ゲノム・メンテナンスインタフェースをターゲットとする抗バクテリア薬
新規な抗菌性化合物の設計と同定のための方法が提供される。これらの抗菌性化合物を含む医薬品組成物も提供される。の抗菌性化合物は原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質のポリペプチドへの結合を禁止する。いくつかの例では、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質は原核生物のエキソヌクレアーゼIである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照される関連出願
本発明は、参照されここに組込まれる、2007年5月22日に出願された米国仮特許出願番号60/931,411への優先権を主張する。
政府の権利
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた米国国庫補助番号GM068061により行われた。米国政府は本発明について一定の権利を有している。
本発明の分野
【0003】
本発明は、新規な抗菌化合物をスクリーニングするための技術分野に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
新たなバクテリアの病原体と同様にバクテリアの抗生物質耐性株も、世界の健康に対して高まる脅威を生み出す。また、これらの脅威に対抗するために必要な抗生物質の開発は先の数十年間の間に劇的に遅くなり、人類をこれらの危険に対して弱いまま放置している(Katzら、2006,Nat.Biotech.24:1529−1531;Payneら、2007,Nat.Rev.Drug Discovery 6:29−40)。最も新しく開発された抗生物質は、単に既に開発された前の世代の抗生物質について示された脆弱な経路のうちの1つを目標としている。これらの医薬品は有効であるが、それらに対する抵抗性は驚くべき速度で上昇しており、追加のバクテリアの分子または細胞の作用をターゲットとする、抗生物質の必要を示唆する。
【0005】
バクテリア中の一本鎖DNA結合蛋白質(SSB)は、少なくとも1ダースの他のDNA複製、DNA組換えおよびDNA修復タンパク質と本質的に分子間錯体を形成する(Molineux and Gefter,1975,J.MoI.Biol.98:811−825;Butlandら、2005,Nature 433:531−537)。さらに、SSBタンパク質は、様々なゲノム・メンテナンス・タンパク質との相互作用によって重要な生命上の役割を果たす。すべてではないにしてもこれらの相互作用のいくつかのものは、SSBからのほぼ8−10のカルボキシ末端残基によって取り次がれることが知られている。それは、バクテリアのSSBの中に高度に保存されるが、真核生物のSSBでは見つからないペプチド・シーケンスを形成する(Sandigurskyら、1996,Radiation Res.145:619−623;Curthら、1996,Nucleic Acids Res.24:2706−2711;Genschelら、2000,Biol.Chem.381:183−192)。従来の研究は、SSBからのこの相互作用シーケンス内での突然変異あるいは欠失が、バクテリアの生存度に劇的な効果があることを示した、この部位との適切なタンパク質相互作用の形成が細菌増殖には重要であることを示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】MolineuxおよびGefter,1975,J.MoI.Biol.98:811−825;
【非特許文献2】Butlandら、2005,Nature 433:531−537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SSBはすべての生物体について見出される重要なタンパク質ファミリーであり、DNA代謝のほぼすべての面において様々な本質的な役割を果たす。SSBは、DNA複製、組換えおよび修復の際に生じるセンシティブな一本鎖DNA(ssDNA)中間体と結合して保護する。SSBは、ssDNAへのゲノム・メンテナンス・タンパク質を補充し、ssDNA分解、複製開始、相同遺伝子組換えの開始、超コイルDNAの弛緩および多数の他のゲノム・メンテナンス・プロセスに助けになる役割を果たす。SSBの欠失は、致死に至ることが示されている。既知のすべてのSSBが細胞において同様の役割を果たすので、バクテリアのSSBを禁じる化合物が見いだされれば、真核細胞に同様の効果がありえる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概略
新しいクラスの抗菌化合物の発生が期待できる目標として、SSBを含むインタフェースが使用されてもよいことが見出された。本発明の方法は原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチド、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドおよび候補化合物を反応させ、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合について分析し、候補化合物の非存在下での、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合の減少は、候補化合物が抗菌化合物であると同定することを含むものとして提供される。方法を実施する際には、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのカルボキシテール(carboxy−tail)、または1から4の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を備えたポリペプチドのカルボキシテールに、少なくとも90%同一のカルボキシテールを有する。原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質ポリペプチドを含むポリペプチドは、アミノ酸配列Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)、または1から2つの保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)を含むカルボキシテールを含むことができる。
【0009】
方法の実施の際には、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドは、エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼサブユニット、プライマーゼ、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、DNA修復酵素などを含むことができる。1例において、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドは、エキソヌクレアーゼIを含んでいる。原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列に少なくとも90%同一であることができる。本発明方法は、蛍光偏光測定法を含むアッセイを含むことができる。
【0010】
原核生物のSSBのC末端テール(C−terminal tail)へのSSB結合蛋白質の結合を禁止する方法が提供される。本発明の方法は上記で同定された抗菌化合物、SSB結合蛋白質、および原核生物のSSBのC末端テールとを反応させることを含み、抗菌化合物が原核生物のSSBの、SSB−結合蛋白質への結合を禁止する。SSB結合蛋白質はエキソヌクレアーゼであることができる。また、いくつかの実施態様では、SSB結合蛋白質は原核生物のエキソヌクレアーゼIであることができる。
【0011】
微生物の成長を禁止する方法が提供される。この方法は上記で同定された抗菌化合物を微生物と接触させ、それにより微生物の成長を禁止することを含む。
【0012】
原核生物のSSBのC末端テールに結合された原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルが提供される。1つの実施態様では、モデルは本質的に、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子座標を表わす。
以下を含む方法が提供される:
a)原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質のC末端テールに結合されているエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルを使用して、候補化合物を同定すること、ここで該モデルはアクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子の座標を本質的に表わす;
b) 候補化合物を、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチド、および原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドと接触させること;および
c)原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合をアッセイすること;
ここで候補化合物の非存在下での、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合の減少は、候補化合物を抗菌化合物であると同定する。接触は溶液中で行なわれることができる。
あるいは、接触はインシリコ(in−silico)でシミュレートされることができる。本発明の方法は、さらに化合物が対象中で微生物の成長を低減するかどうかを決めるために、対象への同定された抗菌化合物を投与する工程(d)を含むことができる。これらの方法によって同定された化合物が提供される。活性成分としてこれらの方法によって同定された化合物を含む抗菌医薬品組成物も提供される。
【0013】
原核生物のSSBのC末端テールへの原核生物のエキソヌクレアーゼ Iの結合を禁止する方法が提供される。この方法は次のものを含む:
a)原核生物のSSBのC末端テールに結合されている原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルを使用して、候補化合物を設計すること、ここで該モデルはアクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子の座標を本質的に表わす;および
b) 候補化合物とエキソヌクレアーゼ I、および原核生物のSSBとを接触させる、ここで候補化合物は原核生物のSSBへの原核生物のエキソヌクレアーゼ Iの結合を禁止する。
接触は溶液で行なわれることができる。あるいは、接触はインシリコでシミュレートされることができる。
【0014】
本発明によって同定された化合物へ結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルが提供される。例えば、化合物9に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデルが提供される。そこではモデルは、表6の中で指定された原子座標を本質的に表わす。同様に、化合物10に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデルが提供される。そこではモデルは、表7の中で指定された原子座標を本質的に表わす。
以下を含む方法が提供される:
a)化合物9または10に結合したエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデルを使用して、候補化合物をそれぞれ同定すること、ここでモデルはそれぞれ表7および8の中で指定された原子座標を本質的に表わす;
b)候補化合物と、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチド、および原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合したポリペプチドを接触させる;および
c)原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合をアッセイすること;ここで候補化合物の非存在下での、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合の減少は、候補化合物を抗菌化合物であると確認する
接触は溶液で行なわれることができる。あるいは、接触はインシリコでシミュレートされることができる。本発明の方法は、さらに化合物が対象中で微生物の成長を低減するかどうかを決めるために、対象への同定された抗菌化合物を投与する工程(d)を含むことができる。これらの方法によって同定された化合物が提供される。活性成分としてこれらの方法によって同定された化合物を含む抗菌医薬品組成物も提供される。
【0015】
上記のように同定された抗菌化合物と微生物を接触させ、それにより微生物の成長を禁止することを含む微生物の成長を禁止する方法が提供される。
【0016】
上記のように同定された抗菌化合物活性成分として含む抗菌医薬品組成物が提供される。さらに治療上有効な量で、新規な医薬品組成物を投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は阻害剤3によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図2】図2は阻害剤9によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図3】図3は阻害剤10によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図4】図4は阻害剤32によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図5】図5は阻害剤37によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図6】図6は、阻害剤46によるペプチド結合の阻害と、阻害剤31よるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図7】図7はWTペプチドによるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、阻害剤3による大腸菌4213(Escherichia coli 4213)の成長の阻害を示すグラフである。
【図9】図9は、阻害剤8による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図10】図10は、阻害剤9による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図11】図11は、阻害剤10による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図12】図12は、阻害剤28による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図13】図13は、阻害剤29による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図14】図14は、阻害剤31による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図15】図15は、阻害剤32による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図16】図16は、阻害剤37による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図17】図17は、阻害剤3による黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の成長の阻害を示すグラフである。
【図18】図18は、阻害剤8による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図19】図19は、阻害剤9による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図20】図20は、阻害剤10による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図21】図21は、阻害剤32による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図22】図22は、阻害剤37による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図23】図23は、阻害剤42による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図24】図24は様々の阻害剤の存在下および非存在下での、トポイソメラーゼIIIペプチド結合を示すグラフである。
【図25A】図25Aは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25B】図25Bは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25C】図25Cは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25D】図25Dは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25E】図25Eは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25F】図25Fは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図26A】図26Aは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26B】図26Bは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26C】図26Cは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26D】図26Dは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26E】図26Eは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図27A】図27Aは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27B】図27Bは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27C】図27Cは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27D】図27Dは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27E】図27Eは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図28】図28はSSB−CtペプチドAおよびBについての、Fo−Fcを省略した電子密度地図を示す。
【図29A】図29Aは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図29B】図29Bは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図29C】図29Cは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図29D】図29Dは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図30】図30は、Exol SSB−Ct結合部位(A)と、大腸菌RecQウイグド−ヘリックスドメインの表面上部位(B)との類似性を示す。本発明の好ましい実施態様の詳細な説明
【0018】
抗生物質開発用の新規で選択的な目標が提供される。本発明の化合物およびアッセイは、SSBとその目標蛋白質の間の相互作用を選択的に抑制する分子の同定に使用できる。そのような分子は新規であり、広汎なスペクトルを有する抗生物質として使用されることができる。あるいは、そのような分子は化学的に変成されることができる。すなわち、それらは広汎なスペクトルを有する抗生物質の開発のための出発物質に使用されることができる。本発明の組成物は、微生物の成長を抑制する方法において使用されることができる。それらは消毒剤として使用されることができる。それらは、医薬品組成物の中で活性成分として使用されることができる。また、さらに、それらは微生物が感染した対象を処理する方法に使用されることができる。用語「対象」は、患者、正常なボランティア、霊長類のような非人間の哺乳動物およびさらに他の動物を含むように意図される。
【0019】
1つの態様では、本発明は、新規な抗菌化合物およびそれを同定する方法に関する。「抗菌物質」は、バクテリア(抗バクテリア活性)、菌類(抗真菌活性)、ウィルス(抗ウィルス活性)または寄生生物(駆虫活性)のような微生物を殺すかまたはその成長を抑制する物質である。「抗生物質」は一般に細菌感染を治療するために使用される抗菌物質である。
【0020】
本発明は、バクテリアの成長を抑制できる小さな分子の形をしている抗菌化合物の同定に特に適合する。いくつかの例において、その成長が本発明の化合物を使用して抑制されるバクテリアは、グラム陰性細菌、例えば大腸菌である。他の例において、その成長が本発明の化合物を使用して抑制されるバクテリアは、グラム陽性細菌、例えば黄色ブドウ球菌である。本発明は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌として必ずしも分類されないバクテリア、例えばデイノコッカス−ラジオデュランス、および結核菌のようなマイコバクテリア、およびさらにここに記載されるようなC末端残基を保存した他のバクテリアに使用できる。
【0021】
1つの実施態様では、本発明は、一本鎖DNA結合蛋白質の高度に保存されたC末端テールによってメディエートされた蛋白質錯体形成を阻害する化合物の同定を提供する。それは化学療法の新規なクラスに結びつくことがある。用語「SSB」は一本鎖DNA結合蛋白質をいう。本発明のいくつかの実施態様では、大腸菌SSBは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、またSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有している.
【0022】
本発明の原核生物のSSBは、SEQ ID NO:2の多形性の変形、突然変異体および異種間の同族体であるポリペプチドを含む。本発明の原核生物のSSBは、さらにSEQ ID NO:2の機能的な等価物またはフラグメントを含む。本発明のポリペプチドの「機能的なフラグメント」または「機能的な等価物」または「機能的な同族体」は、特定のポリペプチドの同族であるが、特定のポリペプチドと1つ以上のアミノ酸の相違を有しているポリペプチドをいう。ポリペプチドの機能的なフラグメントまたは等価物は、全部でなくても、少なくとも幾分かの特定のポリペプチドの活性を保持する。
【0023】
本明細書で使用される用語「ゲノム・メンテナンス」は、ゲノムの構造およびインテグリティの維持をいう。一本鎖DNA結合蛋白質(SSB)のような蛋白質はゲノム・メンテナンスに関係することがある。
【0024】
蛋白質またはポリペプチドの「カルボキシテール」(カルボキシテール、カルボキシル末端(carboxy terminus)、カルボキシ終点、C−末端エンド(C−terminal end)、C末端(C−terminus)またはCOOH終点(COOH−terminus)としても知られている)は、遊離カルボキシル基(−COOH)で終了したアミノ酸鎖の末端である。本発明の目的のためには、蛋白質のC−末端は、蛋白質のC末端のおよそ10−20のアミノ酸を包含する。SSBのC末端は本明細書においてSSB−Ctとも呼ばれる。
【0025】
規範の原核生物のSSBは4つの同一のサブユニットからなるホモ四量体であり、それぞれの単量体単位はオリゴヌクレオチド/オリゴサッカライド結合(OB)−foldから成り、無秩序C末端テールが続く。C末端テールの最終10アミノ酸は、バクテリア中に非常に高度に保存され、大腸菌中の生存度にとって不可欠である。しかし、それらは真核生物・ミトコンドリアのSSBには顕著に非存在である。大腸菌SSBのC末端テールは、SSBと、トポイソメラーゼIII、PriA DNAヘリカーゼ、DNAポリメラーゼIIIのカイ・サブユニット、RecQ DNAヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼIを含むSSBの機能的なパートナーの多く(すべてではないにしても)との間の一次相互反応サイトである。SSBのC末端テールの除去は、SSBのDNA結合能力に効果がほとんどない。しかし、それにもかかわらずそれは大腸菌に致死である。
【0026】
方法は、SSBのC末端テールによって仲介された蛋白質間相互作用を抑制する化合物の同定のために提供される。本発明はさらに、これらの方法を使用して同定される化合物を提供する。それらの化合物はSSBのC−末端テールにより仲介された蛋白質間相互作用を抑制できる。これらの化合物は、原核生物中の、特にはバクテリア中のゲノム・メンテナンス蛋白質錯体の形成を途絶させることにより、広いスペクトルを有する抗生物質として役立つことができる。真核生物のRPA(複製プロテインA)が同様のC末端領域を含んでいないので、恐らく結合パートナーを募る別個の方法を使用するので、これらの化合物は真核生物のゲノム・メンテナンス錯体に有害ではない。
異なる原核生物からのSSBテールのアラインメント
【0027】
およそ280の原核生物のSSBのカルボキシテールのアラインメントは表1に示される。それは、原核生物のSSBのカルボキシテールを含むおよそ10のアミノ酸残基の保存を示す。およそ280の原核生物のSSBのC末端20残基のアラインメントは、4つの一番端のC末端残留物(DIPF、つまりAsp−lle−Pro−Phe;SEQ ID NO:5に示される)が、これらの原核生物のSSBのカルボキシテール中で最も高度に保存された残基であることを示す(表1)。原核生物のSSBのカルボキシテールからのこれらの最終C末端残基は、蛋白質の結合にとって最も重要なものであるように見える。
【0028】
本発明は、表1中に示されるようなカルボキシテールを備えたポリペプチドの使用を企図する。本発明は、表1中で示されるカルボキシテールの同族のカルボキシテールを備えたポリペプチドの使用を企図する。例えば、他の有用なポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含むアミノ酸配列を備えた表1の中で示されるようなカルボキシテールを有することができる。
【表1】
【0029】
1つの態様では、本発明は、目標蛋白質(大腸菌からのエキソヌクレアーゼI(Exo I))に結合した大腸菌SSBの、以前に公開されていない高解像度構造の決定に関する。大腸菌エキソヌクレアーゼIはLehman、1960年、J.Biol.Chem.235:1479−1487によって記載された。エキソヌクレアーゼ(それらは、個別の酵素として、またはより大きな酵素錯体の部分として見い出すことができる)は、ポリヌクレオチド鎖の端から一度にヌクレオチド1を開裂する酵素である。大腸菌エキソヌクレアーゼIは、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列を有している:また、それは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有している。大腸菌エキソヌクレアーゼIの結晶構造の原子の座標は、アクセションコード3C95の下で蛋白質データバンクに堆積された。本発明は、他の原核生物のエキソヌクレアーゼの使用を企図する。特には大腸菌エキソヌクレアーゼIの他の原核生物の同族体の使用を企図する。
【0030】
本発明の原核生物のエキソヌクレアーゼは、SEQ ID NO:4の多様な変形、突然変異体および異種間の同族体であるポリペプチドを含む。本発明の原核生物のエキソヌクレアーゼは、さらにSEQ ID NO:4の機能的な等価物またはフラグメントを含んでいる。
【0031】
方法は、「SSB−結合蛋白質」(さらに本明細書では「目標蛋白質」とも呼ばれる)への原核生物のSSBの結合をアッセイするために提供される。SSB−結合蛋白質はSSBに結合する蛋白質である。例えば、SSBは原核生物のSSBであることができ、たとえばSSBは大腸菌SSBであることができる。SSB−結合蛋白質は、原核生物のSSB−結合蛋白質であることができ、たとえばSSB−結合蛋白質はエキソヌクレアーゼであることができる。エキソヌクレアーゼは原核生物のエキソヌクレアーゼであることができる。また、それは特にエキソヌクレアーゼIであることができる。エキソヌクレアーゼIは大腸菌エキソヌクレアーゼIであることができる。
【0032】
さらに、溶液中でエキソヌクレアーゼIへのSSBの結合を測定するために高速蛍光偏光法方法が提供される。蛍光偏光法(FP)は、偏光と蛍光性トレーサを使用する、標的分子への標識分子の結合を測定する技術である。偏光で励起された時、分子に結合されたトレーサは多量の偏向した蛍光を放射する。より小さな分子に付けられたトレーサと比較して、より大きな分子に付けられたトレーサは回転がより遅い。例えば、蛍光でラベルされたペプチドが、様々な分子へのペプチドの特異的結合を検知するために使用できる。なぜなら、蛍光でラベルされたペプチドは目標分子と結合した時に、その自由なタンブリング速度と比較してゆっくりとタンブリングするようになるので、よりゆっくりと非偏光となるからである。化学的には蛍光異方性アッセイは、蛍光、すなわち励起状態と放射された(蛍光)プロトンの間の偏光の非相関性から分子の回転拡散を分析する。
回転拡散定数から、高分子の形を評価し、薬剤の候補となる他の分子を設計するためにその情報を使用できる。
【0033】
(1)SSBと蛋白質との相互作用の重要性、(2)バクテリアの種にわたるSSBタンパク結合シーケンスの広い保存、および(3)真核生物の(人間)システムからのSSBタンパク結合シーケンスの明白な不在を与え、これらのアッセイは、選択的に原核生物の成長を抑制する化合物の同定に特効を有することがある。SSBとその目標蛋白質の間の相互作用を選択的に阻害する、小さな分子は、このように魅力的で、新規な広いスペクトルを有する抗生物質である。本発明は、この相互作用の小さな分子の阻害剤のための高生産性スクリーン用に本明細書に記載された方法を使用することを企図する。そのような阻害剤は、将来の生化学・抗微生物の研究のための先駆的な化合物として役立つことができる。
【0034】
本発明の方法は溶液中(すなわちin vitroで)実行されることができる。したがって、生体外でのアッセイを行うことによって、本発明によって新規な抗菌化合物を同定することが可能である。別の例において、本発明の方法はインシリコ、すなわちコンピュータ・プログラムを使用するシミュレーションによって実施することができる。したがって、本発明の結晶構造についての情報を使用して、新規な抗菌化合物の構造を同定および/または設計し、その後当技術分野において公知の方法を使用して、化学的に合成することが可能である。
【0035】
この発明の実施の際に使用される、スクリーニングされることのできる化合物のライブラリの例としては、メイブリッジ(Maybridge)(例えば14,400の化合物のHitFinderコレクション);ケンブリッジの16,000の化合物のDIVERSetライブラリ;ケムダイバーシティライブラリ、ケミカル・ディバーシティ・ラブズ社などがあげられる。他の候補化合物も、本発明によるアッセイの中で使用できる。スクリーンされるためにはライブラリから候補化合物を得なければならないわけではない。候補化合物は当技術の中で既知の方法を使用して合成し、次に本発明のアッセイで使用できる。例えば、候補化合物は、相互作用蛋白質(例えばSSBとエキソヌクレアーゼ)の結晶構造上のデータを使用して、インシリコで設計できる。一旦候補化合物がインシリコで設計されれば、これらの候補化合物は合成化学の既知の方法を使用して合成でき、次に、相互作用蛋白質(例えばSSBとエキソヌクレアーゼ)間の相互作用を阻害するかまたは影響を及ぼすかのそれらの効能に関してテストできる。
【0036】
1例において、SSB C末端テールを媒介とした蛋白質/蛋白質相互作用を阻害する化合物の同定が、ハイスループット蛍光偏光法(high throughput fluorescence polarization:FP)に基づいたスクリーンを使用して行われる。発明者は、大腸菌SSBのC末端テールにExolの結合することを阻害する化合物を同定するためにFPスクリーンを使用した。ハイスループット・スクリーンのためのリポーターとして結合するExol−SSB C末端テールを使用することは、いくつかの長所を有している。最初に、ExolとSSBのC末端テールの間の結合は、他の公知の結合と比較してかなり強く、FPを使用した正確なKdの決定を許容し、錯体形成が飽和するので、Exol−SSB−Ct錯体の著しい集団のスクリーニングを許容する。次に、FPはハイスループット・プラットフォームで処理することができ、それにより多くの化合物を速くスクリーンすることを許容する。第3に、発明者のSSBのC末端テールへのエキソヌクレアーゼI結合の結晶構造の最近の発見は、機能的なパートナーに結合したSSB C末端テールの最初の高解像度の画像を提供した。結晶構造は、C末端テールの最終アミノ酸が結合に重大な役割を果たすことを示唆する。これらの発見は、SerへのSSBの最後から二番目のPro残基の突然変異が、ExolがSSBのC末端テールに結合する能力を失わせることを示すFPデータによって支持される。理論によって拘束されるものではないが、異種のバクテリアのSSB同族体中のSSBの最終4アミノ酸間の非常に高度な保存が与えられて、タンパク結合のこのモードは、ゲノム・メンテナンスのための蛋白質のための補充のための保存機構であるかもしれない。
【0037】
この結合を阻害する小さな分子を見つけることによって、SSBエキソヌクレアーゼI相互作用を分裂させ、それにより細菌増殖を遅くするか、またはバクテリアを殺すことが可能である。更に、結合を阻害する小さな分子は、さらにSSB C末端テールと他の結合パートナーとの間の結合を阻害することがある。
【0038】
1例において、ハイスループット・スクリーンは、SSBのC末端テールと他の既知のSSB結合パートナーとの間の相互作用を分裂させる分子を捜ために行うことができる。例えば、1ダース以上のSSBと相互に作用する蛋白質は、大腸菌において既に同定されている(Butlandら、2005年、ネイチャー433:531−537)。これらの相互作用の多くはSSBのC末端テールとその異型の結合パートナーの間の接触により媒介される。例えばExol(Sandigurskyら、1996年、Radiation Research 145:)619−623;Genschelら、2000、Biol.Chem.381:183−192)、DNA ポリメラーゼ IIIのχφサブユニット(Yuzhakovら、1999,Cell 96:153−163;Witteら、2003,Nucleic Acids Res.31:4434−4440)、ウラシル DNA グリコシラーゼ(Hanadaら、2001,J.Biol.Chem.276:16992−16997)、PriA DNAヘリカーゼ(Cadman および McGlynn,2004,Nucleic Acids Res.32:6378−6387),およびRecQ DNAヘリカーゼ(Sheredaら、2007,J.Biol.Chem.282:19247−19258)を参照。バクテリアのSSB蛋白質が主にホモ四量体(タンパク結合サイトの役割をすることができる4つのC末端を有する)で、複数のSSB四量体は1つの伸張されたssDNA領域に結合することができ(Lohman and Ferrari,1994,Annu.Rev.Biochem.66:527−570)、多くのゲノム・メンテナンス酵素の共通の目標としてのSSBの利用は、いくつかのDNA代謝活性の効率的にターゲットとすることおよびコーディネーションを促進する。
抗菌化合物用のスクリーンを行なう場合のアッセイ成分の添加順序
【0039】
本発明は、本明細書に記載された種々の抗菌化合物用のスクリーンを企図する。以下に示されるように、候補抗菌化合物として多くのものを同定するために、化合物のライブラリをスクリーンすることは可能である。これらの候補化合物は、SSB−結合蛋白質(例えばExol)に結合したSSBのC末端を表わす結晶構造中のペプチド結合サイトへマップすることができる。1例において、Exolへあらかじめ結合された、蛍光ラベルが付けられたC末端SSBペプチドの溶液を使用し、化合物を滴定することによりスクリーニングすることが可能である。あるいは、エキソヌクレアーゼI(例えば384ウエルプレートへ)を加えて、次に、各々のウエルに1つの(例えば、異なる)候補化合物を加えることにより、スクリーンを行うことは可能である。これは、化合物がExolの1つまたは複数の結合ポケットに結合することを可能にするだろう。その後、本発明の蛍光ラベルが付けられたペプチドを加えることができる。この蛍光ラベルが付けられたペプチドは、1つまたは複数のポケットに結合されたすべての化合物と競争するだろう。以下の理論によって拘束されるものではないが、目標がSSB末端領域と会う前に、生体内の薬はその目標と会うので、後者はより生理学的に適切なスクリーンになりえる。下記の例において、Exolおよびペプチドテールを使用してスクリーンが行われたが、潜在的に有用になりうるこの主題について多くの変化がある。スクリーンも大腸菌以外の他の目標、例えばトポイソメラーゼIII、DNAポリメラーゼのカイ・サブユニット、ギラーゼ、これらの混合物または他の目標などを使用して行なうことができる。更に、これらに限定されないが、ブドウ球菌、かん菌、腸球菌などを含む別のバクテリアからの蛋白質を使用して、このスクリーンを行うことができる。これらのアッセイは、テストされている種からの全蛋白質またはC末端テールを使用して行うことができる。
化合物の改善された結合および同定のためのドッキングコンピュータ・プログラムの使用
【0040】
コンピュータモデリングおよびドッキング手続きが、結合ポケット中の既知の小さな分子のドッキングモードの分析により、小さな分子のスクリーニングライブラリィからのヒットを検査し改善するために使用できる。ドッキングはリセプターポケット中の、小さな分子の結晶構造で始まる。データベースからの最初のヒットは薬のための最適の構造ではないことがある。これは、活性部位中のヒットをモデル化し、その後、他の分子をドッキングすることによりテストできる。結合エネルギーは計算され、既知のヒットと比較される。コンフォーマルな適合はドッキングの結果の重要な部分で、モデリングにより通常検査される。
【0041】
結合された小さな分子について最初の結晶構造が決定された後、コンピュータによるスクリーニングとドッキングプログラム、たとえばAuto Dock(Scripps research Institute,La JoIIa,CA),FlexX(BioSolvelT GmbH,Sankt Augustin,Germany),およびSLIDE(Michigan State University,East Lansing,Ml)が、既知のデータベースから何千もの化合物をスクリーニングするために使用できる。この例において、分子はそれぞれレセプタ部位に適合するコンフォーマルな柔軟性が許容され、結合能力が評価される。ほとんどの場合、レセプタも柔軟性を与えられる。データベースからの最初の化合物は点数を付けられ、格付けされる。また、結合モードおよび結合エネルギーは、小さな分子のアッセイからの実際のヒットと比較される。これは、化学アッセイおよびドッキングモードの両方の信頼度を格付けする。この手続きは、原子デノボによって、または同様な薬剤結合コンピュータ・プログラムによって、原子と結合ポケットを最適化するために出発分子として役立つことができる一群の分子に導く。
【0042】
本明細書に記載された方法は、この種の手続きで処理することができる。
確かに、本発明の発明者は、阻害剤が結合ポケットに結合された多くの結晶構造を解決した。これらのツールを使用して、既に同定されたものと同等又は恐らくさらによく結合する分子を、インシリコで(つまり、コンピュータ・プログラムを使用して)探索することが可能である。本質的には、適切なコンピュータ・ソフトウェアを、最良にペプチド結合を阻害する化合物の構造を同定するのを支援するために使用することができる。インシリコ技術を使用する利点は、潜在的な候補化合物をスクリーンできる迅速さである。なぜなら、何千もの結合アッセイを溶液中、すなわちin vitroで分析するよりはるかに速い方法だからである。
同定された化合物を含む医薬品組成物
【0043】
活性成分として本発明によって同定された抗菌化合物を含む医薬品組成物も提供される。医薬品組成物は液体または固体であることができる。液体組成物は、たとえば1つ以上の抗菌化合物を含む水溶液であることができる。固体の組成物は上記の水溶液を、たとえば凍結乾燥または噴霧乾燥することにより入手可能な固形剤であることができる。1つの実施態様では、固形剤は凍結乾燥物である。上に言及された水性物の調剤は、そのような固形剤の水溶液を含んでいる。上記の固体組成物は、固形剤と注入剤が別個に調剤薬に配合されるキットの形であることができる。
【0044】
この発明の医薬品の組成物を生産するための技術の例は、以下に記載される。水溶液は選択した溶剤中に、従来の方法で抗菌化合物を溶かすことにより生産できる。この水溶液はアルカリ性、中性、または塩基性であることができる;抗菌化合物が水溶液に溶解されることで十分である。そのような水溶液中の抗菌化合物の濃度は、例えば測定された最小阻止濃度(表3)と一致する濃度である。いくつかの実施態様では、それが後の手続きでの成功する凍結乾燥を許容するような濃度が選ばれる。固体の医薬品組成物の製造については、たとえば凍結乾燥物は、本発明の1つ以上の抗菌化合物を含む水溶液の凍結乾燥により生産できる。例示的な手順は、約−25℃で、約0.1トル以下の内部を減圧にした凍結乾燥機で水溶液を凍らせ、プレート温度を5℃から20℃/時の速度で約25から40℃の最終温度にあげることを含む。凍結乾燥が実行される場合、形態調整剤が、凍結乾燥物の形態を改善する目的で、抗菌化合物の水溶液に加えられることができる。形態調整剤としては、糖類(例えばマンニトール、キシリトール、イノシトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、マルトース、蔗糖、ラクトーゼなどのようなヘキソースに基づいた二糖類、およびグルコースのような単糖類)、中性アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、プロリン、バリン、メチオニンなど)およびコハク酸のアルカリ金属塩(例えば琥珀酸ナトリウムなど)があげられる。スプレー乾燥が所望の生成物である場合、上に記載された水溶液は公知の技術によりスプレー乾燥される。例示的な手続きはスプレー乾燥機ノズル(たとえばツインノズル、圧力ノズルなど)から霧状の水溶液を射出するか、またはロータリーディスクの乾燥室内に、約5−20ml/分(例えば乾燥室入り口、出口温度がそれぞれ約80から120℃と約30℃から50℃;送気量約70−100kg/時間)の流量で供給する。
【0045】
薬物吸収の一層の増加の保証のために、界面活性剤は、本発明の医薬品組成物において付随的に使用できる。好適な界面活性剤の例としてはソルビタン脂肪酸エステル(例えばソルビタンモノパルミチン酸塩、ソルビタンセスクイステアレート(sesquistearate)など)、グリセリン脂肪酸エステル(たとえばモノステアリン酸グリセリンなど)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸プロピレングリコール)、ポリオキシエチレン・グリセリン脂肪酸エステル(たとえばポリオキシエチレン・モノステアリン酸グリセリンなど)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸ポリオキシエチレン、PEGジステアレートなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールみつろう誘導体、ポリオキシエチレン・ラノリン・アルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、プルロニック(Pluronic)シリーズ界面活性剤のような非イオン性界面活性剤;アルカリ金属ドデシル硫酸塩、アルカリ金属ステアリン酸塩、アルカリ金属パルミチン酸塩、およびトゥイーン20およびトウィーン80のような液体の界面活性剤のような陰イオン界面活性剤があげられる。これらの界面活性剤は、好適な比率で単独でまたは複数で使用できる。
【0046】
抗菌化合物の可溶性または安定性の改善のために、様々な塩(例えばクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどのような有機酸の塩)および/または安定剤(例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムなどのような無機塩基の塩類)が組込まれるか、または本発明の組成物に加えられることができる。必要ならば、浸透圧調節のための等張化剤(例えば塩化ナトリウム)および/または無痛化薬または局所麻酔薬(例えばグルコース、ソルビトール、マンニトール、ベンジルアルコール、塩酸メピバカイン、キシロカイン塩酸塩など)も使用できる。
【0047】
保存料およびpH制御因子は必要に応じ少量加えることができる。保存料としては、メチルp−ヒドロキシベンゼン、プロピルp−ヒドロキシベンゾエートなどのパラベン類、クロロブタノールのようなアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミドなどのような第四級アンモニウム塩、ソルビン酸、クロルヘキシジン、チメロサールなどがあげられる。pH制御因子としては、様々な酸、例えば塩酸、ホウ酸、リン酸、炭酸、炭酸水素などのような無機酸、モノまたはポリカルボン酸、アミノ酸などの有機酸、および様々な塩基、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのようなアルカリ金属水素化炭酸塩があげられる。好ましくは、これらの添加物は、単独でまたは組み合わせて使用でき、抗菌化合物の1ミリグラム当たり、約0.001−10mgで、好ましくは約0.01−5mgで加えることができる。
【0048】
本発明の医薬品組成物は、薬理学的に受理可能なキャリアまたは賦形薬を含む有効成分の配合により製造された剤形で、一般に経口的にまたは非経口的に投与できる。本発明の医薬品組成物は次の方法で使用することができる。例として固体の組成物を挙げると、それは滅菌蒸留水または注入液(例えば生理食塩類、グルコース注射剤など)に溶かし、例えば静脈注射、皮下注射、筋肉注射、点滴静注注入または眼科用液剤として使用できる。そのような注入の準備は、既知の無菌の手続きによって好ましくは行なわれる。
【0049】
本発明の医薬品の組成物の量は、剤形、最適投薬方式、活性体の種および他の要因に依存する。いくつかの実施態様では、医薬品組成物は1日当たり1回か、または2〜3回に分割して投与されることができる。
実施例
【0050】
本発明は、特別の方法論、治験実施計画、対象または記載された反応物に制限されるものではなく、変更されることができる。本明細書に使用される用語は、特別の実施態様だけを記載されるためにあり、本発明の範囲を制限するようには意図されない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されている。次の例は例示のために提示され、特許請求の範囲に記載される発明を制限するものではない。
化合物の構造
【0051】
本発明によりSSBエキソヌクレアーゼI結合を阻害する化合物のスクリーンの中で同定された化合物の例が以下に示される。化合物の各々については、化合物の名前、化合物の化学式、化合物の分子量(MW)および化合物の化学構造が示される。さらに、化合物が同定されたライブラリを提供した会社の名前およびライブラリ中の特定の化合物の製品コードが示される。Ki値は解離定数であり、配位子(たとえば薬剤、本発明の場合には試験される阻害化合物)とペプチド又は蛋白質との間の親和性、すなわち配位子(つまり試験される阻害化合物)が、どれくらいしっかりと特定のペプチドまたは蛋白質に結合するかを表す。IC50値は半数阻害濃度、すなわち生体外で、目標の50%の阻害に必要な化合物の濃度をいう。それは、ある生物学的プロセス(例えばLBの中の細菌増殖)を阻害するためにどれだけの特定の物質/分子が必要かを測定する。
化合物3
【0052】
名前:2−[5−(3−ブロモベンジリデン)−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−3−イル]―3−フェニルプロパン酸
式:C19H14BrNO3S2
MW:448.36
会社:ケンブリッジ
製品コード:6044448
Ki=約2.5μM
IC50大腸菌4213=5.5μM
IC50黄色ブドウ球菌=10μM
【化1】
化合物8
【0053】
名前:[5−(2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−イリデン)−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−3−イル](フェニル)酢酸
式:C21H17NO3S2
MW:395.5
会社:ケンブリッジ
製品コード:5767720
Ki=約4μM
IC50大腸菌4213=11μM
IC50黄色ブドウ球菌=29μM
【化2】
化合物9
【0054】
名前:3−(tert−ブチル)−1−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−オン
式:C14H14ClN3OS
MW:307.79766
会社:メイブリッジ
製品コード:SEW01297
Ki=約773nM
IC50大腸菌4213=6μM
IC50黄色ブドウ球菌=5.5μM
【化3】
化合物10
【0055】
名前:2−[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)アニリノ]5−メトキシ安息香酸
ACDコード:MFCD00175807
式:C15H11ClF3NO3
MW:345.705449
会社:メイブリッジ
製品コード:S07197
Ki=約124.7nM
IC50大腸菌4213=30μM
IC50黄色ブドウ球菌=18μM
【化4】
化合物28
【0056】
名前:1−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3,4−ジメチル−1H−ピラゾール−5−オール
式:C12H11N3OS
MW:245.3
会社:ケンブリッジ
製品コード:
9040944
【化5】
化合物29
【0057】
名前:1−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3−イソプロピル−1H−ピラゾール−5−オール
式:C13H13N3OS
MW:259.33
会社:ケンブリッジ
製品コード:9036389
【化6】
化合物31
【0058】
名前:2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−3H−ピラゾール−3−オン
式:C11H9N3OS
MW:231.27
会社:ケンブリッジ
製品コード:5108305
【化7】
化合物32
【0059】
名前:2−[3−(トリフルオロメチル)アニリノ]安息香酸
式:C14H10F3NO2
MW:281.234109
会社:メイブリッジ
製品コード:RJC02179
【化8】
化合物37
【0060】
名前:5−[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−2−ニトロフェノール
式:C13H7ClF3NO4
MW:333.64
会社:ケンブリッジ
製品コード:5524827
【化9】
化合物42
【0061】
名前:
N−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3,5−ジメチル−4−イソキサゾールカルボキシアミド
式:C13H10ClN3OS
MW:307.7543
会社:メイブリッジ
製品コード:HTS08909
【化10】
化合物46
【0062】
名前:
1−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3−メチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−オン
式:C11H8ClN3OS
MW:265.71702
会社:メイブリッジ
製品コード:SEW01296
【化11】
SSBのC末端テールに対応するペプチド
【0063】
SSBまたはその変形のC末端テールに対応するペプチドは、ウィスコンシン−マジソン大学バイオテクノロジー・センターによって合成され精製された。「WT」ペプチドは、大腸菌SSBからの定量化のための加えられたN−末端 Trp (W)と引き続く9つのC末端モースト(9C−terminal−most)残基を含む:Trp−Met−Asp−Phe−Asp−Asp−Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:6)。したがって、合成されたペプチドはフルオレセイン−WMDFDDDIPF(つまりフルオレセイン−SEQ ID NO:6)だった。Trp残基は280nmを吸収する。したがってペプチド濃度の正確な定量化を許容する。あるいは、正確にペプチド濃度を測定するためにそれらを使用できる限り、本発明の実行のために他の残基またはタグを使用することができる。競争的結合の実験では、ペプチドWMDFDDDIPF(SEQ ID NO:6)は蛍光部位なしで使用された。
【0064】
使用された第二のペプチド「F−WT」は、同じシーケンスを含むが、N末端フルオレセイン部位が加えられた。F−WTシーケンスを変更する追加の2つのペプチドも合成された:第一に、「F−P176S」はWTシーケンスの最後から二番目のProの代わりにSer残基を用いる。また第二に、「F−mixed」は、F−WTペプチド・シーケンスTrp−Asp−Phe−Met−Asp−Asp−Pro−Phe−lle−Asp(SEQ ID NO:8)のSSB誘導部分のランダムに選択されたシーケンスである。下に記載された実験の中で使用された他のペプチドは、WDDIPF(SEQ ID NO:7)およびWMDFDDDIPF(SEQ ID NO:6)だった。これらのペプチドのどちらも蛍光標識を付けられなかった。
ペプチド結合アッセイ
【0065】
ペプチド結合アッセイは、様々な化合物の存在下、または非存在下で、上記のペプチドとエキソヌクレアーゼIとを使用して溶液中で行なわれた。異なる量のエキソヌクレアーゼI(Exol)がペプチド結合アッセイで使用された。典型的には、0.1−10,000nM大腸菌Exol(または変種)が、10nM F−WT、F−P176SまたはF−mixedペプチドと、10分間室温で、20mM Tris−HC中、pH 8.0、100mM NaCl、1mM MgCl2、4%(v/v)グリセロール、1mM 2−メルカプトエタノールおよび0.1mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)中でインキュベートされた。蛍光偏光法(FP)は25℃で3回測定された;平均FP価値は、誤差として示された平均値の標準偏差とともにプロットされた。
【0066】
表2の中のデータは、テストされたいくつかの候補化合物に対する解離定数(Ki)の値を要約する。個々の化合物(つまり阻害剤)のペプチド結合データを示すグラフが、図1−6に示される。WTペプチド・コントロール用のデータは図7に示される。
【表2】
【0067】
1例において、化合物(阻害剤)46と31の間のただ一つの差が、前者におけるCl原子の存在だったことは注目すべきである。1つの原子置換の重要性を検討するために、阻害剤46のペプチド結合阻害値は、阻害剤31のペプチド結合阻害値に対して計画された(図6)。Cl原子の不在ははるかに弱い結合に帰着した(表3)。
【0068】
図7は、C末端ペプチドのどの部分がエキソヌクレアーゼIへの結合において重要かを示す。図7の中で示される実験の原理は、阻害剤について行なわれた実験(図1−6)に非常に似ているが、エキソヌクレアーゼIに結合したSSB C末端テールペプチドに蛍光タグを付けた溶液中の異なる阻害剤を滴定する代わりに、ラベルされていないペプチドまたはN末端のない3つのアミノ酸残基(MDF)を有しているラベルされていないペプチドDDDIPF(SEQ ID NO:7)が滴定された。Wは定量化の目的にのみ存在することは再び指摘されるべきである。失われた残基がペプチド結合において重要な役割を果たす場合、ペプチドの先を切られたバージョンは、短縮していないペプチドより貧弱な競争力を有するであろう。これはまさに図7で見られるものである;蛋白質に既に結合された蛍光性のペプチドを滴定するために、短縮していないペプチドより先を切られたペプチドは10倍かかる。蛋白質を滴定することが可能であるという事実は、それらのN末端の3つの残基は結合に役割を果たしているが、重大ではないことを示す。なぜなら先を切られたペプチドも少量ではあるが競争しているからである。
【0069】
化合物28、29および31は結合を阻害しなかった(表3)。
SSB/エキソヌクレアーゼI相互作用を阻害する分子を見つけるハイスループット・スクリーン
【0070】
濃縮エキソヌクレアーゼIは、2リットルの稀釈バッファ(DB)(20mM Tris pH8.0 HCl、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mMベータメルカプトエタノール)へ一晩透析された。透析の後、エキソヌクレアーゼIは、先にDBで希釈された蛍光ラベルが付けられたSSB C末端ペプチド(アミノ酸配列(N末端)フルオレセイン)−WMDFDDDIPF、すなわちフルオレセイン−SEQ ID NO:6(C末端)と混合された。DBと調節した後のエキソヌクレアーゼI/SSB C末端ペプチド混合物の構成要素の最終濃度は、1μMエキソヌクレアーゼI、10nM 蛍光ラベルされたSSB C末端ペプチド、20mM Tris pH8.0 HCl、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mMベータメルカプトエタノールだった。5分間室温に置いた後に、液体取り扱いシステムが使用され、384ウエルプレート内に、30マイクロリットル/ウエルで提供された。その後、1mM化合物の1マイクロリットルが加えられた。スクリーンされた化合物は、ケンブリッジ DIVERSetライブラリ(ケンブリッジ株式会社、サンディエゴ、CA)、メイブリッジ ヒットファインダー ライブラリ(サーモ フィッシャー、サイエンティフィック、ウォルサム、MA)、ケムディブライブラリ(ケミカルディバーシティ 研究所、サンディエゴ、CA)、または既知のバイオアクティブライブラリィ−KBA01から得られた。
【0071】
各ウエルに対するFP(蛍光偏光値)は、プレート・リーダを使用して、化合物の添加後5分に測定された。FP値を低下させた化合物が同定された。これは典型的には3つの標準偏差を使用して行われた。蛍光性だったか、または過剰な沈殿を引き起こした化合物は考察から除外された。これらの基準を満たしたおよそ20の化合物が分離され、PanVera Beacon2000 FP(PanVera社、Madison、Wl)を使用して、より厳密にテストされた。これらの実験から、このように結合するペプチドの完全な阻害を示唆した程度にFP値を低下させることができた5つの化合物が同定され、Kiが決定される。
【0072】
Kiを決定するために、1μMエキソヌクレアーゼI、蛍光ラベルされた10nMSSB C末端ペプチド、20mMTris、pH8.0 HCl、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mMベータメルカプトエタノールを使用して、上記と同様にしてマスター・ミックスが調製された。FP値が、蛍光ラベルが付けられたペプチド単独からのみ得られる値に低下するまで、増加された化合物の量がペプチド蛋白質混合物へ滴定された。Ki値は、Prof.Shaomeng Wang,University of Michigan(Nikolovska−Coleskaら、2004,Anal.Biochem.332:261−273)の、蛍光に基づく競合結合測定法を使用して測定された。
細菌増殖分析
【0073】
図8−23および表3に示されるように、候補化合物が細菌増殖を阻害するそれらの能力に関してテストされた。例えば、図8−16では、大腸菌4213(易感染性細胞壁を有しているグラム陰性細菌)の成長曲線が示される。図8−16は、それぞれの候補抑制化合物が大腸菌4213の成長をどのように阻害するかを示す。易感染性細胞壁は、化学薬品がそれをより容易に通り抜けることを可能にする。同様に、図17−23は、それぞれの候補抑制化合物が黄色ブドウ球菌12598(グラム陽性細菌)の成長をどのように阻害するかを示す。
【0074】
0.05 OD 600の大腸菌1655、大腸菌4213または黄色ブドウ球菌を含んでいるLBの100μLが、96ウエルプレート中でアリコートされた。DMSO中の化合物の1μLが加えられ所定の最終濃度にされた。プレートは250RPMで振動させて、37℃でインキュベートした。成長速度は、3時間から7時間の間(対数成長期)に起こったOD/時間の平均変化を決定することにより計算された。本明細書に示されたグラフは、μMでの阻害剤濃度に対する、この細菌増殖速度(OD/hの変化)のプロットである。
【0075】
表3中のデータは、本発明による選択された化合物の、液体培地の中で細菌増殖を50%低減するのに必要である濃度を要約する。
【表3】
【0076】
大腸菌阻害実験のデータは表4中に要約される。
【表4】
【0077】
黄色ブドウ球菌阻害実験のデータは表5に要約される。
【表5】
【0078】
多くの試験される候補化合物は、細菌増殖に対して充分な妨害作用を有していた。さらに、同定された薬化合物が多くの他のグラム陽性のバクテリアの種の成長を遅くすることができることが発見された。例えば、枯草菌とエンテロコッカス−フェカーリスの成長は、これらのバクテリアが化合物9または10のどちらかの化合物を100μM含んでいる寒天平板上で成長された時に、阻害された。同様のやり方でテストされた時、デイノコッカス−ラジオデュランスの成長も阻害された。
結晶構造
【0079】
エキソヌクレアーゼI結晶は、12%のPEG 4000、1mM MgCl2、20mM Tris pH 8.0および5mMの化合物を含んでいる浸透溶液に移された。5日間、時計皿中でこれらの溶液に浸漬された後、結晶は12%のPEG 4000、1mM MgCl2、20mMトリス pH 8.0、5mMの化合物および25%のグリセロールを含んでいるクライオ溶液(cryo solution)に結晶が移された。結晶はついで液体窒素中でフラッシュ凍結された。
【0080】
細胞内での異種蛋白質とSSB相互作用の重要性にもかかわらず、SSBとそのパートナー蛋白質の間の相互作用についての構造およびその機構の理解は、不明瞭なままだった。1つの態様では、本発明は、その同系統のSSBのC末端に結合した大腸菌Exolの高解像度構造の解明を提供する。大腸菌ExolのapoとSSBのペプチドに結合された形式の結晶構造が、結晶構造内のSSBのC末端ペプチドテールによって先に占められていた結合ポケットのうちの1つの中で結合する候補化合物として、決定された(Lu and Keck,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,in press)。
【0081】
SSB−Ct要素を含むペプチドに結合する大腸菌Exolの結晶構造が決定された。
サーチのモデルとして、2.7−オングストロームの解像度でExol/SSB−Ct蛋白質が結晶回折され、apo Exol構造を使用して分子の置換によって決定された(Breyer and Matthews,2000,Nat.Struct.Biol.7:1125−1128)(表9)。さらにSSB−Ctペプチドの非存在下で結晶化された大腸菌Exolの1.7−オングストロームの解像度での構造が、比較の構造分析として決定された。結晶化はペプチドが結合されたものと同じ結晶化条件で行われた。
最初のapo−Exol構造のために記載されたように、両方の結晶形はエキソヌクレアーゼ(残基1−201)、SH3−ライク(残基202−352)、およびヘリカル(残基360−476)領域で形成される(図25Aおよび25B)。
【0082】
SSB−Ct−結合されたExol結晶からの異なる電子密度地図の検査は、図25C、25Dおよび図28の中で示されるように、Exol表面に関連した、2つのSSB−CtペプチドからのC末端に対応する特徴を明らかにした。両方のペプチドは、活性部位から20オングストロームより離れた部位で結合する。第一のペプチド(「ペプチドA」)は、エキソヌクレアーゼとExolのSH3−ライク領域の間に結合する(図25Cおよび25E)。電子密度は、ペプチドA(174−177)のC末端モースト(C−terminal−most)のSSB残基では明白であるが、残基169−173(動的かディスオーダーなN末端と一致している)には見当たらない。ペプチド−A結合部位は、Exolからの進化的に保存された残基で構成されたディープポケットにC末端モーストのSSB−Ct残基(Phe177)をアンカーさせる。この相互作用では、疎水性のPhe側鎖は、ExolからのLeu147、Leu204およびTyr207側鎖に対してパックされる。そのα−カルボキシル酸素は、Arg148側鎖と明白なイオン結合を形成する。ペプチドAのより多くのN末端領域がAsp174を例外として、ExolからのAla310、Gln311およびThr314に対してパックする。Asp174は、結晶格子(図29)内の隣接したExol分子中のExol残基Gln448およびGln452と接触する。サイトAに結合するSSB−Ctは、ペプチドA(図25E)のパスの方へ向く、Exol Arg316側鎖の再配列と一致する。このArg316回転異性体位置は、Glu150、Glu318およびAsp319によって形成された酸性ポケットに非活性部位Mg2+イオンが結合することを可能にする。これらの要素に加えて、Arg338およびLys227 Exol側鎖によって形成された「ベーシックリッジ(basic ridge)」は、ペプチドA(図25D)のN末端の近くに顕著な電気陽性のパッチ(electropositive patch)を示す。
SSB−Ctの上の追加の未決着のAsp残基の存在を与えられて、このリッジは、構造中で説明されないSSB−Ct結合において役割を有する。この可能性もテストされた。
【0083】
第二のペプチド「ペプチドB」用電子密度はSSB残基175−177を含んでいる。それは完全にExolのSH3−ライク領域(図25F)により結合されている。ペプチド−Aサイトとともに、ペプチド−Bサイトは主としてSSB−CtからのPhe177に結合し、その側鎖を疎水性ポケット(残基Trp245、Leu264およびCys330で構成される)内にアンカーし、そのα−カルボキシルの酸素は、ExolのArg327と明白なイオン結合を形成する。Exol残基Leu331、Leu334およびPro338は、ペプチドBのより多くのN末端領域と接触する。Exol/SSB錯体が化学量論的であることを先の溶液研究(Genschelら、2000,Biol.Chem.381:183−192)が示したので、単一のExolモノマーの表面へ2つのペプチドが結合するのを見つけることは予期されなかった。さらに、ペプチドAが、結晶格子中の対称的に関連するExol分子間に位置するので、結晶パッキングが錯体の構造に影響を及ぼす大きな可能性があった。したがって、SSB結合および酵素の刺激のために各サイトでのExol残基の役割を評価した実験を設計するために、この構造は出発点として使用された。
Exol/SSB錯体の重要な特徴を画定する溶液SSB−Ct結合の研究
【0084】
溶液中でのExol/SSB−Ct錯体形成を検討するために、フルオレセインでラベルされたSSB−Ctペプチド(F−SSB−Ct)に結合するExolを測定する平衡蛍光異方性アッセイが開発された。このアッセイでは、Exolは、F−SSB−Ctに136+/−11nMの見掛平衡解離定数(Kd、app)で結合されている(図26A)。この結合は、それぞれ2および6μMのKd,app値で会合するPriAとRecQによるSSB−Ctペプチド結合について観測されたものよりも高い親和性を有する。この相互作用が特異か否かをテストするために、2つのコントロール・ペプチドに結合するExolが検査された。第一に、「F−P176S」は、F−SSB−Ctシーケンスの最後から二番目のPro残基をSerに変更する。これはよく研究されている細胞のDNA複製機構を備えたその相互作用の欠陥により害された細胞増殖を引き起こすssb113突然変異を模倣した。第二のコントロール・ペプチド「F−mixed」は、ランダムにF−SSB−Ctの中の残基のアレンジメントを混合する。両方のコントロール・ペプチドに結合するExolは、F−SSB−Ctペプチドに比べて最小だった(図26A)。相似性の特異性は、PriAとRecQによって結合されたSSB−Ctペプチドについて観察された。これらの結果は、Exolが溶液中でF−SSB−Ctペプチドと特に相互に作用することを示す。これは、競争実験におけるSSBから導かれたペプチドへのExolの結合を調べた従来の研究と一致している(Lecointeら、2007年、EMBO J.26:4239−4251)。
【0085】
Exol変種のパネルは、SSB−Ct結合への2つのサイトの寄与を評価するために、アラニンにペプチド−A(Arg148、Tyr207、Gln311およびArg316)またはペプチド−B(Arg327とLeu331)結合部位を形成する表面に露出した残基が、個々に変化されて作成された。追加のAla変形は、Exol(Lys227とArg338)上の顕著な「ベーシックリッジ」と、SSB−Ctペプチド(Glu150、Glu318およびAsp319)の存在下でMg2+と結合しているExol残基がF−SSB−Ct結合において役割を有しているか否かを調べるために試験が行われた。最後に、結晶構造中のペプチドAとの蛋白質間接触を介するヘリカル領域(Gln448とGln452)からのAla 変形残基も作成された。Exol変形はそれぞれ精製され、F−SSB−Ctペプチドへの結合についてテストされた。変種の遠UVの円二色性分析は、野生型Exolと区別可能であり、突然変異が変種の二次構造を著しく変更しなかったことを示した。
【0086】
ペプチドA部位変種のうちの3つはF−SSB−Ct結合の劇的な低減を示した(図26Bおよび表10)。Arg148、Tyr207およびArg316Ala変種は、野生型のExolより約10から100倍弱くペプチドと結合する。Arg148が最も弱い結合を示す。試験された最も高い酵素濃度(10μM)においてペプチド結合が飽和されなかったので、Kd,app値は、これらの変種に対して導かれなかった。Gln311変種は、野生型のExolに対して約2倍弱く、より穏やかであった。ペプチドA部位変異体とは対照的に、ペプチド−B部位変異体のいずれも測定可能なF−SSB−Ct結合の不足を示さなかった(図26C)。これは、ペプチド−A結合部位中の相似性の突然変異によって示された強い欠陥と、Phe177とペプチドBの直接の接触を与えられることは驚くべき事である。
【0087】
さらなる変異体が溶液中のF−SSB−Ctペプチド結合におけるベーシックリッジ、Mg2+結合とヘリカル領域表面の役割をテストするために使用された(図26D)。ベーシックリッジ変異体は、ペプチド結合の劇的な不足を示していた。Exol Lys227およびArg338変異体はそれぞれ7倍および3倍弱い結合を有していた。これらの結果は、SSB−Ct結合中のExolのベーシックリッジの重要な役割を示す。Mg2+を結合する変異体のうちの2つは、野生型のExol(Glu150とGlu318)に比べて約2倍強い結合を有し、一方Asp319変異体は2倍弱い結合を示した。理論によって拘束されるものではないが、これらの緩やかな効果は、結晶構造の中で観察されるMg2+結合が、SSB/Exol錯体フォーメーション中のMg2+の主な役割の反映ではなく、結晶化状態での金属の高濃度の結果であることを示唆する。Gln448とGln452の変異体によるF−SSB−Ct結合は野生型のExolのそれと判別不能だった。これは結晶構造中のSSB−Ctペプチドとの会合は結晶のパッキングを介するペプチドへのそれらの接近により、それらが溶液中ではSSB−Ct結合に役割を果たさないことを示唆する(図29)。
Exol/SSB錯体フォーメーションはExol活性のSSB刺激に不可欠である。
【0088】
初期の研究は、大腸菌SSBがExolヌクレアーゼ活性を刺激し、2つの蛋白質が物理的に相互に作用することを示した。しかしながら、Exol/SSB錯体形成がこの刺激に必要かどうかはテストされていない。これを検査するために、SSBが追加され、4倍刺激できる反応において、放射性同位体でラベルされたssDNA基質の加水分解がExolによって触媒されるヌクレアーゼ・アッセイが開発された(図27A)。SSB刺激は200nM SSBで安定水準に達する。それはSSBをssDNAで飽和するのに必要な濃度である。
【0089】
SSBとの会合がExol刺激に必要かどうか評価するために、2つのSSB変異体がアッセイにおいて代替えされた。第一はSSB113であり、これはExol結合能を劇的に低減するが、野生型ssDNA結合には寄与するよく特性づけられた大腸菌SSBである、第二はSS−mixedであり、F−mixed使用されたシーケンスと一致する混合C末端シーケンスを備えた変異体である。野生型SSBと比較し、SSB113は非常に低い刺激(2フォールド未満)を与え、一方SS−mixedはExol活性を全く刺激しなかった(図27A)。これらの結果は、Exol/SSB相互作用がSSB刺激には重要であるというアイデアを支援する。SSB−Ct要素だけに結合することがExol活性を刺激するのに十分であるかどうかをテストするために、SSB−CtペプチドはExolアッセイへ滴定された。ペプチドは、酵素を結合するためのKd,appより十分に高い濃度においてさえも、Exolヌクレアーゼ活性に明白な効果がなかった(図27A)。さらに、これらのデータはSSB−Ct/Exol錯体フォーメーションが必要であるが、Exol活性のSSB刺激のために十分ではないことと一致している。
【0090】
SSBに刺激されたExolヌクレアーゼ活性に対するAla置換の影響もテストされた。SSBがその基質への酵素の補充によりExolを刺激すれば、SSB−Ctペプチドの結合を弱くするExol変異体はSSB刺激活性も同様に弱くする。ペプチド−A−およびペプチド−B部位変異体はこの予測と著しくよく一致した。ペプチドA部位変異体(Arg148とTyr207)のうちの2つはSSBの追加により影響されず、テストされたすべてのSSB濃度で野生型のレベルのヌクレアーゼ活性を維持する(図27B);これらの変異体は、さらにExol突然変異蛋白質のパネルの中で、最も弱いF−SSB−Ct結合を有していた(図26B)。第三のペプチドA部位変異体、Arg316は、野生型のExolに比較してSSB依存の活性を劇的に低減(SSBの2フォールド未満の増大)した。前の変異体より高い親和性で結合するように見えたが、Arg148とTyr207の変異体でのようにArg316変異体はさらにF−SSB−Ct結合能を害した(図26B)。最後に、Gln311変異体は、野生型のExolに対して温和に低減されたSSB刺激だけを有していた。それは、F−SSB−Ctペプチドへの親和性のその緩やかな減少と同様である。これらの発見から予言されるように、ペプチド−Bサイトおよびヘリカル領域変異体(それらは溶液中ではF−SSB−C結合を変更しなかった)は、さらに野生型のSSB依存のヌクレアーゼ活性を有していた(図27Cおよび図29)。
【0091】
ベーシックリッジおよびMg2+−結合Exol変異体も、SSB依存のヌクレアーゼ活性に関してテストされた。ベーシックリッジ変異体(Lys227とArg338)(それらはF−SSB−Ct結合が弱い)は、同様にSSBによって刺激を低減された(図27D)。これらの結果は、SSBとの統合された活性のためのベーシックリッジの重要性を確認した。2つのMg2+−結合する変異体(Glu318とAsp319)は野生型のレベルのSSB刺激ヌクレアーゼ活性を有していた。しかし、3番目(Glu150)は、内因性(SSB−独立性)およびSSB依存性の活性の両方のレベルを穏やかに上げた。Glu150の最大のSSB刺激活性は、野生型のExolのそれを超えたが、SSBによる刺激は野生型の酵素によるものと同じだった。したがって、Glu150とGlu318の変異体の約2倍のより高いF−SSB−Ct結合能は、ヌクレアーゼ活性の向上されたSSB刺激に帰着しなかった。
【0092】
大腸菌SSBからのC末端ペプチドへの大腸菌エキソヌクレアーゼI結合の結晶構造の原子座標は、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクに蓄積された。SSBに結合し、結合した時にそのモデルが、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクに蓄積されたモデルの中で指定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有する原核生物のエキソヌクレアーゼは、本発明の実施のために使用できる。同様に、原核生物のエキソヌクレアーゼに結合し、結合した時にそのモデルが、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクに蓄積されたモデルの中で指定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有しているSSBは、本発明の実施のために使用できる。
【0093】
図25は、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を例証する。
図25(A):大腸菌Exol、およびSSBの構造の概要図(Exol:エキソヌクレアーゼ領域;SH3−ライク領域およびヘリカル領域;SSB:約60のディスオーダードC末端残基が続くオリゴヌクレオチド結合(OB)領域。棒グラフは、パーセントでの同一性として、284のバクテリアのSSB蛋白質中のSSB C末端(SSB−Ct)シーケンスの進化的保存を示す。
図25(B):2つのSSB−CtペプチドへのExol結合のリボンダイヤグラム。点線は、電子密度が観察されなかったセグメントを表わす。
図25(C):Exolへ結合した2つのSSB−Ctペプチド(AとB)のための結合部位を描く表面の表現。選択されたExol残基がラベルされる。
図25(D):電気的陽性および電気的陰性でモデル化する(C)での表面の表現。
図25(EおよびF):
ペプチド−Aおよびペプチド−B部位の詳細な図。
apo ExolからのArg316側鎖が重ねられる。
【0094】
図26は、SSB−Ct結合中のベーシックリッジおよびペプチド−A結合部位の役割を強調した平衡結合を例証する。
図26(A−D):蛍光異方性によってモニタされた、Exol(またはAla変異体)とF−SSB−Ct(またはペプチド変異体)と会合した平衡等温線。データポイントはすべて3つの実験の平均である。エラーバーは平均値からの標準偏差である。
図26(A):F−SSB−Ct、F−P176SおよびF−mixExol結合等温線。
図26(B):ペプチドA部位Exol変異体(R148A、Y207A、Q311AおよびR316A)によって結合されたF−SSB−Ct。
図26(C):ペプチド−B部位Exol変異体(L331A、R327A)によって結合されたF−SSB−Ct。
図26(D):ベーシックリッジ(K227A、R338A)およびMg2+結合部位(E150A、E318A、D319A)Exol変異体によって結合されたF−SSB−Ct。
(E) Exol変異体F−SSB−Ct結合の要約
野生型のExolに対してF−SSB−Ctで観察された結合能の倍率変化は次のとおりだった:1フォールド未満の結合変化(より高い親和性)、1−2フォールド、〉2−5フォールド、および〉5フォールド。
【0095】
図27は、物理的な相互作用がどんなにExol/SSBがExol活性のSSB刺激にとって不可欠であるかを例証する。
図27(AD):Exol比活性は、SSB(またはSSB変異体)の関数としてプロットされている。データポイントは3つの実験の平均値である。エラーバーは平均値からの標準偏差である。トレンド線は明確性のために示される。
図27(A):ssDNAの上のExol活性はSSBの追加により4倍刺激されたが、SSB−Ctペプチドだけではなかった。SSB−Ctペプチド変異体はExol活性に対してより穏やかに刺激する(SSB113)か、または影響しない(SSB−mixed)。
図27(B):ペプチドA部位Exol変異体ヌクレアーゼ(R148A、Y207A、Q311AおよびR316A)活性のSSB依存。
図27(C):ペプチド−BサイトExol異なるヌクレアーゼ(L331A、R327A)活性のSSB依存。
図27(D):ベーシックリッジ(K227A、R338A)およびMg2+結合部位(E150A、E318A、D319A)Exol変異体ヌクレアーゼ活性のSSB依存。
図27(E):
Exol変異体ヌクレアーゼ活性のSSB依存性の要約。
【0096】
図28はSSB−CtペプチドAおよびBについてのFo−Fc omit ステレオ電子密度図(2.8σで輪郭をとった)である。
【0097】
図29は、SSB−CtペプチドAと会合したExolヘリカル領域からの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を例証する。
図29(A):SSB−CtペプチドAは、Exolヘリカル領域(Gln448とGln452)からの2つのGln残基を介して結晶格子の中における、対称的に関連するExol分子(リボンの形で示される)と会合する。
図29(B):結晶格子中のGlnを介した相互作用のクローズアップ・ステレオ図形。
図29(C):Gln448とGln452 Ala変異体(Q448A、Q452A)は明白なF−SSB−Ct結合欠陥を有していない。
図29(D):Gln448とGln452 Ala変異体(Q448A、Q452A)は野生型のSSB依存のヌクレアーゼ活性を有している。
【0098】
図30は、大腸菌RecQ ウイングドヘリックス領域(B)の表面上の部位と、Exol SSB−Ct結合部位(A)の類似性を例証する。RecQウイングドヘリックス領域はSSB−Ct要素に結合されている。しかし、結合部位は記載されていない。Exol/SSB−Ct結合に含まれるものと同様の静電気特徴を備えたRecQ領域上の部位は、(B)に強調される。
【0099】
表6は、本発明によるスクリーンの中で同定された化合物9と結合された大腸菌Exolの結晶構造の座標を示す。原核生物のエキソヌクレアーゼと結合されて、そのモデルが表6の中で特定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有している化合物は、本発明の実施のために使用できる。
【表6】
【0100】
表7は、本発明によるスクリーンの中で同定された化合物10と結合された大腸菌Exolの結晶構造の座標を示す。原核生物のエキソヌクレアーゼと結合されて、そのモデルが表7の中で特定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有している化合物は、本発明の実施のために使用できる。
【表7】
【0101】
表8は、いくつかの既知の同定された蛋白質とバクテリアのSSBとの相互作用を例証する。
【表8】
【0102】
表9は結晶学的なデータコレクションおよび精密な構造統計値を例証する。
【表9】
* RSym=ΣΣ|Ij―〈l〉|/ΣIj、ここでIjは反射jの測定強度である。また、<l>は多重記録反射の平均値である。
**Rwork、free=Σ||FObs|―|Fcalc||/|FObs|、ここでworとfreeのRは、それぞれworkingとfreeの反射セットを使用して計算された。
フリーのR反射(合計の5%)は、精製の全体にわたって別にされて保持された。
***注:apo−Exol構造については、いくつかの側鎖および1つのループ・シーケンスが複数の回転異性体/コンホメーションでモデル化された:原子が複数のコンホメーションでモデル化された時に、モデル化された位置はそれぞれ、蛋白質原子の数の中で数えられる。つまり、与えられた原子が2つの位置でモデル化される場合、それは、SI表9のうちの1ではなく2つの蛋白質原子として数えられる)
【0103】
表10はExolおよび変異体によるF−SSB−Ct結合に対するKd,app値を示す。
【表10】
トポイソメラーゼIIIペプチド結合
【0104】
トポイソメラーゼIII結合アッセイが行われ、候補化合物が、既知のSSB結合パートナーである他の蛋白質への大腸菌SSBのC末端テールの結合を阻害することができるかどうか決定された(図24)。そのような結合パートナーの1つは、トポイソメラーゼIII(Topolll)であり、SSBのC末端テールと相互作用する多くの蛋白質のうちの1つである(Shereda,Bernstein,and Keck,未刊行の観察)。Exolの結合アッセイについて上記されたように、Topolllは10nM蛍光性のペプチドへ滴定された。この結合アッセイのためのバッファ条件は次のとおりだった:300mM NaCl、20mM Tris pH 8.0、10%グリセロール、1mM BME(ベータメルカプトエタノール)および1%DMSO。使用されるTopolllの濃度は図24のグラフに与えられる。結合したときの異方性の変化はPanVera Beacon 2000 FPを使用して読まれた。
【0105】
データは、ペプチド結合がTopolll/ペプチドの場合にははるかに弱いことを示し、正確に結合定数(Kd)を決定することを困難にしている。化合物が、ペプチドがTopolllに結合するために効果があるかどうかを決定するために、上記の実験と同様のセットが、緩衝液からのDMSOを除いた以外は同じにセットアップされた。その後、ラベルされていないペプチドまたは様々な化合物のいずれかが100μMの最終濃度まで加えられた。これらの化合物およびラベルされていないペプチドはDMSOに溶かされた。また、それらの追加は、DMSOの最終濃度を1%にした。
【0106】
候補化合物のうちのいくつかは、観察された異方性値を低下させて、Topolllへのペプチドの結合を阻害することができた。図24の中で示されるように、100μMのラベルのないペプチドの追加さえ、ベースライン(蛍光ラベルが付けられたペプチドの結合が無い場合に期待される値)まで異方性値を低下させなかった。これは結合を観察するために使用される必要のあるTopolllが非常に高濃度であるためである。したがって、10のような化合物のうちのいくつかは、Exolへの蛍光性のペプチドの結合を阻害するだけではなく、他の既知の結合パートナー、たとえばTopolllへの結合も阻害する。したがって、少なくとも同定された阻害剤のうちのいくつかは、それが結合パートナーの1つ以上に、Exolだけでなく、SSBのC末端テールの結合を実際に阻害することができる。
哺乳動物細胞毒性
【0107】
同定された抗菌候補化合物の毒性は人間の結腸直腸腺癌細胞を生体外で使用してテストされた。試験された化合物は、HT−29(人間の結腸直腸腺癌)に対して、グラム陽性細菌細胞または大腸菌感染された細胞壁に対するよりも著しく毒性が低かった。哺乳動物細胞はCellTiter−GIo細胞生存率アッセイ(Promega、Madison、Wl)を使用してテストされた。
【0108】
このアッセイで得られたデータによれば、化合物3はIC50〉100μM、化合物8はIC50〉100μM、化合物9はIC50=38μM、化合物10はIC50=60μM、化合物28、29、32および37はすべてIC50〉100μM、化合物42はIC50=51μM、化合物46はIC50=55μMを有していた。これらのデータを、細菌増殖カーブからのIC50と比較して、化合物は哺乳動物細胞よりバクテリアを殺すことにはるかにより有効であるという結論が得られた。
溶血反応
【0109】
生体外の溶血反応実験は、細胞溶解を引き起こすことにより同定された薬候補が細菌増殖を阻害したかどうかを決定するために実行された。同定された小さな分子が赤血球でインキュベートされ、細胞の何パーセンテージが1時間の後に溶解するか確かめられた。これらの実験からの結果は表11中に示される。化合物がヘムと同じ波長を吸収する場合、または化合物が沈殿する場合には、評価された溶血反応データは吸収の読みについて問題がある。そのような実例では、吸光度の読みを定量化することは難しい;しかしながら、その後、何個の細胞が溶解したかの視覚的な決定を行なうことができる。それは溶菌の評価を提供する。
【表11】
【0110】
本発明は、記載された特定の装置、方法論、治験実施計画、対象または薬物に制限されるものではなく、変化することができる。さらに、ここに使用される用語は、具体的な実施態様を記載されるためだけにあり、本発明の範囲を制限するようには意図されない。それは特許請求の範囲によってのみ制限されている。生化学と薬化学の当業者にとって明白な他の好適な修正、および様々な条件およびパラメータの適応は、この発明の範囲内である。出版物、特許、およびここに引用された特許出願はすべてその全体が参照され、すべての目的のために本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
相互参照される関連出願
本発明は、参照されここに組込まれる、2007年5月22日に出願された米国仮特許出願番号60/931,411への優先権を主張する。
政府の権利
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって与えられた米国国庫補助番号GM068061により行われた。米国政府は本発明について一定の権利を有している。
本発明の分野
【0003】
本発明は、新規な抗菌化合物をスクリーニングするための技術分野に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
新たなバクテリアの病原体と同様にバクテリアの抗生物質耐性株も、世界の健康に対して高まる脅威を生み出す。また、これらの脅威に対抗するために必要な抗生物質の開発は先の数十年間の間に劇的に遅くなり、人類をこれらの危険に対して弱いまま放置している(Katzら、2006,Nat.Biotech.24:1529−1531;Payneら、2007,Nat.Rev.Drug Discovery 6:29−40)。最も新しく開発された抗生物質は、単に既に開発された前の世代の抗生物質について示された脆弱な経路のうちの1つを目標としている。これらの医薬品は有効であるが、それらに対する抵抗性は驚くべき速度で上昇しており、追加のバクテリアの分子または細胞の作用をターゲットとする、抗生物質の必要を示唆する。
【0005】
バクテリア中の一本鎖DNA結合蛋白質(SSB)は、少なくとも1ダースの他のDNA複製、DNA組換えおよびDNA修復タンパク質と本質的に分子間錯体を形成する(Molineux and Gefter,1975,J.MoI.Biol.98:811−825;Butlandら、2005,Nature 433:531−537)。さらに、SSBタンパク質は、様々なゲノム・メンテナンス・タンパク質との相互作用によって重要な生命上の役割を果たす。すべてではないにしてもこれらの相互作用のいくつかのものは、SSBからのほぼ8−10のカルボキシ末端残基によって取り次がれることが知られている。それは、バクテリアのSSBの中に高度に保存されるが、真核生物のSSBでは見つからないペプチド・シーケンスを形成する(Sandigurskyら、1996,Radiation Res.145:619−623;Curthら、1996,Nucleic Acids Res.24:2706−2711;Genschelら、2000,Biol.Chem.381:183−192)。従来の研究は、SSBからのこの相互作用シーケンス内での突然変異あるいは欠失が、バクテリアの生存度に劇的な効果があることを示した、この部位との適切なタンパク質相互作用の形成が細菌増殖には重要であることを示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】MolineuxおよびGefter,1975,J.MoI.Biol.98:811−825;
【非特許文献2】Butlandら、2005,Nature 433:531−537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SSBはすべての生物体について見出される重要なタンパク質ファミリーであり、DNA代謝のほぼすべての面において様々な本質的な役割を果たす。SSBは、DNA複製、組換えおよび修復の際に生じるセンシティブな一本鎖DNA(ssDNA)中間体と結合して保護する。SSBは、ssDNAへのゲノム・メンテナンス・タンパク質を補充し、ssDNA分解、複製開始、相同遺伝子組換えの開始、超コイルDNAの弛緩および多数の他のゲノム・メンテナンス・プロセスに助けになる役割を果たす。SSBの欠失は、致死に至ることが示されている。既知のすべてのSSBが細胞において同様の役割を果たすので、バクテリアのSSBを禁じる化合物が見いだされれば、真核細胞に同様の効果がありえる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概略
新しいクラスの抗菌化合物の発生が期待できる目標として、SSBを含むインタフェースが使用されてもよいことが見出された。本発明の方法は原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチド、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドおよび候補化合物を反応させ、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合について分析し、候補化合物の非存在下での、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合の減少は、候補化合物が抗菌化合物であると同定することを含むものとして提供される。方法を実施する際には、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのカルボキシテール(carboxy−tail)、または1から4の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を備えたポリペプチドのカルボキシテールに、少なくとも90%同一のカルボキシテールを有する。原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質ポリペプチドを含むポリペプチドは、アミノ酸配列Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)、または1から2つの保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)を含むカルボキシテールを含むことができる。
【0009】
方法の実施の際には、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドは、エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼサブユニット、プライマーゼ、ヘリカーゼ、トポイソメラーゼ、DNA修復酵素などを含むことができる。1例において、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドは、エキソヌクレアーゼIを含んでいる。原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列に少なくとも90%同一であることができる。本発明方法は、蛍光偏光測定法を含むアッセイを含むことができる。
【0010】
原核生物のSSBのC末端テール(C−terminal tail)へのSSB結合蛋白質の結合を禁止する方法が提供される。本発明の方法は上記で同定された抗菌化合物、SSB結合蛋白質、および原核生物のSSBのC末端テールとを反応させることを含み、抗菌化合物が原核生物のSSBの、SSB−結合蛋白質への結合を禁止する。SSB結合蛋白質はエキソヌクレアーゼであることができる。また、いくつかの実施態様では、SSB結合蛋白質は原核生物のエキソヌクレアーゼIであることができる。
【0011】
微生物の成長を禁止する方法が提供される。この方法は上記で同定された抗菌化合物を微生物と接触させ、それにより微生物の成長を禁止することを含む。
【0012】
原核生物のSSBのC末端テールに結合された原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルが提供される。1つの実施態様では、モデルは本質的に、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子座標を表わす。
以下を含む方法が提供される:
a)原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質のC末端テールに結合されているエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルを使用して、候補化合物を同定すること、ここで該モデルはアクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子の座標を本質的に表わす;
b) 候補化合物を、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチド、および原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドと接触させること;および
c)原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合をアッセイすること;
ここで候補化合物の非存在下での、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合の減少は、候補化合物を抗菌化合物であると同定する。接触は溶液中で行なわれることができる。
あるいは、接触はインシリコ(in−silico)でシミュレートされることができる。本発明の方法は、さらに化合物が対象中で微生物の成長を低減するかどうかを決めるために、対象への同定された抗菌化合物を投与する工程(d)を含むことができる。これらの方法によって同定された化合物が提供される。活性成分としてこれらの方法によって同定された化合物を含む抗菌医薬品組成物も提供される。
【0013】
原核生物のSSBのC末端テールへの原核生物のエキソヌクレアーゼ Iの結合を禁止する方法が提供される。この方法は次のものを含む:
a)原核生物のSSBのC末端テールに結合されている原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルを使用して、候補化合物を設計すること、ここで該モデルはアクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子の座標を本質的に表わす;および
b) 候補化合物とエキソヌクレアーゼ I、および原核生物のSSBとを接触させる、ここで候補化合物は原核生物のSSBへの原核生物のエキソヌクレアーゼ Iの結合を禁止する。
接触は溶液で行なわれることができる。あるいは、接触はインシリコでシミュレートされることができる。
【0014】
本発明によって同定された化合物へ結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の三次元モデルが提供される。例えば、化合物9に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデルが提供される。そこではモデルは、表6の中で指定された原子座標を本質的に表わす。同様に、化合物10に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデルが提供される。そこではモデルは、表7の中で指定された原子座標を本質的に表わす。
以下を含む方法が提供される:
a)化合物9または10に結合したエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデルを使用して、候補化合物をそれぞれ同定すること、ここでモデルはそれぞれ表7および8の中で指定された原子座標を本質的に表わす;
b)候補化合物と、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチド、および原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合したポリペプチドを接触させる;および
c)原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合をアッセイすること;ここで候補化合物の非存在下での、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質に結合するポリペプチドへの、原核生物の一本鎖DNA結合蛋白質を含むポリペプチドの結合の減少は、候補化合物を抗菌化合物であると確認する
接触は溶液で行なわれることができる。あるいは、接触はインシリコでシミュレートされることができる。本発明の方法は、さらに化合物が対象中で微生物の成長を低減するかどうかを決めるために、対象への同定された抗菌化合物を投与する工程(d)を含むことができる。これらの方法によって同定された化合物が提供される。活性成分としてこれらの方法によって同定された化合物を含む抗菌医薬品組成物も提供される。
【0015】
上記のように同定された抗菌化合物と微生物を接触させ、それにより微生物の成長を禁止することを含む微生物の成長を禁止する方法が提供される。
【0016】
上記のように同定された抗菌化合物活性成分として含む抗菌医薬品組成物が提供される。さらに治療上有効な量で、新規な医薬品組成物を投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は阻害剤3によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図2】図2は阻害剤9によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図3】図3は阻害剤10によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図4】図4は阻害剤32によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図5】図5は阻害剤37によるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図6】図6は、阻害剤46によるペプチド結合の阻害と、阻害剤31よるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図7】図7はWTペプチドによるペプチド結合の阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、阻害剤3による大腸菌4213(Escherichia coli 4213)の成長の阻害を示すグラフである。
【図9】図9は、阻害剤8による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図10】図10は、阻害剤9による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図11】図11は、阻害剤10による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図12】図12は、阻害剤28による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図13】図13は、阻害剤29による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図14】図14は、阻害剤31による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図15】図15は、阻害剤32による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図16】図16は、阻害剤37による大腸菌4213の成長の阻害を示すグラフである。
【図17】図17は、阻害剤3による黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の成長の阻害を示すグラフである。
【図18】図18は、阻害剤8による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図19】図19は、阻害剤9による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図20】図20は、阻害剤10による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図21】図21は、阻害剤32による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図22】図22は、阻害剤37による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図23】図23は、阻害剤42による黄色ブドウ球菌の成長の阻害を示すグラフである。
【図24】図24は様々の阻害剤の存在下および非存在下での、トポイソメラーゼIIIペプチド結合を示すグラフである。
【図25A】図25Aは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25B】図25Bは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25C】図25Cは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25D】図25Dは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25E】図25Eは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図25F】図25Fは、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を示す。
【図26A】図26Aは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26B】図26Bは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26C】図26Cは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26D】図26Dは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図26E】図26Eは、平衡結合がSSB−Ct結合中のペプチド−A結合部位およびベーシック リッジ(basic ridge)の役割を強調することを例証する。
【図27A】図27Aは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27B】図27Bは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27C】図27Cは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27D】図27Dは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図27E】図27Eは、Exol/SSBの物理的な相互作用が、Exol活性のSSBシミュレーションにとって不可欠であるかを例証する。
【図28】図28はSSB−CtペプチドAおよびBについての、Fo−Fcを省略した電子密度地図を示す。
【図29A】図29Aは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図29B】図29Bは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図29C】図29Cは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図29D】図29Dは、SSB−CtペプチドAと会合するExolヘリカルドメインからの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を示す。
【図30】図30は、Exol SSB−Ct結合部位(A)と、大腸菌RecQウイグド−ヘリックスドメインの表面上部位(B)との類似性を示す。本発明の好ましい実施態様の詳細な説明
【0018】
抗生物質開発用の新規で選択的な目標が提供される。本発明の化合物およびアッセイは、SSBとその目標蛋白質の間の相互作用を選択的に抑制する分子の同定に使用できる。そのような分子は新規であり、広汎なスペクトルを有する抗生物質として使用されることができる。あるいは、そのような分子は化学的に変成されることができる。すなわち、それらは広汎なスペクトルを有する抗生物質の開発のための出発物質に使用されることができる。本発明の組成物は、微生物の成長を抑制する方法において使用されることができる。それらは消毒剤として使用されることができる。それらは、医薬品組成物の中で活性成分として使用されることができる。また、さらに、それらは微生物が感染した対象を処理する方法に使用されることができる。用語「対象」は、患者、正常なボランティア、霊長類のような非人間の哺乳動物およびさらに他の動物を含むように意図される。
【0019】
1つの態様では、本発明は、新規な抗菌化合物およびそれを同定する方法に関する。「抗菌物質」は、バクテリア(抗バクテリア活性)、菌類(抗真菌活性)、ウィルス(抗ウィルス活性)または寄生生物(駆虫活性)のような微生物を殺すかまたはその成長を抑制する物質である。「抗生物質」は一般に細菌感染を治療するために使用される抗菌物質である。
【0020】
本発明は、バクテリアの成長を抑制できる小さな分子の形をしている抗菌化合物の同定に特に適合する。いくつかの例において、その成長が本発明の化合物を使用して抑制されるバクテリアは、グラム陰性細菌、例えば大腸菌である。他の例において、その成長が本発明の化合物を使用して抑制されるバクテリアは、グラム陽性細菌、例えば黄色ブドウ球菌である。本発明は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌として必ずしも分類されないバクテリア、例えばデイノコッカス−ラジオデュランス、および結核菌のようなマイコバクテリア、およびさらにここに記載されるようなC末端残基を保存した他のバクテリアに使用できる。
【0021】
1つの実施態様では、本発明は、一本鎖DNA結合蛋白質の高度に保存されたC末端テールによってメディエートされた蛋白質錯体形成を阻害する化合物の同定を提供する。それは化学療法の新規なクラスに結びつくことがある。用語「SSB」は一本鎖DNA結合蛋白質をいう。本発明のいくつかの実施態様では、大腸菌SSBは、SEQ ID NO:1のヌクレオチド配列を有し、またSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有している.
【0022】
本発明の原核生物のSSBは、SEQ ID NO:2の多形性の変形、突然変異体および異種間の同族体であるポリペプチドを含む。本発明の原核生物のSSBは、さらにSEQ ID NO:2の機能的な等価物またはフラグメントを含む。本発明のポリペプチドの「機能的なフラグメント」または「機能的な等価物」または「機能的な同族体」は、特定のポリペプチドの同族であるが、特定のポリペプチドと1つ以上のアミノ酸の相違を有しているポリペプチドをいう。ポリペプチドの機能的なフラグメントまたは等価物は、全部でなくても、少なくとも幾分かの特定のポリペプチドの活性を保持する。
【0023】
本明細書で使用される用語「ゲノム・メンテナンス」は、ゲノムの構造およびインテグリティの維持をいう。一本鎖DNA結合蛋白質(SSB)のような蛋白質はゲノム・メンテナンスに関係することがある。
【0024】
蛋白質またはポリペプチドの「カルボキシテール」(カルボキシテール、カルボキシル末端(carboxy terminus)、カルボキシ終点、C−末端エンド(C−terminal end)、C末端(C−terminus)またはCOOH終点(COOH−terminus)としても知られている)は、遊離カルボキシル基(−COOH)で終了したアミノ酸鎖の末端である。本発明の目的のためには、蛋白質のC−末端は、蛋白質のC末端のおよそ10−20のアミノ酸を包含する。SSBのC末端は本明細書においてSSB−Ctとも呼ばれる。
【0025】
規範の原核生物のSSBは4つの同一のサブユニットからなるホモ四量体であり、それぞれの単量体単位はオリゴヌクレオチド/オリゴサッカライド結合(OB)−foldから成り、無秩序C末端テールが続く。C末端テールの最終10アミノ酸は、バクテリア中に非常に高度に保存され、大腸菌中の生存度にとって不可欠である。しかし、それらは真核生物・ミトコンドリアのSSBには顕著に非存在である。大腸菌SSBのC末端テールは、SSBと、トポイソメラーゼIII、PriA DNAヘリカーゼ、DNAポリメラーゼIIIのカイ・サブユニット、RecQ DNAヘリカーゼおよびエキソヌクレアーゼIを含むSSBの機能的なパートナーの多く(すべてではないにしても)との間の一次相互反応サイトである。SSBのC末端テールの除去は、SSBのDNA結合能力に効果がほとんどない。しかし、それにもかかわらずそれは大腸菌に致死である。
【0026】
方法は、SSBのC末端テールによって仲介された蛋白質間相互作用を抑制する化合物の同定のために提供される。本発明はさらに、これらの方法を使用して同定される化合物を提供する。それらの化合物はSSBのC−末端テールにより仲介された蛋白質間相互作用を抑制できる。これらの化合物は、原核生物中の、特にはバクテリア中のゲノム・メンテナンス蛋白質錯体の形成を途絶させることにより、広いスペクトルを有する抗生物質として役立つことができる。真核生物のRPA(複製プロテインA)が同様のC末端領域を含んでいないので、恐らく結合パートナーを募る別個の方法を使用するので、これらの化合物は真核生物のゲノム・メンテナンス錯体に有害ではない。
異なる原核生物からのSSBテールのアラインメント
【0027】
およそ280の原核生物のSSBのカルボキシテールのアラインメントは表1に示される。それは、原核生物のSSBのカルボキシテールを含むおよそ10のアミノ酸残基の保存を示す。およそ280の原核生物のSSBのC末端20残基のアラインメントは、4つの一番端のC末端残留物(DIPF、つまりAsp−lle−Pro−Phe;SEQ ID NO:5に示される)が、これらの原核生物のSSBのカルボキシテール中で最も高度に保存された残基であることを示す(表1)。原核生物のSSBのカルボキシテールからのこれらの最終C末端残基は、蛋白質の結合にとって最も重要なものであるように見える。
【0028】
本発明は、表1中に示されるようなカルボキシテールを備えたポリペプチドの使用を企図する。本発明は、表1中で示されるカルボキシテールの同族のカルボキシテールを備えたポリペプチドの使用を企図する。例えば、他の有用なポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含むアミノ酸配列を備えた表1の中で示されるようなカルボキシテールを有することができる。
【表1】
【0029】
1つの態様では、本発明は、目標蛋白質(大腸菌からのエキソヌクレアーゼI(Exo I))に結合した大腸菌SSBの、以前に公開されていない高解像度構造の決定に関する。大腸菌エキソヌクレアーゼIはLehman、1960年、J.Biol.Chem.235:1479−1487によって記載された。エキソヌクレアーゼ(それらは、個別の酵素として、またはより大きな酵素錯体の部分として見い出すことができる)は、ポリヌクレオチド鎖の端から一度にヌクレオチド1を開裂する酵素である。大腸菌エキソヌクレアーゼIは、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列を有している:また、それは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列を有している。大腸菌エキソヌクレアーゼIの結晶構造の原子の座標は、アクセションコード3C95の下で蛋白質データバンクに堆積された。本発明は、他の原核生物のエキソヌクレアーゼの使用を企図する。特には大腸菌エキソヌクレアーゼIの他の原核生物の同族体の使用を企図する。
【0030】
本発明の原核生物のエキソヌクレアーゼは、SEQ ID NO:4の多様な変形、突然変異体および異種間の同族体であるポリペプチドを含む。本発明の原核生物のエキソヌクレアーゼは、さらにSEQ ID NO:4の機能的な等価物またはフラグメントを含んでいる。
【0031】
方法は、「SSB−結合蛋白質」(さらに本明細書では「目標蛋白質」とも呼ばれる)への原核生物のSSBの結合をアッセイするために提供される。SSB−結合蛋白質はSSBに結合する蛋白質である。例えば、SSBは原核生物のSSBであることができ、たとえばSSBは大腸菌SSBであることができる。SSB−結合蛋白質は、原核生物のSSB−結合蛋白質であることができ、たとえばSSB−結合蛋白質はエキソヌクレアーゼであることができる。エキソヌクレアーゼは原核生物のエキソヌクレアーゼであることができる。また、それは特にエキソヌクレアーゼIであることができる。エキソヌクレアーゼIは大腸菌エキソヌクレアーゼIであることができる。
【0032】
さらに、溶液中でエキソヌクレアーゼIへのSSBの結合を測定するために高速蛍光偏光法方法が提供される。蛍光偏光法(FP)は、偏光と蛍光性トレーサを使用する、標的分子への標識分子の結合を測定する技術である。偏光で励起された時、分子に結合されたトレーサは多量の偏向した蛍光を放射する。より小さな分子に付けられたトレーサと比較して、より大きな分子に付けられたトレーサは回転がより遅い。例えば、蛍光でラベルされたペプチドが、様々な分子へのペプチドの特異的結合を検知するために使用できる。なぜなら、蛍光でラベルされたペプチドは目標分子と結合した時に、その自由なタンブリング速度と比較してゆっくりとタンブリングするようになるので、よりゆっくりと非偏光となるからである。化学的には蛍光異方性アッセイは、蛍光、すなわち励起状態と放射された(蛍光)プロトンの間の偏光の非相関性から分子の回転拡散を分析する。
回転拡散定数から、高分子の形を評価し、薬剤の候補となる他の分子を設計するためにその情報を使用できる。
【0033】
(1)SSBと蛋白質との相互作用の重要性、(2)バクテリアの種にわたるSSBタンパク結合シーケンスの広い保存、および(3)真核生物の(人間)システムからのSSBタンパク結合シーケンスの明白な不在を与え、これらのアッセイは、選択的に原核生物の成長を抑制する化合物の同定に特効を有することがある。SSBとその目標蛋白質の間の相互作用を選択的に阻害する、小さな分子は、このように魅力的で、新規な広いスペクトルを有する抗生物質である。本発明は、この相互作用の小さな分子の阻害剤のための高生産性スクリーン用に本明細書に記載された方法を使用することを企図する。そのような阻害剤は、将来の生化学・抗微生物の研究のための先駆的な化合物として役立つことができる。
【0034】
本発明の方法は溶液中(すなわちin vitroで)実行されることができる。したがって、生体外でのアッセイを行うことによって、本発明によって新規な抗菌化合物を同定することが可能である。別の例において、本発明の方法はインシリコ、すなわちコンピュータ・プログラムを使用するシミュレーションによって実施することができる。したがって、本発明の結晶構造についての情報を使用して、新規な抗菌化合物の構造を同定および/または設計し、その後当技術分野において公知の方法を使用して、化学的に合成することが可能である。
【0035】
この発明の実施の際に使用される、スクリーニングされることのできる化合物のライブラリの例としては、メイブリッジ(Maybridge)(例えば14,400の化合物のHitFinderコレクション);ケンブリッジの16,000の化合物のDIVERSetライブラリ;ケムダイバーシティライブラリ、ケミカル・ディバーシティ・ラブズ社などがあげられる。他の候補化合物も、本発明によるアッセイの中で使用できる。スクリーンされるためにはライブラリから候補化合物を得なければならないわけではない。候補化合物は当技術の中で既知の方法を使用して合成し、次に本発明のアッセイで使用できる。例えば、候補化合物は、相互作用蛋白質(例えばSSBとエキソヌクレアーゼ)の結晶構造上のデータを使用して、インシリコで設計できる。一旦候補化合物がインシリコで設計されれば、これらの候補化合物は合成化学の既知の方法を使用して合成でき、次に、相互作用蛋白質(例えばSSBとエキソヌクレアーゼ)間の相互作用を阻害するかまたは影響を及ぼすかのそれらの効能に関してテストできる。
【0036】
1例において、SSB C末端テールを媒介とした蛋白質/蛋白質相互作用を阻害する化合物の同定が、ハイスループット蛍光偏光法(high throughput fluorescence polarization:FP)に基づいたスクリーンを使用して行われる。発明者は、大腸菌SSBのC末端テールにExolの結合することを阻害する化合物を同定するためにFPスクリーンを使用した。ハイスループット・スクリーンのためのリポーターとして結合するExol−SSB C末端テールを使用することは、いくつかの長所を有している。最初に、ExolとSSBのC末端テールの間の結合は、他の公知の結合と比較してかなり強く、FPを使用した正確なKdの決定を許容し、錯体形成が飽和するので、Exol−SSB−Ct錯体の著しい集団のスクリーニングを許容する。次に、FPはハイスループット・プラットフォームで処理することができ、それにより多くの化合物を速くスクリーンすることを許容する。第3に、発明者のSSBのC末端テールへのエキソヌクレアーゼI結合の結晶構造の最近の発見は、機能的なパートナーに結合したSSB C末端テールの最初の高解像度の画像を提供した。結晶構造は、C末端テールの最終アミノ酸が結合に重大な役割を果たすことを示唆する。これらの発見は、SerへのSSBの最後から二番目のPro残基の突然変異が、ExolがSSBのC末端テールに結合する能力を失わせることを示すFPデータによって支持される。理論によって拘束されるものではないが、異種のバクテリアのSSB同族体中のSSBの最終4アミノ酸間の非常に高度な保存が与えられて、タンパク結合のこのモードは、ゲノム・メンテナンスのための蛋白質のための補充のための保存機構であるかもしれない。
【0037】
この結合を阻害する小さな分子を見つけることによって、SSBエキソヌクレアーゼI相互作用を分裂させ、それにより細菌増殖を遅くするか、またはバクテリアを殺すことが可能である。更に、結合を阻害する小さな分子は、さらにSSB C末端テールと他の結合パートナーとの間の結合を阻害することがある。
【0038】
1例において、ハイスループット・スクリーンは、SSBのC末端テールと他の既知のSSB結合パートナーとの間の相互作用を分裂させる分子を捜ために行うことができる。例えば、1ダース以上のSSBと相互に作用する蛋白質は、大腸菌において既に同定されている(Butlandら、2005年、ネイチャー433:531−537)。これらの相互作用の多くはSSBのC末端テールとその異型の結合パートナーの間の接触により媒介される。例えばExol(Sandigurskyら、1996年、Radiation Research 145:)619−623;Genschelら、2000、Biol.Chem.381:183−192)、DNA ポリメラーゼ IIIのχφサブユニット(Yuzhakovら、1999,Cell 96:153−163;Witteら、2003,Nucleic Acids Res.31:4434−4440)、ウラシル DNA グリコシラーゼ(Hanadaら、2001,J.Biol.Chem.276:16992−16997)、PriA DNAヘリカーゼ(Cadman および McGlynn,2004,Nucleic Acids Res.32:6378−6387),およびRecQ DNAヘリカーゼ(Sheredaら、2007,J.Biol.Chem.282:19247−19258)を参照。バクテリアのSSB蛋白質が主にホモ四量体(タンパク結合サイトの役割をすることができる4つのC末端を有する)で、複数のSSB四量体は1つの伸張されたssDNA領域に結合することができ(Lohman and Ferrari,1994,Annu.Rev.Biochem.66:527−570)、多くのゲノム・メンテナンス酵素の共通の目標としてのSSBの利用は、いくつかのDNA代謝活性の効率的にターゲットとすることおよびコーディネーションを促進する。
抗菌化合物用のスクリーンを行なう場合のアッセイ成分の添加順序
【0039】
本発明は、本明細書に記載された種々の抗菌化合物用のスクリーンを企図する。以下に示されるように、候補抗菌化合物として多くのものを同定するために、化合物のライブラリをスクリーンすることは可能である。これらの候補化合物は、SSB−結合蛋白質(例えばExol)に結合したSSBのC末端を表わす結晶構造中のペプチド結合サイトへマップすることができる。1例において、Exolへあらかじめ結合された、蛍光ラベルが付けられたC末端SSBペプチドの溶液を使用し、化合物を滴定することによりスクリーニングすることが可能である。あるいは、エキソヌクレアーゼI(例えば384ウエルプレートへ)を加えて、次に、各々のウエルに1つの(例えば、異なる)候補化合物を加えることにより、スクリーンを行うことは可能である。これは、化合物がExolの1つまたは複数の結合ポケットに結合することを可能にするだろう。その後、本発明の蛍光ラベルが付けられたペプチドを加えることができる。この蛍光ラベルが付けられたペプチドは、1つまたは複数のポケットに結合されたすべての化合物と競争するだろう。以下の理論によって拘束されるものではないが、目標がSSB末端領域と会う前に、生体内の薬はその目標と会うので、後者はより生理学的に適切なスクリーンになりえる。下記の例において、Exolおよびペプチドテールを使用してスクリーンが行われたが、潜在的に有用になりうるこの主題について多くの変化がある。スクリーンも大腸菌以外の他の目標、例えばトポイソメラーゼIII、DNAポリメラーゼのカイ・サブユニット、ギラーゼ、これらの混合物または他の目標などを使用して行なうことができる。更に、これらに限定されないが、ブドウ球菌、かん菌、腸球菌などを含む別のバクテリアからの蛋白質を使用して、このスクリーンを行うことができる。これらのアッセイは、テストされている種からの全蛋白質またはC末端テールを使用して行うことができる。
化合物の改善された結合および同定のためのドッキングコンピュータ・プログラムの使用
【0040】
コンピュータモデリングおよびドッキング手続きが、結合ポケット中の既知の小さな分子のドッキングモードの分析により、小さな分子のスクリーニングライブラリィからのヒットを検査し改善するために使用できる。ドッキングはリセプターポケット中の、小さな分子の結晶構造で始まる。データベースからの最初のヒットは薬のための最適の構造ではないことがある。これは、活性部位中のヒットをモデル化し、その後、他の分子をドッキングすることによりテストできる。結合エネルギーは計算され、既知のヒットと比較される。コンフォーマルな適合はドッキングの結果の重要な部分で、モデリングにより通常検査される。
【0041】
結合された小さな分子について最初の結晶構造が決定された後、コンピュータによるスクリーニングとドッキングプログラム、たとえばAuto Dock(Scripps research Institute,La JoIIa,CA),FlexX(BioSolvelT GmbH,Sankt Augustin,Germany),およびSLIDE(Michigan State University,East Lansing,Ml)が、既知のデータベースから何千もの化合物をスクリーニングするために使用できる。この例において、分子はそれぞれレセプタ部位に適合するコンフォーマルな柔軟性が許容され、結合能力が評価される。ほとんどの場合、レセプタも柔軟性を与えられる。データベースからの最初の化合物は点数を付けられ、格付けされる。また、結合モードおよび結合エネルギーは、小さな分子のアッセイからの実際のヒットと比較される。これは、化学アッセイおよびドッキングモードの両方の信頼度を格付けする。この手続きは、原子デノボによって、または同様な薬剤結合コンピュータ・プログラムによって、原子と結合ポケットを最適化するために出発分子として役立つことができる一群の分子に導く。
【0042】
本明細書に記載された方法は、この種の手続きで処理することができる。
確かに、本発明の発明者は、阻害剤が結合ポケットに結合された多くの結晶構造を解決した。これらのツールを使用して、既に同定されたものと同等又は恐らくさらによく結合する分子を、インシリコで(つまり、コンピュータ・プログラムを使用して)探索することが可能である。本質的には、適切なコンピュータ・ソフトウェアを、最良にペプチド結合を阻害する化合物の構造を同定するのを支援するために使用することができる。インシリコ技術を使用する利点は、潜在的な候補化合物をスクリーンできる迅速さである。なぜなら、何千もの結合アッセイを溶液中、すなわちin vitroで分析するよりはるかに速い方法だからである。
同定された化合物を含む医薬品組成物
【0043】
活性成分として本発明によって同定された抗菌化合物を含む医薬品組成物も提供される。医薬品組成物は液体または固体であることができる。液体組成物は、たとえば1つ以上の抗菌化合物を含む水溶液であることができる。固体の組成物は上記の水溶液を、たとえば凍結乾燥または噴霧乾燥することにより入手可能な固形剤であることができる。1つの実施態様では、固形剤は凍結乾燥物である。上に言及された水性物の調剤は、そのような固形剤の水溶液を含んでいる。上記の固体組成物は、固形剤と注入剤が別個に調剤薬に配合されるキットの形であることができる。
【0044】
この発明の医薬品の組成物を生産するための技術の例は、以下に記載される。水溶液は選択した溶剤中に、従来の方法で抗菌化合物を溶かすことにより生産できる。この水溶液はアルカリ性、中性、または塩基性であることができる;抗菌化合物が水溶液に溶解されることで十分である。そのような水溶液中の抗菌化合物の濃度は、例えば測定された最小阻止濃度(表3)と一致する濃度である。いくつかの実施態様では、それが後の手続きでの成功する凍結乾燥を許容するような濃度が選ばれる。固体の医薬品組成物の製造については、たとえば凍結乾燥物は、本発明の1つ以上の抗菌化合物を含む水溶液の凍結乾燥により生産できる。例示的な手順は、約−25℃で、約0.1トル以下の内部を減圧にした凍結乾燥機で水溶液を凍らせ、プレート温度を5℃から20℃/時の速度で約25から40℃の最終温度にあげることを含む。凍結乾燥が実行される場合、形態調整剤が、凍結乾燥物の形態を改善する目的で、抗菌化合物の水溶液に加えられることができる。形態調整剤としては、糖類(例えばマンニトール、キシリトール、イノシトール、ソルビトールなどのような糖アルコール、マルトース、蔗糖、ラクトーゼなどのようなヘキソースに基づいた二糖類、およびグルコースのような単糖類)、中性アミノ酸(例えばグリシン、アラニン、プロリン、バリン、メチオニンなど)およびコハク酸のアルカリ金属塩(例えば琥珀酸ナトリウムなど)があげられる。スプレー乾燥が所望の生成物である場合、上に記載された水溶液は公知の技術によりスプレー乾燥される。例示的な手続きはスプレー乾燥機ノズル(たとえばツインノズル、圧力ノズルなど)から霧状の水溶液を射出するか、またはロータリーディスクの乾燥室内に、約5−20ml/分(例えば乾燥室入り口、出口温度がそれぞれ約80から120℃と約30℃から50℃;送気量約70−100kg/時間)の流量で供給する。
【0045】
薬物吸収の一層の増加の保証のために、界面活性剤は、本発明の医薬品組成物において付随的に使用できる。好適な界面活性剤の例としてはソルビタン脂肪酸エステル(例えばソルビタンモノパルミチン酸塩、ソルビタンセスクイステアレート(sesquistearate)など)、グリセリン脂肪酸エステル(たとえばモノステアリン酸グリセリンなど)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸プロピレングリコール)、ポリオキシエチレン・グリセリン脂肪酸エステル(たとえばポリオキシエチレン・モノステアリン酸グリセリンなど)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸ポリオキシエチレン、PEGジステアレートなど)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールみつろう誘導体、ポリオキシエチレン・ラノリン・アルコール、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、プルロニック(Pluronic)シリーズ界面活性剤のような非イオン性界面活性剤;アルカリ金属ドデシル硫酸塩、アルカリ金属ステアリン酸塩、アルカリ金属パルミチン酸塩、およびトゥイーン20およびトウィーン80のような液体の界面活性剤のような陰イオン界面活性剤があげられる。これらの界面活性剤は、好適な比率で単独でまたは複数で使用できる。
【0046】
抗菌化合物の可溶性または安定性の改善のために、様々な塩(例えばクエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどのような有機酸の塩)および/または安定剤(例えば炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムなどのような無機塩基の塩類)が組込まれるか、または本発明の組成物に加えられることができる。必要ならば、浸透圧調節のための等張化剤(例えば塩化ナトリウム)および/または無痛化薬または局所麻酔薬(例えばグルコース、ソルビトール、マンニトール、ベンジルアルコール、塩酸メピバカイン、キシロカイン塩酸塩など)も使用できる。
【0047】
保存料およびpH制御因子は必要に応じ少量加えることができる。保存料としては、メチルp−ヒドロキシベンゼン、プロピルp−ヒドロキシベンゾエートなどのパラベン類、クロロブタノールのようなアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、セトリミドなどのような第四級アンモニウム塩、ソルビン酸、クロルヘキシジン、チメロサールなどがあげられる。pH制御因子としては、様々な酸、例えば塩酸、ホウ酸、リン酸、炭酸、炭酸水素などのような無機酸、モノまたはポリカルボン酸、アミノ酸などの有機酸、および様々な塩基、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのようなアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのようなアルカリ金属水素化炭酸塩があげられる。好ましくは、これらの添加物は、単独でまたは組み合わせて使用でき、抗菌化合物の1ミリグラム当たり、約0.001−10mgで、好ましくは約0.01−5mgで加えることができる。
【0048】
本発明の医薬品組成物は、薬理学的に受理可能なキャリアまたは賦形薬を含む有効成分の配合により製造された剤形で、一般に経口的にまたは非経口的に投与できる。本発明の医薬品組成物は次の方法で使用することができる。例として固体の組成物を挙げると、それは滅菌蒸留水または注入液(例えば生理食塩類、グルコース注射剤など)に溶かし、例えば静脈注射、皮下注射、筋肉注射、点滴静注注入または眼科用液剤として使用できる。そのような注入の準備は、既知の無菌の手続きによって好ましくは行なわれる。
【0049】
本発明の医薬品の組成物の量は、剤形、最適投薬方式、活性体の種および他の要因に依存する。いくつかの実施態様では、医薬品組成物は1日当たり1回か、または2〜3回に分割して投与されることができる。
実施例
【0050】
本発明は、特別の方法論、治験実施計画、対象または記載された反応物に制限されるものではなく、変更されることができる。本明細書に使用される用語は、特別の実施態様だけを記載されるためにあり、本発明の範囲を制限するようには意図されない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限されている。次の例は例示のために提示され、特許請求の範囲に記載される発明を制限するものではない。
化合物の構造
【0051】
本発明によりSSBエキソヌクレアーゼI結合を阻害する化合物のスクリーンの中で同定された化合物の例が以下に示される。化合物の各々については、化合物の名前、化合物の化学式、化合物の分子量(MW)および化合物の化学構造が示される。さらに、化合物が同定されたライブラリを提供した会社の名前およびライブラリ中の特定の化合物の製品コードが示される。Ki値は解離定数であり、配位子(たとえば薬剤、本発明の場合には試験される阻害化合物)とペプチド又は蛋白質との間の親和性、すなわち配位子(つまり試験される阻害化合物)が、どれくらいしっかりと特定のペプチドまたは蛋白質に結合するかを表す。IC50値は半数阻害濃度、すなわち生体外で、目標の50%の阻害に必要な化合物の濃度をいう。それは、ある生物学的プロセス(例えばLBの中の細菌増殖)を阻害するためにどれだけの特定の物質/分子が必要かを測定する。
化合物3
【0052】
名前:2−[5−(3−ブロモベンジリデン)−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−3−イル]―3−フェニルプロパン酸
式:C19H14BrNO3S2
MW:448.36
会社:ケンブリッジ
製品コード:6044448
Ki=約2.5μM
IC50大腸菌4213=5.5μM
IC50黄色ブドウ球菌=10μM
【化1】
化合物8
【0053】
名前:[5−(2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−イリデン)−4−オキソ−2−チオキソ−1,3−チアゾリジン−3−イル](フェニル)酢酸
式:C21H17NO3S2
MW:395.5
会社:ケンブリッジ
製品コード:5767720
Ki=約4μM
IC50大腸菌4213=11μM
IC50黄色ブドウ球菌=29μM
【化2】
化合物9
【0054】
名前:3−(tert−ブチル)−1−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−オン
式:C14H14ClN3OS
MW:307.79766
会社:メイブリッジ
製品コード:SEW01297
Ki=約773nM
IC50大腸菌4213=6μM
IC50黄色ブドウ球菌=5.5μM
【化3】
化合物10
【0055】
名前:2−[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)アニリノ]5−メトキシ安息香酸
ACDコード:MFCD00175807
式:C15H11ClF3NO3
MW:345.705449
会社:メイブリッジ
製品コード:S07197
Ki=約124.7nM
IC50大腸菌4213=30μM
IC50黄色ブドウ球菌=18μM
【化4】
化合物28
【0056】
名前:1−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3,4−ジメチル−1H−ピラゾール−5−オール
式:C12H11N3OS
MW:245.3
会社:ケンブリッジ
製品コード:
9040944
【化5】
化合物29
【0057】
名前:1−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3−イソプロピル−1H−ピラゾール−5−オール
式:C13H13N3OS
MW:259.33
会社:ケンブリッジ
製品コード:9036389
【化6】
化合物31
【0058】
名前:2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−5−メチル−2,4−ジヒドロ−3H−ピラゾール−3−オン
式:C11H9N3OS
MW:231.27
会社:ケンブリッジ
製品コード:5108305
【化7】
化合物32
【0059】
名前:2−[3−(トリフルオロメチル)アニリノ]安息香酸
式:C14H10F3NO2
MW:281.234109
会社:メイブリッジ
製品コード:RJC02179
【化8】
化合物37
【0060】
名前:5−[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−2−ニトロフェノール
式:C13H7ClF3NO4
MW:333.64
会社:ケンブリッジ
製品コード:5524827
【化9】
化合物42
【0061】
名前:
N−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3,5−ジメチル−4−イソキサゾールカルボキシアミド
式:C13H10ClN3OS
MW:307.7543
会社:メイブリッジ
製品コード:HTS08909
【化10】
化合物46
【0062】
名前:
1−(6−クロロ−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−3−メチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−オン
式:C11H8ClN3OS
MW:265.71702
会社:メイブリッジ
製品コード:SEW01296
【化11】
SSBのC末端テールに対応するペプチド
【0063】
SSBまたはその変形のC末端テールに対応するペプチドは、ウィスコンシン−マジソン大学バイオテクノロジー・センターによって合成され精製された。「WT」ペプチドは、大腸菌SSBからの定量化のための加えられたN−末端 Trp (W)と引き続く9つのC末端モースト(9C−terminal−most)残基を含む:Trp−Met−Asp−Phe−Asp−Asp−Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:6)。したがって、合成されたペプチドはフルオレセイン−WMDFDDDIPF(つまりフルオレセイン−SEQ ID NO:6)だった。Trp残基は280nmを吸収する。したがってペプチド濃度の正確な定量化を許容する。あるいは、正確にペプチド濃度を測定するためにそれらを使用できる限り、本発明の実行のために他の残基またはタグを使用することができる。競争的結合の実験では、ペプチドWMDFDDDIPF(SEQ ID NO:6)は蛍光部位なしで使用された。
【0064】
使用された第二のペプチド「F−WT」は、同じシーケンスを含むが、N末端フルオレセイン部位が加えられた。F−WTシーケンスを変更する追加の2つのペプチドも合成された:第一に、「F−P176S」はWTシーケンスの最後から二番目のProの代わりにSer残基を用いる。また第二に、「F−mixed」は、F−WTペプチド・シーケンスTrp−Asp−Phe−Met−Asp−Asp−Pro−Phe−lle−Asp(SEQ ID NO:8)のSSB誘導部分のランダムに選択されたシーケンスである。下に記載された実験の中で使用された他のペプチドは、WDDIPF(SEQ ID NO:7)およびWMDFDDDIPF(SEQ ID NO:6)だった。これらのペプチドのどちらも蛍光標識を付けられなかった。
ペプチド結合アッセイ
【0065】
ペプチド結合アッセイは、様々な化合物の存在下、または非存在下で、上記のペプチドとエキソヌクレアーゼIとを使用して溶液中で行なわれた。異なる量のエキソヌクレアーゼI(Exol)がペプチド結合アッセイで使用された。典型的には、0.1−10,000nM大腸菌Exol(または変種)が、10nM F−WT、F−P176SまたはF−mixedペプチドと、10分間室温で、20mM Tris−HC中、pH 8.0、100mM NaCl、1mM MgCl2、4%(v/v)グリセロール、1mM 2−メルカプトエタノールおよび0.1mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)中でインキュベートされた。蛍光偏光法(FP)は25℃で3回測定された;平均FP価値は、誤差として示された平均値の標準偏差とともにプロットされた。
【0066】
表2の中のデータは、テストされたいくつかの候補化合物に対する解離定数(Ki)の値を要約する。個々の化合物(つまり阻害剤)のペプチド結合データを示すグラフが、図1−6に示される。WTペプチド・コントロール用のデータは図7に示される。
【表2】
【0067】
1例において、化合物(阻害剤)46と31の間のただ一つの差が、前者におけるCl原子の存在だったことは注目すべきである。1つの原子置換の重要性を検討するために、阻害剤46のペプチド結合阻害値は、阻害剤31のペプチド結合阻害値に対して計画された(図6)。Cl原子の不在ははるかに弱い結合に帰着した(表3)。
【0068】
図7は、C末端ペプチドのどの部分がエキソヌクレアーゼIへの結合において重要かを示す。図7の中で示される実験の原理は、阻害剤について行なわれた実験(図1−6)に非常に似ているが、エキソヌクレアーゼIに結合したSSB C末端テールペプチドに蛍光タグを付けた溶液中の異なる阻害剤を滴定する代わりに、ラベルされていないペプチドまたはN末端のない3つのアミノ酸残基(MDF)を有しているラベルされていないペプチドDDDIPF(SEQ ID NO:7)が滴定された。Wは定量化の目的にのみ存在することは再び指摘されるべきである。失われた残基がペプチド結合において重要な役割を果たす場合、ペプチドの先を切られたバージョンは、短縮していないペプチドより貧弱な競争力を有するであろう。これはまさに図7で見られるものである;蛋白質に既に結合された蛍光性のペプチドを滴定するために、短縮していないペプチドより先を切られたペプチドは10倍かかる。蛋白質を滴定することが可能であるという事実は、それらのN末端の3つの残基は結合に役割を果たしているが、重大ではないことを示す。なぜなら先を切られたペプチドも少量ではあるが競争しているからである。
【0069】
化合物28、29および31は結合を阻害しなかった(表3)。
SSB/エキソヌクレアーゼI相互作用を阻害する分子を見つけるハイスループット・スクリーン
【0070】
濃縮エキソヌクレアーゼIは、2リットルの稀釈バッファ(DB)(20mM Tris pH8.0 HCl、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mMベータメルカプトエタノール)へ一晩透析された。透析の後、エキソヌクレアーゼIは、先にDBで希釈された蛍光ラベルが付けられたSSB C末端ペプチド(アミノ酸配列(N末端)フルオレセイン)−WMDFDDDIPF、すなわちフルオレセイン−SEQ ID NO:6(C末端)と混合された。DBと調節した後のエキソヌクレアーゼI/SSB C末端ペプチド混合物の構成要素の最終濃度は、1μMエキソヌクレアーゼI、10nM 蛍光ラベルされたSSB C末端ペプチド、20mM Tris pH8.0 HCl、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mMベータメルカプトエタノールだった。5分間室温に置いた後に、液体取り扱いシステムが使用され、384ウエルプレート内に、30マイクロリットル/ウエルで提供された。その後、1mM化合物の1マイクロリットルが加えられた。スクリーンされた化合物は、ケンブリッジ DIVERSetライブラリ(ケンブリッジ株式会社、サンディエゴ、CA)、メイブリッジ ヒットファインダー ライブラリ(サーモ フィッシャー、サイエンティフィック、ウォルサム、MA)、ケムディブライブラリ(ケミカルディバーシティ 研究所、サンディエゴ、CA)、または既知のバイオアクティブライブラリィ−KBA01から得られた。
【0071】
各ウエルに対するFP(蛍光偏光値)は、プレート・リーダを使用して、化合物の添加後5分に測定された。FP値を低下させた化合物が同定された。これは典型的には3つの標準偏差を使用して行われた。蛍光性だったか、または過剰な沈殿を引き起こした化合物は考察から除外された。これらの基準を満たしたおよそ20の化合物が分離され、PanVera Beacon2000 FP(PanVera社、Madison、Wl)を使用して、より厳密にテストされた。これらの実験から、このように結合するペプチドの完全な阻害を示唆した程度にFP値を低下させることができた5つの化合物が同定され、Kiが決定される。
【0072】
Kiを決定するために、1μMエキソヌクレアーゼI、蛍光ラベルされた10nMSSB C末端ペプチド、20mMTris、pH8.0 HCl、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mMベータメルカプトエタノールを使用して、上記と同様にしてマスター・ミックスが調製された。FP値が、蛍光ラベルが付けられたペプチド単独からのみ得られる値に低下するまで、増加された化合物の量がペプチド蛋白質混合物へ滴定された。Ki値は、Prof.Shaomeng Wang,University of Michigan(Nikolovska−Coleskaら、2004,Anal.Biochem.332:261−273)の、蛍光に基づく競合結合測定法を使用して測定された。
細菌増殖分析
【0073】
図8−23および表3に示されるように、候補化合物が細菌増殖を阻害するそれらの能力に関してテストされた。例えば、図8−16では、大腸菌4213(易感染性細胞壁を有しているグラム陰性細菌)の成長曲線が示される。図8−16は、それぞれの候補抑制化合物が大腸菌4213の成長をどのように阻害するかを示す。易感染性細胞壁は、化学薬品がそれをより容易に通り抜けることを可能にする。同様に、図17−23は、それぞれの候補抑制化合物が黄色ブドウ球菌12598(グラム陽性細菌)の成長をどのように阻害するかを示す。
【0074】
0.05 OD 600の大腸菌1655、大腸菌4213または黄色ブドウ球菌を含んでいるLBの100μLが、96ウエルプレート中でアリコートされた。DMSO中の化合物の1μLが加えられ所定の最終濃度にされた。プレートは250RPMで振動させて、37℃でインキュベートした。成長速度は、3時間から7時間の間(対数成長期)に起こったOD/時間の平均変化を決定することにより計算された。本明細書に示されたグラフは、μMでの阻害剤濃度に対する、この細菌増殖速度(OD/hの変化)のプロットである。
【0075】
表3中のデータは、本発明による選択された化合物の、液体培地の中で細菌増殖を50%低減するのに必要である濃度を要約する。
【表3】
【0076】
大腸菌阻害実験のデータは表4中に要約される。
【表4】
【0077】
黄色ブドウ球菌阻害実験のデータは表5に要約される。
【表5】
【0078】
多くの試験される候補化合物は、細菌増殖に対して充分な妨害作用を有していた。さらに、同定された薬化合物が多くの他のグラム陽性のバクテリアの種の成長を遅くすることができることが発見された。例えば、枯草菌とエンテロコッカス−フェカーリスの成長は、これらのバクテリアが化合物9または10のどちらかの化合物を100μM含んでいる寒天平板上で成長された時に、阻害された。同様のやり方でテストされた時、デイノコッカス−ラジオデュランスの成長も阻害された。
結晶構造
【0079】
エキソヌクレアーゼI結晶は、12%のPEG 4000、1mM MgCl2、20mM Tris pH 8.0および5mMの化合物を含んでいる浸透溶液に移された。5日間、時計皿中でこれらの溶液に浸漬された後、結晶は12%のPEG 4000、1mM MgCl2、20mMトリス pH 8.0、5mMの化合物および25%のグリセロールを含んでいるクライオ溶液(cryo solution)に結晶が移された。結晶はついで液体窒素中でフラッシュ凍結された。
【0080】
細胞内での異種蛋白質とSSB相互作用の重要性にもかかわらず、SSBとそのパートナー蛋白質の間の相互作用についての構造およびその機構の理解は、不明瞭なままだった。1つの態様では、本発明は、その同系統のSSBのC末端に結合した大腸菌Exolの高解像度構造の解明を提供する。大腸菌ExolのapoとSSBのペプチドに結合された形式の結晶構造が、結晶構造内のSSBのC末端ペプチドテールによって先に占められていた結合ポケットのうちの1つの中で結合する候補化合物として、決定された(Lu and Keck,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,in press)。
【0081】
SSB−Ct要素を含むペプチドに結合する大腸菌Exolの結晶構造が決定された。
サーチのモデルとして、2.7−オングストロームの解像度でExol/SSB−Ct蛋白質が結晶回折され、apo Exol構造を使用して分子の置換によって決定された(Breyer and Matthews,2000,Nat.Struct.Biol.7:1125−1128)(表9)。さらにSSB−Ctペプチドの非存在下で結晶化された大腸菌Exolの1.7−オングストロームの解像度での構造が、比較の構造分析として決定された。結晶化はペプチドが結合されたものと同じ結晶化条件で行われた。
最初のapo−Exol構造のために記載されたように、両方の結晶形はエキソヌクレアーゼ(残基1−201)、SH3−ライク(残基202−352)、およびヘリカル(残基360−476)領域で形成される(図25Aおよび25B)。
【0082】
SSB−Ct−結合されたExol結晶からの異なる電子密度地図の検査は、図25C、25Dおよび図28の中で示されるように、Exol表面に関連した、2つのSSB−CtペプチドからのC末端に対応する特徴を明らかにした。両方のペプチドは、活性部位から20オングストロームより離れた部位で結合する。第一のペプチド(「ペプチドA」)は、エキソヌクレアーゼとExolのSH3−ライク領域の間に結合する(図25Cおよび25E)。電子密度は、ペプチドA(174−177)のC末端モースト(C−terminal−most)のSSB残基では明白であるが、残基169−173(動的かディスオーダーなN末端と一致している)には見当たらない。ペプチド−A結合部位は、Exolからの進化的に保存された残基で構成されたディープポケットにC末端モーストのSSB−Ct残基(Phe177)をアンカーさせる。この相互作用では、疎水性のPhe側鎖は、ExolからのLeu147、Leu204およびTyr207側鎖に対してパックされる。そのα−カルボキシル酸素は、Arg148側鎖と明白なイオン結合を形成する。ペプチドAのより多くのN末端領域がAsp174を例外として、ExolからのAla310、Gln311およびThr314に対してパックする。Asp174は、結晶格子(図29)内の隣接したExol分子中のExol残基Gln448およびGln452と接触する。サイトAに結合するSSB−Ctは、ペプチドA(図25E)のパスの方へ向く、Exol Arg316側鎖の再配列と一致する。このArg316回転異性体位置は、Glu150、Glu318およびAsp319によって形成された酸性ポケットに非活性部位Mg2+イオンが結合することを可能にする。これらの要素に加えて、Arg338およびLys227 Exol側鎖によって形成された「ベーシックリッジ(basic ridge)」は、ペプチドA(図25D)のN末端の近くに顕著な電気陽性のパッチ(electropositive patch)を示す。
SSB−Ctの上の追加の未決着のAsp残基の存在を与えられて、このリッジは、構造中で説明されないSSB−Ct結合において役割を有する。この可能性もテストされた。
【0083】
第二のペプチド「ペプチドB」用電子密度はSSB残基175−177を含んでいる。それは完全にExolのSH3−ライク領域(図25F)により結合されている。ペプチド−Aサイトとともに、ペプチド−Bサイトは主としてSSB−CtからのPhe177に結合し、その側鎖を疎水性ポケット(残基Trp245、Leu264およびCys330で構成される)内にアンカーし、そのα−カルボキシルの酸素は、ExolのArg327と明白なイオン結合を形成する。Exol残基Leu331、Leu334およびPro338は、ペプチドBのより多くのN末端領域と接触する。Exol/SSB錯体が化学量論的であることを先の溶液研究(Genschelら、2000,Biol.Chem.381:183−192)が示したので、単一のExolモノマーの表面へ2つのペプチドが結合するのを見つけることは予期されなかった。さらに、ペプチドAが、結晶格子中の対称的に関連するExol分子間に位置するので、結晶パッキングが錯体の構造に影響を及ぼす大きな可能性があった。したがって、SSB結合および酵素の刺激のために各サイトでのExol残基の役割を評価した実験を設計するために、この構造は出発点として使用された。
Exol/SSB錯体の重要な特徴を画定する溶液SSB−Ct結合の研究
【0084】
溶液中でのExol/SSB−Ct錯体形成を検討するために、フルオレセインでラベルされたSSB−Ctペプチド(F−SSB−Ct)に結合するExolを測定する平衡蛍光異方性アッセイが開発された。このアッセイでは、Exolは、F−SSB−Ctに136+/−11nMの見掛平衡解離定数(Kd、app)で結合されている(図26A)。この結合は、それぞれ2および6μMのKd,app値で会合するPriAとRecQによるSSB−Ctペプチド結合について観測されたものよりも高い親和性を有する。この相互作用が特異か否かをテストするために、2つのコントロール・ペプチドに結合するExolが検査された。第一に、「F−P176S」は、F−SSB−Ctシーケンスの最後から二番目のPro残基をSerに変更する。これはよく研究されている細胞のDNA複製機構を備えたその相互作用の欠陥により害された細胞増殖を引き起こすssb113突然変異を模倣した。第二のコントロール・ペプチド「F−mixed」は、ランダムにF−SSB−Ctの中の残基のアレンジメントを混合する。両方のコントロール・ペプチドに結合するExolは、F−SSB−Ctペプチドに比べて最小だった(図26A)。相似性の特異性は、PriAとRecQによって結合されたSSB−Ctペプチドについて観察された。これらの結果は、Exolが溶液中でF−SSB−Ctペプチドと特に相互に作用することを示す。これは、競争実験におけるSSBから導かれたペプチドへのExolの結合を調べた従来の研究と一致している(Lecointeら、2007年、EMBO J.26:4239−4251)。
【0085】
Exol変種のパネルは、SSB−Ct結合への2つのサイトの寄与を評価するために、アラニンにペプチド−A(Arg148、Tyr207、Gln311およびArg316)またはペプチド−B(Arg327とLeu331)結合部位を形成する表面に露出した残基が、個々に変化されて作成された。追加のAla変形は、Exol(Lys227とArg338)上の顕著な「ベーシックリッジ」と、SSB−Ctペプチド(Glu150、Glu318およびAsp319)の存在下でMg2+と結合しているExol残基がF−SSB−Ct結合において役割を有しているか否かを調べるために試験が行われた。最後に、結晶構造中のペプチドAとの蛋白質間接触を介するヘリカル領域(Gln448とGln452)からのAla 変形残基も作成された。Exol変形はそれぞれ精製され、F−SSB−Ctペプチドへの結合についてテストされた。変種の遠UVの円二色性分析は、野生型Exolと区別可能であり、突然変異が変種の二次構造を著しく変更しなかったことを示した。
【0086】
ペプチドA部位変種のうちの3つはF−SSB−Ct結合の劇的な低減を示した(図26Bおよび表10)。Arg148、Tyr207およびArg316Ala変種は、野生型のExolより約10から100倍弱くペプチドと結合する。Arg148が最も弱い結合を示す。試験された最も高い酵素濃度(10μM)においてペプチド結合が飽和されなかったので、Kd,app値は、これらの変種に対して導かれなかった。Gln311変種は、野生型のExolに対して約2倍弱く、より穏やかであった。ペプチドA部位変異体とは対照的に、ペプチド−B部位変異体のいずれも測定可能なF−SSB−Ct結合の不足を示さなかった(図26C)。これは、ペプチド−A結合部位中の相似性の突然変異によって示された強い欠陥と、Phe177とペプチドBの直接の接触を与えられることは驚くべき事である。
【0087】
さらなる変異体が溶液中のF−SSB−Ctペプチド結合におけるベーシックリッジ、Mg2+結合とヘリカル領域表面の役割をテストするために使用された(図26D)。ベーシックリッジ変異体は、ペプチド結合の劇的な不足を示していた。Exol Lys227およびArg338変異体はそれぞれ7倍および3倍弱い結合を有していた。これらの結果は、SSB−Ct結合中のExolのベーシックリッジの重要な役割を示す。Mg2+を結合する変異体のうちの2つは、野生型のExol(Glu150とGlu318)に比べて約2倍強い結合を有し、一方Asp319変異体は2倍弱い結合を示した。理論によって拘束されるものではないが、これらの緩やかな効果は、結晶構造の中で観察されるMg2+結合が、SSB/Exol錯体フォーメーション中のMg2+の主な役割の反映ではなく、結晶化状態での金属の高濃度の結果であることを示唆する。Gln448とGln452の変異体によるF−SSB−Ct結合は野生型のExolのそれと判別不能だった。これは結晶構造中のSSB−Ctペプチドとの会合は結晶のパッキングを介するペプチドへのそれらの接近により、それらが溶液中ではSSB−Ct結合に役割を果たさないことを示唆する(図29)。
Exol/SSB錯体フォーメーションはExol活性のSSB刺激に不可欠である。
【0088】
初期の研究は、大腸菌SSBがExolヌクレアーゼ活性を刺激し、2つの蛋白質が物理的に相互に作用することを示した。しかしながら、Exol/SSB錯体形成がこの刺激に必要かどうかはテストされていない。これを検査するために、SSBが追加され、4倍刺激できる反応において、放射性同位体でラベルされたssDNA基質の加水分解がExolによって触媒されるヌクレアーゼ・アッセイが開発された(図27A)。SSB刺激は200nM SSBで安定水準に達する。それはSSBをssDNAで飽和するのに必要な濃度である。
【0089】
SSBとの会合がExol刺激に必要かどうか評価するために、2つのSSB変異体がアッセイにおいて代替えされた。第一はSSB113であり、これはExol結合能を劇的に低減するが、野生型ssDNA結合には寄与するよく特性づけられた大腸菌SSBである、第二はSS−mixedであり、F−mixed使用されたシーケンスと一致する混合C末端シーケンスを備えた変異体である。野生型SSBと比較し、SSB113は非常に低い刺激(2フォールド未満)を与え、一方SS−mixedはExol活性を全く刺激しなかった(図27A)。これらの結果は、Exol/SSB相互作用がSSB刺激には重要であるというアイデアを支援する。SSB−Ct要素だけに結合することがExol活性を刺激するのに十分であるかどうかをテストするために、SSB−CtペプチドはExolアッセイへ滴定された。ペプチドは、酵素を結合するためのKd,appより十分に高い濃度においてさえも、Exolヌクレアーゼ活性に明白な効果がなかった(図27A)。さらに、これらのデータはSSB−Ct/Exol錯体フォーメーションが必要であるが、Exol活性のSSB刺激のために十分ではないことと一致している。
【0090】
SSBに刺激されたExolヌクレアーゼ活性に対するAla置換の影響もテストされた。SSBがその基質への酵素の補充によりExolを刺激すれば、SSB−Ctペプチドの結合を弱くするExol変異体はSSB刺激活性も同様に弱くする。ペプチド−A−およびペプチド−B部位変異体はこの予測と著しくよく一致した。ペプチドA部位変異体(Arg148とTyr207)のうちの2つはSSBの追加により影響されず、テストされたすべてのSSB濃度で野生型のレベルのヌクレアーゼ活性を維持する(図27B);これらの変異体は、さらにExol突然変異蛋白質のパネルの中で、最も弱いF−SSB−Ct結合を有していた(図26B)。第三のペプチドA部位変異体、Arg316は、野生型のExolに比較してSSB依存の活性を劇的に低減(SSBの2フォールド未満の増大)した。前の変異体より高い親和性で結合するように見えたが、Arg148とTyr207の変異体でのようにArg316変異体はさらにF−SSB−Ct結合能を害した(図26B)。最後に、Gln311変異体は、野生型のExolに対して温和に低減されたSSB刺激だけを有していた。それは、F−SSB−Ctペプチドへの親和性のその緩やかな減少と同様である。これらの発見から予言されるように、ペプチド−Bサイトおよびヘリカル領域変異体(それらは溶液中ではF−SSB−C結合を変更しなかった)は、さらに野生型のSSB依存のヌクレアーゼ活性を有していた(図27Cおよび図29)。
【0091】
ベーシックリッジおよびMg2+−結合Exol変異体も、SSB依存のヌクレアーゼ活性に関してテストされた。ベーシックリッジ変異体(Lys227とArg338)(それらはF−SSB−Ct結合が弱い)は、同様にSSBによって刺激を低減された(図27D)。これらの結果は、SSBとの統合された活性のためのベーシックリッジの重要性を確認した。2つのMg2+−結合する変異体(Glu318とAsp319)は野生型のレベルのSSB刺激ヌクレアーゼ活性を有していた。しかし、3番目(Glu150)は、内因性(SSB−独立性)およびSSB依存性の活性の両方のレベルを穏やかに上げた。Glu150の最大のSSB刺激活性は、野生型のExolのそれを超えたが、SSBによる刺激は野生型の酵素によるものと同じだった。したがって、Glu150とGlu318の変異体の約2倍のより高いF−SSB−Ct結合能は、ヌクレアーゼ活性の向上されたSSB刺激に帰着しなかった。
【0092】
大腸菌SSBからのC末端ペプチドへの大腸菌エキソヌクレアーゼI結合の結晶構造の原子座標は、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクに蓄積された。SSBに結合し、結合した時にそのモデルが、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクに蓄積されたモデルの中で指定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有する原核生物のエキソヌクレアーゼは、本発明の実施のために使用できる。同様に、原核生物のエキソヌクレアーゼに結合し、結合した時にそのモデルが、アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクに蓄積されたモデルの中で指定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有しているSSBは、本発明の実施のために使用できる。
【0093】
図25は、大腸菌Exol/SSB−Ct錯体の構造を例証する。
図25(A):大腸菌Exol、およびSSBの構造の概要図(Exol:エキソヌクレアーゼ領域;SH3−ライク領域およびヘリカル領域;SSB:約60のディスオーダードC末端残基が続くオリゴヌクレオチド結合(OB)領域。棒グラフは、パーセントでの同一性として、284のバクテリアのSSB蛋白質中のSSB C末端(SSB−Ct)シーケンスの進化的保存を示す。
図25(B):2つのSSB−CtペプチドへのExol結合のリボンダイヤグラム。点線は、電子密度が観察されなかったセグメントを表わす。
図25(C):Exolへ結合した2つのSSB−Ctペプチド(AとB)のための結合部位を描く表面の表現。選択されたExol残基がラベルされる。
図25(D):電気的陽性および電気的陰性でモデル化する(C)での表面の表現。
図25(EおよびF):
ペプチド−Aおよびペプチド−B部位の詳細な図。
apo ExolからのArg316側鎖が重ねられる。
【0094】
図26は、SSB−Ct結合中のベーシックリッジおよびペプチド−A結合部位の役割を強調した平衡結合を例証する。
図26(A−D):蛍光異方性によってモニタされた、Exol(またはAla変異体)とF−SSB−Ct(またはペプチド変異体)と会合した平衡等温線。データポイントはすべて3つの実験の平均である。エラーバーは平均値からの標準偏差である。
図26(A):F−SSB−Ct、F−P176SおよびF−mixExol結合等温線。
図26(B):ペプチドA部位Exol変異体(R148A、Y207A、Q311AおよびR316A)によって結合されたF−SSB−Ct。
図26(C):ペプチド−B部位Exol変異体(L331A、R327A)によって結合されたF−SSB−Ct。
図26(D):ベーシックリッジ(K227A、R338A)およびMg2+結合部位(E150A、E318A、D319A)Exol変異体によって結合されたF−SSB−Ct。
(E) Exol変異体F−SSB−Ct結合の要約
野生型のExolに対してF−SSB−Ctで観察された結合能の倍率変化は次のとおりだった:1フォールド未満の結合変化(より高い親和性)、1−2フォールド、〉2−5フォールド、および〉5フォールド。
【0095】
図27は、物理的な相互作用がどんなにExol/SSBがExol活性のSSB刺激にとって不可欠であるかを例証する。
図27(AD):Exol比活性は、SSB(またはSSB変異体)の関数としてプロットされている。データポイントは3つの実験の平均値である。エラーバーは平均値からの標準偏差である。トレンド線は明確性のために示される。
図27(A):ssDNAの上のExol活性はSSBの追加により4倍刺激されたが、SSB−Ctペプチドだけではなかった。SSB−Ctペプチド変異体はExol活性に対してより穏やかに刺激する(SSB113)か、または影響しない(SSB−mixed)。
図27(B):ペプチドA部位Exol変異体ヌクレアーゼ(R148A、Y207A、Q311AおよびR316A)活性のSSB依存。
図27(C):ペプチド−BサイトExol異なるヌクレアーゼ(L331A、R327A)活性のSSB依存。
図27(D):ベーシックリッジ(K227A、R338A)およびMg2+結合部位(E150A、E318A、D319A)Exol変異体ヌクレアーゼ活性のSSB依存。
図27(E):
Exol変異体ヌクレアーゼ活性のSSB依存性の要約。
【0096】
図28はSSB−CtペプチドAおよびBについてのFo−Fc omit ステレオ電子密度図(2.8σで輪郭をとった)である。
【0097】
図29は、SSB−CtペプチドAと会合したExolヘリカル領域からの2つのグルタミン残基の結晶学的な会合を例証する。
図29(A):SSB−CtペプチドAは、Exolヘリカル領域(Gln448とGln452)からの2つのGln残基を介して結晶格子の中における、対称的に関連するExol分子(リボンの形で示される)と会合する。
図29(B):結晶格子中のGlnを介した相互作用のクローズアップ・ステレオ図形。
図29(C):Gln448とGln452 Ala変異体(Q448A、Q452A)は明白なF−SSB−Ct結合欠陥を有していない。
図29(D):Gln448とGln452 Ala変異体(Q448A、Q452A)は野生型のSSB依存のヌクレアーゼ活性を有している。
【0098】
図30は、大腸菌RecQ ウイングドヘリックス領域(B)の表面上の部位と、Exol SSB−Ct結合部位(A)の類似性を例証する。RecQウイングドヘリックス領域はSSB−Ct要素に結合されている。しかし、結合部位は記載されていない。Exol/SSB−Ct結合に含まれるものと同様の静電気特徴を備えたRecQ領域上の部位は、(B)に強調される。
【0099】
表6は、本発明によるスクリーンの中で同定された化合物9と結合された大腸菌Exolの結晶構造の座標を示す。原核生物のエキソヌクレアーゼと結合されて、そのモデルが表6の中で特定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有している化合物は、本発明の実施のために使用できる。
【表6】
【0100】
表7は、本発明によるスクリーンの中で同定された化合物10と結合された大腸菌Exolの結晶構造の座標を示す。原核生物のエキソヌクレアーゼと結合されて、そのモデルが表7の中で特定された原子座標を本質的に表わす結晶構造を有している化合物は、本発明の実施のために使用できる。
【表7】
【0101】
表8は、いくつかの既知の同定された蛋白質とバクテリアのSSBとの相互作用を例証する。
【表8】
【0102】
表9は結晶学的なデータコレクションおよび精密な構造統計値を例証する。
【表9】
* RSym=ΣΣ|Ij―〈l〉|/ΣIj、ここでIjは反射jの測定強度である。また、<l>は多重記録反射の平均値である。
**Rwork、free=Σ||FObs|―|Fcalc||/|FObs|、ここでworとfreeのRは、それぞれworkingとfreeの反射セットを使用して計算された。
フリーのR反射(合計の5%)は、精製の全体にわたって別にされて保持された。
***注:apo−Exol構造については、いくつかの側鎖および1つのループ・シーケンスが複数の回転異性体/コンホメーションでモデル化された:原子が複数のコンホメーションでモデル化された時に、モデル化された位置はそれぞれ、蛋白質原子の数の中で数えられる。つまり、与えられた原子が2つの位置でモデル化される場合、それは、SI表9のうちの1ではなく2つの蛋白質原子として数えられる)
【0103】
表10はExolおよび変異体によるF−SSB−Ct結合に対するKd,app値を示す。
【表10】
トポイソメラーゼIIIペプチド結合
【0104】
トポイソメラーゼIII結合アッセイが行われ、候補化合物が、既知のSSB結合パートナーである他の蛋白質への大腸菌SSBのC末端テールの結合を阻害することができるかどうか決定された(図24)。そのような結合パートナーの1つは、トポイソメラーゼIII(Topolll)であり、SSBのC末端テールと相互作用する多くの蛋白質のうちの1つである(Shereda,Bernstein,and Keck,未刊行の観察)。Exolの結合アッセイについて上記されたように、Topolllは10nM蛍光性のペプチドへ滴定された。この結合アッセイのためのバッファ条件は次のとおりだった:300mM NaCl、20mM Tris pH 8.0、10%グリセロール、1mM BME(ベータメルカプトエタノール)および1%DMSO。使用されるTopolllの濃度は図24のグラフに与えられる。結合したときの異方性の変化はPanVera Beacon 2000 FPを使用して読まれた。
【0105】
データは、ペプチド結合がTopolll/ペプチドの場合にははるかに弱いことを示し、正確に結合定数(Kd)を決定することを困難にしている。化合物が、ペプチドがTopolllに結合するために効果があるかどうかを決定するために、上記の実験と同様のセットが、緩衝液からのDMSOを除いた以外は同じにセットアップされた。その後、ラベルされていないペプチドまたは様々な化合物のいずれかが100μMの最終濃度まで加えられた。これらの化合物およびラベルされていないペプチドはDMSOに溶かされた。また、それらの追加は、DMSOの最終濃度を1%にした。
【0106】
候補化合物のうちのいくつかは、観察された異方性値を低下させて、Topolllへのペプチドの結合を阻害することができた。図24の中で示されるように、100μMのラベルのないペプチドの追加さえ、ベースライン(蛍光ラベルが付けられたペプチドの結合が無い場合に期待される値)まで異方性値を低下させなかった。これは結合を観察するために使用される必要のあるTopolllが非常に高濃度であるためである。したがって、10のような化合物のうちのいくつかは、Exolへの蛍光性のペプチドの結合を阻害するだけではなく、他の既知の結合パートナー、たとえばTopolllへの結合も阻害する。したがって、少なくとも同定された阻害剤のうちのいくつかは、それが結合パートナーの1つ以上に、Exolだけでなく、SSBのC末端テールの結合を実際に阻害することができる。
哺乳動物細胞毒性
【0107】
同定された抗菌候補化合物の毒性は人間の結腸直腸腺癌細胞を生体外で使用してテストされた。試験された化合物は、HT−29(人間の結腸直腸腺癌)に対して、グラム陽性細菌細胞または大腸菌感染された細胞壁に対するよりも著しく毒性が低かった。哺乳動物細胞はCellTiter−GIo細胞生存率アッセイ(Promega、Madison、Wl)を使用してテストされた。
【0108】
このアッセイで得られたデータによれば、化合物3はIC50〉100μM、化合物8はIC50〉100μM、化合物9はIC50=38μM、化合物10はIC50=60μM、化合物28、29、32および37はすべてIC50〉100μM、化合物42はIC50=51μM、化合物46はIC50=55μMを有していた。これらのデータを、細菌増殖カーブからのIC50と比較して、化合物は哺乳動物細胞よりバクテリアを殺すことにはるかにより有効であるという結論が得られた。
溶血反応
【0109】
生体外の溶血反応実験は、細胞溶解を引き起こすことにより同定された薬候補が細菌増殖を阻害したかどうかを決定するために実行された。同定された小さな分子が赤血球でインキュベートされ、細胞の何パーセンテージが1時間の後に溶解するか確かめられた。これらの実験からの結果は表11中に示される。化合物がヘムと同じ波長を吸収する場合、または化合物が沈殿する場合には、評価された溶血反応データは吸収の読みについて問題がある。そのような実例では、吸光度の読みを定量化することは難しい;しかしながら、その後、何個の細胞が溶解したかの視覚的な決定を行なうことができる。それは溶菌の評価を提供する。
【表11】
【0110】
本発明は、記載された特定の装置、方法論、治験実施計画、対象または薬物に制限されるものではなく、変化することができる。さらに、ここに使用される用語は、具体的な実施態様を記載されるためだけにあり、本発明の範囲を制限するようには意図されない。それは特許請求の範囲によってのみ制限されている。生化学と薬化学の当業者にとって明白な他の好適な修正、および様々な条件およびパラメータの適応は、この発明の範囲内である。出版物、特許、およびここに引用された特許出願はすべてその全体が参照され、すべての目的のために本明細書に組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む抗菌活性候補化合物のスクリーニング方法:
a)原核生物のSSBを含む第一のポリペプチド、原核生物のSSBに結合する第二のポリペプチドおよび候補化合物を反応させること;および
候補化合物の存在しない場合と比較して、候補化合物が第二のポリペプチドへの第一のポリペプチドの結合を阻害するかどうかを決定し、候補化合物の存在しない場合と比較して結合が阻害された場合に、候補化合物を抗菌化合物であると同定する。
【請求項2】
第一のポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのカルボキシテールに少なくとも90%同一のカルボキシテールを含む原核生物のSSBを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一のポリペプチドは、1から4個の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのカルボキシテールを含む原核生物のSSBを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
原核生物のSSB−結合蛋白質を含む第二のポリペプチドは、1から2個の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)を含むカルボキシテールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
原核生物のSSBを含むポリペプチドは、Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)のアミノ酸配列を含むカルボキシテールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
原核生物のSSBに結合するポリペプチドは、原核生物のエキソヌクレアーゼ、原核生物のDNAポリメラーゼサブユニット、原核生物のプライマーゼ、原核生物のヘリカーゼ、原核生物のトポイソメラーゼまたは原核生物のDNA修復酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
原核生物のSSBに結合するポリペプチドは原核生物のエキソヌクレアーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
原核生物のSSBに結合するポリペプチドは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列に少なくとも90%同一である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
同定工程は蛍光偏光を測定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
原核生物のSSBのC末端テールへのSSB−結合蛋白質の結合を阻害する方法であって、請求項1記載の方法で同定された抗菌化合物と、SSB−結合蛋白質、および原核生物のSSBのC末端テールとを接触させ、該抗菌化合物はSSB−結合蛋白質への原核生物のSSBの結合を阻害する方法。
【請求項11】
SSB−結合蛋白質が原核生物のエキソヌクレアーゼIである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法で同定された抗菌化合物と微生物を接触させることを含み、それにより微生物の成長を阻害する、微生物の成長阻害方法。
【請求項13】
微生物はバクテリアである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子座標を本質的に表わす、原核生物のSSBのC末端テールに結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデル。
【請求項15】
a)アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物を同定すること;
b)候補化合物を、原核生物のSSBを含む第一のポリペプチド、および原核生物のSSBに結合する第二のポリペプチドと接触させること;および
c)第二のポリペプチドへの第一のポリペプチドの結合を分析すること;を含み、
ここで、候補化合物の非存在下における第二のポリペプチドへの第一のポリペプチドの結合が減少した場合に、候補化合物を抗菌化合物として同定することを含む方法。
【請求項16】
接触は溶液中で行なわれる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
同定された抗菌化合物を対象に投与して、化合物が対象中の微生物の成長を低減するかどうかを決定する工程(d)をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
表6中で指定された原子の座標を本質的に表わす、化合物9に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデル。
【請求項20】
a)表6中で指定された化合物9の原子座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物を同定すること;
b)候補化合物と、原核生物のSSBを含むポリペプチド、および原核生物のSSBに結合するポリペプチドとを接触させること;および
c)原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの、原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合を分析すること;を含み、
ここで、候補化合物の非存在下における、原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合が減少した場合に、候補化合物を抗菌化合物であると同定することを含む方法。
【請求項21】
接触は溶液中で行なわれる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
同定された抗菌の化合物を対象に投与して、化合物が対象中の微生物の成長を低減するかどうかを決定する工程(d)をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
表7中で指定された原子の座標を本質的に表わす、化合物10に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデル。
【請求項25】
a)表7中で指定された化合物10の原子座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物を同定すること;
b)候補化合物と、原核生物のSSBを含むポリペプチド、および原核生物のSSBに結合するポリペプチドとを接触させること;および
c)原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの、原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合を分析すること;を含み、
ここで、候補化合物の非存在下における、原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合が減少した場合に、候補化合物を抗菌化合物であると同定することを含む方法。
【請求項26】
接触は溶液中で行なわれる、 請求項25記載の方法。
【請求項27】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項25記載の方法。
【請求項28】
同定された抗菌の化合物を対象に投与して、化合物が対象中の微生物の成長を低減するかどうかを決定する工程(d)をさらに含む、 請求項25記載の方法。
【請求項29】
以下を含む、原核生物のSSBのC末端テールへの原核生物のエキソヌクレアーゼIの結合を阻害する方法:
a)アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子の座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物をデザインすること;および
b)候補化合物と、原核生物のエキソヌクレアーゼI、および原核生物のSSBと接触させること;を含み、
ここで、候補化合物は、原核生物のSSBへの原核生物のエキソヌクレアーゼIの結合を阻害する。
【請求項30】
接触は溶液中で行なわれる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項29記載の方法。
【請求項32】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化1】
式中、YはCH2、OおよびNHからなる群から選択される;
R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびCO2Hからなる群から選択される;
R4はH、およびOHからなる群から選択される;および
R5はH、およびアルコキシル基[OCH3]およびNO2からなる群から選択される。
【請求項33】
以下の式を有する化合物と微生物と接触させることを含む、請求項32記載の方法:
【化2】
式中、YはCH2、OおよびNHからなる群から選択される;
R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびCO2Hからなる群から選択される;
R4はH、およびOHからなる群から選択される;および
R5はH、およびアルコキシル基およびNO2からなる群から選択される。
【請求項34】
YがNHを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はOCH3を表わす、請求項32記載の方法。
【請求項35】
YがNHを表わし、R1はHを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はHを表わす、請求項32記載の方法。
【請求項36】
YがOを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はHを表わし、R4はOHを表わし、R5はNO2を表わす、請求項32記載の方法。
【請求項37】
以下の式を有する化合物と微生物と接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化3】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびアルキル基からなる群から選択される;
R4はH、O、およびOHからなる群から選択される;
ここでR4がOの時には、R3は水素であり、R3とR4の間の一対の炭素の間には単結合が存在し、R4がHまたはOHの時には、R3とR4の間の一対の炭素の間には二重結合が存在する。
【請求項38】
以下の式を有する化合物と微生物と接触させることを含む、請求項37記載の方法:
【化4】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびアルキル基からなる群から選択される;
R4はH、O、およびOHからなる群から選択される;
ここでR4がOの時には、R3は水素であり、R3とR4の間の一対の炭素の間には単結合が存在し、R4がHまたはOHの時には、R3とR4の間の一対の炭素の間には二重結合が存在する。
【請求項39】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項40】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表し、R4はOHを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項41】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項42】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOHを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項43】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項44】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化5】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される。
【請求項45】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、請求項44記載の方法:
【化6】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される。
【請求項46】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表わす、請求項44記載の方法。
【請求項47】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化7】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はフェニルおよびベンジルからなる群から選択される。
【請求項48】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、請求項47記載の方法:
【化8】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はフェニルおよびベンジルからなる群から選択される。
【請求項49】
R1がBrを表わし、R2はHを表わし、R3はフェニル基を表わす、請求項47記載の方法。
【請求項50】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はフェニル基を表わす、請求項47記載の方法。
【請求項51】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品の組成物:
【化9】
式中、YはCH2、OおよびNHからなる群から選択される;
R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびCO2Hからなる群から選択される;
R4はH、およびOHからなる群から選択される;および
R5はH、およびアルコキシル基[OCH3]およびNO2からなる群から選択される。
【請求項52】
YがNHを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はOCH3を表わす、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
YがNHを表わし、R1はHを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はHを表わす、請求項51記載の組成物。
【請求項54】
YがOを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はHを表わし、R4はOHを表わし、R5はNO2を表わす、請求項51記載の組成物。
【請求項55】
請求項51記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法。
【請求項56】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品の組成物:
【化10】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびアルキル基からなる群から選択される;
R4はH、O、およびOHからなる群から選択される;
ここでR4がOの時には、R3は水素であり、R3とR4の間の一対の炭素の間には単結合が存在し、R4がHまたはOHの時には、R3とR4の間の一対の炭素の間には二重結合が存在する。
【請求項57】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表し、R4はOHを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項59】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項60】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOHを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項61】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項62】
請求項56記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法。
【請求項63】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品組成物:
【化11】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される。
【請求項64】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表わす、請求項63記載の組成物。
【請求項65】
請求項63記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する組成物。
【請求項66】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品組成物:
【化12】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はフェニル基およびベンジル基からなる群から選択される。
【請求項67】
R1がBrを表わし、R2はHを表わし、R3はフェニル基を表わす、請求項66記載の組成物。
【請求項68】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表わし、R3はフェニル基を表わす、請求項66記載の組成物。
【請求項69】
請求項66記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法。
【請求項1】
以下を含む抗菌活性候補化合物のスクリーニング方法:
a)原核生物のSSBを含む第一のポリペプチド、原核生物のSSBに結合する第二のポリペプチドおよび候補化合物を反応させること;および
候補化合物の存在しない場合と比較して、候補化合物が第二のポリペプチドへの第一のポリペプチドの結合を阻害するかどうかを決定し、候補化合物の存在しない場合と比較して結合が阻害された場合に、候補化合物を抗菌化合物であると同定する。
【請求項2】
第一のポリペプチドは、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのカルボキシテールに少なくとも90%同一のカルボキシテールを含む原核生物のSSBを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第一のポリペプチドは、1から4個の保存的アミノ酸置換を有するSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドのカルボキシテールを含む原核生物のSSBを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
原核生物のSSB−結合蛋白質を含む第二のポリペプチドは、1から2個の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)を含むカルボキシテールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
原核生物のSSBを含むポリペプチドは、Asp−lle−Pro−Phe(SEQ ID NO:5)のアミノ酸配列を含むカルボキシテールを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
原核生物のSSBに結合するポリペプチドは、原核生物のエキソヌクレアーゼ、原核生物のDNAポリメラーゼサブユニット、原核生物のプライマーゼ、原核生物のヘリカーゼ、原核生物のトポイソメラーゼまたは原核生物のDNA修復酵素である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
原核生物のSSBに結合するポリペプチドは原核生物のエキソヌクレアーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
原核生物のSSBに結合するポリペプチドは、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列に少なくとも90%同一である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
同定工程は蛍光偏光を測定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
原核生物のSSBのC末端テールへのSSB−結合蛋白質の結合を阻害する方法であって、請求項1記載の方法で同定された抗菌化合物と、SSB−結合蛋白質、および原核生物のSSBのC末端テールとを接触させ、該抗菌化合物はSSB−結合蛋白質への原核生物のSSBの結合を阻害する方法。
【請求項11】
SSB−結合蛋白質が原核生物のエキソヌクレアーゼIである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法で同定された抗菌化合物と微生物を接触させることを含み、それにより微生物の成長を阻害する、微生物の成長阻害方法。
【請求項13】
微生物はバクテリアである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子座標を本質的に表わす、原核生物のSSBのC末端テールに結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデル。
【請求項15】
a)アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物を同定すること;
b)候補化合物を、原核生物のSSBを含む第一のポリペプチド、および原核生物のSSBに結合する第二のポリペプチドと接触させること;および
c)第二のポリペプチドへの第一のポリペプチドの結合を分析すること;を含み、
ここで、候補化合物の非存在下における第二のポリペプチドへの第一のポリペプチドの結合が減少した場合に、候補化合物を抗菌化合物として同定することを含む方法。
【請求項16】
接触は溶液中で行なわれる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
同定された抗菌化合物を対象に投与して、化合物が対象中の微生物の成長を低減するかどうかを決定する工程(d)をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
表6中で指定された原子の座標を本質的に表わす、化合物9に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデル。
【請求項20】
a)表6中で指定された化合物9の原子座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物を同定すること;
b)候補化合物と、原核生物のSSBを含むポリペプチド、および原核生物のSSBに結合するポリペプチドとを接触させること;および
c)原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの、原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合を分析すること;を含み、
ここで、候補化合物の非存在下における、原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合が減少した場合に、候補化合物を抗菌化合物であると同定することを含む方法。
【請求項21】
接触は溶液中で行なわれる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
同定された抗菌の化合物を対象に投与して、化合物が対象中の微生物の成長を低減するかどうかを決定する工程(d)をさらに含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
表7中で指定された原子の座標を本質的に表わす、化合物10に結合した原核生物のエキソヌクレアーゼIの結晶構造の3次元モデル。
【請求項25】
a)表7中で指定された化合物10の原子座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物を同定すること;
b)候補化合物と、原核生物のSSBを含むポリペプチド、および原核生物のSSBに結合するポリペプチドとを接触させること;および
c)原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの、原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合を分析すること;を含み、
ここで、候補化合物の非存在下における、原核生物のSSBに結合するポリペプチドへの原核生物のSSBを含むポリペプチドの結合が減少した場合に、候補化合物を抗菌化合物であると同定することを含む方法。
【請求項26】
接触は溶液中で行なわれる、 請求項25記載の方法。
【請求項27】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項25記載の方法。
【請求項28】
同定された抗菌の化合物を対象に投与して、化合物が対象中の微生物の成長を低減するかどうかを決定する工程(d)をさらに含む、 請求項25記載の方法。
【請求項29】
以下を含む、原核生物のSSBのC末端テールへの原核生物のエキソヌクレアーゼIの結合を阻害する方法:
a)アクセションコード3C94の下で蛋白質データバンクで指定された原子の座標に本質的に類似する原子座標を有する候補化合物をデザインすること;および
b)候補化合物と、原核生物のエキソヌクレアーゼI、および原核生物のSSBと接触させること;を含み、
ここで、候補化合物は、原核生物のSSBへの原核生物のエキソヌクレアーゼIの結合を阻害する。
【請求項30】
接触は溶液中で行なわれる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
接触はインシリコでシミュレートされる、請求項29記載の方法。
【請求項32】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化1】
式中、YはCH2、OおよびNHからなる群から選択される;
R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびCO2Hからなる群から選択される;
R4はH、およびOHからなる群から選択される;および
R5はH、およびアルコキシル基[OCH3]およびNO2からなる群から選択される。
【請求項33】
以下の式を有する化合物と微生物と接触させることを含む、請求項32記載の方法:
【化2】
式中、YはCH2、OおよびNHからなる群から選択される;
R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびCO2Hからなる群から選択される;
R4はH、およびOHからなる群から選択される;および
R5はH、およびアルコキシル基およびNO2からなる群から選択される。
【請求項34】
YがNHを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はOCH3を表わす、請求項32記載の方法。
【請求項35】
YがNHを表わし、R1はHを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はHを表わす、請求項32記載の方法。
【請求項36】
YがOを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はHを表わし、R4はOHを表わし、R5はNO2を表わす、請求項32記載の方法。
【請求項37】
以下の式を有する化合物と微生物と接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化3】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびアルキル基からなる群から選択される;
R4はH、O、およびOHからなる群から選択される;
ここでR4がOの時には、R3は水素であり、R3とR4の間の一対の炭素の間には単結合が存在し、R4がHまたはOHの時には、R3とR4の間の一対の炭素の間には二重結合が存在する。
【請求項38】
以下の式を有する化合物と微生物と接触させることを含む、請求項37記載の方法:
【化4】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびアルキル基からなる群から選択される;
R4はH、O、およびOHからなる群から選択される;
ここでR4がOの時には、R3は水素であり、R3とR4の間の一対の炭素の間には単結合が存在し、R4がHまたはOHの時には、R3とR4の間の一対の炭素の間には二重結合が存在する。
【請求項39】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項40】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表し、R4はOHを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項41】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項42】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOHを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項43】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項37記載の方法。
【請求項44】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化5】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される。
【請求項45】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、請求項44記載の方法:
【化6】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される。
【請求項46】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表わす、請求項44記載の方法。
【請求項47】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、微生物の成長を阻害する方法:
【化7】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はフェニルおよびベンジルからなる群から選択される。
【請求項48】
以下の式を有する合物と微生物とを接触させることを含む、請求項47記載の方法:
【化8】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はフェニルおよびベンジルからなる群から選択される。
【請求項49】
R1がBrを表わし、R2はHを表わし、R3はフェニル基を表わす、請求項47記載の方法。
【請求項50】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はフェニル基を表わす、請求項47記載の方法。
【請求項51】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品の組成物:
【化9】
式中、YはCH2、OおよびNHからなる群から選択される;
R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびCO2Hからなる群から選択される;
R4はH、およびOHからなる群から選択される;および
R5はH、およびアルコキシル基[OCH3]およびNO2からなる群から選択される。
【請求項52】
YがNHを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はOCH3を表わす、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
YがNHを表わし、R1はHを表わし、R2はCF3を表わし、R3はCO2Hを表わし、R4はHを表わし、R5はHを表わす、請求項51記載の組成物。
【請求項54】
YがOを表わし、R1はClを表わし、R2はCF3を表わし、R3はHを表わし、R4はOHを表わし、R5はNO2を表わす、請求項51記載の組成物。
【請求項55】
請求項51記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法。
【請求項56】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品の組成物:
【化10】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、およびアルキル基からなる群から選択される;
R4はH、O、およびOHからなる群から選択される;
ここでR4がOの時には、R3は水素であり、R3とR4の間の一対の炭素の間には単結合が存在し、R4がHまたはOHの時には、R3とR4の間の一対の炭素の間には二重結合が存在する。
【請求項57】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表し、R4はOHを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項59】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項60】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOHを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項61】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はHを表わし、R4はOを表わす、請求項56記載の組成物。
【請求項62】
請求項56記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法。
【請求項63】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品組成物:
【化11】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される。
【請求項64】
R1がClを表わし、R2はアルキル基を表し、R3はアルキル基を表わす、請求項63記載の組成物。
【請求項65】
請求項63記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する組成物。
【請求項66】
以下の式を有する化合物を活性成分として含む抗菌性医薬品組成物:
【化12】
式中、R1はH、F、Cl、BrおよびIからなる群から選択される;
R2はH、アルキル基、およびCF3からなる群から選択される;
R3はフェニル基およびベンジル基からなる群から選択される。
【請求項67】
R1がBrを表わし、R2はHを表わし、R3はフェニル基を表わす、請求項66記載の組成物。
【請求項68】
R1がHを表わし、R2はアルキル基を表わし、R3はフェニル基を表わす、請求項66記載の組成物。
【請求項69】
請求項66記載の医薬品組成物を治療上有効な量で対象に投与する工程を含む、微生物に感染された対象を処理する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図26E】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図27E】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図26A】
【図26B】
【図26C】
【図26D】
【図26E】
【図27A】
【図27B】
【図27C】
【図27D】
【図27E】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図29C】
【図29D】
【図30】
【公表番号】特表2010−528293(P2010−528293A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509520(P2010−509520)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/064355
【国際公開番号】WO2009/023343
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509067485)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファウンデーション (2)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/064355
【国際公開番号】WO2009/023343
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(509067485)ウィスコンシン アルムニ リサーチ ファウンデーション (2)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】
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