、表示装置10は、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させながら、映像信号の切り換わりを示す基準パルスをシャッター眼鏡20に送信する。
【0080】
これに対し、シャッター眼鏡20は、右眼用シャッター21Rのシャッター開閉タイミングの補正量τを移動させながら、光センサー25の出力パルス幅tを測定して、光センサー25の出力パルス幅がゼロ、すなわちクロストークを生じさせない適切なシャッタータイミングの補正量τを得る。そして、シャッター眼鏡20は、得られた補正量τを、表示装置10に送信する。
【0081】
表示装置10は、受信した補正量τを格納する。シャッター開閉タイミングの補正量τは、表示装置10の製品モデル毎、あるいは固体毎に固定の値である。その後、表示装置10は、左眼用映像と右眼用映像を交互に切り換えて時分割立体映像を表示する際、映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対して補正量τだけの遅延をかけて補正し、補正後の基準パルスをシャッター眼鏡に送信する。
【0082】
シャッター眼鏡20は、基準パルスを受信すると、左右のシャッター21L、21Rの開口時間Rを設定する。そして、受信した基準パルスに応答して右眼用シャッター21Rを開成し、開口時間が終了すると右眼用シャッター21Rを閉成する。続いて、左眼用シャッター21Lの開口時間が到来すると左眼用シャッター21Lを開成し、開口時間が終了すると左眼用シャッター21Lを閉成する。
【0083】
τ−t曲線、すなわち、右眼用シャッター21Rの開閉タイミングの基準パルスからの補正量τと光センサー25の出力パルス幅tとの関係から適切な補正量τPが得られることは、図8を参照しながら既に説明した通りである。
【0084】
ここで、補正量τPを求める際に探索する時点Aは、表示部11の表示映像が白から黒に切り換わるタイミングであり、画面を上から下に向かってスキャンするときには画面の下部に相当する。また、同様に探索する時点Bは、表示部11の表示映像が黒から白に切り換わるタイミングであり、画面上部に相当する。
【0085】
表示部11が大画面の場合、同じ場所のシャッター眼鏡20から画面上のすべての部位からの表示光を受けることは難しい。例えば、シャッター眼鏡20を表示部11の画面上部に設置した場合、表示部11の表示映像が白から黒に切り換わるタイミングにおける画面上部からの表示光は十分届くが、表示映像が黒から白に切り換わるタイミングにおける画面下部からの表示光は届きにくい。このため、シャッター眼鏡20を表示部の画面上部に設置すると、図14に示すように、時点Aを正確に検出することはできるが、光センサー25の出力パルスは終端部分が欠けてしまうので、時点Bを誤検出してしまう。
【0086】
また、シャッター眼鏡20を表示部11の画面中央部に設置した場合、表示部11の表示映像が白から黒に切り換わるタイミングにおける画面上部からの表示光、並びに、表示映像が黒から白に切り換わるタイミングにおける画面下部からの表示光のいずれも届きにくい。このため、シャッター眼鏡20を表示部の画面上部に設置すると、図15に示すように、光センサー25の出力パルスは先端部分及び終端部分のいずれも欠けてしまい、時点A及び時点Bを誤検出してしまう。
【0087】
また、シャッター眼鏡20を表示部11の画面下部に設置した場合、表示部11の表示映像が黒から白に切り換わるタイミングにおける画面下部からの表示光は十分届くが、表示映像が白から黒に切り換わるタイミングにおける画面上部からの表示光は届きにくい。このため、シャッター眼鏡20を表示部の画面下部に設置すると、図16に示すように、時点Bを正確に検出することはできるが、光センサー25の出力パルスは終端部分が欠けてしまうので、時点Aを誤検出してしまう。
【0088】
そこで、本発明者らは、大画面の表示装置10については、画面上部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Bを探索するとともに、画面下部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Aを探索し、これらの結果で補間し合ってキャリブレーションを行なう方法を提案する。
【0089】
図17には、画面上部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Bを探索するとともに、画面下部にシャッター眼鏡20を設置してτ−t曲線の時点Aを探索して、大画面の表示装置10についてキャリブレーションを行なうための動作シーケンスを示している。
【0090】
シャッター眼鏡20側で、例えばユーザーがキャリブレーション・ボタン27が押下操作されたことに応答して、キャリブレーションが開始する。このとき、シャッター眼鏡20は、通信部22を介して、表示装置10にキャリブレーションの開始を通知する。
【0091】
表示装置10は、キャリブレーションの開始通知を受け取ると、表示部11の画面上で、シャッター眼鏡20の設置領域を白表示し、それ以外の領域を黒表示する。ここでは、画面上部を用いてτ−t曲線の時点Bを検出するために、表示装置10は、表示部11の画面上部を白表示する。
【0092】
ユーザーは、シャッター眼鏡20を表示部11の画面上部にかざして、キャリブレーションの準備ができると、例えばキャリブレーション・ボタン27を押下操作する。そして、シャッター眼鏡20は、通信部22を介して、表示装置10にキャリブレーションの準備ができたことを通知する。
【0093】
表示装置10は、通知を受け取ると、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させるとともに、白黒映像の切り換えに同期した基準パルスを通信部12から通知する。
【0094】
これに対し、シャッター眼鏡20側では、基準パルスに基づいて右眼用シャッター21Rを開閉動作させる。このとき、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしながら、右眼用シャッター21Rの透過光を検出する光センサー25の出力パルス幅tを測定して、τ−t曲線を描く。そして、光センサー25の出力パルス幅tがt=0からt>0になる時点Bの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τBを検出し終えると、通信部22を介して表示装置10に通知する。
【0095】
表示装置10は、時点Bの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τBを検出した旨の通知を受け取ると、続いて、表示部11の画面下部を用いてτ−t曲線の時点Aを検出するために、表示装置10は、表示部11の画面下部を白表示する。
【0096】
ユーザーは、シャッター眼鏡20を表示部11の画面下部にかざして、キャリブレーションの準備ができると、例えばキャリブレーション・ボタン27を押下操作する。そして、シャッター眼鏡20は、通信部22を介して、表示装置10にキャリブレーションの準備ができたことを通知する。
【0097】
表示装置10は、通知を受け取ると、表示部11でフレーム毎に黒、白、黒、白、黒、…の映像を表示させるとともに、白黒映像の切り換えに同期した基準パルスを通信部12から通知する。
【0098】
これに対し、シャッター眼鏡20側では、基準パルスに基づいて右眼用シャッター21Rを開閉動作させる。このとき、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしながら、右眼用シャッター21Rの透過光を検出する光センサー25の出力パルス幅tを測定して、τ−t曲線を描く。そして、光センサー25の出力パルス幅tがt>0からt=0になる時点Aの右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τAを検出する。
【0099】
シャッター眼鏡20は、光センサー25の出力パルス幅t=0となる区間の中央である時点Pにおける右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τに決定する。また、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させたところを左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQに決定する。そして、シャッター眼鏡20は、キャリブレーションにより得られた右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP及び左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQを、通信部22を介して表示装置20に通知する。
【0100】
表示装置10は、キャリブレーション結果の通知を受け取ると、これを格納するとともに、キャリブレーションのためのフレーム毎の黒、白示を終了し、通常の映像表示に戻る。
【0101】
その後、表示装置10は、映像信号の切り換えに同期した基準パルスに対し補正量τP、τQだけの遅延をかけて、補正後の基準パルスをシャッター眼鏡20に通知する。
【0102】
最後に、シャッター眼鏡20の光センサー25の実装方法について説明する。
【0103】
眼鏡フレームは、一般に、耳に掛けるための左右のテンプル(眼鏡のつる)を有し、テンプルはレンズを固定するリムに蝶番で支持され、折り畳むことができる。図18には、左側のテンプルの内側に光センサー25が取り付けられたシャッター眼鏡20の構成例を示している。また、図19には、このシャッター眼鏡20の左右のテンプルを折り畳んだ様子を示している。図19から分かるように、テンプルを折り畳むことによって、左のテンプルに取り付けられた光センサー25は、右眼用レンズの透過光を受光できる場所に位置する。したがって、ユーザーは、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なうときには、図20に示すように、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡20を、フレーム毎に黒、白、黒、…の映像表示を切り換える表示装置10の画面にかざすという操作を行なうだけでよい。
【0104】
図21には、シャッター開閉タイミングのキャリブレーションを行なう際のユーザーの操作手順をフローチャートの形式で示している。
【0105】
まず、ユーザーは、キャリブレーション・ボタン27を押下操作するなどして、表示装置10に対してキャリブレーションの開始を通知する。これによって、表示装置10側では、信号発生器13から、キャリブレーション用のフレーム毎の黒、白、黒、…の映像信号が出力される(ステップS2101)。
【0106】
そして、表示装置10の表示部11の画面には、フレーム毎の黒、白、黒、…の画像が表示される(ステップS2102)。但し、映像の切り換わりは、基準パルスに対して遅延している。
【0107】
続いて、ユーザーは、図19に示したように、シャッター眼鏡20の左右のテンプルを折り畳む(ステップS2103)。そして、図20に示したように、左右のテンプルを折り畳んだシャッター眼鏡20を、フレーム毎に黒、白、黒、…の映像表示を切り換える表示装置10の画面にかざす(ステップS2104)。
【0108】
ユーザーがキャリブレーション・ボタン27を押下操作すると、シャッター眼鏡20内では、キャリブレーション処理が開始する(ステップS2105)。すなわち、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τを徐々に大きくしながら、右眼用シャッター21Rの透過光を検出する光センサー25の出力パルス幅tを測定して、τ−t曲線を描く。そして、このτ−t曲線に基づいて、右眼用シャッター21Rのタイミング補正量τP並びに左眼用シャッター21Lのタイミング補正量τQを決定する。
【0109】
ユーザーは、キャリブレーション処理が行われている1〜2秒の間、表示装置10の画面にかざしたシャッター眼鏡20を動かさずに保持する(ステップS2106)。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0111】
本明細書では、複数の互いに異なる映像を時分割で表示する表示装置として液晶ディスプレイを用いた実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、旧来のCRT(Cathod Ray Tube)ディスプレイの他、プラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)、エレクトロ・ルミネッセンス(EL)パネルを用いることができる。
【0112】
また、本明細書では、シャッター眼鏡と表示装置とを接続する通信手段として、例えばIEEE802.15.4などのワイヤレス・ネットワークを適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。シャッター眼鏡と表示装置間で双方向の通信が可能であれば、その他の無線通信技術あるいは有線通信技術を適用することも可能である。
【0113】
本明細書で説明した実施形態における一連の処理は、ハードウェア、ソフトウェアのいずれにより行なうこともできる。当該処理をソフトウェアによって実現する場合には、ソフトウェアにおける処理手順をコンピューター可読形式に記述したコンピューター・プログラムを所定のコンピューターにインストールして実行すればよい。また、このコンピューター・プログラムは、液晶ディスプレイなどの製品に組み込んでおくこともできる。
【0114】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【符号の説明】
【0115】
1…時分割立体映像表示システム
10…表示装置
11…表示部
12…通信部
13…信号発生器
20…シャッター眼鏡
21L…左眼用シャッター、21R…右眼用シャッター
22…通信部
23…処理部
24L…左眼用シャッター駆動部、24R…右眼用シャッター駆動部
25…光センサー
26…信号処理部
27…キャリブレーション・ボタン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッター眼鏡のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を備え、
前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信し、
前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
キャリブレーション装置。
【請求項2】
前記表示装置がフレーム毎に白画面と黒画面を交互に切り換える際に、
前記処理部は、白画面の表示期間とシャッターの開成期間の重なる期間に表示光が前記レンズを透過して前記光センサーから出力される出力パルス幅tを、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングの補正量τを変更しながら測定し、得られるτ−t曲線に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量を決定する、
請求項1に記載のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記光センサーは、前記シャッター眼鏡の右眼用レンズの透過光を受光する位置に配設され、
前記表示装置がフレーム毎に左眼用映像としての白画面と右眼用映像としての黒画面を交互に切り換える際に、前記τ−t曲線において、出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAと、出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、時点A及び時点Bの中央となる時点Pに基づいて右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を決定するとともに、右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させた時点Qで左眼用シャッターのタイミング補正量τQを決定する、
請求項2に記載のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記表示装置の画面上部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、前記表示装置の画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求める、
請求項3に記載のキャリブレーション装置。
【請求項5】
レンズ毎のシャッターと、少なくとも一方のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、第1の通信部と、前記シャッターの駆動を制御する制御部を備えたシャッター眼鏡と、
表示部と、前記表示部に表示する映像信号を発生する信号発生器と、第2の通信部を備えた表示装置と、
で構成され、
前記表示装置は、レンズ毎の映像を時分割で切り換えて表示するとともに、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記第2の通信部から送信し、
前記シャッター眼鏡の前記制御部は、前記第1の通信部で受信した前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、レンズ毎のシャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
映像表示システム。
【請求項6】
前記シャッター眼鏡は、前記の決定した補正量τに関する情報を、前記第1の通信部から前記表示装置に送信し、
前記表示装置は、前記シャッター眼鏡から送信された補正量τに関する情報を前記第2の通信部で受信して格納する、
請求項5に記載の映像表示システム。
【請求項7】
前記表示装置は、格納した補正量τに関する情報を、前記第2の通信部からシャッター眼鏡に送信する、
請求項6に記載の映像表示システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記基準パルスを前記補正量τで補正してから送信する、
請求項6に記載の映像表示システム。
【請求項9】
レンズと、
レンズ毎に取り付けられたシャッターと、
前記レンズを支持するリムと、
前記リムに折り畳み可能に取り付けられたテンプルと、
少なくとも一方のテンプルの内側に、折り畳んだ状態で少なくとも一方のレンズの透過光を受光できるように配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を具備するシャッター眼鏡。
【請求項10】
前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信し、
前記テンプルを折り畳んで前記光センサーが前記少なくとも一方のレンズの透過光を受光しながら、前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
請求項9に記載のシャッター眼鏡。
【請求項11】
前記の決定した補正量τに関する情報を前記通信部から前記表示装置に送信する、
請求項10に記載のシャッター眼鏡。
【請求項1】
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッター眼鏡のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を備え、
前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信し、
前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
キャリブレーション装置。
【請求項2】
前記表示装置がフレーム毎に白画面と黒画面を交互に切り換える際に、
前記処理部は、白画面の表示期間とシャッターの開成期間の重なる期間に表示光が前記レンズを透過して前記光センサーから出力される出力パルス幅tを、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングの補正量τを変更しながら測定し、得られるτ−t曲線に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量を決定する、
請求項1に記載のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記光センサーは、前記シャッター眼鏡の右眼用レンズの透過光を受光する位置に配設され、
前記表示装置がフレーム毎に左眼用映像としての白画面と右眼用映像としての黒画面を交互に切り換える際に、前記τ−t曲線において、出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAと、出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、時点A及び時点Bの中央となる時点Pに基づいて右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)を決定するとともに、右眼用シャッターのタイミング補正量τP(=(τB―τA)/2)から位相を180度だけ反転させた時点Qで左眼用シャッターのタイミング補正量τQを決定する、
請求項2に記載のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記表示装置の画面上部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt=0からt>0になった時点Bの補正量τBを求め、前記表示装置の画面下部に前記シャッター眼鏡を設置した状態で出力パルス幅tがt>0からt=0になった時点Aの補正量τAを求める、
請求項3に記載のキャリブレーション装置。
【請求項5】
レンズ毎のシャッターと、少なくとも一方のレンズの透過光を受光する位置に配設された光センサーと、第1の通信部と、前記シャッターの駆動を制御する制御部を備えたシャッター眼鏡と、
表示部と、前記表示部に表示する映像信号を発生する信号発生器と、第2の通信部を備えた表示装置と、
で構成され、
前記表示装置は、レンズ毎の映像を時分割で切り換えて表示するとともに、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記第2の通信部から送信し、
前記シャッター眼鏡の前記制御部は、前記第1の通信部で受信した前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、レンズ毎のシャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
映像表示システム。
【請求項6】
前記シャッター眼鏡は、前記の決定した補正量τに関する情報を、前記第1の通信部から前記表示装置に送信し、
前記表示装置は、前記シャッター眼鏡から送信された補正量τに関する情報を前記第2の通信部で受信して格納する、
請求項5に記載の映像表示システム。
【請求項7】
前記表示装置は、格納した補正量τに関する情報を、前記第2の通信部からシャッター眼鏡に送信する、
請求項6に記載の映像表示システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記基準パルスを前記補正量τで補正してから送信する、
請求項6に記載の映像表示システム。
【請求項9】
レンズと、
レンズ毎に取り付けられたシャッターと、
前記レンズを支持するリムと、
前記リムに折り畳み可能に取り付けられたテンプルと、
少なくとも一方のテンプルの内側に、折り畳んだ状態で少なくとも一方のレンズの透過光を受光できるように配設された光センサーと、
前記光センサーの出力信号を処理する信号処理部と、
映像を画面表示する表示装置と通信する通信部と、
シャッターの開閉タイミングを決定する処理部と、
前記処理部が決定したシャッターの開閉タイミングに従ってシャッター眼鏡のシャッターを開閉動作させるシャッター駆動部と、
を具備するシャッター眼鏡。
【請求項10】
前記通信部は、映像を切り換えるタイミングを示した基準パルスを前記表示装置から受信し、
前記テンプルを折り畳んで前記光センサーが前記少なくとも一方のレンズの透過光を受光しながら、前記処理部は、前記基準パルスに対するシャッターの開閉タイミングを変更したときの前記光センサーの出力の変化に基づいて、シャッターの開閉タイミングの適切な補正量τを決定する、
請求項9に記載のシャッター眼鏡。
【請求項11】
前記の決定した補正量τに関する情報を前記通信部から前記表示装置に送信する、
請求項10に記載のシャッター眼鏡。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2011−217163(P2011−217163A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84112(P2010−84112)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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