説明

コネクタ

【課題】コネクタの電気特性を向上させる。
【解決手段】FPC20が挿入されるハウジング3に保持される複数のコンタクト5の中に、操作部材7を回転可能に支持する支持部51bを有する少なくとも3つの支持コンタクト51を含める。支持コンタクト51の支持部51bとFPC20の上面に形成されたグランドパターン20cとを導通させる導通部72bを操作部材7に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコネクタに関し、特にFPC(Flexible Printed Circuit)やFFC(Flexible Flat Cable)等の板状接続対象物をプリント基板等に接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングとホールドダウンと複数のコンタクトと回動部材とを備えるコネクタが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
ハウジングはフレキシブルケーブルの一端部を受け入れる開口部を有する。
【0004】
ホールドダウンは導電性を有する金属板で形成され、ハウジングの両側部に取り付けられている。ホールドダウンをプリント基板のパッドに半田付することにより、コネクタはプリント基板に固定される。ホールドダウンが半田付されるパッドはプリント基板のグランドに通じている。
【0005】
複数のコンタクトはハウジング内に所定方向に沿って並べられている。コンタクトは接触部と端子部と枢支部とを有する。接触部はコンタクトの下部前端部に位置し、開口部に挿入されたフレキシブルケーブルの下面の導体パターンに接触する。端子部はコンタクトの下部後端部に位置し、プリント基板に接続される。枢支部は回動部材の凹部と係合して回動部材を回動可能に支持する。
【0006】
回動部材は回動部材本体とシェルとで構成されている。回動部材本体は絶縁材料からなる。シェルは弾性を有する導電材料からなり、回動部材本体を覆う。シェルの両側部には、接触部が形成されている。回動部材がハウジングの開口部を閉じているとき、シェルは開口部に挿入されたフレキシブルケーブルの上面のシールドと接触し、シェルの接触部はホールドダウンに接触する。
【0007】
上述のコネクタを用いてフレキシブルケーブルをプリント基板に接続するには、まず、回動部材を回転させてハウジングの開口部を開く。
【0008】
次に、フレキシブルケーブルの一端部を開口部に挿入する。
【0009】
最後に、回動部材を回転させて開口部を閉じる。このとき、フレキシブルケーブルの下面の導体パターンはコンタクトを通じてプリント基板の導体パターンに電気的に接続され、フレキシブルケーブルの上面のシールドはシェルとホールドダウンとを通じてプリント基板のグランドパターンに導通する。
【特許文献1】特許3089464号公報(段落0020〜0024、図6参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のコネクタでは、フレキシブルケーブルの上面のシールドをハウジングの両端に位置するホールドダウンを介してプリント基板上のグランドパターンに導通させる。
【0011】
ハウジングの両端に近いコンタクトはホールドダウンにも近いが、ハウジングの中間に位置するコンタクトはホールドダウンから遠いので、全体としてコネクタの電気特性が低下する。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はコネクタの電気特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため請求項1の発明は、板状の一方の接続対象物の一方の面に形成された第1導体パターンに接触する接触部と、他方の接続対象物に接続される接続部とを有する複数のコンタクトと、前記複数のコンタクトを保持するとともに、前記一方の接続対象物が挿入されるハウジングと、前記ハウジングに挿入された前記一方の接続対象物の第1導体パターンを前記複数のコンタクトの接触部に押し付ける操作部材とを備えているコネクタにおいて、前記複数のコンタクトには、前記操作部材を回転可能に支持する支持部を有する複数の支持コンタクトが含まれ、前記複数の支持コンタクトの支持部と前記一方の接続対象物の他方の面に形成された第2導体パターンとを導通させる導通部が、前記操作部材に設けられていることを特徴とする。
【0014】
上述のように前記複数のコンタクトには、前記操作部材を回転可能に支持する支持部を有する複数の支持コンタクトが含まれ、前記複数の支持コンタクトの支持部と前記一方の接続対象物の他方の面に形成された第2導体パターンとを導通させる導通部が、前記操作部材に設けられているので、一方の接続対象物の第2導体パターンから他方の接続対象物のグランドに至る経路が3つ以上確保され、一方の接続対象物の第2導体パターンのコンタクト配列方向のある位置から他方の接続対象物のグランドまでの距離と、一方の接続対象物の第2導体パターンのコンタクト配列方向の他の位置から他方の接続対象物のグランドまでの距離との差が小さくなる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1記載のコネクタにおいて、前記複数の支持コンタクトは少なくとも3つの支持コンタクトを有し、前記少なくとも3つの支持コンタクトのうち2つの支持コンタクトは前記操作部材の長手方向の両側部に配置され、他の支持コンタクトは前記2つの支持コンタクトの間に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のコネクタにおいて、前記一方の接続対象物と対向する前記操作部材の一面側に金属プレートが配設され、前記導通部は、前記金属プレートから一体形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のコネクタにおいて、前記支持コンタクトの数が前記導通部の数より多いことを特徴とする。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のコネクタにおいて、ばね部と、前記ばね部に連結され前記ハウジングに固定される固定部と、前記一方の接続対象物の挿入軌道上に配置され、前記一方の接続対象物が前記ばね部の付勢力に抗して挿入されると前記一方の接続対象物によって上方へ跳ね上げられ、前記一方の接続対象物が完全に挿入されたとき前記一方の接続対象物に形成された空所を介してもとの位置に復帰する揺動部とを有する挿入状態認識部材を備えていることを特徴とする。
【0019】
請求項6の発明は、請求項5記載のコネクタにおいて、前記挿入状態認識部材の少なくとも前記揺動部は、前記操作部材の長手方向の両側であって、前記ハウジングの外部から視認可能な位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、一方の接続対象物の他方の面に形成された第2導体パターンから他方の接続対象物のグランドに至る経路が3つ以上確保され、一方の接続対象物の第2導体パターンのコンタクト配列方向のある位置から他方の接続対象物のグランドまでの距離と、一方の接続対象物の第2導体パターンのコンタクト配列方向の他の位置から他方の接続対象物のグランドまでの距離との差が小さくなるので、コネクタの電気特性が向上し、信号の伝送特性の低下を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1はこの発明の第1実施形態のコネクタにFPCを接続する前の状態を示す斜視図、図2は図1に示すコネクタにFPCを接続した後の状態を示す斜視図、図3は図1に示すコネクタの支持コンタクト周辺の断面を示す図、図4は図2に示すコネクタの支持コンタクト周辺の断面を示す図、図5は図1に示すコネクタの高速伝送用信号コンタクト周辺の断面を示す図、図6は図2のVI−VI線に沿う断面図、図7は図2のVII−VII線に沿う断面図、図8は図2のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【0023】
図1、図2に示すように、コネクタ1はハウジング3と複数のコンタクト5と操作部材7とホールドダウン9とを備える。コネクタ1はFPC(Flexible Printed Circuit)20(板状の一方の接続対象物)と図示しないプリント基板(他方の接続対象物)とを電気的に接続するものである。
【0024】
図3〜図5に示すように、ハウジング3は肉薄部31と肉厚部32と側壁部33とを有し、絶縁材料で形成されている。肉薄部31は薄板状であり、ハウジング3の前部から後部に掛けて形成されている。肉厚部32は厚板状であり、肉薄部31に連結され、ハウジング3の後部に位置する。側壁部33はハウジング3の両側部に位置し、肉薄部31及び肉厚部32に連結されている。肉薄部31と肉厚部32と側壁部33とで、ハウジング3の前部に収容空間34が形成される。
【0025】
肉厚部32には、複数のコンタクト収容部32a,32bがハウジング3の幅方向Wに沿って等間隔に形成されている。コンタクト収容部32a,32bはFPC20のコネクタ1に対する挿抜方向Iに沿って延び、収容空間34に通じている。コンタクト収容部32aには後述する支持コンタクト51が収容される。コンタクト収容部32bには後述する高周波伝送用信号コンタクト52が収容される。2つのコンタクト収容部32aの間に2つのコンタクト収容部32bが配置されている。
【0026】
肉薄部31の中間部には複数の窓孔35が形成されている。窓孔35は挿抜方向Iに沿って延びている。窓孔35の前部は収容空間34に通じ、窓孔35の後部はコンタクト収容孔32a又はコンタクト収容孔32bに通じている。
【0027】
図5〜図7に示すように、コンタクト5には支持コンタクト51と高周波伝送用信号コンタクト52とがある。
【0028】
支持コンタクト51は固定部51aと支持部51bとばね部51cと接触部51dと端子部(接続部)51eとを有する。固定部51aは突起51hを有する。固定部51aは収容空間32aに圧入され、ハウジング3に固定される。支持部51bは固定部51aに連結されている。支持部51bの先端部には凹部51iが形成されている。ばね部51cはほぼL字形であり、支持部51bに連結されている。接触部51dはばね部51cに連結されている。接触部51d及びばね部51cの一部分は窓孔35内に収まっている。
【0029】
高周波伝送用信号コンタクト52は高周波伝送用に特化されたコンタクトであり、スタブとなり得る支持部51b等をもたない直線的な形状のコンタクトである。高周波伝送用信号コンタクト52は図5に示すように固定部52aとばね部52cと接触部52dと端子部(接続部)52eとを有する。固定部52aは突起52hを有する。固定部52aは収容空間32bに圧入され、ハウジング3に固定される。ばね部52cは固定部52aに連結されている。接触部52dはばね部52cに連結されている。接触部52d及びばね部52cの一部分は窓孔35内に収まっている。隣接する支持コンタクト51によって挟まれた2つの高周波伝送用信号コンタクト52は差動伝送ペアをなす。
【0030】
図2〜図8に示すように、操作部材7は操作部材本体71とシールド板(金属プレート)72とを有する。操作部材本体71は樹脂で長板状に形成されている。操作部材本体71にはその長手方向に等間隔に長孔71aが形成されている。長孔71aの間隔はハウジング3に配置された支持コンタクト51の間隔に等しい。長孔71aは支持コンタクト51の支持部51bの先端部を受け容れる。
【0031】
操作部材本体71の図2において右端に位置する長孔71aを除いて(右端には高周波伝送用コンタクトが配置されないため)、操作部材本体71の長孔71aの一端部側(操作部材7の回転軸側)にはカム中心部71bが形成されている(図6参照)。
【0032】
操作部材本体71の図2において右端に位置する長孔71aの一端部側(操作部材7の回転軸側)にはカム部71cが形成されている(図7参照)。カム部71cの外径はカム中心部71bの外径よりも大きい。操作部材71の両側部には軸部71dが形成されている。
【0033】
シールド板72は金属板で形成され、操作部材本体71の一面を覆っている。シールド板72には等間隔に窓孔72aが形成されている。窓孔72aは平面視長方形であり、シールド板72を操作部材本体71の一面に装着したとき長孔71aと対向する。シールド板72は複数の導通部72bを有する。導通部72bはカム中心部71bに巻き付けられている。導通部72bの展開形状は帯状である。導通部72bは窓孔72aに隣接している。但し、図2において右端に位置するシールド板72の一端部側の窓孔72aには導通部72bが隣接していない。カム中心部71bとこれに巻き付けられた導通部72bとで導通カム部73が構成されている。導通カム部73の形状、大きさ等はカム部71cと同じである。
【0034】
導通カム部73及びカム部71cが支持部51bの凹部51iに支持され、又、軸部71dが凹部91aに支持されることにより、操作部材7は回転可能に支持されている。これにより、操作部材7は、導通カム部73及びカム部71cを中心にして、図3に示す開位置(シールド板72が肉薄部31の上面に対してほぼ直角になる位置)と図4に示す閉位置(シールド板72が肉薄部31の上面に対してほぼ平行になる位置)との間を回転することができる。
【0035】
ホールドダウン9は金属板で形成されている。ホールドダウン9はホールドダウン本体91と脚部92とを有する。ホールドダウン本体91は凹部91aを有し、ハウジング3の側壁部33に固定されている。ホールドダウン本体91の一部分は収容空間34に突出し、凹部91aは収容空間34内に配置されている。凹部91aは操作部材7の軸部71dを回転可能に保持する。脚部92はホールドダウン本体91に連結され、プリント基板のパッドに半田付される。これにより、コネクタ1はプリント基板上に固定される。
【0036】
FPC20をコネクタ1に接続するには、まず、図1、図3に示すように、操作部材7を開位置まで回転させてFPC20を収容空間34に挿入できる状態にする。このとき、支持コンタクト51の支持部51bの凹部51iは導通カム部73のカム面の中心73Kに近い部分73iに接触し、また、ハウジング3の収容空間34側から見て右端の支持コンタクト51の支持部51bの凹部51iはカム部71cのカム面の中心71Kに近い部分71iに接触する(図6、図7参照)。
【0037】
次に、FPC20の先端部20dを収容空間34に挿入する。
【0038】
その後、図2、図4に示すように、操作部材7を閉位置まで回転させる。このとき、支持コンタクト51の支持部51bの凹部51iと導通カム部73やカム部71cのカム面の中心73K,71Kから遠い部分731,711とが接触するので、操作部材7により支持コンタクト51及び高周波伝送用信号コンタクト52のばね部51c,52cがばね力に抗して下方へ押し下げられる(図6、図7参照)。
【0039】
ばね部51c,52cが押し下げられると、ばね部51c,52cの復元力によって、導電カム部73と係合する支持コンタクト51の接触部51dはFPC20の下面に形成された高周波伝送用のグランドパターン(第1導体パターン)20bに強く接触し(図6参照)、カム部71cと係合する支持コンタクト51の接触部51dはFPC20の下面に形成されたグランドパターン(第1導体パターン)20bに強く接触し(図7参照)、更に、高周波伝送用信号コンタクト52の接触部52dはFPC20の下面に形成された高周波伝送用の信号パターン(第1導体パターン)20aに強く接触する(図8参照)。
【0040】
これと同時に、シールド板72はFPC20の上面に形成されたグランドパターン(第2導体パターン)20cに接触する(図6参照)。このとき、FPC20のグランドパターン20cはシールド板72の導通部72b及び支持コンタクト51を通じてプリント基板のグランド(図示せず)に導通する。
【0041】
信号パターン20aとグランドパターン20bとは同一形状を呈しているため第1導体パターンとした。なお、信号パターン20aとグランドパターン20bとは形状が異なっても良いことは勿論である。
【0042】
この実施形態のコネクタ1は次の作用効果を奏する。
【0043】
複数のコンタクト5には、操作部材7を回転可能に支持する支持部51bを有する少なくとも3つの支持コンタクト51が含まれ、少なくとも3つの支持コンタクト51の支持部51bとFPC20のグランドパターン20cとを導通させる導通部72bが操作部材7に設けられているので、FPC20のグランドパターン20cからプリント基板のグランドに至る経路が3つ以上確保される。その結果、FPC20のグランドパターン20cのコンタクト配列方向Wの端部からプリント基板のグランドまでの距離と、FPC20のグランドパターン20cのコンタクト配列方向Wの中間部からプリント基板のグランドまでの距離との差はほとんどなくなる。また、コンタクト配列方向Wの端部に位置する信号コンタクト52からプリント基板のグランドまでの距離と、コンタクト配列方向Wの中間部に位置する信号コンタクト52からプリント基板のグランドまでの距離との差はほとんどなくなる。したがって、高周波信号の伝送特性の低下を防ぐことができる。
【0044】
また、上述の実施形態では、図2に示された操作部材本体71の右端に位置する長孔71aの一端部側にカム部71cを形成し(図7参照)、操作部材本体71の右端に位置する長孔71a以外の長孔71aの一端部側にカム中心部71bを形成し(図6参照)、それらのカム中心部71bに導通部72bを巻き付けたが、操作部材本体71のどの長孔71aの一端部側にカム中心部71bを形成し、導通部72bを巻き付けるかについては、適宜決めることができる。したがって、FPC20のグランドパターン20cからプリント基板のグランドに至る経路を必要に応じて設定することができる。
【0045】
更に、隣接する差動伝送ペアの高周波伝送用信号コンタクト52の間にグランドコンタクトが介在するので、隣接する差動伝送ペアの高周波伝送用信号コンタクト52の間のクロストークを防止できる。
【0046】
また、操作部材7はシールド板72を有するので、コネクタ外へのノイズの伝播やコネクタ外部からのノイズの侵入を防止することができる。
【0047】
更に、FPC20の下面のグランドパターン20bとFPC20の上面のグランドパターン20cとを導通部72b及び支持コンタクト51を通じて導通させることができるので、スルーホールやビアを用いる必要がない。
【0048】
上述の従来のコネクタでは、回動部材に設けられた1つのシェルがフレキシブルケーブルの上面に接触するので、フレキシブルケーブルの上面に形成されたシールドを、回動部材に設けられた1つのシェルと、ハウジングの両側に位置するホールドダウンとを通じてプリント基板のグランドに導通させることしかできない。しかし、本願発明の実施形態では、操作部材本体71に設けられた複数の導通部72bがFPC20の上面に接触するので、FPC20の上面全体に形成された1つのグランドパターン20cを、操作部材本体71に設けられた複数の導通部72bと、複数の支持コンタクト51とを通じてプリント基板のグランドに導通させることができる。したがって、FPC20の上面に1つのグランドパターン20cが形成される代わりに、複数の信号パターン(図示せず)が形成されていたとしても、操作部材7から複数の導通部72bを残してシールド板72(グランドパターン20c)を除去しさえすれば、両面に信号パターンを有するFPC用のコネクタ(第1実施形態の変形例)として使用することができる。
【0049】
図9はこの発明の第2実施形態のコネクタにFPCを接続する前の状態を示す斜視図、図10は図9に示すコネクタにFPCを接続した後の状態を示す斜視図、図11は図9に示すコネクタの挿入状態認識部材の斜視図、図12は図9に示すコネクタにFPCを挿入している途中の状態を示す断面図、図13は図9に示すコネクタにFPCを挿入し終えた状態を示す断面図、図14はFPCの先端部分の一部を示す平面図である。
【0050】
第1実施形態と共通する部分については同一符号を付してその説明を省略する。以下、第1実施形態との主な相違部分についてだけ説明する。
【0051】
図9〜図12に示すように、第2実施形態のコネクタ201では、FPC20の挿入状態を確認できるようにするために、挿入状態認識部材11が採用されている。
【0052】
ハウジング203の側壁部233の厚みは挿入状態認識部材11を保持するために、第1実施形態のコネクタ1のハウジング3の側壁部33の厚みより厚い。
【0053】
図12、図13に示すように、操作部材207の両側部には軸部271dが形成されている。軸部271dは平坦面271cを有する。
【0054】
図14に示すように、FPC20の先端部20dを除き、FPC20の両側部には切欠(空所)20eが形成されている。
【0055】
図11に示すように、挿入状態認識部材11は固定部11aと揺動部11bとばね部11cと連結部11dと半田付部11eとを有する。
【0056】
固定部11aはハウジング203の側壁部233に保持される。固定部11aには凹状の軸受部11fが形成されている。軸受部11fは操作部材207の軸部271dを回転可能に支持する。
【0057】
揺動部11bはFPC20の挿入軌道上に配置される。
【0058】
ばね部11cは揺動部11bを下方へ付勢する。
【0059】
連結部11dはばね部11cを固定部11aに連結する。
【0060】
半田付部11eはプリント基板のパッドに半田付される。したがって、挿入状態認識部材11はホールドダウンとしても機能する。
【0061】
挿入状態認識部材11の揺動部11b及びばね部11cは、収容空間34に突出する。揺動部11b及びばね部11cは操作部材7の長手方向の両側であって、ハウジング203の外部から視認可能な位置にある(図9、図10参照)。
【0062】
図12に示すように、操作部材207を開位置に回転させて、FPC20の先端部20dをばね部11cの付勢力に抗してハウジング203の収容空間34に挿入すると、揺動部11bはFPC20によって上方へ跳ね上げられてFPC20の先端部20d上に一旦乗り上げる。
【0063】
このとき、操作部材207の軸部271dの平坦面271cが挿入状態認識部材11のばね部11cに接触しているので、操作部材207は閉位置側へ容易に回転しない。
【0064】
図13に示すように、FPC20の先端部20dが完全にハウジング203の収容空間34に挿入されたとき、揺動部11bはFPC20の先端部20dの上面から切欠20eに落ち、もとの位置に復帰する。このとき、操作者は指に確かなクリック感を感じることができるとともに、クリック音が生じる。
【0065】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏するとともに、クリック感やクリック音によってFPC20の先端部20dが正しく挿入されたかどうかを認識することができ、コネクタ201に対するFPC20の挿入ミスを防止することができる。
【0066】
また、挿入状態認識部材11の揺動部11b及びばね部11cは、操作部材7の長手方向の両側であって、ハウジング203の外部から視認可能な位置にあるので、仮にクリック感やクリック音により確認できなかったとしても、目視によってコネクタ201に対するFPC20の挿入状態を認識することができ、挿入ミスを防止することができる。更に、空所の一例として切欠20eを挙げたが、空所の他の例としては孔等がある。
【0067】
なお、上述の実施形態では、ペアの高周波伝送用信号コンタクト52を導通部72bと接続する支持コンタクト51で挟んだため操作部材7,207に13個の導通部72bが設けられているが、高周波伝送用信号コンタクト52をグランドパターン20bで挟む必要がない場合には導通部72bは少なくとも3つあればよい。導通部72bが3つの場合、一つは操作部材7,207の中央部に配置し、残りの2つは操作部材7,207の両端部に配置するとよい。
【0068】
また、導通部72bを必要な箇所にだけ用いたため支持コンタクト51の数は導通部72bの数よりも一つ多いが、支持コンタクト51の数と導通部72bの数とを同じにしてもよい。
【0069】
なお、導通部72bはシールド板72に一体化されているが、導電部72bをシールド板72と一体化する必要はないし、シールド板72を用いなくてもよい。
【0070】
また、上述の実施形態では、コンタクト5には支持コンタクト51と高周波伝送用信号コンタクト52とが含まれるが、支持コンタクト51だけを用いて、その一部を高周波伝送用信号コンタクトとして用いるようにしても構わない。
【0071】
なお、FPC20のグランドパターン20cはFPC20の先端部20d側の上面全体あるいは、FPC20の上面全体に形成されているが、上述の実施形態はFPC20の上面に形成されるグランドパターンを複数の帯状のグランドパターンで構成してもよい。
【0072】
軸部71dに導通部72bを設けて、FPC20のグランドパターン20cとホールドダウン9とを金属プレート72を介して接続するようにしても良い。また、一方の接続対象物としてFPC20、他方の接続対象物としてプリント基板を挙げたが、接続対象物はこれらのものに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態のコネクタにFPCを接続する前の状態を示す斜視図である。
【図2】図2は図1に示すコネクタにFPCを接続した後の状態を示す斜視図である。
【図3】図3は図1に示すコネクタの支持コンタクト周辺の断面を示す図である。
【図4】図4は図2に示すコネクタの支持コンタクト周辺の断面を示す図である。
【図5】図5は図1に示すコネクタの高速伝送用信号コンタクト周辺の断面を示す図である。
【図6】図6は図2のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図7は図2のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図8は図2のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】図9はこの発明の第2実施形態のコネクタにFPCを接続する前の状態を示す斜視図である。
【図10】図10は図9に示すコネクタにFPCを接続した後の状態を示す斜視図である。
【図11】図11は図9に示すコネクタの挿入状態認識部材の斜視図である。
【図12】図12は図9に示すコネクタにFPCを挿入している途中の状態を示す断面図である。
【図13】図13は図9に示すコネクタにFPCを挿入し終えた状態を示す断面図である。
【図14】図14はFPCの先端部分の平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1,201 コネクタ
3,203 ハウジング
5 コンタクト
51,51´ 支持コンタクト
51b 支持部
51d 接触部
51e 端子部(接続部)
52 高周波伝送用信号コンタクト
52d 接触部
52e 端子部(接続部)
7,207 操作部材
72 シールド板(金属プレート)
72b 導通部
11 挿入状態認識部材
11a 固定部
11b 揺動部
11c ばね部
20 FPC
20a 信号パターン(第1導体パターン)
20b グランドパターン(第1導体パターン)
20c グランドパターン(第2導体パターン)
20e 切欠(空所)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の一方の接続対象物の一方の面に形成された第1導体パターンに接触する接触部と、他方の接続対象物に接続される接続部とを有する複数のコンタクトと、
前記複数のコンタクトを保持するとともに、前記一方の接続対象物が挿入されるハウジングと、
前記ハウジングに挿入された前記一方の接続対象物の第1導体パターンを前記複数のコンタクトの接触部に押し付ける操作部材とを備えているコネクタにおいて、
前記複数のコンタクトには、前記操作部材を回転可能に支持する支持部を有する複数の支持コンタクトが含まれ、
前記複数の支持コンタクトの支持部と前記一方の接続対象物の他方の面に形成された第2導体パターンとを導通させる導通部が、前記操作部材に設けられている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記複数の支持コンタクトは少なくとも3つの支持コンタクトを有し、前記少なくとも3つの支持コンタクトのうち2つの支持コンタクトは前記操作部材の長手方向の両側部に配置され、他の支持コンタクトは前記2つの支持コンタクトの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記一方の接続対象物と対向する前記操作部材の一面側に金属プレートが配設され、
前記導通部は、前記金属プレートから一体形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記支持コンタクトの数が前記導通部の数より多いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項5】
ばね部と、
前記ばね部に連結され前記ハウジングに固定される固定部と、
前記一方の接続対象物の挿入軌道上に配置され、前記一方の接続対象物が前記ばね部の付勢力に抗して前記ハウジングに挿入されると前記一方の接続対象物によって上方へ跳ね上げられ、前記一方の接続対象物が完全に挿入されたとき前記一方の接続対象物に形成された空所を介してもとの位置に復帰する揺動部と
を有する挿入状態認識部材を備えている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のコネクタ。
【請求項6】
前記挿入状態認識部材の少なくとも前記揺動部は、前記操作部材の長手方向の両側であって、前記ハウジングの外部から視認可能な位置にあることを特徴とする請求項5記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−266440(P2009−266440A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111946(P2008−111946)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】