説明

キーシステム

【課題】第三者へのキー貸し出しに際し、使用制限のかけられたキーを含んだ複数のキーを持ち歩く必要がないキーシステムを提供する。
【解決手段】車両1のメカニカルキー2に第1トランスポンダ8を内蔵し、エンジンを始動させる際には、車両1との間で第1トランスポンダ8によりID照合を行う。車両1には、例えば車内のグローブボックス内にカードスロット23を設け、このスロット23にIDカード22がセット可能である。このIDカード22には第2トランスポンダ26が内蔵され、IDカード22はメカニカルキー2で行う照合とは異なるコードとして第2トランスポンダコードを発信する。エンジン始動に際しては、メカニカルキー2によるID照合と、IDカード22によるIDカード照合とが共に成立していないと、通常走行ができない状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばメカニカルキーの機械的操作、或いは電子キーによる無線通信操作によって作動対象を作動させるキーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両キーがメカニカルキーの場合、車両所有者がメインで使用するマスターキーと、マスターキーが手元にない時に使用するサブキーとがある。この種の車両キーは、例えば特許文献1に開示されている。このマスターキーにおいては車両の全ての錠を施解錠することが可能であるが、サブキーには一定の使用制限がかけられていることから、例えばサブキーでは車内のグローブボックスを施解錠できないなどの制限がある。このように、サブキーでグローブボックスを施解錠できなくするのは、例えばグローブボックス内に貴重品が収められている場合、これを第三者に勝手に持ち出されることを防ぐ理由からである。
【0003】
ここで、例えばバレットパーキングサービスを使用する際には、自身はマスターキーを所持し、従業員にサブキーを預ける。このように、バレットパーキングサービスを受けるにしても、従業員にサブキーを預ければ、サブキー預け先で車両を動かすことは可能となるものの、このサブキーではグローブボックス施解錠は制限されているので、サブキー預け先に勝手にグローブボックスやトランクを開けられずに済み、グローブボックス内やトランク内の貴重品を盗み出されることに対するセキュリティ性を確保する。
【0004】
また、近年の車両には、実際にキー操作を行わなくともキーのIDコードが無線通信で車両に送られ、このIDコードが車両のそれと一致すればドアロック施解錠やエンジン始動などが許可される電子キーシステムを搭載する車両が多い。この種の電子キーシステムは、例えば特許文献2に開示されている。この電子キーシステムにおいては、車両から発信されるリクエストを受け付けると、それに応答する形で自身のIDコードを返信する電子キーが使用される。
【0005】
通常、この種の電子キー(携帯機)は、無線通信によりドアロック施解錠やエンジン始動を行うことは可能であるものの、グローブボックスの施解錠機構に無線通信機構を設けなければ、この電子キーを用いてグローブボックスの施解錠は行えない。このため、グローブボックスの施解錠が行えるように、マスターキーと同等の機能を有するメカニカルキーを電子キーとは別に用意しておき、グローブボックスを施解錠するに際しては、このメカニカルキーを使用することによって行う形態をとることになる。
【特許文献1】特開平6−167148号公報
【特許文献2】特開2004−025937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、現状のバレットパーキングサービスを使用するためには、車両を従業員に預けるに際してサブキーを貸し出すことから、車両キーがメカニカルキーの場合、何時もマスターキー及びサブキーの両方を所持している必要があり、2本のキーを所有することが煩わしく感じる場合がある。また、車両キーが電子キー(携帯機)の場合はサブキーが元来無く、バレットパーキングサービスを使用するに際しては、車両に新たなIDとして追加コードを登録することによりサブキーを用意する方法をとることになるが、この場合においても複数の車両キーを手元で所持しなければならない問題が生じる。
【0007】
本発明の目的は、第三者へのキー貸し出しに際し、使用制限のかけられたキーを含んだ複数のキーを持ち歩く必要がないキーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、キーの持つ固有のキーコードが、前記キーにより作動される作動対象に登録されているか否かを判定する第1識別照合を行い、前記作動対象の作動を許可するに際して前記第1識別照合の成立を条件とする第1照合手段を備えたキーシステムにおいて、携帯可能な通信媒体から発信された当該通信媒体固有の媒体コードを、無線通信を介して受信する受信手段と、前記受信手段で受信した前記媒体コードが前記作動対象に登録されているか否かを判定する第2識別照合を行う第2照合手段と、前記第1識別照合及び前記第2識別照合のうちの一方が成立していなければ、前記第1識別照合の成立により許可する前記作動対象の作動に制限を加える制限手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、作動対象を作動させるに際して、手元にキー及び通信媒体の両方が存在していれば、キーによる第1識別照合と、通信媒体による第2識別照合との両方が成立することになり、この場合においては通常通りに作動対象を作動させることが可能となる。一方、手元にキー及び通信媒体の何れかが存在しなければ、第1識別照合及び第2識別照合の何れかが不成立となり、作動機能に制限が加えられた状態で作動対象の作動が許可される。
【0010】
このため、例えば正規使用者が作動対象を作動させるに際しては、正規使用者であればキー及び通信媒体の両方を所有しているはずであるから、作動対象を通常通りに作動させることが可能となる。一方、他者に作動対象の作動をさせる場合、正規使用者は第三者にキー及び通信媒体の何れかを貸し渡す形態をとる。従って、第三者はキー及び通信媒体の一方で作動対象を作動させることになるが、この場合においては作動対象の作動には制限が加えられている。従って、第三者に作動対象を無条件に使用される状況が生じ難くなり、作動対象のセキュリティ性が確保される。
【0011】
従って、本発明においては、キー貸出先に作動対象の作動に制限を持たせるような構造を採用したとしても、これは通常持ち歩くキーと、予め作動対象にセットしておく通信媒体とを用いて行うので、例えばマスターキー及びサブキーの2本のキーを常時持ち歩く必要がなくなり、キー携帯性の面において便利である。また、このキー携帯性を向上するに際して本発明の構造を用いれば、例えばマスターキーにサブキーを組み込むなどの構造変更する必要もないことから、構造変更に伴うキー大型化の問題も生じない。
【0012】
本発明では、前記制限手段は、少なくとも前記第1識別照合が成立すること条件に、制限の有無は別として前記作動対象の作動を許可することを要旨とする。
この構造によれば、キーによる第1識別照合が成立せずに、通信媒体による第2識別照合のみが成立していただけでは、作動対象の作動が許可されない。ところで、この種のキーは正規使用者が常時持ち歩くことから、盗難性が低く、本発明のようにキーを用いた第1識別照合を作動対象の作動許可条件とすれば、作動対象の不正使用が生じ難い。
【0013】
本発明では、前記作動対象に設けられ、前記通信媒体をその取り付け状態で保持する保持機構を備えたことを要旨とする。
この構成によれば、通信媒体を作動対象に取り付けるに際しては、これを保持機構にセットする取り付け状態をとることになる。従って、通信媒体の紛失や、作動対象に対する通信媒体の位置が不確定であることに起因する通信不良などの問題が生じ難い。
【0014】
本発明では、前記保持機構に前記通信媒体が取り付けられたことを検出する検出手段と、前記検出手段の検出信号を基に、前記通信媒体が前記保持機構に取り付けられたと判断した際に、前記通信媒体との間の前記無線通信を開始させる通信制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、通信媒体は作動対象の発信信号に応答する形で自身の媒体コードを返信する通信形態をとることから、例えば通信媒体に信号発信用のスイッチ類を設ける必要がなくなり、通信媒体の小型化や部品点数削減が可能となる。
【0016】
本発明では、前記通信制御手段は、前記検出手段の検出信号を基に、前記通信媒体が前記保持機構に取り付けられと判断した際に、発信手段から駆動電波を前記通信媒体に向けて発信させるとともに、前記通信媒体は、前記駆動電波を受信すると当該駆動電波を駆動源として起動し、前記媒体コードを前記作動対象に送信することを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、通信媒体は作動対象から送信される駆動電波を自身の電源とするので、通信媒体に電源を搭載する必要がなくなり、通信媒体の更なる小型化や部品点数削減が可能となる。
【0018】
本発明では、前記キーは、当該キーにより前記作動対象を作動させる際において、前記キーコードとしてキー溝が設けられたキープレートを前記作動対象のキーシリンダに挿入して回動操作するメカニカルキーであって、前記第1照合手段は、前記メカニカルキーが前記キーシリンダに挿し込まれた際に、前記メカニカルキーの前記キー溝が前記キーシリンダに対応しているか否かを判定する機械操作照合を、前記第1識別照合として行うことを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、例えばマスターキーを第三者に貸し出したとしても、通信媒体を作動対象から抜き取り、これを自身が所持すれば、マスターキーを使用して作動対象を作動させたとしても、作動対象には使用制限がかけられた状態となる。ところで、キーがメカニカルキーの場合、第三者にキーを貸し渡すためには、従来の場合ならば、使用制限がかけられるサブキーを第三者に貸し出す形態をとることから、マスターキーとサブキーとの2本のキーを所有する必要がある。しかし、本構成においては、サブキーを持ち歩く必要がなくなり、マスターキーとサブキーの2本のキーを常に所持する必要がない。
【0020】
本発明では、前記キーは、前記作動対象から駆動電波を受信すると起動を開始するとともに、前記キー溝とは異コードの第2キーコードを前記キーコードとして無線通信で発信可能な通信タグを備え、前記第1照合手段は、前記第1識別照合を行うに際して、前記第2キーコードの成立有無も照合成立判定に含むことを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、第1識別照合の照合成立条件は、メカニカルキーのキー溝と、このメカニカルキーから発信される第2キーコードとの2種類となることから、例えばキー溝のみの照合成立を条件とした場合に比べて、キーが正規のキーか否かを判別する際にその精度が高くなり、不正使用防止等のセキュリティ性向上に効果が高い。
【0022】
本発明では、前記キーは、自身のメモリに登録された前記キーコードを、無線通信により前記作動対象に送信する電子キーであって、前記第1照合手段は、前記受信手段を介して前記キーの前記キーコードを受信すると、当該キーの前記キーコードが前記作動対象に登録されているか否かを判定する無線通信照合を、前記第1識別照合として行うことを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、電子キーによる無線通信で作動対象を作動させることが可能となるので、この種の作動対象を作動させる際に、キーをキーシリンダに挿し込んで回動させる機械操作が不要となるので、簡単な操作で作動対象を作動させることが可能となる。
【0024】
本発明では、前記電子キーには、前記作動対象を作動させる際において、キー溝が設けられたキープレートを前記作動対象のキーシリンダに挿入して回動操作する収納用メカニカルキーが収納されるとともに、前記収納用メカニカルキーは、前記作動対象の各種作動において、前記電子キーの無線通信では操作が行えない作動に関して操作が可能となっていることを要旨とする。
【0025】
この構成によれば、電子キーにメカニカルキーを収納しておけば、作動対象において電子キーで操作できない作動についても、メカニカルキーを使用することにより、その作動も操作することが可能となる。
【0026】
本発明では、前記通信媒体には、前記電子キーに収納された前記収納用メカニカルキーを収納可能な収納機構が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、電子キーから抜き出した収納用メカニカルキーを、通信媒体に収納しておくことが可能となり、抜き出した後の収納用メカニカルキーを無くしてしまう心配が生じ難い。
【0027】
本発明では、前記作動対象には、内部に前記保持機構が配置された収納ケースを施解錠する施解錠手段が設けられ、前記施解錠手段は、前記キーとの間の第1識別照合の成立を条件に開状態となることを要旨とする。
【0028】
この構成によれば、キーを所持していないと、施錠状態の施解錠手段を解錠することができないので、施錠手段により施錠された収納ケース内の通信媒体を取り出すことができず、通信媒体の盗難防止等に効果が高い。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、第三者へのキー貸し出しに際し、使用制限のかけられたキーを含んだ複数のキーを常時持ち歩く必要性を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したキーシステムの第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0031】
図1に示すように、車両1には、車内に設けられたステアリングホイールの近傍に、メカニカルキー2を挿し込んでそのキープレート3のキー溝(キーコード)3aが正しいか否かを判別するキーシリンダ4が設けられている。このメカニカルキー2は、通常のマスターキーに相当するキーであって、車両1の各種作動(ドア施解錠、エンジン始動、グローブボックス施解錠、トランク全開)に関して操作することが可能である。なお、車両1が作動対象に相当し、メカニカルキー2がキーを構成する。
【0032】
キーシリンダ4には、ACC系やエンジン系に電気的に繋がるイグニッションスイッチ5が接続されている。キーシリンダ4に挿し込まれたメカニカルキー2がオフ位置、ACC位置、IG位置及びエンジンスタート位置の4位置の間で回動操作されると、その回動操作位置に応じてイグニッションスイッチ5のスイッチ状態が切り換わる。
【0033】
キーシリンダ4には、エンジン6の点火制御や燃料噴射制御を行うエンジンECU7がイグニッションスイッチ5を介して接続されている。メカニカルキー2がキーシリンダ4に対応する正規のキーであって、そのメカニカルキー2がキーシリンダ4に挿し込まれてエンジンスタート位置に回動操作されると、イグニッションスイッチ5のスタータリレーがオン状態となり、エンジンECU7がエンジン6の始動を開始する。
【0034】
車両1には、メカニカルキー2に埋設された第1トランスポンダ8を用いて無線通信によりID照合を行うイモビライザーシステム9が搭載されている。イモビライザーシステム9には、このシステムにおいてID照合を行うイモビライザーECU10が設けられている。このイモビライザーECU10は、車内バス11を通じてエンジンECU7に接続されるとともに、キーシリンダ4の外周に沿って複数回巻装された円環状の第1コイルアンテナ12が増幅器12aを介して接続されている。また、キーシリンダ4には、メカニカルキー2がキーシリンダ4に挿入(半挿し)された事を検出するキースイッチ13が設けられ、これはイモビライザーECU10に接続されている。なお、第1トランスポンダが通信タグに相当し、イモビライザーECU10が第1照合手段、第2照合手段、制限手段及び通信制御手段を構成する。
【0035】
イモビライザーECU10は、キースイッチ13のスイッチ信号からメカニカルキー2がキーシリンダ4に挿し込まれた事を検出すると、第1コイルアンテナ12から第1駆動電波Sv1を断続的に発信させる。第1トランスポンダ8は、この第1駆動電波Sv1を受信すると、これを電源として起動を開始し、自身の固有コードである第1トランスポンダコード(キーコード又は第2キーコード)を乗せた第1トランスポンダ信号Sk1を車両1に向けて発信する。イモビライザーECU10は、このトランスポンダコードを受信すると、メカニカルキー2側のトランスポンダコードと、車両1に登録されたトランスポンダコードを比較することにより、メカニカルキー2との間のイモビライザー照合としてキー側トランスポンダ照合を行う。
【0036】
イモビライザーECU10は、キー側トランスポンダ照合が成立すれば、その照合成立の旨をエンジンECU7に通知する。キー側トランスポンダ照合成立の通知を受けたエンジンECU7は、自身が持つ暗号コードをイモビライザーECU10に出力する。エンジンECU7から暗号コードを受けたイモビライザーECU10は、この暗号コードを参照することにより、エンジンECU7がペアを成すものか否かを判定する。イモビライザーECU10は、これらの照合が成立すれば、例えば自身のメモリにキー側トランスポンダ照合成立フラグF1を立てたりすることなどにより、エンジン始動を許可すべく第1トランスポンダ8によるイモビロックを解除する。
【0037】
図2に示すように、車内の助手席前部には、ダッシュボードに組み込まれた収納スペースとしてグローブボックス14が設けられている。このグローブボックス14には、グローブボックス14を施解錠するシリンダ錠15が設けられている。このシリンダ錠15は、例えば長溝のキー孔15aが垂直方向に位置するときが解錠状態(図2(a)に示す状態)であって、キー孔15aにメカニカルキー2を挿し込み、このメカニカルキー2を例えば時計回りに90度回動させてキー孔15aを左右方向に位置させ、この状態でメカニカルキー2を引き出すと施錠状態(図2(b)に示す状態)となる錠である。なお、グローブボックス14が収納ケースに相当し、シリンダ錠15が施解錠手段を構成する。
【0038】
図3に示すように、運転席ドア16の内側面には、トランク17(図1参照)を開状態(全開状態)にする際に操作するトランクオープンスイッチ18が設けられている。このトランクオープンスイッチ18は、押し操作した際にオン状態となるプッシュスイッチであって、トランク17が閉状態の際に押し操作されると、トランクロックが解錠された状態となり、トランク17が持ち上げられて自動全開する。
【0039】
図4に示すように、グローブボックス14の内部には、トランク17(図1参照)の開操作を制限するトランクオープンキャンセルスイッチ19が設けられている。このトランクオープンキャンセルスイッチ19は、押し操作が行われるごとにオンとオフが切り換わるプッシュスイッチである。トランクオープンキャンセルスイッチ19は、例えばノブ19aが飛び出た状態の時にオン状態となり、トランクオープンスイッチ18によるトランク17の自動全開操作を不可状態とする。また、トランクオープンキャンセルスイッチ19は、オン状態の時に押し操作されてノブ19aが引き込んだ状態になると、スイッチがオフ状態となり、トランクオープンスイッチ18によるトランク17の自動全開操作を可能とする。
【0040】
図1に示すように、車両1には、トランクロックを制御するトランクロックECU20が設けられている。トランクロックECU20は、車内バス11を通じてイモビライザーECU10に接続されるとともに、トランクロックの駆動源となるトランクロックモータ21に接続されている。トランクロックECU20は、トランクオープンスイッチ18及びトランクオープンキャンセルスイッチ19からの各々のスイッチ信号を基に、トランクロックモータ21を駆動制御することにより、トランクロックを施解錠する。
【0041】
図4に示すように、グローブボックス14の内部には、メカニカルキー2とは別の照合として、車両1との間で無線通信によりID照合を行うIDカード22が収納されている。グローブボックス14の内部には、長細形状の挿入穴23aを有したカードスロット23が設けられている。IDカード22は、携帯可能なサイズで平板状に形成されるとともに、カードスロット23の挿入穴23aに対して着脱可能に挿入されている。なお、IDカード22が通信媒体に相当し、カードスロット23が保持機構に相当する。
【0042】
図1に示すように、イモビライザーECU10には、カードスロット23の外周に沿って複数回巻装された第2コイルアンテナ24が増幅器24aを介して接続されている。また、カードスロット23には、IDカード22がカードスロット23に挿入(半挿し)された事を検出するカードスイッチ25が設けられ、これはイモビライザーECU10に接続されている。更に、IDカード22には、第1トランスポンダ8とは異なるコードとして第2トランスポンダコード(媒体コード)が登録された第2トランスポンダ26が埋設されている。なお、第2コイルアンテナ24が受信手段及び発信手段を構成する。
【0043】
イモビライザーECU10は、カードスイッチ25のスイッチ信号からIDカード22がカードスロット23に挿し込まれた事を検出すると、第2コイルアンテナ24から第2駆動電波Sv2を断続的に発信させる。第2トランスポンダ26は、この第2駆動電波Sv2を受信すると、これを電源として起動を開始し、自身のトランスポンダコードを乗せた第2トランスポンダ信号Sk2を車両1に向けて発信する。イモビライザーECU10は、このトランスポンダコードを受信すると、IDカード22側のトランスポンダコードと、車両1に登録されたトランスポンダコードとを比較することにより、IDカード22との間のイモビライザー照合としてIDカード照合を行う。イモビライザーECU10は、IDカード照合が成立すれば、例えば自身のメモリにIDカード照合成立フラグF2を立てたりすることなどにより、IDカード照合が成立した事を認識する。
【0044】
イモビライザーECU10には、メカニカルキー2を用いてエンジン6を始動操作するに際して、IDカード22を用いたID照合が成立していなければ、車両1の走行機能を制限する走行制限機能が設けられている。即ち、この走行制限機能は、メカニカルキー2をキーシリンダ4に挿し込んでこれを回動操作することによりエンジン6を始動するに際して、IDカード22がカードスロット23に取り付けられていなければ、車両1の走行機能を制限する機能である。なお、カードスイッチ25が検出手段に相当する。
【0045】
次に、本例のキーシステムの動作を述べつつ、走行制限機能の詳細を説明する。
まず、車両所有者が車両1を運転するに際しては、閉じられたグローブボックス14を開操作し、グローブボックス14の内部に配置されたカードスロット23にIDカード22を挿し込んだ状態にする。このとき、グローブボックス14のシリンダ錠15が施錠状態であれば、メカニカルキー2を用いてシリンダ錠15を解錠状態に操作することにより、グローブボックス14を開操作する。
【0046】
イモビライザーECU10は、IDカード22がカードスロット23に挿し込まれた事をカードスイッチ25のスイッチ信号により認識すると、第2コイルアンテナ24から第2駆動電波Sv2を断続的に発信させ、IDカード22内の第2トランスポンダ26との間でIDカード照合を行う。イモビライザーECU10は、第2トランスポンダ26のトランスポンダコードが車両1のそれと一致することにより、IDカード照合が成立すれば、自身のメモリにIDカード照合成立フラグF2を立てた状態にする。
【0047】
続いて、運転者がエンジン6を始動するに際しては、メカニカルキー2をキーシリンダ4に挿し込む動作をとる。このとき、イモビライザーECU10は、メカニカルキー2がキーシリンダ4に挿し込まれた事をキースイッチ13により認識すると、第1コイルアンテナ12から第1駆動電波Sv1を断続的に発信させ、メカニカルキー2に内蔵された第1トランスポンダ8との間でキー側トランスポンダ照合を行う。イモビライザーECU10は、第1トランスポンダ8のトランスポンダコードが車両1のそれと一致することにより、キー側トランスポンダ照合が成立すれば、自身のメモリにキー側トランスポンダ照合成立フラグF1を立てた状態にする。
【0048】
イモビライザーECU10は、キー側トランスポンダ照合とIDカード照合との両方のID照合成立を認識している場合、両照合成立済みの通知をエンジンECU7に出力する。両照合成立済みの通知を受けたエンジンECU7は、車両1に走行制限を加えない制限無しエンジン始動スタンバイ状態となる。なお、フラグF1,F2をクリアするタイミングは、例えばイモビライザーECU10がエンジンECU7に照合成立結果を通知する時点が採用される。
【0049】
メカニカルキー2をキーシリンダ4に挿入した際、メカニカルキー2のキー溝3aとキーシリンダ4内のタンブラー(図示略)との溝関係が一致してキー溝照合(機械操作照合)が一致すれば、そのメカニカルキー2は回動操作が可能である。キーシリンダ4に挿入されたメカニカルキー2がエンジンスタート位置に回動操作されると、イグニッションスイッチ5のスタータリレーがオン状態となるが、これを検出したエンジンECU7は、イモビライザーECU10から照合成立に関してどのような通知を受け付けたか識別する。エンジンECU7は、このときにイモビライザーECU10から両照合成立済みの通知を受け付けていれば、カードスロット23に正規のIDカード22が取り付けられていると認識し、車両走行に制限を加えることなくエンジン6を作動させる。
【0050】
ここで、車両1を駐車するに際して、例えばバレットパーキングサービスを使用する場合がある。車両1をバレットパーキングサービスに預ける場合、運転者はグローブボックス14を開操作してグローブボックス14内のIDカード22をカードスロット23から抜き取り、IDカード22は自身で所持し、メカニカルキー2をサービス員に手渡す。メカニカルキー2を受け取ったサービス員は、エンジン6を始動するに際してメカニカルキー2をキーシリンダ4に挿し込む。このとき、IDカード22はカードスロット23に取り付けられていないことから、イモビライザーECU10は、キー側トランスポンダ照合の成立は認識するものの、IDカード照合は不成立であると認識する。
【0051】
イモビライザーECU10は、IDカード照合の成立を認識せず、キー側トランスポンダ照合のみの成立を認識している場合、キー側のみ照合成立済みの通知をエンジンECU7に出力する。キー側のみ照合成立済みの通知を受け付けたエンジンECU7は、車両1に走行制限を加える制限有りエンジン始動スタンバイ状態となる。
【0052】
キーシリンダ4に挿入されたメカニカルキー2がエンジンスタート位置に回動操作されると、イグニッションスイッチ5のスタータリレーがオン状態となるが、これを検出したエンジンECU7は、イモビライザーECU10から照合成立に関してどのような通知を受け付けたか識別する。エンジンECU7は、このときにイモビライザーECU10からキー側のみ照合成立済みの通知を受け付けていれば、カードスロット23にIDカード22が取り付けられていないと認識し、車両走行に制限を加えてエンジン6を作動させる。従って、サービス員は借り受けた車両1を走行制限条件下でのみ運転することが可能となる。
【0053】
ここで、走行制限の一例としては、例えば車両1の走行可能速度を低速(例えば時速30km)に制限する走行速度制限があり、これはエンジンECU7が実施する。車両走行制限状態となったエンジンECU7は、アクセルペダルが踏み込まれて車速が閾値に到達すると、アクセルペダルがそれ以上操作されても燃料噴射量を一定量に制限することにより、車速を低速に抑える。
【0054】
また、これ以外の走行制限の例としては、サービス員にメカニカルキー2を貸し出した地点から、一定の半径内のみを走行可能とする走行範囲制限がある。この制限の具体例としては、エンジンECU7はIDカード22がカードスロット23にセットされていない状態での車両1の動き出しを認識すると、車両移動開始の通知をカーナビゲーション装置27に出力する。カーナビゲーション装置27は、GPS等により現在位置を認識していることから、その動き出し地点が認識可能であり、動き出し地点からの移動距離が閾値(例えば1km)を超えないか否か逐次監視する。カーナビゲーション装置27は、動き出し地点からの走行距離が閾値を超えたと判断すると、許容距離超過の通知をエンジンECU7に出力する。許容距離超過の通知を受けたエンジンECU7は、その通知を受けた時点でエンジン6を強制的に停止する。
【0055】
上記以外の走行制限の例としては、トランクロックを電気的にロックするトランク操作制限がある。ところで、イモビライザーECU10は、ID照合結果をエンジンECU7だけでなく、トランクロックECU20にも出力する。即ち、イモビライザーECU10は、キー側トランスポンダ照合及びIDカード照合の両照合が成立していれば両照合成立済みの通知を、キー側トランスポンダ照合のみ成立していればキー側のみ照合成立済みの通知をトランクロックECU20に出力する。
【0056】
トランクオープンスイッチ18がオン操作された際、この操作を検出したトランクロックECU20は、イモビライザーECU10から照合成立に関してどのような通知を受け付けたか識別する。トランクロックECU20は、このときにキー側のみ照合成立済みの通知を受け付けていれば、トランク17の開操作を強制的に禁止する。即ち、カードスロット23に正規のIDカード22が挿し込まれていなければ、トランクオープンスイッチ18が押し操作されても、トランクオープンキャンセルスイッチ19のスイッチ状態に関係なく、トランク17が開かない状態となる。
【0057】
一方、トランクロックECU20は、トランクオープンスイッチ18の操作時に両照合成立済みの通知を受け付けていれば、カードスロット23に正規のIDカード22が取り付けられていると認識し、トランクロックの開操作に制限を加えることなくトランク17を全開操作する。即ち、トランクオープンスイッチ18が操作された際に、トランクオープンキャンセルスイッチ19がオフ状態であれば、トランクロックECU20がトランクロックモータ21を駆動してトランクロックを解錠し、トランク17を自動全開させる。
【0058】
さて、バレットパーキングサービスを使用するに際しては、サービス員に対して車両キーを貸し渡すことになるが、車両や車内物品等の盗難に対するセキュリティ性を考慮し、従来の場合に用いるサブキーのような、そのキー自身では操作できる車両機能が制限されたキーを貸し渡す必要がある。即ち、バレットパーキングサービス使用時においては、サービス員にマスターキーを貸し出すのではなく、操作できる車両機能が制限されたサブキーに相当するキーを貸し与える必要がある。
【0059】
そこで、本例の場合においては、バレットパーキングサービスを使用する際には、図5に示すようにIDカード22をカードスロット23から抜き取ってそれを車両所有者が自分で所持し、メカニカルキー2をサービス員に貸し出す形態をとる。車両1からIDカード22が抜き取られると、IDカード照合は成立しないので、マスターキーとしての位置付けにあるメカニカルキー2を所持していたとしても、それだけでは通常走行ができない。従って、メカニカルキー2を渡して車両1を貸し渡したとしても、その貸し渡し先で車両走行機能を制限することが可能となる。
【0060】
また、本例においては、バレットパーキングサービス使用時に、IDカード22を車両1から抜き取ることを前提として、マスターキーとしての位置付けのメカニカルキー2自体が貸し出し可能である。よって、今まではマスターキーとサブキーとの両方を所持する必要があったが、本例においてはこれら2本のキーを所持する必要がなくなり、キーを2本持つことに起因する不便さが解消される。また、本例のようにサブキーを使用せずに車両1を貸し出せるようにしても、これに際してメカニカルキー2の構造を変える必要はないことから、構造変更に伴うキーの大型化の問題も生じない。
【0061】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両使用時においてIDカード22がカードスロット23にセットされていないと、メカニカルキー2のみでは車両使用に制限がかけられた状態となるので、バレットパーキングサービスを使用する際は、IDカード22をカードスロット23から抜き取ってこれを車両所有者が所持し、メカニカルキー2をサービス員に貸し出す形態をとる。従って、バレットパーキングサービスを使用する場合であっても、例えばマスターキーとサブキーとの2本のキーを常時所持する必要がないことから、キーを2本持った際に生じるキー所持の煩わしさを解消できる。
【0062】
(2)IDカード22をカードスロット23から抜いた状態では、トランク17が電気的にロックされる。従って、IDカード22をカードスロット23から抜いておけば、第三者にトランク17を勝手に開けられずに済み、トランク17内に収納した物品を盗難され難くすることができる。また、IDカード22をカードスロット23から抜き出せば、その時点でトランク17が施錠状態となることから、トランクオープンキャンセルスイッチ19をオン操作しなくてもトランク17の開操作を禁止することができ、スイッチ操作の手間を省くこともできる。
【0063】
(3)IDカード22をカードスロット23から抜いた状態では、エンジン始動は許可されているものの、例えばキー貸し出し地点から半径1kmを超える領域への走行や、最高速度が低速に抑えられるなどの走行制限がかかる。従って、バレットパーキングサービス使用時において、メカニカルキー2をサービス員などの第三者に貸し渡したとしても、車両1を盗難され難くすることができる。
【0064】
(4)IDカード22を採用した構造においては、サブキーという概念がないことから、車両1にキー登録を行ってそれをサブキーとしてキー追加する必要性はない。従って、車両キーが複数本存在するような状況にならずに済み、キー盗難の可能性が低減することに伴い車両盗難の発生も生じ難くなる。
【0065】
(5)少なくともメカニカルキー2がないとエンジン6が始動しないことから、仮にIDカード22だけ持っていても、エンジン6が始動できないことになる。従って、常時手元に持っておくメカニカルキー2のID照合成立をエンジン始動の条件とするので、車両1を盗難され難くすることができる。
【0066】
(6)IDカード22を車両1にセットするに際しては、グローブボックス14内に設けたカードスロット23にIDカード22を挿入する形態をとっている。従って、IDカード22がカードスロット23によって保持された取り付け状態をとるので、IDカード22の紛失や、第2コイルアンテナ24に対するIDカード22の位置が不確定であることが原因で生じ得る通信不良などの問題が生じ難い。
【0067】
(7)IDカード22の固有コードとして第2トランスポンダ26を用いたので、この種のトランスポンダは通信先から送られてくる駆動電波を電源に駆動することから、IDカード22に電源を用意する必要がない。従って、IDカード22の小型化、部品点数削減、部品コスト低減などに効果がある。
【0068】
(8)メカニカルキー2に第1トランスポンダ8を設け、エンジン6を始動するに際しては、メカニカルキー2のキー溝照合と、第1トランスポンダ8によるトランスポンダ照合との照合成立をエンジン始動の条件としている。従って、例えばエンジン始動の許可条件をキー溝照合成立のみとした場合に比べ、不正なエンジン始動を生じ難くすることができる。
【0069】
(9)グローブボックス14にシリンダ錠15を設けたので、メカニカルキー2が手元になければ施錠状態のグローブボックス14を開操作することができない。従って、グローブボックス14内のIDカード22をカードスロット23から不正に抜き取られる状況を生じ難くすることができる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図6〜図9に従って説明する。第2実施形態は、第1実施形態とはキー種類が異なるのみであることから、第1実施形態と同様の部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0071】
図1に示すように、車両1には、携帯機28を所有していればメカニカルキー2を用いなくてもドアロック施解錠やエンジン始動を許可するハンズフリーシステム29が搭載されている。車両1には、ハンズフリーシステム29においてID照合を行うスマートECU30が設けられている。このスマートECU30には、車外に設置された車外LF発信機31と、車内に設置された車内LF発信機32と、同じく車内に設置されたRF受信機33とが接続されている。なお、携帯機28がキー(電子キー)を構成し、スマートECU30が第1照合手段を構成する。
【0072】
また、スマートECU30には、ドアロック施解錠を制御するドアECU34が車内バス11を介して接続されている。ドアECU34には、ドアロック施解錠時の駆動源となるドアロックモータ35が接続されている。また、ドアECU34には、ドアの開閉状態を検出するドアカーテシスイッチ36が接続されている。ドアECU34は、ドアカーテシスイッチ36から開信号または閉信号を入力し、ドアが開状態及び閉状態の何れにあるのかを認識することが可能である。
【0073】
スマートECU30には、ドア外側のドアハンドルに設けられたロックボタン37と、ドアハンドルの内部に埋設されたタッチセンサ38とが接続されている。ロックボタン37は、押下操作式のボタンであって、ドアロック解錠時において押し操作されるとドアロックが施錠状態となる。タッチセンサ38は、操作者がドアハンドルをタッチ操作したか否かを検出するセンサであって、ドアロック施錠時において操作者がドアハンドルをタッチ操作したことを検出するとドアロックを解除状態にする。
【0074】
携帯機28には、この携帯機28の無線通信を統括制御する通信制御部39が設けられている。通信制御部39には、LF帯の信号を受信可能な受信回路40と、通信制御部39からの指令に従いRF帯の信号を発信可能な発信回路41とが接続されている。受信回路40は、受信したLF信号を復調するとともに、その復調後の信号を受信データとして通信制御部39に出力する。また、発信回路41は、通信制御部39からの指令に従い、携帯機28のIDコード(キーコード)を乗せたRF帯のID信号Sidを発信可能である。なお、携帯機28には、第1トランスポンダコードを発信する第1トランスポンダ8が埋設されていることとする。
【0075】
車両1が駐車状態(エンジン停止でドア施錠状態)の際、スマートECU30は、車外LF発信機31からID返信要求としてLF帯のリクエスト信号Sreqを発信して車外に通信エリアを形成する。ここで、車外LF発信機31が複数存在する場合には、これらが1つずつ順にリクエスト信号Sreqを発信し、この発信を繰り返す動作をとる。携帯機28がその車外通信エリアに入り込むと、携帯機28は受信回路40でこのリクエスト信号Sreqを受信する。通信制御部39は、このときに受信したLF信号がID返信のリクエストであることを認識すると、自身のメモリに登録されたIDコードを乗せたRF帯のID信号Sidを発信回路41から返信する。
【0076】
スマートECU30は、車外LF発信機31からリクエスト信号Sreqを発信している時、RF受信機33でID信号Sidを受信すると車外通信が確立したと認識し、携帯機28のIDコードと車両1に登録されたIDコードとを比較するID照合として車外照合を行う。スマートECU30は、この車外照合が成立した事を認識すると、停止状態のタッチセンサ38を起動し、このタッチセンサ38で操作者によるハンドルノブのタッチ操作を検出すると、ドアECU34にドアアンロック要求信号を出力する。このドアアンロック要求信号を受けたドアECU34は、ドアロックモータ35を駆動して施錠状態のドアロックを解除する。
【0077】
一方、ドアロックが解錠状態の際、ロックボタン37が押し操作されると、これを検出したスマートECU30は、車外LF発信機31からリクエスト信号Sreqを発信させ、携帯機28との間で車外照合が成立するか否かを確認する。ロックボタン37の操作時に車外照合成立を認識したスマートECU30は、ドアECU34にドアロック要求信号を出力する。このドアロック要求信号を受けたドアECU34は、ドアロックモータ35を駆動して解錠状態のドアロックを施錠する。
【0078】
スマートECU30は、ドアカーテシスイッチ36により運転者が乗車した事を検出すると、車内LF発信機32からリクエスト信号Sreqを発信して車内に通信エリアを形成する。携帯機28がその車内通信エリアに入り込むと、携帯機28はこのリクエスト信号Sreqに応答してID信号Sidを返信する。スマートECU30は、車内LF発信機32からリクエスト信号Sreqを発信している時、RF受信機33で携帯機28のID信号Sidを受信すると車内通信が確立したと認識し、車内にある携帯機28と車両との間でIDコードを比較するID照合として車内照合(無線通信照合)を行い、車内照合成立結果を認識する。スマートECU30は、車内照合成立が成立した際、例えば自身のメモリに車内照合成立フラグF3を立てるなどして照合成立を認識する。
【0079】
車両1のステアリングホイールの近傍には、携帯機28を挿し込み可能なキースロット42が設けられている。キースロット42には、携帯機28がキースロット42に半挿しされたことを検出する半挿し検出スイッチ42aと、携帯機28がキースロット42に全挿しされたことを検出する全挿し検出スイッチ42bとが設けられ、これらはイモビライザーECU10に電気的に接続されている。携帯機28がキースロット42に半挿し状態となると、半挿し検出スイッチ42aがオン信号をイモビライザーECU10に出力し、携帯機28がキースロット42に全挿し状態となると、全挿し検出スイッチ42bがオン信号をイモビライザーECU10に出力する。
【0080】
スマートECU30には、車内の各種電装品の電源を制御する電源ECU43が車内バス11を通じて接続されている。電源ECU43には、エンジン6を始動または停止する際に操作するエンジンスタートスイッチ44が接続されている。この種の車両1においては、シフトレバーが駐車位置(P位置)のとき、ブレーキペダルを踏み込んだ状態でエンジンスタートスイッチ44がオン操作されると、エンジン6が始動する。また、電源ECU43には、アクセサリ電源のオンオフを切り換えるACCリレー45と、イグニッションのオンオフを切り換えるIGリレー46と、スタータモータへの通電を入切りするSTリレー47が接続されている。
【0081】
エンジン6を始動させるに際しては、キースロット42に携帯機28を挿し込む動作をとる。このとき、携帯機28がキースロット42に半挿しされたことを検出したイモビライザーECU10は、携帯機28に内蔵された第1トランスポンダ8との間で、キー側トランスポンダ照合(無線通信照合)を行う。イモビライザーECU10は、キー側トランスポンダ照合が成立すれば、例えば自身のメモリにキー側トランスポンダ照合成立フラグF1を立てたりすることなどにより、キー側トランスポンダ照合の成立を認識する。また、携帯機28がキースロット42に全挿しされると、電源ECU43が起動を開始する。
【0082】
電源ECU43は、シフトレバーが駐車位置のときにブレーキペダルが踏まれながらエンジンスタートスイッチ44がオン操作された事を検出すると、イモビライザーECU10に対してID照合結果を確認する。イモビライザーECU10は、この時に少なくとも車内照合及びキー側トランスポンダ照合が成立していれば、自身のイモビロックを解除し、その時のID照合結果を電源ECU43に応答する。ID照合結果を受け付けた電源ECU43は、車内照合及びキー側トランスポンダ照合(キー側トランスポンダ照合のみでも可:携帯機28の電池切れ)が成立していれば、ACCリレー45、IGリレー46及びSTリレー47をそれぞれオン状態にする。
【0083】
各リレーをオン状態にした電源ECU43は、エンジンECU7に起動信号を出力する。この起動信号を受けたエンジンECU7は、イモビライザーECU10との間で暗号化通信を用い、ID照合成立の確認と、互いがペアを成すECU同士であるか否かの確認(ペアリング)とを行う。エンジンECU7は、車内照合及びキー側トランスポンダ照合(キー側トランスポンダ照合のみでも可:携帯機28の電池切れ)が成立しつつ、更にペアリングも成立していれば、エンジン6の始動を開始する。
【0084】
図7(a),(b)に示すように、携帯機28には、無線通信ではなく実際のキー操作で車両1を操作する際に使用するメカニカルキーとして、エマージェンシーキー48が収納されている。このエマージェンシーキー48は、長板状のキープレート48aと、そのキープレート48aの端部に固着されたノブ48bとから成る。携帯機28のケース部分を成すキー本体28aには、その幅方向端部において、穴形状が細長形状となったキー挿入溝28bがキー本体28aの長さ方向に延びるように形成されている。
【0085】
図7(a)に示すように、エマージェンシーキー48を携帯機28のキー本体28aに収納するに際しては、キープレート48aをキー挿入溝28bに挿入し、ノブ48b内に設けられたバネ材(図示略)で付勢された係止ピン48cを、キー本体28aの係止穴28cに係止することにより行う。また、図7(b)に示すように、エマージェンシーキー48を携帯機28のキー本体28aから取り出すに際しては、ノブ48bの上面に設けられたスイッチ部48dをスライド移動することにより、エマージェンシーキー48の係止ピン48cをそのバネ材に抗してスライド移動させ、係止ピン48cを係止穴28cから離脱させることにより行う。なお、エマージェンシーキー48が収納用メカニカルキーに相当する。
【0086】
図8(a),(b)に示すように、IDカード22には、エマージェンシーキー48のキープレート形状に合わせて穴形状を細長形状に形成したキー挿入溝22aが形成されている。このキー挿入溝22aは、キープレート48aの長さに合わせてIDカード22の長さ方向に延びつつ、しかも穴形状がIDカード22の幅方向に延びるように形成されている。即ち、キー挿入溝22aは、その穴形状がIDカード22の平板方向に沿うように形成されている。
【0087】
エマージェンシーキー48は、図8(b)に示すようにキープレート48aをIDカード22のキー挿入溝22aに圧入状態で挿入することにより、IDカード22に着脱可能な状態で取り付け可能である。IDカード22の角部には、エマージェンシーキー48をIDカード22に取り付けた際に、ノブ48bの上端面がIDカード22の端面と面一となるように切り欠かれた段部22bが形成されている。なお、キー挿入溝22aが収納機構に相当する。
【0088】
次に、本例のキーシステムの動作を以下に説明する。
まず、車両所有者が車両1を運転するに際しては、グローブボックス14内に設けられたカードスロット23にIDカード22を挿し込む動作をとる。このとき、グローブボックス14のシリンダ錠15が施錠状態であれば、このシリンダ錠15は携帯機28の無線通信では解錠不可となっていることから、携帯機28からエマージェンシーキー48を抜き出し、このエマージェンシーキー48を使用してシリンダ錠15を解錠してグローブボックス14を開状態にすることにより、カードスロット23にIDカード22を挿し込む。
【0089】
イモビライザーECU10は、IDカード22がカードスロット23に挿し込まれた事をカードスイッチ25により検出すると、第2コイルアンテナ24から第2駆動電波Sv2を断続的に発信させ、IDカード22内の第2トランスポンダ26との間でIDカード照合を行う。イモビライザーECU10は、IDカード照合成立を認識すれば、自身のメモリにIDカード照合成立フラグF2を立てた状態にする。
【0090】
続いて、運転者がエンジン6を始動するに際しては、運転者はまず携帯機28をキースロット42に挿し込む動作をとる。このとき、携帯機28がキースロット42に半挿し状態になると、イモビライザーECU10は第1コイルアンテナ12から第1駆動電波Sv1を断続的に発信させ、携帯機28内の第1トランスポンダ8との間でキー側トランスポンダ照合を行う。イモビライザーECU10は、このキー側トランスポンダ照合の成立を認識すれば、自身のメモリにキー側トランスポンダ照合成立フラグF1を立てた状態にする。携帯機28がキースロット42に対し半挿し状態から全挿し状態になると、電源ECU43が起動を開始する。
【0091】
シフトレバーが駐車位置の状態で、ブレーキペダルが踏まれつつエンジンスタートスイッチ44が押し操作されると、これを検出した電源ECU43は、イモビライザーECU10にID照合結果を確認する。このとき、イモビライザーECU10は自身のID照合結果の確認に加え、スマートECU30についてもID照合結果を確認し、車内照合及びキー側トランスポンダ照合の両照合の成立について、その照合結果を電源ECU43に返信する。即ち、イモビライザーECU10は、車内照合及びキー側トランスポンダ照合の両照合が成立していればエンジン始動許可通知を、これら両照合が成立していなければエンジン始動不許可通知を電源ECU43に返信する。電源ECU43は、エンジン始動許可通知を受け付けると各種リレー45〜47をオンし、起動信号をエンジンECU7に出力する。
【0092】
ここで、イモビライザーECU10は、電源ECU43にID照合成立結果を通知するに際し、エンジンECU7にもID照合成立結果を通知する。即ち、イモビライザーECU10は、車内照合及びキー側トランスポンダ照合の照合結果に、IDカード照合成立結果を含んだ照合結果をエンジンECU7に通知する。よって、イモビライザーECU10は、車内照合、キー側トランスポンダ照合及びIDカード照合の全照合が成立していれば、制限無しエンジン始動許可通知を、一方でこれら照合においてIDカード照合が成立していなければ、制限有りエンジン始動許可通知をエンジンECU7に出力する。
【0093】
エンジンECU7は、電源ECU43から起動信号を受け付けた際、イモビライザーECU10から入力したID照合成立通知に基づく作動状態で車両1を始動させる。即ち、エンジンECU7は、起動時に際してイモビライザーECU10から制限無しエンジン始動許可通知を受け付けていれば、車両走行に制限を加えずに車両1を作動させ、イモビライザーECU10から制限有りエンジン始動許可通知を受け付けていれば、車両走行に関して制限を加えた状態で走行を許可する。
【0094】
車両所有者がエンジンスタートスイッチ44を押し操作してエンジンスタート操作を行ったとすると、このときカードスロット23にはIDカード22が挿し込まれた状態となっていることから、エンジンECU7はイモビライザーECU10から制限無しエンジン始動許可通知を受け付ける。このため、車両所有者がエンジンスタート操作を行った場合に際しては、エンジンECU7が車両走行に制限を加えることなくエンジン6が始動することになり、車両所有者は通常通りに車両走行することが可能となる。
【0095】
また、バレットパーキングサービスを使用する場合、運転者はグローブボックス14を開操作してIDカード22をカードスロット23から抜き取り、グローブボックス14を閉じた後、グローブボックス14が勝手に開操作されないように、携帯機28からエマージェンシーキー48を抜き出し、このエマージェンシーキー48でシリンダ錠15を施錠する。そして、運転者は、そのエマージェンシーキー48をIDカード22のキー挿入溝22aに挿し込み、IDカード22とエマージェンシーキー48とを一体に組み付ける。運転者は、エマージェンシーキー48が挿し込まれたIDカード22を自身で所持し、エマージェンシーキー48が抜き取られた携帯機28をサービス員に手渡す。
【0096】
この携帯機28を受け取ったサービス員は、エンジン6を始動するに際して、携帯機28をキースロット42に挿し込む。このとき、カードスロット23にはIDカード22が取り付けられていないことから、イモビライザーECU10は、車内照合及びキー側トランスポンダ照合の成立は認識するものの、IDカード照合は不成立であると認識する。
【0097】
シフトレバーが駐車位置の状態で、アクセルペダルが踏まれつつエンジンスタートスイッチ44が押し操作されると、エンジンECU7はイモビライザーECU10から照合成立に関する通知を受け付ける。エンジンECU7は、このときにイモビライザーECU10から制限有りエンジン始動許可通知を受け付けることから、カードスロット23にIDカード22が取り付けられていないと認識し、車両走行に制限を持たせた状態でエンジン6を作動させる。従って、サービス員は借り受けた車両1を走行制限条件下でのみ運転することが可能となる。
【0098】
従って、車両1がハンズフリーシステム29を搭載した車両の場合でも、図9に示すようにIDカード22をカードスロット23から抜き取っておけば、携帯機28をサービス員に渡して車両1を貸し出したとしても、その貸し出し車両は走行機能が制限された状態で使用可能となる。従って、この携帯機28では自由に車両1を動かすことができなくなり、本例においても、貸し出した車両1が第三者により盗難されてしまうような状況が生じ難くなる。
【0099】
また、本例においては、サービス員に携帯機28を貸し出すとしても、この携帯機28からはエマージェンシーキー48が抜き取られていることから、この携帯機28を所持していても、グローブボックス14のシリンダ錠15を解錠することができない。よって、この携帯機28を所持した第三者にグローブボックス14を勝手に開操作される状況が生じ難くなり、グローブボックス14内に貴重品が収められていたとしても、これを盗難される心配が生じ難くなる。
【0100】
さらに、トランク17は、メカニカルキー(エマージェンシーキー48)を用いれば、トランクオープンキャンセルスイッチ19のオンオフに拘わらず開けることが可能な構造が多い。しかし、本例のように携帯機28をサービス員に貸し出すに際し、携帯機28からエマージェンシーキー48を抜き取っておけば、トランク17も第三者によって勝手に開操作され難くなり、トランク17内に収められた貴重品の盗難防止についても効果がある。
【0101】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態の(1)〜(9)に記載の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(10)無線通信によるID照合を行う携帯機28を車両キーとして用いることから、キーをキーシリンダに挿し込んでキーを回動操作する実際の機械操作を行わなくても、ドアロック施解錠やエンジン始動を行うことが可能となり、ドアロック施解錠やエンジン始動を簡単な操作で行うことができる。
【0102】
(11)携帯機28にはエマージェンシーキー48が収納されているので、この携帯機28を所持していれば、エマージェンシーキー48を使用することにより、グローブボックス14の施解錠を行うことができる。また、携帯機28をバレットパーキングサービスのサービス員に貸し出すに際しては、携帯機28からエマージェンシーキー48を抜き出しておけば、携帯機28を貸し出したサービス員等の第三者にグローブボックス14を勝手に開操作されずに済む。
【0103】
(12)IDカード22にキー挿入溝22aを設け、携帯機28から抜き出したエマージェンシーキー48を、22aに挿し込んで、エマージェンシーキー48をIDカード22に取り付け可能とした。従って、携帯機28から抜き出したエマージェンシーキー48を無くしてしまうような状況を生じ難くすることができる。
【0104】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図10に従って説明する。第3実施形態は、第1及び第2実施形態に対してグローブボックス14の錠構造を変更した点が異なっており、第1実施形態と同様の部分に関しては同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0105】
図10に示すように、グローブボックス14には、電気的に作動してグローブボックス14を施解錠する電気錠49が設けられている。電気錠49は、例えばモータを駆動源としてロック部材を車体フレームの係止穴に係止すると施錠状態となり、このロック部材を係止穴から離脱させると解錠状態となる錠である。電気錠49には、この電気錠49の施解錠を制御するグローブボックスロック制御部50が接続されている。グローブボックスロック制御部50には、携帯機28との間の無線通信時に携帯機28から発信されるRF帯の各種信号を受信可能な受信レシーバ51が接続されている。
【0106】
また、携帯機28には、グローブボックス14を施錠する際に操作するグローブボックスロックボタン52と、グローブボックス14を解錠する際に操作するグローブボックスアンロックボタン53とが設けられている。これらボタン52,53は、押下式スイッチであって、通信制御部39に接続されている。通信制御部39は、これらボタン52,53が押し操作された際、その操作ボタンに対応した各種信号(グローブボックスロック信号S1a、グローブボックスアンロック信号S1b)を、RF帯の信号で発信回路41から発信させる。
【0107】
イモビライザーECU10は、携帯機28との間のID照合(車内照合及びキー側トランスポンダ照合)と、IDカード照合とのうち、両方の照合成立を認識していれば、車両1の作動に制限をかけることなく作動を許可する。一方、イモビライザーECU10は、携帯機28との間のID照合と、IDカード照合との両照合うち、一方の照合のみ成立を認識する状態であれば、走行制限をかけた状態で車両1の作動を許可する。なお、電気錠49、グローブボックスロック制御部50及び受信レシーバ51が施解錠手段を構成する。
【0108】
さて、車両所有者が車両1を運転するに際しては、閉状態のグローブボックス14を開操作し、IDカード22をカードスロット23にセットする。カードスロット23にIDカード22をセットした後はグローブボックス14を閉じ、このセット後のIDカードが勝手に第三者に抜き取られないように、携帯機28のグローブボックスロックボタン52を押し操作してグローブボックス14を施錠する。このとき、グローブボックスロックボタン52が押されることから、携帯機28がグローブボックスロック信号S1aを発信し、グローブボックスロック制御部50は受信レシーバ51を介してグローブボックスロック信号S1aを受信すると、電気錠49を施錠状態にする。
【0109】
IDカード22がカードスロット23にセットされた事を検出したイモビライザーECU10は、IDカード22との間でIDカード照合を行い、カードスロット23にセットされたIDカード22が正規のカードか否かを識別し、その照合結果を認識する。IDカード22がカードスロット23にセットされた場合、携帯機28との間のID照合(車内照合及びキー側トランスポンダ照合)と、IDカード照合との両照合が成立することから、車両1は走行制限が付与されることなく通常通りに走行することが可能である。
【0110】
一方、車両1をバレットパーキングサービスに預ける場合には、携帯機28及びIDカード22の何れかをサービス員に貸し出す形態をとる。このとき、イモビライザーECU10は、携帯機28との間のID照合(車内照合及びキー側トランスポンダ照合)と、IDカード照合との2照合のうち一方の照合のみ成立を認識する状態となる。このため、エンジンECU7はエンジン始動時においてイモビライザーECU10から制限有りエンジン始動許可通知を受け付けることから、車両1の走行機能が制限された状態でエンジン6が始動する。
【0111】
ここで、携帯機28を貸し出す場合、グローブボックス14内のIDカード22をカードスロット23から抜き出し、これを車両所有者自身が所持する。IDカード22をグローブボックス14内から取り出すに際しては、まず施錠状態のグローブボックス14を解錠すべく、携帯機28のグローブボックスアンロックボタン53を押し操作する。このとき、携帯機28からはグローブボックスアンロック信号S1bが発信され、グローブボックスロック制御部50は受信レシーバ51を介してグローブボックスアンロック信号S1bを受信すると、施錠状態の電気錠49を解錠状態にする。これにより、グローブボックス14の開操作が可能となることから、車両所有者はグローブボックス14を開操作し、IDカード22をカードスロット23から抜き取る。
【0112】
また、IDカード22を貸し出す場合には、IDカード22をカードスロット23に挿し込んだままにしておき、携帯機28を車両所有者自身が所持し、この状態で車両1をサービス員に貸し出す。このときは、グローブボックス14が施錠状態となっているので、サービス員がグローブボックス14内のIDカード22を抜き出しすることができるようにするには、携帯機28を操作してグローブボックス14を解錠しておく必要がある。もちろん、IDカード22を勝手に抜き取られたくない場合には、グローブボックス14を施錠状態のままにしておいてもよい。
【0113】
従って、本例においては、グローブボックス14の施解錠を無線通信により行うことが可能であるので、その施解錠操作に際して実際の機械的なキー操作が不要であることから、簡単にグローブボックス14の施解錠を行うことが可能となる。また、携帯機28が手元になくIDカード22がセットされているだけでも車両1の走行が可能であるので、走行機能は制限されてはいるが、IDカード22のみでも車両1を動かすことが可能となり、使用バリエーションを増やすことが可能となる。
【0114】
本実施形態の構成によれば、第1又は第2実施形態の(1)〜(4),(6)〜(12)に記載の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(13)グローブボックス14の錠を電気錠49とし、携帯機28との間の無線通信により、グローブボックス14の施解錠を行う。従って、実際にキーをキーシリンダに挿し込んでキーを回動操作する機械操作を行わなくても、グローブボックス14の施解錠を行うことが可能となり、グローブボックス14の施解錠を簡単な操作で行うことができる。
【0115】
(14)エンジン6を始動させるに際しては、携帯機28が手元にあるか、或いはIDカード22がカードスロット23にセットされていればよい。従って、携帯機28及びIDカード22のどちらかがあればエンジン6を始動することが可能となるので、手元にIDカード22しか無い状態であっても、エンジン6を始動することができる。
【0116】
なお、上記実施形態はこれまでの構成に限定されず、以下の態様に変更してもよい。
・ 第1〜第3実施形態において、IDカード照合(キー側トランスポンダ照合も含む)の照合開始タイミングは、各々対応するスイッチのスイッチ信号を条件とすることに限定されない。例えば、エンジン6が始動した後において、シフトレバーがP位置に操作された後に、車速がゼロとなったときを条件としてもよく、照合開始タイミングは種々自由に設定可能である。
【0117】
・ 第1〜第3実施形態において、IDコード照合を行うに際して、1度成立しない場合、それを以て照合不成立と認識することに限定されない。例えば、IDコード照合が不成立の場合、数回を上限にIDコード照合を再実行するリトライ機能を設けてもよい。
【0118】
・ 第1〜第3実施形態において、通信媒体はカード形状のIDカード22に限らず、IDを無線通信により発信可能な媒体であれば、その形状は特に限定されない。
・ 第1〜第3実施形態において、車両1とIDカード22との間のIDカード照合は、必ずしもトランスポンダ照合に限定されず、例えば携帯機28がリクエストを受けてIDを返信して照合を行うスマート照合などの種々の無線通信を用いたID照合を採用することが可能である。
【0119】
・ 第1〜第3実施形態において、トランク17はトランクオープンキャンセルスイッチ19のスイッチ状態に拘わらず、メカニカルキー2(エマージェンシーキー48)を用いれば、これを解錠可能としてもよい。
【0120】
・ 第1〜第3実施形態において、トランクオープンキャンセルスイッチ19がオン状態になった場合、携帯機28がリクエストを受けてIDを返信するスマート通信や、携帯機28のロックボタンやアンロックボタンを押して通信を行うリモートコントロール通信などでトランク17を開けることができなくなるようにしてもよい。
【0121】
・ 第1及び第2実施形態において、少なくとも車両キー(メカニカルキー2、携帯機28)のID照合(車内照合、キー側トランスポンダ照合)が成立していることを条件に車両1の作動を許可することに限定されない。即ち、車両キーのID照合とIDカード照合の何れかが成立していれば、車両1の作動を許可するようにしてもよい。
【0122】
・ 第2及び第3実施形態において、携帯機28は、車両1からリクエストを受けて自身のIDを返信するスマートキーに限定されない。例えば、携帯機28にロックボタンやアンロックボタンを設け、そのボタンが押されると、ドアロックが施解錠されるワイヤレスキーでもよい。また、電子キーはこの種の携帯機28に限定されず、例えば時計にID発信機能を内蔵したウエアラブルキーでもよい。
【0123】
・ 第2及び第3実施形態において、携帯機28でエンジン始動を行う場合、必ずしも車内照合及びキー側トランスポンダ照合の両照合の成立を条件とすることに限定されず、どちらか一方の照合成立のみを条件としてもよい。
【0124】
・ 第2及び第3実施形態において、必ずしも携帯機28にエマージェンシーキー48を収納しておく必要は必ずしもなく、これは省略してもよい。この場合、携帯機28にエマージェンシーキー48を収納する必要がないので、その分だけ携帯機28を小型化することができる。
【0125】
・ 第1実施形態において、メカニカルキー2に設けた第1トランスポンダ8を省略してもよい。即ち、第1識別照合は、車内照合やキー側トランスポンダ照合に限らず、キー溝3aの正否を見るキー溝照合でもよい。この場合、車両1の作動に際しては、メカニカルキー2のキー溝3aが、キーシリンダ4のタンブラー(第1照合手段)との間で一致するか否かを見ることによりキー溝照合成立の判定が行われ、この溝照合成立が成立していれば、車両1の作動が許可される。
【0126】
・ 第3実施形態において、グローブボックス14と携帯機28との間の無線通信は、必ずしもボタン操作により信号発信を行うワイヤレス通信に限らず、例えばリクエストを受けてIDを返信するスマート通信や、トランスポンダを用いたトランスポンダ通信を採用してもよい。また、グローブボックス14は、例えば閉じた状態となった際に自動で施錠状態となる構造でもよい。
【0127】
・ 第1〜第3実施形態において、IDカード22のセット位置は、グローブボックス14の内部に限定されない。例えば、車内のセンタークラスターやセンターコンソールなど、IDカード22のセット位置は特に限定されない。
【0128】
・ 第1〜第3実施形態において、上記実施例のキーシステムの採用対象は、必ずしも車両1に限定されず、例えば住宅のドアロック等の他の装置や機器に搭載することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1実施形態におけるキーシステムの構成を示す概略構成図。
【図2】(a)は解錠状態のグローブボックスを示す斜視図、(b)は施錠状態のグローブボックスを示す斜視図。
【図3】車内の運転席近辺を表す斜視図。
【図4】グローブボックスの内部を示す斜視図。
【図5】バレットパーキングサービスを使用する際の説明図。
【図6】第2実施形態におけるキーシステムの構成を示す概略構成図。
【図7】(a)はエマージェンシーキーが携帯機のキー本体に挿し込まれた状態を示す斜視図、(b)携帯機のキー本体からエマージェンシーキーを抜き出した状態を示す斜視図。
【図8】(a)はエマージェンシーキーをIDカードに挿し込む前の状態を示す斜視図、(b)エマージェンシーキーがIDカードに挿し込まれた状態を示す斜視図。
【図9】バレットパーキングサービスを使用する際の説明図。
【図10】第3実施形態におけるキーシステムの構成を示す概略構成図。
【符号の説明】
【0130】
1…作動対象としての車両、2…キーを構成するメカニカルキー、3,48a…キープレート、3a…キー溝、4…キーシリンダ、8…通信タグとしての第1トランスポンダ、10…第1照合手段、第2照合手段、制限手段及び通信制御手段を構成するイモビライザーECU、14…収納ケースとしてのグローブボックス、15…施解錠手段を構成するシリンダ錠、22…通信媒体としてのIDカード、22a…収納機構としてのキー挿入溝、23…保持機構としてのカードスロット、24…受信手段及び発信手段を構成する第2コイルアンテナ、25…検出手段としてのカードスイッチ、28…キー(電子キー)を構成する携帯機、30…第1照合手段を構成するスマートECU、48…収納用メカニカルキーとしてのエマージェンシーキー、49…施解錠手段を構成する電気錠、50…施解錠手段を構成するグローブボックスロック制御部、51…施解錠手段を構成する受信レシーバ、Sv2…第2駆動電波。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーの持つ固有のキーコードが、前記キーにより作動される作動対象に登録されているか否かを判定する第1識別照合を行い、前記作動対象の作動を許可するに際して前記第1識別照合の成立を条件とする第1照合手段を備えたキーシステムにおいて、
携帯可能な通信媒体から発信された当該通信媒体固有の媒体コードを、無線通信を介して受信する受信手段と、
前記受信手段で受信した前記媒体コードが前記作動対象に登録されているか否かを判定する第2識別照合を行う第2照合手段と、
前記第1識別照合及び前記第2識別照合のうちの一方が成立していなければ、前記第1識別照合の成立により許可する前記作動対象の作動に制限を加える制限手段と
を備えたことを特徴とするキーシステム。
【請求項2】
前記制限手段は、少なくとも前記第1識別照合が成立すること条件に、制限の有無は別として前記作動対象の作動を許可することを特徴とする請求項1に記載のキーシステム。
【請求項3】
前記作動対象に設けられ、前記通信媒体をその取り付け状態で保持する保持機構を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のキーシステム。
【請求項4】
前記保持機構に前記通信媒体が取り付けられたことを検出する検出手段と、
前記検出手段の検出信号を基に、前記通信媒体が前記保持機構に取り付けられたと判断した際に、前記通信媒体との間の前記無線通信を開始させる通信制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項3に記載のキーシステム。
【請求項5】
前記通信制御手段は、前記検出手段の検出信号を基に、前記通信媒体が前記保持機構に取り付けられと判断した際に、発信手段から駆動電波を前記通信媒体に向けて発信させるとともに、
前記通信媒体は、前記駆動電波を受信すると当該駆動電波を駆動源として起動し、前記媒体コードを前記作動対象に送信することを特徴とする請求項4に記載のキーシステム。
【請求項6】
前記キーは、当該キーにより前記作動対象を作動させる際において、前記キーコードとしてキー溝が設けられたキープレートを前記作動対象のキーシリンダに挿入して回動操作するメカニカルキーであって、
前記第1照合手段は、前記メカニカルキーが前記キーシリンダに挿し込まれた際に、前記メカニカルキーの前記キー溝が前記キーシリンダに対応しているか否かを判定する機械操作照合を、前記第1識別照合として行うことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のキーシステム。
【請求項7】
前記キーは、前記作動対象から駆動電波を受信すると起動を開始するとともに、前記キー溝とは異コードの第2キーコードを前記キーコードとして無線通信で発信可能な通信タグを備え、
前記第1照合手段は、前記第1識別照合を行うに際して、前記第2キーコードの成立有無も照合成立判定に含むことを特徴とする請求項6に記載のキーシステム。
【請求項8】
前記キーは、自身のメモリに登録された前記キーコードを、無線通信により前記作動対象に送信する電子キーであって、
前記第1照合手段は、前記受信手段を介して前記キーの前記キーコードを受信すると、当該キーの前記キーコードが前記作動対象に登録されているか否かを判定する無線通信照合を、前記第1識別照合として行うことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか一項に記載のキーシステム。
【請求項9】
前記電子キーには、前記作動対象を作動させる際において、キー溝が設けられたキープレートを前記作動対象のキーシリンダに挿入して回動操作する収納用メカニカルキーが収納されるとともに、
前記収納用メカニカルキーは、前記作動対象の各種作動において、前記電子キーの無線通信では操作が行えない作動に関して操作が可能となっていることを特徴とする請求項8に記載のキーシステム。
【請求項10】
前記通信媒体には、前記電子キーに収納された前記収納用メカニカルキーを収納可能な収納機構が設けられていることを特徴とする請求項9に記載のキーシステム。
【請求項11】
前記作動対象には、内部に前記保持機構が配置された収納ケースを施解錠する施解錠手段が設けられ、前記施解錠手段は、前記キーとの間の第1識別照合の成立を条件に開状態となることを特徴とする請求項3〜10のうちいずれか一項に記載のキーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−30627(P2008−30627A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−206646(P2006−206646)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】