説明

クォータウインドウ

【課題】意匠性を向上させつつリヤドアに確実に固定することができるクォータウインドウを提供すること。
【解決手段】車両のリヤドア11に設けられるクォータウインドウ20は、合成樹脂材料製のクォータウインドウパネル21と、フレーム31とが一体成形されてなる。フレーム31は、リヤドア11におけるドアフレーム12とともにガラスラン15が取着されてディビジョンバーとして機能するディビジョンバー部32、及び該ディビジョンバー部32を一部とし、前記クォータウインドウパネル21の車内側の周縁部に一体結合されるシール部33を有する。フレーム31は高剛性を有する合成樹脂材料で形成されるとともに該フレーム31にドアフレーム12に固定される固定部が一体形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリヤドアに設けられるクォータウインドウに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のリヤドアに設けられるクォータウインドウとしては、例えば特許文献1に開示のものが挙げられる。図5(a)及び(b)に示すように、特許文献1のクォータウインドウ70において、平面形状略直角三角形の合成樹脂材料製のクォータガラス71の車内側面の全周には、該クォータガラス71から立設されたインサート部72を介してシール部材73が一体結合されている。前記インサート部72は、クォータガラス71の立辺側及び斜辺側に形成されている。また、クォータガラス71の立辺及び斜辺における断面形状は、クォータガラス71の外周部とともにコ字形挟持部74を形成するL字形とされ、さらに、コ字形挟持部74の内側が前記シール部材73で被覆されている。
【0003】
このクォータウインドウ70は、インサート部72とともに射出等により一体成形されたクォータガラス71とディビジョンバー76とを金型(図示せず)内にセットし、該金型内に形成されたキャビティに高分子弾性材料を注入して硬化させ、インサート部72にゴム製や熱可塑性エラストマー製のシール部材73を一体化することにより形成されている。
【0004】
そして、上記構成のクォータウインドウ70は、図5(b)に示すように、クォータガラス71における斜辺側のコ字形挟持部74でリヤドア77におけるフレームフランジ78を挟持させる。さらに、図5(a)に示すように、クォータガラス71における立辺側のコ字形挟持部74によりディビジョンバー76に嵌着されたガラスラン79を介してリヤドアガラス80のスライダ81が挟持される。すると、クォータウインドウ70がリヤドア77に組付けられるとともに、図5(b)に示すように、クォータガラス71とリヤドア77後部とがほぼ面一状態となり、意匠性が向上される。
【特許文献1】特開昭62−265018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のクォータウインドウ70において、リヤドア77への組付けは、コ字形挟持部74でフレームフランジ78、及びスライダ81を挟持させ、さらにディビジョンバー76及びクォータガラス71の底辺側をリヤドア77に押し込むことで行われている。両コ字形挟持部74は内側がシール部材73で被覆され、該シール部材73は高分子弾性材料よりなることからコ字形挟持部74は弾性を有している。このため、クォータウインドウ70のリヤドア77への組付け状態において、コ字形挟持部74が弾性変形してクォータウインドウ70がリヤドア77から外れてしまう虞がある。また、特許文献1にはクォータウインドウ70のリヤドア77への組付けに関して、コ字形挟持部74による挟持以外の固定方法について何ら示唆も開示もされていない。
【0006】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、意匠性を向上させつつリヤドアに確実に固定することができるクォータウインドウを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、合成樹脂材料製のクォータウインドウパネルと、車両のリヤドアにおけるドアフレームとともにガラスランが嵌着されてディビジョンバーとして機能するディビジョンバー部を有するとともに、該ディビジョンバー部を一部として備え、前記クォータウインドウパネルの車内側の周縁に沿って一体結合され、かつ一部が前記ドアフレームに嵌着されるシール部を有するフレームとが一体成形されてなり、前記フレームが高剛性を有する合成樹脂材料で形成されるとともに、該フレームに前記ドアフレームに固定するための固定部が一体形成されていることを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、ディビジョンバー部がガラスランに嵌着され、シール部の一部がドアフレームに嵌着されてクォータウインドウがドアフレームに組付けられる。嵌着に用いられるディビジョンバー部及びシール部を有するフレームは、高剛性を有する合成樹脂材料よりなるため、該ディビジョンバー部及びシール部が弾性変形してガラスラン及びドアフレームから外れることが防止され、ドアフレームへの組付け状態を維持することができる。さらに、固定部を用いてフレームをドアフレームに固定することができる。したがって、クォータウインドウをドアフレームに確実に固定することができる。また、クォータウインドウがドアフレームに固定された状態で、ドアフレームとクォータウインドウパネルの車外に露出する面は面一となっており、リヤドアの意匠性を向上させることができる。
【0009】
また、高剛性を有する合成樹脂材料はガラス繊維強化プラスチックであってもよい。
また、前記フレームは断面コ字状をなし、フレームの開口を形成する側壁間に架設された補強リブが一体形成されていてもよい。これによれば、補強リブがない場合に比してフレーム(ディビジョンバー部及びシール部)の剛性を高め、ディビジョンバー部及びシール部の弾性変形を確実に防止して該ディビジョンバー部及びシール部がガラスラン及びドアフレームから外れることが防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、意匠性を向上させつつリヤドアに確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を自動車のリヤドアに設けられたクォータウインドウに具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車両たる自動車のリヤドア11は、ドアフレーム12に装着されたウィンドウパネル13と、ドアフレーム12に固定されたクォータウインドウ20とを備える。なお、図2における下側を自動車の車内側とし、上側を車外側とする。
【0012】
前記クォータウインドウ20について詳細に説明する。図2及び図3に示すように、クォータウインドウ20は、合成樹脂材料としての透明のポリカーボネートで形成されたクォータウインドウパネル21と、高剛性を有する合成樹脂材料として、ガラス繊維が含有されたポリカーボネート(ガラス繊維強化プラスチック)で形成されたフレーム31とが一体成形されてなる。本実施形態において、クォータウインドウ20は、二色成形法によりクォータウインドウパネル21とフレーム31とを一体成形することにより形成されている。なお、高剛性を有する合成樹脂材料とは、ゴムや熱可塑性エラストマーのように弾性を有する合成樹脂材料に比して剛性が高められた合成樹脂材料のことであり、高弾性の合成樹脂材料のことである。
【0013】
図3に示すように、前記クォータウインドウパネル21は、その正面視において、上部が略直角三角形状をなすとともに、該直角三角形をなす部位より下部に直角三角形の立辺に沿って細長に延びる部位を有する形状に形成されている。そして、フレーム31は、ドアフレーム12への固定状態で上下方向へ延び、リヤドア11におけるディビジョンバーとして機能するディビジョンバー部32を有する。また、フレーム31は、前記クォータウインドウパネル21の車内側の全周縁に一体結合され、かつ一部がドアフレーム12に嵌着されるシール部33を有する。すなわち、フレーム31は、ディビジョンバー部32とシール部33とが一体形成されてなる。また、フレーム31は黒色に着色されている。
【0014】
図2に示すように、フレーム31におけるディビジョンバー部32は、自動車の前方に向けて開口し、ディビジョンバー部32の長さ方向に対して直交する面での断面視が略コ字状に形成されている。そして、ディビジョンバー部32は、該開口を形成するように車内側と車外側に対向配置された一対の側壁32aを備えている。ディビジョンバー部32において一対の側壁32aの間には補強リブ32bが架設され、該補強リブ32bはディビジョンバー部32の長さ方向に間隔をおいて複数形成されている。
【0015】
また、図3及び図4に示すように、ディビジョンバー部32において、車内側の側壁32aにはフレーム31をドアフレーム12に固定するための固定部35が一体形成され、該固定部35はディビジョンバー部32の長さ方向に間隔をおいて複数形成されている。各固定部35には固定孔35aが形成されている。
【0016】
次に、シール部33について詳細に説明する。図3に示すように、前記シール部33は、ディビジョンバー部32の上部を直角三角形の立辺とする立辺部38と、ディビジョンバー部32の長さ方向の中央部から該ディビジョンバー部32に対して交差する方向へ延び、直角三角形の下側辺を形成する下側辺部39とを備える。さらに、シール部33は、前記下側辺部39に対し斜めに延び、直角三角形の斜辺を形成する斜辺部40と、前記立辺部38と斜辺部40の上端部同士を連結する上側部41とからなる。
【0017】
図4に示すように、シール部33において、下側辺部39は、その長さ方向に対して直交する面での断面視が車内側に向けて開口するコ字状に形成されている。また、図2に示すように、シール部33において、斜辺部40は、その長さ方向に対して直交する面での断面視が車内側に向けて開口するように形成されている。そして、斜辺部40は、該開口を形成する一対の側壁40aを備えている。斜辺部40において、一対の側壁40aの間には補強リブ40bが架設され、該補強リブ40bは斜辺部40の長さ方向に間隔をおいて複数形成されている。また、図4に示すように、シール部33において、上側部41には、フレーム31をドアフレーム12に固定するための固定部42が車内側に向けて延設され、該固定部42には、ドアフレーム12に取付けられたねじ(図示せず)を螺合するねじ孔(図示せず)が設けられている。
【0018】
そして、図2及び図3に示すように、外郭が略直角三角形の枠状をなすシール部33、すなわち、フレーム31における立辺部38(ディビジョンバー部32)、下側辺部39、斜辺部40、及び上側部41の車外側の面が、クォータウインドウパネル21の車内側の周縁に沿うようにクォータウインドウパネル21に一体結合されている。そして、図2に示すように、フレーム31とクォータウインドウパネル21とが一体成形されることにより、シール部33の車外側の面と、クォータウインドウパネル21の車内側の面との間に形成される結合面はシールされている。
【0019】
また、クォータウインドウパネル21がシール部33に一体結合された状態において、斜辺部40の外側縁部はクォータウインドウパネル21の縁より外方へ突出し、該突出した部位に嵌着部40cが形成されている。また、クォータウインドウパネル21における斜辺部40側の側縁部は、斜辺部40の縁より外方へ突出し、該突出した部位にクォータウインドウパネル21における嵌着部21aが形成されている。さらに、クォータウインドウパネル21は透明であり、フレーム31は黒色に着色されているため、クォータウインドウ20を車外から視認した場合、クォータウインドウパネル21を透過してシール部33が視認されるようになっている。
【0020】
上記構成のクォータウインドウ20は、以下のようにドアフレーム12に固定される。まず、上側部41に形成された固定部42にドアフレーム12に取付けられたねじ(図示せず)を螺合させることで、上側部41がドアフレーム12に固定される。また、ディビジョンバー部32に設けられた複数の固定部35の固定孔35aからねじ(図示せず)がドアフレーム12に螺合されてディビジョンバー部32がドアフレーム12に固定される。さらに、図2に示すように、斜辺部40における嵌着部40c、及びクォータウインドウパネル21の嵌着部21aが、ドアフレーム12の後側に設けられた嵌合溝12aに嵌着されるとともに該嵌着部21a,40cと嵌合溝12aがシール材50によってシールされ、クォータウインドウ20がドアフレーム12に固定される。また、ディビジョンバー部32及びドアフレーム12にガラスラン15が嵌着されるとともに、該ガラスラン15にウィンドウパネル13が嵌合され、リヤドア11が形成される。
【0021】
このように形成されたリヤドア11において、クォータウインドウパネル21の車外に露出する面と、ドアフレーム12の後側及びガラスラン15の車外に露出する面とは面一となっている。また、ディビジョンバーとして機能するディビジョンバー部32は、フレーム31の一部を構成し、黒色に着色されるとともにクォータウインドウパネル21の車内側の面に結合されている。
【0022】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)クォータウインドウ20は、ガラス繊維が含有されたポリカーボネート製のフレーム31を備え、さらに、フレーム31のシール部33が、ポリカーボネート製のクォータウインドウパネル21の車内側の周縁に一体結合されている。そして、クォータウインドウ20は、ディビジョンバー部32がガラスラン15に嵌着され、斜辺部40の嵌着部40c、及びクォータウインドウパネル21の嵌着部21aがドアフレーム12の嵌合溝12aに嵌着されてドアフレーム12に組付けられる。ディビジョンバー部32及び嵌着部40cは高剛性を有するため、弾性変形してガラスラン15及び嵌合溝12aとの嵌着状態が崩れて外れることが防止され、ドアフレーム12への組付け状態を維持することができる。さらに、フレーム31には固定部35が一体成形され、該固定部35を用いてフレーム31をドアフレーム12に固定することができる。よって、クォータウインドウ20をドアフレーム12に確実に固定することができる。
【0023】
(2)フレーム31におけるシール部33の車外側の面にクォータウインドウパネル21が一体結合され、シール部33とクォータウインドウパネル21との間がシールされている。そして、フレーム31がドアフレーム12に固定されるため、クォータウインドウパネル21はウエザストリップを用いることなくドアフレーム12に装着される。したがって、ウエザストリップを用いた場合のように、クォータウインドウパネル21の周縁に段差が形成されることがなく、ドアフレーム12及びガラスラン15とクォータウインドウパネル21とを面一とすることができる。その結果として、段差によって発生する風切音を低減させ、さらに、空力抵抗を改善することができる。また、ディビジョンバー部32はクォータウインドウパネル21の車内側の面に一体結合されている。このため、リヤドア11におけるディビジョンバーに相当する部位が車外に露出することがなく、ウィンドウパネル13とクォータウインドウパネル21との間にはガラスラン15しか露出していない。したがって、リヤドア11の意匠性を向上させることができる。
【0024】
(3)フレーム31には固定部35,42が一体成形されている。このため、例えば、ディビジョンバー部32に別途ブラケットを接合して固定部35,42を設ける場合に比してクォータウインドウ20の形成を容易とすることができる。
【0025】
(4)ディビジョンバー部32及び斜辺部40には補強リブ32b,40bが一体形成されている。このため、ディビジョンバー部32及び斜辺部40の剛性を高め、ディビジョンバー部32及び斜辺部40が変形することを防止してディビジョンバー部32がガラスラン15から外れること、及び斜辺部40が嵌合溝12aから外れることを確実に防止することができる。
【0026】
(5)クォータウインドウ20は、ディビジョンバー部32及びシール部33を有するフレーム31と、クォータウインドウパネル21とが二色成形法により一度の製造工程で製造される。よって、背景技術のクォータウインドウのように、クォータガラスとディビジョンバーとを金型内にセットし、さらに、形成されたキャビティ内に高分子弾性材料を注入して硬化させ、インサート部にシール部材を一体化して製造されるのに比して製造を容易とする。また、クォータウインドウ20は合成樹脂材料のみで形成されているため、前記背景技術のように金属材料と合成樹脂材料を併用するのに比して材料の種類を減らしてクォータウインドウ20の製造コストを抑えることができるとともに軽量化を図ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ フレーム31とクォータウインドウパネル21の一体成形は、二色成形法以外の方法で行ってもよく、例えば、インサート成形法によってフレーム31とクォータウインドウパネル21を一体成形してもよい。
【0028】
○ クォータウインドウパネル21及びフレーム31の材質は任意に変更してもよい。例えば、クォータウインドウパネル21をABS系材料で形成し、フレーム31をPET系材料で形成してもよい。また、クォータウインドウパネル21及びフレーム31の材質が同じであってもよい。
【0029】
○ フレーム31に必要な剛性が確保されていれば、フレーム31を形成する合成樹脂材料としてガラス繊維が含有されていない合成樹脂材料であってもよい。
○ ディビジョンバー部32における補強リブ32b、及び斜辺部40における補強リブ40bは、ディビジョンバー部32に必要な剛性が確保されていれば無くてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態のリヤドアを模式的に示す斜視図。
【図2】実施形態のリヤドアを示す図1の2−2線断面図。
【図3】クォータウインドウを車外側から示す斜視図。
【図4】クォータウインドウを車内側から示す斜視図。
【図5】(a)及び(b)は背景技術のクォータウインドウを示す断面図。
【符号の説明】
【0031】
11…リヤドア、12…ドアフレーム、15…ガラスラン、20…クォータウインドウ、21…クォータウインドウパネル、31…フレーム、32…ディビジョンバー部、32a,40a…側壁、32b,40b…補強リブ、33…シール部、35,42…固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料製のクォータウインドウパネルと、
車両のリヤドアにおけるドアフレームとともにガラスランが嵌着されてディビジョンバーとして機能するディビジョンバー部を有するとともに、該ディビジョンバー部を一部として備え、前記クォータウインドウパネルの車内側の周縁に沿って一体結合され、かつ一部が前記ドアフレームに嵌着されるシール部を有するフレームとが一体成形されてなり、
前記フレームが高剛性を有する合成樹脂材料で形成されるとともに、該フレームに前記ドアフレームに固定するための固定部が一体形成されているクォータウインドウ。
【請求項2】
前記高剛性を有する合成樹脂材料はガラス繊維強化プラスチックである請求項1に記載のクォータウインドウ。
【請求項3】
前記フレームは断面コ字状をなし、フレームの開口を形成する側壁間に架設された補強リブが一体形成されている請求項1又は請求項2に記載のクォータウインドウ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−23495(P2009−23495A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188310(P2007−188310)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】