説明

クラッドシート製品

本発明は、コアシート、および一方または両方のコアシート表面上にあるクラッド層を含んでなり、該コアシートが、AA6000-シリーズ合金のアルミニウム合金からなり、少なくとも一方のクラッドが、Cu含有量が0.25重量%未満であるAA6000-シリーズ合金のアルミニウム合金からなる、クラッドシート製品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、平らな縁形成(hemming)が可能なAA6000またはAA6xxx-シリーズアルミニウムシートに関するものであり、このシートは自動車用車体シートとして応用されることができる。
【発明の背景】
【0002】
一般的に、車両の外側車体パネルは、成形性、耐押込性、耐食性および表面品質に優れた物理的特性を必要とする。しかし、従来のAA5000-シリーズ合金シートは、プレス成形の後でも機械的強度が低く、表面品質が劣る場合もあるので、好ましくない。従って、AA6000-シリーズシート合金の使用が増加している。AA6000-シリーズシート合金は、塗装後の焼き付け硬化性が優れ、その結果、機械的強度が高いので、クラスA表面仕上げと組み合わせて、より薄いゲージの、より軽量のシートを製造することができる。
【0003】
車体部品、例えばボンネット等は、一般的に内側部品と外側部品との間の機械的組立により製造される。例えば、適切な長さのフランジを調製し、車両の外側パネルの末端に形成する。内側パネルは、外側パネルの内側上に固定し、外側パネルのフランジを折り曲げ、機械的に結合する。この工程全体を「縁形成」と呼ぶ。
【0004】
縁形成工程では、平らな縁形成(180°加工)を行うのが好ましいが、この加工は、加工条件が非常に厳密であり、曲げ中心半径(r)とシートの厚さ(t)の比(r/t)が比較的低い。しかし、AA6000-シリーズシート製品の曲げ特性は、AA5000-シリーズ合金の曲げ特性よりも劣っている。従って、プレスにより誘発される特性が比較的高い部品(即ち変態または変形が大きい部品)で平らな縁形成を行うことにより、欠陥率が高くなる。
【0005】
米国特許第5,266,130号は、自動車工業向けのアルミニウム合金パネルの製造方法を開示している。この合金は、必須成分として広範囲のSiおよびMgを含み、Mn、Fe、Cu、Ti、等も含むことができる。
【0006】
米国特許第5,616,189号は、自動車工業向けのアルミニウムシートの製造方法を開示している。この合金から製造されたアルミニウムシートは、85℃における5時間の予備時効処理にかけている。この特許に使用されているアルミニウムシートは、連続鋳造シートであり、この経路により製造されるシート製品は、曲げ特性が劣ることが分かっている。
【0007】
米国特許第6,780,259号は、Mg、SiおよびMn含有量を注意深く選択し、特殊な予備時効処理を行い、縁形成を含む曲げ特性を改良した、自動車用パネルの形成に使用する、AA6xxxシリーズのアルミニウム合金の製造方法を開示している。
【0008】
国際特許出願第WO-98/24571号は、コンパウンドストランド鋳造により得られる多層金属複合材料製品を開示している。この製品は、コア、好ましくはアルミニウム合金、そのコアの少なくとも片側で、コアに結合した中間層、およびその中間層に結合したクラッド材を含んでなる。製品の用途に応じて、複合材料製品の外側表面を形成するクラッド材は、ろう付けシートに使用するアルミニウムろう付け合金、鏡のような表面仕上げを得るためのAA1xxx-シリーズ合金、あるいは耐食性を改良するための亜鉛含有アルミニウム合金または亜鉛もしくは亜鉛合金でよい。
【0009】
これらの開示にも関わらず、亀裂を生じることなく、複雑な部品に容易に成形でき、良好な強度および成形性レベルを与える、自動車用部品または部材を製造するためのアルミニウム合金シートの選択および方法が強く求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、縁形成レベルが一定しているAA6000-シリーズシート製品を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、自動車用部品または部材を製造するための一定したレベルの縁形成性および十分な強度を有するAA6000-シリーズシート製品を提供することである。
【0012】
これらの、および他の目的およびさらなる利点は、コアシート、および一方または両方のコアシート表面上にあるクラッド層を有し、該コアシートが、AA6xxx-シリーズ合金のアルミニウム合金からなり、少なくとも一方のクラッドが、Cu含有量が0.25重量%未満であるAA6xxx-シリーズ合金の異なったアルミニウム合金からなるクラッドシート製品に関する本発明により、十二分に達成される。
【0013】
下記の内容から明らかなように、他に指示がない限り、合金の名称は、2006年にアルミニウム協会から出版されたAluminum Standards and Data and Registration Recordsにおけるアルミニウム協会名称による。
【0014】
本発明に関して、用語「シート」または「シート製品」は、せん断された、細長く切った、または鋸引きした縁部を有する厚さ0.15 mm〜2.5 mmの圧延された製品を意味する。
【0015】
本発明に関して、用語「自動車車体シート」または「ABS」は、自動車車体用途、特に外装パネル、内装パネルおよび構造部品、用のアルミニウム合金シートを意味する。
【0016】
本発明に関して、用語「自動車用」は、本明細書に記載する自動車および他の車両用の部品または部材、および他の、類似の構造を有する輸送部品または部材を包含するものとする。
【0017】
合金組成または好ましい合金組成の全ての説明に関して、他に指示が無い限り、百分率は重量で表示する。
【好ましい実施態様の詳細な説明】
【0018】
本発明によれば、コアシートと、一方または両方のコアシート表面上にあるクラッド層とを有するクラッドシート製品であって、該コアシートが、AA6000-シリーズ合金のアルミニウム合金からなり、少なくとも一方のクラッドが、Cu含有量が0.25重量%未満、好ましくは0.20重量%未満、より好ましくは0.10重量%未満であるAA6000-シリーズ合金のアルミニウム合金からなるクラッドシート製品が提供される。
【0019】
本発明では、コアシートの特性は、クラッドシート製品の表面に課せられる要求から分離されている。従って、コアシート合金は、できるだけ良好な機械的要求に適合するように選択することができるのに対し、クラッド層は、特に、環境との相互作用に対する要求およびその形成特性に適合するように選択することができる。クラッドシート製品は、クラッド加工されていないコアシートと比較して、改良された平らな縁を形成することができ、クラッドシート製品は、自動車用車体シートとして使用することができる。
【0020】
クラッド層用の、コアシートの合金よりも軟らかい(またはより低い硬度を有する)合金を選択することにより、全体としてのクラッドシート製品の強度を、最終的なコアシートとして十分に高いレベルに維持したまま、縁形成挙動が改良される。機械的特性はコアシートにより決定されるので、クラッドシート製品用のAA6000-シリーズからコア材料を選択することにより、この用途に使用される標準的なシート合金に匹敵する優れた機械的特性が得られる。本発明のクラッドシート製品の試料に対して行った試験は、クラッドの厚さと機械的特性との間には重大な相関関係が無いことを示しており、従って、クラッド層に対して課せられる要求からコアシート材料のバルク特性を分離することに関して、上記のことが確認された。
【0021】
クラッド層のCu含有量を上記の量に調整し、良好な腐食性能を維持し、特に、クラッドシート製品を自動車用車体シートとして使用する場合に重要な特性である糸状腐食耐性を制御する。
【0022】
AA6000-シリーズクラッドを使用することにより、硬度が遙かに低いAA1000-またはAA3000-シリーズクラッド層と比較して、クラッドシート製品を取り扱う際のクラッドシート製品の耐引掻き性が改良される。
【0023】
コアおよびクラッドシートの両方にAA6000-シリーズを使用することにより、組成は異なっているが、合金組成が非常に類似しているために、クラッドシート製品は非常に容易に循環使用することができ、そのようなクラッドシート製品を製造する際のスクラップ管理のある程度の融通性も得られる。
【0024】
一実施態様では、コアシートが、Cuを1.1%まで、好ましくは0.9%までさらに含んでなるAA6000-シリーズ合金である。
【0025】
好ましい実施態様では、コアシートは、AA6016、AA6022、AA6056、AA6013、およびAA6111-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金である。
【0026】
これらのアルミニウム合金は、塗装および焼き付け後の強度、曲げ性のバランスが良好であり、押込に耐える十分な強度を有する。
【0027】
好ましい実施態様では、本発明のクラッドシート上のクラッド層は、低合金AA6000-シリーズアルミニウム合金、好ましくは本発明のクラッドシート製品の曲げ性、縁形成性能および衝突性能を改良するためにMgSi組成を実質的に釣り合わせたAA6000-シリーズを含んでなる。好ましいアルミニウム合金は、化学組成が、重量%で、
Si 0.40〜0.9、好ましくは0.5〜0.9
Mg 0.40〜0.8、好ましくは0.4〜0.7
Fe 最大0.35、好ましくは<0.25
Cu <0.25、好ましくは<0.20、より好ましくは<0.10
Mn <0.50
Cr <0.30
V <0.30
Zr <0.30
Zn <0.3、好ましくは<0.1
Ti <0.1
その他および不可避な不純物 それぞれ<0.05、合計0.15
残部アルミニウム
である。
【0028】
AA6005合金、特にAA6005A-シリーズ合金を選択するのがより好ましいが、但し、両方の合金に対して、Cu含有量は<0.25%、好ましくは<0.20%である。AA6005A合金に関して、Mn+Crの総計は、好ましくは0.50%未満、より好ましくは0.1〜0.50%の範囲内である。
【0029】
クラッド層として特にAA6005またはAA6005A-シリーズアルミニウム合金を選択することにより、クラッドシート製品の、環境に対して優れた性能を得ることができる。例えば、その、粒界腐食に対する感度を妥当な限度内に抑え、さらにその、特に塗装した表面との組合せにおける、糸状腐食に対する感度を下げることができる。AA6005およびAA6005A-シリーズ合金は、特にMgSi組成を釣り合わせた場合、AA6000-シリーズコアシートよりも、縁形成性能が大きく改良される。
【0030】
クラッドシート製品の寸法は、多くの様式で(ほとんどの場合、具体的な用途および競合する要求に応じて)変えることができるが、自動車用車体シートとしての好ましい用途では、コア材料は厚さが約0.5〜2 mm、好ましくは約0.7〜1.3 mm、より好ましくは約1 mmである。クラッド層は、コアシートよりはるかに薄く、各クラッド層は、クラッドシート製品の層厚の約1〜25%を構成する。クラッド層は、より典型的にはクラッドシートの層厚の約2〜14%を構成する。
【0031】
一実施態様では、クラッド層は、一方のコアシート表面上にのみ施す。
【0032】
別の実施態様では、クラッド層を、両方のコアシート表面上に施し、好ましくは、各クラッド層は同じAA6000-シリーズ合金から選択して製造する。その結果、複合材料は、優れた特性のバランス、即ち強度および成形性 vs. 腐食性能、耐押込性および縁形成性能、を発揮する。
【0033】
クラッドシート製品の一実施態様では、少なくともAA6000-シリーズコアシートを、好ましくはクラッド層も、T4またはT4P焼戻し条件にかけ、この状態で、クラッドシート製品を形状パネルまたは構造部品に成形する。この条件で、クラッドシート製品は、強度、延性、および破損を引き起こす変形の量を測定することにより評価して、成形性における最良のバランスを与える。「T4P」焼戻しは、シート製品が、予備時効処理によるT4製法で製造される条件である。予備時効処理は、クラッドシート製品を、車両用の形状パネルまたは構造部品に成形する前の手順における最後の工程である。「T4P」は、典型的には合金シートが溶体化熱処理され、予備時効され、少なくとも数時間常温時効される製法を示す。
【0034】
本発明の別の態様では、本発明は、本発明のクラッドシート製品から製造された、成形された自動車用車体パネル、例えば内側パネルまたは外側パネル、もしくは成形された自動車用構造部品または部材、に関する。本発明のクラッドアルミニウムシートは、多くの異なった自動車用構造部材、例えばダッシュパネル、フロアパネル、ドアパネル、パネル用の補強体、等、に変形できる、車両または自動車用シートとして使用するための強度および成形性を有する材料を提供する。
【0035】
別の態様により、本発明は、コア材料の少なくとも片側にクラッドを付ける、クラッドシート製品の製造方法に関する。本発明により、コア材料は、規定されたAA6000-シリーズのアルミニウム合金を含んでなり、規定されたクラッドシートをコア材料に、ロールボンディングにより取り付け、コア合金とクラッドとの間の必要な冶金学的結合を達成する。
【0036】
そのようなロールボンディング製法は、非常に経済的であり、所望の特性を発揮する非常に効果的な複合材料シートを製造する。
【0037】
無論、ロールボンディング製法は、幾つかの追加処理工程、例えばクラッドシート製品の形態にある自動車用車体シートの最終的な特性を得るための焼きなまし、を伴うことができる。
【0038】
そのようなロールボンディング製法を行って本発明のクラッド製品を製造する場合、ボンディングの際に、コアおよびクラッドの両方の厚さが低下するのが好ましい。
【0039】
例えば、コア材料は、両側に初期厚さ約24 mmのクラッドを備えた、初期厚さ約400 mmのブロックでよい。ロールボンディングの後、コア材料の最終的な幅は約1 mmであり、クラッドの最終的な厚さは、例えば約60μmである。
【0040】
クラッドシート製品の初期寸法および最終寸法は、ロールボンディング製法の特性、ならびに最終的なクラッドシート製品に必要な特性の両方によって決定されることに注意する。
【0041】
ロールボンディング製法は、様々な様式で実行することができる。例えば、ロールボンディング製法は、熱間圧延および冷間圧延の両方を含むことが可能である。
【0042】
さらに、ロールボンディング製法は、一工程製法でも、連続する圧延工程の際に材料のゲージが下がる多工程製法でもよい。個々の圧延工程は、他の処理工程、例えば焼きなまし工程、加熱工程、冷却工程、等により分離されていてもよい。
【0043】
本発明の別の実施態様では、規定されたクラッドシートをコア材料に、例えばここに参考として含めるヨーロッパ特許第1638715号に開示されている鋳造技術により、取り付ける。
【0044】
上記および請求項に記載するように、本発明のクラッドシート製品は、自動車用車体シートとして使用する。
【実施例】
【0045】
本発明を本発明の非限定的な実施態様を参照しながら説明する。
【0046】
例1
工業的規模で、2種類の異なった裸シート製品を製造し、T4P焼戻しで1 mmのシート製品に加工した。これらの2種類の合金は、どちらも自動車用車体シート用途に使用されることが多いAA6016およびAA6111-シリーズ合金であった。やはり工業的規模で、同じ熱履歴(例えば560℃で10時間の均質化)を使用する同じ焼戻しでクラッドシート製品を製造したが、その際、AA6016およびAA6111-シリーズ合金の両側に、通常ロールボンディングにより、AA6005A-シリーズ合金組成物をクラッド加工した。熱間圧延により、クラッド製品を中間ゲージ7.5 mmに、ホット-ミル出口温度約300℃で圧延し、次いで、最終ゲージ1 mmに冷間圧延した。クラッドシートは、総厚が1 mmであり、各クラッド層の厚さが55μmであった。
【0047】
AA6016およびAA6005Aの正確な合金組成を表1に示す。製品は全て、560℃で溶体化熱処理し、次いで急冷し、1時間以内に約80℃に再加熱し、続いて室温にコイル冷却し、次いで室温で2週間後、いわゆるT4P-焼戻しで、その強度、総伸長および縁形成性能に関して試験した。強度、粒界腐食耐性および耐押込性を、模擬成形および塗料焼き付けサイクルの後に測定したが、その際、T4P-焼戻しにおける製品をさらに2%冷間伸長し、続いて185℃で20分間熱処理した。
【0048】
裸シート製品およびクラッドシート製品の両方を、T4P条件で、縁形成性能を、平縁形成試験(ASTM規格E290-97Aに含まれるように、試料を曲げ半径0.0 mmで180°折り曲げ)により試験し、続いて目視で評価した。採点は、下記の等級付け、即ち等級「5」は目に見える欠点無し、「4」は中程度の表面粗さ、「3」は深刻な表面粗さ、「2」は小さな表面亀裂、「1」は連続的な表面亀裂で行い、その際、さらに例えば3 1/4、3 1/2、および3 3/4の等級付けをさらに行った。
【0049】
さらに、裸AA6016シート製品およびAA6005Aでクラッド加工したAA6016を、引張試験に関するASTM規格EN10002により、それらの機械的特性に関して評価した。引張特性は、基準T4P-焼戻しおよび模擬成形および塗料焼き付けサイクルの後にも測定した。模擬成形および塗料焼き付けサイクル後の粒界耐食性(「IGC」)は、ヨーロッパ規格ASTM G110-92により測定し、結果を浸透深度μmで表示する。さらに、模擬成形および塗料焼き付けサイクル後の静止押込耐性を測定したが、その際、製品を固定し、続いて半径63.5 mmの鋼製押込装置で、速度2 mm/分で負荷をかけ、力-変位曲線から静止押込耐性F0.1mmを、深さ0.1 mmの凹みを付けるのに必要な力(N)として測定した。全ての試験結果を表2に示すが、「n.t.」は、試験しなかったことを表す。
【0050】
表1 AA6016およびAA6005Aの合金組成重量%、残部アルミニウムおよび不可避な不純物

合金 Si Fe Cu Mn Mg Cr Ti
AA6016 1.0 0.23 0.15 0.07 0.60 0.03 0.02
AA6005A 0.6 0.20 0.09 0.12 0.55 0.01 0.01
【0051】
表2 裸合金シートおよびAA6005Aでクラッド加工した合金シートの試験結果

特性および条件 裸AA6016 裸AA6111 AA6016、 AA6111、
AA6005Aで AA6005Aで
クラッド加工 クラッド加工
T4Pでの降伏強度(MPa) 141 n.t. 137 n.t.
T4Pでの総伸長(%) 23.8 n.t. 24.7 n.t.
T4Pでの縁形成 1 3/4 1 1/2 3 1/4 3 1/4
2%+185℃/20分後の 258 n.t. 253 n.t.
降伏強度
2%+185℃/20分後の 118 n.t. 76 n.t.
IGC(μm)
2%+185℃/20分後の 260 n.t. 256 n.t.
耐押込性F0.1mm (N)
【0052】
表2の結果から、AA6005A合金の薄いクラッド層を施すことにより、AA6016およびAA6111の両方の縁形成性能が改良され、裸AA6016およびクラッド-AA6016の比較から、粒界耐食性が大きく改良されることが分かる。これらの改良は、伸長により示されるように、高強度レベルおよび良好な成形性を維持しながら、耐押込性に悪影響を及ぼさずに、達成される。裸AA6016とクラッド-AA6016との間には、変動が通常の測定誤差範囲内にあるので、耐押込性に差は無いと考えられる。
【0053】
この例では、コア合金を、その製造上の実際的な理由から両側でクラッド加工しているが、当業者には直ちに明らかなように、単一のクラッド層のみを使用しても、同じ有益性を得ることができる。
【0054】
この例は、自動車用車体シートに好適なAA6000-シリーズ合金の縁形成性能が、それに好適なクラッド層を備えることにより、改良されると共に、耐食性が大きく改良され、コアシートの好ましい特性、例えばその強度、塗料焼付性能および耐押込性、も得られるという、本発明の原理を例示している。
【0055】
本発明は、上記の実施態様に限定されるものではなく、請求項により規定される本発明の範囲内で広範囲に変形することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシートと一方または両方のコアシート表面上のクラッド層とを含んでなるクラッドシート製品であって、前記コアシートが、AA6000-シリーズ合金のアルミニウム合金を有し、少なくとも一方のクラッドが、Cu含有量が0.25重量%未満、好ましくは0.20重量%未満であるAA6000-シリーズ合金のアルミニウム合金からなる、クラッドシート製品。
【請求項2】
前記コアシートが、Cuを1.1重量%以下、好ましくは0.9重量%以下さらに含んでなるAA6000-シリーズ合金である、請求項1に記載のクラッドシート製品。
【請求項3】
前記コアシートが、前記クラッドシートより硬い、請求項1または2に記載のクラッドシート製品。
【請求項4】
前記コアシートが、AA6016、AA6022、AA6056、AA6013、およびAA6111-シリーズ合金からなる群から選択されたアルミニウム合金を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項5】
前記クラッドシートの化学組成が、重量%で、
Si 0.40〜0.9
Mg 0.40〜0.8
Fe 最大0.35
Cu <0.25
Mn <0.50
Cr <0.30
V <0.30
Zr <0.30
Zn <0.3
Ti <0.1
それぞれ<0.05、合計0.15のその他および不可避な不純物、および残部アルミニウム
を含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項6】
前記クラッドシート中のCu含有量が<0.20%、好ましくは<0.10%である、請求項5に記載のクラッドシート製品。
【請求項7】
前記クラッドシート中のFe含有量が<0.25%である、請求項5に記載のクラッドシート製品。
【請求項8】
前記クラッドシート中のSi含有量が0.5〜0.9%である、請求項5に記載のクラッドシート製品。
【請求項9】
前記クラッドシート中のMg含有量が0.4〜0.7%である、請求項5に記載のクラッドシート製品。
【請求項10】
前記クラッドシートがアルミニウム合金AA6005またはAA6005Aを含んでなるが、但し、Cu含有量が<0.25%、好ましくは<0.20%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項11】
前記コアシートの厚さが約0.5〜2 mmである、請求項1〜10のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項12】
前記クラッドシート製品が、一方のシート表面上にのみクラッドを有するコアシートからなる、請求項1〜11のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項13】
前記クラッドシート製品が、両方のシート表面上にクラッドを有するコアシートからなり、好ましくは、両シート表面上の前記クラッドが、同じAA6000-シリーズ合金から製造されたものである、請求項1〜11のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項14】
前記一方または両方のクラッドが、前記クラッドシート製品の総厚の1〜25%、好ましくは2〜12%の厚さを有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項15】
少なくとも前記コアシートが、T4焼戻しまたはT4P焼戻しにある、請求項1〜14のいずれか一項に記載のクラッドシート製品。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のクラッドシート製品からなる自動車用車体シート。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のクラッドシート製品から製造された、自動車用車体パネル、好ましくは外側車体パネル。

【公表番号】特表2009−535510(P2009−535510A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508164(P2009−508164)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003450
【国際公開番号】WO2007/128391
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508319532)アレリス、アルミナム、デュッフェル、ベスローテン、フェンノートシャップ、メット、ベペルクテ、アーンスプラケレイクヘイト (3)
【氏名又は名称原語表記】ALERIS ALMINUM DUFFEL BVBA
【Fターム(参考)】