説明

ケモカイン受容体活性のクロメンモジュレーター

本出願は式(I):


(I)
[式中、W1、W2、W3、Y、Z、R2、R3、R3'およびR4は明細書に定義される]
またはその立体異性体またはプロドラッグまたは医薬的に許容される塩のMCP−1またはCCR−2のモジュレーターを記載する。さらに、式(I)のモジュレーターを使用する、炎症性疾患(例えば喘息)およびアレルギー性疾患、ならびに自己免疫病理(例えば関節リウマチおよび移植片拒絶反応)の治療および予防方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容の全体が本明細書中に参考として組み込まれている、2008年7月16日提出の米国仮出願第61/081,194号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、ケモカイン受容体活性のモジュレーター、それを含有する医薬組成物、ならびに炎症性疾患、アレルギー性および自己免疫性の疾患、特に関節リウマチおよび移植片拒絶を治療および予防するための、同薬剤を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ケモカインとは、様々な細胞によって放出され、数ある細胞種の中でとりわけ、単球、マクロファージ、TおよびBリンパ球、好酸球、好塩基球ならびに好中球を誘引および活性化する、分子量6〜15kDaの化学走性サイトカインである(Luster、New Eng. J. Med. 1998、338、436〜445およびRollins、Blood 1997、90、909〜928に総説)。アミノ酸配列中の最初の2つのシステインが単一のアミノ酸によって分離されているか(CXC)、または隣接しているか(CC)に応じて、2つの主要なケモカインクラス、すなわちCXCおよびCCが存在する。インターロイキン−8(IL−8)、好中球活性化タンパク質−2(NAP−2)および黒色腫成長刺激活性タンパク質(MGSA)などのCXCケモカインは、主に好中球およびTリンパ球に対して化学走性であり、一方、RANTES、MIP−1α、MIP−1β、単球走化性タンパク質(MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、およびMCP−5)ならびにエオタキシン(−1および−2)などのCCケモカインは、数ある細胞種の中でとりわけ、マクロファージ、Tリンパ球、好酸球、樹状細胞、および好塩基球に対して化学走性である。また、主要なケモカインサブファミリーのどちらにも属さないケモカインのリンフォタクチン−1、リンフォタクチン−2(どちらもCケモカイン)、およびフラクタルカイン(CX3Cケモカイン)も存在する。
【0004】
ケモカインは、「ケモカイン受容体」と呼ばれる、Gタンパク質結合7回膜貫通ドメインタンパク質のファミリーに属する特異的な細胞表面受容体と結合する(Horuk、Trends Pharm. Sci. 1994、15、159〜165に総説)。その同族リガンドと結合する際、ケモカイン受容体は会合した三量体Gタンパク質を介して細胞内シグナルを伝達し、数ある他の応答の中でとりわけ、細胞内カルシウム濃度の急速な増加、細胞形状の変化、細胞接着分子の発現の増加、脱顆粒、および細胞遊走の促進をもたらす。以下の特徴的なパターンでCCケモカインと結合するまたはそれに応答するヒトケモカイン受容体が少なくとも10種存在する(Zlotnik et al.、Immunity 2000、12、121に総説):CCR−1(または「CKR−1」もしくは「CC−CKR−1」)[MIP−1α、MCP−3、MCP−4、RANTES](Neote et al.、Cell 1993、72、415〜425およびLuster、New Eng. J. Med. 1998、338、436〜445);CCR−2AおよびCCR−2B(または「CKR−2A」/「CKR−2B」もしくは「CC−CKR−2A」/「CC−CKR−2B」)[MCP−1、MCP−2、MCP−3、MCP−4、MCP−5](Charo et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1994、91、2752〜2756およびLuster、New Eng. J. Med. 1998、338、436〜445);CCR−3(または「CKR−3」もしくは「CC−CKR−3」)[エオタキシン−1、エオタキシン−2、RANTES、MCP−3、MCP−4](Combadiere et al.、J. Biol. Chem. 1995、270、16491〜16494およびLuster、New Eng. J. Med. 1998、338、436〜445);CCR−4(または「CKR−4」もしくは「CC−CKR−4」)[TARC、MDC](Power et al.、J. Biol. Chem. 1995、270、19495〜19500およびLuster、New Eng. J. Med. 1998、338、436〜445);CCR−5(または「CKR−5」もしくは「CC−CKR−5」)[MIP−1α、RANTES、MIP−1β](Samson et al.、Biochemistry 1996、35、3362〜3367);CCR−6(または「CKR−6」もしくは「CC−CKR−6」)[LARC](Baba et al.、J. Biol. Chem. 1997、272、14893〜14898);CCR−7(または「CKR−7」もしくは「CC−CKR−7」)[ELC](Yoshie et al.、J. Leukoc. Biol. 1997、62、634〜644);CCR−8(または「CKR−8」もしくは「CC−CKR−8」)[I−309](Napolitano et al.、J. Immunol.、1996、157、2759〜2763);CCR−10(または「CKR−10」もしくは「CC−CKR−10」)[MCP−1、MCP−3](Bonini et al.、DNA Cell Biol. 1997、16、1249〜1256);ならびにCCR−11[MCP−1、MCP−2、およびMCP−4](Schweickart et al.、J. Biol. Chem. 2000、275、9550)。
【0005】
哺乳動物ケモカイン受容体に加えて、哺乳動物サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスおよびポックスウイルスが、感染細胞において、ケモカイン受容体の結合特性を有するタンパク質を発現することが示されている(Wells et al.、Curr. Opin. Biotech. 1997、8、741〜748に総説)。RANTESおよびMCP−3などのヒトCCケモカインは、これらのウイルスによってコードされた受容体を介して急速なカルシウムの動員を引き起こす場合がある。受容体の発現は、正常な免疫系監視および感染に対する応答の破壊を可能にすることによって、感染に許容状態となり得る。さらに、CXCR4、CCR2、CCR3、CCR5およびCCR8などのヒトケモカイン受容体は、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)の場合のように、微生物による哺乳動物細胞の感染の補助受容体として作用する場合がある。
【0006】
ケモカインおよびその同族受容体は、喘息およびアレルギー性疾患を含めた炎症性、感染性、および免疫調節性の障害および疾患、ならびに関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病の重要な媒介物質であることが示唆されている(Carter, P.H.、Curr. Opin. Chem. Biol. 2002、6、510;Trivedi et al.、Ann. Reports Med. Chem. 2000、35、191;Saunders et al.、Drug Disc. Today 1999、4、80;Premack et al.、Nature Medicine 1996、2、1174に総説)。たとえば、ケモカインマクロファージ炎症性タンパク質−1(MIP−1α)およびその受容体CCケモカイン受容体1(CCR−1)は、白血球を炎症部位に誘引し、続いてこれらの細胞を活性化することにおいて、中心的な役割を果たす。ケモカインMIP−1αがCCR−1と結合する際、これは、細胞内カルシウム濃度の急速な増加、細胞接着分子の発現の増加、細胞脱顆粒、および白血球遊走の促進を誘導する。
【0007】
さらに、ヒトにおけるMIP−1αの化学走性特性の実証が実験によって提供されている。MIP−1αの皮内注射したヒト対象は、注射部位への急速かつ有意な白血球の流入を経験した(Brummet, M.E.、J. Immun. 2000、164、3392〜3401)。
【0008】
ケモカインおよびその同族受容体は、喘息およびアレルギー性疾患を含めた炎症性、感染性、および免疫調節性の障害および疾患;関節リウマチおよび多発性硬化症などの自己免疫病;ならびにアテローム性動脈硬化症および糖尿病などの代謝性疾患の重要な媒介物質であることが示唆されている(Charo et al.、New Eng. J. Med. 2006、354、610〜621;Gao, Z. et al.、Chem. Rev. 2003、103、3733;Carter, P.H.、Curr. Opin. Chem. Biol. 2002、6、510;Trivedi et al.、Ann. Reports Med. Chem. 2000、35、191;Saunders et al.、Drug Disc. Today 1999、4、80;Premack et al.、Nature Medicine 1996、2、1174に総説)。たとえば、ケモカイン単球化学誘引物質−1(MCP−1)およびその受容体であるCCケモカイン受容体2(CCR−2)は、白血球を炎症部位へと誘引し、続いてこれらの細胞を活性化することにおいて、中心的な役割を果たす。ケモカインMCP−1がCCR−2と結合する際、これは、細胞内カルシウム濃度の急速な増加、細胞接着分子の発現の増加、および白血球遊走の促進を誘導する。MCP−1/CCR−2相互作用の重要性の実証は、遺伝子改変したマウスを用いた実験によって提供されている。MCP−1−/−マウスは、いくつかの異なる種類の免疫誘発後に単球を炎症部位内へと動員することができなかった(Lu, B. et al.、J. Exp. Med. 1998、187、601)。同様に、CCR−2−/−マウスは、様々な外因性因子で誘発した場合に単球を動員することもインターフェロン−γを産生することもできなかった;さらに、CCR−2ヌルマウスの白血球はMCP−1に応答して遊走せず(Boring, L. et al.、J. Clin. Invest. 1997、100、2552)、したがって、MCP−1/CCR−2相互作用の特異性が実証された。2つの他のグループが、異なるCCR−2−/−マウスの株を用いた同等の結果を独立して報告している(Kuziel, W.A. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1997、94、12053およびKurihara, T. et al.、J. Exp. Med. 1997、186、1757)。MCP−1−/−およびCCR−2−/−動物の生存度および一般に正常な健康は、MCP−1/CCR−2相互作用の破壊が生理的危機を引き起こさないという観点から注目すべきである。総合すると、これらのデータにより、MCP−1/CCR2の作用を遮断する分子がいくつかの炎症性および自己免疫障害の治療に有用であるという結論がもたらされる(Feria, M. et al.、Exp. Opin. Ther. Patents 2006、16、49;およびDawson, J. et al.、Exp. Opin. Ther. Targets 2003、7、35に総説)。この仮説は、下に記載するように、現在いくつかの動物疾患モデルにおいて妥当性が確認されている。
【0009】
MIP−1αは、関節リウマチに罹患している患者の潤滑液および血液中で上昇していることが知られている(Koch, A. et al.、J. Clin. Invest. 1994、93、921〜928)。さらに、いくつかの研究により、関節リウマチの治療においてMIP−1α/CCR1相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が実証されている(Pease, J.E. et al.、Expert Opin. Invest. Drugs 2005、14、785〜796)。
【0010】
MIP−1αに対する抗体は、マウスにおいて、多発性硬化症のモデルである実験的自己免疫脳脊髄塩(encepahlomytis)(EAE)を寛解させることが示されている(Karpus, W.J. et al.、J. Immun. 1995、5003〜5010)。同様に、炎症性疾患の症状は、MIP−1αに対する抗体を、コラーゲン誘発関節炎に罹患しているマウスに直接投与することで制御することができる(Lukacs, N.W. et al.、J. Clin. Invest. 1995、95、2868〜2876)。
【0011】
MCP−1は、肺移植後に閉塞性細気管支炎症候群を発生する患者においてアップレギュレーションされていることが知られている(Reynaud-Gaubert, M. et al.、J. Heart Lung Transplant.、2002、21、721〜730;Belperio, J. et al.、J. Clin. Invest. 2001、108、547〜556)。閉塞性細気管支炎症候群のネズミモデルでは、MCP−1に対する抗体を投与することで気道閉塞の弱化がもたらされた;同様に、CCR2−/−マウスは、この同じモデルにおいて気道閉塞に対して耐性を有していた(Belperio, J. et al.、J. Clin. Invest. 2001、108、547〜556)。これらのデータは、MCP−1/CCR2の拮抗が移植後の臓器の拒絶の治療に有益であり得ることを示唆している。さらに、研究により、MCP−1/CCR2軸の破壊が島移植の生存を延長できることが示されている(Lee, I. et al. J. Immunol. 2003、171、6929;Abdi, R. et al.、J. Immunol. 2004、172、767)。ラット移植モデルでは、CCR2およびMCP−1が移植片脈管障害を発生する移植片においてアップレギュレーションされていることが示されている(Horiguchi, K. et al.、J. Heart Lung Transplant. 2002、21、1090)。別の研究では、抗MCP−1遺伝子治療により移植片脈管障害が弱化された(Saiura, A. et al.、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2004、24、1886)。1つの研究は、MCP−1の遮断による実験的静脈移植片新生内膜(neoinitimal)形成の阻害を記載している(Tatewaki, H. et al.、J. Vasc. Surg. 2007、45,1236)。
【0012】
他の研究により、喘息の治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が実証されている。卵白アルブミンで誘発したマウスにおける中和抗体を用いたMCP−1の隔離により、気管支応答性の亢進および炎症の顕著な減少がもたらされた(Gonzalo, J-A., et al.、J. Exp. Med. 1998、188、157)。MCP−1に対する抗体を投与することによって、マンソン住血吸虫の卵で誘発したマウスにおいてアレルギー性気道炎症を低下させることが可能な証明された(Lukacs, N.W. et al.、J. Immunol. 1997、158、4398)。これと一致して、MCP−1−/−マウスでは、マンソン住血吸虫の卵を用いた誘発に対する応答の低下が示された(Lu, B. et al.、J. Exp. Med. 1998、187、601)。
【0013】
他の研究により、腎臓病の治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が実証されている。糸球体腎炎のネズミモデルにMCP−1に対する抗体を投与することにより、糸球体半月の形成およびI型コラーゲンの沈着の顕著な減少がもたらされた(Lloyd, C.M. et al.、J. Exp. Med. 1997、185、1371)。さらに、誘発させた腎毒性血清腎炎に罹患しているMCP−1−/−マウスは、そのMCP−1+/+対応物よりも有意に少ない尿細管傷害を示した(Tesch, G.H. et al.、J. Clin. Invest. 1999、103、73)。
【0014】
いくつかの研究により、全身性エリテマトーデスの治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が実証されている。CCR2−/−マウスは、全身性エリテマトーデスのネズミモデルにおいて、その野生型対応物と比較して生存の延長および腎臓病の低下を示した(Perez de Lema, G. et al.、J. Am. Soc. Neph. 2005、16、3592)。これらのデータは、ループスのげっ歯類モデルにおいて、MCP−1の遺伝子欠失(Shimizu, S. et al.、Rheumatology (Oxford) 2004、43、1121;Tesch, G.H. et al.、J. Exp. Med. 1999、190、1813)またはCCR2のペプチド拮抗剤の投与(Hasegawa, H. et al.、Arthritis & Rheumatism 2003、48、2555)に関して最近の研究で見い出された疾患改変活性と一致している。
【0015】
クローン病患者からの小腸において、非患部の回腸と比較してCCR2+固有層リンパ球の顕著な30倍の増加が観察された(Connor, S.J. et al.、Gut 2004、53、1287)。また、注記すべきは、活性クローン病に罹患している患者では、対照と比較して循環CCR2+/CD14+/CD56+単球の部分組の拡大が存在していたことである。いくつかのげっ歯類の研究により、クローン病/大腸炎の治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が実証されている。CCR−2−/−マウスは、デキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎の効果に対して保護されていた(Andres, P.G. et al.、J. Immunol. 2000、164、6303)。また、CCR2、CCR5、およびCXCR3の小分子拮抗剤(ネズミ結合親和性=それぞれ24、236、および369nM)を投与することによっても、デキストラン硫酸ナトリウム誘発大腸炎に対して保護された(Tokuyama, H. et al.、Int. Immunol. 2005、17、1023)。最後に、MCP−1−/−マウスは、大腸炎のハプテン誘導モデルにおいて実質的に低下した結腸損傷を示した(巨視的および組織学的)(Khan, W.I. et al.、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 2006、291、G803)。
【0016】
2つの報告が、炎症性腸疾患に罹患している患者の腸管上皮細胞および腸粘膜におけるMCP−1の過剰発現を記載している(Reinecker, H.C. et al.、Gastroenterology 1995、108、40およびGrimm, M.C. et al.、J. Leukoc. Biol. 1996、59、804)。
【0017】
1つの研究は、MCP−1遺伝子におけるプロモーター多型性と強皮症(全身性硬化症)との関連を記載している(Karrer, S. et al.、J. Invest. Dermatol. 2005、124、92)。組織線維症の関連モデルでは、CCR2/MCP−1軸の阻害により、皮膚(Yamamoto, T. et al.、J. Invest. Dermatol. 2003、121、510;Ferreira, A.M. et al.、J. Invest. Dermatol. 2006、126、1900)、肺(Okuma, T. et al.、J. Pathol. 2004、204、594;Gharaee-Kermani, M. et al.、Cytokine 2003、24、266)、腎臓(Kitagawa, K. et al.、Am. J. Pathol. 2004、165、237;Wada, T. et al.、J. Am. Soc. Nephrol. 2004、15、940)、心臓(Hayashidani, S. et al.、Circulation 2003、108、2134)、および肝臓(Tsuruta, S. et al.、Int. J. Mol. Med. 2004、14、837)における線維症が低下した。
【0018】
1つの研究により、肺胞炎の治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が実証されている。IgA免疫複合体肺傷害に罹患しているラットを、ラットMCP−1(JE)に対して産生させた抗体を用いて静脈内治療した場合、肺胞炎の症状が部分的に緩和された(Jones, M.L. et al.、J. Immunol. 1992、149、2147)。
【0019】
いくつかの研究により、癌の治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値が示されている(Craig, M.J. et al.、Cancer Metastasis Rev. 2006、25、611;Conti, I. et al.、Seminars in Cancer Biology 2004、14、149;Giles, R. et al.、Curr. Cancer Drug Targets 2006、6、659に総説)。ヒト乳癌細胞を保有している免疫不全マウスを抗MCP−1抗体で治療した場合、肺の微小転移の阻害および生存の増加が観察された(Salcedo, R. et al.、Blood 2000、96、34〜40)。ヒト臨床腫瘍検体を用いて、CCR2の発現が前立腺(prostrate)癌の進行に関連づけられた(Lu, Y. et al.、J. Cell. Biochem. 2007、101、676)。インビトロでのMCP−1は前立腺(prostrate)癌細胞の成長および侵襲を媒介することが示されている(Lu, Y. et al.、Prostate 2006、66、1311);さらに、前立腺癌細胞によって発現されたMCP−1は骨吸収のためのヒト骨髄前駆体を誘導した(Lu, Y. et al.、Cancer Res. 2007、67、3646)。
【0020】
複数の研究が、再狭窄の治療におけるMCP−1/CCR2相互作用を拮抗することの潜在的な治療的価値を記載している。ヒトでは、MCP−1レベルは再狭窄の危険性と直接相関している(Cipollone, F. et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2001、21、327)。CCR2またはMCP−1を欠くマウスは、動脈傷害後に内膜面積および内膜/培地比の低下を示した(野生型の同腹仔と比較して)(Roque, M. et al. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2002、22、554;Schober, A. et al. Circ. Res. 2004、95、1125;Kim, W.J. et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun. 2003、310、936)。マウスでは、骨格筋中へのMCP−1のドミナントネガティブ阻害剤の形質移入(Egashira, K. et al.、Circ. Res. 2002、90、1167)も動脈傷害後の内膜過形成を低下させた。中和抗体を用いたCCR2の遮断は、霊長類においてステント術後の新生内膜過形成を低下させた(Horvath, C. et al.、Circ. Res. 2002、90、488)。
【0021】
2つの報告が、誘発させた脳外傷を有するラットにおけるMCP−1の過剰発現を記載している(King, J.S. et al.、J. Neuroimmunol. 1994、56、127およびBerman, J.W. et al.、J. Immunol. 1996、156、3017)。さらに、CCR2−/−(Dimitrijevic, O.B. et al.、Stroke 2007、38、1345)およびMCP−1−/−マウス(Hughes, P.M. et al.、J. Cereb. Blood Flow Metab. 2002、22、308)がどちらも虚血/再灌流傷害から部分的に保護されていることが、研究によって示されている。
【0022】
単球/マクロファージが神経因性疼痛の発生に重要な役割を果たしていることが知られている(Liu, T. et al.、Pain 2000、86、25)。この考えと一致して、炎症性および神経因性疼痛のどちらにもおけるCCR2の潜在的な役割が最近記載された。CCR2−/−マウスは、その野生型対応物と比較して、足底内ホルマリン注射後の疼痛行動の低下および足底内CFA注射後のわずかに低下した機械的アロディニアを含めた、炎症性疼痛に対する応答の変化を示している(Abbadie, C. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci., USA 2003、100、7947)。さらに、CCR2−/−マウスは坐骨神経傷害後に顕著な機械的アロディニアを示さなかった。同様に、小分子CCR2拮抗剤は、経口投与後に機械的アロディニアを傷害前のレベルの約80%まで低下させた(Abbadie, C. et al.、WO2004/110376号)。
【0023】
1つの研究は、虚血性心筋症におけるMCP−1の重要な役割を記載している(Frangogiannis, N.G. et al.、Circulation 2007、115、584)。別の研究は、MCP−1の阻害後の実験的心不全の弱化を記載している(Hayashidani, S. et al.、Circulation 2003、108、2134)。
【0024】
他の研究が、上に言及していない様々な病状においてMCP−1が過剰発現されているという証拠を提供している。これらの報告は、MCP−1拮抗剤がそのような疾患の有用な治療学である可能性を有するという相関証拠を提供している。別の研究は、げっ歯類の心臓同種移植におけるMCP−1の過剰発現を実証しており、これは、移植動脈硬化症の病因におけるMCP−1の役割を示唆している(Russell, M.E. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993、90、6086)。MCP−1の過剰発現は特発性肺線維症に罹患している患者の肺内皮細胞で指摘されている(Antoniades, H.N. et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1992、89、5371)。同様に、MCP−1の過剰発現は乾癬に罹患している患者からの皮膚で指摘されている(Deleuran, M. et al.、J. Dermatol. Sci. 1996、13、228およびGillitzer, R. et al.、J. Invest. Dermatol. 1993、101、127);CCR2+細胞の優勢の相関発見も報告されている(Vestergaard, C. et al.、Acta Derm. Venerol. 2004、84、353)。最後に、最近の報告により、MCP−1がHIV−1関連認知症に罹患している患者の脳および脳脊髄液中で過剰発現されていることが示されている(Garzino-Demo, A.、WO99/46991号)。
【0025】
さらに、患者の少なくとも1つの部分群においてCCR2多型性がサルコイドーシスと関連していることが示されている(Spagnolo, P. et al.、Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2003、168、1162)。
【0026】
さらに、CCR−2がHIVの一部の株の補助受容体として示唆されていることも注記すべきである(Doranz, B.J. et al.、Cell 1996、85、1149)。また、HIV補助受容体としてのCCR−2の使用を疾患の進行と相関できることも確認されている(Connor, R.I. et al.、J. Exp. Med. 1997、185、621)。この発見は、CCR−2突然変異体CCR2−64Iの存在がヒト集団におけるHIVの発症の遅延と正に相関しているという最近の発見と一致している(Smith, M.W. et al.、Science 1997、277、959)。MCP−1はこれらのプロセスに関連づけられていないが、CCR−2と結合することによって作用するMCP−1拮抗剤がHIVに感染した患者においてAIDSの疾患進行を遅延させることに有益な治療効果を有し得る可能性がある。
【0027】
CCR2はヒトケモカインMCP−2、MCP−3、およびMCP−4の受容体でもあることに注意されたい(Luster、New Eng. J. Med. 1998、338、436〜445)。本明細書中に記載の式(I)の新しい化合物はCCR−2受容体と結合することによってMCP−1を拮抗するため、式(I)のこれらの化合物は、CCR−2によって媒介されるMCP−2、MCP−3、およびMCP−4の作用の有効な拮抗剤でもある可能性がある。したがって、本明細書中で「MCP−1の拮抗」に言及する場合、これは「CCR−2のケモカイン刺激の拮抗」に等価であるとみなされるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、本発明は、MCP−1もしくはCCR−2受容体活性の新規拮抗剤もしくは部分的作用剤/拮抗剤、またはその医薬上許容される塩もしくはプロドラッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、医薬上許容される担体と治療上有効な量の本発明の化合物のうちの少なくとも1つまたはその医薬上許容される塩もしくはプロドラッグ形態とを含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明は、そのような治療を必要としている宿主に、治療上有効な量の本発明の化合物のうちの少なくとも1つまたはその医薬上許容される塩もしくはプロドラッグ形態を投与することを含む、関節リウマチおよび移植片拒絶を治療する方法を提供する。
【0031】
本発明は、そのような治療を必要としている宿主に、治療上有効な量の本発明の化合物のうちの少なくとも1つまたはその医薬上許容される塩もしくはプロドラッグ形態を投与することを含む、炎症性疾患を治療する方法を提供する。
【0032】
本発明は、治療に使用するための新規クロメン誘導体を提供する。
【0033】
本発明は、炎症性疾患を治療するための医薬品の製造における新規クロメン誘導体の使用を提供する。
【0034】
本発明のこれらのおよび他の特徴(これらは下記の詳細な説明により明らかになるであろう)は、式(I):
【化1】

(I)
[式中、W1、W2、W3、Y、Z、R2、R3、R3'およびR4は、下記に定義される]、の化合物またはその立体異性体またはプロドラッグまたは医薬的に許容される塩は、MCP−1およびケモカイン活性の有効なモジュレーターであるという本願発明者の発見により達成された。
【0035】
本発明の詳細な説明
1つの実施形態において、本発明は式(I):
【化2】

(I)
[式中:
2はH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであるか;
またはR3とR3'は、隣接する炭素に結合するとき、一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成していてもよく;
4はHまたはC1-4アルキルであり;
1はNまたはC−Z’であり;
2はNまたはC−Y’であり;
3はNまたはC−Xであり;
XはH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;
ZおよびZ’は独立してHまたはハロであるか;
またはYとZ、Y’とZ’、YとX、またはY’とXは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成するか;
またはYとXまたはY’とXは一緒になって−O−CH2−O−を形成し;
ただし:
(1) W1、W2またはW3の1つのみがNであってよく;
(2) W2がNであるとき、X、Y、ZおよびZ’の全てがHであることはなく;
(3) W3がNであるとき、W1およびW2がともにCHであり、かつ、YおよびZがHであり;
(4) W1、W2およびW3がいずれもCHであるとき、YがHであり得ず;
(5) YがC1-4アルコキシであるとき、XはHでなく;
(6) W1、W2およびW3がいずれもCHであり、かつ、ZがClであるとき、YがClであり;および
(7) XがFであるとき、YまたはY’の一方はHでない]
の新規な化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩を提供する。
【0036】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;
ZおよびZ’が独立してHまたはハロであるか;
またはYとZ、Y’とZ’、YとX、またはY’とXが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成するか;
またはYとXまたはY’とXは一緒になって−O−CH2−O−を形成する;
であるものである。
【0037】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;
ZおよびZ’が独立してHまたはハロであるか;
またはYとZ、Y’とZ’、YとX、またはY’とXが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成する;
であるものである。
【0038】
1つの実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである;
であるものである。
【0039】
別の実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、またはハロであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである;
であるものである。
【0040】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルコキシ、またはハロであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである;
であるものである。
【0041】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してHまたはハロであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである;
であるものである。
【0042】
1つの実施形態において、本発明の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩は、式中:
2がH、メチルまたはエチルであり;
3およびR3'がHであり;
4がHであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、Br、Cl、FまたはCF3であり;
YおよびY’が独立してH、Br、Cl、FまたはCF3であり;および
ZおよびZ’が独立してH、Br、ClまたはFである;
であるものである。
【0043】
一実施形態では、式(I)の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬上許容される塩形態は、実施例中に例示する化合物である。
【0044】
別の実施形態では、本発明は、医薬上許容される担体と治療上有効な量の本発明の化合物とを含む医薬組成物を対象とする。
【0045】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、ケモカインまたはケモカイン受容体の活性を変調する方法を対象とする。
【0046】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、CCR−2受容体活性を変調する方法を対象とする。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、CCR−2受容体によって媒介されるMCP−1活性を変調する方法を対象とする。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄(restinosis)、臓器移植、乾癬性関節炎、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症、腎線維症ならびに癌、好ましくは、クローン病、乾癬、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症ならびに腎線維症から選択される障害を治療する方法を対象とする。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、炎症性疾患を治療する方法を対象とする。
【0050】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、炎症性腸疾患を治療する方法を対象とする。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、クローン病を治療する方法を対象とする。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、乾癬を治療する方法を対象とする。
【0053】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、全身性エリテマトーデスを治療する方法を対象とする。
【0054】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、多発性硬化症を治療する方法を対象とする。
【0055】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、関節リウマチを治療する方法を対象とする。
【0056】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、乾癬性関節炎を治療する方法を対象とする。
【0057】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、多発性骨髄腫を治療する方法を対象とする。
【0058】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒を治療する方法を対象とする。
【0059】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、肝細胞癌を治療する方法を対象とする。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、骨粗鬆症を治療する方法を対象とする。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、腎線維症を治療する方法を対象とする。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、炎症性疾患、たとえばCCR−2によって少なくとも部分的に媒介される炎症性疾患を治療する方法を対象とする。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含む、CCR2活性を変調する方法を対象とする。
【0064】
別の実施形態では、本発明は、骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄(restinosis)、臓器移植、乾癬性関節炎、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症、腎線維症ならびに癌、好ましくは、クローン病、乾癬、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症ならびに腎線維症から選択される障害を治療するための医薬品の調製における本発明の化合物の使用を対象とする。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、治療に使用するための本発明の化合物を対象とする。
【0066】
別の実施形態では、本発明は、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とを含む医薬組成物を対象とする。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に、治療上有効な量の、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物を投与することを含む、ケモカインまたはケモカイン受容体の活性を変調する方法を対象とする。
【0068】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に、治療上有効な量の、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物を投与することを含む、CCR−2受容体活性を変調する方法を対象とする。
【0069】
さらに別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に、治療上有効な量の、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物を投与することを含む、CCR−2受容体によって媒介されるMCP−1活性を変調する方法を対象とする。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に、治療上有効な量の、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物を投与することを含む、骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄(restinosis)、臓器移植、乾癬性関節炎、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症、腎線維症ならびに癌、好ましくは、クローン病、乾癬、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症ならびに腎線維症から選択される障害を治療する方法を対象とする。
【0071】
さらに別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に、治療上有効な量の、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患、好ましくはCCR−2によって少なくとも部分的に媒介される炎症性疾患を治療する方法を対象とする。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、それを必要としている患者に、治療上有効な量の、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物を投与することを含む、CCR−2活性を変調する方法を対象とする。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄(restinosis)、臓器移植、乾癬性関節炎、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症、腎線維症ならびに癌、好ましくは、クローン病、乾癬、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、アレルギー、たとえば皮膚および眼結膜中の肥満細胞の脱顆粒、肝細胞癌、骨粗鬆症ならびに腎線維症から選択される障害を治療するための医薬品の調製における、本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物の使用を対象とする。
【0074】
さらに別の実施形態では、本発明は、治療における本発明の化合物と1つまたは複数の活性成分とからなる医薬組成物の使用を対象とする。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、炎症性疾患を治療するための治療に使用する本発明の化合物を提供する。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、治療において同時、別々または連続的に使用するための、本発明の化合物と追加の治療剤(複数可)との組合せ調製物を提供する。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、炎症性疾患の治療において同時、別々または連続的に使用するための、本発明の化合物と追加の治療剤(複数可)との組合せ調製物を提供する。
【0078】
別の実施形態では、本発明は、(a)第1の容器;(b)第1の容器内に位置する、本発明の化合物を含む第1の治療剤を含む医薬組成物;および(c)医薬組成物を炎症性疾患の治療に使用できることを記述した添付文書を含む新規製品を提供する。
【0079】
別の好ましい実施形態では、本発明は、(d)第2の容器をさらに含み;構成成分(a)および(b)は第2の容器内に位置し、構成成分(c)は第2の容器の内部または外部に位置する、新規製品を提供する。
【0080】
別の実施形態では、本発明は、(a)第1の容器;(b)第1の容器内に位置する、本発明の化合物を含む第1の治療剤を含む医薬組成物;および(c)炎症性疾患を治療するために医薬組成物を第2の治療剤と組み合わせて使用できることを記述した添付文書を含む新規製品を提供する。
【0081】
本発明は、その精神または本質的な特質から逸脱せずに、他の具体的な形態で具現化し得る。また、本発明は、本明細書中に注記した本発明の代替態様のすべての組合せも包含する。本発明の任意かつすべての実施形態は、任意の他の実施形態と併せて本発明のさらなる実施形態を記載し得ることが理解されよう。さらに、1つの実施形態の任意の要素を、実施形態のうちの任意のものからの任意かつすべての他の要素と組み合わせて、さらなる実施形態を記載し得る。
定義
【0082】
本明細書中に記載した化合物は不斉中心を有し得る。非対称に置換された原子を含有する本発明の化合物は、光学活性を有する型またはラセミ体で単離し得る。ラセミ体の分割によってまたは光学活性を有する出発物質からの合成によってなど、どのように光学活性型を調製するかは当分野で周知である。オレフィン、C=N二重結合などの多くの幾何異性体も本明細書中に記載した化合物中に存在することができ、そのような安定な異性体すべてが本発明で企図される。本発明の化合物のシスおよびトランス幾何異性体が記載されており、異性体の混合物としてまたは分離された異性体として単離し得る。具体的な立体化学または異性体を具体的に示さない限りは、1つの構造すべてのキラル体、ジアステレオマー体、ラセミ体およびすべての幾何異性体が意図される。
【0083】
式Iの化合物の一方の鏡像異性体が他方と比較して優れた活性を示し得る。したがって、すべての立体化学が本発明の一部であるとみなされる。必要な場合は、ラセミ物質の分離は、Young, S.D. et al.、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 1995、2602〜2605に記載のように、キラルカラムを用いたHPLCによってまたはショウノウクロライドなどの分割剤を用いた分割によって達成することができる。
【0084】
本明細書中で使用する用語「置換された」とは、指定した原子または環原子の正常な結合価を超えず、かつ置換により安定な化合物がもたらされる限りは、指定した原子または環上の任意の1つまたは複数の水素が指定した群からの選択肢で置き換えられていることを意味する。置換基がケト(すなわち=O)である場合は、原子上の2個の水素が置き換えられる。
【0085】
任意の変数(たとえばR4)が化合物の任意の構成要素または式中で複数回出現する場合は、その定義は、各々、他の出現箇所すべてにおけるその定義とは独立している。したがって、たとえば、ある基が(R4mで置換されており、mが0〜3であると示されている場合は、前記基は3個までのR4基で適宜置換されていてもよく、R4は、各々R4の定義から独立して選択される。また、置換基および/または変数の組合せは、そのような組合せにより安定な化合物がもたらされる場合にのみ許容される。
【0086】
置換基との結合が環中の2個の原子を接続する結合と交差するように示されている場合は、そのような置換基は環上の任意の原子と結合していてよい。置換基を、所定の式の化合物の残りの部分と結合するために介する原子を示さずに記載する場合は、そのような置換基はそのような置換基中の任意の原子を介して結合していてよい。置換基および/または変数の組合せは、そのような組合せにより安定な化合物がもたらされる場合にのみ許容される。
【0087】
本明細書中で使用する「アルキル」には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチル−ペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、様々なその分枝鎖異性体などの、正常な鎖中で1〜20個の炭素、好ましくは1〜10個の炭素、より好ましくは1〜8個の炭素を含有する、分枝鎖および直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基がどちらも含まれることを意図し、また、そのような基には、1〜4個の置換基、たとえば、ハロ、たとえばF、Br、Cl、もしくはI、またはCF3、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリール(アリール)すなわちジアリール、アリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、アリールオキシアルキル、アルキルチオ、アリールアルキルチオ、アリールオキシアリール、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ハロアルキル、トリハロアルキル、および/あるいはアルキルチオが所望により含まれ得る。
【0088】
別段に指定しない限りは、それ自体でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「アルケニル」とは、ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、3−オクテニル、3−ノネニル、4−デセニル、3−ウンデセニル、4−ドデセニル、4,8,12−テトラデカトリエニルなどの、正常な鎖中で1〜6個の二重結合が含まれる、正常な鎖中で2〜20個の炭素、好ましくは2〜12個の炭素、より好ましくは1〜8個の炭素直鎖または分枝鎖状の基をいい、1〜4個の置換基、すなわち、ハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アミノ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、アルカノイルアミノ、アルキルアミド、アリールカルボニル−アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、アルキルチオ、および/または本明細書中に記載したアルキル置換基のうちの任意のもので適宜置換されていてもよい。
【0089】
別段に指定しない限りは、それ自体でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「アルキニル」とは、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2−ヘプチニル、3−ヘプチニル、4−ヘプチニル、3−オクチニル、3−ノニニル、4−デシニル,3−ウンデシニル、4−ドデシニルなどの、正常な鎖中で1個の三重結合が含まれる、正常な鎖中で2〜20個の炭素、好ましくは2〜12個の炭素、より好ましくは2〜8個の炭素の直鎖または分枝鎖状の基をいい、1〜4個の置換基、すなわち、ハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アミノ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヒドロキシ、アルカノイルアミノ、アルキルアミド、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、および/もしくはアルキルチオ、ならびに/または本明細書中に記載したアルキル置換基のうちの任意のもので適宜置換されていてもよい。
【0090】
別段に指定しない限りは、単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「シクロアルキル」には、1〜3個の環を含有する飽和または部分的に不飽和の(1または2個の二重結合を含有する)環状炭化水素基が含まれ、これには、合計3〜20個の環を形成する炭素、好ましくは3〜10個の環を形成する炭素を含有し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロドデシル、シクロヘキセニル、

アリールについて記載した1〜2個の芳香環と縮合していてよい、単環アルキル、二環アルキル(またはビシクロアルキル)および三環アルキルが含まれ、これらの基のうちの任意のものは、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、シクロアルキル、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、オキソ、アシル、アリールカルボニルアミノ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオール、および/もしくはアルキルチオ、ならびに/またはアルキルの置換基のうちの任意のものなどの、1〜4個の置換基で適宜置換されていてよい。
【0091】
上記定義したアルキル基が2つの異なる炭素原子で他の基に付着するための単結合を有する場合は、これらは「アルキレン」基と呼ばれ、「アルキル」について上記定義したように適宜置換されていてよい。
【0092】
上記定義したアルケニル基および上記定義したアルキニル基のそれぞれが2つの異なる炭素原子で付着するための単結合を有する場合は、これらはそれぞれ「アルケニレン基」および「アルキニレン基」と呼ばれ、「アルケニル」および「アルキニル」について上記定義したように適宜置換されていてよい。
【0093】
本明細書中で使用する「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードをいい;「ハロアルキル」には、1個以上のハロゲンで置換された指定した数の炭素原子を有する分枝鎖および直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基、たとえばCF3がどちらも含まれることを意図する(たとえば、−Cvw、式中、v=1〜3であり、w=1〜(2v+1)である)。
【0094】
別段に指定しない限りは、単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「アリール」とは、環部分中に6〜10個の炭素を含有する単環および二環の芳香族基をいい(1−ナフチルおよび2−ナフチルを含めたフェニルまたはナフチルなど)、環状炭素またはヘテロ環と縮合した1〜3個の追加の環(アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、またはシクロヘテロアルキル環、たとえば、

などが所望により含まれていてよく、利用可能な炭素原子を介して、1、2、または3個の置換基、たとえば、水素、ハロ、ハロアルキル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキニル、シクロアルキル−アルキル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アリールアルコキシ、アリールチオ、アリールアゾ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、置換アミノ[アミノには、1もしくは2個の置換基(アルキル、アリール、もしくは定義中で言及した他のアリール化合物のうちの任意のものである)が含まれる]、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アリールチオアルキル、アルコキシアリールチオ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキル−アミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アリールスルフィニル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアミノ、またはアリールスルホンアミノカルボニル、および/あるいは本明細書中に記載したアルキル置換基のうちの任意のもので適宜置換されていてよい。
【0095】
別段に指定しない限りは、単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「低級アルコキシ」、「アルコキシ」、「アリールオキシ」または「アラルコキシ」には、1個の酸素原子と連結した上記アルキル、アラルキル、またはアリール基のうちの任意のものが含まれる。
【0096】
別段に指定しない限りは、単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「アミノ」とは、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、またはチオアルキルなどの、同一または異なっていてよい1または2個の置換基で置換されていてよいアミノをいう。これらの置換基は、カルボン酸および/またはR1基のうちの任意のものまたは上述したR1の置換基でさらに置換されていてよい。さらに、アミノ置換基は、それらが付着している窒素原子と一緒になって、1−ピロリジニル、1−ピペリジニル、1−アゼピニル、4−モルホリニル、4−チアモルホリニル、1−ピペラジニル、4−アルキル−1−ピペラジニル、4−アリールアルキル−1−ピペラジニル、または4−ジアリールアルキル−1−ピペラジニルを形成してもよい、これらはすべて、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、トリフルオロメチル、またはヒドロキシで適宜置換されていてよい。
【0097】
別段に指定しない限りは、単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「低級アルキルチオ」、「アルキルチオ」、「アリールチオ」、または「アラルキルチオ」には、硫黄原子と連結した上記アルキル、アラルキル、またはアリール基のうちの任意のものが含まれる。
【0098】
別段に指定しない限りは、単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「低級アルキルアミノ」、「アルキルアミノ」、「アリールアミノ」、または「アリールアルキルアミノ」には、窒素原子と連結した上記アルキル、アリール、またはアリールアルキル基のうちの任意のものが含まれる。
【0099】
本明細書中で使用する用語「ヘテロシクリル」または「ヘテロ環系」とは、飽和、部分的に不飽和または不飽和(芳香族)であり、炭素原子とN、NH、OおよびSからなる群から独立して選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子とからなる、安定な5、6、もしくは7員の単環もしくは二環、または7、8、9、もしくは10員の二環のヘテロ環を意味し、上記定義したヘテロ環のうちの任意のものがベンゼン環と縮合している任意の二環の基が含まれることを意図する。窒素および硫黄ヘテロ原子は所望により酸化されていてよい。ヘテロ環は安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でそのペンダント基に付着していてよい。本明細書中に記載したヘテロ環は、生じる化合物が安定な場合は炭素または窒素原子上で置換されていてよい。具体的に注記した場合は、ヘテロ環中の窒素は所望により第四級化されていてよい。ヘテロ環中のSおよびO原子の合計数が1を超える場合は、これらのヘテロ原子は互いに隣接していないことが好ましい。本明細書中で使用する用語「芳香族ヘテロ環系」または「ヘテロアリール」とは、炭素原子とN、OおよびSからなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子とからなり、芳香族の性質である、安定な5〜7員の単環もしくは二環または7〜10員の二環のヘテロ環状芳香環を意味することを意図する。
【0100】
ヘテロ環の例には、それだけには限定されないが、1H−インダゾール、2−ピロリドニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、2H−ピロリル、1H−インドリル、4−ピペリドニル、4aH−カルバゾール、4H−キノリジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダザロニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、β−カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニルペリミジニル、フェナンスリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、カルボリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、テトラゾリル、およびキサンテニルが含まれる。本発明の別の態様では、ヘテロ環には、それだけには限定されないが、ピリジニル、チオフェニル、フラニル、インダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアフェニル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、キノリニル、イソキノリニル、イミダゾリル、インドリル、イソイドリル(isoidolyl)、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、ピラゾリル(pyrrazolyl)、1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、およびピリミジニルが含まれる。また、たとえば上記ヘテロ環を含有する縮合環およびスピロ化合物も含まれる。
【0101】
ヘテロアリールの例は、1H−インダゾール、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、インドリル、4aH−カルバゾール、4H−キノリジニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、アクリジニル、アゾシニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダザロニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、β−カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル(ベンゾイミダゾリル)、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニルペリミジニル、フェナンスリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピラゾロトリアジニル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、カルボリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、テトラゾリル、およびキサンテニルである。本発明の別の態様では、ヘテロアリールの例は、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダザロニル、シンノリニル、フラニル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾロトリアジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、チアゾリル、チエニル、およびテトラゾリルである。
【0102】
単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「ヘテロシクリルアルキル」または「ヘテロシクリル」とは、C原子またはヘテロ原子を介してアルキル鎖と連結している、上記定義したヘテロシクリル基をいう。
【0103】
単独でまたは別の基の一部として本明細書中で使用する用語「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアリールアルケニル」とは、C原子またはヘテロ原子を介して上記定義したアルキル鎖、アルキレン、またはアルケニレンと連結している、上記定義したヘテロアリール基をいう。
【0104】
本明細書中で使用する用語「シアノ」とは−CN基をいう。
【0105】
本明細書中で使用する用語「ニトロ」とは−NO2基をいう。
【0106】
本明細書中で使用する用語「ヒドロキシ」とはOH基をいう。
【0107】
本明細書中で使用する語句「医薬上許容される」とは、健全な医学的判断の範囲内にあり、過剰な毒性、刺激、アレルギー性応答、または他の問題もしくは合併症なしに人間および動物の組織と接触させて使用することに適しており、合理的な利益/危険性の比が釣り合っている、化合物、物質、組成物、および/または剤形をいう。
【0108】
本明細書中で使用する「医薬上許容される塩」とは、その酸または塩基の塩を作製することによって親化合物を改変する、開示した化合物の誘導体をいう。医薬上許容される塩の例には、それだけには限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸または有機酸の塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機の塩等が含まれる。医薬上許容される塩には、たとえば無毒性の無機または有機酸から形成した、親化合物の慣用の無毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。たとえば、そのような慣用の無毒性塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸に由来するもの;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パルミチン酸(palmidic)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から調製した塩が含まれる。
【0109】
本発明の医薬上許容される塩は、慣用の化学的方法によって塩基性または酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水もしくは有機溶媒または両者の混合物中の理論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができる;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、その開示が本明細書中に参考として組み込まれているRemington's Pharmaceutical Sciences、第17版、ページ1418(Mack Publishing Company、Easton, PA、1985)中に見つかる。
【0110】
インビボで変換されて生物活性剤(すなわち式I化合物)を提供することができる任意の化合物が本発明の範囲および精神の範囲内にあるプロドラッグである。
【0111】
本明細書中で使用する用語「プロドラッグ」には、アセテート、ピバレート、メチルカルボネート、ベンゾエートなどを作製するために当業者に知られている手順を用いて、式Iの化合物の1つまたは複数のヒドロキシルをアルキル、アルコキシ、またはアリール置換のアシル化剤と反応させることによって形成される、エステル、カルバメートおよびカルボネートが含まれる。
【0112】
プロドラッグの様々な形態が当分野で周知であり、以下に記載されている:
a)Wermuth, C.G. et al.、The Practice of Medicinal Chemistry、第31章(Academic Press、1996);
b)Bundgaard, H.編、Design of Prodrugs(Elsevier、1985);
c)Krause, B.R. et al.、第6章:「ACAT Inhibitors: Physiologic Mechanisms for Hypolipidemic and Anti-Atherosclerotic Activities in Experimental Animals」、Inflammation: Mediators and Pathways、Ruffolo, Jr., R.R. et al.編、ページ173〜198(CRC Press, Inc.、1995);および
d)Testa, B. et al.、Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism (Wiley-VCH、2003)。
前記参考文献は本明細書中に参考として組み込まれている。
【0113】
さらに、式Iの化合物は、その調製に続いて好ましくは単離および精製して、99重量%以上の量の式Iの化合物を含有する組成物(「実質的に純粋」な化合物I)が得られ、その後、これを本明細書中に記載のように使用または配合する。そのような「実質的に純粋」な式Iの化合物も本発明の一部として本明細書中に企図される。
【0114】
本発明の化合物のすべての立体異性体が、混合物または純粋もしくは実質的に純粋な形態のいずれかで企図される。本発明の化合物は、R置換基のうちの任意の1つを含めた炭素原子のうちの任意のもので不斉中心を有する、および/または多型性を示す場合がある。その結果、式Iの化合物は、鏡像異性体、もしくはジアステレオマー体、またはその混合物で存在することができる。調製のプロセスでは、ラセミ体、鏡像異性体、またはジアステレオマーを出発物質として利用することができる。ジアステレオマーまたは鏡像異性体の生成物を調製する場合は、たとえばクロマトグラフィーまたは分別結晶化などの慣用の方法によってこれらを分離することができる。
【0115】
「安定な化合物」および「安定な構造」とは、反応混合物から有用な度合の純度まで単離し、有効な治療剤へと配合する間残存するように十分に頑強な化合物を示すことを意味する。本発明は安定な化合物を具体化することを意図する。
【0116】
「治療上有効な量」には、MCP−1を阻害するために有効または炎症性障害を治療もしくは治療するために有効な、本発明の化合物の単独での量または特許請求した化合物の組合せの量または他の活性成分と組み合わせた本発明の化合物の量が含まれることを意図する。
【0117】
本明細書中で使用する「治療すること」または「治療」とは、哺乳動物、特にヒトにおける疾患状態の治療をカバーし、(a)哺乳動物における疾患状態の発生を予防すること(特に、そのような哺乳動物が疾患状態を患いやすくなっているが、未だそれに罹患していると診断されていない場合);(b)疾患状態を阻害すること、すなわちその発生を停止させること;および/または(c)疾患状態を緩和させること、すなわち病状の回帰を引き起こすことが含まれる。
合成
【0118】
本発明の化合物は、有機合成分野の技術者に周知のいくつかの方法で調製することができる。本発明の化合物は、以下に記載の方法を、合成有機化学の分野で知られている合成方法、または当業者に認識されているその変形と一緒に用いて合成することができる。好ましい方法には、それだけには限定されないが、以下に記載のものが含まれる。本明細書中で引用するすべての参考文献は、その全体が本明細書中に参考として組み込まれている。
【0119】
本発明の新規化合物は、本セクション中に記載の反応および技術を用いて調製し得る。反応は、用いる試薬および材料に適しており、実行する変換に適した溶媒中で行なう。また、以下に記載の合成方法の説明において、溶媒の選択、反応雰囲気、反応温度、実験期間および後処理手順を含めたすべての提案した反応条件が、当業者によって容易に認識される、その反応に標準的な条件であるように選択されていることを理解されたい。有機合成分野の技術者には、分子の様々な部分上に存在する官能性が提案した試薬および分子に適合性を有する必要があることが理解されよう。反応条件に適合性を有する置換基に対するそのような制限は当業者に容易に明らかであり、その場合、代替方法を用いる必要がある。このことは、時折、本発明の所望の化合物を得るために、合成工程の順序を変更する判断、または1つの特定のプロセススキームを別のものに優先して選択する判断を必要とする。また、当分野において任意の合成経路を計画するための別の主要な検討事項は、本発明に記載の化合物中に存在する反応性官能基の保護に使用する保護基の賢明な選択であることが理解されよう。多くの代替方法を熟練した専門家に記載している権威ある記述は、Greene et al. (Protective Groups In Organic Synthesis、第3版(Wiley and Sons、1999))である。
【0120】
式(I)の化合物は、スキーム1(ここでAは式(I)のペンデント環を示す)に概説されるルートによって製造されうる。例えばCheng, J. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 2003, 13, 3647により報告されるように、フェノールβ−ケトエステル1−1(ここでRは、例えば、アルキル基(例えばメチル、エチルまたはtert−ブチル)である)を、芳香族アルデヒドA−CHOと、溶媒(例えばイソプロパノール)中、触媒量の酸(例えば酢酸)および塩基(例えばピペリジン)の存在下で、反応させて、中間体1−2(R2=H)を得うる。あるいは、例えば、N. Ishizuka et al., J. Med. Chem. 2002, 45, 2041, またはSaengchantara, S. et al., Tetrahedron 1990, 46, 3029により報告されるように、適当なクロメノン1−3(ここでRは例えば、アルキル基(例えばメチル、エチルまたはtert−ブチル)であり、およびR2=Hまたはアルキルである)を、銅(I)化合物(例えばヨウ化銅(I)、臭化銅(I)、またはシアン化銅(I))の存在下で、グリニャール試薬A−MgBrまたはA−MgClと反応させることによって、またはリチウム有機クプラートA2CuLiと反応させることによって1−2に変換しうる。
スキーム1
【化3】

【0121】
中間体1−2を、適当な溶媒(例えばメタノール)または溶媒の混合液(例えばメタノールおよびテトラヒドロフラン)中で、還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウム)と反応させて、中間体1−4を得うる。ついで、これらの中間体を、中間体1−5(ここでRは、例えば、アルキルである)に、当業者に知られた多くの方法、例えば酸と任意に適当な溶媒中、例えばトルエン中でトリフルオロ酢酸またはp−トルエンスルホン酸と反応させることによって、変換しうる。あるいは、当業者によく知られた方法を用いて、1−4のヒドロキシル基を、より反応性の高い離脱基(例えばメタンスルホン酸エステル、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルまたはハロゲン)に変換しうる。ついで、この中間体を塩基(例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン)と反応させることによって、1−5への脱離を誘導する。ついで、中間体1−5(R=アルキル)を、塩基性または酸性条件下で加水分解することによって、または(R=tert−ブチル)については、強酸(例えばトリフルオロ酢酸、塩酸またはp−トルエンスルホン酸)と、任意に適当な溶媒中で反応させることにより、1−5(R=H)で表される式(I)の化合物に、変換しうる。このようなエステルの酸への変換は、有機合成の当業者によく知られている。
【0122】
中間体1−4は、また、1−5(R=H)で表される式(I)の化合物に、塩基(例えば水酸化ナトリウム)の水溶液で処理することにより、直接変換されうる。
【0123】
中間体1−2はまた、中間体1−7(R4はアルキルである)に、化学文献でよく知られている方法を用いて変換されうる。中間体1−2は、1−6(Lはアルキル基で置き換えられるのに適する基である)に変換されうる。例えば、1−2を塩基(例えば水素化ナトリウム)と適当な溶媒(例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン)中で反応させ、得られたアニオンをクロロホスフェート(例えばジメチルクロロホスフェートまたはジエチルクロロホスフェート)と反応させることによって、(Sum et al., Can. J. Chem. 1979, 57, 1431により報告されるように)、中間体1−6(Lはジアルキルホスホリルオキシ基である)を製造しうる。これらの中間体とリチウムジアルキルクプラートとの反応により、中間体1−7(R4はアルキル基である)が得られ、これを、1−7(R4がHである)で表される式Iの化合物に、例えば、上記のように、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム水溶液で加水分解することにより変換しうる。
【0124】
スキーム1中の出発中間体1−1および1−3は、化学文献に記載の方法を用いて、製造することができる。例えば、フェノールβ−ケトエステル1−1は、Cushman, M. et al., J. Med. Chem. 1991, 34, 798によって報告されるように、2’−ヒドロキシアセトフェノンのジアルキルカルボネートとの塩基触媒縮合によって、または、サリチル酸誘導体と酢酸エステルとの縮合(例えばAppendino, G. et al., J. Nat. Prod. 1999, 62, 1627により報告される方法を用いて)によって、製造しうる。クロメノン誘導体1−3は、例えば、G. Coppola et al., Synthesis 1981, 523によって報告されているように、β−ケトエステル(例えばアセト酢酸メチル)と2−フルオロベンゾイルクロリドとを塩基触媒縮合して、1−3(R2=R=メチル)を得ることによって、または、Okumura, K. et al., Chem. Pharm. Bull. 1974, 22, 331により報告されるように、フェノールβ−ケトエステル1−1と、オルトギ酸トリエチルおよび無水酢酸または酢酸、ギ酸無水物およびギ酸ナトリウムとを反応させて、1−3(R2=H)を得ることによって、製造することができる。
【実施例】
【0125】
実施例で使用される略称は、以下のように定義される:「2×」は2回、「℃」はセルシウス度、「g」はグラムまたはグラムズ、「mmol」はミリモル、「mL」はミリリットルまたはミリリットルズ、「μL」はマイクロリットルまたはマイクロリットルズ、「M」はモル濃度、「min」は分または分、「mg」はミリグラムまたはミリグラムズ、「h」は時間または時間、「LC」は液体クロマトグラフィー、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィー、「TLC」は薄層クロマトグラフィー、「MS」は質量分析、「rt」または「RT」は室温、「calc.」は計算された、「THF」はテトラヒドロフラン、「CDCl3」はクロロホルム、「sat.」は飽和した、「N」はノルマル、および「HCl」は塩酸を意味する。「D」、「L」、「R」および「S」は当業者によく知られている立体化学の表示である。ChemDraw Ultra Version 9.0.5(CambridgeSoft)を用いて化学名は導かれた。このプログラムが問題の正確な構造についての名称を提供できないときは、該プログラムよって使用される同一の方法論を使用して、適当な名称をあてた。

実施例1
ラセミ2−(3−クロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0126】
工程1. メチル 3−(2−ヒドロキシフェニル)−3−オキソプロパノエート(Cushman, M. et al., J. Med. Chem. 1991, 34, 798に従って製造した;250mg、1.29mmol)および3−クロロベンズアルデヒド(146μL、1.29mmol)のイソプロパノール(5.0mL)中混合物をピペリジン(13μL、129μmol)および酢酸(7.4μL、129μmol)で処理し、および17時間加熱還流した。この時間の後、該混合物を室温に冷却した。冷却した溶液を真空下で濃縮し、得られた残渣を9:1ヘキサン−酢酸エチルで溶出する回転式(rotary)TLCによって精製し、無色粘性物質を得た。該無色粘性物質を熱イソプロパノール/水溶液から結晶化し、メチル 2−(3−クロロフェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートをオフホワイト色固体として得た(173mg、42%)。NMRは主にエノール形を示した。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.78(s, 3 H) 6.21(s, 1 H) 6.82(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.97(t, J=7.9 Hz, 1 H) 7.18 - 7.32(m, 4 H) 7.34(m, 1 H) 7.69(dd, J=7.9, 1.8 Hz, 1 H) 12.28(br. s, 1 H). 高分解能質量スペクトル(M+H)+ 計算値 317.0581, 実測値 317.0597.
【0127】
工程2.メチル 2−(3−クロロフェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(153mg、483μmol)のテトラヒドロフラン(2.0mL)中溶液をメタノール(4.0mL)で希釈し、室温にて水素化ホウ素ナトリウム(18mg、483μmol)で処理した。30分後、追加の水素化ホウ素ナトリウム(18mg、483μmol)を加え、室温で攪拌を続けた。3.5時間後、追加の水素化ホウ素ナトリウム(18mg、483μmol)を加えた。後2時間、該混合物を真空下で濃縮し、数滴の1.0M NaOHを含有する水(pH>10)と共に攪拌した。得られた混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、残渣を得た。該残渣をメタノール(2.0mL)および1.0M水酸化ナトリウム水溶液(2.0mL)中に取り、ついで4時間加熱還流した。溶液を室温に冷却し、3mLの1.0M HCl水溶液で酸性化した。メタノール(約10mL)を加熱しながら粘性物質が全て溶解するまで加え、ついで溶液を冷蔵した。得られた実施例1の白色結晶をろ過によって単離した(39mg、28%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 6.25(s, 1 H) 6.81(d, J=7.6 Hz, 1 H) 6.91(dt, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.16 - 7.25(m, 4 H) 7.29(dt, J=4.3, 2.0 Hz, 1 H) 7.37(m, 1 H) 7.69(s, 1 H). 高分解能質量スペクトル(M+H)+ 計算値 287.0475, 実測値 287.0487.

実施例2−1
ラセミ2−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0128】
工程1.メチル 3−(2−ヒドロキシフェニル)−3−オキソプロパノエート(Cushman, M. et al., J. Med. Chem. 1991に従って製造した、200mg、1.03mmol)および4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(148μL、1.03mmol)のイソプロパノール(4.0mL)中混合物をピペリジン(10μL、103μmol)および酢酸(5.9μL、103μmol)で処理し、16.5時間加熱還流した。この時間の後、水(2.0mL)を加え、溶液を室温にゆっくりと冷却し、結晶が生じた。室温で放置した後、該混合物を氷冷し、得られた結晶をろ過して集め、乾燥して、メチル 2−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートを白色結晶性固体として得た(204mg、51%)。第2の生成物(47mg)を母液から得て、全収率は63%に引き上がった。NMRは主にエノール形を示した。1H NMR(500 MHz, CDCl3) δppm 3.79(s, 3 H) 6.24(s, 1 H) 6.82(d, J=8.2 Hz, 1 H) 7.00(t, J=7.7 Hz, 1 H) 7.31(t, J=6.9 Hz, 1 H) 7.42(m, 2 H) 7.70(m, 2 H) 12.27(br. s, 1 H). 質量スペクトル m/z 407.19, 409.18(M+Na)+.
【0129】
工程2.メチル 2−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(300mg、780μmol)のテトラヒドロフラン(2.0mL)中溶液をメタノール(4.0mL、780μmol)で希釈し、室温にて水素化ホウ素ナトリウム(30mg、780μmol)で処理した。2.25時間後、該溶液を水(約25mL)に注ぎ入れ、1.0M HCl水溶液(約1mL)で処理し、ついで酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、粗ラセミメチル 2−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−ヒドロキシクロマン−3−カルボキシレートを白色固体として得た(292mg)。さらに精製することなく、この物質をジクロロメタン(9.5mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.5mL)で処理した。室温で1.5時間放置した後、該溶液を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、残渣を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2−10%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、粗ラセミメチル 2−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−2H−クロメン−3−カルボキシレートを無色粘性物質として得た(65mg)。さらに精製することなく、この粘性物質の一部(60mg)のメタノール(2.0mL)中溶液を1.0M水酸化ナトリウム水溶液(2.0mL)で処理し、4.5時間加熱還流した。この時間の後、該溶液を室温に冷却した。所定の温度になったら、白色固体が生じ、それをろ過によって取り除き、水で洗浄した。合わせたろ液および洗浄液を1.0M HCl水溶液で酸性化し、粘着性物質を得た。少量のメタノールを該粘着性物質に加え、得られた混合物を短く加熱し、ついで室温に冷却する間攪拌し、それにより、白色固体が得られ、これをろ過して集め、水で洗浄し、真空下で乾燥して、実施例2−1(29mg)を得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 6.26(s, 1 H) 6.83(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.96(t, J=7.1 Hz, 1 H) 7.23(dd, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.29(m, 1 H) 7.41(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.46(dd, J=8.6, 2.0 Hz, 1 H) 7.72(d, J=1.5 Hz, 1 H) 7.83(s, 1 H. 質量スペクトル m/z 355.24(M+H)+, 377.16(M+Na)+.

実施例2−2〜2−4
【0130】
下記テーブル1に記載される実施例2−2〜2−4を、実施例2−1に記載の方法を用いて製造した:
テーブル1
【表1】

【0131】
実施例3
ラセミ2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
工程1. メチル 3−(2−ヒドロキシフェニル)−3−オキソプロパノエート(Cushman, M. et al., J. Med. Chem. 1991, 34, 798に従って製造した;200mg、1.03mmol)およびピペロナール(155mg、1.03mmol)のイソプロパノール(5.0mL)中混合物をピペリジン(10μL、103μmol)および酢酸(5.9μL、103μmol)で処理し、ついで15.5時間加熱還流した。この時間の最後に、該溶液を水(1.0mL)で処理し、攪拌しながら室温に冷却した。所定の温度になったら、該混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2−25%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製し、濁った油状物(172mg)を得た。該濁った油状物をメタノールから結晶化し、メチル 2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートを白色固体として得た(63mg、19%)。NMRは主にエノール形を示した。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.76(s, 3 H) 5.91(m, 2 H) 6.15(s, 1 H) 6.70(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.78(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.82(dd, J=8.1, 1.5 Hz, 1 H) 6.86(d, J=2.0 Hz, 1 H) 6.96(dt, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.28(m, 1 H) 7.68(dd, J=7.6, 1.5 Hz, 1 H) 12.26(br. s, 1 H). 質量スペクトル m/z 349.18(M+Na)+.
【0132】
工程2.メチル 2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(58mg、178μmol)のテトラヒドロフラン(1.0mL)中溶液をメタノール(2.0mL)で希釈し、氷/アセトン浴上で攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム(7mg、178μmol)を加え、得られた混合物を40分間攪拌した。この時間の後、水(約10mL)を加え、該混合物を室温に加温しながら攪拌した。得られた白色固体をろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥して、ラセミメチル 2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−4−ヒドロキシクロマン−3−カルボキシレート(51mg、87%)を得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 2.69(s, 1 H) 3.47(dd, J=6.6, 2.5 Hz, 1 H) 3.51(s, 3 H) 5.25(d, J=5.6 Hz, 1 H) 5.31(d, J=2.5 Hz, 1 H) 5.99(s, 2 H) 6.82(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.89(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.92(m, 2 H) 7.03(t, J=7.4 Hz, 1 H) 7.23(td, J=7.1, 1.0 Hz, 1 H) 7.57(d, J=7.6 Hz, 1 H). 質量スペクトル m/z 351.20(M+Na)+.
【0133】
工程3. ラセミメチル 2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−4−ヒドロキシクロマン−3−カルボキシレート(49mg、149μmol)のジクロロメタン(2.0mL)中懸濁液を氷浴上で攪拌し、トリエチルアミン(31μL、224μmol)で処理し、ついで塩化メタンスルホニル(13μL、164μmol)を滴下して処理した。90分後に冷却槽を取り除き、該溶液を室温で23時間攪拌した。この時間の最後に、該溶液を追加のジクロロメタンで希釈し、1.0M HCl水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、残渣を得た。該残渣をベンゼン(2.0mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(30μL、224μmol)で処理し、60℃で3.75時間攪拌した。この時間の後、該混合物を室温に冷却し、ついで酢酸エチルで希釈し、1.0M HCl水溶液、水、および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2−10%酢酸エチル/ヘキサン)によって精製し、ラセミメチル 2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−クロメン−3−カルボキシレートを白色固体として得た(27mg、58%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.77(s, 3 H) 5.91(m, 2 H) 6.18(s, 1 H) 6.71(d, J=8.6 Hz, 1 H) 6.78(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.85(m, 2 H) 6.90(t, J=7.4 Hz, 1 H) 7.19(m, 2 H) 7.67(s, 1 H).
【0134】
工程4.ラセミメチル 2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−2H−クロメン−3−カルボキシレート(26mg、84μmol)のテトラヒドロフラン(1.0mL)中溶液を1.0M水酸化ナトリウム水溶液(1.0mL)で処理し、該混合物を室温で23.5時間激しく攪拌した。この時間の後、THFを窒素流下で除去し、得られた含水残渣を1.0M HCl水溶液で酸性化した。得られた固体をろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥して、実施例3を白色粉末として得た(19mg、77%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 5.91(m, 2 H) 6.16(s, 1 H) 6.71(d, J=8.6 Hz, 1 H) 6.79(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.86(m, 2 H) 6.91(t, J=7.4 Hz, 1 H) 7.21(m, 2 H) 7.76(s, 1 H). 質量スペクトル m/z 297.29(M+H)+.

実施例4−1
ラセミ2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0135】
工程1.乾燥したフラスコ中、アセト酢酸メチル(2.16mL、20.0mmol)のトルエン(100mL)中溶液を水素化ナトリウム(60%鉱油分散、880mg、22.0mmol)で処理した。得られた混合物を室温で10分間攪拌し、ついで2−フルオロベンゾイルクロリド(2.23mL、20.0mmol)のトルエン(50mL)中溶液を約1分間かけて加えた。得られた混合物を24.5時間加熱還流し、ついで水(200mL)に注ぎ入れた。該混合物をエーテル(各々50mL)で2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、粘性黄色油状物を得、これは結晶化した。該固体を酢酸エチル/ヘキサン溶液から再結晶化し、メチル 2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−カルボキシレートをオフホワイト色結晶の2度の収穫物として得た(2.10g、48%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 2.53(s, 3 H) 3.94(s, 3 H) 7.42(m, 2 H) 7.67(ddd, J=8.5, 7.0, 1.8 Hz, 1 H) 8.21(dd, J=7.9, 1.8 Hz, 1 H).
【0136】
工程2.塩化銅(I)(454mg、4.58mmol)のテトラヒドロフラン(5.0mL)中懸濁液を乾燥したフラスコ中、窒素下、氷上で攪拌した。(3,4−ジクロロフェニル)マグネシウムブロミド(0.5M)のTHF(9.17mL、4.58mmol)中溶液を約2分間かけて加えた。得られた混合物を氷上で5分間攪拌し、ついでメチル 2−メチル−4−オキソ−4H−クロメン−3−カルボキシレート(500mg、2.29mmol)のTHF(6.0mL)中溶液で約2分間かけて処理した。該混合物を氷上で10分間攪拌し、ついで室温にまで放温した。室温で4.5時間後、反応混合物を9:1の飽和塩化アンモニウム水溶液/アンモニア水(20mL)を添加してクエンチした。添加が完了次第、反応混合物を室温で10分間攪拌し、ついで酢酸エチルおよび追加の塩化アンモニウムを加えた。水層および有機層をよく混合し、ついで分離させた。有機層を飽和塩化アンモニウムで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ついで真空下で濃縮し、残渣を得た。該残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、9:1ヘキサン−酢酸エチル)によって精製し、メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートを無色粘性物質として得た(518mg、62%)。NMRにより、この物質はエノール型および2つのジアステレオマーのケト形(比率 約1:1:2)の混合物であった。質量スペクトル m/z 387.01, 389.03(M+Na)+.
【0137】
工程3.メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(490mg、1.34mmol)のTHF(2.0mL)中溶液をメタノール(4.0mL)で希釈し、室温にて水素化ホウ素ナトリウム(51mg、1.34mmol)で処理した。4時間後に追加の水素化ホウ素ナトリウムを加えた。さらに後2.5時間後、該溶液を真空下で濃縮した。残渣を水(数滴の1.0M水酸化ナトリウム水溶液を含む)と酢酸エチル間に分配した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、粗メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−メチルクロマン−3−カルボキシレートを白色固体として得(485mg、98%)、これをさらに精製することなく使用した。質量スペクトル m/z 389, 391(M+Na)+.
【0138】
工程4.粗メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−2−メチルクロマン−3−カルボキシレート(100mg、272μmol)のジクロロメタン(2.0mL)中溶液を氷浴上で攪拌し、トリエチルアミン(76μL、545μmol)で処理し、ついで塩化メタンスルホニル(23μL、300μmol)を滴下して処理した。1.5時間攪拌した後、該溶液を室温にまで加温した。室温で6時間攪拌した後、該溶液をジクロロメタンで希釈し、1.0M HCl水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をベンゼン(2.0mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(55μL、408μmol)で処理し、室温で25分間攪拌した。この時間の後、得られた混合物を60℃に加熱し、その温度でそれを5.25時間攪拌した。この時間の後、該溶液を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、水、1.0M HCl水溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ついで真空下で濃縮し、残渣を得た。該残渣を回転式TLC(シリカゲル、92:8ヘキサン−酢酸エチル)によって精製し、ラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−2H−クロメン−3−カルボキシレートを無色粘性物質として得た(44mg、46%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 2.02(s, 3 H) 3.73(s, 3 H) 6.82(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.92(dt, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.15(dd, J=7.6, 1.5 Hz, 1 H) 7.25(dt, J=7.9, 1.5 Hz, 1 H) 7.37(m, 2 H) 7.58(s, 1 H) 7.61(t, J=1.5 Hz, 1 H).
【0139】
工程5.ラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−メチル−2H−クロメン−3−カルボキシレート(44mg、126μmol)のメタノール(1.0mL)中溶液を1.0M水酸化ナトリウム水溶液(1.0mL)で処理し、4.25時間加熱還流した。この時間の後、該溶液を室温に冷却し、ついで1.0M HCl水溶液で酸性化し、濃密な白色沈殿物が生じた。反応混合物を水(2mL)で希釈し、得られた固体をろ過により集め、水で洗浄し、乾燥して実施例4−1を白色固体として得た(33mg、78%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 2.04(s, 3 H) 6.83(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.93(dt, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.17(dd, J=7.6, 1.5 Hz, 1 H) 7.28(m, 1 H) 7.37(m, 2 H) 7.60(s, 1 H) 7.74(s, 1 H).

実施例4−2
ラセミ2−(3,4−ジクロロフェニル)−2−エチル−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0140】
実施例4−1の方法を用いて、メチル 3−オキソペンタノエートを実施例4−2に白色固体として変換した(16%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 1.07(t, J=7.1 Hz, 3 H) 2.22(dq, J=14.3, 7.4 Hz, 1 H) 2.68(dq, J=14.3, 7.4 Hz, 1 H) 6.87(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.90(t, J=7.6 Hz, 1 H) 7.14(dd, J=7.6, 1.5 Hz, 1 H) 7.28(m, 1 H) 7.35(m, 2 H) 7.59(t, J=1.3 Hz, 1 H) 7.80(s, 1 H). 高分解能質量スペクトル m/z 347.0247(M-H)-, 計算値 347.0247.

実施例5−1
ラセミ2−(3,4−ジクロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0141】
工程1.メチル 3−(2−ヒドロキシフェニル)−3−オキソプロパノエート(Cushman, M. et al., J. Med. Chem. 1991, 34, 798に従って製造した;500mg、2.56mmol)および3,4−ジクロロベンズアルデヒド(496mg、2.83mmol)のイソプロパノール(5.0mL)中混合物をピペリジン(25μl、257μmol)および酢酸(15μl、257μmol)で処理し、ついで20時間加熱還流した。この時間の最後に、該混合物を氷冷して、粘性物質が、溶液から分離した。混合物を少量の水で処理し、均一になるまで加温した。室温にゆっくり冷却すると、固体が生じ、これをろ過により集め、真空下で乾燥して、ラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートをオフホワイト色粉末として得た(496mg、55%)。ろ液を部分的に濃縮することによって、追加の試料(57mg、6%)が得られた。NMRは主にエノール形を示した。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.78(s, 3 H) 6.18(s, 1 H) 6.81(dd, J=8.1, 1.0 Hz, 1 H) 6.99(td, J=7.4, 1.0 Hz, 1 H) 7.19(dd, J=8.4, 1.8 Hz, 1 H) 7.31(m, 1 H) 7.34(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.43(d, J=2.0 Hz, 1 H) 7.69(dd, J=7.9, 1.8 Hz, 1 H) 12.28(br. s, 1 H). 高分解能質量スペクトル m/z 実測値 373.0016, 計算値 373.0010(M+Na)+.
【0142】
工程2a.ラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(100mg、285μmol)のTHF(2.0mL)中溶液をメタノール(4.0mL)で希釈し、氷/アセトン浴上で攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム(11mg、285μmol)を加え、得られた混合物を40分間攪拌した。この時間の後、該混合物を水で希釈し、室温に加温しながら攪拌した。生じた白色固体をろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥して、メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシクロマン−3−カルボキシレート(90mg)を得た。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.49(s, 3 H) 3.51(m, 1 H) 5.26(d, J=6.1 Hz, 1 H) 5.35(d, J=2.5 Hz, 1 H) 6.94(dd, J=8.1, 1.0 Hz, 1 H) 7.06(td, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.22 - 7.29(m, 2 H) 7.47(d, J=8.6 Hz, 1 H) 7.56(d, J=1.5 Hz, 1 H) 7.58(d, J=7.6 Hz, 1 H).
【0143】
工程2b.メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシクロマン−3−カルボキシレート(90mg)およびp−トルエンスルホン酸水和物(24mg、128μmol)をトルエン(4.0mL)に溶解し、加熱還流した。40分後、該溶液を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、ラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボキシレートを白色固体として得た(90mg、94%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.79(s, 3 H) 6.21(s, 1 H) 6.81(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.93(t, J=7.6 Hz, 1 H) 7.17 - 7.25(m, 3 H) 7.35(d, J=8.6 Hz, 1 H) 7.44(d, J=2.0 Hz, 1 H) 7.70(s, 1 H).
【0144】
工程3.ラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボキシレート(90mg、268μmol)をメタノール(1.5mL)に懸濁し、ついで1.0M水酸化ナトリウム水溶液(1.5mL)で処理した。得られた懸濁液を加熱還流した。還流を2時間した後、該溶液を1.0M HCl水溶液(1.5mL)で酸性化し、攪拌しながら室温に冷却した。得られた固体をろ過により集め、水で洗浄し、真空下で乾燥して、実施例5−1を薄帯黄色の固体として得た(73mg、85%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 6.20(s, 1 H) 6.82(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.95(td, J=7.4, 1.0 Hz, 1 H) 7.20 - 7.29(m, 3 H) 7.36(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.45(d, J=2.0 Hz, 1 H) 7.81(s, 1 H). 質量スペクトル m/z 321.24(M+H)+.

実施例5−2
ラセミ2−(4−クロロナフタレン−1−イル)−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0145】
工程1.実施例5−1、工程1の方法に従って、4−クロロ−1−ナフトアルデヒド(PCT特許出願公開WO02/17712に報告される方法に従って製造した、196mg、1.03mmol)をラセミメチル 2−(4−クロロナフタレン−1−イル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(127mg、34%)に変換した。
【0146】
工程2.実施例5−1、工程2の方法に従って、ラセミメチル 2−(4−クロロナフタレン−1−イル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(124mg、338μmol)をラセミメチル 2−(4−クロロナフタレン−1−イル)−2H−クロメン−3−カルボキシレートに変換した。実施例5−1、工程2の方法とは対照的に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン、2−10%)によって精製し、白色ガラス状泡状物を得た(98mg、83%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.73(s, 3 H) 6.88(td, J=7.6, 1.0 Hz, 1 H) 7.06(s, 1 H) 7.10(td, J=7.8, 1.8 Hz, 1 H) 7.22 - 7.27(m, 2 H) 7.38(d, J=7.6 Hz, 1 H) 7.64 - 7.76(m, 2 H) 7.90(s, 1 H) 8.32(dd, J=8.6, 1.0 Hz, 1 H) 8.62(d, J=8.1 Hz, 1 H).
【0147】
工程3.実施例5−1、工程3の方法に従って、ラセミメチル 2−(4−クロロナフタレン−1−イル)−2H−クロメン−3−カルボキシレート(98mg、279μmol)を実施例5−2に変換し、白色粉末として単離した(85mg、90%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 6.58(d, J=8.1 Hz, 1 H) 6.93(t, J=7.4 Hz, 1 H) 7.06(s, 1 H) 7.14(t, J=7.6 Hz, 1 H) 7.28(d, J=7.6 Hz, 1 H) 7.46(d, J=7.6 Hz, 1 H) 7.61(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.80(t, J=8.1 Hz, 1 H) 7.84(t, J=7.1 Hz, 1 H) 7.96(s, 1 H) 8.27(d, J=8.1 Hz, 1 H) 8.69(d, J=8.1 Hz, 1 H) 12.95(s, 1 H). 高分解能質量スペクトル m/z 695.0984(2M+Na)+, 計算値 695.0999.

実施例5−3
ラセミ2−(ピリジン−4−イル)−2H−クロメン−3−カルボン酸 トリフルオロ酢酸塩の製造
【0148】
工程1.実施例5−1、工程1の方法に従って、ピコリンアルデヒド(120μl、1.29mmol)をラセミメチル 2−(ピリジン−4−イル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートに変換した。実施例5−1、工程1とは対照的に、生成物は反応混合物から結晶化せず、これを濃縮し、得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、1−100%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、油状物を得た(100mg、27%)。NMRにより、この油状物はエノール形およびケト形の混合物であった(割合 約6:4)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.70(s, ケト 3 H) 3.82(s, エノール 3 H) 4.01(d, J=11.7 Hz, ケト 1 H) 5.74(d, J=11.7 Hz, ケト 1 H) 6.23(s, エノール 1 H) 6.88(d, J=8.1 Hz, エノール 1 H) 6.99(t, J=7.9 Hz, エノール 1 H) 7.07(d, J=8.1 Hz, ケト 1 H) 7.12(t, J=8.1 Hz, ケト 1 H) 7.26(d, J=6.1 Hz, エノール 2 H) 7.32(t, エノール 1 H) 7.41(d, J=6.1 Hz, ケト 2 H) 7.58(t, J=8.6 Hz, ケト 1 H) 7.68(dd, J=7.6, 1.5 Hz, エノール 1 H) 7.95(dd, J=7.9, 1.8 Hz, ケト 1 H) 8.52(d, J=6.1 Hz, エノール 2 H) 8.68(d, J=6.1 Hz, ケト 2 H) 12.25(br. s, エノール 1 H). 質量スペクトル m/z 284.2(M+H)+.
【0149】
工程2.ラセミメチル 2−(ピリジン−4−イル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(100mg、353μmol)のメタノール(5.0mL)中溶液を氷/アセトン浴上で攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム(27mg、707μmol)を加え、室温に加温しながら、該混合物を2時間攪拌した。所定の温度になったら、該混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液で希釈し、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮した。得られた残渣をトルエン(5.0mL)に溶解し、p−トルエンスルホン酸水和物(135mg、709μmol)で処理した。得られた混合物を2時間加熱還流した。この時間の後、該混合物を室温に冷却し、水および酢酸エチルで希釈し、ついで1.0M水酸化ナトリウム水溶液(5.0mL)で処理した。水層および有機層を分離し、水相を酢酸エチルでさらに2回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮し、残渣を得た。残渣(100mg)をさらに精製することなく使用した。質量スペクトル m/z 268.2(M+H)+.
【0150】
工程3.実施例5−1、工程3の方法に従って、粗ラセミメチル 2−(ピリジン−4−イル)−2H−クロメン−3−カルボキシレート(100mg、375μmol)をラセミ2−(ピリジン−4−イル)−2H−クロメン−3−カルボン酸に変換した。実施例5−1、工程3とは対照的に、生成物をプレパラティブHPLC[(C18、5−95%アセトニトリル−水(0.05%トリフルオロ酢酸含有)]および凍結乾燥によって精製し、実施例5−3を黄色固体として得た(30mg、22%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 6.47(s, 1 H) 7.00(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.03(t, J=7.6 Hz, 1 H) 7.24(dd, J=7.4, 1.3 Hz, 1 H) 7.37(t, J=7.1 Hz, 1 H) 7.78(s, 1 H) 7.94(d, J=6.1 Hz, 2 H) 8.85(d, J=6.6 Hz, 2 H). 高分解能質量スペクトル m/z 254.0817(M+H)+, 計算値 254.0817.

実施例5−4〜5−26
【0151】
下記テーブル2に記載の実施例5−4〜5−26は、実施例5−1、5−2および5−3に記載の方法を用いて製造した:
テーブル2
【表2】

【0152】
実施例6aおよび6b
(−)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボン酸および(+)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボン酸、それぞれの製造
実施例5−26の試料(31mg)を超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralcel OJ、二酸化炭素−メタノール 70−30、100バール、35C°)を用いて分割した。(−)異性体が最初に溶出し、>99%エナンチオマー純度にて得られた(14mg)。[α]D=−168.2°(MeOH、c=2.5mg/mL)。(+)異性体が2番目に溶出し、>98%エナンチオマー純度(14mg)にて得られた。[α]D=+176.8°(MeOH、c=2.5mg/mL)。両異性体のNMRスペクトルは、ラセミ物質のそれと一致した。

実施例7−1
ラセミ2−(3−メトキシ−4−クロロフェニル)−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0153】
工程1.4−クロロ−3−メトキシ安息香酸(1.12g、5.98mmol)のTHF(30mL)中溶液を氷浴上で攪拌し、1.0M水素化アルミニウムリチウムのテトラヒドロフラン溶液(7.18mL、7.18mmol)で約5分間かけて処理した。溶液を氷上で2時間攪拌し、ついで、急速に攪拌しながら、水(0.27mL)、続いて15%水酸化ナトリウム水溶液(0.27mL)、ついで再び水(0.82mL)をゆっくりと滴下することによって、クエンチした。添加が完了次第、得られた懸濁液をろ過し、集めた固体を酢酸エチルで洗浄した。ろ液を真空下で濃縮し、(4−クロロ−3−メトキシフェニル)メタノールを無色油状物として得た(737mg、71%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.92(s, 3 H) 4.67(s, 2 H) 6.87(d, J=7.6 Hz, 1 H) 6.98(s, 1 H) 7.33(d, J=7.6 Hz, 1 H).
【0154】
工程2.ピリジニウム クロロクロメート(1.37g、6.34mmol)のジクロロメタン(35mL)中懸濁液をセライト(2.0g)で処理し、および室温で攪拌した。(4−クロロ−3−メトキシフェニル)メタノール(730mg、4.23mmol)のジクロロメタン(5mL)中溶液を滴下し(added in one portion)、および得られた混合物を室温で3時間攪拌した。この時間の後、該混合物をジエチルエーテルで希釈し、激しく攪拌した。該混合物をついでシリカゲルパッドに通してろ過し、集めた固体を追加のジエチルエーテルでリンスした。合わせたろ液を真空下で濃縮して、4−クロロ−3−メトキシベンズアルデヒドを薄黄褐色固体として得た(630mg、87%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.98(s, 3 H) 7.41(dd, J=7.9, 1.8 Hz, 1 H) 7.45(d, J=2.0 Hz, 1 H) 7.55(d, J=7.6 Hz, 1 H) 9.95(s, 1 H).
【0155】
工程3.実施例5−1、工程1に記載の方法に従って、4−クロロ−3−メトキシベンズアルデヒド(132mg、772μmol)をラセミメチル 2−(3−メトキシ−4−クロロフェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートに変換した。実施例5−1、工程1に記載の方法とは対照的に、粗生成物は固体でなく、むしろ、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、5−20%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、無色粘性物質を得た(172mg、64%)。NMRにより、この物質はエノール形およびケト形の混合物であった(割合 約7:3)。
【0156】
工程4.実施例5−1の工程2および3に記載の方法に従って、ラセミメチル 2−(3−メトキシ−4−クロロフェニル)−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(169mg、487μmol)を実施例7−1に白色固体として変換した(72mg、47%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.80(s, 3 H) 6.22(s, 1 H) 6.79 - 6.86(m, 2 H) 6.95(t, J=7.4 Hz, 1 H) 7.19(d, J=1.5 Hz, 1 H) 7.25(td, J=7.6, 1.5 Hz, 1 H) 7.35(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.40(dd, J=7.4, 1.3 Hz, 1 H) 7.74(s, 1 H) 12.98(s, 1 H). 高分解能質量スペクトル m/z 315.0430(M-H)-, 計算値 315.0424.

実施例7−2〜7−5
【0157】
下記テーブル3に記載する実施例7−2〜7−5は、実施例7−1に記載の方法を用いて製造した:
テーブル3
【表3】

【0158】
実施例8
ラセミ2−(3,4−ジクロロフェニル)−6−メトキシ−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
工程1.リチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(1.0M テトラヒドロフラン中、61.5mL、61.5mmol)の溶液を−78℃で攪拌し、5分間かけて酢酸tert−ブチル(5.2mL、38.4mmol)のテトラヒドロフラン(13mL)中溶液で処理した。得られた混合物を−78℃で55分間攪拌し、ついでメチル 2−ヒドロキシ−5−メトキシベンゾエート(1.63mL、10.98mmol)のテトラヒドロフラン(13mL)中溶液を5分間かけて滴下して処理した。得られた溶液を室温にゆっくり加温し、その温度でそれを3日間攪拌した。この時間の最後に、該溶液を氷冷飽和塩化アンモニウム水溶液で処理し、ついで酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下で濃縮して、油状物を得た。油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、20−30%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、および流出液を濃縮し、残渣を得た。残渣をヘキサンから再結晶させ、tert−ブチル 3−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエートを黄色結晶として得た(2.40g、82%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 1.46(s, 9 H) 3.79(s, 3 H) 3.89(s, 2 H) 6.95(d, J=9.2 Hz, 1 H) 7.11(d, J=3.1 Hz, 1 H) 7.14(dd, J=8.6, 2.5 Hz, 1 H) 11.54(s, 1 H). 質量スペクトル m/z 289.19(M+Na)+.
【0159】
工程2.tert−ブチル 3−(2−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル)−3−オキソプロパノエート(500mg、1.88mmol)のイソプロパノール(5.0mL)中溶液を3,4−ジクロロベンズアルデヒド(329mg、1.88mmol)、ピペリジン(20μL、188μmol)および酢酸(10μL、188μmol)で処理した。反応混合物を終夜加熱還流し、ついで水(1.0mL)で処理した。得られた混合物を室温に冷却し、ついで真空下で濃縮し、残渣を得た。該残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、2−25%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、ラセミtert−ブチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−6−メトキシ−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートを黄色油状物として得た(380mg、48%)。この物質をさらに精製することなく下記工程3で使用した。
【0160】
工程3.ラセミtert−ブチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−6−メトキシ−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(100mg、236μmol)のテトラヒドロフラン(1.0mL)中溶液をメタノール(1.0mL)で希釈し、0℃で攪拌した。水素化ホウ素ナトリウム(12mg、473μmol)を加え、得られた混合物を30分間攪拌した。この時間の後、水(2.0mL)を加え、該混合物を室温で攪拌した。得られた白色固体をろ過により集め、真空下で乾燥して、ついでカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、5−55%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、tert−ブチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−6−メトキシクロマン−3−カルボキシレートのジアステレオマーの混合物を得た(21mg、21%)。この物質をさらに精製することなく下記工程4で使用した。
【0161】
工程4.tert−ブチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシ−6−メトキシクロマン−3−カルボキシレート(21mg、49μmol)およびp−トルエンスルホン酸水和物(5mg、25μmol)のトルエン(5mL)中混合物を30分間加熱還流した。この時間の最後に、該溶液を室温に冷却し、ついで真空下で濃縮し、残渣を得た。該残渣を水で処理し、得られた固体をろ過により集め、ついで真空下で乾燥した。得られた物質をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、0−50%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、ついで回転式薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン−酢酸エチル)によって再度精製し、実施例8を得た(5mg、28%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.77(s, 3 H) 6.16(s, 1 H) 6.74 - 6.78(m, 2 H) 6.83(dd, J=9.2, 3.1 Hz, 1 H) 7.21(dd, J=8.6, 2.0 Hz, 1 H) 7.35(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.44(d, J=2.0 Hz, 1 H) 7.76(s, 1 H). 質量スペクトル m/z 349.2(M-H)-.

実施例9−1
ラセミ2−(3,4−ジクロロフェニル)−7−フルオロ−2H−クロメン−3−カルボン酸の製造
【0162】
工程1.リチウム ビス(トリメチルシリル)アミド(39.0mL、39.0mmol)の1.0Mテトラヒドロフラン溶液を−78℃で攪拌し、25分間かけて、1−(4−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)エタノン(2.00g、13.0mmol)の50mLのテトラヒドロフラン中溶液で処理した。得られた溶液を−78℃で1時間、ついで−15℃で2時間攪拌した。再び−78℃に冷却した後、該溶液をジメチル カルボネート(1.20mL、14.3mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)中溶液で処理した。得られた混合物を室温にまで放温し、その温度で終夜攪拌した。この時間の後、該混合物を氷に注ぎ入れ、ついで濃塩酸(10mL)を加えた。得られた混合物をジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ついで真空下で濃縮し、残渣を得た。該残渣を放射状(radial)薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、2−40%酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、メチル 3−(4−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)−3−オキソプロパノエートを白色固体として得た(1.76g、64%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 3.78(s, 3 H) 3.98(s, 2 H) 6.62 - 6.71(m, 2 H) 7.69(dd, J=8.9, 6.4 Hz, 1 H) 12.15(d, J=1.5 Hz, 1 H). 質量スペクトル m/z 213.14(M+H)+.
【0163】
工程2.実施例5−1、工程1に記載の方法に従って、メチル 3−(4−フルオロ−2−ヒドロキシフェニル)−3−オキソプロパノエート(500mg、2.36mmol)をラセミメチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−7−フルオロ−4−オキソクロマン−3−カルボキシレートに変換した。実施例5−1、工程1に記載の方法とは対照的に、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン)によって精製し、白色固体を得た(630mg、72%)。NMRにより、この物質はエノール形およびケト形の混合物であった(割合 約7:3).
【0164】
工程3.実施例5−1、工程2および3に記載の方法に従って、ラセミメチル メチル 2−(3,4−ジクロロフェニル)−7−フルオロ−4−オキソクロマン−3−カルボキシレート(100mg、271μmol)を実施例9−1に薄黄色固体として変換した(37mg、40%)。1H NMR(400 MHz, CDCl3) δppm 6.20(s, 1 H) 6.56(dd, J=9.7, 2.0 Hz, 1 H) 6.67(td, J=8.4, 2.5 Hz, 1 H) 7.19 - 7.23(m, 2 H) 7.38(d, J=8.1 Hz, 1 H) 7.44(d, J=2.0 Hz, 1 H) 7.77(s, 1 H). 質量スペクトル m/z 337.2(M-H)-.

実施例9−2〜9−6
【0165】
下記テーブル4に記載の実施例9−2〜9−6を、実施例9−1に記載の方法を用いて製造した:
テーブル4
【表4】

【0166】
有用性
一般に、前述の実施例中に開示した具体的な化合物などの本発明の化合物は、ケモカイン受容体活性のモジュレーターであることが示されている(たとえば、以下に記載のものなどの結合アッセイにおいてKi値<10,000nMを示すことによって)。ケモカイン受容体活性のモジュレーターとしての活性を示すことにより、本発明の化合物はケモカインおよびその同族受容体に関連するヒト疾患の治療において有用であることが予想される。
ヒトPBMCに対するMCP−1の結合の拮抗
(Yoshimura et al.、J. Immunol. 1990、145、292)
【0167】
Milliporeフィルタープレート(#MABVN1250)を、100μlの結合バッファー(RPMI1640培地中に0.5%のウシ血清アルブミン、20mMのHEPESバッファーおよび5mMの塩化マグネシウム)で、30分間、室温で処理する。結合を測定するために、既知の濃度の化合物を含むまたは含まない50μlの結合バッファーを、50μlの125−Iで標識したヒトMCP−1(150pMの放射性リガンドの最終濃度を得る)および5×105個の細胞を含有する50μlの結合バッファーと合わせる。そのような結合アッセイに用いる細胞には、フィコール−Hypaque勾配遠心分離によって単離したヒト末梢血単核球、ヒト単球(Weiner et al.、J. Immunol. Methods. 1980、36、89)、または内在性受容体を発現するTHP−1細胞系が含まれることができる。化合物、細胞および放射性リガンドの混合物を室温で30分間インキュベーションする。プレートを真空の多岐管上に置き、真空を適用し、0.5MのNaClを含有する結合バッファーでプレートを3回洗浄する。プラスチックスカートをプレートから取り外し、プレートを空気乾燥させ、ウェルを打ち抜いて計数する。競合化合物が何も存在しない場合に得られる合計数および試験化合物の代わりに100nMのMCP−1を加えることによって決定されるバックグラウンドの結合を用いて、結合の%阻害を計算する。
MCP−1誘導性のカルシウム流入の拮抗
(Sullivan et al.、Methods Mol. Biol. 1999、114、125〜133)
【0168】
カルシウム動員は蛍光Ca2+指示薬色素Fluo−3を用いて測定する。細胞を、8×105個の細胞/mlで、0.1%のウシ血清アルブミン、20mMのHEPESバッファー、5mMのグルコース、1%のウシ胎児血清、4μMのFluo−3AMおよび2.5mMのプロベネシドを含有するリン酸緩衝生理食塩水中、60分間37℃でインキュベーションする。そのようなカルシウムアッセイで使用する細胞には、Weiner et al.、J. Immunol. Methods 1990、36、89〜97によって記載されているように単離したヒト単球またはTHP−1およびMonoMac−6などの内在性CCR2受容体を発現する細胞系が含まれることができる。その後、0.1%のウシ血清アルブミン、20mMのHEPES、5mMのグルコースおよび2.5mMのプロベネシドを含有するリン酸緩衝生理食塩水で細胞を3回洗浄する。細胞を、0.5%のウシ血清アルブミン、20mMのHEPESおよび2.5mMのプロベネシドを含有するリン酸緩衝生理食塩水中に、2〜4×106個の細胞/mlの最終濃度で再懸濁させる。細胞を96ウェルの黒色壁のマイクロプレートに播種し(100μl/ウェル)、プレートを200×gで5分間遠心分離する。様々な濃度の化合物をウェルに加え(50μl/ウェル)、5分後、50μl/ウェルのMCP−1を加えて10nMの最終濃度が得られる。カルシウム動員は蛍光イメージングプレートリーダーを用いることによって検出する。細胞単層をアルゴンレーザー(488nM)で励起させ、細胞に関連する蛍光を3分間測定する(最初の90秒間は毎秒、次の90秒間は10秒毎)。データは任意の蛍光単位として生じ、それぞれのウェルの蛍光の変化を最大−最小の差異として決定する。化合物依存性の阻害をMCP−1単独での応答と比較して計算する。
THP−1単球細胞結合:全細胞に基づいたアッセイ
【0169】
また、ヒトCCR2結合アッセイを、内在性CCR2を発現するTHP−1ヒト単球白血病細胞系を用いて、125I−ヒトMCP−1をトレーサーリガンドとして用いて確立させた。放射性リガンド競合結合アッセイを用いてCCR2受容体に対する試験化合物の結合親和性を評価した。放射性リガンド競合研究では、2.5×105個のTHP−1細胞/ウェル(50mMのHEPES、pH7.4、5mMのMgCl2、1mMのCaCl2および0.5%のBSAを含有するアッセイバッファー中)を含有する100μlを、最終濃度が5μM〜100pMの範囲の3倍段階希釈で試験化合物を含有する96ウェルアッセイプレートに加えた。続いて、アッセイバッファー中に0.2nMの最終濃度の、50μlの125I−MCP−1放射性リガンドを反応に加えた。室温で90分間のインキュベーション期間後、GF/Bフィルタープレート(PerkinElmerカタログ番号6005177)を収集することによって結合反応を停止させ、次いで氷冷洗浄バッファー(50mMのHEPES、pH7.4、0.1%のBSA、0.5MのNaCl)で洗浄して結合していないリガンドを除去した。洗浄後、プレートを45分間60℃で洗浄し、次いで40μlのMicroScint20シンチレーション液を加え、密封し、Packard TopCount読取機によって分析した。非特異的結合は10μM(5000倍のモル濃度過剰)の自家製CCR2小分子拮抗剤(CCR2、IC50=2nM)の存在下で決定した。125I−MCP−1の特異的結合は全結合と非特異的な結合との間の差異として計算した。競合データは試験化合物の非存在下で特異的結合した放射性リガンドの%阻害としてプロットした(全シグナルの%)。非特異的結合について補正した後、IC50値を決定した。IC50とは、125I−MCP−1の特異的結合を50%低下させるために必要な試験化合物の濃度として定義され、4パラメータのロジスティック方程式を使用して正規化したデータに当てはめて計算した。
MCP−1誘導性のヒトPBMC化学走性の拮抗
(Bacon et al.、Brit. J. Pharmacol. 1988、95、966)
【0170】
Neuroprobe MBA96 96ウェル化学走性チャンバ、Polyfiltronics MPC 96ウェルプレート、およびNeuroprobeポリビニルピロリドン非含有ポリカーボネートPFD5 8ミクロンフィルターを37℃内で温める。標準のフィコール密度分離方法によって新鮮に単離したヒト末梢血単核球(PBMC)(Boyum et al.、Scand. J. Clin. Lab Invest. Suppl. 1968、97、31)をDMEM中に1×107個の細胞/mlで懸濁させ、37℃まで温める。ヒトMCP−1の60nM溶液も37℃で温める。試験化合物の希釈液をDMEM中の必要な濃度の2×で作製する。PBMC懸濁液および60nmのMCP−1溶液をポリプロピレンチューブ内で、予熱したDMEMと1:1で、試験化合物の希釈液を含んでまたは含まずに混合する。これらの混合物は37℃のチューブ加温器内で温める。アッセイを開始するためには、MCP−1/化合物の混合物をNeuroprobe化学走性チャンバの下部分内に入れたPolyfiltronics MPC 96ウェルプレートのウェル内に加える。概ねの容量はそれぞれのウェルに400μlであり、分注後に正メニスカスがあるはずである。8ミクロンのフィルターを96ウェルプレートの上に穏やかに置き、ゴム製ガスケットを上部チャンバの底部に装着し、チャンバを組み立てる。細胞懸濁液/化合物の混合物の200μl容量を上部チャンバの適切なウェルに加える。上部チャンバをプレートシーラーで覆い、組み立てたユニットを37℃のインキュベーター内に45分間置く。インキュベーション後、プレートシーラーを取り外し、残った細胞懸濁液をすべて吸引して除去する。チャンバを解体し、フィルターを穏やかに取り外す。フィルターを90度の角度に保ちながら、穏やかな流れのリン酸緩衝生理食塩水を用いて遊走しなかった細胞を洗い流し、フィルターの上部をゴム製スキージの先端で拭う。この洗浄をさらに2回繰り返す。フィルターを空気乾燥させ、その後、Wright Geimsa染色に45秒間完全に浸す。その後、蒸留水に7分間浸し、その後、15秒間新鮮な蒸留水でさらに洗浄することによってフィルターを洗浄する。フィルターを再度空気乾燥させる。フィルター上の遊走した細胞を視覚的顕微鏡観察によって定量する。
【0171】
哺乳動物ケモカイン受容体は、ヒトなどの哺乳動物において免疫細胞機能に干渉するまたはそれを促進するための標的を提供する。ケモカイン受容体の機能を阻害または促進する化合物は、治療目的のための免疫細胞機能の変調に特に有用である。したがって、本発明は、喘息およびアレルギー性疾患を含めた様々な炎症性、感染性、および免疫調節性の障害および疾患、病原性微生物(定義によりウイルスも含まれる)による感染、ならびに関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病の予防および/または治療に有用な化合物を対象とする。
【0172】
たとえば、哺乳動物ケモカイン受容体(たとえばヒトケモカイン受容体)の1つまたは複数の機能を阻害する本発明の化合物は、炎症または感染症を阻害(すなわち、軽減または予防)するために投与し得る。その結果、白血球の遊出、接着、化学走性、開口分泌(たとえば、酵素、ヒスタミン)または炎症伝達物質の放出などの1つまたは複数の炎症プロセスが阻害される。
【0173】
同様に、哺乳動物ケモカイン受容体(たとえばヒトケモカイン)の1つまたは複数の機能を促進する本発明の化合物を、白血球の遊出、接着、化学走性、開口分泌(たとえば、酵素、ヒスタミン)または炎症伝達物質の放出などの免疫または炎症反応を刺激(誘導または増強)するために投与し、炎症プロセスの有益な刺激がもたらされた。たとえば、寄生生物感染症と闘うために好酸球を動員することができる。さらに、ケモカイン受容体の内部移行の誘導によって細胞上の受容体発現の損失を引き起こすために十分な化合物のデリバリー、または細胞遊走の誤った指示をもたらす様式の化合物のデリバリーを企図する場合は、前述の炎症性、アレルギー性および自己免疫性の疾患の治療も哺乳動物ケモカイン受容体の1つまたは複数の機能を促進する本発明の化合物について企図することができる。
【0174】
ヒトなどの霊長類に加えて、様々な他の哺乳動物を本発明の方法に従って治療することができる。たとえば、それだけには限定されないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ科動物、ヒツジ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物、ネコ科動物、げっ歯類もしくはネズミ種を含めた哺乳動物を治療することができる。しかし、本方法はトリ種などの他の種でも実施することができる。上記方法で治療する対象は、ケモカイン受容体活性の変調が所望される雄または雌の哺乳動物である。本明細書中で使用する「変調」とは、拮抗、アゴニズム、部分的拮抗および/または部分的アゴニズムを包含することを意図する。
CCR5結合および機能的アッセイ
細胞誘導体化および細胞培養
【0175】
Harrington、Sherf、およびRundlett(米国特許第6,361,972号および第6,410,266号)によって概要が示されている方法を用いて、内在性CCケモカイン受容体5(CCR5)を安定して発現するHT1080細胞のプールを開発した。最も高発現のクローンを、反復フローサイトメトリー、次いでサブクローニングを用いて単離した。その後、これらの細胞を6ウェルの皿中、3×105個の細胞/ウェルで培養し、キメラのHAタグ付けしたGタンパク質Gqi5を含有するDNAベクターで形質移入した(Molecular Devices;15マイクロLのFermentesのEx−Gen中に5マイクログラムの直鎖ベクターDNAを形質移入に用いた)。形質移入の2日後、ウェルを合わせ、P100プレートに播種した。播種の7日後、コロニーを拾い、拡大させ、ウエスタンブロットによってGqi5含有量について分析した。高発現のGqi5(形質移入から)およびCCR5(内在性)を有するクローン(3559.1.6と呼ぶ)を選択し、以下に記載の実験で用いた。HT1080細胞(クローン3559.1.6)を、10%の透析ウシ胎児血清、2%のペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン、および500マイクログラム/mLのハイグロマイシンB(最終濃度)を添加したα−MEMを用いて、37℃、5%のCO2で、加湿雰囲気中で培養した。
膜の調製
【0176】
1×108個のHT1080細胞(クローン3559.1.6)を含有する細胞ペレットを5mLの氷冷膜調製バッファー(50mMのHEPES、5mMのMgCl2、1mMのCaCl2)に再懸濁させ、Polytronホモジナイザーで、高速で20秒間、氷上でホモジナイズした。ホモジネートをさらに25mLの膜調製バッファーで希釈し、12分間遠心分離した(48,000×g、4℃)。細胞ペレットを5mLの膜調製バッファーに再懸濁させた後、既に記載したように再度ホモジナイズした。ホモジネートを5mLの膜調製バッファーで希釈し、CCR5タンパク質濃度についてアッセイした。
結合アッセイ
【0177】
上述の膜調製からの新しく調製したホモジネートを結合バッファー(50mMのHEPES、5mMのMgCl2、1mMのCaCl2、0.1%のBSA;アッセイ前に1個の完全なプロテアーゼ阻害剤錠剤を加えた)で希釈して、10マイクログラム/ウェルの最終タンパク質濃度を達成した(Corning,Inc.の無地の白色96ウェルプレート)。この膜調製物をWGA−SPAビーズ(Amerhsam;結合バッファーに事前に浸した)と混合して、200マイクログラム/ウェルの濃度が得られた。その後、膜/SPAビーズ混合物(100マイクロリットル/ウェル)を、様々な濃度の被験物質を含有する2マイクロリットルのDMSO(陰性対照には純粋なDMSO;被験物質には様々な濃度の本発明の実施例;陽性対照として500nMのMIP−1β)で事前にドットしたプレートに加えた。結合アッセイは50マイクロリットルの[125I]−MIP−1β(Perkin Elmer;50マイクロリットル/ウェルを加えることによって最終濃度0.1nMの[125I]−MIP−1βが得られるように、物質を結合バッファーで希釈した)を加えることによって開始した。プレートを密封し、室温で4〜6時間静置した後、Packard TopCountで計数した。それぞれの実験のウィンドウを定義するために陰性および陽性対照を使用して、被験物質の%結合を計算した。
蛍光定量的イメージングプレートリーダー(FLIPR)に基づいた機能的アッセイ
【0178】
HT1080細胞(クローン3559.1.6)を10,000個の細胞/ウェル(30マイクロリットル)で384ウェルプレート(黒色/透明な底部のBiocoat PDL、Beckton Dickinson)に播種し、30マイクロリットル/ウェルのFluro−4AM蛍光色素(1mgのFluro−4AMを440マイクロリットルのDMSOに溶かし、100マイクロリットルのpluronic溶液で希釈した後、10mLのハンクスバッファーでさらに希釈することによって調製)を入れた。細胞を37℃、5%のCO2で30分間インキュベーションした後、3回洗浄し、アッセイバッファー(20mMのHEPES、1.2mMのCaCl2、5mMのMgCl2、2.5mMのプロベネシド、0.5%のBSA、1×ハンクス)に懸濁させた。被験物質をDMSOで段階希釈し、アッセイバッファーで1:10に希釈した後、細胞に加えた(10マイクロリットル/ウェル)。FLIPRを用いて、流速(すなわち作用活性)の導入についてプレートを読み取った(10〜70秒間)。その後、細胞に作用剤溶液をさらに入れ(30マイクロリットル/ウェル;30マイクロリットルの100マイクロモーラーのMIP−1βを100mLのアッセイバッファーで希釈することによって調製;このプロトコルにより、アッセイにおいて5nMのMIP−1βの最終濃度がデリバリーされる)、FLIPRを用いてプレートを1分間読み取った。被験物質の拮抗活性は0.4%のDMSO/バッファー陰性対照と比較して決定した。
【0179】
本開示の少なくとも1つの化合物はCCR2およびCCR5の両方の阻害剤であり、どちらのケモカインとも関連している疾患を治療するためにも使用し得る。本発明のこれらの化合物は二重拮抗剤とみなされる。
【0180】
本発明の化合物を上述のアッセイのうちの1つで試験し、以下の表5に示す結果が得られた。
表5



【0181】
哺乳動物ケモカイン受容体は、ヒトなどの哺乳動物において免疫細胞機能に干渉するまたはそれを促進するための標的を提供する。ケモカイン受容体の機能を阻害または促進する化合物は、治療目的のための免疫細胞機能の変調に特に有用である。
【0182】
したがって、本発明は、喘息およびアレルギー性疾患を含めた様々な炎症性、感染性、および免疫調節性の障害および疾患、病原性微生物(定義によりウイルスも含まれる)による感染、ならびに関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病の予防および/または治療に有用な化合物を対象とする。
【0183】
たとえば、哺乳動物ケモカイン受容体(たとえばヒトケモカイン受容体)の1つまたは複数の機能を阻害する本発明の化合物は、炎症または感染症を阻害(すなわち、軽減または予防)するために投与し得る。その結果、白血球の遊出、接着、化学走性、開口分泌(たとえば、酵素、ヒスタミン)または炎症伝達物質の放出などの1つまたは複数の炎症プロセスが阻害される。
【0184】
同様に、哺乳動物ケモカイン受容体(たとえばヒトケモカイン)の1つまたは複数の機能を促進する本発明の化合物は、白血球の遊出、接着、化学走性、開口分泌(たとえば、酵素、ヒスタミン)または炎症伝達物質の放出などの免疫または炎症反応を刺激(誘導または増強)するために投与し、炎症プロセスの有益な刺激がもたらされた。たとえば、寄生生物感染症と闘うために好酸球を動員することができる。さらに、ケモカイン受容体の内部移行の誘導によって細胞上の受容体発現の損失を引き起こすために十分な化合物のデリバリー、または細胞遊走の誤った指示をもたらす様式の化合物のデリバリーを企図する場合は、前述の炎症性、アレルギー性および自己免疫性の疾患の治療も哺乳動物ケモカイン受容体の1つまたは複数の機能を促進する本発明の化合物について企図することができる。
【0185】
ヒトなどの霊長類に加えて、様々な他の哺乳動物を本発明の方法に従って治療することができる。たとえば、それだけには限定されないが、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、モルモット、ラットまたは他のウシ科動物、ヒツジ科動物、ウマ科動物、イヌ科動物、ネコ科動物、げっ歯類もしくはネズミ種を含めた哺乳動物を治療することができる。しかし、本方法はトリ種などの他の種でも実施することができる。上記方法で治療する対象は、ケモカイン受容体活性の変調が所望される雄または雌の哺乳動物である。本明細書中で使用する「変調」とは、拮抗、アゴニズム、部分的拮抗および/または部分的アゴニズムを包含することを意図する。
【0186】
ケモカイン受容体の機能の阻害剤で治療することができるヒトまたは他の種の疾患または状態には、それだけには限定されないが、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏症肺疾患、過敏性肺炎、好酸球性蜂窩織炎(たとえばウェルズ症候群)、好酸球性肺炎(たとえばレフラー症候群、慢性好酸球性肺炎)、好酸球性筋膜炎(たとえば、シュルマン症候群)、遅延型過敏症、間質性肺疾患(ILD)(たとえば、特発性肺線維症、または関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン(Sjorgren)症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に関連するILD)などの呼吸器のアレルギー性疾患;全身性アナフィラキシーまたは過敏症応答、薬物アレルギー(たとえば、ペニシリン、セファロスポリンに対するもの)、汚染トリプトファンの摂取による好酸球増加症−筋痛症候群、昆虫刺傷アレルギー;関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年性発症糖尿病などの自己免疫疾患;糸球体腎炎、自己免疫甲状腺炎、ベーチェット病;同種移植片拒絶または移植片対宿主病を含めた移植片拒絶(たとえば移植における);クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;脊髄関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介性乾癬が含まれる)および皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹などの炎症性皮膚疾患;血管炎(たとえば、壊死性、皮膚、および過敏症血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎;皮膚または臓器の白血球浸潤を伴う癌を含めた、炎症性またはアレルギー性の疾患および状態が含まれる。それだけには限定されないが、再灌流傷害、アテローム性動脈硬化症、特定の血液学的悪性疾患、サイトカイン誘発毒性(たとえば、敗血症性ショック、内毒素ショック)、多発性筋炎、皮膚筋炎を含めた、望ましくない炎症反応を阻害する他の疾患または状態も治療することができる。ケモカイン受容体の機能の阻害剤で治療することができるヒトまたは他の種の感染症または状態には、それだけには限定されないが、HIVが含まれる。
【0187】
ケモカイン受容体の機能の促進剤で治療することができるヒトまたは他の種の疾患または状態には、それだけには限定されないが、AIDSなどの免疫不全症候群または他のウイルス感染症に罹患している個体、免疫抑制を引き起こす、放射線療法、化学療法、自己免疫疾患の治療または薬物療法(たとえばコルチコステロイド治療)を受けている個体などにおける免疫抑制;受容体の機能の先天性欠損または他の原因による免疫抑制;および、それだけには限定されないが、線虫(回虫);(鞭虫症、蟯虫症、回虫症、鈎虫、糞線虫症、旋毛虫症、糸状中症);吸虫(trematode)(吸虫(fluke))(住血吸虫症、肝吸虫症)、条虫(サナダムシ)(エキノコックス症、無鉤条虫症、嚢虫症);内蔵虫、内蔵幼虫移行症(migraines)(たとえばトキソカラ)、好酸球性胃腸炎(たとえば、アニサキsp.、フォカマsp.)、皮膚幼虫移行症(migraines)(ブラジル鉤虫、イヌ鉤虫)などの蠕虫感染症を含めた、寄生生物疾患等の感染性疾患が含まれる。したがって、本発明の化合物は様々な炎症性、感染性および免疫調節の障害および疾患の予防および治療に有用である。
【0188】
さらに、ケモカイン受容体の内部移行の誘導によって細胞上の受容体発現の損失を引き起こすために十分な化合物のデリバリー、または細胞遊走の誤った指示をもたらす様式の化合物のデリバリーを企図する場合は、前述の炎症性、アレルギー性および自己免疫性の疾患の治療も、ケモカイン受容体の機能の促進剤について企図することができる。
【0189】
別の態様では、本発明は、Gタンパク質共役型受容体の推定上の特異的な作用剤または拮抗剤を評価するために使用し得る。本発明は、ケモカイン受容体の活性を変調する化合物のスクリーニングアッセイを調製および実行することにおけるこれらの化合物の使用を対象とする。さらに、本発明の化合物は、他の化合物とケモカイン受容体との結合部位を、たとえば競合的阻害によって確立もしくは決定するため、またはその既知の活性を未知の活性を有する化合物と比較するためのアッセイにおける参照として有用である。新しいアッセイまたはプロトコルを開発する際、本発明による化合物を用いてその有効性を試験することができる。具体的には、そのような化合物を、市販のキット中で、たとえば、前述の疾患に関与する医薬研究において使用するために提供し得る。また、本発明の化合物は、ケモカイン受容体の推定上の特異的モジュレーターを評価するためにも有用である。さらに、本発明の化合物は、相互作用の特異的部位の定義を支援し得る、これらの受容体に対して活性を有する化合物と結合しない化合物の例、またはその構造的変異体の例のいずれかとして役割を果たすことによって、ケモカイン受容体ではないと考えられるGタンパク質共役型受容体の特異性を検査するために利用することができる。
【0190】
本発明の化合物は、関節リウマチ、骨関節炎、敗血症性ショック、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、発熱、心血管作用、血行動態ショック、敗血症症候群、虚血後再灌流障害、マラリア、クローン病、炎症性腸疾患、マイコバクテリア感染症、髄膜炎、乾癬、鬱血性心不全、線維性疾患、悪液質、移植片拒絶、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患、多発性硬化症、放射線損傷、過酸素症肺胞傷害、HIV、HIV認知症、非インスリン依存性真性糖尿病、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、特発性肺線維症、水疱性類天疱瘡、寄生蠕虫感染症、アレルギー性大腸炎、湿疹、結膜炎、移植、家族性好酸球増加症、好酸球性蜂窩織炎、好酸球性肺炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、薬物誘発好酸球増加症、嚢胞性線維症、チャーグ−ストラウス症候群、リンパ腫、ホジキン病、結腸癌、フェルティ症候群、サルコイドーシス、ブドウ膜炎、アルツハイマー、糸球体腎炎、および全身性エリテマトーデスから選択される障害を治療または予防するために使用する。
【0191】
別の態様では、化合物は、関節リウマチ、骨関節炎、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、炎症性腸疾患、乾癬、鬱血性心不全、多発性硬化症、自己免疫疾患、皮膚炎症性疾患から選択される炎症性障害を治療または予防するために使用する。
【0192】
別の態様では、化合物は、関節リウマチ、骨関節炎、アテローム性動脈硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、および多発性硬化症から選択される炎症性障害を治療または予防するために使用する。
【0193】
喘息およびアレルギー性疾患を含めた炎症性、感染性および免疫調節の障害および疾患、関節リウマチおよびアテローム性動脈硬化症などの自己免疫病、ならびに上述の病状を予防および治療するための組合せ療法は、本発明の化合物とそのような利用が知られている他の化合物との組合せによって例示される。たとえば、炎症の治療または予防では、本発明の化合物は、オピエート作用剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、インターロイキン−1阻害剤などのインターロイキン阻害剤、腫瘍壊死因子阻害剤、NMDA拮抗剤、一酸化窒素阻害剤(inhibitor nitric oxide)もしくは一酸化窒素合成阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、またはサイトカイン抑制抗炎症剤等の抗炎症剤または鎮痛剤と併せて、たとえば、アセトアミノフェン、アスピリン、コデイン、フェンタインル(fentaynl)、イブプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、モルヒネ、ナプロキセン、フェナセチン、ピロキシカム、ステロイド鎮痛剤、スフェンタニル、サンリンダック、インターフェロンαなどの化合物と共に使用し得る。同様に、本発明の化合物は、疼痛緩和剤;カフェイン、H2−拮抗剤、シメチコン、アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの増強剤;フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドフェドリン、オキシメタゾリン、エフィネフリン(ephinephrine)、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、またはレボデスオキシ−エフェドリンなどの鬱血除去剤;およびコデイン、ヒドロコドン、カラミフェン、カルベタペンタン、またはデキストロメトルファン(dextramethorphan)などの鎮咳剤;利尿剤;ならびに鎮静性または非鎮静性抗ヒスタミン剤と共に投与し得る。同様に、本発明の化合物は、本発明の化合物が有用な疾患または状態の治療/予防/抑制または寛解に用いられている他の薬物と組み合わせて使用し得る。そのような他の薬物は、それについて一般的に使用されている経路および量で、本発明の化合物と同時にまたは逐次的に投与し得る。本発明の化合物を1つまたは複数の他の薬物と同時に使用する場合、本発明の化合物に加えてそのような他の薬物を含有する医薬組成物を使用し得る。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1つまたは複数の他の活性成分も含有するものが含まれる。
【0194】
本発明の化合物と組み合わせ得る、別々にまたは同じ医薬組成物中で投与する他の活性成分の例には、それだけには限定されないが、(a)セレクチン、ICAMおよびVLA−4に対するものなどのインテグリン拮抗剤;(b)ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベータメタゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、およびヒドロコルチゾンなどのステロイド;(c)シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシンおよび他のFK−506型免疫抑制剤などの免疫抑制剤;(d)ブロモフェニラミン、クロルフェニルアミン、デキスクロルフェニルアミン、トリプロリジン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ジフェニルピラリン、トリペレナミン、ヒドロキシジン、メトジラジン、プロメタジン、トリメプラジン、アザタジン、シプロヘプタジン、アンタゾリン、フェニラミン、ピリラミン、アステミゾール、テルフェナジン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスカルボエトキシロラタジンなどの抗ヒスタミン剤(H1−ヒスタミン拮抗剤);(e)b2−作用剤(テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテラール(albuteral)、ビトルテロール、およびピルブテロール)、テオフィリン、クロモリンナトリウム、アトロピン、臭化イプラトロピウム、ロイコトリエン拮抗剤(ザフィルルカスト、モンテルカスト、プランルカスト、イラルカスト、ポビルカスト、SKB−102,203)、ロイコトリエン生合成阻害剤(ジロートン、BAY−1005)などの非ステロイド性抗喘息剤;(f)プロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベンキサプロフェン(benxaprofen)、ブクロキシン酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナック、イソキセパク、オクスピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラック)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカン(tenoxican))、サリチレート(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)ならびにピラゾロン(アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)などの非ステロイド性抗炎症剤(NSAID);(g)シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤;(h)IV型ホスホジエステラーゼ(PDE−IV)阻害剤;(i)ケモカイン受容体の他の拮抗剤;(j)HMG−COAレダクターゼ阻害剤(ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、および他のスタチン)、金属イオン封鎖剤(コレスチラミンおよびコレスチポール)、ニコチン酸(nicotonic acid)、フェノフィブリン酸誘導体(ゲムフィブロジル、クロフィブラート、フェノフィブラートおよびベンザフィブラート)、ならびにプロブコールなどのコレステロール降下剤;(k)インスリン、スルホニル尿素、ビグアニド(メトホルミン)、a−グルコシダーゼ阻害剤(アカルボース)ならびにグリタゾン(トログリタゾンおよびピオグリタゾン)などの抗糖尿病剤;(l)インターフェロン調製物(インターフェロンα−2a、インターフェロン−2B、インターフェロンα−N3、インターフェロンβ−1a、インターフェロンβ−1b、インターフェロンγ−1b);(m)エファビレンツ、ネビラピン、インジナビル、ガンシクロビル、ラミブジン、ファムシクロビル、およびザルシタビンなどの抗ウイルス化合物;(n)5−アミノサリチル酸およびそのプロドラッグ、アザチオプリンおよび6−メルカプトプリンなどの代謝拮抗剤、ならびに細胞毒性がある癌化学療法剤等の他の化合物が含まれる。本発明の化合物と第2の活性成分との重量比は変動してもよく、それぞれの成分の有効用量に依存する。
【0195】
一般に、それぞれの有効用量を使用する。したがって、たとえば、本発明の化合物をNSAIDと組み合わせる場合、本発明の化合物対NSAIDの重量比は、一般に約1000:1〜約1:1000、または約200:1〜約1:200の範囲である。本発明の化合物と他の活性成分との組合せも、一般に前述の範囲内にあるが、それぞれの場合について、それぞれの活性成分の有効用量を使用すべきである。
【0196】
化合物は治療上有効な量で哺乳動物に投与する。「治療上有効な量」とは、単独でまたは追加の治療剤と組み合わせて哺乳動物に投与した場合に、血栓塞栓性病状または疾患の進行の予防または寛解に有効である式Iの化合物の量を意味する。
用量および配合物
【0197】
本発明の化合物は、錠剤、カプセル(これらのそれぞれには持続放出または徐放性配合物が含まれる)、丸薬、散剤、顆粒、エリキシル、チンキ剤、懸濁液、シロップ、および乳剤などの経口剤形で投与することができる。また、これらを静脈内(ボーラスもしくはインフュージョン)、腹腔内、皮下、または筋肉内の形態で投与してもよく、これにはすべて、医薬分野の技術者に周知の剤形を用いる。これらは単独で投与することができるが、一般に、選択した投与経路および標準の医薬の実施に基づいて選択される医薬担体と共に投与する。
【0198】
本発明の化合物の投薬レジメンは、もちろん、特定の薬剤の薬力学的特徴およびその投与の様式や経路;レシピエントの種、年齢、性別、健康、病状、および重量;症状の性質および程度;同時治療の種類;治療の頻度;投与経路、患者の腎臓および肝臓の機能、ならびに所望の効果などの、既知の要素に応じて変動する。医師または獣医師は、血栓塞栓性障害の進行を予防、対抗、または停止させるために必要な有効量の薬物を決定および処方することができる。
【0199】
一般的な指針として、それぞれの活性成分の1日経口用量は、示した効果のために使用した場合、1日あたり約0.001〜1000mg/体重1kg、もしくは約0.01〜100mg/体重1kg、または約1.0〜20mg/kg/日の範囲である。静脈内では、用量は一定速度のインフュージョン中に約1〜約10mg/kg/分の範囲である。本発明の化合物は単一の1日用量で投与してもよく、または合計1日用量を1日2回、3回、もしくは4回に分割した用量で投与してもよい。
【0200】
本発明の化合物は、適切な鼻腔内ビヒクルの局所的使用による鼻腔内形態で、または経皮皮膚パッチを用いた経皮経路によって投与することができる。経皮デリバリー系の形態で投与する場合、投薬は、もちろん、投薬レジメン全体にわたって断続的ではなく連続的である。
【0201】
化合物は、典型的には、意図する投与形態、すなわち、経口錠剤、カプセル、エリキシル、シロップなどに関して適切であるように選択され、かつ慣用の医薬の実施に矛盾しない、適切な医薬的希釈剤、賦形剤、または担体(本明細書中で医薬担体と総称する)と混合して投与する。
【0202】
たとえば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与では、活性薬物構成成分を、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マンニトール、ソルビトールなどの、経口の無毒性な医薬上許容される不活性担体と組み合わせることができ;液体形態での経口投与では、経口薬構成成分を、エタノール、グリセロール、水などの、任意の経口の無毒性な医薬上許容される不活性担体と組み合わせることができる。さらに、所望する場合または必要な場合は、適切な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および着色料も混合物内に取り込ませることができる。適切な結合剤には、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはβ−ラクトースなどの天然糖、トウモロコシ甘味料、アカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウムなどの天然および合成のゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが含まれる。これらの剤形中で使用する潤滑剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが含まれる。崩壊剤には、それだけには限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが含まれる。
【0203】
また、本発明の化合物は、小単層ベシクル、大単層ベシクル、および多重膜ベシクルなどのリポソームデリバリー系の形態で投与することもできる。リポソームはコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。
【0204】
また、本発明の化合物は、標的化可能な薬物担体としての可溶性ポリマーとカップリングさせてもよい。そのようなポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリシンが含まれることができる。さらに、本発明の化合物は、薬物の徐放性を達成するために有用な生分解性ポリマーのクラス、たとえば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸のコポリマー、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアシレート、およびヒドロゲルの架橋結合または両親媒性のブロックコポリマーとカップリングさせてもよい。
【0205】
投与に適した剤形(医薬組成物)は単位用量あたり約1ミリグラム〜約100ミリグラムの活性成分を含有し得る。これらの医薬組成物中では、活性成分は通常、組成物の全重量に基づいて約0.5〜95重量%の量で存在する。
【0206】
ゼラチンカプセルは活性成分とラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などの粉末担体とを含有し得る。同様の希釈剤を用いて圧縮錠剤を作製することができる。錠剤およびカプセルはどちらも、一定期間にわたって医薬品の連続的放出をもたらすために、持続放出生成物として製造することができる。圧縮錠剤は、すべての不快な味を覆い隠し、錠剤を大気から保護するために糖もしくはフィルムでコーティングするか、または胃腸管内での選択的分解のために腸溶コーティングすることができる。
【0207】
経口投与用の液体剤形は、患者の承諾を高めるために着色料および香味料を含有することができる。
【0208】
一般に、水、適切な油、生理食塩水、デキストロース水溶液(グルコース)、および関連する糖溶液およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが非経口液剤に適した担体である。非経口投与用の液剤は、活性成分の水溶性の塩、適切な安定化剤、および必要な場合はバッファー物質を含有し得る。単独または組み合わせた亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸などの抗酸化剤が適切な安定化剤である。また、クエン酸およびその塩ならびにナトリウムEDTAも使用する。さらに、非経口液剤は、塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベン、およびクロロブタノールなどの保存料を含有することができる。
【0209】
適切な医薬担体は当分野の標準の参考テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)に記載されている。
【0210】
本発明の化合物を投与するための代表的な有用な医薬剤形は以下のように例にすることができる。
カプセル
【0211】
標準のツーピースの硬ゼラチンカプセルに、それぞれ100ミリグラムの粉末活性成分、150ミリグラムのラクトース、50ミリグラムのセルロース、および6ミリグラムのステアリン酸マグネシウムを満たすことによって、多数の単位カプセルを調製することができる。
軟ゼラチンカプセル
【0212】
ダイズ油、綿実油またはオリーブ油などの消化可能な油中の活性成分の混合物を調製し、容積式ポンプによってゼラチン内に注入して、100ミリグラムの活性成分を含有する軟ゼラチンカプセルを形成し得る。カプセルを洗浄し、乾燥させるべきである。
錠剤
【0213】
錠剤は、単位用量が100ミリグラムの活性成分、0.2ミリグラムのコロイド状二酸化ケイ素、5ミリグラムのステアリン酸マグネシウム、275ミリグラムの結晶セルロース、11ミリグラムのデンプンおよび98.8ミリグラムのラクトースであるように、慣用の手順によって調製し得る。嗜好性を増加させるまたは吸収を遅延させるために適切なコーティングを塗布し得る。
注射剤
【0214】
注射による投与に適した非経口組成物は、1.5重量%の活性成分を10容量%のプロピレングリコールおよび水中で撹拌することによって調製し得る。液剤は塩化ナトリウムで等張にし、滅菌するべきである。
懸濁剤
【0215】
それぞれの5mLが100mgの微粉活性成分、200mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、5mgの安息香酸ナトリウム、1.0gのソルビトール溶液、U.S.P.、および0.025mLのバニリンを含有するように、経口投与のための水性懸濁液を調製することができる。
【0216】
本発明の化合物を他の抗凝固剤と組み合わせる場合、たとえば、一日用量は、患者の体重1キログラムあたり約0.1〜100ミリグラムの式Iの化合物および約1〜7.5ミリグラムの第2の抗凝固剤であり得る。錠剤剤形には、本発明の化合物は一般に単位用量あたり約5〜10ミリグラムの量、第2の抗凝血剤は単位用量あたり約1〜5ミリグラムの量で存在し得る。
【0217】
前述の第2の治療剤のうちの2つ以上を式Iの化合物と共に投与する場合、一般に、典型的な1日用量および典型的な剤形中のそれぞれの構成成分の量は、組み合わせて投与した場合の治療剤の相加効果または相乗効果を考慮して、単独で投与した場合の薬剤の通常の用量と比較して減少させ得る。特に、単一の単位用量として提供する場合、組み合わせた活性成分の間に化学的相互作用の潜在性が存在する。そのため、式Iの化合物と第2の治療剤とを単一の単位用量中で組み合わせる場合、これらは、活性成分が単一の単位用量中で組み合わされているが、活性成分間の物理的接触が最小限となる(すなわち減少される)ように配合する。たとえば、1つの活性成分を腸溶コーティングし得る。活性成分のうちの1つを腸溶コーティングすることによって、組み合わせた活性成分間の接触を最小限にすることが可能になるだけでなく、これらの構成成分のうちの1つが胃内ではなく腸管内で放出されるように胃腸管におけるこれらの構成成分のうちの1つの放出を制御することも可能となる。また、活性成分のうちの1つを、胃腸管全体にわたる持続放出をもたらし、組み合わせた活性成分間の物理的接触を最小限にする役割も果たす物質でコーティングし得る。さらに、持続放出される構成成分を、この構成成分の放出が腸管内でのみ起こるようにさらに腸溶コーティングすることができる。さらに別の手法は、活性構成成分をさらに分離するために、1つの構成成分を持続放出および/または腸内放出ポリマーでコーティングし、他の構成成分も低粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)または当分野で知られている他の適切な物質などのポリマーでコーディングする、組合せ生成物の形成を含む。ポリマーコーティングは他の構成成分との相互作用のさらなる障壁を形成する役割を果たす。
【0218】
本発明の組合せ生成物の構成成分間の接触を最小限にするこれらおよび他の方法は、単一剤形で投与するか、または別々の形態であるが同時かつ同じ様式で投与するかにかかわらず、本開示で備えれば当業者には容易に明らかであろう。
【0219】
本発明をその具体的な実施形態を参照しながら詳述したが、その精神および範囲から逸脱せずに様々な変更および改変をそれに行なうことができることは、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(I)
[式中:
2はH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであるか;
またはR3とR3'は、隣接する炭素に結合するとき、一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成していてもよく;
4はHまたはC1-4アルキルであり;
1はNまたはC−Z’であり;
2はNまたはC−Y’であり;
3はNまたはC−Xであり;
XはH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’は独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;
ZおよびZ’は独立してHまたはハロであるか;
またはYとZ、Y’とZ’、YとX、またはY’とXは一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成するか;
またはYとXまたはY’とXは一緒になって−O−CH2−O−を形成し;
ただし:
(1) W1、W2またはW3の1つのみがNであってよく;
(2) W2がNであるとき、X、Y、ZおよびZ’の全てがHであることはなく;
(3) W3がNであるとき、W1およびW2はともにCHであり、かつ、YおよびZはHであり;
(4) W1、W2およびW3がいずれもCHであるとき、YはHであり得ず;
(5) YがC1-4アルコキシであるとき、XはHでなく;
(6) W1、W2およびW3がいずれもCHであり、かつ、ZがClであるとき、YはClであり;および
(7) XがFであるとき、YまたはY’の一方はHでない]
の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項2】
式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;
ZおよびZ’が独立してHまたはハロであるか;
またはYとZ、Y’とZ’、YとX、またはY’とXが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成するか;
またはYとXまたはY’とXが一緒になって−O−CH2−O−を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;
ZおよびZ’が独立してHまたはハロであるか;
またはYとZ、Y’とZ’、YとX、またはY’とXが一緒になって−CH=CH−CH=CH−を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、ハロC1-4アルキルまたはNO2であり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、またはハロであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してH、C1-4アルコキシ、またはハロであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、C1-4アルキル、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、C1-4アルキル、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式中:
2がH、またはC1-4アルキルであり;
3およびR3'が独立してHまたはハロであり;
4がHまたはC1-4アルキルであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、ハロまたはハロC1-4アルキルであり;
YおよびY’が独立してH、ハロ、またはハロC1-4アルキルであり;および
ZおよびZ’が独立してHまたはハロである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式中:
2がH、メチルまたはエチルであり;
3およびR3'がHであり;
4がHであり;
1がNまたはC−Z’であり;
2がNまたはC−Y’であり;
3がNまたはC−Xであり;
XがH、Br、Cl、FまたはCF3であり;
YおよびY’が独立してH、Br、Cl、FまたはCF3であり;および
ZおよびZ’が独立してH、Br、ClまたはFである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
化合物が実施例に例示される化合物から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその立体異性体もしくは医薬的に許容される塩。
【請求項10】
医薬的に許容される担体および治療上有効な量の請求項1に記載の化合物からなる医薬組成物。
【請求項11】
それを必要としている患者に、治療上有効な量の請求項1に記載の化合物の少なくとも1つを投与することを含む、障害を治療する方法であって、該障害は骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄、臓器移植、および癌から選択される、治療方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物の少なくとも1つを配合することを含む、骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、および関節リウマチの治療用医薬を調製する方法。
【請求項13】
それを必要としている患者に、治療上有効な量の請求項10に記載の組成物を投与することを含む、障害を治療する方法であって、該障害は骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、再狭窄、臓器移植、および癌から選択される、治療方法。
【請求項14】
請求項10に記載の組成物を有用な医薬剤形に配合することを含む、骨関節炎、動脈瘤、発熱、心血管作用、クローン病、鬱血性心不全、自己免疫疾患、HIV感染症、HIV関連認知症、乾癬、特発性肺線維症、移植動脈硬化症、物理的または化学的に誘発された脳外傷、炎症性腸疾患、肺胞炎、大腸炎、全身性エリテマトーデス、腎毒性血清腎炎、糸球体腎炎、喘息、多発性硬化症、アテローム性動脈硬化症、および関節リウマチの治療用医薬を調製する方法。
【請求項15】
治療する必要のある患者に治療上有効な量の請求項10の組成物を投与することを含む、該患者を治療する方法。

【公表番号】特表2011−528359(P2011−528359A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518828(P2011−518828)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/050450
【国際公開番号】WO2010/009069
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】