クエンチ制御された高温超伝導体
【課題】高温超伝導体コンポーネントの表面全体を分路で覆う必要がなく、ホットスポット形成から保護された、複数の用途に適した大きな高温超伝導体コンポーネントを提供する。
【解決手段】本発明による高温超伝導体(1)は、予め定めた弱い箇所を形成するために、表面に少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域を備え、前記減少した壁厚を有する領域に電気的分路(6)を備えたことを特徴とする。一実施形態によれば、前記少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域は、前記高温超伝導体コンポーネントの表面における凹部である。
【解決手段】本発明による高温超伝導体(1)は、予め定めた弱い箇所を形成するために、表面に少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域を備え、前記減少した壁厚を有する領域に電気的分路(6)を備えたことを特徴とする。一実施形態によれば、前記少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域は、前記高温超伝導体コンポーネントの表面における凹部である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された仕方でクエンチすることが可能で、局所的な焼損から保護される高温超伝導体(hts)コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
高温超伝導体は、それぞれの高温超伝導体材料に特有の、臨界温度と称される温度以下に冷却されたときに、損失なしに電流を搬送する性質を特徴とする。この特有の性質により、高温超伝導体は、hts変圧器、巻き線、磁石、限流器、リード線(electrical leads)など、広い範囲の応用分野で有利に使用される。
【0003】
温度が上昇すると、hts材料は、通常の伝導状態へ遷移する。この遷移は、「クエンチング」(quenching)と呼称される。通常の伝導状態において、超伝導体材料は、高いオーム特性を有する。この効果は限流器(fault current limiters)に使用される。
【0004】
冷却されたhms材料に加えられる磁界または電流が、該hms材料がクエンチし、通常の伝導状態となる、それぞれの臨界値(それぞれ、臨界磁界Bcおよび臨界電流Ic)まで増加されると、同じ効果が達せられる。これらの効果またはこれらの効果の組み合わせは、たとえば、hms材料に基づく自己制御限流器を設計するのに使用される。
【0005】
しかし、hms材料に大きな電流を加えると、hms材料の破壊に至ることもある熱機械的な問題が、頻繁に生じる。通常、セラミクスの性質を有するhms材料は、実際には、完全に均質ではなく、ブローホール、ブリスター(blister)および孔(pores)や、非超伝導性を有する相(第2相)や小さなクラック(マイクロクラック)などの材料中の異質部分(inhomogeneities)を示す。そのような異質部分の幾何学的な大きさは、およそ、マイクロメータからミリメータのサイズである。このような異質部分の領域は、臨界温度、臨界電流および臨界磁界などの超伝導特性が、欠陥のない領域と異なっている。この結果、冷却された高温超伝導体に電流を流す際に、材料の異質部分の領域が局所的に通常伝導状態に変化することがある。この領域において局所的に抵抗が増加すると、hms材料の周囲の領域を流れる電流が過度に増加する。このように局所的に電流が増加することに伴って、熱が発生する。つぎに、加熱された領域は、温度上昇によりクエンチを開始する。このプロセスは、自らトリガーがかかり、急激に進行し、最終的に、熱機械的応力により、hms材料内にクラックが形成されるに至る。最終段階において、該クラックにおいてアークが発生することもあり(約10000K)、局所的な溶融により、加熱された領域(ホットスポット)の周囲の全領域が破壊される結果となる。全プロセスは異常に短く、約60ミリ秒以内に起こる。
【0006】
このようなホットスポットの形成を避けるために、hmsコンポーネントに、分路(shunt)と称される電気的バイパスを設けることが知られている。このようなバイパスは、hmsコンポーネントの表面に塗布された銀などの導電性の金属の層であってもよい。hms材料またはその一部がクエンチを開始し、抵抗性となった場合に、過電流が生じると、過剰な電流は分路へバイパスされ、結果としてホットスポットの形成は避けられる。
【0007】
しかし、たとえば、ロッドやチューブなどの大きな(bulk)hmsコンポーネントにおいて、hmsコンポーネント全体を、ホットスポットの形成から効果的に保護するには、バイパスがhmsコンポーネントの全表面を覆い、全周を囲む必要がある。そうしないと、バイパスによって覆われていない領域において、ホットスポット形成のリスクが残る。
【0008】
他方、分路によって全周が覆われると、分路材料に分路循環電流が誘導されることがある。このような循環電流は、hmsコンポーネントおよびhmsコンポーネントがそれぞれその一部であるアプリケーションの性能を損なうことがある、磁界や熱を発生するので望ましくない。
【0009】
大きなhmsコンポーネントに加えて、薄膜の超伝導体コンポーネントが知られている。一般に、薄膜超伝導体は、超伝導体材料の薄い層がその上につけられた基板からなるワイヤやテープである。大きな構造と同様に、過剰な電流をバイパスするために、hms層を分路で覆うことができる。
【0010】
特許文献1は、障害が発生した場合に、ホットスポットを形成することなく、制御された仕方でクエンチするように設計された薄膜超伝導体限流器に関する。
【0011】
テープの長手方向に沿って、くびれ(constriction)と称される、減少した幅の領域が設けられ、テープの通常の幅の領域から分離される。くびれおよびくびれの間の領域における超伝導体層の断面と長さを適切に選択すると、故障事象の初期期間において、複数のくびれ部分が同時にクエンチする。したがって、放散される電力が一領域のみに集中するのが防止される。さらに、くびれおよびくびれの間の領域両方のバイパス層の厚さを変化させることによって、初期期間においてくびれが電力を放散し、くびれの間の領域は、より長い時間を経た場合にのみ通常の伝導状態となるように、抵抗を調整することができる。ここで、分路層は、hts層を、全幅にわたって覆う。
【0012】
同様に、特許文献2は、超伝導体の伸びる方向に沿って、規則的に、減少した断面を有する複数の領域を設けることを提案している。故障電流の場合、減少した断面を有するこれらの領域は、故障事象の初期の期間において既に同時にクエンチし、過剰の電流を制限する。故障の際に、減少した断面を有する上記の領域で発生した熱は、上記の領域の間の領域に広がり、上記の間の領域の均一なクエンチを促進する。分路は開示されていない。
【0013】
特許文献3は、薄膜超伝導体限流器に関係し、均一なクエンチの促進に関係する。超伝導体層の表面全体にわたり、人工的な弱い箇所が分布されている。これらの弱い箇所は、たとえば、不純物をドープすることによって、臨界電流密度を減少させることや、層厚さを減少させることによって生成することができる。過剰な電流をバイパスさせ、発生した熱の広がりを促進させるために、テープの全表面は、分路材料によって覆われる。
【0014】
上記の文献のいずれも、大きなhtsコンポーネントの表面全体を覆う分路に関連する問題を扱っていない。
【特許文献1】欧州特許 EP1383178
【特許文献2】日本特許 JP5022855(特開平5-22855号)
【特許文献3】ドイツ特許 DE10014197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、異質部分の領域における、大きな超伝導体の、制御されないホットスポットの形成や、局所的な焼損を避けることである。本発明の課題は、特に、htsコンポーネントの表面全体を分路で覆う必要がなく、ホットスポット形成から保護された、複数の用途に適した大きなhtsコンポーネントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の課題は、少なくとも一つの減少した壁厚の領域を備え、該少なくとも一つの減少した壁厚の領域に電気的分路を備えた高温超伝導体コンポーネントによって解決される。
【0017】
上記の減少した壁厚の領域は、一般的に、高温超伝導体コンポーネントの表面における凹部である。該凹部は、htsコンポーネントの表面において、少なくとも部分的に伸びる線状の形状を有するのが好ましい。
【0018】
本発明は、セラミクス性の、大きな高温超伝導体に特に有用である。そのような大きなセラミクスは、たとえば、静水圧圧縮(isostatic compression)などの圧縮や、溶融鋳造(melt casting)プロセスによって得られる。
【0019】
大きなコンポーネントは、高温超伝導体材料で全て満たされた高温超伝導体コンポーネントの断面を備える塊であってもよい。しかし、高温超伝導体コンポーネントは、中空であってもよく、換言すれば、該コンポーネントの断面は、高温超伝導体材料で囲まれた、自由面(free surface)を備える。本発明の範囲において、塊および中空の高温超伝導体コンポーネントを使用することができる。好ましい実施形態においては、チューブまたはロッドとして設計してもよい。適切な高温超伝導体コンポーネントの例は、たとえば、WO00/08657に記載されている。
【0020】
本発明には、どのようなセラミックス酸化物高温超伝導体も使用することができる。セラミックス酸化物高温超伝導体は、ビスマス・ベース、タリウム・ベース、イットリウム・ベース、および水銀ベースのセラミックス酸化物高温超伝導体からなるグループから選択するのが好ましい。典型的な例は、Bi-Ae-Cu-O, (Bi, Pb)-Ae-Cu-O, (Y, Re)-Ae-Cu-Oまたは (Tl, Pb)-Ae, Y)-Cu-OまたはHg-Ae-Cu-Oをベースとするセラミックス酸化物高温超伝導体を含む。上記の化学式において、Aeは、少なくとも一つのアルカリ土金属類元素、特にBa, Caおよび/またはSrである。Reは、少なくとも一つの希土類元素であり、特にY、またはY, La, Lu, Sc, Se, Nd または Ywのうちの2以上の組み合わせである。
【0021】
特に、適切なセラミックス酸化物高温超伝導体は、リファレンスBSCCO-2212, BSCCO-2223によって知られるものであり、数値の組み合わせ2212および2223は、元素Bi, Sr, Ca およびCuの化学量論の比を表し、Biの一部は、Pbで置換できる。また、リファレンスYBCO-123 および YBCO-211によって知られるものであり、数値の組み合わせ123および211は、元素Y, BaおよびCuの化学量論の比を表す。
【0022】
以下において、本発明は図面を参照して詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示したダイアグラムは、超伝導体材料の超伝導状態における電流密度、温度および磁界の相互依存性を示す。臨界電流Ic、臨界温度Tcおよび臨界磁界Bcの少なくとも一つを超えると、超伝導体材料は、抵抗性となり通常の伝導状態へ変わる。
【0024】
「臨界J-B-T面」は、その外側において材料が超伝導状態ではない外側境界を表す。結果として、臨界J-B-T面で囲まれた体積は、超伝導体材料に対する超伝導領域を表す。
【0025】
図2乃至4は、焼損に至るホットスポットの形成の過程を図によって示す。図2は、異質部分の領域2(またはホットスポット)を有する、プレート形状の高温超伝導体1を示す。電流の流れおよび電流の分布は、流れ線3によって、電流の流れの方向は矢印によって表される。図2、または、特に、図2によるプレートの垂直断面である図3によってわかるように、異質部分2の下部または上部の領域4において、流れ線3の密度は増加し、その結果領域4の加熱が増加する。図において、加熱が増加した領域4は、異質部分2の上部または下部の陰影を付した領域として表される。図4において、加熱が進むことによって、既にクラックが形成されている。
【0026】
図5乃至8は、異質部分を有する領域における材料の、上記のような損傷を避けるための、本発明の原理を図によって示す。図5に示すように、プレート形状の高温超伝導体コンポーネント1は、壁厚を減少させることによって局所的に薄くなっている。壁厚を減少させるために、材料の表面に凹部を設ける。凹部は、縞形状、線形状または類似の形状であってもよい。
【0027】
所定の領域において、大幅に減少された壁厚d1は、壁厚の減少に応じて、凹部の下部の流れ線3の密度を増加させる。この結果、過電流の場合に、高温超伝導体コンポーネントは、減少された壁厚を有する上記領域において、クエンチを開始する。減少された壁厚d1に比較すると、壁厚d2を有する領域内のどのような異質部分も、初期のクエンチ、すなわちホットスポットの形成に対して有効ではない。
【0028】
たとえば、幹線短絡による過電流の場合に、減少された壁厚を有する上記領域は、加熱し、減少された壁厚を有する領域は、htsコンポーネント内において、予め定められた弱い箇所を形成する。
【0029】
クラック形成および最終的に起こり得る材料の破壊に至る過度の加熱を避けるために、本発明によれば、電気的バイパスとして、分路を設けるのが好ましい。たとえば、図7に示すように、十分な抵抗を有する材料の分路を凹部内にバイパスとして設けることができる。図示した本実施形態において、分路はワイヤとして設計されている。
【0030】
以下において、図7および8を参照して、本発明の動作モードを説明する。
【0031】
図7に表すように、比較的低い電流において、流れ線の密度は、分路材料の下部において増加し、結果としてこの領域が加熱される。さらに加熱すると、すなわち、超伝導断面が減少すると、電流は分路材料の中へ向かい(commutate)、高温超伝導体材料は、さらに加熱されることから保護され、結果として、破壊から保護される(図8)。電流が増加した場合も、同じである。
【0032】
本発明は、原理的に、どのような形状の大きな超伝導体コンポーネントにも適用することができ、特定の幾何学的形状に制約されない。
【0033】
説明のために、超伝導体コンポーネントがチューブである図9および10を参照する。チューブの外面において、チューブの周の周りに複数の線状の凹部5が備わる。ここで、線は、チューブの長手方向の軸に沿って、一方の端部から反対側の端部まで伸びている。分路材料が凹部5を満たしており、好ましくは、たとえば、以下に参照されるようにはんだ付けによって、チューブに固定される。
【0034】
本発明に対しては、原理的に、超伝導体コンポーネントにおける過剰な電流をバイパスさせるための分路に適したどのような材料も、本発明の電気的分路として使用することができる。電気的分路に適した材料は、通常の動作の場合、すなわち、hts材料が超伝導状態であるときに、hts材料に関して十分に高い抵抗を有し、その結果、電流は分路に向けられない。他方、過電流の場合において、hts材料が抵抗性となったときには、分路電流の抵抗は十分に小さく、その結果、電流は分路にバイパスされる。
【0035】
適した材料の例は、たとえば、銅ニッケル10、銅ニッケル20、銅ニッケル30などの銅ニッケル合金や、たとえば、20%のニッケル、20%のマンガン、残余が銅であるLV−7などの銅ニッケル・マンガン合金や他の金属である。
【0036】
分路の断面はどのような幾何学的形状であってもよい。例としては、矩形の断面を有するテープ、丸い断面、楕円の断面、台形の断面を有するワイヤなどがある。凹部の表面と分路の外側面との接触をよくするように、幾何学的形状の条件は、互いに適合せせる必要がある。
【0037】
たとえば、適切なはんだ付け方法によって、分路と高温超伝導体材料との間の電気的な接触をよくすることができる。このために、最初の段階において、減少された壁厚の領域内に、金属被覆された面を生成する。たとえば、スプレーや、ブラシによる塗布や、浸すことなどによって、上記の領域内において、たとえば、銀などの適切な金属を塗布することによって、表面を金属被覆することができる。上記領域における接触抵抗を小さくするために、金属被服に続いて、該金属は、熱プロセスによって高温材料への焼き込みが行われる。
【0038】
たとえば、BSCCO−2212の場合、焼き込みは、約850℃で行うことができる。明らかなように、温度などの焼き込み段階の特定の条件は、材料によって変化しうるが、通常の手順で適切な条件を選択することができる。
【0039】
流れ線3によって示される、hts材料の中を流れる電流の方向に対する分路の向きに関して制約はない。たとえば、図9および10に示されるチューブを参照すると、電流の流れの方向が、チューブの長手方向の軸に平行である場合に、分路の通過方向(pass way)は、たとえば、流れ線に平行、垂直または任意の傾きを有するなど、いずれであってもよい。分路の位置および通過方向に関して、電流の流れが、htsチューブの半径方向である場合も、同じことが当てはまる。
【0040】
凹部の数および大きさは、必要に応じて選択することができる。凹部は、htsコンポーネントの全表面にわたり、分路によって覆われていない領域内で望ましくないホットスポットの形成を避けるのに、十分な距離をおいて分布されるのが好ましい。
【0041】
断面の減少の大きさ(すなわち、凹部の深さ)を定めるには、減少された断面積の領域は、予め定められた弱い箇所として機能することに留意する必要がある。したがって、断面の減少の大きさは、個別のコンポーネントに存在する異質部分を補償するように選択され、どのようなコンポーネントに対しても、材料中の異質部分を考慮して、個別に定める必要がある。たとえば、本明細書で参照する実施形態においては、断面は約25%から30%減少された。
【0042】
分路によって覆われる領域および分布を定める際には、向けられる電流(commutating current)によって生じる分路材料の加熱の大きさを考慮する必要がある。すなわち、覆われる領域および分布は、特に、分路材料および/またははんだの溶融を避けるように、加熱を制御するのに十分でなければならない。上記に参照した基準を考慮して、どのような個別のコンポーネントに対しても、十分な断面の減少や分路によって覆われる領域および分布の選択を容易に実行することができる。
【0043】
図11は、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態によれば、上記に参照した電気的分路6に加えて、電気的分路6に接続された別の分路7を設けることができる。この別の分路7は、高熱伝導性の材料からなり、「熱的分路」と呼称される。このような熱的分路7を設けることにより、熱の除去が促進される。
【0044】
熱的分路として適切な熱伝導性の材料の例は、銅、アルミニウムまたは同様の熱伝導性を有する任意の他の材料である。
【0045】
図11に示すように、htsコンポーネント1、ここでは、BSCCO−2212からなるチューブは、全周にわたり凹部5を備える。凹部5は、電気的分路6で満たされ、その上に熱的分路7が備わる。
【0046】
環状分路6の長手方向の大きさは、チューブ1の全長に比較して小さいので、誘導されうる循環電流の影響は無視できる。
【0047】
htsコンポーネントを機械的に安定化させるために、チューブ形状のhtsコンポーネント1の外側面の周りに備わる補強手段8が示されている。このような補強手段および材料は、当該技術分野において一般的に知られている。たとえば、図11の実施形態において、補強手段8は、たとえば、ガラス強化炭素(glass reinforced carbon)からなる補強チューブであってもよい。
【0048】
図11に示すように、熱的分路7の表面は、熱をよりよく取り除くために増加された表面積を有してもよい。たとえば、表面積を増加させるために、裂け目(rip)などを備えてもよい。表面積増加手段を9で示す。
【0049】
本発明は、電流の流れの流れ線を、電気的バイパスに向けることによって、望ましくないホットスポットの形成から保護されたhtsコンポーネントに関する。電気的バイパスに向ける程度は、htsコンポーネントの壁厚の傾き(gradient)によって制御される。
【0050】
本発明の高温超伝導体コンポーネントは、hts変圧器、巻き線、磁石、限流器、リード線(electrical leads)など、広い範囲の応用分野で適切に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】T、BおよびJ軸を伴う相ダイアグラムにおける面プロットを示す図である。
【図2】プレート状の高温超伝導体における、焼損に至るホットスポットの形成の過程を示す図である。
【図3】プレート状の高温超伝導体における、焼損に至るホットスポットの形成の過程を示す図である。
【図4】プレート状の高温超伝導体における、焼損に至るホットスポットの形成の過程を示す図である。
【図5】予め定めた弱い箇所を備えるプレート状の高温超伝導体を示す図である。
【図6】予め定めた弱い箇所を備えるプレート状の高温超伝導体を示す図である。
【図7】本発明によるプレート状の高温超伝導体を示す図である。
【図8】図7による高温超伝導体における電流密度の分布を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・htsコンポーネント、2・・・異質部分、3・・・流れ線、4・・・加熱領域、5・・・凹部、6・・・電気的分路、7・・・熱的分路、8・・・補強材料、9・・・表面増強手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された仕方でクエンチすることが可能で、局所的な焼損から保護される高温超伝導体(hts)コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
高温超伝導体は、それぞれの高温超伝導体材料に特有の、臨界温度と称される温度以下に冷却されたときに、損失なしに電流を搬送する性質を特徴とする。この特有の性質により、高温超伝導体は、hts変圧器、巻き線、磁石、限流器、リード線(electrical leads)など、広い範囲の応用分野で有利に使用される。
【0003】
温度が上昇すると、hts材料は、通常の伝導状態へ遷移する。この遷移は、「クエンチング」(quenching)と呼称される。通常の伝導状態において、超伝導体材料は、高いオーム特性を有する。この効果は限流器(fault current limiters)に使用される。
【0004】
冷却されたhms材料に加えられる磁界または電流が、該hms材料がクエンチし、通常の伝導状態となる、それぞれの臨界値(それぞれ、臨界磁界Bcおよび臨界電流Ic)まで増加されると、同じ効果が達せられる。これらの効果またはこれらの効果の組み合わせは、たとえば、hms材料に基づく自己制御限流器を設計するのに使用される。
【0005】
しかし、hms材料に大きな電流を加えると、hms材料の破壊に至ることもある熱機械的な問題が、頻繁に生じる。通常、セラミクスの性質を有するhms材料は、実際には、完全に均質ではなく、ブローホール、ブリスター(blister)および孔(pores)や、非超伝導性を有する相(第2相)や小さなクラック(マイクロクラック)などの材料中の異質部分(inhomogeneities)を示す。そのような異質部分の幾何学的な大きさは、およそ、マイクロメータからミリメータのサイズである。このような異質部分の領域は、臨界温度、臨界電流および臨界磁界などの超伝導特性が、欠陥のない領域と異なっている。この結果、冷却された高温超伝導体に電流を流す際に、材料の異質部分の領域が局所的に通常伝導状態に変化することがある。この領域において局所的に抵抗が増加すると、hms材料の周囲の領域を流れる電流が過度に増加する。このように局所的に電流が増加することに伴って、熱が発生する。つぎに、加熱された領域は、温度上昇によりクエンチを開始する。このプロセスは、自らトリガーがかかり、急激に進行し、最終的に、熱機械的応力により、hms材料内にクラックが形成されるに至る。最終段階において、該クラックにおいてアークが発生することもあり(約10000K)、局所的な溶融により、加熱された領域(ホットスポット)の周囲の全領域が破壊される結果となる。全プロセスは異常に短く、約60ミリ秒以内に起こる。
【0006】
このようなホットスポットの形成を避けるために、hmsコンポーネントに、分路(shunt)と称される電気的バイパスを設けることが知られている。このようなバイパスは、hmsコンポーネントの表面に塗布された銀などの導電性の金属の層であってもよい。hms材料またはその一部がクエンチを開始し、抵抗性となった場合に、過電流が生じると、過剰な電流は分路へバイパスされ、結果としてホットスポットの形成は避けられる。
【0007】
しかし、たとえば、ロッドやチューブなどの大きな(bulk)hmsコンポーネントにおいて、hmsコンポーネント全体を、ホットスポットの形成から効果的に保護するには、バイパスがhmsコンポーネントの全表面を覆い、全周を囲む必要がある。そうしないと、バイパスによって覆われていない領域において、ホットスポット形成のリスクが残る。
【0008】
他方、分路によって全周が覆われると、分路材料に分路循環電流が誘導されることがある。このような循環電流は、hmsコンポーネントおよびhmsコンポーネントがそれぞれその一部であるアプリケーションの性能を損なうことがある、磁界や熱を発生するので望ましくない。
【0009】
大きなhmsコンポーネントに加えて、薄膜の超伝導体コンポーネントが知られている。一般に、薄膜超伝導体は、超伝導体材料の薄い層がその上につけられた基板からなるワイヤやテープである。大きな構造と同様に、過剰な電流をバイパスするために、hms層を分路で覆うことができる。
【0010】
特許文献1は、障害が発生した場合に、ホットスポットを形成することなく、制御された仕方でクエンチするように設計された薄膜超伝導体限流器に関する。
【0011】
テープの長手方向に沿って、くびれ(constriction)と称される、減少した幅の領域が設けられ、テープの通常の幅の領域から分離される。くびれおよびくびれの間の領域における超伝導体層の断面と長さを適切に選択すると、故障事象の初期期間において、複数のくびれ部分が同時にクエンチする。したがって、放散される電力が一領域のみに集中するのが防止される。さらに、くびれおよびくびれの間の領域両方のバイパス層の厚さを変化させることによって、初期期間においてくびれが電力を放散し、くびれの間の領域は、より長い時間を経た場合にのみ通常の伝導状態となるように、抵抗を調整することができる。ここで、分路層は、hts層を、全幅にわたって覆う。
【0012】
同様に、特許文献2は、超伝導体の伸びる方向に沿って、規則的に、減少した断面を有する複数の領域を設けることを提案している。故障電流の場合、減少した断面を有するこれらの領域は、故障事象の初期の期間において既に同時にクエンチし、過剰の電流を制限する。故障の際に、減少した断面を有する上記の領域で発生した熱は、上記の領域の間の領域に広がり、上記の間の領域の均一なクエンチを促進する。分路は開示されていない。
【0013】
特許文献3は、薄膜超伝導体限流器に関係し、均一なクエンチの促進に関係する。超伝導体層の表面全体にわたり、人工的な弱い箇所が分布されている。これらの弱い箇所は、たとえば、不純物をドープすることによって、臨界電流密度を減少させることや、層厚さを減少させることによって生成することができる。過剰な電流をバイパスさせ、発生した熱の広がりを促進させるために、テープの全表面は、分路材料によって覆われる。
【0014】
上記の文献のいずれも、大きなhtsコンポーネントの表面全体を覆う分路に関連する問題を扱っていない。
【特許文献1】欧州特許 EP1383178
【特許文献2】日本特許 JP5022855(特開平5-22855号)
【特許文献3】ドイツ特許 DE10014197
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、異質部分の領域における、大きな超伝導体の、制御されないホットスポットの形成や、局所的な焼損を避けることである。本発明の課題は、特に、htsコンポーネントの表面全体を分路で覆う必要がなく、ホットスポット形成から保護された、複数の用途に適した大きなhtsコンポーネントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の課題は、少なくとも一つの減少した壁厚の領域を備え、該少なくとも一つの減少した壁厚の領域に電気的分路を備えた高温超伝導体コンポーネントによって解決される。
【0017】
上記の減少した壁厚の領域は、一般的に、高温超伝導体コンポーネントの表面における凹部である。該凹部は、htsコンポーネントの表面において、少なくとも部分的に伸びる線状の形状を有するのが好ましい。
【0018】
本発明は、セラミクス性の、大きな高温超伝導体に特に有用である。そのような大きなセラミクスは、たとえば、静水圧圧縮(isostatic compression)などの圧縮や、溶融鋳造(melt casting)プロセスによって得られる。
【0019】
大きなコンポーネントは、高温超伝導体材料で全て満たされた高温超伝導体コンポーネントの断面を備える塊であってもよい。しかし、高温超伝導体コンポーネントは、中空であってもよく、換言すれば、該コンポーネントの断面は、高温超伝導体材料で囲まれた、自由面(free surface)を備える。本発明の範囲において、塊および中空の高温超伝導体コンポーネントを使用することができる。好ましい実施形態においては、チューブまたはロッドとして設計してもよい。適切な高温超伝導体コンポーネントの例は、たとえば、WO00/08657に記載されている。
【0020】
本発明には、どのようなセラミックス酸化物高温超伝導体も使用することができる。セラミックス酸化物高温超伝導体は、ビスマス・ベース、タリウム・ベース、イットリウム・ベース、および水銀ベースのセラミックス酸化物高温超伝導体からなるグループから選択するのが好ましい。典型的な例は、Bi-Ae-Cu-O, (Bi, Pb)-Ae-Cu-O, (Y, Re)-Ae-Cu-Oまたは (Tl, Pb)-Ae, Y)-Cu-OまたはHg-Ae-Cu-Oをベースとするセラミックス酸化物高温超伝導体を含む。上記の化学式において、Aeは、少なくとも一つのアルカリ土金属類元素、特にBa, Caおよび/またはSrである。Reは、少なくとも一つの希土類元素であり、特にY、またはY, La, Lu, Sc, Se, Nd または Ywのうちの2以上の組み合わせである。
【0021】
特に、適切なセラミックス酸化物高温超伝導体は、リファレンスBSCCO-2212, BSCCO-2223によって知られるものであり、数値の組み合わせ2212および2223は、元素Bi, Sr, Ca およびCuの化学量論の比を表し、Biの一部は、Pbで置換できる。また、リファレンスYBCO-123 および YBCO-211によって知られるものであり、数値の組み合わせ123および211は、元素Y, BaおよびCuの化学量論の比を表す。
【0022】
以下において、本発明は図面を参照して詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1に示したダイアグラムは、超伝導体材料の超伝導状態における電流密度、温度および磁界の相互依存性を示す。臨界電流Ic、臨界温度Tcおよび臨界磁界Bcの少なくとも一つを超えると、超伝導体材料は、抵抗性となり通常の伝導状態へ変わる。
【0024】
「臨界J-B-T面」は、その外側において材料が超伝導状態ではない外側境界を表す。結果として、臨界J-B-T面で囲まれた体積は、超伝導体材料に対する超伝導領域を表す。
【0025】
図2乃至4は、焼損に至るホットスポットの形成の過程を図によって示す。図2は、異質部分の領域2(またはホットスポット)を有する、プレート形状の高温超伝導体1を示す。電流の流れおよび電流の分布は、流れ線3によって、電流の流れの方向は矢印によって表される。図2、または、特に、図2によるプレートの垂直断面である図3によってわかるように、異質部分2の下部または上部の領域4において、流れ線3の密度は増加し、その結果領域4の加熱が増加する。図において、加熱が増加した領域4は、異質部分2の上部または下部の陰影を付した領域として表される。図4において、加熱が進むことによって、既にクラックが形成されている。
【0026】
図5乃至8は、異質部分を有する領域における材料の、上記のような損傷を避けるための、本発明の原理を図によって示す。図5に示すように、プレート形状の高温超伝導体コンポーネント1は、壁厚を減少させることによって局所的に薄くなっている。壁厚を減少させるために、材料の表面に凹部を設ける。凹部は、縞形状、線形状または類似の形状であってもよい。
【0027】
所定の領域において、大幅に減少された壁厚d1は、壁厚の減少に応じて、凹部の下部の流れ線3の密度を増加させる。この結果、過電流の場合に、高温超伝導体コンポーネントは、減少された壁厚を有する上記領域において、クエンチを開始する。減少された壁厚d1に比較すると、壁厚d2を有する領域内のどのような異質部分も、初期のクエンチ、すなわちホットスポットの形成に対して有効ではない。
【0028】
たとえば、幹線短絡による過電流の場合に、減少された壁厚を有する上記領域は、加熱し、減少された壁厚を有する領域は、htsコンポーネント内において、予め定められた弱い箇所を形成する。
【0029】
クラック形成および最終的に起こり得る材料の破壊に至る過度の加熱を避けるために、本発明によれば、電気的バイパスとして、分路を設けるのが好ましい。たとえば、図7に示すように、十分な抵抗を有する材料の分路を凹部内にバイパスとして設けることができる。図示した本実施形態において、分路はワイヤとして設計されている。
【0030】
以下において、図7および8を参照して、本発明の動作モードを説明する。
【0031】
図7に表すように、比較的低い電流において、流れ線の密度は、分路材料の下部において増加し、結果としてこの領域が加熱される。さらに加熱すると、すなわち、超伝導断面が減少すると、電流は分路材料の中へ向かい(commutate)、高温超伝導体材料は、さらに加熱されることから保護され、結果として、破壊から保護される(図8)。電流が増加した場合も、同じである。
【0032】
本発明は、原理的に、どのような形状の大きな超伝導体コンポーネントにも適用することができ、特定の幾何学的形状に制約されない。
【0033】
説明のために、超伝導体コンポーネントがチューブである図9および10を参照する。チューブの外面において、チューブの周の周りに複数の線状の凹部5が備わる。ここで、線は、チューブの長手方向の軸に沿って、一方の端部から反対側の端部まで伸びている。分路材料が凹部5を満たしており、好ましくは、たとえば、以下に参照されるようにはんだ付けによって、チューブに固定される。
【0034】
本発明に対しては、原理的に、超伝導体コンポーネントにおける過剰な電流をバイパスさせるための分路に適したどのような材料も、本発明の電気的分路として使用することができる。電気的分路に適した材料は、通常の動作の場合、すなわち、hts材料が超伝導状態であるときに、hts材料に関して十分に高い抵抗を有し、その結果、電流は分路に向けられない。他方、過電流の場合において、hts材料が抵抗性となったときには、分路電流の抵抗は十分に小さく、その結果、電流は分路にバイパスされる。
【0035】
適した材料の例は、たとえば、銅ニッケル10、銅ニッケル20、銅ニッケル30などの銅ニッケル合金や、たとえば、20%のニッケル、20%のマンガン、残余が銅であるLV−7などの銅ニッケル・マンガン合金や他の金属である。
【0036】
分路の断面はどのような幾何学的形状であってもよい。例としては、矩形の断面を有するテープ、丸い断面、楕円の断面、台形の断面を有するワイヤなどがある。凹部の表面と分路の外側面との接触をよくするように、幾何学的形状の条件は、互いに適合せせる必要がある。
【0037】
たとえば、適切なはんだ付け方法によって、分路と高温超伝導体材料との間の電気的な接触をよくすることができる。このために、最初の段階において、減少された壁厚の領域内に、金属被覆された面を生成する。たとえば、スプレーや、ブラシによる塗布や、浸すことなどによって、上記の領域内において、たとえば、銀などの適切な金属を塗布することによって、表面を金属被覆することができる。上記領域における接触抵抗を小さくするために、金属被服に続いて、該金属は、熱プロセスによって高温材料への焼き込みが行われる。
【0038】
たとえば、BSCCO−2212の場合、焼き込みは、約850℃で行うことができる。明らかなように、温度などの焼き込み段階の特定の条件は、材料によって変化しうるが、通常の手順で適切な条件を選択することができる。
【0039】
流れ線3によって示される、hts材料の中を流れる電流の方向に対する分路の向きに関して制約はない。たとえば、図9および10に示されるチューブを参照すると、電流の流れの方向が、チューブの長手方向の軸に平行である場合に、分路の通過方向(pass way)は、たとえば、流れ線に平行、垂直または任意の傾きを有するなど、いずれであってもよい。分路の位置および通過方向に関して、電流の流れが、htsチューブの半径方向である場合も、同じことが当てはまる。
【0040】
凹部の数および大きさは、必要に応じて選択することができる。凹部は、htsコンポーネントの全表面にわたり、分路によって覆われていない領域内で望ましくないホットスポットの形成を避けるのに、十分な距離をおいて分布されるのが好ましい。
【0041】
断面の減少の大きさ(すなわち、凹部の深さ)を定めるには、減少された断面積の領域は、予め定められた弱い箇所として機能することに留意する必要がある。したがって、断面の減少の大きさは、個別のコンポーネントに存在する異質部分を補償するように選択され、どのようなコンポーネントに対しても、材料中の異質部分を考慮して、個別に定める必要がある。たとえば、本明細書で参照する実施形態においては、断面は約25%から30%減少された。
【0042】
分路によって覆われる領域および分布を定める際には、向けられる電流(commutating current)によって生じる分路材料の加熱の大きさを考慮する必要がある。すなわち、覆われる領域および分布は、特に、分路材料および/またははんだの溶融を避けるように、加熱を制御するのに十分でなければならない。上記に参照した基準を考慮して、どのような個別のコンポーネントに対しても、十分な断面の減少や分路によって覆われる領域および分布の選択を容易に実行することができる。
【0043】
図11は、本発明の他の実施形態を示す。本実施形態によれば、上記に参照した電気的分路6に加えて、電気的分路6に接続された別の分路7を設けることができる。この別の分路7は、高熱伝導性の材料からなり、「熱的分路」と呼称される。このような熱的分路7を設けることにより、熱の除去が促進される。
【0044】
熱的分路として適切な熱伝導性の材料の例は、銅、アルミニウムまたは同様の熱伝導性を有する任意の他の材料である。
【0045】
図11に示すように、htsコンポーネント1、ここでは、BSCCO−2212からなるチューブは、全周にわたり凹部5を備える。凹部5は、電気的分路6で満たされ、その上に熱的分路7が備わる。
【0046】
環状分路6の長手方向の大きさは、チューブ1の全長に比較して小さいので、誘導されうる循環電流の影響は無視できる。
【0047】
htsコンポーネントを機械的に安定化させるために、チューブ形状のhtsコンポーネント1の外側面の周りに備わる補強手段8が示されている。このような補強手段および材料は、当該技術分野において一般的に知られている。たとえば、図11の実施形態において、補強手段8は、たとえば、ガラス強化炭素(glass reinforced carbon)からなる補強チューブであってもよい。
【0048】
図11に示すように、熱的分路7の表面は、熱をよりよく取り除くために増加された表面積を有してもよい。たとえば、表面積を増加させるために、裂け目(rip)などを備えてもよい。表面積増加手段を9で示す。
【0049】
本発明は、電流の流れの流れ線を、電気的バイパスに向けることによって、望ましくないホットスポットの形成から保護されたhtsコンポーネントに関する。電気的バイパスに向ける程度は、htsコンポーネントの壁厚の傾き(gradient)によって制御される。
【0050】
本発明の高温超伝導体コンポーネントは、hts変圧器、巻き線、磁石、限流器、リード線(electrical leads)など、広い範囲の応用分野で適切に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】T、BおよびJ軸を伴う相ダイアグラムにおける面プロットを示す図である。
【図2】プレート状の高温超伝導体における、焼損に至るホットスポットの形成の過程を示す図である。
【図3】プレート状の高温超伝導体における、焼損に至るホットスポットの形成の過程を示す図である。
【図4】プレート状の高温超伝導体における、焼損に至るホットスポットの形成の過程を示す図である。
【図5】予め定めた弱い箇所を備えるプレート状の高温超伝導体を示す図である。
【図6】予め定めた弱い箇所を備えるプレート状の高温超伝導体を示す図である。
【図7】本発明によるプレート状の高温超伝導体を示す図である。
【図8】図7による高温超伝導体における電流密度の分布を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・htsコンポーネント、2・・・異質部分、3・・・流れ線、4・・・加熱領域、5・・・凹部、6・・・電気的分路、7・・・熱的分路、8・・・補強材料、9・・・表面増強手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた弱い箇所を形成するために、表面に少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域を備え、前記減少した壁厚を有する領域に電気的分路を備えた、高温超伝導体コンポーネント。
【請求項2】
前記少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域は、前記高温超伝導体コンポーネントの表面における凹部である請求項1に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項3】
全表面にわたり、複数の凹部が分布している請求項1または2に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項4】
少なくとも一つの凹部が、線状、円状、楕円状または曲線状の範囲である請求項1から3のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項5】
前記電気的分路が熱的分路によって覆われている請求項1から4のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項6】
前記熱的分路の表面に表面積を増強する手段を備える請求項5に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項7】
前記表面積を増強する手段が割れ目である請求項6に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項8】
チューブまたはロッドである請求項1から7のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項9】
圧縮または溶融鋳造プロセスによって得ることのできる請求項1から8のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項10】
少なくとも一つの凹部が、周に沿って延びている請求項1から9のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項11】
高温超伝導体変圧器、巻き線、磁石、限流器またはリード線の製造において、請求項1から10のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネントを使用する方法。
【請求項1】
予め定めた弱い箇所を形成するために、表面に少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域を備え、前記減少した壁厚を有する領域に電気的分路を備えた、高温超伝導体コンポーネント。
【請求項2】
前記少なくとも一つの減少した壁厚を有する領域は、前記高温超伝導体コンポーネントの表面における凹部である請求項1に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項3】
全表面にわたり、複数の凹部が分布している請求項1または2に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項4】
少なくとも一つの凹部が、線状、円状、楕円状または曲線状の範囲である請求項1から3のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項5】
前記電気的分路が熱的分路によって覆われている請求項1から4のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項6】
前記熱的分路の表面に表面積を増強する手段を備える請求項5に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項7】
前記表面積を増強する手段が割れ目である請求項6に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項8】
チューブまたはロッドである請求項1から7のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項9】
圧縮または溶融鋳造プロセスによって得ることのできる請求項1から8のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項10】
少なくとも一つの凹部が、周に沿って延びている請求項1から9のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネント。
【請求項11】
高温超伝導体変圧器、巻き線、磁石、限流器またはリード線の製造において、請求項1から10のいずれか一項に記載の高温超伝導体コンポーネントを使用する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−53722(P2008−53722A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215044(P2007−215044)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】
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