ギヤシャフト組立て装置及びギヤシャフトの組立て方法
【課題】本願発明は、ギヤシャフトの組立てのタクトタイムが小さく、装置のコストが低く、且つ装置のメンテナンスも容易であるギヤシャフトの組立て装置及びその方法を提供する。
【解決手段】本願発明のギヤシャフト組立て装置は、6軸ロボットとギヤシャフト組立て台からなる。このロボットのハンドは、ギヤ3を押圧する押圧ブラケット53を備え、押圧部53aでギヤを押圧しつつ把持する。このロボットハンドは把持したギヤを、ギヤのシャフト孔に組立て台の固定部42に垂設されたシャフト2に貫通させて、シャフトの備えるスプラインの上部端部に近接状態に配置した後、ギヤをアンクランプし、このハンドを水平回転させる。及び/又は、ギヤシャフト組立て台はロボットハンドと反対方向に水平回転させる。
【解決手段】本願発明のギヤシャフト組立て装置は、6軸ロボットとギヤシャフト組立て台からなる。このロボットのハンドは、ギヤ3を押圧する押圧ブラケット53を備え、押圧部53aでギヤを押圧しつつ把持する。このロボットハンドは把持したギヤを、ギヤのシャフト孔に組立て台の固定部42に垂設されたシャフト2に貫通させて、シャフトの備えるスプラインの上部端部に近接状態に配置した後、ギヤをアンクランプし、このハンドを水平回転させる。及び/又は、ギヤシャフト組立て台はロボットハンドと反対方向に水平回転させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤシャフトの組立て装置及びその組立て方法に関する。詳しくは、ロボットと組立て台を用いて、外周面に雄スプライン部を設けたシャフトとシャフト孔の内周面に雌スプライン部を設けたギヤを嵌合してなるギヤシャフトを組立てる装置及びその組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のトランスミッション等に用いるギヤシャフトにおいて、シャフトとギヤの雌雄スプライン部の嵌合組立ては、人力又は組立て専用機械により行うことも考えられるが、人力による場合又は組立て専用機械による場合のいずれであっても、ギヤシャフトの組立てコストが大きくなる。このため、ロボットによるギヤシャフトの組立てが自動車業界等で要請されている。ロボットによるワークと対象物の嵌め合い方法として、下記の方法が開示されている。
【0003】
即ち、嵌め合わせる2つの部材等の一方をロボットアーム先端のハンド等で把持し、他方の部材に該一方の部材を挿入する作業において、この位置決めを自動化する方法としては、挿入する前に穴の位置をロボットアームに取付けられたビジョンセンサ等で検出し、位置補正をしてワークを穴に対して相対的に位置決めする方法が知られている。
【0004】
また、上記方法の改良であって、予めワークなどの対象物を撮影してこれを参照画像として記憶し、視覚センサにより撮影した前記対象物の画像が前記参照画像と同じ状態になるようにロボットアームの位置姿勢を制御する視覚フィードバック制御を行うようにしたロボット装置の前記ロボットアームに補助センサを設けたものがある。このロボットは、前記視覚センサが前記参照画像を撮影したときの前記ロボットアームの位置姿勢で前記補助センサにより当該補助センサと前記対象物との関係情報を取得してこれを予め参照関係情報として記憶し、前記視覚センサにより撮影した前記対象物の画像が前記参照画像と同じ状態になるよう前記視覚フィードバック制御することに併せて、前記補助センサにより取得した当該補助センサと前記対象物との関係情報が前記参照関係情報と同じとなるように前記ロボットアームの位置姿勢を制御するフィードバック制御を行うものである(特許文献1参照)。
【0005】
さらに、オートマチック・トランスミッションに使用されるクラッチを組立てる例で、外側に歯が切ってあるギヤを内側に歯の切ってあるリング状のプレートに歯を合せながら挿入する作業を自動的に行う方法として、下記の方法がある。まず、ギヤをクランプしたロボットが教示プログラム等によって、ギヤを把持したロボットを駆動しプレートの穴にこのギヤを挿入開始するために、予め教示された位置に移動させる。そして、あらかじめ計算された、探索基準軸、探索軸、探索周波数、探索範囲、探索軸の探索可能範囲に基づいて探索を行う方向の速度指令をプログラミングし、夫々周期と方向の異なる往復運動(回転往復運動を含む)を同時に合成してなる探索動作を求め、ギヤをプレートに接触させた状態で挿入方向に所定の力で押し付けながら、前記探索動作に基づいて前記ワークの移動を制御し、ロボット手首先端に設けられた6軸センサにより手首にかかる力・トルクを検出・制御し、検出力の設定値を超えた場合に探索動作を終了する方法がある(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−311670号公報
【特許文献2】特開2004−167651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、外周面にスプライン部を設けたシャフトとシャフト孔の内周面にスプライン部を設けたギヤを嵌合してギヤシャフトを組立てる方法として、前述のビジョンセンサを用いる方法では、以下の欠点がある。即ち、ビジョンセンサを使用しなければならない分コストアップとなる。又、自動車等のギヤシャフト組立て現場の環境は、フォークリフト前照灯、太陽光、部品搬出入用トラック等の光の外乱が多く、ピジョンセンサが正常に機能しないことが往々にしてある。更に、自動車業界等が要求するギヤシャフト組立てのタクトタイムは通常1分以内であり、このタクトタイム内にシャフトに数個のギヤを取付ける必要があり、このタクトタイム内に両者のスプライン部面同士を合わせて嵌合して取付けるのは容易でない。更に又、組立て作業に故障があった場合には、現場担当者では、故障の修復が困難である。
【0008】
また、前述のギヤを内側に歯の切ってあるリング状のプレートに歯を合わせながら挿入する作業を自動的に行う方法を使用した場合では、以下の欠点がある。即ち、複雑高度のプログラムが必要であり、コストアップにつながる。又、要求される前述のタクトタイム内に組立てを完了することが困難な場合がある。更に又、組立て作業に故障があった場合には、現場担当者では、故障の修復が困難であるという欠点を有する。
【0009】
上記2方法は、ロボットの知能化を進め、判断力を向上してフレキシビリティーを大きくしたものである。しかし、自動車等のギヤシャフトの組立てには、いずれの方法も現実的でない。作業環境が適していないこと、高コストであること、タクトタイムが大きいこと、メンテナンスが困難であること、という欠点を有する。このため、自動車業界等では、人力に頼ってギヤシャフトの組立てを行っているのが現状である。
【0010】
本願発明は、ギヤシャフトの組立てのタクトタイムが小さく、装置のコストが低く、且つ装置のメンテナンスも容易であるギヤシャフトの組立て装置及びその方法を提供することを目的とする。本願発明は自動車、船等の運搬用機器、建設用機器及びその他のトランスミッション等に使用されるギヤシャフトに利用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、下記のとおりである。
1.外周面にスプライン部2aを設けたシャフト2(本願発明において「シャフト」とはギヤを取付けてない状態のものをいう。)とシャフト孔の内周面にスプライン部3aを設けたギヤ3を嵌合してなるギヤシャフト1(本願発明において「ギヤシャフト」とは、ギヤとシャフトが組立てられた状態のものをいう。)を組立てる装置であって、該装置はロボットとギヤシャフト組立て台4とからなり、
上記ロボットのハンド5(以下「ロボットハンド」ともいう。)は、
上記ハンドの基台51に、ばねを備えた2個のロッド52を介して取付けた上下動自在であり、上記シャフトが嵌通可能な円形孔と円筒形状のギヤ押圧部53aを有するブラケット53と、
上記ブラケットの下部に配設され、該ブラケットで押圧しつつ上記ギヤを把持する第一把持爪54と、
上記把持されたギヤの有無を検知する第一センサ56と、
組立て完了を検知する第二センサ57と、を備え、
上記ギヤシャフト組立て台4は、
上記シャフトを垂設状態に固定(本願発明において、「垂設状態」とは厳格な垂直を言うのではなく、略垂直を含む。)するためのシャフト固定部42と、
上記シャフトを上記シャフト固定部42と供に水平方向に回転させる組立てアクチュエータ43と、を備え、
上記ロボットと上記組立て台は、同一のロボットコントローラで制御されることを特徴とするギヤシャフト組立て装置。
【0012】
本願発明のギヤシャフト組立て装置は、ロボットハンド5にブラケットを装着してギヤを押圧しつつ把持するものであり、一方の組立て台は、垂設されたシャフトとともに回転するアクチュエータを備えている。このギヤをアンクランプした後、この押圧されたギヤを6軸ロボットの回転機能によりロボットハンドを水平回転させ、一方のシャフトは取付け台の備えるアクチュエータにより水平回転させて、嵌合させるものである。即ち、ロボットの知能化を進めることなく、人間の手の機能に近づけることにより課題を解決したものである。従って、本願発明のギヤシャフト組立て装置は、雌雄スプライン部の嵌合のための位置合せのために、視覚センサ等の特殊なセンサは必要ない。また、嵌合場所の探索プログラムや嵌合時の力やトルクの制御プログラムは必要ない。
【0013】
2.上記ロボットのハンドは、シャフトを把持する第二把持爪55を有する上記1.記載のギヤシャフト組立て装置。
3.上記ロボットは、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである上記1.記載のギヤシャフト組立て装置。この本願発明は、嵌め合いのクリアランスが厳しい及び/又はスプライン部の面取りが少ない場合には7軸ロボットを使用して、上記組立てアクチュエータの動作をフレキシブルにしてギヤシャフトの組立てを容易にするものである。
【0014】
4.上記ギヤシャフト組立て台4は、上記シャフトを垂設状態に固定するための第二シャフト固定部45を備える上記1.又は上記2.記載のギヤシャフト組立て装置。この本願発明は、組立てるべきギヤシャフトが長尺であって、上記ギヤシャフト組立て台の備える固定部だけでは不安定な場合に、この第二ギヤシャフト固定部を用いて2点でシャフトを支えて安定にしてギヤシャフトの組立てを容易にするものである。
【0015】
5.上記1.記載のギヤシャフト組立て装置を用いて、外周面にスプライン部2aを設けたシャフト2とシャフト孔の内周面にスプライン部3aを設けたギヤ3とをスプライン部嵌合して組立てるギヤシャフト組立て方法であって、
(A)上記ロボットが、上記ギヤ3を上記ロボットのハンド5の備えるブラケット53の押圧部53aで、該ギヤを押圧しつつ把持する工程と、
(B)上記ロボットが、把持した上記ギヤ3を移動し、該ギヤのシャフト孔及びギヤ押圧部53aが上記ギヤシャフト組立て台に垂設されたシャフトを嵌通して、上記シャフト2のスプライン部上端部と上記ギヤのスプライン部下端部の近接位置でアンクランプする工程と、
(C)上記ロボットは、上記ロボットのハンドを所定位置まで下方向に移動させ、上記アンクランプされたギヤ3を、上記ブラケット53の押圧部53aで押圧しつつ、上記ロボットのハンド5を上記ブラケットの円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させる工程と
(D)上記組立て台が備えるアクチュエータ43は、上記ギヤシャフト組立て台4の備える上記シャフト固定部42の平面中心点を軸として上記シャフトを水平方向に回転させる工程と、
を備え、ロボットが上記(B)から(D)のいずれかの工程で組立て完了を検知した場合は、上記検知した工程でギヤシャフトの組立てを完了することを特徴とするギヤシャフト組立て方法。
【0016】
従来技術の方法は、ロボットがワークを把持した状態で、対象物に嵌合して組立てるものであり、この方法では両者のスプライン部面を嵌合クリアランス内に正確に位置決めする必要があり、更にワークを対象物に押圧挿入する場合に、ロボットの手首にかかるモーメントを検知したときは、このモーメントを減少させるプログラムが必要である。本願発明の方法は、ギヤをアンクランプして、このギヤを押圧した状態でブラケット及びシャフトを水平回転させることにより、課題を解決しているため、上記プログラムを必要としない。このため、すばやいギヤシャフトの組立てが可能である。
【0017】
6.上記工程が(A)、(B)、(C)、(D)の順である上記5記載のギヤシャフト組立て方法。
7.上記工程が(A)、(B)、(C)、(D)の順である上記5記載のギヤシャフト組立て方法。
8.更に、上記(C)工程で水平方向に回転させたシャフトを回転前の状態に複動させる(E)工程を備える上記5.乃至上記7.のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【0018】
9.上記シャフトを上記(A)工程の前に上記組立て台に垂設する工程を備える上記5.乃至上記8.のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
10.上記組立て装置のロボットが、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである上記5.乃至上記9.のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【発明の効果】
【0019】
本願発明のギヤ組立て装置を用いれば、嵌合のための位置合せのために、視覚センサ等の特殊なセンサは必要なく、また嵌合場所の探索プログラムや嵌合時の力やトルクの制御プログラムは必要ないため、ギヤシャフト組立てタクトタイムが小さく、装置が低コストであり、且つ装置のメンテナンスが容易である。
【0020】
また、本願発明は、組立てアクチュエータを同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットを使用し、この組立てアクチュエータをいっそうフレキシブルな動作をさせることができるため、嵌め合いのクリアランスが厳しい及び/又はスプライン部の面取りが少ない場合であっても、ギヤシャフトの組立てを容易にし、ギヤシャフト組立てタクトタイムが小さく、装置が低コストであり、且つ装置のメンテナンスが容易である。
【0021】
更に、本願発明は、ギヤシャフト組立て台が第二シャフト固定部45を備えるため、組立て台に垂設されたシャフトが不安定になることなく、確実にギヤシャフトの組立てができる。
【0022】
本願発明の方法を使用すれば、嵌合のための位置合せのために、視覚センサ等の特殊なセンサのプログラム、また嵌合場所の探索プログラムや嵌合時の力やトルクの制御プログラムは必要ないため、ギヤシャフト組立てタクトタイムが小さく、組立てコストが低く、且つ工程のメンテナンスが容易である。
【0023】
また、本願発明の方法は、ギヤシャフトの組立てが完了しない場合は、所定の工程に戻って、再度組立て工程を繰り返すことができるため、確実にギヤシャフトの組立てができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本願発明のギヤシャフト組立て装置は、ロボットとギヤシャフト組立て台4とからなる。
(1)ロボット
このロボットは、汎用の6軸の産業ロボットを使用することができる。このロボットハンド5は、ブラケット53、第一把持部54、第一センサ56及び第二センサ57を備える。
【0025】
〔ブラケット〕
このブラケット53はギヤ3をシャフト2のスプライン部2aの上端部に押圧するものである。このブラケットは円筒形のギヤ押圧部53aを備える。このブラケットは上記ギヤを把持する場合にギヤ押圧部53aを介して上記ギヤを下方向に押圧しつつ把持し(図5参照)、上記ギヤをアンクランプしたときにも、ギヤ押圧部53aを介して上記ギヤを押圧する。したがって、ギヤがアンクランプされたときには、ギヤの下端部31aとシャフトのスプライン部の上端部21aは押圧状態で接触する(図6参照)。
【0026】
このブラケット53は、中央部にシャフトが貫通することができる円形孔53bを有する。この円形孔53bの直径は、ギヤのシャフト孔の直径より大きく且つギヤの直径より小さい。この範囲の直径であれば特に限定されない。上記ギヤ押圧部53aは円筒形状であって、その平面中心点は、上記ブラケットの円形孔の中心点と同一となるように取付けられ、その内径は上記円形孔53bより大きくする (図3及び図4参照)。
【0027】
上述のように、このギヤ押圧部53aは上記ギヤを把持した後であって、このギヤをアンクランプしたときも常にギヤをシャフトのスプライン部上端部21aを押圧している。本願発明のギヤシャフト組立て装置は、この押圧力を利用してギヤをシャフトに挿入する。このため、本願発明に係るロボットは、ギヤをシャフトに押圧して挿入する力制御を必要としない。
【0028】
このブラケットは、基台51に対して平行になるように、ばね52aを備えた2個のロッド52に取付けられ(図1参照)、この2個のロッドはロボットハンド5の基台51の貫通孔に上下動自在に取付けられる(図1及び図5参照)。従って、上記ばねを介してブラケットがギヤを垂直に押圧する。また、この2個のロッドは平面方向から見てブラケットの凸部両端部に取付けられているため(図3、図4参照)、ギヤを把持する際にブラケットの押圧部とギヤは垂直にほぼ平均した圧力で接触する。また、このロッドは上端部においてセンサ感知部59で固定される。
【0029】
後述するように、このロボットはロボットハンドを水平状態で上記ギヤをアンクランプするため、ギヤの下面(下端部)とシャフトのスプライン部上面(上端部)は水平に且つほぼ平均した圧力で接触する。従って、ギヤの挿入方向の軸とシャフトの挿入方向の軸はほぼ一致する。このため、ギヤをアンクランプしたときに、ギヤのスプライン部とシャフトのスプライン部がクリアランス内で一致した場合には、嵌合される(図14参照)。又は、上記シャフト及びギヤスプライン部の面取りがある場合は面取り量で増加したクリアランス内で一致した場合(図15参照)は、雌雄両スプラインは嵌合する。本願発明の装置は、ギヤをアンクランプした状態で嵌合させるため、嵌合時における6軸ロボットの手首50にかかるトルクを制御する必要は無い。
【0030】
このブラケットの材質は、特に限定されない。例えば、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂又は硬質ウレタンゴム等が用いられる。これらのうちで、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属が好ましく用いられる。アルミニウム、銅、真鍮は、ギヤを傷つけることが少なく、また、鉄は安価なためである。
【0031】
上記ばねの種類及び材質は、特に限定されない。ブラケット53がギヤを下方に押圧できればよい。例えば、鋼製のコイルばね、サラばね、板ばね、角ばね、竹の子ばね、空気ばね、液体ばね等が使用できる。これらのうちで鋼製の圧縮コイルばねが好ましく用いられる。安価で入手しやすいためである。
【0032】
〔第一把持爪〕
第一把持爪54はギヤを把持するものである。この第一把持爪54は、ロボットハンド5の把持アクチュエータ58を介して、上記ブラケットの下方の位置に設けられる(図1及び図3参照)。この把持爪54はギヤを把持できれば、把持方法は特に限定されないが、好ましくは平行移動型の一対の爪(54a,54b)で把持する。これらの爪の形状はギヤを把持できれば限定は無いが、これらの各々の爪は、平面方向から見てVヤゲン形状のきり欠きがあることが好ましい(図1〜図4参照)。ギヤを4点で安定に把持するためである。
【0033】
この爪の材質は、特に限定されない。アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂又は硬質ウレタンゴム等が用いられる。これらのうちでアルミニウム、銅、真鍮、鉄が好ましく用いられる。アルミニウム、銅、真鍮は、ギヤを傷つけることが少なく、また、鉄は安価なためである。
【0034】
本願発明に係るロボットハンドは第二把持爪55を有することが好ましい。この第二把持爪55はシャフトを把持するものである。この第二把持爪55は、第一把持爪54が備える2個の爪の各々の下方に配設される。この把持爪55はシャフトが把持できれば把持方法は限定されない。これらの爪は上述のアクチュエータ58で平行移動してシャフトを2箇所で把持することが好ましい。シャフトは長尺であるため、2箇所で把持すると安定するためである。即ち、この把持爪は、2対の爪を(4個の爪55a、55b、55c、55d)備えることが好ましい(図4参照)。この爪の形状は特に限定されないが、Vヤゲン形状の切り欠き部を有することが好ましい(図1参照)。各一対の爪が4点でシャフトを把持するため、シャフトの把持が安定するためである。
【0035】
この爪の材質は、特に限定されない。アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂又は硬質ウレタンゴム等が用いられる。これらのうちでアルミニウム、銅、真鍮、鉄が好ましく用いられる。アルミニウム、銅、真鍮は、対象ワークを傷つけることが少なく、また、鉄は安価なためである。
【0036】
〔第一センサ〕
第一センサ56はロボットのハンドの基台51に設けられたセンサブラケットに取付ける(図1参照)。この第一センサは、上述のロッド52を固定するセンサ感知部59を感知する。このロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に上下するために、この第一センサは把持部がギヤを把持した際に、上記センサ感知部59を感知してロボットはギヤを把持したことを検知する(図5参照)。このロボットは、上記ギヤの把持を検知した後に次の動作に移る。
【0037】
このセンサは上記センサ感知部59を感知できればよく、その種類は限定されない。例えば、リミットスイッチ、磁石、光、赤外線及び超音波等を使用したセンサを使用できる。これらのうちでセンサ感知部を金属として、磁石を用いたセンサ又はリミットスイッチが好ましく用いられる。安価且つ確実に検知するためである。
【0038】
〔第二センサ〕
第二センサ57は、ロボットハンドの基台51に設けられたセンサブラケットの第一センサの上部に設けられる(図1参照)。上記ロッドを固定するセンサ感知部59を感知する。この第二センサが上記センサ感知部59を感知している場合は、この装置はギヤシャフトを組立て中であること示す。
【0039】
このセンサは上記センサ感知部59を感知できればよく、その種類は限定されない。例えば、リミットスイッチ、磁石、光、赤外線及び超音波等を使用したセンサを使用できる。これらのうちで第一センサと同様の磁石を用いたセンサ又はリミットスイッチが好ましく用いられる。安価且つ確実に検知するためである。
【0040】
(2)ギヤシャフト組立て台
ギヤシャフト組立て台4は、シャフトにギヤを組立てるための台である。このギヤシャフト組立て台は水平状態に設置される。水平状態とは、厳密に水平ではなくても略水平であることも含む。このギヤシャフト組立て台4は、シャフトを垂設状態に固定するためのシャフト固定部42と、この固定部に垂設されたシャフトをこの固定部とともに水平方向に回転させるための組立てアクチュエータ43とを備える(図9、図10参照)。
【0041】
〔組立てアクチュエータ〕
この組立てアクチュエータ43の駆動源は、特に限定されない。例えば空気圧、油圧、電動機及び電磁石を用いることができる。これらのうちで空気圧の駆動源を用いるものが好ましい。安価であり、且つ確実に作動するからである。このアクチュエータは、加圧空気のバルブを開いたときに、シャフト固定部42の中心点Cを軸に一定角度回転する(図10参照)。この組立てアクチュエータ43が一定角度水平回転した後、切替えバルブにより、初期位置に複動するか、又はフリー状態とすることもできる。
【0042】
上記切替えバルブは、上記ロボットと同一のコントローラを使用して、上記ロボットに連動して開閉する。この切替えバルブの作動は、後述の本願装置を用いたギヤシャフト組立て方法において説明する。このバルブが切替わって上記アクチュエータがフリーになった場合において、なお、組立てが完了していないときは、後述のロボットハンドの回転に伴って、上述の水平回転前の初期の位置まで複動する。
【0043】
〔シャフト固定部〕
このシャフト固定部42は、このシャフト固定部42に垂直に配置された上記シャフトを固定する。この垂直配置手段は特に限定されないが、好ましくは、上記ロボットハンドの備える第二把持爪55を用いて、ロボットが配置する。また、垂直配置されたシャフトの固定手段は特に限定されない。好ましくは3本爪(41a、41b、41c)のチャック41で固定する(図10参照)。安定した垂直状態を維持するためである。
【0044】
他の本願発明のギヤシャフト組立て装置は、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで第7軸として制御する同時7軸制御ロボット仕様とする。このロボットは、上記アクチュエータをよりいっそうロボット教示又はプログラムによりフレキシブルに水平回転運動させることができる。例えば、水平回転運動速度を自在に調整できるとともに、任意の角度でピッチ送りも可能である。また、上記アクチュエータの複動速度を自在に調整できる。更に、振動を与えつつ上記水平回転運動をすることも可能である。
【0045】
この同時7軸制御ロボットは、特に嵌め合いのクリアランスmが小さいとき又はスプライン部の面取りが少なくてクリアランスnが小さいときには、上述の組立て台に用いるアクチュエータよりもフレキシブルに作動できるため、特に有効である(図14、図15参照)。
【0046】
他の本願発明のギヤシャフト組立て装置は、上記シャフト組立て台4上に垂設されたシャフトを安定した状態に固定するための第二シャフト固定部45を備える(図11、図12参照)。この第二シャフト固定部は、駆動部47と1対の爪46からなり、この1対の爪46は上記駆動部47を用いて、開閉自在となっている(図11、図12参照)。この第二シャフト固定部45は、上記シャフト組立て台のシャフト固定部42が、このシャフトを垂設・固定した後に、このシャフトのスプライン部が設けられていない箇所を上記一対の爪46を閉じて固定する。通常、この第二シャフト固定部45の備える上記一対の爪46は、ロボットがギヤシャフト組立て中である場合は、閉じてこのシャフトを固定しているが、ギヤを把持したロボットハンド5がシャフトを嵌通する場合等は一旦開いて、このシャフトを開放する。その後、この爪を再度閉じてシャフトを固定する。また、シャフトギヤの組立てが完了したときは、この爪46を開いてこのギヤシャフトを開放する。
【0047】
本願発明の上記ギヤシャフト組立て装置の使用方法は、下記のとおりである。
(1)上記ギヤシャフト組立て台にシャフト2を垂直に配置する。この配置方法は特に限定されないが、本願ロボットが配置することが好ましい。このロボットのハンド5が上記シャフト2を第二把持爪55で把持して、上記ギヤシャフト組立て台4の上記シャフト固定部42に垂直・配置する。このシャフトの垂直・配置の位置は、上述のシャフト固定部を平面方向から見た中心点C(図10参照)に、上記シャフトを底面方向から見た中心位置が重なるようにする。この動作は教示プログラムで行うことができる。
【0048】
(2)上記シャフトは、上記シャフト固定部42の中心点Cに上記シャフト2が垂直に配置されたとき固定される。この固定方法は特に限定されないが、好ましくは、3本爪(41a、41b、41c)のチャック41でこのシャフトを固定して設置する(図10参照)。この動作は、上述のロボットコントローラで行うことができる。
【0049】
(3)本ロボットハンドの第一把持爪54が上記ギヤ3を把持する。図5は、本工程においてロボットハンドの第一把持爪54が上記ギヤ3を把持するときの説明図である。図5に示すように、ロボットの上記把持爪54が上記ギヤ3を把持するときに、ブラケット53のギヤ押圧部53aが上記ギヤを押圧した後、このギヤを押圧しつつ把持する。このギヤを把持したときにロッド52はハンド基台51に対して相対的に上昇する。このため、このロッドに固定されているセンサ感知部59は第一センサ56により感知され、ロボットはギヤを把持したことを検知して次の動作に移ることができる。
【0050】
上記ロボットが上記ギヤの把持を検知した後、このロボットは把持した上記ギヤを、ギヤのシャフト孔3bを上記組立て台のシャフト固定部42に垂設されたシャフト2に貫通させて、シャフトの備えるスプライン部の上端部21aに近接状態に配置する。図6は本工程の上記動作を正面から見た説明図である。また、図7は上記動作を側面から見た説明図である。上述の近接状態とはシャフトのスプライン部とギヤのスプライン部が接するほどに近くに配置する意味であって、両スプライン部が接する場合も含む。この状態に配置されたギヤ3は、なおブラケット53の押圧部53aにより押圧されている。この動作は、通常のティーチングにより行うことができる。
【0051】
(4)シャフトのスプライン部の上端部21aに近接・配置された上記ギヤをロボットはアンクランプする。このロボットが上記ギヤをアンクランプした後も、上記ブラケットはギヤを下方向に押圧し続ける。この押圧されたギヤはアンクランプされたときに両スプライン部が嵌合してギヤシャフトが組立てられるか、または組立てられずにギヤはシャフトの上端部21aにとどまる。上記嵌合してギヤシャフトが組立てられたときは、ブラケットはロボット基台51に対して相対的に下方に移動するため、第一センサ56は上記センサ感知部59を感知しない。この第一センサ56がセンサ感知部59を感知しないときに、ロボットはギヤシャフトの組立てを検知して、組立ては完了する。
【0052】
(5)上記工程でロボットが組立てを検知しない場合(第一センサ56がセンサ感知部59を感知している場合)は、このロボットは、ロボットハンド5を下方に所定位置(例えば、ギヤの厚みだけ下降させた位置、あるいは第二センサがセンサ感知部を感知できる位置等)まで移動させる。このため、このギヤ3は上記ブラケット押圧部53aにより更に下方に、ばねで強く押圧される。図8は本工程の上記動作を側面から見た説明図である。上記ロボットハンドの下方向移動において、雌雄両スプラインが嵌合する場合がある。この場合は、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降し、第一センサ56はセンサ感知部59を感知するが、第二センサ57はセンサ感知部59を感知しない。このとき、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程を終了する。
上記両スプラインが嵌合しないときは、その後、第二センサ57が上記センサ感知部59を感知する。このセンサ感知部を感知した場合は、このロボットはロボットハンド5を上記ブラケットの円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させる。このため、上記ブラケットに押圧されている上記ギヤはロボットハンドの回転に伴って水平方向に回転応力が生ずる。
【0053】
この応力のためギヤ3は、下記のいずれかの動きをする。
(a)上記ギヤは、ブラケットと供回りして、このブラケットと同一方向に水平回転する。
(b)上記ギヤは、上記ブラケットとの間に滑りをおこしつつブラケットと同一方向に回転する。
(c)上記ギヤは、上記ブラケットとの間に滑りが生じ、水平回転をしない。
本工程においては、上記ギヤの動きは上記(a)、(b)、又は(c)のいずれであってもよいが、好ましくは上記(b)の動きになるように上述のばね52aを選択する。この動きの場合には、特にスムーズに嵌合が行われる場合が多いからである。この回転方向はいずれの方向でもよい。また、一方に一定角度回転した後に反対方向に回転させてもよい。
この回転の際に両スプライン部が嵌合して組立てが完了した場合には、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降する。従って、この第二センサ57はセンサ感知部59を感知しない。このため、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程を終了する。
【0054】
(6)上記工程で、ロボットがギヤシャフトの組立て完了を検知しない場合は、組立てアクチュエータ43は、シャフト固定部42の中心位置Cを軸に水平方向に一定角度回転する。この回転方向は上記ロボットハンドの回転方向と反対方向であっても同一方向であってもよいが、反対方向に回転することが好ましい。上記回転角度は特に限定されないが、好ましくは1度から90度、更に好ましくは1度から45度、特に好ましくは2度から20度である。この範囲の回転である場合は、両スプライン部がスムーズに嵌合する場合が多いためである。
この際に両スプライン部が嵌合した場合は、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降する。このため、第二センサ57はセンサ感知部59を感知しない。よって、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程は終了する。上述のように、第二センサ57が一度センサ感知部59を感知した後は、第一センサがセンサ感知部59を感知するか否かにかかわらず、センサ感知部59を感知しなくなったときにこのロボットはギヤシャフトの組立てを検知して、ギヤシャフト組立て工程は終了する。
【0055】
(7)このロボットが上記ギヤをアンクランプし、次いで、組立てアクチュエータ43を、シャフト固定部42の中心位置Cを軸に水平方向に一定角度回転させることもできる。この動作で、両スプライン部が嵌合したときは、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降する。よって、第一センサは、センサ感知部を感知しないため、このロボットはギヤシャフトの組み立てを検知して、ギヤシャフト組立て工程は終了する。
上記動作でギヤシャフトの組立てが完了しない場合は、次いで、ロボットハンド5を下方向に所定位置だけ移動させ、その後、上記第二センサ57がこのセンサ感知部59を感知したときに、このロボットハンド5を上記ブラケットが備える円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させることもできる。
更に、上記組立てアクチュエータ43を回転させると、同時にロボットハンド5を下方に所定位置だけ移動させ、次いで、上記第二センサ57がこのセンサ感知部59を感知したときに、このロボットハンド5を上記ブラケットが備える円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させることもできる。
【0056】
(8)上記工程で組立てが完了しない場合は、上記組立てアクチュエータ43を初期の位置に水平回転複動させる。このアクチュエータの駆動源が空気である場合には、下記のように行うことができる。上記組立てアクチュエータ43の回転方向が上記ロボットハンドと反対方向の場合は上記組立てアクチュエータ43のバルブを閉じて、空気の逃がしバルブを開く。従って、上記組立てアクチュエータ43は無拘束になり、上記ブラケットの回転に伴って、初期の位置に回転複動する。また、他の方法は切替えバルブを用いて初期の位置に回転複動することもできる。更に、上記組立てアクチュエータ43の回転方向が上記ロボットハンドと同一方向の場合は、切替えバルブを用いて初期の位置に回転複動させる。この回転複動はどの時点で行ってもよい。この複動工程でギヤとシャフトが嵌合した場合は、第二センサ57はセンサ感知部59を感知しないため、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程は終了する。
【0057】
(9)上記工程で、ギヤシャフト組立てが完了しない場合は、回転前の初期位置に戻った上記組立てアクチュエータを再度一定角度水平回転させることができる。この回転でギヤシャフト組立てが完了しない場合は、この組立てアクチュエータの水平回転往復動を何度でも繰り返すことができる。通常は3回で終了させる。3回の往復動でギヤシャフトの組立てが完了しない場合は、ギヤ及び/又はシャフトに何らかの異常があると考えられるからである。
【0058】
他の本願発明であるギヤシャフト組立て方法は、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで第7軸として制御する同時7軸制御ロボット仕様としたものを用いる。上記組立てアクチュエータ43の動作を教示又はプログラムによりフレキシブルにできるため、両スプライン部の嵌合がよりスムーズにできる。即ち、このアクチュエータの水平回転速度を自在に調整できるし、又、回転角度を任意に割り出すこともできる。
また、上記各工程の間に、ギヤシャフト組立て台の第二シャフト固定部45で、シャフトを固定する工程を挿入することもできる。この方法によれば、シャフトが長くて、組立て台のシャフト固定部42だけでは、確実な固定が困難な場合に有効である。
【実施例】
【0059】
本願発明の実施例を下記に示す。使用したロボット、シャフト及びギヤは下記のとおりである。
(1) 使用ロボット:多関節6軸ロボット
(2) シャフト:雄スプライン部を5箇所に備えるシャフト
第1スプライン部:径40.7mm(スプライン部を除いたシャフト径38.0mm)
第2スプライン部:径38.0mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
第3スプライン部:径38.0mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
第4スプライン部:径38.0mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
第5スプライン部:径37.5mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
(3) ギヤ:5個
第1ギヤのギヤ孔:径38.6mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第2ギヤのギヤ孔:径35.8mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第3ギヤのギヤ孔:径36.0mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第4ギヤのギヤ孔:径36.0mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第5ギヤのギヤ孔:径35.9mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
【0060】
他の仕様は下記のとおりである。
ブラケット及びブラケット押圧部の材質:アルミウム
第一センサ及び第二センサ:磁石近接スイッチ
第一爪形状:Vヤゲン形状の切込みを入れて4点でギヤを把持
【0061】
1本のシャフトには、上記第1スプライン部から第5スプライン部が順に取付けられている。この第1スプライン部に上記第1ギヤを、この第2スプライン部に上記第2ギヤを、この第3スプライン部に上記第3ギヤを、この第4スプライン部に上記第4ギヤを、この第5スプライン部に上記第5ギヤを、順次組立てていき、5個のギヤが全てシャフトに組立てられたときに組立ては完了した。上記シャフト及びギヤは、通常の乗用自動車に使用されるトランスミッションに用いられるものであって、このシャフト及びギヤのスプライン部には、通常の面取り加工がしてある。シャフト160本、ギヤ800個を用いて図16の動作図にしたがってギヤシャフトの組立てを行った。
【0062】
結果は下記の表のとおりである。E工程を3回繰り返しても組立てが完了しないものは、組立て不能とした。本実施例ではシャフト160本は全て組立てが完成した。
また、1本のシャフトの組立て時間は平均50秒であった。この結果,B工程及びC工程でほとんどのギヤとシャフトが嵌合していることが分かる。1本のシャフトの組立て完了時間は平均50秒であり、人間により行う場合に比較して同等又はそれ以上の能率であることが分かる。
【0063】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るロボットハンドの正面図である。
【図2】本発明に係るロボットハンドの側面図である。
【図3】本発明に係るロボットハンドの平面図である。
【図4】本発明に係るロボットハンドの底面図である。
【図5】ギヤを把持するときの模式説明図である。
【図6】ギヤをアンクランプするときの模式正面説明図である。
【図7】ギヤをアンクランプするときの模式側面説明図である。
【図8】ハンドを回転させるときの模式説明図である。
【図9】本発明に係るギヤシャフト組立て台の正面図である。
【図10】本発明に係るギヤシャフト組立て台の平面図である。
【図11】本発明に係る第二シャフト固定部を有するギヤシャフト組立て台の正面図である。
【図12】本発明に係る第二シャフト固定部の爪を開いた状態の平面図である。
【図13】本発明に係るギヤシャフトの分解説明図である。
【図14】本発明に係るギヤ及びシャフトのスプライン部に面取りが無い場合の嵌合説明図である。
【図15】本発明に係るギヤ及びシャフトのスプライン部に面取りがある場合の嵌合説明図である。
【図16】実施例の動作図である。
【符号の説明】
【0065】
1.ギヤシャフト、2.シャフト、2a.雄スプライン部、3.ギヤ、3a.雌スプライン部、4.組立て台、41.チャック、42.シャフト固定部、43.組立てアクチュエータ、45.第二シャフト固定部、5.ロボットハンド、52.ロッド、52a.ばね、53.ブラケット、 53a.ギヤ押圧部、54.第一把持爪、55.第二把持爪、56.第一センサ、57.第二センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤシャフトの組立て装置及びその組立て方法に関する。詳しくは、ロボットと組立て台を用いて、外周面に雄スプライン部を設けたシャフトとシャフト孔の内周面に雌スプライン部を設けたギヤを嵌合してなるギヤシャフトを組立てる装置及びその組立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のトランスミッション等に用いるギヤシャフトにおいて、シャフトとギヤの雌雄スプライン部の嵌合組立ては、人力又は組立て専用機械により行うことも考えられるが、人力による場合又は組立て専用機械による場合のいずれであっても、ギヤシャフトの組立てコストが大きくなる。このため、ロボットによるギヤシャフトの組立てが自動車業界等で要請されている。ロボットによるワークと対象物の嵌め合い方法として、下記の方法が開示されている。
【0003】
即ち、嵌め合わせる2つの部材等の一方をロボットアーム先端のハンド等で把持し、他方の部材に該一方の部材を挿入する作業において、この位置決めを自動化する方法としては、挿入する前に穴の位置をロボットアームに取付けられたビジョンセンサ等で検出し、位置補正をしてワークを穴に対して相対的に位置決めする方法が知られている。
【0004】
また、上記方法の改良であって、予めワークなどの対象物を撮影してこれを参照画像として記憶し、視覚センサにより撮影した前記対象物の画像が前記参照画像と同じ状態になるようにロボットアームの位置姿勢を制御する視覚フィードバック制御を行うようにしたロボット装置の前記ロボットアームに補助センサを設けたものがある。このロボットは、前記視覚センサが前記参照画像を撮影したときの前記ロボットアームの位置姿勢で前記補助センサにより当該補助センサと前記対象物との関係情報を取得してこれを予め参照関係情報として記憶し、前記視覚センサにより撮影した前記対象物の画像が前記参照画像と同じ状態になるよう前記視覚フィードバック制御することに併せて、前記補助センサにより取得した当該補助センサと前記対象物との関係情報が前記参照関係情報と同じとなるように前記ロボットアームの位置姿勢を制御するフィードバック制御を行うものである(特許文献1参照)。
【0005】
さらに、オートマチック・トランスミッションに使用されるクラッチを組立てる例で、外側に歯が切ってあるギヤを内側に歯の切ってあるリング状のプレートに歯を合せながら挿入する作業を自動的に行う方法として、下記の方法がある。まず、ギヤをクランプしたロボットが教示プログラム等によって、ギヤを把持したロボットを駆動しプレートの穴にこのギヤを挿入開始するために、予め教示された位置に移動させる。そして、あらかじめ計算された、探索基準軸、探索軸、探索周波数、探索範囲、探索軸の探索可能範囲に基づいて探索を行う方向の速度指令をプログラミングし、夫々周期と方向の異なる往復運動(回転往復運動を含む)を同時に合成してなる探索動作を求め、ギヤをプレートに接触させた状態で挿入方向に所定の力で押し付けながら、前記探索動作に基づいて前記ワークの移動を制御し、ロボット手首先端に設けられた6軸センサにより手首にかかる力・トルクを検出・制御し、検出力の設定値を超えた場合に探索動作を終了する方法がある(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−311670号公報
【特許文献2】特開2004−167651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、外周面にスプライン部を設けたシャフトとシャフト孔の内周面にスプライン部を設けたギヤを嵌合してギヤシャフトを組立てる方法として、前述のビジョンセンサを用いる方法では、以下の欠点がある。即ち、ビジョンセンサを使用しなければならない分コストアップとなる。又、自動車等のギヤシャフト組立て現場の環境は、フォークリフト前照灯、太陽光、部品搬出入用トラック等の光の外乱が多く、ピジョンセンサが正常に機能しないことが往々にしてある。更に、自動車業界等が要求するギヤシャフト組立てのタクトタイムは通常1分以内であり、このタクトタイム内にシャフトに数個のギヤを取付ける必要があり、このタクトタイム内に両者のスプライン部面同士を合わせて嵌合して取付けるのは容易でない。更に又、組立て作業に故障があった場合には、現場担当者では、故障の修復が困難である。
【0008】
また、前述のギヤを内側に歯の切ってあるリング状のプレートに歯を合わせながら挿入する作業を自動的に行う方法を使用した場合では、以下の欠点がある。即ち、複雑高度のプログラムが必要であり、コストアップにつながる。又、要求される前述のタクトタイム内に組立てを完了することが困難な場合がある。更に又、組立て作業に故障があった場合には、現場担当者では、故障の修復が困難であるという欠点を有する。
【0009】
上記2方法は、ロボットの知能化を進め、判断力を向上してフレキシビリティーを大きくしたものである。しかし、自動車等のギヤシャフトの組立てには、いずれの方法も現実的でない。作業環境が適していないこと、高コストであること、タクトタイムが大きいこと、メンテナンスが困難であること、という欠点を有する。このため、自動車業界等では、人力に頼ってギヤシャフトの組立てを行っているのが現状である。
【0010】
本願発明は、ギヤシャフトの組立てのタクトタイムが小さく、装置のコストが低く、且つ装置のメンテナンスも容易であるギヤシャフトの組立て装置及びその方法を提供することを目的とする。本願発明は自動車、船等の運搬用機器、建設用機器及びその他のトランスミッション等に使用されるギヤシャフトに利用される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、下記のとおりである。
1.外周面にスプライン部2aを設けたシャフト2(本願発明において「シャフト」とはギヤを取付けてない状態のものをいう。)とシャフト孔の内周面にスプライン部3aを設けたギヤ3を嵌合してなるギヤシャフト1(本願発明において「ギヤシャフト」とは、ギヤとシャフトが組立てられた状態のものをいう。)を組立てる装置であって、該装置はロボットとギヤシャフト組立て台4とからなり、
上記ロボットのハンド5(以下「ロボットハンド」ともいう。)は、
上記ハンドの基台51に、ばねを備えた2個のロッド52を介して取付けた上下動自在であり、上記シャフトが嵌通可能な円形孔と円筒形状のギヤ押圧部53aを有するブラケット53と、
上記ブラケットの下部に配設され、該ブラケットで押圧しつつ上記ギヤを把持する第一把持爪54と、
上記把持されたギヤの有無を検知する第一センサ56と、
組立て完了を検知する第二センサ57と、を備え、
上記ギヤシャフト組立て台4は、
上記シャフトを垂設状態に固定(本願発明において、「垂設状態」とは厳格な垂直を言うのではなく、略垂直を含む。)するためのシャフト固定部42と、
上記シャフトを上記シャフト固定部42と供に水平方向に回転させる組立てアクチュエータ43と、を備え、
上記ロボットと上記組立て台は、同一のロボットコントローラで制御されることを特徴とするギヤシャフト組立て装置。
【0012】
本願発明のギヤシャフト組立て装置は、ロボットハンド5にブラケットを装着してギヤを押圧しつつ把持するものであり、一方の組立て台は、垂設されたシャフトとともに回転するアクチュエータを備えている。このギヤをアンクランプした後、この押圧されたギヤを6軸ロボットの回転機能によりロボットハンドを水平回転させ、一方のシャフトは取付け台の備えるアクチュエータにより水平回転させて、嵌合させるものである。即ち、ロボットの知能化を進めることなく、人間の手の機能に近づけることにより課題を解決したものである。従って、本願発明のギヤシャフト組立て装置は、雌雄スプライン部の嵌合のための位置合せのために、視覚センサ等の特殊なセンサは必要ない。また、嵌合場所の探索プログラムや嵌合時の力やトルクの制御プログラムは必要ない。
【0013】
2.上記ロボットのハンドは、シャフトを把持する第二把持爪55を有する上記1.記載のギヤシャフト組立て装置。
3.上記ロボットは、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである上記1.記載のギヤシャフト組立て装置。この本願発明は、嵌め合いのクリアランスが厳しい及び/又はスプライン部の面取りが少ない場合には7軸ロボットを使用して、上記組立てアクチュエータの動作をフレキシブルにしてギヤシャフトの組立てを容易にするものである。
【0014】
4.上記ギヤシャフト組立て台4は、上記シャフトを垂設状態に固定するための第二シャフト固定部45を備える上記1.又は上記2.記載のギヤシャフト組立て装置。この本願発明は、組立てるべきギヤシャフトが長尺であって、上記ギヤシャフト組立て台の備える固定部だけでは不安定な場合に、この第二ギヤシャフト固定部を用いて2点でシャフトを支えて安定にしてギヤシャフトの組立てを容易にするものである。
【0015】
5.上記1.記載のギヤシャフト組立て装置を用いて、外周面にスプライン部2aを設けたシャフト2とシャフト孔の内周面にスプライン部3aを設けたギヤ3とをスプライン部嵌合して組立てるギヤシャフト組立て方法であって、
(A)上記ロボットが、上記ギヤ3を上記ロボットのハンド5の備えるブラケット53の押圧部53aで、該ギヤを押圧しつつ把持する工程と、
(B)上記ロボットが、把持した上記ギヤ3を移動し、該ギヤのシャフト孔及びギヤ押圧部53aが上記ギヤシャフト組立て台に垂設されたシャフトを嵌通して、上記シャフト2のスプライン部上端部と上記ギヤのスプライン部下端部の近接位置でアンクランプする工程と、
(C)上記ロボットは、上記ロボットのハンドを所定位置まで下方向に移動させ、上記アンクランプされたギヤ3を、上記ブラケット53の押圧部53aで押圧しつつ、上記ロボットのハンド5を上記ブラケットの円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させる工程と
(D)上記組立て台が備えるアクチュエータ43は、上記ギヤシャフト組立て台4の備える上記シャフト固定部42の平面中心点を軸として上記シャフトを水平方向に回転させる工程と、
を備え、ロボットが上記(B)から(D)のいずれかの工程で組立て完了を検知した場合は、上記検知した工程でギヤシャフトの組立てを完了することを特徴とするギヤシャフト組立て方法。
【0016】
従来技術の方法は、ロボットがワークを把持した状態で、対象物に嵌合して組立てるものであり、この方法では両者のスプライン部面を嵌合クリアランス内に正確に位置決めする必要があり、更にワークを対象物に押圧挿入する場合に、ロボットの手首にかかるモーメントを検知したときは、このモーメントを減少させるプログラムが必要である。本願発明の方法は、ギヤをアンクランプして、このギヤを押圧した状態でブラケット及びシャフトを水平回転させることにより、課題を解決しているため、上記プログラムを必要としない。このため、すばやいギヤシャフトの組立てが可能である。
【0017】
6.上記工程が(A)、(B)、(C)、(D)の順である上記5記載のギヤシャフト組立て方法。
7.上記工程が(A)、(B)、(C)、(D)の順である上記5記載のギヤシャフト組立て方法。
8.更に、上記(C)工程で水平方向に回転させたシャフトを回転前の状態に複動させる(E)工程を備える上記5.乃至上記7.のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【0018】
9.上記シャフトを上記(A)工程の前に上記組立て台に垂設する工程を備える上記5.乃至上記8.のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
10.上記組立て装置のロボットが、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである上記5.乃至上記9.のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【発明の効果】
【0019】
本願発明のギヤ組立て装置を用いれば、嵌合のための位置合せのために、視覚センサ等の特殊なセンサは必要なく、また嵌合場所の探索プログラムや嵌合時の力やトルクの制御プログラムは必要ないため、ギヤシャフト組立てタクトタイムが小さく、装置が低コストであり、且つ装置のメンテナンスが容易である。
【0020】
また、本願発明は、組立てアクチュエータを同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットを使用し、この組立てアクチュエータをいっそうフレキシブルな動作をさせることができるため、嵌め合いのクリアランスが厳しい及び/又はスプライン部の面取りが少ない場合であっても、ギヤシャフトの組立てを容易にし、ギヤシャフト組立てタクトタイムが小さく、装置が低コストであり、且つ装置のメンテナンスが容易である。
【0021】
更に、本願発明は、ギヤシャフト組立て台が第二シャフト固定部45を備えるため、組立て台に垂設されたシャフトが不安定になることなく、確実にギヤシャフトの組立てができる。
【0022】
本願発明の方法を使用すれば、嵌合のための位置合せのために、視覚センサ等の特殊なセンサのプログラム、また嵌合場所の探索プログラムや嵌合時の力やトルクの制御プログラムは必要ないため、ギヤシャフト組立てタクトタイムが小さく、組立てコストが低く、且つ工程のメンテナンスが容易である。
【0023】
また、本願発明の方法は、ギヤシャフトの組立てが完了しない場合は、所定の工程に戻って、再度組立て工程を繰り返すことができるため、確実にギヤシャフトの組立てができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本願発明のギヤシャフト組立て装置は、ロボットとギヤシャフト組立て台4とからなる。
(1)ロボット
このロボットは、汎用の6軸の産業ロボットを使用することができる。このロボットハンド5は、ブラケット53、第一把持部54、第一センサ56及び第二センサ57を備える。
【0025】
〔ブラケット〕
このブラケット53はギヤ3をシャフト2のスプライン部2aの上端部に押圧するものである。このブラケットは円筒形のギヤ押圧部53aを備える。このブラケットは上記ギヤを把持する場合にギヤ押圧部53aを介して上記ギヤを下方向に押圧しつつ把持し(図5参照)、上記ギヤをアンクランプしたときにも、ギヤ押圧部53aを介して上記ギヤを押圧する。したがって、ギヤがアンクランプされたときには、ギヤの下端部31aとシャフトのスプライン部の上端部21aは押圧状態で接触する(図6参照)。
【0026】
このブラケット53は、中央部にシャフトが貫通することができる円形孔53bを有する。この円形孔53bの直径は、ギヤのシャフト孔の直径より大きく且つギヤの直径より小さい。この範囲の直径であれば特に限定されない。上記ギヤ押圧部53aは円筒形状であって、その平面中心点は、上記ブラケットの円形孔の中心点と同一となるように取付けられ、その内径は上記円形孔53bより大きくする (図3及び図4参照)。
【0027】
上述のように、このギヤ押圧部53aは上記ギヤを把持した後であって、このギヤをアンクランプしたときも常にギヤをシャフトのスプライン部上端部21aを押圧している。本願発明のギヤシャフト組立て装置は、この押圧力を利用してギヤをシャフトに挿入する。このため、本願発明に係るロボットは、ギヤをシャフトに押圧して挿入する力制御を必要としない。
【0028】
このブラケットは、基台51に対して平行になるように、ばね52aを備えた2個のロッド52に取付けられ(図1参照)、この2個のロッドはロボットハンド5の基台51の貫通孔に上下動自在に取付けられる(図1及び図5参照)。従って、上記ばねを介してブラケットがギヤを垂直に押圧する。また、この2個のロッドは平面方向から見てブラケットの凸部両端部に取付けられているため(図3、図4参照)、ギヤを把持する際にブラケットの押圧部とギヤは垂直にほぼ平均した圧力で接触する。また、このロッドは上端部においてセンサ感知部59で固定される。
【0029】
後述するように、このロボットはロボットハンドを水平状態で上記ギヤをアンクランプするため、ギヤの下面(下端部)とシャフトのスプライン部上面(上端部)は水平に且つほぼ平均した圧力で接触する。従って、ギヤの挿入方向の軸とシャフトの挿入方向の軸はほぼ一致する。このため、ギヤをアンクランプしたときに、ギヤのスプライン部とシャフトのスプライン部がクリアランス内で一致した場合には、嵌合される(図14参照)。又は、上記シャフト及びギヤスプライン部の面取りがある場合は面取り量で増加したクリアランス内で一致した場合(図15参照)は、雌雄両スプラインは嵌合する。本願発明の装置は、ギヤをアンクランプした状態で嵌合させるため、嵌合時における6軸ロボットの手首50にかかるトルクを制御する必要は無い。
【0030】
このブラケットの材質は、特に限定されない。例えば、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂又は硬質ウレタンゴム等が用いられる。これらのうちで、アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属が好ましく用いられる。アルミニウム、銅、真鍮は、ギヤを傷つけることが少なく、また、鉄は安価なためである。
【0031】
上記ばねの種類及び材質は、特に限定されない。ブラケット53がギヤを下方に押圧できればよい。例えば、鋼製のコイルばね、サラばね、板ばね、角ばね、竹の子ばね、空気ばね、液体ばね等が使用できる。これらのうちで鋼製の圧縮コイルばねが好ましく用いられる。安価で入手しやすいためである。
【0032】
〔第一把持爪〕
第一把持爪54はギヤを把持するものである。この第一把持爪54は、ロボットハンド5の把持アクチュエータ58を介して、上記ブラケットの下方の位置に設けられる(図1及び図3参照)。この把持爪54はギヤを把持できれば、把持方法は特に限定されないが、好ましくは平行移動型の一対の爪(54a,54b)で把持する。これらの爪の形状はギヤを把持できれば限定は無いが、これらの各々の爪は、平面方向から見てVヤゲン形状のきり欠きがあることが好ましい(図1〜図4参照)。ギヤを4点で安定に把持するためである。
【0033】
この爪の材質は、特に限定されない。アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂又は硬質ウレタンゴム等が用いられる。これらのうちでアルミニウム、銅、真鍮、鉄が好ましく用いられる。アルミニウム、銅、真鍮は、ギヤを傷つけることが少なく、また、鉄は安価なためである。
【0034】
本願発明に係るロボットハンドは第二把持爪55を有することが好ましい。この第二把持爪55はシャフトを把持するものである。この第二把持爪55は、第一把持爪54が備える2個の爪の各々の下方に配設される。この把持爪55はシャフトが把持できれば把持方法は限定されない。これらの爪は上述のアクチュエータ58で平行移動してシャフトを2箇所で把持することが好ましい。シャフトは長尺であるため、2箇所で把持すると安定するためである。即ち、この把持爪は、2対の爪を(4個の爪55a、55b、55c、55d)備えることが好ましい(図4参照)。この爪の形状は特に限定されないが、Vヤゲン形状の切り欠き部を有することが好ましい(図1参照)。各一対の爪が4点でシャフトを把持するため、シャフトの把持が安定するためである。
【0035】
この爪の材質は、特に限定されない。アルミニウム、銅、真鍮、ステンレス、鉄等の金属、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂又は硬質ウレタンゴム等が用いられる。これらのうちでアルミニウム、銅、真鍮、鉄が好ましく用いられる。アルミニウム、銅、真鍮は、対象ワークを傷つけることが少なく、また、鉄は安価なためである。
【0036】
〔第一センサ〕
第一センサ56はロボットのハンドの基台51に設けられたセンサブラケットに取付ける(図1参照)。この第一センサは、上述のロッド52を固定するセンサ感知部59を感知する。このロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に上下するために、この第一センサは把持部がギヤを把持した際に、上記センサ感知部59を感知してロボットはギヤを把持したことを検知する(図5参照)。このロボットは、上記ギヤの把持を検知した後に次の動作に移る。
【0037】
このセンサは上記センサ感知部59を感知できればよく、その種類は限定されない。例えば、リミットスイッチ、磁石、光、赤外線及び超音波等を使用したセンサを使用できる。これらのうちでセンサ感知部を金属として、磁石を用いたセンサ又はリミットスイッチが好ましく用いられる。安価且つ確実に検知するためである。
【0038】
〔第二センサ〕
第二センサ57は、ロボットハンドの基台51に設けられたセンサブラケットの第一センサの上部に設けられる(図1参照)。上記ロッドを固定するセンサ感知部59を感知する。この第二センサが上記センサ感知部59を感知している場合は、この装置はギヤシャフトを組立て中であること示す。
【0039】
このセンサは上記センサ感知部59を感知できればよく、その種類は限定されない。例えば、リミットスイッチ、磁石、光、赤外線及び超音波等を使用したセンサを使用できる。これらのうちで第一センサと同様の磁石を用いたセンサ又はリミットスイッチが好ましく用いられる。安価且つ確実に検知するためである。
【0040】
(2)ギヤシャフト組立て台
ギヤシャフト組立て台4は、シャフトにギヤを組立てるための台である。このギヤシャフト組立て台は水平状態に設置される。水平状態とは、厳密に水平ではなくても略水平であることも含む。このギヤシャフト組立て台4は、シャフトを垂設状態に固定するためのシャフト固定部42と、この固定部に垂設されたシャフトをこの固定部とともに水平方向に回転させるための組立てアクチュエータ43とを備える(図9、図10参照)。
【0041】
〔組立てアクチュエータ〕
この組立てアクチュエータ43の駆動源は、特に限定されない。例えば空気圧、油圧、電動機及び電磁石を用いることができる。これらのうちで空気圧の駆動源を用いるものが好ましい。安価であり、且つ確実に作動するからである。このアクチュエータは、加圧空気のバルブを開いたときに、シャフト固定部42の中心点Cを軸に一定角度回転する(図10参照)。この組立てアクチュエータ43が一定角度水平回転した後、切替えバルブにより、初期位置に複動するか、又はフリー状態とすることもできる。
【0042】
上記切替えバルブは、上記ロボットと同一のコントローラを使用して、上記ロボットに連動して開閉する。この切替えバルブの作動は、後述の本願装置を用いたギヤシャフト組立て方法において説明する。このバルブが切替わって上記アクチュエータがフリーになった場合において、なお、組立てが完了していないときは、後述のロボットハンドの回転に伴って、上述の水平回転前の初期の位置まで複動する。
【0043】
〔シャフト固定部〕
このシャフト固定部42は、このシャフト固定部42に垂直に配置された上記シャフトを固定する。この垂直配置手段は特に限定されないが、好ましくは、上記ロボットハンドの備える第二把持爪55を用いて、ロボットが配置する。また、垂直配置されたシャフトの固定手段は特に限定されない。好ましくは3本爪(41a、41b、41c)のチャック41で固定する(図10参照)。安定した垂直状態を維持するためである。
【0044】
他の本願発明のギヤシャフト組立て装置は、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで第7軸として制御する同時7軸制御ロボット仕様とする。このロボットは、上記アクチュエータをよりいっそうロボット教示又はプログラムによりフレキシブルに水平回転運動させることができる。例えば、水平回転運動速度を自在に調整できるとともに、任意の角度でピッチ送りも可能である。また、上記アクチュエータの複動速度を自在に調整できる。更に、振動を与えつつ上記水平回転運動をすることも可能である。
【0045】
この同時7軸制御ロボットは、特に嵌め合いのクリアランスmが小さいとき又はスプライン部の面取りが少なくてクリアランスnが小さいときには、上述の組立て台に用いるアクチュエータよりもフレキシブルに作動できるため、特に有効である(図14、図15参照)。
【0046】
他の本願発明のギヤシャフト組立て装置は、上記シャフト組立て台4上に垂設されたシャフトを安定した状態に固定するための第二シャフト固定部45を備える(図11、図12参照)。この第二シャフト固定部は、駆動部47と1対の爪46からなり、この1対の爪46は上記駆動部47を用いて、開閉自在となっている(図11、図12参照)。この第二シャフト固定部45は、上記シャフト組立て台のシャフト固定部42が、このシャフトを垂設・固定した後に、このシャフトのスプライン部が設けられていない箇所を上記一対の爪46を閉じて固定する。通常、この第二シャフト固定部45の備える上記一対の爪46は、ロボットがギヤシャフト組立て中である場合は、閉じてこのシャフトを固定しているが、ギヤを把持したロボットハンド5がシャフトを嵌通する場合等は一旦開いて、このシャフトを開放する。その後、この爪を再度閉じてシャフトを固定する。また、シャフトギヤの組立てが完了したときは、この爪46を開いてこのギヤシャフトを開放する。
【0047】
本願発明の上記ギヤシャフト組立て装置の使用方法は、下記のとおりである。
(1)上記ギヤシャフト組立て台にシャフト2を垂直に配置する。この配置方法は特に限定されないが、本願ロボットが配置することが好ましい。このロボットのハンド5が上記シャフト2を第二把持爪55で把持して、上記ギヤシャフト組立て台4の上記シャフト固定部42に垂直・配置する。このシャフトの垂直・配置の位置は、上述のシャフト固定部を平面方向から見た中心点C(図10参照)に、上記シャフトを底面方向から見た中心位置が重なるようにする。この動作は教示プログラムで行うことができる。
【0048】
(2)上記シャフトは、上記シャフト固定部42の中心点Cに上記シャフト2が垂直に配置されたとき固定される。この固定方法は特に限定されないが、好ましくは、3本爪(41a、41b、41c)のチャック41でこのシャフトを固定して設置する(図10参照)。この動作は、上述のロボットコントローラで行うことができる。
【0049】
(3)本ロボットハンドの第一把持爪54が上記ギヤ3を把持する。図5は、本工程においてロボットハンドの第一把持爪54が上記ギヤ3を把持するときの説明図である。図5に示すように、ロボットの上記把持爪54が上記ギヤ3を把持するときに、ブラケット53のギヤ押圧部53aが上記ギヤを押圧した後、このギヤを押圧しつつ把持する。このギヤを把持したときにロッド52はハンド基台51に対して相対的に上昇する。このため、このロッドに固定されているセンサ感知部59は第一センサ56により感知され、ロボットはギヤを把持したことを検知して次の動作に移ることができる。
【0050】
上記ロボットが上記ギヤの把持を検知した後、このロボットは把持した上記ギヤを、ギヤのシャフト孔3bを上記組立て台のシャフト固定部42に垂設されたシャフト2に貫通させて、シャフトの備えるスプライン部の上端部21aに近接状態に配置する。図6は本工程の上記動作を正面から見た説明図である。また、図7は上記動作を側面から見た説明図である。上述の近接状態とはシャフトのスプライン部とギヤのスプライン部が接するほどに近くに配置する意味であって、両スプライン部が接する場合も含む。この状態に配置されたギヤ3は、なおブラケット53の押圧部53aにより押圧されている。この動作は、通常のティーチングにより行うことができる。
【0051】
(4)シャフトのスプライン部の上端部21aに近接・配置された上記ギヤをロボットはアンクランプする。このロボットが上記ギヤをアンクランプした後も、上記ブラケットはギヤを下方向に押圧し続ける。この押圧されたギヤはアンクランプされたときに両スプライン部が嵌合してギヤシャフトが組立てられるか、または組立てられずにギヤはシャフトの上端部21aにとどまる。上記嵌合してギヤシャフトが組立てられたときは、ブラケットはロボット基台51に対して相対的に下方に移動するため、第一センサ56は上記センサ感知部59を感知しない。この第一センサ56がセンサ感知部59を感知しないときに、ロボットはギヤシャフトの組立てを検知して、組立ては完了する。
【0052】
(5)上記工程でロボットが組立てを検知しない場合(第一センサ56がセンサ感知部59を感知している場合)は、このロボットは、ロボットハンド5を下方に所定位置(例えば、ギヤの厚みだけ下降させた位置、あるいは第二センサがセンサ感知部を感知できる位置等)まで移動させる。このため、このギヤ3は上記ブラケット押圧部53aにより更に下方に、ばねで強く押圧される。図8は本工程の上記動作を側面から見た説明図である。上記ロボットハンドの下方向移動において、雌雄両スプラインが嵌合する場合がある。この場合は、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降し、第一センサ56はセンサ感知部59を感知するが、第二センサ57はセンサ感知部59を感知しない。このとき、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程を終了する。
上記両スプラインが嵌合しないときは、その後、第二センサ57が上記センサ感知部59を感知する。このセンサ感知部を感知した場合は、このロボットはロボットハンド5を上記ブラケットの円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させる。このため、上記ブラケットに押圧されている上記ギヤはロボットハンドの回転に伴って水平方向に回転応力が生ずる。
【0053】
この応力のためギヤ3は、下記のいずれかの動きをする。
(a)上記ギヤは、ブラケットと供回りして、このブラケットと同一方向に水平回転する。
(b)上記ギヤは、上記ブラケットとの間に滑りをおこしつつブラケットと同一方向に回転する。
(c)上記ギヤは、上記ブラケットとの間に滑りが生じ、水平回転をしない。
本工程においては、上記ギヤの動きは上記(a)、(b)、又は(c)のいずれであってもよいが、好ましくは上記(b)の動きになるように上述のばね52aを選択する。この動きの場合には、特にスムーズに嵌合が行われる場合が多いからである。この回転方向はいずれの方向でもよい。また、一方に一定角度回転した後に反対方向に回転させてもよい。
この回転の際に両スプライン部が嵌合して組立てが完了した場合には、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降する。従って、この第二センサ57はセンサ感知部59を感知しない。このため、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程を終了する。
【0054】
(6)上記工程で、ロボットがギヤシャフトの組立て完了を検知しない場合は、組立てアクチュエータ43は、シャフト固定部42の中心位置Cを軸に水平方向に一定角度回転する。この回転方向は上記ロボットハンドの回転方向と反対方向であっても同一方向であってもよいが、反対方向に回転することが好ましい。上記回転角度は特に限定されないが、好ましくは1度から90度、更に好ましくは1度から45度、特に好ましくは2度から20度である。この範囲の回転である場合は、両スプライン部がスムーズに嵌合する場合が多いためである。
この際に両スプライン部が嵌合した場合は、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降する。このため、第二センサ57はセンサ感知部59を感知しない。よって、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程は終了する。上述のように、第二センサ57が一度センサ感知部59を感知した後は、第一センサがセンサ感知部59を感知するか否かにかかわらず、センサ感知部59を感知しなくなったときにこのロボットはギヤシャフトの組立てを検知して、ギヤシャフト組立て工程は終了する。
【0055】
(7)このロボットが上記ギヤをアンクランプし、次いで、組立てアクチュエータ43を、シャフト固定部42の中心位置Cを軸に水平方向に一定角度回転させることもできる。この動作で、両スプライン部が嵌合したときは、上述のロッド52は上記ロボットハンド5の基台51に対して相対的に下降する。よって、第一センサは、センサ感知部を感知しないため、このロボットはギヤシャフトの組み立てを検知して、ギヤシャフト組立て工程は終了する。
上記動作でギヤシャフトの組立てが完了しない場合は、次いで、ロボットハンド5を下方向に所定位置だけ移動させ、その後、上記第二センサ57がこのセンサ感知部59を感知したときに、このロボットハンド5を上記ブラケットが備える円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させることもできる。
更に、上記組立てアクチュエータ43を回転させると、同時にロボットハンド5を下方に所定位置だけ移動させ、次いで、上記第二センサ57がこのセンサ感知部59を感知したときに、このロボットハンド5を上記ブラケットが備える円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させることもできる。
【0056】
(8)上記工程で組立てが完了しない場合は、上記組立てアクチュエータ43を初期の位置に水平回転複動させる。このアクチュエータの駆動源が空気である場合には、下記のように行うことができる。上記組立てアクチュエータ43の回転方向が上記ロボットハンドと反対方向の場合は上記組立てアクチュエータ43のバルブを閉じて、空気の逃がしバルブを開く。従って、上記組立てアクチュエータ43は無拘束になり、上記ブラケットの回転に伴って、初期の位置に回転複動する。また、他の方法は切替えバルブを用いて初期の位置に回転複動することもできる。更に、上記組立てアクチュエータ43の回転方向が上記ロボットハンドと同一方向の場合は、切替えバルブを用いて初期の位置に回転複動させる。この回転複動はどの時点で行ってもよい。この複動工程でギヤとシャフトが嵌合した場合は、第二センサ57はセンサ感知部59を感知しないため、ロボットはギヤシャフトが組立てを完了したことを検知し、ギヤシャフト組立て工程は終了する。
【0057】
(9)上記工程で、ギヤシャフト組立てが完了しない場合は、回転前の初期位置に戻った上記組立てアクチュエータを再度一定角度水平回転させることができる。この回転でギヤシャフト組立てが完了しない場合は、この組立てアクチュエータの水平回転往復動を何度でも繰り返すことができる。通常は3回で終了させる。3回の往復動でギヤシャフトの組立てが完了しない場合は、ギヤ及び/又はシャフトに何らかの異常があると考えられるからである。
【0058】
他の本願発明であるギヤシャフト組立て方法は、上記組立てアクチュエータ43を同一のロボットコントローラで第7軸として制御する同時7軸制御ロボット仕様としたものを用いる。上記組立てアクチュエータ43の動作を教示又はプログラムによりフレキシブルにできるため、両スプライン部の嵌合がよりスムーズにできる。即ち、このアクチュエータの水平回転速度を自在に調整できるし、又、回転角度を任意に割り出すこともできる。
また、上記各工程の間に、ギヤシャフト組立て台の第二シャフト固定部45で、シャフトを固定する工程を挿入することもできる。この方法によれば、シャフトが長くて、組立て台のシャフト固定部42だけでは、確実な固定が困難な場合に有効である。
【実施例】
【0059】
本願発明の実施例を下記に示す。使用したロボット、シャフト及びギヤは下記のとおりである。
(1) 使用ロボット:多関節6軸ロボット
(2) シャフト:雄スプライン部を5箇所に備えるシャフト
第1スプライン部:径40.7mm(スプライン部を除いたシャフト径38.0mm)
第2スプライン部:径38.0mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
第3スプライン部:径38.0mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
第4スプライン部:径38.0mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
第5スプライン部:径37.5mm(スプライン部を除いたシャフト径35.0mm)
(3) ギヤ:5個
第1ギヤのギヤ孔:径38.6mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第2ギヤのギヤ孔:径35.8mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第3ギヤのギヤ孔:径36.0mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第4ギヤのギヤ孔:径36.0mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
第5ギヤのギヤ孔:径35.9mm(この孔に雌スプライン部がとりつけてある)
【0060】
他の仕様は下記のとおりである。
ブラケット及びブラケット押圧部の材質:アルミウム
第一センサ及び第二センサ:磁石近接スイッチ
第一爪形状:Vヤゲン形状の切込みを入れて4点でギヤを把持
【0061】
1本のシャフトには、上記第1スプライン部から第5スプライン部が順に取付けられている。この第1スプライン部に上記第1ギヤを、この第2スプライン部に上記第2ギヤを、この第3スプライン部に上記第3ギヤを、この第4スプライン部に上記第4ギヤを、この第5スプライン部に上記第5ギヤを、順次組立てていき、5個のギヤが全てシャフトに組立てられたときに組立ては完了した。上記シャフト及びギヤは、通常の乗用自動車に使用されるトランスミッションに用いられるものであって、このシャフト及びギヤのスプライン部には、通常の面取り加工がしてある。シャフト160本、ギヤ800個を用いて図16の動作図にしたがってギヤシャフトの組立てを行った。
【0062】
結果は下記の表のとおりである。E工程を3回繰り返しても組立てが完了しないものは、組立て不能とした。本実施例ではシャフト160本は全て組立てが完成した。
また、1本のシャフトの組立て時間は平均50秒であった。この結果,B工程及びC工程でほとんどのギヤとシャフトが嵌合していることが分かる。1本のシャフトの組立て完了時間は平均50秒であり、人間により行う場合に比較して同等又はそれ以上の能率であることが分かる。
【0063】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係るロボットハンドの正面図である。
【図2】本発明に係るロボットハンドの側面図である。
【図3】本発明に係るロボットハンドの平面図である。
【図4】本発明に係るロボットハンドの底面図である。
【図5】ギヤを把持するときの模式説明図である。
【図6】ギヤをアンクランプするときの模式正面説明図である。
【図7】ギヤをアンクランプするときの模式側面説明図である。
【図8】ハンドを回転させるときの模式説明図である。
【図9】本発明に係るギヤシャフト組立て台の正面図である。
【図10】本発明に係るギヤシャフト組立て台の平面図である。
【図11】本発明に係る第二シャフト固定部を有するギヤシャフト組立て台の正面図である。
【図12】本発明に係る第二シャフト固定部の爪を開いた状態の平面図である。
【図13】本発明に係るギヤシャフトの分解説明図である。
【図14】本発明に係るギヤ及びシャフトのスプライン部に面取りが無い場合の嵌合説明図である。
【図15】本発明に係るギヤ及びシャフトのスプライン部に面取りがある場合の嵌合説明図である。
【図16】実施例の動作図である。
【符号の説明】
【0065】
1.ギヤシャフト、2.シャフト、2a.雄スプライン部、3.ギヤ、3a.雌スプライン部、4.組立て台、41.チャック、42.シャフト固定部、43.組立てアクチュエータ、45.第二シャフト固定部、5.ロボットハンド、52.ロッド、52a.ばね、53.ブラケット、 53a.ギヤ押圧部、54.第一把持爪、55.第二把持爪、56.第一センサ、57.第二センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に雄スプライン部(2a)を設けたシャフト(2)とシャフト孔の内周面に雌スプライン部(3a)を設けたギヤ(3)を嵌合してなるギヤシャフト(1)を組立てる装置であって、該装置はロボットとギヤシャフト組立て台(4)とからなり、
上記ロボットのハンド(5)は、
上記ロボットのハンドの基台(51)に、ばねを備えた2個のロッド(52)を介して取り付けられた上下動自在であり、且つ上記シャフトが嵌通可能な円形孔と円筒形状のギヤ押圧部(53a)を有するブラケット(53)と、
上記ブラケットの下部に配設され、該ブラケットのギヤ押圧部(53a)で押圧しつつ上記ギヤを把持する把持爪(54)と、
上記把持されたギヤの有無を検知するための第一センサ(56)と、
組立て完了を検知するための第二センサ(57)と、を備え、
上記ギヤシャフト組立て台(4)は、
上記シャフトを垂設するためのシャフト固定部(42)と、
上記シャフトを上記シャフト固定部(42)と共に水平方向に回転させる組立てアクチュエータ(43)と、を備え、
上記ロボットと上記ギヤシャフト組立て台は、同一のロボットコントローラで制御されることを特徴とするギヤシャフト組立て装置。
【請求項2】
上記ロボットのハンド(5)は、上記シャフトを把持する第二把持爪(55)を有する請求項1記載のギヤシャフト組立て装置。
【請求項3】
上記ロボットは、上記組立てアクチュエータ(43)を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである請求項1又は請求項2記載のギヤシャフト組立て装置。
【請求項4】
上記ギヤシャフト組立て台(4)は、上記シャフトを垂設状態に固定するための第二シャフト固定部(45)を備える請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のギヤシャフト組立て装置。
【請求項5】
請求項1記載のギヤシャフト組立て装置を用いて、外周面に雄スプライン部(2a)を設けたシャフト(2)とシャフト孔の内周面に雌スプライン部(3a)を設けたギヤ(3)とをスプライン嵌合して組立てるギヤシャフト組立て方法であって、
(A)上記ロボットが、上記ギヤ(3)を上記ロボットのハンド(5)の備える上記ブラケット(53)のギヤ押圧部(53a)で、該ギヤを押圧しつつ把持する工程と、
(B)上記ロボットが、把持した上記ギヤ(3)を移動し、該ギヤのシャフト孔及び上記ギヤ押圧部(53a)に上記ギヤシャフト組立て台に垂設された上記シャフト(2)を嵌通させ、上記シャフト(2)のスプライン上端部と上記ギヤのスプライン下端部の近接する位置でアンクランプする工程と、
(C)上記ロボットは、上記ロボットのハンド(5)を所定位置まで下方向に移動させ、上記アンクランプしたギヤ(3)を、上記ブラケット(53)の押圧部(53a)で押圧しつつ、上記ロボットのハンド(5)を上記ブラケットの円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させる工程と、
(D)上記ギヤシャフト組立て台(4)が備える上記組立てアクチュエータ(43)は、上記ギヤシャフト組立て台(4)の備える上記シャフト固定部(42)の平面中心点を軸として、上記シャフトを水平方向に回転させる工程と、
を備え、上記ロボットが上記(B)から(D)のいずれかの工程でギヤシャフトの組立て完了を検知した場合は、上記ギヤシャフトの組立て完了を検知した工程でギヤシャフトの組立てを完了することを特徴とするギヤシャフト組立て方法。
【請求項6】
上記工程が(A)、(B)、(C)、(D)の順である請求項5記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項7】
上記工程が(A)、(B)、(D)、(C)の順である請求項5記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項8】
更に、上記(C)工程で水平方向に回転させたシャフトを回転前の位置に複動させる(E)工程を備える請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項9】
上記ロボットが上記シャフト(2)を(A)工程の前に上記ギヤシャフト組立て台(4)に垂設する工程を備える請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項10】
上記組立て装置のロボットが、上記組立てアクチュエータ(43)を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである請求項5乃至請求項9のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項1】
外周面に雄スプライン部(2a)を設けたシャフト(2)とシャフト孔の内周面に雌スプライン部(3a)を設けたギヤ(3)を嵌合してなるギヤシャフト(1)を組立てる装置であって、該装置はロボットとギヤシャフト組立て台(4)とからなり、
上記ロボットのハンド(5)は、
上記ロボットのハンドの基台(51)に、ばねを備えた2個のロッド(52)を介して取り付けられた上下動自在であり、且つ上記シャフトが嵌通可能な円形孔と円筒形状のギヤ押圧部(53a)を有するブラケット(53)と、
上記ブラケットの下部に配設され、該ブラケットのギヤ押圧部(53a)で押圧しつつ上記ギヤを把持する把持爪(54)と、
上記把持されたギヤの有無を検知するための第一センサ(56)と、
組立て完了を検知するための第二センサ(57)と、を備え、
上記ギヤシャフト組立て台(4)は、
上記シャフトを垂設するためのシャフト固定部(42)と、
上記シャフトを上記シャフト固定部(42)と共に水平方向に回転させる組立てアクチュエータ(43)と、を備え、
上記ロボットと上記ギヤシャフト組立て台は、同一のロボットコントローラで制御されることを特徴とするギヤシャフト組立て装置。
【請求項2】
上記ロボットのハンド(5)は、上記シャフトを把持する第二把持爪(55)を有する請求項1記載のギヤシャフト組立て装置。
【請求項3】
上記ロボットは、上記組立てアクチュエータ(43)を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである請求項1又は請求項2記載のギヤシャフト組立て装置。
【請求項4】
上記ギヤシャフト組立て台(4)は、上記シャフトを垂設状態に固定するための第二シャフト固定部(45)を備える請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のギヤシャフト組立て装置。
【請求項5】
請求項1記載のギヤシャフト組立て装置を用いて、外周面に雄スプライン部(2a)を設けたシャフト(2)とシャフト孔の内周面に雌スプライン部(3a)を設けたギヤ(3)とをスプライン嵌合して組立てるギヤシャフト組立て方法であって、
(A)上記ロボットが、上記ギヤ(3)を上記ロボットのハンド(5)の備える上記ブラケット(53)のギヤ押圧部(53a)で、該ギヤを押圧しつつ把持する工程と、
(B)上記ロボットが、把持した上記ギヤ(3)を移動し、該ギヤのシャフト孔及び上記ギヤ押圧部(53a)に上記ギヤシャフト組立て台に垂設された上記シャフト(2)を嵌通させ、上記シャフト(2)のスプライン上端部と上記ギヤのスプライン下端部の近接する位置でアンクランプする工程と、
(C)上記ロボットは、上記ロボットのハンド(5)を所定位置まで下方向に移動させ、上記アンクランプしたギヤ(3)を、上記ブラケット(53)の押圧部(53a)で押圧しつつ、上記ロボットのハンド(5)を上記ブラケットの円形孔の平面中心点を軸として水平方向に回転させる工程と、
(D)上記ギヤシャフト組立て台(4)が備える上記組立てアクチュエータ(43)は、上記ギヤシャフト組立て台(4)の備える上記シャフト固定部(42)の平面中心点を軸として、上記シャフトを水平方向に回転させる工程と、
を備え、上記ロボットが上記(B)から(D)のいずれかの工程でギヤシャフトの組立て完了を検知した場合は、上記ギヤシャフトの組立て完了を検知した工程でギヤシャフトの組立てを完了することを特徴とするギヤシャフト組立て方法。
【請求項6】
上記工程が(A)、(B)、(C)、(D)の順である請求項5記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項7】
上記工程が(A)、(B)、(D)、(C)の順である請求項5記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項8】
更に、上記(C)工程で水平方向に回転させたシャフトを回転前の位置に複動させる(E)工程を備える請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項9】
上記ロボットが上記シャフト(2)を(A)工程の前に上記ギヤシャフト組立て台(4)に垂設する工程を備える請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【請求項10】
上記組立て装置のロボットが、上記組立てアクチュエータ(43)を同一のロボットコントローラで制御する同時7軸制御ロボットである請求項5乃至請求項9のいずれかに記載のギヤシャフト組立て方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−113167(P2009−113167A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290345(P2007−290345)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(507370002)有限会社IKD (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(507370002)有限会社IKD (3)
【Fターム(参考)】
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