説明

キースイッチ装置及びキーボード

【課題】打鍵操作可能なキースイッチ装置において、キートップを下端位置に押下げたときの構成部材間の衝突音を低減する。
【解決手段】キースイッチ装置10は、ベース12上に配置されるキートップ14と、互いに連動してキートップ14を昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材16、18と、キートップ14の昇降動作に対応して接点を開閉するスイッチ機構20とを備える。スイッチ機構20は、メンブレンスイッチ50と、メンブレンスイッチ50上に配置されるシート部材60に連結された作動部材52とを備える。作動部材52とシート部材60との連結部位に隣接して、一対の弾性片64がシート部材60に突設される。キートップ14が下端位置に到達する直前に、キートップ14及びリンク部材16、18の少なくとも一方が弾性片64に衝突する。それにより衝突音が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打鍵操作されるキースイッチ装置に関し、特に、電子機器の入力装置であるキーボードで好適に使用されるキースイッチ装置に関する。さらに本発明は、そのようなキースイッチ装置を多数備えたキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノート型パーソナルコンピュータやノート型ワードプロセッサ等の携帯用電子機器の分野では、機器の携帯性を向上させる目的で、キーボードを含む機器筐体の薄型化すなわち低背化を実現するための様々な技術が提案されている。特に、打鍵操作される多数のキースイッチ装置を備えたキーボードを低背化する際には、一定水準の操作性を確保するためにキースイッチ装置のストローク量を所定量に維持しつつ、キースイッチ装置の非操作(スイッチオフ)時及び押下げ操作(スイッチオン)時の全高を削減することが要求されている。
【0003】
他方、携帯用電子機器は、持ち運びが容易なために様々な場所で使用できる利便性を有するものの、図書館等の静粛性が要求される場所で使用する場合には、キーボードに組み込んだキースイッチ装置を打鍵操作する際の騒音が問題になる。したがって近年、携帯用電子機器では、キーボードのキースイッチ装置の操作性を確保するだけでなく、打鍵操作時の騒音を可及的に低減することが望まれている。
【0004】
低背型キーボードに使用できるキースイッチ装置として、例えば特許文献1は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、互いに連動してキートップをベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを備えたキースイッチ装置を開示する。一対のリンク部材は、側面視逆V字状に組合わされて、それらの一端で互いに歯車状に噛み合うとともにキートップに回動可能に支持され、かつ他端でベースに摺動可能に係合するものが例示されている。
【0005】
キートップは、これらリンク部材がそれぞれの一端を中心に互いに連動して反対方向へ揺動するとともに、それぞれの他端がベースに沿って略水平方向へ摺動することにより、ベースに対し略鉛直方向へ所定の略水平姿勢を保持しつつ平行移動できる。キートップが下降したときには、一対のリンク部材はキートップの内側に収容され、ベースの上面とキートップの内面との間に実質的に挟持される。このような構成により、キートップの打鍵ストローク量を維持しつつ、キースイッチ装置の非操作時及び押下げ時の全高を低減することができる。
【0006】
このキースイッチ装置におけるスイッチ機構は、ベースの下に配置され、一対の接点を担持する一対のシート基板を有するシート状のスイッチ(本明細書でメンブレンスイッチと称する)と、キートップとメンブレンスイッチとの間に配置され、キートップの下降動作に伴い一対の接点を閉じるように作用する作動部材とから構成される。作動部材は、ゴム材料から一体成形されたドーム状部材であり、キートップの下方位置でベースに形成した開口部を介して、ドーム頂部をキートップ側に向けた姿勢でメンブレンスイッチ上に配置される。メンブレンスイッチの一対のシート基板の間にはスペーサが配置され、それにより一対の接点は、通常は開状態に保持されて、作動部材のドーム頂部の内面に設けた押圧部の下方に位置決めされる。
【0007】
作動部材は、キートップに外力が加わらないときには、ドーム頂部の外面でキートップをベースから鉛直上方へ離れた上端位置に付勢支持する。他方、オペレータの打鍵操作によりキートップが押下げられたときには、作動部材はキートップに上方への弾性付勢力を及ぼしつつ変形し、キートップが下端位置に接近するに従い押圧部によってメンブレンスイッチの上側のシート基板を外面から押圧して接点を閉じる。キートップへの押下げ力が解除されると、作動部材が弾性的に復元し、キートップを初期位置へ復帰させるとともに、上側のシート基板が復元して接点が開く。
【0008】
上記種類のキースイッチ装置を多数備える低背型キーボードにおいて、キーボードの使用時には全てのキースイッチ装置のキートップを打鍵操作可能な突出位置(打鍵ストロークの上端位置に対応)に保持し、キーボードの不使用時(例えば携帯時)には全てのキースイッチ装置のキートップを突出位置よりも低い打鍵操作不能な引込位置(打鍵ストロークの下端位置に対応)に一括して変位させることにより、携帯性を一層向上させるようにした構成も知られている。例えば特許文献2は、ドーム形の作動部材をメンブレンスイッチの上側のシート基板に固定的に連結し、キートップの下方で作動部材とメンブレンスイッチとを側方へ一体的に移動できるようにしたキースイッチ装置を開示する。
【0009】
このキースイッチ装置によれば、キーボードの使用時には、キートップを突出位置に付勢支持する第1位置に作動部材が配置され、キーボードの不使用時には、キートップに付勢力を及ぼさない第2位置に作動部材が側方移動して配置される。作動部材が第2位置に置かれると、キートップはリンク部材の案内下で自重により下降し、突出位置から引込位置へと自動的に変位する。第2位置にある作動部材は、その初期ドーム形状を保持した状態でキートップの内部空間に収容される。
【0010】
【特許文献1】特開平9−190735号公報
【特許文献2】特開平9−63402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した従来のキースイッチ装置では、一般に打鍵操作時に、キートップとベースとの衝突、キートップとメンブレンスイッチのシート基板との衝突、各リンク部材とメンブレンスイッチのシート基板との衝突のうち、少なくとも1つが生じたときに、キートップの下降動作が限界に達し、すなわちキートップが打鍵ストロークの下端位置に配置される。メンブレンスイッチの接点は、キートップが下端位置に到達する直前に、作動部材によって閉じられる。
【0012】
通常、キースイッチ装置の打鍵操作時に問題となる騒音は、キートップが下端位置に到達したときの上記した各部材間の衝突によって生じる音が主となる。しかしながら、キートップの下端位置をこのような各部材間の衝突により規定する構成は、キースイッチ装置の高さ方向の寸法を低減するために有効であり、したがって衝突自体を回避する構造にすることはキーボードを低背化する観点で望ましくない。そこで、キースイッチ装置の打鍵ストローク量、非操作時及び押下げ時の全高、打鍵操作性等に影響を及ぼすことなく、上記した各部材間の衝突音を可及的に低減することが必要となる。
【0013】
他方、全てのキースイッチ装置のキートップを突出位置と引込位置との間で一括して変位できる構成を有した低背型キーボードでは、各キースイッチ装置の作動部材を側方へ円滑にずらしてキートップを迅速かつ正確に変位できるようにすることが、キーボードの操作性を向上させる観点で肝要である。一般にこの種の作動部材は、キートップを突出位置に付勢する第1位置からキートップに付勢力を及ぼさない第2位置へは円滑に移動できるものの、反対に第2位置から第1位置へ向かう際には、作動部材自体がキートップを突出位置に押し上げつつ移動しなければならないので、円滑な移動が妨げられる傾向がある。
【0014】
特に、キートップを案内支持する一対のリンク部材が、それぞれの一端でベースに係合して、メンブレンスイッチのシート基板上を略水平方向へ摺動する構成を有する場合に、作動部材の第2位置から第1位置への円滑な移動がしばしば困難になることが判っている。通常、作動部材が第2位置から第1位置へ向かう際には、作動部材のドーム状の側壁部分からキートップへ斜め上方への押圧力が及ぼされるが、このとき一対のリンク部材が上記構成を有すると、各リンク部材が梃子の作用を生じて各々の摺動端でメンブレンスイッチのシート基板を下方へ押圧してしまう。つまり、作動部材を側方へずらすための力が、キートップ及びリンク部材を介してシート基板に加えられ、結果として作動部材の移動を妨げるように作用してしまうのである。
【0015】
本発明の目的は、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、キースイッチ装置のストローク量、非操作時及び押下げ時の全高、打鍵操作性等に影響を及ぼすことなく、キートップを下端位置に押下げたときの構成部材間の衝突音を可及的に低減できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、そのようなキースイッチ装置を多数備え、打鍵操作時の静粛性に優れたキーボードを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、キートップを突出位置と引込位置との間で変位させるための可動式の作動部材を有したキースイッチ装置において、作動部材を側方へ円滑にずらしてキートップを迅速かつ正確に変位できるキースイッチ装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、そのようなキースイッチ装置を多数備え、使用形態と不使用形態との間で全てのキースイッチ装置を一括して迅速かつ正確に変位できる操作性に優れたキーボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともにベース及びキートップの双方に作用的に係合して、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、キートップが昇降ストロークの下端位置に到達したときに生じる衝突音を低減する消音手段を具備することを特徴とするキースイッチ装置を提供する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキースイッチ装置において、消音手段が、スイッチ機構に設けられる弾性変形可能な緩衝部からなり、キートップが下端位置に到達する直前に緩衝部が弾性変形するキースイッチ装置を提供する。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のキースイッチ装置において、スイッチ機構が、キートップの下方でベースに設けた開口部に配置され、接点を有するメンブレンスイッチと、メンブレンスイッチ上に配置され、キートップの昇降動作に伴って弾性変形するとともにキートップが下端位置に向けて移動する間にメンブレンスイッチを押圧して接点を閉じる作動部材とを備え、緩衝部が作動部材に関連して設けられるキースイッチ装置を提供する。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のキースイッチ装置において、作動部材が、メンブレンスイッチ上に配置されるシート部材に連結され、緩衝部が、作動部材とシート部材との連結部位に隣接してシート部材に突設される弾性片からなり、キートップが下端位置に到達する直前にキートップ及び一対のリンク部材の少なくとも一方が弾性片に衝突するキースイッチ装置を提供する。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のキースイッチ装置において、作動部材がシート部材にゴム系接着剤を介して固着され、弾性片がゴム系接着剤から形成されるキースイッチ装置を提供する。
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、作動部材が、ゴム材料からなるドーム状部材であり、緩衝部が作動部材のドーム頂部に付加的に形成されるキースイッチ装置を提供する。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のキースイッチ装置において、緩衝部が、作動部材のドーム頂部に取付けられる弾性補助部材からなり、弾性補助部材がゴム材料よりも弾性率の小さな材料から形成されるキースイッチ装置を提供する。
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、作動部材をベース内の所定位置に位置決めする位置決め機構をさらに具備するキースイッチ装置を提供する。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、消音手段が、ベースに関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部からなり、キートップが下端位置に到達する直前にキートップが緩衝部に衝突するキースイッチ装置を提供する。
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のキースイッチ装置において、緩衝部が、ベースに形成される複数の板ばね部分からなり、それら板ばね部分が、キートップの外縁領域に対応する位置に分散して配置されるキースイッチ装置を提供する。
【0023】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載のキースイッチ装置において、緩衝部が、ベースに形成した複数の凹部に設置される複数の弾性部材からなり、それら弾性部材が、キートップの外縁領域に対応する位置に分散して配置されるキースイッチ装置を提供する。
請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のキースイッチ装置において、消音手段が、キートップ及びベースの少なくとも一方に局部的に設けられる衝突部からなり、キートップが下端位置に到達したときに衝突部を介してベースに衝突するキースイッチ装置を提供する。
【0024】
請求項13に記載の発明は、ベースと、ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともにベース及びキートップの双方に作用的に係合して、キートップをベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、ベース上でのキートップの少なくとも水平一方向への移動を実質的に防止する係止手段を具備することを特徴とするキースイッチ装置を提供する。
【0025】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のキースイッチ装置において、係止手段が、ベースに設けられる第1壁と、キートップに設けられ、第1壁に摺動可能に係合する第2壁とを具備するキースイッチ装置を提供する。
請求項15に記載の発明は、請求項13又は14に記載のキースイッチ装置において、スイッチ機構が、キートップの下方でベースに設けた開口部に配置され、接点を有するメンブレンスイッチと、メンブレンスイッチ上に配置され、キートップが下端位置に向けて移動する間にメンブレンスイッチを押圧して接点を閉じる作動部材とを備え、作動部材が、キートップを上端位置に付勢するとともにキートップの昇降動作に伴って弾性変形する第1位置と、キートップに付勢力を及ぼさずに初期形状を保持する第2位置との間で水平方向へ移動可能であるキースイッチ装置を提供する。
【0026】
請求項16に記載の発明は、請求項1〜15のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を多数配列して構成されるキーボードを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、打鍵操作されるキートップを有したキースイッチ装置において、キースイッチ装置のストローク量、非操作時及び押下げ時の全高、打鍵操作性等に影響を及ぼすことなく、キートップを下端位置に押下げたときの構成部材間の衝突音を可及的に低減することが可能になる。そのようなキースイッチ装置を多数組込んだキーボードは、打鍵操作時の静粛性に極めて優れたものとなる。
【0028】
さらに本発明によれば、キートップを突出位置と引込位置との間で変位させるための可動式の作動部材を有したキースイッチ装置において、作動部材を側方へ円滑にずらしてキートップを迅速かつ正確に変位することが可能になる。そのようなキースイッチ装置を多数組込んだキーボードは、使用形態と不使用形態との間で全てのキースイッチ装置を一括して迅速かつ正確に変位できる操作性に極めて優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図面において、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付す。
図面を参照すると、図1は本発明の第1の実施形態によるキースイッチ装置10の分解斜視図、図2はキースイッチ装置10の非操作時の断面図、図3はキースイッチ装置10の押下げ操作時の断面図である。キースイッチ装置10は、ベース12と、ベース12の主表面12a上に昇降方向へ移動可能に配置され、オペレータの手指で打鍵される操作面14aを有するキートップ14と、キートップ14をベース12上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材16、18と、キートップ14の昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構20とを備えて構成される。
【0030】
ベース12は、キートップ14によって遮蔽される略矩形の中心開口部22を備えた枠状部材である。ベース12には、中心開口部22を画成する一対の対向内周面12bに沿って、二組の摺動係合部24が前後方向(図2で左右方向、以下同)ヘ互いに離間して設けられる。各摺動係合部24は、ベース12の主表面12a及び内周面12bから突出する壁部分を有してL字状に伸び、この壁部分の内側に、主表面12aに略平行に延びる案内溝24aが形成される。各組を成す2個の摺動係合部24は、各々の案内溝24aをベース12の一対の内周面12bに沿った対応位置に配置する。さらに、各組で対応する側の摺動係合部24は、ベース12の内周面12bに沿って前後方向へ整列配置される。
【0031】
キートップ14は、略矩形平面形状を有した皿状の部材であり、操作面14aの反対側の内面14bに、二組の枢着部26が互いに並置して形成される。各枢着部26は、キートップ14の内面14bから直立状に突設される板状片からなり、板厚方向へ貫通する軸受穴26aと、内面14bに略直交する方向へ延びて軸受穴26aに連通する切欠き26bとが形成される。各組を成す2個の枢着部26は、キートップ14の内面14bの前後方向中央領域で、各リンク部材16、18の第1及び第2腕部28、30を受容できる距離だけ互いに離れて配置され、各々の軸受穴26aがその軸線方向へ互いに整列するように位置決めされる。さらに、各組で対応する側の枢着部26は、キートップ14の内面14b上で前後方向へ整列配置される。
【0032】
一対のリンク部材16、18は、それらの一端で互いに歯車状に連結されて側面視逆V字状に組合わされる実質的同一形状の第1リンク部材16及び第2リンク部材18からなる。各リンク部材16、18は、互いに平行に延びる第1腕部28及び第2腕部30と、それら腕部28、30を互いに連結する連結部32とを一体に備える。第1腕部28には、連結部32から離れた第1端の先端面に2枚の歯34が設けられ、第2腕部30には、連結部32から離れた第1端の先端面に1枚の歯36が設けられる。各腕部28、30の、連結部32に隣接した第2端には、連結部32の反対側へ支軸38がそれぞれ同軸状に突設され、各腕部28、30の第1端には、支軸38と同一側へ支軸40がそれぞれ同軸状に突設される。
【0033】
第1及び第2リンク部材16、18の各々は、各腕部28、30の第2端に設けた支軸38を、ベース12の各摺動係合部24の案内溝24aに摺動自在に嵌入し、かつ各腕部28、30の第1端に設けた支軸40を、キートップ14の各枢着部26の軸受穴26aに回動自在に嵌入して、キートップ14とベース12との間に配置される。このとき、第1リンク部材16と第2リンク部材18とは、それぞれの第1腕部28の第1端に設けた2枚の歯34と、それぞれの第2腕部30の第1端に設けた1枚の歯36とが噛み合わされ、それにより支軸40を中心に互いに連動して回動できるようになっている。
【0034】
したがってキートップ14は、第1及び第2リンク部材16、18がそれぞれの支軸40を中心に同期して反対方向へ揺動するとともに、それぞれの支軸38がベース12に沿って略水平方向へ摺動することにより、ベース12に対し略鉛直方向へ、操作面14aを主表面12aに略平行に配置した所定の略水平姿勢を保持しつつ平行移動する。キートップ14の打鍵ストロークの上端位置は、第1及び第2リンク部材16、18の各支軸38の相互接近方向への摺動が、ベース12の各摺動係合部24の案内溝24aを画成する壁部分によって係止された時点で規定される(図2)。キートップ14が上端位置から下降するに従い、第1及び第2リンク部材16、18の各支軸38は、キートップ14の昇降方向に略直交する相互離反方向へ摺動する。キートップ14が打鍵ストロークの下端位置に達すると、第1及び第2リンク部材16、18はキートップ14の内面14b側に収容されるとともに、ベース12の開口部22に受容される(図3)。
【0035】
なお、本発明に係るキースイッチ装置は、その構成要件である一対のリンク部材を上記実施形態に示すリンク部材16、18に限定するものではなく、他の様々な構成のリンク部材を備えたキースイッチ装置に適用できる。そのような他の一対のリンク部材としては、側面視X字状に組合わされて交点で互いに回動可能に連結されるもの(例えば実開平5−66832号公報参照)、側面視X字状に組合わされて交点で互いに摺動可能に連結されるもの(例えば特開平9−27235号公報参照)等が挙げられる。
【0036】
スイッチ機構20は、図4に断面図で示すように、一対の接点42、44を対向させて各々に担持する一対のシート基板46、48を有するメンブレンスイッチ50と、キートップ14とメンブレンスイッチ50との間に配置され、キートップ14の下降動作に伴い両接点42、44を閉じるように作用する作動部材52とから構成される。メンブレンスイッチ50の一対のシート基板46、48の間には、それらシート基板46、48を所定間隔に支持して両接点42、44を開状態に保持するスペーサ54が設置される。
【0037】
メンブレンスイッチ50の両シート基板46、48は、いずれも周知のフレキシブル印刷回路板の構成を有し、そのフィルム基体の表面に、互いに短絡可能な接点42、44が設けられる。それらシート基板46、48は、ベース12の下で支持板56上に支持され、両接点42、44は、ベース12の開口部22の略中心に位置決めされる。作動部材52は、ゴム材料から一体成形されたドーム状部材であり、ドーム頂部52aをキートップ14側に向けた姿勢で、ベース12の開口部22内に配置される。作動部材52は、無負荷時にはドーム頂部52aを一方すなわち上側のシート基板46の上方に離隔して配置する。作動部材52のドーム頂部52aの内面には、シート基板46に向かって延びる柱状の押圧部58が形成される。
【0038】
シート基板46、48に担持された一対の接点42、44は、各シート基板46、48が本質的に有するこしにより、スペーサ54を介して通常は図4の開状態に保持され、作動部材52の押圧部58の略平坦な先端面58aの下方に位置決めされる。作動部材52のドーム頂部52aにシート基板46に接近する方向への外力が加わると、作動部材52は弾性変形し、押圧部58の先端面58aがシート基板46をその外面から押圧することにより、一対の接点42、44を閉じる。
【0039】
ベース12と上側のシート基板46との間には、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料から形成される可撓性を有するシート部材60が設置される。作動部材52はそのドーム開口端52bで、シート部材60の外面に適当な接着剤62により固定される。この場合、好ましくはシート部材60は、作動部材52のドーム開口端52bに対応する開口部60aを有する。或いはシート部材60を、作動部材52と同一のゴム材料から作動部材52に一体的に形成することもできる。
【0040】
なお、スイッチ機構20を備えたキースイッチ装置10を多数配列してキーボードを構成する際には、各キースイッチ装置10におけるメンブレンスイッチ50の両シート基板46、48及び作動部材52を固定したシート部材60はいずれも、キーボードに組み込まれる全てのキースイッチ装置10に対して共通する大判のシート材料から形成される。同様に、ベース12及び支持板56は、キーボードに組み込まれる全てのキースイッチ装置10に対して共通する大判の材料から形成される。
【0041】
キースイッチ装置10では、キートップ14に外力が加わらないときには、スイッチ機構20の作動部材52がドーム頂部52aの外面でキートップ14をベース12から鉛直上方へ離れた上端位置(図2)に付勢支持する。このときメンブレンスイッチ50は、一対の接点42、44が開いた状態にある。また、オペレータの打鍵操作によりキートップ14が押下げられたときには、作動部材52はキートップ14に上方への弾性付勢力を及ぼしつつ変形し、キートップ14が下端位置(図3)に達するまでの間に押圧部58によって上側のシート基板46を外面から押圧して接点42、44を閉じる。キートップ14への押下げ力が解除されると、作動部材52が弾性的に復元し、キートップ14を上端位置へ復帰させるとともに、上側のシート基板46が復元して接点42、44が開く。
【0042】
上記構成を有するキースイッチ装置10においては、打鍵操作時に、キートップ14とベース12との衝突、キートップ14とメンブレンスイッチ50上に配置したシート部材60との衝突、各リンク部材16、18とシート部材60との衝突のうち、少なくとも1つが生じたときに、キートップ14の下降動作が限界に達し、すなわちキートップ14が打鍵ストロークの下端位置に配置される(図3)。メンブレンスイッチ50の一対の接点42、44は、キートップ14が下端位置に達するまでの間に、上記したように作動部材52によって閉じられる。このとき、キートップ14とベース12とはいずれも比較的硬質かつ軽量の樹脂材料から形成されるので、相互衝突時に騒音が生じ易い構造になっている。また、シート部材60及びメンブレンスイッチ50は、いずれも薄膜状部材であって比較的硬質の支持板56上に設置されるので、キートップ14やリンク部材16、18とシート部材60とが衝突したときにはやはり騒音が生じ易い。
【0043】
そこで、本発明に係るキースイッチ装置10は、キートップ14が下端位置に到達したときに上記した各部材間の衝突によって生じる音を低減する消音手段を備える。キースイッチ装置10の消音手段は、図1に示すように、スイッチ機構20の作動部材52に関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部64から構成される。緩衝部64は、キースイッチ装置10の通常の打鍵操作時に、キートップ14が打鍵ストロークの下端位置に到達する直前に弾性変形するように構成される。
【0044】
図示実施形態では、緩衝部64は、作動部材52を固定したシート部材60の表面に僅かに突出して形成される一対の弾性片64からなる。これら弾性片64は、キートップ14が下端位置に到達したときに、キートップ14の二組の枢着部26並びに一対のリンク部材16、18の第1及び第2腕部28、30の少なくともいずれかが衝突可能な位置に形成され、その位置でシート部材60の厚みを局部的に増加させる。その結果、キートップ14が打鍵ストロークの下端位置に到達する直前に、キートップ14及び一対のリンク部材16、18の少なくとも一方がそれら弾性片64に衝突する。したがって弾性片64は、キートップ14とシート部材60との衝突及び各リンク部材16、18とシート部材60との衝突のうち少なくとも一方が生じたときに、その衝突自体を緩衝するように作用し、それにより衝突音を効果的に低減する。また、この緩衝作用により、キートップ14とベース12とが衝突する直前にキートップの押下げ速度が若干減速されるので、結果としてキートップ14とベース12との衝突も緩和されることになる。
【0045】
図示実施形態では、一対の弾性片64は、作動部材52のドーム開口端52bとシート部材60の表面との連結部位に隣接して配置される。したがって、作動部材52が別体のシート部材60に接着剤62を介して固着される構成の場合、接着剤62としてゴム系接着剤を使用すると同時に、図5に示すように、作動部材52を固着する環状の固着領域から側方へさらに矩形状に延長してゴム系接着剤を配置することにより、一対の弾性片64を形成することができる。この場合、固着領域から側方へ延長したゴム系接着剤は、作動部材52の固着工程に並行して固化し、消音手段として機能するに十分な弾性を有した弾性片64となる。このような構成によれば、シート部材60の表面の固着領域に接着剤62を配置する工程と同時に、同じゴム系接着剤から弾性片64を形成できるので有利である。なお、好ましい実施例では、接着剤62及び弾性片64はシリコーンゴム系接着剤から形成される。また、接着剤62及び弾性片64の配置工程は、例えば周知のスクリーン印刷により実施できる。
【0046】
上記構成においては、図6に変形例として示すように、一対の弾性片64を固着領域の接着剤62よりも肉厚に形成することもできる。この場合、一対の弾性片64は、対応箇所のみ周知のスクリーン印刷によってゴム系接着剤を重ね塗りすることにより形成できる。また、前述したように作動部材52とシート部材60とが互いに一体的に形成される構成の場合には、それらの一体成形工程において上記と同様の位置に一対の弾性片64をシート部材60に一体的に形成することができる。いずれの構成においても、弾性片64の厚みは、キースイッチ装置10の通常の打鍵操作による接点閉鎖作用を妨害しない範囲で、しかも部材間の衝突音を可及的に低減できるように選択できる。
【0047】
上記構成を有するキースイッチ装置10によれば、シート部材60に僅かな厚みの弾性片64を形成するための若干の加工を施すだけで、通常の打鍵操作時にキートップ14が下端位置に到達したときの衝突音を低減する消音手段を容易に設置できる。しかも、弾性片64を有するシート部材60以外は構成部品の構造変更を要しないので、キースイッチ装置10の打鍵ストローク量、非操作時及び押下げ時の全高、打鍵操作性等に影響を及ぼすことなく、打鍵操作時の騒音を効果的に低減することができる。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施形態によるキースイッチ装置70を分解斜視図で示す。キースイッチ装置70は、キートップ14が下端位置に到達したときに生じる衝突音を低減する消音手段の構成以外は、上記したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有するので、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0049】
キースイッチ装置70の消音手段は、スイッチ機構20の作動部材52に関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部72から構成される。緩衝部64は、キースイッチ装置70の通常の打鍵操作時に、キートップ14が打鍵ストロークの下端位置に到達する直前に弾性変形するように構成される。図示実施形態では、緩衝部72は、作動部材52のドーム頂部52aに付加的に取付けられる弾性補助部材72からなる。好ましくは弾性補助部材72は、作動部材52のゴム材料よりも弾性率の小さな材料から形成され、図8に示すように、作動部材52のドーム頂部52aに設けられた凹部52cに充填される。この場合、弾性補助部材72は、例えば溶融高分子材料を作動部材52の凹部52cに注入して固化させることにより形成できる。或いは、別工程で形成した円盤状の弾性補助部材72を作動部材52の凹部52cに嵌め込むこともできる。なお、好ましい実施例では、作動部材52及び弾性補助部材72は、硬度の異なるシリコーンゴムから形成される。
【0050】
このような構成を有する弾性補助部材72は、後述するように、キースイッチ装置70の通常の打鍵操作時に、作動部材52によって得られる所定の打鍵操作特性の、特に接点42、44が閉じた後にキートップ14が下端位置に達するまでの特性を変化させるように作用する。その結果、キートップ14とベース12との衝突、キートップ14とシート部材60との衝突及び各リンク部材16、18とシート部材60との衝突のうち少なくともいずれかが生じるときに、その衝突自体が弾性補助部材72の存在により緩衝され、以て衝突音が効果的に低減される。
【0051】
一般にキースイッチ装置において、スイッチ開閉手段として使用されるドーム状の作動部材は、キートップをベースから離れる上方へ弾性的に付勢する付勢手段としても作用し、キートップの打鍵操作による変形時にそのドーム形状に起因して、キートップの変位量に非線形対応する上方への付勢力(弾性回復力)をキートップに及ぼす。つまり、キートップの押下げ量が所定値を超えたときに、それまで徐々に増加していた付勢力が急に減少するような打鍵操作特性が得られるようになっている。その結果、オペレータは、一般にキースイッチ装置の打鍵ストローク量が比較的短い携帯用電子機器のキーボードにおいても、キースイッチ装置を正確に作動させたことを感覚的に認識することができる。
【0052】
キースイッチ装置70に関して説明すれば、図9(a)に示すように、キートップ14(図7)が打鍵ストロークの上端位置から押下げられるに従って、まず、作動部材52のドーム頂部52aとドーム開口端52bとの間に延びるドーム状の側壁部分52dが弾性変形する。そして、キートップ14が打鍵ストロークの下端位置に到達する前に、作動部材52の押圧部58がメンブレンスイッチ50のシート基板46を押圧して接点42、44を閉じる。したがって、接点閉鎖に至るまでのキースイッチ装置70の上記した特徴的な打鍵操作特性、すなわち作動部材52がキートップ14へ加える上方への付勢力は、主として側壁部分52dの弾性変形によって発揮される。
【0053】
作動部材52のドーム頂部52aの形状は、メンブレンスイッチ50の接点42、44を閉じた後に、さらにキートップ14を下端位置まで押下げることを可能にするものである。すなわちこの間は、図9(b)に示すように、作動部材52のドーム頂部52aに凹部52cを画成する頂壁部分52eが、側壁部分52dと共に弾性変形する。この頂壁部分52eの弾性変形は、キートップ14へ大きな上方付勢力を及ぼすものであり、それによりオペレータは接点閉鎖を感覚的に認識できる。しかも、接点閉鎖後にキートップ14をさらに弾性的に押下げることができるので、オペレータの手指に加わる衝撃が緩和される利点がある。
【0054】
そしてキースイッチ装置70では、この接点閉鎖から下端位置到達に至る間にキートップ14へ及ぼされる上方付勢力を、作動部材52の凹部52cに弾性補助部材72を充填することによって幾分増加させる構成としている。その結果、キートップ14とベース12との衝突、キートップ14とシート部材60との衝突及び各リンク部材16、18とシート部材60との衝突のうち少なくともいずれかが生じる際の衝突速度が低下するので、前述したように衝突音が効果的に低減されるのである。このようなキースイッチ装置70の打鍵操作特性を、図9(c)に概略で示す。なお図9(c)において、横軸はキートップ14の上端位置からの押下げ距離(mm)、縦軸はキートップ14に加えられる押下げ力(g)、破線は弾性補助部材72を装備していないキースイッチ装置の打鍵操作特性、実線は弾性補助部材72を装備したキースイッチ装置70の打鍵操作特性を示す。
【0055】
上記構成においては、図10に変形例として示すように、作動部材52の凹部52cに複数の粒状の弾性補助部材74を充填することもできる。この場合、それら弾性補助部材74は、凹部52cに単純に詰め込んでもよいし、接着剤を用いて固着してもよい。なお図10は、作動部材52とシート部材60とが互いに一体的に形成される構造を例示する。図8及び図10のいずれの構成においても、弾性補助部材74は、キースイッチ装置70の通常の打鍵操作による接点閉鎖後の操作感覚を害さない範囲で、しかも部材間の衝突音を可及的に低減できるように、その寸法、形状、弾性率等を選択できる。
【0056】
上記構成を有するキースイッチ装置70によれば、作動部材52の凹部52cに弾性補助部材72、74を充填するための若干の加工を施すだけで、通常の打鍵操作時にキートップ14が下端位置に到達したときの衝突音を低減する消音手段を容易に設置できる。しかも、弾性補助部材72、74を有する作動部材52以外は構成部品の構造変更を要しないので、キースイッチ装置70の打鍵ストローク量、非操作時及び押下げ時の全高、打鍵操作性等に影響を及ぼすことなく、打鍵操作時の騒音を効果的に低減することができる。
【0057】
ところで、上記各実施形態によるキースイッチ装置10、70のスイッチ機構20が、図10に例示したような互いに一体的に形成される作動部材52とシート部材60とを有する場合には、通常、シート部材60も作動部材52と同一のゴム材料から形成される。したがってこの場合、PET等からなる別体のシート部材60とは異なり、ゴム製のシート部材60自体が前述した弾性片64と同様に作用して消音効果を奏することができる。しかしこの構成では、キースイッチ装置10、70を組立てる際にゴム製のシート部材60が撓みや伸びを生じ易く、結果的に作動部材52をベース12の中心開口部22内の所定位置に設置することが困難になる傾向がある。作動部材52がベース12内の所定位置に設置されないと、キートップ14の打鍵操作性が損なわれるだけでなく、メンブレンスイッチ50の接点42、44の正確な開閉が困難になる危惧がある。この問題は、多数のキースイッチ装置10、70を組込んだキーボードの低背化を促進するために、作動部材52と一体のシート部材60の厚みを削減しようとするほど顕著になる。
【0058】
そこで、図11に第3の実施形態として示すように、作動部材52をベース12の中心開口部22内の所定位置に位置決めする位置決め機構をさらに備えるキースイッチ装置80を提供できる。キースイッチ装置80は、ベース12とシート部材60とのそれぞれに関連してこの位置決め機構を設置した以外は、上記したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有するので、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。なお、キースイッチ装置80は、作動部材52と一体のゴム製のシート部材60自体による消音効果を利用するので、前述した弾性片64をシート部材60上に備えていない。
【0059】
キースイッチ装置80のベース12は、中心開口部22を画成する前後一対の対向内周面12cから互いに接近する方向へ延設された一対の延長部82を備える。それら延長部82の互いに対向する面には、略半円形かつ凹状に延びる支持面84がそれぞれ形成される。またシート部材60は、作動部材52を挟んで互いに対向する位置に、作動部材52と同一側に突設された一対の突起86を備える。それら突起86の互いに離反する面には、略半円形かつ凸状に延びる係合面88がそれぞれ形成される。ベース12に設けた一対の支持面84と、シート部材60に設けた一対の係合面88とは、互いに密接可能な形状を有して対応位置に配置される。
【0060】
キースイッチ装置80の組立工程においては、メンブレンスイッチ50上に配置した作動部材52と一体のシート部材60上にさらにベース12を配置する際に、ベース12の各支持面84とシート部材60の対応の各係合面88とを互いに密接して係合させる。このとき、各支持面84及び各係合面88はいずれも略半円形に延びるので、ベース12とシート部材60とをキースイッチ装置80の少なくとも前後方向及び左右方向へ互いに位置決めして係止するように作用する。その結果、作動部材52がベース12の中心開口部22内の所定位置に、容易かつ正確に設置される。なお、メンブレンスイッチ50は比較的伸び難い材料から形成されるので、その接点42、44をベース12の中心開口部22内の所定位置に容易に配置できる。したがって作動部材52は、メンブレンスイッチ50の接点42、44に対しても正確に位置決めされることになる。
【0061】
上記構成において、シート部材60上へのベース12の配置をさらに容易にするために、ベース12の各延長部82に最初に係合するシート部材60の各突起86の上縁部を面取りすることが有利である。また、位置決め機構は上記構成に限らず、ベース12とシート部材60とをキースイッチ装置80の少なくとも前後方向及び左右方向へ互いに位置決めできるものであれば、他の様々な形状、構成の位置決め機構を採用できることは言うまでもない。
【0062】
図12及び図13は、本発明の第4の実施形態によるキースイッチ装置90の、特に消音手段の部分を拡大して示す。キースイッチ装置90は、キートップ14が下端位置に到達したときに生じる衝突音を低減する消音手段の構成以外は、前述したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有することができる。したがって、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。なお図12は、キースイッチ装置90を多数備えたキーボードにおいて、並置される2個のキースイッチ装置90のベース12に対応する大判のベース材12′の一部分を概略平面図で示す。また図13は、同部分を線XIII−XIIIに沿った縦断面図で、キートップ14と共に示す。図1に示すリンク部材16及び18、作動部材52並びにベース12の摺動係合部24は図示省略する。
【0063】
キースイッチ装置90の消音手段は、ベース12に関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部92から構成される。緩衝部92は、キースイッチ装置90の通常の打鍵操作時に、キートップ14が下端位置に到達する直前にキートップ14に衝突するように構成される。図示実施形態では、緩衝部92は、ベース12に形成される複数の板ばね部分92からなる。それら板ばね部分92は、ベース12の上方にあるキートップ14の外縁領域に対応する所望位置に分散して配置される。
【0064】
各板ばね部分92は、隣接する2個のキースイッチ装置90のベース12に跨がって、ベース材12′を部分的に切り抜いて形成されたT字状部分から構成される。各板ばね部分92は、T字の脚92aの基端でベース材12′に一体的に連結され、この連結部分を支点にベース材12′上で弾性的に揺動できるようになっている。それら板ばね部分92のT字の腕92bの各自由端は、隣接するキースイッチ装置90の各々において、好ましくはベース12の上方にあるキートップ14の外縁四隅に対応する位置まで延びる。そして、各板ばね部分92のT字の腕92bの各自由端には、各キースイッチ装置90におけるベース12の主表面12aから僅かに(例えば0.1mm程度)突出する突起94が形成される。なお、各キースイッチ装置90におけるメンブレンスイッチ50及び支持板56には、各板ばね部分92に対応する位置に、揺動する各板ばね部分92を受容可能な開口部96、98がそれぞれ形成される。
【0065】
上記構成によれば、キースイッチ装置90の通常の打鍵操作時に、キートップ14は、打鍵ストロークの下端位置に到達する直前にその裏面14cの四隅、又はキートップ14が傾斜している場合には少なくとも一隅で、各板ばね部分92の対応の突起94に衝突する(図13に破線で示す)。各板ばね部分92は、この衝突によりベース12に対し弾性的に揺動して下方の開口部96、98に受容され、その状態でキートップ14が下端位置に到達する。このような各板ばね部分92の弾性変形により、ベース12とキートップ14との衝突自体が緩和され、それにより衝突音が効果的に低減される。また、この緩衝作用により、キートップ14及び各リンク部材16、18(図1)とシート部材60(図1)とが衝突する直前にキートップ14の押下げ速度が減速されるので、結果としてそれら部材間の衝突も緩和されることになる。
【0066】
図14及び図15は、本発明の第5の実施形態によるキースイッチ装置100の、特に消音手段の部分を拡大して示す。キースイッチ装置100は、キートップ14が下端位置に到達したときに生じる衝突音を低減する消音手段の構成以外は、前述したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有することができる。したがって、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。なお図14は、キースイッチ装置100を多数備えたキーボードにおいて、並置される2個のキースイッチ装置100のベース12に対応する大判のベース材12′の一部分を概略平面図で示す。また図15は、同部分を線XV−XVに沿った縦断面図で、キートップ14と共に示す。図1に示すリンク部材16及び18並びにベース12の摺動係合部24は図示省略する。
【0067】
キースイッチ装置100の消音手段は、ベース12に関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部102から構成される。緩衝部102は、キースイッチ装置100の通常の打鍵操作時に、キートップ14が下端位置に到達する直前にキートップ14に衝突するように構成される。図示実施形態では、緩衝部102は、ベース12に形成した複数の貫通孔104に設置される複数の弾性部材102からなる。それら弾性部材102は、ベース12の上方にあるキートップ14の外縁領域に対応する所望位置に分散して配置される。
【0068】
好ましくは各貫通孔104は、隣接するキースイッチ装置100の各々において、ベース12の上方にあるキートップ14の外縁四隅に対応する位置に配置される。各弾性部材102は、例えば作動部材52と同一のゴム材料から形成され、各貫通孔104に十分な隙間を介して受容されるとともに、先端でベース12の主表面12aから僅かに(例えば0.1mm程度)突出する。このような弾性部材102は、前述した作動部材52とシート部材60とが互いに一体的に形成される構成の場合には、それらの一体成形工程においてシート部材60に一体的に形成することができる(図15)。或いは、作動部材52とシート部材60とが別体である場合には、別工程で成形した弾性部材102を、シート部材60の表面の各貫通孔114に対応する位置に接着剤等により固着して形成できる。
【0069】
上記構成によれば、キースイッチ装置100の通常の打鍵操作時に、キートップ14は、打鍵ストロークの下端位置に到達する直前にその裏面14cの四隅又は少なくとも一隅で、対応の弾性部材102に衝突する(図15に破線で示す)。各弾性部材102は、この衝突によりベース12の貫通孔104内で弾性的に押し潰され、その状態でキートップ14が下端位置に到達する。このような各弾性部材102の弾性変形により、ベース12とキートップ14との衝突自体が緩和され、それにより衝突音が効果的に低減される。また、この緩衝作用により、キートップ14及び各リンク部材16、18(図1)とシート部材60とが衝突する直前にキートップ14の押下げ速度が減速されるので、結果としてそれら部材間の衝突も緩和されることになる。
【0070】
図16及び図17は、本発明の第6の実施形態によるキースイッチ装置110の、特に消音手段の部分を拡大して示す。キースイッチ装置110は、キートップ14が下端位置に到達したときに生じる衝突音を低減する消音手段の構成以外は、前述したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有することができる。したがって、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。なお図16は、キースイッチ装置110を多数備えたキーボードにおいて、並置される2個のキースイッチ装置110のベース12に対応する大判のベース材12′の一部分を概略平面図で示す。また図17は、同部分を線XVII−XVIIに沿った縦断面図で、キートップ14と共に示す。図1に示すリンク部材16及び18並びにベース12の摺動係合部24は図示省略する。
【0071】
キースイッチ装置110の消音手段は、ベース12に関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部112から構成される。緩衝部112は、キースイッチ装置110の通常の打鍵操作時に、キートップ14が下端位置に到達する直前にキートップ14に衝突するように構成される。図示実施形態では、緩衝部112は、ベース12に形成した複数の貫通孔114に設置される複数の弾性部材112からなる。それら弾性部材112は、ベース12の上方にあるキートップ14の外縁領域に対応する所望位置に分散して配置される。
【0072】
好ましくは各貫通孔114は、隣接するキースイッチ装置110の各々において、ベース12の上方にあるキートップ14の外縁四隅に対応する位置に配置される。各弾性部材112は、例えば作動部材52と同一のゴム材料から形成され、ベース12の下方に配置されて各貫通孔114の底面を画成する。このような弾性部材112は、前述した作動部材52とシート部材60とが互いに一体的に形成される構成の場合には、シート部材60自体の各貫通孔114に重畳する各部分から形成できる(図17)。或いは、作動部材52とシート部材60とが別体である場合には、別工程で成形した弾性部材112を、シート部材60の表面の各貫通孔114に対応する位置に接着剤等により固着して形成できる。他方、キートップ14には、その内面14aの四隅に、ベース12の各貫通孔114に受容可能な突起116が設けられる。各突起116は、各貫通孔114の周辺におけるベース12の厚みよりも僅かに(例えば0.1mm程度)大きな高さを有する。
【0073】
上記構成によれば、キースイッチ装置110の通常の打鍵操作時に、キートップ14は、打鍵ストロークの下端位置に到達する直前にその裏面14cの四隅又は少なくとも一隅の突起116が、対応の貫通孔114に進入して弾性部材112に衝突する(図17に破線で示す)。各弾性部材112は、この衝突によりベース12の貫通孔114の下で弾性的に押し潰され、その状態でキートップ14が下端位置に到達する。このような各弾性部材112の弾性変形により、ベース12とキートップ14との衝突自体が緩和され、それにより衝突音が効果的に低減される。また、この緩衝作用により、キートップ14及び各リンク部材16、18(図1)とシート部材60とが衝突する直前にキートップ14の押下げ速度が減速されるので、結果としてそれら部材間の衝突も緩和されることになる。
【0074】
上記各実施形態に係るキースイッチ装置90、100、110によれば、ベース12とキートップ14との衝突箇所に緩衝部92、102、112を形成する構成であるから、打鍵ストローク量、非操作時及び押下げ時の全高、打鍵操作性等に影響を及ぼすことなく、打鍵操作時の騒音を効果的に低減することができる。同様の観点で、ベース12とキートップ14との衝突箇所に一層簡易な構成の消音手段を配備することにより、打鍵操作時の騒音を低減することもできる。図18は、そのような簡易構成の消音手段を備える本発明の第7の実施形態によるキースイッチ装置120を示す。キースイッチ装置120は、消音手段の構成以外は前述したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有することができる。したがって、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。なお図18(a)は、キースイッチ装置120のベース12及びキートップ14の概略平面図、図18(b)は、線 XVIII−XVIII に沿った縦断面図である。図1に示すリンク部材16及び18、スイッチ機構20並びに支持板56は図示省略する。
【0075】
キースイッチ装置120の消音手段は、ベース12及びキートップ14の少なくとも一方に局部的に設けられる衝突部122からなる。ベース12とキートップ14とは、キースイッチ装置120の通常の打鍵操作時に、キートップ14が下端位置に到達したときに衝突部122を介して互いに衝突するように構成される。図示実施形態では、衝突部122は、キートップ14の裏面14cの四隅にそれぞれ形成した突起122からなる。各突起122は、キートップ14の裏面14cから僅かに(例えば0.1mm程度)突出する。このような突起122は、キートップ14の成形工程においてキートップ14と同一の材料から一体的に形成できる。
【0076】
上記構成によれば、キースイッチ装置120の通常の打鍵操作時に、キートップ14は、打鍵ストロークの下端位置でその四隅又は少なくとも一隅の突起122が、ベース12の主表面12aに衝突する。このとき、相互衝突部分の面積は突起122の作用により極めて小さくなっている。その結果、平面同士が衝突する構成に比べて、ベース12とキートップ14との衝突音が低減される。ただしこの構成では、キートップ14が突起122に衝突した時点でスイッチ機構20の接点が閉じられるように構成する必要があるので、キースイッチ装置120の非操作時及び押下げ時の全高に若干の影響が及ぼされる。
【0077】
上記構成においては、図19に変形例として示すように、キートップ14に突起122を設ける代わりに、ベース12の主表面12aに、衝突部として作用する複数の突起124を形成することもできる。それら突起124は、ベース12の上方にあるキートップ14の外縁四隅に対応する位置に、ベース12の主表面12aから僅かに(例えば0.1mm程度)突出して形成される。このような突起124は、ベース12の成形工程においてベース12と同一の材料から一体的に形成できる。
【0078】
このような構成によれば、キースイッチ装置120の通常の打鍵操作時に、キートップ14は、打鍵ストロークの下端位置でその裏面14cの四隅又は少なくとも一隅が、ベース12に形成した対応の突起124に衝突する。したがって図18の構成と同様に、相互衝突部分の面積の縮小により、平面同士が衝突する構成に比べて、ベース12とキートップ14との衝突音が低減される。
【0079】
或いは、図20に他の変形例として示すように、ベース12又はキートップ14に突起122、124を設ける代わりに、キートップ14の裏面14cを傾斜させ、キートップ14の外周縁126を衝突部として構成することもできる。この場合、キースイッチ装置120の通常の打鍵操作時に、キートップ14は、打鍵ストロークの下端位置で外周縁126の全体又は少なくとも一部分が、ベース12の主表面12aに衝突する。したがってやはり、平面同士が衝突する構成に比べて、ベース12とキートップ14との衝突音が低減される。この構成では、キースイッチ装置120の非操作時及び押下げ時の全高に影響を及ぼす危惧が排除される。
【0080】
上記した各実施形態における消音手段は、それぞれを単独で使用するだけでなく、必要に応じて幾つかの消音手段を組合せて使用することもできる。また、いずれかの実施形態によるキースイッチ装置10、70、80、90、100、110、120を多数組込んだキーボードは、打鍵操作時の静粛性に極めて優れたものとなる。
【0081】
図21は、本発明の第8の実施形態によるキースイッチ装置130を示す分解斜視図、図22は、組立時のキースイッチ装置130の線XXII−XXIIに沿った断面図、図23は、組立時のキースイッチ装置130の線 XXIII−XXIII に沿った断面図である。キースイッチ装置130は、ベース132と、ベース132の主表面132a上に昇降移動可能に配置され、オペレータの手指で打鍵される操作面134aを有するキートップ134と、キートップ134をベース132上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材16、18と、キートップ134の昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構136とを備えて構成される。キースイッチ装置130は、ベース132上でのキートップ134の少なくとも水平一方向への移動を実質的に防止する係止手段を備える点以外は、前述したキースイッチ装置10と実質的に同一の構成を有するので、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0082】
キースイッチ装置130のスイッチ機構136は、メンブレンスイッチ50と、キートップ134の下方で側方移動可能な作動部材52とから構成される。作動部材52はそのドーム開口端52bで、ベース132とメンブレンスイッチ50との間に図示矢印A方向へ摺動可能に配置されるシート部材138に固定的に連結される。それにより作動部材52は、ベース132の中心開口部140内で、キートップ134を打鍵ストロークの上端位置に付勢するとともにキートップ134の昇降動作に伴って弾性変形する第1位置(図22)と、キートップ134に付勢力を及ぼさずに初期ドーム形状を保持する第2位置(図24)との間で水平方向へ移動可能となっている。なお作動部材52は、別体のシート部材138に接着剤により固着される構成でもよいし、或いはシート部材138に一体的に形成してもよい。
【0083】
このようなキースイッチ装置130を多数配列して構成したキーボードは、使用時には全てのキースイッチ装置130の作動部材52を第1位置に配置することにより、全てのキートップ134を打鍵操作可能な突出位置(打鍵ストロークの上端位置に対応)に保持することができ、また不使用時(例えば携帯時)には全てのキースイッチ装置130の作動部材52を第2位置に配置することにより、全てのキートップ134を突出位置よりも低い打鍵操作不能な引込位置(打鍵ストロークの下端位置に対応)に一括して変位させることができる。作動部材52が第2位置に置かれたときには、キートップ134はリンク部材16、18の案内下で自重により下降し、突出位置から引込位置へと自動的に変位する。第2位置にある作動部材52は、その初期ドーム形状を保持した状態で、キートップ134の内部空間に収容される。
【0084】
したがって、多数のキースイッチ装置130を組込んだキーボードでは、各キースイッチ装置130の作動部材52を側方へ円滑にずらしてキートップ134を迅速かつ正確に変位できるようにすることが、キーボードの操作性を向上させる観点で肝要である。そこでキースイッチ装置130は、ベース132上でのキートップ134の少なくとも水平一方向への移動を実質的に防止する係止手段を備えることにより、作動部材52を第1位置と第2位置との間で円滑に移動させることを可能にする。以下で詳述するように、キースイッチ装置130の係止手段は、ベース132に設けられる一組の第1壁142と、キートップ134に設けられ、それら第1壁142に摺動可能に係合する一組の第2壁144とから構成される。
【0085】
ベース132は、キートップ134によって遮蔽される略矩形の中心開口部140を備えた枠状部材である。ベース132には、中心開口部140を画成する一対の対向内周面132bに沿って、二組の摺動係合部146、148が前後方向(図22で左右方向、以下同)ヘ互いに離間して設けられる。各摺動係合部146、148は、ベース132の主表面132a及び内周面132bから突出する壁部分を有してL字状に伸び、この壁部分の内側に、主表面132aに略平行に延びる第1案内溝146a、148aと、第1案内溝146aに並設され、上方へ湾曲して延びる第2案内溝146b、148bとがそれぞれ形成される。各摺動係合部146、148の第1案内溝146a、148aは、第1及び第2リンク部材16、18の各々の各腕部28、30の第2端に設けた支軸38を摺動自在に受容する。また、各摺動係合部146、148の第2案内溝146b、148bは、第1及び第2リンク部材16、18の各々の各腕部28、30の上面に摺動自在に係合する。
【0086】
ベース132の前側に配置される一組の摺動係合部146は、各々のL字状壁部分の後端に、上方へ延出する突子150を固定的に備える。各突子150は、主表面132aに略直交する方向へ延びる平坦な後端面142を有し、この後端面142が第1壁142として作用する。前側の一組の摺動係合部146は、各々の第1及び第2案内溝146a、146b並びに第1壁142をベース132の一対の内周面132bに沿った対応位置に配置する。後側の一組の摺動係合部148は、各々の第1及び第2案内溝148a、148bをベース132の一対の内周面132bに沿った対応位置に配置する。さらに、各組で対応する側の摺動係合部146、148は、ベース132の内周面132bに沿って前後方向へ整列配置される。
【0087】
キートップ134は、略矩形平面形状を有した皿状の部材であり、操作面134aの反対側の内面134bに、二組の枢着部152が互いに並置して形成される。各枢着部152は、キートップ134の内面134bから直立状に突設される板状片からなり、板厚方向へ貫通する軸受穴152aと、内面134bに略直交する方向へ延びて軸受穴152aに連通する切欠き152bとが形成される。各枢着部152の軸受穴152aは、第1及び第2リンク部材16、18の各々の各腕部28、30の第1端に設けた支軸40を回動自在に受容する。各組を成す2個の枢着部152は、キートップ134の内面134bの前後方向中央領域で、各リンク部材16、18の第1及び第2腕部28、30を受容できる距離だけ互いに離れて配置され、各々の軸受穴152aがその軸線方向へ互いに整列するように位置決めされる。さらに、各組で対応する側の枢着部152は、キートップ134の内面134b上で前後方向へ整列配置される。
【0088】
キートップ134の前側に配置される一組の枢着部152は、内面134bに略直交する方向へ延びる平坦な前端面144を各々に有し、この前端面144が第2壁144として作用して、ベース132の第1壁142に摺動可能に係合する(図23)。さらに、キートップ134の内面134bの略中心領域には、キートップ134に加えられた押下げ力をスイッチ機構136の作動部材52に伝達する押下部154が突設される(図22)。押下部154は、キートップ134の内面134bに略平行に延びる下端の押下面154aと、内面134bから押下面154aまでテーパ状に傾斜して延びる後端の摺動面154bとを備える。押下部154の押下面154aは、キースイッチ装置130の通常の打鍵操作時に、作動部材52のドーム頂部52aに係合して、作動部材52に押下げ力を負荷するとともに作動部材52から付勢力を受ける。また、押下部154の摺動面154bは、作動部材52を第1位置と第2位置との間で移動させる間に、作動部材52のドーム状の側壁部分52dに摺動式に係合する。
【0089】
キートップ134は、第1及び第2リンク部材16、18がそれぞれの支軸40を中心に同期して反対方向へ揺動するとともに、それぞれの支軸38がベース132に沿って略水平方向へ摺動することにより、ベース132に対し略鉛直方向へ、操作面134aを主表面132aに略平行に配置した所定の略水平姿勢を保持しつつ平行移動する。この間、キートップ134は前後方向への僅かながたつきを許容され、したがって、ベース132の前側の両摺動係合部146に設けた第1壁142と、キートップ134の前側の両枢着部152に設けた第2壁144とが、両者間に微小な隙間の発生を許容しつつ摺動式に係合する。
【0090】
キートップ134の打鍵ストロークの上端位置は、第1及び第2リンク部材16、18の各支軸38の相互接近方向への摺動が、ベース132の各摺動係合部146、148の第1案内溝146a、148aを画成する壁部分によって係止された時点で規定される(図23)。キートップ134が上端位置から下降するに従い、第1及び第2リンク部材16、18の各支軸38は、キートップ134の昇降方向に略直交する相互離反方向へ摺動する。キートップ134が打鍵ストロークの下端位置に達すると、第1及び第2リンク部材16、18はキートップ134の内面134b側に収容されるとともに、ベース132の開口部140に受容される。
【0091】
上記構成を有するキースイッチ装置130において、キートップ134を打鍵操作可能な突出位置から打鍵操作不能な引込位置に変位させる際には、図22に示す第1位置にある作動部材52を、シート部材138と共に後方(図で右方)へ移動させる。作動部材52の移動の間、キートップ134は、突出位置において押下部154の押下面154aが作動部材52のドーム頂部52a上を摺動してドーム頂部52aから離れ、次いで押下部154の摺動面154bが作動部材52の側壁部分52d上を摺動しつつ、自重により鉛直方向へ下降する。そしてキートップ134が引込位置(下端位置)に達した後に、作動部材52が押下部154から離脱して図24に示す第2位置に到達する。
【0092】
反対に、キートップ134を引込位置から突出位置に変位させる際には、第2位置にある作動部材52をシート部材138と共に前方(図で左方)へ移動させる。この前方移動に伴い、作動部材52は、ドーム状の側壁部分52dがキートップ134の押下部154の傾斜した摺動面154bに係合することにより、斜め上方への押圧力をキートップ134に及ぼす。キートップ134はこの押圧力により、リンク部材16、18の案内作用の下で鉛直方向へ上昇する。この間、ベース132の前側の両摺動係合部146に設けた第1壁142と、キートップ134の前側の両枢着部152に設けた第2壁144とが摺動式に係合して、ベース132上でキートップ134が前方へ移動することを実質的に防止する。そしてキートップ134が突出位置(上端位置)に達した後に、作動部材52が第1位置に到達する。
【0093】
作動部材52がキートップ134を押上げながら前方移動する間には、図25に示すように、キートップ134の押下部154が作動部材52のドーム頂部52aに乗り上げる直前に、キートップ134に加わる斜め上方への押圧力が増加する傾向がある。このとき仮に、第1壁142と第2壁144との係合によりキートップ134の前方移動が防止されていなければ、第1リンク部材16の第1及び第2腕部28、30の上面が前側の両摺動係合部146の第2案内溝146bの壁面に必要以上に押付けられる。その結果、第1リンク部材16が梃子の作用を生じて、その摺動端(第2端)でメンブレンスイッチ50のシート基板46を下方へ押圧してしまい、作動部材52の移動が妨げられることになる。しかしキースイッチ装置130では、上記したようにキートップ134が鉛直方向へ上昇する間、第1壁142と第2壁144とが係合して、第1リンク部材16に梃子の作用が生じることが回避されるので、作動部材52が第2位置から第1位置まで円滑に移動できるのである。
【0094】
図26は、キースイッチ装置130を多数配列して備えた本発明の一実施形態によるキーボード160の一部切欠き斜視図である。キーボード160は、全てのキースイッチ装置130に対して共通する大判のベース132′、シート部材138′、メンブレンスイッチ50′及び支持板56′を備える。シート部材138′は、各キースイッチ装置130に対応する位置に作動部材52を固定して備え、キーボード160の一側縁に設けた一対のつまみ162を操作することにより、前後方向(図示矢印A方向)へ移動できるようになっている。なお、各キースイッチ装置130における摺動係合部146、148は図示省略する。
【0095】
このようなキーボード160は、使用形態と不使用形態との間で全てのキースイッチ装置130を一括して迅速かつ正確に変位でき、操作性に極めて優れたものとなる。例えば、上記した係止手段を備えない90個のキースイッチ装置を組込んだキーボードにおいては、全てのキースイッチ装置を一括して不使用形態から使用形態へ変位させるために約3000gの力を要したのに対し、同90個のキースイッチ装置130を組込んだキーボード160では、約300gの力で全てのキースイッチ装置130を一括して不使用形態から使用形態へ変位できることが確認された。
【0096】
図27は、本発明の第9の実施形態によるキースイッチ装置170を分解斜視図で示す。キースイッチ装置170は、ベース132上でのキートップ134の少なくとも水平一方向への移動を実質的に防止する係止手段を、キートップ134の後方移動も実質的に防止できる構成とした点以外は、上記したキースイッチ装置130と実質的に同一の構成を有するので、同一又は類似の構成要素には共通の参照符号を付してその説明を省略する。
【0097】
キースイッチ装置170の係止手段は、ベース132に設けられる前方第1壁142及び後方第1壁172と、キートップ134に設けられ、それら第1壁142、172の各々に摺動可能に係合する前方第2壁144及び後方第2壁174とから構成される。詳述すれば、ベース132は、前側に配置される各摺動係合部146の突子150と同様に、後側に配置される各摺動係合部148のL字状壁部分の前端に、上方へ延出する突子176を固定的に備える。各突子176は、主表面132aに略直交する方向へ延びる平坦な前端面172を有し、この前端面172が後方第1壁172として作用する。キートップ134は、前側に配置される各枢着部152と同様に、後側に配置される各枢着部152が、内面134bに略直交する方向へ延びる平坦な後端面174を有し、この後端面174が後方第2壁174として作用して、ベース132の後方第1壁172に摺動可能に係合する。
【0098】
キートップ134は、第1及び第2リンク部材16、18の案内の下でベース132に対し略鉛直方向へ平行移動する。この間、キートップ134は、ベース132の前方第1壁142及び後方第1壁172と、キートップ134の前方第2壁144及び後方第2壁174とがそれぞれ摺動式に係合することにより、前後方向へのがたつきが可及的に低減される。その結果、キースイッチ装置170は、乱雑な打鍵操作や傾斜姿勢での使用時にも、正確に案内された打鍵ストロークの下で正確な接点開閉動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施形態によるキースイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】図1のキースイッチ装置の組立時の線II−IIに沿った断面図で、キートップが打鍵ストロークの上端位置にある状態を示す。
【図3】図2に対応するキースイッチ装置の断面図で、キートップが打鍵ストロークの下端位置にある状態を示す。
【図4】図1のキースイッチ装置におけるスイッチ機構の拡大断面図である。
【図5】図1のキースイッチ装置における消音手段を有するシート部材の拡大斜視図である。
【図6】変形例による消音手段を有するシート部材の拡大斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態によるキースイッチ装置の分解斜視図である。
【図8】図7のキースイッチ装置における消音手段を有するスイッチ機構の拡大断面図である。
【図9】図8の消音手段の作用を説明する図で、(a)接点閉鎖時の拡大断面図、(b)打鍵ストロークの下端位置における拡大断面図、及び(c)打鍵操作特性を示すグラフである。
【図10】変形例による消音手段を有するスイッチ機構の拡大断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態によるキースイッチ装置の分解斜視図である。
【図12】本発明の第4の実施形態によるキースイッチ装置を備えたキーボードのベースの一部を示す概略平面図である。
【図13】図12のキーボードの線XIII−XIIIに沿った部分拡大縦断面図である。
【図14】本発明の第5の実施形態によるキースイッチ装置を備えたキーボードのベースの一部を示す概略平面図である。
【図15】図14のキーボードの線XV−XVに沿った部分拡大縦断面図である。
【図16】本発明の第6の実施形態によるキースイッチ装置を備えたキーボードのベースの一部を示す概略平面図である。
【図17】図16のキーボードの線XVII−XVIIに沿った部分拡大縦断面図である。
【図18】本発明の第7の実施形態によるキースイッチ装置の、(a)概略平面図、及び(b)線 XVIII−XVIII に沿った部分拡大縦断面図である。
【図19】変形例によるキースイッチ装置の、(a)概略平面図、及び(b)線 XIX−XIX に沿った部分拡大縦断面図である。
【図20】他の変形例によるキースイッチ装置の、(a)概略平面図、及び(b)線XX−XXに沿った部分拡大縦断面図である。
【図21】本発明の第8の実施形態によるキースイッチ装置の分解斜視図である。
【図22】図21のキースイッチ装置の組立時の線XXII−XXIIに沿った断面図で、キートップが突出位置にある状態を示す。
【図23】図21のキースイッチ装置の組立時の線 XXIII−XXIII に沿った断面図で、キートップが突出位置にある状態を示す。
【図24】図22に対応するキースイッチ装置の断面図で、キートップが引込位置にある状態を示す。
【図25】図22に対応するキースイッチ装置の断面図で、キートップが突出位置と引込位置との中間位置にある状態を示す。
【図26】図21のキースイッチ装置を組込んだ本発明の一実施形態によるキーボードの一部切欠き斜視図である。
【図27】本発明の第9の実施形態によるキースイッチ装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0100】
10、70、80、90、100、110、120、130、170 キースイッチ装置
12、132 ベース
14、134 キートップ
16 第1リンク部材
18 第2リンク部材
20、136 スイッチ機構
24 摺動係合部
26 枢着部
42、44 接点
50 メンブレンスイッチ
52 作動部材
56 支持板
60、138 シート部材
62 接着剤
64 弾性片
72、74 弾性補助部材
92 板ばね部分
102、112 弾性部材
122、124、126 衝突部
142、172 第1壁
144、174 第2壁
160 キーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、該ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともに該ベース及び該キートップの双方に作用的に係合して、該キートップを該ベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、該キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、
前記キートップが昇降ストロークの下端位置に到達したときに生じる衝突音を低減する消音手段を具備すること、
を特徴とするキースイッチ装置。
【請求項2】
前記消音手段が、前記スイッチ機構に設けられる弾性変形可能な緩衝部からなり、前記キートップが前記下端位置に到達する直前に該緩衝部が弾性変形する請求項1に記載のキースイッチ装置。
【請求項3】
前記スイッチ機構が、前記キートップの下方で前記ベースに設けた開口部に配置され、前記接点を有するメンブレンスイッチと、該メンブレンスイッチ上に配置され、該キートップの昇降動作に伴って弾性変形するとともに該キートップが前記下端位置に向けて移動する間に該メンブレンスイッチを押圧して該接点を閉じる作動部材とを備え、前記緩衝部が該作動部材に関連して設けられる請求項2に記載のキースイッチ装置。
【請求項4】
前記作動部材が、前記メンブレンスイッチ上に配置されるシート部材に連結され、前記緩衝部が、該作動部材と該シート部材との連結部位に隣接して該シート部材に突設される弾性片からなり、前記キートップが前記下端位置に到達する直前に該キートップ及び前記一対のリンク部材の少なくとも一方が該弾性片に衝突する請求項3に記載のキースイッチ装置。
【請求項5】
前記作動部材が前記シート部材にゴム系接着剤を介して固着され、前記弾性片が該ゴム系接着剤から形成される請求項4に記載のキースイッチ装置。
【請求項6】
前記作動部材が、ゴム材料からなるドーム状部材であり、前記緩衝部が該作動部材のドーム頂部に付加的に形成される請求項3〜5のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。
【請求項7】
前記緩衝部が、前記作動部材のドーム頂部に取付けられる弾性補助部材からなり、該弾性補助部材が前記ゴム材料よりも弾性率の小さな材料から形成される請求項6に記載のキースイッチ装置。
【請求項8】
前記作動部材を前記ベース内の所定位置に位置決めする位置決め機構をさらに具備する請求項3〜7のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。
【請求項9】
前記消音手段が、前記ベースに関連して設けられる弾性変形可能な緩衝部からなり、前記キートップが前記下端位置に到達する直前に該キートップが該緩衝部に衝突する請求項1〜8のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。
【請求項10】
前記緩衝部が、前記ベースに形成される複数の板ばね部分からなり、それら板ばね部分が、前記キートップの外縁領域に対応する位置に分散して配置される請求項9に記載のキースイッチ装置。
【請求項11】
前記緩衝部が、前記ベースに形成した複数の凹部に設置される複数の弾性部材からなり、それら弾性部材が、前記キートップの外縁領域に対応する位置に分散して配置される請求項9又は10に記載のキースイッチ装置。
【請求項12】
前記消音手段が、前記キートップ及び前記ベースの少なくとも一方に局部的に設けられる衝突部からなり、該キートップが前記下端位置に到達したときに該衝突部を介して該ベースに衝突する請求項1〜11のいずれか1項に記載のキースイッチ装置。
【請求項13】
ベースと、該ベース上に配置されるキートップと、各々が互いに連動するとともに該ベース及び該キートップの双方に作用的に係合して、該キートップを該ベース上で昇降方向へ案内支持する一対のリンク部材と、該キートップの昇降動作に対応して電気回路の接点を開閉するスイッチ機構とを具備するキースイッチ装置において、
前記ベース上での前記キートップの少なくとも水平一方向への移動を実質的に防止する係止手段を具備すること、
を特徴とするキースイッチ装置。
【請求項14】
前記係止手段が、前記ベースに設けられる第1壁と、前記キートップに設けられ、該第1壁に摺動可能に係合する第2壁とを具備する請求項13に記載のキースイッチ装置。
【請求項15】
前記スイッチ機構が、前記キートップの下方で前記ベースに設けた開口部に配置され、前記接点を有するメンブレンスイッチと、該メンブレンスイッチ上に配置され、該キートップが前記下端位置に向けて移動する間に該メンブレンスイッチを押圧して該接点を閉じる作動部材とを備え、該作動部材が、該キートップを上端位置に付勢するとともに該キートップの昇降動作に伴って弾性変形する第1位置と、該キートップに付勢力を及ぼさずに初期形状を保持する第2位置との間で水平方向へ移動可能である請求項13又は14に記載のキースイッチ装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のキースイッチ装置を多数配列して構成されるキーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2009−59716(P2009−59716A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306848(P2008−306848)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【分割の表示】特願平11−56759の分割
【原出願日】平成11年3月4日(1999.3.4)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】