説明

クリヤーコーティング組成物およびそれからなる塗装品

【課題】長期間にわたって被塗装物の視認性を損なうことなく、かつ衝撃や被塗装物の形状の変化に耐えることができる柔軟性を有するクリヤーコーティング組成物およびそれからなる塗装品を提供する。
【解決手段】クリヤーコーティング組成物は、水酸基含有フッ素樹脂およびイソシアネート系硬化剤を含有する樹脂組成物と、フッ素系界面活性剤と、紫外線吸収剤と、オルガノシリケート化合物と、溶剤とを含むクリヤーコーティング組成物であって、前記イソシアネート系硬化剤が、イソシアネート化合物(A)とラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合した重量平均分子量1,000〜10,000の反応生成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリヤーコーティング組成物およびそれからなる塗装品に関する。
【背景技術】
【0002】
長期間にわたって屋外に曝される構造物は、自動車などが接触した場合、割れたり、形状が変化するために劣化し、また、自動車の排気ガス、塵埃などによって汚染されるため、その見映えは経時的に悪化する。なかでも、道路の中央分離帯などに設置される道路標識柱は、自動車の接触時の衝撃によって割れが生じやすく、形状が一時的に屈曲する結果、表面に亀裂が生じやすい。また、自動車の排気ガスに含まれる汚染物質がその表面に付着するため、屋外構造物の中でも特に見映えの悪化が著しい。しかしながら、道路標識柱は、昼間はそれ自身が有する色によって、夜間はその表面に取り付けられた再帰反射性の反射シートによって自動車の運転者に注意を喚起する必要がある。そのため、見映えを維持する機能、つまり視認性が重要である。
【0003】
排気ガスや塵埃などによる汚染や紫外線などによる劣化を防止するため、屋外構造物に透明性のクリヤーコーティングを施す技術が従来から知られている。たとえば、特許文献1には、1コート1ベークで塗装することができ、高い透明性を有するクリヤーコーティング組成物が提案されている。
【0004】
また、反射シートへの汚れの付着を防止し、その機能を長期間維持するために、反射シートの表面に自浄性を有する光触媒フィルムを貼着した道路標識柱が特許文献2に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2007−217514号公報
【特許文献2】特許第4113019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高い透明性や基材への付着性、汚染防止機能を維持しながら、衝撃や被塗装物の形状の変化に耐えることができる柔軟性を有するクリヤーコーティング組成物はこれまでなかった。そのため、自動車などの接触による衝撃や被塗装物の形状の変化によって塗膜に亀裂やシワが発生するのを抑えることができなかった。塗膜に亀裂が生じると、そこから汚れが侵入し、塗膜の汚染防止機能が低下するという問題もある。特に、道路標識柱においては視認性が重要であるにもかかわらず、形状の変化や汚染の程度があまりにも著しいため、新しい標識柱に交換する以外の方法、たとえば透明性の塗膜を表面に形成して視認性を維持することについて検討すらされてこなかった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、透明性、耐候性および基材への付着性に優れ、高い汚染防止機能を有することから、長期間にわたって被塗装物の視認性を損なうことなく、かつ衝撃や被塗装物の形状の変化に耐えることができる柔軟性を有するクリヤーコーティング組成物およびそれからなる塗装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のクリヤーコーティング組成物は、水酸基含有フッ素樹脂およびイソシアネート系硬化剤を含有する樹脂組成物と、フッ素系界面活性剤と、紫外線吸収剤と、オルガノシリケート化合物と、溶剤とを含むクリヤーコーティング組成物であって、前記イソシアネート系硬化剤が、イソシアネート化合物(A)とラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合した重量平均分子量1,000〜10,000の反応生成物であることを特徴としている。
【0009】
また、イソシアネート化合物(A)が、一般式(1):
ONC−(CH2)6−NCO
で表される化合物、一般式(2):
【化1】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(3):
【化2】

(式中、nは炭素数1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(4):
【化3】

(式中、R1は炭素数3〜8の3価アルコールであり、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(5):
【化4】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、および一般式(6):
【化5】

(式中、R2は炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜5の整数である)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上であり、
ラクトン系ポリオール(B)が、一般式(7):
【化6】

(式中、R3は炭素数2〜6の2価アルコールであり、mおよびnはそれぞれ同じかまたは異なる1〜10の整数であり、xおよびyはそれぞれ同じかまたは異なる3、4または5の整数である)で表される化合物および/または一般式(8):
【化7】

(式中、R4は炭素数3〜8の3価アルコールであり、L、mおよびnはそれぞれ同じかまたは異なる1〜8の整数であり、x、yおよびzはそれぞれ同じかまたは異なる3、4または5の整数である)で表される化合物であることが好ましい。
【0010】
また、前記オルガノシリケート化合物が、一般式(9):
【化8】

(式中、R5〜R8はそれぞれ同じかまたは異なる炭素数1〜4のアルキル基であり、nは10より大きく30以下の整数である)で表される化合物であることが好ましい。
【0011】
また、前記樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり、1〜15重量部のポリエステルポリオールをさらに含むことが好ましい。
【0012】
本発明の塗装品は、クリヤーコーティング組成物からなる塗膜をその基材上に有してなることを特徴としている。
【0013】
本発明の道路標識柱は、クリヤーコーティング組成物からなる塗膜を、その表面を覆うように形成してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクリヤーコーティング組成物によれば、透明性、耐候性および基材への付着性に優れ、高い汚染防止機能を有するため、長期間にわたって視認性を維持できるとともに、高い柔軟性を有するため、自動車などの接触による衝撃で割れにくく、披塗装物の形状が大きく変化した場合であっても、亀裂やシワが生じにくい。
【0015】
また、本発明のクリヤーコーティング組成物からなる塗膜を基材上に有する塗装品は、長期間にわたって屋外に曝された場合であっても、排気ガスなどの汚れが付着しにくく、かつ塗装品の形状が変化した場合であっても塗膜に亀裂やシワが生じにくいため、優れた視認性を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の道路標識柱の正面図である。
【図2】図1のII−IIラインにおける部分断面の模式図である。
【図3】実施例1における引張り強度と伸び量との関係を示したグラフである。
【図4】実施例2における引張り強度と伸び量との関係を示したグラフである。
【図5】実施例3における引張り強度と伸び量との関係を示したグラフである。
【図6】実施例4における引張り強度と伸び量との関係を示したグラフである。
【図7】実施例5における引張り強度と伸び量との関係を示したグラフである。
【図8】比較例における引張り強度と伸び量との関係を示したグラフである。
【図9】本発明の実施例による走踏試験の説明図であって、(a)は道路標識柱に治具が接触した状態を示した図であり、(b)は治具が道路標識柱を押し曲げた状態を示した図であり、(c)は治具が道路標識柱を通過した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<樹脂組成物>
本発明に用いられる樹脂組成物は、クリヤーコーティング組成物の主成分となるものであり、水酸基含有フッ素樹脂およびイソシアネート系硬化剤を含有する。
【0018】
(水酸基含有フッ素樹脂)
水酸基含有フッ素樹脂は、フッ素樹脂に水酸基を導入することによって得られる。水酸基の導入方法は、特に限定されるものではないが、フルオロオレフィンを重合する際に、水酸基含有単量体を共重合する方法などがあげられる。
【0019】
フルオロオレフィンとしては、一般式(10):
910C=CFR11
(式中、R9〜R11は、それぞれ同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子、塩素原子、1価のアルキル基または1価のフルオロアルキル基である)で表される単量体をあげることができる。
【0020】
1価のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜10のアルキル基をあげることができる。また、1価のフルオロアルキル基としては、前記アルキル基中の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基をあげることができる。
【0021】
一般式(10)で表される単量体としては、具体的には、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどをあげることができる。
【0022】
前記フルオロオレフィン、水酸基含有単量体以外の単量体は、特に限定されるものではなく、前記フルオロオレフィンと水酸基含有単量体と共重合できる単量体を用いることができる。たとえば、エチレン、プロピレン、イソブテン、1−ブテンなどのα−オレフィン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ピバリック酸ビニル、カプリル酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル類;酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニルなどの脂肪酸イソプロペニルエステル類など、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル;アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族モノマー;アクリル酸またはメタクリル酸のアミド化合物およびその誘導体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど、またはこれらの単量体中の1つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたものをあげることができる。
【0023】
これらの中でも、フルオロオレフィンの共重合割合が少なすぎると、優れた耐候性が得られない傾向があり、フルオロオレフィンの共重合割合が多すぎると、溶剤への溶解性が低下する点から、フルオロオレフィン単位を20〜80重量%、ビニルエーテル単位を80〜20重量%含有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体であることが好ましく、フルオロオレフィン単位を40〜70重量%、ビニルエーテル単位を60〜30重量%含有するフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体がより好ましい。
【0024】
フッ素樹脂に導入する水酸基含有単量体としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテルなどのヒドロキシアリルエーテル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルおよびメタクリル酸ヒドロキシプロピルなどをあげることができる。
【0025】
水酸基含有フッ素樹脂の数平均分子量は、2,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましい。数平均分子量が2,000未満であると、塗膜の耐久性、耐汚染性の保持性が低下する傾向があり、100,000を超えるとイソシアネート系硬化剤との相溶性が低下し、塗料貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0026】
水酸基含有フッ素樹脂の水酸基価は、20〜200mgKOH/gであることが好ましく、20〜150mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が20mgKOH/g未満であると塗膜の耐久性、耐汚染性の保持性が低下する傾向があり、200mgKOH/gを超えると塗膜の耐久性、耐水性および耐汚染性が低下する傾向がある。
【0027】
(イソシアネート系硬化剤)
イソシアネート系硬化剤は、イソシアネート化合物(A)とラクトン系ポリオール(B)とを含有し、イソシアネート化合物(A)のイソシアネート基とラクトン系ポリオール(B)の水酸基とがウレタン結合した反応生成物である。この反応生成物の数平均分子量は500〜5,000であり、より好ましくは1,000〜2,500であり、重量平均分子量は1,000〜10,000であり、より好ましくは1,500〜5,000である。重量平均分子量が1,000未満であるとコーティング組成物の柔軟性が低下する傾向があり、10,000を超えると粘着性が高くなりすぎる傾向がある。
【0028】
イソシアネート系硬化剤において、イソシアネート化合物(A)とラクトン系ポリオール(B)とは、たとえば、一般式(11):
A−B−A
または、一般式(12):
A−B−A−B−A
または、一般式(13):
A−B−A−B−A−B−A
(上記一般式(11)、(12)および(13)中、Aはイソシアネート化合物(A)であり、Bはラクトン系ポリオール(B)であり、AとBとはウレタン結合している)で表される。また、ラクトン系ポリオール(B)が3価のアルコールの場合、一般式(14):
【化9】

または、一般式(15):
【化10】

(上記一般式(14)および(15)中、Aはイソシアネート化合物(A)であり、Bはラクトン系ポリオール(B)であり、AとBとはウレタン結合している)で表されることもできる。
【0029】
イソシアネート系硬化剤に含まれるイソシアネート化合物(A)は、特に限定されるものではないが、耐溶剤性、耐候性および耐汚染性に優れることから、イソシアネート基を2以上有する2官能以上のイソシアネート化合物であることが好ましい。そのようなイソシアネート化合物(A)として、たとえばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物、それらの2量体、3量体、または水またはアルコール類との反応生成物などをあげることができる。
【0030】
そのなかでも、塗膜の黄変を防止し、耐候性に優れることから、イソシアネート化合物(A)は、一般式(1):
ONC−(CH2)6−NCO
で表される化合物、一般式(2):
【化11】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(3):
【化12】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(4):
【化13】

(式中、R1は炭素数3〜8の3価アルコールであり、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(5):
【化14】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、または一般式(6):
【化15】

(式中、R2は炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜5の整数である)で表される化合物であることがより好ましく、これらは単独または混合して用いることができる。
【0031】
炭素数3〜8の3価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどをあげることができる。
【0032】
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−へプチル基、イソへプチル基、sec−へプチル基、tert−へプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基などをあげることができる。
【0033】
イソシアネート系硬化剤に含まれるラクトン系ポリオール(B)はクリヤーコーティング組成物に柔軟性を与えるためのものである。分子量は特に限定されるものではないが、塗膜の柔軟性と架橋性を考慮して分子量が300〜2,000の2価または3価のアルコールであることが好ましく、分子量は500〜1,200であることがより好ましい。
【0034】
そのなかでも、耐水性および伸び性に優れることから、ラクトン系ポリオール(B)は、一般式(7):
【化16】

(式中、R3は炭素数2〜6の2価アルコールであり、mおよびnはそれぞれ同じかまたは異なる1〜10の整数であり、xおよびyはそれぞれ同じかまたは異なる3、4または5の整数である)で表される化合物、または一般式(8):
【化17】

(式中、R4は炭素数3〜8の3価アルコールであり、L、mおよびnはそれぞれ同じかまたは異なる1〜8の整数であり、x、yおよびzはそれぞれ同じかまたは異なる3、4または5の整数である)で表される化合物であることがより好ましい。
【0035】
上記一般式(7)および(8)のラクトン系ポリオール(B)としては、ポリブチロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリカプロラクトンポリオールをあげることができる。なかでも、伸び性および耐水性に優れるポリカプロラクトンポリオールを用いることが特に好ましい。
【0036】
炭素数2〜6の2価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ソルバイトなどをあげることができる。
【0037】
また、炭素数3〜8の3価アルコールとしては、たとえば、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどをあげることができる。
【0038】
上記一般式(1)で表されるイソシアネート化合物(A)と、上記一般式(7)または(8)で表されるラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合したイソシアネート系硬化剤の市販品として、デュラネートE402−90T(旭化成ケミカルズ(株)製)およびデュラネートE405−80T(旭化成ケミカルズ(株)製)があげられる。また、上記一般式(2)で表されるイソシアネート化合物(A)と、上記一般式(7)または(8)で表されるラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合したイソシアネート系硬化剤の市販品として、デスモジュールN3800(住化バイエルウレタン(株)製)があげられる。さらに、市販品ではないが、上記一般式(6)で表されるイソシアネート化合物(A)と、上記一般式(7)または(8)で表されるラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合したイソシアネート系硬化剤として、HDIアロファネートベースの変性ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製)があげられる。
【0039】
水酸基含有フッ素樹脂とイソシアネート系硬化剤の混合割合は、水酸基含有フッ素樹脂の水酸基1モルに対してイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基が0.8〜2.0モルであることが好ましく、1.0〜1.5モルであることがより好ましい。0.8モル未満であると塗膜の硬化が不充分となり、耐溶剤性、耐汚染性、耐候性などが低下する傾向があり、2.0モルを超えると未反応のイソシアネート基が塗膜中に残存し、耐候性および耐汚染性が低下する傾向がある。
【0040】
<溶剤>
クリヤーコーティング組成物に用いられる溶剤は特に限定されるものではないが、シクロヘキサノンおよびジイソブチルケトンを含むことが好ましい。これによって、耐溶剤性が弱く、一般に塗料との充分な付着性が得られにくいポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂成形品に、1コート1ベークで高い透明性を損なうことなく塗装ができる。シクロヘキサノンの溶剤中の含量は5〜20重量%であることが好ましく、7〜15重量%であることがより好ましい。シクロヘキサノンが5重量%未満であると、樹脂などへの塗膜付着性が低下する傾向があり、20重量%を超えるとヘイズが大きくなる結果、透明性が損なわれる傾向がある。また、ジイソブチルケトンの溶剤中の含量は10〜50重量%であることが好ましく、15〜40重量%であることがより好ましい。これによって、クリヤーコーティング組成物は高い透明性を得ることができる。
【0041】
シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン以外の溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、ミネラルスピリットなどの飽和炭化水素類、塩化メチレン、トリクロロエチレン、トリクロロエタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、エチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのアルキルエーテル類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などがあげられる。これらの中でも樹脂組成物に対する溶解性などの点から、ケトン類が好ましく、メチルイソブチルケトンがより好ましい。なお、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン以外の溶剤において、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、ケトン類が多い場合、塗膜の表面にクラック、ヘイズ、白化などが生じる傾向があり、飽和炭化水素類が多い場合は、樹脂組成物に対する溶解性が不充分になり、均一なコーティングが得られにくくなる傾向がある。
【0042】
シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン以外の溶剤の添加量は、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンとの合計で100重量%となるように添加されれば良く、特に限定されるものではないが、溶剤中30〜85重量%であることが好ましく、35〜70重量%であることがより好ましい。
【0043】
溶剤に用いるシクロヘキサノンの溶解度パラメータ(以下、SP値という)は、9.9である。この値は、本発明で用いる水酸基含有フッ素樹脂(SP値:10.2)と、ポリウレタン樹脂(SP値:10〜11)、ポリカーボネート樹脂(SP値:9.8)などの樹脂の双方に対して優れた溶解性を有することを意味する。そのため、樹脂製基材への塗装の際に、シクロヘキサノンによって基材表面の膨潤・溶解が起こり、コーティング組成物中の樹脂組成物の基材中への拡散・溶解を助けることによって基材への接着性が向上する。
【0044】
溶剤の添加量は特に限定されるものではないが、樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり150〜500重量部であることが好ましく、200〜400重量部であることがより好ましい。溶剤の添加量が150重量部未満であると、エアスプレーなどによって被塗装物の垂直面を塗装した場合、塗膜の平滑性が低下する傾向があり、500重量部を超えると、垂直面への塗装の際に膜厚を確保できず、耐候性が低下する傾向がある。
【0045】
<フッ素系界面活性剤>
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキル含有ポリマー、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサン、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタインなどをあげることができる。なかでも、樹脂および溶剤に対する相溶性に優れる点および耐汚染性が低下する点から、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキル含有ポリマーおよびフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンを用いることがより好ましい。これらは単独または混合して用いることができる。
【0046】
パーフルオロアルキル含有オリゴマーとしては、MEGAFAC F−477(DIC(株)製)などがあげられ、パーフルオロアルキル含有ポリマーとしては、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)などがあげられ、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンとしては、EFKA−3034(チバ・ジャパン(株)製)などがあげられる。
【0047】
フッ素系界面活性剤を用いることで、コーティング組成物の表面張力を低下させることができ、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などに対する濡れ性を向上させることができる。その結果、シクロヘキサノンの含有量が5〜20重量%と、従来用いられていた使用量よりも少ない量でも充分な付着力を得ることができる。
【0048】
フッ素系界面活性剤の添加量としては、樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり0.01〜1.0重量部であることが好ましく、0.02〜0.2重量部であることがより好ましい。フッ素系界面活性剤の添加量が0.01重量部未満であるとポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などに対する濡れ性が低下する傾向があり、1.0重量部を超えると耐汚染性が低下する傾向がある。
【0049】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、酸化セリウム系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤などをあげることができる。なかでも、耐熱性および紫外線吸収安定に優れるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0050】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、具体的に2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10−C16主としてC12−C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商品名:チヌビン400、チバ・ジャパン(株)製)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物(商品名:チヌビン405、チバ・ジャパン(株)製)、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(商品名:チヌビン460、チバ・ジャパン(株)製)、2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン(商品名:チヌビン479、チバ・ジャパン(株)製)、トリス[2,4,6−[2−{4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル}]−1,3,5−トリアジン(商品名:チヌビン777、チバ・ジャパン(株)製)などをあげることができる。
【0051】
紫外線吸収剤の添加量は、樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり1〜20重量部であることが好ましく、5〜12重量部であることがより好ましい。1重量部未満であると耐候性が低下する傾向があり、20重量部を超えるとヘイズおよび耐汚染性が低下する傾向がある。
【0052】
<オルガノシリケート化合物>
オルガノシリケート化合物としては、一般式(6):
【化18】

(式中、R5〜R8はそれぞれ同じかまたは異なる炭素数1〜4のアルキル基であり、nは10より大きく30以下の整数である)で表される化合物などをあげることができる。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基などをあげることができる。メチル基は最も高い反応性を示すが、安定性が低い。そのため、溶媒への溶解性と樹脂との相溶性のバランスをとるためにメチル基をブチル基もしくはエチル基などで部分置換することなどが好ましい。オルガノシリケート化合物を添加することで、塗装後の早い時期から塗膜表面は高い親水性を示す。その結果、自動車の排気ガスや塵埃などによる汚れの付着が抑えられ、長期間屋外に曝されて場合であっても、高い透明性、すなわち被塗装物の視認性を維持することができる。
【0053】
オルガノシリケート化合物の添加量は、樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり1〜30重量部であることが好ましく、3〜20重量部であることがより好ましい。1重量部未満であると耐汚染性が低下する傾向があり、30重量部を超えると塗膜が堅くなる結果、クラックを生じやすく、また、樹脂組成物との相溶性が低下するため、塗膜が白濁する傾向がある。
【0054】
また、オルガノシリケート化合物の加水分解を促進させる目的で触媒を添加しても良い。触媒としては、金属キレート、金属エステル、金属アルコキシドなどの金属化合物触媒が用いられ、その金属としてアルミニウム、チタン、ケイ素、錫、亜鉛などをあげることができる。具体的には、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などをあげることができる。
【0055】
触媒の添加量は特に限定されるものではないが、オルガノシリケート化合物100重量部当たり0.1〜20重量部であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。
【0056】
<ポリエステルポリオール>
本発明のクリヤーコーティング組成物には、ポリエステルポリオールをさらに添加することができる。これによって、塗膜の柔軟性を高めることができ、また、基材への付着性を向上させることができる。ポリエステルポリオールは特に限定されるものではないが、主骨格が直鎖状で飽和脂肪族構造をしたものが、耐候性に優れるという点で好ましい。具体的には、FLEXOREZ148(KING Industries CO.社製)またはFLEXOREZ188(KING Industries CO.社製)を用いることができる。ポリエステルポリオールの添加量は、樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり1〜15重量部であることが好ましく、5〜12重量部であることがより好ましい。
【0057】
本発明においては、通常、コーティング組成物に用いられるその他の材料を配合することができる。その他の材料としては、可塑剤、着色顔料、反射材、界面活性剤、消泡剤、無機質充填材、硬化触媒などをあげることができる。
【0058】
<コーティング組成物の製造方法>
本発明のコーティング組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のコーティング組成物の製造方法を採用することができる。たとえば、水酸基含有フッ素樹脂、溶剤、フッ素系界面活性剤、紫外線吸収剤などを混合、攪拌して均一にした溶液とイソシアネート系硬化剤、溶剤、オルガノシリケート化合物、触媒などを混合、攪拌して均一にした溶液を個々に製造する。そして、塗装前にこれらの溶液および粘性調整用の溶剤を調合するなどの方法があげられる。
【0059】
<クリヤーコーティング組成物からなる塗装品>
本発明のクリヤーコーティング組成物を塗布する被塗装物は特に限定されず、被塗装物の基材として、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂からなる樹脂成形品、塗装成形鋼板、ステンレス、アルミニウム、真鍮、クロムめっき鋼材などをあげることができる。また、塗装対象も特に限定されず、長期間にわたって屋外に曝される構造物、たとえば、道路や鉄道に設置される遮音壁、道路標識柱、自動車などの窓、建造物などの外壁や窓、看板などをあげることができる。
【0060】
なかでも、車道の中央分離帯などに設置される道路標識柱は、昼間はそれ自身が有する色によって、夜間はその表面に取り付けられた再帰反射性の反射シートによって自動車の運転者に注意を喚起する必要があるため、視認性が重要である。にもかかわらず、その設置場所が道路上であることから、自動車が接触する頻度が高く、また、自動車の排気ガスに含まれる物質によって表面が汚染されやすい。本発明のクリヤーコーティング組成物は、このような基材の変形や汚染の程度が著しい道路標識柱に対して、顕著な効果を奏することができる。図1は本発明の道路標識柱の正面図であり、図2は図1のII−IIラインにおける部分断面の模式図である。
【0061】
図1を参照して、道路標識柱1には、夜間に自動車のライトを反射させる再帰反射性の反射シート11が巻き付けられている。そこに、本発明のクリヤーコーティング組成物をエアスプレーなどによって道路標識柱1および反射シート11を覆うように塗布する。図2は、クリヤーコーティング組成物が反射シート11a、11b、11cを含めた道路標識柱1全体に塗布された状態を示している。これによって、道路標識柱1だけでなく、反射シート11a、11b、11cがクリヤーコーティング層12に覆われ、昼間だけでなく、夜間においてもその視認性を長期間維持することが可能となる。クリヤーコーティング層12の厚さは特に限定されるものではないが、紫外線吸収性を高めるために10μm以上であることが好ましく、基材との付着性を良好に維持するために100μm以下であることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。
【0062】
また、クリヤーコーティング層12は、その表面の、サンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機500時間における水に対する接触角が60°以下になることが好ましく、50°以下になることがより好ましい。60°を超えると耐汚染性が低下する傾向がある。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
<イソシアネート系硬化剤>
イソシアネート系硬化剤A(商品名:デュラネートE402−90T、旭化成ケミカルズ(株)製、重量平均分子量:約1,500、樹脂固形分:90重量%(溶剤:トルエン)、NCO含有量:8.5重量%)
イソシアネート系硬化剤B(商品名:デュラネートE405−80T、旭化成ケミカルズ(株)製、重量平均分子量:約1,500、樹脂固形分:80重量%(溶剤:トルエン)、NCO含有量:7.1重量%)
イソシアネート系硬化剤C(HDIアロファネートベースの変性ポリイソシアネート、一般式(6)で表されるイソシアネート化合物(A)と一般式(7)または一般式(8)で表されるラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合した反応生成物、日本ポリウレタン工業(株)製、分子量:約1,500、NCO含有量:8.9重量%)
イソシアネート系硬化剤D(商品名:デスモジュールN3800、住化バイエルウレタン(株)製、数平均分子量:1,000〜1,500、重量平均分子量:1,500〜2,000、樹脂固形分:100重量%、NCO含有量:11.0重量%)
イソシアネート系硬化剤E(商品名:コロネートHX、日本ポリウレタン工業(株)製、樹脂固形分:100重量%、NCO含有量:21.3重量%)
【0065】
<フッ素樹脂>
ルミフロンLF200F(旭硝子(株)製、数平均分子量:12,000、樹脂固形分:100重量%、水酸基価:52KOH/g)
【0066】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオール1(商品名:FLEXOREZ188、KING Industries CO.社製、樹脂固形分:100重量%、水酸基価:230KOH/g)
ポリエステルポリオール2(商品名:FLEXOREZ148、KING Industries CO.社製、樹脂固形分:100重量%、水酸基価:235KOH/g)
【0067】
<フッ素系界面活性剤>
EFKA−3034(チバ・ジャパン(株)製)
【0068】
<紫外線吸収剤>
チヌビン400(チバ・ジャパン(株)製、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10−C16主としてC12−C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物)
【0069】
<オルガノシリケート化合物>
MKCシリケートMS58B30(三菱化学(株)製、メチル基をブチル基で部分置換したメチルシリケートの縮合物、平均縮合度≒15)
【0070】
<触媒>
アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)(商品名:アルミキレートD、川研ファインケミカル(株)製)
【0071】
実施例1〜5、比較例
表1に記載の配合で実施例1〜5および比較例のコーティング組成物を得た。なお、本実施例および比較例において、水酸基含有フッ素樹脂とイソシアネート系硬化剤の混合割合は、水酸基含有フッ素樹脂の水酸基1モルに対してイソシアネート系硬化剤のイソシアネート基が1.1モルであった。
【0072】
<引張り試験>
得られたコーティング組成物をブリキ板の表面に塗布し、膜厚100μmを目標にクリヤー塗膜を形成した。塗膜をブリキ板から分離し、ダンベル状2号形に切断し、試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K6251に準じて伸び率を測定した。測定条件は、引張り速度は20mm/分、測定温度は23℃であった。また、伸び率(%)は、
EB=(L1−L0)/L0×100
によって求めた。ここで、EBは切断時の伸び率(%)、L0は標線間距離(20mm)、L1は切断時の標線間距離である。EBの測定結果を表2に、引張り強度と伸び量との関係を図3〜8に示す。
【0073】
<物性試験>
得られたコーティング組成物を、乾燥後膜厚が20μmになるようにエアスプレーによってポリウレタン樹脂成形板に塗布し、室温にて15分放置した後、80℃で1時間乾燥を行って塗板を作製した。得られた塗板を用いて、下記の付着性、沸騰水試験後付着性および酸浸漬後水接触角の測定を行った。また、無塗装のポリウレタン樹脂成形板を参考例として酸浸漬後水接触角の測定を行った。結果を表2に示す。
【0074】
(付着性)
得られた塗板を、JIS K5600−5−6に準じて碁盤目テープ試験(カット間隔1mm、升目100)で評価した。分母は測定した升数、分子は剥離しなかった升数である。
【0075】
(沸騰水試験後付着性)
得られた塗板を沸騰水に1時間浸漬した後に、JIS K5600−5−6に準じて碁盤目テープ試験(カット間隔1mm、升目100)で評価した。分母は測定した升数、分子は剥離しなかった升数である。
【0076】
(酸浸漬後水接触角)
得られた塗板を60℃の0.1N硝酸水溶液中に24時間浸漬した後に、CA−X型の接触角計(協和界面科学(株)製)を用いて液滴形成後30秒後に測定を行った。水接触角が低い程、塗膜表面の親水化が進んでいることを示す。
【0077】
<走踏試験>
得られたコーティング組成物を、乾燥後膜厚が20μmになるようにエアスプレーによってポリウレタン樹脂製の道路標識柱(直径8cm、高さ65cm)に塗布した後、屋外にて道路標識柱の下部を地面に固定した。バンパー形状を有するスチール製の治具2を地面からの高さが23cmとなるように取り付けた走踏試験機を用意し、治具2が地面に固定した道路標識柱1に接触し(図9の(a))、道路標識柱1を押し曲げ(図9の(b))、通過する(図9の(c))ように、道路標識柱1の走踏試験を行った。走踏試験機の設定速度は40km/hであった。外気温は27℃であった。走踏試験を80回繰り返した後、治具2が接触した道路標識柱1の部分A(バンパー衝撃部)、および走踏によって道路標識柱1が折れ曲がった部分B、C(折れ曲がり部)における塗膜の割れを目視により観察し、以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
◎・・・塗膜にクラックがまったく入っていない。
○・・・塗膜に1〜9本のクラックが入っている。
△・・・塗膜に10本以上のクラックが入っている。
×・・・塗膜に10本以上のクラックが入り、塗膜が浮いている部分がある。
【0078】
<促進耐候性試験>
得られたコーティング組成物を、乾燥後膜厚が20μmになるようにエアスプレーによってポリウレタン樹脂成形板に塗布し、室温にて15分放置した後、80℃で1時間乾燥を行って塗板を作製した。作製した塗板および無塗装のポリウレタン樹脂成形板(参考例)をサンシャインカーボンアーク灯式耐候性試験機(スガ試験機(株)製)にて、500時間および2000時間経過後の外観を観察するとともに、試験開始時(初期)、500時間および2000時間経過後の水接触角の測定を行った。外観および水接触角は下記の方法により評価した。結果を表2に示す。
【0079】
(外観)
外観は目視により観察し、以下の基準により評価した。
異常なし・・・試験開始時と比較して、特に変化は認められなかった。
変色・・・変色が認められた。
【0080】
(水接触角)
得られた塗板を、CA−X型の接触角計(協和界面科学(株)製)を用いて液滴形成後30秒後に測定を行った。水接触角が低い程、塗膜表面の親水化が進んでいることを示す。
【0081】
<屋外曝露試験>
得られたコーティング組成物を、乾燥後膜厚が20μmになるようにエアスプレーによってポリウレタン樹脂成形板に塗布し、室温にて15分放置した後、80℃で1時間乾燥を行って塗板を作製した。作製した塗板および無塗装のポリウレタン樹脂成形板(参考例)を屋外の南向き45°の曝露台に設置し、186日間屋外曝露した後、汚れの程度を目視で観察するとともに、試験開始時(初期)および186日経過後の水接触角の測定を行った。汚れの程度は下記の方法により評価した。水接触角は上述と同様の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0082】
(汚れの程度)
汚れの程度は目視により観察し、以下の基準により評価した。
◎・・・汚れがほとんどなく良好である。
○・・・汚れが少なく良好である。
△・・・汚れが認められる。
×・・・汚れが著しい。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
表2および図3〜8から明らかなように、特定のイソシアネート化合物(A)とラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合したイソシアネート系硬化剤を用いた本発明のクリヤーコーティング組成物は、基材への高い付着性を有しながら、引張り試験における伸び率(125〜190%)が比較例(伸び率:60%)と比べて2倍以上改善したことがわかる。また、走踏試験の結果から明らかなように、本発明のクリヤーコーティング組成物からなる塗膜は、被塗装物を繰り返し折り曲げた場合であっても亀裂がまったく生じなかったことがわかる。さらに、本発明のクリヤーコーティング組成物を塗布した被塗装物は、外観が変化せず、長期間にわたって汚れが付着しなかったことがわかる。さらに、コーティング組成物にポリエステルポリオールを添加することによって、引張り試験における伸び率が高くなったことから、塗膜の柔軟性が向上することがわかる。以上より、本発明のクリヤーコーティング組成物は、高い透明性、基材への付着性および汚染防止機能を有しながら、高い柔軟性を有したことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明のクリヤーコーティング組成物によれば、透明性、耐候性および基材への付着性に優れ、高い汚染防止機能を有するため、長期間にわたって視認性を維持できるとともに、高い柔軟性を有するため、自動車などの接触による衝撃で割れにくく、披塗装物の形状が大きく変化した場合であっても、亀裂やシワが生じにくい。そのため、たとえば、道路や鉄道に設置される遮音壁、道路標識柱、自動車などの窓、建造物などの外壁や窓、看板に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 道路標識柱
11、11a、11b、11c 反射シート
12 クリヤーコーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有フッ素樹脂およびイソシアネート系硬化剤を含有する樹脂組成物と、フッ素系界面活性剤と、紫外線吸収剤と、オルガノシリケート化合物と、溶剤とを含むクリヤーコーティング組成物であって、
前記イソシアネート系硬化剤が、イソシアネート化合物(A)とラクトン系ポリオール(B)とがウレタン結合した重量平均分子量1,000〜10,000の反応生成物であるクリヤーコーティング組成物。
【請求項2】
イソシアネート化合物(A)が、一般式(1):
ONC−(CH2)6−NCO
で表される化合物、一般式(2):
【化1】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(3):
【化2】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(4):
【化3】

(式中、R1は炭素数3〜8の3価アルコールであり、nは1〜5の整数である)で表される化合物、一般式(5):
【化4】

(式中、nは1〜5の整数である)で表される化合物、および一般式(6):
【化5】

(式中、R2は炭素数1〜10のアルキル基であり、nは1〜5の整数である)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上であり、
ラクトン系ポリオール(B)が、一般式(7):
【化6】

(式中、R3は炭素数2〜6の2価アルコールであり、mおよびnはそれぞれ同じかまたは異なる1〜10の整数であり、xおよびyはそれぞれ同じかまたは異なる3、4または5の整数である)で表される化合物および/または一般式(8):
【化7】

(式中、R4は炭素数3〜8の3価アルコールであり、L、mおよびnはそれぞれ同じかまたは異なる1〜8の整数であり、x、yおよびzはそれぞれ同じかまたは異なる3、4または5の整数である)で表される化合物である請求項1記載のクリヤーコーティング組成物。
【請求項3】
前記オルガノシリケート化合物が、一般式(9):
【化8】

(式中、R5〜R8はそれぞれ同じかまたは異なる炭素数1〜4のアルキル基であり、nは10より大きく30以下の整数である)で表される化合物である請求項1または2記載のクリヤーコーティング組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物の樹脂固形分100重量部当たり、1〜15重量部のポリエステルポリオールをさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載のクリヤーコーティング組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のクリヤーコーティング組成物からなる塗膜を、その基材上に有してなる塗装品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のクリヤーコーティング組成物からなる塗膜を、その表面を覆うように形成してなる道路標識柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260937(P2010−260937A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111969(P2009−111969)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(391011157)株式会社トウペ (8)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】