説明

キーレスエントリ装置

【課題】ユーザが意識的にリモートコントロールキーを操作した場合にのみ、車両のドアがロック/アンロックされるキーレスエントリ装置の提供。
【解決手段】遠隔操作キー7に設けられた送信側アンテナ12から送信された電波を、車両1に設けられた受信側アンテナ2により受信し、車両1のドア(図示せず)を遠隔操作によりロック/アンロックするキーレスエントリ装置。受信側アンテナ2は、垂直的偏波又は水平的偏波を受信し、送信側アンテナ12は、一偏波方向的な偏波を送信する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作キーから送信された電波を車両側で受信し、車両のドアを遠隔操作によりロック/アンロックするキーレスエントリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キーレスエントリ装置は、近時、大抵の車両に装備されるようになっており、遠隔操作キーを操作することにより、機械的な施錠/開錠操作によらず、車両のドアをロック/アンロックするものである。遠隔操作には、伝播距離の短い微弱な極超短波(UHF)が使用されることが多く、車両毎に定められたキーコードで変調されて遠隔操作キーから送信される。車両側では、受信し復調されたキーコードを照合して、ドアをロック/アンロックする。ドアのロック/アンロックに応じて、ハザードランプが点滅するもの、信号音を発するもの等がある。
【0003】
特許文献1には、他の電子基板に積層し、受信回路が形成された受信用の電子基板にアンテナを一体に取り付け、受信用の電子基板及び他の電子基板の各板面に形成された各グランドパターンを接続して、アンテナ及び各グランドパターンでアンテナ部を構成する電波受信機が開示されている。この電波受信機は、各グランドパターンの接続にはインピーダンス素子を介してあり、高周波域におけるインピーダンスを調整して、垂直偏波及び水平偏波の一方に偏らないように、偏波特性を改善する。
【0004】
特許文献2には、バーアンテナ又は小型ループアンテナからなり、アンテナのコイル部分の中心軸が互いに直行するように配置された一対のアンテナ素子と、この一対のアンテナ素子に対して位相を略90度変えて給電する給電手段とを備える無指向性アンテナが開示されている。この無指向性アンテナは、円偏波の電波を四方に放射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−175935号公報
【特許文献2】特開2000−91841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載された電波受信機及び無指向性アンテナでは、アンテナの偏波特性の偏りに起因して、条件により通信が成立しないようなことがないように、アンテナの偏波特性の偏りが低減されるように構成されている。
アンテナの偏波特性の偏りが低減されると、通信可能距離は偏波によらず、また、方向によらず略均一化されるが、これは、ユーザにとっては良いことばかりではない。例えば、リモートコントロールキーが、車両外のユーザのポケット又は鞄の中で意図せずにボタン操作された(誤って何かに押された)場合、ユーザは、ドアがアンロックされても気が付かないので、盗難予防上問題がある。
また、アンテナの偏波特性の偏りを無くす為には、偏波面の異なるアンテナを組み合わせる必要があり、プリント基板上のパターンのみで構成することは難しく、構造が複雑でコストが高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザが意識的にリモートコントロールキーを操作した場合にのみ、車両のドアがロック/アンロックされるキーレスエントリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係るキーレスエントリ装置は、遠隔操作キーに設けられた送信側アンテナから送信された電波を、車両に設けられた受信側アンテナにより受信し、車両のドアを遠隔操作によりロック/アンロックするキーレスエントリ装置において、前記受信側アンテナは、垂直的偏波又は水平的偏波を受信し、前記送信側アンテナは、一偏波方向的な偏波を送信するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
このキーレスエントリ装置では、遠隔操作キーに設けられた送信側アンテナから送信された電波を、車両に設けられた受信側アンテナにより受信し、車両のドアを遠隔操作によりロック/アンロックする。受信側アンテナは、垂直的偏波又は水平的偏波の一方のみを受信し、送信側アンテナは、一偏波方向的な偏波を送信する。従って、受信側アンテナは、送信側アンテナが略垂直方向又は水平方向に保持されている場合にのみ、受信することができる。
【0010】
第2発明に係るキーレスエントリ装置は、前記送信側アンテナが送信する電波は、一偏波方向の偏波、及び該偏波に直交する方向の偏波の電界強度比が10以上であることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係るキーレスエントリ装置は、前記送信側アンテナは、プリント基板上にパターンが形成されて構成してあることを特徴とする。
【0012】
このキーレスエントリ装置では、送信側アンテナは、プリント基板上にパターンが形成されて構成してある。これにより、送信側アンテナは、別部品を必要とせず、安価に構成できる。
【0013】
第4発明に係るキーレスエントリ装置は、前記受信側アンテナは、プリント基板上にパターンが形成されて構成してあることを特徴とする。
【0014】
このキーレスエントリ装置では、受信側アンテナは、プリント基板上にパターンが形成されて構成してある。これにより、受信側アンテナは、別部品を必要とせず、安価に構成できる。
【0015】
第5発明に係るキーレスエントリ装置は、前記遠隔操作キーは、扁平部分を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るキーレスエントリ装置によれば、ユーザが意識してリモートコントロールキーを所定の姿勢に保持して操作した場合にのみ、車両のドアがロック/アンロックされるキーレスエントリ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るキーレスエントリ装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す受信装置の構成例を示す説明図である。
【図3】図1に示すリモートコントロールキーの構成例を示す説明図である。
【図4】図1に示す送信アンテナの指向特性の例を示す特性図である。
【図5】図1に示す受信装置の他の構成例を示す説明図である。
【図6】図1に示す受信装置の他の構成例を示す説明図である。
【図7】図1に示す受信装置の他の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係るキーレスエントリ装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
このキーレスエントリ装置は、車両1側に設けられた受信アンテナ2、受信回路3、信号処理部4、ドアロック制御部5及びドアロックアクチュエータ6と、リモートコントロールキー(遠隔操作キー)7に設けられた操作部8、キーコード出力部9、発振回路10、送信回路11及び送信アンテナ12とを備えている。
【0019】
尚、受信アンテナ2、受信回路3及び信号処理部4は、受信装置30に含まれ、例えば、車両1のダッシュボードの内部に設けられている。ドアロック制御部5及びドアロックアクチュエータ6は、ドアの数に応じて複数備えられ、それぞれのドアに内蔵されている。また、リモートコントロールキー(以下、リモコンキーと記載)7には、図示しない電池を電源として備えている。
【0020】
リモコンキー7の操作部8が有する複数の操作ボタンの何れかが操作されると、キーコード出力部9が、操作された操作ボタンに応じたキーコードを作成して出力する。また、発振回路10が、このキーレスエントリ装置に定められた周波数の例えば極超短波(UHF)を発振する。
キーコード出力部9が出力したキーコード、及び発振回路10が発振した極超短波は、送信回路11に与えられる。送信回路11は、キーコードにより極超短波を変調し、変調した極超短波を、送信アンテナ12から送信する。
【0021】
車両1側の受信回路3は、受信アンテナ2により、送信アンテナ12からの極超短波を受信すると、復調してキーコードを抽出し信号処理部4に与える。信号処理部4は、与えられたキーコードに応じた制御信号をドアロック制御部5に与える。ドアロック制御部5は、与えられた制御信号に応じてドアロックアクチュエータ6を駆動制御する。
【0022】
図2(a)は、図1に示す受信装置30の構成例を示す説明図である。
この受信装置30は、プリント基板20の表面の一方の端部に、受信回路3及び信号処理部4を含む無線受信IC21と金属ロッドアンテナ31とが設けられている。無線受信IC21及び金属ロッドアンテナ31間は、プリント基板20の表面に形成されたミアンダ配線(ジグザグ配線)22で接続されている。プリント基板20の裏面には、グランドパターン(地板)23が形成されている。
プリント基板20の表面の他方の端部には、ドアロック制御部5(複数)と接続する為のコネクタ24が設けられている。
【0023】
金属ロッドアンテナ31は、折り曲げられることなくプリント基板20に対して垂直に設けられ、ミアンダ配線22部分も含めて受信アンテナ2とし、アンテナ長をかせいでいる。
この受信装置30は、プリント基板20が略水平になるように、車両1に搭載される。従って、受信アンテナ2は、図2(b)に示すような地板に垂直方向に設けられたモノポールアンテナに近い受信特性を有し、略垂直偏波のみを受信するようになっている。
【0024】
図3は、図1に示すリモコンキー7の構成例を示す説明図であり、(a)はリモコンキー7の外形を示している。
リモコンキー7は、方形の板形状(扁平形状)に成形された樹脂製の筐体を有し、筐体表面に操作部8の操作ボタン8a,8b,8cが設けられている。筐体内には、図3(b)に示すような方形のプリント基板26が、筐体表面と平行になるように収納されている。
【0025】
プリント基板26の表面には、送信アンテナ12として、端部に沿って線状導体が3重に周回されたループアンテナのパターン27が形成されている。プリント基板26の表面の中央部分には、キーコード出力部9、発振回路10及び送信回路11を含む無線送信IC28が設けられている。
【0026】
図4は、送信アンテナ12の指向特性の例を示す特性図である。送信アンテナ12を水平に保持している場合(プリント基板26及びリモコンキー7も水平に保持される)の、水平偏波の各方向(0〜360°)の強度を(a)に示し、垂直偏波の各方向(0〜360°)の強度を(b)に示している。水平偏波及び垂直偏波の強度の比は10以上になっており、送信アンテナ12は略水平偏波のみを送信すると言うことができる。尚、送信アンテナ12を立てて(垂直に)保持する場合は、水平偏波の強度が(b)に、垂直偏波の強度が(a)になり、相互に入れ代わることになる。
【0027】
以上より、リモコンキー7を立てて(垂直に)保持し、操作ボタン8a〜8cを操作した場合は、垂直に保持された送信アンテナ12から略垂直偏波のみが送信され、略垂直偏波のみを受信する受信アンテナ2により受信される。リモコンキー7を立てないで保持し操作した場合は、送信アンテナ12から垂直偏波でない偏波が送信されるので、受信アンテナ2は略受信できない。
これにより、ユーザが意図しないリモコンキー7の誤操作を回避することが可能となる。また、リモコンキー7の送信出力を低減させることが可能となって、リモコンキー7の電池寿命を延ばすことができる。また、通常の偏波特性の偏りを無くすアンテナ設計をする必要がなくなり、設計を簡素化することが可能となる。
【0028】
図5は、図1に示す受信装置の他の構成例を示す説明図である。
この受信装置30aでは、プリント基板20aの表面の一方の端部に、無線受信IC21と金属ロッドアンテナ31aとが設けられている。無線受信IC21及び金属ロッドアンテナ31a間は、プリント基板20aの表面に形成されたミアンダ配線22aで接続されている。プリント基板20aの裏面には、グランドパターン(地板)23aが形成されている。
【0029】
金属ロッドアンテナ31aは、1回折り曲げられて、プリント基板20aに平行な部分を長くした逆L字形に形成され、ミアンダ配線22a部分も含めて受信アンテナ2とし、アンテナ長(図2の場合の奇数倍)をかせいでいる。
この受信装置30aは、プリント基板20aが略水平になるように、車両1に搭載される。受信アンテナ2(31a)は、水平部分に流れる電流がグランドパターン23aに流れる電流と相殺し合うので、図2の場合と同様の垂直方向に設けられたモノポールアンテナに近い受信特性を有し、略垂直偏波のみを受信する。その他の構成は、図2(a)で説明した受信装置30の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0030】
この受信装置30aでは、ユーザがリモコンキー7を垂直に保持して、操作ボタン8a〜8cを操作した場合は、垂直に保持された送信アンテナ12から略垂直偏波のみが送信され、略垂直偏波のみを受信する受信アンテナ2(31a)により受信される。ユーザがリモコンキー7を垂直にしないで保持し操作した場合は、送信アンテナ12から垂直偏波でない偏波が送信されるので、受信アンテナ2(31a)は略受信できない。
【0031】
図6は、図1に示す受信装置の他の構成例を示す説明図である。
この受信装置30bでは、プリント基板20bの表面の一方の端部に、無線受信IC21が設けられている。プリント基板20bの表面の中央部には、受信アンテナ2として方形のパターン(パッチアンテナ)31bが形成されている。パターン31bは、その中心を外して設けられた給電点が、プリント基板20bの図示しない孔を貫通した同軸線の内導体により、無線受信IC21と接続されている。同軸線の外導体は、プリント基板20bの裏面に形成されたグランドパターン(地板)23bに接続されている。
【0032】
この受信装置30bは、プリント基板20bが略水平になるように、車両1に搭載される。従って、受信アンテナ2は、水平方向に設けられたパッチアンテナの受信特性を有する。パッチアンテナは、パターン31bとグランドパターン23bとの間に電界が生じ、パターン31bと平行方向に磁流が生じるように受信するので、略垂直偏波のみを受信する。その他の構成は、図2(a)で説明した受信装置30の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0033】
この受信装置30bでは、リモコンキー7を垂直に保持して、操作ボタン8a〜8cを操作した場合は、垂直に保持された送信アンテナ12から略垂直偏波のみが送信され、略垂直偏波のみを受信する受信アンテナ2により受信される。リモコンキー7を垂直に保持しないで操作した場合は、送信アンテナ12から垂直偏波でない偏波が送信されるので、受信アンテナ2は略受信できない。
【0034】
尚、上述した受信装置30,30a,30bは、プリント基板20a,20b,20bが略水平になるように、車両1に搭載されるが、プリント基板20a,20b,20bが略垂直になるように、車両1に搭載することも可能である。その場合、受信アンテナ2は、略水平偏波のみを受信するので、ユーザは、リモコンキー7を水平に保持して操作する。
【0035】
図7は、図1に示す受信装置の他の構成例を示す説明図である。
この受信装置30cは、受信アンテナ2として、プリント基板20cの表面に、端部に沿って線状導体が3重に周回されて、ループアンテナのパターン31cが形成されている。プリント基板20cの表面のパターン31cの中央部分には、無線受信IC21が設けられている。
【0036】
この受信装置30cは、プリント基板20cが水平方向に対して略垂直になるように、車両1に搭載される。従って、受信アンテナ2は、垂直方向に設けられたループアンテナの受信特性を有するので、略垂直偏波のみを受信する。その他の構成は、図2(a)で説明した受信装置30の構成と同様であるので、説明を省略する。
【0037】
この受信装置30cでは、リモコンキー7を垂直に保持して、操作ボタン8a〜8cを操作した場合は、垂直に保持された送信アンテナ12から略垂直偏波のみが送信され、略垂直偏波のみを受信する受信アンテナ2により受信される。リモコンキー7を垂直に保持しないで操作した場合は、送信アンテナ12から垂直偏波でない偏波が送信されるので、受信アンテナ2は略受信できない。
【符号の説明】
【0038】
1 車両
2 受信アンテナ(受信側アンテナ)
3 受信回路
4 信号処理部
5 ドアロック制御部
6 ドアロックアクチュエータ
7 リモートコントロールキー(遠隔操作キー)
8 操作部
8a,8b,8c 操作ボタン
9 キーコード出力部
10 発振回路
11 送信回路
12 送信アンテナ(送信側アンテナ)
20,20a,20b,20c,26 プリント基板
21 無線受信IC
22,22a ミアンダ配線
23,23a,23b グランドパターン(地板)
27,31c パターン
28 無線送信IC
30,30a,30b,30c 受信装置
31,31a 金属ロッドアンテナ
31b パターン(パッチアンテナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作キーに設けられた送信側アンテナから送信された電波を、車両に設けられた受信側アンテナにより受信し、車両のドアを遠隔操作によりロック/アンロックするキーレスエントリ装置において、
前記受信側アンテナは、垂直的偏波又は水平的偏波を受信し、前記送信側アンテナは、一偏波方向的な偏波を送信するように構成してあることを特徴とするキーレスエントリ装置。
【請求項2】
前記送信側アンテナが送信する電波は、一偏波方向の偏波、及び該偏波に直交する方向の偏波の電界強度比が10以上である請求項1記載のキーレスエントリ装置。
【請求項3】
前記送信側アンテナは、プリント基板上にパターンが形成されて構成してある請求項1又は2記載のキーレスエントリ装置。
【請求項4】
前記受信側アンテナは、プリント基板上にパターンが形成されて構成してある請求項1乃至3の何れか1項に記載のキーレスエントリ装置。
【請求項5】
前記遠隔操作キーは、扁平部分を有している請求項1乃至4の何れか1項に記載のキーレスエントリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−263570(P2010−263570A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114709(P2009−114709)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】