説明

クリーニング方法

【課題】成膜処理の再現性を向上させて高く維持することができると共に、成膜処理時に付着した反応副生成物の除去も短時間で容易に実施できるシャワーヘッド構造を提供する。
【解決手段】被処理体Wに対して成膜処理を施すための処理容器22の天井部に設けられて所定ガスを供給するシャワーヘッド構造80であり、複数のガス噴射孔94が開口された底部を有する有底筒体状に形成され、カップ形状の開口側に上記天井部への取り付け用接合フランジ部が一体的に形成されたヘッド本体82と、上記ヘッド本体の底部に設けられて、該ヘッド本体のガス噴射部を所望の温度に調整するヘッド加熱部100とを備え、低温下による再現性を向上させた成膜処理と高温下による反応副生成物の除去を行うシャワーヘッド構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等の被処理体にプロセスガスを用いて成膜を行う成膜装置等に搭載されるシャワーヘッド構造及びそのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体集積回路の製造する工程においては、被処理体となる半導体ウエハ表面上に、配線パターンを形成する或いは配線間等の凹部を埋め込むために、W(タングステン)、WSi(タングステンシリサイド)、Ti(チタン)、TiN(チタンナイトライド)、TiSi(チタンシリサイド)、Cu(銅)、Ta (タンタルオキサイド)等の金属或いは金属化合物を堆積させて薄膜を形成している。
この種の金属薄膜の形成方法としては、3つの方式例えばH (水素)還元法、SiH (シラン)還元法、SiH Cl (ジクロロシラン)還元法等が知られている。このうち、SiH Cl 還元法は、配線パターンを形成するために例えば、還元ガスとしてジクロロシランを用いて、600℃程度の高温下にてWやWSi(タングステンシリサイド)膜を形成する方法である。また、SiH 還元法は、同様に配線パターンを形成するために、例えば還元ガスとしてシランを用いて、SiH Cl 還元法よりも低い450℃程度の温度下にてWやWSi膜を形成する方法である。また、H 還元法は、配線間の凹部を穴埋めしてウエハ表面の平坦化を行うために、例えば還元ガスとして水素を用いて380〜430℃程度の温度下でW膜を堆積させる方法である。
【0003】
更に、これらの方法を適宜組み合わせた還元法も知られており、例えばWF (六フッ化タングステン)がいずれの方法にも使用される。
図9は、このような金属薄膜等を形成する一般的な成膜装置の構成例を示す。また図10は、図9中のシャワーヘッド構造を詳細に示す拡大図である。
処理チャンバー2はアルミニウム等を用いて例えば筒体形状に成形される。この処理チャンバー2内には、薄いカーボン素材或いはアルミ化合物により成形された載置台4が設けられており、この下方には、石英製の透過窓6を介してハロゲンランプ等の加熱部8を配置している。
外部から搬送された半導体ウエハWが載置台4上へ載置され、このウエハWの周縁部が昇降可能に構成された、例えばリング形状のクランプリング10により押さえ込まれて載置台4上に固定される。この載置台4に対向させた上方に例えばアルミニウムからなるシャワーヘッド構造12を設けている。このシャワーヘッド構造12下面には、略均等に配置された多数のガス噴射孔14が形成されている。
【0004】
そしてシャワーヘッド構造12は、成膜処理中の温度をある程度低く、且つ安定的に維持させるために、例えば50℃程度の熱媒体16(例えば、チラー(商標名))等を内部に流している。このシャワーヘッド構造12はヘッド本体7を有し、図10に示すようにチャンバー天井部2aにボルト5によって取り付けられる。このヘッド本体7の下面には、多数の噴射孔9が形成された噴射板11がボルト13によって取り付けられている。
このヘッド本体7内の空間には、多数の拡散孔15が形成される拡散板17が設けられており、ヘッド本体7内へ導入されたガスをウエハ面方向へ拡散させるようになっている。また、このヘッド本体7の側壁部分には、シャワーベース水路18が設けられており、これに熱媒体16が流されている。そして、成膜処理に際しては、加熱部8から透過窓6を透過して載置台4へ熱線を照射して、載置台4上に固定される半導体ウエハWが所定の温度になるように間接的に加熱する。
【0005】
これと同時に、載置台4の上方に設けられるガス噴射孔14からプロセスガスとして例えば、WF やH 等がウエハ表面上に均等に供給することにより、ウエハ表面上にタングステン等の金属膜が形成される。
前述した成膜処理は枚葉式により、つまり複数枚、例えば25枚ウエハを1枚ずつ連続的に成膜処理し、この連続成膜中に処理チャンバー2内の部材、例えば載置台やクランプリングやシャワーヘッド構造等に付着した余分な膜を除去する目的でClF 等のクリーニングガスを用いたドライクリーニング(フラッシング)が行われる。このように、一般的には、複数枚のウエハに亘る連続的な成膜処理とクリーニング処理とが繰り返し行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、それぞれのウエハに形成された堆積膜の電気的特性等を設計通りに一定に維持するためには、各ウエハに堆積させた膜の厚さが略一定になるように再現性を高く維持する必要が求められる。しかし実際には、クリーニング処理の直後に行う1枚目のウエハに体する成膜処理の膜厚と例えば25枚連続処理した時の25枚目のウエハに対する成膜処理の膜厚とがかなり異なる場合がある。例えばウエハの連続処理枚数が積算されるに従って、次第にウエハに成膜される膜厚が減少する傾向にある。これは、処理チャンバー2のアイドリング中において、熱媒体16をシャワーヘッド構造12のシャワーベース水路18に流しているにもかかわらず、この温度が高くなる。そして、シャワーヘッド構造12からプロセスガスを流してウエハの処理枚数が増加するに従って、シャワーヘッド構造12の温度、特にガス噴射板の温度が、徐々に低下して所望する温度に落ち着くようになることに起因している。
【0007】
そこで、シャワーヘッド構造12のガス噴射板の温度を予め低めになるように維持させておき、ウエハの連続成膜処理が行われる。しかし、このように処理開始からシャワーヘッド構造12のガス噴射板を比較的低温に維持させていた場合、クリーニング処理で比較的除去され難い化合物、例えばフッ化チタン(TiFx)等の反応副生成物がシャワーヘッド構造12のガス噴射板の表面に付着するといった問題が新たに発生した。このフッ化チタンは、前の工程にてウエハ表面にすでに堆積されているチタン金属膜やチタン窒化膜等のチタン含有膜中の一部のチタン原子が、この成膜処理時に供給されるWF ガスのフッ素と反応して生成されてガス噴射板の表面に付着する。
【0008】
図11は、シャワーヘッド構造のガス噴射板の温度とシャワーヘッド構造に付着する反応副生成物の膜厚との関係を示している。図11(A)は載置台温度が410℃で膜厚100nmのタングステン金属膜を25枚連続処理した時の特性を示し、図11(B)は載置台温度が460℃で膜厚800nmのタングステン金属膜を25枚連続処理した時の特性を示す。
これらの図から明らかなように、シャワーヘッド構造の温度を100℃程度から80℃程度に低下すると反応副生成物の膜厚が急激に厚くなっている。そして、一般的なクリーニング処理は、処理チャンバー2内の構造物の温度を成膜処理時と略同程度に維持しつつ、クリーニングガス、例えばClF ガスを流すことにより行っている。この場合、載置台4等に付着した不要なタングステン膜は除去されるが、シャワーヘッド構造のガス噴射板の表面に付着したフッ化チタン等の反応副生成物は、非常に除去されづらい、といった問題があった。
【0009】
また、成膜処理中のシャワーヘッド構造のガス噴射板の温度をある程度高温にすることにより、反応副生成物が付着しづらくする手法もあるが、成膜条件によっては、シャワーヘッド構造のガス噴射板の温度の上限が制限され、付着しづらい温度まで上げることができない場合もあった。このような場合に、成膜処理を優先させると、反応副生成物の付着が多くなり、積算処理枚数が制限され、また付着量に対応するクリーニング処理が要求されることとなった。
本発明は、成膜装置に搭載され、成膜処理の再現性を向上させて高く維持することができると共に、成膜処理時に付着した反応副生成物の除去も短時間で容易に実施できるシャワーヘッド構造及びそのクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明は、被処理体に対して成膜処理を施すための処理チャンバーの天井部に設けられて、該処理チャンバー内へ所定のガスを供給するシャワーヘッド構造において、複数のガス噴射孔が開口された底部を有する有底筒体状に形成され、該有底筒体状の開口側に上記処理チャンバーの天井部へ取り付けるための接合フランジ部が一体的に形成されたヘッド本体と、上記ヘッド本体の底部近傍の側壁に設けられて、該ヘッド本体を所望の温度に調整するヘッド加熱部とを備えるシャワーヘッド構造を提供する。
また、上記ヘッド加熱部の上方にある上記ヘッド本体の側壁には、該側壁の断面積を縮小させて、伝搬される熱に対する熱抵抗を大きくするための括れ部が形成される。
【0011】
このシャワーヘッド構造は、さらに上記接合フランジ部に設けられて、上記被処理体の成膜処理時に上記ヘッド本体を冷却し、また上記処理チャンバー内のクリーニング処理時に上記ヘッド本体を加熱するヘッド加熱・冷却部を備え、上記ヘッド加熱部と上記ヘッド加熱・冷却部とにより、上記ヘッド本体の温度が50〜300℃の範囲で制御される。
また、プロセスガス雰囲気内で、加熱された被処理体の表面に反応生成物を堆積させる成膜処理を行う処理チャンバーを有する成膜装置に搭載され、上記処理チャンバーへシャワーヘッド構造を介してプロセスガスを導入して、成膜装置内のクリーニング方法において、上記シャワーヘッド構造から上記処理チャンバー内へクリーニングガスを流しつつ、該シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度を、成膜処理時の温度よりも高く設定して、成膜処理時に発生した反応副成膜を除去するクリーニング処理を提供する。
このクリーニングにおけるシャワーヘッド構造のガス噴射部の温度は130℃以上であり、シャワーヘッド構造のガス噴射部の表面に付着したフッ化チタン(TiFx)系を主成分とする反応副生成物を除去する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシャワーヘッド構造及びそのクリーニング方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
ヘッド本体と従来別体であった噴射板(本発明のヘッド本体底部のガス噴射部に相当する)と接合フランジ部(本発明の接合フランジ部に相当する)とが一体成形されているため、シャワーヘッド構造に温度変化があっても熱膨張差による擦れが生じる恐れがなく、パーティクルの発生を抑制する。
成膜処理中にはシャワーヘッド構造のガス噴射部の温度を比較的低い温度に維持されることにより、各被処理体の間の膜厚を略均一化させて膜厚の再現性を向上させて高く維持する。また、クリーニング処理時には、ヘッド加熱部によりシャワーヘッド構造の温度自体を成膜処理時よりも高く維持し、成膜処理時に発生し、シャワーヘッド構造のガス噴射部の表面に付着した反応副生成物を除去することができる。
【0013】
クリーニング処理は、成膜処理終了後、積算処理枚数、積算処理時間及び、測定された反応副生成物の膜厚、ウエハ上に形成された膜の規格のいずれかを基準として、ユーザで適宜、実施タイミングとすることができる。
シャワーヘッド構造のヘッド本体を一体的成形することにより、ガス噴射部と側面や上部との間に温度差が生じても、構成部材の接合部分が存在しないため、温度差による熱膨張差に起因する部材間の擦れの発生がなくなり、パーティクルの発生を防止することができる。
シャワーヘッド構造のヘッド本体と他の構成部材との取り付けにおいても、僅かな隙間を樹脂等からなる断熱材で作り出すことにより、熱の伝搬を抑制して精度よくガス噴射部の温度を制御することができる。
【0014】
ヘッド本体の側面に括れ部を形成することにより熱伝導を少なくし、加えて断熱材により熱伝導を少なくさせることにより、クリーニング処理時に括れ部の熱抵抗や断熱材によって、ヘッド本体のガス噴射面側からの熱の逃げを抑制して、ガス噴射面の部分の温度を高く維持させて、さらに、その面内温度の均一性も高くして反応副生成物の除去を効率的に行うことができる。
ヘッド加熱・冷却手段により、成膜処理時にはヘッド本体を冷却して膜厚の再現性を一層高め、クリーニング処理時にはヘッド本体を加熱して反応副生成物を一層効率的に除去することができる。
ヘッド本体の上部に設けたペルチェ素子の上面に発生する温熱を外部に伝搬するための熱媒体は、成膜処理時に用いる冷却用の温度が低いものと、クリーニング処理時に用いる加熱用の温度が高いものとを有し、切り換えにより短時間に切り替えて利用することができる。
成膜処理時及びクリーニング処理時に、ペルチェ素子の上面側より発生する温熱、或いは冷熱を熱媒体を用いて除去することにより、シャワーヘッド構造を熱的に浮かせることができる。
シャワーヘッド構造の温度を安定的に一定に維持することができるので、膜厚の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るシャワーヘッド構造を搭載する成膜装置の一構成例を示す断面構成図である。
【図2】図1に示したシャワーヘッド構造の詳細な構成を示す断面図である。
【図3】図1に示したシャワーヘッド構造をサセプタ側から見た平面図である。
【図4】タングステン膜の成膜時のシャワーヘッド構造の温度(ガス噴射部の中心部)と膜厚の再現性との関係を示す図である。
【図5】クリーニング時のシャワーヘッド構造物の温度(ガス噴射部の中心)と反応副生成物(TiFx)の除去量との関係を示す図である。
【図6】本発明により反応副生成物を除去した時のヘッド本体の温度と反応副生成物の除去速度の関係を示す図である。
【図7】ヘッド本体の温度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】シャワーヘッド構造の変形例を示す断面図である。
【図9】従来のシャワーヘッド構造を搭載する成膜装置の構成例を示す図である。
【図10】図9に示したシャワーヘッド構造の詳細な構成を示す断面図である。
【図11】シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度とシャワーヘッド構造のガス噴射部の表面に付着する反応副生成物の膜厚との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係るシャワーヘッド構造の一実施形態を成膜装置に搭載した構成を示す断面図である。また、図2は、上記シャワーヘッド構造の詳細な断面構成を示す図であり、図3は、上記シャワーヘッド構造をサセプタ側から見た平面図である。
この成膜装置20は、例えばアルミニウム等を用いて円筒状或いは箱状に成形された処理容器としての処理チャンバー22を有している。この処理チャンバー22の内部底面から立ち上げられた円筒状のリフレクタ24上に、例えば断面L字状の保持部材26で支持された載置台28が設けられている。このリフレクタ24は、内側が鏡面研磨されたアルミニウムにより形成され、保持部材26は、熱線透過性の材料、例えば石英により形成される。また、載置台28は、厚さ2mm程度の例えばカーボン素材、AlNなどのアルミ化合物により形成され、被処理体となる半導体ウエハ(以下、ウエハと称する)Wを載置する。
【0017】
更に、載置台28の下方には、複数本、例えば3本のリフターピン30(図1においては2本のみを代表的に示している)が支持部材32の一端から上方へ延びるように設けられている。また支持部材32の他端は、リフレクタ24に形成された垂直スリット(図示せず)を通り抜けて外まで延びている。この支持部材32は、各リフタピン30が一斉に上下動するようにそれぞれの他端が環状結合部材34により結合されている。更に、この環状結合部材34は、処理チャンバー22の底部を貫通して垂直に延びた押し上げ棒36の上端に連結されている。
上記押し上げ棒36の下端は、処理チャンバー22において内部の真空状態を保持するために伸縮可能なベローズ40内を通じてアクチュエータ42に接続されている。この構成において、アクチュエータ42により押し上げ棒36を上方に移動させると、リフタピン30が載置台28のリフタピン穴38を挿通して押し出され、載置されているウエハWを持ち上げる。
【0018】
また、載置台28の周囲には、ウエハWの周縁部を載置台28側へ押し付けて固定するためのクランプ機構44が設けられる。このクランプ機構44は、半導体ウエハWの周縁部に線接触して固定するリング形状のクランプリング本体46と、このクランプリング本体46を下方向へ付勢するコイルバネ48とにより主に構成されている。このクランプリング本体46は、ウエハの輪郭形状に沿った略リング状のセラミック材料で形成される。このセラミック材料としては、例えばAlNが用いられる。
このクランプリング本体46は、保持部材26に接触しないように貫通した支持棒50により支持部材32へ連結されている。この支持棒50は、例えば3本(図1においては2本のみ代表的に示している)が設けられて、クランプリング本体46を支持し、リフタピン30と一体的に昇降する。
【0019】
また、載置台28の直下の処理チャンバー底部には、石英等の熱線透過材料により形成される透過窓52が真空状態を保持できるように取り付けられている。更に、この下方には、透過窓52を囲むように箱状の加熱室54が設けられている。この加熱室54内には加熱部となる複数個の加熱ランプ56が反射鏡も兼ねる回転台58に配置されている。この回転台58は、回転軸を介して加熱室54の底部に設けた回転モータ60により回転される。回転される加熱ランプ56より放出された熱線は、石英等からなる透過窓52を透過して載置台28の下面を照射してこれを均一的に加熱する。尚、加熱部として、加熱ランプ56に代わって、抵抗加熱ヒータを載置台28内に埋め込んでもよい。
さらに載置台28の外周側には、多数の整流孔62を有するリング状の整流板64が、上下方向に成形された支持コラム66により支持されて設けられている。上記整流板64の下方の底部には排気口68が設けられ、この排気口68には図示しない真空ポンプに接続された排気通路70が接続されており、処理チャンバー22内を排気して、所望の真空状態に維持する。また、処理チャンバー22の側壁には、ウエハを搬出入する際に開閉されるゲートバルブ72が設けられる。
【0020】
一方、上記載置台28と対向する処理チャンバー22の天井部には、比較的大きな開口部74が開口されており、この開口部74には、プロセスガス等を処理チャンバー22内へ導入するためのシャワーヘッド構造80が真空状態を維持できるようにシールして嵌め込まれている。
具体的には、図2に示すように、シャワーヘッド構造80は、例えばアルミニウム等からなる有底筒体、例えばカップ形状のヘッド本体82を有し、このヘッド本体82の開口側にはヘッド蓋体84がOリング等のシール部材86を挟んで取り付けられている。また、ヘッド蓋体84は、ヘッド本体82に接触する面でOリングに沿って樹脂等から成る断熱部材87が設けられている。このヘッド蓋体84の中心部は、ガス導入口88が設けられている。このガス導入口88には、ガス通路90を介してプロセスガス、例えば成膜処理時に使用するWF 、Ar、SiH 、H 、N 等のガス供給系(図示せず)やクリーニング時に使うクリーニングガス、例えばClF 等のガス供給系(図示せず)が流量制御可能に接続されている。
【0021】
図3に示すように、ヘッド本体82の底部であるガス噴射部92には、ヘッド本体82内へ供給されたガスを処理空間Sへ放出するための多数のガス噴射孔94が面全体に亘って開けられており、ウエハ表面へ均一的にガスを放出する。このガス噴射部92は、ヘッド本体底部に、例えば一体成形されている。これは、従来がガス噴射部92とヘッド本体82とが別体であったため、取り付け部分が接触しており、両部材間の熱伝導性が悪く、また材料が異なっていたため、熱膨張率の違いから歪みや摺り合わせにより接合面とがこすれてパーティクルが発生していたが、一体成形により、熱伝導性が向上し、パーティクルが発生しなくなるなど、これらの問題が解決されている。ヘッド蓋体84とヘッド本体82との接合面に断熱部材87を設けることで、接合面を小さくでき、断熱部材87の効果で熱の伝搬を抑制でき、ヘッド本体82の温度を精度よく制御することが可能となる。
【0022】
そして、このヘッド本体82の側壁98の下端部には、ヘッド加熱部として例えば、絶縁されたシースヒータ等よりなるヘッド加熱ヒータ100が環状に、例えばリング状に略一周するように埋め込まれており、主としてこのヘッド本体82を加熱している。ヘッド加熱ヒータ100は、図3に示すようなヘッド温度制御部102により、必要とされる温度範囲内にて任意の温度に制御される。
またヘッド本体82の上端部には、外周方向に拡がるように接合フランジ部104が設けられている。この接合フランジ部104の下面には、円形リング状の断熱材106aとシール面が設けられている。ヘッド本体82が処理チャンバー22の開口部74に嵌め込まれた際に、天井壁108の上面との大半の接触部分を断熱材106aにより接して熱が伝わりにくくしている。この断熱材106aは、樹脂等から成り、その幅は、上記両接触面の幅よりも少し狭く形成されて、残りの接触面はシール面となっている。また、この天井部108上面と接合フランジ部104下面のシール面とが接触する部分には、Oリング等からなるシール部材110を介在させて、真空状態が維持できるようになっている。また、接合フランジ部104の外周には、樹脂等から成る断熱材106bが設けられて熱の逃げを防止している。
【0023】
特に、シール面に対して図2に示す天井壁108の上面の真空側にある面の表面をわずかに低くすることにより、天井壁108面と接合フランジ部104の下面とが接触しない様に、わずかに隙間109をつくりつつ、シール部材110で真空状態を保持させる。つまり、天井壁108面と接合フランジ部104のシール面とを非接触にさせることにより、熱膨張等による擦り合わせが無くなり、パーティクルの発生を防止する効果を得ることができる。尚、図2に示すようにヘッド本体82とヘッド蓋体84との接触部分にも同様に形成することで、パーティクルの発生を防止できる。
【0024】
一方、接合フランジ部104の上面には、ヘッド加熱・冷却部となる、例えばペルチェ素子112がこの上面に沿って下面(温調面)が接するように環状に、例えば等間隔に、またはリング状に設けられている。ペルチェ素子112は、ペルチェ制御部114の制御により、接合フランジ部104やヘッド本体82を、必要に応じて加熱、或いは冷却するために用いられる。
ヘッド本体82の温度制御範囲は、例えばペルチェ素子112とヘッド加熱ヒータ100との組み合わせにより、ヘッド本体82の下面の面内温度均一性を維持しつつ加熱するために、例えば50〜300℃の範囲内、好ましくは50〜250℃の範囲内である。
そして、ペルチェ素子112の上面(温調面)には、同じくリング状に形成された媒体流路116が設けられる。この媒体流路116に所定の温度の熱媒体を流すことにより、ペルチェ素子112の上面側(図2中)にて発生した温熱、或いは冷熱を伝搬する。
【0025】
また、ヘッド本体82の底部であるガス噴射部92のヘッド加熱ヒータ100の上方において、この側壁の断面積を縮小させるための括れ部118が側壁98の外周側に沿って環状の、例えば溝またはリング状に形成されている。この括れ部118における上下方向へ熱抵抗を大きくすることにより、ヘッド加熱ヒータ100で発生した熱が、ヘッド側壁98を伝わってその上方へ逃げ難くなるようにしている。尚、図2に示す例では、側壁98の外周側から凹部状に削り取ることにより括れ部118を形成しているが、これに代えて、その内周側から削り取るようにして形成してもよい。
また、ヘッド本体82内には、多数のガス分散孔120が形成された拡散板122が設けられており、ウエハW面に、より均等にガスが供給される。更に、シャワーヘッド構造の構成部品の接合部に設けた各シール部材86、110は、それぞれ断面凹部状になされた環状の、例えば溝またはリング状のシール溝124、126に嵌め込まれている。
【0026】
次に、以上のように構成された本実施形態のシャワーヘッド構造を搭載した成膜装置による処理動作について説明する。
ここで、本実施形態では、課題において前述したように、成膜処理条件によっては成膜中のヘッド本体82の温度を反応副生成物が付着しづらい温度まで上げることができない場合、シャワーヘッド構造80のヘッド本体82のガス噴射部の温度を比較的低温に維持して成膜処理を行う。これは、ウエハW上に生成された膜の膜厚は略同一となり、膜厚の再現性について非常に良好となるが、除去され難い反応副生成物も付着する。そこで、あるタイミングで本実施形態の構成の加熱部を利用したクリーニング処理を行う必要がある。但し、そのタイミングは、成膜処理終了毎に行ってもよいが、ユーザ側の使用状況によって異なるため、例えば、積算処理枚数若しくは、積算処理時間若しくは、測定された反応副生成物の膜厚若しくは、ウエハ上の生成膜の電気特性等が規格内か等を基準として、例えば積算処理枚数として、100ロットで、好ましくは1〜50ロットの範囲でクリーニング処理の実施の有無を決めればよい。1ロット25枚のウエハの成膜処理後においては、ヘッド本体82のガス噴射部の表面の温度を成膜条件と同じ温度でクリーニング処理して、20ロットを処理した後に、ヘッド本体82のガス噴射部の温度より高い温度にして自動的にクリーニング処理が実施されるようなシーケンスを組んでおき、ユーザの指示が無くとも定期的にクリーニング処理を実施するようにしてもよい。また、プロセスが異なる小数多品種のウエハを処理する場合には、その1種類のプロセスが終了した毎に、自動的にクリーニング処理を実施するようにしてもよい。
【0027】
まず、ウエハW表面に例えばタングステンのような金属膜の成膜処理を施す場合には、処理チャンバー22の側壁に設けたゲートバルブ72を開いて図示しない搬送アームにより処理チャンバー22内にウエハWを搬入し、リフタピン30を押し上げることによりウエハWをリフタピン30側に受け渡す。
そして、リフタピン30を、押し上げ棒36を下げることによって降下させ、ウエハWを載置台28上に載置すると共にウエハWの周縁部をクランプリング本体46で押圧してこれを固定する。尚、このウエハWの表面には、すでに前の工程にてチタン金属膜やチタン窒化膜等のチタン含有膜が堆積されている。
【0028】
次に、図示しないプロセスガス供給系から、WF 、SiH 、H 等のプロセスガスをArやN 等のキャリアガスにより伝搬させて、シャワーヘッド構造80内へ所定量ずつ供給させて混合する。この混合ガスをヘッド本体82内で拡散させつつ下面のガス噴射孔94から処理チャンバー22内へ略均等に供給する。
このようなガス供給と同時に、排気口68から内部雰囲気(混合ガス)を排気することにより処理チャンバー22内を所定の真空度、例えば200Pa〜11000Paの範囲内の値に設定し、且つ載置台28の下方に位置する加熱ランプ56を回転させながら駆動して、熱エネルギー(熱線)を放射する。
放射された熱線は、透過窓52を透過した後、載置台28の裏面を照射して、ウエハWを裏面側から加熱する。この載置台28は、前述したように厚さが2mm程度と非常に薄いことから迅速に加熱されて、この上に載置するウエハWも迅速に所定の温度まで加熱することができる。供給された混合ガスは所定の化学反応を生じて、ウエハWの全表面上に例えばタングステン膜として堆積される。
【0029】
この時、ウエハWの温度を480℃以下(載置台28の温度は500℃以下)に維持し、シャワーヘッド構造80の特にヘッド本体82のガス噴射部の温度を110℃以下、好ましくは95℃以下に維持するように制御する。
この場合、ヘッド本体82は、載置台28側から多くの輻射熱を受けることからこの設定温度である、例えば95℃以上に上昇する傾向にあるので、接合フランジ部104に設けたペルチェ素子112を駆動し、この下面を冷却する。これによって、ヘッド本体82から温熱を奪ってこれを冷却し、ヘッド本体82のガス噴射部の温度を上述のように95℃以下に保つ。
この時、ペルチェ素子112の上面には温熱が発生するため、このペルチェ素子112の上面に接合している媒体流路116に例えば20〜30℃程度に維持された流体から成る熱媒体、例えばチラー(商品名)を流して、ペルチェ素子112の上面にて発生した温熱を外部へ伝搬する。この熱媒体は、成膜処理時に冷却するための低い温度の熱媒体と、クリーニング処理時に加熱するための温度が高い熱媒体との少なくとも2種類の温度の熱冷媒が必要である。しかし熱冷媒の温度変更に時間を要する場合には、時間のロスとなるため、これらを短時間で切り替える様に、2系列の温度設定用の媒体流路を有する構成にしておき、バルブ切り換えにより短時間で成膜処理とクリーニング処理の変更を可能にすることもできる。
【0030】
また、チャンバー天井壁108と接合フランジ部104との接合部には、断熱材106が介在されているため、ヘッド本体82から天井壁108に逃げる熱を抑制することができる。これとペルチェ素子112の作用と相まってシャワーヘッド構造80は、熱的に略絶縁されて浮いた状態となって、主にヘッド本体82を安定的に所望の温度に維持することができる。すなわち、これによりヘッド本体82を成膜中において安定的に所望の一定の温度に維持することが可能となる。尚、ヘッド本体82のガス噴射部の温度が過度に低くなり過ぎる傾向の時には、この側壁98に設けたヘッド加熱ヒータ100を駆動して適宜加熱して温度制御を行えばよい。
成膜時は、ヘッド本体82のガス噴射部の温度を110℃以下、好ましくは95℃程度の温度でウエハW上にタングステン膜を形成すると、例えば1ロット25枚のウエハを連続的に成膜処理した時の各膜厚は略同一となり、膜厚の再現性は非常に良好となる。このように成膜処理を行うと、ウエハW以外にも、例えば載置台28の表面やクランプリング本体46の表面等にもタングステン膜が不要な膜として付着する。この時発生する反応副生成物、例えばウエハ表面のチタン含有膜中のチタンと化合して発生するフッ化チタン(TiFx)系の生成物がヘッド本体82の表面に多量に付着する傾向となる。
【0031】
そして、ある程度の積算処理枚数に達したならば、不要なタングステン膜や反応副生成物を除去するクリーニング処理を行う。
ここで、成膜時のシャワーヘッド構造のガス噴射部の温度と膜厚の再現性との関係及びクリーニング処理時のシャワーヘッド構造のガス噴射部の温度と反応副生成物の除去量との関係を実際に評価したので、その評価結果について説明する。
図4は、タングステン膜の成膜時のシャワーヘッド構造のガス噴射部の温度と膜厚の再現性との関係を示している。ここでは、25枚のウエハに連続成膜した時の膜厚を各々測定し、25枚の膜変動率とシャワーヘッド構造のガス噴射部の温度との関係を、成膜温度が410℃の場合と460℃の場合について検討した。
【0032】
この図から明らかなように、成膜温度が460℃では膜厚の再現性は変化がなく、3%以下で問題ない。しかし、成膜温度が410℃の場合は、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度が110℃から70℃に掛けて、低くなればなる程、膜厚の再現性は向上し(数値は小さくなる)、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度を95℃以下に設定することにより、膜厚の再現性が改善されている。
例えばガス噴射部の温度が90℃以下では、1%以下になっている。従って、膜厚の再現性を向上させるには、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度を略95℃以下に設定してタングステン膜を堆積させればよいことが判明する。ただし、この場合には、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度に反比例してシャワーヘッド構造のガス噴射部の表面に付着する反応副生成物(TiF 系)の量が増加することは避けられない。また、膜厚の再現性を±3%以内にするためには、成膜処理温度(ウエハ温度よりも僅かに高い)が略420℃以下の時は、ヘッド本体の温度を略95℃以下に設定し、また、成膜処理温度が略500℃以下の時は、ヘッド本体の温度を略110℃以下に設定すればよいことが判明する。
【0033】
図5は、クリーニング時のシャワーヘッド構造物のガス噴射部の温度と反応副生成物(TiFx)の除去量との関係を示している。この図中には、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度を130℃、140℃、150℃を例としており、それぞれクリーニングの前と後の反応副生成物の膜厚を示している。
この時の他のクリーニング条件は、例えば載置台温度は250℃、クリーニングガスであるClF の流量は500sccm、圧力は2666Pa(20Torr)、クリーニング時間は725sec、載置台サイズは8インチ用である。このグラフから明らかなように、初期の膜厚が略19nmとした場合、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度が130℃の時には、略7nm厚の反応副生成物が残存して十分にクリーニングができていない。
従って、ヘッド本体の温度を130℃よりも高くすることにより十分にクリーニングができることが判明する。これに対して、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度が140℃及び150℃の場合には、反応副生成物の残存量はゼロであり、反応副生成物のを完全に除去できることが判明した。従って、シャワーヘッド構造のガス噴射部の温度は、少なくとも略135℃以上に設定すればよいことが判明した。
【0034】
図6を参照して、このクリーニング処理(フラッシング)における反応副生成物(TiFx等)を除去した時のヘッド本体82のガス噴射部の温度と反応副生成物の除去速度の関係を示して説明する。
この一例においては、クリーニングガス(ClF )を流量1〜200sccm、好ましくは、流量30〜100sccm、圧力を0.133〜1333Pa、好ましくは0.133〜133Paとして、フラッシング時間を1〜150min好ましくは5〜100minであり、フラッシングによる与えるシャワーヘッド構造80へのダメージと反応副生成物の除去の効果を考えると、少流量、低真空が望ましい。このフラッシングで具体的な条件としては、例えばクリーニングガスとしてClF ガス50sccm、圧力0.133Pa、フラッシング時間60min、シャワーヘッド構造物のガス噴射部の温度150℃の条件で、不要なタングステン膜や従来のクリーニング方法では除去が困難な反応副生成物を除去している。
【0035】
この際、載置台28の温度は、従来のクリーニング処理の場合と略同じ例えば250℃程度に維持する。これに対して、ヘッド本体82及び接合フランジ部104の温度、特にガス噴射部92の表面温度は、従来のクリーニング処理時の温度である70〜80℃程度よりもかなり高い温度、例えば130℃以上程度、好ましくは135〜170℃の温度に設定する。
この設定は、接合フランジ部104に設けたペルチェ素子112に成膜時とは逆方向の電流を流して、ペルチェ素子112の下面側を発熱させて、接合フランジ部104やヘッド本体82を上方側から加熱する。このようにシャワーヘッド構造80を、下方からヘッド加熱ヒータ100により、上方からペルチェ素子112によりそれぞれ加熱することにより、ヘッド本体82(特に、ガス噴射部92の表面近傍)を135〜170℃の温度に維持する。ここで、135〜170℃のガス噴射部の温度は、クリーニング処理にかかる時間との関係で設定されるものであり、135℃以下でも時間を掛ければ反応副生成物を除去することは可能である。また、ガス噴射部の温度の上限は、ガス噴射部92の材料のクリーニングガスに対する腐食温度以下、例えばアルミニウムの場合は、例えば400℃程度以下である。
【0036】
以上のようにシャワーヘッド構造80を、特にヘッド本体82のガス噴射部の温度を135〜170℃に維持することにより、不要なタングステン膜は勿論のこと、従来のクリーニング処理では除去が困難であった反応副生成物、例えばフッ化チタン系生成物もヘッド本体82の表面、例えば主にガス噴射面から容易に除去される。この場合、ヘッド本体82の側壁には、熱抵抗を大きくする括れ部118を設けてあることから、熱伝導で上方へ逃げる熱が抑制されて保温機能が発揮される。この結果、ガス噴射部92全体の温度を十分に高く維持することができ、この下面のガス噴射面に付着した反応副生成物が確実に除去される。また、括れ部118の作用により、ガス噴射部92の面内温度の均一性も向上させることができる。
【0037】
次に、ヘッド本体82の温度分布をシミュレーションを行って計測したので、そのシミュレーション結果について説明する。
図7は、ヘッド本体の温度分布のシミュレーション結果を示す図である。ここで、ヘッド本体82の上端の温度を50℃に設定し、ガス噴射部92の温度を200℃に設定しており、また、ヘッド本体82の高さH1は67mmである。この図に示す温度分布から明らかなように、括れ部118における温度勾配が非常に大きくなっており、すなわち温度分布の曲線が密になっており、この括れ部118の熱抵抗によるガス噴射部92に対する保温効果が非常に優れており、ヘッド本体温度を制御しやすい構造であることが判明した。この括れ部の厚みaは3〜10mmで、高さbは10〜50mmである。
【0038】
また、上記実施形態にあっては、接合フランジ部104にペルチェ素子112を設けたが、図8に示すように、このペルチェ素子112を設けることなく、この接合フランジ部104に直接的に媒体流路116を接合するようにしてもよい。この場合にも、ペルチェ素子112を設けた場合と略同等な作用効果を発揮することが可能となる。
尚、本実施形態では、クリーニングガスとしてClF ガスを用いた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、他のクリーニングガス、例えばNF ガス、HClガス、Cl ガス等を用いる場合にも本発明を適用することができる。尚、NF の使用では、プラズマで使用される。また、ここではタングステン膜を堆積する時に生ずる反応副生成物(TiF )をクリーニングにより除去する場合を例にとって説明したが、他の金属及び金属化合物、例えばTi(チタン)、Cu(銅)、Ta(タンタル)、Al(アルミニウム)、TiN(チタンナイトライド)、Ta (タンタルオキサイド)等を含有する堆積膜を形成する時に生ずる反応副生成物を除去する場合にも本発明を適用することができる。また更には、本発明は、プラズマを用いて薄膜生成を行うプラズマ成膜装置にも適用できるのみならず、被処理体としては半導体ウエハに限定されず、LCD基板、ガラス基板等も用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
20 成膜装置
22 処理チャンバー(処理容器) 28 載置台
52 透過窓
56 加熱ランプ
80 シャワーヘッド構造
82 ヘッド本体
84 ヘッド蓋体
94 ガス噴射孔
100 ヘッド加熱ヒータ(ヘッド加熱部)
104 接合フランジ部
112 ペルチェ素子(ヘッド加熱・冷却部)
116 媒体通路
118 括れ部
124,126 シール溝
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に対して成膜処理を施すための処理容器の天井部に設けられて前記処理容器内へ所定のガスを供給するシャワーヘッド構造において、底部に複数のガス噴射孔を有して有底筒体状に形成されたヘッド本体と、前記ヘッド本体を前記処理容器の天井部へ支持するための接合フランジ部と、前記ヘッド本体の底部に設けられて前記ヘッド本体の温度調整を行なうために温度制御可能になされたヘッド加熱手段とを備えたことを特徴とするシャワーヘッド構造。
【請求項2】
前記ヘッド本体と前記接合フランジ部とは一体的に成形されていることを特徴とする請求項1記載のシャワーヘッド構造。
【請求項3】
前記ヘッド本体の側壁であって、前記ヘッド加熱手段の上方には、前記側壁の断面積を縮小させてこの部分の熱抵抗を大きくするための括れ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のシャワーヘッド構造。
【請求項4】
前記接続フランジ部には、これを前記被処理体の成膜処理時には冷却して、前記処理容器内のクリーニング時には加熱するヘッド加熱・冷却手段が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシャワーヘッド構造。
【請求項5】
前記ヘッド加熱・冷却手段はペルチェ素子であることを特徴とする請求項4記載のシャワーヘッド構造。
【請求項6】
前記ペルチェ素子の上部には、前記ペルチェ素子の上面側にて発生する温熱、或いは冷熱を搬送するための熱媒体を流す媒体通路が形成されていることを特徴とする請求項5記載のシャワーヘッド構造。
【請求項7】
前記ヘッド本体の温度の制御範囲は50〜300℃であることを特徴とする請求項1乃至6のいづれかに記載のシャワーヘッド構造。
【請求項8】
真空引き可能になされた処理容器と、被処理体を載置するために前記処理容器内に設けられた載置台と、前記被処理体を加熱するための加熱手段と、前記処理容器の天井部に設けられて前記処理容器内に所定のガスを導入するためのシャワーヘッド構造とを備えた成膜装置であって、前記シャワーヘッド構造は、
底部に複数のガス噴射孔を有して有底筒体状に形成されたヘッド本体と、
前記ヘッド本体を前記処理容器の天井部へ支持するための接合フランジ部と、 前記ヘッド本体の底部に設けられて前記ヘッド本体の温度調整を行なうために温度制御可能になされたヘッド加熱手段と、を備えたことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
前記処理容器へ搭載した時に、上記処理容器の上記天井に接触する上記接合フランジ部の接触面に、断熱材と真空状態を保持させるためのシール面を備えることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記天井部に取り付けられた際に前記シール面で該天井側に取り付けられたシール部材を圧潰して気密性を保持させつつ、真空側の該シール面と該天井との間に隙間ができるように、真空側の前記接合フランジ部の接触面を大気側よりも低く形成することを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【請求項11】
真空引き可能になされた処理容器内に、この天井部に設けたシャワーヘッド構造から所定のガスを導入しつつ前記処理容器内の載置台上に載置されている被処理体に対して成膜処理を施すに際して、
前記シャワーヘッド構造を一定の温度に維持するようにしたことを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
前記シャワーヘッド構造のガス噴出部よりも上方にある上記ヘッド本体の側壁に形成された括れ部により、成膜時に発生するガス噴射部の表面の温度が上記接合フランジ部への熱伝搬が抑制されつつ成膜が行われることを特徴とする請求項11記載の成膜方法。
【請求項13】
成膜処理温度が420℃以下の時、前記シャワーヘッド構造の温度は95℃以下であることを特徴とする請求項11又は12記載の成膜方法。
【請求項14】
成膜処理温度が500℃以下の時、前記シャワーヘッド構造の温度は110℃以下であることを特徴とする請求項11又は12記載の成膜方法。
【請求項15】
真空引き可能になされた処理容器内へシャワーヘッド構造から所定のガスを供給して載置台上に載置された被処理体に対して成膜処理を施す成膜装置をクリーニングする方法において、前記シャワーヘッド構造から前記処理容器内へクリーニングガスを流しつつ前記シャワーヘッド構造の温度を、前記成膜処理時の前記シャワーヘッド構造の温度よりも高く設定するようにしたことを特徴とするクリーニング方法。
【請求項16】
前記シャワーヘッド構造の温度は130℃以上であることを特徴とする請求項15記載のクリーニング方法。
【請求項17】
前記成膜処理はタングステン金属の成膜処理であり、前記シャワーヘッド構造にはフッ化チタン(TiF)系を主成分とする反応副生成物が付着していることを特徴とする請求項15又は16記載のクリーニング方法。
【請求項18】
前記クリーニング処理は、処理されたウエハの積算処理枚数、若しくは積算処理時間、若しくは測定された反応副生成物の膜厚、若しくはウエハ上の生成膜の電気特性が規格内か、を基準として、予め設定されたこれらの基準値を越えた際にクリーニング処理が開始されることを特徴とする請求項11乃至17のいずれかに記載のクリーニング方法。
【請求項19】
前記シャワーヘッド構造の温度を、成膜処理時の50〜110℃に対して、140〜170℃に設定して、成膜処理時に発生した反応副成膜を除去するクリーニング処理を行うことを特徴とする請求項15記載のクリーニング方法。
【請求項20】
前記反応副生成物の膜厚は、レーザ又は光束(UV、赤外線)を用いて計測されることを特徴とする請求項15乃至19のいずれかに記載のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−236506(P2011−236506A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154340(P2011−154340)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2001−272695(P2001−272695)の分割
【原出願日】平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】