説明

コアボーリング装置及びボーリング孔の穿設方法

【課題】 長尺のコアチューブを使用可能とすることにより、ボーリング孔の穿設作業の効率を高める。
【解決手段】 架台20と、架台20に回転可能かつ進退可能に設けられるコアチューブ30と、コアチューブ30を回転駆動させる回転駆動装置2と、回転駆動装置2を進退させる進退駆動装置10とを備える。回転駆動装置2は、駆動モータ3と、駆動モータ3の駆動力をコアチューブ30に伝達させる動力伝達機構5と、動力伝達機構5からの動力を入切させるクラッチ機構とから構成される。駆動モータ3の駆動力を動力伝達機構5及びクラッチ機構を介してコアチューブ30の周面に伝達させることにより、コアチューブ30が回転駆動される。進退駆動装置10を作動させて、回転駆動装置2と一体にコアチューブ30を被切削体35の方向に押圧することにより、コアチューブ30が被切削体35に回転圧入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物等の被切削体の切断等に用いられるコアボーリング装置及びボーリング孔の穿設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物等の被切削体の切断作業等に用いられるコアボーリング装置の一例として、架台と、架台に回転可能に設けられるとともに、先端部に切削ビットが設けられるコアチューブと、架台に設けられるとともに、コアチューブを回転駆動させる駆動モータと、コアチューブを進退させる進退駆動装置とを備えたものが知られている。
【0003】
そして、このような構成のコアボーリング装置を用いて被切削体を切断等するには、まず、コアボーリング装置の架台を被切削体に固定し、駆動モータを駆動させてコアチューブを回転駆動させ、進退駆動装置を作動させてコアチューブを被切削体の方向に押圧し、切削ビットによって被切削体を少しずつ切削しながらコアチューブを所定の深さまで到達させる。
【0004】
そして、コアチューブが所定の深さに達した後に、コアチューブを被切削体から引き抜き、それと一緒にあるいはコアチューブ引き抜き後に、周囲から縁切りされたコア部を引き出し、コア部を被切削体から除去することにより、その部分に所定の深さのボーリング孔を穿設する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−50664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような構成のコアボーリング装置を用いて被切削体にボーリング孔を穿設する場合、被切削体のボーリング孔の長さに応じた長さのコアチューブを用いるか、複数のコアチューブを繋ぎ合わせてボーリング孔の長さに対応させる必要がある。
【0006】
しかし、上記のような構成のコアボーリング装置にあっては、コアチューブの後端に駆動モータの駆動軸が同軸で直結されているため、コアチューブの被切削表面からの突き出し長さが長くなる程、回転切削時のコアチューブ後端の偏心回転が大きくなり、架台を含む全体の横振れが大きくなる。すなわち、回転切削時に、コアチューブの先端部の切削ビットが異物(鉄筋、骨材等)に接触することによる衝撃や負荷変動により、コアチューブには横振れ振動が発生することになるが、この振動はコアチューブの長さが長くなる程、大きくなって抑えにくくなる。
【0007】
このため、コアチューブの長さを短くし、架台の高さを低くして、装置全体の剛性を高めて振動を抑える必要があるが、短いコアチューブを継ぎ足しながら、1つのボーリング孔を穿設しなければならないため、1つのボーリング孔の穿設作業にかなりの時間と手間がかかり、被切削体の切断等に要するコストが高くついてしまう。
【0008】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、ボーリング孔の長さが長い場合であっても、短時間で容易にボーリング孔の穿設を行うことができて、被切削体の切断等に要するコストを低減することができるコアボーリング装置及びボーリング孔の穿設方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、請求項1に係る発明は、被切削体にボーリング孔を穿設するために用いられるコアボーリング装置であって、架台と、該架台に回転可能かつ前記被切削体に対して進退可能に設けられるコアチューブと、該コアチューブを回転駆動させる駆動装置と、該駆動装置を進退させる進退駆動装置とを備え、前記駆動装置は、前記架台に設けられる駆動モータと、該駆動モータの駆動力を前記コアチューブの周面方向に伝達させる動力伝達機構と、該動力伝達機構を介した前記コアチューブへの動力の伝達を入切させるクラッチ機構とを有することを特徴とする。
本発明のコアボーリング装置によれば、駆動装置の駆動モータを駆動させると、駆動モータの駆動力が動力伝達機構を介してコアチューブの周面方向に伝達され、クラッチ機構を作動させることにより、動力伝達機構からの動力がコアチューブの周面に伝達され、コアチューブが回転駆動することになる。そして、進退駆動装置を作動させて、駆動装置を介してコアチューブを被切削体の方向に押圧することにより、コアチューブによって被切削体が切削され、被切削体に所定の深さのボーリング孔が穿設されることになる。この場合、コアチューブは、被切削表面から被切削体の方向に押圧する進退駆動装置ーの1回の作動長さ分だけ確保した位置にセットした動力伝達機構及びクラッチ機構を介して周面に動力が伝達されることにより回転駆動することになるので、コアチューブの被切削表面からの突き出し長さが長い場合であってもコアチューブの偏心回転の影響を小さく抑えることができることになる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のコアボーリング装置であって、前記動力伝達機構は、前記駆動モータの駆動軸に連結される駆動ギアと、前記架台に回転可能に設けられるとともに、中心部を前記コアチューブが所定の隙間を隔てて挿通し、かつ前記駆動ギアと噛み合い係合する従動ギアとからなることを特徴とする。
本発明のコアボーリング装置によれば、駆動モータからの駆動力は、駆動モータの駆動軸から駆動ギアに伝達され、駆動ギアから駆動ギアに噛み合い係合している従動ギアに伝達され、従動ギアからクラッチ機構を介してコアチューブの周面に伝達され、コアチューブが回転駆動することになる。従って、コアチューブは、動力伝達機構及びクラッチ機構を介して周面に動力が伝達されて回転駆動することになるので、コアチューブの長さが長い場合であってもコアチューブの偏心回転の影響を小さく抑えることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のコアボーリング装置であって、前記クラッチ機構は、前記従動ギアに連結されて従動ギアと一体に回転可能な接合部材と、前記架台に回転可能かつ進退可能に設けられるとともに、前進時に前記接合部材を押圧して前記コアチューブの周面に圧接させる押圧部材と、該押圧部材を進退させる進退駆動装置とからなることを特徴とする。
本発明のコアボーリング装置によれば、駆動モータからの駆動力は、駆動モータの駆動軸から駆動ギアに伝達され、駆動ギアから駆動ギアに噛み合い係合している従動ギアに伝達される。そして、クラッチ機構の押圧部材を駆動させて押圧部材を前進させ、接合部材をコアチューブの周面に圧接させることにより、従動ギアの駆動力が接合部材を介してコアチューブの周面に伝達され、コアチューブが回転駆動することになる。従って、コアチューブは、動力伝達機構及びクラッチ機構を介して周面に動力が伝達されて回転駆動することになるので、コアチューブの長さが長い場合であってもコアチューブの偏心回転の影響を小さく抑えることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れかに記載のコアボーリング装置を用い、前記架台を被切削体に固定し、前記回転駆動装置の駆動モータを駆動させて、この駆動力を前記動力伝達機構を介して前記コアチューブの周面方向に伝達させ、この動力伝達機構を介した動力を前記クラッチ機構を介して前記コアチューブの周面に伝達させて、前記コアチューブを回転駆動させ、前記進退駆動装置を作動させて前記回転駆動装置を介して前記コアチューブを被切削体の方向に押圧することにより、前記被切削体にボーリング孔を穿設することを特徴とする。
本発明のボーリング孔の穿設方法によれば、架台を被切削体に固定し、回転駆動装置の駆動モータを駆動させ、駆動モータの駆動力を動力伝達機構を介してコアチューブの周面方向に伝達させ、この動力をクラッチ機構を介してコアチューブの周面に伝達させることにり、コアチューブが回転駆動する。そして、進退駆動装置の作動により回転駆動装置を介してコアチューブを被切削体の方向に押圧することにより、被切削体が切削されて所定の深さのボーリング孔が穿設されることになる。
従って、コアチューブは、動力伝達機構及びクラッチ機構を介して周面に動力が伝達されることにより回転駆動することになるので、コアチューブの長さが長くなった場合であっても、コアチューブの偏心回転の影響を小さく抑えることができることになる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のコアボーリング装置及びボーリング孔の穿設方法によれば、駆動モータの駆動力を動力伝達機構及びクラッチ機構を介してコアチューブの周面に伝達させることによりコアチューブを回転駆動させることができるので、コアチューブの長さが長い場合であっても、コアチューブの偏心回転の影響を小さく抑えることができることになる。
従って、被切削体に穿設するボーリング孔が長い場合に、長いコアチューブを使用することが可能となるので、短いコアチューブを継ぎ足しながらボーリング孔を穿設する必要がなくなり、被切削体に対するボーリング孔の穿設作業を短時間で容易に行うことができることになり、被切削体を切断等する際に要するコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図5には、本発明によるコアボーリング装置の一実施の形態が示されていて、このコアボーリング装置1は、架台20と、架台20に回転可能かつ進退可能に設けられるコアチューブ30と、コアチューブ30を回転駆動させる回転駆動装置2とを備えている。
【0015】
架台20は、図1〜図3に示すように、コンクリート構造物等の被切削体35の上部にアンカーボルト27によって固定される基板21と、基板21の上部に垂直に立設される一対の支柱23、23と両支柱23、23の上端間に架設される梁24とからなる門形状のフレーム22と、フレーム22に回転駆動装置2及びコアチューブ30を支持するための支持板25とを備えている。
【0016】
フレーム22の梁24の中央部には、進退駆動装置である油圧シリンダ10がロッド11を上下方向に進退可能に取り付けられ、この油圧シリンダ10のロッド11の先端に水平に支持板25が取り付けられ、この支持板25に回転駆動装置2が取り付けられ、回転駆動装置2にコアチューブ30が取り付けられている。
【0017】
油圧シリンダ10は、油圧ホース等(図示せず)を介して油圧ポンプ、油圧タンク、制御弁等からなる油圧装置(図示せず)に接続され、油圧装置の作動によって油圧シリンダ10を駆動させることによりロッド11が上下方向に進退し、ロッド11に追従して支持板25を介して回転駆動装置2が上下方向に進退し、回転駆動装置2に追従してコアチューブ30が上下方向に進退するように構成されている。
【0018】
コアチューブ30は、筒状をなすものであって、先端部に切削ビット31(工業用ダイヤモンドを焼結したもの等)が一体に設けられ、このコアチューブ30を被切削体35に対して回転圧入させることにより、周囲から縁切りされた円柱状のコア部が被切削体35から切削、除去され、その部分に所定の深さのボーリング孔を穿設することができる。
【0019】
回転駆動装置2は、駆動源である駆動モータ3と、駆動モータ3の駆動力をコアチューブ30に伝達させるための動力伝達機構5と、動力伝達機構5からコアチューブ30への動力の伝達を入切させるクラッチ機構12とを備えている。
【0020】
駆動モータ3は、支持板25の下面側の一端部に駆動軸4が水平方向を向くようにボルト等を介して固定され、油圧シリンダ10のロッド11の動きに追従して支持板25を介して上下方向に進退するように構成されている。
【0021】
動力伝達機構5は、駆動モータ3の駆動軸4に取り付けられる駆動ギア6と、支持板25の下面側の他端部に軸受7を介して回転可能に取り付けられるとともに、駆動ギア6と噛み合い係合する従動ギア8とから構成されている。
【0022】
したがって、駆動モータ3を駆動させて、駆動軸4と駆動ギア6とを一体に回転駆動させることにより、駆動ギア6の回転力が従動ギア8に伝達され、従動ギア8とコアチューブ30が一体に回転駆動する。
【0023】
駆動ギア6は、周面に所定のギアが設けられる円錐台形状をなすものであって、中心部に軸挿通用の孔(図示せず)が貫通した状態で設けられ、この軸挿通用の孔内に駆動モータ3の駆動軸4を嵌合させることにより駆動モータ3に取り付けられる。
【0024】
従動ギア8は、周面に駆動ギア6のギアと相互に噛み合い係合可能なギアが設けられる円錐台形状をなすものであって、中心部にコアチューブ30を上下方向に移動可能に挿通させるための挿通孔9が貫通した状態で設けられている。従動ギア8は、駆動ギア6よりも大径の円錐台形状に形成され、駆動ギア6の回転が従動ギア8によって減速されてコアチューブ30に伝達される。
【0025】
従動ギア8の挿通孔9に対応する支持板25の部分には、従動ギア8の挿通孔9とほぼ同径の挿通孔が貫通した状態で設けられ、この支持板25の挿通孔及び従動ギア8の挿通孔9内をコアチューブ30が上下方向に挿通している。
【0026】
駆動ギア6及び従動ギア8を構成するギアとしては、駆動モータ3からの駆動力を直交する方向に伝達させることができるものであれば特に制限はなく、例えばベベルギアやヘリカルギアなどを用いることができる。
【0027】
軸受7は、従動ギア8を支持板25に回転可能に支持できるものであれば特に制限はなく、この実施の形態においては、内輪と外輪との間に転動可能に介装されるボールとからなるころがり軸受を使用し、外輪を支持板25に溶接等の固定手段によって固定し、内輪に従動ギア8を嵌合等の固定手段によって固定している。なお、図示はしないが、内輪を支持板25に固定し、外輪に従動ギア8を固定することにより、従動ギア8を支持板25に回転可能に支持しても良い。
【0028】
クラッチ機構12は、図4及び図5に示すように、従動ギア8に連結されて従動ギア8と一体に回転可能な接合部材13と、支持板25に回転可能かつ上下方向に進退可能に設けられるとともに、前進時に接合部材13を押圧してコアチューブ30の周面に圧接させる押圧部材14と、押圧部材14を駆動させるアクチュエータである油圧シリンダ15とから構成されている。
【0029】
接合部材13は、硬質ゴム、合成樹脂等の弾性体から形成される略筒状をなすものであって、従動ギア8の挿通孔9の内面側に位置した状態で、下端部が従動ギア8の挿通孔9の下端開口部にばね付き蝶番16を介して連結され、ばね付き蝶番16を中心として、従動ギア8の挿通孔9の中心部の方向に回動可能に構成されている。
【0030】
押圧部材14は、下端部が尖った筒状をなすものであって、支持板25の上面側に油圧シリンダ15及び軸受17を介して連結され、油圧シリンダ15と軸受17との協働により、上下方向に進退可能かつ水平方向に回転可能に構成されている。
【0031】
すなわち、支持板25の挿通孔の周縁部の同心円上には、周方向に向かって所定の間隔ごとに例えば4つの油圧シリンダ15が一体に設けられ、これらの油圧シリンダ15の上部に軸受17が溶接等により一体に連結され、軸受17に押圧部材14の上端部が嵌合等により連結されている。この場合、軸受17には、内輪と外輪と内輪と外輪との間に転動可能に介装されるボールとからなるころがり軸受を使用され、外輪が油圧シリンダ15に連結され、内輪に押圧部材14の上端部が嵌合されている。なお、油圧シリンダ15の個数は4つに限らず、3つ以下でもよいし、5つ以上でもよい。
【0032】
油圧シリンダ15は、油圧ホース等を介して油圧ポンプ、油圧タンク、制御弁等からなる油圧装置に(図示せず)に接続され、油圧装置の作動により油圧シリンダ15を駆動させることにより軸受17を介して押圧部材14が上下方向に進退するように構成されている。
【0033】
接合部材13は、図4に示すように、通常時には、ばね付き蝶番16のばね力によって上端部外周面が従動ギア8の挿通孔9の内面に圧接された状態となっており、これにより、接合部材13とコアチューブ30の周面との間には所定の隙間18が形成された状態となっている。この場合、接合部材13の上端部の外周面と従動ギア8の挿通孔9の内周面との間には、上方が開口する略V形状の溝19が形成され、この溝19内に押圧部材14の下端部が挿入可能に構成されている。
【0034】
接合部材13は、図5に示すように、押圧部材14の下方への移動時には、押圧部材14の下端部が溝19内に挿入されることにより、ばね付き蝶番16のばね力に抗して従動ギア8の挿通孔9の中心方向、すなわちコアチューブ30の周面方向に回動し、上端部内周面がコアチューブ30の周面に圧接される。これにより、従動ギア8とコアチューブ30とが接合部材13を介して連結され、従動ギア8の回転に追従してコアチューブ30が回転駆動する。
【0035】
そして、上記のように構成したこの実施の形態によるコアボーリング装置1を用いて本発明によるボーリング孔の穿設方法を実施するには、次の(1)〜(9)の手順に従う。
【0036】
(1)架台20の基板21をアンカーボルト27によってコンクリート構造物等の被切削体35の上部に固定する。
(2)架台20のフレーム22の梁24の中央部に油圧シリンダ10を取り付け、ロッド11を上下方向に進退可能とする。
(3)油圧シリンダ10のロッド11の先端に支持板25を取り付け、支持板25に回転駆動装置2(駆動モータ3、動力伝達機構5、クラッチ機構12)を取り付ける。
(4)コアチューブ30をクラッチ機構12の押圧部材14の内側の部分、支持板25の挿通孔、従動ギア8の挿通孔9等を挿通させて、先端を被切削体35の表面に当接させる。
(5)油圧シリンダ10と油圧装置との間を油圧ホース等を介して連結する。
(6)クラッチ機構12の油圧シリンダ15を作動させ、押圧部材14を下方に移動させて、押圧部材14の下端部を接合部材13と従動ギア8の挿通孔9との間の溝19内に挿入させ、接合部材13をばね付き蝶番16のばね力に抗して回動させ、接合部材13の上端部内周面をコアチューブ30の周面に圧接させ、従動ギア8とコアチューブ30とを接合部材13を介して連結する。
(7)駆動モータ3を駆動させて、動力伝達機構5及びクラッチ機構12を介してコアチューブ30を回転駆動させるとともに、油圧シリンダ10を作動させて支持板25及び回転駆動装置2を介してコアチューブ30を被切削体35の方向に押圧しながら、被切削体35の切削を行い、油圧シリンダ10のストロークが一杯になるまで切削を続ける。
(8)油圧シリンダ10のストロークが一杯になったときに、駆動モータ3を停止させて被切削体35に対する切削を停止し、クラッチ機構12の油圧シリンダ15を作動させて押圧部材14を上方に移動させて、接合部材13をコアチューブ30の周面から離間させ、油圧シリンダ10を作動させて支持板25を介して回転駆動装置2を上方に移動させ、接合部材13を上方に移動させる。そして、その位置において、クラッチ機構12の油圧シリンダ15を作動させて、押圧部材14を下方に移動させて接合部材13をコアチューブ30の周面に当接させ、従動ギア8とコアチューブ30とを接合部材13を介して連結する。
(9)駆動モータ3を作動させて動力伝達機構5及びクラッチ機構12を介してコアチューブ30を回転駆動させるとともに、油圧シリンダ10を作動させて支持板25及び回転駆動装置2を介してコアチューブ30を被切削体35の方向に押圧し、被切削体35に対する切削を続行する。
【0037】
そして、上記(7)〜(9)の手順を繰り返し行うことにより、コアチューブ30の長さに対応したボーリング孔を穿設することができ、このようなボーリング孔を被切削体35に複数穿設することにより、被切削体35の所定の箇所を切断等することができるものである。
【0038】
上記のように構成したこの実施の形態によるコアボーリング装置1及びボーリング孔の穿設方法にあっては、駆動モータ3の駆動力を、動力伝達機構5及びクラッチ機構12を介してコアチューブ30の周面に伝達させることにより、コアチューブ30を回転駆動させるように構成したので、長いボーリング孔を穿設する場合に、長尺(例えば、1m以上)のコアチューブ30を使用することが可能となる。従って、短いコアチューブを継ぎ足しながら1つのボーリング孔を穿設する必要がないので、ボーリング孔の穿設作業に要する時間と手間を大幅に削減することができ、被切削体35の切断等のコストを大幅に削減することができる。
【0039】
また、長さの長いボーリング孔の穿設作業を行う場合、長尺(例えば、1m以上)のコアチューブ30を継ぎ足しながら、穿設作業を行うことができるので、1つのボーリング孔の穿設に要する時間、手間を大幅に削減することができ、被切削体35の切断等のコストを大幅に削減することができる。
【0040】
さらに、長尺のコアチューブ30の継ぎ足しのための作業時間の間隔が長くなるので、複数台のコアボーリング装置1によって複数ボーリング孔の穿設作業を遠隔操作によって同時に行う場合等に、作業効率を大幅に高めることができる。
【0041】
さらに、回転駆動装置2の進退、クラッチ機構12の押圧部材14の進退の操作に油圧シリンダ10、15を使用しているので、これらを遠隔から操作することが可能となり、原子力発電所等の特殊な環境で作業を行う場合等に、放射線被爆線量の低減、危険作業場所での作業量の低減等を図ることができ、労働安全衛生上のリスクを大幅に低減させることができる。
【0042】
なお、前記の説明においては、動力伝達機構5を駆動ギア6と従動ギア8との組合わせによって構成したが、スプロケットとチェーンとの組合せ、VプーリーとVベルトとの組合せ等によって構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるコアボーリング装置の一実施の形態を示した正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】クラッチ機構の部分拡大図であって、接合部材がコアチューブの周面から離間している状態を示した説明図である。
【図5】クラッチ機構の部分拡大図であって、接合部材がコアチューブの周面に圧接指せている状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 コアボーリング装置 2 回転駆動装置
3 駆動モータ 4 駆動軸
5 動力伝達機構 6 駆動ギア
7 軸受 8 従動ギア
9 挿通孔 10 進退駆動装置(油圧シリンダ)
11 ロッド 12 クラッチ機構
13 接合部材 14 押圧部材
15 油圧シリンダ 16 ばね付き蝶番
17 軸受 18 隙間
19 溝 20 架台
21 基板 22 フレーム
23 支柱 24 梁
25 支持板 27 アンカーボルト
30 コアチューブ 31 切削ビット
35 被切削体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被切削体にボーリング孔を穿設するために用いられるコアボーリング装置であって、
架台と、該架台に回転可能かつ前記被切削体に対して進退可能に設けられるコアチューブと、該コアチューブを回転駆動させる回転駆動装置と、該回転駆動装置を進退させる進退駆動装置とを備え、
前記回転駆動装置は、
前記架台に設けられる駆動モータと、
該駆動モータの駆動力を前記コアチューブの周面方向に伝達させる動力伝達機構と、
該動力伝達機構を介した前記コアチューブへの動力の伝達を入切させるクラッチ機構とを有することを特徴とするコアボーリング装置。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、前記駆動モータの駆動軸に連結される駆動ギアと、前記架台に回転可能に設けられるとともに、中心部を前記コアチューブが所定の隙間を隔てて挿通し、かつ前記駆動ギアと噛み合い係合する従動ギアとからなることを特徴とする請求項1に記載のコアボーリング装置。
【請求項3】
前記クラッチ機構は、前記従動ギアに連結されて従動ギアと一体に回転可能な接合部材と、前記架台に回転可能かつ進退可能に設けられるとともに、前進時に前記接合部材を押圧して前記コアチューブの周面に圧接させる押圧部材と、該押圧部材を進退させる進退駆動装置とからなることを特徴とする請求項2に記載のコアボーリング装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のコアボーリング装置を用い、前記架台を被切削体に固定し、前記回転駆動装置の駆動モータを駆動させて、この駆動力を前記動力伝達機構を介して前記コアチューブの周面方向に伝達させ、この動力伝達機構を介した動力を前記クラッチ機構を介して前記コアチューブの周面に伝達させて、前記コアチューブを回転駆動させ、前記進退駆動装置を作動させて前記回転駆動装置を介して前記コアチューブを被切削体の方向に押圧することにより、前記被切削体にボーリング孔を穿設することを特徴とするボーリング孔の穿設方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−124911(P2006−124911A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297493(P2004−297493)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】