説明

コラーゲン産生促進剤

【課題】線維芽細胞のコラーゲン生合成を促進させることにより、優れた皮膚の老化防止・改善効果を有し、安全でしかも安価なコラーゲン産生促進剤を提供する。
【解決手段】コラーゲン産生促進剤は、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤、コラーゲン産生促進用化粧料並びに該コラーゲン産生促進用化粧料を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚を美しく健やかに保つことに対する女性の関心は非常に高く、加齢による顔面皮膚の変化、特に、しわ、たるみ、しみなどの発生は、女性にとって深刻な肌の悩みとなっている。老化した顔面の皮膚では、真皮の最も主要なマトリックス成分であるコラーゲン線維の減少が著しく、このことがしわの発生、はりの消失といった老徴と密接に関係していることも知られている。このように、加齢等による線維芽細胞の増殖活性の低下やコラーゲン等の生合成機能の低下によって、真皮マトリックスの減少や変性が起こり、その結果として、皮膚の弾力がなくなり、しわやたるみも増加して、皮膚の老化が進行すると考えられる。
【0003】
これらの問題に対し、化粧料等に、特定の植物などから抽出したコラーゲン産生促進剤を配合することが提案されている(特許文献1〜4)。
【0004】
【特許文献1】特願平07−285848号公報
【特許文献2】特願平10−203952号公報
【特許文献3】特願2003−026532号公報
【特許文献4】特願2007−186471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのコラーゲン産生促進剤は、表皮角層の状態をいくぶん改善はするものの、しわやたるみといった皮膚の老化を充分に防止・改善するまでには至っておらず、充分満足し得るコラーゲン産生促進剤はいまだ開発されていないというのが現状である。
【0006】
本発明は、以上の従来の技術の課題を解決しようとするものであり、線維芽細胞のコラーゲン生合成を促進させることにより、しわやたるみを防ぎ、優れた皮膚の老化防止・改善効果を有し、安全でしかも安価なコラーゲン産生促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記現況に鑑み、広く植物由来成分の探索を行った結果、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、インドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)の各々の抽出物が、予想外にも、線維芽細胞に対し、優れたコラーゲン産生促進効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤を供給する。また、この発明は、視点を変えると、コラーゲン産生促進により老化を抑制する抗老化剤であって、該抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤、該抽出物を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進用皮膚外用剤又はコラーゲン産生促進用化粧料、そして美容目的でコラーゲンの産生を促進するために、該コラーゲン産生促進用化粧料を表皮に適用することを特徴とする美容方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤及びコラーゲン産生促進用化粧料は、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を含有する。この抽出物は、皮膚に対する安全性が高く且つ線維芽細胞のコラーゲン産生を促進する効果を有する。また、本発明の美容方法においては、前述の本発明のコラーゲン産生促進用化粧料が表皮に適用される。従って、本発明によれば、真皮線維芽細胞のコラーゲン産生を促進させることができ、優れた皮膚の老化防止・改善効果・美容効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、前述したように、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤、コラーゲン産生促進用化粧料、及び該コラーゲン産生促進用化粧料を表皮に適用する美容方法である。
【0011】
本発明に用いるヒラマメ(Lens esculenta)は、マメ科Lens(レンス)属の植物であり、インド、パキスタンで主に生産され、高栄養食品として知られている。アムラ(別名;マラッカノキ、アンマロク)は、学名がEmblicaofficinalis(別名;Phyllanthus emblica)と称され、トウダイグサ科に属する、インドから東南アジアにかけて分布する落葉の亜高木である。その果実は、インド古来の医学アーユル・ヴェーダのトリ・パラ(三果混合薬)の一つとして、慢性咳、肺病に効き、また肝機能を強化するという高い薬効を示すことで知られており、一般的には「アムラ」の呼称で特定されている。ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)は、クワ科イチジク属の植物であり、熱帯アジアに広く分布する常緑高木として知られている。インドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)はガガイモ科Hemidesmus属の植物であり、約350種が全世界に分布している。これらの植物は、単独で、又は複数種を組み合わせて用いられる。なお、本発明で使用するこれら植物の産地は特に限定されない。
【0012】
本発明で利用する各植物(ヒラマメ、アムラ、ベンガルボダイジュ、インドサルサパリラ)の抽出物としては、いずれも植物体の葉、茎、幹、樹皮、幼芽、花、果実、種子、根等の植物体の一部位又は複数部位の混合あるいは全草から抽出したものである。好ましくは、ヒラマメの場合には種子が用いられ、アムラの場合には果実や樹皮が用いられ、ベンガルボダイジュの場合には新芽、若葉が用いられ、インドサルサパリラの場合には全草が用いられる。
【0013】
抽出を行う際、前記植物体の各部位を生のまま用いてもよいが、乾燥、細切、粉砕、圧搾または発酵等の前処理を適宜に施した後、低温ないし加温下で溶媒を用いて抽出することが好ましい。その抽出方法は特に限定されないが、例えば、上記植物体の一部位、または2種以上の部位を、低温もしくは室温〜加温下の溶媒中に浸漬する方法があげられる。抽出時間は抽出溶媒の種類や抽出温度に応じて設定されるが、1時間から2週間程度が好ましい。
【0014】
抽出溶媒としては、例えば水、低級1価アルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、低級エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン、ペンタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等)、アセトニトリル等が挙げられ、それらの一種又は二種以上を用いることができる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いてもよい。必要に応じて、本発明の効果に影響のない範囲で更に、脱臭、脱色等の精製処理を行ってもよい。更に、必要により防腐防黴剤(フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル類等)を添加後、低温下に1〜2昼夜保存した後ろ過をして用いてもよい。
【0015】
各植物の好ましい抽出方法の例としては、濃度0〜100vol%の含水エチルアルコール又は1,3−ブチレングリコールを用い、室温、又は加温して1〜10日間抽出を行った後にろ過し、得られたろ液を更に1週間程放置して熟成させ、再びろ過を行う方法が挙げられる。
【0016】
本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤又はコラーゲン産生促進用化粧料中において、ヒラマメ抽出物、アムラ抽出物、ベンガルボダイジュ抽出物、及びインドサルサパリラ抽出物の合計の含有量は、乾燥固形分換算で好ましくは0.00001〜10質量%であり、より好ましくは0.00001〜2質量%である。ヒラマメ抽出物、アムラ抽出物、ベンガルボダイジュ抽出物、及びインドサルサパリラの合計の抽出物の合計の含有量(乾燥固形分換算)が、この範囲内であれば、植物抽出物を安定に配合することができ、皮膚への安全性も高く、かつ高い薬効効果乃至美容効果を発揮することができる。
【0017】
また、本発明において、コラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤又はコラーゲン産生促進用化粧料は、通常用いられる各種の薬効成分、例えば、保湿剤、美白剤、抗炎症剤、抗酸化剤、細胞賦活剤、紫外線防御剤、血行促進剤等から選ばれる薬効剤の一種又は二種以上と併用することができる。それにより、本発明の効果をより高めることが可能である。
【0018】
保湿剤として、例えば、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、アラニン、アルギニン、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、キシリトール、グリシン、グルコース、シスチン、システイン、セリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、キシリトール、ソルビトール、POEメチルグルコシド、マルチトール、マルトース、マンニトール、リシン、ハチミツ、ローヤルゼリー、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチルヒアルロン酸ナトリウム、ムコイチン硫酸、カロニン酸、トラネキサム酸、ベタイン、トレハロース、キトサン、尿素、セラミド、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、アシタバ抽出物、アスパラガス抽出物、イザヨイバラ抽出物、クインスシード抽出物、グアバ葉抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を挙げることができる。
【0019】
また、美白剤として、例えば、L−アスコルビン酸,L−アスコルビン酸エチル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル,L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル,L−アスコルビン酸−2−硫酸ナトリウム,L−アスコルビン酸リン酸エステル,L−アスコルビン酸ステアリン酸エステル,L−アスコルビン酸−2−グルコシド,DL−α−トコフェロール−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルジカリウム等のビタミンC類、胎盤抽出物、コウジ酸、エラグ酸、カミツレ抽出物、トコトリエノール、グルタチオン、アルブチン、トラネキサム酸、ウワウルシ抽出物、ユキノシタ抽出物、アセロラ抽出物、エイジツ抽出物、フェルラ酸、アデノシンリン酸二ナトリウム、リノール酸、4−n−ブチルレゾルシン、ハイドロキノン、パンテテイン−s−スルホン酸カルシウム、油溶性カンゾウ抽出物等が挙げることができる。
【0020】
抗炎症剤として、例えば、アミノカプロン酸、アラントイン、インドメタシン、ビサボロール、サポニン、塩化リゾチウム、アズレン、グアイアズレン、グアイアズレンスルホン酸塩、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、サリチル酸及びその誘導体、ヒノキチオール、感光素、トラネキサム酸及びその誘導体、酸化亜鉛、ウコン抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ボタン抽出物、レイシ抽出物、ワレモコウ抽出物等を挙げることができる。
【0021】
抗酸化剤として、例えば、アスタキサンチン、β−カロテン、γ−オリザノール、カイネチン、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、フラボノイド、SOD、カタラーゼ、フラーレン、フィチン酸、フェルラ酸、没食子酸プロピル、ローズマリー抽出物、ユビキノン、α−リポ酸等を挙げることができる。
【0022】
細胞賦活剤として、例えば、アミノ酪酸、イチョウ抽出物、ウイキョウ抽出物、オランダカラシ抽出物、ニンジン抽出物、クララ抽出物、クロレラ抽出物、サフラン抽出物、ダイズ抽出物、タイソウ抽出物、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、レチノール、ロイシン、感光素、リボフラビン及びその誘導体、ピリドキシン及びその誘導体等を挙げることができる。
【0023】
紫外線防御剤として、例えば、オキシベンゾン、オキシベンゾンスルホン酸、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、シノキサート、ジパラメトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、メトキシケイ皮酸メチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル・ジイソプロピルケイ皮酸エステル混合物、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチル安息香酸オクチル、パラアミノ安息香酸(PABA)、パラアミノ安息香酸エチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル、エチルヘキシルトリアゾン、ドロメトリゾール、ドロメトリゾールトリシロキサン、4−メトキシ−4'−tert−ブチルジベンゾイルメタン、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0024】
血行促進剤として、例えば、サンショウ抽出物、ショウキョウ抽出物、センキュウ抽出物、チンピ抽出物、トウガラシ抽出物、トウキ抽出物、ボタン抽出物、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、アセチルコリン、セファランチン、γ−オリザノール等を挙げることができる。
【0025】
また、本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤又はコラーゲン産生促進用化粧料には、前記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、外用剤に通常用いられる成分である水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、植物抽出エキス類、ビタミン類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、アルコール、多価アルコール、pH調整剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等の成分を適宜配合することができる。
【0026】
本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤又はコラーゲン産生促進用化粧料の剤形は、特に限定されず、例えば、低粘度液体、ペースト、クリーム、フォーム、乳液、パック、軟膏、粉剤、エアゾール、貼付剤等が挙げられる。なお、本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品のいずれにも適用することができる。具体的には、例えば、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、美容液、化粧パック、化粧洗浄料、浴用剤、メーキャップ化粧料等に適用することができる。
【0027】
本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤又はコラーゲン産生促進用化粧料の表皮に対する適用量は、少なすぎると発明の効果が得られず、多すぎても添加量に見合った効果が得られない。従って、特定植物抽出物(乾燥固形分)換算で、表皮単位面積(1cm)当たり、好ましくは0.0002〜1340μg/cm・day、より好ましくは0.0002〜270μg/cm・dayとする。
【0028】
また、本発明のコラーゲン産生促進用化粧料は、美容目的で皮膚のコラーゲンの産生を促進する美容方法に好ましく適用できる。この美容方法は、美容目的で皮膚のコラーゲンの産生を促進するために、本発明のコラーゲン産生促進用化粧料を表皮に適用することを特徴とするものである。この美容方法において、コラーゲン産生促進用化粧料を表皮に適用する手法、即ち、それらに含まれている特定植物抽出物を表皮に適用する手法としては、通常の美容手法、例えば、素手による塗布やエアロゾルのスプレーなどを採用することができる。好ましい適用時期としては、風呂上がりや洗顔後が挙げられる。
【実施例】
【0029】
次に本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤及びコラーゲン産生促進用化粧料、更には美容方法について、製造例、試験例、実施例を挙げて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0030】
(製造例)ヒラマメ抽出物、アムラ抽出物、ベンガルボダイジュ抽出物、インドサルサパリラ抽出物の製造:
ヒラマメの種子部位、アムラの果実部位、ベンガルボダイジュの葉部位、インドサルサパリラの全草のそれぞれ100gを粉砕し、それぞれに50vol%含水エタノール溶液1000mLを加え混合した。室温にて2日間静置し、ろ過して抽出液を得、この抽出液を以降の試験例及び実施例の植物抽出物として用いた。
【0031】
(試験例)ヒト皮膚線維芽細胞のI型コラーゲン産生促進作用
コラーゲン産生促進の評価法としては、放射性標識プロリンの取り込み量による方法、培養上清中のコラーゲン量をELISA法にて測定する方法、プロコラーゲンmRNA発現量について評価する方法が知られている(「機能性化粧品素材開発のための実験法/p.50〜55」、シーエムシー出版、2007年5月発行)。本発明では、プロコラーゲンmRNA発現量について評価する方法を用いた。
【0032】
ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)を、10%ウシ胎仔血清を添加したDMEM培地10mLを含む直径9cmのシャーレで、5vol%CO環境下、37℃でサブコンフルエントの状態にまで培養した。無血清培地に交換してから、製造例で得た植物抽出物の1000倍希釈液をそれぞれ最終濃度で1%となるよう添加し2日間培養した。培養終了後、I型コラーゲン産生能を測定するために細胞からRNAサンプルを抽出・精製した。
【0033】
細胞のI型コラーゲン産生能は、I型プロコラーゲンmRNA量を、ノザンブロット法で定量・判定した。また各試料添加におけるI型プロコラーゲン遺伝子のmRNA量は、内部標準グリセリルアルデヒド三リン酸脱水素酵素(GAPDH)のmRNA量を測定することにより標準化した。本試験の結果、各植物抽出物を添加した場合では、対照に比べ、明らかに標準化後のI型プロコラーゲン遺伝子のmRNA量(発現量)は増加した。対照である植物抽出物無添加時のプロコラーゲンmRNA量を100とし、各植物抽出物添加時のプロコラーゲンmRNA量の相対値を算出し、これをコラーゲン産生促進率とした。コラーゲン産生促進率の結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、本発明を特徴づける植物抽出物を添加することにより、コラーゲン産生促進作用が認められ、各植物抽出物は有効なコラーゲン産生促進剤であることが明らかとなった。
【0036】
実施例1(外用クリーム剤の調製)
表2の配合成分のうち、成分(1)〜(6)を加熱混合して75℃の混合物1Aを調製し、それとは別に、成分(12)に成分(7)〜(10)を加えて加熱混合して75℃の混合物1Bを調製した。得られた混合物1Aと混合物1Bとを、ホモミキサーを用いて混合乳化し、室温まで放冷することで混合物1Cを調製した。得られた混合物1Cに、成分(11)を均一に混合して外用クリーム剤を得た。
【0037】
【表2】


【0038】
成分(11)として、ヒラマメ抽出物に代えて、アムラ抽出物(実施例1-2)、ベンガルボダイジュ抽出物(実施例1-3)、インドサルサパリラ抽出物(実施例1-4)をそれぞれ使用して外用クリームを同様に製造した。
【0039】
実施例2(化粧水の調製)
表3の配合成分のうち、成分(1)〜(6)を室温下で混合溶解して混合物2Aを調製し、それとは別に、成分(7)〜(13)を室温下で混合溶解して混合物2Bを調製した。得られた混合物2Aと混合物2Bとを、撹拌機を用いて均一に混合することで化粧水を得た。
【0040】
【表3】

【0041】
実施例3(乳液の調製)
表4の配合成分のうち、成分(1)〜(8)を加熱混合して75℃の混合物3Aを調製し、それとは別に、成分(15)に成分(9)〜(13)を加えて加熱混合して75℃の混合物3Bを調製した。得られた混合物3Aと混合物3Bとを、ホモミキサーを用いて混合乳化し、室温まで放冷することで混合物3Cを調製した。得られた混合物3Cに、成分(14)を均一に混合して乳液を得た。














【0042】
【表4】

【0043】
実施例4(パック剤の調製)
表5の配合成分のうち、成分(1)〜(6)を混合しながら70℃に加熱し溶解して混合物4Aを調製し、それとは別に、成分(7)〜(10)を室温下で混合溶解して混合物4Bを調製した。得られた混合物4Aと混合物4Bとを、撹拌機を用いて混合し、室温まで放冷することでバック剤を得た。
【0044】
【表5】

【0045】
実施例5(乳液状ファンデーションの調製)
表6の配合成分のうち、成分(1)〜(6)を室温下で混合溶解し、更に、成分(12)〜(16)を加えて加熱混合して70℃の混合物5Aを調製した。それとは別に、成分(7)〜(11)及び(18)を加熱混合して70℃の混合物5Bを調製した。得られた混合物5Bに混合物5Aを添加し、ホモミキサーを用いて乳化し、室温まで放冷して混合物5Cを調製した。得られた混合物5Cに、成分(17)を均一に混合して乳液状ファンデーションを得た。
【0046】
【表6】

【0047】
(評価試験)
実施例1または比較例1(実施例1の処方における本発明の植物抽出物を精製水に置換して調製したもの)に示す外用クリームについて、老化防止効果を以下に説明するように試験評価した。
【0048】
(老化防止効果評価方法)
老化症状(しわ・小じわの増加、たるみの増加、肌のはりの低下)が顕著に認められる女性被験者(30〜64才)20名を一群とし、各群に実施例1及び比較例1のそれぞれのクリームを、毎日2回(朝の洗顔の際と夜の入浴後)、2ヶ月にわたって顔に使用してもらい、使用前後の肌状態の改善の程度を、美容専門技術者が観察し、以下の評価基準に従って評価した。得られた結果を表7に示す。なお、表7中の数字は、当該項目に該当する被験者数である。
【0049】
(老化防止効果評価基準)
評価ランク <内容>
有効 症状が改善された。
やや有効 症状がやや改善された。
無効 改善がみられない。







【0050】
【表7】

【0051】
表7から明らかなように、しわ・小じわ、肌のたるみ・はりにおいて、本発明を特徴づける特定植物抽出物を配合した実施例1のクリームを使用した場合には、比較例1のクリームを使用した場合よりも、より顕著な改善効果が認められた。
【0052】
また、実施例2〜5の化粧水、乳液、パック剤、乳液ファンデーションについても実施例1と同様に評価したところ、各実施例において、本発明を特徴づける植物抽出物を含まない対応する剤よりもより顕著な改善効果が認められた。
【0053】
以上のように、本発明の実施例においては、従来の比較例よりも、しわ、小じわ、たるみ、肌のはりの低下といった皮膚の老化症状等に対し、優れた老化防止・改善効果を有することが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のコラーゲン産生促進剤、抗老化剤、コラーゲン産生促進用皮膚外用剤及びコラーゲン産生促進用化粧料は、コラーゲン産生促進作用を有することから、真皮細胞外マトリックスの活性化を促し、真皮を正常化することにより、しわ、小じわ、たるみ、肌のはりの低下などの老化症状等の予防や改善に優れた老化防止効果を発揮する。従って、本発明の剤又は美容方法は、医療及び美容分野で有用となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項2】
コラーゲン産生促進により老化を抑制する抗老化剤であって、ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とする抗老化剤。
【請求項3】
ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進用皮膚外用剤。
【請求項4】
ヒラマメ(Lens esculenta)、アムラ(Emblica officinalis)、ベンガルボダイジュ(Ficus benghalensis)、及びインドサルサパリラ(Hemidesmus indicus)よりなる群から選ばれる一種または二種以上の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするコラーゲン産生促進用化粧料。
【請求項5】
美容目的でコラーゲンの産生を促進するために、請求項4記載のコラーゲン産生促進用化粧料を表皮に適用することを特徴とする美容方法。

【公開番号】特開2009−184997(P2009−184997A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28899(P2008−28899)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(397073658)株式会社B&Cラボラトリーズ (14)
【Fターム(参考)】