説明

ケイ素化合物を有するポリマー分散液

【課題】改善された特性を有するポリマー分散液を提供する。
【解決手段】(i)少なくとも1種の、一般式(I):[HC=CX(Y)]Si(CH(R)3−p (I)[式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、Yは、−CH−及び−C(O)O−(CH−から選択された二価の基であり、nは、0又は1であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつpは、0又は1である]の不飽和シランと、(ii)少なくとも1種の、一般式(II):RSi(CH(R3−q (II)[式中、Rは、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基若しくはアリール基若しくはポリエーテル基であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつqは、0又は1である]のオルガノシラン及び/又は少なくとも1種の、一般式(III):Si(R (III)[式中、基Rは、同じ又は異なる基であり、かつRは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ及びイソブトキシから選択されたアルコキシ基である]のケイ酸エステルとを有する物理的混合物の成分が、ポリマー構造中に取り込まれているポリマー分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー分散液、その製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和シラン、例えばDYNASYLAN(R)VTMO(ビニルトリメトキシシラン)、DYNASYLAN(R)VTEO(ビニルトリエトキシシラン)及びDYNASYLAN(R)MEMO(3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)は、工業的に重要な化合物であり、それらの使用にはポリマー分散液の変性が含まれ、その場合にはそれらはコモノマーとしてそのポリマー構造中に共重合される。
【0003】
ホモポリマー又はコポリマーの形のポリビニルアセテート分散液を変性させること、例えばモノマー及びコモノマーとしてのメチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を有するホモポリマー又はコポリマーとしてのポリ(メタ)アクリレート分散液を変性させること、スチレンコモノマーを有するスチレンアクリレート分散液を変性させること、及びポリビニルアルコール分散液を変性させることは公知である。
【0004】
前記ポリマーを製造するために使用される成分は、実質的には、例外なく、その系への効率的な取り込みを達成するために架橋できる不飽和成分である。従って、例えば、ビニルシランは、ビニルアセテート分散液及びポリビニルアルコール分散液に使用され、メタクリル酸及び/又はアクリルシランは、アクリレート分散液に使用される。かかるポリマー分散液の使用には、接着剤及びシーラントへの配合並びにインク及び塗料への配合が含まれる。
【0005】
不飽和シランと、アルキルシラン及び/又はオルガノシラン及び/又はケイ酸エステルとの純粋な物理的混合物も公知である(EP0202412号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0202412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、改善された特性を有する更なるポリマー分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に規定された本発明によって解決される。
【0009】
本発明は、ポリマー分散液であって、
(i)少なくとも1種の、一般式(I)
[HC=CX(Y)]Si(CH(R)3−p (I)
[式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、Yは、−CH−及び−C(O)O−(CH−から選択された二価の基であり、nは、0又は1であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつpは、0又は1である]の不飽和シランと、
(ii)少なくとも1種の、一般式(II)
Si(CH(R3−q (II)
[式中、Rは、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基若しくはアリール基若しくはポリエーテル基であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつqは、0又は1である]のオルガノシラン
及び/又は少なくとも1種の、一般式(III)
Si(R (III)
[式中、基Rは、同じ又は異なる基であり、かつRは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ及びイソブトキシから選択されたアルコキシ基である]のケイ酸エステルとを有する物理的混合物の成分が、ポリマー構造中に取り込まれているポリマー分散液を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
驚くべきことに、(i)不飽和シランと(ii)オルガノシラン及び/又はケイ酸エステルとの物理的混合物が、容易かつ効率的に共重合でき、これによって、ポリマー分散液の架橋密度が増加するとともに、塗布されるポリマー分散液の耐水性が改善するという予期せぬ利点を伴うことを見出した。更に、この共重合、架橋及び/又は部分縮合(すなわち成分(i)及び成分(ii)のそのポリマー構造中への取り込み)は、引き続いて皮膜結合特性の更なる有利な改善をもたらす。
【0011】
本発明にかかるポリマー分散液は、概して、水中又は溶媒中に微細な分布で分散した高分子材料樹脂、例えば(ポリマー)ラテックスを基礎とするものである。それらの分散液は一次分散液であり、重合はその液相中で直接生ずるものである。本発明にかかるポリマー分散液は、アクリル、アルデヒド、エポキシ及び/又はポリエステル樹脂、ポリウレタン、及び/又は前記成分の前駆化合物又はそれらの混合物を有することが好ましい。その系は、ポリマーの粒度に応じて、細かい(0.1〜0.5μm)、中間的な(2μmまで)又は粗い(5μmまで)分散系であることを適宜特徴としてよい。本発明にかかるポリマー分散液は、コロイド溶液と比較すると、一般的に異なるレオロジーを示す。溶液の場合には、その濃度が高くなるにつれてその粘度が着実に増加する一方で、本発明にかかる分散液の場合には、その粘度は一般的に、約50%の固形物含有率までは実質的に同じままであり、その後に増加する。更に、<0.1μmの粒度を有する本発明にかかる微細分散液は、自体公知の所定の低分子又は高分子材料界面活性剤を使用するマイクロエマルション重合の方法によって製造できる。かかる分散液は、例えば、水性塗料中において、所定のレオロジー特性を設定するために、固形物含有率を増加させ、光沢度を向上させるという利点を伴って使用できる。
【0012】
本発明にかかるポリマー分散液は、後続の製品、例えば分散液接着剤及び分散液シーラントのポリマー構造中に取り込まれる際にも、分架橋密度の増加をもたらし、そしてこれにより塗布されるポリマー分散液の凝集強さの増加をもたらす。
【0013】
従って本発明は、ポリマー分散液であって、
(i)少なくとも1種の、一般式(I)
[HC=CX(Y)]Si(CH(R)3−p (I)
[式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、Yは、−CH−及び−C(O)O−(CH−から選択された二価の基であり、nは、0又は1であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつpは、0又は1である]の不飽和シランと、
(ii)少なくとも1種の、一般式(II)
Si(CH(R3−q (II)
[式中、Rは、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基若しくはアリール基若しくはポリエーテル基であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつqは、0又は1である]のオルガノシラン
及び/又は少なくとも1種の、一般式(III)
Si(R (III)
[式中、基Rは、同じ又は異なる基であり、かつRは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ及びイソブトキシから選択されたアルコキシ基である]のケイ酸エステルとを有する物理的混合物の成分が、ポリマー構造中に取り込まれているポリマー分散液を提供する。
【0014】
本発明は更に、ポリマー分散液の製造方法において、
− 少なくとも1種のモノマーと、成分(i)及び成分(ii)とを混合すること、
− 得られた混合物を、界面活性剤を含有する水の中に分散させること、及び
− 次いで重合を実施すること
を含む方法を提供する。
【0015】
本発明にかかる方法において使用されるモノマー、すなわちポリマー構造の前駆化合物は、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、アクリル酸、ビニルアルコール、ビニルアセテート又は少なくとも2種以上の前記モノマーの混合物であることが好ましい。
【0016】
更に、成分(i)として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチル−ジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン又は2種以上の前記シランの混合物を利用することが好ましい。
【0017】
更に、成分(ii)として、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルキルポリグリコールプロピルトリメトキシシラン又は2種以上の前記シランの混合物を利用することが好ましい。
【0018】
本発明にかかる方法において、モノマーの全量に対して0.1〜10質量%、特に1〜2質量%の不飽和シランを付加的に使用することが好ましい。
【0019】
本発明にかかる方法において使用される成分(i)と成分(ii)との質量比は、好ましくは99.9:0.1〜0.1:99.9、特に好ましくは80:20〜20:80、殊に好ましくは50:50である。
【0020】
本発明にかかる方法においては、成分(i)と成分(ii)との混合物を、使用されるモノマーの量に対して0.05〜20質量%、好ましくは0.2〜1.5質量%、特に好ましくは0.5〜1.2質量%、殊に好ましくは1質量%の量で適切に使用する。
【0021】
従って本発明は、更に、成分(i)と成分(ii)との物理的混合物の、ポリマー分散液を製造するための使用を提供する。
【0022】
本発明にかかる方法における界面活性剤としては、慣用の乳化剤、すなわち表面活性化合物、例えば、数例を挙げるならば、オクチルフェノールエトキシレート、ノニルフェノールエトキシレート又はドデシルフェノールエトキシレートを使用することが可能である。
【0023】
本発明にかかる方法においては、5〜15質量%の界面活性剤含有率を有する界面活性剤水溶液を利用することが好ましい。
【0024】
本発明にかかる方法において使用されるモノマーと水との質量比は、好ましくは40:60〜60:40、特に好ましくは45:55〜55:45である。
【0025】
本発明にかかる方法の場合においては、それぞれの成分を一緒に導入し、そして分散させることは、一般的に、0〜45℃の範囲内の温度で行う。この重合反応は、60〜65℃で操作することが好ましい。
【0026】
重合は、遊離基開始剤を、好ましくは水溶液の形で、本発明にかかる方法におけるモノマー、成分(i)及び成分(ii)、水、並びに界面活性剤の分散混合物に添加し、そしてこの反応混合物を完全に混合しつつ、かつ温度制御下で反応させることによって適切に、フリーラジカルに開始させる。従って、本発明にかかる方法においては、例えば、限定されるものではないが、ホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウム、ペルオキソ硫酸カリウム、クメンヒドロペルオキシド、アゾイソブチロニトリル及び他の遊離基開始剤を使用することが可能である。遊離基開始剤は、他の添加剤と組み合わせて使用してもよく、その例は硫酸鉄(II)、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及びチオ硫酸ナトリウムである。
【0027】
更に、本発明にかかるポリマー分散液は、溶媒、例えばアルコール、特にエタノール、を含めることが可能であり、その際、本発明にかかる分散液中の溶媒量は、10質量%未満であり、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0028】
本発明にかかるポリマー分散液は、一般的に以下のとおりに製造する:
高速攪拌機、例えばUltra−Turrax型、還流凝縮器、温度計及び一般的には2種の反応物の供給系を好適に備えた反応槽内で、最初に、一般的には界面活性剤を水に溶解させ、次いでモノマー成分並びに成分(i)及び成分(ii)を、個々に又は混合物として計量供給し、そして分散させる。次いで、重合をフリーラジカルに開始してよい。この構成成分を、激しく混合しつつ、かつ温度制御下で適切に組み合わせる。混合及び後続の重合を、一般的には0〜70℃の範囲の温度で行う。形成されたポリマー分散液を、その重合反応完了後に必要であれば濾過してよく、次いで容器内に分散させる。このように得られたポリマー分散液に、アンモニア又は有機アミンを添加して、そのpHを6〜9の値に調節することも可能である。
【0029】
従って、本発明はまた、本発明にかかる方法によって得られるポリマー分散液を提供する。
【0030】
本発明にかかるポリマー分散液は、利点を伴って、例えば、限定されるものではないが、数例を挙げるならば、コンクリート下塗剤、接着剤及びシーラント、例えば床材接着剤、床材支持体用バインダー、織物被覆物、及びタイル接着剤中に配合でき、かつインク及び塗料、例えばシリコーン樹脂又はポリウレタン分散液とのブレンド形のインク及び塗料中に配合することもでき、その際、それには他のバインダーとのブレンドも含まれる。
【0031】
従って、本発明によって同様に、本発明にかかるポリマー分散液を使用して製造された物品が提供される。
【0032】
本発明にかかるポリマー分散液の規定により、ポリマー分散液の架橋密度の増加と、塗布されるポリマー分散液の耐水性の改善とを一緒に達成することがなおも可能になる。
【0033】
本発明を、その対象を限定することなく、以下の実施例によって説明する。
【実施例】
【0034】
1.重合装置及び実験手順の説明
a.装置:
1lの4つ口フラスコに、IKA Ultra−Turrax T25型撹拌機、水を用いて運転される還流凝縮器、温度計及び2種の反応物の供給系を備えた。この反応物(開始剤溶液及びモノマー混合物)を、この4つ口フラスコ中に、2個の貯蔵フラスコ(それぞれ、天秤上にある)から、2個のKnauer HPLC計量ポンプを使用して計量供給した。この反応フラスコを、温度調節部内蔵型の油浴によって加熱した。ナイロン濾布(80μm、約200メッシュ)を有する圧力濾過器を使用して生成物濾過を行った。
【0035】
b.実験手順:
− IGEPAL CA−897(オクチルフェノールエトキシレート、表面活性剤)22.0gを、蒸留水249.8gに撹拌しつつ溶解させた。この溶液を、前記装置内に導入して、そして約40℃まで加熱した。
【0036】
− このモノマーとシラン成分とを、一方の貯蔵フラスコ内で所望の比で混合させて、全量で208.6gとする(前記モノマー混合物A)。
【0037】
− 第二の貯蔵フラスコ内で、開始剤溶液(B):2.0%のホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウム及び0.15%の硫酸鉄(II)の蒸留水中での溶液を調製した。
【0038】
− 0.15%濃度の硫酸鉄(II)溶液2.0g及びペルオキソ硫酸カリウム1.0gを、約40℃で撹拌しつつIGEPAL溶液に添加し、そして撹拌を5分にわたって継続した。
【0039】
− 次いで、モノマー混合物(A)21.0g及び開始剤溶液(B)1.5gを、それぞれの貯蔵槽から反応フラスコ内に、1分の過程にわたってポンプ導入した。40℃から43〜44℃までのわずかな温度増加が観察された。次いで、撹拌を15分にわたって継続した。
【0040】
− 次いで、モノマー混合物(A)の残部及び開始剤溶液(B)10.5gを、その反応フラスコ内に3時間の過程にわたって計量供給した。この間、液相温度が65℃を上回れる場合には、この系を油浴の解除によって冷却した;この温度が60℃未満に降下すれば、その系を油浴を使用して60℃まで加熱した。このように、この温度は60〜65℃で維持され、かつ撹拌速度(Ultra−Turraxの速度設定:13500回転/分)によって緩やかな粘度の増加がほぼ一定に保たれた。
【0041】
− 所定量のモノマー混合物(A)及び開始剤溶液(B)を計量供給した場合、撹拌を65℃で30分にわたって継続した。
【0042】
− 次いで、2.0%濃度のホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウム溶液3.0gを30分にわたって計量供給し、その間、温度は65℃に維持された(わずかな発熱反応)。
【0043】
− 得られたポリマー分散液を室温まで冷却して、そしてそのpHを10%濃度のアンモニア溶液を使用して約7.5に調節した。次いで、この生成物を圧力濾過器内で80μm(200メッシュ)のナイロンフィルターに通して濾過した。
【0044】
c.重合バッチ:
【表1】

【0045】
2.塗料としてのポリマー分散液の試験
このポリマー分散液を、4種の異なる基材:
− ガラス 8.0cm×15cmの板(厚さ:3mm)
− コンクリート 7.5cm×15cmの板(厚さ:15mm)
− PVC 8.0cm×15cmの板(厚さ:2mm)
− アルミニウム 8.0cm×15cmの板(厚さ:1mm)
に塗布した。
【0046】
試験手順:
2.1 試験板の清浄
− ガラス →アセトン及び機械清浄用布
− コンクリート →乾燥機械清浄用布
− PVC →イソプロパノール及びリントフリー布(Kimberly−Clark社製の高精度の布)
− アルミニウム →アセトン及び機械清浄用布。
【0047】
2.2 試験板の被覆
このポリマー分散液を、試験板に、100μmのドクターブレードを使用して塗布して、皮膜を形成させた(1つの実験につきそれぞれ2枚の板)。この板を1週間にわたって貯蔵して、室温(約20℃〜約22℃)で硬化させた。次いで、一方の試験板を水浴中で1週間にわたって室温(約20℃〜約22℃)で貯蔵した。
【0048】
2.3 得られた皮膜の目視評価試験:
− 水中貯蔵前の皮膜形成、接着及び伸び
− 水中貯蔵後の接着、色及び皮膜
実験結果:
第1表:
接着試験の結果
【表2】

【0049】
本発明にかかるポリマー分散液を使用すると、PVC及びコンクリート上での接着が顕著に改善された。
【0050】
第2表:
弾性試験の結果
【表3】

【0051】
本発明にかかるポリマー分散液を使用すると、同様に、被覆物の弾性が顕著に改善された。
【0052】
第3表:
皮膜形成試験の結果
【表4】

【0053】
この試験においても、本発明にかかるポリマー分散液を使用すると、幾つかの基材の場合で、被覆物による皮膜形成が改善された。
【0054】
第4表:
水中貯蔵後の接着試験の結果
【表5】

【0055】
付加的に、本発明にかかるポリマー分散液を使用すると、幾つかの基材の場合で、水中貯蔵後の被覆物の接着が改善された。
【0056】
第5表:
水中貯蔵後のチョーキング試験の結果
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー分散液であって、
(i)少なくとも1種の、一般式(I)
[HC=CX(Y)]Si(CH(R)3−p (I)
[式中、Xは、水素原子又はメチル基であり、Yは、−CH−及び−C(O)O−(CH−から選択された二価の基であり、nは、0又は1であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつpは、0又は1である]の不飽和シランと、
(ii)少なくとも1種の、一般式(II)
Si(CH(R3−q (II)
[式中、Rは、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状又は環状アルキル基若しくはアリール基若しくはポリエーテル基であり、Rは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ及び2−メトキシエトキシから選択されたアルコキシ基であり、かつqは、0又は1である]のオルガノシラン
及び/又は少なくとも1種の、一般式(III)
Si(R (III)
[式中、基Rは、同じ又は異なる基であり、かつRは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ及びイソブトキシから選択されたアルコキシ基である]のケイ酸エステルとを有する物理的混合物の成分が、ポリマー構造中に取り込まれているポリマー分散液。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー分散液の製造方法において、該方法は、
− 少なくとも1種のモノマーと、成分(i)及び成分(ii)とを混合すること、
− 該混合物を、界面活性剤を含有する水の中に分散させること、及び
− 次いで重合を実施すること
を含む方法。
【請求項3】
モノマーの全量に対して0.1〜10質量%の不飽和シラン(i)を使用する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
成分(i)と成分(ii)とを、質量比99.9:0.1〜0.1:99.9で使用する、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
成分(i)として、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランから選択された不飽和シラン又は2種以上の前記シランの混合物を使用する、請求項2から4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
成分(ii)として、メチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、アルキルポリグリコールプロピルトリメトキシシランから選択されたオルガノシラン又は2種以上の前記シランの混合物を使用する、請求項2から5までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
モノマーとして、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレンアクリレート、ポリビニルアルコール及びポリビニルアセテートから選択されたポリマーの前駆段階物質を使用する、請求項2から6までの何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項2から7までの何れか1項に記載の方法において得られるポリマー分散液。
【請求項9】
請求項1に記載の成分(i)と成分(ii)との物理的混合物の、ポリマー分散液の製造のための使用。
【請求項10】
請求項1から8までの何れか1項に記載のポリマー分散液の、コンクリート下塗剤、接着剤又はシーラント若しくはインク又は塗料中における使用。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか1項に記載のポリマー分散液を使用して製造された物品。

【公開番号】特開2012−7188(P2012−7188A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226988(P2011−226988)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願2006−521561(P2006−521561)の分割
【原出願日】平成16年6月2日(2004.6.2)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】