説明

クロック生成回路、およびそれを搭載した電子機器

【課題】 第1クロックおよびそのクロックとの比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生する場合にて、第2クロックの周波数を一意に求めることができない場合がある。
【解決手段】 プリスケーラ22は、電圧制御発振器20の出力クロックを所定の分周比で分周する。位相比較器14は、送信側から受信した第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した基準クロックと、プリスケーラ22の出力クロックおよび送信側から受信した第2比率情報をもとに生成した帰還クロックとを比較して、それらの誤差を打ち消すための制御信号を電圧制御発振器20に供給する。探索回路66は、電圧制御発振器20の発振周波数が所定期間経過してもロックしないとき、プリスケーラ22の分周比を変更して、発振周波数がロックする分周比を探索する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLL(Phase Locked Loop)機構を備えるクロック生成回路、それを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送、地上波デジタルテレビ放送、DVDなどの大容量記録媒体が普及してきている。また、それらのデジタルデータを再生する高解像度薄型大画面液晶テレビ、プラズマテレビおよびプロジェクタなども普及してきている。これにより、本格的なデジタルホームシアターを手軽に実現できるようになってきている。このようなデジタルホームシアター向けの高速デジタルインタフェースとして、DVI(Digital Visual Interface)やHDMI(High-Definition Multimedia Interface)が規格化されている。
【0003】
HDMIは、DVIを基礎に、下位互換を保ちながら家電向けに音声やコンテンツ保護機能を追加した規格である。一本のケーブルで映像・音声・制御信号を合わせて送受信することができるため、DVIと比較してコネクタやケーブルを簡素にすることができる。
【0004】
HDMI伝送では、量子化されたデジタル情報としてオーディオ情報を送信する際にオーディオ用のクロックを送信せず、送信されるビデオクロックとの比率情報を受信側に伝送することができる。
【0005】
HDMI伝送の受信側は、送信側からの比率情報として、ACR(Audio Clock Regeneration)パケットおよびVIC(Video Information Code)に基づいて、送信側のサンプリング周波数Fsを一意に求めることができる。これにより、DVDに使用される48KHzベースまたはCDに使用される44.1KHzベースのサンプリングレートのオーディオクロック再生時に、当該サンプリング周波数Fsを用いて、オーディオ再生に必要なPLL回路の分周比を決定することができる。
【0006】
上記ACRパケットには、分周比率情報として、測定値CTS(Compliance Test Specification)およびHDMI規格により推奨される固定値Nが含まれる。当該測定値CTSは、送信側のオーディオクロックを当該固定値Nで分周した周期でビデオクロックを計数した値であり、ビデオクロックの周波数を観測した値である。VICは、ビデオ信号のフォーマットを決定するために使用される情報である。VICには、水平画素数、垂直画素数、垂直周期、縦横比、ならびに画像表示方式の種別などが記述される。画像表示方式の種別には、インタレース方式やプログレッシブ方式がある。
【特許文献1】特開2005−065093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記VICが規定の範囲外または送信側で推奨値以外の固定値Nによりパケットが生成された場合などでは、上記サンプリング周波数Fsを受信側で一意に求めることができなくなる場合がある。これに対し、例えば、当該サンプリング周波数Fsを受信側で一律に48KHzに設定しまうような処理では、送信側のサンプリング周波数Fsが48KHz以外の場合、オーディオ再生が困難になってしまう。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1クロックおよびそのクロックとの比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生する場合にて、第2クロックの周波数を一意に求めることができない場合でも、第2クロックを可及的に再生することができるクロック生成回路、それを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のクロック生成回路は、第1クロックおよびそのクロックの周波数に対する比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生するクロック生成回路であって、所定の制御信号に応じた発振周波数でクロックを出力する電圧制御発振器と、電圧制御発振器の出力クロックを所定の分周比で分周するプリスケーラと、第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した基準クロックと、プリスケーラの出力クロックおよび第2比率情報をもとに生成した帰還クロックとを比較することにより、それらの誤差を打ち消すための制御信号を電圧制御発振器に供給する位相比較器と、電圧制御発振器の発振周波数が所定期間経過してもロックしないとき、プリスケーラの分周比を変更して、発振周波数がロックする分周比を探索する探索回路と、を備える。「第1クロック」はビデオクロックであってもよく、「第2クロック」はオーディオクロックであってもよい。「第1比率情報」は、第1クロックの周波数を観測した値であってもよい。「第2比率情報」はHDMI規格により推奨される固定値であってもよい。
【0010】
この態様によると、送信側の第2クロックの周波数を一意に求めることができない場合でも、電圧制御発振器の出力クロックがロックする分周比を探索することにより、第2クロックを可及的に再生することができる。
【0011】
探索回路は、プリスケーラの分周比を変更するとき、基準クロックと帰還クロックとの大小関係を位相比較器から取得し、プリスケーラに設定する分周比を上げるか下げるか決定してもよい。探索回路は、プリスケーラの分周比を変更するとき、予め設定された複数の分周比のうち、現在の分周比に隣接する分周比に変更してもよい。ロックする分周比を早く探索することができる。
【0012】
本発明の別の態様もまた、クロック生成回路である。このクロック生成回路は、第1クロックおよびそのクロックの周波数に対する比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生するクロック生成回路であって、第1制御信号に応じた発振周波数でクロックを出力する第1電圧制御発振器と、第1電圧制御発振器の出力クロックを所定の分周比で分周する第1プリスケーラと、第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した第1基準クロックと、第1プリスケーラの出力クロックおよび第2比率情報をもとに生成した第1帰還クロックとを比較することにより、それらの誤差を打ち消すための第1制御信号を第1電圧制御発振器に供給する第1位相比較器と、第1電圧制御発振器より狭い周波数可変範囲を持ち、第2制御信号に応じた発振周波数でクロックを出力する第2電圧制御発振器と、第2電圧制御発振器の出力クロックを所定の分周比で分周する第2プリスケーラと、第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した第2基準クロックと、第2プリスケーラの出力クロックおよび第2比率情報をもとに生成した第2帰還クロックとを比較することにより、それらの誤差を打ち消すための第2制御信号を第2電圧制御発振器に供給する第2位相比較器と、第1プリスケーラの出力クロックと第2プリスケーラの出力クロックとを選択するセレクタと、第1電圧制御発振器および第2電圧制御発振器のいずれの発振周波数も所定期間経過してもロックしないとき、第1電圧制御発振器および第2電圧制御発振器の少なくとも一方の分周比を変更して、いずれかの発振周波数がロックする分周比を探索する探索回路と、を備える。探索回路は、第1電圧制御発振器および第2電圧制御発振器のいずれの発振周波数もロックする場合、第2プリスケーラの出力クロックをセレクタに選択させる。
【0013】
この態様によると、送信側の第2クロックの周波数を一意に求めることができない場合でも、電圧制御発振器の発振周波数がロックする分周比を探索することにより、第2クロックを可及的に再生することができる。また、周波数可変範囲の異なる電圧制御発振器を複数備え、周波数可変範囲の狭い発振器でロックできる場合、その発振器を選択することにより、高精度なクロックを生成することができる。
【0014】
探索回路は、予め設定された複数の分周比のうち、第1プリスケーラおよび第2プリスケーラに同一の分周比を設定すべき場合、第2プリスケーラに先に設定してもよい。高精度な電圧制御発振器の出力クロックを優先させることができる。
【0015】
第1電圧制御発振器、第1プリスケーラ、第1位相比較器、第2プリスケーラ、第2位相比較器およびセレクタは、ひとつの半導体基板上に一体集積化され、第2電圧制御発振器は、外付けされてもよい。この態様によると、セットメーカなどが高精度の電圧制御発振器を後から取り付けることもできる。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、電子機器である。この電子機器は、上述した態様のクロック生成回路と、クロック生成回路により生成したクロックを利用して、オーディオデータを再生する再生回路と、を備える。
【0017】
この態様によると、送信側の第2クロックの周波数を一意に特定できない場合でも、電圧制御発振器の出力クロックがロックする分周比を探索することにより、第2クロックを可及的に再生することができ、システム整合性の高い電子機器を実現することができる。
【0018】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1クロックおよびそのクロックとの比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生する場合にて、第2クロックの周波数を一意に求めることができない場合でも、第2クロックを可及的に再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態におけるクロック生成回路100の主な構成要素を示す図である。本実施形態におけるクロック生成回路100は、HDMI受信デバイスなどに搭載される。上述したようにHDMI伝送では、オーディオクロックを送信せず、ビデオクロックとそのクロックとの比率情報を受信側に伝送する。この伝送方法は、伝送中の不正コピーを防止することにも資する。本実施形態におけるクロック生成回路100は、HDMI伝送のビデオクロックとオーディオクロックのように、第1クロックおよびそのクロックとの比率情報をもとに、第1クロックと周波数の異なる第2クロックを生成する。
【0021】
以下、HDMI伝送を例に説明する。HDMI伝送の送信側は、TMDS(Transition Minimized Differential Signaling)というシリアル転送方式を利用して、ビデオクロックおよびACR(Audio Clock Regeneration)パケットを受信側に送信する。ACRパケットには、分周比率情報として測定値CTS、HDMI規格により推奨される固定値Nが含まれる。固定値Nは、送信側のMPU(Micro Processing Unit)コアにより設定されてもよい。測定値CTSおよび固定値Nは、それぞれ20ビットのデジタルデータで伝送される。
【0022】
S/PDIF(Sony Philips Digital Interface)規格でオーディオ信号を伝送する場合、オーディオ信号をサンプリングするための基準周波数は128Fsを用いる。HDMI伝送の送信側で、128FsをN分周するときの固定値Nは、ビデオクロックの測定周期が約1ms程度になるような値が選択される。HDMI伝送の送信側は、128Fsを測定基準周波数として約1ms周期で、ビデオクロックの周波数測定を行う。当該測定値CTSは、HDMI伝送の受信側に測定周期毎に通知される。この場合、HDMI伝送の受信側は、伝送されてきたビデオクロックと上記測定値をもとに128Fsを再生する。なお、本実施形態では、VICが規定範囲外または受信できなかったなどにより、サンプリング周波数Fsを一意に特定できない状況を例に説明する。
【0023】
以上を前提に本実施形態におけるクロック生成回路100の詳細について説明する。本クロック生成回路100は、内部PLL回路と2系統の外部発振器を備える。内部PLL回路は、第1分周回路12、第1位相比較器14、第1ループフィルタ18、第1電圧制御発振器(VCO;Voltage Controlled Oscillator)20、第1プリスケーラ22および第2分周回路24を備える。外部発振器は、第3分周回路26、第2位相比較器28、第1バッファ32、第2バッファ34、第2ループフィルタ36、第3ループフィルタ38、第2電圧制御発振器40、第3電圧制御発振器42、第3バッファ44、第4バッファ46、第1セレクタ48、第2プリスケーラ50、第4分周回路52および第2セレクタ54を備える。
【0024】
この内、第1バッファ32、第2ループフィルタ36、第2電圧制御発振器40および第3バッファ44は、第1外部発振器を構成する。第2バッファ34、第3ループフィルタ38、第3電圧制御発振器42および第4バッファ46は、第2外部発振器を構成する。第3分周回路26、第2位相比較器28、第1セレクタ48、第2プリスケーラ50、第4分周回路52および第2セレクタ54は、両系統に共通に使用される。
【0025】
なお、本クロック生成回路100を半導体基板上に一体集積化して構成する場合、第2ループフィルタ36、第3ループフィルタ38、第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42は、チップ外に着脱可能な構成にしてもよい。セットメーカは、内部PLL回路に加えて、外部発振器を任意に付加することができる。特に、高音質を求めるオーディオ機器メーカは、内部PLL回路を構成する第1電圧制御発振器20よりジッタの小さい高精度な電圧制御発振器を実装する場合も多い。その場合、当該電圧制御発振器の制御感度からその前段のループフィルタも、当該セットメーカが実装するとよい。
【0026】
まず、内部PLL回路について説明する。第1分周回路12は、伝送されたきたビデオクロックVCLKおよび測定値CTSを利用して、第1位相比較器14に供給すべき基準クロックを生成する。具体的には、当該ビデオクロックを当該測定値CTSで分周する。なお、当該ビデオクロックを、当該測定値CTSを2(nは自然数)で除算した値で分周してもよい。この測定値CTSを2で除算する処理の詳細は後述する。
【0027】
第1位相比較器14は、第1分周回路12から入力される基準クロックの周波数と、後述する第2分周回路24から入力される帰還クロックの周波数とを比較し、それらの差分を打ち消すための制御電圧を出力する。第1ループフィルタ18は、第1位相比較器14の出力した制御電圧に含まれる高周波成分や雑音を取り除く。また、第1ループフィルタ18は、その時定数などにより内部PLL回路の応答性を決定する。第1ループフィルタ18には、ローパスフィルタを使用することができる。ローパスフィルタは、抵抗と容量で構成されるパッシブフィルタでもよいし、さらにオペアンプを使用したアクティブフィルタを用いてもよい。
【0028】
第1電圧制御発振器20は、上記制御電圧に応じて、発振周波数が変化する発振器である。第1電圧制御発振器20は、リングオシレータまたはRCオシレータを用いることができる。リングオシレータは、100〜200MHz程度の周波数で発振し、第1電圧制御発振器20の出力クロックは、それが分周されて、22MHzから25MHz程度となる。第1電圧制御発振器20の出力クロックは、第1プリスケーラ22に入力される。
【0029】
第1プリスケーラ22は、後述する探索回路66から設定される値で第1電圧制御発振器20の出力クロックを分周する。本実施形態では、1/1、1/2、1/4および1/6のいずれかの値が設定される。第1プリスケーラ22の出力クロックは、第2セレクタ54および第2分周回路24に入力される。
【0030】
第2セレクタ54は、内部PLL回路の出力クロックである第1プリスケーラ22の出力クロックと、外部発振器の出力クロックである第2プリスケーラ50の出力クロックとを、後述する探索回路66からの制御信号に応じて選択的に出力する。第2セレクタ54の出力クロックは、本クロック生成回路100の出力クロックとなり、S/PDIF規格を採用した場合、128FsのオーディオクロックACLKとなる。この場合、4MHz〜24.6MHz程度の周波数のクロックを出力することになる。
【0031】
第2分周回路24は、第1プリスケーラ22の出力クロックおよび伝送されてきた固定値Nを利用して、第1位相比較器14に出力する帰還クロックを生成する。具体的には、当該第1プリスケーラ22の出力クロックを当該固定値Nで分周する。なお、当該第1プリスケーラ22の出力クロックを、当該固定値Nを2(nは自然数)で除算した値で分周してもよい。この固定値Nを2で除算する処理の詳細は後述する。
【0032】
このようなPLL回路の出力クロックの周波数をfo、ビデオクロックVCLKの周波数をfv、第1分周回路12の分周比をN1、第1プリスケーラ22の分周比をN2および第2分周回路24の分周比をN3とすると、以下の式1が成り立つ。
fo=fv÷N1×N2×N3 …(式1)
したがって、第1分周回路12の分周比および第2分周回路24の分周比を同じ値で除算しても、出力クロックの周波数は変化しない。
【0033】
このようなPLL回路にて、第1位相比較器14に入力されるべき基準クロックの周波数(fv÷N1)は、音声帯域外に設定されることが好ましい。上述したように、HDMI伝送では上記測定値CTSが約1msごとに送信されてくる。よって、ビデオクロックVCLKを当該測定値CTSでそのまま分周すると、当該基準クロックの周波数が音声帯域の中央付近に設定されてしまう。
【0034】
そこで、当該基準クロックの周波数をHDMI規格の基準周波数の32倍、すなわち音声帯域外を満たす2のべき乗の最小値に設定してもよい。なお、音声帯域外という条件を満たせば、2のべき乗の最小値に限らず64倍などでもよい。また、同条件を満たせば、2のべき乗以外の値で乗算して、上記基準クロックの周波数を高くしてもよい。また、第1ループフィルタ18にて実装可能なRC時定数に制約がある場合、1024倍など、さらに大きな値に設定してもよい。
【0035】
例えば、上記基準クロックの周波数を1024倍にする場合、第1分周回路12は上記測定値CTSを1024で割った値で上記ビデオクロックVCLKを分周する。すなわち、分周比を測定値CTS/1024に設定する。上記測定値CTSは送信側から20ビットのデジタルデータで送信されてくるため、第1分周回路12は下位10ビット分のデータを取り除き、上位10ビット分のデータを分周比に設定する。すなわち、当該20ビットのデジタルデータを下位方向に10ビット分シフトした状況を作り出す。第2分周回路24についても同様である。
【0036】
次に、外部発振器について説明する。外部発振器の構成および動作は、内部PLL回路のそれらと基本的に同様である。以下、相違点を説明する。第2位相比較器28の出力制御電圧は、それぞれ第1バッファ32および第2バッファ34を介して、第2ループフィルタ36および第3ループフィルタ38に並列に入力される。第2ループフィルタ36および第3ループフィルタ38はそれぞれ異なる時定数を持つ。それらを相互に分離するため、別個にバッファを設ける。
【0037】
第2電圧制御発振器40は、44.1KHz系として用いられる。第2電圧制御発振器40は、例えば、22.5792KHzの周波数で発振するクリスタルオシレータを用いることができる。第3電圧制御発振器42は、48KHz系として用いられる。第3電圧制御発振器42は、例えば、24.576KHzの周波数で発振するクリスタルオシレータを用いることができる。
【0038】
第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42の出力クロックは、それぞれ第3バッファ44および第4バッファ46を介して第1セレクタ48に入力される。第1セレクタ48は、44.1KHz系の第2電圧制御発振器40の出力クロックと、48KHz系の第3電圧制御発振器42の出力クロックとを、後述する探索回路66からの制御信号に応じて選択的に出力する。
【0039】
第1パルス幅判定回路16は、第1位相比較器14の出力パルス幅を測定し、そのパルス幅が所定の基準値より広いか狭いかを判定し、その結果を後述する第1ロックアップ判定回路56に出力する。例えば、そのパルス幅が基準値より広い場合、ハイレベルの信号を出力し、狭い場合、ローレベルの信号を出力する。
【0040】
また、当該パルス幅が基準値より広く、内蔵PLL回路がロックしていないと判定される場合、第1分周回路12から供給される基準周波数に対して第2分周回路24からの帰還周波数が高いか低いかを判定し、その結果を後述する第1ロックアップ判定回路56に出力してもよい。例えば、帰還周波数が基準周波数より高い場合、ハイレベルの信号を出力し、低い場合、ローレベルの信号を出力してもよい。
【0041】
第2位相比較器28も第1位相比較器14と同様に、第2位相比較器28の出力パルス幅を測定し、そのパルス幅が所定の基準値より広いか狭いかを判定し、その結果を後述する第2ロックアップ判定回路58に出力する。帰還周波数が基準周波数に対して高いか低いかについても同様に第2ロックアップ判定回路58に出力してもよい。
【0042】
図2は、本実施形態におけるクロック生成回路100の探索回路66を中心とした構成要素を示す図である。第1ロックアップ判定回路56は、第1パルス幅判定回路16から入力される、パルス幅と基準値との関係を示す信号および所定の時間定数を基に内部PLL回路がロックしているか否かを判定する。ここで、所定の時間定数は、内部PLL回路の動特性、すなわち、当該PLL回路がロックアップするまでの時間から決定される。当該時間定数は第1ループフィルタ18を含めた応答時間にも依存する。
【0043】
第1ロックアップ判定回路56は、第1パルス幅判定回路16からパルス幅が基準値より狭いことを示す信号、例えばローレベルの信号を受信すると、内蔵するカウンタのカウントアップを開始する。パルス幅が基準値より狭いことを示す信号、例えばハイレベルの信号を受信すると、当該カウンタをリセットする。上記時間定数を超える時間、パルス幅が基準値より狭いことを示す信号が持続すると、内部PLL回路がロックしたと判定する。第1ロックアップ判定回路56は、内部PLL回路がロックしているか否かを示す信号を探索回路66に出力する。なお、上記カウントのリセット制御は、探索回路66から行われてもよい。
【0044】
また、第1ロックアップ判定回路56は、内部PLL回路がロックしていない場合で、第1パルス幅判定回路16から帰還周波数が基準周波数に対して高いか低いかを示す信号を受信した場合、その信号も探索回路66に出力する。
【0045】
第2ロックアップ判定回路58も、第1ロックアップ判定回路56と同様に、パルス幅と基準値との関係を示す信号および所定の時間定数を基に外部発振器がロックしているか否かを判定する。
【0046】
着信判定回路60は、送信側のHDMIデバイスからビデオクロックが本クロック生成回路100に着信しているか否かを判定する。また、送信側のHDMIデバイスからACRパケットが着信している否かを判定する。ACRパケットには、第1分周回路12および第3分周回路26に供給されるべき測定値CTS、ならびに第2分周回路24および第4分周回路52に供給されるべき固定値Nが含まれる。着信判定回路60は、ビデオクロックおよびACRパケットの着信の有無を探索回路66に通知する。
【0047】
外部VCO有無判定回路62は、第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42の片方または両方が装着されている否かを判定する。上述したように第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42は、セットメーカなどが任意に着脱できるものである。外部VCO有無判定回路62は、それらの着脱の有無を探索回路66に通知する。
【0048】
設定値入力回路64は、PLL回路が遷移可能なサンプリング周波数Fsを設定するため、第1プリスケーラ22および第2プリスケーラ50のとるべき値を設定する。その値は、探索回路66に入力される。
【0049】
探索回路66は、シーケンサで構成することができる。探索回路66は、制御対象とするPLL回路がロックしているか否かを判定して、そのPLL回路中のプリスケーラの設定値、すなわち分周比を変更する。この制御により、送信側のサンプリング周波数Fsを常時、追跡する。
【0050】
より具体的には、探索回路66は、第1プリスケーラ22の分周比を変更して、内部PLL回路がロックするよう制御し、第2プリスケーラ50の分周比を変更して、外部発振器がロックするよう制御する。また、探索回路66は、第1セレクタ48および第2セレクタ54の切替制御を行う。
【0051】
探索回路66は、外部VCO有無判定回路62からの通知により、第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42が装着されていない場合、内部PLL回路側の経路を常に選択するよう第2セレクタ54に指示する。また、外部VCO有無判定回路62からの通知により、第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42のいずれかのみが装着されている場合、装着されている側の経路を常に選択するよう第1セレクタ48に指示する。
【0052】
以下、第1プリスケーラ22、第2プリスケーラ50、第1セレクタ48および第2セレクタ54の詳細な制御について説明する。前提として、第1プリスケーラ22および第2プリスケーラには、1/1、1/2、1/4および1/6のいずれかの値が設定されるものとする。図1の説明では、サンプリング周波数Fsの128倍の周波数を出力クロックとしているため、第2電圧制御発振器40は、192KHzの128倍の周波数を、第3電圧制御発振器42は、176.4KHzの128倍の周波数を発振するものとした。以下では、128倍を無視し、サンプリング周波数Fs自体の数値で説明する。
【0053】
すなわち、48KHz系の外部発振器では、192KHz(22.5792MHz/128)を第2プリスケーラ50で1/2、1/4または1/6にして、96KHz、48KHzまたは32KHzを生成可能とする。44.1KHz系の外部発振器では、176.4KHz(24.576MHz/128)を第2プリスケーラ50で1/2または1/4にして、88.2KHzまたは44.1KHzを生成可能とする。これに対し、内部PLL回路に用いられる第1電圧制御発振器20は、広範囲の周波数で発振する。一般に、電圧制御発振器の周波数可変範囲とクロック精度は、トレードオフの関係となる。周波数可変範囲が広くなると、それだけ特定の発振周波数に維持することが難しく、バラツキが生じやすい。第1電圧制御発振器20は、第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42よりクロック精度が低いが、低コストで広範囲の周波数で発振する。
【0054】
図3は、内部PLL回路でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42が装着されない場合や、装着されていても使用しない場合である。内部PLL回路に用いられる第1電圧制御発振器20は、広範囲の周波数で発振することができるため、48KHz系および44.1KHz系のいずれのサンプリング周波数Fsにもロックさせることができる。
【0055】
図3にて、例えば、内部PLL回路が第3ステータスST6に位置している、すなわち第1プリスケーラ22に1/4が設定されていると、送信側のサンプリング周波数Fsが48KHzまたは44.1KHzであれば、PLL回路がロックする。ロックしない場合、探索回路66は、第2ステータスST4または第4ステータスST8に遷移させるため、第1プリスケーラ22の設定値を1/2または1/6に変更する。
【0056】
その際、探索回路66は、第1パルス幅判定回路16から帰還周波数が基準周波数に対して高いか低いかを示す信号を取得できる場合、その信号を参照して、周波数を上げる方向に遷移するか、下げる方向に遷移するかを決定する。このような遷移を繰り返し、PLL回路がロックするステータスSTを特定し、送信側のサンプリング周波数Fsを特定する。
【0057】
第1ステータスST2に遷移、すなわち第1プリスケーラ22に1/1を設定してもロックしない場合で、第1パルス幅判定回路16から取得できる信号が周波数を上げる方向に遷移すべきことを示している場合、次のように処理する。すなわち、所定の期間第1ステータスST2に滞在し、それでもロックしない場合、48KHzに固定する。
【0058】
反対に、第4ステータスST8に遷移、すなわち第1プリスケーラ22に1/6を設定してもロックしない場合で、第1パルス幅判定回路16から取得できる信号が周波数を下げる方向に遷移すべきことを示している場合も、次のように処理する。すなわち、所定の期間第4ステータスST8に滞在し、それでもロックしない場合、48KHzに固定する。
【0059】
図4は、内部PLL回路および48KHz系の外部発振器でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。第2電圧制御発振器40が装着されている場合で、かつ第3電圧制御発振器42が装着されない場合や、装着されていても使用しない場合である。
【0060】
図4にて、実線の矢印は周波数を上げる方向への遷移を示し、点線の矢印は周波数を下げる方向への遷移を示す。図4の左側が第2電圧制御発振器40を備える48KHz系の外部発振器のステータスSTを示し、右側が第1電圧制御発振器20を備える44.1KHz系の内部PLL回路のステータスSTを示す。第2電圧制御発振器40の周波数可変範囲が第1電圧制御発振器20より狭いため、現在のステータスSTから遷移させる際、第2電圧制御発振器40への遷移を優先させる。例えば、探索回路66が第2セレクタ54に外部発振器側の経路を選択させ、第2プリスケーラ50に1/4を設定している場合、すなわち48KHzにロックさせようと第5ステータスST20に滞在したが、ロックしない場合、次のように処理する。
【0061】
周波数を上げる方向に遷移する場合、第5ステータスST20の48KHzに一番近い第4ステータスST18、すなわち第1電圧制御発振器20を備える内部PLL回路の88.2KHzに遷移することが考えられる。上述したように、第1電圧制御発振器20は広範囲の周波数にロックし、サンプリング周波数Fsが88.2KHzの場合だけでなく、96KHzの場合もロックする。この点、第2電圧制御発振器40が装着されている場合、第2電圧制御発振器40のほうが第1電圧制御発振器20より精度が高いため、できるだけ外部発振器を用いてロックさせたい。
【0062】
そこで、探索回路66は、第5ステータスST20の48KHzから、第3ステータスST16、すなわち第2電圧制御発振器40を備える外部発振器の96KHzに遷移させる。第2セレクタ54に外部発振器側の経路を選択させ、第2プリスケーラ50に1/2を設定する。
【0063】
また、探索回路66が第2セレクタ54に内部PLL回路側の経路を選択させ、第1プリスケーラ22に1/2を設定している場合、すなわち88.2KHzにロックさせようと第6ステータスST22に滞在したが、ロックしない場合、第1ステータスST12、すなわち第2電圧制御発振器40を備える外部発振器の192KHzに遷移させる。第1電圧制御発振器20を備える内部PLL回路が第6ステータスST22にロックしない場合、96KHzにもロックしないことになるため、第3ステータスST16には遷移しない。第2ステータスST14の周波数範囲に第1ステータスST12の周波数が含まれる場合、外部発振器を優先させるため、第1ステータスST12に遷移させる。
【0064】
次に、周波数を下げる方向に遷移する場合、通常通り、第5ステータスST20の周波数に一番近い第6ステータスST22、すなわち第1電圧制御発振器20を備える内部PLL回路の44.1KHzに遷移させる。第1プリスケーラ22に1/2を設定して、第2セレクタ54に内部PLL回路側の経路を選択させても、第1電圧制御発振器20は、サンプリング周波数Fsが32KHzの場合、ロックしない。第6ステータスST22の周波数範囲が32KHzに及ばないためである。このように、第1プリスケーラ22および第2プリスケーラ50に同じ分周比を設定する場合、外部発振器を優先させるため、第1プリスケーラ22に先に分周比を設定する。
【0065】
第1プリスケーラ22に1/1を設定して、第1ステータスST12に所定期間滞在してもロックしない場合、および第1プリスケーラ22に1/6を設定して、第7ステータスST24に所定期間滞在してもロックしない場合の処理は、図3の内部PLL回路でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の処理と同様である。
【0066】
図5は、内部PLL回路および44.1Hz系の外部発振器でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。第3電圧制御発振器42が装着されている場合で、かつ第2電圧制御発振器40が装着されない場合や、装着されていても使用しない場合である。
【0067】
図5も、実線の矢印は周波数を上げる方向への遷移を示し、点線の矢印は周波数を下げる方向への遷移を示す。第6ステータスST42と第7ステータスST44との間は両方向に遷移する。図5の左側が第1電圧制御発振器20を備える48KHz系の内部PLL回路のステータスSTを示し、右側が第3電圧制御発振器42を備える44.1KHz系の外部発振器のステータスSTを示す。第3電圧制御発振器42の周波数可変範囲が第1電圧制御発振器20より狭いため、現在のステータスSTから遷移させる際、第3電圧制御発振器42への遷移を優先させる。例えば、探索回路66が第2セレクタ54に外部発振器側の経路を選択させ、第2プリスケーラ50に1/2を設定している場合、すなわち88.2KHzにロックさせようと第4ステータスST38に滞在したが、ロックしない場合、次のように処理する。
【0068】
周波数を下げる方向に遷移する場合、第4ステータスST38の周波数に一番近い第5ステータスST40、すなわち第1電圧制御発振器20を備える内部PLL回路の48KHzに遷移することが考えられる。上述したように、第1電圧制御発振器20は広範囲の周波数にロックし、サンプリング周波数Fsが48KHzの場合だけでなく、44.1KHzの場合もロックする。この点、第3電圧制御発振器42が装着されている場合、第3電圧制御発振器42のほうが第1電圧制御発振器20より精度が高いため、できるだけ外部発振器を用いてロックさせたい。
【0069】
そこで、探索回路66は、第4ステータスST38から、第6ステータスST42、すなわち第3電圧制御発振器42を備える外部発振器の44.1KHzに遷移させる。第2セレクタ54に外部発振器側の経路を選択させ、第2プリスケーラ50に1/4を設定する。
【0070】
また、探索回路66が第2セレクタ54に内部PLL回路側の経路を選択させ、第1プリスケーラ22に1/2を設定している場合、すなわち96KHzにロックさせようと第3ステータスST36に滞在したが、ロックしない場合、第6ステータスST42に遷移させる。第1電圧制御発振器20を備える内部PLL回路が第3ステータスST36にロックしない場合、88.2KHzにもロックしないことになるため、第4ステータスST38には遷移しない。第5ステータスST40の周波数範囲に第6ステータスST42の周波数が含まれる場合、外部発振器を優先させるため、第6ステータスST42に遷移させる。
【0071】
次に、周波数を上げる方向に遷移する場合、通常通り、第4ステータスST38の周波数に一番近い第3ステータスST36に遷移させる。第1プリスケーラ22に1/1を設定して、第2セレクタ54に内部PLL回路側の経路を選択させても、第1電圧制御発振器20は、サンプリング周波数Fsが96KHzの場合、ロックしない。第1ステータスST32の周波数範囲が96KHzに及ばないためである。このように、第1プリスケーラ22および第2プリスケーラ50に同じ分周比を設定する場合、外部発振器を優先させるため、第2プリスケーラ50に先に分周比を設定する。
【0072】
第2プリスケーラ50に1/1を設定して、第1ステータスST32に所定期間滞在してもロックしない場合、および第2プリスケーラ50に1/6を設定して、第7ステータスST44に所定期間滞在してもロックしない場合の処理は、図3の内部PLL回路でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の処理と同様である。
【0073】
図6は、48KHz系の外部第1PLL回路および44.1KHz系の第2外部発振器およびサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。第2電圧制御発振器40および第3電圧制御発振器42が装着されているである。
【0074】
図6にて、隣接する各ステータスST間は両方向に遷移する。各ステータスST間にて、第1外部発振器の発振周波数と、第2外部発振器の発振周波数とが重なることがないため、遷移先候補が二つになることはない。よって、周波数を上げる方向に遷移する場合も、下げる方向に遷移する場合も、最も近い周波数のステータスに順に遷移する。
【0075】
第2プリスケーラ50に1/1を設定して、第1ステータスST52に所定期間滞在してもロックしない場合、および第2プリスケーラ50に1/6を設定して、第7ステータスST64に所定期間滞在してもロックしない場合の処理は、図3の内部PLL回路でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の処理と同様である。
【0076】
以上の説明から明らかなように本実施形態によれば、HDMI伝送の受信側は、送信側から上記VICが規定の範囲内で得られない場合でも、ビデオクロックおよび上記ACRパケットから送信側のサンプリング周波数Fsを探索することができる。これに対し、48KHzに強制的にロックさせる処理ではCDを再生することができず、44.1KHzにロックさせる処理ではDVDを再生することができない。以下、上記VICが得られない場合でもサンプリング周波数Fsを探索することができるメカニズムを具体例を挙げて説明する。
【0077】
図7は、HDMI伝送の送信側デバイスが送出する固定値Nおよび測定値CTSの一例を示す図である。図7(a)は、サンプリング周波数Fs、VIC、ビデオクロック(表中PixelCLKと表記)、固定値Nおよびプリスケーラの設定値(表中Nprsと表記)の関係を示す。表の1行目はサンプリング周波数Fsを示し、2行目はプリスケーラの設定値を示す。表の1列目はVICを示し、2列目はビデオクロックを示す。3行目および3列目以降は、固定値Nを示す。
【0078】
図7(b)は、サンプリング周波数Fs、VIC、ビデオクロック(表中PixelCLKと表記)および測定値CTSの関係を示す。表の1行目はサンプリング周波数Fsを示す。表の1列目はVICを示し、2列目はビデオクロックを示す。2行目および3列目以降は測定値CTSを示す。このようなシステムにて、固定値N、測定値CTSおよびVICを正常に受信できれば、送信側のサンプリング周波数Fsを一意に特定することができる。
【0079】
これに対して、規定範囲内のVICを受信できない場合、送信側のサンプリング周波数Fsを一意に特定することができない。受信側のPLL回路を構成する電圧制御発振器は、当該サンプリング周波数Fsを特定できないと、送信側のオーディオクロックを再生させることができない。本実施形態では、電圧制御発振器の出力クロックをプリスケーラで分周して、オーディオクロックを生成する構成であるため、上記サンプリング周波数Fsに応じて、当該プリスケーラの設定値を変更する必要がある。
【0080】
測定値CTSおよび固定値Nは、複数種のサンプリング周波数Fsで同一値をとる場合があり、その場合、サンプリング周波数Fsを特定することができない。例えば、固定値Nが17836、測定値CTSが234375の場合、サンプリング周波数が44.1KHzか88.2KHzのいずれであるか特定することができない。ここで、仮にVICが得られれば、いずれかに特定することができる。VICが得られない場合、プリスケーラの設定値を変更していき、PLL回路がロックする設定値を探索する。これにより、VICが得られない場合でも、サンプリング周波数を一意に特定することができる。
【0081】
また、本実施形態によれば、プリスケーラの設定値を探索する場合、隣接する値に遷移することにより、ループフィルタの入力電圧の変動を抑えることができ、PLL回路がロックするか否かを判定するための時間を短縮することができる。
【0082】
また、周波数可変範囲の狭い電圧制御発振器も実装可能なことから、高音質なオーディオ再生にも対応することができる。また、プリスケーラの設定値を探索する処理をシーケンサで自動的に実行することにより、ソフトウェア処理を増大させずにその探索処理を実現することができる。もちろん、ソフトウェア処理に余裕があれば、シーケンサを使用せず、ホストマイコンで実行してもよい。
【0083】
次に、上記実施形態におけるクロック生成回路100を搭載した電子機器200について説明する。図8は、クロック生成回路100を搭載した電子機器200の構成を示す図である。電子機器200は、テレビなどのセット機器が該当し、HDMI伝送により送信されてきたビデオデータおよびオーディオデータを再生する機能を備える。図8では、オーディオデータADATAを再生するブロックのみを描いている。
【0084】
電子機器200は、クロック生成回路100、オーディオデータ再生回路210、オーディオデータ処理ブロック220およびスピーカ230を備える。オーディオデータ再生回路210は、上記実施形態におけるクロック生成回路100により生成されたクロックにしたがい、送信されてきたオーディオデータADATAを再生する。オーディオデータ処理ブロック220は、再生されたオーディオデータADATAに対し、デジタル/アナログ変換や各種エフェクト処理などを施し、スピーカ230に出力する。
【0085】
この電子機器200は上記実施形態におけるクロック生成回路100を搭載しているため、規定範囲内のVICが得られない場合でも、送信側のサンプリング周波数Fsを探索することができる。よって、HDMI規格では規定していない送受信を含むシステム整合性を高めることができ、より完全なシステム設計ができる。
【0086】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0087】
上述した実施形態では、規定範囲内のVICが得られない場合を説明した。この点、規定範囲内のVICは得られるが、規定範囲内の固定値Nまたは測定値CTSが得られない場合も、図7を参照すれば、サンプリング周波数Fsを探索することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態におけるクロック生成回路の主な構成要素を示す図である。
【図2】本実施形態におけるクロック生成回路のプリスケーラ制御回路を中心とした構成要素を示す図である。
【図3】内部PLL回路でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。
【図4】内部PLL回路および48KHz系の外部発振器でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。
【図5】内部PLL回路および44.1Hz系の外部発振器でサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。
【図6】48KHz系の外部第1PLL回路および44.1KHz系の第2外部発振器およびでサンプリング周波数Fsを追跡する場合の遷移図である。
【図7】HDMI伝送の送信側デバイスが送出する固定値Nおよび測定値CTSの一例を示す図である。
【図8】クロック生成回路を搭載した電子機器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
12 第1分周回路、 14 第1位相比較器、 16 第1パルス幅判定回路、 18 第1ループフィルタ、 20 第1電圧制御発振器、 22 第1プリスケーラ、 24 第2分周回路、 26 第3分周回路、 28 第2位相比較器、 30 第2パルス幅判定回路、 36 第2ループフィルタ、 38 第3ループフィルタ、 40 第2電圧制御発振器、 42 第3電圧制御発振器、 48 第1セレクタ、 50 第2プリスケーラ、 52 第4分周回路、 54 第2セレクタ、 56 第1ロックアップ判定回路、 58 第2ロックアップ判定回路、 60 着信判定回路、 62 外部VCO有無判定回路、 64 設定値入力回路、 66 探索回路、 100 クロック生成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロックおよびそのクロックの周波数に対する比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生するクロック生成回路であって、
所定の制御信号に応じた発振周波数でクロックを出力する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力クロックを所定の分周比で分周するプリスケーラと、
前記第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した基準クロックと、前記プリスケーラの出力クロックおよび第2比率情報をもとに生成した帰還クロックとを比較することにより、それらの誤差を打ち消すための制御信号を前記電圧制御発振器に供給する位相比較器と、
前記電圧制御発振器の発振周波数が所定期間経過してもロックしないとき、前記プリスケーラの分周比を変更して、前記発振周波数がロックする分周比を探索する探索回路と、
を備えることを特徴とするクロック生成回路。
【請求項2】
前記探索回路は、前記プリスケーラの分周比を変更するとき、前記基準クロックと前記帰還クロックとの大小関係を前記位相比較器から取得し、前記プリスケーラに設定する分周比を上げるか下げるか決定することを特徴とする請求項1に記載のクロック生成回路。
【請求項3】
前記探索回路は、前記プリスケーラの分周比を変更するとき、予め設定された複数の分周比のうち、現在の分周比に隣接する分周比に変更することを特徴とする請求項1または2に記載のクロック生成回路。
【請求項4】
ひとつの半導体基板上に一体集積化されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクロック生成回路。
【請求項5】
第1クロックおよびそのクロックの周波数に対する比率情報を所定の伝送規格にしたがい受信して、送信側で利用されている第2クロックを受信側で再生するクロック生成回路であって、
第1制御信号に応じた発振周波数でクロックを出力する第1電圧制御発振器と、
前記第1電圧制御発振器の出力クロックを所定の分周比で分周する第1プリスケーラと、
前記第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した第1基準クロックと、前記第1プリスケーラの出力クロックおよび第2比率情報をもとに生成した第1帰還クロックとを比較することにより、それらの誤差を打ち消すための第1制御信号を前記第1電圧制御発振器に供給する第1位相比較器と、
前記第1電圧制御発振器より狭い周波数可変範囲を持ち、第2制御信号に応じた発振周波数でクロックを出力する第2電圧制御発振器と、
前記第2電圧制御発振器の出力クロックを所定の分周比で分周する第2プリスケーラと、
前記第1クロックおよび第1比率情報をもとに生成した第2基準クロックと、前記第2プリスケーラの出力クロックおよび第2比率情報をもとに生成した第2帰還クロックとを比較することにより、それらの誤差を打ち消すための第2制御信号を前記第2電圧制御発振器に供給する第2位相比較器と、
前記第1プリスケーラの出力クロックと前記第2プリスケーラの出力クロックとを選択するセレクタと、
前記第1電圧制御発振器および前記第2電圧制御発振器のいずれの発振周波数も所定期間経過してもロックしないとき、前記第1電圧制御発振器および前記第2電圧制御発振器の少なくとも一方の分周比を変更して、いずれかの発振周波数がロックする分周比を探索する探索回路と、を備え、
前記探索回路は、前記第1電圧制御発振器および前記第2電圧制御発振器のいずれの発振周波数もロックする場合、前記第2プリスケーラの出力クロックを前記セレクタに選択させることを特徴とするクロック生成回路。
【請求項6】
前記探索回路は、予め設定された複数の分周比のうち、前記第1プリスケーラおよび前記第2プリスケーラに同一の分周比を設定すべき場合、前記第2プリスケーラに先に設定することを特徴とする請求項5に記載のクロック生成回路。
【請求項7】
前記第1電圧制御発振器、前記第1プリスケーラ、前記第1位相比較器、前記第2プリスケーラ、前記第2位相比較器および前記セレクタは、ひとつの半導体基板上に一体集積化され、
前記第2電圧制御発振器は、外付けされることを特徴とする請求項5から6のいずれかに記載のクロック生成回路。
【請求項8】
前記第1クロックは、ビデオクロックであり、
前記第2クロックは、オーディオクロックであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のクロック生成回路。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のクロック生成回路と、
前記クロック生成回路により生成したクロックを利用して、オーディオデータを再生する再生回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−88898(P2007−88898A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−276089(P2005−276089)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】