説明

コイル端子のカシメ装置及びカシメ方法

【課題】コイル端子の通電カシメを自動化させたコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法を提供すること。
【解決手段】ワークWをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル10上に設置し、その中心軸を中心にワークWを回転させる回転手段12および、ワークを中心軸方向に昇降させる昇降手段25とを備えたワーク支持機構と、作業テーブル10の上方にあって、ワークWから上方に起立したリード線100先端の芯線101を把持する把持手段21,22および、ワークWのチャックの中心軸方向に昇降させる昇降手段25とを備えたチャック機構と、セットした端子110に芯線101が挿入された状態で通電カシメする一対のカシメ電極41,42を備えたカシメ機構とを有するコイル端子カシメ装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを構成するステータに巻装されたコイルの動力線及び中性線の端部に金属製の端子を嵌め合わせて通電カシメするコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法に関し、特にリード線先端の芯線を束ね、芯線を金属製の端子に挿入し、芯線を端子とともに通電カシメする工程を自動化するコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの製造では、コアの各スロットにコイルが挿入され複数相のコイルが巻装され、コイルエンドが所定の大きさに成形される。その後のカシメ工程では、U相コイル、V相コイルそしてW相コイルの一端部が、それぞれリード線先端の芯線に端子が嵌め合わされ、通電カシメが行われて動力線となる。そして次に、中性線カシメ工程では、各相コイルの他端部が端子により一体的にカシメられて中性線とされる。すなわち、U相コイル、V相コイル及びW相コイルの他端部は、それぞれリード線先端の芯線が金属製の端子によって一体に束ねられ、通電カシメによって中性線が得られる。
【特許文献1】特開平7−123655号公報
【特許文献2】特願平7−015396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のカシメ装置は、カシメ電極が上下に配置され、上下方向に端子を押し潰して通電カシメを行うものが一般的である。そのため、その電極部分にワークを持ってくための機構が複雑になったり、装置が大型化する問題があった。すなわち、モータの製造ラインでは、コイルが巻かれた後のワークは、コンベア上に横向きに載せられて送られてくる。従って、カシメ装置では、例えばそのままの姿勢で作業台に載せた横向きのワークを、姿勢を変えてリード線先端をカシメ電極の位置へと移動させる必要があり、そのための機構が複雑かつ大掛かりになってしまう。
更に、カシメ工程の前に、リード線先端には芯線に端子を嵌め込む必要がある。しかし従来は、この端子のはめ込みを作業員が手作業で行っていたため、生産効率の面から自動化が望まれている。
【0004】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、コイル端子の通電カシメを自動化させたコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るコイル端子カシメ装置は、コイルが巻装されたワークについて、そのリード線先端から出た芯線に端子を取り付け、一対の電極で荷重をかけて加圧しながら通電加熱し、その端子に芯線をカシメるものであり、前記ワークをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル上に設置し、その中心軸を中心にワークを回転させる回転手段および、ワークを中心軸方向に昇降させる昇降手段とを備えたワーク支持機構と、前記作業テーブルの上方にあって、前記ワークから上方に起立した前記リード線先端の芯線を把持する把持手段および、前記ワークのチャックの中心軸方向に昇降させる昇降手段とを備えたチャック機構と、前記端子をセットし、その端子に前記芯線が挿入された状態で通電カシメする一対のカシメ電極を備えたカシメ機構とを有するものであることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係るコイル端子カシメ装置は、前記チャック機構の把持手段が、一対のチャック爪が向かい合って配置され、そのチャック爪は、向かい合った先端がV字状の開先が形成され、厚さ方向には櫛歯状に形成され、互いの櫛歯が噛み合って開先の収束部に前記芯線を束ねるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係るコイル端子カシメ装置は、一方のチャック爪が固定され、他方のチャック爪がアクチュエータによって動作し、互いの櫛歯が噛み合うようにしたものであることが好ましい。
また、本発明に係るコイル端子カシメ装置は、前記ワーク支持機構の作業テーブルと前記チャック機構の把持手段とが、同期した上昇と、把持手段のみの下降による掴み替えによって、前記端子に対して前記芯線を段階的に挿入するようにしたものであることが好ましい。
【0007】
本発明に係るコイル端子カシメ方法は、コイルが巻装されたワークについて、そのリード線先端から出た芯線に端子を取り付け、一対の電極で荷重をかけて加圧しながら通電加熱し、その端子に芯線をカシメる方法であり、ワークをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル上に設置し、ワークから上方に起立したリード線先端の芯線を把持手段によって把持し、その把持手段の上方に設置されたカシメ電極に端子をセットし、ワークを載せた作業テーブルと芯線を把持した状態の把持手段とを上昇させた端子内への芯線の挿入と、把持手段のみの下降による掴み替えとを繰り返して端子に対して芯線を段階的に挿入し、その後、芯線が挿入された端子を一対のカシメ電極で通電カシメするようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るコイル端子カシメ方法は、前記作業テーブルをワークの中心軸を中心に回転させ、そのワークの円周方向に配置された複数のリード線について、端子に対する芯線の挿入と、芯線が挿入された端子の通電カシメとをリード線毎に順番に行うようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
よって、本発明によれば、把持手段によって芯線を把持したまま端子に挿入し、しかも掴み替えによって芯線を折り曲げてしまうことなく端子内に深く挿入する作業を自動で行うことができ、その芯線が挿入された端子の通電カシメと合わせてコイル端子の通電カシメを自動化させて生産効率を上げることができる。
また、本発明によれば、ワークをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル上に設置してコイル端子の通電カシメを行うため、ライン上を搬送されるワークの姿勢そのままで作業が行えるようになり、従来のようにワークの向きを変えて端子を電極へと運ぶような大掛かりな機構は不要になり、その点で装置を複雑化させることなくコンパクトなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明に係るコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法について、その一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態おけるコイル端子カシメ装置を示した側面図である。このコイル端子カシメ装置1には、モータ製造ラインの一部を構成するものであり、ステータにU相、V相及びW相のコイルを巻装したコイル巻き工程を経たモータ部品(以下、「ワーク」という)Wが搬送されてくる。そして、このコイル端子カシメ装置1は、中心軸を鉛直方向に合わせた姿勢で搬送されるワークWをその姿勢のまま作業テーブル10に設置するワーク支持機構と、ワークWから飛び出したリード線先端の芯線を把持するチャック機構と、芯線に取り付けた端子を通電カシメするカシメ機構とが設けられている。
【0011】
作業テーブル10は、上方にワークWを位置決めするための支持ピン11が突設されており、ワークWは、その支持ピン11が差し込まれて一定の関係で作業テーブル10上に置かれるようになっている。作業テーブル10に対してU相、V相及びW相コイルのリード先端が所定の位置に配置され、後述する端子の嵌め合わせや通電カシメを行う作業位置に確実に案内できるようにするためである。
作業テーブル10は回転軸を持ち、連結された下方の位置決めモータ12によって回転方向の位置決めが行われるようになっている。従って、位置決めモータ12の回転制御によって、作業テーブル10上のワークWは、U相、V相及びW相コイルの各リード線100先端の位置決めが行われるようになっている。
【0012】
また、コイル端子カシメ装置1は、この作業テーブル10が昇降リフト13と一体に形成され、ワークWを上下方向へ移動させることが可能な構成になっている。昇降リフト13は、垂直に起立したコラム14に対してLMガイド15を介して昇降可能に設けられ、不図示の昇降用モータと、その昇降用モータの駆動を昇降リフト13に伝達する昇降機構が設けられている。すなわち、コラム14内にはサーボモータによって回転するボールネジが設けられ、そのボールネジの回転に従って昇降するボールナットが昇降リフト13に連結されている。
【0013】
コイル端子カシメ装置1は、作業テーブル10の上方にリード線100先端を把持するためのチャック機構が設けられている。コイルのリード線100先端は、被覆が除かれて複数本の芯線101がむき出しになっている。チャック機構は、このリード線100先端の芯線101を束ねるためのチャック爪21,22が設けられている。ここで図2及び図3は、チャック爪21,22が設けられた部分を拡大して示した図であり、図2は側面を、図3は平面を示している。一対のチャック爪21,22は、向かい合って配置され、一方のチャック爪21が固定側で、他方のチャック爪22が可動側になっている。
【0014】
チャック爪21,22は、その平面形状を見た場合には、図3に示すように向かい合った先端がV字の開先形状になっており、その中心線上に位置する円弧状の収束部21a,22aにリード線100の芯線101が集められるようになっている。また、チャック爪21,22は、側面側から見た場合には、図2に示すように櫛歯形状で形成されており、互いが噛み合って重ね合わせられるように構成されている。従って、チャック爪21,22は、互いが重なり合った場合には収束部21a,22aが一つの円になり、そこにリード線100の芯線101が束ねられるようになっている。
【0015】
コイル端子カシメ装置1には、図1に示すようにベース3上にコラム23が立設され、そこには昇降リフト25がLMガイド26によって上下方向への移動が可能な構成になっている。そして、前述した一対のチャック爪21,22は、この昇降リフト25上に設けられている。コラム23内には不図示の昇降機構が構成されており、サーボモータと、それによって回転するボールネジが設けられ、そのボールネジの回転に従って昇降するボールナットを備えたブラケットが昇降リフト25に連結されている。一対のチャック爪21,22は、Z軸方向(鉛直方向)への移動が可能になっている。
【0016】
ここで、図4は、昇降リフト25上方の駆動部を示した平面図であり、図5は、その駆動部をチャック21,22の反対側から示した図4のA矢視図である。固定側のチャック爪21は、固定プレート31に取り付けられており、その固定プレート31は、同じ高さでチャック爪22の側に回り込むようにして延びている。そして、チャック爪21を保持した固定プレート31はY軸テーブル32に取り付けられ、その同じY軸テーブル32には、チャック爪22がスライダ33を介して取り付けられている。スライダ33は、Y軸テーブル32上にあって、チャック爪21,22の向き合うX軸方向(図面横方向)にスライド可能に取り付けられている。また、Y軸テーブル32上には、X軸方向に伸縮可能なチャック用シリンダ34が取り付けられ、スライダ33がこのチャック用シリンダ34に連結されている。
【0017】
一方、Y軸テーブル32は、X軸テーブル36の上にLMガイドを介して構成され、そのX軸テーブル36が昇降リフト25の上にLMガイドを介して構成されている。そして、そのY軸テーブル32とX軸テーブル36は、それぞれY軸方向に伸縮可能に配置されたY軸シリンダ35や、X軸方向に伸縮可能に配置されたX軸シリンダ37が連結されている。更に、そのX軸テーブル32と平行に移動するスライダ38が設けられ、その上にX軸シリンダ37がLMガイドを介して設置されている。そして、そのスライダ38には、昇降リフト25に固定されたX軸シリンダ39が連結されている。
【0018】
従って、チャック爪21,22は、一つのチャック用シリンダ34の駆動によって芯線101の把持及びその解除が可能な構成になっている。そして、そのチャック爪21,22及びチャック用シリンダ34が設けられたY軸テーブル32は、Y軸シリンダ35によってY軸方向に移動可能で、更には、X軸テーブル36を介してX軸シリンダ37,39によってX軸方向にそれぞれ移動可能になっている。X軸方向の移動は、X軸シリンダ37によって直接的に、或いはスライダ38及びX軸シリンダ37を介してX軸シリンダ39によって間接的に移動可能になっている。こうしてチャック爪21,22は、図1に示すチャック位置と、XY軸平面上を移動して退避位置との操作が可能になっている。
【0019】
次に、チャック爪21,22の上方には、図1に示すように、リード線100に嵌め合わせた端子110を通電カシメするカシメ機構が設けられている。カシメ機構には、一対のカシメ電極41,42が設けられ、そこに端子110をセットできるようになっている。カシメ電極41,42のうち、一方のカシメ電極41が固定側であり、他方のカシメ電極42が可動側あって、端子110は固定側のカシメ電極41に設けられたツメにセットされる。カシメ電極41に対する端子110のセットは、コイル端子カシメ装置1に隣接して設けられた、不図示の端子セット部で行われるようになっている。従って、このカシメ機構にはカシメ電極41,42を端子セット部へと送るための送り手段が設けられている。
【0020】
カシメ機構には、カシメ方向(図面横方向)に伸びた大きな支持フレーム43が設けられ、その先端部にカシメ電極41が取り付けられている。一方、カシメ電極42は、その支持フレーム43に対しLMガイドを介してスライド可能に取り付けられている。支持フレーム43にはカシメ用シリンダ44が取り付けられ、それが可動側のカシメ電極42に連結されている。そして、この支持フレーム43にはサーボコントローラや油圧ポンプ48などからなるサーボ機構が設けられている。カシメ用シリンダ44にはスケールが備え付けられ、サーボコントローラからはそのスケールの計測信号に基づいてサーボ弁に制御信号が送られ、油圧ポンプ48からの作動油の流量制御などによってカシメ用シリンダ44のストローク調整やカシメ荷重の調整が可能になっている。
【0021】
また、カシメ機構を備えた支持フレーム43は、ベース3に対してX軸およびY軸方向に移動可能な構成になっている。ここで、図6は、コイル端子カシメ装置1を示した図1のB矢視図である。
ベース3上にはLMガイドを介してY軸テーブル44が設けられ、そのY軸テーブル44上にLMガイドを介してX軸テーブル45が設けられている。そして、ベース3にはステップモータ46が設けられ、Y軸テーブル44にはステップモータ47が設けられ、それぞれ連結された不図示のボールネジによってY軸テーブル44やX軸テーブル45がそれぞれの方向に移動するよう構成されている。
【0022】
次に、本実施形態のコイル端子カシメ装置1を使用したコイル端子カシメ方法について説明する。先ず、固定側のカシメ電極42に端子110がセットされる。それには支持フレーム43がステップモータ46,47の駆動によってXY平面上を移動し、不図示の端子セット部へとカシメ電極41,42が移される。そして、取り付け位置に置かれた固定側のカシメ電極41に対し、ロボットアームなどによって把持された端子110がセットされる。端子110がカシメ電極41にセットされると、再び支持フレーム43が図1に示す作業位置に戻される。
【0023】
一方、このコイル端子カシメ装置1には、図1において図面を貫く方向にワークWが搬送され、作業テーブル10の上に設置される。すなわち、ワークWは、パレットに載せられてコンベアによって搬送され、コイル端子カシメ装置1の位置で停止し、作業テーブル10の上昇によって受け取られる。その際、ワークWは、その支持ピン11が差し込まれて、U相、V相及びW相コイルのリード線100先端が所定の決められた位置にセットされる。各相のコイルのリード線100は上方に起立しており、その先端分部は、被覆が取り除かれて芯線101がむき出の状態になっている。このコイル端子カシメ装置1では、その芯線101に対する端子110の取り付けと、そうした芯線101と端子11との通電カシメが行われる。
【0024】
U相、V相及びW相のコイル端子は、図3に示すように円周方向に並んでおり、位置決めモータ12の駆動によって作業テーブル10が回転し、所定のリード線100の芯線101部分がカシメ位置まで送られる。そのカシメ位置には固定側のチャック爪21が配置され、芯線101がチャック爪21の開先部分に入り込む。その後、チャック爪21に対して可動側のチャック爪22が近づき、更には櫛歯になったチャック爪21,22が噛み合って一体になる。このとき可動側のチャック爪22は、チャック用シリンダ34の伸長動作によってスライダ33がスライドして移動する。
【0025】
これにより、リード線100の先端から出ている複数本の芯線101は、チャック爪21,22の開先部分が狭められるに従って集められ、最終的には一つに重なった開先の収束部21a,22aにまとめられる。芯線101は、例えばリード線100の被覆部分から15mmほどの長さがあり、そこを5mm程度の厚さのチャック爪21,22が掴む。最初は、3〜5mm程度がチャック爪21,22から出るようにした位置で掴み、そうした状態で上方に配置された端子110内に芯線101の先端が挿入される。端子110内に芯線101を一気に挿入しようとすれば、挿入時の抵抗によって芯線101が折れ曲がってしまう。そのため、本実施形態では、芯線101が折れ曲がらない適切な長さでの挿入を繰り返して徐々に入れていくようにしている。
【0026】
芯線101を端子110へ挿入する場合には、不動の端子110へ向かって芯線101が上昇して下から送り込まれる。従って、コイル端子カシメ装置1では、作業テーブル10の上昇によってワークWを上昇させる他、芯線101を把持したチャック爪21,22も同期して上昇する。すなわち、昇降リフト13,25が同時に同じ速度で上昇し、チャック爪21,22が芯線101を把持した状態を維持したままワークWが上昇する。そして、チャック爪21,22から上方に飛び出た芯線101の先端部分が、カシメ電極41に取り付けられた端子110に挿入される。
【0027】
その後も芯線101は一気に挿入されることはなく、複数回に分けて少しずつ端子110内に入れられていく。その場合、チャック爪21,22は、1回の挿入分だけ下がった位置で芯線101の掴み直しを行い、そしてワークWの上昇に伴って芯線101を掴んだまま上昇する。チャック爪21,22の掴み直しは、チャック用シリンダ34が収縮してスライダ33がスライドしてチャック爪22がチャック爪21から離れ、その噛み合いが外れる。そして、昇降リフト25だけが所定量だけ下降し、チャック爪21,22が次の挿入量に応じた位置まで芯線101に沿って下がる。
【0028】
その後は、再びチャック用シリンダ34の伸長動作によってスライダ33がスライドし、チャック爪21,22が噛み合って芯線101を把持する。そして、昇降リフト13,26が同時に同じ速度で上昇し、チャック爪21,22が芯線101を把持した状態を維持してワークWが上昇する。従って、芯線101は、その分だけ更に端子110内に深く挿入される。こうしたチャック爪21,22の掴み直しと、ワークWの上昇が繰り返されて芯線101が端子110内に一定量挿入される。そして、芯線101に対する端子110の取り付けが完了し、次に通電カシメが行われる。
【0029】
芯線101が挿入された端子110は、カシメ機構のカシメ電極41,42に挟み込まれ、カシメ電極41,42間の通電によって電流が流される。この通電によって端子110が発熱し、挿入された中の芯線101が加熱して表面のエナメル層が溶けて端子110から流れ出る。そのため、絶縁状態で束ねられていた複数の芯線101は銅線がむき出しになって導通状態になる。そして、加熱によるエナメル層の除去とともに、カシメ電極41,42間には所定の荷重が加えられ、端子110が芯線101とともに押し潰される。
【0030】
このときカシメ用シリンダ44は油圧ポンプ48から作動油が供給されて伸縮するが、サーボ機構によってそのストロークやカシメ圧力の調節が行われる。カシメ用シリンダ44のストロークはスケールによって読み取られており、その計測信号がサーボコントローラに送られる。そのため、サーボコントローラでは、その計測信号に基づいてサーボ弁を制御し、油圧ポンプ48からの作動油の流量制御などによってカシメ用シリンダ44のストロークや、カシメ電極41,42間に掛かるカシメ圧力をリアルタイムに調節する。これによって、通電発熱によるエナメル層の除去とカシメが適切に行われ、1本1本の芯線101が端子110と電気的に接続される。
【0031】
こうした通電カシメは、コイルの動力線に関し、U相、V相、W相のそれぞれのリード線100について、このコイル端子カシメ装置1によって行われる。そこで、例えばU相コイルのリード線100について、前述したように、端子110の取り付けと通電カシメが行われた後は、作業テーブル10が下降し、所定量だけ回転する。それによって次のV相コイルに関し、そのリード線100の芯線101部分がカシメ位置まで送られ、チャック爪21の開先部分に入り込む。一方、支持フレーム43がXY平面上を移動し、固定側のカシメ電極41に対し新たな端子110がセットされる。
【0032】
その後、前述したように、リード線100の芯線101がチャック爪21,22によって把持され、そのままワークWが上昇して端子110に芯線101が挿入される。そして、チャック爪21,22による掴み直しを繰り返しながら徐々に芯線101が端子110に深く挿入される。挿入完了後は、芯線101を入れた端子110がカシメ電極41,42に挟み込まれて通電カシメが行われ、V相コイルの動力線に関し、その芯線101が端子110と電気的に接続される。更に、同じ動作が次のW相コイルに関しも繰り返され、その芯線101に端子100が取り付けられて通電カシメが行われる。
【0033】
モータ製造ラインでは、そのライン上に設置されたコイル端子カシメ装置1によって、前述したようなU相、V相、W相の動力線についてコイル端子の通電カシメが行われる。そして、このモータ製造ラインでは、動力線の通電カシメ工程の次工程として、同じワークの中性点について通電カシメを行う通電カシメ工程がある。そして、その中線点の通電カシメ工程でも、図1乃至図5に示すコイル端子カシメ装置1と同様に構成されたコイル端子カシメ装置が設置されている。
【0034】
従って、動力線について通電カシメを完了したワークWは、再びパレットに載せられ、コンベアによって次のコイル端子カシメ装置へと送られ、そこで同じように作業テーブルによって受け取られる。そして、中線点のコイル端子カシメ装置では、U相、V相及びW相コイルのリード線が束ねられ、これが端子に挿入されて通電カシメが行われる。すなわち、各相のコイルの芯線がまとめてチャックにより把持され、そのままワークWが上昇して端子に芯線が挿入される。芯線の挿入はチャックによる掴み直しが繰り返され、芯線は端子内に徐々に深く挿入される。挿入後は、芯線を入れた端子がカシメ電極に挟み込まれ、通電とカシメ荷重が制御されて、各相のコイルの芯線が一つになって端子と電気的に接続される。
【0035】
よって、本実施形態のコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法によれば、チャック21,22によって芯線101を把持したまま端子110に挿入し、しかも掴み替えによって芯線101を折り曲げてしまうことなく端子110内に深く挿入する作業を自動で行うことができるようになった。そのため、その芯線101が挿入された端子110の通電カシメと合わせてコイル端子の通電カシメを自動化させて生産効率を上げることができるようになった。
また、本実施形態によれば、ワークWをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル10上に設置して端子110の通電カシメを行うため、コンベアの送りによって搬送されるワークWの姿勢そのままで作業が行えようになり、従来のようにワークWの向きを変えて端子をカシメ電極41,42へと運ぶような大掛かりな機構は不要になり、その点で装置を複雑化させることなくコンパクトなものとすることができる。
【0036】
本実施形態では、チャック爪21,22が開先を形成し、櫛歯によって噛み合わせるようにしたものであるため、芯線101をその収束部21a,22aにまとまりよく束ねることができる。そして、把持手段を一対のチャック爪21,22で構成したため、一方にのみチャック用シリンダ34を連結して動作させるだけで、芯線101の把持と解除を操作することができ、簡素な構成とすることができた。
また、作業テーブル10を回転させるだけで、U相、V相、W相の動力線についてコイル端子の通電カシメを連続して行うことができるようになった。
【0037】
以上、本発明に係るコイル端子のカシメ装置及びカシメ方法について一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前期実施形態では、開先を形成した櫛歯状の一対のチャック爪21,22で把持手段を構成したが、例えば、チャック爪を3つ或いはそれ以上を突き合わせるようにしたものであって、突き合わせた際に、その形状を複数のチャック爪で端子の形状に合わせた円筒形状にするようなものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一実施形態おけるコイル端子カシメ装置を示した側面図である。
【図2】一対のチャック爪によって構成された把持手段を示した側面図である。
【図3】一対のチャック爪によって構成された把持手段を示した平面図である。
【図4】チャック機構を構成する昇降リフト上方の駆動部を示した平面図である。
【図5】チャック機構を構成する昇降リフト上方の駆動部を把持手段の反対側から示した図4のA矢視図である。
【図6】コイル端子カシメ装置を示した図1のB矢視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 コイル端子カシメ装置
3 ベース
10 作業テーブル
12 位置決めモータ
13 昇降リフト
21,22 チャック爪
21a,22a 収束部
25 昇降リフト
33 スライダ
34 チャック用シリンダ
41,42 カシメ電極
100 リード線
101 芯線
110 端子
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが巻装されたワークについて、そのリード線先端から出た芯線に端子を取り付け、一対の電極で荷重をかけて加圧しながら通電加熱し、その端子に芯線をカシメるコイル端子カシメ装置であり、
前記ワークをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル上に設置し、その中心軸を中心にワークを回転させる回転手段および、ワークを中心軸方向に昇降させる昇降手段とを備えたワーク支持機構と、
前記作業テーブルの上方にあって、前記ワークから上方に起立した前記リード線先端の芯線を把持する把持手段および、前記ワークのチャックの中心軸方向に昇降させる昇降手段とを備えたチャック機構と、
前記端子をセットし、その端子に前記芯線が挿入された状態で通電カシメする一対のカシメ電極を備えたカシメ機構とを有するものであることを特徴とするコイル端子カシメ装置。
【請求項2】
請求項1に記載するコイル端子カシメ装置において、
前記チャック機構の把持手段は、一対のチャック爪が向かい合って配置され、そのチャック爪は、向かい合った先端がV字状の開先が形成され、厚さ方向には櫛歯状に形成され、互いの櫛歯が噛み合って開先の収束部に前記芯線を束ねるようにしたものであることを特徴とするコイル端子カシメ装置。
【請求項3】
請求項2に記載するコイル端子カシメ装置において、
一方のチャック爪が固定され、他方のチャック爪がアクチュエータによって動作し、互いの櫛歯が噛み合うようにしたものであることを特徴とするコイル端子カシメ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載するコイル端子カシメ装置において、
前記ワーク支持機構の作業テーブルと前記チャック機構の把持手段とが、同期した上昇と、把持手段のみの下降による掴み替えによって、前記端子に対して前記芯線を段階的に挿入するようにしたものであることを特徴とするコイル端子カシメ装置。
【請求項5】
コイルが巻装されたワークについて、そのリード線先端から出た芯線に端子を取り付け、一対の電極で荷重をかけて加圧しながら通電加熱し、その端子に芯線をカシメるコイル端子カシメ方法であり、
ワークをその中心軸が鉛直方向を向くように作業テーブル上に設置し、
ワークから上方に起立したリード線先端の芯線を把持手段によって把持し、
その把持手段の上方に設置されたカシメ電極に端子をセットし、
ワークを載せた作業テーブルと芯線を把持した状態の把持手段とを上昇させた端子内への芯線の挿入と、把持手段のみの下降による掴み替えとを繰り返して端子に対して芯線を段階的に挿入し、
その後、芯線が挿入された端子を一対のカシメ電極で通電カシメするようにしたことを特徴とするコイル端子カシメ方法。
【請求項6】
請求項5に記載するコイル端子カシメ方法において、
前記作業テーブルをワークの中心軸を中心に回転させ、そのワークの円周方向に配置された複数のリード線について、端子に対する芯線の挿入と、芯線が挿入された端子の通電カシメとをリード線毎に順番に行うようにしたことを特徴とするコイル端子カシメ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−260731(P2007−260731A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90069(P2006−90069)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(592082778)豊通エンジニアリング株式会社 (8)
【Fターム(参考)】