説明

キースイッチ及びそのキースイッチを備えた電子表示機器

【課題】 耐湿性に優れ、良好なクリック感が得られるキースイッチを得る。
【解決手段】 複数のキー表示部をもちキー表示が可変可能で可撓性を有するキー表示体20と、半球状の突起した押し子32を複数有する押し子部材30と、FPC基板41上にメタルドームバネ43を複数設けてなるスイッチシート40を積層し、その外表面を少なくとも1種の耐湿材からなる被覆膜50で覆ってパッケージにする。被覆膜50はキー表示体側被覆膜50Aとスイッチシート側被覆膜50Bとから構成し、スイッチシート側被覆膜50BをFPC基板41に接着固定する。また、スイッチシート側被覆膜50Bは硬質膜を設けた樹脂シート、金属薄膜、金属板などから形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキースイッチ及びそのキースイッチを備えた電子表示機器に関し、特にキー表示が可変可能でキースイッチの耐湿特性を高めたキースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やPDAなどの電子表示機器のキースイッチにおいて、従来から知られているキースイッチの構成の一つに、図9に示された構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。図9に示されたキースイッチの構成は、回路基板1400の上にスイッチシート1300を配置し、スイッチシート1300の上に電子ペーパー1200を配置し、さらに電子ペーパー1200の上に透明なキーシート1100を配置した構成をなしている。
また、キーシート1100にはキー入力装置の筐体1500の所定の開口1501から筐体上面を覗く位置に凸状、かつ透明のキートップ1101が所定数一体に形成されており、スイッチシート1300はクリック感を与える部材1301を有した構成をなしている。
また、電子ペーパー1200への通電は回路基板1400からの配線1201によって行っている。
【0003】
電子ペーパー1200は電気泳動系マイクロカプセルタイプまたは電気泳動系白黒回転粒子タイプのものを用いており、白と黒で構成された表示文字が認識されるようになっている。
【0004】
上記の構成をなしたキースイッチは、電子ペーパー1200で表示された所定の表示文字の部位のキートップ1101を指などで押圧することにより、その部位の電子ペーパー1200とスイッチシート1300のクリック感を与える部材1301とが押圧され、そして、クリック感を与える部材1301が撓んでスイッチが入るようになっている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−352987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような構成をなしたキースイッチは次のような問題点を有する。1つ目の問題点としては、耐水性能や耐湿性能が十分でないことである。筐体1500の開口1501から水が入り易く、また、湿気も帯び易い。このため、湿気によって電子ペーパー1200のマイクロカプセルに変質が生じて正常な駆動が行われなくなったり、クリック感を与える部材1301に腐蝕などの変質が発生し易くなる。このように、耐湿性が悪ければ性能劣化が発生し易くなって長期間にわたっての品質保持ができなくなる。
【0007】
2つ目の問題点としては、良好なクリック感が得られないことである。この構成はドーム形状をなしたクリック感を与える部材1301を平面状の電子ペーパー1200で押圧する構造をとっている。つまり、電子ペーパー1200の平坦状の面でドームの天井の屋根を押圧する構造をとる。このような押圧方法をとる構造においてはクリック率が低く、良好なクリック感が得られない。
【0008】
3つ目の問題としては、電子ペーパー1200が直接クリック感を与える部材1301を押圧する構造をなしているのでクリック感を与える部材1301からの反力、即ち、抗力を直接電子ペーパー1200が受ける。クリック感を与える部材1301がドーム形状をなしていることからその抗力を受ける電子ペーパー1200の部位は変動し、また、力の度合いも変動する。このため、電子ペーパー1200に変形や性能劣化が発生し易くなる。
【0009】
4つ目の問題点としては、キートップ1101の中心位置と電子ペーパー1200の表示部の中心位置との位置ズレ、キートップ1101の中心位置とクリック感を与える部材1301の中心位置との位置ズレ、などの位置ズレが生じ易いことである。この構成は筐体1500内にキートップ1101を設けたキーシート1100、電子ペーパー1200、クリック感を与える部材1301を設けたスイッチシート1300をそれぞれ積層して収納する構造をとる。そのため、それぞれの部品寸法精度のバラツキや組立精度のバラツキなどによって位置ズレが発生する。この位置ズレを抑えるためにはそれぞれの部品の寸法精度を厳しく管理する必要がある。
【0010】
なお、特許文献1においては、他の構成として各々のキートップ上に電子ペーパーを配設した構成のものが示されているが、この構成の下では電子ペーパーは筐体の外側に露出することになって、キズなどの損傷が発生し易い。また、キートップから電子ペーパーが剥離すると言う問題も生じる。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、キースイッチの耐湿性能を向上させて長期間にわたって安定した品質が得られるようにすること、と同時に良好なクリック感が得られるキースイッチを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決すると共に上記の目的を達成するための手段として、本発明のキースイッチは、複数のキー表示部をもちキー表示が可変可能で可撓性を有するキー表示体の裏面側に半球状の突起した押し子を複数有する押し子部材を配し、該押し子部材の下方にあってFPC基板上にメタルドームバネを複数設けてなるスイッチシートを配したキースイッチであって、該キースイッチの外表面には少なくとも1種の耐湿材からなる被覆膜を有することを特徴とする。
【0013】
上記の構成の下では、被覆膜で覆われたキー表示体のキー表示部を押圧するとキー表示体が撓み、同時に撓んだキー表示体によって押し子部材の押し子が押圧される。そして、押圧された押し子がスイッチシートのメタルドームバネを押圧し、メタルドームバネが撓む。撓んだメタルドームバネはFPC基板(Flexible Printed Circuit Board)のスイッチ電極パターンに接触してスイッチが入る。
ここで、キー表示体のキー表示が可変可能であることから、キー表示文字を数字、ひらがな、カタカナ、英文字、記号など様々な文字を文字切換操作によって表示することができる。また、キー表示体に可撓性を有することから直接指などで打鍵操作することができる。
【0014】
また、押し子部材の押し子は半球状の形状をなす。押し子が球面形状をなすことから、メタルドームバネは最初に押し子の球面の先端で押され、次には球面に沿って押圧されるようになる。従って、メタルドームバネにキズが付くこともなくなり、また、特定な部位にのみ大きな力が付加されることもないのでメタルドームバネの寿命も長く維持できる。
また、このような形状をとるとクリック率が高くなってクリック感が良く現れる。
【0015】
また、メタルドームバネからの反力、即ち、抗力が押し子に作用するようになるが、この抗力はキー表示体にも伝わってキー表示体に影響を及ぼす。
キー表示体に作用する抗力は押し子の半球状の突起の突起根元の面積の大小によって大きく影響を受ける。突起根元の面積が大きいと抗力は分散されてキー表示体に作用する単位面積当たりの抗力は小さくなり、逆に突起根元の面積が小さいとキー表示体に作用する単位面積当たりの抗力は大きくなる。
したがった、押し子の形状を半球状の形状にすることによって突起根元の面積を大きくすることができる。そして、突起根元の面積を大きく設定することにより、キー表示体に作用する単位面積当たりの抗力は小さくなってキー表示体の変形や品質的劣化を最小限に抑えることができる。
【0016】
また、上記の構成をなすキースイッチの外表面に耐湿材からなる被覆膜があることで耐湿性能が更に向上し、キー表示体やスイッチシートの性能を長期間にわたって維持できるようになる。
また、キースイッチが被覆膜によって平坦な形状でパッケージ化できる。パッケージ化されたキースイッチは運搬などの取扱いや電子表示機器への組込みが容易になる。
また、キー表示体、押し子部材、スイッチシートを前もって位置を合わせてパッケージすることで、キー表示体のキー表示部の位置と押し子部材の押し子の位置、並びに、押し子の位置とスイッチシートのメタルドームバネの位置などの位置精度を高めることができる。そして、長期使用においても位置ズレの発生を抑えることができる。
【0017】
また、本発明のキースイッチは、前記キースイッチの外表面に有する被覆膜が前記キー表示体の外表面側に有するキー表示体側被覆膜と前記スイッチシートの外表面側に有するスイッチシート側被覆膜とからなり、前記スイッチシート側被覆膜は前記FPC基板に固着していることを特徴とする。
【0018】
スイッチ電極パターンを設けたFPC基板は可撓性を有する。このため、押し子でメタルドームバネを押圧したとき、メタルドームバネの撓みと共にFPC基板が撓んでしまうのでスイッチが入り難くなる。
ここで、スイッチシート側被覆膜がFPC基板と固着していることにより、FPC基板の曲げ強度はスイッチシート側被覆膜に補強されて大きくなる。つまり、FPC基板の強度は強くなり、FPC基板の撓みは小さくなる。このため、メタルドームバネの撓みが正常に行われるようになり、スイッチが入り易くなる。また、メタルドームバネからの反力も大きくなることからクリック率も高められる。
【0019】
また、本発明のキースイッチは、前記キースイッチの外表面に有する被覆膜が前記キー表示体の外表面側に有するキー表示体側被覆膜と前記スイッチシートの外表面側に有するスイッチシート側被覆膜とからなり、前記スイッチシート側被覆膜の曲げ強度は前記FPC基板の曲げ強度より大きいことを特徴とする。
【0020】
この構造は、FPC基板の下にFPC基板の曲げ強度より大きいスイッチシート側被覆膜を積層した構造をなす。従って、FPC基板にスイッチシート側被覆膜を接着固定した場合には2倍以上の曲げ強度が得られてFPC基板の撓みを小さく抑えることができる。また、スイッチシート側被覆膜にFPC基板の曲げ強度より数倍も大きい、例えば金属板などを用いた場合には、スイッチシート側被覆膜をFPC基板に接着固定せずともスイッチシート側被覆膜に規制されてFPC基板の撓みを小さく抑えることができる。
これにより、メタルドームバネの撓みが正常に行われるようになり、スイッチが入り易くなる。また、メタルドームバネからの反力も大きくなることからクリック率も高められる。
【0021】
また、本発明のキースイッチは、前記スイッチシート側被覆膜が樹脂シートの表面に硬質膜を設けたものからなることを特徴とする。
【0022】
樹脂シートの表面に硬質膜を設けることにより曲げ強度を大きくすることができる。つまり、被覆膜の曲げ弾性が高められる。そして、上記で述べた如くの効果が得られる。
なお、硬質膜としてSiO、Alなどの膜を挙げることができる。
【0023】
また、本発明のキースイッチは、前記スイッチシート側被覆膜が金属箔膜又は金属板からなることを特徴とする。
【0024】
同様に、被覆膜を金属箔膜や金属板で形成しても被覆膜の曲げ弾性が高められる。この場合に耐湿性の良い金属を用いることが好ましく、例えば、アルミ、ステンレスなどが好適に挙げられる。また更に、軽量性を考慮するとアルミがより好適と言える。
【0025】
また、本発明のキースイッチは、前記押し子部材がシート形状をなしていることを特徴とする。
【0026】
押し子部材がシート形状をなしているとその取扱いが容易であり、また、キースイッチの組立も容易となる。組立工数の低減効果を得る。
【0027】
また、本発明のキースイッチは、前記キー表示体が電気泳動式表示パネル、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネルのいずれか1つからなることを特徴とする。
【0028】
電気泳動式表示パネル、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネルは様々なキー表示文字を形成することができる。また、簡単なキー操作でキー表示文字を変えることもできる。また、キー表示文字の大きさを任意に設定することができるので、見易い大きさの文字に統一することも可能になる。
【0029】
また、本発明のキースイッチは、前記電気泳動式表示パネルが可撓性を有する上下基板の間にマイクロカプセル層を有してなり、少なくとも前記キー表示部の領域において前記マイクロカプセル層と前記下基板との間にクッション層を有していることを特徴とする。
【0030】
マイクロカプセル層と下基板との間に弾力性を有するクッション層を設けることで、クッション層の上にマイクロカプセル層が配置される。つまり、クッションの上にマイクロカプセルがくる。キー表示部の部分を指などで押圧するとマイクロカプセルが押圧されるが、この押圧されたマイクロカプセルはクッション層に沈み込むようになる。このため、マイクロカプセルにかかる力は緩和されてカプセルの形状変形などが起きないようになる。
【0031】
また、本発明のキースイッチは、前記クッション層がゴム系樹脂からなることを特徴とする。
【0032】
ゴム系樹脂は弾力性に富んでいるので好適なクッション材として適用できる。また、印刷方法などで簡単に下基板上に形成することができる。
【0033】
また、本発明のキースイッチは、前記電気泳動式表示パネルが、前記キー表示部から外れた領域において前記下基板に切欠部を有していることを特徴とする。
【0034】
この切欠部はキー表示部の部分の下基板が押圧によって撓み易くするために設けるものである。従って、切欠部の形状は下基板が撓み易くなる形状にするのが好ましい。このような切欠部を設けることにより、キー表示部を押圧することによってキー表示部の部位のキー表示体が撓み易くなり、キー表示部の裏面側に設けられた押し子もスムーズに押し下げられるようになる。
【0035】
また、本発明のキースイッチは、前記エレクトロルミネッセンス表示パネルが、可撓性を有する上下基板の間に発光体層を有してなり、前記キー表示部から外れた領域において前記下基板に切欠部を有していることを特徴とする。
【0036】
これは、電気泳動式表示パネルの下基板に設けた切欠部と同じ理由による。そして、エレクトロルミネッセンス表示パネルも電気泳動式表示パネルの場合と同じ効果を得ることができる。
【0037】
また、本発明のキースイッチを備えた電子表示機器は、キースイッチが上記で述べたキースイッチを用いていることを特徴とする。
【0038】
本発明のキースイッチを電子表示機器に組み込むことにより、電子表示機器におけるキースイッチ機能は耐湿性が良く、長期間にわたって安定した品質が維持できて良好なクリック感が得られる。また、キースイッチがパッケージ化されているので機器への組込みなどが容易となる。
【発明の効果】
【0039】
以上発明項目毎に詳しく効果を説明したが、大きく纏めると、耐湿性能が向上し、キー表示体に作用する抗力が小さくなることからキー表示体並びにスイッチシートの品質劣化を抑えて長期間にわたって良好な品質を維持することができる。
また、良好なクリック感が得られると共に、キースイッチのパッケージ化ができるのでキースイッチの取扱や電子表示機器への組立なども容易になる。また、キー表示体、押し子部材、スイッチシート積層での位置ズレなどの位置精度も高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための実施形態を図1〜図3を用いて説明する。なお、図1は本実施形態に係る携帯電話機のキースイッチパネルの一例を示す平面図で、図2は図1におけるキースイッチの模式的に示した要部断面図、図3は図1におけるA−A断面図を示している。
【0041】
最初に、本実施形態に係る携帯電話機のキースイッチパネル10は、図1に示すように、筐体のカバー11の所要の部位に複数の開口部が設けられ、その開口部からキースイッチ12のキー表示文字(記号やマークなども含む)が見える構造である。図中のSはキースイッチにおけるキー表示部を指しており、キー表示部Sに表示されたキー表示文字が開口部から見える。
本実施形態におけるキースイッチパネル10の特徴は、表示文字切換用の文字切換モードのキースイッチ(図1において「表示」と表示している)があることである。そして、この「表示」のキースイッチを押すことによってキー表示文字が数字、ひらがな、カタカナ、英文字、記号など様々な文字を表示することができることである。
【0042】
また、本実施形態のキースイッチ12の構成は、図2に示すように、キー表示体20の裏面側に粘着シート31に押し子32を設けた押し子部材30を配し、押し子部材30の下方にFPC基板41上にメタルドームバネ43を設けたスイッチシート40を配設し、更に、積層したキー表示体20、押し子部材30、スイッチシート40の外表面を耐湿材からなる被覆膜50で覆った構成をなす。
ここでのキー表示体20は電気泳動式表示パネルであって、対向した上基板21と下基板22の間にマイクロカプセル層23を設け、封止材24で封止した構成をなす。上基板21及び下基板22は薄いPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用いた構成をなしているので電気泳動式表示パネルは可撓性を有する。また、図示はしていないが、電気泳動式表示パネルからなるキー表示体20は図1に示すように複数のキー表示部をもっている。
また、被覆膜50はキー表示体20の外表面を覆うキー表示体側被覆膜50Aとスイッチシートの外表面を覆うスイッチシート側被覆膜50Bを外周で接合して一体にしたものからなっている。そして、本実施形態においては、キー表示体側被覆膜50Aは100〜150μm範囲の厚みの透明なPETフィルムで形成し、スイッチシート側被覆膜50Bを50〜100μm範囲の厚みのアルミ金属箔膜で形成している。
なお、図示はしていないが、スイッチシート40のFPC基板41の一部分はキー表示体側被覆膜50Aとスイッチシート側被覆膜50Bの接合部分から外部に出ており、同様に、電気泳動式表示パネルであるキー表示体20の駆動配線パターンも外部に出て、駆動回路と接続するようになっている。
【0043】
上記の構成について図3を用いて更に詳しく説明する。図3において、電気泳動式表示パネルからなるキー表示体20は対向する上基板21と下基板22との一定の間隙にマイクロカプセル層23を設けた構成をなす。このマイクロカプセル層23はマイクロカプセル23aを隙間無く整列させたものからなる。
上基板21は透明なPETフィルムなどのフィルムからなるフィルム基板21aの下面にITO膜からなる透明電極21bを設け、その上にポリイミド樹脂からなる保護膜21cを設けた構成をなす。また、下基板22は透明なPETフィルムなどのフィルムからなるフィルム基板22a上にTFT素子を用いてマトリックス状に形成したITO膜からなる透明電極22bを設け、その上にポリイミド樹脂からなる保護膜22cを設けた構成をなす。マイクロカプセル層23は粘着剤23bでもってマイクロカプセル23aを隙間無く整列させて固定した構成をなす。
【0044】
なお、本実施形態においては、下基板22のTFT素子を用いてマトリックス状に形成したITO膜からなる透明電極22bはキー表示部Sの領域、及びその近傍の領域にのみ設けており、カバー11に隠れて完全に見えない部分には透明電極22bに導通を図る配線パターンを設けている。
また、保護膜21c、22cはITO膜からなる透明電極の亀裂などの破損を防止する保護目的で設けているものである。フィルム基板に形成したITO膜の透明電極はフィルムの撓み変形で亀裂などの損傷が発生し易い。密着性や延性特性を有する屈曲性の耐性に優れた特性を持つポリイミド樹脂やウレタン系樹脂を透明電極上に被覆することによって透明電極の損傷防止の保護を行っている。なお、この保護膜21c、22cは0.5〜1.5μmの範囲の膜厚で形成している。
【0045】
マイクロカプセル層23のマイクロカプセル23aは、メタクリル酸樹脂やユリア樹脂などからなるカプセル殻の内部に酸化チタンからなる白色粒子とカーボンブラックからなる黒色粒子をシリコーンオイルなどの液に分散させた状態で封入したものからなる。白色粒子である酸化チタンは正電荷を帯びており、黒色粒子であるカーボンブラックは負電荷を帯びている。このマイクロカプセル23aの大きさは通常30μm〜60μmのものが使用される。
【0046】
以上の構成をなしたキー表示体20は上基板21の透明電極21bと下基板22の透明電極22bに選択的に電界を印加することにより、白黒で構成された黒色文字画像または白色文字画像の表示が得られる。
また、フィルム基板21a、22aは100〜200μm厚みのPETフィルムから形成することから可撓性を有し、指などで押圧するとキー表示体は撓む。
【0047】
キー表示体20である電気泳動式表示パネルはTFT素子を用いた電極構成をなしているので様々なキー文字が表示できる。数字、ひらがな、カタカナ、英文字、記号など様々な文字が「表示」のキースイッチによって表示切換ができる。
なお、本実施形態のキー表示体は電気泳動式表示パネルを用いたものであるが、その他に液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネルなどもキー表示体として適用することができる。液晶表示パネルはカラーフィルターを組み込むことによりカラーのキー文字を表示させることができ、また、エレクトロルミネッセンス表示パネルは発光文字が表示できる。
【0048】
なお、本実施形態においては、下基板22の電極はITO膜で形成した透明電極22bで構成したが、この部位の電極は必ずしも透明電極である必要性はない。例えば、銅薄膜で構成しても何ら支障はない。電極を銅薄膜で構成した場合は、銅薄膜が撓みによって亀裂などの破損を起こす危険性は小さいので保護膜22cを設ける必要性もない。
【0049】
次に、押し子部材30は薄い粘着シート31上に半球状に突起した押し子32を複数(キー表示部の数分)形成したものからなる。この押し子32はキー表示体20のキー表示部と対向する部位に設けられる。
本実施形態においては、押し子32は耐熱性、耐湿性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れた樹脂、例えばポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂などの樹脂からなって、半球状に突起した球面状の形状をなしている。この押し子32はスクリーン印刷方法やポッティング方法などで形成するが、押し子32の突起の高さ寸法や突起根元32a(図3において、太線で示した部分)の面積が重要な管理要素となるので一定の粘性を有したインクが用いられる。
粘着シート31をキー表示体20の裏面に貼付けてキー表示体20と押し子部材30を一体化している。
【0050】
なお、本実施形態においては、押し子部材を粘着シート上に押し子を形成したものから構成したが、単に樹脂シート上に押し子を形成したものでも良い。
また、押し子部材を押し子のみで構成しても良い。この場合は、キー表示体の裏面に直接押し子をスクリーン印刷法やポッティング法で形成する。
【0051】
次に、スイッチシート40はスイッチ電極パターン42が形成されたFPC基板41のスイッチの部位をなす部分にメタルドームバネ43を設け、そのメタルドームバネ43を固定する固定シート44を設けた構成をなす。
メタルドームバネ43は弾性力のある導電性の金属材料で形成され、メタルドームバネ43を上方から押圧するとメタルドームバネ43は撓み、スイッチ電極パターン42に接触してスイッチ電極パターン42間に導通が図られる。また、押圧を解除するとメタルドームバネ43は撓みが解けて元の形状に復帰する。
このメタルドームバネ43と押し子32は対向(対面)する部位に設けられる。
【0052】
上記の押し子部材30とスイッチシート40の構成において、押し子32でメタルドームバネ43を押圧するとメタルドームバネ43は撓んでスイッチ電極パターン42に接触し、導通が行われてスイッチが入る。
メタルドームバネ43は弾性力があることから押し子32で押圧されると押し子32に対して反力が作用する。つまり、押し子32に上方に向かっての抗力が作用する。この抗力はやがて押し子32の半球状突起の突起根元32aの面積部分を通してキー表示体20に作用する。
従って、突起根元32aの面積が小さいとキー表示体20に働く単位面積当たりの抗力は大きくなり、突起根元32aの面積が大きいとキー表示体20に働く単位面積当たりの抗力は小さくなる。
キー表示体20に抗力が作用する部分のマイクロカプセル23は上方からの押圧力も受ける。つまり、上方と下方の両方から力を受けることになる。そして、大きな抗力を受ける部分のマイクロカプセル23はカプセルの形状変形などが生じ易くなる。
そこで、押し子32を半球状に突起した球面形状にし、突起根元32aの面積を許容できる範囲で大きく設定すると、キー表示体20に作用する単位面積当たりの抗力は小さくなって、カプセルの変形などを最小限に抑えることができる。
【0053】
また、押し子は半球状の球面形状をなすことから、メタルドームバネは最初に押し子の球面の先端で押され、次には球面に沿って押圧されるようになる。このため、メタルドームバネにキズが付くこともなくなり、また、特定な部位にのみ大きな力が付加されることもないのでメタルドームバネの寿命も長く保持できる。
また、このような形状をとるとクリック率が高くなってクリック感が良く現れる。
【0054】
次に、被覆膜50はキー表示体20の外表面を覆うキー表示体側被覆膜50Aとスイッチシートの外表面を覆うスイッチシート側被覆膜50Bとで構成し、前述したように、キースイッチの外周で接着剤を介して接合する。
また、前述したように、キー表示体側被覆膜50Aは100〜150μm範囲の厚みの透明なPETフィルムで構成し、スイッチシート側被覆膜50Bは50〜100μm範囲の厚みのアルミ金属箔膜で構成している。そして、スイッチシート側被覆膜50Bはスイッチシート40のFPC基板41に接着固定した構造をなしている。
キー表示体側被覆膜50AのPETフィルムは耐湿性、耐衝撃性、耐薬品性などに優れた性能を有するので被覆膜として好適に適用でき、厚みが100〜150μmと薄いこともあって可撓性を有する。また、スイッチシート側被覆膜50Bのアルミ金属箔膜は耐湿性にも優れているので耐湿効果が得られる。また、厚みが50〜100μmと薄い金属箔膜であるが、FPC基板41に接着することによってアルミ金属箔膜付きFPC基板41の曲げ強度は強度補強されて大きくなり、FPC基板41の撓みを小さく抑制することができる。
【0055】
可撓性を有するFPC基板41をスイッチ基板に用いているため、押し子32でメタルドームバネ43を押圧するとFPC基板41が撓んでスイッチが入り難くなる。しかしながら、アルミ金属箔膜をFPC基板41に貼付けて固着することによりアルミ金属箔の強度分が加わって強度補強され、FPC基板41の撓みが小さく抑えられる。そして、スイッチが入り易くなる。また、これによってメタルドームバネ43の反力が大きくなるのでクリック率も更に高められる。様々な試験の結果、50μm厚みのアルミ金属箔膜を貼付けた場合のクリック率は約10%アップの効果が得られることが確認されている。
【0056】
電気泳動式表示パネルは水分がマイクロカプセル内に入ると粒子の動きが悪くなって起動しなくなり、表示不良を起こす。また、スイッチシート40も同様に、スイッチシート40内に水分が入るとメタルドームバネ43やFPC基板41のスイッチ電極パターン42が変質し、導通不良を起こす。
しかしながら、被覆膜を上記の構成にすることによって、耐湿性能は各段と向上し、長期間にわたって安定した品質が得られる。また、クリック率が更に向上して良好なクリック感が得られる。
【0057】
更にまた、被覆膜50によってキースイッチのパッケージ化ができる。パッケージ化されたキースイッチは、その取扱いの容易さや電子表示機器のキースイッチパネルへの組込み容易さなどの効果を得る。
また、キー表示体20、押し子部材30、スイッチシート40のそれぞれを位置を合わせた状態でパッケージするのでキー表示部と押し子32の位置精度や押し子32とメタルドームバネ43の位置精度などの精度も向上する。
【0058】
なお、本実施形態においては、スイッチシート側被覆膜50Bに薄いアルミ金属箔膜を用いたが、アルミ金属箔膜に限るものではない。例えば、硬質膜を設けた樹脂フィルムをFPC基板41に貼付けて用いても同様な効果を得る。硬質膜としてはSiO膜やAl膜などを挙げることができる。
また、シート側被覆膜50Bに金属箔膜より厚みの厚いアルミ金属板やステンレス金属板などの耐蝕性に優れた金属板などを選択することも可能である。金属板を用いた場合は剛性があって曲げ強度も大きいので、FPC基板に接着する必要性もなく、単に重ね合わせるだけで同様な効果を得ることができる。なお、キースイッチの重量を少しでも軽量化したい場合はアルミ金属板を用いるのが好ましい。
【0059】
また、本実施形態においては、キー表示体側被覆膜50AにPETフィルムを用いたが、PETフィルム以外に、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの樹脂フィルムも利用可能である。
【0060】
ここで、キー表示体20上にキー表示体側被覆膜50Aを設けたことでキー表示体20の曲げ強度は大きく(強く)なる。従って、キー表示体20の所要の撓み(量)を得るためには、キー表示部の押圧力をキー表示体側被覆膜50Aを設けていない時の押圧力より大きく(強く)することが必要とされる。
しかしながら、押圧力を大きくするとマイクロカプセル23aにかかる力が大きくなってマイクロカプセル23aが変形する危険性も増す。また、押圧力が大きくなると指の痛みや疲れなども生まれてくる。
そこで、マイクロカプセル23aの変形を抑える構成や低い押圧力で打鍵動作ができる構成などが求められる。
【0061】
図4はマイクロカプセルの変形を抑える構成として挙げたキースイッチの要部断面図を示したものである。
図4において、120はキー表示体で、図3に示したキー表示体20の構成と対比すると、下基板22とマイクロカプセル層23との間にクッション層125を設けた構成のみが異なっている。つまり、マイクロカプセル層23の下にクッション層125を設けてキー表示体120を構成している。
【0062】
ここでのクッション層25は軟質であるゴム系樹脂、例えば、ポリウレタン樹脂やニトリルゴム(NBR)などの樹脂を用いてスクリーン印刷法などの印刷方法で形成している。
このクッション層125は押圧によってマイクロカプセル23aにかかる力を緩和させて変形を抑えるために設けるもので、押圧されたマイクロカプセル23aは軟質であるクッション層125に喰い込んでマイクロカプセル23aの変形が緩和される。
【0063】
このクッション層125は打鍵動作を行うキー表示部の領域に有れば良いものであるので、本実施形態においては、キー表示部の領域のみに設けている。しかしながら、下基板22上の全面にあっても支障はないものである。
【0064】
上記のような構成をとることにより、打鍵動作により押圧されたマイクロカプセル23aは軟質なクッション層125に喰い込み、そして、押圧を解除するとクッション層125の復元力によってマイクロカプセル23aは元の状態に復帰する。これによって、マイクロカプセル23aの変形を最小限に抑えることができる。
【0065】
次に、低い押圧力で打鍵動作ができる構成について図5、図6を用いて説明する。図5は押圧力を小さくできる構成を示すキースイッチの要部断面図で、図6は図5における下基板の要部平面図を示している。
【0066】
押圧力を小さくできる構成の特徴は、図5に示すように、キー表示体130の下基板132にキー表示部から外れた領域において切欠部132aを設けていることである。下基板132はフィルム基板とTFT素子を用いてマトリックス状に形成した透明電極と保護膜とからなるが、この透明電極はキー表示部の領域にのみ設けている。そして、キー表示部から外れた領域にあって、透明電極へ接続する配線パターンに影響を及ぼさない部位に切欠部132aを設けている。
【0067】
図6は切欠部の1例を示した図である。図6において、Sはキー表示部で、鎖線で示した楕円形の内部がキー表示部Sとなっている。各々のキー表示部Sから外れた領域に、キー表示部Sを囲うようにしてコの字型のスリットからなる切欠部132aを設けている。また、この切欠部132aを設けた部位は透明電極の配線パターンがない部位でもあり、筐体のカバーによって完全に隠れる部位になっている。
【0068】
このように、下基板のキー表示部の近傍の部位に切欠部を設けることによって、下基板のキー表示部における曲げ強度は小さくなって撓み易くなる。例えば、上記の如くキー表示部の外周領域にコの字型の切欠けを設けると、切欠けのある3方向からの引張りが無くなり、繋がった1方向のみからの引張りだけが作用する。従って、キー表示部の部位は曲げ強度が非常に小さくなって撓み易くなる。これによって、低い押圧力で所要の撓み(量)を得ることができるようになる。
【0069】
切欠部は図6ではコの字型のスリット形状を挙げたが、切欠部の形状は特にコの字型のスリット形状に限るものではない。例えば、スリット形状ではなく単なる切れ目でも良く、また、対向した2本のスリット形状やそれぞれ相対向した4本のスリット形状などでも打鍵時の押圧力を下げる効果は生まれてくる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について詳しく説明したが、以下実施例を説明する中で本発明の更なる詳細説明を行う。
【実施例1】
【0071】
次に、実施例1に係るキースイッチについて図7を用いて説明する。図7は実施例1に係るキースイッチの要部断面図を示している。なお、前述の実施形態における構成部品と同じ仕様をなす構成部品は同一符号を付与している。
【0072】
実施例1のキースイッチはキー表示体に液晶表示パネルを用いたキースイッチである。前述の実施形態でのキースイッチと対比すると、キー表示体、押し子部材、被覆膜の仕様が異なっており、スイッチシートは同一仕様のものを用いている。
【0073】
図7に示すように、実施例1のキースイッチ52の構造は液晶表示パネルからなるキー表示体60の裏面側に押し子部材70を配設し、その押し子部材70の下方にスイッチシート40を配設し、それらを被覆膜で覆った構成をなす。
キー表示体60である液晶表示パネルは分散型液晶表示パネルからなっている。この分散型液晶パネルは、一定の間隙を設けて対向して配置した一対の基板、即ち、上基板61と下基板62の隙間に高分子材料(例えば、紫外線硬化性アクリル樹脂など)と液晶材料(例えば、TN液晶など)を混合したPNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モードの液晶材料63を封入した構成をなす。そして、上基板61はPETフィルムからなるフィルム基板61aの下面にITO膜からなる透明電極61bを設け、その上にポリイミド樹脂からなる保護膜61cを設けた構成をなし、下基板62はPETフィルムからなるフィルム基板62aの上面にTFT素子を用いてマトリックス状に形成したITO膜からなる透明電極62bを設け、その上にポリイミド樹脂からなる保護膜62cを設けた構成をなす。
なお、図示はしていないが液晶材料63が封入された上基板61と下基板62との間にはスペーサボールが配設されていて、所要のセルギャップを保持している。
【0074】
ここで、透明電極61b、62b上に設けた保護膜61c、62cは、前述の実施形態で説明したように、キー表示体60の撓みによって透明電極61b、62bに亀裂などの破損が発生するのを防止するために設けている。
【0075】
押し子部材70は反射シート71上に押し子72を設けた構成をなす。反射シート71はキー表示体60側に反射面71aをもち、反射面71aと反対側の面に押し子72を形成している。反射シート71は樹脂シートに高反射率の金属被膜を形成したもので、所望の反射色を有する公知のものが使われる。また、押し子72は前述の実施形態での形状と同じ形状、つまり、半球状に突起した球面形状をなしており、ポリカーボネイト樹脂を用いてスクリーン印刷法で形成している。
実施例1の押し子部材70はキー表示体60である分散型液晶表示パネルの反射シートの働きを兼ねたものからなっていて、キー表示体60の裏面に接着剤を介して固定されて使用される。
このように構成されたキー表示体60で表示されるキー文字は白色(白濁色)と反射シートの色調とで構成された文字が得られる。
【0076】
スイッチシート40は前述の実施形態での構成と同じ構成をなしており、その構成部品の仕様も同じ仕様のものを用いているのでここでの詳細説明は省略する。
【0077】
次に、被覆膜はキー表示体側被覆膜80Aとスイッチシート側被覆膜80Bとで構成され、図2に示す如くキースイッチの外周部で接合される。
キー表示体側被覆膜80Aは100〜150μm範囲の厚みの透明なPETフィルムからなり、スイッチシート側被覆膜80Bは100〜150μm範囲の厚みのPETフィルムなる樹脂シート80B2上にSiOの硬質膜80B1を設けた構成をなす。そして、スイッチシート側被覆膜80Bをスイッチシート40のFPC基板41に接着剤を介して貼付固定している。
【0078】
硬質膜80B1はスイッチシート側被覆膜80Bの機械的強度性を高めるために設けるもので、硬質性、耐湿性、電気的絶縁性などを考慮して選定するのが好ましい。実施例1においては、硬質膜の材料としてSiOを選定しているが、特にSiOに限るものではなく、他にAlなども代表的な材料として挙げることができる。硬質膜の厚みは厚めに施すのが好ましく、真空蒸着法やスパッタリング法などのPVD法で形成する。
【0079】
スイッチシート側被覆膜80Bを樹脂シート80B2上にSiOの硬質膜80B1を設けた構成とすることにより、スイッチシート側被覆膜80Bの曲げ強度は各段と高められる。そして更に、このスイッチシート側被覆膜80Bをスイッチシート40のFPC基板41に接合することにより、FPC基板41の曲げ強度は大きく補強されてその撓みは小さくなり、スイッチが入り易くなる。また、それによってクリック率も高められる。
【0080】
実施例1においては、キー表示体にPNLC型の液晶表示パネルを用いたが、一般的な偏光板を用いたTN型液晶表示パネルでもキー表示体に用いることができる。しかしながら、偏光板を用いるタイプは表示パネルの厚みが厚くなることから可撓性は低下する。そのため、押圧力を大きくすることが必要とされる。
PNLC型の液晶表示パネルは3次元編目状のポリマーネットワークをなした樹脂のそのネットワークの編目の中に液晶材料が入った構造をなすので、打鍵による押圧力が加えられても変形や変質が生じない。可撓性を有する薄型の表示パネルであり、長期間にわたって品質が維持できる好適なキー表示体であると言える。
【実施例2】
【0081】
次に、実施例2に係るキースイッチを図8を用いて説明する。なお、図8は実施例2に係るキースイッチの要部断面図を示している。
【0082】
実施例2のキースイッチはキー表示体にエレクトロルミネッセンス表示パネル(以降、EL表示パネルと称する)を用いたものを示している。図8において、キースイッチ82はEL表示パネルからなるキー表示体90の裏面に粘着シート31上に押し子32を設けた押し子部材30を配設し、その下方にスイッチシート40を配設し、PETフィルムからなるキー表示体側被覆膜100Aと薄いアルミ板からなるスイッチシート側被覆膜100Bで被覆した構成をなす。そして、外周部でキー表示体側被覆膜100Aとスイッチシート側被覆膜100Bを接着剤を介して接合した構成をなす。
【0083】
EL表示パネルであるキー表示体90は上基板91、発光体層93、下基板92を積層した構成をなす。また、上基板91はPETフィルムからなるフィルム基板91aの下面にTFT素子を用いてマトリックス状に形成したITO膜からなる透明電極91bを設け、その透明電極91b上にポリイミド樹脂からなる保護膜91cを設けた構成をなす。
また、下基板92はPETフィルムからなるフィルム基板92aの上面に銀ペーストからなる背面電極92eを設け、その上にシアノレジン化合物などの高誘電体樹脂バインダに酸化チタンなどの無機誘電体化合物を分散した誘電体層92fを設けた構成をなす。
【0084】
発光体層93は硫化亜鉛を発光母体にして微量の賦活剤(金属やハロゲン元素)をドープして得られた発光体粉末をシアノレジン化合物などの高誘電樹脂バインダに分散したしたものからなる。
発光色は加える賦活剤の材質によって異なり、例えば、Mnの場合は黄橙色、Tbの場合は緑色、Ceの場合は青色、Smの場合は赤色などが一例として挙げられる。
【0085】
上記の構成をなすEL表示パネルは上基板91、下基板92に100〜200μm厚みのPETフィルムを用いていることから可撓性を有し、指などで押圧すると撓む。また、マトリックス状に形成した透明電極91bと背面電極92eに選択的に所要の電界を加えると発光したキー文字が表示される。
【0086】
キー表示体90の裏面に配設した押し子部材30、並びに押し子部材30の下方に配設したスイッチシート40は前述の実施形態で用いた押し子部材、スイッチシートの仕様と同じ仕様のものを用いているのでここでの詳細説明は省略する。
【0087】
被覆膜であるキー表示体側被覆膜100Aは透明な100〜150μm厚みのPETフィルムで構成しており、防湿目的で設けている。また、被覆膜であるスイッチシート側被覆膜100Bは約200μm厚みのアルミ板で構成しており、防湿目的とスイッチシート40のFPC基板41の撓み防止目的で設けている。
約200μm厚みのアルミ板で構成したスイッチシート側被覆膜100Bは剛性を有しており、その曲げ強度はスイッチシート40のFPC基板の曲げ強度より数倍も大きく、スイッチシート側被覆膜100B単体での撓みは非常に小さい。
【0088】
上記の構成の下で、PETフィルムからなるキー表示体側被覆膜100Aとキー表示体90、押し子部材30、スイッチシート40、薄いアルミ板からなるスイッチシート側被覆膜100Bが重なり合った状態でパッケージ化されると、スイッチシート40のメタルドームバネ43が押し子32によって押圧されてもスイッチシート40のFPC基板41の撓みはアルミ板からなるスイッチシート側被覆膜100Bに規制されて小さく抑えられる。そのため、スイッチが入り易くなり、また、クリック率も高められる。
また、発光体層93は湿気を帯びることによってその性能は劣化するが、上記の如く耐湿性に優れた被覆膜で覆うことによって耐湿性能は向上し、長期にわたって良好な品質が維持できる。
【0089】
なお、実施例2は無機ELのキー表示体で説明したが有機ELであっても同様な効果を得ることができる。
また、EL表示パネルを用いたキー表示体は、前述の実施形態で図6を用いて説明したように、下基板に切欠部を設けることも可能である。キー表示部から外れた領域に切欠部を設けることによって打鍵動作は低い押圧力で行うことができる。
【0090】
以上、本発明のキースイッチの構成を携帯電話機を取り上げて説明したが、本発明のキースイッチの構成はPDAなどの電子表示機器は勿論のこと、カーナビゲーションなど様々な電子表示機器にも適用できるものである。また、タッチパネルそのものとして利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本実施形態に係る携帯電話機のキースイッチパネルの一例を示す平面図である。
【図2】図1におけるキースイッチの模式的に示した要部断面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】マイクロカプセルの変形を抑える構成として挙げたキースイッチの要部断面図である。
【図5】押圧力を小さくできる構成を示すキースイッチの要部断面図である。
【図6】図5における下基板の要部平面図である。
【図7】実施例1に係るキースイッチの要部断面図である。
【図8】実施例2に係るキースイッチの要部断面図である。
【図9】特許文献1に示されたキー入力装置の断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10 キースイッチパネル
11 カバー
12、52、82 キースイッチ
20、60、90、120、130 キー表示体
21、61、91 上基板
21a、22a、61a、62a、91a、92a フィルム基板
21b、22b、61b、62b、91b 透明電極
21c、22c、61c、62c、91c 保護膜
22、62、92、132 下基板
23 マイクロカプセル層
23a マイクロカプセル
23b 粘着剤
24 封止材
30、70 押し子部材
31 粘着シート
32、72 押し子
32a 突起根元
40 スイッチシート
41 FPC基板
42 スイッチ電極パターン
43 メタルドームバネ
44 固定シート
50 被覆膜
50A、80A、100A キー表示体側被覆膜
50B、80B、100B スイッチシート側被覆膜
63 液晶材料
71 反射シート
80B1 硬質膜
80B2 樹脂シート
92e 背面電極
92f 誘電体層
93 発光体層
125 クッション層
132a 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキー表示部をもちキー表示が可変可能で可撓性を有するキー表示体の裏面側に半球状の突起した押し子を複数有する押し子部材を配し、該押し子部材の下方にあってFPC基板上にメタルドームバネを複数設けてなるスイッチシートを配したキースイッチであって、該キースイッチの外表面には少なくとも1種の耐湿材からなる被覆膜を有することを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
前記キースイッチの外表面に有する被覆膜は前記キー表示体の外表面側に有するキー表示体側被覆膜と前記スイッチシートの外表面側に有するスイッチシート側被覆膜とからなり、前記スイッチシート側被覆膜は前記FPC基板に固着していることを特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項3】
前記キースイッチの外表面に有する被覆膜は前記キー表示体の外表面側に有するキー表示体側被覆膜と前記スイッチシートの外表面側に有するスイッチシート側被覆膜とからなり、前記スイッチシート側被覆膜の曲げ強度は前記FPC基板の曲げ強度より大きいことを特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項4】
前記スイッチシート側被覆膜は樹脂シートの表面に硬質膜を設けたものからなることを特徴とする請求項2又は3に記載のキースイッチ。
【請求項5】
前記スイッチシート側被覆膜は金属箔膜又は金属板からなることを特徴とする請求項2又は3に記載のキースイッチ。
【請求項6】
前記押し子部材はシート形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項7】
前記キー表示体は電気泳動式表示パネル、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネルのいずれか1つからなることを特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項8】
前記電気泳動式表示パネルは、可撓性を有する上下基板の間にマイクロカプセル層を有してなり、少なくとも前記キー表示部の領域において前記マイクロカプセル層と前記下基板との間にクッション層を有していることを特徴とする請求項7に記載のキースイッチ。
【請求項9】
前記クッション層はゴム系樹脂からなることを特徴とする請求項8に記載のキースイッチ。
【請求項10】
前記電気泳動式表示パネルは、前記キー表示部から外れた領域において前記下基板に切欠部を有していることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載のキースイッチ。
【請求項11】
前記エレクトロルミネッセンス表示パネルは、可撓性を有する上下基板の間に発光体層を有してなり、前記キー表示部から外れた領域において前記下基板に切欠部を有していることを特徴とする請求項7に記載のキースイッチ。
【請求項12】
キースイッチを備えた電子表示機器において、前記キースイッチは前記請求項1乃至11のいずれかに記載のキースイッチであることを特徴とする電子表示機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−118200(P2010−118200A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289391(P2008−289391)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】