クレーンの振れ止め制御装置
【課題】二重振り子構造、単振り子構造を含むクレーン搬送システムにおいて、速度パターンを持たずに、吊り荷の振れ止めを高精度に実現可能としたクレーンの振れ止め制御装置を提供する。
【解決手段】吊り荷及びその支持構造が単振り子構造または多重振り子構造を構成し、クレーン本体の台車を駆動して吊り荷を目標位置まで搬送するクレーン搬送システムにおいて、吊り荷503の振動による振れ角度を検出する振れ角センサ512と、吊り荷の速度検出値及び位置検出値をフィードバックして吊り荷を目標位置まで搬送するための第1の操作量を演算し、かつ、前記振れ角度を無線通信によりフィードバックして吊り荷の振れ止めを行うための第2の操作量を演算する演算制御手段としてのアシスト制御部101と、第1の操作量及び第2の操作量を加算して前記台車に与える手段と、を備える。
【解決手段】吊り荷及びその支持構造が単振り子構造または多重振り子構造を構成し、クレーン本体の台車を駆動して吊り荷を目標位置まで搬送するクレーン搬送システムにおいて、吊り荷503の振動による振れ角度を検出する振れ角センサ512と、吊り荷の速度検出値及び位置検出値をフィードバックして吊り荷を目標位置まで搬送するための第1の操作量を演算し、かつ、前記振れ角度を無線通信によりフィードバックして吊り荷の振れ止めを行うための第2の操作量を演算する演算制御手段としてのアシスト制御部101と、第1の操作量及び第2の操作量を加算して前記台車に与える手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井型クレーンの台車を自動運転して吊り荷を目標位置に搬送する天井型クレーン搬送システムにおいて、吊り荷を搬送する際の加減速終了時における振動を低減するためのクレーンの振れ止め制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクレーン搬送システムでは、ある位置に置かれた吊り荷を吊り上げて目標位置まで搬送し、吊り荷を降ろすという一連の動作のサイクルタイムを減少させるため、水平方向へ搬送する際の加減速終了時における吊り荷の振動を抑制する制御(いわゆる振れ止め制御)が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、クレーン台車の実際位置を目標位置に一致させるような位置制御部の出力と、フィードバック量算出部の出力との偏差を目標速度としてクレーン台車の速度を制御する制御装置であって、クレーン台車の位置、速度、ロープの振れ角度、振れ角速度をセンサによりそれぞれ検出してこれらに最適フィードバックゲインを乗じた値の加算値を前記フィードバック量とすると共に、前記最適フィードバックゲインを、ロープ長及びスラブ重量の変化に対してロバスト安定性を有する値となるように決定するクレーンの振れ止め移動制御装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、クレーンの状態量を測定するクレーン状態量測定装置と、クレーンの停止時に前記状態量に基づいてクレーンの振れ止め・位置制御に必要なパラメータを推定学習する状態量推定・学習装置とを備え、環境変化やクレーンの経年変化がある場合でも、学習済みのパラメータを用いることで高精度に吊り荷の振れ止め・位置制御を行うようにしたクレーンの振れ止め・位置制御装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、吊り荷の吊り下げ時の台車の加速度がゼロであるときの吊り荷の振れ角がゼロとなるような速度パターンを指令として用い、台車の現在位置をフィードバックして速度パターンに追従させつつ台車を所定距離まで移動させる速度指令値を生成するための位置制御手段と、前記速度パターンと吊り荷の数学モデルに基づき吊り荷の動作指令を求める吊り荷運動モデルと、前記振れ角から吊り荷の動作量を推定する吊り荷動作推定手段と、推定された動作量を動作指令に追従させる補償量を算出して速度指令値を補償する補償手段と、を備えたクレーンの振れ止め制御装置及び制御方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、クレーン等の移動体の振動をモデル化してその固有周期を求め、加減速時の加速度パターンをジャーク(加速度の時間微分値)一定の台形パターンとし、各ジャーク一定時間を固有周期の整数倍として加速度パターンを設定すると共に、この加速度パターンに従って移動体の移動を制御しつつ移動体の状態変数を検出し、加速度パターンによる状態変数の目標値と検出値との偏差に基づいて移動体をフィードバック制御するようにした制振位置決め制御方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−7274号公報(段落[0008]〜[0012]、図1〜図3等)
【特許文献2】特開2003−176093号公報(段落[0009],[0010]、図1等)
【特許文献3】特開2009−67507号公報(段落[0010]〜[0014]、図1〜図4等)
【特許文献4】特開2010−9197号公報(段落[0015]〜[0026]、図4,図5,図7等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る従来技術では、最適フィードバックゲインの算出やロバスト安定性を有する制御則の導出に複雑な演算を必要とするため、実用性に乏しく、現場向きでないという問題がある。
特許文献2に係る従来技術では、制御に必要なパラメータを過去の運転結果から学習するので、運転期間が短く学習が不十分な場合には高精度な振れ止め制御が難しいという問題がある。
特許文献3に係る従来技術は、速度パターンに基づいた加減速制御と比例制御または比例積分制御による位置制御との組み合わせで制御を行っており、制御系の構成が比較的複雑である。
特許文献4に係る従来技術は、ジャーク一定時間をモデルの固有周期の整数倍に設定した台形の加速度パターンに基づいて加減速制御するものであり、加速度パターンの設定装置や状態変数検出装置における演算負荷が少なくない。
【0009】
更に、特許文献1〜4に係る従来技術では、基本的に、クレーン−吊り荷系を単振り子構造とみなすモデルを用いて位置決め制御を行っている。
すなわち、図10はクレーン−吊り荷系の単振り子モデルであり、501はクレーンの台車、502はワイヤロープ、503は吊り荷、Lはロープ長(台車501から吊り荷503の重心までの距離)、θ0は吊り荷503の振れ角度である。
ここで、台車501の加速時間及び減速時間(吊り荷503の振れ周期)TはT=2π√(L/g)によって表されることが知られており(gは重力加速度)、台車501の加速終了時及び減速終了時に吊り荷503の振れ角度θ0が何れも0になるため、距離Lから求めた加減速時間Tに基づき速度パターンを作成して台車501を走行させれば、理論上、吊り荷503の振れ止め制御を行うことができる。
【0010】
しかしながら、図11に示すように、ビーム504及びスプレッダ505を用いて吊り荷503を搬送する天井型クレーン搬送システムは、いわゆる二重振り子構造となっている。すなわち、ビーム504と、スプレッダ505及び吊り荷503の結合体との固有振動数がそれぞれ異なるため、台車501から吊り荷503の重心までの距離Lを求めてT=2π√(L/g)により周期Tつまり加減速時間を求めたとしても、この加減速時間Tでは正確に振れ止めを行うことができない。なお、図11において、507,508は滑車、509は巻き上げ・巻き下げ用のドラム、510はワイヤロープ、511はロープを示す。
このように、二重振り子構造のクレーン搬送システムにおいては、台車501から吊り荷503の重心までの距離Lに基づいて加減速時間を決定することができず、振れ止め制御の精度が低くなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の解決課題は、二重振り子構造、単振り子構造を含むクレーン搬送システムにおいて、速度パターンを持たずに、吊り荷の振れ止めを高精度に実現可能としたクレーンの振れ止め制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、吊り荷及びその支持構造が単振り子構造または多重振り子構造を構成し、クレーン本体の台車を駆動して吊り荷を目標位置まで搬送するクレーン搬送システムにおいて、
吊り荷の振動による振れ角度を検出する振れ角センサと、
吊り荷の速度検出値及び位置検出値をフィードバックして吊り荷を前記目標位置まで搬送するための第1の操作量を演算し、かつ、前記振れ角センサから得られた前記振れ角度をフィードバックして吊り荷の振れ止めを行うための第2の操作量を演算する演算制御手段と、
前記第1の操作量及び第2の操作量を加算して前記台車に与える手段と、を備えたものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、前記吊り荷及びその支持構造が二重振り子構造を構成していることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、吊り荷及びその支持構造が、前記台車側の支点から吊り下げられた第1の質点と、この第1の質点から吊り下げられた吊り荷を含む第2の質点と、を有する二重振り子構造であり、
前記演算制御手段は、前記振れ角度が、
前記支点から第1の質点までの距離と、第1の質点から第2の質点までの距離と、前記支点からの鉛直線と第1の質点との間の角度と、第1の質点からの鉛直線と第2の質点との間の角度と、を用いて表されるものとして、第2の操作量を演算するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二重振り子構造、単振り子構造を含むクレーン搬送システムにおいて、予め設定された速度パターンを用いることなく、吊り荷の振れ止め制御を高精度に実現することができる。これにより、クレーン搬送システムにおけるサイクルタイムの短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における天井型クレーン搬送システムの主要部構成図である。
【図2】図1におけるクレーン本体の概略説明図である。
【図3】本発明の実施形態における概略的な機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における二重振り子モデルの説明図である。
【図5】図3に対応する制御ブロック図である。
【図6】図3に対応する制御ブロック図である。
【図7】図5における位置決め制御系を示す制御ブロック図である。
【図8】Ksを算出するための制御ブロック図である。
【図9】本実施形態によるシミュレーション結果を示す図である。
【図10】クレーン−吊り荷系の単振り子モデルの説明図である。
【図11】二重振り子構造を有する天井型クレーン搬送システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本実施形態に係る天井型クレーン搬送システムの主要部構成図、図2は図1におけるクレーン本体100の概略説明図(図2(a)は平面図、図2(b)は側面図)であり、建屋内の天井(高所)に設置されたクレーン本体100によって吊り荷503を始点位置から目標位置まで搬送するシステムを示している。ここで、主に吊り荷503の支持構造に関して、図11と同一の構成要素には同一の番号を付してある。
本実施形態において、吊り荷503は例えばプレス加工用の金型であり、この金型を天井型クレーン搬送システムにより金型置場とプレス機との間で搬送する場合を想定しているが、本発明における吊り荷の種類や搬送場所等は何ら限定されないことは言うまでもない。
【0018】
クレーン本体100は、図2に示すように基台100Aと台車100Bとを備えている。基台100Aは図1,図2のY方向、台車100BはX方向にそれぞれ走行可能であるものとし、これによって台車100Bに吊り下げられた吊り荷503はX−Y平面を水平方向に移動可能である。なお、台車100BのX方向の移動を「走行」、基台100AのY方向の移動を「横行」という。また、図1には、吊り荷503の昇降方向をZで示している。
図1では、基台100A及び台車100Bを図示しておらず、これらを有するクレーン本体100を一つのブロックとして示してあるが、このブロック内の各構成要素は、基台100Aまたは台車100Bの何れかに配置されるものである。
【0019】
始めに、図1を参照しながらクレーン本体100の構成を説明する。
クレーン本体100において、110はPLC(プログラマブルロジックコントローラあるいはシーケンサ)等により構成されたクレーン制御部であり、後述するアシスト制御部101からの運転指令に従い、インバータ111,113,115を運転して走行用モータ112、横行用モータ114、ドラム509の駆動用(巻き上げ・巻き下げ用)モータ116をそれぞれ駆動するようになっている。ここで、クレーン制御部110及びインバータ111,113,115による各モータ112,114,116の駆動システムや、モータ112による台車100Bの走行機構、モータ114による基台100Aの走行機構、モータ116によるドラム509の駆動機構は、何れも既知のものであり、本発明の要旨ではないため、詳述を省略する。
【0020】
アシスト制御部101も同じくPLC等の演算制御手段により構成されており、主として前記モータ112,114,116に対する運転指令や走行時、横行時に吊り荷503の振れ止めを行うための速度指令を前記クレーン制御部110に送出する機能を備えている。
【0021】
アシスト制御部101には受信部102が接続されており、この受信部102は、作業員が地上で設定操作するアシスト設定部200との間で、無線LANシステムにより各種データを送受信可能である。
アシスト設定部200は、例えばタッチパネル方式により、台車100Bの運行パターン(搬送速度、搬送経路上の中継場所の有無等)や目標位置、吊り荷503のパラメータ(吊り荷の種類、振れ止め制御を行わずに通常の搬送を行う場合の重心位置等)を設定するためのものである。なお、201は、上記運行パターンに応じたモータ制御用プログラムや吊り荷503のパラメータ等が格納されたメモリカードを示している。
【0022】
更に、103は吊り荷503の高さ(地上からの距離)を検出するための距離検出部であり、光学式エンコーダ等を利用して、ワイヤロープ510を巻き上げ、または巻き下げるドラム509の回転数から吊り荷503の高さを検出するようになっている。ここで、ドラム509は台車100B上に固定されているものとする。
104は基台100A及び台車100BのX方向、Y方向の位置を検出するための距離検出部であり、詳しくは、図2(a)に示すように構成されている。
【0023】
すなわち、図2(a)において、104a,104bは基台100Aの端部に固定されたレーザ距離計、105aは台車100Bの側面に固定された反射板、105bは基台100Aの外部の適宜な静止位置に固定された反射板であり、これらによって図1の距離検出部104が構成される。
反射板105aからのレーザ反射光を受光するレーザ距離計104aの出力信号を用いれば台車100BのX方向の位置(距離)を検出することができ、同様に反射板105bからのレーザ反射光を受光するレーザ距離計104bの出力信号を用いれば基台100AのY方向の位置(距離)を検出することができる。よって、これらの検出値から台車100B言い換えれば吊り荷503の絶対位置が求められ、吊り荷503の搬送先である目標位置(アシスト設定部200により設定される)までの距離も求められる。
【0024】
再び図1において、106はスプレッダ操作部であり、吊り荷503を保持するスプレッダ505のロック・アンロック操作を行うためのものである。このスプレッダ操作部106の動作は、機械式制御となっている。
300は作業員による遠隔操作用の無線送信部であり、基台100A側に設置された受信部117を介してアシスト制御部101及びクレーン制御部110に指令を送り、本発明に係る振れ止め制御による搬送モードと振れ止め制御を行わない通常の搬送モードとの選択、クレーン搬送システム全体の起動、停止等を行わせる。
118は地上の作業員がクレーン本体100の行先を確認するための行先表示灯であり、この行先はアシスト制御部101から表示データとして行先表示灯118に与えられる。
【0025】
更に、スプレッダ505の上端部には、振れ角センサ512が取り付けられている。この振れ角センサ512は、台車側のドラム509を支点としたワイヤロープ510、ビーム504、ロープ511、スプレッダ505及び吊り荷503等からなる二重振り子構造における吊り荷503の振れ角度φ(図4参照)を検出するものであり、この振れ角度φは受信部102または受信部117を介してアシスト制御部101に無線にて送信されるようになっている。
【0026】
次に、図3は本実施形態における概略的な機能ブロック図である。ここでは、台車100BをX方向に駆動する場合について説明するが、Y方向に駆動する場合も実質的に同様である。
図3において、位置決め制御手段120には、台車100Bの目標位置xrと位置検出値xとの偏差が入力され、その出力である速度目標値が速度制御手段140に入力される。速度制御手段140では、図示されていない速度検出値が速度目標値に一致するように制御が行われ、第1の操作量u10が出力される。
【0027】
一方、台車100Bから吊り下げられた二重振り子構造部150は、台車100Bと共に目標位置xrまで搬送される。ここで、二重振り子構造部150は、図1におけるドラム509、ワイヤロープ510、ビーム504、ロープ511、スプレッダ505、吊り荷503からなるものである。
吊り荷503の振れ角度φは、前述した振れ角センサ512によって検出され、振れ止め制御手段130に入力される。この制御手段130からは振れ止め制御を行うための第2の操作量u20が出力され、前記第1の操作量u10と第2の操作量u20との加算値が、最終的な操作量として台車100Bに与えられる。
ここで、位置決め制御手段120及び振れ止め制御手段130は、主として図1のアシスト制御部101により実現され、速度制御手段140は図1のクレーン制御部110及びインバータ並びにモータ111〜116により実現される。
【0028】
図4は、二重振り子構造部150及び振れ角センサ512を含む二重振り子モデルの説明図である。
図4において、Mは台車100Bの質量、m1はビーム504の質量(第1の質点)、m2はスプレッダ505及び吊り荷503の合計質量(第2の質点)、L1はワイヤロープ510の長さ、L2はロープ511の長さ、L3は台車100Bから質点m2までの長さ、θ1は台車100Bからの鉛直線と質点m1との間の角度、θ2は質点m1からの鉛直線と質点m2との間の角度、φは振れ角センサ512によって検出される、鉛直線からの振れ角度である。
【0029】
次いで、図5及び図6は、図3に対応する制御ブロック図である。
まず、図5において、Kpは位置決め制御手段120の伝達関数(ゲイン)、Ksは速度制御手段140の伝達関数(ゲイン)である。また、操作量uが入力される台車100B及び二重振り子構造部150において、a11,a12,a21,a22,a31,b1,b2はパラメータ、1/sは積分手段(sはラプラス演算子)、L1,L2は前述したごとくワイヤロープ510及びロープ511の長さを示している。
ここで、台車100Bは、操作量u及び角度θ1に基づき位置(位置検出値)xを出力し、二重振り子構造部150は、操作量uに基づいて角度θ1,θ2とロープ長L1,L2とのそれぞれの乗算結果並びに角度θ1を出力するように作用する。
また、二重振り子構造部150から出力されるL1θ1とL2θ2との加算結果は、ロープ510,511のパラメータ151を介して振れ角センサ512に作用し、その出力である振れ角度φが位置決め制御手段130を介して操作量u20にフィードバックされる。なお、操作量u20は、図示するようにフィードバックゲインf1,f2と振れ角度φ及びその一階微分値(本文上、「・」を所定位置に表記できないため、φの一階微分値を「φドット」ともいい、φの二階微分値を「φツードット」ともいう。)によって表されるものとする。
【0030】
図6は、図5における位置決め制御手段120及び速度制御手段140の伝達関数をフィードバックゲインf1,f2に置き換えたものである。
この実施形態では、図6に示した制御ブロックにおいて、振れ角センサ512から送信される振れ角度φをアシスト制御部101内の振れ止め制御手段130に直接取り込み、第2の操作量u20にフィードバックして最終的な操作量u20を得ることとし、後述するような演算により制御系のフィードバックゲイン及びパラメータを求めるようにしたものである。
【0031】
さて、図4に示した二重振り子モデルに対して、質点m1の位置(x,y座標)をx1=x+L1sinθ1,y1=L1cosθ1、質点m2の位置(x,y座標)をx2=x1+L2sinθ2,y2=y1+L2cosθ2としたとき、cosθ1=cosθ2=1,sinθ1=θ1,sinθ2=θ2,θ1≒θ2,θ2の1階微分値≒0とそれぞれ近似すると、数式1〜3に示すような線形近似運動方程式が得られる。なお、数式1は第2の質点m2に、数式2は第1の質点m1に、数式3は台車に、それぞれ対応する。
【数1】
【数2】
【数3】
【0032】
ここで、図6の制御ブロック図から数式4を仮定すると、この数式4と数式3とから数式5が得られ、更に数式6が得られる。なお、m=m1+m2,L=L1+L2である。
【数4】
【数5】
【数6】
【0033】
数式6の左辺第4項〜第9項までを、数式7のようにおき、これを行列式に変換して数式8を得る。なお、数式8の左辺における各係数行列を、数式中に付記したようにそれぞれM0,Lとする。
【数7】
【数8】
【0034】
数式8をベクトル形式で表し、更にラプラス演算子を用いて表すと、それぞれ数式9、数式10となる。
【数9】
【数10】
【0035】
数式10の解をu1,u2とすると、数式11、数式12を得る。
【数11】
【数12】
【0036】
数式10、数式12から、数式13、数式14を得る。
【数13】
【数14】
【0037】
数式13から数式15、数式16が得られ、数式14から数式17、数式18が得られる。また、数式15、数式16から数式19が、数式17、数式18から数式20が得られる。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【0038】
ここで、ωcを振れ止め制御周期として、数式21を仮定すると、数式22が得られる。また、数式22の最下段の式を解くことにより、数式23の上段に示すようにu2が得られ、また、数式22の最上段の関係から、数式23の下段に示す如くu1が得られる。
【0039】
【数21】
【数22】
【数23】
【0040】
このようにして数式23により求めたu1,u2を数式19、数式20に代入することにより、図6の振れ止め制御手段130におけるフィードバックゲインf1,f2を決定することができる。
【0041】
なお、前述の数式4に示したように、第2の操作量u20を角度θ1,θ2及びロープ長L1,L2から求められればよいが、本実施形態において角度θ1,θ2を直接検出することはできず、振れ角センサ512によって検出されるのは振れ角度φだけである。
このため、数式24が成り立てば、前述したフィードバックゲインf1,f2と、振れ角センサ512によって検出される振れ角度φから第2の操作量u20を求めることができる。
【数24】
【0042】
ここで、図4の二重振り子モデルにおいて、質点m2のx座標、y座標に関して数式25が成り立ち、数式25におけるφ≒0とおくと、数式26が成り立つ。更に、この数式26から数式27が導かれるので、結果として数式24が成り立つことになり、図6の振れ止め制御手段130は、振れ角度φに基づいて操作量u20を求めることができる。
【数25】
【数26】
【数27】
【0043】
次に、図5における位置決め制御系について説明し、図6に示したフィードバックゲインf3,f4の算出方法について説明する。
図7は、位置決め制御系の制御ブロック図である。この図7から、数式28〜数式30が得られる。なお、前述したようにKpは位置決め制御手段120の伝達関数、Ksは速度制御手段140の伝達関数、Mは台車100Bの質量、m=m1+m2である。
【数28】
【数29】
【数30】
【0044】
これらの数式28〜数式30から、数式31が得られる。
【数31】
【0045】
前述した数式4から、数式32の上段の式が得られ、この式におけるu1*を数式28に代入することにより、数式32の下段の式が得られる。
【数32】
【0046】
数式31及び数式32の下段の式を比較して、数式33が得られる。すなわち、数式6におけるフィードバックゲインf3,f4は数式33のように設定すればよい。
【数33】
【0047】
次に、数式33におけるKs,Kpの算出方法を説明する。
まず、Ksを算出するには、図8に示すような速度制御系の制御ブロック図を想定すると、数式34〜数式36が得られ、数式36を変形して数式37、数式38が得られるため、この数式38からKsを求めることができる。なお、Tsは台車100Bの加速時間に相当する。
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【0048】
また、Kpは、例えば、Kp=(Ts/2)/2σによって算出すればよい。ここで、σは速度制御の遅れ時間である。
【0049】
次いで、図6に示した制御ブロック図における各パラメータa11,a12,a21,a22,a31,b1,b2の算出方法について説明する。
まず、数式1から求めたx(ツードット)を数式2に代入し、数式39を得る。
【数39】
【0050】
数式39にm=m1+m2を代入して整理し、数式40を得る。
【数40】
また、数式1、数式3からx(ツードット)を消去して数式41、数式42を得る。
【数41】
【数42】
【0051】
次に、数式40×(Mm1)+数式42×(m1)の演算を行い、θ2(ツードット)を消去して数式43を得ると共に、これを変形して数式44を得る。
【数43】
【数44】
【0052】
数式44から数式45を得ることができ、数式45におけるθ1,θ2,uの係数からパラメータa11,a12,b1を求めることができる。
また、数式40から数式46を得ることができ、数式46におけるθ1,θ2の係数からパラメータa21,a22を求めることができる。
【数45】
【数46】
【0053】
更に、数式40と数式42とを加算して数式47を得ると共に、数式1にMを乗じて数式48を得る。
【数47】
【数48】
【0054】
数式47、数式48から数式49によりx(ツードット)を求め、この数式49を数式50のように変形して、θ1,uの係数からパラメータa31,b2をそれぞれ求めることができる。
【数49】
【数50】
【0055】
なお、数式51の行列式は、図6におけるロープ長L1,L2を除いた台車100B及び二重振り子構造部150の入出力関係を、上記パラメータa11,a12,a21,a22,a31,b1,b2を用いて表したものである。
【数51】
【0056】
ここで、図9は、本実施形態により振れ止め制御を行った場合の台車100Bの位置、速度、及び、振れ角センサ512による振れ角度φのフィードバック信号をシミュレーションした結果を示している。
シミュレーションの条件として、ロープ長はL1=0.6[m],L2=0.3[m]とし、フィードバックゲインはf1=−4.5,f2=−2.73,f3=20,f4=100とし、Ks=20,Kp=5とした。
この図9によれば、台車100Bの位置が目標位置に到達した時点で速度はほぼゼロとなり、同時に振れ角度φもほぼゼロに収束して良好な振れ止め制御が行われていることがわかる。
【0057】
上記実施形態では、ドラム509により吊り荷503を昇降する機構を備えたクレーン搬送システムについて説明したが、本発明は、吊り荷503の昇降機構を持たず、少なくとも吊り荷を水平方向に搬送するクレーン搬送システムであれば適用可能である。
また、本発明は、ビーム504、スプレッダ505及び吊り荷503等からなる二重振り子構造だけでなく、図10に示したような単振り子構造のクレーンにも適用可能である。その場合には、図5及び図6の二重振り子構造部150におけるパラメータa12,a21,a22,二段階の積分手段(1/s)及びロープ長L2の部分を除いて、単振り子構造部の制御系を構成すればよい。
なお、吊り荷503の昇降機構や走行・横行機構は、図示例に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
100:クレーン本体
100A:基台
100B:台車
101:アシスト制御部
102:受信部
103,104:距離検出部
104a,104b:レーザ距離計
105a,105b:反射板
106:スプレッダ操作部
110:クレーン制御部
111,113,115:インバータ
112,114,116:モータ
117:受信部
118:行先表示灯
120:位置決め制御手段
130:振れ止め制御手段
140:速度制御手段
150:二重振り子構造部
200:振れ止め設定部
201:メモリカード
300:無線送信部
503:吊り荷
504:ビーム
505:スプレッダ
509:ドラム
510:ワイヤロープ
511:ロープ
512:振れ角センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井型クレーンの台車を自動運転して吊り荷を目標位置に搬送する天井型クレーン搬送システムにおいて、吊り荷を搬送する際の加減速終了時における振動を低減するためのクレーンの振れ止め制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のクレーン搬送システムでは、ある位置に置かれた吊り荷を吊り上げて目標位置まで搬送し、吊り荷を降ろすという一連の動作のサイクルタイムを減少させるため、水平方向へ搬送する際の加減速終了時における吊り荷の振動を抑制する制御(いわゆる振れ止め制御)が採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、クレーン台車の実際位置を目標位置に一致させるような位置制御部の出力と、フィードバック量算出部の出力との偏差を目標速度としてクレーン台車の速度を制御する制御装置であって、クレーン台車の位置、速度、ロープの振れ角度、振れ角速度をセンサによりそれぞれ検出してこれらに最適フィードバックゲインを乗じた値の加算値を前記フィードバック量とすると共に、前記最適フィードバックゲインを、ロープ長及びスラブ重量の変化に対してロバスト安定性を有する値となるように決定するクレーンの振れ止め移動制御装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、クレーンの状態量を測定するクレーン状態量測定装置と、クレーンの停止時に前記状態量に基づいてクレーンの振れ止め・位置制御に必要なパラメータを推定学習する状態量推定・学習装置とを備え、環境変化やクレーンの経年変化がある場合でも、学習済みのパラメータを用いることで高精度に吊り荷の振れ止め・位置制御を行うようにしたクレーンの振れ止め・位置制御装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、吊り荷の吊り下げ時の台車の加速度がゼロであるときの吊り荷の振れ角がゼロとなるような速度パターンを指令として用い、台車の現在位置をフィードバックして速度パターンに追従させつつ台車を所定距離まで移動させる速度指令値を生成するための位置制御手段と、前記速度パターンと吊り荷の数学モデルに基づき吊り荷の動作指令を求める吊り荷運動モデルと、前記振れ角から吊り荷の動作量を推定する吊り荷動作推定手段と、推定された動作量を動作指令に追従させる補償量を算出して速度指令値を補償する補償手段と、を備えたクレーンの振れ止め制御装置及び制御方法が記載されている。
【0006】
特許文献4には、クレーン等の移動体の振動をモデル化してその固有周期を求め、加減速時の加速度パターンをジャーク(加速度の時間微分値)一定の台形パターンとし、各ジャーク一定時間を固有周期の整数倍として加速度パターンを設定すると共に、この加速度パターンに従って移動体の移動を制御しつつ移動体の状態変数を検出し、加速度パターンによる状態変数の目標値と検出値との偏差に基づいて移動体をフィードバック制御するようにした制振位置決め制御方法及び装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−7274号公報(段落[0008]〜[0012]、図1〜図3等)
【特許文献2】特開2003−176093号公報(段落[0009],[0010]、図1等)
【特許文献3】特開2009−67507号公報(段落[0010]〜[0014]、図1〜図4等)
【特許文献4】特開2010−9197号公報(段落[0015]〜[0026]、図4,図5,図7等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に係る従来技術では、最適フィードバックゲインの算出やロバスト安定性を有する制御則の導出に複雑な演算を必要とするため、実用性に乏しく、現場向きでないという問題がある。
特許文献2に係る従来技術では、制御に必要なパラメータを過去の運転結果から学習するので、運転期間が短く学習が不十分な場合には高精度な振れ止め制御が難しいという問題がある。
特許文献3に係る従来技術は、速度パターンに基づいた加減速制御と比例制御または比例積分制御による位置制御との組み合わせで制御を行っており、制御系の構成が比較的複雑である。
特許文献4に係る従来技術は、ジャーク一定時間をモデルの固有周期の整数倍に設定した台形の加速度パターンに基づいて加減速制御するものであり、加速度パターンの設定装置や状態変数検出装置における演算負荷が少なくない。
【0009】
更に、特許文献1〜4に係る従来技術では、基本的に、クレーン−吊り荷系を単振り子構造とみなすモデルを用いて位置決め制御を行っている。
すなわち、図10はクレーン−吊り荷系の単振り子モデルであり、501はクレーンの台車、502はワイヤロープ、503は吊り荷、Lはロープ長(台車501から吊り荷503の重心までの距離)、θ0は吊り荷503の振れ角度である。
ここで、台車501の加速時間及び減速時間(吊り荷503の振れ周期)TはT=2π√(L/g)によって表されることが知られており(gは重力加速度)、台車501の加速終了時及び減速終了時に吊り荷503の振れ角度θ0が何れも0になるため、距離Lから求めた加減速時間Tに基づき速度パターンを作成して台車501を走行させれば、理論上、吊り荷503の振れ止め制御を行うことができる。
【0010】
しかしながら、図11に示すように、ビーム504及びスプレッダ505を用いて吊り荷503を搬送する天井型クレーン搬送システムは、いわゆる二重振り子構造となっている。すなわち、ビーム504と、スプレッダ505及び吊り荷503の結合体との固有振動数がそれぞれ異なるため、台車501から吊り荷503の重心までの距離Lを求めてT=2π√(L/g)により周期Tつまり加減速時間を求めたとしても、この加減速時間Tでは正確に振れ止めを行うことができない。なお、図11において、507,508は滑車、509は巻き上げ・巻き下げ用のドラム、510はワイヤロープ、511はロープを示す。
このように、二重振り子構造のクレーン搬送システムにおいては、台車501から吊り荷503の重心までの距離Lに基づいて加減速時間を決定することができず、振れ止め制御の精度が低くなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の解決課題は、二重振り子構造、単振り子構造を含むクレーン搬送システムにおいて、速度パターンを持たずに、吊り荷の振れ止めを高精度に実現可能としたクレーンの振れ止め制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、吊り荷及びその支持構造が単振り子構造または多重振り子構造を構成し、クレーン本体の台車を駆動して吊り荷を目標位置まで搬送するクレーン搬送システムにおいて、
吊り荷の振動による振れ角度を検出する振れ角センサと、
吊り荷の速度検出値及び位置検出値をフィードバックして吊り荷を前記目標位置まで搬送するための第1の操作量を演算し、かつ、前記振れ角センサから得られた前記振れ角度をフィードバックして吊り荷の振れ止めを行うための第2の操作量を演算する演算制御手段と、
前記第1の操作量及び第2の操作量を加算して前記台車に与える手段と、を備えたものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、前記吊り荷及びその支持構造が二重振り子構造を構成していることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、吊り荷及びその支持構造が、前記台車側の支点から吊り下げられた第1の質点と、この第1の質点から吊り下げられた吊り荷を含む第2の質点と、を有する二重振り子構造であり、
前記演算制御手段は、前記振れ角度が、
前記支点から第1の質点までの距離と、第1の質点から第2の質点までの距離と、前記支点からの鉛直線と第1の質点との間の角度と、第1の質点からの鉛直線と第2の質点との間の角度と、を用いて表されるものとして、第2の操作量を演算するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二重振り子構造、単振り子構造を含むクレーン搬送システムにおいて、予め設定された速度パターンを用いることなく、吊り荷の振れ止め制御を高精度に実現することができる。これにより、クレーン搬送システムにおけるサイクルタイムの短縮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における天井型クレーン搬送システムの主要部構成図である。
【図2】図1におけるクレーン本体の概略説明図である。
【図3】本発明の実施形態における概略的な機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における二重振り子モデルの説明図である。
【図5】図3に対応する制御ブロック図である。
【図6】図3に対応する制御ブロック図である。
【図7】図5における位置決め制御系を示す制御ブロック図である。
【図8】Ksを算出するための制御ブロック図である。
【図9】本実施形態によるシミュレーション結果を示す図である。
【図10】クレーン−吊り荷系の単振り子モデルの説明図である。
【図11】二重振り子構造を有する天井型クレーン搬送システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本実施形態に係る天井型クレーン搬送システムの主要部構成図、図2は図1におけるクレーン本体100の概略説明図(図2(a)は平面図、図2(b)は側面図)であり、建屋内の天井(高所)に設置されたクレーン本体100によって吊り荷503を始点位置から目標位置まで搬送するシステムを示している。ここで、主に吊り荷503の支持構造に関して、図11と同一の構成要素には同一の番号を付してある。
本実施形態において、吊り荷503は例えばプレス加工用の金型であり、この金型を天井型クレーン搬送システムにより金型置場とプレス機との間で搬送する場合を想定しているが、本発明における吊り荷の種類や搬送場所等は何ら限定されないことは言うまでもない。
【0018】
クレーン本体100は、図2に示すように基台100Aと台車100Bとを備えている。基台100Aは図1,図2のY方向、台車100BはX方向にそれぞれ走行可能であるものとし、これによって台車100Bに吊り下げられた吊り荷503はX−Y平面を水平方向に移動可能である。なお、台車100BのX方向の移動を「走行」、基台100AのY方向の移動を「横行」という。また、図1には、吊り荷503の昇降方向をZで示している。
図1では、基台100A及び台車100Bを図示しておらず、これらを有するクレーン本体100を一つのブロックとして示してあるが、このブロック内の各構成要素は、基台100Aまたは台車100Bの何れかに配置されるものである。
【0019】
始めに、図1を参照しながらクレーン本体100の構成を説明する。
クレーン本体100において、110はPLC(プログラマブルロジックコントローラあるいはシーケンサ)等により構成されたクレーン制御部であり、後述するアシスト制御部101からの運転指令に従い、インバータ111,113,115を運転して走行用モータ112、横行用モータ114、ドラム509の駆動用(巻き上げ・巻き下げ用)モータ116をそれぞれ駆動するようになっている。ここで、クレーン制御部110及びインバータ111,113,115による各モータ112,114,116の駆動システムや、モータ112による台車100Bの走行機構、モータ114による基台100Aの走行機構、モータ116によるドラム509の駆動機構は、何れも既知のものであり、本発明の要旨ではないため、詳述を省略する。
【0020】
アシスト制御部101も同じくPLC等の演算制御手段により構成されており、主として前記モータ112,114,116に対する運転指令や走行時、横行時に吊り荷503の振れ止めを行うための速度指令を前記クレーン制御部110に送出する機能を備えている。
【0021】
アシスト制御部101には受信部102が接続されており、この受信部102は、作業員が地上で設定操作するアシスト設定部200との間で、無線LANシステムにより各種データを送受信可能である。
アシスト設定部200は、例えばタッチパネル方式により、台車100Bの運行パターン(搬送速度、搬送経路上の中継場所の有無等)や目標位置、吊り荷503のパラメータ(吊り荷の種類、振れ止め制御を行わずに通常の搬送を行う場合の重心位置等)を設定するためのものである。なお、201は、上記運行パターンに応じたモータ制御用プログラムや吊り荷503のパラメータ等が格納されたメモリカードを示している。
【0022】
更に、103は吊り荷503の高さ(地上からの距離)を検出するための距離検出部であり、光学式エンコーダ等を利用して、ワイヤロープ510を巻き上げ、または巻き下げるドラム509の回転数から吊り荷503の高さを検出するようになっている。ここで、ドラム509は台車100B上に固定されているものとする。
104は基台100A及び台車100BのX方向、Y方向の位置を検出するための距離検出部であり、詳しくは、図2(a)に示すように構成されている。
【0023】
すなわち、図2(a)において、104a,104bは基台100Aの端部に固定されたレーザ距離計、105aは台車100Bの側面に固定された反射板、105bは基台100Aの外部の適宜な静止位置に固定された反射板であり、これらによって図1の距離検出部104が構成される。
反射板105aからのレーザ反射光を受光するレーザ距離計104aの出力信号を用いれば台車100BのX方向の位置(距離)を検出することができ、同様に反射板105bからのレーザ反射光を受光するレーザ距離計104bの出力信号を用いれば基台100AのY方向の位置(距離)を検出することができる。よって、これらの検出値から台車100B言い換えれば吊り荷503の絶対位置が求められ、吊り荷503の搬送先である目標位置(アシスト設定部200により設定される)までの距離も求められる。
【0024】
再び図1において、106はスプレッダ操作部であり、吊り荷503を保持するスプレッダ505のロック・アンロック操作を行うためのものである。このスプレッダ操作部106の動作は、機械式制御となっている。
300は作業員による遠隔操作用の無線送信部であり、基台100A側に設置された受信部117を介してアシスト制御部101及びクレーン制御部110に指令を送り、本発明に係る振れ止め制御による搬送モードと振れ止め制御を行わない通常の搬送モードとの選択、クレーン搬送システム全体の起動、停止等を行わせる。
118は地上の作業員がクレーン本体100の行先を確認するための行先表示灯であり、この行先はアシスト制御部101から表示データとして行先表示灯118に与えられる。
【0025】
更に、スプレッダ505の上端部には、振れ角センサ512が取り付けられている。この振れ角センサ512は、台車側のドラム509を支点としたワイヤロープ510、ビーム504、ロープ511、スプレッダ505及び吊り荷503等からなる二重振り子構造における吊り荷503の振れ角度φ(図4参照)を検出するものであり、この振れ角度φは受信部102または受信部117を介してアシスト制御部101に無線にて送信されるようになっている。
【0026】
次に、図3は本実施形態における概略的な機能ブロック図である。ここでは、台車100BをX方向に駆動する場合について説明するが、Y方向に駆動する場合も実質的に同様である。
図3において、位置決め制御手段120には、台車100Bの目標位置xrと位置検出値xとの偏差が入力され、その出力である速度目標値が速度制御手段140に入力される。速度制御手段140では、図示されていない速度検出値が速度目標値に一致するように制御が行われ、第1の操作量u10が出力される。
【0027】
一方、台車100Bから吊り下げられた二重振り子構造部150は、台車100Bと共に目標位置xrまで搬送される。ここで、二重振り子構造部150は、図1におけるドラム509、ワイヤロープ510、ビーム504、ロープ511、スプレッダ505、吊り荷503からなるものである。
吊り荷503の振れ角度φは、前述した振れ角センサ512によって検出され、振れ止め制御手段130に入力される。この制御手段130からは振れ止め制御を行うための第2の操作量u20が出力され、前記第1の操作量u10と第2の操作量u20との加算値が、最終的な操作量として台車100Bに与えられる。
ここで、位置決め制御手段120及び振れ止め制御手段130は、主として図1のアシスト制御部101により実現され、速度制御手段140は図1のクレーン制御部110及びインバータ並びにモータ111〜116により実現される。
【0028】
図4は、二重振り子構造部150及び振れ角センサ512を含む二重振り子モデルの説明図である。
図4において、Mは台車100Bの質量、m1はビーム504の質量(第1の質点)、m2はスプレッダ505及び吊り荷503の合計質量(第2の質点)、L1はワイヤロープ510の長さ、L2はロープ511の長さ、L3は台車100Bから質点m2までの長さ、θ1は台車100Bからの鉛直線と質点m1との間の角度、θ2は質点m1からの鉛直線と質点m2との間の角度、φは振れ角センサ512によって検出される、鉛直線からの振れ角度である。
【0029】
次いで、図5及び図6は、図3に対応する制御ブロック図である。
まず、図5において、Kpは位置決め制御手段120の伝達関数(ゲイン)、Ksは速度制御手段140の伝達関数(ゲイン)である。また、操作量uが入力される台車100B及び二重振り子構造部150において、a11,a12,a21,a22,a31,b1,b2はパラメータ、1/sは積分手段(sはラプラス演算子)、L1,L2は前述したごとくワイヤロープ510及びロープ511の長さを示している。
ここで、台車100Bは、操作量u及び角度θ1に基づき位置(位置検出値)xを出力し、二重振り子構造部150は、操作量uに基づいて角度θ1,θ2とロープ長L1,L2とのそれぞれの乗算結果並びに角度θ1を出力するように作用する。
また、二重振り子構造部150から出力されるL1θ1とL2θ2との加算結果は、ロープ510,511のパラメータ151を介して振れ角センサ512に作用し、その出力である振れ角度φが位置決め制御手段130を介して操作量u20にフィードバックされる。なお、操作量u20は、図示するようにフィードバックゲインf1,f2と振れ角度φ及びその一階微分値(本文上、「・」を所定位置に表記できないため、φの一階微分値を「φドット」ともいい、φの二階微分値を「φツードット」ともいう。)によって表されるものとする。
【0030】
図6は、図5における位置決め制御手段120及び速度制御手段140の伝達関数をフィードバックゲインf1,f2に置き換えたものである。
この実施形態では、図6に示した制御ブロックにおいて、振れ角センサ512から送信される振れ角度φをアシスト制御部101内の振れ止め制御手段130に直接取り込み、第2の操作量u20にフィードバックして最終的な操作量u20を得ることとし、後述するような演算により制御系のフィードバックゲイン及びパラメータを求めるようにしたものである。
【0031】
さて、図4に示した二重振り子モデルに対して、質点m1の位置(x,y座標)をx1=x+L1sinθ1,y1=L1cosθ1、質点m2の位置(x,y座標)をx2=x1+L2sinθ2,y2=y1+L2cosθ2としたとき、cosθ1=cosθ2=1,sinθ1=θ1,sinθ2=θ2,θ1≒θ2,θ2の1階微分値≒0とそれぞれ近似すると、数式1〜3に示すような線形近似運動方程式が得られる。なお、数式1は第2の質点m2に、数式2は第1の質点m1に、数式3は台車に、それぞれ対応する。
【数1】
【数2】
【数3】
【0032】
ここで、図6の制御ブロック図から数式4を仮定すると、この数式4と数式3とから数式5が得られ、更に数式6が得られる。なお、m=m1+m2,L=L1+L2である。
【数4】
【数5】
【数6】
【0033】
数式6の左辺第4項〜第9項までを、数式7のようにおき、これを行列式に変換して数式8を得る。なお、数式8の左辺における各係数行列を、数式中に付記したようにそれぞれM0,Lとする。
【数7】
【数8】
【0034】
数式8をベクトル形式で表し、更にラプラス演算子を用いて表すと、それぞれ数式9、数式10となる。
【数9】
【数10】
【0035】
数式10の解をu1,u2とすると、数式11、数式12を得る。
【数11】
【数12】
【0036】
数式10、数式12から、数式13、数式14を得る。
【数13】
【数14】
【0037】
数式13から数式15、数式16が得られ、数式14から数式17、数式18が得られる。また、数式15、数式16から数式19が、数式17、数式18から数式20が得られる。
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【0038】
ここで、ωcを振れ止め制御周期として、数式21を仮定すると、数式22が得られる。また、数式22の最下段の式を解くことにより、数式23の上段に示すようにu2が得られ、また、数式22の最上段の関係から、数式23の下段に示す如くu1が得られる。
【0039】
【数21】
【数22】
【数23】
【0040】
このようにして数式23により求めたu1,u2を数式19、数式20に代入することにより、図6の振れ止め制御手段130におけるフィードバックゲインf1,f2を決定することができる。
【0041】
なお、前述の数式4に示したように、第2の操作量u20を角度θ1,θ2及びロープ長L1,L2から求められればよいが、本実施形態において角度θ1,θ2を直接検出することはできず、振れ角センサ512によって検出されるのは振れ角度φだけである。
このため、数式24が成り立てば、前述したフィードバックゲインf1,f2と、振れ角センサ512によって検出される振れ角度φから第2の操作量u20を求めることができる。
【数24】
【0042】
ここで、図4の二重振り子モデルにおいて、質点m2のx座標、y座標に関して数式25が成り立ち、数式25におけるφ≒0とおくと、数式26が成り立つ。更に、この数式26から数式27が導かれるので、結果として数式24が成り立つことになり、図6の振れ止め制御手段130は、振れ角度φに基づいて操作量u20を求めることができる。
【数25】
【数26】
【数27】
【0043】
次に、図5における位置決め制御系について説明し、図6に示したフィードバックゲインf3,f4の算出方法について説明する。
図7は、位置決め制御系の制御ブロック図である。この図7から、数式28〜数式30が得られる。なお、前述したようにKpは位置決め制御手段120の伝達関数、Ksは速度制御手段140の伝達関数、Mは台車100Bの質量、m=m1+m2である。
【数28】
【数29】
【数30】
【0044】
これらの数式28〜数式30から、数式31が得られる。
【数31】
【0045】
前述した数式4から、数式32の上段の式が得られ、この式におけるu1*を数式28に代入することにより、数式32の下段の式が得られる。
【数32】
【0046】
数式31及び数式32の下段の式を比較して、数式33が得られる。すなわち、数式6におけるフィードバックゲインf3,f4は数式33のように設定すればよい。
【数33】
【0047】
次に、数式33におけるKs,Kpの算出方法を説明する。
まず、Ksを算出するには、図8に示すような速度制御系の制御ブロック図を想定すると、数式34〜数式36が得られ、数式36を変形して数式37、数式38が得られるため、この数式38からKsを求めることができる。なお、Tsは台車100Bの加速時間に相当する。
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【0048】
また、Kpは、例えば、Kp=(Ts/2)/2σによって算出すればよい。ここで、σは速度制御の遅れ時間である。
【0049】
次いで、図6に示した制御ブロック図における各パラメータa11,a12,a21,a22,a31,b1,b2の算出方法について説明する。
まず、数式1から求めたx(ツードット)を数式2に代入し、数式39を得る。
【数39】
【0050】
数式39にm=m1+m2を代入して整理し、数式40を得る。
【数40】
また、数式1、数式3からx(ツードット)を消去して数式41、数式42を得る。
【数41】
【数42】
【0051】
次に、数式40×(Mm1)+数式42×(m1)の演算を行い、θ2(ツードット)を消去して数式43を得ると共に、これを変形して数式44を得る。
【数43】
【数44】
【0052】
数式44から数式45を得ることができ、数式45におけるθ1,θ2,uの係数からパラメータa11,a12,b1を求めることができる。
また、数式40から数式46を得ることができ、数式46におけるθ1,θ2の係数からパラメータa21,a22を求めることができる。
【数45】
【数46】
【0053】
更に、数式40と数式42とを加算して数式47を得ると共に、数式1にMを乗じて数式48を得る。
【数47】
【数48】
【0054】
数式47、数式48から数式49によりx(ツードット)を求め、この数式49を数式50のように変形して、θ1,uの係数からパラメータa31,b2をそれぞれ求めることができる。
【数49】
【数50】
【0055】
なお、数式51の行列式は、図6におけるロープ長L1,L2を除いた台車100B及び二重振り子構造部150の入出力関係を、上記パラメータa11,a12,a21,a22,a31,b1,b2を用いて表したものである。
【数51】
【0056】
ここで、図9は、本実施形態により振れ止め制御を行った場合の台車100Bの位置、速度、及び、振れ角センサ512による振れ角度φのフィードバック信号をシミュレーションした結果を示している。
シミュレーションの条件として、ロープ長はL1=0.6[m],L2=0.3[m]とし、フィードバックゲインはf1=−4.5,f2=−2.73,f3=20,f4=100とし、Ks=20,Kp=5とした。
この図9によれば、台車100Bの位置が目標位置に到達した時点で速度はほぼゼロとなり、同時に振れ角度φもほぼゼロに収束して良好な振れ止め制御が行われていることがわかる。
【0057】
上記実施形態では、ドラム509により吊り荷503を昇降する機構を備えたクレーン搬送システムについて説明したが、本発明は、吊り荷503の昇降機構を持たず、少なくとも吊り荷を水平方向に搬送するクレーン搬送システムであれば適用可能である。
また、本発明は、ビーム504、スプレッダ505及び吊り荷503等からなる二重振り子構造だけでなく、図10に示したような単振り子構造のクレーンにも適用可能である。その場合には、図5及び図6の二重振り子構造部150におけるパラメータa12,a21,a22,二段階の積分手段(1/s)及びロープ長L2の部分を除いて、単振り子構造部の制御系を構成すればよい。
なお、吊り荷503の昇降機構や走行・横行機構は、図示例に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0058】
100:クレーン本体
100A:基台
100B:台車
101:アシスト制御部
102:受信部
103,104:距離検出部
104a,104b:レーザ距離計
105a,105b:反射板
106:スプレッダ操作部
110:クレーン制御部
111,113,115:インバータ
112,114,116:モータ
117:受信部
118:行先表示灯
120:位置決め制御手段
130:振れ止め制御手段
140:速度制御手段
150:二重振り子構造部
200:振れ止め設定部
201:メモリカード
300:無線送信部
503:吊り荷
504:ビーム
505:スプレッダ
509:ドラム
510:ワイヤロープ
511:ロープ
512:振れ角センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り荷及びその支持構造が単振り子構造または多重振り子構造を構成し、クレーン本体の台車を駆動して吊り荷を目標位置まで搬送するクレーン搬送システムにおいて、
吊り荷の振動による振れ角度を検出する振れ角センサと、
吊り荷の速度検出値及び位置検出値をフィードバックして吊り荷を前記目標位置まで搬送するための第1の操作量を演算し、かつ、前記振れ角センサから得られた前記振れ角度をフィードバックして吊り荷の振れ止めを行うための第2の操作量を演算する演算制御手段と、
前記第1の操作量及び第2の操作量を加算して前記台車に与える手段と、
を備えたことを特徴とするクレーンの振れ止め制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、
前記吊り荷及びその支持構造が二重振り子構造を構成していることを特徴とするクレーンの振れ止め制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、
吊り荷及びその支持構造が、前記台車側の支点から吊り下げられた第1の質点と、この第1の質点から吊り下げられた吊り荷を含む第2の質点と、を有する二重振り子構造であり、
前記演算制御手段は、
前記振れ角度が、
前記支点から第1の質点までの距離と、第1の質点から第2の質点までの距離と、前記支点からの鉛直線と第1の質点との間の角度と、第1の質点からの鉛直線と第2の質点との間の角度と、を用いて表されるものとして、第2の操作量を演算することを特徴とするクレーンの振れ止め制御装置。
【請求項1】
吊り荷及びその支持構造が単振り子構造または多重振り子構造を構成し、クレーン本体の台車を駆動して吊り荷を目標位置まで搬送するクレーン搬送システムにおいて、
吊り荷の振動による振れ角度を検出する振れ角センサと、
吊り荷の速度検出値及び位置検出値をフィードバックして吊り荷を前記目標位置まで搬送するための第1の操作量を演算し、かつ、前記振れ角センサから得られた前記振れ角度をフィードバックして吊り荷の振れ止めを行うための第2の操作量を演算する演算制御手段と、
前記第1の操作量及び第2の操作量を加算して前記台車に与える手段と、
を備えたことを特徴とするクレーンの振れ止め制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、
前記吊り荷及びその支持構造が二重振り子構造を構成していることを特徴とするクレーンの振れ止め制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載したクレーンの振れ止め制御装置において、
吊り荷及びその支持構造が、前記台車側の支点から吊り下げられた第1の質点と、この第1の質点から吊り下げられた吊り荷を含む第2の質点と、を有する二重振り子構造であり、
前記演算制御手段は、
前記振れ角度が、
前記支点から第1の質点までの距離と、第1の質点から第2の質点までの距離と、前記支点からの鉛直線と第1の質点との間の角度と、第1の質点からの鉛直線と第2の質点との間の角度と、を用いて表されるものとして、第2の操作量を演算することを特徴とするクレーンの振れ止め制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−66885(P2012−66885A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211026(P2010−211026)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(502367845)富士アイティ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(502367845)富士アイティ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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