説明

ゲンゲ科魚類に由来する栄養機能性食品

【課題】ゲンゲ科魚類に由来する常備携帯に適した栄養機能性食品を提供する。
【解決手段】ゲンゲ科魚類の魚体をカットしてミンチ状とし、熱処理した後、フリーズ・ドライおよび粉砕して得られる材料を有効成分として含んでいる固形製剤の形の栄養機能性食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲンゲ科魚類に由来する栄養機能性食品に関し、特に、抗酸化、抗高血圧及び老化防止のためのゲンゲ科魚類に由来する栄養機能性材料を有効成分として含んでいる固形製剤の形の栄養機能性食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在盛んに研究されている栄養機能性材料は、様々な疾患を予防する効果を有するため、膨大な負担となっている医療費の削減が期待でき、また、日常の健康をサポートする可能性を持っている。中でも、従来から食されている海洋性の原材料は研究によって有効な機能性を有していたとの報告も多々あり、現在も更なる栄養機能性材料の探索が望まれている。
【0003】
また、魚類のような海洋性の原材料を利用するにはいくつかの問題がある。例えばコラーゲンのような特定の成分は皮膚や腱のような組織に多く含まれているが、ウシやブタのような大型動物では皮膚を他の組織や器官から分別して取出すのは容易であっても、魚類ではそれが困難である。
【0004】
そのため魚類からそのような組織を分別することなくコラーゲンのような特定の成分を抽出する方法として、特開2004−99569号公報に開示されているような非ウシ起源変性コラーゲンの製造方法が開発されているが、この方法は、骨、筋肉、内臓を含む魚体全体を原料に使用するだけものであって、魚体全体から得られる栄養機能性材料を有効成分として製品化するものではなく、また、人体に対する機能や効果も解明されていなかった。また、その製造工程も未だ複雑なものであった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、原料魚種としてゲンゲ科魚類に着目した。この魚種は富山湾周辺で漁猟の際に外道としてかなりの漁獲量があるものの、一部が地元で食用に供される他は流通市場に出荷されることはなく、殆どが廃棄処分されているものであるが、その機能性の確認及び研究を行ったところ、抗酸化作用、抗高血圧作用、老化防止作用、学習亢進に役立つ優れた栄養機能性成分を含んでいることを見出した。
【0006】
そこで本発明者は、上述のとおりその利用が限定されている「げんげ」を有効利用すること、さらにはゲンゲ科魚類の骨、筋肉、内臓を含む魚体全体を利用した栄養機能性食品の開発を目的として、先に述べたような魚体組織の分別を必要とせず、かつゲンゲ科魚類の各種栄養機能を阻害することがない比較的簡単なゲンゲ科魚類に由来する栄養機能性材料の製造方法およびその製剤方法により、常備形態に適したゲンゲ科魚類由来の栄養機能性材料を有効成分として含んでいる固形製剤の形をした食品を開発することに成功した。
【0007】
本発明の有効成分であるゲンゲ科魚類に由来する栄養機能性材料は、ゲンゲ科魚類の魚体を洗浄し、選別する工程、選別された魚体の全部または一部を適当なサイズにカットしてミンチ状の試料にする工程、ミンチ状の試料を水中で熱処理する工程、熱処理された試料をフリーズ・ドライする工程、フリーズ・ドライされた試料を粉砕する工程によって、栄養機能性を有するゲンゲ科魚類由来のフリーズ・ドライ粉末材料として得られる。
【0008】
フリーズ・ドライとは、熱処理することなく試料を脱水することができ、そのために含有成分の熱変性を防ぐことができる。この結果、本発明により得られる栄養機能性材料は、抗酸化作用、抗高血圧作用、老化防止作用および学習亢進に役立つゲンゲ科魚類由来の栄養機能性成分を高い含有率で含ませることができる。
【0009】
ゲンゲ科の魚類には、代表的な種類としてヨコスジクロゲンゲ、サラサガジ、コグチヘビゲンゲ、カンテンゲンゲ、シロゲンゲおよびアシナガゲンゲの6種類が知られ、そのうちカンテンゲンゲが一般に「げんげ」と呼ばれている魚種である。これらの魚類は水深200m以上の大陸棚斜面に生息し、一部は食用に供されることもあるが大部分は漁獲されても廃棄されている。ゲンゲ科の魚類はすべて本発明に使用することができるが、「げんげ」の通称で知られているカンテンゲンゲが入手し易い。
【0010】
本発明において使用されるゲンゲ科魚類由来の栄養機能性材料は、骨、筋肉、内臓を含む魚体全体を原料に使用することができ、さらには魚体組織の特定部位のみを原料にすることで、特定の機能性を高めた栄養機能性材料を得ることもできる。
【0011】
例えば、洗浄・選別により魚体から表面組織を剥離させて、コラーゲンに富むゲンゲ科魚類の表面組織のみを原材料として上記の製造方法にしたがって製造した場合は、化粧品や健康食品等で多く使用されるコラーゲン主体の栄養機能性組成物材料を得ることができる。
【0012】
また、コエンザイムQ10、γ−トコフェノール、DHA(ドコサヘキサエン酸)、食用脂肪油およびグリセリン脂肪酸エステルなどのを添加することによって、抗酸化作用、抗高血圧作用、老化防止作用および学習亢進機能を相乗的に高めたゲンゲ科魚類由来の栄養機能性材料を得ることもできる。
【0013】
このようにして製造されたゲンゲ科魚類由来の栄養機能性材料は、そのままの形態で一般食品等に簡便に配合することもできるが、本発明ではカプセル化、錠剤化、タブレット化又はカプレット化することにより、常備携帯に適した形状にしたゲンゲ科魚類由来の栄養機能性材料を有効成分として含んでいる固形製剤の形をした食品を提供するものである。
【0014】
なお、錠剤化などによる常備携帯に適した形状とする場合は、慣用の賦形剤、崩壊剤などをさらに添加することもでき、また、カプセル化もソフト・カプセルに限定されるものではなく、ハード・カプセルであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるゲンゲ科魚類由来の栄養機能性食品は、ゲンゲ科魚類由来の栄養機能(成分)を失うことなく有効に含んでおり、その結果、ゲンゲ科魚類由来の栄養機能性成分が持つ抗酸化作用、コラーゲンの含有並びにペプチド機能性、コエンザイイムQ10の持つ抗酸化作用、細胞の活性化並びに老化防止作用、γ−トコフェノールの抗酸化作用並びに体内水分バランスの改善、さらにはDHA(ドコサヘキサエン酸)によるコレステロール及び中性脂肪の低減作用、抗酸化作用によって、総合的に代謝の活性化を促進し、老化防止、美容効果並びに体力亢進が期待できる栄養機能性材料を有効成分として含んでいる常備携帯に適した固形製剤の形の栄養機能性食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施例1
富山湾で捕獲されたカンテンゲンゲ洗浄し選別した後、約2cm大にカットし、カットした塊1kgを回転刃を備えるミキサーへ移し、ミンチ状に破砕された試料を得た。このミンチ状の試料を約100℃に沸騰させた水の中で煮沸した後、フリーズ・ドライすることによって乾燥させて塊状となったゲンゲ科魚類に由来する栄養機能性材料を得た。この塊状の組成物を粉砕して粉末状にした後、賦形剤、崩壊剤などを添加して混合し、公知の方法により打錠して50mgの本発明による栄養機能性材料からなる錠剤を作製した。
【0017】
実施例2
実施例1で得られたのと同じ粉末状の栄養機能性材料に賦形剤、崩壊剤などを添加して混合し、実施例1と同じ方法により打錠して100mgの本発明による栄養機能性材料からなる錠剤を作製した。
【0018】
実施例3
実施例1で得られたのと同じ粉末状の栄養機能性材料に下記の表1に示される成分を添加して混合し、さらに、この混合材料を公知の方法によりカプセルに充填して内容量300mgの本発明による栄養機能性材料を含むソフト・カプセルを作製した。
【0019】
【表1】

【0020】
実施例4
実施例1で得られたのと同じ粉末状の栄養機能性材料に下記の表2に示される成分を添加して混合し、さらに、この混合材料を公知の方法によりカプセルに充填して内容量330mgの本発明による栄養機能性材料を含むハード・カプセルを作製した。
【0021】
【表2】

【0022】
試験例
実施例1〜4の錠剤型ゲンゲフリーズ・ドライ及びゲンゲフリーズ・ドライを配合したソフト・カプセル並びにハード・カプセルを試料として、電子スピン共鳴装置を用いて活性酸素消去活性を測定した。測定機器は、日本電子製JEOL、JES−FR30型:電子スピン共鳴装置(ESR)を用いた。本試験で使用した試料は、実施例1及び2のゲンゲフリーズ・ドライ(ゲンゲFD)からなる錠剤:50mg、100mgを各1個、実施例3のゲンゲフリーズ・ドライを配合したソフト・カプセルが1個のものと2個のもの、実施例4のゲンゲフリーズ・ドライを配合したハード・カプセルが1個のものと2個のもの用いて試験をした。前処理としては、0.1NHCL(ヒトの胃内のpHに相当し、pH1.5)、pH8.0の蒸留水(ヒトの小腸内のpHに相当)、MeOH、および70%EtOHの4種類の溶媒を用いて、試料注の抗酸化活性物質をそれぞれに抽出させた。得られた上澄液をサンプルとして、96穴マイクロウエル中に、0.2mMFeSO溶液:37.5μL、HO:30μL、サンプル:30μL、10倍希釈液DMPO(5,5−Dimethy−1−pyrroline−N−Oxide、同仁化学研究所):20μL、1mMH:75μLを順次加えて混合し、反応液を得た。この反応液を室温で45秒間反応させた後でESR分析を行い、ヒドキシラジカルの消去率を測定した。試験結果を下記の表3に示す。
【0023】
【表3】

【0024】
表3に示す試験結果より、本発明によるゲンゲFDからなる錠剤及びゲンゲFDを含有したカプセルにおいて活性酸素消去活性が認められた。なお、実施例3のソフト・カプセルにおいては活性酸素消去活性が認められなかったが、これはカプセル化工程において使用する油脂が活性酸素消去活性を阻害したものと考えられる。
また、他の試料においては、いずれもMeOHや弱アルカリ水による抽出で高い活性酸素消去活性を示した。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲンゲ科魚類の魚体をカットしてミンチ状とし、熱処理した後、フリーズ・ドライおよび粉砕して得られる材料を有効成分として含んでいる固形製剤の形の栄養機能性食品。
【請求項2】
さらに、コエンザイムQ10、γ−トコフェノールまたはDHA(ドコサヘキサエン酸)から選ばれた少なくとも1種の機能性成分を含んでいる請求項1に記載の栄養機能性食品。
【請求項3】
剤形がソフト・カプセル、ハード・カプセル、錠剤またはカプレットである請求項1又は2に記載の方法。


















【公開番号】特開2007−20425(P2007−20425A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203445(P2005−203445)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000222200)東洋カプセル株式会社 (14)
【出願人】(502218237)富山県漁業協同組合連合会 (2)
【Fターム(参考)】