説明

クーラ付全閉型ブラシレス回転電機

【課題】回転電機本体と全閉型交流励磁機に十分な風量の冷却空気を供給、循環でき、長期信頼性に優れたクーラ付全閉型ブラシレス回転電機を提供する。
【解決手段】クーラ付全閉型ブラシレス回転電機本体と、この回転電機本体に設けられたファンと、回転電機本体の冷却空気により冷却される全閉型交流励磁機と、前記回転電機本体と前記全閉型交流励磁機を搭載する共通ベースとからなるクーラ付全閉型ブラシレス回転電機において、
前記全閉型交流励磁機は送風機構を備え、
回転電機本体から全閉型交流励磁機へ冷却空気を導く給気通風路と、前記全閉型交流励磁機から回転電機本体へ冷却空気を戻す排気通風路とは前記共通ベースに形成され、
前記排気通風路は、前記回転電機本体のロータ軸方向に沿って延びると共に、該通風路の排気口は前記ファンの吸い込み口側に対向して開口したことを特徴とするクーラ付全閉型ブラシレス回転電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラ付全閉型ブラシレス回転電機の冷却用通風路の配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クーラ付全閉型ブラシレス回転電機は、外気に粉塵、油滴、蒸気など回転電機を構成する部品に悪影響をおよぼす恐れのある物質が含まれている場合など、冷却のために外気を取り込むことができない環境に設置するため、回転電機を構成する部品は本体フレームによって外気に対して密閉されており、本体フレーム内に搭載されたクーラで冷却された冷却空気を回転電機内部に循環させている。また、全閉型交流励磁機も同様の理由により外気を取り込まず、クーラ付全閉型ブラシレス回転電機から冷却空気を分流し、これを全閉型交流励磁機に導入することで冷却している。
【0003】
従来のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機には、全閉型交流励磁機の各部を冷却するための通風路を備えたものがある(特許文献1)。
以下、図3に基づいて、従来のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機について説明する。
【0004】
従来のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機は、共通ベース1上にステータ鉄心2、ベアリング3、および、全閉型交流励磁機4を設置している。円筒形状を成しているステータ鉄心2の内側空間部にはロータコイル5を備えたロータ鉄心6が回転可能となるようにロータ7、および、ベアリング3によって保持されている。
【0005】
ここで、ステータ鉄心2、および、ロータ鉄心6、ステータコイル8、ロータコイル5等の回転電機を構成する部品を本体フレーム9に納めたものを回転電機本体10と呼ぶ。回転電機本体10内部のロータ7にはファン11が取り付けられ、ロータ7が回転することでファン11が回転し、ファン11は本体フレームのロータ軸端部側からクーラ13で冷却された冷却空気を吸い込み、回転電機本体10の中心部に向かって吐き出す。このファン11の作用によって冷却空気が、エアギャップ12およびステータ鉄心2に設けられた通風ダクト2aを通りながら、回転電機本体10各部の熱を奪ってステータコイル8、および、ロータコイル5を冷却している。
【0006】
各部の熱を奪うことで温度が上昇した冷却空気はクーラ13によって再び冷却されたのちファン手前部屋9aを通ってファン11の吸い込み側に戻る。
【0007】
次に、全閉型交流励磁機4の冷却通風について説明する。
全閉型交流励磁機4は界磁鉄心14、および、界磁コイル15および、ロータ7の軸端に取り付けられた電機子鉄心16、および、電機子鉄心16に取り付けられた電機子コイル17、整流器18、整流器18をロータ7に固定している整流器取付板19によって構成されている。共通ベース1に設けられた排気ダクト20及び給気ダクト21は、回転電機本体10の冷却空気の一部を取り込んで全閉型交流励磁機4の内部に冷却空気を通風し、界磁鉄心14、電機子鉄心16、界磁コイル15等の全閉型交流励磁機4を構成している機器を冷却し、冷却後の空気を回転電機本体10側に戻すためのダクトである。
【0008】
ファン手前部屋9aはファンに面した空間で、ロータ7の軸方向に対して直交するように仕切る仕切板22と、共通ベース1をロータ7の軸方向に対して直交するように仕切る補強板23、ファンガイド28、並びに本体フレーム9によって比較的狭い空間となるように構成されている。また、全閉式交流励磁機4内と本体フレーム9内のファン手前部屋9aの間には、排気ダクト20、及び給気ダクト21の回転電機本体10側の開口部である排気口20a、及び給気口21aが開口し、冷却空気の流れに対してそれぞれ、給気口21aは上流側に、排気口20aは下流側となるように設けられている。狭い空間であるファン手前部屋9aを通る冷却空気は流速が速いので、給気口21aと、排気口20aとは互いに開口の向きを逆向きにし、さらに、給気口21aを冷却空気の流れる方向に対向させることによって、冷却空気が給気口21aに動圧を発生させ、その動圧によって給気ダクト21に冷却空気を取り込む。
【0009】
また、排気口20aは冷却空気の流れと同一方向に向け、かつ給気口21aに比べてファン11の近くに設置する。冷却空気の流れによってファン手前部屋9aには圧力損失が発生しているため、上流側にある給気口21a側が下流側の排気口20aよりも圧力が高く、給気口21aと排気口20aとの間には静圧差が生じている。この静圧差によっても給気口21aから排気口20aに向かう冷却空気の流れが発生する。
【0010】
このように、ファン入口部屋9aを狭い空間となるように構成し、空間内を流れる冷却空気の流速を高めることで、給気口21aに発生する動圧、および、給気口21aと排気口20aの静圧差を利用し、回転電機本体10の冷却空気を全閉型交流励磁機4へ循環させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−91695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来技術では、全閉型交流励磁機4に冷却空気を循環させるために、仕切板22と補強板23、および、本体フレーム9に囲まれたファン手前部屋9aの流路を狭くすることで冷却空気の流速を高め、その動圧と静圧差を利用しているが、流速を高めることで圧力損失が大きくなる。その結果、ファン11により発生する冷却風量が減り、ステータコイル8やロータコイル5が十分に冷却されずその温度が高くなるので、絶縁不良による回転電機本体10の寿命が低下するという問題があった。
【0013】
また、図4は、図3におけるファン11、および、ファン手前部屋9a、及び冷却空気の流れを示す拡大図である。図3、4によれば、排気口20aと給気口21aが共に内在するファン手前部屋9aではファン11の入口部において仕切り板22を巻き込むような流れになるが、このとき冷却空気の流速が速いため流れの剥離が生じ、流入空気の不均一が生じる。この流れの剥離により周期的な渦が発生し、その渦が流れに沿って移動してファン11のブレード24にぶつかることによって周期的な力(変動流体力)が発生する。このような変動流体力は周期性を有するため、ブレード24に共振現象が生じ、たとえ小さな変動流体力でもブレード24には大きな振動応力が発生する。長時間にわたって運転が続けられると疲労によりブレードの破損をまねくことがあり、長期信頼性を損なう問題があった。
【0014】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、回転電機本体と全閉型交流励磁機に十分な風量の冷却空気を供給、循環でき、長期信頼性に優れたクーラ付全閉型ブラシレス回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るクーラ付全閉型ブラシレス回転電機は、クーラ付全閉型ブラシレス回転電機本体と、この回転電機本体に設けられたファンと、回転電機本体の冷却空気により冷却される全閉型交流励磁機と、前記回転電機本体と前記全閉型交流励磁機を搭載する共通ベースとからなるクーラ付全閉型ブラシレス回転電機において、前記全閉型交流励磁機は送風機構を備え、回転電機本体から全閉型交流励磁機へ冷却空気を導く給気通風路と、前記全閉型交流励磁機から回転電機本体へ冷却空気を戻す排気通風路とは前記共通ベースに形成され、前記排気通風路は、前記回転電機本体のロータ軸方向に沿って延びると共に、該通風路の排気口は前記ファンの吸い込み口側に対向して開口したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記構成により、冷却用通風路の圧力損失を小さくすることができると共に、回転電機本体及び全閉型交流励磁機に十分な冷却風量を供給、循環ができるので、ステータコイル及びロータコイルの温度上昇が低減され、クーラ付全閉型ブラシレス回転電機の寿命の低下を防止することができる。また、ファン流入部での冷却空気の流速を低減し、変動流体力に起因するファンのブレードの振動を低減することで、ブレードの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るクーラ付全閉型ブラシレス回転電機の縦断面図。
【図2】図1A−A方向断面図。
【図3】従来のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機の縦断面図。
【図4】図3におけるファンおよびファン手前部屋の冷却空気の流れを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
(構成)
本発明の実施形態に係るクーラ付全閉型ブラシレス回転電機を、図1、2を用いて説明する。
【0019】
本発明の実施形態に係るクーラ付全閉型ブラシレス回転電機は、従来の回転電機を示した図3と同じく、回転電機本体のフレーム9、ロータ7、全閉型交流励磁機4、回転電機本体のファン11、ファンガイド28、ロータを支持するベアリング3、ステータコイル8、ステータ鉄心2を備えている。また、ステータ鉄心2、ベアリング3、全閉型交流励磁機4は共通ベース1の上に設置されており、クーラ13が本体フレーム9上に設けられていることも従来の回転電機を示した図3と同様である。さらに、全閉型交流励磁機4自体の構成についても従来の全閉型交流励磁機を示した図3と同様である。
【0020】
本実施形態においては、本体フレーム9のファン手前部屋9aと全閉型交流励磁機4とは共通ベース1内に設けられた給気通風路31及び排気通風路32でつながっている。また、ファン手前部屋9aの流路は、ファンガイド28と本体フレーム9とによりその間隔を従来より広く設定でき、冷却用通風路の圧力損失を小さくすることができる。
【0021】
排気通風路32は、図2に示すとおり、全閉型交流励磁機4を冷却した空気を回転電機本体10に戻すための通風路であって、排気開口部32bから回転電機本体10のロータ7の軸方向に沿って平行に延びている。冷却空気が排出される排気口32aはファン11の吸い込み口側に対向して開口しており、例えば、回転電機本体に設けられたファン11の外径より内側の位置に設けられている。
【0022】
一方、給気通風路31は、回転電機本体10から冷却空気を取込み全閉型交流励磁機4に給気する通風路であって、回転電機本体10のロータ7軸方向に対し垂直方向及びこれに連続するロータ軸方向に沿って平行に延びており、図2に示すようにL字状に形成されている。冷却空気を給気する給気口31aは共通ベース上であって、ロータ7の軸方向に対して垂直方向で、かつ、軸から半径方向に離れた位置、例えば、回転電機本体に設けられたファン11の外径を越える位置にコの字形の仕切板26により区画して設けられている。
【0023】
給気通風路31及び排気通風路32は、共通ベースに形成されている。具体的には、共通ベース1を構成しているベース上板1aとベース下板1b、および、ベース上板1aとベース下板1bをつなぐリブ1cに囲まれた空間をL字型の仕切板25で仕切ることにより形成している。
【0024】
全閉型交流励磁機4において、整流器18を取り付ける整流器取付板19の端部には送風機構として遠心ファン27が取り付けられており、遠心ファン27が位置するベース上板1aには、全閉型交流励磁機4内を循環した冷却空気が排出される排気開口部32bが設けられている。また、全閉型交流励磁機4が位置するベース上板1aのうち給気通風路31上の位置には全閉型交流励磁機4内を循環する冷却空気が給気される給気開口部31bが設けられている。
【0025】
(作用)
次に本実施形態の作用について述べる。
図1,2の矢印で示す破線は冷却空気の流れを示している。ロータ7に備えられたファン11はロータ7の回転に伴なって回転し、ファン11の回転作用により、本体フレーム9のクーラ13から出た冷却空気は、図1で示すように一部は分流してロータ7を冷却し、その後ステータ鉄心2とロータ7の間のエアギャップ12に流れ、ステータ鉄心2の通風ダクト2aを通って各部を冷却し、クーラ13にて熱交換されファン11に戻る。ここで、冷却空気は、回転電機本体10各部の通風経路を通過するにしたがって圧力損失が発生するので、ファン11の手前が最大負圧になる。
【0026】
一方、全閉型交流励磁機4を冷却するためにクーラ13から出た冷却空気を一部分流しバイパスさせる。分流した結果流速は遅くなるがこれを補うために、全閉型交流励磁機4内の遠心ファン27により全閉型交流励磁機4内部の冷却空気を排気開口部32bから押し出し、一定の流速を確保することができる。押し出された冷却空気は、回転電機本体のロータ軸方向に平行に沿って延びる排気通風路32を通り、ファンの吸い込み口側に対向して、共通ベース上のベース上板1aに開口した排気口32aからファン手前部屋9aへ吐き出される。
【0027】
また、上記全閉型交流励磁機4向けに分流された冷却空気は、回転電機本体のロータ軸方向に対して垂直方向に開口し、共通ベース上のベース上板1aであって、ファンの外径を越える位置に設けられた給気口31aから取り込まれ、給気通風路31を通って給気開口部31bから全閉型交流励磁機4内部に引き入れられ、冷却空気を全閉型交流励磁機4内部に通風させ、界磁鉄心14、電機子鉄心16を冷却する。
【0028】
ここで、排気口32aは回転電機内部でもっとも冷却空気の圧力が低いファン11手前の吸い込み側に開口しており、一方、給気口31aはロータ7の軸方向に対して半径方向に離れた位置、例えば、ファンの外径を越える位置に開口しているため、ファンの外径より内側の位置に開口した排気口32aに比べて冷却空気の圧力は高くなっているので、給気口31aと排気口32aとの間に発生する圧力差、並びに全閉型交流励磁機4に備えられた遠心ファン27による冷却空気の吸引、押出し作用により全閉型交流励磁機4の内部にも十分な量の冷却空気が取り込まれ排出される。
【0029】
また、排気通風路32は、前記回転電機本体のロータ軸方向に沿って延びると共に、排気口32aは最大負圧となる前記ファンの吸い込み口側に対向して開口しているので、冷却空気は直線状に流れて圧力損失を生じない流速で排気される。
【0030】
(効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、L字状に形成した給気通風路31、直線状に形成した排気通風路32及び全閉型交流励磁機4に設けた送風ファン27によって、ファン手前部屋9aの流路を比較的広く取れ冷却空気の流速を高めずにファン手前部屋9aで発生する圧力損失を従来のものよりも小さくすることができるので、回転電機本体10、全閉型交流励磁機4に送り込まれる冷却空気の風量は従来のもよりも増大し、ステータコイルおよびロータコイルの温度上昇が低減され回転電機本体10の寿命も延ばすことができる。そして、ファン手前部屋9aの流速は減少することにより、ファン11の流入部における流れの剥離は生じないので、ブレード24には振動が発生することもなく、ブレード24の長期信頼性を高くすることができる。また、ファン手前部屋9aの流路は比較的広くなることで、回転電機本体のファンの送風能力は従来のものに比べて、大きくする必要がない。さらに、給排気のためのダクトを共通ベース内に配管する必要がなく、共通ベースを仕切板で区画するだけで給気通風路31、排気通風路32を形成することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…共通ベース、1a…ベース上板、1b…ベース下板、1c…リブ 、2…ステータ鉄心、3…ベアリング、4…全閉型交流励磁機、5…ロータコイル、6…ロータ鉄心、7…ロータ、8…ステータコイル、9…本体フレーム、10…回転電機本体、11…ファン、12…エアギャップ、13…クーラ、14…界磁鉄心、15…界磁コイル、16…電機子鉄心、17…電機子コイル、18…整流器、19…整流器取付板、20…排気ダクト、20a…排気口、21…給気ダクト、21a…給気口、22、25、26…仕切板、23…補強版、24…ブレード、27…遠心ファン、28…ファンガイド、31…給気通風路、31a…給気口、31b…給気開口部、32…排気通風路、32a…排気口、32b…排気開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クーラ付全閉型ブラシレス回転電機本体と、この回転電機本体に設けられたファンと、回転電機本体の冷却空気により冷却される全閉型交流励磁機と、前記回転電機本体と前記全閉型交流励磁機を搭載する共通ベースとからなるクーラ付全閉型ブラシレス回転電機において、
前記全閉型交流励磁機は送風機構を備え、
回転電機本体から全閉型交流励磁機へ冷却空気を導く給気通風路と、前記全閉型交流励磁機から回転電機本体へ冷却空気を戻す排気通風路とは前記共通ベースに形成され、
前記排気通風路は、前記回転電機本体のロータ軸方向に沿って延びると共に、該通風路の排気口は前記ファンの吸い込み口側に対向して開口したことを特徴とするクーラ付全閉型ブラシレス回転電機。
【請求項2】
前記給気通風路は、前記回転電機本体のロータ軸方向に対して垂直方向に開口した給気口から前記全閉型交流励磁機の給気開口部に向けてL字状に形成したことを特徴とする請求項1記載のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機。
【請求項3】
前記給気口は、前記ファンの外径を越える位置に形成されたことを特徴とする請求項2記載のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機。
【請求項4】
前記給気口は、前記共通ベース上に形成されたことを特徴とする請求項2または3記載のクーラ付全閉型ブラシレス回転電機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−16081(P2012−16081A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147713(P2010−147713)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000195959)西芝電機株式会社 (172)
【Fターム(参考)】