説明

クリップによる取付構造

【課題】クリップ本体の形状や材質を変更することなく、同一種類のクリップ本体を用いて取付部材を被取付部材に取付けたときに、異なる保持荷重に対応させる。
【解決手段】取付部材30に突設状態で配設される座面部材32に樹脂製のクリップ本体10を取付けたクリップ構造体12を、被取付部材40に形成された取付孔42に着脱可能に取付けるクリップによる取付構造であって、クリップ本体10が取付孔42に係止する係止斜面24には傾斜状態の異なる複数の傾斜面が形成されており、被取付部材40に形成される取付孔42は、複数の傾斜面に対応して複数種類の取付孔が設定可能とされ、いずれか1つの同じ傾斜状態の傾斜面を係止させることのできる孔の大きさの係止孔44と、残りの他のいずれの傾斜面も係止させることのない孔の大きさの逃がし孔46とが連続して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材に取付部材を着脱可能に装着するためのクリップによる取付構造に関する。具体的には、例えば、自動車のインストルメントパネルにセンタクラスターなどを着脱可能に装着するためのクリップによる取付け構造であって、取付孔の形状に対応して異なる保持荷重を発揮することができるクリップによる取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、自動車のインストルメントパネルにセンタクラスターなどを着脱可能に装着するためのクリップについては、例えば特開2000−249117号(特許文献1)に開示されているクリップが公知である。
特許文献1に開示されているクリップは、取付部材であるセンタクラスターに突設状態で配設される座面部材に取付けた樹脂製のクリップ本体を、被取付部材であるインストルメントパネルに形成された取付孔の表面側から挿入することで取付部材を被取付部材に係止させ、取付部材を被取付部材に着脱可能に取付けるために用いられるクリップである。
【0003】
図23に、前記特許文献1に開示されているクリップとほぼ同じクリップを用いて取付部材を被取付部材に取付けた状態の部分断面図を示す。樹脂製のクリップ本体50は、取付部材66に形成された座面部材68の係合孔70に対して、座面係合部片52の先端に形成された係合突部54を係合させることにより取付部材66に取付けられる。そして、取付部材66に係合した樹脂製のクリップ本体50が、被取付部材72に形成された取付孔74に対して表面側76から挿入され、クリップ本体50の取付係止片58の係止肩60の下部に形成された係り斜面62が被取付部材72の裏面側78に係止することにより、取付部材66が被取付部材72に取付けられる。
取付部材66を被取付部材72から取り外す必要が生じた場合は、取付部材66を被取付部材72から引き離す方向へ引っ張ることにより、クリップ本体50の取付係止片58が互いに接近する方向へ弾性変形して、係止肩60の下部の係り斜面62が被取付部材72の裏面側78から外れることで、取付部材66をクリップ本体50と一体で被取付部材72から取り外すことができる。
なお、クリップ本体50は座面係合部片52の先端の係合突部54が座面部材68に形成された係合孔70に係合して取付部材66に取付けられているので、座面係合部片52が弾性変形して係合突部54が係合孔70から外れることで、クリップ本体50を被取付部材72に残して、取付部材66のみを被取付部材72から取り外すこともできる。
【特許文献1】特開2000−249117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図23に示したクリップ本体50により、所定の保持荷重で、取付部材66を被取付部材72に取付けることができる。保持荷重を変更する必要が生じたときは、クリップ本体50の係合突部54の係合面56の角度や面積を変更する、あるいは一対の取付係止片58の両係止肩60の間隔や係り斜面62の傾斜角度を変更する、もしくはクリップ本体50の材質を変更する等の対応が必要となる。ここで、一般には係合突部54による保持荷重の方が係り斜面62による保持荷重よりも高く設定されているため、クリップ本体50による保持荷重は両係止肩60の間隔や係り斜面62の角度により決まることとなる。
そこで、保持荷重が異なる取付に対応するためには、従来は、形状や材質の異なる複数種類のクリップ本体を用意することが必要であり、取付箇所の保持荷重に対応したクリップ本体を選択して取付けなければならなかった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するものとして提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、クリップ本体の形状や材質を変更することなく、同一種類のクリップ本体を用いて取付部材を被取付部材に取付けたときに、挿入荷重を変化させることなく異なる保持荷重に対応させることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るクリップによる取付構造は次の手段をとる。
まず本発明の第1の発明に係るクリップによる取付構造は、取付部材に突設状態で配設される座面部材に樹脂製のクリップ本体を取付けたクリップ構造体を、被取付部材に形成された取付孔に、該被取付部材の挿入方向表面側から裏面側に向けて挿入して、取付部材を被取付部材に着脱可能に取付けるクリップによる取付構造であって、
前記樹脂製のクリップ本体は、内側に形成される、前記座面部材を両側から挟持する一対の座面係合部片と、該座面係合部片の外側に形成され、前記被取付部材の取付孔に挿通し係止される、拡開方向に弾発力を付与された一対の取付係止片とを有し、
前記取付係止片は外方に山形状に突起形成されて、挿入時に近接変形して弾発力を生ずる挿入傾斜面と、抜き取り方向に対して係止機能を果たす係止傾斜面とを有し、
前記取付係止片の挿入傾斜面は同じ傾斜状態に形成されているが、係止傾斜面にはその傾斜状態の異なる複数の傾斜面が、前記拡開方向と直交する厚み方向に所定の厚みで隣接して形成されており、該拡開方向の両側の係止傾斜面には同じ傾斜状態の傾斜面が対応して形成されており、
前記被取付部材に形成される取付孔は、前記複数の傾斜面に対応して複数種類の取付孔が設定可能とされ、該複数種類の取付孔は前記複数の傾斜状態の異なる傾斜面のうちいずれか1つの同じ傾斜状態の傾斜面を係止させることのできる孔の大きさの係止孔と、残りの他のいずれの傾斜面も係止させることのない孔の大きさの逃がし孔とが連続して1つの孔として形成されるものであり、
前記取付部材の被取付部材に対して必要とする保持荷重に応じて前記複数種類の取付孔のうち選定された取付孔を前記被取付部材に形成し、該選定されて形成された取付孔に前記複数の傾斜面を形成したクリップ本体を取付けたクリップ構造体を挿入し係止させることを特徴とする。
【0007】
この第1の発明によれば、クリップ本体には保持荷重に対応した複数種類の傾斜面が形成されている。そして、傾斜状態が同じ傾斜面のみが係止孔に係止し、他の保持荷重に対応した傾斜面は逃がし孔に対応するために取付孔に係止しないように形成された取付孔が複数種類設定されている。そこで、特定の傾斜状態の傾斜面が係止する取付孔を選択することでクリップ本体の発揮する保持荷重が定まる。よって、被取付部材に形成された取付孔を異ならせることで、同一のクリップによる保持荷重を異ならせることができる。
また、挿入傾斜面は同じ傾斜状態に形成されているので挿入荷重はいずれの取付孔に挿入する場合も同一であり、取付孔を変更して保持荷重を高めても挿入荷重は変わらない。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は上記第1の発明に係るクリップによる取付構造であって、
前記取付孔は前記クリップ本体の厚み方向に対応した方向で開口長さを有し、該クリップ構造体は該取付孔に取付けた状態で該開口長さ方向の移動が許容されており、
該クリップ構造体が該取付孔のいずれの位置にあっても、保持荷重に応じた抗力を発揮する傾斜面に対応する位置には係止孔が形成され、他の傾斜面に対応する位置には逃がし孔のみが形成されていることを特徴とする。
この第2の発明によれば、クリップ構造体が取付孔の長さ方向の遊びにより取付位置が移動しても、係止孔には選択された係止状態の傾斜面のみが係止し、他の係止状態の傾斜面は係止しないため、クリップ構造体の取付位置が取付孔の長さ方向で移動しても、保持荷重が変化しない。よって保持荷重についての信頼性が高い。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は上記第2の発明に係るクリップによる取付構造であって、
前記係止傾斜面の厚み方向両端には傾斜状態が同一で厚みが同一の傾斜面が形成され、その間にはこれらと異なる傾斜状態の傾斜面が1つ形成され、各傾斜面は拡開方向に対称に形成されていることを特徴とする。
この第3の発明によれば、クリップ本体が左右対称であるため、抜去時の係止位置が左右対称となってバランスがよい。また、クリップ本体は厚み方向にも対称であるため、180度の回転対称となっており、クリップ本体を座面部材に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は上記第2の発明に係るクリップによる取付構造であって、
前記係止傾斜面には傾斜状態の異なる2個の傾斜面が等幅で形成されており、他方の係止傾斜面にはこれらの傾斜面と傾斜状態がそれぞれ対応する2個の傾斜面が等幅で厚み方向逆順に形成されていることを特徴とする。
この第4の発明によれば、いずれの傾斜状態の傾斜面が係止孔に係止する場合も係止する長さが同じであるため、バランスがよい。また、クリップ本体が回転対称であるため、クリップ本体を座面部材に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明によれば、クリップ本体には保持荷重に対応した複数種類の傾斜面が形成されている。そして、傾斜状態が同じ傾斜面のみが係止孔に係止し、他の保持荷重に対応した傾斜面は逃がし孔に対応するために取付孔に係止しないように形成された取付孔が複数種類設定されている。そこで、特定の傾斜状態の傾斜面が係止する取付孔を選択することでクリップ本体の発揮する保持荷重が定まる。よって、被取付部材に形成された取付孔を異ならせることで、同一のクリップによる保持荷重を異ならせることができる。また、挿入傾斜面は同じ傾斜状態に形成されているので挿入荷重はいずれの取付孔に挿入する場合も同一であり、取付孔を変更して保持荷重を高めても挿入荷重は変わらない。
上記第2の発明によれば、クリップ構造体が取付孔の長さ方向の遊びにより取付位置が移動しても、係止孔には選択された係止状態の傾斜面のみが係止し、他の係止状態の傾斜面は係止しないため、クリップ構造体の取付位置が取付孔の長さ方向で移動しても、保持荷重が変化しない。よって保持荷重についての信頼性が高い。
上記第3の発明によれば、クリップ本体が左右対称であるため、抜去時の係止位置が左右対称となってバランスがよい。また、クリップ本体は厚み方向にも対称であるため、180度の回転対称となっており、クリップ本体を座面部材に取付けるときに向きを意識する必要がない。
上記第4の発明によれば、いずれの傾斜状態の傾斜面が係止孔に係止する場合も係止する長さが同じであるため、バランスがよい。また、クリップ本体が回転対称であるため、クリップ本体を座面部材に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<第一実施例>
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1に本発明の第一実施例のクリップによる取付構造に用いるクリップ本体10の自由状態形状での外観斜視図を示す。クリップ10は樹脂で形成され、内側に形成される一対の座面係合部片14と、座面係合部片14の外側に形成される、拡開方向に弾発力を付与された一対の取付係止片20を有する。そして、取付係止片20には外方に山形状に突起形成されて、挿入時に近接変形して弾発力を生ずる挿入傾斜面22と、抜き取り方向に対して係止機能を果たす係止傾斜面24とを有し、挿入傾斜面22と係止傾斜面24の間には突起部分の最大幅を有する係止肩25が形成されている。係止傾斜面24の挿入方向後方には脚片21が形成されている。
挿入傾斜面22は取付係止片20の拡開方向に直交する厚み方向で同じ傾斜状態で形成され、拡開方向で対称な形状となっている。一方、係止傾斜面24には厚み方向の両端部に傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26が配設形成され、第1傾斜面26の間には第1傾斜面26と同じ厚みで傾斜状態が第1傾斜面26よりも急な第2傾斜面28が配設形成されている。そして、クリップ本体10の取付係止片20は拡開方向及び厚み方向で対称な形状となっている。
なお、実施例の説明では、他の実施例においても、傾斜状態が緩い傾斜面から順に第1傾斜面、第2傾斜面と名付けることとする。
【0013】
図2は本発明の一実施例に用いる取付部材30に形成された座面部材32の外観斜視図である。座面部材32には、中央にクリップ本体10の座面係合部片14を係合させる係合板34が形成され、係合板34の中央部にはクリップ本体10の座面係合部片14の先端に形成された係合突部16を係合させる係合孔36が設けられている。係合板34の先端は座面係合部片14の係合を容易にするために、板厚の薄い係合斜面39が形成されている。係合板34の両脇にはクリップ本体10を座面部材32に係合させるときのガイドとなり座面部材32の補強ともなる両側板38が形成されている。
【0014】
図3(A)は本発明の第一実施例に用いて低荷重の保持荷重を実現させる第1取付孔42をクリップ本体10を座面部材32に取付けたクリップ構造体12が係止する裏面側48から見た外観斜視図である。第1取付孔42はクリップ構造体12を挿入したとき、第1傾斜面26が第1取付孔42に面する位置には係止孔44が、第2傾斜面28が第1取付孔42に面する位置には逃がし孔46が、第1取付孔42の開口長さ方向に連続して形成されている。係止孔44と逃がし孔46は幅方向の中心が同一線上となるように形成されており、第1取付孔42は全体として長さ方向及び幅方向で対称な形状とされている。なお、逃がし孔46の長さは係止孔44の長さよりも長めに設定されており、逃がし孔46の幅はクリップ本体10の自由状態形状における係止肩25の幅に設定している。
図3(B)は第一実施例に用いて高荷重の保持荷重を実現させる第2取付孔43をクリップ構造体12が係止する裏面側48から見た外観斜視図である。第1取付孔42との違いは、逃がし孔46が係止孔44と同じ幅で形成されており、係止孔44と逃がし孔46の区別がないことである。この理由については後で説明する。
なお、第1取付孔42及び第2取付孔43の開口長さは、クリップ構造体12を挿入した状態で、クリップ構造体12が開口長さ方向の移動が許容される遊びを有した長さとされている。そのためクリップ構造体12を挿入しやすい。
【0015】
ここで図1に戻って、第1傾斜面26及び第2傾斜面28の詳細形状について説明する。係止肩25の直下には、第1傾斜面26と第2傾斜面28で傾斜が共通でほぼクリップ本体10の挿入方向に平行なストレート部が形成されている。ストレート部は第1傾斜面26よりも第2傾斜面28で長めに形成されている。ストレート部に続いて脚片21に向かって係止孔に係止して保持力を発揮する係止部が形成されている。第2傾斜面28の係止部は第1傾斜面26の系止部と比べて傾斜の変化が急であってクリップ10の挿入方向の長さが短く、第1傾斜面26の系止部より挿入方向上方で脚片21に当たり終わっている。そして、双方の係止部の突起量が同一となる中立位置27がある。そして、クリップ本体10がそれぞれの傾斜面での最大保持荷重を発揮するのは係止部が中立位置27の上方で係止孔44に係止する時である。
第2傾斜面28の係止部が係止孔44に係止するときは、第1傾斜面26の係止部が係止孔44に係止するときよりも、係止部と係止孔44のなす角度が大きいため、抜き取り方向に対してより大きな抗力を生じるため、保持荷重が大きい。
【0016】
クリップ本体10を用いて取付部材30を被取付部材40へ取付るときは次の手順で行う。まず、クリップ本体10の一対の座面係合部片14を座面部材32の係合板34に形成された係合斜面39の両側にスライドさせ、座面係合部片14の先端に形成された座面係合突部16を係合板34の中央部に形成された係合孔36に係合させてクリップ本体10を取付部材30に取付ける。この時、座面係合部片14はクリップ本体10の厚み方向で同一の形状としているので、180度回転させた向きで取付けることもできる。次に座面部材32にクリップ本体10が取付けられた状態のクリップ構造体12を被取付部材40に形成された取付孔42に表面側47から挿入して取付部材30を被取付部材40に取付ける。
【0017】
図4は、クリップ構造体12を被取付部材40に形成された第1取付孔42を取付けた状態の外観斜視図である。クリップ本体10は厚み方向のいずれか一箇所が拡開方向で近接変形すると、厚み方向の全域でほぼ同程度の幅だけ近接変形する性質があるため、図4に示すとおり第1傾斜面26が係止孔44に係止して近接変形した状態では、第2傾斜面28も第1傾斜面26とほぼ同じ幅だけ近接変形する。そして、図4に示すとおり傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26が係止孔44に係止した状態では、傾斜状態の急な第2傾斜面28は逃がし孔46に面して第1取付孔42から離れた状態となっている。
なお、クリップ構造体12の取付位置が第1取付孔42の遊び方向で移動しても、保持荷重を発揮する第1傾斜面26が係止孔44から外れることはなく、逃がし孔46に面した第2傾斜面28が係止孔44に係ることはないように係止孔44及び逃がし孔46の長さが設定されている。このため、クリップ構造体12の遊び方向の移動でクリップ構造体12の第1取付孔42に対する係止状態が変化することはない。
図5は図4のA−A断面図である。この第1傾斜面26が係止孔44に係止した位置では、抜き方向に対して係止孔44に係止する第1傾斜面26が抗力を発揮する。図6は図4のB−B断面図である。この第2傾斜面28が逃がし孔46に面した位置では、逃がし孔46の幅がクリップ本体10の自由状態形状における係止肩25の幅と同一とされているため、第2傾斜面28が逃がし孔46に係止することはない。
【0018】
図7は、クリップ構造体12を被取付部材40に形成された第2取付孔43を取付けた状態の外観斜視図である。クリップ本体10は厚み方向のいずれか一箇所が拡開方向で近接変形すると、厚み方向の全域でほぼ同程度の幅だけ近接変形する性質があるため、図7に示すとおり第2傾斜面28が係止孔44に係止して近接変形した状態では、第1傾斜面26も第2傾斜面28とほぼ同じ幅だけ近接変形する。
ここで、クリップ構造体12を被取付部材40に取付けた状態では、クリップ本体10の係止傾斜面24が被取付部材40の裏面側48で第1取付孔42に係止する位置は、前述の中立位置27よりも上方となり、この位置では、傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26の係止部の幅は傾斜状態の急な第2傾斜面28の係止部よりも幅が狭い。そのため、図7に示すとおり傾斜状態の急な第2傾斜面28が係止孔44に係止した状態では、傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26は係止孔44と同じ幅の逃がし孔46から離れた状態となっている。
図8は図7のC−C断面図である。この第1傾斜面26が係止孔44と同じ幅の逃がし孔46に面した位置では、第1傾斜面26の幅が第2傾斜面28の幅よりも狭くなっているため、第1傾斜面26が逃がし孔46に係止することはない。図9は図7のD−D断面図である。この第2傾斜面28が係止孔44に係止する位置では、第2傾斜面28が抗力を発揮する。
【0019】
クリップ本体10の抜き方向の抗力は、抗力が生じる部分の係止傾斜面24と取付孔42のなす角度および近接変形される係止傾斜面24の厚みによって決まるものであり、クリップ本体10はいずれか一箇所が拡開方向で近接変形すると、厚み方向の全域でほぼ同程度の幅だけ近接変形する性質を有している。
そこで、クリップ構造体12を第1傾斜面26が係止孔44に係止する第1取付孔42へ取付けたときの保持荷重は、係止傾斜面24の全体が第1傾斜面26と同じ傾斜状態で形成されたクリップ本体10を取付孔42が開口長さ全体にわたって係止孔44の幅で形成されている取付孔に取付けた時の保持荷重と同程度である。
また、第2傾斜面28が係止孔44に係止する第2取付孔43へ取付けたときの保持荷重は、係止傾斜面24の全体が第2傾斜面28と同じ傾斜状態で形成されたクリップ本体を第2取付孔43に取付けた時の保持荷重と同程度である。
【0020】
よって、同一形状のクリップ本体10を用い、被取付部材40に形成される取付孔の形状を第1取付孔42とするか第2取付孔43とするかを選択することで、2種類の保持荷重に対応させることができる。そして、挿入傾斜面22は同じ傾斜状態に形成されているので挿入荷重はいずれの取付孔に挿入する場合も同一であり、取付孔を変更して保持荷重を高めても挿入荷重は変わらない。
また、クリップ本体10が左右対称であるため、抜去時の係止位置が左右対称となってバランスがよい。また、クリップ本体10は厚み方向にも対称であるため、180度の回転対称となっており、クリップ本体10を座面部材32に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【0021】
<第二実施例>
図10に本発明の第二実施例のクリップによる取付構造に用いるクリップ本体10Aの外観斜視図を示す。第一実施例と比べて、傾斜状態が緩い第1傾斜面が厚み方向の中央に位置し、その両側に傾斜状態が急な第二傾斜面が位置していることが特徴である。第二実施例に用いる取付部材30に形成された座面部材32は第一実施例に用いたものと同じであるため説明は省略する。
図11(A)に第二実施例で低保持荷重を実現するための第1取付孔42Aを、図11(B)に第二実施例で高保持荷重を実現するための第2取付孔43Aを示す。第一実施例の場合と比べて、低保持荷重用の第1取付孔42Aは開口長さ方向の中央部に係止孔44が形成されその両端に逃がし孔46が形成されていることが特徴である。第2取付孔43Aは第2取付孔43と同様で係止孔44と逃がし孔46の孔幅の差はない。
【0022】
第1取付孔42A及び第2取付孔43Aの開口長さは、クリップ構造体12Aを挿入した状態で、クリップ構造体12Aが開口長さ方向の移動が許容される遊びを有した長さとされている点は第一実施例と同様である。そして、クリップ本体10Aが第1取付孔42Aの遊び方向で移動してもクリップ本体10Aの第1取付孔42Aに対する係止状態が変化しないように係止孔44及び逃がし孔46の長さが設定されていることも第一実施例と同様である。
【0023】
クリップ本体10Aを用いたクリップ構造体12Aを第1取付孔42Aに挿入したときはクリップ本体10Aの厚み方向中央部に形成された第1傾斜面26のみが係止孔44に係止して低保持荷重が得られる。クリップ構造体12Aを第2取付孔43Aに挿入したときはクリップ本体10Aの厚み方向両端に形成された第2傾斜面28のみが係止孔44に係止して高保持荷重が得られる。そして、挿入傾斜面22は同じ傾斜状態に形成されているので挿入荷重はいずれの取付孔に挿入する場合も同一であり、取付孔を変更して保持荷重を高めても挿入荷重は変わらない点は第一実施例と同様である。
また、クリップ本体10Aが左右対称であるため、抜去時の係止位置が左右対称となってバランスがよい点、クリップ本体10Aは180度の回転対称となっており、クリップ本体10Aを座面部材32に取付けるときに向きを意識する必要がない点は第一実施例と同様である。
【0024】
<第三実施例>
図12に本発明の第三実施例のクリップによる取付構造に用いるクリップ本体10Bの外観斜視図を示す。クリップ本体10Bは、係止傾斜面24の形状を除いて、第一実施例で用いたクリップ本体10と基本的な形状及び性質は同じである。クリップ本体10Bの一方の側の係止傾斜面24には傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26と傾斜状態が第1傾斜面26よりも急な第2傾斜面28が同じ厚みで隣接して配設形成され、他方の係止傾斜面24には、第1傾斜面26及び第2傾斜面28と対応する傾斜状態の傾斜面が厚み方向に逆順で配設形成されている。そのため、クリップ本体10Bは挿入方向に対して回転対称の形状となっている。
【0025】
第三実施例に用いる取付部材30に形成された座面部材32は、図2に示した第一実施例に用いたものと同じであるため説明は省略する。
【0026】
図13(A)は本発明の第三実施例に用いて低荷重の保持荷重を実現させる第1取付孔42Bをクリップ本体10Bが係止する裏面側48から見た外観斜視図である。第1取付孔42Bはクリップ本体10Bを座面部材32に取付けたクリップ構造体12Bを挿入したとき、第1傾斜面26が第1取付孔42Bに面する位置には係止孔44が、第2傾斜面28が第1取付孔42Bに面する位置には逃がし孔46が形成されている。
図13(B)は第三実施例に用いて高荷重の保持荷重を実現させる第2取付孔43Bをクリップ本体10Bが係止する裏面側48から見た斜視図である。第1取付孔42Bとの違いは、係止孔44と逃がし孔46の位置が入れ替わっていることである。
なお、逃がし孔46は係止孔44よりもやや長めに形成されている。
ここで、第1取付孔42B及び第2取付孔43Bの開口長さは、上述の実施例と同様にクリップ構造体12Bを挿入した状態で、クリップ構造体12Bが開口長さ方向の移動が許容される遊びを有した長さとされている。そのためクリップ構造体12Bを挿入しやすい。
【0027】
図14は、クリップ構造体12Bを被取付部材40に形成された第1取付孔42Bに取付けた状態の外観斜視図である。クリップ本体10Bは厚み方向のいずれか一箇所が拡開方向で近接変形すると、厚み方向の全域でほぼ同程度の幅だけ近接変形する性質があるため、図14に示すとおり第1傾斜面26が係止孔44に係止して近接変形した状態では、第2傾斜面28も第1傾斜面26とほぼ同じ幅だけ近接変形する。そして、図14に示すとおり傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26が係止孔44に係止した状態では、傾斜状態の急な第2傾斜面28は逃がし孔46に面して第1取付孔42Bから離れた状態となっている。
図15に図14のE−E断面図を示す。この位置においては、紙面左側では第1傾斜面26が係止孔44に係止し、紙面右側では第2傾斜面28は逃がし孔46から離れた状態となっている。図16に図14のF−F断面図を示す。この位置においては、紙面左側では第2傾斜面28は逃がし孔46から離れた状態となっており、紙面右側では第1傾斜面26が係止孔44に係止している。
よって、クリップ構造体12Bを第1取付孔42Bに取付けた場合には、斜向かいに形成された第1傾斜面26のみが同じく斜向かいに形成された係止孔44にそれぞれ係止してクリップ本体10Bが第1取付孔42Bへ係止するため、第1傾斜面26により低い保持荷重が得られる。
【0028】
図17は、クリップ構造体12Bを被取付部材40に形成された第2取付孔43Bに取付けた状態の外観斜視図である。クリップ本体10Bは厚み方向のいずれか一箇所が拡開方向で近接変形すると、厚み方向の全域でほぼ同程度の幅だけ近接変形する性質があるため、図17に示すとおり第2傾斜面28が係止孔44に係止して近接変形した状態では、第1傾斜面26も第2傾斜面28とほぼ同じ幅だけ近接変形する。そして、図17に示すとおり傾斜状態の急な第2傾斜面28が係止孔44に係止した状態では、傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26は逃がし孔46に面して第2取付孔43Bから離れた状態となっている。
図18に図17のG−G断面図を示す。この位置においては、紙面左側では第1傾斜面26は逃がし孔46から離れた状態となっており、紙面右側では第2傾斜面28が係止孔44に係止している。図19に図17のH−H断面図を示す。この位置においては、紙面左側では第2傾斜面28が係止孔44に係止し、紙面右側では第1傾斜面26は逃がし孔46から離れた状態となっている。
よって、クリップ構造体12Bを第2取付孔43Bに取付けた場合には、斜向かいに形成された第2傾斜面28のみが同じく斜向かいに形成された係止孔44にそれぞれ係止してクリップ本体10Bが第2取付孔43Bへ係止するため、第2傾斜面28により高い保持荷重が得られる。
また、この実施例によれば、いずれの傾斜状態の傾斜面が係止孔44に係止する場合も係止する長さが同じであるため、バランスがよい。また、クリップ本体10Bが回転対称であるため、クリップ本体10Bを座面部材32に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【0029】
なお、クリップ構造体12Bの取付位置が第1取付孔42Bあるいは第2取付孔43Bの遊び方向で移動しても、保持荷重を発揮する傾斜面が係止孔44から外れることはなく、逃がし孔46に面した傾斜面が係止孔44に係ることはないように係止孔44及び逃がし孔46の長さが設定されているので、クリップ構造体12Bの遊び方向の移動でクリップ構造体12Bの第1取付孔42Bあるいは第2取付孔43Bに対する係止状態が変化することはない。
【0030】
よって、同一形状のクリップ本体10Bを用い、被取付部材40に形成される取付孔の形状を第1取付孔42Bとするか第2取付孔43Bとするかを選択することで、2種類の保持荷重に対応させることができる。
また、この実施例によれば、いずれの傾斜状態の傾斜面が係止孔44に係止する場合も係止する長さが同じであるため、バランスがよい。また、クリップ本体10Bが回転対称であるため、クリップ本体10Bを座面部材32に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【0031】
<第四実施例>
図20に本発明の第四実施例のクリップによる取付構造に用いるクリップ本体10Cの外観斜視図を示す。クリップ本体10Cは、係止傾斜面24の形状を除いて第一実施例で用いたクリップ本体10と基本的な形状及び性質は同じである。クリップ本体10Cの一方の係止傾斜面24には傾斜状態の緩やかな第1傾斜面26と傾斜状態が第1傾斜面26よりも急な第2傾斜面28と第2傾斜面28よりも更に傾斜状態が急な第3傾斜面29が同じ厚みで隣接して配設形成されており、他方の係止傾斜面24には、第1傾斜面26、第2傾斜面28及び第3傾斜面29と対応する傾斜状態の傾斜面が厚み方向に逆順で配設形成されている。そのため、クリップ本体10Cは挿入方向に対して回転対称な形状となっている。なお、これら三種の傾斜面では、係止部の幅が同一となる中立位置27は同一線上にあり一致している。図21にクリップ本体10Cの正面図を示す。
【0032】
第四実施例に用いる取付部材30に形成された座面部材32は、図2に示した第一実施例に用いたものと同じであるため説明は省略する。
【0033】
図22(A)は本発明の第四実施例に用いて低荷重の保持荷重を実現させる第1取付孔42Cをクリップ本体10Cが係止する裏面側48から見た斜視図である。第1取付孔42Cはクリップ本体10Cを座面部材32に取付けたクリップ構造体12Cを挿入したとき、第1傾斜面26が第1取付孔42Cに面する位置には係止孔44が、第2傾斜面28及び第3傾斜面29が第1取付孔42Cに面する位置には逃がし孔46が形成されていることを特徴とする。
図22(B)は本発明の第四実施例に用いて高荷重の保持荷重を実現させる第2取付孔43Cをクリップ本体10Cが係止する裏面側48から見た斜視図である。第2取付孔43Cはクリップ構造体12Cを挿入したとき、第2傾斜面28が第2取付孔43Cに面する位置には係止孔44が、第1傾斜面26及び第3傾斜面29が第2取付孔43Cに面する位置には逃がし孔46が形成されていることを特徴とする。
図21(C)は本発明の第四実施例に用いて最高荷重の保持荷重を実現させる第3取付孔43Dをクリップ本体10Cが係止する裏面側48から見た斜視図である。第3取付孔43Dはクリップ構造体12Cを挿入したとき、第3傾斜面28が第3取付孔43Dに面する位置には係止孔44が、第1傾斜面26及び第2傾斜面28が第3取付孔43Dに面する位置には逃がし孔46が形成されていることを特徴とする。
【0034】
ここで、第1取付孔42C、第2取付孔43C及び第3取付孔43Dの開口長さは、クリップ構造体12Cを挿入した状態で、クリップ構造体12Cが開口長さ方向の移動が許容される遊びを有した長さとされている。そのためクリップ構造体12Cの挿入や抜去が容易である。
なお、クリップ構造体12Cの取付位置がこれらの取付孔の遊び方向で移動しても、保持荷重に保持荷重を発揮する傾斜面が係止孔44から外れることはなく、逃がし孔46に面した傾斜面が係止孔44に係ることはないように係止孔44及び逃がし孔46の長さが設定されているので、クリップ構造体12Cの遊び方向の移動で保持荷重が変化することはない。
【0035】
クリップ構造体12Cを第1取付孔42Cに取付けたときは第1傾斜面26のみが係止孔44に係止して低荷重の保持荷重が得られる。クリップ構造体12Cを第2取付孔43Cに取付けたときは第2傾斜面28のみが係止孔44に係止して高荷重の保持荷重が得られる。クリップ構造体12Cを第3取付孔43Dに取付けたときは第3傾斜面29のみが係止孔44に係止して最高荷重の保持荷重が得られる。
なお、より保持荷重の高い傾斜面を係止孔44に係止させるときは、より保持荷重の低い傾斜面が取付孔42に面する位置の逃がし孔46の幅は、第一実施例と同様に、係止孔44と同じ幅にしても良い。クリップ本体10Aはクリップ本体10と同様に、厚み方向のいずれか一箇所が拡開方向で近接変形すると、厚み方向の全域でほぼ同程度の幅だけ近接変形する性質があるため、より保持荷重の高い傾斜面が係止孔44に係止した状態では、より保持荷重の低い傾斜面は、係止孔44に係止することができない幅に近接変形しているからである。
【0036】
この実施例によれば、同一のクリップ本体10Cを用いて、取付孔の形状を3種類の中から選択することにより、3種類の保持荷重に対応させることができる。そして、挿入傾斜面22は同じ傾斜状態に形成されているので挿入荷重はいずれの取付孔に挿入する場合も同一であり、取付孔を変更して保持荷重を高めても挿入荷重は変わらない。
また、いずれの傾斜状態の傾斜面が係止孔44に係止する場合も係止する長さが同じであるため、バランスがよい。また、クリップ本体10Cが回転対称であるため、クリップ本体10Cを座面部材32に取付けるときに向きを意識する必要がない。
【0037】
上述の実施例では、逃がし孔の幅は、係止孔の幅と同一にする場合を除いては、クリップ本体の自由状態形状における係止肩の幅を基準としているが、逃がし孔に対応する傾斜面が逃がし孔に係らなければ良いので、実施例の幅に限られない。クリップ本体の挿入方向各位置で係止させたい傾斜面よりも係止させたくない傾斜面の幅が広く形成されている部分がある時に、係止孔の中心位置を基準として、その片側における差の最大値分だけ逃がし孔が係止孔よりも広く形成されていれば十分である。
【0038】
その他、本発明はその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第一実施例で使用するクリップ本体の外観斜視図である。
【図2】第一実施例で使用する取付部品に形成された座面部材の外観斜視図である。
【図3】第1実施例で使用する低荷重用の取付孔及び高荷重用の取付孔の外観斜視図である。
【図4】第一実施例でクリップ構造体を低荷重用の取付孔に取付けた状態の外観斜視図である
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4のB−B断面図である。
【図7】第一実施例でクリップ構造体を高荷重用の取付孔に取付けた状態の外観斜視図である
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】図7のD−D断面図である。
【図10】第二実施例で使用するクリップ本体の外観斜視図である。
【図11】第二実施例で使用する低荷重用の取付孔及び高荷重用の取付孔を裏面側からみた外観斜視図である。
【図12】第三実施例で使用するクリップ本体の外観斜視図である。
【図13】第三実施例で使用する低荷重用の取付孔及び高荷重用の取付孔を裏面側から見た外観斜視図である。
【図14】第三実施例でクリップ構造体を低荷重用の取付孔に取付けた状態の外観斜視図である。
【図15】図14のE−E断面図である。
【図16】図14のF−F断面図である。
【図17】第三実施例でクリップ構造体を高荷重用の取付孔に取付けた状態の外観斜視図である。
【図18】図17のG−G断面図である。
【図19】図17のH−H断面図である。
【図20】第四実施例で使用するクリップ本体の外観斜視図である。
【図21】第四実施例で使用するクリップ本体の正面図である。
【図22】第四実施例で使用する三種の荷重用の取付孔を裏面側から見た外観斜視図である。
【図23】従来技術によるクリップによる取付構造を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10、10A、10B、10C クリップ本体
12、12A、12C、12C クリップ構造体
14 座面係合部片
16 係合突部
20 取付係止片
21 脚片
22 挿入傾斜面
24 係止傾斜面
25 係止肩
26 第1傾斜面
27 中立位置
28 第2傾斜面
29 第3傾斜面
30 取付部材
32 座面部材
34 係合板
36 係合孔
38 両側板
39 係合斜面
40 被取付部材
42、42A、42B、42C 第1取付孔
43、43A、43B、43C 第2取付孔
43D 第3取付孔
44 係止孔
46 逃がし孔
47 表面側
48 裏面側


【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材に突設状態で配設される座面部材に樹脂製のクリップ本体を取付けたクリップ構造体を、被取付部材に形成された取付孔に、該被取付部材の挿入方向表面側から裏面側に向けて挿入して、取付部材を被取付部材に着脱可能に取付けるクリップによる取付構造であって、
前記樹脂製のクリップ本体は、内側に形成される、前記座面部材を両側から挟持する一対の座面係合部片と、該座面係合部片の外側に形成され、前記被取付部材の取付孔に挿通し係止される、拡開方向に弾発力を付与された一対の取付係止片とを有し、
前記取付係止片は外方に山形状に突起形成されて、挿入時に近接変形して弾発力を生ずる挿入傾斜面と、抜き取り方向に対して係止機能を果たす係止傾斜面とを有し、
前記取付係止片の挿入傾斜面は同じ傾斜状態に形成されているが、係止傾斜面にはその傾斜状態の異なる複数の傾斜面が、前記拡開方向と直交する厚み方向に所定の厚みで隣接して形成されており、該拡開方向の両側の係止傾斜面には同じ傾斜状態の傾斜面が対応して形成されており、
前記被取付部材に形成される取付孔は、前記複数の傾斜面に対応して複数種類の取付孔が設定可能とされ、該複数種類の取付孔は前記複数の傾斜状態の異なる傾斜面のうちいずれか1つの同じ傾斜状態の傾斜面を係止させることのできる孔の大きさの係止孔と、残りの他のいずれの傾斜面も係止させることのない孔の大きさの逃がし孔とが連続して1つの孔として形成されるものであり、
前記取付部材の被取付部材に対して必要とする保持荷重に応じて前記複数種類の取付孔のうち選定された取付孔を前記被取付部材に形成し、該選定されて形成された取付孔に前記複数の傾斜面を形成したクリップ本体を取付けたクリップ構造体を挿入し係止させることを特徴とするクリップによる取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップによる取付構造であって、
前記取付孔の前記クリップ本体の厚み方向に対応させて形成する開口長さは、該クリップ構造体が該取付孔に取付けられた状態で該開口長さ方向の移動が許容される長さとされており、
該クリップ構造体が該取付孔のいずれの位置にあっても、保持荷重に応じた抗力を発揮する傾斜面に対応する位置には係止孔が形成され、他の傾斜面に対応する位置には逃がし孔のみが形成されていることを特徴とするクリップによる取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のクリップによる取付構造であって、
前記係止傾斜面の厚み方向両端には傾斜状態が同一で厚みが同一の傾斜面が形成され、その間にはこれらと異なる傾斜状態の傾斜面が1つ形成され、各傾斜面は拡開方向に対称に形成されていることを特徴とするクリップによる取付構造。
【請求項4】
請求項2に記載のクリップによる取付構造であって、
前記係止傾斜面には傾斜状態の異なる2個の傾斜面が同じ厚みで形成されており、他方の係止傾斜面にはこれらの傾斜面と傾斜状態がそれぞれ対応する2個の傾斜面が同じ厚みで厚み方向逆順に形成されていることを特徴とするクリップによる取付構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−127666(P2009−127666A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300431(P2007−300431)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000208293)大和化成工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】