説明

ケラチン繊維、特にまつ毛をメイクアップするための組成物

【課題】揮発性オイル含量よりも高いかまたは同等の高い固形分含量を有する、ケラチン繊維のためのメイクアップまたはケア用組成物を提供する。
【解決手段】組成物の全重量を基準にして、最大で20重量%の水および/または水溶性溶媒を含み、少なくとも3重量%の少なくとも1種のワックスを含み、そして、少なくとも1種の揮発性オイルを含み、全揮発性オイル含量が前記組成物の乾燥物質の含量よりも低い、ケラチン繊維のための化粧料メイクアップ組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質、特にケラチン繊維、たとえばまつ毛、まゆ毛、および髪をメイクアップすること、より詳しくは、まつ毛をメイクアップすることに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による組成物は、マスカラ、まゆ毛用製品、アイライナーまたは髪メイクアップ用製品の形態であってよい。より詳しくは、本発明はマスカラに関する。それは、具体的には、メイクアップ組成物や、それぞれ「トップコート」または「ベースコート」とも呼ばれることのある、メイクアップの上または下に塗布する組成物、または別な用途でまつげを処理するための組成物などであってよい。
【0003】
ケラチン繊維、特にまつ毛をメイクアップするための組成物は一般に、液状相の中に分散させた少なくとも1種のワックスまたはワックスの混合物からなる。たとえば、それらの流動性、それらの隠蔽性能および/またはそれらのカール性能、さらにはそれらの、太さを与える性能(thickening power)(強調性能(charging power)またはメイクアップ性能(makeup power)とも呼ばれる)などの、それらの組成物の所望の塗布特性を調節するには、ワックスの量およびその他の非揮発性の成分の量を主な手段として用いるが、これは、その組成物の固形分含量に反映される。
【0004】
実際のところ、本質的に2つのタイプのマスカラ配合が存在するが、すなわちその第1は、水系マスカラで、「クリーム状マスカラ(cream mascara)」とも呼ばれ、水中ワックス型エマルションの形態をしているものであり、その第2は、無水マスカラまたは、水および/または水溶性溶媒の含量が低いマスカラで、「耐水マスカラ(waterproof mascara)」とも呼ばれ、これは非水溶媒の中にワックスを分散させた形態のものである。しかしながら、ここで注目すべきは、水中ワックス型エマルションの形態のある種のマスカラは、やはり「耐水性(waterproof)」と呼ばれていることである。それらが耐水性である理由は、本質的には、その組成物中に大量のラテックスが存在しているためである。それらの特徴はさらに、固形分含量が低いことであって、そのため、メイクアップ力が極めて弱い。
【0005】
より具体的には、本発明は、水または水溶性溶媒を含まないか、または水含量および/または水溶性溶媒含量が低いケラチン繊維メイクアップ組成物で、「耐水マスカラ」と呼ばれるものの分野に関し、それらは、非水溶媒中、特に少なくとも1種の揮発性オイル中でのワックスの分散体の形態をしている。
【特許文献1】欧州特許出願第A847 752号
【特許文献2】仏国特許出願第A2 792 190号
【特許文献3】仏国特許出願第A2 232 303号
【特許文献4】欧州特許出願第A6 921 217号
【特許文献5】欧州特許出願第A686 858号
【特許文献6】米国特許第A5,472,798号
【特許文献7】仏国特許出願第A2 079 785号
【特許文献8】欧州特許出願第A1−0 360 728号明細書
【特許文献9】欧州特許出願第A0 549 494号
【特許文献10】仏国特許出願第94/00756号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常それらの組成物の固形分含量は、揮発性オイル含量よりも低い。したがってそのような組成物は、メイクアップ力に乏しく、乾燥するのが遅い。結局のところ、固形分含量と揮発性オイル含量の間のこの比率を逆転させようとすると、たちまち、流動性の不足という問題にぶつかってしまう。そのメイクアップ組成物は粘度が高すぎて塗布が困難となり、また、まつ毛の表面全体に均一に塗布するのに必要な変形能(deforamability)を持たなくなる。さらに、顕微鏡で観察すると、このタイプの組成物では、ワックス粒子が通常、凝集体の形態をとっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、具体的には、揮発性オイル含量よりも高いかまたは同等の高い固形分含量を有する、ケラチン繊維のためのメイクアップまたはケア用組成物を提案することであり、そのような組成物により、従来からの「耐水性」組成物で得られるよりも、太さを与えるメイクアップの結果が得られると共に、目的とするメイクアップ用途に適合した粘稠度を維持することが特に可能となる。
【0008】
したがって、本発明の1つの主題は、ケラチン繊維をメイクアップするための化粧料組成物であって、組成物の全重量を基準にして20重量%までの水および/または水溶性溶媒を含み、そして、少なくとも1種のワックスを、組成物の全重量を基準にして、3重量%を超える含量で含み、少なくとも1種の揮発性オイルを、揮発性オイルの全量が前記組成物の固形分含量と同じまたは少ない量となるように含む。
【0009】
そのまた別な態様においては、本発明の主題はさらに、上に定義した組成物を調製するための方法でもあり、その方法には、少なくとも1種のワックスを、連続的な冷却を用いて、前記ワックスの融点を超える温度から室温にまで変化させることにより、少なくとも連続的にブレンドすることを含む。
【0010】
本発明の主題はさらに、上に定義した組成物を調製するための方法でもあり、その方法には、0.5μm〜30μmの範囲、好ましくは1〜20μmの範囲の大きさの粒子の形態の少なくとも1種のワックスを、少なくとも1種の揮発性オイルの中へ分散させる少なくとも1つの工程を含み、ここで、前記揮発性オイルまたは前記複数のオイルの混合物は、粒子の形態の前記ワックスの融点より低い温度にする。
【0011】
本発明はさらに、ケラチン繊維をメイクアップするための方法に関し、そこでは、上に定義した組成物または上に定義した方法の1つにより得られる組成物を、前記ケラチン繊維、特にまつ毛に塗布する。
【0012】
有利なことには、本発明の組成物はさらに、標準的な耐水性組成物に比較して高い乾燥速度を有しているので、そのことから明らかに、メイクアップの手順を実施するのに必要とされる時間を減らすことができ、また、メイクアップがまつ毛からすぐ近傍のまぶたに移る危険性を抑えることが可能となる。このことによりさらに、場合によっては、満足のいく時間のあいだに前記組成物を何層にも重ねて塗布することができ、そのため、これらの組成物を用いて得られるメイクアップの太さを与える効果をさらに増強することが可能となる。
【0013】
固形分の特性解析
本発明の目的においては、「固形分含量」という用語は、非揮発性物質の含量のことを指す。
【0014】
本発明による組成物のこの固形物の量は、一般に「乾燥エキス分(dry extract)」またはそれの略称である「E.S.」と呼ばれるが、これはサンプルを波長2μm〜3.5μmの赤外線で加熱することによって測定する。前記組成物の中に含まれる、高い蒸気圧を有する物質は、この照射の影響下で蒸発する。サンプルの重量損失を測定することによって、その組成物の「乾燥エキス分」を求めることが可能である。このような測定は、メトラー(Mettler)からの、「LP16(登録商標)」として市販されている赤外線乾燥器を用いて実施する。その方法については、メトラー(Mettler)から提供されるその機器の取扱説明書に、充分記載されている。
【0015】
測定方法は、以下の通りである:
【0016】
組成物を約1g、金属製のるつぼの上に広げる。るつぼを乾燥器の中に入れてから公称温度(nominal temperature)120℃で1時間加熱する。サンプルの湿時重量(初期重量に相当)と乾時重量(赤外線照射後の重量に相当)を、精密天秤を用いて測定する。
【0017】
固形分含量を以下の方法により計算する;
【0018】
乾燥エキス分=100×(乾時重量/湿時重量)
【0019】
上述の測定法を用いて測定した数値は、対応する理論値からのプラスマイナス1%の誤差は許される。
【0020】
本発明による組成物は特に固形分含量が特徴であって、それが、組成物の全重量を基準にして、40重量%以上、特に43%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは47%以上、さらには49重量%である。
【0021】
揮発性オイル
本発明による組成物には、少なくとも1種の揮発性オイルを含む。
【0022】
この揮発性オイルは連続相を形成することができる。
【0023】
本発明の目的においては、「オイル」という用語は、室温、大気圧下の条件で液状の、水に不溶性の脂肪族物質を意味する。
【0024】
本発明の目的においては、「揮発性」という用語は、皮膚またはケラチン繊維と接触させたときに、室温で大気圧下の条件で1時間以内に蒸発ができるような各種化合物を指す。揮発性化合物は、揮発性を有する化粧料用の化合物で、室温では液状であり、特に室温で大気圧の条件下では、蒸気圧がゼロではなく、特に、蒸気圧が0.13Pa〜40,000Pa(10−3〜300mmHg)、好ましくは1.3Pa〜13,000Pa(0.01〜100mmHg)の範囲、より好ましくは1.3Pa〜1300Pa(0.01〜10mmHg)の範囲である。
【0025】
それとは対照的に、「非揮発性」という用語は、皮膚またはケラチン繊維の上に、室温で大気圧下の条件で少なくとも数時間は残存し、その蒸気圧が10−3mmHg(0.13Pa)未満であるような化合物を指す。
【0026】
本発明において、揮発性オイルが非水溶媒媒体を形成し、その中では、それが主要成分となる。別の言い方をすれば、それは、前記非水溶媒媒体の50重量%を超えるということを意味する。好ましくはそれが、前記非水溶媒媒体の全重量を基準にして、少なくとも60%であり、より好ましくは少なくとも70%であり、100重量%までになってもよい。
【0027】
揮発性オイルの含量は、組成物の全重量を基準にして一般に5%〜50%、特に10%〜45%、好ましくは40%以下であり、より好ましくは20%〜38重量%である。
【0028】
本発明で使用される揮発性オイルは、化粧料として許容されるものである。「化粧料として許容される」という用語は、ケラチン繊維および皮膚に塗布することが、適合性を有している化合物を意味する。
【0029】
言うまでもないことであるが、本発明による組成物には、そのようなオイルの混合物が含まれていてもよい。
【0030】
揮発性オイルは、炭化水素系オイル、シリコーンオイルおよび/またはフルオロオイル、またはそれらの混合物であってよい。
【0031】
「炭化水素系オイル」という用語は、主として水素原子と炭素原子を含み、場合によっては、酸素、窒素、硫黄およびリン原子を含む、オイルを意味する。揮発性の炭化水素系オイルは、8〜16個の炭素原子を含む炭化水素系オイル、特にC〜C18の分岐状アルカン、たとえばC〜C16の石油由来のイソアルカン(イソパラフィンとも呼ばれる)、たとえばイソドデカン(2,2,4,4,6−ペンタメチルヘプタンとも呼ばれる)、イソデカン、イソヘキサデカン、およびたとえば、「イソパルズ(Isopars,登録商標)」または「パーメチル(Permethyl,登録商標)」の商品名で販売されているオイル、分岐状のC〜C16エステルおよびネオペンタン酸イソヘキシル、およびそれらの混合物などから選択することができる。その他の揮発性の炭化水素系オイルとしては、たとえば、石油留分、特にシェル(Shell)社から「シェル・ソルト(Shell Solt,登録商標)」の商品名で販売されているようなものも使用することができる。
【0032】
揮発性のシリコーンもまた揮発性オイルとして使用することができるが、そのようなものとしてはたとえば、揮発性の直鎖状または環状のシリコーンオイル、特にその粘度が6センチストークス(6×10−6/s)以下で、特に2〜10個のケイ素原子を含むものがあるが、これらのシリコーンは、場合によっては、1〜22個の炭素原子を含むアルキルまたはアルコキシ基を含んでいてもよい。本発明において使用することができる揮発性のシリコーンオイルとしては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンおよびドデカメチルペンタシロキサン、ならびにそれらの混合物などを挙げることができる。
【0033】
本発明による組成物の1つの具体的な実施態様においては、揮発性オイルは、8〜16個の炭素原子を含む揮発性炭化水素系オイル、およびそれらの混合物から選択する。
【0034】
本発明による組成物においては、揮発性オイルは、室温、大気圧の条件下で液状である、他の水不溶性化合物との混合物であってもよい。
【0035】
1つの具体的な実施態様においては、本発明の組成物にはさらに、少なくとも1種の揮発性有機溶媒を含むが、それは特にフルオロ化された、たとえばノナフルオロメトキシブタンまたはペルフルオロメチルシクロペンタンのようなものである。
【0036】
さらに、本発明による組成物の非水溶媒媒体には、室温では液状の、少なくとも1種の水不溶性で非揮発性の化合物、特に少なくとも1種の非揮発性オイルを含んでいてもよいが、そのようなものとしては、好ましくは、非揮発性炭化水素系オイルおよび/またはシリコーンオイルおよび/またはフルオロオイルから選択される。
【0037】
非揮発性の炭化水素系オイルを特に挙げれば:
・植物由来の炭化水素系オイル、たとえば、グリセロールの脂肪酸エステルからなるトリグリセリドであって、その脂肪酸が、C〜C24の鎖長を有し、それらの鎖が直鎖状または分岐状、そして飽和または不飽和であってよいもの;それらのオイルとしては具体的には、コムギ胚種油、ヒマワリ油、グレープシード油、ゴマ油、トウモロコシ油、アンズ油、ヒマシ油、シアバター油、アボカド油、オリーブ油、ダイズ油、スイートアーモンド油、パーム油、ナタネ油、綿実油、ハシバミ油、マカダミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、ゴマ油、インゲンマメ油、ナタネ油、クロフサスグリ油、オオマツヨイグサ油、キビ油、オオムギ油、キノア油、ライムギ油、サフラワー油、ククイ油、トケイソウ油およびジャコウバラ油であり;または、それらとは別な、カプリル酸/カプリン酸のトリグリセリドで、たとえば、ステアリニアリーズ・デュボア(Stearineries Dubois)社から販売されているもの、または、ダイナミット・ノーベル(Dynamit Nobel)社から販売されている商品名「ミグリオール810(Miglyol 810,登録商標)」、「812(登録商標)」および「818(登録商標)」など;
・10〜40個の炭素原子を含む合成エーテル;
・鉱物由来または合成由来の、直鎖状または分岐状の炭化水素、たとえば、石油ゼリー、ポリデセン、水素化ポリイソブテンたとえばパーリーム(parleam)、およびスクアレン、ならびにそれらの混合物;
・合成エステル、たとえば、式RCOORのオイルで、ここでRは、1〜40個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状の脂肪酸残基を表し、Rは1〜40個の炭素原子を含む炭化水素系の鎖、特に分岐状の鎖を表すが、ただしR+Rが10以上であり、例を挙げれば、パーセリンオイル(オクタン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、安息香酸C12〜C15アルキル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、および、アルコールまたはポリアルコールのオクタノエート、デカノエートまたはリシノレート、たとえばプロピレングリコールジオクタノエート;ヒドロキシル化エステル、たとえば、乳酸イソステアリルまたはマレイン酸ジイソステアリル;およびペンタエリスリトールエステル;
・12〜26個の炭素原子を含む分岐状および/または不飽和炭素系鎖を有する、室温で液状の脂肪族アルコール、たとえばオクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−ブチルオクタノールまたは2−ウンデシルペンタデカノール;
・高級脂肪酸、たとえばオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸;ならびにそれらの混合物、などがある。
【0038】
本発明による組成物において使用できる、非揮発性シリコーンオイルとしては、非揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ペンダントするか、および/またはシリコーン鎖の末端についたアルキル基またはアルコキシ基(それらの基がそれぞれ2〜24個の炭素原子を含む)を含むポリジメチルシロキサン、フェニルシリコーンたとえば、フェニルトリメチコーン、フェニルジメチコーン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコーン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、および2−フェニルエチルトリメチルシロキシシリケートなどが挙げられる。
【0039】
本発明の組成物において使用できるフルオロオイルとしては、特に、フルオロシリコーンオイル、フルオロポリエーテル、および欧州特許出願第A847 752号明細書に記載されているようなフルオロシリコーンが挙げられる。
【0040】
室温で液状の、水不溶性で非揮発性の化合物の含量は一般に、この好ましい実施態様においては、組成物の全重量を基準にして0.01%〜25重量%、好ましくは0.1%〜22重量%である。
【0041】
ワックス
本発明による組成物には、組成物の全重量を基準にして3重量%を超える量で、ワックスまたはワックスの混合物を含む。
【0042】
本発明の文脈において考慮の対象としているワックスは一般に、室温(25℃)では固体状の親油性の化合物であって、固体/液体の間を可逆的に相変化することが可能であり、その融点は30℃以上であるが、最高200℃まで可能、好ましくは120℃までのものである。
【0043】
ワックスを液状の形態にすること(溶融)によって、オイルと混和させて、顕微鏡的に均一な混合物を形成することが可能となるが、その混合物を冷却して室温にまで戻すと、混合物のオイルの中でワックスが再結晶化した物が得られる。
【0044】
好ましくは、本発明に好適なワックスは、45℃以上、好ましくは55℃以上の融点を有する。
【0045】
本発明の目的においては、融点は、ISO標準11357−3(1999)に記載があるような熱分析(DSC)で、最大吸熱ピークが観察される温度に相当する。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、たとえば、TA・インストルメンツ(TA Instruments)社から「MDSC2920」の商品名で販売されているような熱量計を使用して測定することができる。
【0046】
測定方法は、以下の通りである:
【0047】
るつぼに入れた5mgのワックスのサンプルを、加熱速度10℃/分で、−20℃から100℃までの範囲の第1回目の昇温にかけ、次いでそれを、冷却速度10℃/分で、10から−20℃に冷却し、最終的には、加熱速度5℃/分で−20℃から100℃までの範囲の第2回目の昇温にかける。この第2の昇温をしている間に、空のるつぼと、ワックスのサンプルの入っているるつぼとの間の、吸収される熱量の差の変化を、温度の関数として測定する。その化合物の融点は、温度の関数としての吸収エネルギーにおける差の変化を表す曲線のピークの頂上に相当する温度の値である。
【0048】
本発明による組成物において使用できるワックスは、室温において固体状であるワックスから選択するが、それらは、動物由来、植物由来、鉱物由来、あるいは合成由来、およびそれらの混合物であってよい。
【0049】
本発明による組成物において使用できるワックスは一般に、その硬度が、0.01MPa〜15MPaの範囲、特に0.05MPより大、好ましくは0.1MPaより大のものである。
【0050】
硬度は、圧縮力を測定することによって求めるが、それは、レオ(Rheo)社から「TA−XT2i(登録商標)」の商品名で販売されているテクスチュロメーターを使用して、20℃で測定するが、その装置には直径2mmのステンレス鋼製円筒状スピンドルが備え付けてあって、下記の操作の間の力の変化(圧縮力または引張力)(F)を、時間の関数として測定する:
【0051】
スピンドルを0.1mm/sの速度で変位させて、ワックスの中に貫入させて、貫入深さを0.3mmとする。スピンドルがワックスの中に深さ0.3mmまで貫入したら、スピンドルをそこで1秒間静止させて(緩和時間に相当する)、次いで、0.1mm/sの速度で引き抜く。その緩和時間の間に、力(圧縮力)が大きく減少してゼロとなり、次いで、スピンドルを引き抜いている間は、力(引張力)は負となり、次いで上昇してふたたび0の値に戻る。硬度は、スピンドルの表面とワックスが接触した瞬間に、それらの間で測定される最大圧縮力に相当する。この力の値を、MPaの単位で表す。
【0052】
硬度を測定するためには、ワックスを、そのワックスの融点+20℃に等しい温度で溶融させる。溶融させたワックスを、直径30mm、深さ20mmの容器の中に注入する。そのワックスを室温(25℃)に24時間おいて再結晶化させ、次いで20℃で少なくとも1時間保管してから、硬度測定を実施する。
【0053】
本発明に好適なワックスの例示としては、特に、炭化水素系ワックス、たとえば蜜蝋、ラノリンワックス、シナ蝋(Chinese insect wax)、木蝋(sumach wax)、パラフィン、ある種のポリエチレンワックスおよびワックス状コポリマー、さらにはそれらのエステルなどをあげることができる。
【0054】
直鎖状または分岐状のC〜C32脂肪族鎖を含む動物オイルまたは植物オイルを接触水素添加することにより得られるワックスも、挙げることができる。それらのワックスの中でも特に取り上げれば、異性化ホホバ油たとえば、トランス異性化部分水素化ホホバ油で、デザート・ホエール(Desert Whale)社から商品名「イソ−ホホバ−50(Iso−Jojoba−50,登録商標)」として製造販売されているもの、水素化ヒマワリ油、水素化ヒマシ油、水素化ヤシ油、水素化ラノリン油、およびテトラステアリン酸ビス(1,1,1−トリメチロールプロパン)で、ヘテレーヌ(Heterene)社から「ヘスト2T−4S(Hest 2T−4S,登録商標)」の商品名で販売されているものなどがある。
【0055】
さらに、シリコーンワックスやフルオロワックスも挙げることができる。
【0056】
セチルアルコールでエステル化したヒマシ油を水素添加することによって得られるワックスで、ソフィム(Sophim)社から販売されている商品名「フィトワックス・リシン16L64(Phytowax ricin 16L64,登録商標)」および、「22L73(登録商標)」として販売されているものも、使用することができる。それらのワックスについては、仏国特許出願第A2 792 190号明細書に記載がある。
【0057】
1つの具体的な実施態様においては、本発明による組成物には、少なくとも1種の「粘着性のある(tacky)」ワックス、すなわち、タックが0.7N.s以上で、硬度が3.5MPa以下のワックスが含まれていてもよい。
【0058】
粘着性のあるワックスを使用することによって、ケラチン繊維に容易に塗布でき、ケラチン繊維によく付着し、滑らかで、均一で、太さを与えるメイクアップ結果が得られるような、化粧料組成物を得ることが可能となる。
【0059】
使用する粘着性のあるワックスは、特に、そのタックが0.7N.s〜30N.sの範囲、好ましくは1N.s以上、特に1N.s〜20N.sの範囲、好ましくは2N.s以上、特に2N.s〜10N.sの範囲、好ましくは2N.s〜5N.sの範囲のものである。
【0060】
ワックスのタックは、20℃で、力の変化(圧縮力または引張力)(F)を、時間の関数として測定することによって求めるが、それには、レオ(Rheo)社から「TA−XT2i(登録商標)」の商品名で販売されているテクスチュロメーターを使用し、それに45度の角度を形成する円錐状のアクリルポリマー製スピンドルを取り付ける。
【0061】
測定方法は、以下の通りである:
【0062】
ワックスを、ワックスの融点+10℃に等しい温度で溶融させる。溶融させたワックスを、直径25mm、深さ20mmの容器の中に注入する。そのワックスを、ワックスの表面が平坦で滑らかになるようにして、室温(25℃)で24時間かけて再結晶化させ、次いでそのワックスを20℃で少なくとも1時間保存してから、タックの測定を開始する。
【0063】
テクスチュロメーターのスピンドルを0.5mm/sの速度で変位させて、ワックスの中に貫入させて、貫入深さを2mmとする。スピンドルがワックスの中に深さ2mmまで貫入したら、スピンドルをそこで1秒間静止させて(緩和時間に相当する)、次いで、0.5mm/sの速度で引き抜く。
【0064】
その緩和時間の間に、力(圧縮力)が大きく減少してゼロとなり、次いで、スピンドルを引き抜いている間は、力(引張力)は負となり、次いで上昇してふたたび0の値に戻る。タックは、力(引張力)が負の値に相当する曲線の部分について、時間の関数としての力の曲線を積分したものに相当する。タックの値はN.sの単位で表す。
【0065】
使用できる粘着性のあるワックスの硬度は一般に、3.5MP以下、好ましくは0.01MPa〜3.5MPaの範囲、特に0.05MPa〜3MPaの範囲、あるいはさらに0.1MPa〜2.5MPaの範囲である。
【0066】
硬度は、先に述べた方法に従って測定する。
【0067】
使用可能な粘着性のあるワックスの例としては、(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアリン酸C20〜C40アルキル(そのアルキル基が20〜40個の炭素原子を含む)の単独または混合物が挙げられるが、好ましくは次の式(I)の12−(12'−ヒドロキシステアリルオキシ)ステアリン酸C20〜C40アルキル:
【0068】
【化1】

【0069】
(ここで、mは18〜38の範囲の整数)、または式(I)の化合物の混合物が挙げられる。
【0070】
そのようなワックスは特に、コスター・コイネン(Koster Keunen)社から「ケステル・ワックス・K82P(Kester Wax K82P,登録商標)」および「ケステル・ワックス・K80P(Kester Wax K80P,登録商標)」)の商品名で販売されている。
【0071】
上に挙げたワックスは一般に、その溶融開始点(starting melting point)が45℃未満である。
【0072】
本発明による組成物の1つの具体的な実施態様においては、その組成物に、高い溶融開始点、すなわち一般に45℃以上、好ましくは50℃以上、さらには非常に高い溶融開始点、すなわち一般に55℃以上、好ましくは60℃以上の、少なくとも1種のワックスを含む。ワックスの溶融開始点は、示差走査熱量計(DSC)、たとえば、TA・インストルメンツ(TA Instruments)社から「MDSC2920(登録商標)」の商品名で販売されているような熱量計を使用して測定することができる。
【0073】
その測定方法は、融点の測定について述べた場合と同じである。
【0074】
化合物の溶融開始点は、本明細書においては「mpstart」と略称で記載するが、融解熱の5%が消費された温度に相当する。
【0075】
充分に高いがしかし50℃を超えることのない溶融開始点を有するワックスとしては、特に、モンタンワックス(mpstart=47.9℃)、オゾケライト(mpstart=46.3℃)、ステアリルアルコールでエステル化したオリーブ油を接触水素添加して得られるワックスで、ソフィム(Sophim)社から「フィトワックス・オリーブ18L57(Phytowax Olive 18L57,登録商標)」の商品名で販売されているもの(mpstart=47.4℃)などを挙げることができる。
【0076】
融点が50℃以上で55℃未満のワックスとしては、特に、コメヌカワックス(mpstart=51.4℃)、カンデリラワックス(mpstart;=50℃)およびオウリカレーワックス(ouricurry wax)(mpstart=51.4℃)をあげることができる。
【0077】
本発明による組成物において使用できる、非常に高い溶融開始点を有するワックスとしては、特に、カルナウバワックス(mpstart=63.5℃)、フィッシャー・トロプシュ(Fisher−Tropsch)合成により得られるワックス(mpstart=60.5℃)、ある種のポリエチレンワックス、たとえば特に、ニュー・フェース・テクノロジーズ(New Phase Technologies)社から「パフォーマリーン655(Performalene 655,登録商標)」、またはハネウェル(Honeywell)社から「ポリエチレンAC540(Polyethylene AC540,登録商標)」の商品名で販売されているもの、ペトロライト(Petrolite)社から「ポリワックス2000T−6(Polywax 2000T−6,登録商標)」(mpstart=125℃)、またはイーストマン・コダック(Eastman Kodak)社からの「PED191(登録商標)」および「エポリーンN−14(Epolene N−14,登録商標)」(それぞれ、mpstart=120℃および106℃)の商品名で販売されているもの、および、ある種の単結晶ワックス、たとえば、ティスコ(Tisco)社から「ティスコ・ワックス88(Tisco Wax 88,登録商標)」または、パラメルト(Paramelt)社から「マイクロワックスHW(Microwax HW,登録商標)」の商品名で販売されているもの、などを挙げることができる。
【0078】
非常に高い溶融開始点を有するワックスを、さらに挙げれば、直鎖状または分岐状のC〜C32脂肪族鎖を含む動物オイルまたは植物オイルを接触水素添加させて得られるワックス、たとえば、水素化ホホバ油(mpstart=63.2℃)およびビス(1,1,1−トリメチロールプロパン)テトラベヘネートで、ヘテレーヌ(Heterene)社から「ヘスト2T−4B(Hest 2T−4B,登録商標)」の商品名で販売されているもの(mpstart=61.8℃)などがある。
【0079】
高い溶融開始点または、さらに非常に高い溶融開始点を有するワックスの、本発明による組成物中での含量は、特に高くてもよく、特に20重量%以上であってもよい。
【0080】
本発明においては、約0.5〜30マイクロメートル、好ましくは1〜20マイクロメートル、より好ましくは5〜10マイクロメートルの大きさの、微小粒子の形態で供給されるワックスを使用することも可能であるが、本明細書では以下においてそれらを「マイクロワックス」と呼ぶ。区別をするために、本発明において、より大きな断片形状で使用するワックスは、本明細書で以下においては「従来からのワックス」と呼ぶ。
【0081】
本発明による組成物において使用できるマイクロワックスとしては、次のようなものを挙げることができる:カルナウバマイクロワックス、たとえば、マイクロ・パウダーズ(Micro powders)社から「マイクロケア350(MicroCare 350,登録商標)」の商品名で販売されている製品;合成マイクロワックスで、たとえば、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)社から「マイクロイーズ114S(MicroEase 114S,登録商標)」の商品名で販売されている製品;カルナウバワックスとポリエチレンワックスの混合物からなるマイクロワックスで、たとえば、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)社から「マイクロケア300(Micro Care 300,登録商標)」および「310,(登録商標)」の商品名で販売されている製品;カルナウバワックスと合成ワックスの混合物からなるマイクロワックスで、たとえば、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)社から「マイクロケア325(Micro Care 325,登録商標)」の商品名で販売されている製品;ポリエチレンマイクロワックスで、たとえば、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)社から「マイクロポリ200(Micropoly 200,登録商標)」、「220(登録商標)」、「220L(登録商標)」および「250S(登録商標)」の商品名で販売されている製品;およびポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダーで、たとえば、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)社から「マイクロスリップ519(Microslip 519,登録商標)」および「519L(登録商標)」の商品名で販売されている製品。
【0082】
上述のマイクロワックスの中でも、それらの内のいくつか、たとえばカルナウバマイクロワックス、合成マイクロワックス「マイクロイーズ114S(MicroEase 114S,登録商標)」または、カルナウバワックスと合成ワックスの混合物からなるマイクロワックス「マイクロケア325(MicroCare 325,登録商標)」は、45℃以上の溶融開始点を有している。
【0083】
本発明による組成物においては、ワックスの混合物を使用、特に、1種または複数の従来からのワックス、たとえば特に粘着性のあるワックスおよび/または45℃以上の溶融開始点を有するワックスと、1種または複数のマイクロワックスとを使用することは、明らかに可能である。
【0084】
本発明による組成物には一般に、10%〜70重量%のワックスを含む。好ましくは組成物には、組成物の全重量を基準にして、好ましくは15%〜65%、より好ましくは20%〜60%、さらには25%〜55重量%のワックスを含むことができる。
【0085】
ワックスまたは複数のワックスの混合物は、本発明による組成物においては、非水溶媒媒体の中に分散させた粒子の形態で存在させる。
【0086】
ワックス粒子は各種の形状とすることができる。それらは特に、実質的に球状であるのがよい。
【0087】
本組成物のサンプルを室温で顕微鏡を用いて観察すると、前記媒体中にワックス粒子が、それらの粒子がほとんどまたは全く凝集せずに、良好に分散していていること、あるいはさらに、全ての方向に実質的に同じである粒子が分散していることがわかる。
【0088】
揮発性オイルに可溶で、少なくとも1つの結晶部分を有するポリマー
1つの具体的な実施態様においては、本発明による組成物には、前記揮発性オイルに可溶で、少なくとも1つの結晶性部分を有する、少なくとも1種のポリマーを含む。
【0089】
「前記揮発性オイルに可溶なポリマー」という表現は、単独で、少なくとも0.01重量%より高い固形分含量で、所望の最終的な組成物において想定されるのに相当する量で導入したときに、室温、一般に約25℃、大気圧下(750mmHg、すなわち、10Pa)で、前記揮発性オイルに溶解されるポリマーを意味している。
【0090】
本発明の目的においては、「ポリマー」という用語は、少なくとも2個の繰り返し単位、特に少なくとも3個の繰り返し単位、好ましくは少なくとも10個の繰り返し単位、さらには少なくとも15個の繰り返し単位を含む化合物を指す。本発明によるポリマーは一般に、異なった性質を有する少なくとも2種の繰り返し単位からなる(コポリマー)。本発明において使用するポリマーは一般に、合成由来のもので、そのモル質量は、200〜1,000,000g/モル、好ましくは500〜500,000g/モル、より好ましくは1000〜300,000g/モルである。
【0091】
より詳しくは、本発明において使用されるポリマーは、室温において揮発性オイル中に溶解される非結晶性のコポリマーであって、少なくとも1種の結晶性部分(Aと呼ぶ)と少なくとも1種の「非晶質な」非結晶性部分(Bと呼ぶ)とを必ず含む。
【0092】
このような特定の構造を有している結果、それらは、有利なことには、部分Aが存在するが故のワックスへの親和性と、部分Bが存在するが故の揮発性オイルへの親和性を兼ね備えていて、その結果、その点において、ワックスを揮発性オイルの中に効果的に分散させることに寄与している。
【0093】
本発明において使用されるポリマーの結晶性部分は、それぞれのポリマーの全重量を基準にして、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%でかつ50%まで、より好ましくは30%〜50重量%を占める。
【0094】
本発明によるコポリマーの結晶性部分Aは、前記ポリマーの骨格に結合したペンダント鎖であるか、および/またはその骨格の中に直接組み込まれたブロックであるか、および/または少なくとも1つの鎖末端であるかの、いずれであってもよい。これらのコポリマーは、どのような化学構造をとっていてもよく、たとえば、ランダム、ブロックまたはグラフトコポリマー、および/またはデンドリマーであってよい。
【0095】
同様にして、本発明によるコポリマーの非晶質な部分は、前記コポリマーの骨格に結合したペンダント鎖であるか、および/またはその骨格の中に直接組み込まれたブロックであるか、および/または少なくとも1つの鎖末端であるかの、いずれであってもよい。
【0096】
本発明の目的においては、次に示す用語または表現は以下に与える意味を有する:
・「結晶性部分A」とは、少なくとも5個の繰り返し単位のシーケンスを意味するが、その繰り返し単位は、この繰り返し単位に相当するのがホモポリマーと考えると、その結晶化度が30%より高くなることを特徴とするようなものであり;
・「非晶質部分B」とは、少なくとも5個の繰り返し単位のシーケンスを意味するが、その繰り返し単位は、この繰り返し単位に相当するのがホモポリマーと考えると、その結晶化度が5%未満、あるいはさらに0となることを特徴とするようなものであり;
・「骨格の中に組み込まれたブロック」とは、そのポリマーの主鎖の一部を形成する、モノマー単位の繰り返しからなる原子の群を意味し;
・「ペンダント鎖または側鎖基」とは、そのポリマー骨格の上に枝分れを形成する原子の群を意味し;そして
・「鎖末端」とは、その骨格の少なくとも1つの上に位置する、原子の群を意味する。
【0097】
a)ランダムコポリマー
ランダムコポリマーは、結晶性のペンダント鎖を有するポリマーであるのが好ましく、それには、少なくとも2種のモノマーを重合させることによって生成する単位を含むが、そのモノマーの内の少なくとも1種は、結晶性で、式IIで表されるXとして知られる疎水性の側鎖であり:
【0098】
【化2】

【0099】
ここでMはポリマー骨格の原子を表し、Sはスペーサー基を表し、そしてCは結晶性の基を表す。
【0100】
結晶性の鎖「−S−C」は、脂肪族または芳香族、直鎖状、分岐状または環状のいずれであってもよく、また場合によってはフルオロ化またはペルフルオロ化されていてもよい。「S」は特に、基(CHまたは(CHCHO)または(CHO)を表すが、それらは、直鎖状または分岐状または環状のいずれであってもよく、nは0〜22の範囲の整数である。好ましくは「S」は直鎖状の基である。「S」と「C」が異なっているのが好ましい。
【0101】
結晶性の鎖「−S−C」が炭化水素系の脂肪族鎖の場合には、それらには、少なくとも11個の炭素原子で40個以下の炭素原子、さらに好ましくは24個以下の炭素原子を含む、炭化水素系アルキル鎖を含む。それらは特に脂肪族鎖、あるいは少なくとも12個の炭素原子を含むアルキル鎖であるが、好ましくはC12〜C24アルキル鎖である。それらがフルオロアルキルまたはペルフルオロアルキル鎖の場合には、それらには、少なくとも6個のフルオロ化炭素原子を含み、好ましくは、少なくとも11個の炭素原子で、その炭素原子の内の少なくとも6個はフルオロ化されているのが好ましい。
【0102】
(1本または複数の)結晶性のペンダント鎖を含むポリマーの例としては、下記のモノマーの1種または複数を重合させることにより得られる単位を含むものを挙げることができる:C12〜C24のアルキル基を有する、飽和アルキルの(メタ)アクリル酸エステル、C12〜C15ペルフルオロアルキル基を有する、(メタ)アクリル酸ペルフルオロアルキル、C12〜C24のアルキル基を含むN−アルキル(メタ)アクリルアミド(フッ素原子を含んでいても、含まなくてもよい)、C12〜C24のアルキル基を有するアルキルまたはペルフルオロ(アルキル)鎖を含むビニルまたはアリルエステル(ペルフルオロアルキル鎖1本あたり少なくとも6個のフッ素原子を含む)、C12〜C24のアルキル基で、ペルフルオロアルキル鎖1本あたり少なくとも6個のフッ素原子を有する、アルキルまたはペルフルオロ(アルキル)鎖を含むビニルエーテル、C12〜C24のアルファ−オレフィン、たとえば、オクタデセン、12〜24個の炭素原子を含むアルキル基を有する、パラ−アルキルスチレン、およびそれらの混合物。
【0103】
本発明において使用することができるそれらのポリマーの例としては、結晶性部分Aを形成する、飽和で直鎖状のC12〜C30アルキル(メタ)アクリレートのコポリマーと、非晶質部分Bを構成する、直鎖状のC〜C10または分岐状もしくは環状および/または不飽和のC〜C30アルキル(メタ)アクリレートと、からのコポリマーを挙げることができる。
【0104】
結晶性部分Aを構成する、直鎖状で飽和のC12〜C30アルキル基を含むビニルエステルと、非晶質部分Bを構成する、直鎖状のC〜C10または分岐状もしくは環状および/または不飽和のC〜C30アルキル基を含むビニルエステルとからのコポリマーの中では、特に、酢酸ビニルとステアリン酸ビニルまたはステアリン酸アリルとのコポリマー、たとえば、ステアリン酸アリルと酢酸ビニルとのコポリマーで、シメックス(Chimex)社から、「メクソマーPQ(Mexomer PQ,登録商標)」の商品名で販売されているものをあげることができる
【0105】
重縮合によって生成するポリマーの場合には、上に定義した炭化水素系および/またはフルオロ結晶性鎖は、二酸、ジオール、ジアミンまたはジイソシアネートなどのモノマーから作り出す。
【0106】
b)ブロックコポリマー
これらのコポリマーは、異なった化学的性質を有する少なくとも2つのタイプのブロックからなり、その内の1つは結晶性であって、部分Aを構成する。ブロックコポリマーの場合には、非晶質ブロックBの内の少なくとも1種は、揮発性オイルに可溶でなければならない。
【0107】
例を挙げれば、次のようなものがある:
・結晶性鎖を含む、オレフィンのブロックコポリマーまたはシクロオレフィンのブロックコポリマーであって、たとえば、以下のものをブロック重合させることにより得られるもの:
・シクロブテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、ノルボルネン(すなわち、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン)、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8a−オクタヒドロ−ナフタレンまたはジシクロペンタジエン、またはそれらの混合物と、
・エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンまたは1−エイコセン、またはそれらの混合物とのブロック共重合物;
・水素化ブロックまたはマルチブロックポリ(ブチレンテレフタレート)−b−ポリ(イソプレン)ブロックコポリマー(B.ボウテバン(Boutevin)ら、「スタディ・オブ・モルホロジカル・アンド・メカニカル・プロパティーズ・オブ・PP/PBT(Study of morphological and mechanical properties of PP/PBT)、ポリマー・ブリテン(Polym.Bulletin.)、第34巻、p.117〜123(1995)文献参照);
・ポリ(エチレン)−b−コポリ(エチレン/プロピレン)ブロックコポリマー(P.ランガラヤン(Rangarajan)ら、「モルホロジー・オブ・セミクリスタリン・ブロック・コポリマーズ・オブ・エチレン−(エチレン−alt−プロピレン)(Morphology of semi−crystalline block copolymers of ethylene−(ethylene−alt−propylene))、マクロモレキュールス(Macromolecules)、第26巻、p.4640〜4645(1993)、およびP.リヒター(Richter)ら「ポリマー・アグリゲーツ・ウィズ・クリスタリン・コアーズ:ザ・システム・ポリ(エチレン)−ポリ(エチレンープロピレン)(Polymer aggregates with crystalline cores: the system poly(ethylene)−poly(ethylene−propylene))、マクロモレキュールス(Macromolecues)、第30巻、p.1053〜1068(1997)文献参照)、および
・ポリ(エチレン)−b−ポリ(エチルエチレン)ブロックコポリマー(I.W.ハムリー(Hamley)「クリスタリゼーション・イン・ブロック・コポリマーズ(Crystallization in block copolymers)」、アドバンシズ・イン・ポリマー・サイエンス(Advances in Polymer Science)、第148巻、p.113〜137(1999)一般文献参照)。
【0108】
これらのポリマーは、単一の結晶性ブロックであっても、結晶性ブロックの繰り返しを有していてもよい。後者の場合、それらの結晶性ブロックは、同一の化学構造であっても、異なった化学構造であってもよい。
【0109】
c)結晶性末端ブロックを有するコポリマー
このカテゴリーの例を挙げれば:
・(α)少なくとも32個の炭素原子を含むジカルボン酸、たとえばダイマー脂肪酸から選択される少なくとも1種の酸と、(β)アルキレンジアミン、好ましくはエチレンジアミンとの縮合によって得られるポリアミドタイプの重縮合物であって、そのポリアミドポリマーが、12〜30個の直鎖状で飽和の炭素原子を含む少なくとも1種のモノアルコールまたはモノアミンを用いてエステル化またはアミド化をした少なくとも1種のカルボン酸末端基を含み、特に、エチレンジアミン/ジリノール酸ステアリルのコポリマー、たとえば、アリゾナ・ケミカル(Arizona Chemical)社から「ユニクリアー100VG(Uniclear 100VG,登録商標)」の商品名で販売されているもの;および、
・親油性ポリエステル重縮合物であって、その末端基が、飽和で直鎖状のC12〜C30炭素系の鎖からなる結晶性の酸またはアルコールを用いてエステル化されたもので、特に12−ポリヒドロキシステアリン酸であって、その少なくとも1つの末端基が、ステアリン酸でエステル化されている、たとえば、アベチア(Avecia)社から販売されている「ソルスパース21000(Solsperse 21000,登録商標)」、がある。
【0110】
本発明によるコポリマーのさらなる例としては、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、水素化ブタジエン/イソプレンブロックコポリマー、およびエチレン/無水マレイン酸/酢酸ビニルターポリマーなどを挙げることができる。
【0111】
揮発性オイルに可溶性であって、少なくとも1つの結晶性部分を有するポリマー、またはそのようなポリマーの混合物は、本発明による組成物中に、組成物の全重量を基準にして、0.01%〜30%、特に0.1%〜20%、好ましくは1%〜10重量%の範囲の割合で存在させることができる。
【0112】
水および/または水溶性溶媒
本発明の第1の変形例においては、提案する組成物には水および水溶性溶媒を含まない。
【0113】
本発明の第2の変形例においては、提案する組成物には、水および/または少なくとも1種の水溶性溶媒を、組成物の重量を基準にして、合計で20重量%以下の量で含む。
【0114】
「水溶性溶媒」という用語は、室温では液状で、水と混和性がある化合物のことを言う(水混和性が、25℃大気圧下で、50重量%より大)。
【0115】
本発明による組成物において場合によっては使用することができるこの水溶性溶媒は、一般には揮発性でもある。
【0116】
本発明による組成物において使用できる水溶性溶媒の中でも、特に、1〜5個の炭素原子を含む低級モノアルコール、たとえば、エタノールおよびイソプロパノール、2〜8個の炭素原子を含むグリコール、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールおよびジプロピレングリコール、CおよびCケトン、およびC〜Cアルデヒドなどを挙げることができる。
【0117】
水および/または水溶性溶媒は、本発明による配合の中にそのまま導入することもできるし、あるいは、前記組成物を構成する1種または複数の成分の手段によって、その中に組み入れることもできる。したがって、特に水は、ラテックスまたは擬似ラテックス(pseudolatex)、すなわち、ポリマー粒子の水性分散体を導入することを手段として、組成物中に特に導入することもできる。
【0118】
前記組成物の中に水および/または水溶性溶媒が存在すると、まつ毛に対する組成物の接着が増強されるというメリットが得られる。具体的には、非水溶媒、特に揮発性オイルの量が多いほど、主として組成物の「オイル的な」性質のために、まつ毛の上での塗布が滑りやすくなる。非水溶媒を部分的に水溶性溶媒に置き換えることによって、この効果を抑制することが可能となり、それによって、まつ毛への付着を増やすことができる。得られるメイクアップの結果が、より太いものとなる。
【0119】
本発明のこの変形例においては、水および/または水溶性溶媒の含量は、組成物の全重量を基準にして、特に0.5%以上、好ましくは、1%〜18%、より好ましくは2%〜15重量%の範囲である。
【0120】
皮膜形成性ポリマー
1つの具体的な実施態様においては、本発明による組成物には、少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーを含むことができる。
【0121】
本発明においては、「皮膜形成性ポリマー」という用語は、ポリマーそれ自体によるかまたは補助的な皮膜形成剤の存在下で、支持体、特にケラチン物質に付着する連続の皮膜を形成させることが可能なポリマーを意味している。
【0122】
本発明においては、本発明の条件下では、結晶性部分を30重量%未満、好ましくは全く含まないようなポリマー、一般には脂溶性ポリマーがこのカテゴリーに分類される。
【0123】
本発明の組成物において使用することができる皮膜形成性ポリマーの中でも、フリーラジカル重合タイプまたは重縮合タイプの合成ポリマー、天然由来のポリマー、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0124】
脂溶性ポリマーの例としては、1種のビニルエステル(そのビニル基がエステル基の酸素原子に直接結合しており、そしてそのビニルエステルには、エステル基のカルボニルに結合した飽和で直鎖状または分岐状の1〜24個の炭素原子の炭化水素系ラジカルを含む)と、少なくとも1種の他のモノマー、たとえば、ビニルエステル(既に存在するビニルエステルとは別なもの)、アルキルビニルエーテル(そのアルキル基には2〜24個の炭素原子を含む)またはアリルエステルもしくはメタアリルエステル(エステル基のカルボニルに結合した飽和で直鎖状または分岐状の1〜24個の炭素原子の炭化水素系ラジカルを含む)と、のコポリマーが挙げられる。これらのコポリマーは、架橋剤を用いて架橋させることもできるが、そのような架橋剤としては、ビニルタイプまたはアリルもしくはメタアリルタイプのいずれでもよく、たとえば、テトラアリルオキシエタン、ジビニルベンゼン、ジビニルオクタンジオエート、ジビニルドデカンジオエート、およびジビニルオクタデカンジオエートなどが挙げられる。
【0125】
それらのコポリマーの例としては、以下のコポリマーを挙げることができる:酢酸ビニル/ラウリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸アリル、プロピオン酸ビニル/ラウリン酸ビニル、および2,2−ジメチルペンタン酸アリル/ラウリン酸ビニル。
【0126】
脂溶性の皮膜形成性ポリマーの例を挙げれば、脂溶性ホモポリマー、好ましくは、9〜22個の炭素原子を含むビニルエステル、または、そのアルキルラジカルが2〜24個の炭素原子を含むアクリル酸アルキルもしくはメタクリル酸アルキルをホモ重合させることによって得られるようなものがある。
【0127】
脂溶性ホモポリマーの例を特に挙げれば、ポリラウリン酸ビニルおよびポリ(メタ)アクリル酸ラウリルがあるが、これらのポリ(メタ)アクリル酸エステルは、エチレングリコールジメタクリレートまたはテトラエチレングリコールジメタクリレートを用いて架橋させることもできる。
【0128】
上で定義した脂溶性ホモポリマーおよびコポリマーは、公知であって、たとえば仏国特許出願第A2 232 303号明細書に記載があり;それらの重量平均分子量は、2000〜500,000、特に4000〜200,000の範囲にある。
【0129】
本発明において使用することができる、脂溶性で皮膜形成性のポリマーの例を挙げれば、ポリアルキレン、特にC〜C20アルケンコポリマーたとえばポリブテン、直鎖状または分岐状、飽和または不飽和C〜Cアルキルラジカルを有するアルキルセルロース、たとえばエチルセルロースおよびプロピルセルロース、ビニルピロリドン(VP)コポリマー、特にビニルピロリドンとC〜C40、好ましくはC〜C20アルケンとのコポリマーなどがある。本発明において使用することができるVPコポリマーの例としては、VP/酢酸ビニル、VP/メタクリル酸エチル、ブチル化ポリビニルピロリドン(PVP)、VP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸、VP/エイコセン、VP/ヘキサデセン、VP/トリアコンテン、VP/スチレン、およびVP/アクリル酸/メタクリル酸ラウリルコポリマー、などを挙げることができる。
【0130】
皮膜形成性ポリマーは、水相中または非水溶媒相の中に分散された粒子の形態で組成物中に存在させることができるが、これは一般に、ラテックスまたは擬似ラテックスとして知られているものである。それらの分散体の調製方法は、当業者には周知である。
【0131】
使用することができる、皮膜形成性ポリマーの水性分散体を挙げれば、以下のような商品名で販売されているアクリル系分散体:「ネオクリルXK−90(Neocryl XK−90,登録商標)」、「ネオクリルA−1070(Neocryl A−1070,登録商標)」、「ネオクリルA−1090(Neocryl A−1090,登録商標)」、「ネオクリルBT−62(Neocryl BT−62,登録商標)」、「ネオクリルA−1079(Neocryl A−1079,登録商標)」、および「ネオクリルA−523(Neocryl A−523,登録商標)」(アベチア−ネオレジンズ(Avecia−Neoresins)社製)、「ダウ・ラテックス432(Dow Latex 432,登録商標)」(ダウ・ケミカル(Dow Chemical)社製)、「ダイトゾル5000AD(Daitosol 5000AD,登録商標)」(ダイト・カセイ・コウギョウ(Daito Kasey Kogyo)社製);または以下のような商品名で販売されているポリウレタンの水性分散体:「ネオレッツR−981(Neorez R−981,登録商標)」および「ネオレッツR−974(Neorez R−974,登録商標)」(アベチア−ネオレジンズ(Avecia−Neoresins)社製)、「アバルアUR−405(Avalure UR−405,登録商標)」、「アバルアUR−410(Avalure UR−410,登録商標)」、「アバルアUR−425(Avalure UR−425,登録商標)」、「アバルアUR−450(Avalure UR−450,登録商標)」、「サンキュア875(Sancure 875,登録商標)」、「サンキュア861(Sancure 861,登録商標)」、「サンキュア878(Sancure 878,登録商標)」、および「サンキュア2060(Sancure 2060,登録商標)」(グッドリッチ(Goodrich)社製)、「イムプラニル85(Impranil 85,登録商標)」(バイエル(Bayer)社製)、「アクアミアH−1511(Aquamere H−1511,登録商標)」(ハイドロマー(Hydromer)社製);以下の商品名で販売されているスルホポリエステル:「イーストマンAQ(Eastman AQ,登録商標)」(イーストマン・ケミカル・プロダクツ(Eastman Chemical Products)社製)、ビニル系分散体、たとえば「メクソマーPAM(Mexomer PAM)」および、これもアクリル系のイソドデカン中分散体のたとえば、「メクソマーPAP(Mexomer PAP)」(シメックス(Chimex)社製)などがある。
【0132】
皮膜形成性ポリマーは、本発明による組成物中に、組成物の全重量を基準にして、固形分含量として0.1%〜30重量%、好ましくは0.5%〜25重量%、より好ましくは1%〜20重量%の範囲で含まれる。
【0133】
本発明による組成物には、皮膜形成性ポリマーによる膜の形成を促進させるために、可塑剤を加えてもよい。そのような可塑剤は、目的とする機能を満たすものであれば、当業者公知のいかなる化合物から選択してもよい。
【0134】
色素
本発明による組成物には、少なくとも1種の色素、たとえば粉体状染料、脂溶性染料および水溶性染料などを、含んでいてもよい。
【0135】
粉体状色素は、顔料および真珠層光沢物から選択することができる。
【0136】
顔料は、白色でも着色でもよく、あるいは鉱物質および/または有機物でもよく、また、コーティングがしてあっても、してなくてもよい。鉱物質顔料の例を挙げれば、二酸化チタン(場合によっては、表面処理したものでもよい)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛または酸化セリウム、およびさらには酸化鉄または酸化クロム、マンガンバイオレット、ウルトラマリンブルー、水和クロム、フェリックブルーなどがある。有機顔料の例を挙げれば、カーボンブラック、D&Cタイプの顔料、コチニールカルミンベースのレーキ、またはバリウム、ストロンチウム、カルシウムもしくはアルミニウムベースのレーキなどがある。
【0137】
真珠層光沢物は、白色真珠層光沢顔料、たとえば、チタン、またはビスマスオキシクロリドでコーティングしたマイカ、着色真珠層光沢顔料、たとえば、酸化鉄を組み合わせたチタンマイカ、特にフェリックブルーまたは酸化クロムと組み合わせたチタンマイカ、上述の有機顔料と組み合わせたチタンマイカ、およびさらにはビスマスオキシクロリドベースの真珠層光沢顔料などから選択することができる。
【0138】
脂溶性染料としては、たとえば、スーダンレッド、D&Cレッド17、D&Cグリーン6、β−カロチン、ダイズ油、スーダンブラウン、D&Cイエロー11、D&Cバイオレット2、D&Cオレンジ5、キノリンイエロー、およびアナットーなどがある。
【0139】
これらの色素は、組成物の全重量を基準にして、0.01%〜30重量%の範囲の含量で存在させることができる。
【0140】
充填剤
本発明による組成物には、少なくとも1種の充填剤を含んでいてもよい。
【0141】
充填剤は、当業者周知で、化粧料組成物に一般的に使用されているようなものから選択することができる。充填剤は、鉱物質であっても有機物であってもよいし、また層状であっても球状であってもよい。例を挙げれば、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、ポリアミド粉体、たとえばナイロン(Nylon,登録商標)で、アトケム(Atochem)社から「オルガゾル(Orgasol,登録商標)」の商品名で販売されているもの、ポリ−β−アラニン粉体およびポリエチレン粉体、テトラフルオロエチレンポリマーの粉体、たとえばテフロン(Teflon,登録商標)、ラウロイルリシン、デンプン、窒化ホウ素、発泡ポリマーの中空ミクロスフィア、たとえばポリ塩化ビニリデン/アクリロニトリルからのもので、たとえば、ノーベル・インダストリー(Nobel Industrie)社から「エクパンセル(Expancel,登録商標)」の商品名で販売されているもの、アクリルポリマー粉体で、たとえば、ダウ・コーニング(Dow Corning)社から「ポリトラップ(Polytrap,登録商標)」の商品名で販売されているもの、ポリメチルメタクリレート粒子およびシリコーン樹脂マイクロビーズ(たとえば、東芝(Toshiba)からの「トスパールス(Tospearls,登録商標)」)、沈降炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよびヒドロ炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、中空シリカミクロスフィア(マプレコス(Maprecos)からの「シリカ・ビーズ(Silica Beads,登録商標)」)、ガラスまたはセラミックスのマイクロカプセル、8〜22個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子を含む有機カルボン酸から誘導される金属石けん、たとえば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸リチウム、ラウリン酸亜鉛、およびミリスチン酸マグネシウムなどがある。
【0142】
充填剤は、組成物の全重量を基準にして、0.1%〜25%、好ましくは1%〜20重量%の量で存在させることができる。
【0143】
本発明の組成物にはさらに、化粧料として許容される、特に化粧料に通常使用されているような各種添加剤を含んでいてもよいが、そのようなものとしてはたとえば、抗酸化剤、保存剤、芳香剤、中和剤、可塑剤、増粘剤またはゲル化剤、繊維および、化粧料活性化合物、およびそれらの混合物などがある。
【0144】
本発明による組成物において使用できるゲル化剤は、一般に親油性のもので、有機質であっても鉱物質であってもよく、またポリマー性であっても、分子化合物であってもよい。
【0145】
鉱物質の親油性ゲル化剤の例を挙げれば、場合によっては変性されたクレー、たとえば、C10〜C22脂肪酸アンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト、たとえば、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで変性されたヘクトライト、たとえば、エレメンティス(Elementis)社から「ベントン38V(Bentone 38V,登録商標)」の商品名で販売されているものがある。
【0146】
場合によっては疎水性表面処理を施した、粒子径が1μm未満のヒュームドシリカも挙げることができる。具体的には、シリカの表面を化学的に変性することが可能で、化学反応させることによって、シリカの表面に存在するシラノール基の数を減少させる。特に、疎水性基によってシラノール基を置換することが可能で、それにより疎水性シリカが得られる。そのような疎水性基を挙げれば:
・トリメチルシロキシル基があり、これは特に、ヘキサメチルジシラザンの存在下で、ヒュームドシリカを処理することによって得ることができる。このような処理をしたシリカは、CTFA(第6版、1995年)において「シリカ・シリレート(silica silylate)」と呼ばれている。それらは、デグッサ(Degussa)社から商品名「アエロジルR812(Aerosil R812,登録商標)」、そしてカボット(Cabot)社から商品名「カブ−オ−シルTS−530(Cab−O−Sil TS−530,登録商標)」として販売されている;
・ジメチルシリロキシルまたはポリジメチルシロキサン基であり、これは特に、ヒュームドシリカを、ポリジメチルシロキサンまたはジメチルジクロロシランの存在下で処理することによって得られる。このような処理をしたシリカは、CTFA(第6版、1995年)において「シリカ・ジメチル・シリレート(silica dimethyl silylate)」と呼ばれている。それらは、たとえば、デグッサ(Degussa)社から商品名「アエロジルR972(Aerosil R972,登録商標)」および「アエロジルR974(Aerosil R974,登録商標)」として、またカボット(Cabot)社から、「カブ−オ−シルTS−610(Cab−O−Sil TS−610,登録商標)」および「カブ−オ−シルTS−720(Cab−O−Sil TS−720,登録商標)」として販売されている。
【0147】
この疎水性ヒュームドシリカは、ナノメーターからマイクロメーターの、たとえば約5〜200nmの範囲の粒子径を有しているのが好ましい。
【0148】
ポリマー性の有機親油性ゲル化剤としては、たとえば、3次元構造を有する部分的または全面的に架橋させたエラストマー性の有機ポリシロキサンがあり、例を挙げれば、信越(Shin−Etsu)からのKSG6(登録商標)、KSG16(登録商標)およびKSG18(登録商標)、ダウ・コーニング(Dow Corning)からのトレフィルE−505C(Trefil E−505C,登録商標)、またはトレフィルE−506C(Trefil E−505C,登録商標)、グラント・インダストリーズ(Grant Industries)からの、グランジルSR−GYC(Gransil SR−GYC,登録商標)、SR DMF 10(登録商標)、SR−DC556(登録商標)、SR 5CYC ゲル(登録商標)、SR DMF 10ゲル(登録商標)およびSR DC556ゲル(登録商標)、および、ゼネラル・エレクトリック(General Electric)からの、SF1204(登録商標)およびJK113(登録商標);エチルセルロースで、たとえば、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)から、エトセル(Ethocel)の商品名で販売されているもの、および飽和または不飽和アルキル鎖で置換した、糖単位あたり1〜6個、好ましくは2〜4個のヒドロキシル基を含むガラクトマンナン、たとえば、C〜C、好ましくはC〜Cのアルキル鎖でアルキル化したグアーゴム、およびそれらの混合物などがある。「ジブロック」または「トリブロック」タイプのブロックコポリマーとしては、ポリスチレン/ポリイソプレンまたはポリスチレン/ポリブタジエンタイプのもの、たとえばBASF社から「ルビトールHSB(Luvitol HSB,登録商標)」の商品名で販売されているもの、ポリスチレン/コポリ(エチレン−プロピレン)タイプのもの、たとえば、シェル・ケミカル・カンパニー(Shell Chemical Co.)から「クレイトン(Kraton,登録商標)」の商品名で販売されているもの、あるいはポリスチレン/コポリ(エチレン−ブチレン)タイプのものなどがある。
【0149】
本発明による組成物において使用できるゲル化剤の例を挙げれば、デキストリンの脂肪酸エステル、たとえば、デキストリンパルミテート、特に、チバ・フロア(Chiba Flour)社から「レオパールTL(Rheopearl TL,登録商標)」または「レオパールKL(Rheopearl KL,登録商標)」の商品名で販売されているものがある。
【0150】
本発明による組成物にはさらに、長さを与える効果を改良できるように、繊維を加えることもできる。
【0151】
「繊維」という用語は、長さLと直径Dを有し、LがDよりも遙かに大きいような物体を意味するものと理解すべきであって、ここでDは、その繊維の断面が収まるような円の直径である。好ましくは、L/Dの比(すなわち形状係数)が、3.5〜2,500、好ましくは5〜500、特に5〜150の範囲となるように選択する。
【0152】
本発明の組成物において使用できる繊維は、鉱物質繊維であっても有機繊維であってもよく、また合成品であっても天然由来のものであってもよい。それらは、短くても長くてもよいし、バラバラであってもあるいは編み組みのように組織化されていてもよいし、中空であっても中実であってもよい。それらはいかなる形状であってもよいが、特に、目的とする特定の用途に応じて、円形または多角形(四角形、六角形または八角形)の断面を有していてもよい。それらの末端は、傷害防止のために、丸めるか、および/または研磨しておくのが好ましい。
【0153】
好ましくは、繊維の長さは1μm〜10mm、好ましくは0.1mm〜5mm、さらに好ましくは1mm〜3.5mmとする。それらの断面が、2nm〜500μmの範囲、好ましくは100nm〜100μmの範囲、さらに好ましくは1μm〜50μmの円の直径の中に入るようにする。繊維の重量または番手は、デニールまたはデシテックスで表されることが多いが、これはヤーン9kmあたりの重量を表している。好ましくは、本発明における繊維は、0.15〜30デニール、さらに好ましくは0.18〜18デニールの範囲から選んだ番手を有している。
【0154】
この繊維は、織物を製造するために使用されるものであってよく、たとえば、絹繊維、綿繊維、羊毛繊維、亜麻繊維、特に木材から、植物から、藻類から抽出されたセルロース繊維、レーヨン繊維、ポリアミド(ナイロン(Nylon,登録商標))繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維、特にレーヨンアセテート繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(すなわちアラミド)繊維、特にケブラー(Kevlar,登録商標)繊維、アクリル系ポリマー繊維、特にポリメチルメタクリレート繊維またはポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)繊維、ポリオレフィン繊維、特にポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、炭素繊維、特にグラファイトの形態のもの、ポリテトラフルオロエチレン(たとえば、テフロン(Teflon,登録商標))繊維、不溶性コラーゲン繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル繊維またはポリ塩化ビニリデン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアクリロニトリル繊維、キトサン繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレンフタレート繊維、および上述の繊維のようなポリマーの混合物から得られる繊維、たとえばポリアミド/ポリエステル繊維などである。
【0155】
手術用に使用される繊維を使用することも可能で、そのようなものとしては、たとえば、グリコール酸およびカプロラクトンから調製される再吸収性合成繊維(ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)からのモノクリル(Monocryl,登録商標));乳酸とグリコール酸とからのコポリマーのタイプの再吸収性合成繊維(ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)からのバイクリル(Vicryl,登録商標));ポリテレフタル酸エステル繊維(ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)からのエチボンド(Ethibond,登録商標))および、ステンレス鋼の糸(ジョンソン・アンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)からのアシエール(Acier,登録商標))などが挙げられる。
【0156】
さらに、それらの繊維は、表面処理をしてあっても、してなくてもよいし、また、コーティングがしてあっても、してなくてもよい。本発明において使用することができるコーティング繊維としては、帯電防止効果を与えるために銅スルフィドを用いてコーティングしたポリアミド繊維(たとえば、ローディア(Rhodia)からの、R−スタット(R−STAT,登録商標)、または、その他のポリマーのポリマーで、繊維に特定の組織を与えたもの(特殊な表面処理)や着色/ホログラム効果を含む表面処理をしたもの(たとえば、シルドレックス(Sildorex)からのルレックス(Lurex,登録商標)繊維)、などを挙げることができる。
【0157】
合成由来の繊維、特に有機繊維で、手術に使用するようなものを用いるのが好ましい。水不溶性繊維を使用するのが有利である。
【0158】
本発明による組成物において使用できる繊維は、ポリアミド繊維、セルロース繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維またはポリエチレン繊維であるのが好ましい。その長さ(L)は、0.1mm〜5mm、好ましくは0.25mm〜1.6mmの範囲であり、その平均直径は1μm〜50μmの範囲とすることができる。エタブリスマン・P・ボンテ(Etablissements P.Bonte)から、「ポリアミド0.9Dtex3mm(Polyamide 0.9 Dtex 3mm,登録商標)」の商品名で販売されているポリアミド繊維で、平均直径が6μm、番手が約0.9dtex、長さ0.3mm〜5mmの範囲のものを使用することができれば、好ましい。平均直径が50μmで長さが0.5mm〜6mmの範囲のセルロース(またはレーヨン)繊維も使用できるが、そのようなものとしてはたとえば、クレアモント・フロック(Claremont Flock)社から、「ナチュラル・レーヨン・フロック・ファイバー・RC1BE−N003−M04(Natural rayon Flock fiber RC1BE−N003−M04,登録商標)」の商品名で販売されているものが挙げられる。ポリエチレン繊維、たとえば、ミニ・ファイバーズ(Mini Fibers)社から「シャート・スタッフ13 099F(Shurt Stuff 13 099F,登録商標)」の商品名で販売されているものを使用することもできる。
【0159】
本発明による組成物にはさらに、これまで述べてきた繊維(硬質の繊維ではない)とは逆の、「硬質の」繊維を含んでいてもよい。
【0160】
硬質の繊維は、元々は実質的にまっすぐであるが、分散媒体中に置いたときに、形状に実質的な変化が起きることはなく、そのことは、下記の角度条件にも反映され、依然として実質的にまっすぐで直線状であると言えるような形状を示す。この角度条件は繊維の剛性を反映するもので、硬質の繊維のように小さな対象物では、剛性を他のパラメーターで表現するのは困難である。
【0161】
繊維の剛性は、次の角度条件に反映される:より有利には、数で表して、繊維の少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%において、繊維の長さ方向の中心軸に対する接線と、前記末端と繊維の長さ方向の中心軸の上の繊維の長さの半分に相当する点とを結ぶ直線との間に形成される角度が15度未満であり、繊維の長さの半分の点において繊維の長さ方向の中心軸に対する接線と、両端のうちの一方と繊維の長さ方向の中心軸の上の繊維の長さの半分に相当する点とを結ぶ直線との間で形成される角度が、0.8mm〜5mmの範囲、好ましくは1mm〜4mmの範囲、より好ましくは1mm〜3mm、さらには2mmの同一の繊維長さに対しては、15度以下である。
【0162】
上記の角度を繊維の両端と繊維の長さの半分の点とで測定すれば有利である;別の言い方をすれば、この場合、3種類の測定を実施し、その測定した角度の平均を15度以下とする。
【0163】
繊維のどの点をとっても、その接線が15度未満の角度をとるのが好ましい。
【0164】
本発明の用途においては、繊維の上のある点における接線によって形成される角度は、繊維の上の前記の点における繊維の長さ方向の中心軸に対する接線と、前記の点に最も近い繊維の末端と繊維の長さ方向の中心軸の上の繊維の長さの半分に相当する点とを結んだ直線との間の角度である。
【0165】
一般に、本発明による組成物において使用できる硬質の繊維は、同一または実質的に同一の繊維長さを有する。
【0166】
より詳しくは、その中に繊維濃度1重量%となるように硬質の繊維を分散させた媒体を顕微鏡を用いて、対物レンズの倍率を2.5とし、全視野で観察した場合、数として硬質の繊維の大部分、すなわち、数として硬質の繊維の少なくとも50%、好ましくは、数として硬質の繊維の少なくとも75%、さらに好ましくは、数として硬質の繊維の少なくとも90%が、上で定義した角度条件を満たしていなければならない。この角度の数値を得るための測定は、同じ長さの繊維について実施するが、その長さは、0.8mm〜5mm、好ましくは1〜4mm、より好ましくは1〜3mm、さらには2mmである。
【0167】
その中でこの観察を実施する媒体は、硬質の繊維に良好な分散を確実に与える分散媒体であって、たとえば水または、クレーの水性ゲル、または会合ポリウレタンなどである。硬質の繊維を含む組成物を直接に観察することでさえも、実施可能である。調製された組成物または分散体のサンプルを、スライドとカバーガラスの間に入れ、対物レンズの倍率を2.5とし、全視野で、顕微鏡観察をする。全視野観察することによって、繊維を、その全体で観察することが可能となる。
【0168】
この硬質の繊維は、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系ポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、特に非芳香族ポリアミド、および芳香族ポリイミドアミドから選択される合成ポリマーの繊維から選択することができる。
【0169】
硬質の繊維の例を挙げれば:
・ポリエステル繊維、たとえば、ヤーンを細断して得られるもので、デュポン・ドゥ・ヌムール(Dupont de Nemours)社から販売されている商品名、「ファイバー255−100−R11−242Tテイル3mm(断面8葉形)(Fiber 255−100−R11−242T Taille 3mm,登録商標)」、「ファイバー265−34−R11−56Tテイル3mm(断面円形)(Fiber 265−34−R11−56T Taille 3mm,登録商標)」、および、「ファイバー・クールマックス50−34−591テイル3mm(断面4葉形)(Fiber Coolmax 50−34−591 Taille 3mm,登録商標)」;
・ポリアミド繊維、たとえば、セルスエード・プロダクツ(Cellusuede Products)社から販売されている商品名、「トライローバル・ナイロン0.120−1.8DPF(Trilobal Nylon 0.120−1.8DPF,登録商標);「トライローバル・ナイロン0.120−18DPF(Trilobal Nylon 0.120−18DPF,登録商標);ナイロン0.120−6DPF(Nylon 0.120−6DPF);または、デュポン・ドゥ・ヌムール(Dupont de Nemours)社から販売されている商品名「ファイバー・ノーメックス・ブランド430テイル3mm(Fiber Nomex Brand 430 Taille 3mm)」ヤーンを細断して得られるもの;
・ポリイミドアミド繊維、たとえば、ローディア(RHODIA)社から販売されている商品名「カーメル(Kermel,登録商標)」および「カーメル・テック(Kermel Tech,登録商標)」;
・ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(すなわち、アラミド)、デュポン・ドゥ・ヌムール(Dupont de Nemours)社から特に商品名「ケブラー(Kevlar,登録商標)」として販売されているもの;
・多層構造を持つ繊維であって、ポリエステル、アクリル系ポリマーおよびポリアミドから選択されたポリマーを交互の相として含むもので、たとえば、欧州特許出願第A6 921 217号明細書、欧州特許出願第A686 858号明細書、米国特許第A5,472,798号明細書に記載があるもの、などが挙げられる。そのような繊維は、テイジン(Teijin)社から商品名「モルホテックス(Morphotex,登録商標)」および「テイジン・テトロン・モルホテックス(Teijin Tetron Morphotex,登録商標)」として、販売されている。
【0170】
特に好ましい硬質の繊維は、芳香族ポリイミドアミド繊維である。
【0171】
本発明の組成物のために使用することが可能な、ポリイミドアミドのヤーンまたは繊維については、たとえば、文献のR.ピジョン(Pigeon)およびP.アラール(Allard)、ヒミー・マクロモレクレール・アプリーク(Chimie Macromoleculaire Appliquee)、第40/41巻(1974)、p.139〜158(第600号)、または、特許文献の米国特許第A3,802,841号明細書、仏国特許出願第A2 079 785号明細書、欧州特許出願第A1−0 360 728号明細書、および欧州特許出願第A0 549 494号明細書に記載があるが、これらを、参照として取り入れるものとする。
【0172】
好適な芳香族ポリイミドアミド繊維は、次式の繰り返し単位を含むポリイミドアミド繊維であるが:
【0173】
【化3】

【0174】
これは、トリレンジイソシアネートと無水トリメリット酸とを重縮合させることによって、得られる。
【0175】
これらの繊維は、本発明による組成物中に、組成物の全重量を基準にして、0.01%〜10重量%、好ましくは0.1%〜5重量%、より好ましくは0.3%〜3重量%の範囲の含量で存在させることができる。
【0176】
本発明による組成物において使用できる化粧料活性化合物としては、特に、柔軟化剤、保湿剤、ビタミンおよび遮断剤、特にサンスクリーンを挙げることができる。
【0177】
言うまでもないことであるが、当業者ならば、任意の追加の添加剤および/またはそれらの量を選択して、本発明による組成物の有利な性質が、そのような添加によって、全くあるいは実質的に悪影響を受けないように、配慮することができよう。
【0178】
レオロジー特性
本発明による組成物はさらに、その粘弾性挙動により、特に、異なったレオロジーパラメーターを使用することによって、特徴付けることができる。
【0179】
一般に、材料が剪断の影響下で、純粋に弾性的な材料の特性、すなわち、エネルギーの貯蔵が可能な特性と、純粋に粘性的な材料の特性、すなわち、エネルギーの消散が可能な特性との、両方を有している材料は、粘弾性的であると言われている。
【0180】
さらに詳しくは、本発明による組成物の粘弾性挙動は、その剛性率G、その弾性δおよびその流動閾値(flow threshold)τによって特性づけることができるが;これらのパラメーターは特に成書の、G.クラージ(Couarraze)およびJ.L.グロシオール(Grossiord)『イニチアチオン・ア・ラ・レオロジー(Initiation a la rehologie)(レオロジー入門)』第2版、1991年(発行:ラボアジェ−テック1ドック(Lavoiseir−Tec 1 Doc))において、定義されている。
【0181】
これらのパラメーターは、25℃±0.5℃で、サーモレオ(ThermoRheo)社からのハーケ・レオストレス600(Haake RheoStress 600,登録商標)の、応力調節型レオメーターを用いて実施する測定手段により求めるが、その測定器にはステンレス鋼製のローターを備え、プレート/プレートの配置とし、そのプレートは直径20mmでその隙間(組成物をその上に載せる下側のプレート(ステータープレートとも呼ばれる)と、上側のプレート(ロータープレートとも呼ばれる)との間の距離)は0.3mmとする。この2枚のプレートには筋を付けて、プレートの壁面へのすべり現象を抑制している。
【0182】
応力に調和変動を与えながら、動的測定を実施する。これらの実験においては、剪断の大きさ、剪断速度および応力は、非常に低くして、その材料が、直線的な粘弾性領域の限界内に留まるようにする(静止状態(at rest)の組成物のレオロジー特性を評価するための条件)。
【0183】
直線的な粘弾性領域は一般に、材料の応答(すなわち、歪み)は、いつ何時でも加えた力(すなわち、応力)の値に直接比例するという、事実により定義される。この領域においては、加えられた応力が小さく、材料は、その微視的な構造を変えることなく、歪みを受ける。このような条件下では、その材料は「静止状態で」、非破壊的に検討される。
【0184】
組成物を、パルスω(ω=2πν、νは加えた剪断の振動数)に従って正弦波的に変化する応力τ(t)に従った調和剪断にかける。このような剪断をかけた組成物は、応力τ(t)を受け、歪みγ(t)に従った応答をするが、その応答は、それに対して、剛性率は加えた応力の関数としてはほとんど変化しないミクロ歪みに対応するものである。
【0185】
応力τ(t)と歪みγ(t)はそれぞれ、次の関係式で定義される:
τ(t)=τcos(ω・t)
γ(t)=γcos(ω・t−δ)
τは、応力の最大振幅であり、γは歪みの最大振幅である。δは、応力と歪みの間の位相ずれ角(dephasing angle)である。
【0186】
測定は、振動数1Hz(ν=1Hz)で行う。
【0187】
剛性率Gにおける変化(τ対γの比に対応)および弾性δにおける変化(測定された歪みに対する加えた応力の位相ずれ角に対応)を、加えた応力τ(t)の関数として測定する。
【0188】
組成物の歪みを、剛性率Gの変化と、弾性δの変化が7%未満である応力領域(ミクロ歪みゾーン)について測定し、それから、「プラトー(plateau)」パラメーターのGpとδを求める。閾値応力τc(組成物の流動を開始させるために加えることが必要な、最小の力に相当する)は、曲線δ=f(τ)から求めるが、δ(τ)=1.05δとなるτの値に相当する。
【0189】
本発明による組成物の粘弾性挙動は、プラトー剛性率Gpが、35,000Pa以下、特に30,000Pa以下、好ましくは28,000Pa以下、より好ましくは25,000Pa以下、さらには20,000Paであることを特徴とする。
【0190】
本発明による組成物はさらに、10Pa〜200Paの範囲、好ましくは20Pa〜100Paの範囲の流動閾値τcを有する。
【0191】
調製方法
本発明による組成物を調製するための方法は、使用するワックスの性質にとりわけ依存する。特に、そのワックスが従来タイプのものであるか、あるいは先に定義したマイクロワックスのタイプのものであるかによって、決まってくる。従来からのワックスの場合には、さらに前記ワックスの溶融開始点も関係してくる。
【0192】
第1の変形例においては、使用するワックスが、従来からのタイプで、45℃未満の溶融開始点を有している。
【0193】
そのような場合には、本発明の組成物は標準的な方法で調製することができ、ワックスを加熱して完全に溶融させ、次いでそれを揮発性オイルの中に導入する。そのようにして得られた混合物を、機械的な撹拌にかけながら、室温にまで冷却する。その組成物に、揮発性オイルに可溶で、かつ結晶性部分を有するポリマーを含む場合には、一般にはそれを揮発性オイルと共に導入するが、揮発性オイルよりも後で導入することもできる。
【0194】
水および/または水溶性溶媒、ならびに任意の追加の成分を、出発原料に導入することもできるが、場合によっては、冷却中または仕上がった組成物の中に導入してもよい。
【0195】
第2の変形例においては、使用するワックスが、従来からのタイプである。それらの溶融開始点は、45℃より低くても、45℃に等しくても、それより高くてもよい。
【0196】
そのような変形例においては、ケラチン繊維メイクアップ用組成物は一般に、そのワックスまたは複数のワックスの混合物を、最も高い融点を有するワックスの融点より高い温度に加熱し、完全に溶融させ、連続して室温にまで冷却する。
【0197】
揮発性オイルは、ブレンドの間に添加してもよいし、あるいはこの操作の前に添加しておいてもよい。
【0198】
従来からの方法に従って組成物を撹拌するのではなく、組成物をブレンドをすると、微結晶の形になっているワックスの結晶化が促進されて、小粒子が形成されるようである。このブレンド操作によって、形成された粒子の凝集体がすべて破壊されて、その結果、仕上がりの組成物中では、小さなワックス粒子の実質的に均一な分散体が得られることもわかった。
【0199】
このブレンド操作は、逆方向に回転している2本のロールからなるロールミル中で、それらのロールの間にペーストを供給して実施することもできるし、あるいは、より有利には、2軸スクリューの連続ブレンダーの中で実施することもできるが、このブレンダーでは、非常に粘稠な性質のペーストを再現性よく得ることが可能である。
【0200】
ブレンド操作を実施することが可能な条件については、仏国特許出願第94/00756号明細書に記載があるが、その出願の内容は、ここに参照することにより、本発明の出願に取り入れたものとする。
【0201】
その組成物が、水および/または水溶性溶媒ならびに任意の追加の成分を含む場合、それらを出発原料の中に導入することもできるし、あるいは場合によっては、ブレンド操作中、冷却時に導入したり、あるいは仕上がりの組成物に導入したりすることも可能である。
【0202】
特に、その組成物に、揮発性オイルに可溶でかつ結晶性部分を有する少なくとも1種のポリマーを含む場合には、そのポリマーを、ブレンド操作前に、単独または揮発性オイルと共に導入するのが好ましい。
【0203】
組成物を調製するためのこの方法は、特に、熱の影響を受けやすい化合物、たとえば、ある種の活性反応剤を組み込むことを可能とするメリットを有しているが、そのためには、それらの安定性に見合った温度で導入することができ、ブレンダーの中での滞留時間を短くできる必要がある。
【0204】
本発明の第3の変形例においては、使用するワックスが、先に定義したマイクロワックスである。
【0205】
その剤形が粒子の形態となっていることから、そのようなワックスは、その融点より低い温度でも直接使用することが可能である。別の言い方をすれば、本発明による組成物を調製するためのこの特殊な実施態様においては、そのマイクロワックス粒子は連続層の中に直接分散させて、溶融/再結晶化という工程によりその中で粒子を形成させることはしない。
【0206】
このワックス分散工程は、特に、ワックスの融点より低い温度、特に室温で実施することが可能であり、このことは、当然のことながら、調製方法の実施の容易さという点でメリットがある。
【0207】
その揮発性オイルは、先に定義したものから選択する。この特定な調製方法の実施態様においては、水および/または水溶性溶媒および/または上に定義した追加の成分は、状況に応じて、出発原料の中に加えても、あるいは仕上がりの組成物の中に加えてもよい。
【0208】
本発明の第4の変形例においては、組成物を調製するための方法に、少なくとも1種の従来からのワックスと、先に定義した少なくとも1種のマイクロワックスとの両方を含む。そのような場合には、従来からのワックスまたは従来からのワックスの混合物は一般に、最初に導入し、揮発性オイルの中で、場合によっては、揮発性オイルに可溶で、かつ結晶性部分を有する少なくとも1種のポリマーとの混合物として溶融させ、次いでそのようにして得られる混合物を、撹拌またはブレンドしながら冷却していく。マイクロワックスまたはマイクロワックスの混合物は、従来からのワックスを含む混合物の温度が、前記マイクロワックスの融点より低くなってから、またはマイクロワックス混合物の中の最も低い融点を有するマイクロワックスの融点より低くなってから、好ましくは室温になってから導入する。
【0209】
この場合にはさらに、水および/または水溶性溶媒および任意の追加の成分は、状況に応じて、出発原料の中に加えてもよいし、あるいは仕上がりの組成物に加えてもよく、また別な方法で、その組成物を冷却操作でブレンドしているときに加えてもよい。
【0210】
本発明の主題はさらに、ケラチン繊維をメイクアップするための方法であって、そこでは、先に定義した組成物を、前記ケラチン繊維、特にまつ毛に塗布する。
【0211】
本発明の組成物は、好ましくは、ブラシまたはくしを使用してまつ毛に塗布することができる。
【0212】
本発明の組成物を使用しての、メイクアップの太さを与える効果は、前記組成物を塗布するために用いる用具の選択によって、特に著しく、向上させることができる。
【0213】
本発明の場合においては、まつ毛のメイクアップする際には、仏国特許第2701198号明細書、仏国特許第2605505号明細書、欧州特許第792603号明細書および欧州特許第663161号明細書に記載されているようなメイクアップブラシを用いて、前記組成物を塗布するのが特に有利である。
【0214】
以下の実施例で本発明の説明をするが、それらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0215】
組成物調製実験方法
a.微小粒子の形態のワックスだけを含む組成物の調製方法
色素およびゲル化剤を、少なくとも1種の揮発性オイルの中で、場合によっては、前記オイルに可溶で、かつ少なくとも1種の結晶性部分を有する少なくとも1種のポリマーとの混合物として、撹拌することにより分散させるが、このような場合、その混合物は、温度45℃まで予備加熱をし、次いで冷却して室温とする。次いで、微小粒子の形態にあるワックスと、場合によってはその組成物の残りの成分とを、撹拌しながら添加する。
【0216】
水および/または水溶性溶媒は、撹拌しながら徐々に分散させるのが好ましい。
【0217】
b.従来からのワックスと微小粒子の形態にあるワックスとの両方を含む組成物の調製
色素およびゲル化剤を、少なくとも1種の揮発性オイルの中で、場合によっては、前記揮発性オイルに可溶で、かつ少なくとも1種の結晶性部分を有する少なくとも1種のポリマーとの混合物として、撹拌することにより分散させるが、このような場合、その混合物は、温度45℃まで予備加熱をし、次いで冷却して室温とする。得られた混合物を次いで加熱して45℃とし、その後で、予備加熱をして完全に溶融させておいた従来からのワックスの混合物を、徐々に添加する。そのようにして得られた混合物を、撹拌しながら放冷して、室温にする。次いで、微小粒子の形態にあるワックスと、場合によってはその組成物の残りの成分とを、添加する。
【0218】
水および/または水溶性溶媒は、撹拌しながら徐々に分散させるのが好ましい。
【0219】
c.連続2軸スクリューブレンダーを使用した組成物の調製
たとえばクレクストラル(Clextral)社からの「BC−21]型のような、連続2軸スクリューブレンダーの中で、以下のような条件下で、調製を実施する:
・入口温度:100℃
・出口温度:20℃
・流速=3kg/h
・スクリュー速度:600rpm
【0220】
揮発性オイルおよびその他の成分と同時に、予備溶融させておいたワックスをブレンダーの頂部に導入し、次いでその混合物を、連続2軸スクリューブレンドをしながら、出口温度にまで冷却する。
【0221】
物理的特性の測定
固形分含量の測定は、先に述べた試験方法に従って実施する。
【0222】
レオロジーに関する測定は、先に述べた試験方法に従い、ハーケ・レオストレス600(Haake RheoStress 600,登録商標)の、応力調節型レオメーターを用いて実施するが、その際の測定条件は以下の通りである:
・測定温度:25℃
・25℃で180秒の静止状態を置いてから、測定開始
・応力掃引:1〜10000Pa
・測定振動数:1Hz
【0223】
(実施例1)
方法b)に従って、下記の組成を有する耐水マスカラを調製した:
・蜜蝋: 8.67g
・カルナウバマイクロワックス(「マイクロケア350(MicroCare 350,登録商標)」、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)製): 24.2g
・合成マイクロワックス(「マイクロイーズ114S(MicroEase 114S,登録商標)」、マイクロ・パウダーズ(Micro Powders)製):
2.02g
・ポリラウリン酸ビニル(「メクソマーPP(Mexomer PP,登録商標)」、シメックス(Chimex)製): 0.66g
・保存剤: 0.2g
・染料: 5.7g
・ベントナイト: 3.6g
・プロピレンカーボネート: 1.18g
・ステアリン酸アリル/酢酸ビニルコポリマー(「メクソマーPQ(Mexomer PQ,登録商標)、シメックス(Chimex)製): 6.5g
・イソドデカン: 47.27g
【0224】
この組成物の各種特性を、先に説明した実験方法に従って、インビトロで検討した。結果は、下記の表Iに示す:
【0225】
【表1】

【0226】
このようにして得られた組成物は、非常に高い固形分含量(50%より大)を有しているが、これは、その組成物中の揮発性オイルの割合よりも多い。
【0227】
この組成物は、まつ毛に容易に塗布でき、すみやかに乾燥する。
【0228】
(実施例2および3)
それぞれ下記の表IIに示したような組成を含む2種の耐水マスカラを、方法a)に従って調製した(この表において示した量は、組成物の全重量を基準にして表した、重量パーセントである)。
【0229】
【表2】

【0230】
これらの組成物の各種特性を、先に説明した実験方法に従って、インビトロで検討した。
【0231】
結果は、下記の表IIIに示す:
【0232】
【表3】

【0233】
こうして得られた組成物は、60%を超える固形分含量を有しているが、同時に、剛性率の値が低く、そのため満足のいく可撓性を有していることがわかる。
【0234】
これらの配合物は、まつ毛に対して特に好適に塗布でき、非常にすみやかに乾燥するので、まつ毛に実質的な太さを与えるメイクアップ効果が得られる。
【0235】
(実施例4〜7)
b)に記載した方法に従い、下記の表IVに記載した成分を混合することにより、4種の耐水マスカラを調製した(この表において示した量は、組成物の全重量を基準にして表した、重量パーセントである)。
【0236】
【表4】

【0237】
実施例4および5の組成物は、水を、組成物の全重量を基準にして、それぞれ6.5%および2.1重量%の量で含むが、この水は、使用したラテックス、すなわち、シメックス(Chimex)社からの「メクソマーPAM(Mexomer PAM,登録商標)」、およびダイト(Daito)社からの「ダイトゾル5000AD(Daitosol 5000AD,登録商標)」に由来するものである。
【0238】
これらの組成物のインビトロでの各種特性を、先に説明した実験方法に従って検討した。
【0239】
結果は、下記の表Vに示す。
【0240】
【表5】

【0241】
(実施例8)
c)に記載の方法に従って、下記の組成を有する耐水マスカラを調製した:
・粘着性のあるワックス(「ケステル・ワックス・K82P(Kester Wax K82P,登録商標)」、コスター・コイネン(Koster Keunen)製): 32g
・デキストリンパルミテート(「レオパールKL(Rheopearl KL,登録商標)」、チバ・フロア(Chiba Flour)社製): 5.32g
・酢酸ビニル/ステアリン酸アリルコポリマー(65/35)(「メクソマーPQ(Mexomer PQ,登録商標)」、シメックス(Chimex)製): 2.2g
・ポリラウリン酸ビニル(「メクソマーPP(Mexomer PP,登録商標)」、シメックス(Chimex)製): 0.75g
・12−ヒドロキシステアリン酸オリゴマーステアレート(「ソルスパース21000(Solsperse 21000,登録商標)」、アベチア(Avecia)製): 0.10g
・シリカ: 10g
・タルク: 0.84g
・顔料: 4.62g
・保存剤: 十分量
・非変性96度エチルアルコール: 3g
・イソドデカン: 40.96g
【0242】
この組成物のインビトロでの各種特性を、先に説明した実験方法に従って検討した。
【0243】
結果は、下記の表VIに示す。
【0244】
【表6】

【0245】
このようにして得られた組成物もまた、非常に高い固形分含量を有していて、それは、その揮発性オイル含量よりも高いものである。さらにこのものは、非常に低いプラトー剛性率を有していて、満足な使用条件下でそれを使用することが可能である。
【0246】
このようにして調製したマスカラは、まつ毛に容易に塗布することができ、極めてすみやかに乾燥し、まつ毛の上に、太さがあって、非粘着性のメイクアップが得られる。そのまつ毛は、充分に分離している。
【0247】
(実施例9)
c)に記載の方法に従って、下記の組成を有する耐水マスカラを調製した。
・マイクロクリスタリンワックス(「マイクロワックスHW(Microwax HW,登録商標)」、パラメルト(Paramelt)製): 30g
・変性ヘクトライト(「ベントン38V(Bentone 38V,登録商標)」、エレメンティス(Elementis)製): 5g
・プロピレンカーボネート: 1.7g
・顔料: 15g
・エチルアルコール: 3.0g
・イソドデカン: 45.3g
【0248】
この組成物は、組成物の全重量を基準にして、51.7重量%の固形分含量と、組成物の全重量を基準にして、45.3重量%の揮発性オイル含量を有している。
【0249】
(実施例10)
c)に記載の方法に従って、下記の組成を有する耐水マスカラを調製した:
・マイクロクリスタリンワックス(「マイクロワックスHW(Microwax HW,登録商標)」、パラメルト(Paramelt)製): 38g
・酢酸ビニル/ステアリン酸アリルコポリマー(「メクソマーPQ(Mexomer PQ,登録商標)」、シメックス(Chimex)製): 2.21g
・ポリラウリン酸ビニル(「メクソマーPP(Mexomer PP,登録商標)」、シメックス(Chimex)製): 0.75g
・顔料: 4.62g
・12−ヒドロキシステアリン酸オリゴマーのステアレート(「ソルスパース21000(Solsperse 21000,登録商標)」アベチア(Avecia)製):
0.27g
・パーリームオイル: 10g
・エチルアルコール: 3.0g
・イソドデカン: 40.11g
【0250】
この組成物は、組成物の全重量を基準にして、56.89重量%の固形分含量と、組成物の全重量を基準にして、40.11重量%の揮発性オイル含量を有している。
【0251】
(実施例11および12)
c)に記載した方法に従い、下記の表VIIに記載した成分を混合することにより、2種の耐水マスカラを調製した(この表において示した量は、組成物の全重量を基準にして表した、重量パーセントである)。
【0252】
【表7】

【0253】
これらの組成物は、下記の表VIIIに要約した特性を有している。
【0254】
【表8】

【0255】
こうして得られた組成物は、その揮発性オイル含量と等しい固形分含量を有している。
【0256】
これらの組成物はまつ毛に好適に塗布でき、速やかに乾燥する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量を基準にして20重量%までの水および/または水溶性溶媒を含む、ケラチン繊維をメイクアップするための化粧料組成物であって、前記組成物の全重量を基準にして3重量%を超える量の少なくとも1種のワックス及び、前記組成物の固形分含量以下の揮発性オイル合計含量で少なくとも1種の揮発性オイルを含むことを特徴とする、化粧料組成物。
【請求項2】
前記固形分含量が、組成物の全重量を基準にして、40%以上、特に43%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは47%以上、さらには49重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記揮発性オイルが、非水溶媒媒体の50重量%を超えることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記揮発性オイルの合計含量が、組成物の全重量を基準にして、5%〜50重量%、特に10%〜45重量%、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20%〜38重量%であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の組成物。
【請求項5】
前記揮発性オイルが、炭化水素系オイル、シリコーンオイルおよび/またはフルオロオイルから選択されることを特徴とする、請求項1〜4に記載の組成物。
【請求項6】
8〜16個の炭素原子、特に分岐状のC〜C16アルカン、たとえば石油由来のC〜C16イソアルカン、たとえばイソドデカン、イソデカン、イソヘキサデカンを含む炭化水素系オイル、分岐状のC〜C16エステル、ネオペンタン酸イソヘキシル、および石油留分から選択される、少なくとも1種の炭化水素系揮発性オイルを含むことを特徴とする、請求項1〜5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ワックスが、室温においては固体で剛性があり、30℃以上、好ましくは45℃以上、特に55℃以上の融点を有するワックスから選択されることを特徴とする、請求項1〜6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ワックスが、炭化水素系ワックス、たとえば蜜蝋、ラノリンワックス、シナ蝋、木蝋、パラフィン、ポリエチレンワックス、ワックス状コポリマー、およびそれらのエステル;直鎖状または分岐状のC〜C32脂肪族鎖を含む動物オイルまたは植物オイルを接触水素添加することにより得られるワックスであって、たとえば、トランス異性化部分水素化ホホバ油、水素化ヒマワリ油、水素化ヒマシ油、水素化ヤシ油、水素化ラノリン油、およびテトラステアリン酸ビス(1,1,1−トリメチロールプロパン)、およびセチルアルコールでエステル化したヒマシ油を水素添加することにより得られるワックス、から選択されることを特徴とする、請求項1〜7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ワックスが、タックが0.7N.s以上、好ましくは1N.s以上で、硬度が3.5MPa以下のワックスから選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ワックスが、(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアリン酸C20〜C40アルキルから選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ワックスが、その溶融開始点が45℃以上、特に50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であるワックスから選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ワックスが、カルナウバワックス、コメヌカワックス、カンデリラワックス、オウリカレーワックス、モンタンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュ合成により得られるワックス、水素化ホホバ油、ビス(1,1,1−トリメチロールプロパン)テトラベヘネート、ステアリルアルコールでエステル化したオリーブ油を接触水素添加することにより得られるワックス、マイクロクリスタリンワックス、およびポリエチレンワックス、から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ワックスの合計含量が、組成物の全重量を基準にして、10%〜70%、特に15%〜65%、好ましくは20%〜60%、より好ましくは25%〜55重量%であることを特徴とする、請求項1〜12に記載の組成物。
【請求項14】
前記揮発性オイルに可溶であり、かつ少なくとも1種の結晶性部分を有する、少なくとも1種のポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが、200〜1,000,000g/モル、好ましくは500〜500,000g/モル、より好ましくは1000〜300,000g/モルの範囲のモル質量を有することを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記結晶性部分が、前記ポリマーの全重量を基準にして、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%で50%以下、より好ましくは30%〜50重量%を占めることを特徴とする、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマーが、直鎖状で飽和のC12〜C30アルキル(メタ)アクリレートと、直鎖状のC〜C10または分岐状、環状および/または不飽和のC〜C30アルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー;直鎖状で飽和のC12〜C30アルキル基を含むビニルエステルと、直鎖状のC〜C10または分岐状、環状および/または不飽和のC〜C30アルキル基を含むビニルエステルとのコポリマー;(α)少なくとも32個の炭素原子を含むジカルボン酸から選択される少なくとも1種の酸、および(β)アルキレンジアミンとの間の縮合によって得られるポリアミドタイプの重縮合物であって、12〜30個の炭素原子を含む少なくとも1種の直鎖状で飽和のモノアルコールまたは少なくとも1種の直鎖状で飽和のモノアミンを用いてエステル化またはアミド化された、少なくとも1種のカルボン酸末端基を含む重縮合物;およびその末端が、飽和で直鎖状のC12〜C30炭素系鎖からなる結晶性酸またはアルコールによりエステル化されている、親油性ポリエステル重縮合物、から選択されることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマーが、酢酸ビニル/ステアリン酸ビニル、酢酸ビニル/ステアリン酸アリル、酢酸ビニル/エチレンおよびエチレンジアミン/ジリノール酸ステアリルコポリマー、水素化ブタジエン/イソプレンのブロックコポリマー、およびその末端の少なくとも1つがステアリン酸によりエステル化されているポリ(12−ヒドロキシステアリン酸)から選択されることを特徴とする、請求項14〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリマーが、組成物の全重量を基準にして、0.01%〜30%、特に0.1%〜20%、好ましくは1%〜10重量%の範囲の含量で存在することを特徴とする、請求項14〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が水を含まず、そして水溶性溶媒を含まないことを特徴とする、請求項1〜19に記載の組成物。
【請求項21】
水および/または水溶性溶媒を合計した含量が、組成物の全重量を基準にして、特に0.5%以上、好ましくは1%〜18%、より好ましくは2%〜15重量%であることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記水溶性溶媒が、1〜5個の炭素原子を含む低級モノアルコール、2〜8個の炭素原子を含むグリコール、CおよびCケトン、ならびにC〜Cアルデヒド、から選択されることを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜22に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種の色素をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜23に記載の組成物。
【請求項25】
少なくとも1種の充填材をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜24に記載の組成物。
【請求項26】
抗酸化剤、保存剤、芳香剤、中和剤、可塑剤、繊維、ゲル化剤および化粧料活性化合物、およびそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜25に記載の組成物。
【請求項27】
少なくとも1種の非揮発性オイルをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜26に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、30,000Pa以下、特に28,000Pa以下、好ましくは27,000Pa以下、より好ましくは25,000Pa以下、さらには20,000Pa、のプラトー剛性率Gpを有することを特徴とする、請求項1〜27に記載の組成物。
【請求項29】
振動レオロジー(ν=1Hz)により測定される流動閾値τが、10〜20Pa、特に20〜100Paの範囲であることを特徴とする、請求項1〜28に記載の組成物。
【請求項30】
少なくとも1種のワックスを、前記ワックスの融点より高い温度から、室温まで連続で冷却しながら、連続的にブレンドすることを少なくとも含むことを特徴とする、請求項1〜29のいずれか1項の記載により定義される組成物を調製するための方法。
【請求項31】
連続の2軸スクリューブレンダーを使用することを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ブレンド操作の前か、前記ブレンド操作中かのいずれかにおいて、少なくとも1種の揮発性オイルを添加することを特徴とする、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
請求項14〜19のいずれか1項において定義される、揮発性オイルに可溶で、かつ結晶性部分を有する少なくとも1種のポリマーを、前記ブレンド操作の前に添加することを特徴とする、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1種の揮発性オイルの中で、少なくとも1種のワックスを直径0.5μm〜30μmの間の粒子の形状になるように分散させる少なくとも1つの工程を含み、ここで前記オイルまたは前記複数のオイルの混合物が、粒子の形状にある前記ワックスの融点よりも低い温度にあることを特徴とする、請求項1〜29のいずれか1項の記載により定義される組成物を調製するための方法。
【請求項35】
前記の分散が、室温で実施されることを特徴とする、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記粒径が、1〜20μm、好ましくは5〜10μmであることを特徴とする、請求項34および35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記ワックスが、カルナウバワックス、合成ワックス、カルナウバワックスとポリエチレンワックスとの混合物からなるワックス、カルナウバワックスと合成ワックスとの混合物からなるワックス、ポリエチレンワックス、およびポリテトラフルオロエチレンワックス、から選択されることを特徴とする、請求項34〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項7〜12のいずれか1項に従って定義される少なくとも1種のワックスを、前記揮発性オイルの中に溶融した形で前もって導入し、次いでそのようにして得られた混合物を、撹拌しながら放冷するか、または、それが少なくとも粒子の形態にある前記ワックスの融点より低い温度となるまでブレンドすることを特徴とする、請求項34〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記揮発性オイルが、請求項3〜6のいずれか1項において定義されているものであることを特徴とする、請求項32〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記揮発性オイルが、請求項14〜19のいずれか1項において定義される、前記オイルに可溶で、かつ少なくとも1種の結晶性部分を有する少なくとも1種のポリマーとの混合物になっていることを特徴とする、請求項34〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
請求項1〜29のいずれか1項において定義されるか、または、請求項30〜40のいずれか1項において定義される方法により得られる組成物を、前記ケラチン繊維、特にまつ毛に塗布することを特徴とする、ケラチン繊維をメイクアップするための方法。

【公開番号】特開2007−326881(P2007−326881A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237119(P2007−237119)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【分割の表示】特願2004−533550(P2004−533550)の分割
【原出願日】平成15年8月6日(2003.8.6)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】