説明

クマリン化合物及びその用途

【課題】3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害することができ、よって男性ホルモン依存性疾患の処置または予防において有用な化合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、式(I)等で示されるクマリン化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;当該阻害組成物に3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分として含有されるクマリン化合物の使用等を提供する。

式(I)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クマリン化合物及びその用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌、良性前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大および多嚢胞性卵巣症候群等の男性ホルモン依存性の疾患は、その発症や進行が男性ホルモンの活性により促進される。
【0003】
3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼは、低活性男性ホルモンであるアンドロステンジオンから高活性男性ホルモンであるテストステロンへの変換を触媒する酵素である。例えば、癌化した前立腺組織においては、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現レベルが、正常組織での発現レベルよりも高いことが観察されている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
【非特許文献1】The Prostate,53,154−159,(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害することができ、よって男性ホルモン依存性疾患の処置または予防において有用な化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、下記の式(I)〜(XIII)で示される化合物(以下、一括して本化合物と記すこともある)が3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する能力を有することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.式(I)

[式中、Xは、水素原子、C1-C4アルキル基又はトリフルオロメチル基を表し、Yは、単数のハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基、同一又は相異なる複数のハロゲン原子で置換されたフェニル基、又は、ピリジル基を表し、kは、0又は1を表し、Rは、水素原子又はC1-C4アルキルカルボニル基を表す。]
で示されるクマリン化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
2.式(II)

[式中、XIIは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、YIIは、ピリジル基又はフェニル基を表し、kは、0又は1を表し、RIIは、水素原子又はC1-C4アルキルカルボニル基を表す。ただし、XIIがメチル基であり、かつ、YIIがフェニル基であるとき、kは0ではない。]
で示されるクマリン化合物;
3.式(II')

[式中、
II'は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、
II'は、2−ピリジル基又はフェニル基を表し、
k'は、0又は1を表し、
II'は、水素原子又はC1-C2アルキルカルボニル基を表す。
ただし、XII'がメチル基であり、かつ、YII'がフェニル基であるとき、k'は0ではない。]
で示されるクマリン化合物;
4.式(III)で示されるクマリン化合物;

5.式(IV)で示されるクマリン化合物;

6.式(V)で示されるクマリン化合物;

7.式(VI)で示されるクマリン化合物;

8.前項2に記載のクマリン化合物と不活性担体とを含有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
9.前項3〜7に記載の化合物と不活性担体とを含有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
10.前項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための使用;
11.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための前項2に記載のクマリン化合物の使用;
12.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための前項3〜7のいずれか一項に記載のクマリン化合物の使用;
13.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、治療的に有効な量の請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物を該阻害を必要とする患者に投与することを特徴とする方法;
14.男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、治療的に有効な量の請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物を該処置または予防を必要とする患者に投与することを特徴とする方法;
15.男性ホルモン依存性疾患が、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群である、前項14に記載の方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの活性を阻害し、組織における男性ホルモン活性の亢進を抑制することにより、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防するための組成物等の開発および提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子があげられる。
本発明において、C1-C4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等があげられ、C1-C4アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等があげられる。
【0009】
本化合物において、ピリジン環を有する場合は、そのN−オキシドも含む。
【0010】
本化合物は、それらの薬理学上許容されうる塩も、同時に表す。薬理学上許容されうる塩とは、本化合物の、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩又は有機塩基との塩を表す。無機酸との塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩等があげられ、有機酸との塩とは、例えば、酢酸塩、安息香酸塩等があげられ、無機塩基との塩とは、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等があげられ、有機塩基との塩とは、例えば、ピリジン塩、モルホリン塩等があげられる。
【0011】
以下に、本化合物の製造法(1)〜(4)について記す。
【0012】
製造法(1):
本化合物のうち、式(II)(式中、XII、YII及びRIIは、前記と同一の意味を表す。)で示される化合物は、例えば、式(II’)(式中、Vは、塩素原子又は臭素原子を表し、XII及びRIIは、前記と同一の意味を表す。)で示される化合物と式(II’’)(式中、YIIは、前記と同一の意味を表す。)で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。

該反応において、反応温度の範囲は、通常、室温〜溶媒還流温度であり、反応時間の範囲は、通常、瞬時〜約24時間である。該反応は、通常、塩基の存在下で行うが、用いられる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン等の有機塩基、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基等があげられる。該反応に供せられる試剤の量は、化合物(II’)1モルに対して、化合物(II’’)は通常1〜2モル、塩基は通常1〜7モルである。上記反応において、溶媒は必ずしも必要ではないが、通常は溶媒の存在下に行われる。該反応に使用しうる溶媒としては、ヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、炭酸ジエチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、イソブチルニトリル等のニトリル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類等又はそれらの混合物があげられる。反応終了後の反応液は、有機溶媒抽出、水洗後、有機層を減圧濃縮する等の通常の後処理を行い、必要に応じ、クロマトグラフィー、再結晶等の操作によって精製することにより、化合物(II)を得ることができる。
化合物(II’)は、例えば、文献WO99/26476公報に記載されている。
【0013】
製造法(2):
本化合物のうち、式(II)(式中、XII及びYIIは、前記と同一の意味を表す。)で示される化合物は、例えば、レゾルシノール(II’)と式(II’’)(式中、XII及びYIIは、前記と同一の意味を表し、Rは、C1-C4アルキル基を表す。)で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。

該反応において、反応温度の範囲は、通常、溶媒還流温度を上限として0℃〜120℃であり、反応時間の範囲は、通常、瞬時〜約50時間である。該反応は、通常、酸性溶媒中で行われる。酸性溶媒としては、例えば、濃硫酸、70%硫酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、オキシ塩化リン、ポリリン酸等があげられる。該反応に供せられる試剤の量は、レゾルシノール(II’)1モルに対して、化合物(II’’)は通常0.8〜2モル、酸性溶媒は、レゾルシノール(II’)に対して通常5〜100倍重量である。反応終了後は、製造法(1)と同様にして、化合物(II)を得ることができる。
化合物(II’’)は、例えば、文献WO96/12706公報に記載されている。
【0014】
製造法(3):
本化合物のうち、式(II)(式中、XII、YII及びkは、前記と同一の意味を表し、Rは、C1-C4アルキルカルボニル基を表す。)で示される化合物は、例えば、式(II’)(式中、XII、YII及びkは、前記と同一の意味を表す。)で示される化合物をアシル化剤でアシル化することにより製造することができる。

該反応において、反応温度の範囲は、通常、室温〜溶媒還流温度であり、反応時間の範囲は、通常、瞬時〜約24時間である。該反応は、通常、塩基の存在下で行うが、用いられる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、イミダゾール等の有機塩基、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基等があげられる。該反応に供せられる試剤の量は、化合物(II’)1モルに対して、アシル化剤は通常1〜2モル、塩基は通常1〜7モルである。上記反応において、溶媒は必ずしも必要ではないが、通常は溶媒の存在下に行われ、例えば、製造法(1)にあげられた溶媒が該反応に使用しうる。アシル化剤としては、塩化アセチル、塩化プロピオニル等の酸塩化物、無水酢酸等の酸無水物があげられる。反応終了後は、製造法(1)と同様にして、化合物(II)を得ることができる。
【0015】
製造法(4):
本化合物のうち、式(II)(式中、XII、YII及びkは、前記と同一の意味を表す。)で示される化合物は、例えば、式(II’)(式中、XII、YII及びkは、前記と同一の意味を表し、Rは、C1-C4アルキルカルボニル基を表す。)で示される化合物を加水分解することにより製造することができる。

該反応において、反応温度の範囲は、通常、室温〜溶媒還流温度であり、反応時間の範囲は、通常、瞬時〜約24時間である。該反応は、通常、塩基の存在下で行うが、用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の無機塩基等があげられる。該反応に供せられる塩基の量は、化合物(II’)1モルに対して、塩基は通常1〜7モルである。上記反応において、通常は溶媒の存在下に行われ、使用しうる溶媒としては、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトニトリル、イソブチルニトリル等のニトリル類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類、水又はそれらの混合物があげられる。反応終了後は、製造法(1)と同様にして、化合物(II)を得ることができる。
【0016】
本化合物のうち、化合物番号(1)〜(11)で表される化合物(A)を、表1に例示する。
【0017】

【0018】
【表1】

【0019】
本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの活性を阻害する能力を有する。当該能力は、高活性男性ホルモンであるテストステロンの産生を抑制して、組織における男性ホルモン活性の低下を導くことにより、男性ホルモン依存性疾患の発症や進行を妨げるために重要である。よって、本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性を阻害し、組織における男性ホルモン活性の亢進を抑制することにより、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防するための組成物(医薬品、化粧品、食品添加物等)の有効成分として利用することができる。
例えば、本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を、そのような阻害を必要とする患者に投与する工程を包含する方法に利用することができる。
また例えば、本化合物は、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を、該処置又は予防を必要とする患者に投与する工程を包含する方法に利用することができる。
【0020】
本化合物は、その発症または進行が男性ホルモンの活性により促進される男性ホルモン依存性疾患の予防または治療に有用である。本化合物の適用可能な男性ホルモン依存性疾患としては、例えば、前立腺癌および他の男性ホルモン依存性新生物、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、男性ホルモン性脱毛症(すなわち、男性患者および女性患者の両方におけるパターン禿頭症)、多毛症、多嚢胞性卵巣症候群、性的早熟、副腎性肥大、脂漏症およびアクネ等をあげることができる。例えば、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群を処置または予防する方法であって、該処置又は予防を必要とする患者に、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を投与する工程を包含する方法に利用することができる。
【0021】
好ましい投与量(有効な量)は、1日あたり、体重1kgあたり約0.001〜500mgの本化合物である。より好ましい投与量は、1日あたり、体重1kgあたり約0.01〜25mgの本化合物、または本化合物の薬学的に受容可能な塩または本化合物の溶媒和物である。
【0022】
本化合物は通常、少なくとも一つの本化合物、または本化合物の薬理学上許容されうる塩または本化合物の溶媒和物と、少なくとも一つの不活性担体とを含む組成物の形で投与される。これらの組成物中に含有される本化合物は、通常、0.01重量%〜99.99重量%であり、不活性担体は、通常、99.99重量%〜0.01重量%である。当該不活性担体は、薬学的に許容される担体や賦形剤である。本発明の組成物はさらに、医薬品添加剤、化粧品添加剤、食品添加剤等を含有してもよい。
【0023】
本化合物を含有する上記組成物を調製するために用いられる薬学的に許容される担体、賦形剤、医薬品添加剤、食品添加剤、化粧品添加剤等は、当該組成物の具体的用途に応じて適宜選択することができる。また、当該組成物の形態も、具体的用途に応じて、例えば、種々の固体、液体等の形態とすることができる。
【0024】
固体形態の製剤としては、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤および坐剤等が挙げられる。この散剤および錠剤は、約5〜約95パーセントの活性成分から構成され得る。固体担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖またはラクトース等があげられる。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与のために適切な固体投薬形態として使用され得る。薬学的に受容可能な担体の例および様々な組成物のための製造の方法は、A.Gennaro(編),Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版,(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania中に見出され得る。
【0025】
液体形態の製剤としては、液剤、懸濁剤および乳剤等が挙げられる。例えば、非経口注入のための水もしくは水−プロピレングリコール液剤が挙げられる。経口用の液剤、懸濁剤および乳剤には、甘味料や乳白剤が添加されてもよい。液体形態の製剤の例としては、鼻腔内投与のための液剤を挙げることもできる。
【0026】
また、吸入のために適切なエアゾール製剤とすることもでき、この場合、溶液および粉末形態の固体を挙げることができる。かかる溶液または粉末形態の固体は、不活性な圧縮ガス(例えば、窒素)などの薬学的に受容可能な担体と組み合わされて製剤されてもよい。
【0027】
経口投与または非経口投与のいずれかのために、使用の直前に、液体形態の製剤に変換することを意図される固体形態の製剤も挙げられる。そのような液体形態としては、液剤、懸濁剤および乳剤が挙げられる。
【0028】
本化合物は、経皮的に投与されてもよい。この経皮用組成物は、クリーム、ローション、エアゾールおよび/または乳剤の形態とすることができ、この目的のために該分野で通常のように、マトリックス型の経皮用パッチ内またはレザバー型の経皮用パッチ内に含有されてもよい。
また、本化合物は皮下に送達されてもよい。さらに好ましくは、本化合物は経口により投与されてもよい。
【0029】
上記組成物は、単位用量形態(unit dosage form)にすることもできる。そのような形態においては、上記組成物は、適切な量の上記活性成分、例えば、所望の目的を達成するための有効量を含有する、適切な大きさの単位用量に細分される。
【0030】
組成物の単位用量中の活性化合物の量は、その特定の適用に従って、約1mg〜約100mg、好ましくは約1mg〜約50mg、より好ましくは約1mg〜約25mgとなるように調整されてもよい。
【0031】
用いられる実際の投薬量は、患者の体重および処置される疾患の重篤度に依存して変更され得る。便宜のために必要とされる場合には、一日の総投薬量をいくつかに分けて投与してもよい。
【0032】
本化合物および/またはこの化合物の薬理学上許容されうる塩の投与の量および頻度は、その患者の年齢、状態および体格、ならびに処置される疾患の重篤度などの因子を考慮して、主治医の判断に従って調節される。経口投与のための代表的な一日の推奨投与量レジメンは、1日あたり、約1mg〜約500mg、好ましくは、1日あたり、約1mg〜約200mgの範囲とすることができ、これらは2〜4回に分けて投与され得る。
【0033】
本発明は、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物、または本化合物の薬理学上許容されうる塩または本化合物の溶媒和物と、薬学的に受容可能な担体、賦形剤または希釈剤とを含むキットも提供する。かかるキットは、当該キット内の一つ以上の容器内に上記成分を含み得る。
【0034】
本化合物を化粧品に添加して用いる場合には、当該化合物が添加された化粧品の具体的な形態としては、例えば、液状、乳状、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、エアゾール、ムース等をあげることができる。ローションは、例えば、懸濁剤、乳化剤、保存剤等の化粧品添加剤を用いて、通常の方法に従って製造することができる。
該化粧品の投与量は、投与される患者の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明の組成物の種類、投与形態等によって異なるが、通常ヒト成人で有効成分量として約0.01mg〜約50mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
【0035】
本化合物を食品添加物として用いる場合には、当該添加物が添加された食品の具体的な形態としては、例えば、粉末、錠剤、飲料、摂取可能なゲル若しくはシロップとの混合液状物、例えば、調味料、和菓子、洋菓子、氷菓、飲料、スプレッド、ペースト、漬物、ビン缶詰、畜肉加工品、魚肉・水産加工品、乳・卵加工品、野菜加工品、果実加工品、穀類加工品等の一般的な飲食物や嗜好物等をあげることができる。また、家畜、家禽、蜜蜂、蚕、魚等の飼育動物のための飼料や餌料への添加も可能である。
投与量は、投与される患者の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明の組成物の種類、投与形態等によって異なるが、通常ヒト成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明する。
【0037】
実施例1 実施例1−1〜1−6に、本化合物の合成を記す。
【0038】
実施例1−1 本化合物[化合物番号(6)]の合成
レゾルシノール0.68g及びエチル 2-ベンジル-4,4,4-トリフルオロ-3-オキソブタノエート(WO96/12706公報参照)1.70gのトリフルオロ酢酸25ml溶液を、還流下に112時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供することにより、化合物番号(6)のクマリン化合物の淡黄色結晶0.22gを得た。
1H−NMR(270MHz,DMSO-d6)δ(ppm):4.12(s,2H),6.82(d,1H,J=2.5Hz),6.91(dd,1H,J=2.5Hz,8.9Hz),7.14〜7.32(5H),7.62(dq,1H,J=2.6Hz,8.9Hz),10.84(s,1H)
【0039】
実施例1−2 本化合物[化合物番号(7)]の合成
(1)2,4‐ジヒドロキシベンズアルデヒド3.00g、プロピオン酸ナトリウム4.50g、無水プロピオン酸7.54g及びピペリジン0.4mlの混合物を、還流下に1時間30分攪拌した。反応液を氷水に注加し、析出物を濾取して酢酸エチルに溶解し、有機層を1規定塩酸及び水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥して濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し(溶離液:アセトン/ヘキサン=1/5)、7‐プロピオニルオキシ‐3‐メチル‐2H‐クロメン‐2‐オンの白色結晶1.20gを得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ(ppm):1.20〜1.40(3H),2.21(s,3H),2.55〜2.75(2H),7.01(dd,1H,J=1.9Hz,6.5Hz),7.04(d,1H,J=1.6Hz),7.41(dq,1H,J=1.9Hz,8.4Hz),7.50(s,1H)
(2)7‐プロピオニルオキシ‐3‐メチル‐2H‐クロメン‐2‐オン1.05gの四塩化炭素20ml溶液に、N‐ブロモスクシイミド0.82g及び過酸化ベンゾイル20mgを添加し、還流下で4時間加熱攪拌した。室温に冷却後不溶物を濾別し、濾液を濃縮してシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに供し(溶離液:クロロホルム)、7‐プロピオニルオキシ‐3‐ブロモメチル‐2H‐クロメン‐2‐オンの白色固体1.22gを得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ(ppm):1.25〜1.35(3H),2.55〜2.75(2H),4.42(s,2H),7.05〜7.25(2H),7.51(d,1H,J=8.4Hz),8.31(s,1H)
(3)水素化ナトリウム(60%油性)80mgをDMF15mlに懸濁し、ここに氷冷下に2‐メルカプトピリジン0.23gを添加して室温で30分撹拌した。前項で得られた7‐プロピオニルオキシ‐3‐ブロモメチル‐2H‐クロメン‐2‐オン0.63gを室温で添加し、室温で1時間30分撹拌した。反応液を氷水に注加し、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗った後濃縮してシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに供し(溶離液:ヘキサン/アセトン=3/1)、化合物番号(7)のクマリン化合物の白色固体0.46gを得た。
1H‐NMR(270MHz,DMSO-d6)δ(ppm):1.05〜1.25(3H),2.62(q,2H,J=7.6Hz),4.27(s,2H),7.12(t,1H,J=3.8Hz),7.13(d,1H,J=8.1Hz),7.26(s,1H),7.32(d,1H,J=8.1Hz),7.63(t,1H,J=8.1Hz),7.73(d,1H,J=7.3Hz),8.09(s,1H),8.48(dd,1H,J=1.1Hz,4.1Hz)
【0040】
実施例1−3 本化合物[化合物番号(8)]の合成
7‐プロピオニルオキシ‐3‐(2‐ピリジルチオメチル)‐2H‐クロメン‐2‐オン0.26gのメタノール20ml溶液に、室温で水酸化ナトリウム0.19gのメタノール20ml溶液を添加した。室温で1時間撹拌した後、10%塩酸及び5%炭酸カリウム水溶液で反応液をpH7とし、析出物を濾取して水洗して乾燥することにより、化合物番号(8)のクマリン化合物の淡黄色結晶0.21gを得た。
1H‐NMR(270MHz,DMSO‐d6)δ(ppm):4.22(S,2H),6.70(s,2H),6.74(dd,1H,J=1.1Hz,10.5Hz),7.12(dt,1H,J=1.1Hz,5.9Hz),7.31(d,1H,J=8.4Hz),7.49(d,1H,J=8.4Hz),7.63(t,1H,J=8.1Hz),7.97(s,1H),8.47(d,1H,J=4.9Hz),10.53(broad s,1H)
【0041】
実施例1−4 本化合物[化合物番号(9)]の合成
(1)7‐アセトキシ‐3,4‐ジメチル‐2H‐クロメン‐2‐オン4.00gの四塩化炭素70ml溶液に、N‐ブロモスクシイミド3.06g及び過酸化ベンゾイル120mgを添加し、還流下で1時間加熱攪拌した。室温に冷却後析出粉体を濾別して、これをシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに供し(溶離液:クロロホルム)、7‐アセトキシ‐3‐ブロモメチル‐4‐メチル‐2H‐クロメン‐2‐オンの白色粉体4.72gを得た。
1H−NMR(270MHz,CDCl3)δ(ppm):2.35(s,3H),2.51(s,3H),4.56(s,2H),7.11(dd,1H,J=2.2Hz,10.3Hz),7.13(s,1H),7.68(dd,1H,J=0.5Hz,9.1Hz)
(2)水素化ナトリウム(60%油性)77mgをDMF15mlに懸濁し、ここに氷冷下に2‐メルカプトピリジン213mgを添加して室温で30分撹拌した。前項で得られた7‐アセトキシ‐3‐ブロモメチル‐4‐メチル‐2H‐クロメン‐2‐オン600mgを室温で添加し、室温で1夜撹拌した。反応液を氷水に注加し、酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗った後濃縮してシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに供し(溶離液:トルエン/酢酸エチル=9/1)、化合物番号(9)のクマリン化合物の白色粉体0.38gを得た。
1H‐NMR(270MHz,DMSO-d6)δ(ppm):2.31(s,3H),2.60(s,3H),4.45(s,2H),7.15(dd,1H,J=1.0Hz,4.9Hz),7.19(dd,1H,J=2.3Hz,8.7Hz),7.28(d,1H,J=2.3Hz),7.33(dt,1H,J=1.0Hz,8.1Hz),7.66(dt,1H,J=1.8Hz,7.7Hz),7.87(d,1H,J=8.7Hz),8.50(dq,1H,J=1.0Hz,4.9Hz)
【0042】
実施例1−5 本化合物[化合物番号(10)]の合成
7‐アセトキシ‐4‐メチル‐3‐(2‐ピリジルチオメチル)‐2H‐クロメン‐2‐オン0.28gのメタノール28ml溶液に、室温で水酸化ナトリウム0.13gのメタノール28ml溶液を添加した。室温で1時間撹拌した後、10%塩酸及び5%炭酸カリウム水溶液で反応液をpH7とし、析出物を濾取して水洗して乾燥することにより、化合物番号(10)のクマリン化合物の淡黄色結晶145mgを得た。
1H‐NMR(270MHz,DMSO‐d6)δ(ppm):2.48(s,3H),4.40(s,2H),6.71(dd,1H,J=0.7Hz,2.3Hz),6.81(dd,1H,J=2.5Hz,8.7Hz),7.15(dd,1H,J=1.0Hz,4.9Hz),7.32(dd,1H,J=0.8Hz,7.9Hz),7.64(d,1H,J=7.2Hz),7.60〜7.70(1H),8.49(dt,1H,J=1.0Hz,4.9Hz),10.57(broad s,1H)
【0043】
実施例1−6 本化合物[化合物番号(11)]の合成
(1)7‐ヒドロキシ‐3‐メチル‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オン240mg(特開昭61−43183公報参照)と無水酢酸3.11gとを室温で混合し、120℃に昇温した後2時間保温した。室温に冷却した後、水100mlを添付し、析出物を濾取して水及びヘキサンで洗浄して乾燥することにより、7‐アセトキシ‐3‐メチル‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オンの白色結晶242mgを得た。
1H‐NMR(270MHz,CDCl3)δ(ppm):2.35(s,3H),2.44(q,3H,J=3.5Hz),7.11(dd,1H,J=2.4Hz,8.9Hz),7.17(d,1H,J=2.4Hz),7.78(dq,1H,J=2.4Hz,9.0Hz)
(2)7‐アセトキシ‐3‐メチル‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オン200mgの四塩化炭素40ml溶液に、N‐ブロモスクシイミド127mg及び過酸化ベンゾイル18mgを添加し、還流下で4時間加熱攪拌した。室温に冷却後析出粉体を濾別して、これをチオ硫酸ナトリウム水溶液、水及びヘキサンで洗浄して乾燥することにより、7‐アセトキシ‐3‐ブロモメチル‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オンの白色粉体108mgを得た。
1H‐NMR(270MHz,CDCl3)δ(ppm):2.36(s,3H),4.68(q,2H,J=1.6Hz),7.15(dd,1H,J=2.4Hz,9.1Hz),7.22(d,1H,J=2.4Hz),7.84(dq,1H,J=2.4Hz,9.0Hz)
(3)水素化ナトリウム(60%油性)13mgをDMF2.5mlに懸濁し、ここに氷冷下に2‐メルカプトピリジン39mgを添加して室温で30分撹拌した。前項で得られた7‐アセトキシ‐3‐ブロモメチル‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オン159mgのDMF5ml溶液を室温で添加し、室温で2時間撹拌した。反応液に水40mlを加え、酢酸エチル100mlで抽出した後濃縮してシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに供し(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)、7‐アセトキシ‐3‐(2−ピリジルチオメチル)‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オンの白色結晶80mgを得た。
1H‐NMR(270MHz,CDCl3)δ(ppm):2.34(s,3H),4.69(q,2H,J=1.3Hz),6.99(ddd,1H,J=1.3Hz,5.0Hz,7.3Hz),7.10(dd,1H,J=2.2Hz,8.9Hz),7.15〜7.19(m,1H),7.46(dt,1H,J=1.9Hz,8.1Hz),7.77(dq,1H,J=2.1Hz,8.9Hz),8.41(dq,1H,J=0.8Hz,5.4Hz)
(4)7‐アセトキシ‐3‐(2−ピリジルチオメチル)‐4‐トリフルオロメチル‐2H‐クロメン‐2‐オン70mgのメタノール5ml溶液に、室温で水酸化ナトリウム28mgのメタノール5ml溶液を添加した。室温で1時間撹拌した後、10%塩酸及び5%炭酸カリウム水溶液で反応液をpH7とし、析出物を濾取して水洗して乾燥することにより、化合物番号(11)のクマリン化合物の淡黄色粉体31.6mgを得た。
1H‐NMR(270MHz,DMSO‐d6)δ(ppm):4.53(d,2H,J=1.3Hz),6.79(d,1H,J=2.4Hz),6.88(dd,1H,J=2.1Hz,9.0Hz),7.14(dd,1H,J=4.8Hz,7.3Hz),7.31(d,1H,J=7.8Hz),7.58(dd,1H,J=2.7Hz,9.1Hz),7.64(dt,1H,J=1.9Hz,8.0Hz),8.43(d,1H,J=4.9Hz),10.89(broad,1H)
【0044】
実施例2 本化合物が有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害能力の測定
(2−1)ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミドの作製
ヒト精巣cDNA(MTC Multiple Tissue cDNA Panels / Human II、クロンテック)からPCR法によりヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子のcDNAをクローニングした。配列番号1で示される塩基配列からなるプライマーおよび配列番号2で示される塩基配列からなるプライマーをそれぞれ終濃度0.4μMとなるよう添加し、耐熱性DNAポリメラーゼ(TaKaRa LA Taq、タカラバイオ)を使用して、PCR反応をサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700、アプライドバイオシステム)にて行った。反応条件としては、95℃で5分間保温した後、95℃30秒間、次いで59℃1分間、さらに72℃45秒間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行い、さらに72℃で7分間保温した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、約1.1kbのDNAを回収した。
発現ベクターpcDNA3.1/Hyg(インビトロジェン)を制限酵素HindIII(タカラバイオ)で消化した後、T4 DNA Polymerase(DNA Blunting Kit、タカラバイオ)で処理してその末端を平滑化した。
上記で得られた約1.1kbのDNAと直鎖化された発現ベクターとを混合し、T4 DNA Ligase(DNA Ligation Kit Ver.2.1、タカラバイオ)を用いて連結した後、大腸菌DH5のコンピテントセル(タカラバイオ)に導入した。得られた形質転換体から、ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミドを得た。当該プラスミドにクローニングされたDNAの塩基配列は、公的データベースであるGenBankに登録番号U05659にて開示されているヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の相当する塩基配列と一致した。
(2−2)ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの一過性発現細胞の調製
HeLa細胞1.6x106細胞を10%FCS含有D-MEM培地に浮遊させた10mLの細胞浮遊液を直径10cmの細胞培養用ディッシュにまき、20〜24時間CO2インキュベーターで静置した。(2−1)で得られたヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミド2μgをFCS不含D-MEM培地300μlに添加し、静かに2回ピペッティングし軽く混合させた。得られたDNA溶液にトランスフェクション試薬(PolyFect Transfection Reagent、キアゲン)を50μl添加し、ピペッティングを5回行って混ぜ、10分間室温で静置した。このDNA溶液に1mLの10%FCS含有D-MEM培地を加えピペッティングを2回行って当該DNA溶液を混ぜた。20〜24時間静置後の上記の細胞の培地を新しい培地8mLに交換し、前記DNA溶液を添加した。20〜24時間CO2インキュベーターで静置した後、細胞をトリプシンで剥がして96ウェルプレートにまいて酵素活性測定に用いた。
(2−3)酵素活性の測定
ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを一過性に発現させたHeLa細胞にアンドロステンジオンを添加し、転化されて生じたテストステロンの濃度を測定する方法で評価した。(2−2)で調製されたヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現プラスミドが導入されたHeLa細胞を10%FCS含有D-MEM培地に浮遊させた。得られた細胞浮遊液を96ウェルプレートにウェルあたり1x104細胞(100μL)添加し、20〜24時間CO2インキュベーターで静置した。静置後に培地を抜き取り、新たにFCS不含培地を80μL 添加した。1%DMSO含有FCS不含培地で希釈した化合物溶液を10μL添加して30分間CO2インキュベーターで静置した。そこに、FCS不含培地で500nMとなるように希釈したアンドロステンジオン溶液10μLを添加して20分間CO2インキュベーターで静置した。その後、時間分解蛍光法試薬(DELFIA Testosterone Reagents、パーキンエルマー)を用いて、当該試薬付属の手順書に従って培地中のテストステロンの濃度を測定した。測定はマルチファンクショナル・プレートリーダー(テカン社製、ウルトラ)を使用した。測定波長は励起340nm、蛍光は612nm。Lag timeは400μsec。Integration timeは400μsec。0%阻害の対照値として、上記の20〜24時間静置した細胞に1%DMSO含有FCS不含培地および500nMのアンドロステンジオン溶液をそれぞれ10μL添加した後、同様にテストステロン濃度を測定した。また、100%阻害の対照値として、上記の20〜24時間静置した細胞に1%DMSO含有FCS不含培地およびFCS不含培地をそれぞれ10μL添加した後、同様にテストステロン濃度を測定した。このようにして得られた測定値から、各濃度の各化合物による17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性の阻害率を計算した。
化合物番号(1)〜(7)、(9)〜(11)のいずれかで表される化合物(A)は、濃度10μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が80%以上であった。また、化合物番号(8)で表される化合物(A)は、濃度10μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が70%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によって、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの活性を阻害し、組織における男性ホルモン活性の亢進を抑制することにより、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防するための組成物等の開発および提供することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0046】
配列番号1
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号2
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式中、
は、水素原子、C1-C4アルキル基又はトリフルオロメチル基を表し、
は、単数のハロゲン原子で置換されてもよいフェニル基、同一又は相異なる複数のハロゲン原子で置換されたフェニル基、又は、ピリジル基を表し、
kは、0又は1を表し、
は、水素原子又はC1-C4アルキルカルボニル基を表す。]
で示されるクマリン化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物。
【請求項2】
式(II)

[式中、
IIは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、
IIは、ピリジル基又はフェニル基を表し、
kは、0又は1を表し、
IIは、水素原子又はC1-C4アルキルカルボニル基を表す。
ただし、XIIがメチル基であり、かつ、YIIがフェニル基であるとき、kは0ではない。]
で示されるクマリン化合物。
【請求項3】
式(II')

[式中、
II'は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表し、
II'は、2−ピリジル基又はフェニル基を表し、
k'は、0又は1を表し、
II'は、水素原子又はC1-C2アルキルカルボニル基を表す。
ただし、XII'がメチル基であり、かつ、YII'がフェニル基であるとき、k'は0ではない。]
で示されるクマリン化合物。
【請求項4】
式(III)で示されるクマリン化合物。

【請求項5】
式(IV)で示されるクマリン化合物。

【請求項6】
式(V)で示されるクマリン化合物。

【請求項7】
式(VI)で示されるクマリン化合物。

【請求項8】
請求項2に記載のクマリン化合物と不活性担体とを含有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物。
【請求項9】
請求項3〜7に記載のクマリン化合物と不活性担体とを含有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための使用。
【請求項11】
3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための請求項2に記載のクマリン化合物の使用。
【請求項12】
3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための請求項3〜7のいずれか一項に記載のクマリン化合物の使用。
【請求項13】
3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、
治療的に有効な量の請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物を該阻害を必要とする患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項14】
男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、
治療的に有効な量の請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物を該処置または予防を必要とする患者に投与することを特徴とする方法。
【請求項15】
男性ホルモン依存性疾患が、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群である、請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2009−84269(P2009−84269A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217827(P2008−217827)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】