説明

クランプ式センサ

【課題】測定作業を簡略化し得るクランプ式センサを提供することを主目的とする。
【解決手段】固定センサアーム13および可動センサアーム15を有して測定対象電線4をクランプ可能に構成されて、クランプ状態(閉状態)において測定対象電線4に流れる電流I1を検出するためのクランプ部5と、クランプ部5に配設されて測定対象電線4の電圧V1を測定するための検出電極12とを備え、検出電極12がクランプ部5の固定センサアーム13に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象電線に流れる電流と測定対象電線の電圧とを検出し得るクランプ式センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、特開2006−343109号公報において、測定対象電線に流れる電流および電圧を測定する装置を提案している。この装置は、測定対象電線をクランプすると共に容量結合を介して非接触でその電圧を検出して誘導電圧を出力する電圧測定プローブ(クランプ式電圧センサ)と、略円形に形成されると共に先端が開閉自在に構成され、かつ内部に磁性コア(鉄心)が配設されたクランプ部を有してこのクランプ部でクランプした測定対象電線に流れる電流の電流値に振幅が比例する電流対応信号を出力する電流測定プローブ(クランプ式電流センサ)とを備え、誘導電圧および電流対応信号に基づいて、測定対象電線から供給される電力を測定する電力測定装置として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−343109号公報(第4−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の電力測定装置には、以下のような解決すべき課題がある。すなわち、この電力測定装置では、電圧測定プローブと電流測定プローブとが別々になっているため、測定に際して電圧測定プローブと電流測定プローブとをそれぞれ測定対象電線にクランプさせる必要があり、測定作業が煩雑であるという解決すべき課題が存在している。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、測定作業を簡略化し得るクランプ式センサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のクランプ式センサは、測定対象電線をクランプ可能に構成されて、当該測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部と、前記クランプ部に配設されて前記測定対象電線の電圧を検出するための検出電極とを備えている。
【0007】
また、請求項2記載のクランプ式センサは、請求項1記載のクランプ式センサにおいて、前記クランプ部は前記測定対象電線を取り囲む磁路形成部を有して構成され、前記磁路形成部を通過する磁束の変化に基づいて前記電流を検出する電流検出部を備えている。
【0008】
また、請求項3記載のクランプ式センサは、請求項2記載のクランプ式センサにおいて、前記電流検出部が内部に配設されたセンサ本体部を備え、前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定されると共に前記検出電極が内部に配設された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が当該可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている。
【0009】
また、請求項4記載のクランプ式センサは、請求項2記載のクランプ式センサにおいて、前記電流検出部が内部に配設されたセンサ本体部を備え、前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該可動センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている。
【0010】
また、請求項5記載のクランプ式センサは、請求項2記載のクランプ式センサにおいて、前記電流検出部が内部に配設されたセンサ本体部を備え、前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと当該可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームおよび当該可動センサアームのいずれか一方に押さえ付ける押さえアームとを備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のクランプ式センサでは、測定対象電線をクランプ可能に構成されてこの測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部に、測定対象電線の電圧を測定するための検出電極が配設されている。したがって、このクランプ式センサによれば、電圧測定プローブと電流測定プローブとが別々になっている構成とは異なり、1回のクランプ操作で測定対象電線に流れる電流および電圧、さらには電力を測定することができるため、測定作業を大幅に簡略化することができる。
【0012】
請求項2記載のクランプ式センサでは、測定対象電線を取り囲む磁路形成部を有してクランプ部が構成され、磁路形成部を通過する磁束の変化に基づいて電流を検出する電流検出部を備えている。したがって、このクランプ式センサによれば、クランプ部の磁路形成部によって漏れの少ない状態で磁束を電流検出部へ誘導できるため、電流検出部において磁束の変化に基づいて高精度で電流を検出することができる。
【0013】
また、請求項3,4,5記載のクランプ式センサでは、一端部が可動センサアームの一端部と共にセンサ本体部に回動自在に取り付けられた状態で、固定センサアームと可動センサアームとの間に押さえアームが配設されている。したがって、このクランプ式センサによれば、固定センサアームと可動センサアームとによってクランプされた測定対象電線を押さえアームの他端部で固定センサアームおよび可動センサアームのいずれか一方に押さえ付けることができる。このため、固定センサアーム、可動センサアームおよび押さえアームのいずれかの測定対象電線が押さえ付けられる部位に検出電極を配設しておくことにより、測定対象電線を検出電極の配設位置の近傍に確実に押さえ付けることができる。このため、固定センサアームと可動センサアームと間で測定対象電線が自由に移動可能な状態で測定対象電線をクランプする構成と比較して、測定対象電線の電圧を非接触で測定するときに重要となる測定対象電線と検出電極との間に形成される静電容量の容量値の変動を低減することができ、これにより、測定対象電線の電圧を非接触で精度良く測定できる結果、電力についても高精度で測定することができる。なお、本明細書において、「非接触で測定」とは、検出電極が測定対象電線の絶縁被覆には接触するが、導体には接触しない状態で測定することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】電力測定装置1の構成図である。
【図2】電力測定装置1の可変容量回路33、電流検出器34およびプリアンプ35の回路図である。
【図3】電力測定装置1における容量変化機能体41の回路図である。
【図4】容量変化機能体41の動作を説明するための駆動信号S2と静電容量C2との関係図である。
【図5】電圧V1および参照電位信号S7の関係を示す波形図である。
【図6】クランプ式センサ2の構造を説明するための一部切欠き正面図である(閉状態(クランプ状態))。
【図7】クランプ式センサ2の構造を説明するための正面図である(開状態(非クランプ状態))。
【図8】クランプ式センサ2Aの構造を説明するための正面図である。
【図9】クランプ式センサ2Bの構造を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るクランプ式センサの実施の形態について、一例として電力測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0016】
最初に、電力測定装置1について、図面を参照して説明する。
【0017】
電力測定装置1は、図1に示すように、本発明に係るクランプ式センサ2および本体ユニット3を備え、測定対象電線4に流れる電流I1および測定対象電線4の電圧V1を測定すると共に、測定した電流I1および電圧V1に基づいて測定対象電線4を介して送られている電力W1を非接触で測定可能に構成されている。
【0018】
クランプ式センサ2は、図1に示すように、クランプ部5およびセンサ本体部6を備えている。この場合、クランプ部5は、測定対象電線4をクランプ可能に構成されて、測定対象電線4に流れる電流I1を測定する機能を有している。また、クランプ部5は、測定対象電線4に流れる電流I1を非接触で測定するための磁気コア11a,11bと、測定対象電線4の電圧V1を非接触で測定するための平板状の検出電極12とが内部に配設されて構成されている。また、各磁気コア11a,11bは、本発明における磁路形成部であって、同図に示すように、クランプ部5が測定対象電線4をクランプしたときに、測定対象電線4を取り囲んで閉磁路を形成して、測定対象電線4に電流I1が流れることに起因して測定対象電線4の周囲に発生する磁束を効率よく後述の検出コイル14に誘導する。
【0019】
具体的には、クランプ部5は、一端部(同図中の右端部)がセンサ本体部6に固定されると共に、磁気コア11aおよび検出電極12が内部に配設された固定センサアーム13と、磁気コア11bおよびこの磁気コア11bに巻回された検出コイル14が内部に配設されると共に一端部(同図中の右端部)がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部(同図中の左端部)が固定センサアーム13の他端部(同図中の左端部)に対して接離可能に構成された可動センサアーム15と、一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に配設された押さえアーム16とを備えている。この場合、検出コイル14は、後述の電流検出回路32と共に本発明における電流検出部を構成する。固定センサアーム13、可動センサアーム15および押さえアーム16は、電気的絶縁性を有する合成樹脂材料で形成されている。また、押さえアーム16は、固定センサアーム13および可動センサアーム15よりも全長が短く形成されて、固定センサアーム13および可動センサアーム15の内側領域において回動することにより、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4をその他端部で固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押さえ付ける機能を有している。
【0020】
さらに詳細に、センサ本体部6、可動センサアーム15および押さえアーム16の構造について図6,7を参照して説明する。可動センサアーム15の一端部には、可動センサアーム15とは逆方向に延出する第1操作レバー17が取り付けられて両者が一体的に構成されている。また、押さえアーム16の一端部には、押さえアーム16とは逆方向に延出する第2操作レバー18が取り付けられて両者が一体的に構成されている。この場合、第1操作レバー17および第2操作レバー18は、センサ本体部6の一の側壁(図6,7中の上側の側壁)に設けられた開口部6aに、開口部6aを閉塞するようにして配設されている。また、第2操作レバー18は、第1操作レバー17を覆った状態で配設されている。
【0021】
また、第1操作レバー17は、図6に示すように、センサ本体部6に配設されたバネ(一例として捻りコイルバネ)19によって、常時、センサ本体部6の開口部6aから突出する方向に付勢されている。この結果、第1操作レバー17が取り付けられた可動センサアーム15は、このバネ19により、固定センサアーム13方向に回動するように常時付勢されている。一方、第2操作レバー18は、図6に示すように、第1操作レバー17と第2操作レバー18との間に配設されたバネ(一例としてコイルスプリング)20によって、常時、第1操作レバー17から離反する方向(開口部6aから突出する方向)に付勢されている。この結果、第2操作レバー18が取り付けられた押さえアーム16は、このバネ20により、固定センサアーム13方向に回動するように常時付勢されている。
【0022】
センサ本体部6は、図1に示すように、ケース31、電流検出回路32、可変容量回路33、電流検出器34およびプリアンプ35を備えている。ケース31は、導電性材料(例えば金属材料)を用いて構成されている。また、ケース31は、その表面が絶縁被膜RE1で覆われて、その内部に可変容量回路33、電流検出器34およびプリアンプ35が配設されている。電流検出回路32は、同図に示すようにクランプ部5が測定対象電線4をクランプしたとき(クランプ部5が閉状態となったとき)に各磁気コア11a,11bによって測定対象電線4を取り囲むように形成される閉磁路内の磁束の変化、すなわち検出コイル14内を通過する磁束の変化を検出して、測定対象電線4に流れる電流I1の電流値に応じて振幅が変化する(一例として、電流値に比例して振幅が変化する)電流検出信号S9を出力する。
【0023】
可変容量回路33は、図1,2に示すように、1つの容量変化機能体41および1つの駆動回路42を備えている。また、容量変化機能体41は、第1の構成単位51、第2の構成単位52、第3の構成単位53および第4の構成単位54がこの順に環状(ブリッジ状)に接続されて、いわゆるブリッジ回路に構成されている。具体的には、各構成単位51,52,53,54は、図3に示すように、第1電気的要素E11,E12,E13,E14(以下、特に区別しないときには「第1電気的要素E1」ともいう)をそれぞれ1つずつ含んで構成されている。
【0024】
この場合、各第1電気的要素E1は、一端が他端に対して高電位のときに抵抗体として機能し、かつ他端が一端に対して高電位のときに容量体としてそれぞれ機能する一対の第1素子61a,61b(以下、特に区別しないときには第1素子61ともいう)をそれぞれ1つずつ含み、各第1素子61が互いに逆向きに直列接続されて構成されている。これにより、各第1電気的要素E1は、直流信号の通過を阻止しつつ印加電圧の絶対値の大きさに応じて容量が変化するように構成されている。本例では、一例として、各第1素子61は、互いに接合されたP型半導体およびN型半導体を有して構成され、具体的には1つのダイオード(一例として可変容量ダイオード。バリキャップやバラクタダイオードともいう。)で構成され、各第1電気的要素E1は、これら2つのダイオードが逆向きに直列接続されて(アノード端子同士が接続されて)構成されている。また、各第1素子61a,61bには同一またはほぼ同一の特性の可変容量ダイオードが使用されて、第1の構成単位51および第3の構成単位53の各インピーダンスの積と、第2の構成単位52および第4の構成単位54の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一(一例として数%程度の範囲内で相違する状態)に設定されている。
【0025】
なお、図3に示す容量変化機能体41では、各第1電気的要素E1は、一対の第1素子61a,61bの一端同士を接続して(一対のダイオードのアノード端子同士を接続して)構成されているが、一対の第1素子61a,61bの他端同士を接続して(一対のダイオードのカソード端子同士を接続して)、各第1電気的要素E1を構成することもできる。また、可変容量ダイオードは、電圧を逆方向に印加したときにダイオードのPN接合における空乏層の厚みが変化することによる静電容量(接合容量)の変化を利用したものであり、この静電容量の変化を大きくしたものをいう。他方、PN接合で構成される一般的なダイオード(シリコンダイオード)においても、可変容量ダイオードと比べて少ないものの、上記した静電容量(接合容量)の変化は発生する。このため、図3に示す容量変化機能体41におけるすべての第1素子61a,61bを、一般的なダイオードで置き換えることもできる。また、容量変化機能体41における第2の構成単位52および第3の構成単位53については、第1電気的要素E12,E13を、交流信号の通過を許容する第2電気的要素E22,E23で置き換えることもできる。この場合、第2電気的要素E22,E23は、コイル、抵抗およびコンデンサのうちの少なくとも1つを含んで構成される。一例として、図3では、第2電気的要素E22,E23が、1つのコイル62a,63a(インダクタンス値が同一)、1つの抵抗62b,63b(抵抗値が同一)、または1つのコンデンサ62c,63c(静電容量値が同一)で構成される例を示している。
【0026】
また、可変容量回路33は、図1,2に示すように、検出電極12と参照電位Vrとなる部位(本例ではケース31)との間に、容量変化機能体41における第1の構成単位51および第4の構成単位54の接続点Aが検出電極12側に位置すると共に第2の構成単位52および第3の構成単位53の接続点Cがケース31側に位置するように配設されている。具体的には、可変容量回路33は、図1,2に示すように、容量変化機能体41の接続点Aが検出電極12に接続されると共に、容量変化機能体41の接続点Cが電流検出器34を介してケース31に接続されている。また、第1の構成単位51および第2の構成単位52の接続点Bと、第3の構成単位53および第4の構成単位54の接続点Dとが駆動回路42に接続されている。
【0027】
駆動回路42は、例えば、トランスおよびフォトカプラなどの絶縁用電子部品を用いて構成されて、本体ユニット3から入力した駆動信号S1を、この駆動信号S1と電気的に絶縁されると共に駆動信号S1と同一の周波数f1の駆動信号S2に変換して容量変化機能体41に出力(印加)する。本例では、一例として、駆動回路42は、図2に示すように、一次巻線42bおよび二次巻線42cを備えた絶縁型のトランス42aを用いて構成されている。この場合、二次巻線42cの各端部が容量変化機能体41の接続点B,Dに接続されている。駆動回路42では、入力した駆動信号S1に基づいて一次巻線42bが励磁されることで、トランス42aが二次巻線42cに駆動信号S2を発生させる。この構成により、駆動回路42は、駆動信号S1を低歪みで駆動信号S2に変換し、この駆動信号S2を容量変化機能体41の各接続点B,D間に印加する。本例では、後述するように一例として駆動信号S1として正弦波信号を用いているため、駆動信号S2も正弦波信号として出力される。また、なお、上記の駆動回路42に代えて、単独で(本体ユニット3から駆動信号S1を入力せずに)駆動信号S2を出力するフローティング信号源(図示せず)をクランプ式センサ2内に配設することもできる。
【0028】
電流検出器34は、一例として抵抗で構成されて、可変容量回路33(具体的には可変容量回路33の容量変化機能体41)とケース31との間に接続されている。これにより、電流検出器34は、可変容量回路33と直列に接続された状態で検出電極12とケース31との間に配設されて、可変容量回路33の容量変化機能体41に流れている電流i(物理量)を検出すると共に、この電流iの電流値に比例した値で、かつ電流iの向きに対応した極性の電圧V2をその両端間に発生させる。なお、電流検出器34として、絶縁型のトランスを使用してもよいのは勿論である。プリアンプ35は、不図示の直流遮断用の一対のコンデンサ、不図示の増幅回路(演算増幅器など)、および不図示の絶縁用電子部品(トランスおよびフォトカプラなど)を備えて構成されている。また、プリアンプ35は、コンデンサを介して入力した電圧V2を増幅回路で増幅すると共に、増幅した電圧を絶縁用電子部品によって増幅回路に対して電気的に絶縁された検出信号S3に変換して出力する。この場合、電圧V2は電流iの値に比例して変化するため、この電圧V2を増幅して生成された検出信号S3も電流iの値に比例して変化する。
【0029】
本体ユニット3は、図1に示すように、発振回路71、フィルタ回路72、増幅回路73、検波回路74、極性判定回路75、電圧生成回路76、トランス77、電圧計78、A/D変換回路79、CPU80および表示装置81を備えている。この場合、発振回路71、フィルタ回路72、増幅回路73、検波回路74、極性判定回路75、電圧生成回路76、トランス77および電圧計78は、クランプ式センサ2と共に電圧検出系回路群を構成し、A/D変換回路79およびCPU80は、クランプ式センサ2と共に電流検出系回路群を構成する。
【0030】
電圧検出系回路群を構成する発振回路71は、一定の周期T1(周波数f1)の駆動信号S1を生成してクランプ式センサ2に出力する。また、発振回路71は、周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2=2×f1)の検波用信号S10を駆動信号S1に同期させて生成して極性判定回路75に出力する。この場合、本例では、発振回路71は、駆動信号S1および検波用信号S10として正弦波信号を生成する。フィルタ回路72は、クランプ式センサ2から入力した検出信号S3に含まれている容量変化機能体41の容量変調周波数f2と同じ周波数の信号S3aを選択的に通過させる。
【0031】
増幅回路73は、フィルタ回路72から入力した信号S3aを予め設定された電圧レベルまで増幅して、検出信号S4として出力する。本例では、容量変化機能体41の容量変調周波数は、駆動信号S2の周波数f1の2倍であるため、容量変化機能体41の静電容量C1の変化によって生じる電流iの周波数も駆動信号S1の周波数f1の2倍となり、プリアンプ35で生成される検出信号S3中には周波数f1,f2の各信号成分が含まれるものの、増幅回路73から出力される検出信号S4の周波数はフィルタ回路72によるフィルタリングによってf2となる。検波回路74は、例えば包絡線検波方式によって検出信号S4を検波することにより、アナログ信号S5を生成する。この場合、アナログ信号S5は、その振幅(電圧値)が可変容量回路33を流れる電流iの電流値に比例して変化する。極性判定回路75は、検波用信号S10および検出信号S4を入力して検波用信号S10に対する検出信号S4の位相(極性)を検出する。また、極性判定回路75は、検出した位相に基づいて、測定対象電線4およびケース31の各電圧V1,Vrの電位差(V1−Vr)の極性を判定すると共に、この極性を示す極性信号S8を生成して出力する。一例として、本例では、極性判定回路75は、電位差(V1−Vr)の極性と同じ極性で極性信号S8を出力する。
【0032】
電圧生成回路76は、電圧信号S6を生成して出力する。この場合、電圧生成回路76は、出力している電圧信号S6の電圧を、入力したアナログ信号S5の振幅(電圧値)に比例した量だけ、入力した極性信号S8の極性が「正」のときには増加させ、逆に「負」のときには減少させる。トランス77は、絶縁型のトランスであって、一次巻線77a(巻数:n1)および二次巻線77b(巻数:n2>n1)を備えて昇圧トランスとして構成されている。この場合、一次巻線77aおよび二次巻線77bは、それぞれの一端部が接地(グランドに接続)されている。また、一次巻線77aの他端部は電圧生成回路76に、二次巻線77bの他端部はクランプ式センサ2のケース31にそれぞれ接続されている。この構成により、トランス77は、一次巻線77aに入力した電圧信号S6を昇圧して、参照電位信号S7として二次巻線77bの他端部に出力すると共に、クランプ式センサ2のケース31に印加する。このようにしてケース31は、その電位(参照電位)Vrが参照電位信号S7の電圧に規定される。電圧計78は、参照電位信号S7の電圧(参照電位Vr)を測定して、その電圧値を示すディジタルデータD3をCPU80へ出力する。
【0033】
電流検出系回路群を構成するA/D変換回路79は、電流検出回路32から出力される電流検出信号S9を入力して、電流検出信号S9の振幅を示すディジタルデータD4に変換してCPU80に出力する。CPU80は、ディジタルデータD3で示される測定対象電線4の電圧値を表示装置81に表示させると共に、ディジタルデータD4に基づいて測定対象電線4に流れている電流I1の電流値を算出(測定)する電流算出処理を実行して、算出した電流値を表示装置81に表示させる。また、CPU80は、算出した電流I1の電流値と、電圧計78から出力された参照電位信号S7の電圧(参照電位Vr)の電圧値(ディジタルデータD3で示される値)とに基づいて、後述するようにして、測定対象電線4に供給されている電力W1を算出(測定)して表示装置81に表示させる。
【0034】
次いで、電力測定装置1による測定対象電線4の電圧V1、電流I1および電力W1の測定動作について説明する。なお、発明の理解を容易にするため、一例として、電圧生成回路76は、電力測定装置1の測定動作開始時(時刻t0)は、ゼロボルトの電圧信号S6を生成し、その後、その電圧を増加または減少させるものとする。したがって、トランス77は、図5において実線で示すように、参照電位信号S7をゼロボルトから生成し始めるものとする。
【0035】
まず、測定対象電線4にクランプ式センサ2のクランプ部5をクランプさせる。この際に、クランプ式センサ2を手で掴んで、測定対象電線4にクランプ部5をクランプさせるが、指(例えば親指)を第2操作レバー18に掛ける前の状態では、図6に示すように、バネ19によって第1操作レバー17がセンサ本体部6から突出する方向に付勢され、かつバネ20によって第2操作レバー18が第1操作レバー17から離反する方向に付勢されている。このため、バネ19の付勢力により、可動センサアーム15が固定センサアーム13方向に回動して、その他端部(同図中の左端部)が固定センサアーム13の他端部(同図中の左端部)と接触した状態となっている。また、バネ20の付勢力により、押さえアーム16も固定センサアーム13方向に回動して、その他端部(同図中の左端部)が固定センサアーム13の内周面における中間部位と接触した状態となっている。
【0036】
このため、指を第2操作レバー18に掛けて、開口部6aから突出している第2操作レバー18および第1操作レバー17をセンサ本体部6の内部に押し込む。これにより、各バネ19,20の付勢力に抗して、可動センサアーム15および押さえアーム16が固定センサアーム13から離反する方向に回動して、クランプ部5は、図7に示す状態、すなわち、固定センサアーム13および可動センサアーム15の他端部同士が離間し、かつ固定センサアーム13と押さえアーム16とが離間して、測定対象電線4をクランプ可能な状態(開状態)に移行する。
【0037】
次いで、測定対象電線4を固定センサアーム13および可動センサアーム15間に導入し、第2操作レバー18に掛けていた指を第2操作レバー18から離す。これにより、バネ19から第1操作レバー17に加わる付勢力により、可動センサアーム15が固定センサアーム13方向に回動して、可動センサアーム15の他端部が固定センサアーム13の他端部と当接する(クランプ部5が開状態から閉状態に移行する)。また、バネ20から第2操作レバー18に加わる付勢力により、押さえアーム16が固定センサアーム13方向に回動する。この際に、固定センサアーム13および可動センサアーム15間に導入された測定対象電線4は、図1に示すように、押さえアーム16によって固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押し付けられる。このように、測定対象電線4を常に固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押さえアーム16で押し付けることができるため、固定センサアーム13と可動センサアーム15と間で測定対象電線4が自由に移動可能な状態と比較して、測定対象電線4の電圧V1を測定する際に重要となる測定対象電線4と検出電極12との間、具体的には測定対象電線4の芯線4aと検出電極12との間に形成される静電容量C0の容量値が大きく変動する事態が十分に回避されている。
【0038】
次いで、電力測定装置1の起動状態において、電圧検出系回路群では、本体ユニット3の発振回路71が駆動信号S1および検波用信号S10の生成を開始して、駆動信号S1をクランプ式センサ2に、また検波用信号S10を極性判定回路75に出力する。クランプ式センサ2では、可変容量回路33の駆動回路42が、入力した駆動信号S1を駆動信号S2に変換して容量変化機能体41の各接続点B,D間に印加(出力)する。
【0039】
容量変化機能体41では、各接続点B,D間に印加された駆動信号S2が分圧されて、第1の構成単位51、第2の構成単位52、第3の構成単位53および第4の構成単位54にそれぞれ印加される。この場合、図4に示すように、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Ta(接続点Dを基準として接続点Bの電位が高電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に大きくなる期間)では、各第1電気的要素E1における逆電圧が印加されて(逆バイアスされて)コンデンサとして機能する各第1素子61の各静電容量が徐々に減少する。具体的には、各第1電気的要素E11,E14では、逆バイアスされている各第1素子61bの静電容量が、また各第1電気的要素E12,E13では、逆バイアスされている各第1素子61aの静電容量が徐々に減少する。また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Tb(接続点Dを基準として接続点Bの電位が高電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に小さくなる期間)では、逆バイアスされている各第1素子61、具体的には各第1電気的要素E11,E14では各第1素子61b、また各第1電気的要素E12,E13では各第1素子61aの各静電容量が徐々に増加する。
【0040】
また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Tc(接続点Dを基準として接続点Bの電位が低電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に大きくなる期間)では、逆バイアスされてコンデンサとして機能する各第1素子61、具体的には各第1電気的要素E11,E14では各第1素子61a、また各第1電気的要素E12,E13では各第1素子61bの各静電容量が徐々に減少する。また、駆動信号S2の1周期T1のうちの期間Td(接続点Dを基準として接続点Bの電位が低電位になり、かつ相互間の電位差が徐々に小さくなる期間)では、逆バイアスされている各第1素子、具体的には各第1電気的要素E11,E14では各第1素子61a、また各第1電気的要素E12,E13では各第1素子61bの各静電容量が徐々に増加する。なお、各第1電気的要素E1に含まれている第1素子61a,61bのうちの順電圧が印加されている(順バイアスされている)第1素子61a,61bは等価的に抵抗として機能している。このため、各第1電気的要素E1の静電容量は、駆動信号S2の1周期T1内において、減少および増加を2回繰り返す。
【0041】
このようにして、駆動信号S2の1周期T1内において、各構成単位51〜54に含まれている各第1電気的要素E1の静電容量が増加および減少を2回ずつ繰り返すため、これらの静電容量を合成してなる容量変化機能体41の静電容量C1(接続点A,B間の静電容量)も増加および減少を2回繰り返す。つまり、可変容量回路33は、入力した駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2=2×f1)でその静電容量C1を連続的(本例では周期的)に変化させる動作を実行する。この場合、上記したように、可変容量回路33は電流検出器34を介在させた状態でケース31および検出電極12の間に直列に接続されているため、その静電容量C1と、測定対象電線4および検出電極12の間に形成される静電容量C0とは、測定対象電線4とケース31との間に直列に接続された状態になっている。このため、静電容量C1が周波数f2(容量変調周波数)で周期的に変化することにより、測定対象電線4とケース31との間の静電容量C2(各静電容量C0,C1の直列合成容量)も、図4に示すように、駆動信号S2の周期T1に同期して、かつ周期T1の二分の一の周期T2(周波数f2)で変化する。
【0042】
また、可変容量回路33では、上記したように、容量変化機能体41の各第1素子61には同一またはほぼ同一の特性の可変容量ダイオード(または一般的なダイオード)が使用され、この結果、第1の構成単位51および第3の構成単位53の各インピーダンスの積と、第2の構成単位52および第4の構成単位54の各インピーダンスの積とが同一またはほぼ同一に設定されている。したがって、ブリッジ回路でもある容量変化機能体41は、ブリッジ回路としての平衡条件を満足しているため、駆動信号S2の電圧成分(駆動信号S1と同じ周波数f1の電圧信号)が各接続点A,C間にほとんど発生しない状態で、その静電容量C1を周期T2で変化させている。また、接続点Aに接続されている各構成単位51,54に含まれている各第1電気的要素E11,E14の組、および接続点Cに接続されている各構成単位52,53に含まれている各第1電気的要素E12,E13の組のうちの少なくとも一方の組に含まれている2つの第1電気的要素E1が共に常時コンデンサとして機能しているため、検出電極12とケース31とは、可変容量回路33を介して交流的に接続されているものの直流的には短絡されない状態に維持されている。
【0043】
このため、静電容量C1の周期T2での周期的な変化に基づいて測定対象電線4とケース31との間の静電容量C2が周期T2で周期的に変化することにより、可変容量回路33には、測定対象電線4およびケース31の各電圧V1,Vrの電位差(V1−Vr)に応じた振幅の電流i(周期T2)が流れる。具体的には、電流iは、電位差(V1−Vr)が大きいときにはその振幅(電流値)が大きくなり、電位差(V1−Vr)が小さいときにはその電流値が小さくなる。
【0044】
したがって、図5に示すように、測定対象電線4の電圧V1が正の電圧のとき(時刻t0)に、電力測定装置1が測定動作を開始したときには、電位差(V1−Vr)は正の電圧となり、電流iは、図示はしないが、その周期がT2であって、その振幅が電位差(V1−Vr)に応じて変化する交流信号として流れる。プリアンプ35は、この電流iに起因して電流検出器34に発生する電圧V2を増幅して、検出信号S3として出力する。この場合、検出信号S3には、電流iの周波数f2と同一の周波数成分が主として含まれると共に、駆動信号S2の周波数f1と同一の周波数成分も含まれている。
【0045】
本体ユニット3では、フィルタ回路72が、検出信号S3に含まれている周波数f2の信号成分を信号S3aとして選択的に出力し、増幅回路73は、この信号S3aを増幅して検出信号S4を生成して検波回路74に出力する。次いで、検波回路74は、入力した検出信号S4を検波してアナログ信号S5を生成して電圧生成回路76に出力する。この場合、アナログ信号S5は、その振幅が電位差(V1−Vr)の値に比例して変化する信号となる。また、極性判定回路75は、検波用信号S10および検出信号S4を入力して検波用信号S10に対する検出信号S4の位相を検出することにより、電位差(V1−Vr)の極性と同じ極性となる極性信号S8を生成して電圧生成回路76に出力する。
【0046】
電圧生成回路76は、出力している電圧信号S6の電圧を、入力したアナログ信号S5の振幅(電圧値)に比例した量だけ、入力した極性信号S8の極性が「正」のときには増加させ、逆に「負」のときには減少させる。したがって、図5に示すように、測定対象電線4の電圧V1が正の電圧のとき(時刻t0)に、電力測定装置1が測定動作を開始したときには、電圧信号S6は当初ゼロボルトであるため、参照電位信号S7もゼロボルトである。この結果、電位差(V1−Vr)は正の電圧となり、これによって極性信号S8の極性も正となる。このため、電圧生成回路76は、入力したアナログ信号S5の振幅に比例した量だけ、電圧値を増加させて電圧信号S6を出力する。次いで、トランス77が電圧信号S6を昇圧して参照電位信号S7を出力してケース31に印加する。この結果、電流検出器34、プリアンプ35、フィルタ回路72、増幅回路73、検波回路74、電圧生成回路76およびトランス77で構成されるフィードバックループ内で、測定対象電線4とケース31との間の電位差(V1−Vr)が徐々に低下(減少)するように負のフィードバックが行われる。
【0047】
したがって、電流iは、電流値(振幅)が徐々に低下(減少)していく。一般的には、電力測定装置1では、参照電位Vrの測定対象電線4の電圧V1への収束が短時間で完了するように、その過渡特性が設定される。このため、参照電位信号S7は、図5に示すように、電圧V1に対してオーバーシュートしつつ時刻t1において収束する。なお、オーバーシュートして、参照電位Vrが測定対象電線4の電圧V1を上回ったときには、電位差(V1−Vr)は負の電圧となり、これによって極性信号S8の極性も負となる。このため、電圧生成回路76は、入力したアナログ信号S5の振幅に比例した量だけ、電圧値を減少させて電圧信号S6を出力する。その後は、電力測定装置1は、上記のフィードバック動作を継続することにより、変化する測定対象電線4の電圧V1に対して一定の偏差内に収まるように参照電位信号S7の電圧値(参照電位Vr)を変化させる。この場合、参照電位信号S7(および電圧信号S6)は、測定対象電線4の電圧V1に同期して変化する交流信号となる。したがって、所定時間経過後(本例では測定開始から時間(t1−t0)だけ経過した後)において、電圧計78で測定される電圧値(参照電位Vr)は、測定対象電線4の電圧V1となる。また、電圧計78は、参照電位信号S7の電圧をリアルタイムで計測して、その電圧値(参照電位Vr)をディジタルデータD3としてCPU80へ出力する。
【0048】
一方、電流検出系回路群では、クランプ式センサ2の電流検出回路32が、測定対象電線4をクランプしているクランプ部5の各磁気コア11a,11b内(測定対象電線4を取り囲む閉磁路内)の磁束の変化、すなわち検出コイル14内を通過する磁束の変化を検出して、測定対象電線4に流れる電流I1の電流値と振幅が比例する電流検出信号S9の生成を開始する。A/D変換回路79は、電流検出回路32から出力される電流検出信号S9を入力して、電流検出信号S9の振幅を示すディジタルデータD4に変換してCPU80に出力する。
【0049】
CPU80は、電圧検出系回路群の電圧計78から出力されるディジタルデータD3で示される測定対象電線4の電圧値V1を表示装置81に表示させると共に、電流検出系回路群のA/D変換回路79から出力されるディジタルデータD4に基づいて電流算出処理を実行して測定対象電線4に流れている電流I1の電流値を算出(測定)し、算出した電流値を表示装置81に表示させる。また、CPU80は、算出した電流I1の電流値と、電圧計78から出力された参照電位信号S7の電圧(参照電位Vr)の電圧値(ディジタルデータD3で示される値)とに基づいて、測定対象電線4に供給されている電力W1を算出(測定)して表示装置81に表示させる。以上により、測定対象電線4の電圧V1、電流I1および電力W1の測定が完了する。
【0050】
このように、このクランプ式センサ2では、測定対象電線4をクランプ可能に構成されてこの測定対象電線4に流れる電流I1を検出するためのクランプ部5に、測定対象電線4の電圧V1を非接触で測定するための検出電極12が配設されている。したがって、このクランプ式センサ2によれば、電圧測定プローブと電流測定プローブとが別々になっている構成とは異なり、1回のクランプ操作で測定対象電線4に流れる電流I1および電圧V1を測定するための電流検出信号S9および検出信号S3を検出して本体ユニット3に出力することができるため、測定作業を大幅に簡略化することができる。
【0051】
また、このクランプ式センサ2では、測定対象電線4を取り囲む閉磁路を形成する磁気コア11a,11bを有してクランプ部5が構成され、磁気コア11a,11b(閉磁路)を通過する磁束の変化に基づいて電流I1を検出する電流検出回路32を備えている。したがって、このクランプ式センサ2によれば、クランプ部5の磁気コア11a,11bによって漏れの少ない状態で磁束を検出コイル14へ誘導できるため、検出コイル14において磁束の変化に基づいて高精度で電流を検出することができる。
【0052】
また、このクランプ式センサ2では、一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられた状態で、固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に押さえアーム16が配設されている。したがって、このクランプ式センサ2によれば、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4を押さえアーム16の他端部で固定センサアーム13における検出電極12の配設位置の近傍に押さえ付けることができる。このため、固定センサアーム13と可動センサアーム15と間で測定対象電線4が自由に移動可能な状態で測定対象電線4をクランプする構成と比較して、測定対象電線4の電圧V1を非接触で測定するときに重要となる測定対象電線4(具体的には測定対象電線4の芯線4a)と検出電極12との間に形成される静電容量C0の容量値の変動を低減することができ、これにより、測定対象電線4の電圧V1を非接触で精度良く測定できる結果、電力W1についても高精度で測定することができる。
【0053】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記したクランプ式センサ2では、検出コイル14を磁気コア11bに巻回して可動センサアーム15内に配設しているが、磁気コア11aに巻回して固定センサアーム13内に配設することもできる。また、一対のセンサアームのうちの一方を固定センサアーム13としてセンサ本体部6に固定する構成としたが、図示はしないが、一対のセンサアームの双方を可動センサアーム15と同様の構成の可動センサアームとすることもできる。また、一端部がセンサ本体部6に固定されると共に検出電極12が内部に配設された固定センサアーム13と、一端部がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部が固定センサアーム13の他端部に対して接離可能に構成された可動センサアーム15とを備えた例について説明したが、図示はしないが、一端部がセンサ本体部6に固定されると共に磁気コア11aが内部に配設された固定センサアーム13と、磁気コア11bおよび検出電極12が内部に配設されると共に一端部がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部が固定センサアーム13の他端部に対して接離可能に構成された可動センサアーム15と、一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に配設され、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4を他端部で可動センサアーム15における検出電極12の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアーム16とを備えてクランプ部5を構成することもできる。また、各磁気コア11a,11bによって測定対象電線4を取り囲むように形成される閉磁路内の磁束の変化を検出コイル14で検出する構成に代えて、ホール素子などの磁電変換素子を本発明における電流検出部の一部として使用して検出する構成とすることもできる。また、磁気コア11a,11bを使用せずに、検出コイル14を空芯コイルとして構成して、両センサアーム13,15内に配設する構成とすることもできる。
【0054】
また、検出電極12を固定センサアーム13および可動センサアーム15のいずれか一方に配設する例について説明したが、図示はしないが、一端部がセンサ本体部6に固定されると共に磁気コア11aが内部に配設された固定センサアーム13と、磁気コア11bが内部に配設されると共に一端部がセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて他端部が固定センサアーム13の他端部に対して接離可能に構成された可動センサアーム15と、検出電極12が内部に配設されると共に一端部が可動センサアーム15の一端部と共にセンサ本体部6に回動自在に取り付けられて固定センサアーム13と可動センサアーム15との間に配設され、固定センサアーム13と可動センサアーム15とによってクランプされた測定対象電線4を他端部で固定センサアーム13および可動センサアーム15のいずれか一方に押さえ付ける押さえアーム16とを備えてクランプ部5を構成することもできる。
【0055】
また、上記のクランプ式センサ2では、測定対象電線4のクランプおよび開放を容易に行えるようにするため、分割された2つの磁気コア11a,11bを用いて、クランプ部5を閉状態から開状態へ、また開状態から閉状態へ移行可能な構成としたが、2つの分割された磁気コア11a,11bに代えて、図8に示すクランプ式センサ2Aのように、1つのトロイダル型の磁気コア91を使用して本発明における磁路形成部としてのクランプ部5Aを構成してもよいし、図9に示すクランプ式センサ2Bのように、一部にギャップが存在する磁気コア92(例えばU字状のコア)を使用して本発明における磁路形成部としてのクランプ部5Bを構成することもできる。なお、クランプ式センサ2と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0056】
また、検出電極12を用いて測定対象電線4の電圧V1を非接触で測定可能な回路構成の一例として、ダイオードで構成された容量変化機能体41を使用することで、電圧V1が直流電圧および交流電圧のいずれであっても測定し得る構成としたが、電圧V1が交流電圧の場合においては、例えば、特許第3302377号公報、特開平10−31037号公報、特開2002−71726号公報および特開2003−28900号公報などに開示されたような種々の公知の回路構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 電力測定装置
2,2A,2B クランプ式センサ
4 測定対象電線
5,5A,5B クランプ部
6 センサ本体部
11a,11b,91,92 磁気コア
12 検出電極
13 固定センサアーム
15 可動センサアーム
16 押さえアーム
32 電流検出回路
I1 電流
S9 電流検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象電線をクランプ可能に構成されて、当該測定対象電線に流れる電流を検出するためのクランプ部と、
前記クランプ部に配設されて前記測定対象電線の電圧を検出するための検出電極とを備えているクランプ式センサ。
【請求項2】
前記クランプ部は前記測定対象電線を取り囲む磁路形成部を有して構成され、
前記磁路形成部を通過する磁束の変化に基づいて前記電流を検出する電流検出部を備えている請求項1記載のクランプ式センサ。
【請求項3】
前記電流検出部が内部に配設されたセンサ本体部を備え、
前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定されると共に前記検出電極が内部に配設された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が当該可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている請求項2記載のクランプ式センサ。
【請求項4】
前記電流検出部が内部に配設されたセンサ本体部を備え、
前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと前記可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該可動センサアームにおける前記検出電極の配設位置の近傍に押さえ付ける押さえアームとを備えている請求項2記載のクランプ式センサ。
【請求項5】
前記電流検出部が内部に配設されたセンサ本体部を備え、
前記クランプ部は、一端部が前記センサ本体部に固定された固定センサアームと、一端部が前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて他端部が前記固定センサアームの他端部に対して接離可能に構成された可動センサアームと、前記検出電極が内部に配設されると共に一端部が前記可動センサアームの前記一端部と共に前記センサ本体部に回動自在に取り付けられて前記固定センサアームと当該可動センサアームとの間に配設され、当該固定センサアームと当該可動センサアームとによってクランプされた前記測定対象電線を他端部で当該固定センサアームおよび当該可動センサアームのいずれか一方に押さえ付ける押さえアームとを備えている請求項2記載のクランプ式センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−137496(P2012−137496A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−47671(P2012−47671)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2007−204071(P2007−204071)の分割
【原出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】