説明

キーレスエントリシステムおよび携帯機

【課題】複数の携帯機を有する車両用キーレスエントリシステムにおいて、ドア施錠時の応答性を向上させる。
【解決手段】車載器は、車両のドアの施錠制御の開始指示に応じて、複数のアンテナの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を送信させる。携帯機は、照合エリア識別情報を記憶手段に記憶させ、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機識別情報と照合エリア識別情報を含む応答信号を送信する。車載器は、応答信号に含まれる携帯機識別情報に基づいて複数の携帯機の照合を行うともに応答信号に含まれる照合エリア識別情報から複数の携帯機の位置を判定し、判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の携帯機と、各携帯機の照合を行うとともに各携帯機が車室内に位置するか車室外に位置するかに従って車両のドアの施錠制御を行う車載器から成るキーレスエントリシステムおよび携帯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯機との照合を行い、照合の結果に応じて車両のドアの施錠および解錠、車両のエンジンの始動制御を行う車両用キーレス装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−14019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような車両用キーレス装置には、複数の正規の携帯機を照合対象とし照合を行い、正規の携帯機のいずれの携帯機を用いても車両のドアの施錠、解錠、車両のエンジンの始動等が可能となったものがある。
【0005】
このような構成の車両用キーレス装置では、正規の携帯機が車室内に置き忘れたままの状態で、ユーザが所持した別の正規の携帯機の照合が成立して車両のドアを施錠してしまうとういった状況が考えられる。
【0006】
しかし、このように正規の携帯機が車室内に置き忘れたままの状態で、ユーザが所持した別の正規の携帯機の照合が成立して車両のドアを施錠してしまうと、例えば、車両の窓ガラスが割られ、悪意のある第三者に車室内に入り込まれてしまうと、車室内に残された携帯機との間で照合が成立し、車両のエンジンが始動してしまい車両が盗難されてしまうといったことが考えられる。
【0007】
したがって、車両のドアの施錠制御を実施する際には、正規の携帯機が車室外に位置し、かつ、他の正規の携帯機が車室内に位置しないことを判定してから、車両のドアの施錠制御を実施するのが好ましい。
【0008】
しかし、複数の正規の携帯機が存在する場合、各携帯機が車室内で検出されたか、車室外で検出されたか、あるいは、検出されないかを特定するために、各携帯機に対して照合エリアを順次切り替えて照合を実施する必要がある。
【0009】
しかし、このように各携帯機に対して照合エリアを順次切り替えて照合を実施し、各携帯機の位置を特定するような構成では、車両のドアを施錠するまでに長時間を要し、応答性が悪いといった問題がある。特に、正規の携帯機の数が多くなるほど、応答性が悪くなるといった問題がある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みたもので、車両のドアの施錠時の応答性を向上すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数の携帯機と、当該複数の携帯機の照合を行い車両のドアの施錠制御を行う車載器から成るキーレスエントリシステムであって、車載器は、車両のドアの施錠制御の開始指示に応じて、複数の携帯機の照合を行うための複数のアンテナの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を送信させるエリア識別信号送信手段を備え、複数の携帯機は、それぞれ車載器よりエリア識別信号を受信すると、当該受信した各エリア識別信号の照合エリア識別情報を記憶手段に記憶させるとともに、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機を識別するための携帯機識別情報および記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報を含む応答信号を送信するようになっており、車載器は、エリア識別信号が送信された後、複数の携帯機に対してリクエスト信号を送信し、当該リクエスト信号を受信した携帯機より送信される応答信号に含まれる携帯機識別情報に基づいて複数の携帯機の照合を行うともに応答信号に含まれる照合エリア識別情報から複数の携帯機の位置を判定する携帯機判定手段と、携帯機判定手段の判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行う施錠制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
このような構成によれば、車載器は、エリア識別信号が送信された後、複数の携帯機に対してリクエスト信号を送信し、当該リクエスト信号を受信した携帯機より送信される応答信号に含まれる携帯機識別情報に基づいて複数の携帯機の照合を行うともに応答信号に含まれる照合エリア識別情報から複数の携帯機の位置を判定し、この判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行うので、車両のドアの施錠時の応答性を向上することができる。
【0013】
なお、請求項2に記載の発明のように、エリア識別信号送信手段は、車室内と運転席側の車室外とを含む照合エリアに存在する携帯機の照合を行うための運転席側アンテナと、車室内と助手席側の車室外とを含む照合エリアに存在する携帯機の照合を行うための助手席側アンテナの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を順次送信させることができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、携帯機判定手段は、応答信号に運転席側アンテナより送信されたエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報と助手席側アンテナより送信されたエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報の両方が含まれる場合、車室内に応答信号を送信した携帯機が位置すると判定することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明のように、携帯機判定手段は、応答信号に運転席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれ、かつ、助手席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれない場合、車室外に応答信号を送信した携帯機が位置すると判定することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、携帯機判定手段は、応答信号に助手席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれ、かつ、運転席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれない場合、車室外に応答信号を送信した携帯機が位置すると判定することができる。
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1ないし5のいずれか1つに記載されたキーレスエントリシステムに用いられる携帯機であって、複数の携帯機の照合を行うための複数のアンテナの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を受信すると、当該受信した各エリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報を記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機を識別するための携帯機識別情報および記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報を含む応答信号を送信する送信手段と、を備えたことを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、携帯機は、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機を識別するための携帯機識別情報および記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報を含む応答信号を送信するので、例えば、車載器は、応答信号に含まれる携帯機識別情報に基づいて複数の携帯機の照合を行うともに応答信号に含まれる照合エリア識別情報から複数の携帯機の位置を判定し、この判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行うことが可能となり、車両のドアの施錠時の応答性を向上することができる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明では、送信手段により応答信号が送信された場合、記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報を消去する照合エリア識別情報消去手段を備えたことを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、応答信号が送信された場合、記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報が消去されるので、次回、車両のドアの施錠制御を行う場合に、誤った照合エリア識別情報を送信しないようにすることができる。
【0021】
また、請求項8に記載の発明では、エリア識別信号を受信した後、予め定められた期間が経過した場合、記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報を消去する照合エリア識別情報消去手段を備えたことを特徴としている。
【0022】
このような構成によれば、エリア識別信号を受信した後、予め定められた期間が経過した場合、記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報が消去されるので、次回、車両のドアの施錠制御を行う場合に、誤った照合エリア識別情報を送信しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るキーレスエントリシステムの構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る携帯機のブロック構成を示す図である。
【図3】D側照合エリア、P側照合エリアおよびトランク内照合エリアについて説明するための図である。
【図4】D側照合エリアを対象としたD側イベント照合のデータの授受について説明するための図である。
【図5】携帯機の制御部のフローチャーである。
【図6】D席ドアスイッチに対する操作が実施された場合の照合ECUのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係るキーレスエントリシステムの構成を図1に示す。本キーレスエントリシステムは、照合ECU10、D側アンテナ11a、P側アンテナ11b、トランク内アンテナ11c、チューナ12およびスピーカ13を備えた車載器と、携帯機2により構成されている。なお、照合ECU10には、D席ドアスイッチ3a、P席ドアスイッチ3b、ドアECU4、エンジンECU5が接続されている。
【0025】
本キーレスエントリシステムは、車両に搭載され、車両の各部に設けられた各アンテナ11a〜11cから電子キーとして用いられる携帯機2を照合するための電波を送出させ、この電波の送出に応じて携帯機2から返送される応答データの受信判定を行うことにより携帯機2の照合を行い、照合の結果に従って車両のドアの施錠および解錠、車両のエンジンの始動制御等を行う。
【0026】
照合ECU10は、記憶部10a、制御部10b、通信制御部10cおよびLFアンテナ出力部10dを備えている。
【0027】
記憶部10aは、各種データを記憶するためのもので、RAM、ROM、EEPRPMにより構成されている。
【0028】
制御部10bは、CPU、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUは記憶部10aに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0029】
通信制御部10cは、車両LANとしてのCANに接続されたドアECU4、エンジンECU5等と通信を行うためのものである。
【0030】
LFアンテナ出力部は、制御部10bより入力される信号に応じてLF帯の信号を生成し、生成した信号に応じた電波を各アンテナ11a〜11cから送出させる。
【0031】
D側アンテナ11aは、運転席側の前部座席と後部座席の間にあるピラーの内側に配置されており、P側アンテナ11bは、助手席側の前部座席と後部座席の間にあるピラーの内側に配置されており、トランク内ピラー11cは、トランク内に配置されている。各アンテナ11a〜11cは、照合ECU10より入力される信号に応じた電波を無線送信する。
【0032】
チューナ12は、携帯機2より返送される応答データを受信するための装置である。
【0033】
照合ECU10は、CPU、メモリ、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはメモリに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0034】
照合ECU10には、車両のドアの施錠および解錠を行うためのドアECU4および車両のエンジン制御を行うためのエンジンECU5が接続されている。照合ECU10は、ドアECU4へ各種指示を送出して車両の各ドアの施錠制御および解錠制御を実施するとともに、エンジンECU5へ各種指示を送出して車両のエンジン始動の可否制御などの各機能を実現する。なお、メモリには、RAM、ROM、フラッシュメモリがある。
【0035】
照合ECU10は、車室内と運転席側の車室外とを含む照合エリアに存在する携帯機の照合を行うためのD側アンテナ11aと、車室内と助手席側の車室外とを含む照合エリアに存在する携帯機の照合を行うためのP側アンテナ11bの各々より、照合のための電波を送信して携帯機2の照合を行う。
【0036】
本実施形態における照合ECU10は、車両のドアの施錠時の応答性を向上するために、車室外に存在する携帯機の照合および車室内に存在する携帯機の照合を行うための各アンテナ11a〜11cより、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を送信させるようになっている。
【0037】
図2に、本発明の一実施形態に係る携帯機2のブロック構成を示す。携帯機2は、記憶部20、RF発信部21、LF受信部22、インジケータ23および制御部24を備えている。
【0038】
記憶部20は、不揮発性記憶媒体としてのEEPRPMにより構成されている。記憶部20には、車両納入時に、携帯機を識別するための携帯機識別情報(キーID)が記憶される。
【0039】
LF受信部22は、車載器より送信されるLF帯の電波を受信アンテナ(図示せず)を介して受信する。
【0040】
RF発信部21は、制御部24から入力される信号に応じたRF帯の信号を送信アンテナ(図示せず)より出力させる。
【0041】
インジケータ23は、LF帯の信号を受信したことを報知するためのもので、制御部24から入力される信号に応じて点灯するLEDにより構成されている。
【0042】
制御部24は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはROMに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0043】
各携帯機2は、それぞれ車載器より上述したエリア識別信号を受信すると、当該受信した各エリア識別信号の照合エリア識別情報を記憶部20に記憶させるとともに、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機2を識別するための携帯機識別情報(キーID)および記憶部20に記憶されている全ての照合エリア識別情報(エリアID)を含む応答信号を送信するようになっている。
【0044】
本キーレスエントリシステムでは、複数のアンテナ11a〜11cから順次
照合のための電波を送信して携帯機の照合および位置の特定を行う。
【0045】
図3に、D側アンテナ11aにより照合を行う場合の照合エリア(D側照合エリア)、P側アンテナ11bにより照合を行う場合の照合エリア(P側照合エリア)、トランク内アンテナ11cにより照合を行う場合の照合エリア(トランク内照合エリア)を示す。
【0046】
図3に示すように、メインキーとしての携帯機2が運転席(D席)側の車室外に存在する場合、このメインキーは、D側アンテナ11aから送信されるエリア識別信号は受信するが、P側アンテナ11bから送信されるエリア識別信号は受信しない。したがって、このメインキーの記憶部20には、D側アンテナ11aから送信されるエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報(エリアID)は記憶されるが、P側アンテナ11bから送信されるエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報(エリアID)は記憶されない。
【0047】
また、サブンキーとしての携帯機2が車室内に存在する場合、このサブキーは、D側アンテナ11aから送信されるエリア識別信号とP側アンテナ11bから送信されるエリア識別信号の両方を受信する。したがって、このサブキーの記憶部20には、D側アンテナ11aから送信されるエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報(エリアID)と、P側アンテナ11bから送信されるエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報(エリアID)の両方が記憶される。
【0048】
ここで、図4を参照して、D側照合エリアを対象としたD側イベント照合のデータの授受について説明する。
【0049】
まず、照合ECU10は、車両のドアの施錠制御の開始指示に応じて、各アンテナ11a〜11cの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を順次送信させる。本実施形態では、アンテナ11aより照合エリア識別情報をエリアID1するエリア識別信号を送信させ、次に、アンテナ11bより照合エリア識別情報をエリアID2するエリア識別信号を送信させ、更に、アンテナ11cより照合エリア識別情報をエリアID3するエリア識別信号を送信させる。なお、携帯機2は、エリア識別信号を受信すると、受信した全てのエリア識別信号を記憶部20に記憶させるようになっている。
【0050】
次に、D側アンテナ11aより携帯機識別情報をキーID1とするリクエスト信号を送信させる。なお、携帯機識別情報をキーID1とする携帯機(メインキー)2は、リクエスト信号を受信すると、携帯機識別情報と記憶部20に記憶させた全てのエリア識別信号を含む応答信号を暗号化して送出するようになっている。例えば、エリアID1+エリアID2とする応答信号を暗号化して送出するようになっている。
【0051】
照合ECU10は、リクエスト信号に送信に応じて携帯機(メインキー)2より送出された応答信号を受信すると、このD側イベント照合を終了する。
【0052】
ただし、照合ECU10は、リクエスト信号に送信に応じて携帯機2より応答信号が受信されない場合には、D側イベント照合を終了するのではなく、D側アンテナ11aより携帯機識別情報をキーID2とするリクエスト信号を送信させる。なお、携帯機識別情報をキーID2とする携帯機(サブキー)2は、リクエスト信号を受信すると、記憶部20に記憶させた全てのエリア識別信号と携帯機識別情報を含む応答信号を暗号化して送出するようになっている。
【0053】
照合ECU10は、リクエスト信号に送信に応じて携帯機(サブキー)2より送出された応答信号を受信すると、このD側イベント照合を終了する。
【0054】
上記したように、照合ECU10は、携帯機2より応答信号が受信されると、その時点でD側イベント照合を終了し、以降、応答信号を受信した携帯機2を除外してD側イベント照合を実施する。このようにして、携帯機識別情報をキーID1とする携帯機2、携帯機識別情報をキーID2とする携帯機2、・・、携帯機識別情報をキーIDNとする携帯機2に対して、D側イベント照合を実施する。
【0055】
照合ECU10は、各携帯機2から送信された応答信号に含まれる照合エリア識別情報から、各携帯機2が図3に示した各照合エリアのどこに位置するかを特定することが可能となる。
【0056】
図5に、携帯機2の制御部24のフローチャーを示す。制御部24は、周期的に、図に示す処理を実施する。
【0057】
まず、エリア識別信号を受信したか否かを判定する(S100)。具体的には、LF受信部22によりエリア識別信号が受信され、LF受信部22よりエリア識別信号を受信したこと示す信号が入力されたか否かに基づいてエリア識別信号を受信したか否かを判定する。
【0058】
ここで、LF受信部22によりエリア識別信号が受信されない場合、そのまま本処理を終了する。また、LF受信部22によりエリア識別信号が受信され、LF受信部22よりエリア識別信号を受信したこと示す信号が入力されると、S100の判定はYESとなり、次に、受信したエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報を記憶部20に記憶させる(S102)。
【0059】
次に、他のエリア識別信号を受信したか否かを判定する(S104)。具体的には、S100にてエリア識別信号を受信したと判定されてから一定期間内に他のエリア識別信号を受信したか否かを判定する。
【0060】
ここで、S100にてエリア識別信号を受信したと判定されてから一定期間内に他のエリア識別信号を受信すると、S104の判定はYESとなり、次に、受信した他のエリア識別信号に含まれる照合エリア情報を記憶部20に記憶させる。このように、エリア識別信号を受信する度に、受信したエリア識別信号に含まれる照合エリア情報を逐次記憶部20に記憶させる。
【0061】
また、S100にてエリア識別信号を受信したと判定されてから一定期間内に他のエリア識別信号が受信されない場合、S104の判定はNOとなり、次に、リクエスト信号を受信したか否かを判定する(S106)。
【0062】
ここで、照合ECU10の指示に応じて各アンテナ11a〜11cのいずれかよりリクエスト信号が送信され、一定期間内にリクエスト信号が受信されると、S106の判定はYESとなり、次に、携帯機識別情報(キーID)および記憶部20に記憶されている全ての照合エリア識別情報(エリアID)を含む応答信号を送信する(S108)。
【0063】
次に、記憶部20に記憶されている全ての照合エリア識別情報(エリアID)を消去(リセット)し、本処理を終了する。
【0064】
また、一定期間内にリクエスト信号が受信されない場合、応答信号を送信することなく、記憶部20に記憶されている全ての照合エリア識別情報(エリアID)を消去(リセット)し、本処理を終了する。
【0065】
図6に、メインキーとサブキーが正規の携帯機2として登録されており、D席ドアスイッチ3aに対する操作が実施された場合の照合ECU20のフローチャートを示す。なお、このフローチャートは、トランク内の携帯機2の照合を省略したものとなっている。照合ECU20は、D席ドアスイッチ3aに対する操作が実施され、D席ドアスイッチ3aより操作に応じた信号が入力されると、照合ECU20は、図6に示す処理を実施する。
【0066】
まず、D席アンテナ11aよりエリア識別信号を送信させ(S200)、次に、P席アンテナ11bよりエリア識別信号を送信させる(S202)。なお、携帯機2は、各エリア識別信号を受信すると、エリア識別信号に含まれる照合エリア情報を記憶部20に記憶させる。
【0067】
次に、D側イベント照合を実施する(S204)。具体的には、D側アンテナ11aよりメインキーに対するリクエスト信号を送信させ、このリクエスト信号に応じてメインキーより送信される応答信号の受信判定を行い、メインキーより応答信号が受信されたことを判定すると、このD側イベント照合を終了する。
【0068】
S206では、携帯機識別情報としてメインキーのキーIDが含まれ、照合エリア識別情報としてD側照合エリアに位置することを示すD席エリアIDが含まれる応答信号を受信したか否かを判定する。すなわち、メインキーとしての携帯機2がD側照合エリアに位置し、かつ、車室外に位置するか否かを判定する。
【0069】
また、S208では、携帯機識別情報としてメインキーのキーIDが含まれ、照合エリア識別情報としてD側照合エリアに位置することを示すD席エリアIDとP側照合エリアに位置することを示すP席エリアIDが含まれる応答信号を受信したか否かを判定する。すなわち、メインキーとしての携帯機2が車室内に位置するか否かを判定する。
【0070】
また、S209、S220では、D側イベント照合を実施する。具体的には、D側アンテナ11aよりサブキーに対するリクエスト信号を送信させ、このリクエスト信号に応じてサブキーより送信される応答信号の受信判定を行い、サブキーより応答信号が受信されたことを判定すると、このD側イベント照合を終了する。
【0071】
また、S210では、携帯機識別情報としてサブキーのキーIDが含まれ、照合エリア識別情報としてD側照合エリアに位置することを示すD席エリアIDが含まれる応答信号を受信したか否かを判定する。すなわち、サブキーとしての携帯機2がD側照合エリア内に位置し、かつ、車室外に位置するか否かを判定する。
【0072】
また、S214では、携帯機識別情報としてサブキーのキーIDが含まれ、照合エリア識別情報としてD側照合エリアに位置することを示すD席エリアIDとP側照合エリアに位置することを示すP席エリアIDが含まれる応答信号を受信したか否かを判定する。すなわち、サブキーとしての携帯機2が車室内に位置するか否かを判定する。
【0073】
したがって、メインキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置し、サブキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置する場合、S206の判定はYES、S222の判定はYESとなり、車両のドアの施錠制御(ドアロック制御)を実施し(S212)、本処理を終了する。
【0074】
また、メインキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置し、サブキーとしての携帯機2が車室内に位置する場合、S206の判定はYES、S222の判定はNO、S226の判定はYESとなり、車室内に正規の携帯機が存在することを警告する閉じ込み警報を発出する(S228)。具体的には、警告音をスピーカ13より出力させ、本処理を終了する。
【0075】
また、例えば、メインキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置し、サブキーとしての携帯機2が検出されない場合、S206の判定はYES、S222の判定はNO、S226の判定はYESとなり、車両のドアの施錠制御(ドアロック制御)を実施し(S230)、本処理を終了する。
【0076】
また、メインキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置し、サブキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置する場合、S206の判定はYES、S222の判定はYESとなり、車両のドアの施錠制御(ドアロック制御)を実施し(S224)、本処理を終了する。
【0077】
また、メインキーとしての携帯機2が車室内に位置し、サブキーとしての携帯機2がD側照合エリアで、かつ、車室外に位置する場合、S206の判定はNO、S208の判定はNO、S210の判定はYESとなり、車両のドアの施錠制御(ドアロック制御)を実施し(S212)、本処理を終了する。
【0078】
また、メインキーとしての携帯機2が車室内に位置し、かつ、サブキーとしての携帯機2も車室内に位置する場合、S206の判定はNO、S208の判定はNO、S210の判定はNO、S214の判定はYESとなり、車室内に正規の携帯機が存在することを警告する閉じ込み警報を発出する(S216)。具体的には、警告音をスピーカ13より出力させ、本処理を終了する。
【0079】
また、メインキーとしての携帯機2が車室内に位置する場合、S206の判定はNO、S208の判定はYESとなり、車室内に正規の携帯機が存在することを警告する閉じ込み警報を発出する(S218)。具体的には、警告音をスピーカ13より出力させ、本処理を終了する。
【0080】
上記した構成によれば、車載器は、車両のドアの施錠制御の開始指示に応じて、複数の携帯機の照合を行うための複数のアンテナの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を送信させ、複数の携帯機は、それぞれ車載器よりエリア識別信号を受信すると、当該受信した各エリア識別信号の照合エリア識別情報を記憶部に記憶させるとともに、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機を識別するための携帯機識別情報および記憶部に記憶されている全ての照合エリア識別情報を含む応答信号を送信するようになっており、車載器は、エリア識別信号を送信させた後、複数の携帯機に対してリクエスト信号を送信し、当該リクエスト信号を受信した携帯機より送信される応答信号に含まれる携帯機識別情報に基づいて複数の携帯機の照合を行うともに応答信号に含まれる照合エリア識別情報から複数の携帯機の位置を判定し、この判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行うので、車両のドアの施錠時の応答性を向上することができる。
【0081】
また、応答信号に運転席側アンテナより送信されたエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報と助手席側アンテナより送信されたエリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報の両方が含まれる場合、車室内に応答信号を送信した携帯機が位置すると判定することができる。
【0082】
また、応答信号に運転席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれ、かつ、助手席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれない場合、車室外に応答信号を送信した携帯機が位置すると判定することができる。
【0083】
また、応答信号に助手席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれ、かつ、運転席側アンテナより送信された照合エリア識別情報が含まれない場合、車室外に応答信号を送信した携帯機が位置すると判定することができる。
【0084】
また、携帯機は、車載器よりリクエスト信号を受信すると、携帯機を識別するための携帯機識別情報および記憶手段に記憶されている全ての照合エリア識別情報を含む応答信号を送信するので、車両のドアの施錠時の応答性を向上することができる。
【0085】
また、応答信号が送信された場合、記憶部に記憶されている全ての照合エリア識別情報を消去するので、次回、車両のドアの施錠制御を行う場合に、誤った照合エリア識別情報を送信しないようにすることができる。
【0086】
また、エリア識別信号を受信した後、予め定められた期間が経過した場合、記憶部に記憶されている全ての照合エリア識別情報が消去されるので、次回、車両のドアの施錠制御を行う場合に、誤った照合エリア識別情報を送信しないようにすることができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0088】
例えば、上記実施形態では、車両のドアの施錠時における照合について、複数の携帯機の照合を行うための複数のアンテナの各々より、照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を送信させ、携帯機より送信される応答信号に含まれる携帯機識別情報に基づいて複数の携帯機の照合を行うともに応答信号に含まれる照合エリア識別情報から複数の携帯機の位置を判定し、この判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行う例を示したが、車両のドアの解錠時のおける照合、車両のエンジンの始動時における照合に適用してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、乗員が車両の運転席のドアに設けられたD席ドアスイッチ3aに対する操作が行われた場合について説明したが、例えば、乗員が車両から降りてドアスイッチに対する操作を行うことなく走り去るような場合に自動的に施錠制御を行うオートロック制御に適用することもできる。この場合、例えば、乗員が所持する携帯機が車室外照合エリア内から検出されなくなったことを判定したことをトリガとして図6に示した処理を実施すればよい。
【0090】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、S200、S202がエリア識別信号送信手段に相当し、記憶部20が記憶手段に相当し、S206、S222、S226、S208、S210、S214が携帯機判定手段に相当し、S224、S230、S212が施錠制御手段に相当し、S102が記憶制御手段に相当し、S106、S108、S111が照合エリア識別情報消去手段に相当する。
【符号の説明】
【0091】
2 携帯機
4 ドアECU
5 エンジンUCU
10 照合ECU
11a D側アンテナ
11b P側アンテナ
11c トランク内アンテナ
12 チューナ
13 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の携帯機と、当該複数の携帯機の照合を行い車両のドアの施錠制御を行う車載器から成るキーレスエントリシステムであって、
前記車載器は、車両のドアの施錠制御の開始指示に応じて、前記複数の携帯機の照合を行うための複数のアンテナの各々より、前記照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を送信させるエリア識別信号送信手段を備え、
前記複数の携帯機は、それぞれ前記車載器より前記エリア識別信号を受信すると、当該受信した各エリア識別信号の照合エリア識別情報を記憶手段に記憶させるとともに、前記車載器より前記リクエスト信号を受信すると、前記携帯機を識別するための携帯機識別情報および前記記憶手段に記憶されている全ての前記照合エリア識別情報を含む応答信号を送信するようになっており、
前記車載器は、前記エリア識別信号が送信された後、前記複数の携帯機に対してリクエスト信号を送信し、当該リクエスト信号を受信した前記携帯機より送信される前記応答信号に含まれる前記携帯機識別情報に基づいて前記複数の携帯機の照合を行うともに前記応答信号に含まれる照合エリア識別情報から前記複数の携帯機の位置を判定する携帯機判定手段と、
前記携帯機判定手段の判定結果に従って車両のドアの施錠制御を行う施錠制御手段と、を備えたことを特徴とするキーレスエントリシステム。
【請求項2】
前記エリア識別信号送信手段は、車室内と運転席側の車室外とを含む照合エリアに存在する前記携帯機の照合を行うための運転席側アンテナと、車室内と助手席側の車室外とを含む照合エリアに存在する前記携帯機の照合を行うための助手席側アンテナの各々より、前記照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を順次送信させることを特徴とする請求項1に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項3】
前記携帯機判定手段は、前記応答信号に前記運転席側アンテナより送信された前記エリア識別信号に含まれる前記照合エリア識別情報と前記助手席側アンテナより送信された前記エリア識別信号に含まれる前記照合エリア識別情報の両方が含まれる場合、車室内に前記応答信号を送信した前記携帯機が位置すると判定することを特徴とする請求項2に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項4】
前記携帯機判定手段は、前記応答信号に前記運転席側アンテナより送信された前記照合エリア識別情報が含まれ、かつ、前記助手席側アンテナより送信された前記照合エリア識別情報が含まれない場合、車室外に前記応答信号を送信した前記携帯機が位置すると判定することを特徴とする請求項2に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項5】
前記携帯機判定手段は、前記応答信号に前記助手席側アンテナより送信された前記照合エリア識別情報が含まれ、かつ、前記運転席側アンテナより送信された前記照合エリア識別情報が含まれない場合、車室外に前記応答信号を送信した前記携帯機が位置すると判定することを特徴とする請求項2に記載のキーレスエントリシステム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載されたキーレスエントリシステムに用いられる携帯機であって、前記複数の携帯機の照合を行うための複数のアンテナの各々より、前記照合エリア毎に異なる照合エリア識別情報を含むエリア識別信号を受信すると、当該受信した各エリア識別信号に含まれる照合エリア識別情報を記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記車載器よりリクエスト信号を受信すると、前記携帯機を識別するための携帯機識別情報および前記記憶手段に記憶されている全ての前記照合エリア識別情報を含む応答信号を送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする携帯機。
【請求項7】
前記送信手段により前記応答信号が送信された場合、前記記憶手段に記憶されている全ての前記照合エリア識別情報を消去する照合エリア識別情報消去手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の携帯機。
【請求項8】
前記エリア識別信号を受信した後、予め定められた期間が経過した場合、前記記憶手段に記憶されている全ての前記照合エリア識別情報を消去する照合エリア識別情報消去手段を備えたことを特徴とする請求項6に記載の携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−97447(P2012−97447A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245348(P2010−245348)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】