説明

クラッド基板、光電変換装置、薄膜太陽電池モジュール、クラッド基板の製造方法および薄膜太陽電池モジュールの製造方法

【課題】安全かつ低コストで耐熱性および絶縁性等の品質が良好な絶縁層を形成することができるクラッド基板およびその製造方法、このクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュール、ならびに薄膜太陽電池モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のクラッド基板は、金属からなる帯状の基体と、この基体の表面に設けられ、前記基板よりも幅が広い第1の金属材と、基体の裏面に設けられ、前記基板よりも幅が広い第2の金属材とを有する。第1の金属材および第2の金属材が基体に圧接されて基体を被覆するとともに、第1の金属材および第2の金属材は、その周縁部が接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の基体を金属材で包みこんだクラッド基板、このクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュール、クラッド基板の製造方法ならびに薄膜太陽電池モジュールの製造方法に関し、特に、安全かつ低コストで耐熱性および絶縁性等の品質が良好な絶縁層を形成することができるクラッド基板およびその製造方法、このクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュールならびに薄膜太陽電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アルミニウム基板に陽極酸化処理をして、耐熱性、絶縁性もしくは剛性基板として用いられている。
一方、図7に示すように、アルミニウム基板の耐熱性を高めるために、ステンレス鋼板または鋼板などの芯材102の表面102aおよび裏面102bに、それぞれ圧接または圧延処理によりアルミニウム材104、106を貼り合わせたクラッド基板100が知られている。
【0003】
一般に、高温圧延処理により作製したクラッド基板100は、高温に曝された場合、アルミニウム材104、106と鋼板などの芯材102との界面に金属間化合物が生成し、強度が劣化することが広く知られている。
そこで、クラッド基板100を、耐熱性基板として用いる場合は、例えば、特許文献1および特許文献2に記載されている常温または冷間圧接処理により貼り合わせる手法が用いられることが多い。
【0004】
図7に示すクラッド基板100の表面102aおよび裏面102bの両面に貼り合わされたアルミニウム材104、106に陽極酸化処理を施して、図8に示すように、アルミニウム材104、106に、陽極酸化膜からなる絶縁層108、110を形成し、耐熱性と同時に絶縁性および硬度の向上を図ったクラッド基板100aを得ることができる。このクラッド基板100aは、種々の用途に用いることができる。
例えば、特許文献3に記載されているように、絶縁性の陽極酸化膜を有するアルミニウム基板上に、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる半導体層を含む光電変換層を有する太陽電池がある。これ以外にも、有機ELディスプレイなどの基板としても利用することができる。
【0005】
図7に示す構造のクラッド基板100についての陽極酸化処理には、例えば、図9に示す陽極酸化処理装置200が用いられる。
図9に示す陽極酸化処理装置200においては、クラッド基板100は、図9中矢印で示す方向に搬送される。電解液208が貯溜された給電槽202にてクラッド基板100は給電電極210によって、プラスに荷電される。そして、クラッド基板100は、給電槽202においてローラ212によって上方に搬送され、ニップローラ214によって下方に方向変換された後、電解液216が貯溜された電解処理槽204に向けて搬送され、ローラ218によって水平方向に方向転換される。次に、クラッド基板100は、電解電極220によって、マイナスに荷電されることにより、その表面に陽極酸化膜が形成され、電解処理槽204を出たクラッド基板100が後工程に搬送される。陽極酸化処理装置200において、ローラ212、ニップローラ214およびローラ218によって方向転換手段が構成され、クラッド基板100は、給電槽202と電解処理槽204との槽間部において、ローラ212、214および218により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極210と電解電極220とは直流電源224に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−306098号公報
【特許文献2】特開2004−306458号公報
【特許文献3】特開2009−99973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図9に示す陽極酸化処理装置200を用いて、クラッド基板100を陽極酸化処理すると、芯材102であるステンレス鋼板に含まれる鉄と、電解液の反応が過剰に進行し、過大電流が生じたり、給電槽202と電解処理204との槽間部(ニップローラのところ)において発熱を生じたりする等、品質のみならず安全性およびコスト面でも大きな問題を生じる。
【0008】
そこで、図10(a)に示すように、クラッド基板100の両端部を、マスク材112で保護した後、図9に示す陽極酸化処理装置200により、陽極酸化処理を施す。これにより、上述の過大電流の発生および発熱の発生の問題を回避する方法が考えられる。
陽極酸化処理が終わった後、マスク材112を除去すれば、図10(b)に示すクラッド基板100bのように、両端部以外の両面が陽極酸化処理されて絶縁層108、110が形成される。この場合、両端部だけでなく裏面もマスク材112で覆うことにより、片面のみ陽極酸化処理することもできる。
【0009】
しかし、この場合において、マスク材112にコストがかかり、しかも、マスク材112自体は、最終的にはごみになるという問題点がある。更には、マスク材112の取り付け、および取り外しに手間が掛かるという問題点もある。
また、マスク材112で端面を覆う場合、端部の厚さがマスク材112のために厚くなり、その結果、パスロールに転接されハンドリングされる途中で折れが発生する可能性が高くなるという問題点がある。
更には、マスク材112の密着が不十分だった場合は、そこから電解液が入り込んで、端面での溶解が発生する可能性があるという問題点もある。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、安全かつ低コストで耐熱性および絶縁性等の品質が良好な絶縁層を形成することができるクラッド基板およびその製造方法、このクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュール、ならびに薄膜太陽電池モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本第1発明は、金属からなる帯状の基体と、前記基体の表面に設けられ、前記基板よりも幅が広い第1の金属材と、前記基体の表面に設けられ、前記基板よりも幅が広い第2の金属材とを有し、前記第1の金属材および前記第2の金属材が前記基体に圧接されて前記基体を被覆するとともに、前記第1の金属材および前記第2の金属材は、その周縁部が接合されていることを特徴とするクラッド基板を提供するものである。
【0012】
本発明においては、前記第1の金属材と前記第2の金属材とは、それぞれ前記基体側の面が直接接触して接合されていることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1の金属材と前記第2の金属材とは、いずれか一方が、他方を巻き込んだ状態で接合してもよい。
さらに、本発明においては、前記基体は、幅方向の両端部が、それぞれ端に向かうにつれて厚さが薄く形成されていることが好ましい。
さらにまた、本発明においては、少なくとも前記第1の金属材に絶縁層が形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記基体は、鋼板であることが好ましい。
また、本発明においては、前記基体は、ステンレス鋼板であることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1の金属材または前記第2の金属材は、主成分がアルミニウムであることが好ましい。
また、本発明においては、前記絶縁層は、陽極酸化処理により形成されたものであることが好ましい。
【0014】
本第2発明は、絶縁層が形成された本第1発明のクラッド基板上に、光電変換素子が形成されていることを特徴とする光電変換装置を提供するものである。
【0015】
本第3発明は、絶縁層が形成された本第1発明のクラッド基板上に、太陽電池セルが形成されていることを特徴とする薄膜太陽電池モジュールを提供するものである。
本発明においては、前記太陽電池セルが複数直列に接続されていることが好ましい。
【0016】
本第4発明は、金属からなる帯状の基体の表面側に前記基体よりも幅が広い第1の金属材を、裏面側に前記基体よりも幅が広い第2の金属材を、いずれか一方ずつ、または同時に、前記基体に前記第1の金属材および前記第2の金属材を圧接し、前記第1の金属材と前記第2の金属材との周縁部を接合する工程とを有することを特徴とするクラッド基板の製造方法を提供するものである。
【0017】
本発明においては、さらに、前記第1の金属材と前記第2の金属材との周縁部を接合する工程の後に、前記第1の金属材の表面もしくは前記第2の金属材の表面、または前記第1の金属材および前記第2の金属材の全面に、陽極酸化処理を施し、絶縁層を形成する工程を有することが好ましい。
また、本発明においては、前記第1の金属材と第2の金属材との周縁部を接合する工程および前記絶縁層を形成する工程は、いずれも、前記基体および前記第1の金属材および前記第2の金属材が被覆された前記基体が、長手方向に搬送しつつ行われることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1の金属材または前記第2の金属材は主成分がアルミニウムであり、前記基体はステンレス鋼板または鋼板により構成されていることが好ましい。
【0018】
本第5発明は、本第4発明の製造方法と絶縁層を形成する工程を有するクラッド基板を作製する工程と、前記クラッド基板の絶縁層上に裏面電極、pn接合半導体層またはpin接合半導体層および透明電極を順次形成する工程とを有することを特徴とする薄膜太陽電池モジュールの製造方法を提供するものである。
【0019】
本第6発明は、本第4発明の製造方法と絶縁層を形成する工程を有するクラッド基板を作製する工程と、前記クラッド基板の絶縁層上に裏面電極を形成し、前記裏面電極を第1の位置でスクライブする工程と、前記裏面電極を覆うように、pn接合半導体層またはpin接合半導体層を形成する工程と、前記pn接合半導体層または前記pin接合半導体層を前記第1の位置とは異なる第2の位置をスクライブする工程と、前記pn接合半導体層または前記pin接合半導体層の上に透明電極を形成する工程と、前記pn接合半導体層または前記pin接合半導体層と前記透明電極層とを、前記第1の位置および第2の位置とは異なる第3の位置をスクライブする工程とを有することを特徴とする薄膜太陽電池モジュールの製造方法を提供するものである。
【0020】
本発明においては、前記第1の位置〜第3の位置のスクライブは、メカニカルスクライブ法またはレーザースクライブ法によりなされることが好ましい。
また、本発明においては、前記裏面電極は、スパッタ法により形成されたモリブデン膜であり、前記pn接合半導体層のうち、p型半導体層は、真空成膜法またはウエット成膜法で成膜されたCIGS系またはCIS系のp型半導体層であり、n型半導体層は、真空成膜法またはCBD法により形成されたものであり、前記透明電極は、スパッタ法または塗布法により成膜されたZnOであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のクラッド基板によれば、第1の金属材および第2の金属材が基体に圧接されて基体を被覆するとともに、第1の金属材および第2の金属材は、その周縁部が接合されている。このように、基体が、第1の金属材および第2の金属材で覆われているため、例えば、陽極酸化により、その表面に絶縁層を形成する場合、端面等で基材が露出していないため、マスク材が不要となり、しかも、マスク材の取り付け、取り外しが不要となり、材料コスト、および製造コストを下げることができる。
また、マスク材の密着が不十分なことによって、電解液が入り込んで、端面での溶解が発生する可能性もない。このように、安全かつ低コストで、耐熱性および絶縁性等の品質が良好な絶縁層を形成することができる。
【0022】
本発明のクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュールによれば、基体が、第1の金属材および第2の金属材で覆われているため、基体の腐食が防止されて、耐久性、および保存寿命が優れる。
【0023】
本発明のクラッド基板の製造方法によれば、基体が、第1の金属材および第2の金属材で覆われたクラッド基板を得ることができる。このため、更に絶縁層を形成する場合、端面等で基材が露出していないため、マスク材が不要となり、しかも、マスク材の取り付け、取り外しが不要となり、材料コスト、および製造コストを下げることができる。
本発明の薄膜太陽電池モジュールの製造方法によれば、耐久性、および保存寿命が優れる薄膜太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るクラッド基板を示す模式的斜視図であり、(b)は、図1(a)のA−A線による断面図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施形態のクラッド基板の第1の変形例を示す要部断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態のクラッド基板の第2の変形例を示す要部断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るクラッド基板の第3の変形例を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るクラッド基板を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る薄膜太陽電池モジュールに設けられる太陽電池サブモジュールを示す模式的断面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る光電変換装置の要部を示す模式的断面図である。
【図7】従来のクラッド基板の一例を示す模式的断面図である。
【図8】従来のクラッド基板の他の例を示す模式的断面図である。
【図9】陽極酸化処理装置を示す模式図である。
【図10】(a)および(b)は、従来のクラッド基板の製造方法の一例を工程順に示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のクラッド基板、このクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュール、クラッド基板の製造方法ならびに薄膜太陽電池モジュールの製造方法を詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係るクラッド基板を示す模式的斜視図であり、(b)は、図1(a)のA−A線による断面図である。
【0026】
図1(a)に示すように、本実施形態のクラッド基板10は、一方向の長い帯状のものである。このクラッド基板10は、金属製の基体12と、第1の金属材14と、第2の金属材16とを有する。
なお、図1(a)に示すように、クラッド基板10の長手方向をLとし、この長手方向Lと直交する方向を幅方向Wとする。
【0027】
基体12は、金属製の帯状の部材であり、図1(b)に示すように、その表面12aに基体12よりも幅方向Wの長さが長い帯状の第1の金属材14が配置されている。この第1の金属材14の裏面14bと基体12の表面12aとが圧接されている。
また、基体12の裏面12bには、基体12よりも幅方向Wの長さが長い帯状の第2の金属材16が配置されている。この第2の金属材16の裏面16bと基体12の裏面12bとが圧接されている。
【0028】
クラッド基板10においては、第1の金属材14の裏面14bと第2の金属材16の裏面16bとが直接接触した状態で、第1の金属材14と第2の金属材16との周縁が接合されており、これにより、クラッド基板10の周縁部11が接合されている。クラッド基板10の内部には、その周縁部11と基体13の端面13cとの間に隙間Sがある。
このように、クラッド基板10は、基体12が第1の金属材14と第2の金属材16とにより、被覆されて圧接されたものである。
【0029】
次に、本実施形態のクラッド基板10の製造方法について説明する。
本実施形態のクラッド基板10は、ロールトゥロールプロセスで製造されるものであり、基体12は、例えば、ロールに巻き回されており、別のロールに巻き取られて、巻き解かれつつ長手方向に搬送される。
そして、基体12の表面12a、12bのいずれか一方の面ずつ、または両面同時に第1の金属材14、第2の金属材16がローラ等を用いて供給される。これにより、基体12に対して、第1の金属材14、第2の金属材16が積層される。これらの第1の金属材14、第2の金属材16も、例えば、ロール状に巻き回されており、巻き解かれつつ、長手方向に搬送される。
次に、加圧接合、圧延等により、積層された第1の金属材14、基体12および第2の金属材16を圧接しつつ、第2の金属材16の裏面16bと基体12の裏面1bも圧接する。このとき、第2の金属材16と基体12とを長手方向の端部が先に圧接される。
【0030】
本実施形態においては、例えば、特開2004−306098号公報に記載されているような公知の表面活性化接合法を用いて、第1の金属材14、基体12および第2の金属材16のそれぞれの接合面を、活性化処理を施した後、第1の金属材14、基体12および第2の金属材16を圧接し、クラッド基板10を製造することもできる。
なお、第1の金属材14と第2の金属材16は、別々に、基体12に圧接してもよく、この場合、第1の金属材14と第2の金属材16の圧接の順序は、特に限定されるものではない。
また、第1の金属材14の表面12aおよび第2の金属材16の表面14aは、それぞれ、例えば、鏡面ロールで圧延して、Raを所定の表面粗度に仕上げてもよい。
【0031】
また、本実施形態のクラッド基板10は、第1の金属材14の裏面14bと第2の金属材16の裏面16bとが直接接触した状態で、第1の金属材14と第2の金属材16との周縁が接合されている。クラッド基板10を、例えば、陽極酸化により、その表面に絶縁層を形成する場合、端面等で基材12が露出していないため、マスク材が不要となり、しかも、マスク材の取り付け、取り外しが不要となり、材料コスト、および製造コストを下げることができる。
また、マスク材の密着が不十分なことによって、電解液が入り込んで、基材12の端面での溶解が発生する可能性もない。このように、安全かつ低コストで、耐熱性および絶縁性等の品質が良好な絶縁層を形成することができる。
【0032】
本実施形態においては、第2の金属材16の裏面16bと基体12の裏面12bとが直接接触する状態で接合したが、周縁部11における接合形態は、これに限定されるものではない。例えば、図2(a)に示すように、第2の金属材16の端部16cを、第1の金属材14の端部14cよりも延設し、この端部16cで、第1の金属材14の端部14cを巻き込んで、第1の金属材14の表面14aと第2の金属材16の裏面16bとが接するようにして圧接してもよい。
さらには、図2(b)に示すように、第1の金属材14の端部14cを、第2の金属材16の端部16cよりも延設し、この端部14cで、第2の金属材16の端部16cを巻き込んで、第2の金属材16の表面16aと第1の金属材14の裏面14bとが接するようにして圧接してもよい。
【0033】
また、基体12の構成も、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、図3に示すクラッド基板10aの基体13のような構成とすることもできる。
図3に示すクラッド基板10aの基体13は、幅方向Wの端部13が、端に向かうにつれて厚さが薄く形成されており、図1に示すクラッド基板10の隙間Sを全て埋めるように、略2等辺3角形状に形成されている。このような端部13の構成とすることにより、第1の金属材14および第2の金属材16と、基体13の表面13a、裏面13bとの接触面積が増えるため、クラッド基板10aの強度を高めることができる。
また、製造時に第1の金属材14および第2の金属材16を、基体13に圧接する際、基体13の表面13aおよび裏面13bが広いため、安定して製造することができる。
【0034】
また、図1に示すクラッド基板10の隙間Sを全て埋めるように、端部13cを構成したが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、第1の金属材14の裏面14bと第2の金属材16の裏面16bとが接する部分近傍で隙間があいてもよい。
なお、このクラッド基板10aにおいても、周縁部11における接合形態は、図2(a)、(b)に示す接合形態としてもよい。
【0035】
次に、本実施形態のクラッド基板10の基体12について詳細に説明する。
基体12は、例えば、アルミニウム合金より300℃以上での耐熱強度が高い金属材料が用いられる。これにより、クラッド基板10は所定の耐熱性が得られる。この金属材料は、例えば、鋼、チタン、ニッケルなどである。実用的かつ高価でないこと、フレキシブルであることが好ましいので、鋼が好ましく、軟鋼、耐熱鋼、またはステンレス鋼が用いられる。耐熱性の面から鋼の中でも耐熱鋼、ステンレス鋼がより好ましい。軟鋼としては、低炭素鋼で、SS400等を用いることができる。
耐熱鋼としては、オーステナイト系、フェライト系の耐熱鋼が好ましく、オーステナイト系の耐熱鋼には、SUH309、SUH310、SUH330、SUH660、SUH661等を用いることができる。フェライト系の耐熱鋼には、SUH21、SUH409、SUH446等を用いることができる。
【0036】
ステンレス鋼は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系に分類される。これらのうち、オーステナイト系ステンレスとしては、SUS304、SUS316、SUS310、SUS309、SUS317、SUS321、SUS347等を用いることができる。
また、フェライト系ステンレスとしては、SUS430、SUS405、SUS410、SUS436、SUS444等を用いることができる。
また、マルテンサイト系ステンレスとしては、SUS403、SUS440、SUS420、SUS410等を用いることができる。ステンレス鋼においては、フレキシブルなもの利用する場合には、オーステナイト系またはフェライト系が好ましい。特に耐熱強度を高くしたい場合に、オーステナイト系を使用することが好ましい。SUS304、SUS316が一般的だが、特に一層高い耐熱性を求める場合には、SUS310、SUS309を用いることが好ましい。
【0037】
基体12の厚さは、可撓性に影響するので、過度の剛性不足を伴わない範囲で薄くすることが好ましい。
本実施形態のクラッド基板10においては、基体12の厚さは、例えば、10〜800μmであり、好ましくは30〜300μmである。より好ましくは50〜150μmである。基体12の厚さを薄くすることは、原材料コストの面からも好ましい。
【0038】
次に、第1の金属材14、第2の金属材16について詳細に説明する。
第1の金属材14、第2の金属材16は、例えば、主成分がアルミニウムで構成されるものである。主成分がアルミニウムとは、アルミニウム含有量が90質量%以上であることをいう。
第1の金属材14、第2の金属材16としては、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。アルミニウムまたはアルミニウム合金は、不要な金属間化合物を含まないことが好ましい。具体的には不純物の少ない、99質量%以上の純度のアルミであることが好ましい。例えば、99.99質量%Al、99.96質量%Al、99.9質量%Al、99.85質量%Al、99.7質量%Al、99.5質量%Al等が好ましい。また、アルミニウム合金には、金属間化合物を作りにくい元素を添加したものを用いることができる。例えば、99.9質量%のAlにマグネシウムを2.0〜7.0質量%添加したアルミニウム合金である。マグネシウム以外では、Cu、Siなど、固溶限界の高い元素を添加することができる。
【0039】
絶縁層18を有するクラッド基板20とする場合、アルミニウムの純度を高めることが好ましい。これにより、析出物に起因する金属間化合物を避けることができ、絶縁層の健全性を増すことができる。これは、アルミニウム合金の陽極酸化を行った場合、金属間化合物が起点となって、絶縁不良を起こす可能性があり、金属間化合物が多いと、その可能性が増えることによるものである。
【0040】
また、第1の金属材14と第2の金属材16との厚さは、それぞれ、例えば、5〜150μmであり、好ましくは10〜100μmである。より好ましくは20〜50μmである。
【0041】
また、第1の金属材14および第2の金属材16の幅は、例えば、基体12の厚さをtとし、幅をwとするとき、w+4t以上であり、好ましくは、w+40t以上、より好ましくは、w+100t以上である。
また、第1の金属材14および第2の金属材16の厚さのばらつきは、例えば、第1の金属材14および第2の金属材16の厚さをTとするとき、全幅×1mの範囲において、例えば、0.5T〜1.5Tである。好ましくは、0.8T〜1.3T、より好ましくは、0.9T〜1.1Tである。
また、第1の金属材14および第2の金属材16の表面粗さは、例えば、算術平均粗さRaで1μm以下である。好ましくは、0.5μm以下、より好ましくは、0.1μm以下である。
【0042】
本実施形態においては、第1の金属材14および第2の金属材16を、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の主成分がアルミニウムで構成されるものとしたが、これに限定されるものではない。例えば、第1の金属材14および第2の金属材16のいずれか一方を、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成し、残りを、アルミニウムおよびアルミニウム合金以外の、例えば、基体12に用いられる金属等で構成してもよい。
【0043】
クラッド基板10の強度は、500℃以上に熱処理をされている中での引張強度が5MPa以上あることが必要で、好ましくは10MPa以上ある。
また、500℃以上で熱処理されている中で、クリープ変形を起こさないため、500℃、10分間保持された際、最大0.1%の塑性変形を起こす強度が0.2MPa以上あることが好ましく、より好ましくは0.4MPa以上、更に好ましくは1MPa以上である。
なお、第1の金属材14と第2の金属材16の各表面は、鏡面仕上げされていてもよい。この鏡面仕上げは、例えば、特許第4212641号公報、特開2003−341696号公報、特開平7−331379号公報、特開2007−196250号公報、特開2000−223205号公報に記載の方法によりなされる。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第2の実施形態に係るクラッド基板を示す模式的断面図である。
なお、本実施形態において、図1(a)、(b)に示す第1の実施形態に係るクラッド基板10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図4に示すように、本実施形態のクラッド基板20は、第1の実施形態のクラッド基板10(図1(a)、(b)参照)に比して、更に第1の金属材14の表面14aおよび第2の金属材16の表面16aのみならず、第1の金属材14および第2の金属材16の接合部の周囲17にまで、すなわち、全面に絶縁層18が形成されている点が異なり、それ以外の構成は、第1の実施形態のクラッド基板10(図1(a)、(b)参照)と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0046】
図4に示す本実施形態のクラッド基板20において、絶縁層18は、例えば、陽極酸化膜により構成されるものである。第1の金属材14および第2の金属材16が、アルミニウムまたはアルミニウム合金の場合には、絶縁層18はアルミニウム陽極酸化膜となる。
絶縁層18の表面粗さは、例えば、算術平均粗さRaで1μm以下であり、好ましくは、0.5μm以下、より好ましくは、0.1μm以下である。
なお、本実施形態のクラッド基板20は、絶縁層18が全面に形成されており、光電変換装置、太陽電池等のデバイスの基板とすることができる。
【0047】
本実施形態のクラッド基板20の製造方法においては、基体12を第1の金属材14および第2の金属材16で被覆して、第1の金属材14および第2の金属材16を接合するまでは、第1の実施形態のクラッド基板10と同様にロールトゥロールプロセスにより製造することができる。
さらに、第1の実施形態のクラッド基板10を、例えば、陽極酸化処理をして、第1の金属材14および第2の金属材16の接合部の周囲17にまで絶縁層18を形成する。
なお、本実施形態のクラッド基板20においても、周縁部11における接合形態は、図2(a)、(b)に示す接合形態とすることができ、基体12も図3に示す基体13とすることができる。
また、本実施形態のクラッド基板20は、絶縁層18が全体を覆うように形成されているため、絶縁性が優れるとともに、基体12の腐食が防止され、耐久性が優れる。しかも、第1の実施形態のクラッド基板10が耐熱性に優れるため、本実施形態のクラッド基板20も耐熱性に優れる。
【0048】
本実施形態においても、上述のように、第1の金属材14および第2の金属材16のいずれか一方を、アルミニウムまたはアルミニウム合金で構成し、残りを、アルミニウムおよびアルミニウム合金以外の、基体12に用いられる金属等で構成してもよい。さらには、絶縁層18が全体を覆うようにクラッド基板20の全面を覆うように絶縁層18が形成されている必要はない。クラッド基板20は、例えば、第1の金属材14の表面14aまたは第2の金属材16の表面16aのいずれかに絶縁層が形成されている構成でもよい。
【0049】
陽極酸化処理については、例えば、図9に示す陽極酸化処理装置200を用いて、いわゆるロールトゥロールプロセスで行うことができる。
この場合、給電槽202に設けられたロールに巻かれた第1の金属材14と第2の金属材16とが被覆された基体12が、電解処理槽204の下流側に設けられた他のロールに巻き取られて長手方向Lに搬送されつつ、電解液208が貯溜された給電槽202にて給電電極210によってプラスに荷電される。
そして、給電槽202においてローラ212によって上方に搬送され、ニップローラ214によって下方に方向変換された後、電解液216が貯溜された電解処理槽204に向けて搬送され、ローラ218によって水平方向に方向転換される。次に、第1の金属材14と第2の金属材16とが被覆された基体12は、電解電極220によって、マイナスに荷電されることにより、その表面に陽極酸化膜が形成され、電解処理槽204から出ると絶縁層18が形成されたクラッド基板20が得られる。
【0050】
第1の金属材14と第2の金属材16がアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されている場合、必要に応じて、汚れ等を除去するための洗浄処理を、酸または有機溶剤などを用いて行うことが好ましい。
その後、硫酸、リン酸、シュウ酸などの酸性溶液中で陽極酸化処理を行う。陽極酸化皮膜の厚みは5μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましい。ただし過度に分厚い陽極酸化皮膜は、皮膜生成に要するコスト、時間がかかるため好ましくない。現実的には最大50μm以下、好ましくは30μm以下である。
陽極酸化処理に用いる電解液は、好ましくは、硫酸水溶液またはシュウ酸水溶液を用いる。皮膜の健全性はシュウ酸水溶液が優れ、連続処理生産性は硫酸水溶液が優れる。
【0051】
次に、好ましい陽極酸化処理条件について説明する。
陽極酸化処理に用いる電流は、交流、直流、交直重畳電流を用いることが可能であり、電流の与え方は、電解初期から一定でも漸増法を用いてもよいが、直流を用いる方法が特に好ましい。
陽極酸化処理は、表面処理を簡略化する上でクラッド基板の表裏、2側面同時に行うことが好ましいが、表裏同時に、次に2側面を行ってもよいし、または片面ずつ逐次おこなってもよい。
なお、陽極酸化処理は、上述のようにクラッド基板の全面にする必要はなく、例えば、マスクして、第1の金属材14の表面14aまたは第2の金属材16の表面16aのいずれか片面だけに陽極酸化処理をしてもよい。
【0052】
第1の金属材14の表面と第2の金属材16の表面(アルミニウム表面)の電解液流速並びに流速の与え方、電解槽、電極、電解液の濃度制御方法は、公知の陽極酸化処理方法を用いることができる。
例えば、特開2002-362055号公報、特開2003-001960号公報、特開平6−207299号公報、特開平6−235089号公報、特開平6−280091号公報、特開平7−278888号公報、特開平10−109480号公報、特開平11−106998号公報、特開2000−17499号公報、特開2001−11698号公報、特開2005−60781号公報、の記載が一例である。クラッド基板の対極としては、アルミニウムを陽極としたときの対極(陰極)としてアルミニウム、カーボン、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレスなどを用いることが可能である。アルミニウムを陰極としたときの対極(陽極)として、鉛、白金、酸化イリジウムなどを用いることが可能である。
【0053】
電解液に硫酸水溶液を用いた場合、陽極酸化処理においては、硫酸100〜300g/L、更に好ましくは120〜200g/L(アルミニウムイオンを0〜10g/L含む)、液温10〜55℃(特に好ましくは20〜50℃)、電流密度10〜100A/dm(特に好ましくは20〜80A/dm)、電解処理時間5〜300秒(特に好ましくは5〜120秒)で、クラッド基板を陽極として陽極酸化処理する。このときのクラッド基板と対極間の電圧は、10〜150Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、クラッド基板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
アルミニウムイオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、予め硫酸アルミニウムを添加しておくことが特に好ましい。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
【0054】
電解液にシュウ酸水溶液を用いた場合、陽極酸化処理においては、シュウ酸10〜150g/L(特に好ましくは30〜100g/L)、アルミニウムイオンを0〜10g/Lを含むことが好ましい。液温10〜55℃(特に好ましくは10〜30℃)、電流密度0.1〜50A/dm(特に好ましくは0.5〜10A/dm)、電解処理時間1〜100分(特に好ましくは30〜80分)で、クラッド基板を陽極として陽極酸化処理する。このときのクラッド基板と対極間の電圧は、10〜150Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、クラッド基板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
アルミニウムイオンは電解液中に、電気化学的または化学的に溶解するが、予めシュウ酸アルミニウムを添加しておいても良い。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
【0055】
陽極酸化処理した第1の金属材14と第2の金属材16において、絶縁層18について、特に絶縁性を高めたい場合、ホウ酸液中で封孔処理する。
封孔処理は、電気化学的な方法、化学的な方法が知られているが、クラッド基板のアルミニウム、アルミニウム合金を陽極にした電気化学的な方法(陽極処理)が特に好ましい。
電気化学的な方法は、アルミニウムまたはその合金を陽極にして直流電流を加え、封孔処理する方法が好ましい。電解液はホウ酸水溶液が好ましく、ホウ酸水溶液にナトリウムを含むホウ酸塩を添加した水溶液が好ましい。ホウ酸塩としては、八ほう酸二ナトリウム、テトラフェニルほう酸ナトリウム、テトラフルオロほう酸ナトリウム、ペルオキソほう酸ナトリウム、四ほう酸ナトリウム、メタほう酸ナトリウムなどがある。これらのホウ酸塩は、無水または水和物として入手することができる。
【0056】
封孔処理に用いる電解液として、特には、0.1〜2mol/Lのホウ酸水溶液に、0.01〜0.5mol/Lの四ほう酸ナトリウムを添加した水溶液を用いることが特に好ましい。アルミニウムイオンは0〜0.1mol/L溶解していることが好ましい。アルミニウムイオンは、電解液中へ封孔処理により化学的または電気化学的に溶解するが、予めホウ酸アルミニウムを添加して電解する方法が特に好ましい。また、アルミニウム合金中に含まれる微量元素が溶解していても良い。
好ましい封孔処理条件は、液温10〜55℃(特に好ましくは10〜30℃)、電流密度0.01〜5A/dm(特に好ましくは0.1〜3A/dm)、電解処理時間0.1〜10分(特に好ましくは1〜5分)である。
【0057】
電流は、交流、直流、交直重畳電流を用いることが可能であり、電流の与え方は、電解初期から一定でも漸増法を用いてもよいが、直流を用いる方法が特に好ましい。電流の与え方は、定電圧法、定電流法どちらを用いても良い。
このときのクラッド基板と対極間の電圧は、100〜1000Vであることが好ましく、電圧は電解浴組成、液温、アルミニウム界面の流速、電源波形、クラッド基板と対極との間の距離、電解時間などによって変化する。
封孔処理は、表面処理の簡略化のため、クラッド基板の表裏、および端面を同時におこなうことが好ましいが、片面ずつ逐次おこなってもよい。
アルミニウム表面の電解液流速並びに流速の与え方、電解槽、電極、電解液の濃度制御方法は、前記陽極酸化処理に記載の公知の陽極酸化処理方法、並びに封孔処理の方法を用いることが可能である。ホウ酸ナトリウムを含むホウ酸水溶液中で陽極酸化処理する際の膜厚は100nm以上が好ましく、更に好ましくは300nm以上である。上限は多孔質陽極酸化皮膜の膜厚になるが、生産コストの面からは1μm以下が現実的な上限となる。
これにより、光電変換装置用基板、特に高温強度が必要で、可撓性のメリットがある、薄膜太陽電池モジュール用基板とすることができる。
【0058】
また、化学的な好ましい方法は、陽極酸化処理後にポアおよび・または空孔にSi酸化物を充填した構造にすることも可能である。Si酸化物による充填はSi−O結合を有する化合物を含む溶液を塗布、または、珪酸ソーダ水溶液(1号珪酸ソーダまたは3号珪酸ソーダ、1〜5質量%水溶液、20〜70℃)に、1〜30秒間浸漬後に水洗・乾燥し、更に200〜600℃で1〜60分間焼成する方法も可能である。
化学的な好ましい方法として、前記珪酸ソーダ水溶液のほかに、フッ化ジルコン酸ソーダおよび・またはリン酸2水素ナトリウムの単体または混合比率が重量比で5:1〜1:5の混合水溶液の、濃度1〜5質量%の液に、20〜70℃で1〜60秒浸漬することで封孔処理をおこなう方法を用いることもできる。
【0059】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図5は本発明の第3の実施形態に係る薄膜太陽電池モジュールに設けられる太陽電池サブモジュールを示す模式的断面図である。
なお、本実施形態において、図4に示す第2の実施形態に係るクラッド基板20と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0060】
本実施形態の薄膜太陽電池モジュールは、第2の実施形態のクラッド基板20を基板とした太陽電池サブモジュール30を有する。
この太陽電池サブモジュール30は、複数の光電変換素子40と、第1の導電部材42と、第2の導電部材44とを有する。
光電変換素子40は、太陽電池セルとして機能するものであり、裏面電極32、光電変換層34、バッファ層36および透明電極38により構成されている。
絶縁層18の表面18aに裏面電極32と光電変換層34とバッファ層36と透明電極38とが順次積層されている。
【0061】
裏面電極32は、隣り合う裏面電極32と分離溝(P1)33を設けて絶縁層18の表面18aに形成されている。分離溝(P1)33を埋めつつ光電変換層34が裏面電極32の上に形成されている。この光電変換層34の表面にバッファ層36が形成されている。これらの光電変換層34とバッファ層36とは、裏面電極32にまで達する溝(P2)37により、他の光電変換層34とバッファ層36と離間されている。この溝(P2)37は、裏面電極32の分離溝(P1)33とは異なる位置に形成されている。
【0062】
また、この溝(P2)37を埋めつつバッファ層36の表面に透明電極38が形成されている。
透明電極38、バッファ層36および光電変換層34を貫き裏面電極32に達する開口溝(P3)39が形成されている。各光電変換素子40は、裏面電極32と透明電極38により、クラッド基板20の長手方向Lに直列に接続されている。
【0063】
本実施形態の光電変換素子40は、集積型のCIGS系光電変換素子(CIGS系太陽電池セル)と呼ばれるものであり、例えば、裏面電極32がモリブデン電極で構成され、光電変換層34がCIGSで構成され、バッファ層36がCdSで構成され、透明電極38がZnOで構成される。
なお、光電変換素子40は、クラッド基板20の幅方向Wに長く伸びて形成されている。このため、裏面電極32等もクラッド基板20の幅方向Wに長く伸びている。
【0064】
図5に示すように、右側の端の裏面電極32上に第1の導電部材42が接続されている。この第1の導電部材42は、後述する負極からの出力を外部に取り出すためのものである。本来、右側の端の裏面電極32上には光電変換素子40が形成されるが、例えば、レーザースクライブまたはメカニカルスクラブにより、光電変換素子40を取り除いて、裏面電極32を表出させている。
【0065】
第1の導電部材42は、例えば、細長い帯状の部材であり、クラッド基板20の幅方向Wに略直線状に伸びて、右端の裏面電極32上に接続されている。また、図5に示すように、第1の導電部材42は、例えば、銅リボン42aがインジウム銅合金の被覆材42bで被覆されたものである。この第1の導電部材42は、例えば、超音波半田により裏面電極32に接続される。
【0066】
この第2の導電部材44は、後述する正極からの出力を外部に取り出すためのものである。第2の導電部材44も、第1の導電部材42と同様に細長い帯状の部材であり、クラッド基板20の幅方向Wに略直線状に伸びて、左端の裏面電極32に接続されている。本来、左端の裏面電極32上には光電変換素子40が形成されるが、例えば、レーザースクライブまたはメカニカルスクラブにより、光電変換素子40を取り除いて、裏面電極32を表出させている。
【0067】
第2の導電部材44は、第1の導電部材42と同様の構成のものであり、例えば、銅リボン44aがインジウム銅合金の被覆材44bで被覆されたものである。
第1の導電部材42と第2の導電部材44とは、錫メッキ銅リボンでもよい。また、第1の導電部材42および第2の導電部材44、それぞれの接続も超音波半田に限定されるものではなく、例えば、導電性接着剤、導電性テープを用いて接続してもよい。
【0068】
なお、本実施形態の光電変換素子40は、例えば、公知のCIGS系の太陽電池の製造方法により製造することができる。
また、裏面電極32の分離溝(P1)33、裏面電極32にまで達する溝(P2)37、裏面電極32に達する開口溝(P3)39は、レーザースクライブまたはメカニカルスクライブにより形成することができる。
【0069】
太陽電池サブモジュール30では、光電変換素子40に、透明電極38側から光が入射されると、この光が透明電極38およびバッファ層36を通過し、光電変換層34で起電力が発生し、例えば、透明電極38から裏面電極32に向かう電流が発生する。なお、図5に示す矢印は、電流の向きを示すものであり、電子の移動方向は、電流の向きとは逆になる。このため、光電変換部48では、図5中、左端の裏面電極32が正極(プラス極)になり、右端の裏面電極32が負極(マイナス極)になる。
【0070】
本実施形態において、太陽電池サブモジュール30で発生した電力を、第1の導電部材42と第2の導電部材44から、太陽電池サブモジュール30の外部に取り出すことができる。
なお、本実施形態において、第1の導電部材42が負極であり、第2の導電部材44が正極である。また、第1の導電部材42と第2の導電部材44とは極性が逆であってもよく、光電変換素子40の構成、太陽電池サブモジュール30構成等に応じて、適宜変わるものである。
また、本実施形態においては、各光電変換素子40を、裏面電極32と透明電極38によりクラッド基板20の長手方向Lに直列接続されるように形成したが、これに限定されるものではない。例えば、各光電変換素子40が、裏面電極32と透明電極38により幅方向Wに直列接続されるように、各光電変換素子40を形成してもよい。
【0071】
光電変換素子40において、裏面電極32および透明電極38は、いずれも光電変換層34で発生した電流を取り出すためのものである。裏面電極32および透明電極38は、いずれも導電性材料からなる。光入射側の透明電極38は透光性を有する必要がある。
【0072】
裏面電極32は、例えば、Mo、Cr、またはW、およびこれらを組合わせたものにより構成される。この裏面電極32は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。
裏面電極32は、厚さが100nm以上であることが好ましく、0.45〜1.0μmであることがより好ましい。
また、裏面電極32の形成方法は、特に制限されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等の気相成膜法により形成することができる。
【0073】
透明電極38は、例えば、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO、ITO(インジウム錫酸化物)、またはSnOおよびこれらを組合わせたものにより構成される。この透明電極38は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造でもよい。また、透明電極38の厚さは、特に制限されるものではなく、0.3〜1μmが好ましい。
また、透明電極38の形成方法は、特に制限されるものではなく、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法等の気相成膜法または塗布法により形成することができる。
【0074】
バッファ層36は、透明電極38の形成時の光電変換層34を保護すること、透明電極38に入射した光を光電変換層34まで透過させるために形成されている。
このバッファ層36は、例えば、CdS、ZnS、ZnO、ZnMgO、またはZnS(O、OH)およびこれらの組合わせたものにより構成される。
バッファ層36は、厚さが、0.03〜0.1μmが好ましい。また、このバッファ層36は、例えば、CBD(ケミカルバス)法により形成される。
【0075】
光電変換層34は、透明電極38およびバッファ層36を通過して到達した光を吸収して電流が発生する層である。本実施形態において、光電変換層34の構成は、特に制限されるものではなく、例えば、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体である。また、光電変換層34は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であってもよい。
【0076】
さらに光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、光電変換層34は、CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、Al、GaおよびInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、S、Se、およびTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。この化合物半導体としては、CuAlS、CuGaS、CuInS、CuAlSe、CuGaSe、CuInSe(CIS)、AgAlS、AgGaS、AgInS、AgAlSe、AgGaSe、AgInSe、AgAlTe、AgGaTe、AgInTe、Cu(In1−xGa)Se(CIGS)、Cu(In1−xAl)Se、Cu(In1−xGa)(S、Se)、Ag(In1−xGa)Se、およびAg(In1−xGa)(S、Se)等が挙げられる。
【0077】
光電変換層34は、CuInSe(CIS)、および/又はこれにGaを固溶したCu(In、Ga)Se(CIGS)を含むことが特に好ましい。CISおよびCIGSはカルコパイライト結晶構造を有する半導体であり、光吸収率が高く、高い光電変換効率が報告されている。また、光照射等による効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
【0078】
光電変換層34には、所望の半導体導電型を得るための不純物が含まれる。不純物は隣接する層からの拡散、および/又は積極的なドープによって、光電変換層34中に含有させることができる。光電変換層34中において、I−III−VI族半導体の構成元素および/又は不純物には濃度分布があってもよく、n型、p型、およびi型等の半導体性の異なる複数の層領域が含まれていても構わない。
例えば、CIGS系においては、光電変換層34中のGa量に厚み方向の分布を持たせると、バンドギャップの幅/キャリアの移動度等を制御でき、光電変換効率を高く設計することができる。
【0079】
光電変換層34は、I−III−VI族半導体以外の1種又は2種以上の半導体を含んでいてもよい。I−III−VI族半導体以外の半導体としては、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素およびVb族元素からなる半導体(III−V族半導体)、およびCdTe等のIIb族元素およびVIb族元素からなる半導体(II−VI族半導体)等が挙げられる。光電変換層34には、特性に支障のない限りにおいて、半導体、所望の導電型とするための不純物以外の任意成分が含まれていても構わない。
また、光電変換層34中のI−III−VI族半導体の含有量は、特に制限されるものではない。光電変換層34中のI−III−VI族半導体の含有量は、75質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が特に好ましい。
【0080】
本実施形態の光電変換層34をCIGS層とした場合、CIGS層の成膜方法としては、1)多源同時蒸着法、2)セレン化法、3)スパッタ法、4)ハイブリッドスパッタ法、及び5)メカノケミカルプロセス法等が知られている。
【0081】
1)多源同時蒸着法としては、
3段階法(J.R.Tuttle et.al,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.426(1996)p.143.等)と、ECグループの同時蒸着法(L.Stolt et al.:Proc.13th ECPVSEC(1995,Nice)1451.等)とが知られている。
前者の3段階法は、高真空中で最初にIn、Ga、及びSeを基板温度300℃で同時蒸着し、次に500〜560℃に昇温してCu及びSeを同時蒸着後、In、Ga、及びSeをさらに同時蒸着する方法である。後者のECグループの同時蒸着法は、蒸着初期にCu過剰CIGS、後半でIn過剰CIGSを蒸着する方法である。
【0082】
CIGS膜の結晶性を向上させるため、上記方法に改良を加えた方法として、
a)イオン化したGaを使用する方法(H.Miyazaki, et.al, phys.stat.sol.(a),Vol.203(2006)p.2603.等)、
b)クラッキングしたSeを使用する方法(第68回応用物理学会学術講演会 講演予稿
集(2007秋 北海道工業大学)7P−L−6等)、
c)ラジカル化したSeを用いる方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集
(2007春 青山学院大学)29P−ZW−10等)、
d)光励起プロセスを利用した方法(第54回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(2007春 青山学院大学)29P−ZW−14等)等が知られている。
【0083】
2)セレン化法は2段階法とも呼ばれ、最初にCu層/In層または(Cu−Ga)層/In層等の積層膜の金属プレカーサをスパッタ法、蒸着法、または電着法などで成膜し、これをセレン蒸気またはセレン化水素中で450〜550℃程度に加熱することにより、熱拡散反応によってCu(In1−xGax)Se等のセレン化合物を生成する方法である。この方法を気相セレン化法と呼ぶ。このほか、金属プリカーサ膜の上に固相セレンを堆積し、この固相セレンをセレン源とした固相拡散反応によりセレン化させる固相セレン化法がある。
【0084】
セレン化法においては、セレン化の際に生ずる急激な体積膨張を回避するために、金属プリカーサ膜に予めセレンをある割合で混合しておく方法(T.Nakada et.al,, Solar Energy Materials and Solar Cells 35(1994)204-214.等)、及び金属薄層間にセレンを挟み(例えばCu層/In層/Se層…Cu層/In層/Se層と積層する)多層化プリカーサ膜を形成する方法(T.Nakada et.al,, Proc. of 10th European Photovoltaic Solar Energy Conference(1991)887-890. 等)が知られている。
【0085】
また、グレーデッドバンドギャップCIGS膜の成膜方法として、最初にCu−Ga合金膜を堆積し、その上にIn膜を堆積し、これをセレン化する際に、自然熱拡散を利用してGa濃度を膜厚方向で傾斜させる方法がある(K.Kushiya et.al, Tech.Digest 9th Photovoltaic Science and Engineering Conf. Miyazaki, 1996(Intn.PVSEC-9,Tokyo,1996)p.149.等)。
【0086】
3)スパッタ法としては、
CuInSe多結晶をターゲットとした方法、CuSeとInSeをターゲットとし、スパッタガスにHSe/Ar混合ガスを用いる2源スパッタ法(J.H.Ermer,et.al, Proc.18th IEEE Photovoltaic SpecialistsConf.(1985)1655-1658.等)、および
Cuターゲットと、Inターゲットと、SeまたはCuSeターゲットとをArガス中でスパッタする3源スパッタ法(T.Nakada,et.al, Jpn.J.Appl.Phys.32(1993)L1169-L1172.等)が知られている。
【0087】
4)ハイブリッドスパッタ法としては、前述のスパッタ法において、CuとIn金属は直流スパッタで、Seのみは蒸着とするハイブリッドスパッタ法(T.Nakada,et.al., Jpn.Appl.Phys.34(1995)4715-4721.等)が知られている。
【0088】
5)メカノケミカルプロセス法は、CIGSの組成に応じた原料を遊星ボールミルの容器に入れ、機械的なエネルギーによって原料を混合してCIGS粉末を得、その後、スクリーン印刷によって基板上に塗布し、アニールを施して、CIGSの膜を得る方法である(T.Wada et.al, Phys.stat.sol.(a), Vol.203(2006)p2593等)。
【0089】
その他のCIGS成膜法としては、スクリーン印刷法、近接昇華法、MOCVD法、及びスプレー法(ウェット成膜法)などが挙げられる。例えば、スクリーン印刷法(ウェット成膜法)またはスプレー法(ウェット成膜法)等で、Ib族元素、IIIb族元素、及びVIb族元素を含む微粒子膜を基板上に形成し、熱分解処理(この際、VIb族元素雰囲気での熱分解処理でもよい)を実施するなどにより、所望の組成の結晶を得ることができる(特開平9−74065号公報、特開平9−74213号公報等)。
【0090】
また、光電変換層34としては、pn型接合半導体に限定されるものではなく、例えば、n型半導体層、真性半導体層(i型)、p型半導体層が積層されたpin接合半導体層により構成されるものであってもよい。この場合、真性半導体層には、例えば、微結晶シリコン、アモルファスシリコンゲルマニウム、またはアモルファスシリコンが用いられる。これ外にも、太陽電池サブモジュール30の光電変換素子40の構成としては、タンデム構造系光電変換素子(タンデム構造系太陽電池セル)、CdTe系光電変換素子(CdTe系太陽電池セル)、色素増感系光電変換素子(色素増感系太陽電池セル)、または有機系光電変換素子(有機系太陽電池セル)であってもよい。
【0091】
次に、本実施形態の太陽電池サブモジュール30の製造方法について説明する。
まず、基板となるクラッド基板20を用意する。このクラッド基板20の製造方法は、第2の実施形態と同様にロールトゥロールプロセスで製造されたものであるため、その詳細な説明は省略する。
次に、クラッド基板20の絶縁層18の表面18aに、裏面電極となるモリブデン膜を、例えば、スパッタ法により形成する。
次に、モリブデン膜を、例えば、レーザースクライブ法を用いて第1の位置をスクライブして、クラッド基板20の幅方向Wに伸びた分離溝(P1)33を形成する。これにより、分離溝(P1)33により互いに分離された裏面電極32が形成される。
【0092】
次に、裏面電極32を覆い、かつ分離溝(P1)33を埋めるように、光電変換層34(p型半導体層)となる、例えば、CIGS層を上述のいずれかの成膜方法を用いて形成する。
次に、CIGS層上にバッファ層36となるCdS層(n型半導体層)を、例えば、CBD(ケミカルバス)法により形成する。これにより、pn接合半導体層が構成される。
次に、レーザースクライブ法を用いて分離溝(P1)33の第1の位置とは異なる第2の位置をスクライブして、クラッド基板20の幅方向Wに伸びた、裏面電極32にまで達する溝(P2)37を形成する。
【0093】
次に、バッファ層36上に、溝(P2)37を埋めるように、透明電極38となる、例えば、Al、B、Ga、Sb等が添加されたZnO層を、スパッタ法または塗布法により形成する。
次に、レーザースクライブ法を用いて分離溝(P1)33の第1の位置および溝(P2)37の第2の位置とは異なる第3の位置をスクライブして、クラッド基板20の幅方向Wに伸びた、裏面電極32にまで達する開口溝(P3)39を形成する。
これにより、図5に示すように、複数の光電変換素子40が直列に接続された太陽電池サブモジュール30を製造することができる。
【0094】
次いで、得られた太陽電池サブモジュール30の表面側に封止接着層(図示せず)、水蒸気バリア層(図示せず)および表面保護層(図示せず)を配置し、太陽電池サブモジュール30の裏面側、すなわち、クラッド基板20の裏面側に封止接着層(図示せず)およびバックシート(図示せず)を配置して、例えば、真空ラミネート法によりラミネート加工してこれらを一体化する。これにより、薄膜太陽電池モジュールを得ることができる。
【0095】
また、例えば、薄膜シリコン太陽電池セルでは、光電変換層がn型半導体層、真性半導体層(i型)、p型半導体層が積層されたpin接合半導体層により構成されている。この場合、裏面電極を形成した後、この裏面電極を覆うように、p型シリコン層と、アモルファスシリコン層(真性半導体層)およびn型シリコン層を、それぞれ、例えば、プラズマCVD法により、順次形成し、光電変換層34としてpin接合半導体層を形成する。
その後、溝(P2)37を形成して透明電極を形成する。そして、開口溝(P3)39を形成する。このようにしても、太陽電池サブモジュール30が製造することができる。
【0096】
本実施形態においては、クラッド基板20は、ロールトゥロールプロセスで製造されるものであり、可撓性を有する。このため、太陽電池サブモジュール30も、例えば、クラッド基板20を長手方向Lに搬送しつつ、ロールトゥロールプロセスで製造することができる。このように、太陽電池サブモジュール30を安価なロールトゥロールプロセスで製造することができるため、太陽電池サブモジュール30の製造コスト低くすることができる。これにより、薄膜太陽電池モジュールのコストを低くすることができる。
また、本実施形態においては、クラッド基板20を用いており、絶縁層18が全体を覆うように形成されているため、絶縁性が優れるとともに、基体12の腐食が防止される。しかも、クラッド基板20は耐熱性に優れる。これにより、耐久性、および保存寿命に優れた太陽電池サブモジュール30を得ることができる。このため、薄膜太陽電池モジュールについても耐久性、および保存寿命が優れる。
本実施形態においても、クラッド基板20は、光電変換素子40が形成される第1の金属材14の表面14aに絶縁層18が形成されていればよく、必ずしもクラッド基板20の全面に絶縁層が形成されたものに限定されるものではない。
【0097】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図6は、本発明の第4の実施形態に係る光電変換装置の要部を示す模式的断面図である。
なお、本実施形態において、図4に示す第2の実施形態に係るクラッド基板20と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0098】
本実施形態は、第2の実施形態のクラッド基板20を基板とした光電変換装置50である。この光電変換装置50は、光電変換素子52と、電源62とを有する。図6では、光電変換素子52は1つしか示していないが、光電変換素子52は、複数形成されている。
光電変換素子52は、有機ELを用いた発光素子であり、トップエミッション方式と呼ばれるものである。この光電変換素子52は、TFT54と、陰極56と、有機EL層58と、透明電極60とを有し、クラッド基板20側からTFT54、陰極56、有機EL層58および透明電極60の順で順次積層されている。TFT54、陰極56、透明電極60に電源62が接続されている。
【0099】
有機EL層58は、発光する部位であり、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入・輸送層などが順次積層されたものである。
陰極56と透明電極60とは有機EL層58を発光させるに必要な電圧を印加するためのものであり、TFT54は、光電変換素子52の発光を制御するためのものである。
電源62は、有機EL層58を発光させるに必要な電圧を発生するものであるとともに、TFT54を駆動するものである。
【0100】
本実施形態においては、クラッド基板20を用いており、絶縁層18が全体を覆うように形成されているため、絶縁性が優れるとともに、基体の腐食が防止される。しかも、クラッド基板20は耐熱性に優れる。これにより、耐久性、および保存寿命に優れた光電変換装置50を得ることができる。
本実施形態においても、クラッド基板20は、光電変換素子52が形成される第1の金属材14の表面14aに絶縁層18が形成されていればよく、必ずしもクラッド基板20の全面に絶縁層が形成されたものに限定されるものではない。
【0101】
本発明は、基本的に以上のようなものである。以上、本発明のクラッド基板、このクラッド基板を用いた光電変換装置および薄膜太陽電池モジュール、クラッド基板の製造方法ならびに薄膜太陽電池モジュールの製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0102】
10、10a、20 クラッド基板
14 第1の金属材
16 第2の金属材
18 絶縁層
30 太陽電池サブモジュール
32 裏面電極
34 光電変換層
36 バッファ層
38 透明電極
40 光電変換素子
42 第1の導電部材
44 第2の導電部材
50 光電変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる帯状の基体と、
前記基体の表面に設けられ、前記基板よりも幅が広い第1の金属材と、
前記基体の表面に設けられ、前記基板よりも幅が広い第2の金属材とを有し、
前記第1の金属材および前記第2の金属材が前記基体に圧接されて前記基体を被覆するとともに、前記第1の金属材および前記第2の金属材は、その周縁部が接合されていることを特徴とするクラッド基板。
【請求項2】
前記第1の金属材と前記第2の金属材とは、それぞれ前記基体側の面が直接接触して接合されている請求項1に記載のクラッド基板。
【請求項3】
前記第1の金属材と前記第2の金属材とは、いずれか一方が、他方を巻き込んだ状態で接合されている請求項1に記載のクラッド基板。
【請求項4】
前記基体は、幅方向の両端部が、それぞれ端に向かうにつれて厚さが薄く形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のクラッド基板。
【請求項5】
少なくとも前記第1の金属材に絶縁層が形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のクラッド基板。
【請求項6】
前記基体は、鋼板である請求項1〜5のいずれか1項に記載のクラッド基板。
【請求項7】
前記基体は、ステンレス鋼板である請求項1〜6のいずれか1項に記載のクラッド基板。
【請求項8】
前記第1の金属材または前記第2の金属材は、主成分がアルミニウムである請求項1〜7のいずれか1項に記載のクラッド基板。
【請求項9】
前記絶縁層は、陽極酸化処理により形成されたものである請求項5〜8のいずれか1項に記載のクラッド基板。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれか1項に記載のクラッド基板上に、光電変換素子が形成されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項11】
請求項5〜9のいずれか1項に記載のクラッド基板上に、太陽電池セルが形成されていることを特徴とする薄膜太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記太陽電池セルが複数直列に接続されている請求項11に記載の薄膜太陽電池モジュール。
【請求項13】
金属からなる帯状の基体の表面側に前記基体よりも幅が広い第1の金属材を、裏面側に前記基体よりも幅が広い第2の金属材を、いずれか一方ずつ、または同時に、前記基体に前記第1の金属材および前記第2の金属材を圧接し、前記第1の金属材と前記第2の金属材との周縁部を接合する工程とを有することを特徴とするクラッド基板の製造方法。
【請求項14】
さらに、前記第1の金属材と前記第2の金属材との周縁部を接合する工程の後に、前記第1の金属材の表面もしくは前記第2の金属材の表面、または前記第1の金属材および前記第2の金属材の全面に、陽極酸化処理を施し、絶縁層を形成する工程を有する請求項14に記載のクラッド基板の製造方法。
【請求項15】
前記第1の金属材と第2の金属材との周縁部を接合する工程および前記絶縁層を形成する工程は、いずれも、前記基体および前記第1の金属材および前記第2の金属材が被覆された前記基体が、長手方向に搬送しつつ行われる請求項14または15に記載のクラッド基板の製造方法。
【請求項16】
前記第1の金属材または前記第2の金属材は主成分がアルミニウムであり、前記基体はステンレス鋼板または鋼板により構成されている請求項14〜16のいずれか1項に記載のクラッド基板の製造方法。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の製造方法でクラッド基板を作製する工程と、
前記クラッド基板の絶縁層上に裏面電極、pn接合半導体層またはpin接合半導体層および透明電極を順次形成する工程とを有することを特徴とする薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれか1項に記載の製造方法でクラッド基板を作製する工程と、
前記クラッド基板の絶縁層上に裏面電極を形成し、前記裏面電極を第1の位置でスクライブする工程と、
前記裏面電極を覆うように、pn接合半導体層またはpin接合半導体層を形成する工程と、
前記pn接合半導体層または前記pin接合半導体層を前記第1の位置とは異なる第2の位置をスクライブする工程と、
前記pn接合半導体層または前記pin接合半導体層の上に透明電極を形成する工程と、
前記pn接合半導体層または前記pin接合半導体層と前記透明電極層とを、前記第1の位置および第2の位置とは異なる第3の位置をスクライブする工程とを有することを特徴とする薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項19】
前記第1の位置〜第3の位置のスクライブは、メカニカルスクライブ法またはレーザースクライブ法によりなされる請求項18に記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項20】
前記裏面電極は、スパッタ法により形成されたモリブデン膜であり、
前記pn接合半導体層のうち、p型半導体層は、真空成膜法またはウエット成膜法で成膜されたCIGS系またはCIS系のp型半導体層であり、n型半導体層は、真空成膜法またはCBD法により形成されたものであり、
前記透明電極は、スパッタ法または塗布法により成膜されたZnOである請求項17〜19のいずれか1項に記載の薄膜太陽電池モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−77246(P2011−77246A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226270(P2009−226270)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】